ポリマーシェル
本発明は、ポリマーシェル(好ましくはセルロースヘミセルロースから構成される)の調製方法に関し、該方法は、第1溶媒(好ましくは有機溶媒)中に該ポリマー成分を溶解させ、該第1溶液と、第2溶媒(該第2溶媒は極性を有すると共に、該第2溶媒中に該ポリマー成分は実質的に不溶である)を接触させ、該ポリマー成分を沈殿させることにより、ポリマーシェルを得る工程を含む。さらに、本発明は、透過性および応答特性を有するポリマーシェル、並びにこのようなポリマーシェルを含む種々の用途、例えば薬物送達、分離技術およびとりわけ充填材に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性溶媒に不溶であり、透過性と応答性を備えるポリマーシェルを調製する方法、このようなポリマーシェル、および、薬物送達分野、分離技術分野、充填材分野における、このようなポリマーシェルを含有する種々の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのバイオポリマーは、種々の工業用途に対して魅力的な特徴を示しており、例えば、製紙業、繊維工業、薬学および種々の分離プロセスにおいて使用されている。セルロースおよびヘミセルロースは、紙および繊維の製造に関する主成分としてのみならず、薬物送達の媒体、生物医学およびバイオテクノロジー目的の主成分、および種々のクロマトグラフ分離技術用の固相成分として増加している非常に重要なバイオポリマーとして、広く特徴づけられている。直鎖状の親水性セルロースは、薬学的応用、例えば人の体内における酵素的分解に対して非感受性であり、免疫賦活特性がないといった、幾つもの興味深い特性を有している。さらに、それの有する高い機械的硬さは、種々の分離用途における固定相として、セルロースの使用をもたらしている。
【0003】
バイオテクノロジー的に進化した薬剤、例えば、種々の疾患を治療するための、タンパク質、ペプチド、siRNA、miRNAおよびアンチセンス・オリゴヌクレオチドなどの出現と共に、デリバリー媒体に対する効率的な要求が以前よりも増加している。さらに、多くの場合、常套の薬剤の放出性を改良することは、投与量の増加、副作用の減少および薬物動態特性を改良するために重要である。ポリマーシェル中に興味深い薬物を封入することは、該薬物の薬物動態を(場合によっては、その薬力学も)改良する1方法であり、それにより、例えば、局所的に放出させる処方をより長期間に亘り持続して放出することができ、また、厳しい胃腸環境若しくは経口投与による酵素的分解から薬物を保護する。
【0004】
分析目的および分離目的に関する効率的な分離工程は、多くの工業分野において極めて重要である。化学工業、パルプおよび製紙工業、石油化学工業、ならびに医療産業および医薬産業などは、種々の目的物のために、数多くの分離プロセス法に大きく依存している。多くの場合、分離はクロマトグラフ原理、すなわち、サンプルの成分を分離するために、被検出物を含有するサンプルを、固定相(固相)を介して通過させる原理に基づく。
多くの場合、固定相は、分離のための基準を形成する一定の特徴、例えば疎水性、サイズ、またはイオン電荷を示す高分子材料から構成される。さらに、固体の固定相は、分離の信頼性および再現性をもたらすために、例えば、機械的強度、化学的不活性および均一な大きさの観点において優れた性能を有する必要がある。上述した特徴の多くを備えると共に、種々の分子を放出および取り込むための選択的透過性を備える膜として機能できる高い所望特性を備えるので、ポリマーシェルは、固相材料としてますます使用されている。
【0005】
種々の目的に対するポリマー繊維は、長い間、様々な技術を用いて製造されているが、シェルと中空を有する実質的に球形の粒子の製造は、未だ複雑な方法で行われている。例えば、ビスコース形態のセルロース繊維は、ほぼ10年の間に減少しているが、迅速で信頼できる方法を用いてシェルを同様に製造することは、実質的により複雑な問題を有している。一般に、繊維の紡績は、溶解させたポリマー材料を加圧し、次いで、それをノズルから押出し、種々の化学的な相互作用により繊維が形成される浴槽内へ導入することによって行われている。体系的に分断された繊維内腔を形成できるこの方法は、現在のところ、ポリマーシェルの製造に対しては使用できない。現在のところ、通常、セルロースに基づくポリマーシェルは、付加的な補助添加剤、例えばポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、およびポリカプロラクトンなどの存在を必要とし、非効率で、ある程度の時間を要する工程を含み、溶媒の拡散および蒸発に依存する方法である、エマルション法で調製される。変性セルロースから成る中空ビーズも、後にポリマーの金属塩の生成を生じさせる、金属塩を含有する沈殿浴へ、液滴を添加することによって製造される。しかしながら、この方法は、更なる金属イオンを含有する硬化浴でビーズを硬化させる必要がある。薬物送達の観点から、金属イオンの顕著な存在は、その態様を限定することがあり、体内でアレルギー反応および望ましくないことが生じる場合がある。さらに、クロマトグラフ目的のためにこのようなシェルを用いることは、ある種の分離、例えばイオン電荷特性に基づく分離などにのみ適用が制限され得る。
【0006】
先行技術おいて記載されたセルロースに基づくポリマーシェルは、周囲条件に関係なく本質的に同一特性を示す、非応答性シェルに関する。効果的な薬物送達媒体またはクロマトグラフ系の固定相成分を調製するために、動的な応答性を備えるシェルを使用する必要がある。例えば、ポリマーシェルの浸透性、直径および体積を調節する能力は、更なる利点、例えば、ある外部条件に曝した場合に医薬組成物の放出を増加させること、またはサンプルの性質に応じてクロマトグラフコラムの特性を調節できることをもたらす。このような性質を有するポリマーシェルは、現在に至るまで、先行技術において開示されていない。
【0007】
したがって、例えば薬物送達またはクロマトグラフィ用途に関する、応答性で調節可能な性質を有するポリマーシェルを調製するために、危険な化学薬品を過剰量に用いない、迅速、単純、万能および堅固な製造法が、当該技術分野において要求されている。さらに、最小限の免疫賦活性をもたらすと共に、クロマトグラフィ分野における他用途性の増加をもたらす、対象となる炭水化物のみを実質的に含有する炭水化物ポリマーシェルは、先行技術において開示されていない。
【0008】
先行技術であるスウェーデン特許第358908号明細書は、ビスコースの紡績を介する、中空セルロース繊維の製造について開示する。該発明は高濃度のマグネシウムイオンを含有する紡績浴を開示し、紡績するビスコース繊維を、ノズルを介して紡績浴内を通過させる場合、ポリマーの膨潤能を減少させる効果がもたらされる。
【0009】
米国特許第2773027号明細書は、透析媒体として使用する、カルボキシメチルセルロースの金属塩から成る中空ビーズを調製する方法を開示する。カルボキシメチルセルロースの水溶液は、金属塩カルボキシメチルセルロースビーズを沈殿させる、金属塩水溶液から構成される沈殿浴内へ、滴下される。
【0010】
ソッピマスおよび共同研究者等は、変性セルロースを用いる浮遊中空マイクロスフェアを調製するための、溶媒蒸発技術に基づく方法を開示する(ソッピマス等、2006年、Journal of Applied Polymer Science,第100巻、第486頁〜第494頁)。添加剤、例えばポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、およびポリカプロラクトンなどは、分散溶媒として作用する酢酸エチルと共に、マイクロスフェアを形成するために使用される。
【0011】
溶媒蒸発技術の効率的な改良例として、ウタダおよび共同研究者は、高い統制度と可撓性を備えるコア-シェル形状を示すと共に、単一の内部液滴を含有する単分散ダブルエマルションを生成するミクロ毛細管装置を開示する(ウタダ等、2005年、Science、第308巻、第537頁〜541頁)。更に、該ミクロ毛細管装置は、ポリ(ブチルアクリレート)-b-ポリ(アクリル酸)(PBA-PAA)ジブロックコポリマーを含有するW/O/W型エマルションを用いるポリマーベヒクルの製造に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】スウェーデン特許第358908号明細書
【特許文献2】米国特許第2773027号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ソッピマス等、2006年、Journal of Applied Polymer Science,第100巻、第486頁〜第494頁
【非特許文献2】ウタダ等、2005年、Science、第308巻、第537頁〜541頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上記の欠点を克服すると共に、所望される要求を満足するポリマーシェルを調製するための簡単な方法を提供することである。したがって、本発明は、極性溶媒に不溶であり、本質的にセルロース/ヘミセルロースのみを含有し、シェル自体が応答性で調節可能な特性を示すポリマーシェルの調製方法に関する。このようなシェルに関する種々の用途には、薬物送達用途、分析および予備分離技術の範囲、ならびに充填材および/または包装材としての種々の用途が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
より具体的には、本発明方法は、
(i)第1溶媒(好ましくは有機溶媒)中にポリマー成分を溶解させる工程と、
(ii)該第1溶液を、該ポリマー成分は実質的に溶解させず、極性を有する第2溶媒と接触させることによって該ポリマー成分を沈殿させることにより、ポリマーシェルを得る工程を含む。この方法は、更なる賦形剤または硬化浴を用いることなく、応答性で調節可能な性質を示と共に、対象となるポリマーのみを本質的に含有するポリマーシェルの形成を、迅速に、拡張可能に、および堅固に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、1.5〜13の範囲におけるpHに対する、ポリマーシェル総径の初期測定値を示す。X軸:pH、Y軸:総径(mm)、G=Grycksboパルプ、HD=高Ds(高置換度)パルプ、LD=低DSパルプである。
【図2】図2は、1.5〜13の範囲におけるpHに対する、ポリマーシェル総径に関する後の測定値を示す。X軸:pH、Y軸:総径(mm)、G=Grycksboパルプ、HD=高Dsパルプ、LD=低DSパルプである。
【図3】図3は、1.5〜13の範囲におけるpHに対する、ポリマーシェルの壁厚の初期測定値を示す。X軸:pH、Y軸:壁厚(mm)、G=Grycksboパルプ、HD=高Dsパルプ、LD=低DSパルプである。
【図4】図4は、1.5〜13の範囲におけるpHに対する、ポリマーシェル壁厚の後の測定値を示す。X軸:pH、Y軸:壁厚(mm)。
【図5】図5は、0〜0.1モル/lの範囲における塩濃度に対する、ポリマーシェル総径の初期測定値を示す。X軸:塩濃度(モル/l)、Y軸:総径(mm)。
【図6】図6は、0〜0.1モル/lの範囲における塩濃度に対する、ポリマーシェル総径の後の測定値を示す。X軸:塩濃度(モル/l)、Y軸:総径(mm)。
【図7】図7は、0〜0.1モル/lの範囲における塩濃度に対する、ポリマーシェルの総壁厚(1次元)の初期測定値を示す。X軸:塩濃度(モル/l)、Y軸:壁厚(mm)。
【図8】図8は、シミュレーションしたドラッグ放出実験を示し、pH2の条件下、脱イオン水中での長期間に亘る染料の放出(ビーズ外部の濃度)をプロットしたものである。X軸:時間(単位、分)、Y軸:正規化した濃度、U=未処理、C=CaCO3
【図9】図9は、本発明において使用される、マイクロ流体に関する反応チャンバを示す。例えば、以下の表に記載の項目を有する。
【図10】図10は、溶液内へ二酸化炭素を30分間供給する場合における、壁厚とポリマーシェルの内部空間との関係を示す。X軸:セルロース溶液中の溶解パルプ(%)。Y軸:シェルの構成。白い箇所は壁厚に相当する。黒い箇所は空洞に相当する。
【図11】図11は、溶液内へ二酸化炭素を5分間供給する場合における、壁厚とポリマーシェルの内部空間との関係を示す。X軸:セルロース溶液中の溶解パルプ(%)。Y軸:シェルの構成。白い箇所は壁厚に相当する。黒い箇所は空洞に相当する。
【図12】図12は、ポリマーシェルの密度(kg/dm3)とポリマー濃度(重量%)との関係を示す。X軸:セルロース濃度(重量%)、Y軸:密度(kg/dm3)。
【図13】図13は、1%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図14】図14は、1.5%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図のSEM写真を示す。
【図15】図15は、1.5%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図のSEM写真を示す。
【図16】図16は、1%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図17】図17は、1.5%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図のSEM写真を示す。
【図18】図18は、2%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図のSEM写真を示す。
【図19】図19は、マイクロ波で乾燥させたシェルのSEM写真を示す。
【図20】図20は、本発明において使用される、マイクロ流体に関する反応チャンバと、ポリマーシェルの拡大図を示す。例えば、下記表に記載の項目が存在する。
【0017】
【表1】
図9における項目
【0018】
【表2】
図20における項目
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、極性溶媒に不溶であり、本質的に好ましくはセルロース/ヘミセルロースのみを含有し、シェル自体が応答性を示すと共に調節可能な特性を示すポリマーシェルの調製方法に関し、また、薬物送達目的、分析および予備分離技術の範囲における、このようなポリマーシェルの種々の適用に関する。
【0020】
詳細な説明および実施例から明らかなように、「シェル」という用語は、(i)0.1μm〜10mmの間の大きさを有し、(ii)気体、液体および/または固形物を含有する十分な空間を包含し、(iii)多糖、例えば、セルロース若しくはヘミセルロース、またはセルロースおよびヘミセルロースの性質に近似することが予期できる性質を備える任意の別の多糖、あるいはキトサン、ガラクトグルコマンナンおよび/またはそれらの任意の誘導体の繰返し単位から構成される例えば炭水化物材料を含有する少なくとも1種のポリマー材料を含有する、任意構造に関する。「空間」という用語は、気体、液体および/または固形物を含有し、該シェルにより包まれることにより生じる、規則的または不規則的な幾何学的形態により定義される任意体積に関する。
【0021】
特徴的な実施態様または本発明の態様は、マーカッシュ・グループから説明され、当業者は、本発明がマーカッシュ・グループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループから説明されることを理解できる。さらに、当業者は、本発明がマーカッシュ・グループの個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの任意の組合せにより説明されることも理解できる。
【0022】
本発明による方法における1態様は、適当なポリマー成分を調製し、第1溶媒(好ましくは、非極性溶媒)中に該成分を溶解させ、所望により、例えば、該第1溶液中に気体を溶解させるか、または該第1溶液を印加することなどにより、コア形成性物質(該ポリマー成分は、該コア形成性物質中に実質的に混和しない)を、ポリマー成分を含有する該溶液と混合させることによって、コアを該コア形成性物質から形成させ、次いで、第1溶液を、該ポリマー成分を実質的に溶解させず極性を有する第2溶媒と接触させることによってポリマー成分を沈殿させることにより、所望により該コアの周囲に形成されることもある該ポリマーシェルを得る。
【0023】
ポリマー成分は、天然若しくは合成の、任意のポリマーであってもよく、実質的には不活性または生物活性を有し、例えば多糖、例えば、セルロース若しくはヘミセルロース、またはセルロースおよびヘミセルロースの性質に近似することが予期できる性質を備える任意の別の多糖、あるいはキトサン、ガラクトグルコマンナン、グリコサミノグリカン、ヘパリンスルフェート、ヒアルロナン、コンドロイチンスルフェート、またはプロテオグリカン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルなど、あるいはそれらの任意の誘導体が含まれる。
【0024】
第1溶媒は、ポリマーを溶解させる任意の溶媒であり、例えば、有機溶媒、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)またはN-メチルモルホリンオキシド(NMMO)である。
【0025】
好ましくは、第2溶媒は、それらの中においてポリマーが溶解しないように極性を有し、以下のものが含まれる:例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1,2-ジクロロエタン、および/またはトルエンなど。水(極性指数9)、エタノール(極性指数5.2)、1,2-ジクロロエタン(極性指数3.5)またはトルエン(極性指数2.4)の使用、またはこれらの溶媒の任意の組み合せは、ほぼ即時にセルロースシェルの沈殿および形成がもたらされ、一方、シクロヘキサン(極性指数0.2)の使用は、より穏やかなシェル形成がもたらされる。このことより、少なくともセルロースを使用する場合、ポリマーシェルの急速な沈殿が停止するのは、極性指数が0.2〜2.4の間にある場合であると推測される。
【0026】
「コア形成性物質を混合させる」という用語は、コア(例えば気泡状態)を形成する能力を有する物質または成分、例えば、二酸化炭素、空気、アルゴン、窒素、水素および/または液化石油ガス(LPG;40%ブタンおよび60%プロパン)などが、例えば溶液内へ気体を供給するか、または溶液を加圧することによりポリマー溶液へ導入され、その結果、溶液中にガスを可溶化させることを意味する。本発明の精神に含まれる別のコア形成性物質は、例えば、コアを形成できる液体および/または固体および/またはエマルションに関連してもよい。さらに、コア形成性物質は種々の活性物質を付加的に含有してもよい。
【0027】
本発明の方法による実施態様は、適当な多糖材料、例えば、セルロース若しくはヘミセルロース、またはセルロースおよびヘミセルロースの性質に近似することが予期できる性質を備える任意の別の多糖、またはキトサン、ガラクトグルコマンナン、あるいはそれらの任意の誘導体を調製する工程を含む。該態様は、所望により、少なくとも1種の有機溶媒(好ましくはDMAc)と少なくとも1種の金属イオン(好ましくは、アルカリ金属イオン)を含有する第1溶液にポリマー成分を溶解させる前に、水、メタノールおよびジメチルアセトアミド(DMAc)または任意の別の有機溶媒で、ポリマー成分を繰り返して洗浄する工程も含む。本発明の範囲に含まれる別の有機溶媒は、N-メチルモルホリンオキシド(NMMO)であり、この溶媒の使用は、金属イオンの完全な欠如を必要とする。一般に、溶液中に溶解させるポリマーの量は、選択したポリマーの性質、特に分子量、置換度、および置換基の種類に基づき、約0〜25%(W/W)、好ましくは0〜5%(W/W)の範囲である。有機溶媒(例えばDMAc)中の金属イオンは、ポリマーの分子内または分子間の水素結合を阻害し、該ポリマーの溶解性を増加させる。リチウムイオンが好ましいが、別のアルカリ金属および金属イオンも使用でき、例えば、Mg、Na,Fe、AlおよびCuが含まれる。濃度範囲は、好ましくは0.1〜25%(W/W)、より好ましくは5〜10%(W/W)である。所望により、ポリマーシェルの生成を向上させるためのコアを形成するために、コアの形成を更に促進する液体および/または固体および/または気体を添加する、例えば、該第1溶液内に適当な気体を供給すること、または適当なガス(例えば、二酸化炭素、空気、アルゴン、窒素、水素および/またはLPG)で加圧することにより、コア形成性物質を該溶液中に混合させてもよい。そして、最後にポリマー溶液を、極性を有すると共にポリマー成分が不溶である溶媒を含有する第2溶液へと移動させて、その後、該第2溶媒に対して不溶性であるポリマーシェルを沈殿させ生成させる。
【0028】
別の実施態様において、ポリマーシェルを調製する方法は、第1溶媒中にポリマー成分を溶解させ、その後、該ポリマー含有溶液内へコア形成性物質を混合させる工程を含む。コア形成性物質は、以下のものを含む群から選択できる:少なくとも1種の気体、少なくとも1種の液体および/または少なくとも1種の固体、特に、CO2、空気、アルゴン、窒素、水素、LPG、水、ヘキサンおよび/または任意の別の炭化水素、および/またはPDMSおよび/または任意の別のポリシロキサン。最後に、第1溶液を、該ポリマーを実質的に溶解させず、極性を有する第2溶媒と接触させることによりポリマー成分を沈殿させ、それによって、ポリマーシェル(所望により該コアの周囲に形成されることもある)を得る工程を経て、ポリマーシェルが形成される。
【0029】
本発明の更なる実施態様は、沈殿させた後にポリマーシェルをマイクロ波乾燥させる更なる工程含む、透明で、固く、弾性のあるポリマーシェルの調製方法を開示する。この方法により、透明で弾性のあるシェル、好ましくはセルロースおよび/またはヘミセルロース、または同様の性質を有する別のポリマーを含有する該シェルが得られる。マイクロ波乾燥は、家庭用のマイクロ波オーブン、例えば50〜1500W、好ましくは約800Wの該マイクロ波オーブンを用いて行うことができる。該乾燥は、乾燥条件およびシェル自体に依存して、約10秒から数時間程度行うことができる。上記方法から得られるポリマーシェルは、興味深いことに、高い物理的性質、例えば、弾性(すなわち、印加した物理的圧力を開放した際に、シェルはその原形に戻る)、剛性、および透明性を有する。
【0030】
本発明の別の態様は、適当な多糖材料、例えばセルロース若しくはヘミセルロース、またはセルロースおよびヘミセルロースの性質に近似することが予期できる性質を備える任意の別の多糖、あるいはキトサン、ガラクトグルコマンナン、あるいはそれらの任意の誘導体を調製する工程と、少なくとも1種の有機溶媒(好ましくはDMAc)と少なくとも1種の金属イオン(好ましくは、アルカリ金属イオン)とを含有する第1溶液に対して該ポリマー成分を溶解させる前に、水、メタノールおよびジメチルアセトアミド(DMAc)または任意の別の有機溶媒で、ポリマー成分を繰り返して洗浄する工程も含む。一般に、溶液中に溶解させたポリマーの量は、選択したポリマーの性質、特に分子量、置換度、および置換基の種類に基づき、約0〜25%(W/W)、好ましくは0〜5%(W/W)の範囲である。有機溶媒(例えばDMAc)中の金属イオンは、ポリマーの分子内または分子間の水素結合を阻害し、該ポリマーの溶解性を増加させる。リチウムイオンが好ましいが、別のアルカリ金属および金属イオンも使用でき、例えば、Mg、Na,Fe、AlおよびCuが含まれる。濃度範囲は、好ましくは0.1〜25%(W/W)、より好ましくは5〜10%(W/W)である。
【0031】
所望により、ポリマーシェルの生成を向上させるためのコアを形成するために、コアの形成を更に促進する液体および/または固体および/または気体を添加する、例えば、該第1溶液内に適当な気体を供給すること、または適当な気体(例えば、二酸化炭素、空気、アルゴン、窒素、水素および/またはLPG)で加圧することにより、コア形成性物質を該溶液中に混合させてもよい。その後、第1溶液を加熱して溶液中に存在する水を蒸発させ、次いで、圧力を上昇させるか、または溶液内へ気体を供給することにより、該溶液を気体に曝してそれを溶解させる。このことにより、気体および/または液体および/または固体を含有するコアを形成させる。加圧処理は、適当な気体で溶液を加圧することにより該ポリマー溶液中に該気体を溶解させるか、または、溶液を、少なくとも1つの毛細管若しくは毛細管系の内部を強制的に通過させ、および/またはマイクロ流体用装置内を通過させることによりおこなえる。最後に、ポリマー溶液を、極性を有すると共にポリマー成分が実質的に不溶である溶媒を含有する第2溶媒へ導入し、次いで、該第2溶媒に対して不溶性である(所望によりコアの周囲に形成されることもある)ポリマーシェルを沈殿させて生成する。
【0032】
本発明に対して適当なポリマー材料は、例えば、セルロース若しくはヘミセルロース、またはセルロースおよびヘミセルロースの性質に近似することが予期できる性質を備える任意の別の多糖、あるいはキトサン、ガラクトグルコマンナン、および/またはそれらの任意の誘導体である。好ましくは、ポリマー材料は1または複数の糖類の繰返し単位を含有するが、他の炭水化物および非炭水化物ポリマーも半発明の範囲に含まれる。ポリマー材料は、実質的に不規則な状態であり非晶質形態であるが、結晶形態またはこれら2つの混合形態を生じていてもよい。本発明の1つの実施態様において、ポリマー材料は、0〜25%(w/w)の濃度範囲、好ましくは0〜5%(w/w)の濃度範囲で、金属イオン/有機溶媒を含有する溶液中に溶解させることができる。本発明によると、複数種の木材パルプを実質的に処理しない形態で使用できるので、最も多く存在する技術に比べて際立った利点をもたらしている。シェルのポリマー含有量は、それらの外径に影響を及ぼさないが、溶媒中でのポリマー濃度が増加することは、直線的ではないものの、壁厚および密度を増加させる。特定の理論に制約されるわけではないが、溶液中でのポリマー濃度の増加は、より多量の入手可能な構成成分をもたらし、より厚い壁厚とより高い密度をもたらす。あるいは、溶液中での高いポリマー含有量は、粘度を増加させるので、気体の溶解時間を長引かせる。
【0033】
セルロース溶液内へ二酸化炭素を30分間かけて供給する場合(図10参照)、壁密度と、ポリマーシェル内部の空洞との関係は、1%〜2%のセルロース濃度間隔において、壁厚が若干増加していることが判る。しかしながら、溶液内へ二酸化炭素を僅か5分間だけ供給する場合(図11参照)、0.5%〜2%のセルロース濃度間隔に対して、壁厚は著しく増加している。これらをまとめると、種々の壁厚およびシェル密度は、シェルの特徴、例えば機械的性質および拡散率に影響を及ぼすことができる。したがって、本発明は、応答性の物理的特性を備えるポリマーシェルをもたらし、多くの技術分野において高い特性を示すものと考えられる。
【0034】
本発明による1つの実施態様において、第1溶媒中における金属イオンまたはアルカリ金属イオン濃度は、0.1〜25%(w/w)、好ましくは5〜10%(w/w)の範囲である。アルカリ金属イオンまたは金属イオンは、リチウムを含有することが好ましいが、当業者において既知の他のイオン、例えばMg、Na、Fe、Cu、Al、Ni、Zn、K、Beも使用できる。
【0035】
本発明の別の実施態様において、第1溶液を加圧するための気体は、二酸化炭素、または、当業者において既知の他の適当な気体、例えば、空気、アルゴン、窒素、水素および/またはLPGである。これらを使用することにより、ポリマーシェルの形成を促進できる。本発明によると、ポリマー材料を含有する加圧された(金属イオン/有機溶媒)溶液は、第2の沈殿溶液へ導入される際に、シェルの形成を促進する。加圧された第1ポリマー溶液を、非溶媒(すなわち極性溶媒を含有する極性の溶媒)へ添加する場合、それを該極性溶媒と接触させることにより、ポリマーは沈殿し、気泡はポリマー液滴内に核を形成する。ポリマーシェルの形成をもたらす第2溶液と接触させる際、第1ポリマー溶液内の、核形成される気泡内の高い圧力は、ポリマー材料の外方への膨張を生じさせる。LPGの使用は、他の気体と比べて、ポリマーシェル内部の空間を十分に増加させる。再び、特定の理論に制約されるわけではないが、説明できることは、ポリマー溶液中におけるLPGの溶解度が増加することに付随して、ポリマーシェルに興味深い応用性をもたらす数多くの変数が生じるものと考えられる。
【0036】
シェルの球形を増加させるために、沈殿を生じさせる非溶媒の表面張力を減少させてもよく、例えば、界面活性剤(例えば、両性の界面活性剤、非イオン性界面活性剤、および/またはアニオン性の界面活性剤など)を使用する1つの実施態様が挙げられる。再び、特定の理論に制約されるわけではないが、沈殿浴へ界面活性剤を添加する場合、非溶媒の減少した表面張力に起因して、ポリマーシェルの球形が増加している。このことは、表面浸透が促進されると共に衝撃が低減される結果、沈殿する間に、球状で液滴様の形状が維持されるためであると考えられる。
【0037】
本発明の更なる実施態様においては、物理的現象、例えばポリマーを溶解させる容器と沈殿浴または二酸化炭素の核生成を行う容器との間の圧力差などにより、第1溶液を第2溶媒へ移動させる。この実施態様において使用される装置は、溶解させたポリマーと金属イオン/有機溶媒を含有し加圧される第1溶液を含む容器、該溶液を移動させるための部品、および極性を有する溶媒(該溶媒に対して不溶性のポリマーシェルを沈殿させる溶媒)を含む溶液を含有する沈殿回収容器を具備する。本発明の別の態様においては、噴霧装置を使用することにより、第1ポリマー溶液を沈殿用の第2溶媒へと移動させる。該噴霧装置をポリマー溶液と接続させ、その後、該溶液を、極性溶媒(すなわち、該極性溶媒に不溶性のポリマーシェルが形成される溶媒)へと噴霧する。本発明の更なる実施態様においては、例えばピペットまたは液体を輸送するための任意の実験器具を使用して、第1溶液を、第2溶媒を含有する沈殿浴へ手動で移動させる。
【0038】
更なる実施態様において、上述の方法は、マイクロ流体用装置内および/または毛管系内において行われる。本発明の好ましい実施態様は、2つの実質的に円筒形状の、連続して整列させたマイクロ流体用容器を具備し(例えば図9参照)、第1溶液をその内部に含む1つの噴射チューブと、極性の第2溶液をその外部に含む1つの集合チューブは、前記外部の第2流体および中間流体を内部に含む外部容器によって部分的に包囲される。中間流体は噴射チューブ内部から放出されるポリマー溶液に対して直接的な力を作用させ、その結果、チューブ内部からのポリマー流体を、ポリマーシェルが沈殿して形成される集合チューブ内の第2沈殿流体(ポリマー成分、従ってポリマーシェルが不溶性である流体)内へと移動させる。本発明の別の実施態様は、移送部品を介して連結させた、少なくとも2つの連続して組立てられた容器から構成される系に関し、該系において、一方の容器から次の容器への連続的な圧力降下は、ポリマー溶液を一方の容器から次の容器へと移動させると共に、沈殿容器内において、極性溶媒に不溶性のポリマーシェルを沈殿させる。
【0039】
更なる実施態様は、ポリマーシェルの調整方法を開示し、該方法は、第1溶媒中にポリマー成分を溶解させる工程と、次いで、得られた溶液とコア形成性物質(ここで、該コア形成性物質は、W/O型(water-in-oil)エマルションである)とを混合させる工程を含む。最後に、第1溶液と、第2溶媒(該第2溶媒は例えば水であり、所望によりエマルション系に由来する)とを接触させることにより、ポリマー成分を沈殿させ、これにより、ポリマーシェルがもたらされる工程を含む。
【0040】
本発明の1実施態様において、ポリマーを溶解させる溶媒は、ポリマーシェルの沈殿後に回収され再利用される。本発明による特に好ましい実施態様において、溶媒はNMMOであり、該溶媒は濃縮された場合においてのみ効果的なセルロース溶媒となる。このことは、シェルを沈殿させる時、NMMOを水と混合させてセルロースシェルから該NMMOを分離し、その結果、水を取り除くことにより溶媒として再利用できることを示唆する。この場合、爆発を防ぐために、金属またはアルカリ金属イオンの欠如が重要である。ポリマー溶媒としてDMAC/LiCl-混合液を使用する場合、両化学薬品は、水を除去した後に再利用できる。この溶媒混合液の使用は、アルカリ金属イオンが存在する状態においても、爆発の危険性をもたらさない。
【0041】
本発明の実施態様によると、ポリマーシェルはCaCO3の存在下で形成され、シェルが該化合物を含有することにより、実質的に可逆的に密封された内部空間がもたらされる。低いpH域に曝すことでCaCO3の溶解度は増加し、その後、ポリマーシェル中に細孔の形成がもたらされ、そして、少なくとも数時間に亘り、所望により包含された化学物質の拡散と持続放出を促進する。
【0042】
本発明による更に別の実施態様においてポリマーシェルを沈殿させるための流体は、可溶性のポリマーまたは化合物を含有し、これによって所望の効果、例えばシェルの密封または表面の機能化に関連する効果を付与するようにシェル表面をコーティングする。このような化合物は、これらに限定されないが、キトサン、ガラクトグルコマンナン、キシログルカンおよび/またはCaCO3を含むことができる。
【0043】
本発明の別の態様は、炭水化物ポリマーを実質的に含有するポリマーシェルに関し、この場合、該シェルの外径に対する内径の比率は、塩濃度を変化させるおよび/またはpH値を変化させることにより調節可能である。本発明によると、ポリマーシェルを、2〜3時間の期間をかけて1〜13のpH域の溶液中に放置するか、または平衡に達するまで放置する場合、極性溶媒に不溶性のポリマーシェルの外径および壁厚は共に減少する。
【0044】
本発明によると、シェルの内径方向の膨潤は、pHおよび塩濃度を変化させる結果としてもたらされ、pHの減少に伴いポリマーシェル内部の空間における体積が増加し、塩濃度の増加に伴い体積が減少する。本発明によると、pHが上昇する場合に、シェル内部の空間の体積が減少することは、主に、pHの上昇と共にシェルの壁の厚さが増加する結果として導かれ、また、塩濃度の増加に伴いシェル内部の空間の体積が減少することは、塩濃度が増加する場合にシェルの壁の厚さが増加することに由来する。その結果、本発明によると、塩濃度を変化させるおよび/またはpHを変化させることによりもたらされる膨潤は、相対的に一定な外径と、内径方向への膨張を生じさせ、また、シェル内部の空間体積は塩濃度とpHに反比例する。
【0045】
本発明によると、ポリマー材料にもよるが、pHを1.5〜10へ増加させる場合、ポリマーシェルの壁の初期厚さは0.3〜0.55mmの間で増加する。同じような方法で、しかし、溶液内で2〜3時間に亘りより適度に放置した後における、シェルの壁厚は、前記pH域に対して0.2〜0.25mmの範囲で増加する。本発明の更に別の実施態様において、シェルの壁厚は、ポリマー溶液中のガスの可溶化度(すなわち、溶解したガスの量)に基づき調節できる。本発明は、シェル自体が動的に修正可能な特性を備え、極性溶媒に不溶性のポリマーシェルの調製方法と、それらの用途を開示する。シェルの化学的性質および物理的性質が、単純な因子、例えば塩濃度の変化およびpHの変化などを介して制御および調節できるという事実により、本発明の精神に含まれる多くの用途、例えば、薬物送達用途、クロマトグラフィ分離用途、および他の利用法、とりわけ、包装材、充填材、目地材または耐候材(weathering)としての利用に対して、このようなシェルは非常に望ましい。
本発明の1実施態様によると、pHの減少はシェル内部空間の体積を増加させ、ポンプまたは膜の特性を備えるシェルをもたらす。同じような方法の、ある実施態様において、塩濃度の減少は、シェル内部の空間の体積を増加させる。別の実施態様において、逆の変化を行ってもよい。塩濃度およびpHの変化は、極性溶媒に不溶性のこれらのポリマーシェルを使用する種々の分野でもたらされる、種々の生物系、化学系および物理系において見出すことができる。本発明によると、より高いpHはポリマー上の官能基のイオン化を誘導し、その結果ポリマー材料の膨潤を生じさせ、シェル内部の空間体積を減少させる。更に、異なる電荷密度のポリマーを調査したところ、pHを増加させた場合、セル内部の空間体積に関する減少は検出されなかった。その結果、気体の二酸化炭素の水溶性が、シェルの性質に影響を及ぼすものと考えられる。より高いpH条件下、毛細管力を通じて、シェル内へ水を導入する場合、二酸化炭素の溶解度は増加し、外方へのガス圧を減少させることはシェル内部の空間体積を減少させる。
【0046】
更に、本発明による、極性溶媒に不溶性のポリマーシェルは、約0.1時間〜約24時間の範囲、好ましくは1〜12時間の時間枠に亘り、化合物の持続放出能を有することを特徴とする。更に、本発明によると、これらの特性は、塩濃度および/またはpHを変化させることで調節でき、また、付加的なポリマーを存在させ、および/またはシェルに化合物を付着させるか導入させることも放出特性に影響を及ぼす。
【0047】
ポリマーシェルのポリマー材料には、セルロース、ヘミセルロース、キトサン、ガラクトグルコマンナン、またはそれらの誘導体が含まれる。好ましくは、ポリマー材料は、1種以上の糖類の繰返し単位を含有するが、別の炭水化物および非炭水化物ポリマー材料も、本は明の精神に含まれる。例えば、本発明におけるポリマー材料は、実質的に炭水化物および/または特にセルロースまたはヘミセルロース特性を有する1種以上のポリマーを含有できる。また、ポリマー材料は、置換または付加の方法により変性させたセルロースまたはヘミセルロースから構成されてもよい。天然および合成ポリマーは、本発明の範囲において使用できる。ポリマー材料は結晶質であってもよく、または乱雑な非晶質構造であってもよく、あるいはこれらの混合物であってもよい。
【0048】
本発明の1実施態様において、ポリマーシェルの外径に対する内径の比率は、塩濃度の変化若しくはpHの変化若しくは経過時間の結果として、40〜90%、および好ましくは50〜70%に変化する。
【0049】
本発明によるシェルは、0.1μm〜10mmの間で外径を示すが、ポリマーシェルの目的および適用分野に応じて、0.1μm〜10μm、10μm〜50μm、50μm〜100μm、100μm〜500μm、500μm〜1mmおよび1mm〜10mmの範囲の直径も全て本発明の範囲に含まれる。本発明の別の実施態様において、シェルの内径は、0.5mm〜6mmの間であるが、目的および適用分野に応じて、内径は、0.1μm〜10μm、10μm〜50μm、50μm〜100μm、100μm〜500μm、500μm〜1mmおよび1mm〜10mmの範囲であってもよい。
【0050】
図13および16から判るように、1%セルロースを含有するポリマーシェルは、約100μm〜300μmの範囲のシェル壁厚を示すことができる。1.5%のセルロース含量を有するシェルは、図14、15および17から判るように、約200μm〜300μmの範囲で、若干厚いシェル壁を有する。2%のセルロース含量を有するシェルは、より厚いシェル壁を有し、図18が示すように、セルロースポリマーシェルは約350μmのシェル壁厚を有する。幾つかのセルロースシェル、例えば形成後にマイクロ波乾燥に曝されるシェルは、図19に示されるように十分に薄いシェル壁を示し、約2μm〜30μmの範囲に厚さを備える。したがって、約100nm〜2mmの範囲にシェル壁厚有するポリマーシェルは、本発明の範囲に含まれる。シェル壁厚は、好ましくは0.5μm〜500μmの間であるが、特定の用途に対して、別の間隔も所望できる。
【0051】
本発明によると、極性溶媒に不溶性の、洗浄したポリマーシェルは、未洗浄のシェルと比べて異なる特性を示す。シェルにおける外的要因の影響は、未洗浄のセルに付随した、金属イオン塩またはアルカリ金属イオン塩(例えばLiCl)により影響を受ける。更に、本発明によると、洗浄したシェルを含むポリマーの置換度は、壁厚とシェルの膨潤に影響を及ぼし、より高い置換度は、より厚い壁とより小さい外径をもたらし、ポリマー膨潤の増加を意味する。この理由は、ポリマーの電荷が増加することが、材料の希釈(膨潤)により補償される化学ポテンシャルについて、より大きな差を生じさせるためである。その結果、本発明による1実施態様において、極性溶媒に不溶性の洗浄したポリマーシェルを含有する、より高い置換度を有するポリマー材料は、塩濃度の増加またはpHが上昇する場合、より高い膨潤度を示す。しかしながら、別の実施態様においては、塩濃度の減少は、より高い膨潤度をもたらす。
【0052】
本発明の別の実施態様において、ポリマーシェルの表面は、特定の所望特性を付与するために変性している。シェル表面の変性は、共有結合、または静電力若しくは疎水性力を介するか、あるいは当業者において既知の別の付着手段を介して、官能基および/または活性基を付着させることを含む。該変性には、原子、分子、高分子、ポリマー、凝集体、粒子、繊維、フィブリルおよび当業者に既知の他の成分が含まれる。別の実施態様においては、薬物送達またはクロマトグラフィ用途に適する性質を備える更なるポリマーを、ポリマーシェルに付着させる。このようなポリマーは、例えば、非炭水化物および炭水化物ポリマー、例えばキトサンなどを含んでもよいが、タンパク質、ポリペプチドおよびオリゴヌクレオチドもポリマーポリマーシェルに付着させてもよい。付着は共有結合または非共有結合に依存してもよく、更に、1種以上の付加的なポリマーまたはオリゴマー含有してもよい。
【0053】
1つの好ましい実施態様において、ポリマーシェルの表面を変性させるのに使用される付加的なポリマーは、水溶性炭水化物である。この水溶性炭水化物は、ポリマーシェルの表面変性を行う前または後に変性させてもよい。変性させた水溶性炭水化物はキシログルカンであってもよい。キシログルカンの変性は、セルロースを変性させるために使用されるキシログルカンエンドトランスグリコシラーゼ酵素を用いる化学-酵素的法である、ブルーマー等による欧州特許第1448840B1号による発明に従いおこなうことができる。キシログルカンの変性に関する他の方法は、キシログルカンが還元的アミノ化法によりアミノ化される、スルーットガード等による(米国仮出願第61/150021号明細書)により開示されている。アミノ化キシログルカン分子は、国際特許出願公開第2008/104528号明細書において開示されたペプチド、タンパク質若しくは抗体を結鎖させるために使用でき、または、密閉特性または他の適合性を付与する化合物を付加させるために使用できる。
【0054】
この実施態様においては、薬物送達またはクロマトグラフィ用途または他の所望特性、例えば、シェルの可逆的密封性などに適する脂質を付与するために、変性させたキシログルカンを、ポリマーシェルに付着させる。本発明によると、更なる実施態様は、例えばpHおよび塩濃度などの種々の周囲条件にさらすことにより異なる脂質を示す適当なポリマー(例えば、キトサン)若しくは化合物(例えばCaCO3)を用いて、シェルの可逆的密封性を有してもよい。可逆的密封性は、例えば、密封特性を付与する適当なポリマーまたは化合物の溶液中にポリマーシェルを浸漬させることにより得ることができる。ゼラチンは、薬物送達用途において幅広く使用されている。何故ならば、ゼラチンは、薬物の放出をもたらす、胃腸系における酵素により消化されるからである。ポリマーシェルの内容物の放出を制御するために、可逆的密封特性は、例えば、薬物送達用途において使用される。密封特性の除去は、変化させたpH、塩濃度若しくは温度に曝すことによりもたらされる。CaCO3を用いて製造されたポリマーシェルは、シェル内に包含された化合物の著しく遅い放出を示し、このことは、シェル中に組み込まれる細孔の数を減少させるか、または細孔の大きさを減少させることを暗示する。溶解していないCaCO3は、細孔を被覆すると推定されるので、ポリマーシェルの拡散性と浸透性を減少させる。
【0055】
本発明による1実施態様は、本発明による方法により調整された炭水化物ポリマーを実質的に含有するポリマーシェルに関する。
【0056】
本発明による別の実施態様において、ポリマーシェルを含む薬物送達システムが開示される。薬物送達デバイスは、例えば低分子、高分子および/または生物薬剤学的薬物の経口(p.o.)、静脈注射(i.v.)、内腹膜(i.p)、脳室内(i.c.v)、筋肉内(i.m)、鼻腔内および/または鞘内デリバリー用のビヒクル、またはワクチンおよび/または非特異性の免疫反応エンハンサー、または当業者に既知の薬学的に興味深い別の化合物用のビヒクルを含有してもよい。更に、薬物送達システムは、薬学的に興味深化合物の局部的なデリバリー、またはより長期間に亘る持続したデリバリーに利用できる。別の実施態様において、ビヒクル内に含まれる薬剤または薬学的な組成物は、ポリマーシェルの形成を支援するコア形成性物質の機能を果たすので、それにより薬物送達ビヒクル内へ導入される。あるいは、ポリマーとの優先的な共沈を介するか、または他の何らかの形式の非特異または特異な化学的相互作用を介して、薬剤を、ポリマーシェルの沈殿物上のビヒクル内へ導入するために、第2極性溶液中に溶解させてもよい。本発明の別の実施態様においては、例えば、ポリマーシェルの応答特性を有効に生かして、ポリマーシェルはその形成後に興味深い薬剤で満たされる。本発明による更なる実施態様において、ポリマーシェルは、シェルが固相成分として機能するクロマトグラフ分離用媒体として使用でき、例えば液体クロマトグラフィ(LC)(例えば高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、イオン交換クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、固定化金属アフィニティークロマトグラフィ(IMAC)、または疎水性クロマトグラフィを含む)、逆相クロマトグラフィ(RPC)、薄層クロマトグラフィ(TLC)および/またはガスクロマトグラフィ向けのコラムにおける固定相として使用でき、さらに、調製および分析目的に関する当業者に既知の技術に使用できる。
【0057】
更に、ポリマーシェル充填材は、種々の目的に関する充填材、とりわけ、絶縁体、包装材料、目地材および/または耐候材として使用できる。
【実施例】
【0058】
材料および方法
a.セルロースポリマー
本実施態様においては、発明者によって三種類のセルロースについて調査した。種々の置換度(D.S.)(0.0065および0.015)を有する2つの溶解パルプ、ならびに、Grycksboとして既知の化学的に硫酸塩で漂白した長繊維パルプを使用した。
【0059】
b.光学顕微鏡観察
本発明者は、極性溶媒に溶解しないポリマーシェルの寸法を評価するために、光学顕微鏡観察法を使用した。カールツァイス社製のStemi SV8を使用して、ポリマーシェルの外径および内径における塩濃度とpHの影響を測定すると共に、シェル内部の空間の存在についても検出した。
【0060】
c.共焦点顕微鏡観察
本発明者は、共焦点顕微鏡観察法の利用を対象としたが、シェルの壁厚が原因で、光切片は十分な程度でシェルを貫通せず、測定を行うことを困難にした。
【0061】
d.分光光度法
ポリマーシェルからの薬剤放出をシミュレーションするために、シェル内へ導入した一般的に使用される染料の放出を、該シェルを含有する水溶液の抽出を繰り返して行うことにより、分光光度法で測定した。
【0062】
実施例1:経時的にpHを変化させることによりもたらされる効果
表1〜3および図1において判るように、シェルの初期外径は、より高いpHにおいて若干増加する。図1における外径と図2における外径、すなわち初期値と2〜3時間後の値を比較すると、全ての三種類のポリマー種は寸法が減少し、2種類の溶解パルプの間では、高い類似性を示した。シェル内部へ水が拡散する場合に、シェル内部のガス圧が低下することに起因して外径方向への圧力が減少することにより、シェルの寸法が減少するものと説明できる。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
図3において示されるシェル壁の初期厚さから、pHの増加につれて該厚さが増加することが判る。pH域が1.5〜13に亘る変化は、使用するセルロースパルプに基づき0.6〜1.1mmの範囲で増加する。シェルの内部空間はpHにより影響を受け、pHの上昇に伴い膨潤が増加する結果として、低pHにてより大きな該体積が検出された。セルロースにおける荷電基(主にカルボキシル基)は、より高いpHでイオン化され、帯電したセルロースと水溶液との間の化学ポテンシャルの差は、膨潤の増加をもたらす、セルロース内への水の流入を生じさせた。溶液が数時間で去る、図4においても、同様の傾向が見受けられる。しかしながら、この場合において、シェルの壁厚さにおける差は、1.5〜13のpH域に亘り、0.4mm〜0.5mmの間である。
【0067】
シェルの内部方向への放射状膨張はpHの上昇により観測され、このことは、増加した壁厚と、それによって生じるシェルの内部空間の体積減少をもたらす。この挙動に関しては、アルカリ水がシェルに入り込む際、気体の二酸化炭素の溶解度が上昇し、その結果、溶解したCO2の拡散がシェルから外へともたらされるということが、1つの可能な説明である。その結果、気体の圧力は減少し、壁の内部方向への膨張をもたらし、シェル内部の空間体積を減少させる。この説明の背後にある論拠は、それらの異なる電荷にもかかわらず、2つの溶解パルプ間で実質的に差が検出されなかったこと、および、外径における十分な変化が、pHの変化に伴い検出されなかったという事実に由来する。膨潤が主にセルロースの荷電基によりもたらされる場合、2つの溶解パルプの間でより大きな差が検出されているであろう。膨潤特性に影響を及ぼすと共に、2つの溶解パルプにおける差が予想以上に小さい理由をある程度説明する、LiClイオンの一定量の存在を暗に示す、洗浄したシェルについてこれらの試験を行わなかったことの意義は大きい。
【0068】
実施例2:経時的に塩濃度を変化させることによりもたらされる効果
塩濃度を、0〜0.1Mの濃度範囲に亘り変化させた。初期値は初期の時点にて光学顕微鏡観察を用いて測定し、後の値については2〜3時間後に測定した。
【0069】
得られた結果によると、塩濃度を変化させる場合に、2種類の溶解パルプに関する外径は実質的に変化しなかったが、硫酸塩パルプを含有するシェルは寸法が増加したということが示される。このことは、通常は実質的に球状のシェルの高い変形により、増加した直径に二次元測定を施したことに関連するものと説明できる。その結果として、Grycksboパルプに関する誤差は大きい。しかし、2種類の溶解パルプは、高度に類似した特性を示したと結論を出すことができる(図5)。
【0070】
種々の塩濃度範囲に亘る溶液における2〜3時間後の測定によると、最も低いD.S(置換度)を有する溶解パルプは、より高いD.Sを有する溶解パルプと比べて若干高い外径を示す一方、硫酸塩パルプは、上記理由により、最も大きな径を示した(図6)。溶液における数時間後の測定に関して、図5および図6を比較すると、外径および壁厚は全体的に減少した。さらに、2種類の溶解パルプに関しては、塩濃度の上昇に伴い、壁厚および外径が増加し、その結果、シェルの内部空間により小さな体積がもたらされる(図7および表5〜表7)。
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
実施例3:セルロースシェルの性質における洗浄の影響
表7〜表9は、洗浄後のシェル寸法における変化を示す。上記結果と一致して、pHおよび塩濃度を変化させる場合に、シェルの外径は実質的に変化しなかった。しかしながら、イオンを溶液に添加する場合に内部方向への膨潤がもたらされ、シェルの壁厚は増加する。このことは、pHを10まで増加させるか塩濃度を10-3Mまで上昇させる場合に、膨潤を抑制する力が減少することを暗に意味する。
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】
2種類の溶解パルプを比較すると、最も高いD.Sを有するパルプは最も高い壁厚とより小さな外径を有することが判る。その結果として、最も高いD.Sを有する溶解パルプの膨潤は、より低いD.Sを有する溶解パルプの膨潤よりも大きかった。最も高い電荷を有するセルロースは、より大きな化学ポテンシャル差を誘導し、このことは膨潤(希釈)により補償されるということを推測させる。
【0079】
実施例4:染料放出実験
ポリマーシェルからの物質放出をシミュレートするために、着色化合物(メチルオレンジ)をシェルに吸着させた。まず、1.5%(w/w)の溶解パルプを、CaCO3を存在させるか、または存在させない、LiCl/DMAC中に溶解させ、次いで、セルロースシェルを前記のようにして沈殿させた。その後、メチルオレンジをシェルに吸着させ、次いで、シェルを水浴へ移動させた。サンプルを水浴から取りだし、470nmでの吸収を分光光度法で測定した。
【0080】
サンプルを、最初の8時間と24時間以降において、1時間毎に取り出したところ、CaCO3の存在下で形成したシェル内へ組み込まれた染料は、CaCO3を存在させずに形成したシェルにおける染料と比べて、より急速に拡散することを示した(図8)。8時間後、CaCO3の存在下で形成したシェル中の染料は、ほぼ完全にシェルから放出され、一方、未処理のシェルに関する平衡状態はその後到達した。CaCO3の存在下で形成したシェルからの、より速いメチルオレンジの放出(図8)は、より低いpHでのCaCO3の溶解度が増加することに基づくものであると説明できる。シェルの構成において、シェル内に組み込まれたCaCO3は可溶性であるので、炭水化物ポリマーシェルからの染料の放出を促進させる細孔の形成を生じさせる。時間に対する、正規化した染料濃度のプロット(図8)は、シェルの配合においてCaCO3を含有する場合、持続した放出は2時間に亘ってもたらされることを示し、また、シェルの配合においてCaCO3を存在させない場合、更に長く持続した放出特性を有するシェルがもたらされることを示す。
【0081】
実施例5:マイクロ流体ポリマーシェルの製造
マイクロ流体ポリマーシェルの製造(例えば図9に従う)における初期段階は、外部流体としてPDMSオイルと、内部流体として水を流すことにより、ポリジメチルシロキサン(PDMS)中に、60μmの寸法を有する単分散水滴を生成させることに関連する。PDMSにより包囲された単分散水滴は、円形ガラス毛細管内を通過させて輸送され、該管の終端において、セルロース/LiCl/DMAc-溶液が導入された。流体力学の結果として、セルロース溶液はPDMSと水を覆い、二重エマルションを生成する。内部保護剤として機能するPDMSオイルは、セルロースと水の間における、一般的に極めて速い相互作用を遅延させる。この特有の配置は、セルロースを固化させる媒体としてマイクロ流体技術を使用する場合における主な欠点のうちの1つである、目詰まりを防止する。一度装置が目詰まりすると、通常、該装置は使い物にならなくなり、新しい装置を装着しなければならない。さらに、水滴を覆うPDMSオイルを有することにより、早い時点で沈殿させたセルロースシェルがガラス毛細管内でスティッキングすることを防ぐために、より大きな剪断応力を加えることができる。左側から始まる、内径を有する配列が図19より後に示され、正方形管が1mmの内部幅を有し、円形のガラスチューブが50μmの内径を有し、同じ円形毛細管の第2開口が180μmの内径を有し、集合チューブが400μmの開口を有した。点で描いた矢印は、流体がマイクロ流体用装置内に導入される注入口を示す。点線以外の矢印は、マイクロ流体用装置内の流体の流れ方向を示す。マイクロ流体技術を用いて製造された中空セルロースシェルの寸法は、ミリメーターからマイクロメータへと減少する。マイクロ流体技術により製造されるシェルの寸法を決定する、最も重要なパラメータは、ガラステーパー(図5または図19参照)の寸法、水を注入するガラスチューブの毛細管出口の寸法である。テーパーがより大きくなるにつれて、セルロースシェルもより大きくなる。
【0082】
実施例6:ポリマーシェルの乾燥
湿潤した中空セルロースシェルの寸法は、周囲温度にて空気乾燥させる前に、顕微鏡を用いて測定した。5時間の空気乾燥の後、寸法を再度測定した。セルロースシェルの直径は、係数2.6、即ち60%よりも多く減少した。
【0083】
コア形成剤としてLPG(60%プロパンおよび40%ブタン)を用いて調製したセルロースシェルが全体的に乾燥するまで、得られたシェルを家庭用の電子レンジ(800W)内で乾燥させた(約1.5分)。上記実施例とは異なり、シェルの寸法は、乾燥の結果としての減少は生じていないが、シェルは硬くなった。印加した物理的圧力を解放する場合、実質的に即時に、シェルはそれらの元の形態および構造に復帰する。更に、マイクロ波乾燥を行った後、シェルは目視検査において透明であり、多数の用途に対して透明なシェルをもたらすといった、非常に興味深い特徴を潜在的に備えている。
【0084】
実施例7:乳化による調製
1mlのヘキサンを5mlのセルロース溶液中に溶解させた。次いで混合物を振盪させ、セルロース溶液中にヘキサン液滴のエマルションを形成する。次いで、この溶液をイソプロパノール内へ滴下することにより、液滴は沈殿し、ヘキサンで満たされたセルロースカプセルを形成する。
【0085】
更に、セルロースを沈殿させる前に、第3の非極性液体(PDMS)を添加する実験をおこなった。マイクロサイズのシェルが得られる、イソプロパノールにおける沈殿工程の前に、混合液における第三成分としてPDMSを添加し、次いで溶液を繰り返して振盪させた。
【0086】
更に、2mlのセルロース溶液をLPGと共に供給し、次いで、ヘキサン溶液内へ移した。次いで、混合物を振盪させ、その後、ガラス製のピペットを用いてイソプロパノール内へ移動させることにより、セルロースシェルが沈殿し形成された。
【0087】
実施例8:セルロースシェルのキシログルカン-FITC変性
4000Daの分子量を有しフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識化した、10mgのキシログルカン(XG)を、5gのDMAC溶液へ添加し、全てが溶解するまで約1時間かけて攪拌した。溶液を1時間CO2ガスで処理した。次いで、溶液を水浴中へ滴下した。XG-FITCがシェルに吸収されたこと、および水浴中の水がXG-FITCを含有するかどうかを測定するために該水溶液を分析した。TLCプレート上に水滴を添加し、次いで、360nmUV放射に曝すことにより、セルロースシェルとXG-FITC間の相互作用を評価した。TLCプレートから光は放出されず、水溶液中におけるXG-FITCの欠如を確認した。
【0088】
議論
シェルの壁厚と外径は、最初は比較的大きいが、平衡に達するまでに経時的に減少する。シェル内部の空間の体積は、pHによって影響を受け、最も大きな体積は低いpHで観察される。シェルの膨潤は径の内方へ向かって生じ、外径は相対的に一定のままである。その一方、塩濃度を変化させることおよびpHを変化させることにより、セルロース壁は内側へ膨張する。洗浄したシェルに関しては、最も高いD.Sを有する溶解パルプは、より低いD.Sを有する溶解パルプと比べて、より高いシェルの壁厚を示した。このことは、最も高い電荷を有するパルプは、塩を添加するかpH上昇させる場合に、より膨潤することを意味する。さらに、シェルの物理的性質は、数時間の時間枠に亘ってモデル化合物の持続した放出を可能にすると共に、さらに、放出の調節を容易におこなえる。このことは、薬物送達の設計において有意な効用がもたらされることを意味する。
【0089】
ポリマーシェルを調製するためにマイクロ流体技術を使用することによって、高度に可変の形状および寸法を備えるシェルを調製するための種々の方法をもたらす本発明は、高い多用途性と適用性をもたらす。さらに、異なる乾燥条件により発揮された異なる効果は、他のパラメータを使用することによりポリマーシェルの物理的特性を制御できることを暗に意味する。更に、表面改質は、ポリマーシェルの特性を調整するための他の重要な手段であり、このことは、塩、小さな分子量および/または種々の起源のポリマーを使用することにより行なえる。
【符号の説明】
【0090】
5反応チャンバ
10噴射チューブ
15集合チューブ
20流体 1
25流体 2
30流体 3
35PDMSオイルの流れを示す
40水の流れを示す
45ポリマー流体の流れを示す
50水
55ポリマー
60PDMSオイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性溶媒に不溶であり、透過性と応答性を備えるポリマーシェルを調製する方法、このようなポリマーシェル、および、薬物送達分野、分離技術分野、充填材分野における、このようなポリマーシェルを含有する種々の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのバイオポリマーは、種々の工業用途に対して魅力的な特徴を示しており、例えば、製紙業、繊維工業、薬学および種々の分離プロセスにおいて使用されている。セルロースおよびヘミセルロースは、紙および繊維の製造に関する主成分としてのみならず、薬物送達の媒体、生物医学およびバイオテクノロジー目的の主成分、および種々のクロマトグラフ分離技術用の固相成分として増加している非常に重要なバイオポリマーとして、広く特徴づけられている。直鎖状の親水性セルロースは、薬学的応用、例えば人の体内における酵素的分解に対して非感受性であり、免疫賦活特性がないといった、幾つもの興味深い特性を有している。さらに、それの有する高い機械的硬さは、種々の分離用途における固定相として、セルロースの使用をもたらしている。
【0003】
バイオテクノロジー的に進化した薬剤、例えば、種々の疾患を治療するための、タンパク質、ペプチド、siRNA、miRNAおよびアンチセンス・オリゴヌクレオチドなどの出現と共に、デリバリー媒体に対する効率的な要求が以前よりも増加している。さらに、多くの場合、常套の薬剤の放出性を改良することは、投与量の増加、副作用の減少および薬物動態特性を改良するために重要である。ポリマーシェル中に興味深い薬物を封入することは、該薬物の薬物動態を(場合によっては、その薬力学も)改良する1方法であり、それにより、例えば、局所的に放出させる処方をより長期間に亘り持続して放出することができ、また、厳しい胃腸環境若しくは経口投与による酵素的分解から薬物を保護する。
【0004】
分析目的および分離目的に関する効率的な分離工程は、多くの工業分野において極めて重要である。化学工業、パルプおよび製紙工業、石油化学工業、ならびに医療産業および医薬産業などは、種々の目的物のために、数多くの分離プロセス法に大きく依存している。多くの場合、分離はクロマトグラフ原理、すなわち、サンプルの成分を分離するために、被検出物を含有するサンプルを、固定相(固相)を介して通過させる原理に基づく。
多くの場合、固定相は、分離のための基準を形成する一定の特徴、例えば疎水性、サイズ、またはイオン電荷を示す高分子材料から構成される。さらに、固体の固定相は、分離の信頼性および再現性をもたらすために、例えば、機械的強度、化学的不活性および均一な大きさの観点において優れた性能を有する必要がある。上述した特徴の多くを備えると共に、種々の分子を放出および取り込むための選択的透過性を備える膜として機能できる高い所望特性を備えるので、ポリマーシェルは、固相材料としてますます使用されている。
【0005】
種々の目的に対するポリマー繊維は、長い間、様々な技術を用いて製造されているが、シェルと中空を有する実質的に球形の粒子の製造は、未だ複雑な方法で行われている。例えば、ビスコース形態のセルロース繊維は、ほぼ10年の間に減少しているが、迅速で信頼できる方法を用いてシェルを同様に製造することは、実質的により複雑な問題を有している。一般に、繊維の紡績は、溶解させたポリマー材料を加圧し、次いで、それをノズルから押出し、種々の化学的な相互作用により繊維が形成される浴槽内へ導入することによって行われている。体系的に分断された繊維内腔を形成できるこの方法は、現在のところ、ポリマーシェルの製造に対しては使用できない。現在のところ、通常、セルロースに基づくポリマーシェルは、付加的な補助添加剤、例えばポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、およびポリカプロラクトンなどの存在を必要とし、非効率で、ある程度の時間を要する工程を含み、溶媒の拡散および蒸発に依存する方法である、エマルション法で調製される。変性セルロースから成る中空ビーズも、後にポリマーの金属塩の生成を生じさせる、金属塩を含有する沈殿浴へ、液滴を添加することによって製造される。しかしながら、この方法は、更なる金属イオンを含有する硬化浴でビーズを硬化させる必要がある。薬物送達の観点から、金属イオンの顕著な存在は、その態様を限定することがあり、体内でアレルギー反応および望ましくないことが生じる場合がある。さらに、クロマトグラフ目的のためにこのようなシェルを用いることは、ある種の分離、例えばイオン電荷特性に基づく分離などにのみ適用が制限され得る。
【0006】
先行技術おいて記載されたセルロースに基づくポリマーシェルは、周囲条件に関係なく本質的に同一特性を示す、非応答性シェルに関する。効果的な薬物送達媒体またはクロマトグラフ系の固定相成分を調製するために、動的な応答性を備えるシェルを使用する必要がある。例えば、ポリマーシェルの浸透性、直径および体積を調節する能力は、更なる利点、例えば、ある外部条件に曝した場合に医薬組成物の放出を増加させること、またはサンプルの性質に応じてクロマトグラフコラムの特性を調節できることをもたらす。このような性質を有するポリマーシェルは、現在に至るまで、先行技術において開示されていない。
【0007】
したがって、例えば薬物送達またはクロマトグラフィ用途に関する、応答性で調節可能な性質を有するポリマーシェルを調製するために、危険な化学薬品を過剰量に用いない、迅速、単純、万能および堅固な製造法が、当該技術分野において要求されている。さらに、最小限の免疫賦活性をもたらすと共に、クロマトグラフィ分野における他用途性の増加をもたらす、対象となる炭水化物のみを実質的に含有する炭水化物ポリマーシェルは、先行技術において開示されていない。
【0008】
先行技術であるスウェーデン特許第358908号明細書は、ビスコースの紡績を介する、中空セルロース繊維の製造について開示する。該発明は高濃度のマグネシウムイオンを含有する紡績浴を開示し、紡績するビスコース繊維を、ノズルを介して紡績浴内を通過させる場合、ポリマーの膨潤能を減少させる効果がもたらされる。
【0009】
米国特許第2773027号明細書は、透析媒体として使用する、カルボキシメチルセルロースの金属塩から成る中空ビーズを調製する方法を開示する。カルボキシメチルセルロースの水溶液は、金属塩カルボキシメチルセルロースビーズを沈殿させる、金属塩水溶液から構成される沈殿浴内へ、滴下される。
【0010】
ソッピマスおよび共同研究者等は、変性セルロースを用いる浮遊中空マイクロスフェアを調製するための、溶媒蒸発技術に基づく方法を開示する(ソッピマス等、2006年、Journal of Applied Polymer Science,第100巻、第486頁〜第494頁)。添加剤、例えばポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、およびポリカプロラクトンなどは、分散溶媒として作用する酢酸エチルと共に、マイクロスフェアを形成するために使用される。
【0011】
溶媒蒸発技術の効率的な改良例として、ウタダおよび共同研究者は、高い統制度と可撓性を備えるコア-シェル形状を示すと共に、単一の内部液滴を含有する単分散ダブルエマルションを生成するミクロ毛細管装置を開示する(ウタダ等、2005年、Science、第308巻、第537頁〜541頁)。更に、該ミクロ毛細管装置は、ポリ(ブチルアクリレート)-b-ポリ(アクリル酸)(PBA-PAA)ジブロックコポリマーを含有するW/O/W型エマルションを用いるポリマーベヒクルの製造に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】スウェーデン特許第358908号明細書
【特許文献2】米国特許第2773027号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ソッピマス等、2006年、Journal of Applied Polymer Science,第100巻、第486頁〜第494頁
【非特許文献2】ウタダ等、2005年、Science、第308巻、第537頁〜541頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上記の欠点を克服すると共に、所望される要求を満足するポリマーシェルを調製するための簡単な方法を提供することである。したがって、本発明は、極性溶媒に不溶であり、本質的にセルロース/ヘミセルロースのみを含有し、シェル自体が応答性で調節可能な特性を示すポリマーシェルの調製方法に関する。このようなシェルに関する種々の用途には、薬物送達用途、分析および予備分離技術の範囲、ならびに充填材および/または包装材としての種々の用途が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
より具体的には、本発明方法は、
(i)第1溶媒(好ましくは有機溶媒)中にポリマー成分を溶解させる工程と、
(ii)該第1溶液を、該ポリマー成分は実質的に溶解させず、極性を有する第2溶媒と接触させることによって該ポリマー成分を沈殿させることにより、ポリマーシェルを得る工程を含む。この方法は、更なる賦形剤または硬化浴を用いることなく、応答性で調節可能な性質を示と共に、対象となるポリマーのみを本質的に含有するポリマーシェルの形成を、迅速に、拡張可能に、および堅固に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、1.5〜13の範囲におけるpHに対する、ポリマーシェル総径の初期測定値を示す。X軸:pH、Y軸:総径(mm)、G=Grycksboパルプ、HD=高Ds(高置換度)パルプ、LD=低DSパルプである。
【図2】図2は、1.5〜13の範囲におけるpHに対する、ポリマーシェル総径に関する後の測定値を示す。X軸:pH、Y軸:総径(mm)、G=Grycksboパルプ、HD=高Dsパルプ、LD=低DSパルプである。
【図3】図3は、1.5〜13の範囲におけるpHに対する、ポリマーシェルの壁厚の初期測定値を示す。X軸:pH、Y軸:壁厚(mm)、G=Grycksboパルプ、HD=高Dsパルプ、LD=低DSパルプである。
【図4】図4は、1.5〜13の範囲におけるpHに対する、ポリマーシェル壁厚の後の測定値を示す。X軸:pH、Y軸:壁厚(mm)。
【図5】図5は、0〜0.1モル/lの範囲における塩濃度に対する、ポリマーシェル総径の初期測定値を示す。X軸:塩濃度(モル/l)、Y軸:総径(mm)。
【図6】図6は、0〜0.1モル/lの範囲における塩濃度に対する、ポリマーシェル総径の後の測定値を示す。X軸:塩濃度(モル/l)、Y軸:総径(mm)。
【図7】図7は、0〜0.1モル/lの範囲における塩濃度に対する、ポリマーシェルの総壁厚(1次元)の初期測定値を示す。X軸:塩濃度(モル/l)、Y軸:壁厚(mm)。
【図8】図8は、シミュレーションしたドラッグ放出実験を示し、pH2の条件下、脱イオン水中での長期間に亘る染料の放出(ビーズ外部の濃度)をプロットしたものである。X軸:時間(単位、分)、Y軸:正規化した濃度、U=未処理、C=CaCO3
【図9】図9は、本発明において使用される、マイクロ流体に関する反応チャンバを示す。例えば、以下の表に記載の項目を有する。
【図10】図10は、溶液内へ二酸化炭素を30分間供給する場合における、壁厚とポリマーシェルの内部空間との関係を示す。X軸:セルロース溶液中の溶解パルプ(%)。Y軸:シェルの構成。白い箇所は壁厚に相当する。黒い箇所は空洞に相当する。
【図11】図11は、溶液内へ二酸化炭素を5分間供給する場合における、壁厚とポリマーシェルの内部空間との関係を示す。X軸:セルロース溶液中の溶解パルプ(%)。Y軸:シェルの構成。白い箇所は壁厚に相当する。黒い箇所は空洞に相当する。
【図12】図12は、ポリマーシェルの密度(kg/dm3)とポリマー濃度(重量%)との関係を示す。X軸:セルロース濃度(重量%)、Y軸:密度(kg/dm3)。
【図13】図13は、1%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図14】図14は、1.5%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図のSEM写真を示す。
【図15】図15は、1.5%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図のSEM写真を示す。
【図16】図16は、1%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【図17】図17は、1.5%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図のSEM写真を示す。
【図18】図18は、2%セルロースシェル、および該シェル壁の拡大図のSEM写真を示す。
【図19】図19は、マイクロ波で乾燥させたシェルのSEM写真を示す。
【図20】図20は、本発明において使用される、マイクロ流体に関する反応チャンバと、ポリマーシェルの拡大図を示す。例えば、下記表に記載の項目が存在する。
【0017】
【表1】
図9における項目
【0018】
【表2】
図20における項目
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、極性溶媒に不溶であり、本質的に好ましくはセルロース/ヘミセルロースのみを含有し、シェル自体が応答性を示すと共に調節可能な特性を示すポリマーシェルの調製方法に関し、また、薬物送達目的、分析および予備分離技術の範囲における、このようなポリマーシェルの種々の適用に関する。
【0020】
詳細な説明および実施例から明らかなように、「シェル」という用語は、(i)0.1μm〜10mmの間の大きさを有し、(ii)気体、液体および/または固形物を含有する十分な空間を包含し、(iii)多糖、例えば、セルロース若しくはヘミセルロース、またはセルロースおよびヘミセルロースの性質に近似することが予期できる性質を備える任意の別の多糖、あるいはキトサン、ガラクトグルコマンナンおよび/またはそれらの任意の誘導体の繰返し単位から構成される例えば炭水化物材料を含有する少なくとも1種のポリマー材料を含有する、任意構造に関する。「空間」という用語は、気体、液体および/または固形物を含有し、該シェルにより包まれることにより生じる、規則的または不規則的な幾何学的形態により定義される任意体積に関する。
【0021】
特徴的な実施態様または本発明の態様は、マーカッシュ・グループから説明され、当業者は、本発明がマーカッシュ・グループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループから説明されることを理解できる。さらに、当業者は、本発明がマーカッシュ・グループの個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの任意の組合せにより説明されることも理解できる。
【0022】
本発明による方法における1態様は、適当なポリマー成分を調製し、第1溶媒(好ましくは、非極性溶媒)中に該成分を溶解させ、所望により、例えば、該第1溶液中に気体を溶解させるか、または該第1溶液を印加することなどにより、コア形成性物質(該ポリマー成分は、該コア形成性物質中に実質的に混和しない)を、ポリマー成分を含有する該溶液と混合させることによって、コアを該コア形成性物質から形成させ、次いで、第1溶液を、該ポリマー成分を実質的に溶解させず極性を有する第2溶媒と接触させることによってポリマー成分を沈殿させることにより、所望により該コアの周囲に形成されることもある該ポリマーシェルを得る。
【0023】
ポリマー成分は、天然若しくは合成の、任意のポリマーであってもよく、実質的には不活性または生物活性を有し、例えば多糖、例えば、セルロース若しくはヘミセルロース、またはセルロースおよびヘミセルロースの性質に近似することが予期できる性質を備える任意の別の多糖、あるいはキトサン、ガラクトグルコマンナン、グリコサミノグリカン、ヘパリンスルフェート、ヒアルロナン、コンドロイチンスルフェート、またはプロテオグリカン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルなど、あるいはそれらの任意の誘導体が含まれる。
【0024】
第1溶媒は、ポリマーを溶解させる任意の溶媒であり、例えば、有機溶媒、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)またはN-メチルモルホリンオキシド(NMMO)である。
【0025】
好ましくは、第2溶媒は、それらの中においてポリマーが溶解しないように極性を有し、以下のものが含まれる:例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1,2-ジクロロエタン、および/またはトルエンなど。水(極性指数9)、エタノール(極性指数5.2)、1,2-ジクロロエタン(極性指数3.5)またはトルエン(極性指数2.4)の使用、またはこれらの溶媒の任意の組み合せは、ほぼ即時にセルロースシェルの沈殿および形成がもたらされ、一方、シクロヘキサン(極性指数0.2)の使用は、より穏やかなシェル形成がもたらされる。このことより、少なくともセルロースを使用する場合、ポリマーシェルの急速な沈殿が停止するのは、極性指数が0.2〜2.4の間にある場合であると推測される。
【0026】
「コア形成性物質を混合させる」という用語は、コア(例えば気泡状態)を形成する能力を有する物質または成分、例えば、二酸化炭素、空気、アルゴン、窒素、水素および/または液化石油ガス(LPG;40%ブタンおよび60%プロパン)などが、例えば溶液内へ気体を供給するか、または溶液を加圧することによりポリマー溶液へ導入され、その結果、溶液中にガスを可溶化させることを意味する。本発明の精神に含まれる別のコア形成性物質は、例えば、コアを形成できる液体および/または固体および/またはエマルションに関連してもよい。さらに、コア形成性物質は種々の活性物質を付加的に含有してもよい。
【0027】
本発明の方法による実施態様は、適当な多糖材料、例えば、セルロース若しくはヘミセルロース、またはセルロースおよびヘミセルロースの性質に近似することが予期できる性質を備える任意の別の多糖、またはキトサン、ガラクトグルコマンナン、あるいはそれらの任意の誘導体を調製する工程を含む。該態様は、所望により、少なくとも1種の有機溶媒(好ましくはDMAc)と少なくとも1種の金属イオン(好ましくは、アルカリ金属イオン)を含有する第1溶液にポリマー成分を溶解させる前に、水、メタノールおよびジメチルアセトアミド(DMAc)または任意の別の有機溶媒で、ポリマー成分を繰り返して洗浄する工程も含む。本発明の範囲に含まれる別の有機溶媒は、N-メチルモルホリンオキシド(NMMO)であり、この溶媒の使用は、金属イオンの完全な欠如を必要とする。一般に、溶液中に溶解させるポリマーの量は、選択したポリマーの性質、特に分子量、置換度、および置換基の種類に基づき、約0〜25%(W/W)、好ましくは0〜5%(W/W)の範囲である。有機溶媒(例えばDMAc)中の金属イオンは、ポリマーの分子内または分子間の水素結合を阻害し、該ポリマーの溶解性を増加させる。リチウムイオンが好ましいが、別のアルカリ金属および金属イオンも使用でき、例えば、Mg、Na,Fe、AlおよびCuが含まれる。濃度範囲は、好ましくは0.1〜25%(W/W)、より好ましくは5〜10%(W/W)である。所望により、ポリマーシェルの生成を向上させるためのコアを形成するために、コアの形成を更に促進する液体および/または固体および/または気体を添加する、例えば、該第1溶液内に適当な気体を供給すること、または適当なガス(例えば、二酸化炭素、空気、アルゴン、窒素、水素および/またはLPG)で加圧することにより、コア形成性物質を該溶液中に混合させてもよい。そして、最後にポリマー溶液を、極性を有すると共にポリマー成分が不溶である溶媒を含有する第2溶液へと移動させて、その後、該第2溶媒に対して不溶性であるポリマーシェルを沈殿させ生成させる。
【0028】
別の実施態様において、ポリマーシェルを調製する方法は、第1溶媒中にポリマー成分を溶解させ、その後、該ポリマー含有溶液内へコア形成性物質を混合させる工程を含む。コア形成性物質は、以下のものを含む群から選択できる:少なくとも1種の気体、少なくとも1種の液体および/または少なくとも1種の固体、特に、CO2、空気、アルゴン、窒素、水素、LPG、水、ヘキサンおよび/または任意の別の炭化水素、および/またはPDMSおよび/または任意の別のポリシロキサン。最後に、第1溶液を、該ポリマーを実質的に溶解させず、極性を有する第2溶媒と接触させることによりポリマー成分を沈殿させ、それによって、ポリマーシェル(所望により該コアの周囲に形成されることもある)を得る工程を経て、ポリマーシェルが形成される。
【0029】
本発明の更なる実施態様は、沈殿させた後にポリマーシェルをマイクロ波乾燥させる更なる工程含む、透明で、固く、弾性のあるポリマーシェルの調製方法を開示する。この方法により、透明で弾性のあるシェル、好ましくはセルロースおよび/またはヘミセルロース、または同様の性質を有する別のポリマーを含有する該シェルが得られる。マイクロ波乾燥は、家庭用のマイクロ波オーブン、例えば50〜1500W、好ましくは約800Wの該マイクロ波オーブンを用いて行うことができる。該乾燥は、乾燥条件およびシェル自体に依存して、約10秒から数時間程度行うことができる。上記方法から得られるポリマーシェルは、興味深いことに、高い物理的性質、例えば、弾性(すなわち、印加した物理的圧力を開放した際に、シェルはその原形に戻る)、剛性、および透明性を有する。
【0030】
本発明の別の態様は、適当な多糖材料、例えばセルロース若しくはヘミセルロース、またはセルロースおよびヘミセルロースの性質に近似することが予期できる性質を備える任意の別の多糖、あるいはキトサン、ガラクトグルコマンナン、あるいはそれらの任意の誘導体を調製する工程と、少なくとも1種の有機溶媒(好ましくはDMAc)と少なくとも1種の金属イオン(好ましくは、アルカリ金属イオン)とを含有する第1溶液に対して該ポリマー成分を溶解させる前に、水、メタノールおよびジメチルアセトアミド(DMAc)または任意の別の有機溶媒で、ポリマー成分を繰り返して洗浄する工程も含む。一般に、溶液中に溶解させたポリマーの量は、選択したポリマーの性質、特に分子量、置換度、および置換基の種類に基づき、約0〜25%(W/W)、好ましくは0〜5%(W/W)の範囲である。有機溶媒(例えばDMAc)中の金属イオンは、ポリマーの分子内または分子間の水素結合を阻害し、該ポリマーの溶解性を増加させる。リチウムイオンが好ましいが、別のアルカリ金属および金属イオンも使用でき、例えば、Mg、Na,Fe、AlおよびCuが含まれる。濃度範囲は、好ましくは0.1〜25%(W/W)、より好ましくは5〜10%(W/W)である。
【0031】
所望により、ポリマーシェルの生成を向上させるためのコアを形成するために、コアの形成を更に促進する液体および/または固体および/または気体を添加する、例えば、該第1溶液内に適当な気体を供給すること、または適当な気体(例えば、二酸化炭素、空気、アルゴン、窒素、水素および/またはLPG)で加圧することにより、コア形成性物質を該溶液中に混合させてもよい。その後、第1溶液を加熱して溶液中に存在する水を蒸発させ、次いで、圧力を上昇させるか、または溶液内へ気体を供給することにより、該溶液を気体に曝してそれを溶解させる。このことにより、気体および/または液体および/または固体を含有するコアを形成させる。加圧処理は、適当な気体で溶液を加圧することにより該ポリマー溶液中に該気体を溶解させるか、または、溶液を、少なくとも1つの毛細管若しくは毛細管系の内部を強制的に通過させ、および/またはマイクロ流体用装置内を通過させることによりおこなえる。最後に、ポリマー溶液を、極性を有すると共にポリマー成分が実質的に不溶である溶媒を含有する第2溶媒へ導入し、次いで、該第2溶媒に対して不溶性である(所望によりコアの周囲に形成されることもある)ポリマーシェルを沈殿させて生成する。
【0032】
本発明に対して適当なポリマー材料は、例えば、セルロース若しくはヘミセルロース、またはセルロースおよびヘミセルロースの性質に近似することが予期できる性質を備える任意の別の多糖、あるいはキトサン、ガラクトグルコマンナン、および/またはそれらの任意の誘導体である。好ましくは、ポリマー材料は1または複数の糖類の繰返し単位を含有するが、他の炭水化物および非炭水化物ポリマーも半発明の範囲に含まれる。ポリマー材料は、実質的に不規則な状態であり非晶質形態であるが、結晶形態またはこれら2つの混合形態を生じていてもよい。本発明の1つの実施態様において、ポリマー材料は、0〜25%(w/w)の濃度範囲、好ましくは0〜5%(w/w)の濃度範囲で、金属イオン/有機溶媒を含有する溶液中に溶解させることができる。本発明によると、複数種の木材パルプを実質的に処理しない形態で使用できるので、最も多く存在する技術に比べて際立った利点をもたらしている。シェルのポリマー含有量は、それらの外径に影響を及ぼさないが、溶媒中でのポリマー濃度が増加することは、直線的ではないものの、壁厚および密度を増加させる。特定の理論に制約されるわけではないが、溶液中でのポリマー濃度の増加は、より多量の入手可能な構成成分をもたらし、より厚い壁厚とより高い密度をもたらす。あるいは、溶液中での高いポリマー含有量は、粘度を増加させるので、気体の溶解時間を長引かせる。
【0033】
セルロース溶液内へ二酸化炭素を30分間かけて供給する場合(図10参照)、壁密度と、ポリマーシェル内部の空洞との関係は、1%〜2%のセルロース濃度間隔において、壁厚が若干増加していることが判る。しかしながら、溶液内へ二酸化炭素を僅か5分間だけ供給する場合(図11参照)、0.5%〜2%のセルロース濃度間隔に対して、壁厚は著しく増加している。これらをまとめると、種々の壁厚およびシェル密度は、シェルの特徴、例えば機械的性質および拡散率に影響を及ぼすことができる。したがって、本発明は、応答性の物理的特性を備えるポリマーシェルをもたらし、多くの技術分野において高い特性を示すものと考えられる。
【0034】
本発明による1つの実施態様において、第1溶媒中における金属イオンまたはアルカリ金属イオン濃度は、0.1〜25%(w/w)、好ましくは5〜10%(w/w)の範囲である。アルカリ金属イオンまたは金属イオンは、リチウムを含有することが好ましいが、当業者において既知の他のイオン、例えばMg、Na、Fe、Cu、Al、Ni、Zn、K、Beも使用できる。
【0035】
本発明の別の実施態様において、第1溶液を加圧するための気体は、二酸化炭素、または、当業者において既知の他の適当な気体、例えば、空気、アルゴン、窒素、水素および/またはLPGである。これらを使用することにより、ポリマーシェルの形成を促進できる。本発明によると、ポリマー材料を含有する加圧された(金属イオン/有機溶媒)溶液は、第2の沈殿溶液へ導入される際に、シェルの形成を促進する。加圧された第1ポリマー溶液を、非溶媒(すなわち極性溶媒を含有する極性の溶媒)へ添加する場合、それを該極性溶媒と接触させることにより、ポリマーは沈殿し、気泡はポリマー液滴内に核を形成する。ポリマーシェルの形成をもたらす第2溶液と接触させる際、第1ポリマー溶液内の、核形成される気泡内の高い圧力は、ポリマー材料の外方への膨張を生じさせる。LPGの使用は、他の気体と比べて、ポリマーシェル内部の空間を十分に増加させる。再び、特定の理論に制約されるわけではないが、説明できることは、ポリマー溶液中におけるLPGの溶解度が増加することに付随して、ポリマーシェルに興味深い応用性をもたらす数多くの変数が生じるものと考えられる。
【0036】
シェルの球形を増加させるために、沈殿を生じさせる非溶媒の表面張力を減少させてもよく、例えば、界面活性剤(例えば、両性の界面活性剤、非イオン性界面活性剤、および/またはアニオン性の界面活性剤など)を使用する1つの実施態様が挙げられる。再び、特定の理論に制約されるわけではないが、沈殿浴へ界面活性剤を添加する場合、非溶媒の減少した表面張力に起因して、ポリマーシェルの球形が増加している。このことは、表面浸透が促進されると共に衝撃が低減される結果、沈殿する間に、球状で液滴様の形状が維持されるためであると考えられる。
【0037】
本発明の更なる実施態様においては、物理的現象、例えばポリマーを溶解させる容器と沈殿浴または二酸化炭素の核生成を行う容器との間の圧力差などにより、第1溶液を第2溶媒へ移動させる。この実施態様において使用される装置は、溶解させたポリマーと金属イオン/有機溶媒を含有し加圧される第1溶液を含む容器、該溶液を移動させるための部品、および極性を有する溶媒(該溶媒に対して不溶性のポリマーシェルを沈殿させる溶媒)を含む溶液を含有する沈殿回収容器を具備する。本発明の別の態様においては、噴霧装置を使用することにより、第1ポリマー溶液を沈殿用の第2溶媒へと移動させる。該噴霧装置をポリマー溶液と接続させ、その後、該溶液を、極性溶媒(すなわち、該極性溶媒に不溶性のポリマーシェルが形成される溶媒)へと噴霧する。本発明の更なる実施態様においては、例えばピペットまたは液体を輸送するための任意の実験器具を使用して、第1溶液を、第2溶媒を含有する沈殿浴へ手動で移動させる。
【0038】
更なる実施態様において、上述の方法は、マイクロ流体用装置内および/または毛管系内において行われる。本発明の好ましい実施態様は、2つの実質的に円筒形状の、連続して整列させたマイクロ流体用容器を具備し(例えば図9参照)、第1溶液をその内部に含む1つの噴射チューブと、極性の第2溶液をその外部に含む1つの集合チューブは、前記外部の第2流体および中間流体を内部に含む外部容器によって部分的に包囲される。中間流体は噴射チューブ内部から放出されるポリマー溶液に対して直接的な力を作用させ、その結果、チューブ内部からのポリマー流体を、ポリマーシェルが沈殿して形成される集合チューブ内の第2沈殿流体(ポリマー成分、従ってポリマーシェルが不溶性である流体)内へと移動させる。本発明の別の実施態様は、移送部品を介して連結させた、少なくとも2つの連続して組立てられた容器から構成される系に関し、該系において、一方の容器から次の容器への連続的な圧力降下は、ポリマー溶液を一方の容器から次の容器へと移動させると共に、沈殿容器内において、極性溶媒に不溶性のポリマーシェルを沈殿させる。
【0039】
更なる実施態様は、ポリマーシェルの調整方法を開示し、該方法は、第1溶媒中にポリマー成分を溶解させる工程と、次いで、得られた溶液とコア形成性物質(ここで、該コア形成性物質は、W/O型(water-in-oil)エマルションである)とを混合させる工程を含む。最後に、第1溶液と、第2溶媒(該第2溶媒は例えば水であり、所望によりエマルション系に由来する)とを接触させることにより、ポリマー成分を沈殿させ、これにより、ポリマーシェルがもたらされる工程を含む。
【0040】
本発明の1実施態様において、ポリマーを溶解させる溶媒は、ポリマーシェルの沈殿後に回収され再利用される。本発明による特に好ましい実施態様において、溶媒はNMMOであり、該溶媒は濃縮された場合においてのみ効果的なセルロース溶媒となる。このことは、シェルを沈殿させる時、NMMOを水と混合させてセルロースシェルから該NMMOを分離し、その結果、水を取り除くことにより溶媒として再利用できることを示唆する。この場合、爆発を防ぐために、金属またはアルカリ金属イオンの欠如が重要である。ポリマー溶媒としてDMAC/LiCl-混合液を使用する場合、両化学薬品は、水を除去した後に再利用できる。この溶媒混合液の使用は、アルカリ金属イオンが存在する状態においても、爆発の危険性をもたらさない。
【0041】
本発明の実施態様によると、ポリマーシェルはCaCO3の存在下で形成され、シェルが該化合物を含有することにより、実質的に可逆的に密封された内部空間がもたらされる。低いpH域に曝すことでCaCO3の溶解度は増加し、その後、ポリマーシェル中に細孔の形成がもたらされ、そして、少なくとも数時間に亘り、所望により包含された化学物質の拡散と持続放出を促進する。
【0042】
本発明による更に別の実施態様においてポリマーシェルを沈殿させるための流体は、可溶性のポリマーまたは化合物を含有し、これによって所望の効果、例えばシェルの密封または表面の機能化に関連する効果を付与するようにシェル表面をコーティングする。このような化合物は、これらに限定されないが、キトサン、ガラクトグルコマンナン、キシログルカンおよび/またはCaCO3を含むことができる。
【0043】
本発明の別の態様は、炭水化物ポリマーを実質的に含有するポリマーシェルに関し、この場合、該シェルの外径に対する内径の比率は、塩濃度を変化させるおよび/またはpH値を変化させることにより調節可能である。本発明によると、ポリマーシェルを、2〜3時間の期間をかけて1〜13のpH域の溶液中に放置するか、または平衡に達するまで放置する場合、極性溶媒に不溶性のポリマーシェルの外径および壁厚は共に減少する。
【0044】
本発明によると、シェルの内径方向の膨潤は、pHおよび塩濃度を変化させる結果としてもたらされ、pHの減少に伴いポリマーシェル内部の空間における体積が増加し、塩濃度の増加に伴い体積が減少する。本発明によると、pHが上昇する場合に、シェル内部の空間の体積が減少することは、主に、pHの上昇と共にシェルの壁の厚さが増加する結果として導かれ、また、塩濃度の増加に伴いシェル内部の空間の体積が減少することは、塩濃度が増加する場合にシェルの壁の厚さが増加することに由来する。その結果、本発明によると、塩濃度を変化させるおよび/またはpHを変化させることによりもたらされる膨潤は、相対的に一定な外径と、内径方向への膨張を生じさせ、また、シェル内部の空間体積は塩濃度とpHに反比例する。
【0045】
本発明によると、ポリマー材料にもよるが、pHを1.5〜10へ増加させる場合、ポリマーシェルの壁の初期厚さは0.3〜0.55mmの間で増加する。同じような方法で、しかし、溶液内で2〜3時間に亘りより適度に放置した後における、シェルの壁厚は、前記pH域に対して0.2〜0.25mmの範囲で増加する。本発明の更に別の実施態様において、シェルの壁厚は、ポリマー溶液中のガスの可溶化度(すなわち、溶解したガスの量)に基づき調節できる。本発明は、シェル自体が動的に修正可能な特性を備え、極性溶媒に不溶性のポリマーシェルの調製方法と、それらの用途を開示する。シェルの化学的性質および物理的性質が、単純な因子、例えば塩濃度の変化およびpHの変化などを介して制御および調節できるという事実により、本発明の精神に含まれる多くの用途、例えば、薬物送達用途、クロマトグラフィ分離用途、および他の利用法、とりわけ、包装材、充填材、目地材または耐候材(weathering)としての利用に対して、このようなシェルは非常に望ましい。
本発明の1実施態様によると、pHの減少はシェル内部空間の体積を増加させ、ポンプまたは膜の特性を備えるシェルをもたらす。同じような方法の、ある実施態様において、塩濃度の減少は、シェル内部の空間の体積を増加させる。別の実施態様において、逆の変化を行ってもよい。塩濃度およびpHの変化は、極性溶媒に不溶性のこれらのポリマーシェルを使用する種々の分野でもたらされる、種々の生物系、化学系および物理系において見出すことができる。本発明によると、より高いpHはポリマー上の官能基のイオン化を誘導し、その結果ポリマー材料の膨潤を生じさせ、シェル内部の空間体積を減少させる。更に、異なる電荷密度のポリマーを調査したところ、pHを増加させた場合、セル内部の空間体積に関する減少は検出されなかった。その結果、気体の二酸化炭素の水溶性が、シェルの性質に影響を及ぼすものと考えられる。より高いpH条件下、毛細管力を通じて、シェル内へ水を導入する場合、二酸化炭素の溶解度は増加し、外方へのガス圧を減少させることはシェル内部の空間体積を減少させる。
【0046】
更に、本発明による、極性溶媒に不溶性のポリマーシェルは、約0.1時間〜約24時間の範囲、好ましくは1〜12時間の時間枠に亘り、化合物の持続放出能を有することを特徴とする。更に、本発明によると、これらの特性は、塩濃度および/またはpHを変化させることで調節でき、また、付加的なポリマーを存在させ、および/またはシェルに化合物を付着させるか導入させることも放出特性に影響を及ぼす。
【0047】
ポリマーシェルのポリマー材料には、セルロース、ヘミセルロース、キトサン、ガラクトグルコマンナン、またはそれらの誘導体が含まれる。好ましくは、ポリマー材料は、1種以上の糖類の繰返し単位を含有するが、別の炭水化物および非炭水化物ポリマー材料も、本は明の精神に含まれる。例えば、本発明におけるポリマー材料は、実質的に炭水化物および/または特にセルロースまたはヘミセルロース特性を有する1種以上のポリマーを含有できる。また、ポリマー材料は、置換または付加の方法により変性させたセルロースまたはヘミセルロースから構成されてもよい。天然および合成ポリマーは、本発明の範囲において使用できる。ポリマー材料は結晶質であってもよく、または乱雑な非晶質構造であってもよく、あるいはこれらの混合物であってもよい。
【0048】
本発明の1実施態様において、ポリマーシェルの外径に対する内径の比率は、塩濃度の変化若しくはpHの変化若しくは経過時間の結果として、40〜90%、および好ましくは50〜70%に変化する。
【0049】
本発明によるシェルは、0.1μm〜10mmの間で外径を示すが、ポリマーシェルの目的および適用分野に応じて、0.1μm〜10μm、10μm〜50μm、50μm〜100μm、100μm〜500μm、500μm〜1mmおよび1mm〜10mmの範囲の直径も全て本発明の範囲に含まれる。本発明の別の実施態様において、シェルの内径は、0.5mm〜6mmの間であるが、目的および適用分野に応じて、内径は、0.1μm〜10μm、10μm〜50μm、50μm〜100μm、100μm〜500μm、500μm〜1mmおよび1mm〜10mmの範囲であってもよい。
【0050】
図13および16から判るように、1%セルロースを含有するポリマーシェルは、約100μm〜300μmの範囲のシェル壁厚を示すことができる。1.5%のセルロース含量を有するシェルは、図14、15および17から判るように、約200μm〜300μmの範囲で、若干厚いシェル壁を有する。2%のセルロース含量を有するシェルは、より厚いシェル壁を有し、図18が示すように、セルロースポリマーシェルは約350μmのシェル壁厚を有する。幾つかのセルロースシェル、例えば形成後にマイクロ波乾燥に曝されるシェルは、図19に示されるように十分に薄いシェル壁を示し、約2μm〜30μmの範囲に厚さを備える。したがって、約100nm〜2mmの範囲にシェル壁厚有するポリマーシェルは、本発明の範囲に含まれる。シェル壁厚は、好ましくは0.5μm〜500μmの間であるが、特定の用途に対して、別の間隔も所望できる。
【0051】
本発明によると、極性溶媒に不溶性の、洗浄したポリマーシェルは、未洗浄のシェルと比べて異なる特性を示す。シェルにおける外的要因の影響は、未洗浄のセルに付随した、金属イオン塩またはアルカリ金属イオン塩(例えばLiCl)により影響を受ける。更に、本発明によると、洗浄したシェルを含むポリマーの置換度は、壁厚とシェルの膨潤に影響を及ぼし、より高い置換度は、より厚い壁とより小さい外径をもたらし、ポリマー膨潤の増加を意味する。この理由は、ポリマーの電荷が増加することが、材料の希釈(膨潤)により補償される化学ポテンシャルについて、より大きな差を生じさせるためである。その結果、本発明による1実施態様において、極性溶媒に不溶性の洗浄したポリマーシェルを含有する、より高い置換度を有するポリマー材料は、塩濃度の増加またはpHが上昇する場合、より高い膨潤度を示す。しかしながら、別の実施態様においては、塩濃度の減少は、より高い膨潤度をもたらす。
【0052】
本発明の別の実施態様において、ポリマーシェルの表面は、特定の所望特性を付与するために変性している。シェル表面の変性は、共有結合、または静電力若しくは疎水性力を介するか、あるいは当業者において既知の別の付着手段を介して、官能基および/または活性基を付着させることを含む。該変性には、原子、分子、高分子、ポリマー、凝集体、粒子、繊維、フィブリルおよび当業者に既知の他の成分が含まれる。別の実施態様においては、薬物送達またはクロマトグラフィ用途に適する性質を備える更なるポリマーを、ポリマーシェルに付着させる。このようなポリマーは、例えば、非炭水化物および炭水化物ポリマー、例えばキトサンなどを含んでもよいが、タンパク質、ポリペプチドおよびオリゴヌクレオチドもポリマーポリマーシェルに付着させてもよい。付着は共有結合または非共有結合に依存してもよく、更に、1種以上の付加的なポリマーまたはオリゴマー含有してもよい。
【0053】
1つの好ましい実施態様において、ポリマーシェルの表面を変性させるのに使用される付加的なポリマーは、水溶性炭水化物である。この水溶性炭水化物は、ポリマーシェルの表面変性を行う前または後に変性させてもよい。変性させた水溶性炭水化物はキシログルカンであってもよい。キシログルカンの変性は、セルロースを変性させるために使用されるキシログルカンエンドトランスグリコシラーゼ酵素を用いる化学-酵素的法である、ブルーマー等による欧州特許第1448840B1号による発明に従いおこなうことができる。キシログルカンの変性に関する他の方法は、キシログルカンが還元的アミノ化法によりアミノ化される、スルーットガード等による(米国仮出願第61/150021号明細書)により開示されている。アミノ化キシログルカン分子は、国際特許出願公開第2008/104528号明細書において開示されたペプチド、タンパク質若しくは抗体を結鎖させるために使用でき、または、密閉特性または他の適合性を付与する化合物を付加させるために使用できる。
【0054】
この実施態様においては、薬物送達またはクロマトグラフィ用途または他の所望特性、例えば、シェルの可逆的密封性などに適する脂質を付与するために、変性させたキシログルカンを、ポリマーシェルに付着させる。本発明によると、更なる実施態様は、例えばpHおよび塩濃度などの種々の周囲条件にさらすことにより異なる脂質を示す適当なポリマー(例えば、キトサン)若しくは化合物(例えばCaCO3)を用いて、シェルの可逆的密封性を有してもよい。可逆的密封性は、例えば、密封特性を付与する適当なポリマーまたは化合物の溶液中にポリマーシェルを浸漬させることにより得ることができる。ゼラチンは、薬物送達用途において幅広く使用されている。何故ならば、ゼラチンは、薬物の放出をもたらす、胃腸系における酵素により消化されるからである。ポリマーシェルの内容物の放出を制御するために、可逆的密封特性は、例えば、薬物送達用途において使用される。密封特性の除去は、変化させたpH、塩濃度若しくは温度に曝すことによりもたらされる。CaCO3を用いて製造されたポリマーシェルは、シェル内に包含された化合物の著しく遅い放出を示し、このことは、シェル中に組み込まれる細孔の数を減少させるか、または細孔の大きさを減少させることを暗示する。溶解していないCaCO3は、細孔を被覆すると推定されるので、ポリマーシェルの拡散性と浸透性を減少させる。
【0055】
本発明による1実施態様は、本発明による方法により調整された炭水化物ポリマーを実質的に含有するポリマーシェルに関する。
【0056】
本発明による別の実施態様において、ポリマーシェルを含む薬物送達システムが開示される。薬物送達デバイスは、例えば低分子、高分子および/または生物薬剤学的薬物の経口(p.o.)、静脈注射(i.v.)、内腹膜(i.p)、脳室内(i.c.v)、筋肉内(i.m)、鼻腔内および/または鞘内デリバリー用のビヒクル、またはワクチンおよび/または非特異性の免疫反応エンハンサー、または当業者に既知の薬学的に興味深い別の化合物用のビヒクルを含有してもよい。更に、薬物送達システムは、薬学的に興味深化合物の局部的なデリバリー、またはより長期間に亘る持続したデリバリーに利用できる。別の実施態様において、ビヒクル内に含まれる薬剤または薬学的な組成物は、ポリマーシェルの形成を支援するコア形成性物質の機能を果たすので、それにより薬物送達ビヒクル内へ導入される。あるいは、ポリマーとの優先的な共沈を介するか、または他の何らかの形式の非特異または特異な化学的相互作用を介して、薬剤を、ポリマーシェルの沈殿物上のビヒクル内へ導入するために、第2極性溶液中に溶解させてもよい。本発明の別の実施態様においては、例えば、ポリマーシェルの応答特性を有効に生かして、ポリマーシェルはその形成後に興味深い薬剤で満たされる。本発明による更なる実施態様において、ポリマーシェルは、シェルが固相成分として機能するクロマトグラフ分離用媒体として使用でき、例えば液体クロマトグラフィ(LC)(例えば高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、イオン交換クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、固定化金属アフィニティークロマトグラフィ(IMAC)、または疎水性クロマトグラフィを含む)、逆相クロマトグラフィ(RPC)、薄層クロマトグラフィ(TLC)および/またはガスクロマトグラフィ向けのコラムにおける固定相として使用でき、さらに、調製および分析目的に関する当業者に既知の技術に使用できる。
【0057】
更に、ポリマーシェル充填材は、種々の目的に関する充填材、とりわけ、絶縁体、包装材料、目地材および/または耐候材として使用できる。
【実施例】
【0058】
材料および方法
a.セルロースポリマー
本実施態様においては、発明者によって三種類のセルロースについて調査した。種々の置換度(D.S.)(0.0065および0.015)を有する2つの溶解パルプ、ならびに、Grycksboとして既知の化学的に硫酸塩で漂白した長繊維パルプを使用した。
【0059】
b.光学顕微鏡観察
本発明者は、極性溶媒に溶解しないポリマーシェルの寸法を評価するために、光学顕微鏡観察法を使用した。カールツァイス社製のStemi SV8を使用して、ポリマーシェルの外径および内径における塩濃度とpHの影響を測定すると共に、シェル内部の空間の存在についても検出した。
【0060】
c.共焦点顕微鏡観察
本発明者は、共焦点顕微鏡観察法の利用を対象としたが、シェルの壁厚が原因で、光切片は十分な程度でシェルを貫通せず、測定を行うことを困難にした。
【0061】
d.分光光度法
ポリマーシェルからの薬剤放出をシミュレーションするために、シェル内へ導入した一般的に使用される染料の放出を、該シェルを含有する水溶液の抽出を繰り返して行うことにより、分光光度法で測定した。
【0062】
実施例1:経時的にpHを変化させることによりもたらされる効果
表1〜3および図1において判るように、シェルの初期外径は、より高いpHにおいて若干増加する。図1における外径と図2における外径、すなわち初期値と2〜3時間後の値を比較すると、全ての三種類のポリマー種は寸法が減少し、2種類の溶解パルプの間では、高い類似性を示した。シェル内部へ水が拡散する場合に、シェル内部のガス圧が低下することに起因して外径方向への圧力が減少することにより、シェルの寸法が減少するものと説明できる。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
図3において示されるシェル壁の初期厚さから、pHの増加につれて該厚さが増加することが判る。pH域が1.5〜13に亘る変化は、使用するセルロースパルプに基づき0.6〜1.1mmの範囲で増加する。シェルの内部空間はpHにより影響を受け、pHの上昇に伴い膨潤が増加する結果として、低pHにてより大きな該体積が検出された。セルロースにおける荷電基(主にカルボキシル基)は、より高いpHでイオン化され、帯電したセルロースと水溶液との間の化学ポテンシャルの差は、膨潤の増加をもたらす、セルロース内への水の流入を生じさせた。溶液が数時間で去る、図4においても、同様の傾向が見受けられる。しかしながら、この場合において、シェルの壁厚さにおける差は、1.5〜13のpH域に亘り、0.4mm〜0.5mmの間である。
【0067】
シェルの内部方向への放射状膨張はpHの上昇により観測され、このことは、増加した壁厚と、それによって生じるシェルの内部空間の体積減少をもたらす。この挙動に関しては、アルカリ水がシェルに入り込む際、気体の二酸化炭素の溶解度が上昇し、その結果、溶解したCO2の拡散がシェルから外へともたらされるということが、1つの可能な説明である。その結果、気体の圧力は減少し、壁の内部方向への膨張をもたらし、シェル内部の空間体積を減少させる。この説明の背後にある論拠は、それらの異なる電荷にもかかわらず、2つの溶解パルプ間で実質的に差が検出されなかったこと、および、外径における十分な変化が、pHの変化に伴い検出されなかったという事実に由来する。膨潤が主にセルロースの荷電基によりもたらされる場合、2つの溶解パルプの間でより大きな差が検出されているであろう。膨潤特性に影響を及ぼすと共に、2つの溶解パルプにおける差が予想以上に小さい理由をある程度説明する、LiClイオンの一定量の存在を暗に示す、洗浄したシェルについてこれらの試験を行わなかったことの意義は大きい。
【0068】
実施例2:経時的に塩濃度を変化させることによりもたらされる効果
塩濃度を、0〜0.1Mの濃度範囲に亘り変化させた。初期値は初期の時点にて光学顕微鏡観察を用いて測定し、後の値については2〜3時間後に測定した。
【0069】
得られた結果によると、塩濃度を変化させる場合に、2種類の溶解パルプに関する外径は実質的に変化しなかったが、硫酸塩パルプを含有するシェルは寸法が増加したということが示される。このことは、通常は実質的に球状のシェルの高い変形により、増加した直径に二次元測定を施したことに関連するものと説明できる。その結果として、Grycksboパルプに関する誤差は大きい。しかし、2種類の溶解パルプは、高度に類似した特性を示したと結論を出すことができる(図5)。
【0070】
種々の塩濃度範囲に亘る溶液における2〜3時間後の測定によると、最も低いD.S(置換度)を有する溶解パルプは、より高いD.Sを有する溶解パルプと比べて若干高い外径を示す一方、硫酸塩パルプは、上記理由により、最も大きな径を示した(図6)。溶液における数時間後の測定に関して、図5および図6を比較すると、外径および壁厚は全体的に減少した。さらに、2種類の溶解パルプに関しては、塩濃度の上昇に伴い、壁厚および外径が増加し、その結果、シェルの内部空間により小さな体積がもたらされる(図7および表5〜表7)。
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
実施例3:セルロースシェルの性質における洗浄の影響
表7〜表9は、洗浄後のシェル寸法における変化を示す。上記結果と一致して、pHおよび塩濃度を変化させる場合に、シェルの外径は実質的に変化しなかった。しかしながら、イオンを溶液に添加する場合に内部方向への膨潤がもたらされ、シェルの壁厚は増加する。このことは、pHを10まで増加させるか塩濃度を10-3Mまで上昇させる場合に、膨潤を抑制する力が減少することを暗に意味する。
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】
2種類の溶解パルプを比較すると、最も高いD.Sを有するパルプは最も高い壁厚とより小さな外径を有することが判る。その結果として、最も高いD.Sを有する溶解パルプの膨潤は、より低いD.Sを有する溶解パルプの膨潤よりも大きかった。最も高い電荷を有するセルロースは、より大きな化学ポテンシャル差を誘導し、このことは膨潤(希釈)により補償されるということを推測させる。
【0079】
実施例4:染料放出実験
ポリマーシェルからの物質放出をシミュレートするために、着色化合物(メチルオレンジ)をシェルに吸着させた。まず、1.5%(w/w)の溶解パルプを、CaCO3を存在させるか、または存在させない、LiCl/DMAC中に溶解させ、次いで、セルロースシェルを前記のようにして沈殿させた。その後、メチルオレンジをシェルに吸着させ、次いで、シェルを水浴へ移動させた。サンプルを水浴から取りだし、470nmでの吸収を分光光度法で測定した。
【0080】
サンプルを、最初の8時間と24時間以降において、1時間毎に取り出したところ、CaCO3の存在下で形成したシェル内へ組み込まれた染料は、CaCO3を存在させずに形成したシェルにおける染料と比べて、より急速に拡散することを示した(図8)。8時間後、CaCO3の存在下で形成したシェル中の染料は、ほぼ完全にシェルから放出され、一方、未処理のシェルに関する平衡状態はその後到達した。CaCO3の存在下で形成したシェルからの、より速いメチルオレンジの放出(図8)は、より低いpHでのCaCO3の溶解度が増加することに基づくものであると説明できる。シェルの構成において、シェル内に組み込まれたCaCO3は可溶性であるので、炭水化物ポリマーシェルからの染料の放出を促進させる細孔の形成を生じさせる。時間に対する、正規化した染料濃度のプロット(図8)は、シェルの配合においてCaCO3を含有する場合、持続した放出は2時間に亘ってもたらされることを示し、また、シェルの配合においてCaCO3を存在させない場合、更に長く持続した放出特性を有するシェルがもたらされることを示す。
【0081】
実施例5:マイクロ流体ポリマーシェルの製造
マイクロ流体ポリマーシェルの製造(例えば図9に従う)における初期段階は、外部流体としてPDMSオイルと、内部流体として水を流すことにより、ポリジメチルシロキサン(PDMS)中に、60μmの寸法を有する単分散水滴を生成させることに関連する。PDMSにより包囲された単分散水滴は、円形ガラス毛細管内を通過させて輸送され、該管の終端において、セルロース/LiCl/DMAc-溶液が導入された。流体力学の結果として、セルロース溶液はPDMSと水を覆い、二重エマルションを生成する。内部保護剤として機能するPDMSオイルは、セルロースと水の間における、一般的に極めて速い相互作用を遅延させる。この特有の配置は、セルロースを固化させる媒体としてマイクロ流体技術を使用する場合における主な欠点のうちの1つである、目詰まりを防止する。一度装置が目詰まりすると、通常、該装置は使い物にならなくなり、新しい装置を装着しなければならない。さらに、水滴を覆うPDMSオイルを有することにより、早い時点で沈殿させたセルロースシェルがガラス毛細管内でスティッキングすることを防ぐために、より大きな剪断応力を加えることができる。左側から始まる、内径を有する配列が図19より後に示され、正方形管が1mmの内部幅を有し、円形のガラスチューブが50μmの内径を有し、同じ円形毛細管の第2開口が180μmの内径を有し、集合チューブが400μmの開口を有した。点で描いた矢印は、流体がマイクロ流体用装置内に導入される注入口を示す。点線以外の矢印は、マイクロ流体用装置内の流体の流れ方向を示す。マイクロ流体技術を用いて製造された中空セルロースシェルの寸法は、ミリメーターからマイクロメータへと減少する。マイクロ流体技術により製造されるシェルの寸法を決定する、最も重要なパラメータは、ガラステーパー(図5または図19参照)の寸法、水を注入するガラスチューブの毛細管出口の寸法である。テーパーがより大きくなるにつれて、セルロースシェルもより大きくなる。
【0082】
実施例6:ポリマーシェルの乾燥
湿潤した中空セルロースシェルの寸法は、周囲温度にて空気乾燥させる前に、顕微鏡を用いて測定した。5時間の空気乾燥の後、寸法を再度測定した。セルロースシェルの直径は、係数2.6、即ち60%よりも多く減少した。
【0083】
コア形成剤としてLPG(60%プロパンおよび40%ブタン)を用いて調製したセルロースシェルが全体的に乾燥するまで、得られたシェルを家庭用の電子レンジ(800W)内で乾燥させた(約1.5分)。上記実施例とは異なり、シェルの寸法は、乾燥の結果としての減少は生じていないが、シェルは硬くなった。印加した物理的圧力を解放する場合、実質的に即時に、シェルはそれらの元の形態および構造に復帰する。更に、マイクロ波乾燥を行った後、シェルは目視検査において透明であり、多数の用途に対して透明なシェルをもたらすといった、非常に興味深い特徴を潜在的に備えている。
【0084】
実施例7:乳化による調製
1mlのヘキサンを5mlのセルロース溶液中に溶解させた。次いで混合物を振盪させ、セルロース溶液中にヘキサン液滴のエマルションを形成する。次いで、この溶液をイソプロパノール内へ滴下することにより、液滴は沈殿し、ヘキサンで満たされたセルロースカプセルを形成する。
【0085】
更に、セルロースを沈殿させる前に、第3の非極性液体(PDMS)を添加する実験をおこなった。マイクロサイズのシェルが得られる、イソプロパノールにおける沈殿工程の前に、混合液における第三成分としてPDMSを添加し、次いで溶液を繰り返して振盪させた。
【0086】
更に、2mlのセルロース溶液をLPGと共に供給し、次いで、ヘキサン溶液内へ移した。次いで、混合物を振盪させ、その後、ガラス製のピペットを用いてイソプロパノール内へ移動させることにより、セルロースシェルが沈殿し形成された。
【0087】
実施例8:セルロースシェルのキシログルカン-FITC変性
4000Daの分子量を有しフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識化した、10mgのキシログルカン(XG)を、5gのDMAC溶液へ添加し、全てが溶解するまで約1時間かけて攪拌した。溶液を1時間CO2ガスで処理した。次いで、溶液を水浴中へ滴下した。XG-FITCがシェルに吸収されたこと、および水浴中の水がXG-FITCを含有するかどうかを測定するために該水溶液を分析した。TLCプレート上に水滴を添加し、次いで、360nmUV放射に曝すことにより、セルロースシェルとXG-FITC間の相互作用を評価した。TLCプレートから光は放出されず、水溶液中におけるXG-FITCの欠如を確認した。
【0088】
議論
シェルの壁厚と外径は、最初は比較的大きいが、平衡に達するまでに経時的に減少する。シェル内部の空間の体積は、pHによって影響を受け、最も大きな体積は低いpHで観察される。シェルの膨潤は径の内方へ向かって生じ、外径は相対的に一定のままである。その一方、塩濃度を変化させることおよびpHを変化させることにより、セルロース壁は内側へ膨張する。洗浄したシェルに関しては、最も高いD.Sを有する溶解パルプは、より低いD.Sを有する溶解パルプと比べて、より高いシェルの壁厚を示した。このことは、最も高い電荷を有するパルプは、塩を添加するかpH上昇させる場合に、より膨潤することを意味する。さらに、シェルの物理的性質は、数時間の時間枠に亘ってモデル化合物の持続した放出を可能にすると共に、さらに、放出の調節を容易におこなえる。このことは、薬物送達の設計において有意な効用がもたらされることを意味する。
【0089】
ポリマーシェルを調製するためにマイクロ流体技術を使用することによって、高度に可変の形状および寸法を備えるシェルを調製するための種々の方法をもたらす本発明は、高い多用途性と適用性をもたらす。さらに、異なる乾燥条件により発揮された異なる効果は、他のパラメータを使用することによりポリマーシェルの物理的特性を制御できることを暗に意味する。更に、表面改質は、ポリマーシェルの特性を調整するための他の重要な手段であり、このことは、塩、小さな分子量および/または種々の起源のポリマーを使用することにより行なえる。
【符号の説明】
【0090】
5反応チャンバ
10噴射チューブ
15集合チューブ
20流体 1
25流体 2
30流体 3
35PDMSオイルの流れを示す
40水の流れを示す
45ポリマー流体の流れを示す
50水
55ポリマー
60PDMSオイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(a)〜(c)を含む、ポリマーシェルの調製方法:
(a)第1溶媒中にポリマー成分を溶解させ、
(b)所望により、工程(a)の溶液とコア形成性物質を混合させることによって、該ポリマー成分と実質的に混和しないコアを該コア形成性物質から形成させ、
(c)得られた第1溶液を、該ポリマー成分を実質的に溶解させず極性を有する第2溶媒と接触させることによって該ポリマー成分を沈殿させることにより、所望により該コアの周囲に形成されることもある該ポリマーシェルを得る。
【請求項2】
下記工程(a)〜(c)を含む、請求項1に記載のポリマーシェルの調製方法:
(a)第1溶媒中にポリマー成分を溶解させ、
(b)少なくとも1種の気体、少なくとも1種の液体および/または少なくとも1種の固体を含む群から選択されるコア形成性物質を工程(a)の溶液と混合させ、次いで、
(c)得られた第1溶液を、該ポリマー成分を実質的に溶解させず極性を有する第2溶媒と接触させることによって、該ポリマー成分を沈殿させることにより、所望により該コアの周囲に形成されることもある該ポリマーシェルを得る。
【請求項3】
下記工程(a)〜(c)を含む、請求項1または2に記載のポリマーシェルの調製方法:
(a)第1溶媒中にポリマー成分を溶解させ、
(b)CO2、空気、アルゴン、窒素、水素、液化石油ガス、水、ヘキサンおよび/またはその他の炭化水素、および/またはPDMSおよび/またはその他のポリシロキサンを含む群から選択されるコア形成性物質を工程(a)の溶液と混合させ、次いで、
(c)得られた第1溶液を、該ポリマー成分を実質的に溶解させず極性を有する第2溶媒と接触させることによって、該ポリマー成分を沈殿させることにより、所望により該コアの周囲に形成されることもあるポリマーシェルを得る。
【請求項4】
工程(c)において得られたポリマーシェルをマイクロ波乾燥させることにより、透明で、硬く、および/または弾性のあるポリマーシェルを得る工程(d)をさらに含む請求項3に記載のポリマーシェルの調製方法であって、透明で弾性のあるポリマーシェルを調製する該方法。
【請求項5】
下記工程(a)〜(e)を含む、請求項1に記載のポリマーシェルの調製方法:
(a)ポリマーを、金属イオン/有機溶液を含有する第1溶媒へ溶解させ、
(b)所望により、工程(a)における溶液とコア形成性物質を混合させ、
(c)得られた第1溶液を加熱して水を蒸発させ、
(d)(i)適当な気体で該第1溶液を加圧することにより、該ポリマー溶液中に該気体を溶解させるか、または(ii)該第1溶液を、毛細管系の内部を強制的に通過させることによって、該第1溶液を加圧処理に付すことにより、気体および/または液体および/または固体を含有するコアを形成させ、
(e)該第1溶液を、該ポリマー成分を実質的に溶解させず極性を有する第2溶媒と接触させることによって、該ポリマー成分を沈殿させることにより、所望により該コアの周囲に形成されることもあるポリマーシェルを得る。
【請求項6】
ポリマー成分が、セルロース、ヘミセルロース、キトサン、ガラクトグルコマンナンまたはこれらの誘導体から成る群から選択される請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(a)における金属イオン/有機溶液中のポリマー濃度が、0〜25%(w/w)、好ましくは0〜5%(w/w)である請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(a)における溶液中の金属イオン濃度が、3〜25%(w/w)、好ましくは5〜10%(w/w)である請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程(a)における溶液中の金属イオンがアルカリ金属イオン、好ましくはLiである請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
第1溶媒がDMAcまたはNMMOである請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
第2溶媒が、水性溶媒または極性溶媒、例えば水、イソプロパノール、メタノール、エタノール、1,2-ジクロロエタン、および/またはトルエンである請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
下記(a)〜(d)のうちの少なくとも1つの手段により、第1溶液と第2溶液を接触させる請求項1から11のいずれかに記載の方法:
(a)沈殿容器とポリマーを溶解させる容器との間における圧力差、
(b)噴霧装置の使用、
(c)印加力、または
(d)例えばピペットの使用による手動力。
【請求項13】
マイクロ流体用装置内および/または毛細管系内において行われる請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
下記工程(a)〜(c)を含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法:
(a)第1溶媒中にポリマー成分を溶解させ、
(b)工程(a)で得られた溶液を、コア形成性物質としての油中水型エマルションと混合させ、次いで、
(c)得られた第1溶液を、第2溶媒としての水と接触させることによって、該ポリマー成分を沈殿させることにより、ポリマーシェルを得る。
【請求項15】
炭水化物ポリマーを含有するポリマーシェルであって、該シェルの外径に対する内径の比率が、塩濃度および/またはpHを変化させることにより調節可能である該ポリマーシェル。
【請求項16】
セルロースおよび/またはヘミセルロースおよび/またはこれらの誘導体を含有する請求項15に記載のポリマーシェル。
【請求項17】
外径に対する内径の比率が40%〜90%、好ましくは50%〜70%の範囲内で調節可能である請求項15または16のいずれかに記載のシェル。
【請求項18】
シェルの外径が0.1μm〜10mmの範囲内にある請求項15から17のいずれかに記載のシェル。
【請求項19】
シェルの内径が0.1μm〜10mmの範囲内にある請求項15から18のいずれかに記載のシェル。
【請求項20】
シェルが目視検査において透明である請求項15から19のいずれかに記載のシェル。
【請求項21】
印加圧力を解放した後に、シェルが元の形態へ、実質的に瞬時に復帰する、請求項15から20のいずれかに記載のシェル。
【請求項22】
シェルの表面が、キシログルカンを含有する分子で変性された請求項15から21のいずれかに記載のシェル。
【請求項23】
請求項1から14のいずれかに記載の方法により調製された、炭水化物ポリマーを実質的に含有するポリマーシェル。
【請求項24】
請求項15から23のいずれかに記載のポリマーシェルを含む薬物送達デバイス。
【請求項25】
シェルが固相成分である、請求項15から23のいずれかに記載のポリマーシェルを含むクロマトグラフ分離用媒体。
【請求項26】
請求項15から23のいずれかに記載のポリマーシェルを含む充填材。
【請求項27】
充填材の種類が包装材、目地材および耐候材からなる群から選択される請求項26に記載の充填材。
【請求項1】
下記工程(a)〜(c)を含む、ポリマーシェルの調製方法:
(a)第1溶媒中にポリマー成分を溶解させ、
(b)所望により、工程(a)の溶液とコア形成性物質を混合させることによって、該ポリマー成分と実質的に混和しないコアを該コア形成性物質から形成させ、
(c)得られた第1溶液を、該ポリマー成分を実質的に溶解させず極性を有する第2溶媒と接触させることによって該ポリマー成分を沈殿させることにより、所望により該コアの周囲に形成されることもある該ポリマーシェルを得る。
【請求項2】
下記工程(a)〜(c)を含む、請求項1に記載のポリマーシェルの調製方法:
(a)第1溶媒中にポリマー成分を溶解させ、
(b)少なくとも1種の気体、少なくとも1種の液体および/または少なくとも1種の固体を含む群から選択されるコア形成性物質を工程(a)の溶液と混合させ、次いで、
(c)得られた第1溶液を、該ポリマー成分を実質的に溶解させず極性を有する第2溶媒と接触させることによって、該ポリマー成分を沈殿させることにより、所望により該コアの周囲に形成されることもある該ポリマーシェルを得る。
【請求項3】
下記工程(a)〜(c)を含む、請求項1または2に記載のポリマーシェルの調製方法:
(a)第1溶媒中にポリマー成分を溶解させ、
(b)CO2、空気、アルゴン、窒素、水素、液化石油ガス、水、ヘキサンおよび/またはその他の炭化水素、および/またはPDMSおよび/またはその他のポリシロキサンを含む群から選択されるコア形成性物質を工程(a)の溶液と混合させ、次いで、
(c)得られた第1溶液を、該ポリマー成分を実質的に溶解させず極性を有する第2溶媒と接触させることによって、該ポリマー成分を沈殿させることにより、所望により該コアの周囲に形成されることもあるポリマーシェルを得る。
【請求項4】
工程(c)において得られたポリマーシェルをマイクロ波乾燥させることにより、透明で、硬く、および/または弾性のあるポリマーシェルを得る工程(d)をさらに含む請求項3に記載のポリマーシェルの調製方法であって、透明で弾性のあるポリマーシェルを調製する該方法。
【請求項5】
下記工程(a)〜(e)を含む、請求項1に記載のポリマーシェルの調製方法:
(a)ポリマーを、金属イオン/有機溶液を含有する第1溶媒へ溶解させ、
(b)所望により、工程(a)における溶液とコア形成性物質を混合させ、
(c)得られた第1溶液を加熱して水を蒸発させ、
(d)(i)適当な気体で該第1溶液を加圧することにより、該ポリマー溶液中に該気体を溶解させるか、または(ii)該第1溶液を、毛細管系の内部を強制的に通過させることによって、該第1溶液を加圧処理に付すことにより、気体および/または液体および/または固体を含有するコアを形成させ、
(e)該第1溶液を、該ポリマー成分を実質的に溶解させず極性を有する第2溶媒と接触させることによって、該ポリマー成分を沈殿させることにより、所望により該コアの周囲に形成されることもあるポリマーシェルを得る。
【請求項6】
ポリマー成分が、セルロース、ヘミセルロース、キトサン、ガラクトグルコマンナンまたはこれらの誘導体から成る群から選択される請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(a)における金属イオン/有機溶液中のポリマー濃度が、0〜25%(w/w)、好ましくは0〜5%(w/w)である請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(a)における溶液中の金属イオン濃度が、3〜25%(w/w)、好ましくは5〜10%(w/w)である請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程(a)における溶液中の金属イオンがアルカリ金属イオン、好ましくはLiである請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
第1溶媒がDMAcまたはNMMOである請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
第2溶媒が、水性溶媒または極性溶媒、例えば水、イソプロパノール、メタノール、エタノール、1,2-ジクロロエタン、および/またはトルエンである請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
下記(a)〜(d)のうちの少なくとも1つの手段により、第1溶液と第2溶液を接触させる請求項1から11のいずれかに記載の方法:
(a)沈殿容器とポリマーを溶解させる容器との間における圧力差、
(b)噴霧装置の使用、
(c)印加力、または
(d)例えばピペットの使用による手動力。
【請求項13】
マイクロ流体用装置内および/または毛細管系内において行われる請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
下記工程(a)〜(c)を含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法:
(a)第1溶媒中にポリマー成分を溶解させ、
(b)工程(a)で得られた溶液を、コア形成性物質としての油中水型エマルションと混合させ、次いで、
(c)得られた第1溶液を、第2溶媒としての水と接触させることによって、該ポリマー成分を沈殿させることにより、ポリマーシェルを得る。
【請求項15】
炭水化物ポリマーを含有するポリマーシェルであって、該シェルの外径に対する内径の比率が、塩濃度および/またはpHを変化させることにより調節可能である該ポリマーシェル。
【請求項16】
セルロースおよび/またはヘミセルロースおよび/またはこれらの誘導体を含有する請求項15に記載のポリマーシェル。
【請求項17】
外径に対する内径の比率が40%〜90%、好ましくは50%〜70%の範囲内で調節可能である請求項15または16のいずれかに記載のシェル。
【請求項18】
シェルの外径が0.1μm〜10mmの範囲内にある請求項15から17のいずれかに記載のシェル。
【請求項19】
シェルの内径が0.1μm〜10mmの範囲内にある請求項15から18のいずれかに記載のシェル。
【請求項20】
シェルが目視検査において透明である請求項15から19のいずれかに記載のシェル。
【請求項21】
印加圧力を解放した後に、シェルが元の形態へ、実質的に瞬時に復帰する、請求項15から20のいずれかに記載のシェル。
【請求項22】
シェルの表面が、キシログルカンを含有する分子で変性された請求項15から21のいずれかに記載のシェル。
【請求項23】
請求項1から14のいずれかに記載の方法により調製された、炭水化物ポリマーを実質的に含有するポリマーシェル。
【請求項24】
請求項15から23のいずれかに記載のポリマーシェルを含む薬物送達デバイス。
【請求項25】
シェルが固相成分である、請求項15から23のいずれかに記載のポリマーシェルを含むクロマトグラフ分離用媒体。
【請求項26】
請求項15から23のいずれかに記載のポリマーシェルを含む充填材。
【請求項27】
充填材の種類が包装材、目地材および耐候材からなる群から選択される請求項26に記載の充填材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【公表番号】特表2012−517337(P2012−517337A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549125(P2011−549125)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050152
【国際公開番号】WO2010/090594
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(502325708)スウェツリー・テクノロジーズ・アクチボラゲット (4)
【氏名又は名称原語表記】SweTree Technologies AB
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050152
【国際公開番号】WO2010/090594
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(502325708)スウェツリー・テクノロジーズ・アクチボラゲット (4)
【氏名又は名称原語表記】SweTree Technologies AB
【Fターム(参考)】
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