説明

ポリマーを安定化するための組成物及び方法

【課題】ポリ(アクリル酸類)のような、ポリマー性生体粘着剤及び増粘剤の分解速度を減少させる、組成物及び方法の提供。
【解決手段】強力かつ安定なキレート化剤、好適にはジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)のような有機リン化合物の少なくとも1種を含む組成物。このキレート化剤は、金属イオンの痕跡量と錯体化し、それにより遊離の金属イオン濃度を減少させる、ポリマーの分解速度を減少させる。これらの生物適合性組成物は貯蔵寿命が改善されており、眼科領域で特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く、ポリマーを安定化するための組成物及び方法に関する。好適な実施態様において、本発明は、眼科的組成物での生体粘着剤及び増粘剤の安定化に関する。
【0002】
関連技術の記載
水溶性及び水膨潤性(すなわち、親水性であるが、不溶性)のポリマー性材料は、生体粘着剤及び増粘剤として有用であるとして知られている。例えば、ポリ(アクリル酸類)は、粘度を増強するための眼科溶液又は混合物において用いられ、それにより眼の中に止まる時間を延長させる。商業的に入手しうる増粘剤の例は、B.F.Goodrichから入手しうるNOVEONTMAA−1樹脂類(ポリカルボフィル)である。
【0003】
典型的には、ポリマー性の増粘剤及び生体粘着剤は、延長された貯蔵期間の間に、分解するか、又はそうでなければ変化する。増粘剤の分解は、最後にはその組成物がもはや十分に効果があると認められない点まで組成物の粘度を減少させる。したがって、生体粘着剤及び増粘剤を含む組成物、最も顕著には眼科的組成物の貯蔵寿命の問題が存在する。したがって、生体粘着剤及び増粘剤の分解を減少させ、それらのポリマー性材料を含む組成物の貯蔵寿命を増大させる必要がある。
【0004】
本発明の要約
本発明の目的は、ポリマー性組成物を安定化するための方法を提供することである。
本発明の別の目的は、ポリマー性の生体粘着剤及び増粘剤の分解速度を減少させる方法を提供することである。
【0005】
本発明の更なる目的は、ポリマー性成分を含む眼科的組成物の貯蔵寿命を増大させる方法を提供することである。
【0006】
本発明の実施態様の一つは、安定化された組成物であり、それは、生体粘着剤及び増粘剤よりなる群から選択されるポリマーの少なくとも1種、及び遊離の触媒金属イオンの痕跡量と錯体化することのできる強力なキレート化剤(例えば、ホスホン酸−含有キレート化剤)の少なくとも1種を含む。このキレート化剤は、金属イオンの痕跡量と錯体化し、それにより遊離の金属イオン濃度を減少させると考えられている。遊離の金属イオン濃度の減少は、ポリマーの分解速度を減少させる。眼科領域で特に有用であるこの組成物は、増大した貯蔵寿命を示す。
【0007】
本発明の別の実施態様は、ポリマー性組成物を安定化する方法である。この方法は、生体粘着剤及び増粘剤よりなる群から選択されるポリマーを含む、眼科的に適合性の組成物を提供し、強力な(例えば、ホスホン酸含有)キレート化剤を組成物に添加し、そしてキレート化剤を組成物中の遊離の触媒金属イオンと錯体化させることを含む。この組成物は、強力なキレート化剤を含まない組成物の分解速度より小さいポリマー分解速度を示す。したがって、得られたポリマー性組成物は、貯蔵寿命が改善されている。
【0008】
本発明の更に別の実施態様は、ポリマー性組成物を安定化するキレート化剤を含むホスホン酸の使用であり、そこではポリマーは、ポリ(アクリル酸類)、アクリル酸塩(又はアクリラート)コポリマー類、架橋されたポリアクリル酸類、多糖類、及びそれらの混合物から選択される。
【0009】
本発明のまた別の実施態様は、実質的なポリマーの分解を室温で1年に亘る貯蔵を可能にする量よりも少ない遊離金属イオン濃度を有するポリマー性組成物である。
【0010】
好適な実施態様の記載
本発明の組成物は、生体粘着剤又は増粘剤として作用するポリマー性材料、及び安定剤を含む。この組成物は、活性剤、賦形剤、相溶化剤、美的着色剤などを含む数多くの他の成分を含むことができる。組成物の好適な群は、眼科的に許容しうるそれら、すなわち眼、眼の組織又は周囲の流体と接触したときに実質的な刺激や損害を与えないそれらである。好適な眼科的組成物は水性のそれらである。
【0011】
本発明の発明的組成物及び方法は、生成物の品質の改善及び長期の貯蔵期間での安定化を提供している。溶液及びスラリー中の金属イオン(例えば、Fe、Cu、Ca、Mg、遷移金属)の痕跡量は、生体粘着性及び増粘性ポリマーの分解速度を触媒的に増大させると考えられている。生体粘着性及び増粘性ポリマーを触媒的に分解する金属イオンは、ここで、「触媒的金属イオン」とされている。本発明の強力な安定なキレート化剤は、周囲の金属イオンと錯体化し、それによりポリマーを崩壊させやすい遊離の金属イオンを減少させると考えられている。したがって、この強力かつ安定なキレート化剤は、ポリマーの組成物の粘度を時間により減少させる、崩壊、分解又は他の不活性化の速度を減少させる。結果として、組成物の貯蔵寿命及び長期の貯蔵後の粘度品質は、本組成物及び方法により改善されている。
【0012】
本組成物のこの改善された安定性と貯蔵寿命を説明するために、本発明の読者の理解を促進するための2種の理論が提案されている。しかしながら、本発明は、この発明が作用する方法の理論的説明により限定されない。第一に、EDTAよりも遊離イオンと錯体化する能力が大きいキレート化剤の使用は、組成物の安定性と貯蔵寿命を改善していると考えられている。金属イオンに対するキレート化剤の誘引の強さでの増大は、錯体が解離して増大した遊離の金属イオン濃度を与える確率を減少させている。第二に、EDTAよりも化学的に安定であるキレート化剤の使用は、組成物の安定性と貯蔵寿命を改善をしていると考えられている。もし、錯体が、例えば酸化により分解するならば、金属イオンは、錯体から離れ、溶液に帰り、そこで、ポリマー分解速度を増大させるだろう。したがって、本発明の好適なキレート化剤は、EDTAよりも大きな金属イオン錯体化力を持ち、EDTAより更に安定である。
【0013】
本発明の好適な安定剤類は、ホスホン酸又はホスホン酸エステル基を有するキレート化剤の群である。キレート化剤の好適な群は、有機ホスホン酸エステル類、特に、アミノトリ(低級アルキレンホスホン酸類)である。そのようなキレート化剤の多くは、Monsanto Company, St. Louis, Missouri から商業的に入手でき、商標DEQUESTの名称で販売されている。そのような化合物の例は、制限なしに、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸);ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);及びアミノトリメチレンホスホナート類を含む。特に好適なキレート化剤は、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)であり、商標DEQUEST2060の名称で販売されている。
【0014】
キレート化剤は、典型的には組成物の全重量に基づいて、約0.00001〜0.5重量%の量、より好適には約0.0001〜0.1重量%の量で存在している。
【0015】
本発明の生体粘着性又は増粘性ポリマーは、約30日〜約1年の期間にわたり粘度減少(例えば、崩壊によるか、又は遊離金属イオンにより触媒される分解による)に敏感であるポリマーの広い範囲から選択することができる。ポリマーの好適な群は、架橋され、かつカルボキシ−及び/又はヒドロキシ−官能基を有するものである。これらの生体粘着剤又は増粘剤は、ここで制限なしに、ポリ(アクリル酸類)、アクリル酸塩(又はアクリラート)コポリマー類、架橋されたポリアクリル酸類など及びそれらの混合物を含む。商業的に入手しうるそのようなポリマー性材料の例は、NOVEON(ポリカルボフィル)樹脂、例えば、Noveon AA1(B. F. Goodrich, Cleveland, Ohio)であり、それは水不溶性ポリ(アクリル酸類)である。他の例は、CARBOPOL(商標)樹脂、例えばCarbopol(商標)940(B. F. Goodrich)であり、それは水溶性ポリ(アクリル酸類)である。
【0016】
本発明の他の生体粘着性又は増粘性ポリマーは、例えばセルロースのような多糖類又はヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース若しくはヒドロキシプロピルセルロースのようなその誘導体;デキストラン、ヒアルロン酸又はキトサンのような他の多糖類及びそれらの混合物から選択することができる。
【0017】
本発明の組成物中に存在する生体粘着性又は増粘性ポリマーの量は、典型的にはその目的に依存している。本発明の組成物は、特に水性であり、低から高までの広い範囲の粘度を示す。したがって、存在する生体粘着性又は増粘性ポリマーの量は、組成物の全重量に基づいて、好適には約0.01〜20.0重量%の範囲、より好適には0.05〜10重量%の範囲、特に約0.1〜2.0重量%の範囲である。
【0018】
一つの実施態様において、本組成物は、張度増強剤を含む眼科的組成物である。この張度増強剤は、好適にはアルカリ金属塩、特に塩化ナトリウムである。この張度増強剤は、眼科的に適合しうる組成物を達成するに十分である量である。この張度増強剤は、約0〜1.2重量%、より好適には約0.6〜1.2重量%、より特に約0.9重量%の量で存在することができる。
【0019】
眼科的組成物は、眼科的送達剤を含むことができる。本発明により有用である眼科的送達剤は、有用な、薬剤類、診断薬類、ビタミン類、栄養剤類、潤滑剤類などを含む眼科的に許容しうる薬剤の広い範囲から選択することができる。眼科的送達剤は、ここで制限なしに、3H−チミジン、塩化アセチルコリン、アシクロビル、アドレナリン、アメトカイン、アミノカプロン酸、リン酸アンタゾリン、アラキドン酸、アトロピン、塩酸ベノキシン、塩酸ベタキソロール、ブピバカイン、カルバコール、カルテオロール、クロラムフェニコール、塩酸クロルテトラサイクリン、キマトリプシン、クロニジン、コカイン、コリナンチン、クロモリンナトリウム、シクロペントラート、臭化デメカリウム、デキサメタゾン、ジブトリン、ジクロルフェナミド、ジクロフェナック、塩酸ジピベフリン、ヨウ化エコドチオファート、エフェドリン、重酒石酸エピネフリン、エリスロマイシン、エタムブトール、エチドカイン、オイカトロピン、フルオロメタロン、フルオロメトロン、硫酸ゲンタマイシン、グラミシジン、H−チミジン、臭化水素酸ホマトロピン、ヒアルロン酸、ヒドロコルチゾン、イドクスリジン、インドメタシン、イノシトール三リン酸、リン酸イノシトール類、イソフルロファート、イソソルビド、ラチェシン、レボブノロール、レボカバスチン、リドカイン、リグノカイン、メドリゾン、メピバカイン、メタコリン、メタゾラミド、塩酸ナファゾリン、ナタマイシン、硫酸ネオマイシン、ネオスチグミン、ノルアドレナリン、オフロキサシン、オキシブプロカイン、オキシメタゾリン、オキシフェノニウム、マレイン酸フェニラミン、塩酸フェニレフリン、リン酸ホスファチジルイノシトール類、フィソスチグミン、塩酸ピロカルピン、ポリヘキサメチレンビグアニジド類、硫酸ポリミキシンB類、リン酸プレドニゾロンナトリウム、塩酸プロパラカイン、プロキシメタカイン、マレイン酸ピリラミン、臭化水素酸スコポラミン、ソルビニル、スルファセタミド、スルフィソキサゾールジスオラミン、タモキシフェン、塩酸テトラカイン、テトラサイクリン、塩酸テトラヒドロゾリン、マレイン酸チモロール及びチモロールヘミヒドラート、トリフルリジン、トロピカミド、ビダラビン、他の眼科的に許容しうるそれらの塩、並びにそれらの混合物を含む。
【0020】
この眼科的送達薬剤の理想的な濃度は、色々な要因に依存するが、その濃度は、一般に0.001〜10重量%の範囲に一致する。好適には、眼科的送達薬剤は、約0.01〜2.0重量%の量で存在する。更に好適には、眼科的送達薬剤の濃度は、約0.1〜1.5重量%である。
【0021】
眼科的組成物は、例えばデキストラン、セルロース又は例えばヒドロキシセルロース若しくはヒドロキシプロピルセルロースのようなその誘導体のような緩和剤を含むことができる。好適なグルコースバイオポリマーは、デキストランである。好適には、このグルコースバイオポリマーは、約0.05〜5.0重量%の量で存在している。
【0022】
眼科的組成物は、例えばポリアルキレングリコールのような他の緩和剤を含むことができる。ポリアルキレングリコールは、好適にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はその混合物である。好適には、ポリアルキレングリコールは、約0.1〜2.0重量%の量で存在する。
【0023】
したがって、特に好適な実施例において、眼科的組成物は、
(a)生体粘着性又は増粘性ポリマー約0.01〜2.0重量%;
(b)少なくとも1種のホスホン酸基を有するキレート化剤約0.0001〜0.1重量%;
(c)ポリ(アルキレングリコール)約0.1〜2.0重量%;
(d)張度増強剤約0〜1.2重量%;
(e)グルコースバイオポリマー約0.05〜5.0重量%;
(f)送達剤約0.001〜10重量%;及び
(g)水を含む。
【0024】
ポリマー性組成物を安定化するための本方法は、一般に生体粘着性又は増粘性ポリマーを含む眼科的に適合しうる組成物を提供し;この組成物に、強力かつ安定なキレート化剤の少なくとも1種、好適にはホスホン酸の少なくとも1種を含むキレート化剤を添加し;次いでこのキレート化剤を組成物中に存在する遊離の触媒金属イオン(この遊離の金属イオンはポリマーを分解することができ、すなわち、「触媒的な金属イオン」である)と錯体化させることを含む。この方法は、金属イオン錯体及び遊離の触媒的金属イオンの痕跡量を含むポリマーの分解速度より小さい分解速度を有するポリマー処方物を形成させると考えられている。
【0025】
成分を混合する順序は、重要とは思われない。したがって、眼科的組成物のそれぞれの成分は、水を含む容器に別々にかつ連続して加えるか、又は全部の成分を同時に加えることができる。好適には、この成分は、次ぎの成分の添加の前にそれぞれの成分が分散又は溶解しているように別々に加えられる。しかしながら、本安定化方法は、成分の添加又は接触の順序に制限はない。
【0026】
したがって、本発明の別の実施態様は、特に安定化された眼科的組成物を製造するための方法であって、主請求項による組成物の成分は、別々にかつ連続的に水を含む容器に加えられるか、又は全部の成分が同時に加えられる方法に関する。好適な方法において、この成分は、次ぎの成分の添加の前にそれぞれの成分が分散又は溶解しているように別々に加えられる。
【0027】
アルキレンは、18個及び18個までの炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキレンを意味する。デシレン、ウンデシレン及びドデシレンは、例である。好適なアルキレンは、低級アルキレンである。
【0028】
用語「低級」は、8個までの炭素原子、好適には6個までの炭素原子、更に好適には4個までの炭素原子を含むと定義された基を意味する。
【0029】
したがって、本発明において、低級アルキレンは、8個及び8個までの炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキレン、好適には6個及び6個までの炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキレン、特に4個及び4個までの炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキレンを意味する。メチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,5−ペンチレン、1,6−ヘキシレン、2,5−ヘキシレン、1,7−ヘプチレン又は1,8−オクチレンは、例である。
【0030】
前述の開示は、当業者に本発明の実施を可能にするであろう。読者が特定の実施態様及びその利点をよりよく理解できるように、以下の実施例を記載する。
【0031】
実施例I
水中で、NOVEON AA1(BFGoodrich)、塩化ナトリウム、PEG400(400分子量ポリエチレングリコール、Fisher Scientific から入手しうる)、及びDextran 70(Spectrum Chem. Mfg. Corp., New Brunswick, NJ)を、以下の重量%になる量で混合して組成物を調製した:
0.625% NOVEON AA1
0.6% NaCl
0.2% PEG400
0.1% Dextran
十分量の水
希釈水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6.8に調整した。組成物の粘度は最初及び約13ヶ月間約45℃の温度に曝した後に測定した。安定化試験を促進するために上昇した温度を用いた。結果を表1に示した。
【0032】
比較実施例II
第2の組成物を、EDTA二ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸塩)を加えて、実施例1のように成分を混合し、pHを調整して、調製した。第2の混合物は、以下の成分を有していた:
0.625% NOVEON AA1
0.6% NaCl
0.2% PEG400
0.1% Dextran70
0.025% EDTA二ナトリウム
十分量の水
組成物を約6.8のpHに調整した。組成物の粘度は最初及び約13ヶ月間約45℃の温度に曝した後に測定した。結果を表1に示した。
【0033】
比較実施例III
第2の組成物を、DEQUEST(商標)2060(固形物含量50%、Monsanto Company, St. Loius, MO)を加えて、実施例1のように成分を混合し、pHを調整して、調製した。第3の混合物は、以下の成分を有していた:
0.625% NOVEON AA1
0.6% NaCl
0.2% PEG400
0.006% DEQUEST(商標)2060
0.1% Dextran70
十分量の水
組成物を約6.8のpHに調整した。組成物の粘度は最初及び約13ヶ月間約45℃の温度に曝した後に測定した。結果を表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例IV
第4の混合物は、実施例1のように、成分を混合し、pHを調整した。この第4の混合物は、以下の水性組成物を有し、NOVEONの量がわずかに異なる以外は、実施例1の組成物と実質的に同じであった。
【0036】
0.570% NOVEON AA1
0.6% NaCl
0.2% PEG400
0.1% Dextran70
十分量の水
組成物を約7のpHに調整した。組成物の粘度は最初及び約7日間約100℃の温度に曝した後に測定した。結果を表2に示した。
【0037】
比較実施例V
第5の組成物を、DEQUEST(商標)2060(固形物含量50%、Monsanto Company, St. Loius, MO)を加えて、実施例1のように成分を混合し、pHを調整して、調製した。第5の混合物は、以下の成分を有していた:
0.570% NOVEON AA1
0.6% NaCl
0.2% PEG400
0.1% Dextran70
0.006% DEQUEST(商標)2060
十分量の水
組成物を約7のpHに調整した。組成物の粘度は最初次いで約7日間約100℃の温度に曝した後に測定した。結果を表2に示した。
【0038】
【表2】

【0039】
結果の議論
実施例I及びIVは、ポリ(アクリル酸)混合物の粘度が、時間により実質的に減少したことを示している。実施例IIは、EDTA二ナトリウムが、ポリマーの安定化に重要な影響を持たないことを示している。
【0040】
しかしながら、驚くべきことに、実施例III及びVは、ホスホン酸基を含む安定剤で安定化されたポリ(アクリル酸)混合物が、促進試験の間、顕著な減少した粘度を示さなかったことを示している。更に、DEQUEST(商標)2060安定剤濃度は、EDTA二ナトリウム安定剤濃度の約12%少ない。
【0041】
本発明は、読者が不必要な実験なしに本発明を理解できるように、好適な実施例を参考として詳細に記載されている。しかしながら、当業者は、本発明の範囲と精神から逸脱することなく一定の範囲に改変、修飾することができる。更に、読者のこの文書の理解を助けるために、表題、見いだしなどが提供されており、本発明の範囲を限定して読まれるべきではない。したがって、この知的財産権は、以下の請求項及びその合理的な拡張によってのみ限定されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)生体粘着剤及び増粘剤よりなる群から選択されるポリマーの少なくとも1種;及び(b)強力かつ安定なキレート化剤の少なくとも1種を含む安定化組成物であって、
該キレート化剤が、遊離の触媒金属イオンと錯体化することができ、該キレート化剤が、EDTAよりも大きな金属イオン錯体化力を有し、かつ該キレート化剤が、EDTAよりも安定であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
該キレート化剤が、少なくとも1個のホスホン酸基を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該組成物が、眼科的に適合性である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
眼科的送達剤を更に含む、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
該眼科的送達剤が、眼科的に有益な、薬剤類、診断薬類、ビタミン類、栄養剤類、潤滑剤類及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
該眼科的送達剤が、3H−チミジン、塩化アセチルコリン、アシクロビル、アドレナリン、アメトカイン、アミノカプロン酸、リン酸アンタゾリン、アラキドン酸、アトロピン、塩酸ベノキシン、塩酸ベタキソロール、ブピバカイン、カルバコール、カルテオロール、クロラムフェニコール、塩酸クロルテトラサイクリン、キマトリプシン、クロニジン、コカイン、コリナンチン、クロモリンナトリウム、シクロペントラート、臭化デメカリウム、デキサメタゾン、ジブトリン、ジクロルフェナミド、ジクロフェナック、塩酸ジピベフリン、ヨウ化エコドチオファート、エフェドリン、重酒石酸エピネフリン、エリスロマイシン、エタムブトール、エチドカイン、オイカトロピン、フルオロメタロン、フルオロメトロン、硫酸ゲンタマイシン、グラミシジン、H−チミジン、臭化水素酸ホマトロピン、ヒアルロン酸、ヒドロコルチゾン、イドクスリジン、インドメタシン、イノシトール三リン酸、リン酸イノシトール類、イソフルロファート、イソソルビド、ラチェシン、レボブノロール、レボカバスチン、リドカイン、リグノカイン、メドリゾン、メピバカイン、メタコリン、メタゾラミド、塩酸ナファゾリン、ナタマイシン、硫酸ネオマイシン、ネオスチグミン、ノルアドレナリン、オフロキサシン、オキシブプロカイン、オキシメタゾリン、オキシフェノニウム、マレイン酸フェニラミン、塩酸フェニレフリン、リン酸ホスファチジルイノシトール類、フィソスチグミン、塩酸ピロカルピン、ポリヘキサメチレンビグアニジド類、硫酸ポリミキシンB類、リン酸プレドニゾロンナトリウム、塩酸プロパラカイン、プロキシメタカイン、マレイン酸ピリラミン、臭化水素酸スコポラミン、ソルビニル、スルファセタミド、スルフィソキサゾールジスオラミン、タモキシフェン、塩酸テトラカイン、テトラサイクリン、塩酸テトラヒドロゾリン、マレイン酸チモロール及びチモロールヘミヒドラート、トリフルリジン、トロピカミド、ビダラビン、他の眼科的に許容しうるそれらの塩、並びにそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
該ポリマーが、ポリ(アクリル酸類)、アクリル酸塩(又はアクリラート)コポリマー類、架橋されたポリアクリル酸類及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
該ポリマーが、ポリ(アクリル酸類)である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
該キレート化剤が、アミノトリ(低級アルキレンホスホン酸)である、請求項2記載の組成物。
【請求項10】
ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸);ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);アミノトリメチレンホスホナート類;及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
該キレート化剤が、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
(a)該ポリマー約0.1〜2.0重量%;
(b)該キレート化剤の約0.0001〜0.1重量%;及び
(c)水
を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
ポリ(アルキレングリコール)0.1〜2.0重量%を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
張度増強剤約0.6〜1.2重量%を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
該張度増強剤が、塩化ナトリウムである、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
グルコースバイオポリマー約0.05〜5.0重量%を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
該グルコースバイオポリマーが、デキストランである、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
(a)該ポリマー約0.01〜2.0重量%;
(b)該キレート化剤約0.0001〜0.1重量%;
(c)ポリ(アルキレングリコール)約0.1〜2.0重量%;
(d)張度増強剤約0〜1.2重量%;
(e)グルコースバイオポリマー約0.05〜5.0重量%;
(f)送達剤約0.001〜10重量%;及び
(g)水
を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
(a)ポリ(アクリル酸類)、アクリル酸塩(又はアクリラート)
コポリマー類、架橋されたポリアクリル酸類、及びそれらの混合物よりなる群から選択されるポリマー約0.01〜2.0重量%;
(b)有機リンキレート化剤約0.0001〜0.1重量%;
(c)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びその混合物よりなる群から選択されるポリ(アルキレングリコール)約0.1〜2.0重量%;
(d)眼科的に適合性のアルカリハロゲン化物である張度増強剤約0〜1.2重量%;
(e)グルコースバイオポリマー約0.05〜5.0重量%;
(f)送達剤約0.001〜10.0重量%;及び
(g)水
を含む、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
該有機リンキレート化剤が、アミノトリ(低級アルキレンホスホン酸)である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
ポリマー組成物を安定化するための方法であって、
(a)生体粘着剤及び増粘剤よりなる群から選択されるポリマーを含む、眼科的に適合しうる組成物を準備する工程;
(b)強力かつ安定なキレート化剤(該キレート化剤は、遊離の触媒金属イオンと錯体化することができ、該キレート化剤は、EDTAよりも大きな金属イオン錯体化力を有し、かつ該キレート化剤は、EDTAよりも安定である)の少なくとも1種を添加する工程;及び
(c)該キレート化剤を遊離の触媒金属イオンと錯体化させ、それにより該組成物中のポリマーが、錯体化していない組成物の分解速度より小さい分解速度を有する工程を含むことを特徴とす方法。
【請求項22】
該キレート化剤が、少なくとも1個のホスホン酸基を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
眼科的に有益な、薬剤類、診断薬類、ビタミン類、栄養剤類、潤滑剤類及びそれらの混合物よりなる群から選択される、眼科的送達剤を更に含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
該キレート化剤が、アミノトリ(低級アルキレンホスホン酸)である、請求項21記載の方法。
【請求項25】
該キレート化剤が、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸);ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);アミノトリメチレンホスホナート類及びそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
該キレート化剤が、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
該ポリマー組成物が、(a)該ポリマー約0.1〜2.0重量%;
(b)該キレート化剤約0.0001〜0.1重量%;及び
(c)水
を含む、請求項21記載の方法。
【請求項28】
該ポリマー組成物が、(a)該ポリマー約0.01〜2.0重量%;
(b)該キレート化剤約0.0001〜0.1重量%;
(c)ポリ(アルキレングリコール)約0.1〜2.0重量%;
(d)張度増強剤約0〜1.2重量%;
(e)グルコースバイオポリマー約0.05〜5.0重量%;
(f)送達剤約0.001〜10重量%;及び
(g)水
を含む、請求項21記載の方法。
【請求項29】
ポリマー組成物が、(a)ポリ(アクリル酸類)、アクリル酸塩(又はアクリラート)コポリマー類、架橋されたポリアクリル酸類、及びそれらの混合物よりなる群から選択されるポリマー約0.01〜2.0重量%;
(b)有機リンキレート化剤約0.0001〜0.1重量%;
(c)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びその混合物よりなる群から選択されるポリ(アルキレングリコール)約0.1〜2.0重量%;
(d)眼科的に適合性のアルカリハロゲン化物である張度増強剤約0〜1.2重量%;
(e)グルコースバイオポリマー約0.05〜5.0重量%;
(f)送達剤約0.001〜10.0重量%;及び
(g)水
を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
室温で1年に亘る貯蔵期間中に実質的なポリマーの分解をもたらす量未満で遊離の触媒金属イオン濃度を有する、眼科的に許容しうるポリマー性組成物。
【請求項31】
キレート化剤を含む、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
該キレート化剤が、有機リン化合物である、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
該有機リン化合物が、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)である、請求項32記載の組成物。
【請求項34】
該ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が、約0.0001〜0.1重量%の量で存在する、請求項33記載の組成物。

【公開番号】特開2012−153710(P2012−153710A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−88780(P2012−88780)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2008−72839(P2008−72839)の分割
【原出願日】平成8年6月12日(1996.6.12)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】