説明

ポリマーアロイ用相溶化剤、ポリマーアロイ及びポリマーアロイ調製用マスターバッチ

【課題】多種類のポリマーに対して相溶性を高めることができるポリマーアロイ用相溶化剤、それを用いたポリマーアロイ、及びポリマーアロイ用マスターバッチを提供する。
【解決手段】ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)と、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)とを、ポリマー(A)の配合割合がポリマー(B)の配合割合と同じか、より多くなるようにブレンドしてポリマーアロイを調製するための相溶化剤であって、層状チタン酸の層間に有機塩基性化合物を挿入することにより得られるナノシート化層状チタン酸からなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーアロイ用相溶化剤、ポリマーアロイおよびポリマーアロイ調製用マスターバッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の異種ポリマーを混合する、ポリマーアロイの技術が高分子の物性改善の手段として盛んに研究されている。ポリマーアロイの目的は、複数の異種ポリマーを混合することによって、各構成ポリマーの特徴を合わせ持ったポリマーを得ることである。このようなポリマーアロイは既存のポリマーによって構成されるため、ポリマーブレンドによって得られる新規ポリマーの性質が予想できること、新規ポリマーの開発に比べ、開発リスクが小さいことなどの利点から、自動車部品、電気・電子材料部品などの用途において、ポリマーアロイの開発が注目されている。
【0003】
しかしながら、混合の対象となるポリマー同士が溶け合わない非相溶の関係にある場合、単なる混合によっては分散に限界があり、改質の効果が得られない場合がある。そのような場合、相溶化剤を用いて両ポリマー相の分散を改善させることが知られている。相溶化剤に関しては数多くの報告がなされており、例えば、ポリアミドとポリフェニレンオキシドに、層状ケイ酸塩を添加することにより選択的に層状ケイ酸塩をポリアミド層に分散させることができ、高次構造を制御したポリマーアロイが製造できる旨開示されている(非特許文献1)。しかし、対象となるポリマーは、ポリアミド−ポリフェニレンオキシドのみであり、性質の異なる多種類のポリマーをポリマーアロイ化することは開示されていない。
【0004】
特許文献1〜3には、本発明の相溶化剤の原料として用いることができる層状チタン酸塩の製造方法が開示されている。
【非特許文献1】Y. Li and H. Shimizu; Polymer, 45, 7381-7388(2004)
【特許文献1】国際公開第99/11574号公報
【特許文献2】特許第3062497号公報
【特許文献3】国際公開第03/037797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、多種類のポリマーに対して相溶性を高めることができるポリマーアロイ用相溶化剤、それを用いたポリマーアロイ、およびポリマーアロイ用マスターバッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記現状を鑑み、優れた相溶化剤を見出すべく鋭意検討を重ねた結果、層状チタン酸の層間に有機塩基性化合物を挿入することによって得られるナノシート化層状チタン酸をポリマーアロイ用相溶化剤として用いることにより、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)と、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)とが優れた相溶性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明のポリマーアロイ用相溶化剤は、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)と、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)とを、ポリマー(A)の配合割合がポリマー(B)の配合割合と同じか、より多くなるようにブレンドしてポリマーアロイを調製するための相溶化剤であって、層状チタン酸の層間に有機塩基性化合物を挿入することにより得られるナノシート化層状チタン酸からなることを特徴としている。
【0008】
本発明の相溶化剤を用いることにより、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)と、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)とをブレンドしてポリマー同士の分散性に優れたポリマーアロイを調製することができる。
【0009】
本発明の相溶化剤は、層状チタン酸の層間に有機塩基性化合物を挿入することにより得られる、チタン酸の層状部分をナノシート化したナノシート化層状チタン酸である。層状チタン酸としては、チタン酸塩を酸または温水で処理して得られるものが挙げられる。
【0010】
層状チタン酸塩としては、一般式ATi{2−(Y+Z)}(式中、A及びMは互いに異なる1〜3価の金属を示し、BはTiの欠陥部位を示す。Xは0<X<1.0を満たす正の実数であり、Y及びZは0<Y+Z<1を満たす0または正の実数である)で表されるものを挙げることができる。具体的には、例えば、K0.5〜0.8Li0.27Ti1.733.85〜4で表されるものが挙げられる。
【0011】
本発明のポリマーアロイは、上記本発明のポリマーアロイ用相溶化剤を用い、ポリマー(A)と、ポリマー(B)とを、ポリマー(A)の配合割合がポリマー(B)の配合割合と同じか、より多くなるようにブレンドして得られることを特徴としている。ポリマー(B)としては、ポリマー(A)以外の種類のものであれば特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル、またはポリアミドがポリマーとして含有される場合、ブレンドされる他のポリマーに対し、配合割合が同じか多い場合、ポリマー(A)となり、配合割合が少ない場合、ポリマー(B)となる。従って、本発明のポリマーアロイには、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも2種類のポリマーをブレンドしたポリマーも含まれる。
【0012】
また、本発明のポリマーアロイは、3種類以上のポリマーをブレンドしたものであってもよい。
【0013】
本発明のポリマーアロイにおいて、ポリマーアロイ用相溶化剤は、0.1〜30重量%の範囲内で配合されていることが好ましい。
【0014】
本発明のポリマーアロイ調製用マスターバッチは、上記本発明のポリマーアロイを調製するためのマスターバッチであり、ポリマー(A)と、上記本発明のポリマーアロイ用相溶化剤とを混練して得られることを特徴としている。
【0015】
本発明のマスターバッチに、ポリマー(B)を混練することにより、本発明のポリマーアロイを容易に調製することができる。
【0016】
すなわち、本発明のポリマーアロイの製造方法は、上記本発明のマスターバッチと、ポリマー(B)とをブレンドすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多種類のポリマーに対して相溶性を高めることができるポリマーアロイ用相溶化剤、それを用いたポリマーアロイ、およびポリマーアロイ用マスターバッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)と、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)とを、ポリマー(A)の配合割合がポリマー(B)の配合割合と同じか、より多くなるようにブレンドしてポリマーアロイを調製するための相溶化剤であって、層状チタン酸の層間に有機塩基性化合物を挿入することにより得られるナノシート化層状チタン酸からなることを特徴とするポリマーアロイ用相溶化剤である。
【0019】
本発明のポリマーアロイ用相溶化剤は、層状チタン酸の層間に有機塩基性化合物を挿入することにより得られるナノシート化層状チタン酸であり、特に制限なく、公知のものを広く使用することができる。
【0020】
例えば、層状チタン酸塩を酸で処理し、次いで層間膨潤性作用のある有機塩基性化合物を作用させ、層間に有機塩基性化合物が挿入することで得られるナノシート化層状チタン酸を挙げることができる。
【0021】
層状チタン酸塩としては、例えば、特許文献1に開示の方法に従い、炭酸カリウムと炭酸リチウムと二酸化チタンをK/Li/Ti=3/1/6.5(モル比)で混合して摩砕し、800℃で焼成することにより得られる、K0.8Li0.27Ti1.73を挙げることができる。
【0022】
また、特許文献2に開示の方法に従い、アルカリ金属またはアルカリ金属のハロゲン化物もしくは硫酸塩をフラックスとし、フラックス/原料の重量比が0.1〜2.0となるように混合した混合物を700〜1200℃で焼成することにより得られる式A□Ti2−(y+z)(式中A及びMは互いに異なる1〜3価の金属、□はTiの欠陥部位を示す。xは0<x<1.0を満たす正の実数であり、y及びzはそれぞれ0<y+z<1.0を満たす0または正の実数である。)で表される層状チタン酸塩を挙げることができる。
【0023】
上記式におけるAは、価数1〜3価の金属であり、好ましくは、K、Rb、及びCsから選ばれる少なくとも一種である。Mは、金属Aとは異なる価数1〜3価の金属であり、好ましくは、Li、Mg、Zn、Cu、Fe、Al、Ga、Mn、及びNiから選ばれる少なくとも一種である。
【0024】
具体的な例としては、K0.80Li0.27Ti1.73、Rb0.75Ti1.75Li0.25、Cs0.70Li0.23Ti1.77、Ce0.700.18Ti1.83、Ce0.70Mg0.35Ti1.65、K0.8Mg0.4Ti1.6、K0.8Ni0.4Ti1.6、K0.8Zn0.4Ti1.6、K0.8Cu0.4Ti1.6、K0.8Fe0.8Ti1.2、K0.8Mn0.8Ti1.2、K0.76Li0.22Mg0.05Ti1.73、K0.67Li0.2Al0.07Ti1.73等を挙げることができる。
【0025】
また、特許文献3に開示された方法に従い、K0.8Li0.27Ti1.73を酸洗後、焼成して得られるK0.5〜0.7Li0.27Ti1.733.85〜3.95が挙げられる。
【0026】
層状チタン酸としては、例えば、前記層状チタン酸塩を酸処理し、交換可能な金属カチオンを水素イオンまたはヒドロニウムイオンで置換することにより得られるものを挙げることができる。酸処理に使用する酸は、特に限定されるものではなく、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などの鉱酸、あるいは有機酸でも良い。
【0027】
ナノシート化層状チタン酸としては、例えば、前記層状チタン酸に層間膨潤作用を有する有機塩基性化合物を作用させることにより得られるものを挙げることができる。
【0028】
層間膨潤作用を有する有機塩基性化合物としては、公知のものが適用でき、例えば、アミン系、アンモニウム系、リン系等を挙げることができる。例えば、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、2−エチルヘキシルアミン等の1級アミンとこれらの塩、ジペンチルアミン、ジオクチルアミン等の2級アミンとこれらの塩、トリオクチルアミン等の3級アミンとこれらの塩、ジステアリルジメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、アルキルメチルビスヒドロキシエチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩、ドデシルトリブチルフォスフォニウム、ヘキサデシルトリブチルフォスフォニウム、ドデシルトリフェニルフォスフォニウム等の4級ホスホニウム塩、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸とこれらの塩を挙げることができる。
【0029】
層間膨潤作用のある有機塩基性化合物を作用させる方法としては、酸処理または温水処理後の層状チタン酸を水系媒体に分散させた懸濁液に、撹拌下、塩基性化合物または塩基性化合物を水系媒体で希釈したものを加える方法を挙げることができる。また、塩基性化合物の水系溶液に、撹拌下、該層状チタン酸、またはその懸濁液を加える方法を挙げることができる。
【0030】
水系媒体または水系溶液とは、水、水に可溶な溶媒、または水と水に可溶な溶媒との混合溶媒、あるいはその溶液を意味する。
【0031】
水に可溶な溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、酢酸エチル、プロピレンカーボネート等のエステル類等を挙げることができる。
【0032】
塩基性化合物の添加量は、層状チタン酸塩のイオン交換容量の0.3〜10当量、好ましくは0.5〜2当量とするのがよい。ここで、イオン交換容量とは、交換可能な金属カチオン量であり、例えば層状チタン酸塩が一般式ATi2−(y+z)で表される場合、Aの価数をm、Mの価数をnとするときのmx+nyで表される値をいう。
【0033】
反応は通常、室温〜90℃で、30分〜24時間程度行う。反応後のスラリーを濾過後、水または水系溶媒で洗浄することにより過剰の有機塩基性化合物を除去し、80〜200℃、1〜12時間程度乾燥することにより、ナノシート化層状チタン酸を得ることができる。乾燥は減圧下、好ましくは10mmHg以下で行うことが好ましい。常圧で乾燥を行うとナノシート化層状チタン酸が着色を起こし、得られるポリマーアロイの外観を損なう虞がある。
【0034】
本発明で使用するポリフェニレンサルファイドとしては、式(1)で示される構成単位を主鎖に持つ重合体が挙げられる。
【0035】
【化1】

【0036】
(式中、Rは、炭素数6以下のアルキル基、アルコキシル基、フェニル基、カルボキシル基もしくはその金属塩、アミノ基、ニトロ基、およびフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子から選ばれる置換基であり、aは、0〜4の整数である。)
また、単重合体のほかに共重合体も用いることができる。例えば、その共重合体の構成単位としては、m−フェニレンサルファイド単位、o−フェニレンサルファイド単位、p,p’−ジフェニレンケトンサルファイド単位、p,p’−ジフェニレンスルホンサルファイド単位、p,p’−ビフェニレンサルファイド単位、p,p’−ジフェニレンメチレンサルファイド単位、p,p’−ジフェニレンクメニルサルファイド単位、ナチルサルファイド単位等を上げることができる。
【0037】
また、その分子構造は、線状構造、分岐構造、あるいは架橋構造のいずれでも良いが、好ましくは、リニア型および/またはセミリニア型である。
【0038】
ポリアミドとしては、例えば、4−ナイロン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン、11−ナイロン、6,10−ナイロン等の脂肪族ナイロンや、MXD6−ナイロン等の芳香族ナイロン等を挙げることができる。
【0039】
ポリフェニレンエーテルとしては、式(2)で示される構成単位を主鎖に持つ重合体を挙げることができる。
【0040】
【化2】

【0041】
(式中、Rは炭素数1〜3の低級アルキル基、R、Rは水素原子または炭素数1〜3の低級アルキル基である。)
また、単重合体のほかに共重合体も挙げることができる。例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル等を挙げることができる。
【0042】
本発明で得られるポリマーアロイにおいて、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)以外の、他の種類のポリマー(B)に関しては特に制限されず、公知のものをいずれも使用できる。例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン等)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアセタール、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニルサルフォン、ポリサルフォン、液晶ポリマー、熱可塑性ポリイミド、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0043】
これらの中でも、少なくとも1種が、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマーの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0044】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラメチレンナフタレート等を挙げることができる。
【0045】
ポリカーボネートとしては、例えば、ビスフェノールAポリカーボネートなどの芳香族ポリカーボネート類等が挙げられる。
【0046】
ポリスチレンとしては、スチレン重合体およびスチレンを主成分とする重合体が包含され、例えば、一般用ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂等を挙げることができる。
【0047】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1などのポリオレフィン類またはオリゴマー類、あるいはマレイン酸等の極性が付与された変性ポリオレフィン等を挙げることができる。
【0048】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0049】
上記ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)としては、酸変性されたものも挙げることができる。例えば、飽和または不飽和の脂肪族多価カルボン酸無水物、脂環式多価カルボン酸無水物、芳香族多価カルボン酸無水物で変性したポリマーを挙げることができる。また、これらの酸変性基の一部は飽和または不飽和の炭化水素基、芳香環基、ハロゲン原子、複素環基等で置換されていても良い。
【0050】
酸変性に用いる酸として、具体的には、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸(メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等を挙げることができる。好ましくは、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸が良い。
【0051】
本発明のポリマーアロイにおいて、該ポリマーアロイ用相溶化剤の含有量は、通常、ポリマーアロイ全重量に対して0.1〜30重量%となるように配合することが好ましい。さらに好ましくは、0.5〜20重量%、さらに好ましくは、1.0〜15重量%である。0.1重量%未満の場合、ポリマー同士の相溶性が不十分となる虞があり、30重量%を超えて配合しても、効果は変わらないため不経済となる。
【0052】
また、本発明のポリマーアロイにおいて、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)と、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)とは、ポリマー(A)の配合割合は、ポリマー(B)の配合割合と同じかより多くなるようにブレンドされる。
【0053】
本発明のポリマーアロイを調製する方法としては、所定量に配合した該ポリマーアロイ用相溶化剤と、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)と、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)とを溶融混練すれば良い。
【0054】
溶融混練方法としては特に制限は無く、ポリマー溶融状態下で機械的せん断を行うことができれば良い。具体的な混練装置としては、押出機、特に二軸押出機が好ましい。また、溶融混練時に発生する水分や低分子量揮発成分を除去する目的で、ベント口を設けることが好ましい。
【0055】
二軸押出機を用いる場合は、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)と、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)を予めブレンダー等で混合しておき、それを押出機の上流側のフィード口から供給し、該ポリマーアロイ用相溶化剤を下流側のフィード口から投入する方法や、配合されるすべてのポリマーと該ポリマーアロイ用相溶化剤をあらかじめブレンダー等で混合しておき、フィード口から供給するなどの方法が考えられるが、特に制限は無い。押出機のスクリューアレンジにも特に制限は無いが、ポリマー同士が十分に分散し、相溶性を向上させやすくするために、ニーディングゾーンを設けることが好ましい。
【0056】
また、本発明のポリマーアロイは、該ポリマーアロイ用相溶化剤とポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)とを溶融混練したポリマーアロイ調製マスターバッチを調製し、そのマスターバッチとポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)とを溶融混練することによっても得ることができる。
【0057】
このようにして得られたポリマーアロイは、ポリフェニレンサルファイドと他の種類の熱可塑性ポリマーとの相溶性が高められたものとなる。本来相剥離を引き起こすものであれば、その成形体外観より確認できる。また、成形体破断面の走査型電子顕微鏡や成形体から得られた超薄切片の透過型電子顕微鏡を用いて、異種ポリマーが形成する連続相、分散相構造、すなわち海、島構造を観察することにより、ポリマー同士の相溶性が高められたことを確認することができる。
【0058】
本発明のポリマーアロイには、本発明の効果を損なわない範囲において、用途、目的に応じて、ガラス繊維、カーボン繊維、チタン酸カリウムウィスカーのような補強剤、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ワラストナイトのような無機充填剤、可塑剤、結晶核剤、剥離剤、着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤などの通常の添加剤を加えることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0060】
なお、使用したポリマーを下記に示す。
【0061】
ポリフェニレンサルファイド(以下PPS);ポリプラスチックス製:フォートロンW214A
6−ナイロン(以下PA6);東レ製:アラミンCM1017
ポリブチレンテレフタレート(以下PBT);ポリプラスチック製:ジュラネックス2002
ポリカーボネート(以下PC);三菱エンジニアリングプラスチック製:ノバレックス7022
ポリフェニレンエーテル(以下PPE);旭化成工業製:P101M
ポリスチレン(以下PSt);旭化成工業製:GP−666R
ポリエチレン(以下PE);三井化学製:HIZEX2100
エチレン-ブタジエンゴム(以下EBR);三井化学製:タフマーA−0550
無水マレイン酸変性ポリエチレン(以下mPE); 三井化学製:アドマーHE040
無水マレイン酸変性エチレン-ブタジエンゴム(以下mEBR);三井化学製:タフマーMH5020
【0062】
(ナノシート化層状チタン酸Aの調製)
炭酸カリウム27.64g、炭酸リチウム4.91g、二酸化チタン69.23g及び塩化カリウム74.56gを乾式で粉砕混合した原料を1100℃にて4時間焼成した。焼成後の試料を10kgの純水に浸して20時間撹拌後に分離、水洗したものを110℃で乾燥した。得られた白色粉末は、層状チタン酸塩K0.8Li0.27Ti1.73であり、平均長径44μmであった。
【0063】
この層状チタン酸塩65gを脱イオン水1kgに分散し、35%塩酸28gを添加した。1.5時間攪拌した後、分離、水洗して、KイオンとLiイオンを水素イオンまたはヒドロニウムイオンに交換した層状チタン酸とした。Kイオンの交換率72当量%、Liイオンの交換率99当量%以上であった。XRD分析により、層間距離は9.2Åであった。
【0064】
この層状チタン酸50gをさらに脱イオン水4kgに分散し、80℃に加熱撹拌しながら、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム・ブロマイド128gを脱イオン水500gに溶解させたものを添加した。一時間加熱撹拌を続けた後、濾過して取り出した。80℃の脱イオン水で十分洗浄した後、空気中40℃で乾燥した。さらに、減圧下に140℃で12時間乾燥し、平均長径42μmのナノシート化層状チタン酸を得た。XRD分析により層間距離は31.1Åであり、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムが層間に挿入されていることを確認した。TG/DTAでの熱分解減量により、有機分は29.6重量%であった。
【0065】
(ナノシート化層状チタン酸Bの調製)
炭酸カリウム27.64g、炭酸リチウム4.91g、二酸化チタン69.23gを乾式で粉砕混合した原料を1050℃にて4時間焼成した。焼成後の試料を10kgの純水に浸して20時間撹拌後に分離、水洗したものを110℃で乾燥した。得られた層状チタン酸塩の10.9%水スラリー79.2Lを調整し、10%硫酸水溶液4.7kgを加えて2時間攪拌し、スラリーのpHを7.0に調整した。分離、水洗したものを110℃で乾燥した後、600℃で12時間焼成した。得られた白色粉末は、層状チタン酸塩K0.6Li0.27Ti1.733.9であり、平均長径28μmであった。
【0066】
この層状チタン酸塩を用いて、有機塩基性化合物をオクタデシルジメチルベンジルアンモニウム・クロライドに変更する以外はナノシート化層状チタン酸の調製Aと同様の方法で処理を行い、平均長径27μmのナノシート化層状チタン酸を得た。XRD分析により層間距離は24.7Åであり、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムが層間に挿入されていることを確認した。TG/DTAでの熱分解減量により、有機分は41.5重量%であった。
【0067】
(ナノシート化層状チタン酸Cの調製)
ナノシート化層状チタン酸Bの調製と同じ条件で層状チタン酸塩K0.80Li0.266Ti1.733を合成した。
【0068】
この層状チタン酸塩を用いて、有機塩基性化合物をドデシルメチルビス(ヒドロキシエチル)アンモニウム・クロライドに変更する以外はナノシート化層状チタン酸の調製Aと同様の方法で処理を行い、平均長径27μmのナノシート化層状チタン酸を得た。XRD分析により層間距離は33.4Åであり、ドデシルメチルビス(ヒドロキシエチル)アンモニウムが層間挿入されていることを確認した。TG/DTAでの熱分解減量により、有機分は21.2重量%であった。
【0069】
(ナノシート化層状チタン酸Dの調製)
ナノシート化層状チタン酸Bの調製と同じ条件で層状チタン酸塩K0.80Li0.266Ti1.733を合成した。
【0070】
この層状チタン酸130gをさらに脱イオン水4kgに分散し、80℃に加熱撹拌しながら、35%塩酸80gを脱イオン水8kgで希釈した後、12−アミノドデカン酸83gを添加し、溶解したものを添加した。一時間加熱撹拌を続けた後、濾過して取り出した。希塩酸で洗浄後、空気中40℃で乾燥した。さらに、減圧下に140℃で12時間乾燥し、平均長径25μmのナノシート化層状チタン酸を得た。XRD分析により層間距離は19.6Åであり、12−アミノドデカン酸が層間挿入されていることを確認した。TG/DTAでの熱分解減量により、有機分は23.8重量%であった。
【0071】
(ポリマーアロイの調製)
<実施例1>
PPS 79重量部と、PE 20重量部と、上記方法で得られたナノシート化層状チタン酸A 1重量部を混合し、ラボプラストミル(東洋精機製、 LABO PLASOTMILL 4C150−01)にて、290℃、60rpm、5分間、溶融混練することにより目的のポリマーアロイを得た。得られたポリマーアロイの相溶性評価結果を表1に示す。
【0072】
(相溶性評価)
相溶性は、得られたポリマーアロイの成型体破断面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、S−4800)で観察した。
【0073】
また、PPS 80重量部と、上記各樹脂 20重量部を混合し、ラボプラストミル(上記と同じ)にて、290℃、60rpm、5分間、溶融混練することにより、本発明の相溶化剤であるナノシート化層状チタン酸を含有していないブランク試料(比較試料)を得た。
【0074】
比較のブランク試料と本発明に従うポリマーアロイとを、相分離構造のドメインサイズの平均粒径とドメイン間の距離によって評価した。相分離構造のドメインサイズが小さく、ドメイン間の距離が短いほどポリマー同士が均一に分散しており、相溶性が高いことを示している。
【0075】
図10は、いわゆる海島構造の相分離構造におけるドメインサイズとドメイン間の距離を説明するための模式図である。図10に示すように、島状のドメイン1が存在する場合、このドメイン1の直径Gを測定して平均粒径とし、ドメイン1間の距離Lを測定し、距離として示している。
【0076】
<実施例2>
PPS 65重量部と、PE 20重量部と、上記方法で得られたナノシート化層状チタン酸A 15重量部を混合し、ラボプラストミル(上記と同じ)にて、290℃、60rpm、5分間、溶融混練することにより目的のポリマーアロイを得た。得られたポリマーアロイの相溶性評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
<実施例3〜11>
PPS 95重量部とナノシート化層状チタン酸B 5重量部を混合し、ラボプラストミル(上記と同じ)にて、290℃、60rpm、5分間、溶融混練してポリマーアロイ調製用マスターバッチを得た。次いで前記マスターバッチ80重量部と表2に示す「ドメイン」として各樹脂20重量部を同条件で混練して目的の各ポリマーアロイを得て、相溶性を評価した。結果を表2に合わせて示す。
【0079】
【表2】

【0080】
<実施例12>
PPE 95重量部とナノシート化層状チタン酸C 5重量部を混合し、ラボプラストミル(上記と同じ)にて、290℃、60rpm、5分間、溶融混練してポリマーアロイ調製用マスターバッチを得た。次いで前記マスターバッチ80重量部と表3に「ドメイン」として示す各樹脂20重量部を同条件で混練して目的の各ポリマーアロイを得て、相溶性を評価した。結果を表3に合わせて示す。
【0081】
【表3】

【0082】
<実施例13〜14>
PA66 95重量部とナノシート化層状チタン酸C 5重量部を混合し、ラボプラストミル(上記と同じ)にて、290℃、60rpm、5分間、溶融混練してポリマーアロイ調製用マスターバッチを得た。次いで前記マスターバッチ80重量部と表4に「ドメイン」として示す各樹脂20重量部を同条件で混練して目的の各ポリマーアロイを得て、相溶性を評価した。結果を表4に合わせて示す。
【0083】
【表4】

【0084】
図1〜図6に、各実施例のポリマーアロイ、及び各実施例に対応する比較のブランクの成形体破断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0085】
図1(a)は実施例1及び2のブランクを示し、図1(b)は実施例1、図1(c)は実施例2を示している。
【0086】
図2(a)は実施例3のブランクを示しており、図2(b)は実施例3を示している。
【0087】
図3(a)は実施例4のブランクを示しており、図3(b)は実施例4を示している。
【0088】
図4(a)は実施例9のブランクを示しており、図4(b)は実施例9を示している。
【0089】
図5(a)は実施例10のブランクを示しており、図5(b)は実施例10を示している。
【0090】
図6(a)は実施例11のブランクを示しており、図6(b)は実施例11を示している。
【0091】
図7(a)は実施例1のブランクの成形体表面を示す写真であり、図7(b)は実施例1の成形体表面を示す写真である。図7(a)に示すように、相溶化剤を添加していない比較のブランク試料においては、成形体表面に凹凸がみられるが、これに対し、本発明に従い相溶化剤を添加した実施例1の成形体においては、図7(b)に示すように平滑な表面を有しており、図7(a)にみられるような凹凸は存在していない。
【0092】
<実施例15〜17及び比較例1〜5>
PPS、mPE、及び上記方法で得られたナノシート化層状チタン酸Bを表5で示される配合量で混合し、ラボプラストミル(上記と同じ)にて、290℃、60rpm、5分間、溶融混練することにより目的のポリマーアロイを得た。
【0093】
上記で得られた実施例15〜17及び比較例1〜5のポリマーアロイを、JIS試験片作製用金型(金型温度130℃)を装着した射出成形機(商品名:JS75、(株)日本製鋼所製、シリンダー温度330℃)に投入して射出成形し、各種JIS試験片を製造し、ノッチ付きアイゾット(IZOD)衝撃値をJIS K7110に準じ、1号試験片で評価した。結果を表5に示す。
【0094】
【表5】

【0095】
表5に示すように、酸変性したポリマーmPEをポリマー(B)として用いることにより、アイゾット衝撃強度が上昇しており、機械的強度が向上されていることがわかる。
【0096】
<実施例18〜20及び比較例6〜10>
PPS、mEBR、及び上記方法で得られたナノシート化層状チタン酸Bを表6で示される配合量で混合し、ラボプラストミル(上記と同じ)にて、290℃、60rpm、5分間、溶融混練することにより目的のポリマーアロイを得た。
【0097】
上記で得られた実施例18〜20及び比較例6〜10のポリマーアロイを、JIS試験片作製用金型(金型温度130℃)を装着した射出成形機(商品名:JS75、(株)日本製鋼所製、シリンダー温度330℃)に投入して射出成形し、各種JIS試験片を製造し、ノッチ付きアイゾット(IZOD)衝撃値をJIS K7110に準じ、1号試験片で評価した。結果を表6に示す。
【0098】
【表6】

【0099】
表6に示すように、酸変性されたポリマーであるmEBRをポリマー(B)として用いた場合、本発明に従い相溶化剤を添加してブレンドすることにより、アイゾット衝撃強度が高くなっており、機械的強度が向上することがわかる。
【0100】
<実施例21〜22及び比較例11〜12>
PA6、mEBR、及び上記方法で得られたナノシート化層状チタン酸C或いはDを表7で示される配合量で混合し、ラボプラストミル(上記と同じ)にて、290℃、60rpm、5分間、溶融混練することにより目的のポリマーアロイを得た。
【0101】
上記で得られた実施例21〜22及び比較例11〜12のポリマーアロイを、JIS試験片作製用金型(金型温度130℃)を装着した射出成形機(商品名:JS75、(株)日本製鋼所製、シリンダー温度330℃)に投入して射出成形し、各種JIS試験片を製造し、ノッチ付きアイゾット(IZOD)衝撃値をJIS K7110に準じ、1号試験片で評価した。結果を表7に示す。
【0102】
【表7】

【0103】
表7に示すように、酸変性したmEBRをポリマー(B)として用い、ポリマー(A)としてPA6を用い、相溶化剤としてナノシート化層状チタン酸CまたはDを用いた場合においても、上記と同様にアイゾット強度が高くなっており、機械的強度の向上が認められる。
【0104】
<実施例23〜25及び比較例13>
PPS、PE、及び上記方法で得られたナノシート化層状チタン酸Cを表8で示される配合量で混合し、ラボプラストミル(上記と同じ)にて、290℃、60rpm、5分間、溶融混練することにより目的のポリマーアロイを得た。
【0105】
上記で得られた実施例23〜25及び比較例13のポリマーアロイを、JIS試験片作製用金型(金型温度130℃)を装着した射出成形機(商品名:JS75、(株)日本製鋼所製、シリンダー温度330℃)に投入して射出成形し、外観の剥離の有無を評価した。結果を表8に示す。
【0106】
【表8】

【0107】
表8に示すように、相溶化剤を添加していない比較例13の成形品においては、外観剥離を生じたが、本発明に従う実施例23〜25においては、剥離を生じず、良好な外観であった。
【0108】
図8及び図9は、実施例23〜25及び比較例13の成形品の破断面を示す走査型電子顕微鏡写真であり、図8は比較例13、図9(a)は実施例23、図9(b)は実施例24、図9(c)は実施例25をそれぞれ示している。
【0109】
実施例23〜25及び比較例13においては、ポリマー(A)であるPPSと、ポリマー(B)であるPA66とを、重量比で40:60〜60:40の範囲内となるように配合している。このため、本発明に従い相溶化剤を添加した実施例23〜25においては、図9に示すように共連続構造が形成されている。すなわち、ポリマー相が連続して連なった構造を有している。このような共連続構造を有するポリマーアロイに、例えば導電性フィラーを添加すると、導電性フィラーは連続したポリマー相の界面に沿って配向するため、ブレンドポリマー中で導電性フィラーが連なって配向し、導電性フィラーを少量添加するだけで良好な導電性が得られることが期待される。
【0110】
上記各実施例から分かるように、本発明のポリマーアロイ用相溶化剤を用い、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)と、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)とを溶融混練することにより、非常に相溶性に優れたポリマーアロイを調製することができる。
【0111】
また、そのポリマーアロイの調製方法は、ポリマーアロイ用相溶化剤と各樹脂を同時に溶融混練しても良いし、ポリマーアロイ用相溶化剤と、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)とでポリマーアロイ調製用マスターバッチを調製した後、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)とを溶融混練しても良い。
【0112】
ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)が、酸変性されたポリマーである場合、特に、耐衝撃性が向上したポリマーアロイを得ることができる。
【0113】
ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)と、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)が、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれ、且つ、その配合比が、40:60〜60:40である場合、共連続構造を有したポリマーアロイを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】(a)は実施例1及び2のブランク、(b)は実施例1、(c)は実施例2の成形体破断面を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図2】(a)は実施例3のブランク、(b)は実施例3の成形体破断面を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図3】(a)は実施例4のブランク、(b)は実施例4の成形体破断面を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図4】(a)は実施例9のブランク、(b)は実施例9の成形体破断面を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図5】(a)は実施例10のブランク、(b)は実施例10の成形体破断面を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図6】(a)は実施例11のブランク、(b)は実施例11の成形体破断面を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図7】(a)は実施例1のブランク、(b)は実施例1の各成形体表面を示す写真。
【図8】比較例13の成形体破断面を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図9】(a)は実施例23、(b)は実施例24、(c)は実施例25の各成形体破断面を示す走査型電子顕微鏡写真。
【図10】ポリマーアロイにおける相分離構造のドメインサイズの平均粒径とドメイン間の距離を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0115】
1…ドメイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドからなるグループより選ばれる少なくとも1種のポリマー(A)と、ポリマー(A)以外の他の種類のポリマー(B)とを、ポリマー(A)の配合割合がポリマー(B)の配合割合と同じか、より多くなるようにブレンドしてポリマーアロイを調製するための相溶化剤であって、
層状チタン酸の層間に有機塩基性化合物を挿入することにより得られるナノシート化層状チタン酸からなることを特徴とするポリマーアロイ用相溶化剤。
【請求項2】
前記層状チタン酸が、層状チタン酸塩を酸または温水で処理して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーアロイ用相溶化剤。
【請求項3】
前記層状チタン酸塩が、一般式ATi{2−(Y+Z)}(式中、A及びMは互いに異なる1〜3価の金属を示し、BはTiの欠陥部位を示す。Xは0<X<1.0を満たす正の実数であり、Y及びZは0<Y+Z<1を満たす0または正の実数である)で表されることを特徴とする請求項2に記載のポリマーアロイ用相溶化剤。
【請求項4】
前記層状チタン酸塩が、K0.5〜0.8Li0.27Ti1.733.85〜4で表されることを特徴とする請求項2または3に記載のポリマーアロイ用相溶化剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマーアロイ用相溶化剤を用い、ポリマー(A)と、ポリマー(B)とを、ポリマー(A)の配合割合がポリマー(B)の配合割合と同じか、より多くなるようにブレンドして得られることを特徴とするポリマーアロイ。
【請求項6】
ポリマー(B)が、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、及び熱可塑性エラストマーの中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載のポリマーアロイ。
【請求項7】
ポリマー(B)が、酸変性されたポリマーであることを特徴とする請求項5または6に記載のポリマーアロイ。
【請求項8】
前記ポリマーアロイ用相溶化剤が、0.1〜30重量%の範囲内で配合されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のポリマーアロイ。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載のポリマーアロイを調製するためのマスターバッチであって、
ポリマー(A)と、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマーアロイ用相溶化剤とを混練して得られることを特徴とするポリマーアロイ調製用マスターバッチ。
【請求項10】
請求項9に記載のマスターバッチと、ポリマー(B)とをブレンドすることを特徴とするポリマーアロイの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−45087(P2008−45087A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224147(P2006−224147)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】