説明

ポリマーの製造法

【課題】水性媒体中において改善されたレオロジー特性および美的特性を有する結合性ポリマーを提供する。
【解決手段】水性媒体中、pHが4以下、フリーラジカル開始剤の存在下、および30〜95℃の範囲の反応温度で、モノマー混合物を乳化重合することを含む結合性ポリマーの製造法であって、前記モノマー混合物は、(a)少なくとも1種の酸性ビニルモノマーまたはその塩と、(b)少なくとも1種の非イオン性ビニルモノマーと、(c)第1の疎水性末端基を有する第1の結合性モノマーと、(d)第2の疎水性末端基を有する第2の結合性モノマー、半疎水性モノマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、そして任意に、(e)架橋性モノマー、連鎖移動剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含んでなる、前記ポリマーの製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本願明細書に引用されて援用される2002年1月18日に出願された米国仮特許出願番号60/349,399の優先権を主張するものである。以下の関連した同一出願人による出願、すなわち、2002年1月18日に出願された米国仮特許出願番号60/349,608の優先権を主張する米国特許出願番号10/338,510は、本出願と同時に出願された。
本発明は、アニオン性ポリマー、特に、アルカリ膨潤性およびアルカリ可溶性結合性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
結合性ポリマーは、前記ポリマー中の他の基または前記ポリマーが存在する媒体中の他の材料と非特異的な「結合」を形成することができるペンダント基を含有している。一般に、前記ペンダント基は疎水性部分と親水性部分の両方を有しており、前記結合は、通常、疎水相互作用に基づいている。また、ある特定のpH条件下において、親水性基同士の間の水素結合も見られる。理論によれば、そのような結合によって、臨界ポリマーオーバーラップ濃度を越えた高分子間網目の形成による増粘が生じる。
【0003】
慣用的にHASEポリマーと呼ばれる疎水的に改質されたアルカリ膨潤性またはアルカリ可溶性エマルジョンポリマーとは、一般に低いpH(pH<4.5)では安定したエマルジョンとして重合されるが、ほぼ中性〜中性のpH(pH>5.5〜7)では水膨潤性または水溶性になる結合性モノマーである。代表的なHASEポリマーは、pH感受性または親水性モノマー、疎水性モノマーおよび「結合性モノマー」のビニル付加共重合体である。結合性モノマーは、重合可能な末端基、親水性の中央部分および疎水性の末端基を有する。HASEポリマーの詳細な批評は、関連する開示内容が本願明細書に引用されて援用されるGregory D. Shay, Chapter 25, ”Alkali−Swellable and Alkali−Soluble Thickener Technology A Review”, Polymers in Aqueous Media − Performance Through Association, Advances in Chemistry Series 223, J. Edward Glass (ed.), ACS, pp.457〜494, Division Polymeric Materials, Washington, DC(1989)に記載されている。
【0004】
一般に、慣用のHASEポリマーは1種の結合性モノマーを含有している。慣用のHASEポリマーは、実質的に単一の炭化水素部分である疎水性末端基を有する結合性モノマーから、または、主に、炭素数が約2異なる分子式を有するアルキル基と、ある特定の天然の脂肪物質に由来するアルキル基のごとき、炭素数が最大約6異なる微量のアルキル基との混合物である疎水性末端基を有する結合性モノマーから誘導してもよい。
【0005】
慣用のHASEポリマーは、産業上の利用において、レオロジー改質剤、乳化剤、安定剤、可溶化剤および顔料粉砕添加剤として用いられてきた。しかしながら、HASEポリマーは、その増粘能力が実用レベルで約1%以下とかなり低くなりがちであるため、水性配合物中におけるレオロジー改質剤としての実用性が限られていることが分かった。HASEポリマーの量を増やすことは経済的に好ましくないだけでなく、粘度の高いHASEポリマー溶液は商業規模の製造工程において扱い難くなる可能性がある。さらに、増粘は最終製品の光学透明度を犠牲にして生じることが多いが、これは特定のパーソナルケア用途、特にヘアケア用途においては好ましくない。従って、HASEポリマーは、これまで別のレオロジー改質ポリマーと組み合わされて用いられていた。
【0006】
結合性ポリマーの増粘能力を強化し、且つ、それらの水性増粘剤としての性能を向上させるために、これまでいくつかの試みが成されてきた。例えば、米国特許第5,916,967号には、結合性ポリマーを2種以上の界面活性剤と混ぜ合わせることによって前記ポリマーの増粘能力を強化することが記載されている。同様に、界面活性剤と増粘剤との相互作用が、C.E.Jones in ”A Study of the Interaction of Hydrophobically−Modified Polyols with Surfactants”, Proceedings of the 4th World Surfactants Congress, CESIO, Barcelona, 2, 439−450(1996)およびP.Reeve in ”Tailoring the Properties of Polymeric Rheology Modifiers to the Characteristics and Requirements of Personal Care Formulations”, Proceedings of International Federation of Society of Cosmetic Chemists, IFSCC, Budapest, 337−346(April 1997)によって開示されている。
【0007】
界面活性剤を共増粘剤として用いて、マクロモノマー由来の結合性ポリマーを用いた水溶液の増粘性を向上させる方法は、米国特許第5,292,843号に開示されている。欧州特許出願第1,038,892A2には、特に少なくとも1種の結合性増粘剤を含有する水性系の粘度安定性を向上させるために、少なくとも1種のマルチフォーブと(添加剤として)少なくとも1種のモノフォーブ化合物との混合物を添加することが記載されている。HASEポリマーの疎水性部分をシクロデキストリン化合物(封止剤添加物)で錯化することによって水性組成物中の前記ポリマーの粘度を抑える方法が、米国特許第5,137,571号および米国特許第6,063,857号に開示されている。
水性媒体中において改善されたレオロジー特性および美的特性を有する結合性ポリマーの必要性および要望は未だ解決されていない。驚くべきことに、本発明の多目的アルカリ膨潤性結合性ポリマー(ASAP)は、水性媒体中においてそのような望ましいレオロジー特性および美的特性を実現することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多目的アルカリ膨潤性およびアルカリ可溶性結合性ポリマーを開示する。本願明細書では、前記ポリマーをASAPと呼ぶ。
【0009】
本発明のASAPは、モノマー混合物の重合による生成物である。前記モノマー混合物は、(a)少なくとも1種の酸性ビニルモノマーと、(b)少なくとも1種の非イオン性ビニルモノマーと、(c)第1の疎水性末端基を有する第1の結合性モノマーと、(d)第2の疎水性末端基を有する第2の結合性モノマー、半疎水性モノマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、任意に、(e)1種以上の架橋性モノマーまたは連鎖移動剤とを含んでなる。第2の結合性モノマー(d)が重合に用いられる場合、結合性モノマー(c)の第1の疎水性末端基および結合性モノマー(d)の第2の疎水性末端基は、互いに著しく異なる疎水性および/または立体的性質を有する。
本発明のASAPは、注入可能な液体から注入不可能なゲルにまで及ぶレオロジー特性を有する製品、並びに、流れ易くはないが流動性は有る組成物を、追加のまたは補助的なレオロジー改質剤を必要とせずに提供することができる。また、本発明のポリマーは、研磨剤、顔料、微粒子、カプセルに入れられたオイルビーズのごとき不水溶性材料、リポソーム、カプセル、ガス状気泡などを懸濁させることができる。
【0010】
有利なことに、本発明の結合性ポリマーは、パーソナルケア製品、ヘルスケア製品、家庭用製品、非家庭用、企業用および工業用製品など、並びに、工業化学プロセスおよび用途、例えばレオロジー改質剤、膜形成剤、増粘剤、乳化剤、安定剤、可溶化剤、懸濁剤および顔料粉砕添加剤に用いることができるが、これらに限定されるわけではない。前記アルカリ膨潤性結合性ポリマーは、仕上げ、コーティングおよび印刷のための織物加工組成物における増粘剤として特に有用である。前記アルカリ膨潤性結合性ポリマーは、粘度の低い噴霧可能な発泡組成物に特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願明細書で用いられるASAPという用語は単数形と複数形の両方を包含し、そして2種以上の異なる疎水的に改質されたポリオキシエチレン基を含有する、または、少なくとも1種の疎水的に改質されたポリオキシアルキレン基と、少なくとも1種の非疎水的に改質されたポリオキシアルキレン基とを含有する酸性/非イオン性水膨潤性または水溶性結合性ポリマーおよびその塩を意味する。さらに、ASAPは、任意に、架橋性モノマー単位または連鎖移動剤単位のごとき他のモノマー単位を含有していてもよい。
驚くべきことに、ASAPは、パーソナルケア、ヘルスケア、家庭用、並びに企業用および工業用(「I&I」)の水性製品での使用に好適であり、そして前記ポリマー含有製品の望ましい性能および美的特性を維持および強化する一方でレオロジーの改質を実現または軽減させることが分かった。
【0012】
本願明細書で用いられる「パーソナルケア製品」という用語は、化粧品、洗面用品、美容食品、化粧品、個人衛生用品、並びに人間および動物の皮膚、毛髪、頭皮および爪を含む身体に適用される洗浄製品を包含するが、これらに限定されるわけではない。本願明細書で用いられる「ヘルスケア製品」という用語は、調合薬;薬用化粧品;経口懸濁液、うがい薬、練り歯磨き粉などのごときオーラルケア(口腔および歯)製品;並びに健康に関する状態または病状を改善するため、一般に衛生状態または健康を維持するためなどの目的のために人間および動物の皮膚、頭皮、爪および粘膜を含む身体に外部から適用されるパッチ、絆創膏などのごとき店頭販売の製品および器具を包含するが、これらに限定されるわけではない。本願明細書で用いられる「家庭用製品」という用語は、台所および浴室などにおいて表面を洗浄したり衛生状態を維持するために家庭で用いられる製品、並びに衣類の手入れおよび洗浄をするための洗濯用製品などを包含するが、これらに限定されるわけではない。本願明細書で用いられる「企業用および工業用」および「I&I」という用語は、企業および工業環境において表面を洗浄したり衛生状態を維持するために用いられる製品、並びに織物加工用製品などを包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0013】
本願明細書および添付の請求の範囲で用いられる「レオロジー特性」という用語、並びにそれを文法的に変えた表現は、Brookfield粘度;線断応力に応じた粘度の増加または減少;流量特性;剛性、弾性、流動性などのごときゲル特性;泡安定性、泡密度、ピーク維持力などのごとき泡特性;並びに推進剤ベースまたは機械式ポンプ式噴霧器から排出したときに噴霧滴を形成する能力のごとき噴霧特性、のごとき特性を包含するが、これらに限定されるわけではない。組成物に対して適用される「美的特性」という用語およびそれを文法的に変えた表現は、色、透明度、滑らかさ、粘着度、潤滑性、質感などのごとき視覚および触覚精神感覚的製品特性を意味する。
【0014】
本発明のアルカリ膨潤性結合性ポリマーの実施態様は、水性織物加工組成物中におけるレオロジー改質剤として特に有用である。本願明細書で用いられる「織物」という用語は、織ったまたは織っていない形態にある天然および合成繊維、天然および合成皮革などを包含する。驚くべきことに、本発明のアルカリ膨潤性ASAPは慣用のHASEポリマーよりも効率的な増粘剤であることが分かった。これにより、本発明のアルカリ膨潤性ASAPは、印刷、コーティング、飽和、染色および同様の織物加工作業のごとき織物用途での使用に好適となる。
【0015】
本発明のアルカリ可溶性結合性ポリマーの実施態様は、水性の、低VOC(揮発性有機化合物)または高VOCの加圧または非加圧型エアロゾルにおける発泡促進剤および膜形成剤として特に有用である。
配合物または媒体に対して適用される「水性」という用語は、ASAPを含有する組成物中でASAPを少なくとも膨潤または溶解させるのに十分な量の水が存在することを意味する。
【0016】
本発明のアルカリ膨潤性およびアルカリ可溶性結合性ポリマー(ASAP)は多目的ポリマーである。前記多目的ポリマーはモノマー混合物を重合することによって調製するのが好ましい。前記モノマー混合物は、(a)少なくとも1種の酸性ビニルモノマーまたはその塩と、(b)少なくとも1種の非イオン性ビニルモノマーと、(c)第1の疎水性末端基を有する第1の結合性モノマーと、(d)第2の疎水性末端基を有する第2の結合性モノマー、半疎水性モノマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、任意に、(e)1種以上の架橋性モノマーまたは連鎖移動剤とを含んでなる。第2の結合性モノマー(d)が前記重合混合物中に含まれる場合、結合性モノマー(c)の第1の疎水性末端基および結合性モノマー(d)の第2の疎水性末端基は、それぞれ独立して、同じまたは異なる炭化水素類から選択されるが、ただし前記第1および第2の疎水性末端基が同じ炭化水素類から選択される場合、前記2つの疎水性末端基の分子式の炭素数の差は少なくとも約8である。前記ポリマーが2種以上の結合性モノマーを含んでなる場合、混合物中における前記少なくとも2種の結合性モノマーの重量比は、約1:1〜100:1の範囲内にあることが好ましく、1:1〜約20:1の範囲内にあることがさらに好ましく、1:1〜約10:1の範囲内にあることが最も好ましい。
【0017】
ある1つの好ましい実施態様において、前記多目的ASAPは、モノマー混合物の重合による生成物である。前記モノマー混合物は、前記モノマー混合物の総重量に基づいて、
(a)約10〜約75重量%の、少なくとも1種の酸性ビニルモノマーまたはその塩と、
(b)約10〜約90重量%の、少なくとも1種の非イオン性ビニルモノマーと、
(c)約0.1〜約25重量%の、第1の疎水性末端基を有する第1の結合性モノマーと、
(d)約0.1〜約25重量%の、第2の疎水性末端基を有する第2の結合性モノマー、半疎水性モノマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、
任意に、
(e)約0.01〜約20重量%の、架橋性モノマー、連鎖移動剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のモノマーとを含んでなる。
【0018】
本発明の特に好ましいアルカリ膨潤性結合性ポリマー実施態様は、モノマー混合物の重合による生成物である。前記モノマー混合物は、前記モノマー混合物の総重量に基づいて、(a)約30〜約75重量%の、少なくとも1種の酸性ビニルモノマーまたはその塩と、(b)約25重量%以上60重量%以下の、少なくとも1種の非イオン性ビニルモノマーと、(c)約0.5〜約20重量%の、第1の疎水性末端基を有する第1の結合性モノマーと、(d)約0.5〜約20重量%の、第2の疎水性末端基を有する第2の結合性モノマー、半疎水性モノマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、任意に、(e)約20重量%以下の架橋性モノマーとを含んでなる。モノマー(d)が第2の結合性モノマーである場合、結合性モノマー(c)の第1の疎水性末端基および結合性モノマー(d)の第2の疎水性末端基は、それぞれ独立して、同じまたは異なる炭化水素類から選択される。前記第1および第2の疎水性末端基が同じ炭化水素類から選択される場合、前記疎水性末端基の分子式の炭素数の差は少なくとも約8である。この好ましい実施態様の結合性ポリマーはアルカリ膨潤性であり、前記ポリマーが存在するアルカリ性水性系に優れたレオロジー改質特性と比較的高い粘度を与える。これらの好ましいアルカリ膨潤性ポリマーの例を下記表2A〜2Cに示す。
【0019】
本発明の他の好ましい実施態様は、比較的粘度の低いアルカリ可溶性結合性ポリマーである。この好ましい実施態様のアルカリ可溶性結合性ポリマーは、モノマー混合物の重合による生成物である。前記モノマー混合物は、前記モノマー混合物の総重量に基づいて、(a)約10〜約30重量%の、少なくとも1種の酸性ビニルモノマーまたはその塩と、(b)60重量%よりも多い、少なくとも1種の非イオン性ビニルモノマーと、(c)約0.5〜約5重量%の、疎水性末端基を有する少なくとも1種の結合性モノマーと、(d)約0.5〜約5重量%の、重合性不飽和末端基と、前記重合性不飽和末端基と共有結合しているポリオキシアルキレン基とを有する少なくとも1種の半疎水性モノマーと、(e)約0.5〜約5重量%の連鎖移動剤とを含んでなる。この好ましい実施態様のアルカリ可溶性結合性ポリマーは良好な膜形成性および耐湿性を与えるので、低い粘度が望ましいとされる散布可能または噴射可能な水性アルコール組成物のごとき組成物に好適となる。
【0020】
好ましくは、本発明のポリマーに用いられる結合性モノマーの疎水性末端基は、C〜C40直鎖アルキル、C〜C40分岐鎖アルキル、C〜C40炭素環式アルキル、アリール置換C〜C40アルキル、C〜C40アルキル置換フェニルおよびC〜C80錯エステルからなる群から選択される。
前記結合性モノマー成分の第1および第2の疎水性末端基は、同じまたは異なる炭化水素類から選択することができる。しかしながら、第2の結合性モノマーが存在する場合、前記第1および第2の結合性モノマーは同じ炭化水素類に属する疎水性末端基(例えば、両方の疎水性末端基がC〜C40直鎖アルキル基である)を有し、そして前記疎水性末端基の分子式は、両式の炭素数の差が好ましくは少なくとも約12、さらに好ましくは少なくとも約10、最も好ましくは少なくとも約8となるように選択される。
特に好ましい実施態様においては、少なくとも1種の結合性モノマーがC12〜C40直鎖アルキル基である疎水性末端基を有する。
【0021】
3種以上の結合性モノマーを用いて本発明のASAPを調製する場合、前記結合性モノマーのうちの少なくとも2種が異なる炭化水素類から選択された疎水性末端基を有することが好ましい。同じ炭化水素類から選択された疎水性末端基を有する3種以上の結合性モノマーを用いて本発明のASAPを調製する場合、炭素数の最も大きい疎水性末端基の分子式と炭素数の最も小さい疎水性末端基の分子式との炭素数の差は少なくとも約12であることが好ましく、少なくとも約10であることがさらに好ましく、少なくとも約8であることが最も好ましい。
しかしながら、重合混合物が第2の結合性モノマーと半疎水性モノマーとの組み合わせを含んでなる場合、前記結合性モノマーの第1および第2の疎水性末端基の分子式は限定されない。重合混合物が半疎水性モノマーと2種以上の結合性モノマーとを含んでなる場合、第1および第2の結合性モノマーは任意の組み合わせの第1および第2の疎水性末端基を含んでなっていてもよく、その際の炭化水素類、または疎水性末端基の分子式の炭素数は限定されない。
【0022】
結合性モノマーおよびそれらの疎水性末端基に関して本願明細書で用いられる「第1」および「第2」という用語は2種以上の異なる結合性モノマーが用いられることを意味するものであり、反応混合物に添加する際の前記モノマーの順番に関する関係を意味するものではなく、前記モノマーまたは疎水性末端基の間の機能的な差を意味するものでもない。「(メタ)アクリレート」という用語はアクリレートまたはメタクリレートのいずれかを意味し、「(メタ)アクリルアミド」という用語はアクリルアミドまたはメタクリルアミドのいずれかを意味する。
【0023】
本願明細書で用いられる「アルキル」という用語は置換または非置換脂肪族炭化水素部分を意味し、「炭素環式アルキル」という用語は、炭素数が3〜約12である1種以上の炭素環式環を含んでなるアルキル基を意味し、そして「アリール」という用語は置換または非置換フェニルまたはナフチル部分を意味する。「C−C」という形態の改質剤は、アルキル基または炭素環式アルキル基が総炭素数がx〜y、ただしxおよびyは特定の整数、である分子式を有することを示している。アルキル基、アリール基または他の基に関して本願明細書で用いられる「ハロゲン置換」、「ヒドロキシ置換」、「カルボキシ置換」、「ポリオキシアルキレン置換」、「アルキル置換」および「アリール置換」という用語は、アルキル基、アリール基または他の基の少なくとも1つの水素原子が少なくとも1つのハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ポリオキシアルキレン基、アルキル基またはアリール基で置換されていることを意味する。
以下、本発明の多目的結合性ポリマーの調製に有用な好適なモノマーを説明する。
【0024】
酸性ビニルモノマー
本発明において好適に用いられる酸性ビニルモノマーは、酸性で重合可能なエチレン性不飽和モノマーである。前記不飽和モノマーは、酸性またはアニオン性官能部位を与える少なくとも1種のカルボン酸、スルホン酸基またはホスホン酸基を含有していることが好ましい。これらの酸基は、一酸、二酸、ジカルボン酸の無水物、二酸のモノエステル、およびそれらの塩から誘導することができる。
【0025】
好適な酸性のビニルカルボン酸含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸など、およびマレイン酸、フマル酸、イタコン酸またはアコニット酸のC〜C18アルキルモノエステル、例えばマレイン酸水素メチル、マレイン酸モノイソプロピル、フマル酸水素ブチルなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などのジカルボン酸の無水物も酸性ビニルモノマーとして用いることができる。一般に、そのような無水物は、長期間水に曝されたりpHが高いと、対応する二酸へと加水分解する。
好適なスルホン酸基含有モノマーとしては、ビニルスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アリルオキシベンゼンスルホン酸などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。特に好ましいのは、スチレンスルホン酸のナトリウム塩(SSSA)およびAMPSである。
【0026】
好適なホスホン酸基含有モノマーの例としては、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、3−アクリルアミドプロピルホスホン酸などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
好適な塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩のごときアルカリ金属塩;カルシウム塩およびマグネシウム塩のごときアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;並びに2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリエチルアミンの塩のごときアルキル置換アンモニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0027】
前記モノマーまたはそれらの塩は、本発明のASAPの酸性ビニルモノマー成分として、単独でまたは2種以上を混ぜ合わせて用いることができる。アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸のナトリウム塩(SSSA)、AMPS、並びに、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、およびそれらのモノエステルまたはモノアミドが好ましい。特に好ましい酸性ビニルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、SSSAおよびAMPSである。
前記酸性ビニルモノマーは、モノマー混合物の総重量に基づいて、全モノマー混合物の好ましくは約10〜約75重量%、さらに好ましくは約25〜約65重量%、最も好ましくは約30〜約60重量%を構成する。
【0028】
非イオン性モノマー
本発明において好適に用いられる非イオン性ビニルモノマーは、当該技術分野において周知の共重合可能な非イオン性のエチレン性不飽和モノマーである。好ましい非イオン性ビニルモノマーは、下記式(I)または(II)
(I) CH=C(X)Z
(II) CH=CH−OC(O)R
式中、XはHまたはメチルであり、Zは−C(O)OR、−C(O)NH、−C(O)NHR、−C(O)N(R、−C、−COR、−CCl、−CN、−NHC(O)CH、−NHC(O)H、N−(2−ピロリドニル)、N−カプロラクタミル、−C(O)NHC(CH、−C(O)NHCHCH−N−エチレンウレア、−SiR、−C(O)O(CHSiR、−C(O)NH(CHSiRまたは−(CHSiRであり、xは1〜約6の範囲の整数であり、Rは独立してC〜C18アルキルであり、そしてRはそれぞれ独立してC〜C30アルキル、ヒドロキシ置換C〜C30アルキルまたはハロゲン置換C〜C30アルキルである、
のいずれかを有する化合物である。
【0029】
好適な不水溶性非イオン性ビニルモノマーの例としては、C〜C30アルキル(メタ)アクリレート;C〜C30アルキル(メタ)アクリルアミド;スチレン;ビニルトルエン(例えば、2−メチルスチレン)、ブチルスチレン、イソプロピルスチレン、p−クロロスチレンなどのごとき置換スチレン;酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ネオデカン酸ビニルなどのごときビニルエステル;メタクリロニトリル、アクリロニトリルなどのごとき不飽和ニトリル;およびトリメチルビニルシラン、ジメチルエチルビニルシラン、アリルジメチルフェニルシラン、アリルトリメチルシラン、3−アクリルアミドプロピルトリメチルシラン、3−トリメチルシリルプロピルメタクリレートなどのごとき不飽和シランなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
好適な水溶性非イオン性ビニルモノマーの例としては、C〜Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリセロールモノ(メタ)アクリレート;トリス(ヒドロキシメチル)エタンモノ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド;3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド;N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン;メタクリルアミドエチル−N−エチレンウレア(例えば、CH=C(CH)C(O)NHCHCH−N−エチレンウレア);メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのごときC〜Cアルコキシ置換(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド;並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0031】
特に好ましい非イオン性ビニルモノマーとしては、アクリル酸およびメタクリル酸のC〜C18アルキルエステル、メタクリルアミドエチル−N−エチレンウレア、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
前記非イオン性ビニルモノマーは、モノマー混合物の総重量に基づいて、全モノマー混合物の好ましくは約10〜約90重量%、さらに好ましくは約25〜約75重量%、最も好ましくは約30〜約60重量%を構成する。
【0032】
結合性モノマー
本発明のASAPの製造に好適な結合性モノマーは、系の他のモノマーと付加重合するエチレン性不飽和末端基部分(i)、製品ポリマーに選択的な親水性を付与するポリオキシアルキレン中央部分(ii)およびポリマーに選択的な疎水性を付与する疎水性末端基部分(iii)を有する化合物が好ましい。
エチレン性不飽和末端基を供給する部分(i)は、好ましくはα,β−エチレン性不飽和モノもしくはジカルボン酸、またはその無水物、さらに好ましくはCもしくはCモノもしくはジカルボン酸、またはその無水物から誘導される。あるいは、前記結合性モノマーの部分(i)は、アリルエーテルもしくはビニルエーテル、米国再発行特許第33,156号もしくは米国特許第5,294,692号に開示されているような非イオン性ビニル置換ウレタンモノマー、または米国特許第5,011,978号に開示されているようなビニル置換尿素反応生成物から誘導することができる。前記各文献の関連のある開示内容は本願明細書に引用されて援用される。
【0033】
前記中央部分(ii)は、好ましくは約5〜約250個、さらに好ましくは約10〜約120個、最も好ましくは約15〜約60個のC〜Cアルキレンオキサイド繰返し単位を含んでなるポリオキシアルキレンセグメントである。好ましい中央部分(ii)としては、約5〜約150個、さらに好ましくは約10〜約100個、最も好ましくは約15〜約60個のエチレンオキサイド単位、プロピレンオキサイド単位またはブチレンオキサイド単位、並びにエチレンオキサイド単位、プロピレンオキサイド単位および/またはブチレンオキサイド単位のランダムまたは非ランダムシーケンスを含んでなるポリオキシエチレンセグメント、ポリオキシプロピレンセグメントおよびポリオキシブチレンセグメントが挙げられる。
前記結合性モノマーの疎水性末端基部分(iii)は、下記炭化水素類、すなわち、C〜C40直鎖アルキル、アリール置換C〜C40アルキル、C〜C40アルキル置換フェニル、C〜C40分岐鎖アルキル、C〜C40炭素環式アルキルおよびC〜C80錯エステル、のうちの1種に属する炭化水素部分であることが好ましい。
【0034】
本願明細書および添付の請求の範囲で用いられる「錯エステル」という用語は、C〜Cアルキレンオキサイドでアルキル化されることができる少なくとも1種のヒドロキシル基を有する糖のごときポリオールのジ、トリまたはポリエステルを意味する。「錯エステル」という用語は、特に、関連のある開示内容が本願明細書に引用されて援用される米国特許第5,639,841号においてJenkinsらによって説明されている錯疎水性物質を包含する。
【0035】
前記結合性モノマーの好適な疎水性末端基部分(iii)の例としては、カプリル(C)、イソオクチル(分岐鎖C)、デシル(C10)、ラウリル(C12)、ミリスチル(C14)、セチル(C16)、セテアリル(C16〜C18)、ステアリル(C18)、イソステアリル(分岐鎖C18)、アラキジル(C20)、ベヘニル(C22)、リグノセリル(C24)、セロチル(C26)、モンタニル(C28)、メリシル(C30)、ラクセリル(C32)などのごとき炭素数が約8〜約40である直鎖または分岐鎖アルキル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
自然源から誘導される炭素数が約8〜約40である直鎖および分岐鎖アルキル基の例としては、水素化落花生油、大豆油および菜種油(いずれも主にC18);水素化獣脂油(C16〜C18)など;並びに水素化ゲラニオール(分岐鎖C10)、水素化ファルネソール(分岐鎖C15)、水素化フィトール(分岐鎖C20)などのごとき水素化C10〜C30テルペノール、から誘導されるアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0036】
好適なC〜C40アルキル置換フェニル基の例としては、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ドデシルフェニル、ヘキサデシルフェニル、オクタデシルフェニル、イソオクチルフェニル、s−ブチルフェニルなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
好適なC〜C40炭素環式アルキル基としては、コレステロール、ラノステロール、7−デヒドロコレステロールなどのごとき動物性ステロール;フィトステロール、スチグマステロール、カンペステロールなどのごとき植物性ステロール;およびエルゴステロール、菌類ステリンなどのごとき菌類ステロール、から誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本発明において有用な他の炭素環式アルキル疎水性末端基としては、シクロオクチル、シクロドデシル、アダマンチル、デカヒドロナフチル;およびピネン、水素化レチノール、ショウノウ、イソボルニルアルコールなどのごとき天然炭素環式材料から誘導される基、が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
アリール置換C〜C40アルキル基の例としては、スチリル(例えば、2−フェニルエチル)、ジスチリル(例えば、2,4−ジフェニルブチル)、トリスチリル(例えば、2,4,6−トリフェニルヘキシル)、4−フェニルブチル、2−メチル−2−フェニルエチル、トリスチリルフェノリルなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0037】
好適なC〜C80錯エステルの例としては、水素化ヒマシ油(主に、12−ヒドロキシステアリン酸のトリグリセリド);1,2−ジステアリルグリセロール、1,2−ジパルミチルグリセロール、1,2−ジミリスチルグリセロールなどのごとき1,2−ジアシルグリセロール;3,4,6−トリステアリルグルコース、2,3−ジラウリルフルクトースなどのごとき糖のジ、トリまたはポリエステル;および関連のある開示内容が本願明細書に引用されて援用されるRuffnerらに対する米国特許第4,600,761号に開示されているようなソルビタンエステルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0038】
有用な結合性モノマーは当該技術分野において周知である任意の方法によって調製することができる。例えば、Changらに対する米国特許第4,421,902号、Sonnabendに対する米国特許第4,384,096号、Shayらに対する米国特許第4,514,552号、Ruffnerらに対する米国特許第4,600,761号、Ruffnerに対する米国特許第4,616,074号、Barronらに対する米国特許第5,294,692号、Jenkinsらに対する米国特許第5,292,843号、Robinsonに対する米国特許第5,770,760号およびWilkerson,IIIらに対する米国特許第5,412,142号を参照されたい。これら文献の関連のある開示内容は本願明細書に引用されて援用される。
好ましい結合性モノマーの例としては、下記式(III)
【0039】
【化1】

【0040】
式中、Rは、それぞれ独立して、H、メチル、−C(O)OHまたは−C(O)ORであり、RはC〜C30アルキルであり、Aは−CHC(O)O−、−C(O)O−、−O−、−CHO−、−NHC(O)NH−、−C(O)NH−、−Ar−(CE−NHC(O)O−、−Ar−(CE−NHC(O)NH−または−CHCHNHC(O)−であり、Arは2価のアリールであり、EはHまたはメチルであり、zは0または1であり、kは0〜約30の範囲の整数であり、mは0または1であるが、ただしkが0のときmは0であり、kが1〜約30の範囲のときmは1であり、(R−O)はポリオキシアルキレンであり、前記ポリオキシアルキレンはホモポリマー、ランダムコポリマーまたはC〜Cオキシアルキレン単位のブロックコポリマーであり、RはC、CまたはCであり、nは約5〜約250、好ましくは約5〜約100、さらに好ましくは約10〜約80、最も好ましくは約15〜約60の範囲の整数であり、Yは−RO−、−RNH−、−C(O)−、−C(O)NH−、−RNHC(O)NH−または−C(O)NHC(O)−であり、RはC〜C40直鎖アルキル、C〜C40分岐鎖アルキル、C〜C40炭素環式アルキル、C〜C40アルキル置換フェニル、アリール置換C〜C40アルキルおよびC〜C80錯エステルからなる群から選択される置換または非置換アルキルであり、そして前記Rで表されるアルキル基は、ヒドロキシル基、アルコキシル基およびハロゲン基からなる群から選択される1種以上の置換基を任意に含んでなる、
を有する化合物が挙げられる。
【0041】
式(III)の特に好ましい結合性モノマーとしては、セチルポリエトキシル化メタクリレート(CEM)、セテアリルポリエトキシル化メタクリレート(CSEM)、ステアリルポリエトキシル化(メタ)アクリレート、アラキジルポリエトキシル化(メタ)アクリレート、ベヘニルポリエトキシル化メタクリレート(BEM)、セロチルポリエトキシル化(メタ)アクリレート、モンタニルポリエトキシル化(メタ)アクリレート、メリシルポリエトキシル化(メタ)アクリレート、ラクセリルポリエトキシル化(メタ)アクリレート、トリスチリルフェノールポリエトキシル化メタクリレート(TEM)、水素化ヒマシ油ポリエトキシル化メタクリレート(HCOEM)、カノーラポリエトキシル化(メタ)アクリレート、およびコレステロールポリエトキシル化メタクリレート(CHEM)が挙げられる。前記モノマーのポリエトキシル化部分は、約5〜約100個、好ましくは約10個〜約80個、さらに好ましくは約15〜約60個のエチレンオキサイド繰返し単位を含んでなる。
【0042】
モノマー混合物中の結合性モノマー成分は、独立して、モノマー混合物の総重量に基づいて、モノマー混合物の好ましくは約0.1〜約25重量%、さらに好ましくは約0.25〜約20重量%、最も好ましくは約0.5〜約15重量%を構成する。
【0043】
半疎水性モノマー
驚くべきことに、半疎水性モノマー(SHモノマー)は、それらを含有するポリマーの結合性を和らげるので、非常に望ましい質感とレオロジー特性とを有する水性ゲルを生成することができることが分かった。理論に縛られたくはないが、SHモノマーのポリオキシアルキレン基がポリマー中の結合性モノマーの疎水性基の間のあるいは外部成分間の非特異的な結合を遮断するあるいは保護することによってポリマーの結合性を弱めていると考えられている。そのようなSHモノマーは、得られるポリマーの増粘効率を調整することによって、選択された用途にとって望ましいようにポリマーのレオロジー特性をカスタマイズすることができる。非常に驚くべきことに、SHモノマーを含有するアルカリ膨潤性ポリマーは望ましいレオロジー特性および美的特性を水性ゲルに付与し、一般に、すべてのポリマー濃度において、SHモノマーを含有していないアルカリ膨潤性結合性ポリマーよりも軟らかく、滑らかで展ばし易いゲルを提供し、そして24時間経っても実質的に変化しないままであるBrookfield粘度を与えることが分かった。
【0044】
驚くべきことに、SHモノマーをアルカリ膨潤性結合性ポリマーに導入することによって、低い剪断応力におけるゲル粘度を下げることができ、剪断応力の増加に伴う粘度の低下を最小限に抑えるまたは無くすことができ、そしてゲルの剪断低下作用を最小限に抑えるまたは小さくすることができる。例えば、下記実施例1に記載される3%のBEM25結合性モノマーを有するポリマーCP−5は、約1.2%の活性ポリマー重量濃度において複合粘度法によって測定したとき、1Paの剪断応力において178Pa・s(178,000cP)の粘度を有していたが、剪断応力を5Paに高めると複合粘度が43.6Pa・sに下がった。例えば、3%のBEM25と5%のSHモノマーR307とを有する実施例1のポリマーAGのように、SHモノマーを前記ポリマーに添加することには2つの効果があった。第1に、約1.2%の活性ポリマー重量濃度および1Paの剪断応力において測定された複合粘度が106Pa・sに下がった。第2に、剪断応力を5Paに高めても、複合粘度の測定値はほとんど変わらないままであった(105.5Pa・s)。同様に、(例えば実施例1のポリマーAIのように)15%のSHモノマーを添加した場合、約1.2%の活性ポリマー重量濃度および1Paの剪断応力において測定された複合粘度が46.5Pa・sであったのに対し、5Paの剪断応力において測定された複合粘度は36Pa・sであった。
【0045】
本願明細書および添付の請求の範囲で用いられる「半疎水性モノマー」および「SHモノマー」という用語は、2つの部分、すなわち、(i)反応混合物の他のモノマーと付加重合するエチレン性不飽和末端基部分および(ii)ポリマーの疎水性基の間または前記ポリマーを含有する組成物中における他の材料の疎水性基の間の結合を弱めるポリオキシアルキレン部分を有する化合物を意味する。半疎水性モノマーは結合性モノマーと似ているが、実質的に非疎水性末端基部分を有する。
【0046】
付加重合のためのビニルまたは他のエチレン性不飽和末端基を供給する不飽和末端基部分(i)は、好ましくはα,β−エチレン性不飽和モノもしくはジカルボン酸またはその無水物、好ましくはCもしくはCモノもしくはジカルボン酸またはその無水物から誘導される。あるいは、前記末端基部分(i)は、アリルエーテル、ビニルエーテルまたは非イオン性ウレタンモノマーから誘導することができる。
前記重合可能な不飽和末端基部分(i)は、少なくとも1種の遊離カルボキシ官能基を含有するC〜C30不飽和脂肪酸基から誘導することもできる。このC〜C30基は不飽和末端基部分(i)の一部であり、結合性モノマーにぶら下がっている疎水性基とは異なるものである。前記ペンダント疎水性基は、親水性の「スペーサ」部分によって結合性モノマーの不飽和末端基からはっきりと分けられている。
【0047】
具体的に、前記ポリオキシアルキレン部分(ii)は、結合性モノマーの親水性部分と実質的にほぼ同じである長鎖ポリオキシアルキレンセグメントを含んでなる。好ましいポリオキシアルキレン部分(ii)としては、約2〜約250個、好ましくは約10〜約100個のエチレンオキサイド単位、プロピレンオキサイド単位またはブチレンオキサイド単位、並びにエチレンオキサイド単位、プロピレンオキサイド単位および/またはブチレンオキサイド単位のランダムまたは非ランダムシーケンスを含んでなるポリオキシエチレン単位、ポリオキシプロピレン単位およびポリオキシブチレン単位が挙げられる。
好ましいSHモノマーとしては、下記式(IV)または(V)
【0048】
【化2】

【0049】
式中、Rは、それぞれ独立して、H、C〜C30アルキル、−C(O)OHまたは−C(O)ORであり、RはC〜C30アルキルであり、Aは−CHC(O)O−、−C(O)O−、−O−、−CHO−、−NHC(O)NH−、−C(O)NH−、−Ar−(CE−NHC(O)O−、−Ar−(CE−NHC(O)NH−または−CHCHNHC(O)−であり、Arは2価のアリールであり、EはHまたはメチルであり、zは0または1であり、pは0〜約30の範囲の整数であり、rは0または1であるが、ただしpが0のときrは0であり、pが1〜約30の範囲のときrは1であり、(R−O)はポリオキシアルキレンであり、前記ポリオキシアルキレンはホモポリマー、ランダムコポリマーまたはC〜Cオキシアルキレン単位のブロックコポリマーであり、RはC、Cまたはそれらの混合物であり、vは約5〜約250、好ましくは約5〜約100、さらに好ましくは約10〜約80、最も好ましくは約15〜約60の範囲の整数であり、RはHまたはC〜Cアルキルであり、そしてDはC〜C30不飽和アルキルまたはカルボキシ置換C〜C30不飽和アルキルである、
のいずれかを有する化合物が挙げられる。
【0050】
特に好ましい半疎水性モノマーとしては、下記化学式
CH=CH−O−(CH−O−(CO)−(CO)−H または
CH=CH−CH−O−(CO)−(CO)−H
式中、aは2、3または4であり、bは好ましくは1〜約10、さらに好ましくは約2〜約8、最も好ましくは約3〜約7の範囲の整数であり、cは好ましくは約5〜約50、さらに好ましくは約8〜約40、最も好ましくは約10〜約30の範囲の整数であり、dは好ましくは1〜約10、さらに好ましくは約2〜約8、最も好ましくは約3〜約7の範囲の整数であり、そしてeは好ましくは約5〜約50、さらに好ましくは約8〜約40の範囲の整数である、
を有するモノマーが挙げられる。
【0051】
好ましいSHモノマーの例としては、クラリアント社からEMULSOGEN(登録商標)R109、R208、R307、RAL109、RAL208およびRAL307の商品名で市販されている重合性乳化剤、バイマックス社から販売されているBX−AA−E5P5、ユニケマ社から販売されているMAXEMUL(登録商標)5010および5011、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。特に好ましいSHモノマーとしては、EMULSOGEN(登録商標)R109、R208およびR307、BX−AA−E5P5、MAXEMUL(登録商標)5010および5011、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
製造業者らによれば、EMULSOGEN(登録商標)R109は実験式CH=CH−O(CHO(CO)(CO)10Hを有するランダムにエトキシル化/プロポキシル化された1,4−ブタンジオールビニルエーテルであり、EMULSOGEN(登録商標)R208は実験式CH=CH−O(CHO(CO)(CO)20Hを有するランダムにエトキシル化/プロポキシル化された1,4−ブタンジオールビニルエーテルであり、EMULSOGEN(登録商標)R307は実験式CH=CH−O(CHO(CO)(CO)30Hを有するランダムにエトキシル化/プロポキシル化された1,4−ブタンジオールビニルエーテルであり、EMULSOGEN(登録商標)RAL109は実験式CH=CHCHO(CO)(CO)10Hを有するランダムにエトキシル化/プロポキシル化されたアリルエーテルであり、EMULSOGEN(登録商標)RAL208は実験式CH=CHCHO(CO)(CO)20Hを有するランダムにエトキシル化/プロポキシル化されたアリルエーテルであり、EMULSOGEN(登録商標)RAL307は実験式CH=CHCHO(CO)(CO)30Hを有するランダムにエトキシル化/プロポキシル化されたアリルエーテルであり、MAXEMUL(登録商標)5010は約24個のエチレンオキサイド単位でエトキシル化されたカルボキシ官能性C12〜C15アルケニル疎水性物質であり、MAXEMUL(登録商標)5011は約34個のエチレンオキサイド単位でエトキシル化されたカルボキシ官能性C12〜C15アルケニル疎水性物質であり、そしてBX−AA−E5P5は実験式CH=CHCHO(CO)(CO)Hを有するランダムにエトキシル化/プロポキシル化されたアリルエーテルである。
【0053】
本発明のポリマーの調製に用いられる半疎水性モノマーの量は、とりわけ、ポリマーに望まれる最終的なレオロジー特性および美的特性に依存して大きく異なる。用いられる場合、モノマー反応混合物は、1種以上の半疎水性モノマーを、モノマー混合物の総重量に基づいて、好ましくは約0.1〜約25重量%、さらに好ましくは約0.5〜約20重量%、最も好ましくは約1〜約15重量%の範囲の量で含有する。
【0054】
架橋性モノマー
ASAPは、分岐を導入し、かつ、分子量を調整するために1種以上の架橋性モノマーを含んでなるモノマー混合物から任意に調製することができる。好適な多価不飽和架橋剤は当該技術分野において周知である。重合の前後または最中に形成された共重合体を架橋させることができる反応基を有する一価不飽和化合物を用いることもできる。他の有用な架橋性モノマーとしては、エポキシド基、イソシアネート基および加水分解性シラン基のごとき複数の反応基を含有する多官能性モノマーが挙げられる。様々な多価不飽和化合物を用いて部分的または実質的に架橋された3次元網目構造を形成することができる。
【0055】
好適な多価不飽和架橋性モノマー成分の例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンおよびトリビニルベンゼンのごとき多価不飽和芳香族モノマー;1,2,4−トリビニルシクロヘキサンのごとき多価不飽和脂環式モノマー;ジアリルフタレートのごときフタル酸の2官能性エステル;並びにイソプレン、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,5,9−デカトリエン、1,9−デカジエン、1,5−ヘプタジエンを初めとするジエン、トリエンおよびテトラエンのごとき多価不飽和脂肪族モノマーなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0056】
他の好適な多価不飽和架橋性モノマーとしては、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、ジアリルスクロース、オクタアリルスクロースおよびトリメチロールプロパンジアリルエーテルのごときポリアルケニルエーテル;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレントリ(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ジアリルイタコネート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのごとき多価アルコールまたは多価酸の多価不飽和エステル;メチレンビスアクリルアミド、プロピレンビスアクリルアミドなどのごときアルキレンビスアクリルアミド;N,N’−ビスメチロールメチレンビスアクリルアミドのごときメチレンビスアクリルアミドのヒドロキシおよびカルボキシ誘導体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのごときポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、アリルジメチルビニルシラン、ジアリルジメチルシランおよびテトラビニルシランのごとき多価不飽和シラン;並びにテトラアリルスズ、ジアリルジメチルスズのごとき多価不飽和スズ酸塩などが挙げられる。
【0057】
反応基を有する有用な一価不飽和化合物としては、N−メチロールアクリルアミド;アルコキシ基がC〜C18アルコキシであるN−アルコキシ(メタ)アクリルアミド;およびトリエトキシビニルシラン、トリス−イソプロポキシビニルシラン、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートのごとき不飽和加水分解性シランなどが挙げられる。
複数の反応基を含有する有用な多官能性架橋性モノマーとしては、エチルトリエトキシシランおよびエチルトリメトキシシランのごとき加水分解性シラン;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランおよび3−グリシドキシプロピルトリメチルオキシシランのごときエポキシ置換加水分解性シラン;1,4−ジイソシアネートブタン、1,6−ジイソシアネートへキサン、1,4−フェニレンジイソシアネートおよび4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)のごときポリイソシアネート;グリシジルメタクリレートおよびアリルグリシジルエーテルのごとき不飽和エポキシド;並びにジグリシジルエーテル、1,2,5,6−ジエポキシヘキサンおよびエチレングリコールジグリシジルエーテルのごときポリエポキシドが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0058】
特に有用なのは、ヒドロキシル官能基1モル当たり約2〜約100モルのエチレンオキサイドでエトキシル化され、且つ、ビニルエーテル、アリルエーテル、アクリレートエステル、メタクリレートエステルなどのごとき重合性不飽和基で末端封止されたジオール、トリオールおよびビスフェノールのごときエトキシル化ポリオールから誘導された多価不飽和架橋剤である。そのような架橋剤の例としては、ビスフェノールAエトキシル化ジメタクリレート、ビスフェノールFエトキシル化ジメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシル化トリメタクリレートなどが挙げられる。本発明のASAPポリマーに有用な他のエトキシル化架橋剤としては、関連のある開示内容が本願明細書に引用されて援用されるZanotti−Russoに対する米国特許第6,140,435号に開示されているエトキシル化ポリオール誘導架橋剤が挙げられる。
【0059】
特に好ましい架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジメタクリレート(EOBDMA)などのごとき、少なくとも2種のアクリレートまたはメタクリレートエステル基を有するポリオールのアクリレートおよびメタクリレートエステルが挙げられる。
用いられる場合、架橋性モノマーは、モノマー混合物の総重量に基づいて、好ましくはモノマー混合物の約0.01〜約2重量%、さらに好ましくは約0.05〜約1.5重量%、最も好ましくは約0.1〜約1重量%の範囲の量でモノマー反応混合物中に存在する。
【0060】
連鎖移動剤
本発明のASAPは、当該ポリマー技術分野において周知である1種以上の連鎖移動剤を含んでなるモノマー混合物から任意に調製することができる。
本発明において好適に使用される連鎖移動剤は、C〜C18アルキルメルカプタン、メルカプトカルボン酸、メルカプトカルボン酸エステル、チオエステル、C〜C18アルキルジスルフィド、アリールジスルフィド、多官能チオールなどのごとき各種チオおよびジスルフィド含有化合物;亜リン酸塩および次亜リン酸塩;四塩化炭素、ブロモトリクロロメタンなどのごときハロアルキル化合物;並びにα−メチルスチレンのごとき不飽和連鎖移動剤が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0061】
多官能チオールとしては、トリメチロールプロパン−トリス−(3−メルカプトプロピオネート)のごとき3官能チオール;ペンタエリスリトール−テトラ−(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラ−(チオグリコラート)およびペンタエリスリトール−テトラ−(チオラクテート)のごとき4官能チオール;並びにジペンタエリスリトール−ヘキサ−(チオグリコラート)のごとき6官能チオールなどが挙げられる。
あるいは、連鎖移動剤は、ビニルモノマーのフリーラジカル重合中に付加重合体の分子量を下げる任意の触媒連鎖移動剤でもよい。触媒連鎖移動剤の例としては、コバルト錯体(例えばコバルト(II)キレート)が挙げられる。触媒連鎖移動剤は、チオール系CTAに対して比較的低い濃度で用いることができる場合が多い。
【0062】
好ましい連鎖移動剤の例としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン(DDM)、t−ドデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン(ODM)、イソオクチル3−メルカプトプロピオネート(IMP)、ブチル3−メルカプトプロピオネート、3−メルカプトプロピオン酸、ブチルチオグリコラート、イソオクチルチオグリコラート、ドデシルチオグリコラートなどが挙げられる。連鎖移動剤は、モノマー混合物の総重量に基づいて、好ましくは重合性モノマー混合物の約10重量%以下の量で、モノマー反応混合物に添加することができる。
【0063】
本発明のASAPは、当該ポリマー技術分野において周知である乳化重合のごとき慣用の重合法によって製造することができる。一般に、重合法は約30〜約95℃の範囲内の反応温度で実施されるが、この範囲よりも高いまたは低い温度を用いてもよい。モノマー混合物の乳化を促進するために、乳化重合は、脂肪アルコールサルフェートまたはアルキルスルホネートのごときアニオン性界面活性剤、直鎖または分岐鎖アルコールエトキシレートのごとき非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤またはこれらの混合物の存在下において行うことができる。また、乳化重合反応混合物は、1種以上のフリーラジカル開始剤を、モノマーの総重量に基づいて好ましくは約0.01〜約3重量%の範囲の量で含有する。前記重合は、水性媒体中または水性アルコール媒体中において、低いpH、すなわち、好ましくは約4.5以下のpHで行うことができる。
【0064】
乳化重合を促進するのに好適なアニオン性界面活性剤は当該ポリマー技術分野において周知であり、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウレス−3スルホコハク酸2ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ−s−ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸2ナトリウム、n−オクタデシルスルホコハク酸2ナトリウム、分岐アルコールエトキシレートのホスフェートエステルなどが挙げられる。
【0065】
フリーラジカル開始剤の例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムのごとき過硫酸塩化合物;過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチルおよび過酸化ラウリルのごとき過酸化物;クメンヒドロペルオキシドおよびt−ブチルヒドロペルオキシドのごとき有機ヒドロペルオキシド;(亜硫酸水素ナトリウムまたはアスコルビン酸のごとき還元剤で任意に活性化される)過酢酸および過安息香酸のごとき有機過酸;並びに2,2’−アゾビスイソブチロニトリルのごとき油溶性フリーラジカル生成剤などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。特に好適なフリーラジカル重合開始剤としては、アルキル基に水溶化性置換基を有する2,2’−アゾビス(t−アルキル)化合物のごとき水溶性アゾ重合開始剤が挙げられる。好ましいアゾ重合開始剤としては、VAZO(登録商標)44(2,2’−アゾビス(2−(4,5−ジヒドロイミダゾリル)プロパン)、VAZO(登録商標)56(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド)およびVAZO(登録商標)68(4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸))のごときDuPont社から入手可能なVAZO(登録商標)フリーラジカル重合開始剤が挙げられる。
任意に、緩衝剤、キレート剤、無機電解質、連鎖停止剤およびpH調整剤のごとき当該乳化重合技術分野において周知である他の乳化重合添加剤を重合系に用いてもよい。
【0066】
本発明のアルカリ膨潤性またはアルカリ可溶性結合性ポリマーを調製する好ましい一般的な乳化重合法は以下の通りである。
窒素雰囲気下、所望の量の各モノマーを乳化させる量のアニオン性界面活性剤を含有する水と攪拌混合しながら混ぜ合わすことによって、窒素注入口と攪拌装置とを備えた第1の反応器内でモノマーエマルジョンを調製する。攪拌装置と、窒素注入口と、供給ポンプとを備えた第2の反応器へ、所望の量の水とさらなるアニオン性界面活性剤とを、必要に応じて、窒素雰囲気下において投入し、そして第2反応器の内容物を攪拌混合しながら加熱する。第2反応器の内容物が約65〜98℃の範囲の温度に達した後、第2反応器内にこのようにして形成された水性界面活性剤溶液にフリーラジカル開始剤を注入し、そして第1反応器のモノマーエマルジョンを、約65〜95℃の範囲の制御された反応温度において一般に約1〜約4時間に亘って第2反応器にポンプで少しずつ送り込む。モノマーの添加が完了した後、必要に応じて、第2反応器にフリーラジカル開始剤の追加量をさらに添加してもよい。得られた反応混合物は、一般に、重合反応を完了させるのに十分な時間、約75〜95℃の温度に保たれる。その後、得られたポリマーエマルジョンを冷却し、反応器から取り出すことができる。
【0067】
当該ポリマー技術分野の当業者には、各モノマー成分の量を調節することによって任意の所望の割合のモノマーを有するポリマーを得ることができることは分かるであろう。必要に応じて、水の使用量を増減させてもよい。アルコールのごとき水混和性溶媒および上記のような他の重合添加剤も反応混合物に含有させてもよい。当該乳化重合技術分野において周知であるように、直鎖または分岐鎖アルコールエトキシレートのごとき非イオン性界面活性剤を添加することもできる。
生成物ポリマーエマルジョンは、ポリマーの重量に対して、好ましくは約1〜約60%の総ポリマー固形物(TS)、さらに好ましくは約10〜約50%の総ポリマー固形物、最も好ましくは約15〜約45%の総ポリマー固形物を含有するように調製することができる。
いずれの中和の前にも、生成されたままのポリマーエマルジョンは、一般に、約2〜約5.5の範囲のpH、室温(スピンドル#2、20rpm)において約100mPa・s以下のBrookfield粘度、および約150℃以下の下記C法によって測定されたガラス転移温度(Tg)を有する。
【0068】
任意に、生成されたポリマーエマルジョンをさらに処理してもよい。すなわち、ポリマーエマルジョンのpHをアルカリ性のpHにしたければ、アルカリ性材料、好ましくはアルカリ金属水酸化物、有機塩基などを用いて、そのpHを好ましくは約3〜約7.5の範囲の値あるいはそれ以上の値に調整してもよい。ポリマーエマルジョンは、一般に粘度が約100mPa・sよりも高くなると膨潤し、中性〜アルカリ性のpHにおいては粘り気のある溶液すなわちゲルを形成する。一般に、前記ポリマーは、そのようなpH値において実質的に安定しており、約12よりも大きいpH値においても実質的に安定している。ポリマーエマルジョンは、水または溶媒で希釈してもよいし、水の1部を蒸発させることによって濃縮してもよい。あるいは、例えば噴霧乾燥機、ドラム乾燥機または凍結乾燥機のごとき当該技術分野において周知の装置を用いて、得られたポリマーエマルジョンを粉末または結晶の形態にまで実質的に乾燥させてもよい。
【0069】
本発明のASAPは乳化重合によって調製することができる。そして必要に応じて様々な公知の添加剤および慣用のアジュバントおよび水以外の溶媒をASAPエマルジョン生成物に添加することによって、ASAPの性能および特性を変えたり悪影響を及ぼしたりせずに最終的な組成物の意図される使用形態を得ることによって用いることができる。あるいは、慣用の混合装置を用いて、ASAPを1成分として、好ましくは液体の形態で配合物に添加してもよい。
【0070】
本発明のASAPは塗膜形成剤として用いることができる。選択されたASAP塗膜形成剤のガラス転移温度(Tg)が実質的に室温よりも高い場合、前記ASAP塗膜形成剤のTgは、合体剤、可塑剤およびそれらの混合物のごとき添加剤を配合物に含有させることによって、所望のTgに調節することができる。そのような添加剤は、ASAPのTgを室温または所望の温度にまで下げることによって塗膜形成を補助することができる。
【0071】
本発明のASAPは、パーソナルケア製品、局所ヘルスケア製品、家庭用製品、企業用および工業用(I&I)製品、並びに工業プロセスのための配合組成物中において、例えば、レオロジー改質剤、懸濁剤、塗膜形成剤、増粘剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤などとして用いることができるが、これらに限定されるわけではない。当該技術分野において周知のように、前記製品は、一般に、様々な添加剤および慣用のアジュバント、例えば、酸性化またはアルカリ化pH調整剤および緩衝剤;ゴム、樹脂、合成ポリマー、天然ポリマーのごとき固定剤および塗膜形成剤;粘度増加高分子増粘剤またはゲル化剤のごとき補助レオロジー改質剤;乳化剤、エマルジョン安定化剤、ワックス、分散剤などのごとき添加剤;並びに溶媒、電解質などのごとき粘度調整剤;帯電防止剤、合成油、植物性または動物性油、シリコーン油、単量体または高分子四級化アンモニウム塩、緩和剤、湿潤剤、滑剤、日焼け止め剤などのごときヘアおよびスキンコンディショニング剤;ケミカルヘアウェービングまたはストレート剤;一時的、半永久的または永久的染髪用顔料および染料のごとき毛髪着色剤;アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性および双性イオン性界面活性剤のごとき界面活性剤;可塑剤、湿潤剤、粘着付与剤、粘着除去剤、加湿剤などのごときポリマーフィルム改質剤;キレート剤、乳白剤、真珠光沢付与剤、防腐剤、芳香剤、可溶化剤、顔料および染料のごとき着色剤、紫外線吸収剤などのごとき製品仕上げ剤;フッ素化炭化水素、液体揮発性炭化水素、圧縮ガスなどのごとき推進剤(水混和性または不水混和性);並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0072】
ある1つの好ましい実施態様において、本発明のASAPを含んでなる水性ゲル配合物は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサノール、ベンジルアルコールなどのごときC〜C1価アルコール、またはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、イノシトール、ソルビトール、マンニトールなどのごときC〜Cポリオールをさらに含んでなる。ASAPの使用量は、ASAPを含有する組成物の目的および特性が意図される作用を発揮すれば、限定はされない。有用な量の活性重量%ASAPは、約0.01%〜約25%、好ましくは約0.05%〜約20%、さらに好ましくは約0.1〜約15%の範囲内である。
【0073】
好ましいアルカリ膨潤性ASAP実施態様において、脱イオン水中の約1活性重量%のASAPは、約3〜約9の範囲のpHにおけるその中和された形態またはアニオン性の形態において、約100〜100,000mPa・s以上(ブルックフィールドRVT、20rpm、約25℃の室温)のBrookfield粘度を提供する。好ましいアルカリ可溶性ASAP実施態様において、脱イオン水または水性アルコール媒体中の約5活性重量%のASAP濃度は、約5.5〜約8.5の範囲のpHにおけるその中和された形態において、好ましくは約1,000mPa・s以下のBrookfield粘度を提供する。
【0074】
ASAPは増粘剤を添加する必要性を最小限に抑えたりまたは無くしたりする一方で、当該技術分野においてよく用いられる慣用の高分子増粘剤、例えば天然ゴム、樹脂、多糖類、合成高分子増粘剤などと組み合わせて用いることができる。医薬品に増粘剤または薬物担体としてよく用いられるアルカリ膨潤性カルボマーポリマーのごときアニオン性ポリマーを用いて得られた粘度は、アニオン性ポリマーの存在によって悪影響を及ぼされる可能性があることが知られている。驚くべきことに、ASAPには慣用のカルボマーポリマーまたは疎水的に改質されたカルボマーポリマーとの親和性があり、そしてそのような組み合わせによって得られた粘度は、同じ濃度でのアルカリ膨潤性ASAPの粘度とカルボマーポリマーの粘度との合計よりも予想外に高いことが分かった。有利なことに、これにより、カルボマーポリマーまたは疎水的に改質されたカルボマーポリマーを含有する配合物に必要に応じてアルカリ膨潤性ASAPを用いることによって配合物の美的特性およびレオロジー特性をさらに改善することができるようになる。
【0075】
本願明細書において、本発明のポリマーと一緒に用いることのできる濃縮添加剤、補助材料、製品または材料は、ワシントンD.Cにある米国化粧品工業会によって発行されている国際化粧品原料辞典第6版 第1および第2巻(1995)またはInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook第7版 第1巻〜3巻1997)(以下、共にINCI辞書と呼ぶ)に定義されているINCI名として一般に知られている国際命名法または一般によく用いられている化学名で呼ぶ。INCI名、商品名またはその両方で記載されている使用可能な材料の数多くの民間供給業者は、前記INCI辞書および数多くの商業業界誌、例えば、これらに限定されるわけではないがMcCutcheon’s DivisionのThe Manufacturing Confectioner Publishing Co.から発行されている2001 McCutcheon’s Dictionariesの第一巻: Emulsifiers & Detergents および 第二巻: Functional Materials, Glen Rock, NJ (2001);および Allured出版社から発行されているCOSMETICS & TOILETRIES(登録商標)、2001 Cosmetic Bench Reference,115 (13),Carol Stream, IL (2001)に記載されている。前記INCI辞書および前記各文献の関連のある開示内容は本願明細書に引用されて援用される。
【0076】
パーソナルケアおよび局所ヘルスケア組成物は、化粧品および薬剤の文献によって知られているレオロジー改質または増粘を必要とする任意の化粧品、洗浄用品および局所用薬剤配合物を含んでなっていてもよい。ASAPをレオロジー改質剤として含有することがある一般的なパーソナルケア配合物としては、シャンプー、ケミカルおよびノンケミカルヘアカーリングおよびヘアストレート製品、ヘアスタイルメンテナンス製品、爪、手、足、顔、頭皮および体用エマルジョンローションおよびクリーム、毛髪染料、顔および体用化粧品、ネイルケア製品、アストリンゼン、防臭剤、発汗抑制剤、脱毛剤、日焼け止め剤のごとき肌保護用クリームおよびローション、スキンおよびボディクレンザー、スキンコンディショナー、スキントナー、肌安定組成物、液体石鹸、固形石鹸、浴用化粧品、髭剃り用化粧品などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。皮膚および粘膜に適用して洗浄したり滑らかにする局所ヘルスケア配合組成物は、主に成分の純度と局所的に活性な薬物が存在していることとが異なる、同じ製品形態のパーソナルケア製品に用いられる数多くの同じ生理学的に許容可能な化粧成分および化学的に不活性な成分と混ぜ合わされる。例えば、局所ヘルスケア製品としては、医薬品または店頭販売製品に分類することができる練り歯磨き、経口懸濁液および口腔ケア製品のごとき口腔衛生製品、並びに植物薬剤成分または栄養補助成分を含有する医薬化粧品が挙げられる。
【0077】
パーソナルケアおよび局所ヘルスケア組成物は、リンスのごとき液体、ゲル、スプレー、ローションおよびクリームのごときエマルジョン、シャンプー、ポマード、フォーム、軟膏、錠剤、リップケア製品のごときスティック、化粧品、坐薬、並びに皮膚および毛髪に適用されて、水ですすぐかまたはシャンプーまたは石鹸で洗うことによって取り除くまで付着したままである同様の製品の形態をとることができるが、これらに限定されるわけではない。ゲルは、軟らかくても、固くても、絞り出せてもよい。エマルジョンは、水中油型、油中水型または多相型でもよい。スプレーは、指動ポンプ式噴霧器から噴き出される非加圧型エアロゾルでもよいし加圧型エアロゾルでもよい。ASAPは、化学またはガス状推進剤が必要とされるスプレー、ムースまたは泡形成性配合物のごときエアロゾル組成物に配合することができる。圧縮ガス、フッ素化炭化水素および液体揮発性炭化水素のごとき生理学的および環境保護的に許容可能な推進剤、その量および好適に用いられるそれらの組み合わせは、化粧品および医薬品の技術分野および文献において周知である。
【0078】
パーソナルケア製品および化粧品の成分並びにそれらの機能を広く網羅した一覧は、例えば、一般にINCI辞書、特にその第7版第2巻4節に記載されている。前記文献は本願明細書に引用されて援用される。パーソナルケア製品およびヘルスケア製品の配合に精通する業者らにとって、一部の材料は多機能であるため、配合物中で複数の効果を発揮することができることは周知である。従って、パーソナルケアまたはヘルスケア製品の成分として用いられるASAPポリマーの量は、配合組成物の目的および特性が意図される作用を発揮すれば、限定されない。
【0079】
ASAPをレオロジー改質剤として含有することがあり得る一般的な家庭用、企業用および工業用製品としては、台所および浴室のカウンターの表面、タイルの表面およびそこで用いられたりそこに設置される器具をはじめとする設備のための表面洗剤;便器の縁用ゲルをはじめとするトイレ洗浄剤;床洗浄剤、壁洗浄剤、光沢剤、芳香剤ゲル、洗剤;並びに衣類柔軟剤、染み抜き剤、衣類処理剤のごとき食器および洗濯用処理剤および洗剤などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
ASAPは、工業プロセスおよびアプリケーションにおいてレオロジー改質剤として好適に用いられる。例えば、ASAPは、織物加工において、織物被覆、印刷および仕上げ配合物用加工および仕上げ助剤;インク、金属洗浄剤、スケールリムーバ、ペイントリムーバ、ワニスリムーバ;並びに家具、靴、車または金属用研磨剤などとして用いることができる。
【0080】
従って、ASAPを含有する組成物は、前記組成物がその意図される作用に対して有用であれば、任意の形態、例えば、これらに限定されるわけではないが、液体、ゲル、スプレー、エマルジョン、ペーストのごとき半固体、およびスティック、錠剤またはバーのごとき固体などの形態をとることができる。
下記実施例は、好ましい実施態様の調製および使用を詳しく説明するものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0081】
材料および方法
材料は、一般に、ケミカル技術の当業者らに周知の薬品供給業者、または提示された供給業者から市販されている。
【0082】
1.材料の略称および商品名
EA エチルアクリレート
WAM メタクリルアミドエチル−N−エチレンウレア
(SIPOMER(登録商標)WAMII、ロディア社)
MAA メタクリル酸
MMA メチルメタクリレート
AA アクリル酸
SSSA スチレンスルホン酸のナトリウム塩
BEM25 ベヘネス−25メタクリレート
LEM23 ラウレス−23メタクリレート
CSEM25 セテアレス−25メタクリレート
HCOEM25 水素化ヒマシ油エトキシル化(25)メタクリレート
HCOEM16 水素化ヒマシ油エトキシル化(16)メタクリレート
TEM25 トリスチリルフェノールエトキシル化(25)メタクリレート
CHEM24 コレス−24メタクリレート
CEM24 セテス−24メタクリレート
EOBDMA エトキシル化(30)ビスフェノールAジメタクリレート
TMPTA トリメチロールプロパントリアクリレート
IMP イソオクチル3−メルカプトプロピオネート
DDM ドデシルメルカプタン
ODM オクタデシルメルカプタン
R307 実験式CH=CH−O−(CH−O−(CO)−(CO)30−Hを有するランダムにエトキシル化/プロポキシル化された1,4−ブタンジオールビニルエーテル(EMULSOGEN(登録商標)
R307、クラリアント社)
BX−AA 実験式CH=CH−CH−O−(CO)−(CO)−Hを有するランダムにエトキシル化/プロポキシル化されたアリルエーテル(BX−AA−E5P5、バイマックス社)
M5010 約24個のエチレンオキサイド単位でエトキシル化されたカルボキシ官能性C12〜C15アルケニル疎水性物質(MAXEMUL(登録商標)
5010、ユニケマ社)
MPEG35 メトキシエトキシル化(35)メタクリレート
MPEG55 メトキシエトキシル化(55)メタクリレート
【0083】
2. 方法
A. 粘度
各ポリマー含有組成物の報告粘度を、約20〜25℃の室温において、ブルックフィールド回転スピンドル粘度計(Brookfield、Model RVT)を約20rpmで用いてmPa・s単位で測定した(以下、Brookfield粘度と呼ぶ)。粘度は、調製されたばかりの組成物で測定した(これを「初期粘度」と呼ぶ)、また組成物を室温で少なくとも約24時間熟成させた後に再測定した(これを「24時間粘度」と呼ぶ))。以下、粘度値が1つだけ示されている場合、特に断らない限り、その粘度値は24時間粘度である。
特に断らない限り、「低粘度」とは、一般に、注ぐことができる流れ易い噴霧可能な約1,000mPa・s以下の粘度を有する製品を指し、「中位の粘度」とは、1,000mPa・sよりも高く約3,000mPa・s以下の範囲の粘度を有する製品を指し、「高粘度」とは、3,000mPa・sよりも高く約10,000mPa・s以下の範囲の粘度を有する製品を指し、ゲルは、10,000mPa・sよりも高い粘度を有する製品を意味する。
【0084】
B. 透明度
ポリマー含有組成物の報告透明度を、組成物の生成後少なくとも約24時間Brinkmann PC 920比色計によって%T(透過率)で測定した。透明度の測定は脱イオン水(透明度:100%)に対して行った。約60%以上の透明度を有する組成物は実質的に透明であり、約45〜59%の透明度を有する組成物は実質的に半透明であると判断された。
【0085】
C. ガラス転移温度
結合性ポリマーの報告ガラス転移温度(Tg)は、孔径が10ミルのドローダウンバーを用いて生成物エマルジョンの一部をMYLAR(登録商標)(ポリエチレンテレフタレート)フィルム基板の上に展ばし、形成されたフィルムを室温(約25℃)で約24時間乾燥させ、そしてそのTgを公知の示差走査熱量(DSC)測定法によって測定することによって求めた。
【0086】
D. 光沢
結合性ポリマーフィルムの報告光沢は、孔径が10ミルのドローダウンバーを用いてポリマー生成物のフィルムをLeneta Form 2C−opacity chart(Leneta Co.社)の上に形成し、形成されたフィルムを約25℃(約77°F)で約24時間乾燥させ、そして乾燥したフィルムの鏡面光沢度を、20°および60°の反射角で、Micro−Ti−Gloss光沢度計(Byk/Gardner社, Silver Spring, MD)を用いて、鏡面光沢度の標準試験法ASTM523−89(1994年に再認可)を用いて計測することによって求めた。100ユニットの鏡面光沢値を各形状の基準に定めた。20°の角度において少なくとも約30ユニットおよび60°の角度において少なくとも約80ユニットと読み取れる鏡面光沢値は光沢があると判断され、いずれの角度においても25未満の値は光沢が無いと判断された。
【0087】
E. 濁度
ポリマー含有組成物の報告濁度は、蒸留水(NTU=0)を基準として、比濁計を用いて比濁単位(NTU)で測定した。約90以上のNTU値を有する組成物を濁っていると判断した。
【0088】
F. 耐湿性 − %カール保持率
高い湿度(約90%の相対湿度(RH))に対するポリマーの耐性を、一般に高湿度カール保持(HHCR)と呼ばれる公知の方法を用いて、塗布された組成物および周囲の外気から水分を吸収した後に毛髪にセットされたカールを保持する前記ポリマーの能力によって測定した。HHCR法の説明は化粧品の文献に容易に見つけることができる。例えば、Ch. 30, Harry’s Cosmeticology, 8th Ed., M. J. Rieger, Ph.D. (ed.), 666−667, Chemical Publishing Co., Inc., New York, NY (2000)およびDiaz et al., J. Soc. Cosmet. Chem., 34, 205−212 (July 1983)を参照されたい。前記各文献の関連のある開示内容は本願明細書に引用されて援用される。
【0089】
International Hair Importers and Products Inc.社, New Yorkが供給する自然な茶色または黒色の欧州種の毛髪を用いて、商業的にブレンドされた白色人種の未処理(未使用)の人間の毛髪の房を複数作成した。各毛髪房(重量は約3グラム)は、長さが約7インチ(約18cm)であり、頭皮(根)側末端部分で接着剤でしっかりと固定した。使用する前に、各毛髪房をラウリル硫酸ナトリウム(10%SLS)の希釈水溶液で洗浄し、室温で脱イオン水で十分にすすぎ、タオルで水分を吸い取って乾燥させることによって予備洗浄した。毛髪の初期伸長長さ(L)を測定した。評価対象のポリマー含有組成物約0.8グラムを毛髪房に塗布し、頭皮側から終端部まで均一に展ばした。その後、処理した毛髪房を、外径が約3cmであるヘアカーラーの周りに巻き付け、約21〜23℃(約71〜73°F)の室温においてカーラーに巻き付けたままで一晩乾燥させた。乾燥後、カーラーを慎重に取り外して毛髪に1巻きのカールがかかったままにし、毛髪のカールの初期長さ(L)を測定した後、約26〜27℃の周囲温度および約90%RHの高い周囲湿度に設定された湿度室内に前記カールのかかった毛髪房を垂直に吊るした。
【0090】
%カール保持率(HHCR)に基づいた高い湿度に対する耐性は、選択された間隔(Lt)で湿度に曝した後にカールが弛緩したときに毛髪のカールの長さを測定することによって求めた。下記式を用いて、初期カール長さ(L)およびカールする前の完全に伸びきった毛髪の長さ(L)に対する%カール保持率を計算した。
%カール保持率 = (L−L)/(L−L) X 100

カール(垂れ下がったらせんの形状)の長さの変化を定期的に測定し、約4〜約24時間に亘って観察した。約24時間後に最後の読み取りを行った。約90%RHにおいて少なくとも約0.75時間、カール保持率(HHCR)が約70%以上であることは良好で高い耐湿性についての慣用の基準であり、少なくとも約3時間後のHHCRが70%よりも高いと非常に良好〜優良と判断される。
【0091】
G. 主観的な特性の評価
ポリマー含有組成物で処理した毛髪の触覚性、美的特性および機械的性質、例えば感触、剥離、くし通りの良さ、弾力/巻き上がりといったカール記憶、および静電気による毛羽立ち、を主観的に評価した。感触は、毛髪に手を触れたときのポリマー含有製品の精神感覚触覚性(べとつき、滑らかさなど)によって評価した。毛髪からのポリマーの剥離は、毛髪の表面に目に見える沈着物(コーティング)があるかどうかを調べることによって、および、処理した毛髪をくしで梳かした後、くしの歯に目に見えるかすが付着しているかどうかを調べることによって評価した。くし通りの良さおよび毛髪の静電気による毛羽立ちは、毛髪をくしでときながら毛髪のもつれ、毛羽立った繊維、および毛髪にくしを通すときの難しさに注目することによって主観的に評価した。カール記憶は、約90%RHの高い湿度に曝した後に毛髪に残っているカールパターンの弾力のある巻き上がった外観(すなわち、完全なカールのままであるか、らせんが解けているか、またはカールがとれているか)を観察することによって主観的に観察した。
【0092】
H. 結合性ポリマーの調製法 本発明のアルカリ膨潤性結合性ポリマーの一般的な乳化重合法による調製は以下の通りである。
【0093】
窒素雰囲気下、所望の量の各モノマーを乳化させる量のアニオン性界面活性剤を含有する水と攪拌混合しながら混ぜ合わすことによって、窒素注入口と攪拌装置とを備えた第1の反応器内でモノマーエマルジョンを調製する。攪拌装置と、窒素注入口と、供給ポンプとを備えた第2の反応器へ、所望の量の水と必要に応じてさらなるアニオン性界面活性剤とを投入し、そして第2反応器の内容物を窒素雰囲気下において攪拌混合しながら加熱する。第2反応器が約80〜90℃の範囲の温度に達した後、第2反応器内の界面活性剤溶液に所望の量のフリーラジカル開始剤を注入し、そして第1反応器のモノマーエマルジョンを、約80〜90℃の範囲の制御された反応温度において約1〜約4時間に亘って第2反応器にポンプで少しずつ送り込む。モノマーの添加が完了した後、必要に応じて、第2反応器にフリーラジカル開始剤の追加量をさらに添加してもよい。得られた反応混合物は、重合反応を完了させるのに十分な時間、一般に約90分間、約90〜95℃の温度に保たれる。その後、得られたポリマーエマルジョンを冷却し、反応器から取り出すことができる。
【0094】
I. ポリマー含有組成物の調製法
あくまでも1例として、前記一般的なH法によって調製した生成物ASAPエマルジョンを用いて、下記実施例の組成物を調製した。特に断らない限り、生成物ASAPエマルジョンは、水で希釈して所望のポリマー濃度に調節するか、または、最終的に得られる配合物中において所望のポリマー濃度となるのに十分な量で、水溶性材料を有する配合物に添加した。ポリマーの重量%への言及は、すべて、配合物の総重量に基づくポリマーの活性重量%を意味する。特に断らない限り、配合物は、配合の技術分野に精通する業者らにとって周知の慣用の配合法を用いて調製した。本発明のポリマーは、下記実施例に示されるように、レオロジー改質剤、塗膜形成剤、増粘剤、懸濁剤などとしての使用に好適であった。
【0095】
実施例1 ポリマー
表2AにおいてポリマーAとして示されるアルカリ膨潤性結合性ポリマーをH法と呼ばれる一般的な方法に従って調製した。その詳細を以下に記す。
【0096】
第1の反応器において、約117重量部のメタクリル酸と、約172重量部のエチルアクリレートと、約25.5重量部のBEM25と、約3.2重量部のLEM23とを、約10.6重量部の30%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を含有する約92重量部の脱イオン水に投入し、窒素雰囲気下において、約500rpmで回転する攪拌装置を用いて混ぜ合わせることによってモノマー反応混合物を調製した。攪拌装置と、窒素供給口と、供給ポンプとを備えた第2の反応器に、約570重量部の脱イオン水と、約3.2重量部の30%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液とを投入した。第2の反応器の内容物を、窒素雰囲気下において、約200rpmの回転速度で攪拌混合しながら加熱した。第2の反応器の内容物が約85〜88℃の範囲の温度に達した後、このようにして第2の反応器内に形成された高温の界面活性剤溶液に、約6.3部の3.5%過硫酸アンモニウム溶液(フリーラジカル開始剤)を注入した。第1の反応器からのモノマー混合物の水性エマルジョンを、約85〜88℃の範囲に調節された反応温度において、約1時間かけて第2の反応器に徐々に投入した。前記モノマー混合物を添加し終えた時点で、約9.4重量部の0.7%過硫酸アンモニウム溶液を第2の反応器内の反応混合物に添加し、さらに1.5時間反応の温度を約90℃に維持することによって重合を終了させた。得られたASAPエマルジョンを室温まで冷ました後、反応器から取り出し、回収した。
【0097】
表1に示されるモノマー成分を有する比較用HASEポリマーCP−1〜CP−6、および表2A、2B、2Cおよび2Dに示されるモノマー成分を有する本発明のアルカリ膨潤性ASAP、ポリマーB〜M、N〜ZおよびAA〜AW、アルカリ可溶性ASAPおよびポリマーBA〜BLを、前記一般的なポリマーAの調製法に従って調製した。特定のポリマーについて列挙されたすべてのモノマーが第1の反応器内のモノマー反応混合物に含まれており、そして表1、2A、2Bおよび2Cに記載のモノマー重量%値を得るために、必要に応じて、モノマーの量を調節した。前記表中のすべての%値は、モノマー混合物の総重量に基づく重量%である。
【0098】
前記ポリマーはいずれも、総固体量が約30〜約45%の範囲である水溶液として調製した。ほとんどの場合、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を重合反応用乳化界面活性剤として用いた。さらに、SLSと非イオン性乳化界面活性剤、すなわちCeteareth−20(ポリオキシエチレン(20)セチル/ステアリルエーテルのINCI名称)との組み合わせを用いて前記方法に従ってポリマーAVもうまく調製することができた。ポリマーBH、BKおよびBLを調製する際に、SLSの代わりに、それぞれ下記界面活性剤、すなわち、RHODAFAC(登録商標)610(ロディア社,Cranbury,NJから入手可能な分岐アルコールエトキシレートの錯リン酸エステル)、ラウレス−3−スルホコハク酸2ナトリウムおよびジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを用いた。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
前記ポリマーの調製後、製品エマルジョンを分析して、pH、ポリマー含有量に基づく総固体百分率(TS)およびBrookfield粘度(スピンドル#2、20rpm、室温)を求めた。さらに、選択した製品ポリマーのガラス転移温度(Tg)を前記C法によって求めた。製造された製品ポリマーエマルジョンは、一般に、約5.5以下のpH、通常は2.5〜4.5の範囲のpHと、約15〜約45重量%の範囲の総固体量(TS)と、約10〜約100mPa・s以下の範囲のBrookfield粘度と、約35〜約150℃の範囲のTgを有していた。ポリマーエマルジョンのpHは、所望により、酸性剤またはアルカリ性剤を用いて、好ましくは約3〜7.5の範囲のpHまで、または、前記組成物が実質的に透明または半透明になるまで調節することができる。透明性が問題ではない場合すなわちアルカリ性のpHが望ましい場合、下記実施例に示されるように、前記組成物のpHを12よりも高いアルカリ性のpHに調節することができ、アルカリ性のまま安定させることができる。
【0105】
実施例2〜8 水性ゲル
製品ポリマーエマルジョンを水で希釈して所望の活性ポリマー濃度を得た後、希釈されたポリマーエマルジョンを2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP、95%)で約5.8〜約7.5のpHになるまで、すなわち、前記組成物が実質的に透明になるまで中和することによって水性ゲルを調製した。%透明度値はB法で測定し、粘度はA法で測定した。得られた結果を表3に示す。
【0106】
これらの実施例は、本発明のポリマーを含有する水性ゲルにおいて達成されるレオロジー改質および透明度を示している。比較例2および3は、1種の結合性モノマーを有する架橋された疎水的に改質されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)ポリマーである実施例1の比較用ポリマーCP−1を表3に示す量で含有する水性ゲルの粘度および透明度を示している。実施例4〜8は、下記本発明の実施例1からの架橋ASAP、すなわち、ポリマーC、D、EまたはFを表3に示す量で含有する水性ゲルの増粘および透明度を示している。前記ポリマーC、D、EまたはFは、それぞれ、比較用ポリマーCP−1の結合性モノマーと同じ1種の結合性モノマー(BEM25)および様々な異なる結合性モノマー(すなわち、直鎖アルキル基(LEM23)、錯エステル(HCOEM25)またはアリール置換アルキル基(TEM25))を用いている。
【0107】
【表6】

【0108】
表3に示されるように、本発明のポリマーC〜Fを含有する水性組成物はいずれも、約1重量%および約1.2重量%の活性ポリマー濃度において、比較用HASEポリマーCP−1の初期ゲル粘度と実質的にほぼ同じかそれよりも高い初期ゲル粘度を実現している。24時間後、ポリマーC〜Fのすべてのゲルの粘度は、前記濃度において、比較用HASEポリマーCP−1のゲルの粘度よりも実質的に高くなった。また、本発明のポリマーC〜Fを用いて調製された水性ゲルは、比較用ポリマーCP−1(pH>7)よりも低いpH(pH<7)において透明に達した。
さらなる比較のために、比較用HASEポリマーCP−6を用いた以外は実施例2および3のゲルを繰り返した。活性CP−6ポリマー重量が約1%でpHが約7.4のとき、24時間後の粘度は6,500mPa・sであり、%透明度はわずか約26.2であった。活性CP−6ポリマー重量が約1.2%でpHが約6.7のとき、24時間後の粘度は約17,300mPa・sであり、%透明度はわずか約29.9であった。
【0109】
実施例9〜11 水性ゲル
実施例9〜11は、それぞれ、下記表4に示されるように、約1.2重量%の活性ポリマー濃度において、本発明の実施例1のポリマーA、KおよびLを含有する水性ゲルにおいて達成された粘度および透明度を示している。ポリマーAは、実施例5のポリマーCの類似物であって、架橋されていない類似物である。ポリマーKおよびLは、異なる架橋剤を有し、且つ、疎水性物質の含有量が異なる架橋ポリマーを示す。前記ゲルを調製した後、下記表に示されるpHまで中和し、そして実施例2〜8に記載されているようにして粘度および%透明度を求めた。
【0110】
【表7】

【0111】
表4に示されるように、本発明の非架橋ポリマーA(実施例9)を用いて調製されたゲルは、実施例5の非架橋ポリマーCを含有するゲルよりも透明度も粘度も高かった。ポリマーKおよびL(実施例10および11)を用いて調製された水性ゲルも、良好な増粘性および透明度を示した。
【0112】
実施例12および13 水性ゲル
実施例12および13は、表5に示される様々な活性重量%において、本発明の実施例1のASAP、ポリマーN(実施例12Aおよび12B)およびポリマーO(実施例13Aおよび13B)を含有する水性ゲルにおいて達成された粘度および透明度を示している。ポリマーOは異なる3種の結合性モノマーを有しており、そのうちの2つは直鎖アルキル疎水性末端基を有しており、残りの1つは炭素環式アルキル疎水性末端基を有している。一方、ポリマーNは2種の結合性モノマーを有しており、そのうちの一方は直鎖アルキル疎水性末端基を有しており、他方は炭素環式アルキル疎水性末端基を有している。前記水性ゲルを調製した後、下記表に示されるpHまで中和し、そして実施例2〜8に記載されているようにして粘度および%透明度を求めた。
【0113】
【表8】

【0114】
表5は、同じ活性ポリマー濃度において、本発明のポリマーOを用いて調製されたゲルは、ポリマーNを用いて調製されたゲルよりも粘度が高いことを示している。
【0115】
実施例14および15 水性ゲル
実施例14および15は、1.2または1.5活性重量%の実施例1のASAP、ポリマーAB(実施例14Aおよび14B)またはポリマーAM(実施例15Aおよび15B)を含有する水性整髪組成物において達成された粘度および%透明度を示している。ポリマーABおよびAMは、それぞれ、異なる3種の結合性モノマーを有しており、そのうちの2つは直鎖アルキル疎水性末端基を有しており、残りの1つは炭素環式アルキル疎水性末端基を有している。前記ポリマーは、同種の半疎水性モノマーと、異種の架橋性モノマーとを有している。
前記組成物は、下記表6に示される処方を用いて調製された。
【0116】
【表9】

【0117】
下記表7に示されるように、粘度はA法によって測定し、%透明度はB法によって測定した。
【0118】
【表10】

【0119】
ポリマーABによって得られた粘度よりもポリマーAMによって得られた粘度の方が大きかった。両方のポリマーから非常に良好な透明度を有する製品が得られた。
【0120】
実施例16〜28 水性ゲル
実施例16〜28は、下記表8に示される様々な活性重量%濃度で、実施例1の下記ASAP、すなわち、架橋ポリマーE(実施例16Aおよび16B)、F(実施例17Aおよび17B)、H(実施例19A〜19C)、J(実施例21Aおよび21B)、K(実施例22Aおよび22B)、L(実施例23Aおよび23B)、M(実施例24A〜24C)、AT(実施例25A〜25D)、AU(実施例26A〜26C)、AV(実施例27Aおよび27B)、AW(実施例28Aおよび28B)および非架橋ポリマーG(実施例18A〜18C)およびI(実施例20Aおよび20B)を含有する水性ゲルにおいて達成された透明度および粘度を示している。架橋ポリマーHおよびJ、並びに非架橋ポリマーGおよびIは、連鎖移動剤を含有している。ポリマーMは2種の架橋剤を含有しており、そのうちの一方はエトキシ化されている。ポリマーAT、AU、AVおよびAWは、半疎水性モノマーを含有している。前記水性ゲルを調製した後、下記表に示されるpHまで中和し、そして実施例2〜8に記載されているようにして粘度および%透明度を求めた。その結果を表8に示す。
【0121】
【表11】

【0122】
ポリマーE〜M(実施例16〜24)を含有するすべての水性ゲルの粘度は、24時間老化させている間に、かなり上昇した。ポリマーG、H、I、JおよびKは、同様の濃度において、ポリマーE、F、LおよびMの透明度および粘度よりも高い、驚くほど増強された透明度および粘度を示した。
驚くべきことに、ポリマーAT〜AUの粘度は24時間経っても実質的に変わっていなかった。ポリマーはAT〜AWは、高い粘度またはゲル組成物について好適であると判断された。
【0123】
実施例29 水性ゲル
本実施例は、ASAPを疎水的に改質されたカルボマーポリマーと混ぜ合わせることによって約5.3〜約13.3という幅広いpH範囲に亘ってゲル(すなわち、10,000mPa・sよりも高いBrookfield粘度を有するゲル)が得られることを示す。
【0124】
9種の水性ゲル(実施例29A〜29I)を別々に調製した。各ゲルは、最終的な重量に基づいて、約0.8活性重量%のASAPすなわち実施例1のポリマーATと、約0.4活性重量%の疎水的に改質されたカルボマーポリマーすなわちCARBOPOL(登録商標)Ultrez21ポリマー(オハイオ州クリープランドのノベオン社)とを含有していた。さらに各ゲルは、それぞれ、5.3(実施例29A)、7(実施例29B)、8(実施例29C)、9.1(実施例29D)、10(実施例29E)、11.5(実施例29F)、12.3(実施例29G)、13.1(実施例29H)および13.3(実施例29I)のpHを得るために、十分な中和ベース(水酸化ナトリウム、18%)を有していた。各ゲルの粘度は、A法に記載されているようにして求めた。驚くべきことに、下記結果によって示されるように、すべてのpH値においてゲルが得られた。mPa・s単位でのBrookfield粘度は、49,800(実施例29A)、86,400(実施例29B)、75,800(実施例29C)、69,400(実施例29D)、65,500(実施例29E)、63,700(実施例29F)、57,600(実施例29G)、32,100(実施例29H)および24,800(実施例29I)であった。前記2種のアニオン性ポリマーは検討した全pH範囲に亘って相溶性であることも示された。
【0125】
実施例30 水性ゲル
電解質は慣用のカルボマーポリマー増粘剤を用いて得られた粘度を下げることが一般に知られている。本実施例は、一般に予想外に高い粘度は、驚くべきことに、電解質(例えば、塩化ナトリウム)の存在下において、ASAPすなわち実施例1のポリマーATを、疎水的に改質されたカルボマーポリマーであるCARBOPOL(登録商標)Ultrez21ポリマー(オハイオ州クリープランドのノベオン社)と併用することによって得られることを示す。
【0126】
ゲルシリーズA
AMPで約6.4〜6.8のpHまで中和された実施例1のポリマーATを総重量に基づいて約1.25重量%含有する水性ゲルを調製した。前記ゲルのBrookfield粘度は約22,400mPa・sであった。前記手順を繰返し、塩化ナトリウムをそれぞれ0.1、0.25および0.5重量%含有する3種の水性ゲルを得た。前記塩によって、ASAPゲルのBrookfield粘度は、約8,100mPa・s(0.1%の塩)、約3,200mPa・s(0.25%の塩)および約900mPa・s(0.5%の塩)まで下がった。
【0127】
ゲルシリーズB
水性ゲルが、総重量に基づいて、約1.25活性重量%のCARBOPOL(登録商標)Ultrez21ポリマーを含有していること以外は、シリーズAの手順を繰返した。塩を含有していないゲルのBrookfield粘度は約98,200mPa・sであったが、塩によって、約61,800mPa・s(0.1%の塩)、約44,600mPa・s(0.25%の塩)および約28,400mPa・s(0.5%の塩)まで下がった。
【0128】
ゲルシリーズC
水性ゲルが、総重量に基づいて、約0.75活性重量%のポリマーATと約0.5活性重量%のCARBOPOL(登録商標)Ultrez21ポリマーとから成る約1.25重量%の総ポリマー重量を含有していること以外は、シリーズAの手順を繰返した。塩を含有していないゲルのBrookfield粘度は約105,000mPa・sであった。塩の存在下におけるBrookfield粘度は、意外にも高いままであり、約71,200mPa・s(0.1%の塩)、約55,800mPa・s(0.25%の塩)および約42,050mPa・s(0.5%の塩)であった。
前記データは、驚くべきことに、ASAPと疎水的に改質されたカルボマーポリマーとの組み合わせによって、電解質の存在下において一般に予想よりも高い粘度を有し、且つ、前記ポリマーを個々に含有するゲルよりも一般に高い耐塩性を有するゲルが得られることを示している。
【0129】
実施例31 日焼け止めローションおよびクリーム
本実施例は、SPF(太陽光線防護係数)値が約30よりも大きい防水型日焼け止め配合物における、前記組成物の総重量に基づいて、約0.5活性重量%(実施例31A)または約1活性重量%(実施例31B)のASAPすなわち実施例1のポリマーATと、約0.15活性重量%のカルボマーポリマーであるCARBOPOL(登録商標)980ポリマー(オハイオ州クリープランドのノベオン社)との相性の良い組み合わせの使用を示す。
【0130】
前記ポリマーに加えて、実施例31Aおよび31Bの日焼け止め配合物は、それぞれ、組成物の総重量に基づいて、約2活性重量%のヘキシレングリコール、約7.5活性重量%のオクチルメトキシシンナメート、約6活性重量%のベンゾフェノン−3、約5活性重量%のオクチルサリチレート、約10活性重量%のオクチルクリレン、約2活性重量%のPEG−20ステアレート(ISP Van Dyk & Co.社, Belleville NJのCERASYNT 840のINCI名称)、約5重量%のグリセリルステアレート(および)ラウレス−23(ISP Van Dyk & Co.社, Belleville NJのCERASYNT 945のINCI名称)、防腐剤(q.s.)、脱イオン水(q.s.〜100重量%)、および約6.5〜6.6の範囲のpHを得るのに十分なベース(トリエタノールアミン、99%)も含有していた。
実施例31AのBrookfield粘度は約19,400mPa・sであり、実施例31BのBrookfield粘度は約40,800mPa・sであった。粘度は、約45℃の温度における約2ヶ月間の保存期間を通じて実質的に変化しなかった。実施例31Aの日焼け止め剤は審美的に滑らかで光沢のあるローションであり、実施例31Bの日焼け止め剤は審美的に滑らかで光沢のあるクリームであった。両方の日焼け止め剤とも、優れた展延性と、上質でしっかりとした質感および知覚特性とを有していると判断された。
【0131】
実施例32〜35 スキンケアローション
実施例32〜35は、組成物の総重量に基づいて、約0.25活性重量%の湿潤性塩であるナトリウムPCA(Ajinomoto Inc.社,Teaneck,NJからAJIDEW(登録商標)N−50の商品名で販売されているDL−ピロリドンカルボン酸のナトリウム塩のINCI名称)を含有し、比較的低い濃度のASAPすなわち実施例1のポリマーATを単独でまたは疎水的に改質されたカルボマーポリマーであるCARBOPOL(登録商標)Ultrez21ポリマー(オハイオ州クリープランドのノベオン社)と一緒に用いた、スキンケアローション配合物を高い粘度を維持しながら安定化させることを示す。
【0132】
組成物の総重量に対して、下記量の安定剤、すなわち、約0.6活性重量%のポリマーAT(実施例32A)、約1活性重量%のポリマーAT(実施例32B)、約0.3活性重量%のポリマーATおよび約0.3活性重量%のCARBOPOL(登録商標)Ultrez21ポリマー(実施例33)、約0.6重量%のポリマーATおよび約0.3活性重量%のCARBOPOL(登録商標)Ultrez21ポリマー(実施例34)、並びに約0.6活性重量%のカルボマーポリマー(実施例35)を含有する5種のスキンケアローションを別々に調製した。
前記ナトリウムPCAおよびポリマーに加えて、各スキンケアローションは、組成物の総重量に基づいて、約2活性重量%のグリセリン、約3活性重量%のヒマワリ種油、約5活性重量%のカプリル/カプリン酸グリセリド、約4活性重量%のセテアリルオクタノエート、約3活性重量%のココアバター、防腐剤(q.s.)、芳香剤(q.s.)および約6.4〜6.5のpHを得るのに十分なAMP(95%)を含有していた。
【0133】
実施例32A、32Bおよび35のローションは、公知のエマルジョン法、すなわち、前記不水溶性成分を混ぜ合わせて油相を形成し、グリセリン、水およびポリマーを混ぜ合わせて水相を形成し、前記油相を前記水相に添加した後、前記防腐剤および芳香剤を添加し、そして必要に応じてpHを調節することによって調製した。実施例33および34のローションは、CARBOPOL(R)Ultrez21ポリマーを水の一部に予備分散させた後、得られた分散液にポリマーATを添加し、得られたポリマーブレンドを中和し、そして得られたポリマーブレンドを水相に混入させることによってポリマーをブレンドしたこと以外は、実施例32A、32Bおよび35と同様にして調製した。
【0134】
ASAPを含有するスキンケアローション(実施例32A、32B、33および34)のいずれからも、10,000mPa・sよりも高いBrookfield粘度を有する製品が得られた。前記ローションは、室温および高温(45℃)において少なくとも2ヶ月間保存した後でも粘度が下がることなく物理的に安定したままであった。これに対し、ASAPを含有していない実施例35のローションは安定化しなかった(実質的に直ちに2つの相に分離した)。実施例32〜34の安定化したローションはいずれも、審美的に滑らかで、展ばし易いと判断された。実施例34のローションの知覚触覚性は、前記ローションの調製を繰返し、約0.6活性重量%のジメチコーンPEG−7イソステアレート(オハイオ州クリープランドのノベオン社からULTRASILTMDW−18シリコーンの商品名で販売されている水分散性ジメチコーンコポリオールエステルのINCI名称)をさらに含有させることによって、安定性または前記保存温度および保存期間における粘度が損なわれることなく、さらに増強された。
【0135】
実施例36 アルカリ可溶性結合性ポリマー
表2Dに記載の実施例1のポリマーBA〜BLによって例示される本発明のアルカリ可溶性ASAPは発泡促進剤としておよび比較的低い粘度が所望される製品における塗膜形成剤として各種用途において有用であると判断される。
【0136】
各々が1種の結合性モノマーを含有するポリマーBE、BF、BG、BI、BJおよびBKの水溶液を、約3、5および10%の活性ポリマー重量濃度で調製し、AMP(95%)で約6.5〜約7.5の範囲のpHまで中和した。約3重量%のポリマー濃度において、前記溶液のBrookfield粘度は低過ぎて測定できなかった。約5重量%では、各ポリマーから、約25mPa・s以下のBrookfield粘度を有する溶液が得られた。約10%の濃度では、前記ポリマーのすべてから、約300mPa・s以下のBrookfield粘度を有する水溶液が得られた。
水溶液が2種の結合性モノマーを有するポリマーBAを含有していること以外は、前記手順を繰り返した。ポリマーBAの濃度が約3%のときのBrookfield粘度は約15mPa・s未満であり、約5%のときは約61mPa・sであり、そして約10%のときは約850mPa・sであった。
【0137】
これに対し、半疎水性モノマーを含有していないポリマーBIおよびBJと同様のポリマー(すなわち、48.2%のEAと、19.5%のMMAと、29%のMAAと、2.5%のBEM25と、0.8%のDDMとを含んでなるポリマー)の5%溶液は、約3,000mPa・sよりも高いBrookfield粘度と、好ましからざる筋張った質感を有していた。同様に、半疎水性モノマーも連鎖移動剤も含有していない別の同様のポリマー(すなわち、49%のEAと、19.5%のMMAと、29%のMAAと、2.5%のBEM25とを含んでなるポリマー)の5%溶液は、約300,000mPa・sよりも高いBrookfield粘度と、好ましからざる塊だらけの質感を有していた。
【0138】
本発明のアルカリ可溶性結合性ポリマーは、水性ポンプおよび水性アルコールポンプ、並びにシェービングクリーム、発泡性毛髪固定剤、発泡型洗浄剤などのごとき噴霧式泡製品、のための優れた発泡促進剤であると判断される。前記ポリマーは、少なくとも約5重量%のポリマー濃度において、最大少なくとも約55容積%のエタノールを含有する水性アルコール溶液に対して親和性があり、且つ、可溶性である。これにより、前記ポリマーは低VOC(揮発性有機化合物が約55%以下)の組成物に好適となる。
【0139】
また、本発明のアルカリ可溶性結合性ポリマーは炭化水素と親和性がある。これにより、前記ポリマーは高VOC加圧または非加圧型エアロゾルスプレー用途(VOCが最大少なくとも約85%)にも有用となる。例えば、エタノール(95%)中の約20容積%のシクロヘキサンの溶液において、実施例1のポリマーBJの溶解度は、室温において約5活性重量%であり、約4℃の温度において約2活性重量%であった。エタノール(95%)中の50容積%のシクロヘキサンの溶液において、ポリマーBJは、室温と約4℃の両方において、約1活性重量%の濃度において可溶性であった。前記溶液は澄んで透明なままであった(すなわち、曇りは全く見られなかった)。
【0140】
ポリマーBGおよびBIは、それぞれ独立して、55%水性エタノール中で、約5活性重量%ポリマーで調製し、AMP(95%)で約7〜約8の範囲のpHまで中和した。各ASAPから、約5mPa・sのBrookfield粘度を有する溶液が得られた。ポリマーBGからは、手動ポンプ式噴霧器から噴出する細かい霧状のスプレーが得られた。ポリマーBIからは、機械式の非加圧型エアロゾルフォームディスペンサー(例えば、Airspray International, Inc.社, Pompano Beach, FLから入手可能な機械式フォームディスペンサー)から排出される上質で、濃く、光沢のある泡が得られた。両方の配合物とも、毛髪に付けたときにF法に基づいて優れた高い耐湿性を示し、毛髪にフレーク状の残留物を残さず、簡単に洗い流せた。
前記アルカリ可溶性ASAPは、炭化水素(例えば、n−ブタン、ペンタンおよびイソブタン)をベースとした加圧型エアロゾル配合物および化学薬品またはガス状推進剤が使われていない非加圧型エアロゾル配合物での使用に好適であると判断される。
【0141】
実施例37 耐湿性
本発明のポリマーで処理した一房の髪の耐湿性を、毛髪に対する70%以上のHHCRすなわちカール保持率に基づいて、F法の手順によって評価した。実施例4〜8および16〜19のポリマーC、D、EおよびF、実施例9〜11のポリマーA、KおよびL、実施例12および13のポリマーNおよびO、実施例18〜28のポリマーG〜MおよびAT〜AWを含有する水性ゲル組成物を評価した。驚くべきことに、前記本発明のポリマーはいずれも、非常に良い〜優れた高い耐湿性、すなわち、最低約4時間少なくとも70%以上のHHCRすなわちカール保持率を示した。90%RHに24時間曝した後の前記G法によって評価した巻毛の主観的カール記憶(弾力性/再整髪性)特性も良好〜優れていると判断された。これは、本発明の結合性ポリマーが毛髪固定用および整髪用ヘアケアアプリケーションへの使用に好適であることを示している。
【0142】
実施例38〜40 水性配合物
本発明の実施例1のASAP、ポリマーP(実施例38A、38B、38C)、Q(実施例39A、39B、39C)およびR(実施例40A、40B、40C)を表7に示される量で用いた以外は、実施例14および15の手順に従った。ポリマーP、QおよびRはそれぞれ同じ種類の結合性モノマーと架橋剤とを有し、そしてポリマーQおよびRは異なる半疎水性モノマーを含有していた。
さらに、ゲルすなわち粘り気のある配合物の一部を孔径が10ミルのドローダウンアプリケーターを用いてMYLAR(登録商標)フィルム基板の上に展ばし、その滑らかさおよび展延性を観察することによってゲルの質感を評価した。ゲル塗膜の質感が滑らかで展ばし易ければ「S」と評価し、ゲル塗膜がザラついていれば「G」と評価した。その結果を下記表9に示す。
【0143】
【表12】

【0144】
表9に示されるように、濃度が1.5%(実施例38C)の架橋ポリマーPを除いたすべてのポリマーから質感の評価が「S」であるゲルが得られた。ポリマーQおよびRを用いて得られたゲルの質感は、半疎水性モノマーを含有していないポリマーPを用いて得られたゲルの質感と比べて、ポリマーの濃度が高くなっても、軟らかく、滑らかで、展ばし易いと判断された。さらに、ポリマーQおよびRからは、24時間経っても粘度が実質的に変化しないままであるゲルが得られた。
驚くべきことに、すべての濃度において、ポリマーP、QおよびRは、約4時間曝した後のF法によるHHCRすなわちカール保持率が70%を上回っていたことに基づいて、良好な〜優れた高い耐湿性を示した。
【0145】
実施例41〜44 水性配合物
実施例41〜44では、本発明の実施例1のASAPであるポリマーAF(実施例41Aおよび41B)、AG(実施例42Aおよび42B)、AH(実施例43Aおよび43B)およびAI(実施例44Aおよび44B)を下記表10に示される量で用いた以外は、実施例38〜40の手順に従った。これらのポリマーは、同じ種類の半疎水性モノマーを異なる量で含有していた。
上記水性ゲルは、実施例2〜8に記載されているようにして、調整しそして下記表10に示されるpHにまで中和した。上記ゲルの質感は、実施例38〜40に示されるようにして評価した。表10に結果を示す。
【0146】
【表13】

【0147】
前記データは、すべての濃度において、得られたゲルの質感は滑らかで展ばし易い(「S」)ことを示している。また、各ポリマーゲルは、4時間よりも長く曝した後のF法によるHHCRすなわちカール保持率が70%を上回っていたことに基づいて、優れた高い耐湿性を有することが分かった。驚くべきことに、半疎水性モノマーの量を約2.5重量%(ポリマーAF)〜約15重量%(ポリマーAI)の範囲で変化させても、いずれの濃度においても、ゲルの粘度に悪影響を与えることは全く無かった。
【0148】
実施例45〜50 水性ゲル
実施例1のASAPであるポリマーX(実施例45A、45B、45C)、ポリマーY(実施例46A、46B、46C)、ポリマーZ(実施例47A、47B、47C)、ポリマーAO(実施例48A、48B)、ポリマーAP(実施例49A、49B)およびポリマーAQ(実施例50A、50B)を下記表11に示される量で用いた以外は、実施例14および15の手順に従った。各ポリマーは、半疎水性モノマー成分と、2種の結合性モノマー成分とを含有していた。ポリマーAOおよびAPは、それぞれ、2種の非イオン性ビニルモノマー成分を有していた。
様々な活性重量%の前記ポリマーにおける%透明度および粘度を下記表11に示す。
【0149】
【表14】

【0150】
前記データは、各ポリマーが良好な透明度と粘度を示したことを示している。また、各ポリマーの高い耐湿性は、4時間よりも長く曝した後のカール保持率が70%であることに基づいて、優良であると判断された。
【0151】
実施例51 水性シリコーンゲル
本実施例は、実施例1のASAPであるポリマーK(実施例51A)およびポリマーM(実施例51B)を下記表12に示される量および組成で用いることによって調製された水性シリコーン含有ゲルを示す。
【0152】
【表15】

【0153】
実施例52 水性アルコールスプレー
実施例52は、下記表13に示されるように55%エタノールと、水と、中和アミン(AMP)と、防腐剤と、芳香剤とを含んでなる水性アルコール溶媒系を用いた、揮発性有機化合物(VOC)含有率の低いスプレー組成物における約1.5(実施例52A)および約2(実施例52B)活性重量%の実施例1のポリマーMの使用を示す。
【0154】
【表16】

【0155】
前記配合物は、手動ポンプ式噴霧器から排出されたときに良好で、実質的に均一なスプレーパターンを示した。前記配合物は、ヘアケアアプリケーションに求められるような低VOCスプレーでの使用に好適であった。
【0156】
実施例53 スクラブ洗顔料
実施例53は、スクラブ洗顔料として好適な約1.5%の活性ポリマー重量における、下記表14に示される界面活性剤含有率が高く、pHの低い配合物における本発明の実施例1のポリマーA(実施例53A)および非架橋比較用HASEポリマーCP−2(実施例53B)の透明度、増粘および懸濁効果を示す。
【0157】
【表17】

【0158】
前記組成物は、成分#1を水(#12)の一部に予備分散させ、得られた分散液に第1の界面活性剤である成分#2の一部を空気混入を避けるために静かに攪拌しながら混入させ、得られたポリマー混合物を成分#3で約6.5のpHにまで中和し、そして得られたゲルのpHを成分#11で約5.2〜5.4のpHに調節してゲル相を得ることによって調製した。それとは別に、成分#4および#5、並びに水(#12)および第1の界面活性剤(#2)の残りの部分を混ぜ合わせて溶かし、得られた溶液を、静かに攪拌混合しながら、前記ゲル相にゆっくりと加えた。その後、攪拌によって空気混入が生じないように注意しながら、第2の界面活性剤である成分#7および残りの成分(#6、8、9および10)を添加した。濁度は、製品着色剤を添加する前に測定した。最終的なpHおよび粘度は、室温(約25℃)で24時間寝かせてから測定した。その結果を表15に示す。
【0159】
【表18】

【0160】
ポリマーAを含有する組成物(実施例53A)が良好な透明度を有していたのに対し、比較用ポリマーCP−2を含有する組成物(実施例53B)は濁っていた。ホホバ(jojoba)ビーズの懸濁は、約45℃のオーブン内に12週間保管して促進老化させた後に目視で評価した。両方のポリマーとも、促進老化中、ホホバエステルビーズの安定した懸濁を維持していた。
【0161】
実施例54 界面活性剤洗浄剤
ボディウォッシュ、スキンクレンザーまたはシャンプーとしての使用に好適な、下記表16に記載の処方を用いた、約2重量%の活性ポリマー濃度における、実施例1のASAPであるポリマーM(実施例54A)、ポリマーU(実施例54B)、ポリマーAK(実施例54C)およびポリマーD(実施例54D)、並びに実施例1の比較用ポリマーであるCP−6(実施例54E)の透明度、粘度および懸濁性を示す。
【0162】
【表19】

前記組成物は、成分#1を水(#13)の一部に予備分散させ、得られた分散液に第1の界面活性剤である成分#2を発泡を避けるために静かに攪拌しながら混入させ、得られたポリマー混合物を成分#3で約6.7のpHにまで中和し、そして中和されたポリマー混合物に成分#4を添加してゲル相を得ることによって調製した。それとは別に、成分#6および#8を水(#13)の残りの部分と予備混合し、加熱して溶かし、そして得られた溶液を前記ゲル相に添加した。その後、第2の界面活性剤である成分#5を得られた混合物に静かに攪拌しながら添加し、残りの成分#9、7、12、10および11を添加し、そして必要に応じて最終pHを成分#3で調節した。
%透明度は、製品着色剤を添加する前にB法で評価した。24時間後および約45℃のオーブン内での最長約12週間の製品の促進老化後、pHおよび粘度を再び測定した。その結果を表17に示す。
【0163】
【表20】

【0164】
不水溶性ビーズ(成分#12)の懸濁を目視で評価した。初めのうちは、組成物が形成されている間すなわち24時間の間に数個のビーズのみが沈殿した。約45℃において促進老化保存している間、ポリマーM(実施例54A)を含有する組成物およびポリマーU(実施例54B)を含有する組成物中では、ビーズが約12週間(わずかな沈殿も見られたが)実質的に懸濁したままであった。また、ビーズの懸濁は、ポリマーAK(実施例54C)を含有する組成物の場合には約8週間実質的に安定であると判断され、ポリマーD(実施例54D)を含有する組成物の場合には約4週間実質的に安定であると判断された。
これに対し、ビーズは比較用ポリマーCP−6(実施例54E)では懸濁せず、24時間が経過する前に組成物から沈殿してしまっていた。
【0165】
実施例55 エマルジョン
本実施例は、下記表18に示されるように、ハンドおよびボディローションまたはクリームとしての使用に好適である水中油滴エマルジョン中における約1活性ポリマー重量%の実施例1のASAPすなわちポリマーN(実施例55A)およびポリマーM(実施例55B)の使用を示す。
【0166】
【表21】

【0167】
実施例56 液体界面活性剤
本実施例は、下記表19に示される処方を有する手洗い用食器用洗剤としての使用に好適な液体界面活性剤中において約1.5%の活性ポリマー重量で用いられた、2種の結合性モノマーを含有する実施例1のポリマーA(実施例56A)および1種の結合性モノマーを含有する実施例1の比較用HASEポリマーCP−2(実施例56B)の使用を示す。
【0168】
【表22】

【0169】
前記組成物は、前記界面活性剤を前記ポリマーの水溶液に過剰な発泡が起こらないようにゆっくりと攪拌混合しながら添加し、クエン酸ナトリウムを添加して溶かし、そして水酸化ナトリウムでpHを調節することによって調製することができる。必要に応じて、芳香剤および製品着色剤を添加してもよい。約6.5〜7のpHにおける粘度および濁度を下記表20に示す。
【0170】
【表23】

【0171】
ポリマーA(実施例56A)からは実質的に透明な組成物が得られたのに対し、比較用HASEポリマーCP−2(実施例56B)からは濁った組成物が得られた。
前記配合物をクエン酸で約5のpHにまでさらに酸性化することによって粘度の低い製品を得た。約5のpHにおける粘度および濁度を下記表21に示す。
【0172】
【表24】

【0173】
この場合も、ポリマーA(pHが5である実施例56A)から、比較用HASEポリマーCP−2(pHが5である実施例56B)から得られた製品よりもはるかに透明な製品が得られた。
【0174】
実施例57 水性アルコールゲル
本実施例は、ショウノウを含有する水性アルコールゲル配合物中における約1.5%の活性ポリマー重量のポリマーLの使用を示す。下記表22に示される配合物は、約7.3のpHと、約5,140mPa・sの粘度とを有していた。
【0175】
【表25】

【0176】
約3.5〜4の活性ポリマー重量%の実施例1のポリマーG、H、IまたはJと、約10〜30%のエタノールと、比較的低い総量(0.2%未満)のヘアコンディショニング剤(パンテノール、ジメチコーンコポリオール)、防腐剤、可溶化された芳香剤および製品着色剤とを含有し、TEAで約6〜6.5のpHにまで中和された複数の水性アルコールゲル実施態様を別に調製した。これらの水性アルコール組成物は、約7,500〜約90,000mPa・sの範囲の粘度を有していた。これらの組成物によって生じた鏡面光沢度をD法によって測定した。20°の角度では、光沢値群は約40〜約60の範囲内であり、そして60°の角度では、光沢値群は約85〜約90の範囲内であった。これらの組成物は、パーソナルケア用途およびハウスホールドケア用途に好適であると判断された。
【0177】
実施例58 高アルカリ性洗浄ゲル
本実施例は、下記表23に示される処方を用いた、自動食器用洗剤、表面洗浄剤などとしての使用に好適な、消毒剤を含有する高アルカリ性(pH>12.5)配合物中におけるポリマーAEおよび比較用HASEポリマーCP−3の使用を示す。その結果を下記表24に示す。
【0178】
【表26】

【0179】
【表27】

【0180】
粘度の安定性は、当該技術分野において許容範囲にあると判断された。
より高いまたはより低い粘度が所望されるのであれば、それに応じてポリマーの活性重量%を増減させればよい。
必要に応じて、過酸化水素化合物のごとき酸素放出消毒剤を塩素系漂白剤の代わりに用いてもよい。
【0181】
実施例59 高アルカリ性洗浄剤
本実施例は、下記表25に示される処方を用いた、実質的に透明な、漂白剤入りランドリープリスポッター、漂白剤入りカビ汚れ洗剤などとしての使用に好適な、消毒剤を含有する高アルカリ性(pH>12.5)配合物中におけるポリマーAEおよび比較用HASEポリマーCP−3の使用を示す。その結果を下記表26に示す。
【0182】
【表28】

【0183】
【表29】

【0184】
前記製品は、前記ポリマー、水およびレオロジー安定剤を混ぜ合わせ、水酸化ナトリウムで約12.5よりも高いpHに調節し、そして塩素系漂白剤を添加することによって調製した。必要に応じて、芳香剤を添加してもよい。あるいは、過酸化水素化合物のごとき酸素放出漂白剤を塩素系漂白剤の代わりに用いてもよい。
【0185】
実施例60 水性シリコーンゲル
本実施例は、下記表27に示される処方において約1.5%の活性ポリマー重量を用いた水性シリコーンポリマー含有ゲル中における実施例1のASAPすなわちポリマーQ(実施例60A)、Y(実施例60B)およびZ(実施例60C)の使用を示す。その結果を下記表28に示す。
【0186】
【表30】

【0187】
【表31】

【0188】
実施例61 水性コンディショニングゲル
本実施例は、下記表29に示される処方を用いた、カチオン性コンディショニング剤を含有する水性ゲル中における約1.2%の活性ポリマー重量の実施例1のASAPすなわちポリマーQ(実施例61A)、Y(実施例61B)およびZ(実施例61C)の使用を示す。その結果を下記表30に示す。
【0189】
【表32】

【0190】
【表33】

【0191】
実施例62 クリアスプレーゲル
本実施例は、下記表31に示される処方を用いた水性クリアスプレーゲル中における約0.8%の活性ポリマー重量の実施例1のASAPすなわちポリマーA(実施例62A)、C(実施例62B)およびY(実施例62C)の使用を示す。その結果を下記表32に示す。
【0192】
【表34】

【0193】
【表35】

【0194】
実施例63 織物加工
本実施例は、織物捺染ペースト(実施例63A)および織物被覆配合物(実施例63B)中における、下記表33に示される活性ポリマー重量%でのポリマーASの増粘剤として使用を示す。
【0195】
【表36】

【0196】
実施例64 コンディショニングシャンプー
本実施例は、下記表34に示される処方を用いた真珠光沢のあるコンディショニングシャンプー中における約1.5%の活性ポリマー重量の実施例1のポリマーUの使用を示す。
【0197】
【表37】

【0198】
前記シャンプーのA部分は、ポリマーUと脱イオン水とを混ぜ合わせた後、静かに攪拌しながら界面活性剤(#3)を添加し、そして得られた混合物のpHをアルカリ(#4)で約6.5に調節してゲル相を得ることによって調製した。その後、B部分の各成分を表に記載されている順番で前記ゲル相に添加していった。C部分の成分を予備混合し、得られた予備混合物を前記バッチ混合物に添加した。その後、D部分の成分#9および#10を表に記載されている順番で前記バッチに添加し、そして得られた最終的なシャンプーのpHを成分#11で調節した。
得られた真珠光沢のシャンプー製品の最終pHは約5.5であった。そのBrookfield粘度は初めは約3,640mPa・sであったが、24時間後に約4,420mPa・sになった。前記真珠光沢のあるシャンプーは、マイカまたは二酸化チタンを不透明な化粧顔料成分として用いて調製することもできる。
【0199】
実施例65〜69 水性ゲル
一般的に使用されているアニオン性ポリマー増粘剤を用いて得られた粘度は、ある特定の慣用のアニオン性ポリマーの存在によって悪影響を及ぼされることがあることは知られている。本実施例は、水性ゲル中における、カルボマーポリマーおよび疎水的に改質されたカルボマーポリマーのごときアニオン性ポリマー増粘剤に対する本発明のASAPの親和性を示す。
【0200】
1組目の水性ゲル(実施例65〜69)を別々に調製した。各ゲルは、実施例1の下記ASAP、すなわち、ポリマーH(実施例65A〜I)、ポリマーY(実施例66A〜I)、ポリマーZ(実施例67A〜I)、ポリマーAT(実施例68A〜L)およびポリマーAU(実施例69A〜I)のいずれか1つと、下記表35〜39に記載の量の下記表35〜39に記載のカルボマーポリマーまたは疎水的に改質されたカルボマーのいずれかとを含有していた。カルボマーというINCI名称を有する使用した市販の増粘剤製品は、オハイオ州クリープランドのノベオン社から販売されている慣用のカルボマーポリマーであるCARBOPOL(登録商標) 980ポリマーおよび疎水的に改質されたカルボマーポリマーであるCARBOPOL(登録商標)Ultrez21ポリマーであった。使用した他の市販の疎水的に改質されたカルボマーポリマーは、ノベオン社から販売されているINCI名称がアクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマーであるCARBOPOL(登録商標)ETD2020ポリマーおよび3V Inc.社から販売されているINCI名称がアクリレート/ビニルイソデカノエートであるSTABYLEN(登録商標)30であった。
【0201】
前記水性ゲルは、選択した市販の高分子増粘剤を総含水量の一部に分散させ、得られた分散液をAMP(95%)で約6〜6.5の範囲のpHにまで中和した後、必要とされる選択された量の実施例1のASAPの水性エマルジョンを添加し、そして必要に応じて含水量とpHを調節して前記pHまたは透明度を維持することによって調製した。前記ゲルのpH、%透明度および粘度(24時間)を下記表35〜39に示す。
【0202】
【表38】

【0203】
【表39】

【0204】
【表40】

【0205】
【表41】

【0206】
【表42】

【0207】
選択した市販の増粘剤を水に分散させた後、選択したASAPを添加し、そして得られた混合物をAMP(95%)で約6〜6.5のpHにまで中和した以外は、上記方法に従って前記各ASAPを含有する2組目の水性ゲルを調製した。この2組目の水性ゲルについて得られた%透明度および24時間粘度の結果は、前記1組目の水性ゲルのうちの対応するASAP含有ゲルの結果と実質的にほぼ同じであった。
得られた結果は、本発明のASAPは、粘度を犠牲にすることなく、水性ゲル中において慣用のカルボマー増粘剤または改質カルボマー増粘剤と組み合わせて用いることができることを示している。
比較のために、ASAPは用いずにAMPで中和した市販のポリマーのみを用いた水性ゲルで得られた粘度を下記表40に示す。
【0208】
【表43】

【0209】
実施例70 水性ゲル
本実施例は、実施例1のASAPであるポリマーATを市販の疎水的に改質されたカルボマーポリマーであるCARBOPOL(登録商標)Ultrez21(オハイオ州クリープランドのノベオン社)と組み合わせて用いることによって、そのような市販のポリマーを用いて生成されたゲルに関する望ましい美的特性およびゲル粘着製品特性は維持したままで粘度を予想以上に高くすることができることを示す。
下記表41に示される各ポリマーを様々な量で含有する水性ゲルを調製した。前記ゲルは、市販のポリマーを水に添加し、空気が伴入しないように気を付けながら約15分間攪拌混合することによって予備分散させ、そして得られた混合物を約30分間攪拌せずに放置してポリマー分散液を得ることによって調製した。その後、必要量のポリマーATエマルジョンを前記ポリマー分散液と混ぜ合わせ、得られたポリマー混合物に十分なAMP(95%)を添加してpHを約6.4〜6.8の範囲に調整することによってゲルを形成した。
【0210】
組成物の重量に基づいて約1.25活性重量%(実施例70A〜F)または約1活性重量%(実施例70G〜K)の総ポリマー含有量を有する2組のゲルを調製した。粘度はA法によって測定した。ゲル粘着性は、3本の指をゲルに浸して少量のゲルをすくい取り、指に付着したゲルの緩衝性を観察することによって主観的に評価した。「緩衝」という用語は、一般に、ゲルの硬さ、および、少量のゲルが指に付着してしっかりとした尖り(すなわち尖ったゲル)を保てる能力を意味する。ゲル粘着性は、観察された緩衝性に基づいて、尖りがはっきりとしていて維持されていた場合を「優良」、尖りが中位で維持されていた場合を「非常に良好」、尖りが中位〜微小であった場合を「良好」、尖りが微小であった場合を「不十分」、および尖りが無く、滑らかであった場合を「不良」というように主観的に評価した。ゲル粘着性は、利用者がジャーのごとき容器から物理的にゲルを取り出したとき、または、肌または毛髪に付けるためにゲルをチューブから指の上に絞り出すときに目にする官能製品特性である。粘度およびゲル粘着性の評価の結果を下記表41に示す。
【0211】
【表44】

【0212】
前記結果は、総ポリマー含有量が約1.25活性重量%である場合、ASAP:市販ポリマーの重量比が約3:2(実施例70C)、約2:3(実施例70D)および約1:4(実施例70E)のときに予想以上の粘度の増加が得られたことを示している。総ポリマー含有量が約1活性重量%である場合、ASAP:市販ポリマーの重量比が約1:3(実施例70J)のときに予想以上の粘度の増加が得られた。
【0213】
実施例70B〜Eおよび実施例70H〜Jのゲル粘着性は良好〜優良であると判断された。これはASAPの市販ポリマーとの親和性を示している。
驚くべきことに、アルカリ膨潤性ASAPをカルボマーポリマーまたは疎水的に改質されたカルボマーポリマーのごときアニオン性ポリマー増粘剤と併用することによって、同じ濃度での個々のポリマーの粘度の合計よりも予想外に高い粘度が得られることが分かった。
前記実施例から、本発明のポリマーは、様々な異なる水性組成物および水性アルコール組成物に用いることができることが分かる。前記考察および報告された研究は本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明の精神と範囲内の他の変形体も可能であり、当業者らに容易に理解されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中、pHが4以下、フリーラジカル開始剤の存在下、および30〜95℃の範囲の反応温度で、モノマー混合物を乳化重合することを含む結合性ポリマーの製造法であって、前記モノマー混合物は、
(a)少なくとも1種の酸性ビニルモノマーまたはその塩と、
(b)少なくとも1種の非イオン性ビニルモノマーと、
(c)第1の疎水性末端基を有する第1の結合性モノマーと、
(d)第2の疎水性末端基を有する第2の結合性モノマー、半疎水性モノマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、そして
任意に、
(e)架橋性モノマー、連鎖移動剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含んでなり、
(i)ただし、モノマー(d)が第2の結合性モノマーである場合、結合性モノマー(c)の第1の疎水性末端基および結合性モノマー(d)の第2の疎水性末端基は、それぞれ独立して、同じまたは異なる下記Rで定義される炭化水素類から選択され、そして前記第1および第2の疎水性末端基が同じ炭化水素類から選択される場合、前記疎水性末端基の分子式の炭素数の差は少なくとも8であり、
(ii)第1および第2の結合性モノマーは下記式(III)から選ばれる少なくとも一種のモノマーであり、
【化1】

式中、Rは、それぞれ独立して、H、メチル、−C(O)OHまたは−C(O)ORであり、RはC〜C30アルキルであり、Aは−CHC(O)O−、−C(O)O−、−O−、−CHO−、−NHC(O)NH−、−C(O)NH−、−Ar−(CE−NHC(O)O−、−Ar−(CE−NHC(O)NH−または−CHCHNHC(O)−であり、Arは2価のアリールであり、EはHまたはメチルであり、zは0または1であり、kは0〜30の範囲の整数であり、mは0または1であるが、ただしkが0のときmは0であり、kが1〜30の範囲のときmは1であり、(R−O)はポリオキシアルキレンであり、前記ポリオキシアルキレンはホモポリマー、ランダムコポリマーまたはC〜Cオキシアルキレン単位のブロックコポリマーであり、RはC、CまたはCであり、nは5〜250の範囲の整数であり、Yは−RO−、−RNH−、−C(O)−、−C(O)NH−、−RNHC(O)NH−または−C(O)NHC(O)−であり、RはC〜C40直鎖アルキル、C〜C40分岐鎖アルキル、C〜C40炭素環式アルキル、C〜C40アルキル置換フェニル、アリール置換C〜C40アルキルおよびC〜C80錯エステルからなる群から選択される置換または非置換アルキルであり、そして前記Rで表されるアルキル基は、ヒドロキシル基、アルコキシル基およびハロゲン基からなる群から選択される1種以上の置換基を任意に含んでなる、
(iii)該半疎水性モノマーは、下記式(IV)および(V)からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、
【化2】

式中、Rは、それぞれ独立して、H、C〜C30アルキル、−C(O)OHまたは−C(O)ORであり、RはC〜C30アルキルであり、Aは、−O−、−CHO−、−NHC(O)NH−、−C(O)NH−、−Ar−(CE−NHC(O)O−、−Ar−(CE−NHC(O)NH−または−CHCHNHC(O)−であり、Arは2価のアリールであり、EはHまたはメチルであり、zは0または1であり、pは0〜30の範囲の整数であり、rは0または1であるが、ただしpが0のときrは0であり、pが1〜30の範囲のときrは1であり、(R−O)はポリオキシアルキレンであり、前記ポリオキシアルキレンはホモポリマー、ランダムコポリマーまたはC〜Cオキシアルキレン単位のブロックコポリマーであり、RはC、CまたはCであり、vは5〜250の範囲の整数であり、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、そしてDはC〜C30不飽和アルキルまたはカルボキシ置換C〜C30不飽和アルキルである、
ことを特徴とする前記製造法。
【請求項2】
前記モノマー混合物が前記モノマー混合物の総重量に基づいて、
10〜75重量%の(a)から選ばれる少なくとも1種のモノマー、
10〜90重量%の(b)から選ばれる少なくとも1種のモノマー、
0.1〜25重量%の前記モノマー(c)、
0.1〜25重量%の(d)から選ばれる少なくとも1種のモノマー、および、任意に、上限20重量%の(e)から選ばれる成分、
を含んでなる請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
前記モノマー混合物が前記モノマー混合物の総重量に基づいて、
30〜75重量%の(a)から選ばれる少なくとも1種のモノマー、
25重量%以上60重量%以下の(b)から選ばれる少なくとも1種のモノマー、
0.5〜20重量%の前記モノマー(c)、
0.5〜20重量%の(d)から選ばれる少なくとも1種のモノマー、および、任意に、上限20重量%の(e)から選ばれる架橋モノマー、
を含んでなる請求項1に記載の製造法。
【請求項4】
前記モノマー混合物が前記モノマー混合物の総重量に基づいて、
10〜30重量%の(a)から選ばれる少なくとも1種のモノマー、
60重量%超の(b)から選ばれる少なくとも1種のモノマー、
0.5〜5重量%の前記モノマー(c)、
0.5〜5重量%の(d)から選ばれる少なくとも1種の半疎水性モノマー、および、0.5〜5重量%の(e)から選ばれる連鎖移動剤、
を含んでなる請求項1に記載の製造法。
【請求項5】
前記酸性ビニルモノマーは、カルボン酸含有ビニルモノマー、スルホン酸含有ビニルモノマー、ホスホン酸含有ビニルモノマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項6】
前記酸性ビニルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、またはこれらの組み合わせである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項7】
前記塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキル置換アンモニウム塩、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項8】
前記非イオン性ビニルモノマーは、下記式(I)または(II)
(I) CH=C(X)Z
(II) CH=CH−OC(O)R
式中、XはHまたはメチルであり、Zは−C(O)OR、−C(O)NH、−C(O)NHR、−C(O)N(R、−C、−COR、−CCl、−CN、−NHC(O)CH、−NHC(O)H、N−(2−ピロリドニル)、N−カプロラクタミル、−C(O)NHC(CH、−C(O)NHCHCH−N−エチレンウレア、−SiR、−C(O)O(CHSiR、−C(O)NH(CHSiRまたは−(CHSiRであり、xは1〜6の範囲の整数であり、Rはそれぞれ独立にC〜C18アルキルであり、そしてRはそれぞれ独立にC〜C30アルキル、ヒドロキシ置換C〜C30アルキルまたはハロゲン置換C〜C30アルキルである、
のいずれかを有する化合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項9】
前記非イオン性ビニルモノマーは、アクリル酸のC〜Cエステル、メタクリル酸のC〜Cエステル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項10】
前記非イオン性ビニルモノマーは、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項11】
前記非イオン性ビニルモノマーは、それぞれ重量比で少なくとも2:1であるエチルアクリレートとメチルメタクリレートの組み合わせからなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項12】
前記第1および第2の結合性モノマーは、それぞれ、重合性不飽和末端基、C〜C40アルキル疎水性末端基、および前記不飽和末端基と前記疎水性末端基との間に配置され、かつ、これらの基と共有結合しているポリオキシアルキレン基を含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項13】
前記ポリオキシアルキレン基は、ホモポリマー、ランダムコポリマー、または5〜250個のC〜Cオキシアルキレン単位を含んでなるブロックコポリマーである、請求項12に記載の製造法。
【請求項14】
モノマー(d)は第2の結合性モノマーであり、そして前記第1の結合性モノマー(c)および前記第2の結合性モノマー(d)は、それぞれ、C〜C40直鎖アルキル、C〜C40分岐鎖アルキル、C〜C40炭素環式アルキル、C〜C40アルキル置換フェニル、アリール置換C〜C40アルキルおよびC〜C80錯エステルからなる炭化水素類の群から独立して選択される疎水性末端基を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項15】
モノマー(c)および(d)がC〜C40直鎖アルキル基を含んでなり、および前記第1および第2の疎水性末端基の分子式の炭素数の差は少なくとも8である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項16】
前記第1および第2の疎水性末端基の分子式の炭素数の差は少なくとも10である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項17】
前記モノマー混合物が少なくとも1種の半疎水性モノマーを含んでなる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項18】
前記ポリオキシアルキレン基は、ホモポリマー、ランダムコポリマー、または5〜250個のC〜Cオキシアルキレン単位を含んでなるブロックコポリマーである、請求項17に記載の製造法。
【請求項19】
前記モノマー混合物は、下記化学式
CH=CH−O−(CH−O−(CO)−(CO)−H
または
CH=CH−CH−O−(CO)−(CO)−H
式中、aは2、3または4であり、bは1〜10の範囲の整数であり、cは5〜50の範囲の整数であり、dは1〜10の範囲の整数であり、そしてeは5〜50の範囲の整数である、
のいずれかを有する半疎水性モノマーを含んでなる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項20】
前記モノマー混合物は少なくとも1種の架橋性モノマーを含有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項21】
前記モノマー混合物は少なくとも1種の架橋性モノマーを0.1〜2重量%含有する、請求項20に記載の製造法。
【請求項22】
前記架橋性モノマーは、少なくとも2つのアクリレートエステル基を有するポリオールのアクリレートエステル、少なくとも2つのメタクリレートエステル基を有するポリオールのメタクリレートエステル、またはこれらの組み合わせである、請求項21に記載の製造法。
【請求項23】
前記モノマー混合物は少なくとも1種の連鎖移動剤を含有する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項24】
前記モノマー混合物は少なくとも1種の連鎖移動剤を0.1〜10重量%含有する、請求項23に記載の製造法。
【請求項25】
前記連鎖移動剤は、チオ化合物、ジスルフィド化合物、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ハロアルキル化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の製造法。
【請求項26】
前記乳化重合が、乳化しうる量のアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、またはこれらの組み合わせからなる乳化剤の存在下で行われる請求項1〜25のいずれか一項に記載の製造法。

【公開番号】特開2009−57572(P2009−57572A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282963(P2008−282963)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【分割の表示】特願2003−562165(P2003−562165)の分割
【原出願日】平成15年1月14日(2003.1.14)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】