説明

ポリマーアロイ長繊維不織布およびポリマーアロイ長繊維不織布の製造方法ならびにそれを用いた衛生用品

【課題】本発明は、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂とが均一かつ微細に分散ブレンドされた海島構造をしており、耐加水分解性に優れるとともに、温室効果ガス排出量が小さい長繊維不織布およびそれを用いた衛生用品を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、および相溶化剤(C)とを配合してなるポリマーアロイからなる長繊維不織布であって、相溶化剤(C)が酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するアクリル系またはスチレン系のエラストマーであって、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)1〜30重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)99〜70重量部、相溶化剤(C)3〜13重量部であり、該ポリ乳酸系樹脂(A)が島成分を形成し、ポリオレフィン系樹脂(B)が海成分を形成した海島構造であることを特徴とするポリマーアロイ長繊維不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂とが均一にブレンドされ、かつポリオレフィン系樹脂が海成分を形成してなるポリマーアロイ長繊維不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球的規模での環境に対する意識向上に伴い、自然環境の中で分解する繊維素材の開発が切望されている。例えば、従来の汎用プラスチックは石油資源を主原料としていることから、石油資源が将来枯渇すること、また石油資源の大量消費により生じる地球温暖化が大きな問題として採り上げられている。
【0003】
このため近年では脂肪族ポリエステル等、様々なプラスチックや繊維の研究・開発が活発化している。その中でも微生物により分解されるプラスチック、即ち生分解性プラスチックを用いた繊維に注目が集まっている。
【0004】
また、二酸化炭素を大気中から取り込み成長する植物資源を原料とすることで、二酸化炭素の循環により地球温暖化を抑制できることが期待できるとともに、資源枯渇の問題も解決できる可能性がある。そのため、植物資源を出発点とするプラスチック、すなわちバイオマス利用のプラスチックに注目が集まっている。
【0005】
これまで、バイオマス利用の生分解性プラスチックは、力学特性や耐熱性が低いとともに、製造コストが高いといった課題があり、汎用プラスチックとして使われることはなかった。一方、近年では力学特性や耐熱性が比較的高く、製造コストの低い生分解性のプラスチックとして、でんぷんの発酵で得られる乳酸を原料としたポリ乳酸が脚光を浴びている。
【0006】
ポリ乳酸に代表されるポリ乳酸系樹脂は、例えば手術用縫合糸として医療分野で古くから用いられてきたが、最近は量産技術の向上により価格面においても他の汎用プラスチックと競争できるまでになった。そのため、繊維としての商品開発も活発化してきている。
【0007】
ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル繊維の開発は、生分解性を活かした農業資材や土木資材等が先行しているが、それに続く大型の用途として衣料用途、カーテン、カーペット等のインテリア用途、車両内装用途、産業資材用途への応用も期待されている。
【0008】
また、植物由来ではないものの、最近脚光を浴びつつある樹脂としてポリプロピレンがある。ポリプロピレンは数あるプラスチックの中でも単位生産量当たりのエネルギー使用量が少なく、かつ耐久性に優れるため、消費財としてのライフが長い。更には性能面でも高い機械的特性、耐薬品性、寸法安定性を有し、比重が0.9と極めて低く軽量であることからも、環境に優しい素材として注目されている。繊維としても同様であり、特に不織布を中心とした資材用途では前記特性が強みとなって、高い競争力を有している。
【0009】
一方で、ポリプロピレンやポリ乳酸にはそれぞれ以下に示す課題を有しており、用途が限定されるものである。
【0010】
ポリプロピレンは軽量かつ柔軟な特性を活かし、使い捨て衛生用品などに広く用いられているが、石油由来のポリマーであることから、近年の環境問題の深刻化に伴い、環境適合素材への転換が望まれている。
【0011】
ポリ乳酸は環境適合素材として注目を集めているが、例えば使い捨て衛生用品に適用する場合、風合いの硬さが課題の一つとして挙げられる。ポリ乳酸からなる長繊維不織布は擦過等により皮膚に過度の刺激を与えるなど、実用性に乏しいことがわかってきている。また二つ目の課題に、ポリ乳酸は高温多湿な環境においてポリマーの加水分解が生じるため、長期間の輸送や保管時に経年劣化する恐れがあることが挙げられる。ポリ乳酸の加水分解を防ぐ方法としては、例えばポリ乳酸の末端カルボキシル基を化学反応によって封鎖することにより加水分解を抑制する方法が開示されている。特許文献1には、カルボジイミド化合物を添加して耐加水分解性を向上させた生分解性不織布が開示されている。しかし、経時的なポリ乳酸の脆化を抑制するという点では強度の低下は抑えられているものの、いずれもポリ乳酸の「風合いが硬い」という特性を変えるものではなかった。近年では、ポリ乳酸の改質を目的に、主成分のポリ乳酸にポリプロピレンを添加したポリマーアロイ不織布が開示されている(特許文献2および特許文献3)。しかしこれらの不織布は、不織布全体に占めるポリ乳酸成分の割合が大きいため、高温高湿環境下において加水分解が起こりやすく、長期保管時の耐久性に劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−63711号公報(第1〜2頁)
【特許文献2】特表2003−507596号公報(第1〜2頁)
【特許文献3】特開2007−197857号公報(第1〜2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記問題点を解決し、耐加水分解性に優れ、温室効果ガス排出量が小さい長繊維不織布およびそれを用いた衛生用品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成すべく本発明者らは検討を重ねてきた。その結果、ポリ乳酸系樹脂が島成分を形成し、ポリオレフィン系樹脂が海成分を形成した海島構造からなるポリマーアロイ長繊維不織布は、ポリオレフィンがポリ乳酸の加水分解の原因となる水分の繊維内部への浸透を抑制するため、優れた耐加水分解性を有することを見出した。
【0015】
さらに、本発明者らは、ポリ乳酸系樹脂とポリオレフィン系樹脂は非相溶であるため、ポリ乳酸系樹脂が島成分を形成し、ポリオレフィン系樹脂が海成分を形成した海島構造からなるポリマーアロイ長繊維不織布を製造するには、曳糸性の改善すなわち口金直下でのバラス効果によるポリマーの膨らみを抑制するために、相溶化剤の添加が不可欠であり、その相溶化剤には特定の官能基を含有するアクリル系またはスチレン系のエラストマーが適していることを見出し、種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0016】
すなわち前述の課題は、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、および相溶化剤(C)とを配合してなるポリマーアロイからなる長繊維不織布であって、相溶化剤(C)が酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するアクリル系またはスチレン系のエラストマーであって、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)1〜30重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)99〜70重量部、相溶化剤(C)3〜13重量部であり、該ポリ乳酸系樹脂(A)が島成分を形成し、ポリオレフィン系樹脂(B)が海成分を形成した海島構造であることを特徴とするポリマーアロイ長繊維不織布によって達成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により耐加水分解性に優れ、温室効果ガス排出量が小さい長繊維不織布およびそれを用いた衛生用品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明でいうポリ乳酸系樹脂(A)は結晶性であることが好ましい。上記ポリ乳酸は、−(O−CHCH−CO)−を繰り返し単位とするポリマーであり、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものをいう。乳酸にはD−乳酸とL−乳酸の2種類の光学異性体が存在するため、その重合体もD体のみからなるポリ(D−乳酸)とL体のみからなるポリ(L−乳酸)および両者からなるポリ乳酸がある。ポリ乳酸中のD−乳酸、あるいはL−乳酸の光学純度は、それらが低くなるとともに結晶性が低下し、融点降下が大きくなる。融点は繊維の耐熱性を維持するために150℃以上であることが好ましく、160℃であることがより好ましい。さらに好ましくは170℃以上、特に好ましくは180℃以上である。
【0019】
ただし、上記のように2種類の光学異性体のポリマーが単純に混合している系とは別に、前記2種類の光学異性体のポリマーをブレンドして繊維に成形した後、140℃以上の高温熱処理を施してラセミ結晶を形成させたステレオコンプレックスにすると、融点を220〜230℃まで高めることができ、好ましい。この場合、ポリ乳酸系樹脂(A)は、ポリ(L乳酸)とポリ(D乳酸)の混合物の場合は、そのブレンド比は40/60〜60/40であるとステレオコンプレックス結晶の比率を高めることができ、最良である。また、前記2種類の光学異性体ポリマーのブレンドとは別に、L乳酸ブロックとD乳酸ブロックの両方からなるL−D―ブロック共重合のポリ乳酸を用いることによっても、ステレオコンプレックス結晶を形成させることができる。この場合、ポリマーが単一成分になるため、紡糸設備が簡略化できるという利点がある。
【0020】
また、ポリ乳酸中には低分子量残留物として残存ラクチドが存在するが、これら低分子量残留物は、不織布の加水分解を促進し、耐久性を低下させる場合がある。そのため、繊維中の残存ラクチド量は好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。
【0021】
また、ポリ乳酸系樹脂(A)は、例えばポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合したものであってもよい。共重合する成分としては、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール、ポリブチレンサクシネートやポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンイソフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびヒドロキシカルボン酸、ラクトン、ジカルボン酸、ジオールなどのエステル結合形成性の単量体が挙げられる。このような共重合成分の共重合割合は融点降下による耐熱性低下を損なわない範囲で、ポリ乳酸に対して0.1〜10モル%であることが好ましい。
【0022】
ポリ乳酸系樹脂(A)には、さらに改質剤として粒子、艶消し剤、着色顔料、結晶核剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤や、滑剤等を添加してもよい。
【0023】
また、ポリ乳酸系樹脂(A)の分子量は、後述するポリオレフィン系樹脂(B)との粘度比が高い、すなわちポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度が高いほど、紡糸性に優れる。そのため、ポリ乳酸系樹脂(A)の分子量は高い方が好ましいが、分子量が高すぎると、溶融紡糸での成形性や延伸性が低下する傾向にある。重量平均分子量は耐加水分解性を保持するために8万以上であることが好ましく、10万以上がより好ましい。さらに好ましくは12万以上である。また、分子量が35万を越えると、前記したように紡糸性や延伸性が低下するため、結果として分子配向性が悪くなり繊維強度が低下することがある。そのため、重量平均分子量は35万以下が好ましく、30万以下がより好ましい。さらに好ましくは25万以下である。
【0024】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂(B)とは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンなどのオレフィン、ビニルアルコールまたはその誘導体等のオレフィンアルコール等のオレフィン類を重合または共重合して得られる未変性のオレフィン樹脂であり、不飽和カルボン酸またはその誘導体およびカルボン酸ビニルエステルなどの化合物で変性した変性ポリオレフィン樹脂は含まない。具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ1−ブテン樹脂、ポリ1−ペンテン樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂などの単独重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体、または、これらに1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1′−プロペニル)−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンモノマーを一種以上共重合させた共重合体などが挙げられる。
【0025】
本発明におけるエチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3以上、好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンの少なくとも一種以上との共重合体であり、上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも、炭素数3〜12のα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上の点から好ましい。このエチレン/α−オレフィン共重合体は、α−オレフィン含量が好ましくは1〜20モル%、より好ましくは2〜15モル%、さらに好ましくは3〜10モル%である。
【0026】
本発明のポリマーアロイ長繊維不織布に用いるポリオレフィン系樹脂(B)は、相構造の制御のし易さより、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂が好ましく、耐熱性の点から、ポリプロピレン樹脂がより好ましい。
【0027】
なお、ポリプロピレン樹脂の融点は、ポリマーアロイ長繊維不織布の耐熱性を維持するために150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。
【0028】
また、ポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度は、間接的にポリマーの分子量を表す情報となる。すなわち、溶融粘度が低すぎると繊維化した後の強度が低くなるため、ある程度の溶融粘度が必要である。ここで、後述するポリ乳酸系樹脂(A)との粘度比を考慮した上で、ポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度の指標となるメルトフローレート(MFR)は、50〜120g/10分であることが好ましく、60〜110g/10分であることがより好ましい。
【0029】
また、ポリオレフィン系樹脂(B)には、粒子、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤や、ポリ乳酸系樹脂(A)に好ましく用いられる上記滑剤等を添加してもよい。
【0030】
本発明で用いる相溶化剤(C)とは、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有する、アクリル系またはスチレン系のエラストマーである。該相溶化剤(C)は、曵糸性および線径安定性、強度、耐熱性の点から、酸無水物基、アミノ基、イミノ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するものであることが好ましく、酸無水物基およびアミノ基、イミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するスチレン系エラストマーであることがより好ましく、アミノ基を含有するスチレン系エラストマーであることが特に好ましい。このようなエラストマーを相溶化剤として採用することによりポリ乳酸系樹脂がポリオレフィン系樹脂に微分散した海島構造を安定して形成することが可能となる。
【0031】
また、該相溶化剤(C)の重量平均分子量Mwは、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との界面に作用して界面剥離特性に大きな影響を及ぼす。そのため、分子量を1万以上の重合体にすることで良好な耐界面剥離性を呈し、35万以下にすることで、曵糸性に優れたポリマーアロイになるため好ましく、3万〜25万の重合体であることがより好ましい。ここで、Mwは溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の値である。
【0032】
また、本発明の相溶化剤(C)とは、(メタ)アクリル酸エステル系ビニル単位またはスチレン系ビニル単位を含むものであり、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル系ビニル単位またはスチレン系ビニル単位を主成分、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上含むものであればよく、オレフィン系単量体を除くその他のビニル系単量体成分単位を好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下共重合した共重合体でもよい。また、本発明において、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するスチレン系エラストマーである場合、相構造の制御性に優れ、曵糸性、強度、耐熱性および耐界面剥離性が優れるという点で、スチレン系ビニル単位が含まれていればよく、3〜30重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましい。
【0033】
また、該相溶化剤(C)の溶融粘度は、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の界面に作用してポリマーアロイ全体の溶融粘度に影響を及ぼし相構造に大きな影響を与える。よって、曵糸性、強度、耐熱性、耐摩耗性の点からメルトフローレート(MFR)は使用するポリオレフィン系樹脂(B)よりも値が小さい、すなわち溶融粘度が高いことが好ましい。一方で、MFRが3未満になるような極めて高い溶融粘度であると、ポリマーの系全体の溶融粘度を高くして曵糸性を悪化させるため好ましくない。より好ましいMFRは5〜20g/10分である。
【0034】
また、相溶化剤(C)がエポキシ基含有アクリル系またはスチレン系のエラストマーである場合、ポリマーアロイの相構造を制御する上で、エポキシ価が0.1〜10meq/gの範囲であることが好ましく、1〜7meq/gの範囲であることがより好ましく、2〜5meq/gの範囲であることがさらに好ましい。エポキシ価が0.1meq/g以上であれば、海島各成分間の界面接着性が向上し、エポキシ価が10meq/g以下のものを使用することで、ゲル化などを抑制できるので好ましい。ここで、エポキシ価は塩酸−ジオキサン法で測定した値である。なお、グリシジル基含有ビニル系単位を含むポリマーのエポキシ価は、グリシジル基含有ビニル系単位の含有量を調節することにより調節することができる。
【0035】
また、相溶化剤(C)のガラス転移温度は、取り扱い性の点から30〜100℃の範囲であることが好ましく、40〜70℃の範囲であることがより好ましい。ここでいうガラス転移温度とは、JISK7121に記載されている方法に従って示差走査熱量計(DSC)で測定した値であり、10℃/分で昇温した時の中間点ガラス転移温度である。
【0036】
本発明で用いられる相溶化剤(C)の製品例としては、東亞合成製“ARUFON” (エポキシ基含有アクリル系エラストマー)、ジョンソンポリマー製“JONCRYL”(エポキシ基含有スチレン/アクリル酸エステル共重合体)、クレイトン製“クレイトン”、旭化成ケミカルズ製“タフテック”(イミン基変性SEBS)、JSR製“ダイナロン”(アミノ基変性SEBS)などが挙げられる。
【0037】
また、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、および相溶化剤(C)の溶融粘度については、以下のような値や相互関係を満足するものであることが好ましい。そうすることで、アロイ相構造であって、かつ繊維表面にポリ乳酸系樹脂(B)がほとんど露出しない構造を形成させることができる。
【0038】
本発明のポリマーアロイ長繊維不織布において、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との相構造が安定、すなわち海島構造における島成分(ポリ乳酸系樹脂)の大きさの分布において、その広がりが小さいことが繊維化を安定して行うために重要である。さらには、紡糸線上において、溶融体の速やかな伸長変形を促すためには、島成分となるポリ乳酸系樹脂(A)の口金内での変形倍率を最小にするとともに、口金を出てからの島成分の緩和を促進させる必要がある。そのためには、温度230℃、ずり速度6.1(sec−1)での溶融粘度測定において、ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度ηと、ポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度ηとの粘度比(η/η)が1.3〜10であり、1.8〜9であることがより好ましい。更に好ましくは6〜8である。そうすることで、口金孔内における貯蔵エネルギーをより小さくするとともに、島を形成するポリ乳酸系樹脂の変形倍率をより小さく抑えることが可能になる。ここで、口金孔内での「島ドメインの変形倍率」と紡糸性には非常に密接な関係があり、非相溶系ポリマーの組み合わせによるポリマーアロイ長繊維不織布の紡糸工程においては、該「変形倍率」が非常に重要なファクターとなる。
【0039】
また、海成分を形成するポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度ηが200Pa・s以下であることが好ましい。より好ましくは150Pa・s以下である。そうすることで、島成分の紡糸線上での配向緩和をより速やかに行わせることが可能になり、紡糸線上での大変形(高ドラフト化)がより安定して起こりやすくなるので、ポリ乳酸系樹脂がポリオレフィン系樹脂に微分散した海島構造をより安定して形成することが可能となる。
【0040】
さらに相溶化剤(C)の溶融粘度ηは、海成分を形成するポリオレフィン系樹脂(B)よりも高いことが好ましい。η>ηの関係を満足させることで、相溶化剤(C)がポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の界面に効果的に作用し、より少量の相溶化剤でアロイ相構造が安定したものとなる。相溶化剤(C)のより好ましい溶融粘度は、η>η>ηを満足する溶融粘度にすることである。
【0041】
ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)とのブレンド比率は、ポリ乳酸系樹脂(A)を島成分、ポリオレフィン系樹脂(B)を海成分とする海島構造のポリマーアロイにすることが必要なため、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)1〜30重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)99〜70重量部とすることが好ましい。より好ましくはポリ乳酸系樹脂(A)の比率が5〜25重量部、さらに好ましくは10〜20重量部である。また、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の総量(100重量部)に対し、相溶化剤(C)を3〜13重量部とすることで相溶化効果が発揮されると共に、良好な繊維形成性を示すため好ましく、4〜10重量部とすることがより好ましく、5〜7重量部とすることが最も好ましい。
【0042】
また、従来のポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)の組み合わせにて得られるポリマーアロイ長繊維不織布は、ポリマー間の界面張力により、吐出孔直下でバラス効果と呼ばれる吐出孔径の数倍もの直径を有する膨らみが発生する。このため、紡糸での細化変形過程で太細が出やすく、糸切れが生じた。本発明の長繊維不織布は、前記した様にポリマーの組み合わせ設計、すなわちポリマー溶融粘度の最適設計や相溶化剤の種類、粘度、後述する口金面温度や口金背面圧、口金吐出線速度の設計等により、バラス効果を最小限にするとともに、バラスによる膨らみが生じても、伸長流動領域を口金面にできるだけ近く、かつ速やかにすることで、安定的に繊維を形成することに成功した。
【0043】
また、本発明のポリマーアロイ長繊維不織布は、1分子鎖中にポリ乳酸ブロックとポリオレフィンブロックが交互に存在するブロック共重合体とは異なり、ポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)は実質的に独立に存在していることが重要である。この状態の違いは、配合前・後のポリオレフィン系樹脂の融点降下、すなわちポリマーアロイ中のポリオレフィン系樹脂由来の融点が配合前のポリオレフィン系樹脂の融点からどの程度降下したかを観測することにより見積もることができる。ポリオレフィン系樹脂の融点降下が3℃以下であれば、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィンはほとんど共重合されておらず、実質的にポリ乳酸分子鎖とポリオレフィン分子鎖は独立に存在するポリマーアロイの状態である。また、繊維表層は実質的に海成分であるポリオレフィン系樹脂であるため、空気中の水分が島成分のポリ乳酸系樹脂に直接接触するのを防ぎ、耐加水分解性が飛躍的に向上する。したがって、本発明では配合されたポリオレフィンの融点降下は2℃以下であることが好ましい。
【0044】
本発明のポリマーアロイ長繊維不織布は、前記したようにポリ乳酸系樹脂(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)を主体とするポリマーアロイで構成されており、ポリ乳酸系樹脂(A)が島成分を、ポリオレフィン系樹脂(B)が海成分を形成した海島構造を形成している。
【0045】
本発明において、前記長繊維不織布を構成するポリマーアロイ繊維の繊度は0.8〜10デシテックスが好ましい範囲である。好ましくは0.9〜8デシテックス、より好ましくは1.0〜6デシテックスの範囲である。ポリマーアロイ繊維の繊度が0.8デシテックスを下回る場合は、生産時に糸切れが生じやすいなど生産安定性の面から好ましくない。また、ポリマーアロイ繊維の繊度が10デシテックスを上回る場合は、生産時にフィラメントの冷却不良による糸切れが生じやすいなど生産安定性の面から好ましくない。ただし、本発明の性能を損なわない範囲で、0.8〜10デシテックス以外の繊維が含まれていてもかまわない。
【0046】
また、前記長繊維不織布を構成するポリマーアロイ繊維の断面形状は、丸断面、中空断面、多孔中空断面、三葉断面等の多葉断面、扁平断面、W断面、X断面その他の異形断面についても自由に選択することが可能である。
【0047】
本発明のポリマーアロイ長繊維不織布に含まれる繊維は、他の熱可塑性樹脂との複合形態でもよい。熱可塑性樹脂は限定されるものではないが、例えば、ナイロン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等)、ポリアクリロニトルおよびポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂が適用できる。また熱可塑性樹脂の複合の方法としては、芯鞘型、あるいはサイドバイサイド型に複合する方法が好ましい方法である。
【0048】
本発明のポリマーアロイ長繊維不織布の種類としては、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、フラッシュ紡糸不織布、ニードルパンチ不織布、水流交絡不織布、エアレイド不織布、サーマルボンド不織布などが適用できる。特にスパンボンド不織布は、製造方法が簡便であり、生産能力に優れる点から好ましい形態である。
【0049】
本発明のポリマーアロイ長繊維不織布は、部分的に熱接着されて一体化していることが好ましい。熱接着の面積は不織布の全面積の5〜50%が好ましい。さらに好ましくは8〜45%、より好ましくは10〜30%である。熱接着の面積が5%を下回る場合は、不織布の強度が弱くなる傾向であり好ましくない方向である。また熱接着の面積が50%を超える場合は、不織布の機械的強度には優れるものの柔軟性が損なわれる方向であり、好ましくない。
【0050】
部分的熱接着の方法は特に限定されるものではないが、一対の熱エンボスロールによる接着、あるいは超音波発振装置とエンボスロールによる接着が好ましい方法であるが、強度的には一対の熱エンボスロールによる接着がより好ましいものである。熱エンボスロールによる熱接着の温度は、繊維表面に存在する樹脂の融点より5〜50℃低いことが好ましく、より好ましくは10〜40℃低い温度条件である。熱エンボスロールによる熱接着の温度が、繊維表面に存在する樹脂の融点より5℃未満低い温度であった場合、樹脂の溶融が激しく、エンボスロールへのシート取られ、ロール汚れが発生、シートが硬くなるばかりかロール巻付きも頻発するなど安定生産も不可能となる。また、繊維表面に存在する樹脂の融点より50℃を超えて低い温度であった場合、樹脂の融着が不十分であり、物性的に弱いものとなる傾向であり好ましくない。
【0051】
また、本発明におけるポリマーアロイ長繊維不織布は、スパンボンド不織布(S)と公知のメルトブロー不織布(M)との積層体であってもよい。また、本発明におけるスパンボンド不織布とメルトブロー不織布の積層方法は何ら制限されるものではないが、一旦メルトブロー不織布とスパンボンド不織布をそれぞれ製作した後に積層一体化する方法、一旦製作したスパンボンド不織布の上にメルトブロー法にて糸条を噴射し積層する方法、一旦製作したメルトブロー不織布の上にスパンボンド法にて糸条を噴射し積層する方法、さらにはこれらの組み合わせにより実施することが出来る。また、メルトブローウェブとスパンボンドウェブを連続的に積層させた後に、熱圧着などにより一体化させ不織布とする方法でも実施することができる。積層形態は何ら制限されるものではないが、SM積層、SMS積層、SMMS積層等が好ましい形態である(なお、例えばSMS積層とは、1層のメルトブロー不織布が両側からそれぞれ1層のスパンボンド不織布に挟まれた状態で積層された積層体を指す。)。メルトブロー不織布やスパンボンド不織布を複数層積層する場合、それぞれの構成繊維の平均繊維径や繊維形状が異なっていても前述の平均繊維径や繊維形状の範囲内であれば何ら問題ない。
【0052】
また、本発明のポリマーアロイ長繊維不織布は、他の繊維を含んでいてもよい。例えば、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維との混繊、積層であってもよい。他の繊維としては、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維や、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等)、ポリアクリロニトルおよびポリ塩化ビニルなどの合成繊維などが適用できる。
【0053】
本発明の不織布の目付は5〜100g/mである。目付が5g/mを下回ると不織布の強度が不十分となる。目付が100g/mを超えると強度的には十分であるが、単位面積あたりのコストが高くなり、さらには柔軟性が失われる。好ましい目付の範囲は7〜70g/mであり、より好ましい範囲は10〜50g/mである。
【0054】
また、本発明のポリマーアロイ長繊維不織布は工程通過性や製品の機械的強度を高く保つために引張強力は10N/5cm以上であることが好ましく、15N/5cm以上がより好ましい。さらに好ましくは20N/5cm以上である。このような強度を有するポリマーアロイ長繊維不織布は、後述する溶融紡糸、延伸法により製造することが可能である。なお、現行の工業的な汎用プロセスの範疇では、長繊維不織布の引張強力を300N/5cm以上にすることは極めて困難である。
【0055】
なお、本発明において、縦方向とは不織布の長手方向、横方向とは不織布の幅方向を指す。
【0056】
ここでいう引張強力および破断伸度は、不織布からランダムに5cm×30cmの試料を縦方向が長尺となるよう3個採取して、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件で定速伸長型引張試験機にて引張試験を行い、試料が破断するまで引っ張ったときの最大強力を引張強力とし、破断時の伸度を破断伸度とする。シート縦方向、横方向それぞれの平均値について小数点以下第一位を四捨五入して算出する。
【0057】
また本発明のポリマーアロイ長繊維不織布は、衛生用品とした後の長期保管において、耐加水分解性に優れ、製品の外観が長期に渡って保持される。耐加水分解性の観点から温度70℃、湿度90%RHの条件下で、7日間処理した後の引張強力が、処理前の引張強力と比較して70%以上保持されていることが好ましい。より好ましい強度保持率の範囲は75%以上であり、最も好ましくは80%以上である。条件下での強度保持率が70%を下回る場合には、製品を長期保管した際にポリマーの加水分解によって不織布の機械的強度が低下し、製品使用時に破断する恐れがあり好ましくない。
【0058】
本発明のポリマーアロイ長繊維不織布の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば直接紡糸・延伸装置を用いて以下の方法を採用することができる。すなわち、前記したポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)の組み合わせにおいて、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)の比率を好ましくは1〜30重量部、より好ましくは5〜25重量部、最も好ましくは10〜20重量部とし、さらに相溶化剤(C)を好ましくは3〜13重量部、より好ましくは4〜10重量部、さらに好ましくは5〜7重量部としてそれぞれ計量し、ブレンドする。この際、吸湿しやすいポリ乳酸系樹脂(A)は予め80〜150℃、真空下、若しくは窒素下で乾燥しておき、乾燥後は吸湿防止容器等にストックしておく。ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融紡糸前の吸湿率は、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.02%以下、最も好ましくは0.008%以下である。
【0059】
次に、前述のポリマー特性およびブレンド比率の組み合わせにて、1軸混練機や2軸混練機等を用いて混練して一旦冷却した後チップ化するか、もしくは溶融状態のまま連続して紡糸装置に送り込み、計量した後、溶融紡糸を行い、ポリマーアロイの繊維化を行う。相溶化剤(C)の添加タイミングは、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の混練時に合わせて添加すればよく、添加方法は、相溶化剤をそのまま混練機に供給してポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)とともに同時混練してもよいし、相溶化剤(C)を高濃度に含有したマスターペレットを予め作成しておき、それをポリ乳酸系樹脂(A)およびポリオレフィン系樹脂(B)のペレットと混合して混練機に供給してもよい。溶融押出における混練時のジャケット温度は、ポリ乳酸系樹脂(A)の融点(以下Tmaと記載)を基準に、Tma+5℃〜Tmb+50℃で行い、剪断速度を300〜9800sec−1とすることが好ましい。この範囲のジャケット温度および剪断速度とすることで、均一性が高いアロイ相構造とし、かつ島成分のドメインサイズを十分小さくすることが可能になる。また、ジャケット温度は樹脂の着色を抑制するためにも低い方が好ましく、Tma+5〜30℃であることがより好ましい。同様に、上記のアロイ相構造を壊さず、かつ着色を防止するために、紡糸温度もできるだけ低温で行うことが好ましく、Tma+30℃〜Tma+70℃の範囲で行うことが好ましい。より好ましい紡糸温度はTma+30℃〜Tma+50℃である。
【0060】
また、紡糸パック内での島ドメインの再凝集を抑制してドメイン径を制御するために、ハイメッシュの濾層(#100〜#200)やポーラスメタル、濾過径の小さい不織布フィルター(濾過径5〜30μm)、パック内ブレンドミキサー(スタティックミキサーやハイミキサー)を口金上に配置してもよい。この中でも、複数の線径の金属不織布からなる多層フィルターが最もドメイン径の制御に効果的である。また、多層フィルターでのブレンド効果を高めるために、多層フィルターのコア部分である不織布の厚みは0.3〜3mmとすることが好ましい。厚みがある方がよりブレンド効果は高まるが、フィルターが厚すぎるとフィルター背面圧によりフィルター破れが発生しやすくなることから、より好ましくは0.4〜2mm、さらに好ましくは0.5〜1mm厚である。
【0061】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)は、非相溶系ポリマーであるため、ブレンド界面には高い界面張力が働き、溶融体は極めて弾性項が強い挙動を示してバラス効果による膨らみが発生する。そのためバラス効果による糸条の膨らみを抑制するとともに、安定して伸長・細化させて紡糸調子を向上させるために、次の条件を満たすことが好ましい。第1に、口金面温度を210〜240℃にする。第2に、該口金面温度における口金背面圧力を1〜5MPaにする。第3に、口金吐出孔内のポリマー平均流速を0.03〜0.30m/秒とする。
【0062】
口金面温度は、ポリマーの分子運動性を高めて吐出直後の島ドメインの緩和を促進させる狙いがある。上記の範囲とすることで、島ドメインが速やかに緩和し、ポリマーの伸長流動を阻害しにくくすることができる。また、口金背面圧力は、口金吐出孔内にてポリマー中に貯蔵される弾性エネルギー量と相関があるパラメーターである。口金背面圧力が低いほど、貯蔵される弾性エネルギーが小さいことからポリマーの伸長流動は安定するが、一方で、口金背面圧力が1MPaを下回ると、吐出孔の計量性が失われ、吐出が不安定になる。そのため、より好ましくは1〜4MPa、さらに好ましくは1〜3MPaである。また、口金吐出孔内のポリマー平均流速は、0.03〜0.3m/秒とすることで、「島ドメインの変形倍率」を小さく抑えることが可能になり、吐出直後の島ドメインの緩和促進と、伸長変形を安定させることができ、紡糸線上での大変形(高ドラフト化)が可能になる。口金吐出孔内のポリマー平均流速は、好ましくは0.04〜0.25m/秒、より好ましくは0.05〜0.20m/秒である。
【0063】
本発明におけるポリマーアロイ長繊維不織布には、本発明の効果を損なわない範囲で、防カビ剤や抗菌剤、難燃剤、親水剤、撥水剤、顔料、染料等が部分的あるいは全体に付与されていてもよい。
【0064】
本発明のポリマーアロイ長繊維不織布は、機械的強度や柔軟性に優れ、かつ良好な強度保持率を有することから衛生用品に好ましく用いられる。ここでいう衛生用品の具体例としては、保護着、下着等の1回程度の使用で使い捨てる使い捨て衣料、あるいは、サニタリーナプキン、パンティーシールド等の生理用品、あるいは成人用紙おむつ、ベビー用紙おむつ、失禁者パッド等の使い捨ておむつ、シーツ、ベッドカバー、枕カバー等の寝具、エプロン、手袋等のキッチン用品であるが、特にこれらに制限されるものではない。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
【0066】
(1)ポリ乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量
試料(ポリ乳酸系樹脂)のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。なお、不織布中のポリ乳酸の重量平均分子量を測定する場合には、試料をクロロホルムに溶かし、ポリオレフィン残渣を濾過して取り除き、該クロロホルム溶液を乾化してポリ乳酸系樹脂を取り出して測定を行った。
【0067】
(2)ポリ乳酸系樹脂の残存ラクチド量
試料(ポリ乳酸系樹脂)1gをジクロロメタン20mlに溶解し、この溶液にアセトン5mlを添加した。さらにシクロヘキサンで定容して析出させ、島津社製GC17Aを用いて液体クロマトグラフにより分析し、絶対検量線にてラクチド量を求めた。なお、繊維中のポリ乳酸の場合は、予めポリ乳酸とポリオレフィンのブレンド比率を後述するTEM像から求め、上記ラクチド量をブレンド比率により補正して求めた。
【0068】
(3)ポリマーの融点、結晶融解熱量
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7型を用い、試料20mgを昇温速度10℃/分にて測定して得た融解吸熱曲線の極値を与える温度を融点(℃)とした。また、該極値を形成するピークとベースラインとで囲まれる面積(結晶融解ピーク面積)から、ポリマーの結晶融解熱量△H(J/g)を求めた。
【0069】
(4)溶融粘度η
東洋精機(株)社製キャピログラフ1Bを用い、チッソ雰囲気下において測定温度を230℃に設定し、剪断速度6.1(sec−1)でポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)及び相溶化剤(C)の溶融粘度の測定をした。測定は3回行い、平均値を溶融粘度とした。
【0070】
(5)MFR
JISK7210に記載されている方法に従って、温度230℃、荷重21.2Nで測定した。
【0071】
(6)ポリマーアロイ繊維のブレンド比率
ポリマーアロイ長繊維不織布に含まれる延伸糸の繊維軸と垂直の方向(繊維横断面方向)に超薄切片を切り出し、該切片を4万倍の透過型電子顕微鏡(TEM)にてブレンド状態を観察・撮影した。不織布におけるポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)のブレンド比率は、上記のTEM像(5.93×4.65μm)から求められる断面積比を、各成分の比重により補正して重量比として求めた。ここで、本実施例での各成分の比重は、ポリ乳酸:1.24、ポリオレフィン:0.91を用いた。
TEM装置:日立社製H−7100FA型、条件:加速電圧100kV 。
【0072】
(7)繊度(デシテックス)
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維を任意に選び出し、その太さを測定した。繊維は断面が円形と仮定し、太さを繊維径(μm)とした。それらの平均値の小数点以下第二位を四捨五入して算出した繊維径とポリマーの密度から繊度を算出し、小数点第三位を四捨五入して求めた。繊維断面が非円形の場合は、内接円の直径と外接円の直径の平均値を繊維径と仮定し、求めた。
【0073】
(8)目付(g/m
不織布からランダムに縦方向50cm×横方向50cmの試料を3個採取して、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入した。
【0074】
(9)引張強力(N/5cm)および破断伸度(%)
不織布からランダムに5cm×30cmの試料を縦方向が長尺となるよう3個採取して、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件で縦方向に定速伸長型引張試験機にて引張試験を行い、試料が破断するまで引っ張ったときの最大強力を引張強力、また該引張強力における伸度を破断伸度とした。シート縦方向、横方向それぞれの平均値について小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
【0075】
(10)強度保持率(%)
不織布からランダムに幅5cm×長さ30cmの試料を縦方向が長尺となるよう3個採取した。恒温恒湿器(エスペック社製PR-3KP)を使用し、試料を温度70℃、湿度90%RH条件下にて7日間暴露した。恒温恒湿処理前後の試料に対しそれぞれH項と同様の方法で引張強力の測定を行い、以下の数式にて強度保持率を算出し、小数点以下第一位を四捨五入して求めた。
強度保持率(%)=100×(恒温恒湿処理後の引張強力の平均値/恒温恒湿処理前の引張強力の平均値) 。
【0076】
(11)衛生用品の触感(柔軟性)
試料衛生用品を手のひらで押したときの触感(柔軟性)を確認し、触感、外観それぞれについて対照試料(PPスパンボンド不織布をベビー用おむつのトップシートおよびバックシートに適用したベビー用おむつ)と比較して「極めて優れている」、「優れている」、「同等」、「劣っている」の4段階で評価を行なった。
【0077】
[ポリ乳酸]
(P1)融点177℃、溶融粘度770Pa・s、重量平均分子量23.3万、残留ラクチド量0.12重量%。
(P2)融点177℃、溶融粘度240Pa・s、重量平均分子量15万、残留ラクチド量0.10重量%。
【0078】
[ポリオレフィン]
(O0)MFR:100g/10分(230℃、21.2N)、融点162℃、結晶融解熱量105J/g、溶融粘度98Pa・s
(O1)MFR60g/10分(230℃、21.2N)、融点166℃、結晶融解熱量110J/g、溶融粘度128Pa・s
[相溶化剤]
(C1)アミノ基を含有するスチレン系エラストマーとして、アミノ基変性SEBS(JSR製“ダイナロン”8630P、スチレン含有量15重量%、MFR15g/10分(230℃、21.2N))、溶融粘度555Pa・s。
【0079】
(実施例1)
ポリ乳酸系樹脂(A)としてポリ乳酸P1、ポリオレフィン系樹脂(B)としてO0、相溶化剤としてC1をそれぞれ20重量部、80重量部、7重量部の割合(合計107重量部)でチップブレンドし、2軸押出混練機(同方向2軸、軸径45mm、L/D32)にてシリンダー温度190℃、軸回転数300rpmで混練してポリマーアロイチップを得た。得られたポリマーアロイチップを用いて、以下に示すスパンボンド法により不織布を得た。すなわち、ポリマーアロイチップを1軸押出機で溶融しながら溶融ポリマーを温度240℃に保温された紡糸ブロックに導き、さらにギヤポンプにて計量・排出し、内蔵された紡糸パックに溶融ポリマーを導き、矩形紡糸口金から紡出した。なお、紡糸パックの口金直上には絶対濾過径20μmのSUS不織布フィルター(不織布厚み:1mm)を組み込んだ。口金は、孔数が55ホール、孔径0.5mm、孔深度0.75mm、L/D1.5の丸孔を用いた。また、口金面温度は236℃であった。矩形口金から紡出した後、矩形エジェクターにより紡糸速度3200m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、熱圧着部(凸部)の面積率が16%であるエンボスロール及びフラットロールを使用して、温度137℃、線圧50kg/cmの条件で熱接着し、単繊維繊度1.8dtex、目付45g/m2の不織布を得た。なお、上記条件における口金背面圧力は1MPa、口金孔内の吐出線速度は0.05m/秒であった。紡糸、延伸工程において糸切れ等は発生せず、安定していた。
【0080】
得られた延伸糸の横断面のTEM観察を行ったところ、均一に分散した海島構造をとっていた。また、該糸断面の切片をアルカリエッチングしてポリ乳酸を溶解除去して観察したところ、島成分が欠落しており、ポリ乳酸が島成分を形成していることが確認された。得られた不織布の強度は53N/5cm、破断伸度は21%、強度保持率は100%と良好な機械的強度、耐加水分解性を示した。
【0081】
(実施例2)
ポリオレフィン系樹脂(B)としてO1を用い、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)をそれぞれ10重量部、90重量部、5重量部の割合(合計105重量部)とした以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。実施例2の紡糸性は実施例1と同様、安定していた。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、均一に分散した海島構造をとっていた。また、該糸断面の切片をアルカリエッチングしてポリ乳酸を溶解除去し観察したところ、島成分が欠落しており、ポリ乳酸が島成分を形成していることが確認された。また、得られた不織布は良好な機械的強度、耐加水分解性を示した。
【0082】
(実施例3)
ポリオレフィン系樹脂(B)としてO1、ポリ乳酸系樹脂(A)としてポリ乳酸P2、を用いた以外は実施例2と同様にして紡糸を行ったところ、口金直下でのバラス効果により膨らみが生じていたが、紡糸可能であった。得られた不織布の機械的強度、耐加水分解性は良好であった。
【0083】
(実施例4)
ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)をそれぞれ10重量部、90重量部、10重量部の割合(合計110重量部)とした以外は、実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、口金直下でのバラス効果により膨らみが生じていたが、紡糸可能であった。得られた不織布の機械的強度、耐加水分解性は良好であった。
【0084】
(比較例1)
ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)をそれぞれ80重量部、20重量部、7重量部の割合(合計107重量部)とした以外は、実施例3と同様にして紡糸を行ったところ、口金直下でのバラス効果により膨らみが生じており、また時折糸切れが発生したが、紡糸可能であった。得られた繊維の横断面のTEM観察を行ったところ、均一に分散した海島構造をとっていた。また、該糸断面の切片をアルカリエッチングしてポリ乳酸を溶解除去し観察したところ、海成分が欠落しており、ポリ乳酸が海成分を形成していることが確認された。得られた不織布の強度保持率を測定したところ、強度保持率は24%であり、恒温恒湿処理後の試料は劣化が進み形態は脆かった。
【0085】
(比較例2)
ポリオレフィン系樹脂(B)としてO1を用いたこと、相溶化剤(C)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、口金直下でのバラス効果により膨らみが生じ、さらに紡糸線上での伸長変形が不安定で紡糸することができなかった。
【0086】
(比較例3)
ポリ乳酸系樹脂(A)(ポリ乳酸P1)のみとし、熱圧着温度を143℃とした以外は実施例1と同様にして不織布を得た。比較例3の紡糸性は実施例1と同様、安定していた。得られた不織布の強度保持率を測定したところ、強度保持率は8%であり、恒温恒湿処理後の試料は劣化が進み形態は脆かった。
【0087】
(比較例4)
ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)をそれぞれ20重量部、80重量部、0.5重量部の割合(合計100.5重量部)とした以外は、実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、口金直下でのバラス効果により膨らみが生じ、さらに紡糸線上での伸長変形が不安定で紡糸することができなかった。
【0088】
(比較例5)
ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)をそれぞれ20重量部、80重量部、15重量部の割合(合計115重量部)とした以外は、実施例1と同様にして紡糸を行ったところ、口金直下でのバラス効果により膨らみが生じ、さらに紡糸線上での伸長変形が不安定で紡糸することができなかった。
【0089】
(実施例5)
実施例1にて得られた不織布をベビー用おむつのトップシートおよびバックシートに適用したベビー用おむつの試料を作製したところ、手触りは適度な腰があり、触感の評価は「極めて優れている」、外観の評価は「同等」であった。
【0090】
(比較例6)
比較例3にて得られた不織布をベビー用おむつのトップシートおよびバックシートに適用したベビー用おむつの試料を作製したところ、外観の評価は「同等」であったが、手触りが硬く、触感の評価は「劣っている」であった。
【0091】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、および相溶化剤(C)を配合してなるポリマーアロイからなる長繊維不織布であって、相溶化剤(C)が酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有する、アクリル系またはスチレン系のエラストマーであって、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)1〜30重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)99〜70重量部、相溶化剤(C)3〜13重量部であり、該ポリ乳酸系樹脂(A)が島成分を形成し、ポリオレフィン系樹脂(B)が海成分を形成した海島構造であることを特徴とするポリマーアロイ長繊維不織布。
【請求項2】
温度230℃、ずり速度6.1(sec−1)での溶融粘度測定において、前記長繊維不織布に含まれるポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度ηと、ポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度ηとの粘度比(η/η)が1.3〜10であることを特徴とする請求項1記載のポリマーアロイ長繊維不織布。
【請求項3】
温度70℃、湿度90%RHの条件下で7日間処理した後の強度保持率が70〜100%であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のポリマーアロイ長繊維不織布。
【請求項4】
前記ポリマーアロイ長繊維不織布がスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマーアロイ長繊維不織布。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマーアロイ長繊維不織布を用いてなる衛生用品。
【請求項6】
温度230℃、ずり速度6.1(sec−1)での溶融粘度測定において、ポリ乳酸系樹脂(A)の溶融粘度ηと、ポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度ηとの粘度比(η/η)が1.3〜10であり、かつポリオレフィン系樹脂(B)の溶融粘度ηが200Pa・s以下であって、ポリ乳酸系樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)の合計量を100重量部として、ポリ乳酸系樹脂(A)1〜30重量部、ポリオレフィン系樹脂(B)99〜70重量部、相溶化剤(C)3〜13重量部であり、さらに相溶化剤(C)が酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するアクリル系またはスチレン系のエラストマーであるブレンド系において、ポリ乳酸系樹脂(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、相溶化剤(C)を混練して一旦冷却してチップ化した後かまたは、溶融状態のまま連続して、紡糸装置に送り込み、計量した後、口金上に配置された金属不織布からなる多層フィルターを通し、更に口金面温度210〜240℃における口金背面圧力が1〜5MPa、口金吐出孔内のポリマーの平均流速が0.03〜0.30m/秒となる口金にて吐出したマルチフィラメントを、冷却、延伸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、熱圧着部(凸部)の面積率が5〜50%であるエンボスロール及びフラットロールを使用して、繊維表面に存在する樹脂の融点より5〜50℃低い温度で熱接着することを特徴とする衛生用品向けポリマーアロイ長繊維不織布の製造方法。

【公開番号】特開2011−214163(P2011−214163A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80692(P2010−80692)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】