説明

ポリマーコーティングのためのコバルトベースの触媒性乾燥剤

この開示は、ポリマーの自動酸化乾燥のための触媒に関し、特に塗料又はインクにおいて使用され、不飽和脂肪酸を基礎とし、多くが植物由来であるポリマーのためである。化合物はコーティングにおける重合剤としての使用が明らかになり、これはコバルトを有するアルキドポリマーを含み、前記ポリマーが0.5〜6質量%のコバルト含有量、3000より多い平均分子量を有し、かつ、コバルトカルボキシラート配列を含むことを特徴とする。幾つかのプロセスが、このコバルトを有するポリマーの合成を説明するために提示される。これらポリマーは、ポリマーの乾燥に向けてのコバルトの触媒作用を維持し、その一方で、これらは、水中で実質的に不溶性であることによりコバルトの毒性を大幅に抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、ポリマーの自動酸化による乾燥のための触媒に関し、特に塗料又はインクにおいて使用され、不飽和脂肪酸を基礎とし、多くが植物由来であるポリマーのためである。
【0002】
金属カルボキシラートは典型的に触媒として使用される。コバルトカルボキシラートは従来、少なくとも乾燥が室温でかつ妥当な時間内で行われなくてはならない場合に、主要かつ不可避の構成要素である。コバルトカルボキシラート、特にコバルトオクトアートの使用は、確かに広範囲に説明されており、そして、塗料産業を通じて慣例である(例えば、J. H. Bieleman, in Additives for Coatings, Ed J. H. Bieleman, Wiley/VCH, Weinheim, 2000, p 202)。
【0003】
GB-1232194-Aには、コバルトカルボキシラート単位を有するポリマーが、さび防止塗料における特定用途のために明らかにされている。この開示された組成物は、抗腐食性顔料の添加を不要にすると言われている。この生成物は、過剰な酸を使用して、化学量論的当量の量より少ない多価アルコールを、脂肪族ポリカルボン酸を有する金属水酸化物の反応生成物へと反応させることにより製造されると教示されている。この例は、相当な酸過剰量を有する生成物を例証し、これは、化学量論から計算して、反応性塩基に関して18%〜128%当量の過剰量に達する。このような酸性生成物は、一般的には適しておらず、というのも、これらは含有されるコバルトの相当な水浸出性(aqueous leacheability)を示すからである。
【0004】
コバルトは生命に必須の成分である(例えば、ビタミンB−12に含まれる)にもかかわらず、多くのコバルト化合物は毒性であるように見え、間違えようのない発癌作用を示し、これはin vivo吸入試験により実証されるとおりである。コバルトカルボキシラートは今のところ分類されていないが、しかし、水中及び水溶液中でカルボキシラートがコバルトイオンを放出することが実証されている。したがって、消費者塗料のためのこれら典型的な化合物の更なる使用は、極めて妥協されている。
【0005】
本発明は、ポリマーの乾燥に向かってコバルトの触媒作用を維持し、その一方で、毒性作用を大幅に回避する、新規クラスの、コバルトを有する化合物を明らかにする。
【0006】
第1の実施態様において、化合物は、コーティングにおける重合剤としての使用のために開示され、これはコバルトを有するアルキドポリマーを含み、前記ポリマーが0.5〜6質量%のコバルト含有量、3000より多い平均分子量を有し、かつ、コバルトカルボキシラート配列を含むことを特徴とする。相当な酸過剰量は好ましくは回避されるべきであり、というのも、さもなければ、コバルトの浸出性が、大抵所望されるレベルの50mg/l(これら化合物に適用可能なOECD 105ガイドライン試験による)を超えて急激に増加するからである。
【0007】
前記アルキドポリマーは、好ましいコバルト含有量1〜2.5質量%及び/又は4000より多い平均分子量を有する。このアルキドポリマーは好ましくは不飽和である。
【0008】
さらに、このポリマー中にP、N及びSの存在を回避することが有用である。
【0009】
この化合物は有利には、有機溶媒を含んでもよい。
【0010】
他の実施態様は、ポリマーベースのコーティング処方物中での重合剤としての上述の化合物の使用に関する。
【0011】
更なる一実施態様は、コバルト不含ポリマー化合物及び上述したコバルトを有する化合物を含むコーティング処方物に関する。このような処方物は好ましくはバインダーに対して0.02〜0.10質量%のコバルトを含む。
【0012】
このコバルト不含ポリマー化合物は有利には、不飽和脂肪酸改変されたポリマーである。
【0013】
コーティング処方物は好ましくは、このコバルト不含ポリマー化合物が、このコバルトを有する化合物中で、このアルキドポリマーと共重合するように適合されていることを特徴とする。
【0014】
更なる実施態様は、発明されたコバルトを有するポリマーの製造を導く方法に関する。
【0015】
第1の方法は、コバルト化合物、好ましくはコバルト水酸化物を、2000より多い平均分子量を有するカルボン酸官能性ポリマーと反応させることを含む。この酸官能性ポリマーは、既知の方法に応じて予備的段階において合成され、典型的にはこれは不飽和脂肪酸、ポリオール又はポリ酸から出発し、他の共反応物の性質及び量に関する限定はない。このポリマー形成反応は、約200〜250℃の温度で、反応水の除去を伴って、かつ、適した溶媒の存在下で実施され、この後者は反応水の除去にも役立つ。この生成物を、この生成物の適用と相容性である溶媒を用いて使用可能な粘度に希釈する。
【0016】
第2の方法は、不足化学量論量(sub-stoichiometric amount)の鉱物コバルト化合物、好ましくはコバルト水酸化物を、不飽和ポリマー状脂肪酸と反応させ、この後に、更なる重合を、3000より多い平均分子量が得られるまでポリオールを用いて実施することを含む。この更なる重合を、既知の方式で実施し、典型的にはポリオール、ポリ酸及び適していると考えられる任意の他の改変性化合物の添加下である;この反応は一般的には、200〜250℃の温度で適した溶媒の存在下で実施され、これは反応水の除去に役立ち、かつ、使用可能な限度内にこの粘度を維持する。
【0017】
第3の方法は、不飽和有機コバルト塩、好ましくはコバルトアジパートを、ジエンと反応させることを含み、これにより、3000より多い平均分子量を有するポリマー状構造が得られる。この温度は高められ、かつ、ジエン、例えばジシクロペンタジエンが緩やかに添加され、その一方で、この温度を還流下で200℃に維持し、かつ、この圧力を1barに制限する。この反応の完了後に、この過剰圧の消失により確認されるとおり、この過剰なジシクロペンタジエンを真空下で除去する。次いで溶媒、例えば、ExxsolTM D 40を添加し、この混合物を約100℃で完全な溶解まで撹拌する。
【0018】
「重合剤としての使用のための」全てのポリマーは、標的とされる塗料又はインク(これは典型的には有機化合物、特に油、例えば植物油を基礎とする)中で溶解性である、又は完全に溶解性ですらある、との含意(implicitly)を有することに留意されたい。さらに、コバルトカルボキシラート配列は、このポリマー鎖の不可欠部分ではあるが、このポリマーに対してコバルトの完全な触媒作用を付与する。しかし、コバルトの水溶性は大幅に抑制される。
【0019】
産業界においては、この種の化合物の分子量を決定するための幾つかの方法が知られている。例えば、この平均分子量と粘度(所定の溶媒希釈で測定した場合の)、及び温度との間での関係が確立されることができる。しかし、この場合においては、分子量はGPCを用いて決定されていた(ゲル浸透クロマトグラフィ)。Polymer Laboratories(R)からのGPCモデルPL−GPC−50が、ポリスチレンゲルカラム及び標準RI検出器と一緒に使用されていた。校正曲線は、系列275300、132900、70950、38100、19640、10210、5120、2590、1200及び580に応じた分子量を有するポリスチレン標準の注入によって定義された。この試料をTHF(テトラヒドロフラン)中で10g/lの濃度に希釈し、このカラムに注入した。この平均分子量を、この得られた分布から質量平均分子量として計算した。
【0020】
元素P、N及びSは一般的には、考慮される触媒中で回避されるべきであり、というのも、これらは、この塗料又はインクの乾燥能力に対して負の作用を有するからである。さらに、これらは、コーティングされた物品又は材料がリサイクルされる場合に、有毒燃焼ガスを生じる可能性がある。
【0021】
本発明において説明される化合物は、実際の技術水準において使用される生成物と同様の触媒活性を提供する。しかし、これらは、その低い水溶性のために、著しくより少ない毒性である。確かに、コバルト化合物の毒性は、例えば肺組織において、そのイオン形態にあるコバルトの存在に依存するが、この使用される化合物の水溶性が最重要である。
【0022】
重合剤のコバルト含有量は0.5質量%を超えるべきでなく、好ましくは1質量%である。さもなければ、多すぎる相対量のこの剤がこのコーティングにおいて必要とされることがあり、このことは、その特性の可能性のある劣化を生じる。他方では、6%を超えるコバルト含有量は、3000より多い平均分子量でもって調和させることは困難である。しかし、2.5%を超えるコバルト含有量が、このコバルトがほとんど不溶性であることが証明される場合であっても、この生成物の定性を毒性又は危険性として生じることがある。
【0023】
少なくとも3000の平均分子量が、このコバルトの溶解性を制限するための必要性により規定される。このような比較的長いポリマーは、確かに、水中での低溶解性を保証するために、十分に疎水性である。しかし、4000より多い平均分子量が好ましい。この平均分子量のための好ましい上限は、約30000である。より重い分子はコーティング処方物中で不溶性である可能性があり、このことは、この想定されている出願についてこの分子を不適にするものである。したがって、8000未満の平均分子量が好ましい。
【0024】
最後のコーティング処方物においては、バインダーに対して0.02〜0.1質量%のコバルトが必要とされる。より少量のコバルトは乾燥が遅すぎるペイントを生じ、その一方で、より多量のコバルトは実際的でない迅速な乾燥を、そしてこの塗料の限定されたポットライフを生じるものである。
【0025】
コバルトを有するポリマーの合成のための上述の3つの経路は、以下の実施例において説明される。このコバルトはこれにより、前述のアルキドポリマー中にカルボキシラートとして、より具体的にはジカルボキシラートとして組み込まれる。このコバルトは、この後者の形態においてだけ実質的に存在する。
【0026】
実施例1
第1工程:
−43.88部のダイズオイル、9.55部のペンタエリトリトールを窒素ガスシール(nitrogen blanket)下で240℃に2時間加熱する;
−180℃への冷却後、無水フタル酸16.23部を添加する;
−キシレンを添加して、220℃の系の沸騰温度を得、この場合に、反応水をディーンスターク水トラップ中で除去する;
−この混合物を還流を用いて、このポリマーの酸価が32mg KOH/gに低下するまで、一定に沸騰させたままにする;
−この混合物を約15%のExxsol TM D 40で希釈し、これは、最大0.1%の芳香族化合物及び引火点40℃を有する市販の脂肪族石油蒸留物である。
【0027】
第2工程:
−工程1の反応生成物に、1.01gの水酸化コバルトを添加し、この混合物をこの反応停止まで130℃に加熱する;この点で、明澄な生成物が得られ、もはや反応水は形成されない;
−この反応混合物を次いで、Exxsol TM D 40を用いて非揮発成分含有量70%へと希釈する。
【0028】
濾過後に、ピンク色の明澄な樹脂が得られ、これは、閉鎖した容器中に維持すると適度な安定性を示す。このコバルト含有量は約1質量%であり、すなわち、純粋なポリマーに対して1.43%である。このポリマーの平均分子量は約4000〜6000である。
【0029】
実施例2
第1工程:
−100部の二量体脂肪酸を8.32部の水酸化コバルトと、窒素ガスシール下で混合する;
−キシレンを添加し、この温度を、水酸化コバルトの完全な反応まで140℃に高める;
−真空を適用し、この残りの反応水をこの溶媒と一緒に除去する;
−この生じる生成物は、粘性のある材料のように見えるが、金属として計算してコバルト4.76%を含む。
【0030】
第2工程:
−第1工程において得られた粘性のある化合物21部を、20部のキシレン及び11.34部のペンタエリトリトール中に100℃で溶解する;
−この温度を窒素ガスシール下で220℃に高め、かつ、還流が得られるまでキシレンを添加し、この場合、この反応水をディーンスターク水トラップ中で除去する;
−3時間後に、キシレンを真空下で除去する;
−Exxsol TM 40を固形物含有量70%まで添加する。
【0031】
濾過後、約2.3質量%のコバルト含有量を有する生成物を得、すなわち、純粋なポリマーに対して3.3%である。このポリマーの平均分子量は約4000〜6000である。
【0032】
実施例3
−ガラス容器中で、実施例1、第1工程で得られた混合物67.5部を、希釈前に、新規に沈殿したコバルトアジパート12.5部と混合する;
−この混合物を160℃で1時間窒素ガスシール下で維持する;
−この反応容器を圧力設定にスイッチし、20部のジシクロペンタジエンを完全な還流下でゆっくりと添加する;
−この温度を、圧力発達が可能にするとおりにゆっくりと200℃に、この圧力が0.2bar未満に落ちるまで高める;
−真空に引っぱり、全ての過剰なジシクロペンタジエンを除去する;
−この反応生成物を次いで、Exxsol TM D 40を用いて非揮発成分含有量70%へと希釈する。
【0033】
濾過後、約0.7質量%のコバルト含有量を有する生成物を得、すなわち、純粋なポリマーに対して1.0%である。このポリマーの平均分子量は約4000である。
【0034】
次の実施例は、この生成物の十分適当な触媒作用、及び、そのほぼ完全な水中不溶性を実証する。
【0035】
実施例4
実施例1〜3に応じた生成物の性能を、ワニス中の乾燥剤触媒(drier catalyst)として試験した。
【0036】
この試験のために、Valires(R) RE570.06と呼ばれる標準アルキド樹脂(これは、溶媒型空乾塗料において使用される典型的なアルキド樹脂である)適量を、本発明によるコバルトを有する樹脂と、そして、産業の通例において一般的に使用される二次的Ca−及びZr−を有する乾燥剤と混合する。この混合比は、金属含有量0.05質量%Co、0.2質量%Ca及び0.1質量%Zrを有するワニスを得るために選択され、これは樹脂固形物に対して計算されている。Valirex(R) Zr 12及びCa 5は、それぞれCa及びZr供給源として使用された。
【0037】
比較のために、このワニス組成物は、発明されたコバルトを有する樹脂の代わりに、標準的なコバルトオクトアート乾燥剤を使用して調製もされた。
【0038】
このワニスをガラスプレートに設け、その乾燥時間をBraive(R)乾燥時間レコーダーで確認した。この結果は第1表に示されている。
【表1】

【0039】
本発明による触媒は、標準的なコバルト乾燥剤(比較実施例)に比較して、十分に適度な乾燥性能を示すように見える。
【0040】
実施例5
特定のコバルト化合物の発癌特性は、吸入試験で観察されるだけなので、コバルトの溶解性を合成の肺胞液(alveolar fluid)中で、化学薬品の試験のためのOECD 105ガイドラインに応じて試験した。フラスコ法が選択された。
【0041】
合成肺胞液は、0.9g塩化ナトリウムを蒸留水中に溶解することにより調製された。
【0042】
この液体の50ml分2つを、凝縮器を有するガラス容器中で調製した。これらは、マグネチックスターラーを備え、かつ、25℃で水浴中に配置された。このそれぞれの容器に、0.5gのコバルト含有化合物を添加し、1つは標準的コバルトオクトアートを基礎とし、もう1つは、実施例1〜3による新規のコバルト含有ポリマーを基礎とした。これら混合物を48時間かき混ぜた。
【0043】
この水相を次いで、有機平面(organic flatter)から濾紙上での濾過により分離し、この水をコバルトに関して滴定により分析した。
【0044】
この結果を第2表にまとめる。
【表2】

【0045】
50mg/lを十分下回るコバルト濃度を得る。これは優れた結果であり、というのも、100mg/lを下回る数値は既に最適であると考えられるからである。これは、コバルトオクトアート(比較実施例)を用いて得た880mg/lとは対照をなす。この後者の数値は実際、このオクトアート中に含まれるコバルトのほぼ完全な溶解に相応する。
【0046】
実施例6
このコバルトを有するポリマー中の有機酸の相当な過剰量は推奨されず、というのも、これは、このコバルトを有するポリマーからのコバルトの水溶性を高める可能性があるからである。
【0047】
これは、実施例6a〜6dに応じた合成の間の酸の増加量を伴うコバルトを有するポリマーの最初の合成により説明され、この際、このコバルトの溶解性は実施例5と類似の手順に応じて決定された。
【0048】
実施例6a
この例は、著しく過剰な酸なしでの合成を説明する。
【0049】
第1工程:
−200部の二量体酸及び600部の脱水したひまし油脂肪酸(DCO−FA)を混合し、窒素ガスシール下で100℃に加熱する。
【0050】
第2工程:
−200部のキシレンを添加し、次いで66.6部の水酸化コバルトを添加する;
−この温度を145℃にまで高め、この反応水を還流蒸留により完全に分離する;
−87部のグリセリンを添加し、かつ、この温度を220℃に高め、この場合に反応水をキシレンの還流下で分離する;
−最後に、キシレンを真空下で蒸留により180℃の低めた温度で除去する。
【0051】
この溶融物を注いで冷却させ、4.6%Co(質量に対する)を有する生成物を得る。
【0052】
実施例6b
実施例6aと同じ合成を実施し、しかしモノ−及びポリ酸の全質量に比較して、7.5%の付加的カルボン酸をネオデカン酸(Versatic TM 10)として使用した。この酸は、エーテル化反応には関与することが期待されていない。
【0053】
第1工程:
−60部のVersatic TM 10、200部の二量体酸及び600部の脱水したひまし油脂肪酸(DCO−FA)を混合し、窒素ガスシール下で100℃に加熱する。
【0054】
第2工程:実施例6aに示されるとおり。
【0055】
この溶融物を注いで冷却させ、4.5%Coを有する生成物を得る。
【0056】
実施例6c
実施例6a下の同じ合成を実施したが、しかし、10%の付加的カルボン酸を用いる。
【0057】
第1工程:
−80部のVersaticTM 10、200部の二量体酸及び600部の脱水したひまし油脂肪酸(DCO−FA)を混合し、窒素ガスシール下で100℃に加熱する。
【0058】
第2工程:実施例6aに示されるとおり。
【0059】
この溶融物を注いで冷却させ、4.2%Coを有する生成物を得る。
【0060】
実施例6d(比較例)
実施例6a下の同じ合成を実施したが、しかし、22%の付加的カルボン酸を用いる。
【0061】
第1工程:
−180部のVersaticTM 10、200部の二量体酸及び600部の脱水したひまし油脂肪酸(DCO−FA)を混合し、窒素ガスシール下で100℃に加熱する。
【0062】
第2工程:実施例6aに示されるとおり。
【0063】
この溶融物を注いで冷却させ、3.8%Coを有する生成物を得る。
【0064】
実施例7
実施例6a〜6dで得られる生成物からのコバルトの水溶性を、化学物質の試験のためのOECD 105ガイドラインを用いて決定した。この同じ手順を実施例5において使用したが、しかし、蒸留水を、合成肺胞液の代わりに使用した。この水相を、原子吸光分析を用いてコバルトについて分析した。
【0065】
実施例6a〜6dの結果は、第3表に示される。
【表3】

【0066】
酸過剰量を有するコバルトの水溶性における増加が明らかに示される。50mg/lのコバルトの好ましい溶解性限度を考慮すると、この酸過剰量を10%当量以下に限定することが勧められる。実際的な場合において、これは、40mg KOH/gの生成物より少ない酸度に相応する。20mg/g未満のより低い酸度がより一層好ましい。
【0067】
実施例8(比較)
実施例6aで作成したコバルトを有するポリマーに対して、20質量%の量のVersaticTMを添加し、十分に混合した。次いでこの生成物を、実施例7におけるのと同じ浸出試験に付した。
【0068】
この添加された酸は、10倍より多くコバルトの溶解性を増加させた。
【0069】
これら実施例は、コバルトを有するポリマー触媒中のコバルトの水溶性に対する全ての相当な過剰量のカルボン酸の負の作用を説明する。合成の間に添加されたか又は合成の後に添加された過剰な酸は、類似の有害な作用を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルトを有するアルキドポリマーを含み、前記ポリマーが0.5〜6質量%のコバルト含有量、3000より多い平均分子量を有し、かつ、コバルトカルボキシラート配列を含むことを特徴とする、コーティングにおける重合剤としての使用のための化合物。
【請求項2】
前記アルキドポリマーが、1〜2.5質量%のコバルト含有量を有することを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記アルキドポリマーが、4000より多い平均分子量を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
前記アルキドポリマーが不飽和であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
前記アルキドポリマーが、P、N及びSを実質的に含まないことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
さらに、有機溶媒を含む、請求項1から5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
ポリマーベースのコーティング処方物における重合剤としての、請求項1から6のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項8】
コバルト不含ポリマー化合物及び請求項1から7のいずれか1項記載のコバルトを有する化合物を含む、コーティング処方物。
【請求項9】
バインダーに対して0.02〜0.10質量%のコバルトを含有する、請求項8記載のコーティング処方物。
【請求項10】
コバルト不含ポリマー化合物が、不飽和脂肪酸改変したポリマーであることを特徴とする、請求項8又は9記載のコーティング処方物。
【請求項11】
コバルト不含ポリマー化合物が、前記コバルトを有する化合物中のアルキドポリマーポリマーと共重合するように適合されていることを特徴とする、請求項8から10のいずれか1項記載のコーティング処方物。
【請求項12】
次の工程のうちいずれか1つを含む、コバルトを有するポリマーの製造方法:
−コバルト化合物、好ましくはコバルト水酸化物を、2000より多い平均分子量を有するカルボン酸官能性ポリマーと反応させる工程、
−不足化学量論量の鉱物コバルト化合物、好ましくはコバルト水酸化物を、不飽和ポリマー状脂肪酸と反応させ、この後に、更なる重合を、3000より多い平均分子量が得られるまでポリオールを用いて実施する工程、
−不飽和有機コバルト塩、好ましくはコバルトアジパートを、ジエンと反応させる工程、この結果、3000より多い平均分子量を有するポリマー状構造が得られる。

【公表番号】特表2012−514084(P2012−514084A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543996(P2011−543996)
【出願日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009329
【国際公開番号】WO2010/076031
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(509126003)ユミコア ソシエテ アノニム (23)
【氏名又は名称原語表記】Umicore S.A.
【住所又は居所原語表記】Rue du Marais 31, B−1000 Brussels, Belgium
【Fターム(参考)】