説明

ポリマーセメント組成物およびそれを用いてなる塗膜防水材、ポリマーセメント用エマルジョン組成物

【課題】塗工適正と塗膜物性にバランスよく優れたポリマーセメント組成物の提供を目的とする。
【解決手段】水への溶解度〔水100gに対する溶解量〕が20g/100g以下であり、かつ不飽和基を有しない有機溶剤(A)と水との存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系樹脂エマルジョンを含有することを特徴とするポリマーセメント組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーセメント組成物およびそれを用いてなる塗膜防水材、ポリマーセメント用エマルジョン組成物に関するものであり、詳しくは、陸屋根等の建物屋上、建築物のベランダ、壁、バルコニー、浴室、冷凍倉庫外面等の、土木・建築分野において、防水被覆技術に使用する、ポリマーセメント組成物およびそれを用いてなる塗膜防水材、ポリマーセメント用エマルジョン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗膜防水材用のポリマーセメント組成物としては、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)を保護コロイドとして乳化重合を行ったエチレン−酢酸ビニル共重合体系(EVA系)エマルジョンと、セメントとを併用したものが使用されている。このポリマーセメント組成物は、ローラー塗工可能な塗膜防水材として使用されていたが、得られた塗膜の柔軟性や耐候性が不足するという問題点があった。
【0003】
そこで、上記塗膜の柔軟性や耐候性等の塗膜物性を改善するために、EVA系エマルジョンに代えて、一般的に優れた柔軟性や耐候性を示す塗膜が得られやすいアクリル系樹脂エマルジョンを使用したポリマーセメント組成物が提案されている。
例えば、特許文献1には、アルミナセメントを10質量%以上含有する水硬性成分、上記水硬性成分100質量部に対して、固形分換算量で1〜80質量部の合成樹脂エマルジョン(アクリル系樹脂エマルジョン)、および0.1〜15質量部の収縮低減剤を含む水硬性組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−44958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の組成物は、塗工時にローラーで塗工を行なえる程度に組成物の粘度を低下させると、塗工・乾燥後に塗膜に割れ(チェッキング)が発生し、防水性能が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、塗工適正と塗膜物性にバランスよく優れた、ポリマーセメント組成物およびそれを用いてなる塗膜防水材、ポリマーセメント用エマルジョン組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、塗工適正と塗膜物性にバランスよく優れたポリマーセメント組成物を得るため、従来エマルジョン重合完了後に、造膜助剤として用いていた有機溶剤に着目し、鋭意研究を続けた。その結果、有機溶剤を後添加するのではなく、アクリル系樹脂エマルジョン合成の乳化重合中に共存させて、かつ、かかる有機溶剤として疎水性の高い、不飽和基を含有しない有機溶剤を選択することにより、かかるアクリル系樹脂エマルジョンを良好に得ることができ、更にかかるアクリル系樹脂エマルジョンを含有するポリマーセメント組成物が塗工時の粘度および塗膜化したときの伸度に優れたものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
この理由は明らかではないが、つぎのように推察される。すなわち、従来、造膜助剤として使用されていた特定の疎水性有機溶剤は、エマルジョン重合完了後に後添加すると、エマルジョン粒子の表面のみが柔らかくなるが、粒子内部を柔らかくすることはできなかった。本発明では、水への溶解度が20g/100g以下といった高い疎水性を有し、かつ不飽和基を有しない有機溶剤(A)を選択し、この有機溶剤(A)の存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合するため、エマルジョン粒子の成長段階で、特定の有機溶剤(A)がエマルジョン粒子の表面だけでなく、内部にまでに入り込みやすくなり、そのため、エマルジョン粒子全体が柔らかなくなり、これを用いた塗膜の伸度が優れたものとなると考えられる。
【0009】
すなわち、本発明は、水への溶解度〔水100gに対する溶解量〕が20g/100g以下であり、かつ不飽和基を有しない有機溶剤(A)と水との存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系樹脂エマルジョンを含有するポリマーセメント組成物を第1の要旨とする。
また、本発明は、ポリマーセメント組成物を含有してなる塗膜防水材を第2の要旨とする。
更に、本発明は、水への溶解度〔水100gに対する溶解量〕が20g/100g以下であり、かつ不飽和基を有しない有機溶剤(A)と水との存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系樹脂エマルジョンを含有するポリマーセメント用エマルジョン組成物を第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明のポリマーセメント組成物は、水への溶解度〔水100gに対する溶解量〕が20g/100g以下であり、かつ不飽和基を有しない有機溶剤(A)と水との存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系樹脂エマルジョンと、セメント成分とを含有するものであり、塗工適正と塗膜物性にバランスよく優れたものとなる。
【0011】
さらに、本発明のポリマーセメント組成物を含有してなる塗膜防水材は、塗膜の柔軟性や耐候性に優れるとともに、塗膜の伸度も向上することから、塗膜の防水性能に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0013】
本発明のポリマーセメント組成物は、不飽和基を有しない有機溶剤(A)と水との存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系樹脂エマルジョン、およびセメント成分を含有する組成物である。
【0014】
本発明においては、乳化重合時に有機溶剤(A)を共存させること、及び、有機溶剤(A)が、水への溶解度〔水100gに対する溶解量〕(以下、単に「溶解度」という場合もある)が20g/100g以下のものを使用することが最大の特徴である。
【0015】
以下、各成分について説明する。
[不飽和基を有しない有機溶剤(A)]
本発明において、不飽和基とは、エチレン系炭化水素基のような重合性二重結合を有する基(環式不飽和炭化水素基を除く)を意味し、本発明で使用する有機溶剤(A)は、このような不飽和基を有しないことを特徴とする。
【0016】
不飽和基を有しない有機溶剤(A)(以下、単に「有機溶剤(A)」という場合もある)は、溶解度の上限が20g/100g以下のものが使用され、好ましくは15g/100g以下、特に好ましくは10g/100g以下であり、最も好ましくは水に不溶のもの(溶解度が0g/100g)である。有機溶剤(A)の溶解度が上限を超えるものを使用すると、重合安定性が損なわれ、アクリル系樹脂エマルジョンを得ることができなくなる。
なお、本発明における水への溶解度は、23℃で測定したものである。
【0017】
また、有機溶剤(A)の沸点は、170〜350℃が好ましく、特に好ましくは200〜300℃、更に好ましくは230〜280℃である。沸点が低すぎると、塗膜の伸度向上が不足する傾向がみられ、沸点が高すぎると、モノマーとの相溶性が低下し重合安定性が低下する傾向がみられる。
【0018】
有機溶剤(A)としては、例えば、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤等が、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、重合安定性と塗膜の伸度の点から、炭素数5〜20(好ましくは炭素数6〜18)のエステル系溶剤、炭素数5〜20(好ましくは炭素数6〜18)のエーテル系溶剤が好ましい。
【0019】
エステル系溶剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(炭素数12)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(炭素数16)、ジブチルフタレート(炭素数16)、アジピン酸イソブチル等があげられる。なかでも、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、ジブチルフタレートが好ましく、特に好ましくは2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートである。
【0020】
エーテル系溶剤としては、例えば、ジプロピレンングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等があげられる。なかでも、プロピレングリコール−n−ブチルエーテルが好ましい。
【0021】
アルコール系溶剤としては、例えば、ベンジルアルコール等があげられる。
【0022】
[アクリル系樹脂エマルジョン]
本発明で使用するアクリル系樹脂エマルジョンは、上記水への溶解度が20g/100g以下であり、かつ上記不飽和基を有しない有機溶剤(A)と水との存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるものである。
【0023】
アクリル系樹脂エマルジョンを構成するアクリル系樹脂としては、エチレン性不飽和単量体の単独重合体もしくは共重合体であることが好ましく、更に好ましくは、エチレン性不飽和単量体のなかでも特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、その他のエチレン性不飽和単量体と共重合したアクリル系共重合体である。
本発明において、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするとは、エチレン性不飽和単量体全体の50重量%を超える量を含有することを意味し、好ましくは、エチレン性不飽和単量体全体の60重量%以上を含有することをいう。
【0024】
以下、アクリル系樹脂を形成する重合成分であるエチレン性不飽和単量体について詳述する。
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、下記の(a)〜(l)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル。
(b)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体。
(c)カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体。
(d)エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体。
(e)メチロール基含有エチレン性不飽和単量体。
(f)アルコキシアルキル基含有エチレン性不飽和単量体。
(g)シアノ基含有エチレン性不飽和単量体。
(h)ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているエチレン性不飽和単量体。
(i)アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体。
(j)スルホン酸基を有するエチレン性不飽和単量体。
(k)リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体。
(l)芳香族エチレン性不飽和単量体。
【0025】
上記(a)〜(l)のなかでも、得られるエマルジョン粒子の安定性の点から、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(c)、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(i)から選ばれる少なくとも1種をエチレン性不飽和単量体成分として含有することが好ましい。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(c)の含有量は、エチレン性不飽和単量体全体の0.1〜5重量%が好ましく、特に好ましくは0.3〜3重量%である。
また、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(i)の含有量は、エチレン性不飽和単量体全体の0.1〜5重量%が好ましく、特に好ましくは0.3〜3重量%である。
【0026】
本発明で使用するアクリル系樹脂としては、上記(a)〜(l)以外に、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の単量体も、所望に応じて適宜使用することができる。
【0027】
つぎに、上記(a)〜(l)に例示された単量体について、詳述する。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜20の脂肪族(メタ)アクリレートや、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも好ましくは、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜10の脂肪族(メタ)アクリレートである。
【0028】
上記ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体(b)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも好ましくは、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、炭素数2〜4のアルキレン基を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートであり、特に好ましくはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0029】
上記カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(c)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を用いることができ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸、イタコン酸がより好ましい。なお、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のようなジカルボン酸の場合には、これらのモノエステルやモノアマイドを用いてもよい。
【0030】
上記エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体(d)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも好ましくはグリシジル(メタ)アクリレートである。
【0031】
上記メチロール基含有エチレン性不飽和単量体(e)としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチロール(メタ)アクリルアミド等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0032】
上記アルコキシアルキル基含有エチレン性不飽和単量体(f)としては、例えば、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメトキシ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルコキシ(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0033】
上記シアノ基含有エチレン性不飽和単量体(g)としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等があげられる。
【0034】
上記ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているエチレン性不飽和単量体(h)としては、例えば、ジビニルベンゼン、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0035】
上記アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(i)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0036】
上記スルホン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(j)としては、例えば、ビニルスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸(塩)等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0037】
上記リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(k)としては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス〔(メタ)アクリロイロキシエチル〕ホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0038】
上記芳香族エチレン性不飽和単量体(l)としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、好ましくはスチレンである。
【0039】
なお、本発明において、(メタ)アクリロイロキシとは、アクリロイロキシあるいはメタクリロイロキシを意味し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸あるいはメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリルとは、アクリルあるいはメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートあるいはメタクリレートを意味する。
【0040】
本発明に使用するアクリル系樹脂エマルジョンは、前記単量体の単独重合体もしくは共重合体であるが、この重合の際に、前記単量体以外に、必要に応じて、保護コロイド剤(分散安定化剤)、重合開始剤、重合調整剤、界面活性剤を適宜用いることができる。更に、後添加として、可塑剤、造膜助剤等の他の成分を適宜用いることができる。
【0041】
上記保護コロイド剤(分散安定化剤)としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)等があげられる。
かかるPVA系樹脂としては、アクリル系樹脂エマルジョンの合成において、乳化重合の際に用いられる従来公知のPVA系樹脂を用いればよい。
【0042】
本発明において、PVA系樹脂の使用量は、エチレン性不飽和単量体全体100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部である。PVA系樹脂の使用量が少なすぎると、乳化重合の際の保護コロイド量が不足となって、重合安定性が不良となる傾向があり、使用量が多すぎると、アクリル系樹脂エマルジョンの粘度が高まり安定性が低下する傾向がある。
【0043】
また、前記重合開始剤としては、水溶性、油溶性のいずれのものも用いることが可能である。例えば、アルキルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2′−アゾビス(2−メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕−プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、各種レドックス系触媒(この場合酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、p−メタンハイドロパーオキサイド等が、還元剤としては亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が用いられる。)等があげられる。
【0044】
これらの重合開始剤は単独であるいは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも重合安定性に優れる点で、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、レドックス系触媒(酸化剤:過硫酸カリウム,過硫酸ナトリウム、還元剤:亜硫酸ナトリウム,酸性亜硫酸ナトリウム,ロンガリット,アスコルビン酸)等が好適である。
【0045】
上記重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体全体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲であることが好ましく、さらには0.03〜3重量部であることがより好ましい。重合開始剤の使用量が少なすぎると、重合速度が遅くなる傾向がみられ、多すぎると、得られる共重合体の分子量が低下し耐水性の面において好ましくない傾向がみられる。
【0046】
なお、上記重合開始剤は、重合缶内に予め加えておいてもよいし、重合開始直前に加えてもよいし、必要に応じて重合途中に追加添加してもよい。あるいは、単量体混合物に予め添加したり、上記単量体混合物からなる乳化液に添加したりしてもよい。また、重合開始剤の添加に際しては、重合開始剤を別途溶媒や上記単量体に溶解して添加したり、溶解した重合開始剤をさらに乳化状にして添加したりしてもよい。
【0047】
また、前記重合調整剤としては、例えば、連鎖移動剤、pH緩衝剤等があげられる。
上記連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;n−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0048】
この連鎖移動剤の使用は、重合を安定に行わせるという点では有効であるが、アクリル系樹脂の重合度を低下させ、得られる塗膜の弾性率を低下させる可能性がある。そのため、具体的には、連鎖移動剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体全体100重量部に対して、0.01〜1重量部であることが好ましく、さらに0.01〜0.5重量部であることが好ましい。連鎖移動剤の使用量が少なすぎると、連鎖移動剤としての効果が不足する傾向がみられ、使用量が多すぎると、塗膜の弾性率が低下する傾向がみられる。
【0049】
また、上記pH緩衝剤としては、例えば、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、蟻酸アンモニウム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0050】
上記pH緩衝剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体全体100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましく、さらに0.1〜5重量部であることが好ましい。pH緩衝剤の使用量が少なすぎると、重合調整剤としての効果が不足する傾向がみられ、使用量が多すぎると、反応を阻害する傾向がみられる。
【0051】
また、前記界面活性剤としては、例えば、アルキルもしくはアルキルアリル硫酸塩、アルキルもしくはアルキルアリルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ソーダ等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル、ポリオキシエチレングリコール型、ポリオキシエチレンプロピレングリコール型等のノニオン性界面活性剤;およびアンモニウム=α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
なお、分子内に二重結合を有した反応性界面活性剤を使用しても良い。
【0052】
上記界面活性剤の使用量は、通常エチレン性不飽和単量体全体100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、さらには0.5〜10重量部、特には0.5〜5重量部の範囲であることが好ましい。界面活性剤の使用量が少なすぎると、重合安定性の面において、不安定になる傾向がみられ、多すぎると、得られる共重合体の平均粒子径が小さくなりすぎる傾向がみられ、結果、エマルジョン組成物の粘度が高くなりすぎて作業性が低下する等の問題が生じる傾向がみられる。
【0053】
また、前記可塑剤としては、例えば、アジペート系可塑剤、フタル酸系可塑剤、燐酸系可塑剤等があげられる。
【0054】
また、前記造膜助剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテルアルコールおよびエーテル系溶剤、エステルおよびエーテルエステル系溶剤等があげられる。
【0055】
具体的には、炭化水素系溶剤としては、例えば、ミネラルスピリット、石油系混合溶剤等があげられ、アルコール系溶剤としては、例えば、ベンジルアルコール等があげられ、また、エーテルアルコールおよびエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブソルベント)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、プロピレングリコールn−ブチルエーテル(PnB)、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル(DPnB)、エチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル(EHG)等があげられる。さらに、エステルおよびエーテルエステル系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)等があげられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記可塑剤および造膜助剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、適宜選択することができ、例えば、可塑剤としてはエチレン性不飽和単量体全体100重量部に対して通常0.1〜50重量部、造膜助剤としてはエチレン性不飽和単量体全体100重量部に対して通常0.1〜50重量部である。
【0057】
つぎに、本発明に使用するアクリル系樹脂エマルジョンの製造について説明する。
本発明に使用するアクリル系樹脂エマルジョンは、例えば、水への溶解度が20g/100g以下であり、かつ不飽和基を有しない有機溶剤(A)と水との存在下で、上記(a)〜(l)等のエチレン性不飽和単量体を乳化重合することによって製造することができる。
この重合過程において、アクリル系樹脂を分散質とするアクリル系樹脂エマルジョンが製造される。
【0058】
アクリル系樹脂エマルジョンは、分散質が上記アクリル系樹脂であり、また、分散媒としては、上記有機溶剤(A)を含むアクリル系樹脂が分散質となるような分散媒が使用され、本発明においては、主に水が使用される。
【0059】
本発明に使用するアクリル系樹脂エマルジョンの重合方法としては、
[1]有機溶剤(A)、水、エチレン性不飽和単量体、界面活性剤等の全量を仕込み、昇温し重合する方法、
[2]反応缶に水、界面活性剤、エチレン性不飽和単量体および有機溶剤(A)の一部を仕込み、昇温し重合した後、残りのエチレン性不飽和単量体および有機溶剤(A)を滴下または分割添加して重合を継続する方法、
[3]水、界面活性剤等を仕込んでおき昇温した後、エチレン性不飽和単量体および反応缶に有機溶剤(A)を全量滴下または分割添加して重合する方法等があげられる。
なかでも、重合温度の制御が容易である点で、上記[2]、[3]の方法が好ましい。
【0060】
上記[1]〜[3]に示す重合方法における重合条件としては、例えば、上記[1]の重合方法における重合条件として、通常、40〜100℃程度の温度範囲が適当であり、昇温開始後1〜8時間程度反応を行うこと等があげられる。
また、上記[2]の重合方法における重合条件としては、エチレン性不飽和単量体の1〜50重量%を通常40〜90℃で0.1〜4時間重合した後、残りのエチレン性不飽和単量体を1〜7時間程度かけて滴下または分割添加して、その後、上記温度で1〜3時間程度熟成すること等があげられる。
そして、上記[3]の重合方法における重合条件としては、重合缶に水を仕込み、40〜90℃に昇温し、単量体混合物を2〜7時間程度かけて滴下または分割添加し、その後、上記温度で1〜3時間程度熟成すること等があげられる。
【0061】
上記乳化液の、乳化の際の撹拌は、各成分を混合し、ホモディスパー、パドル翼等の撹拌翼を取り付けた撹拌装置を用いて行うことができる。乳化時の温度は、乳化中に混合物が反応しない程度の温度であれば問題なく、通常5〜60℃程度が適当である。
【0062】
上記有機溶剤(A)の使用量は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、特に好ましくは0.5〜8重量部、更に好ましくは1〜5重量部である。有機溶剤(A)の使用量が少なすぎると、塗膜の伸度向上が充分でない傾向がみられ、使用量が多すぎると、重合安定性が低下する傾向がみられる。
【0063】
なお、アクリル系樹脂エマルジョンの重合の際には、有機溶剤(A)とともに、他の有機溶剤(B)を0.5重量部以下併用しても差し支えない。
他の有機溶剤としては、例えば、前記連鎖移動効果を有する、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール等があげられる。
【0064】
なお、本発明で使用するアクリル系樹脂エマルジョンには、必要に応じて、有機顔料、無機顔料、水溶性添加剤、pH調整剤、防腐剤、消泡剤、酸化防止剤等の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0065】
上記アクリル系樹脂エマルジョン中のアクリル系樹脂の平均粒子径は、50〜700nm、特には100〜500nm、更には150〜350nmの範囲が好ましい。粒子径が小さすぎると、エマルジョンの粘度が高くなりすぎて、セメント混和時のエマルジョンの分散性が低下する傾向がみられ、粒子径が大きすぎると、塗膜形成時に緻密な塗膜を得ることが難しく、強度の点で好ましくない傾向がみられる。この平均粒子径の測定は、光散乱法に基づくものである。
【0066】
このアクリル系樹脂の平均粒子径は、重合時に用いる処方を適宜に調整することにより、所定の範囲内に設定することができ、例えば、重合時の撹拌速度等を調整すること等によって、所定範囲に設定することができる。
【0067】
上記アクリル系樹脂のガラス転移温度 (Tg) は、塗膜の低温時の伸びが向上する点から、0〜−70℃の範囲、更には−10〜−60℃、特には−20〜−40℃であることが好ましい。ガラス転移温度が高すぎると、塗膜の造膜温度が高くなりすぎ、特に冬場での現場施工時に充分な強度を得難いという傾向がみられ、低すぎると塗膜のタック発生の原因となる傾向がみられる。
【0068】
なお、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、下記の式(1)に示すFoxの式で算出した値を用いた。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+ ・・・ + Wn/Tgn ・・・(1)
上記式(1)において、W1からWnは、使用している各単量体の重量分率を示し、Tg1からTgnは、各単量体の単独重合体のガラス転移温度(単位は絶対温度「K」)を示す。また絶対温度は、絶対温度「K」=セルシウス温度「℃」+273.15として計算する。
【0069】
上記アクリル系樹脂エマルジョンの固形分濃度(不揮発分濃度)は、45重量%以上であることが好ましく、特には45〜70重量%、更には50〜60重量%であることが、安定性、作業性の点で好ましい。
なお、本発明における固形分濃度とは、105℃で1時間乾燥した後の固形分濃度をいう。
【0070】
上記アクリル系樹脂エマルジョンの粘度は、ハンドリングの点で、10〜50000mPa・sであることが好ましく、特には10〜10000mPa・s、更には10〜5000mPa・sであることが好ましい。
【0071】
なお、本発明で使用するアクリル系樹脂エマルジョンには、油脂等の添加剤を配合しても差し支えない。
上記油脂としては、例えば、大豆油、アマニー油、ヒマシ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、菜種油、サフラワー油、ごま油等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも大豆油、オリーブ油、ごま油、とりわけ大豆油を用いることが、チェッキング改善を妨げず、かつ防水性付与には効果的である。
【0072】
上記油脂の配合量は、アクリル系樹脂エマルジョン中のアクリル系樹脂100重量部に対して、1〜50重量部であることが好ましく、特には2〜40重量部、更には5〜20重量部、殊には6〜10重量部であることが、防水性付与には望ましい。
【0073】
前記アクリル系樹脂エマルジョンと、油脂等の添加剤との混合方法は、例えば、アクリル系樹脂エマルジョンの重合が終了した後に、添加剤を後添加し、重合缶に撹拌しながら投入して仕込む方法等があげられる。
【0074】
また、本発明のポリマーセメント組成物には、塗工性向上の点から、上記アクリル系樹脂エマルジョンとともに、ポリオキシアルキレン化合物を使用することも可能である。
ポリオキシアルキレン化合物としては、具体的にはポリアルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールのモノエーテル化物、モノエーテルモノエステル化物、ジエーテル化物、モノエステル化物、ジエステル化物等があげられる。
ポリアルキレングリコールは、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)等のアルキレンオキシドの重合あるいは共重合によって得られるが、ハンドリング性の点で、疎水性のPOよりも親水性のEOが多いほうが好ましい。
【0075】
モノエーテル化物としては、例えば、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノドデシルエーテル、ポリオキシエチレンモノノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンモノオクチルフェニルエーテル等が例示される。
モノエーテルモノエステル化物としては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が例示される。
ジエテール化物としては、例えば、ポリオキシエチレンジオレイルエーテル、ポリオキシエチレンジセチルエーテル、ポリオキシエチレンジステアリルエーテル、ポリオキシエチレンジラウリルエーテル、ポリオキシエチレンジドデシルエーテル、ポリオキシエチレンジノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンジオクチルフェニルエーテル等が例示される。
【0076】
モノエステル化物としては、例えば、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノ牛脂肪酸エステル、ポリグルセリンモノステアレート等が例示される。
ジエステル化物としては、例えば、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンジオレエート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジ牛脂肪酸エステル、ポリグルセリンジステアレート等が例示される。
【0077】
ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量は、塗膜の割れを抑制する点から、1000以上であることが好ましく、特に好ましくは1500〜10000、更に好ましくは2000〜5000である。ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量が低すぎると割れの抑制効果が低くなる傾向があり、高すぎると粘度が高くなりレベリング性が低下する傾向がある。
【0078】
なお、本発明において、重量平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量をいう。
【0079】
ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、アクリル系樹脂エマルジョンの固形分100重量部に対して0.5〜15重量部であることが好ましく、特に好ましくは1〜12重量部、更に好ましくは1.5〜10重量部である。ポリオキシアルキレン化合物の含有量が少なすぎると、塗工・乾燥後の塗膜割れ(チェッキング)を充分に抑制することができず、防水性能が劣る傾向があり、含有量が多すぎると塗膜の強度が低下する傾向がある。
【0080】
かくして、本発明において、上記で得られるアクリル系樹脂エマルジョンを含有するポリマーセメント用エマルジョン組成物が得られる。
【0081】
更に本発明においては、上記アクリル系樹脂エマルジョンとセメントを混合することによりポリマーセメント組成物が得られる。
[セメント]
セメント成分のセメントとしては、普通ポルトランドセメント、アルミナセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等があげられ、なかでもポルトランドセメントが作業性の点から好適である。
【0082】
上記セメントの配合量は、アクリル系樹脂エマルジョンの固形分100重量部に対して3〜500重量部であることが好ましく、更には30〜350重量部であることが好ましい。
【0083】
このようにして、上記有機溶剤(A)と水との存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られたアクリル系樹脂エマルジョン、およびセメント成分を含有させた組成物とすることにより、本発明のポリマーセメント組成物が得られる。
【0084】
上記アクリル系樹脂エマルジョンおよびセメントの配合方法については特に限定されるものではないが、例えば、[I]アクリル系樹脂エマルジョンの製造工程において、エチレン性不飽和単量体の重合時の後期熟成中にセメントを配合する方法や、[II]エチレン性不飽和単量体の重合完了後のアクリル系樹脂エマルジョンに、セメントを配合する方法や、[III]セメントに、エチレン性不飽和単量体の重合完了後のアクリル系樹脂エマルジョンを配合する方法等があげられる。
【0085】
上記ポリマーセメント組成物には、更に水や砂・砂利を配合することにより、モルタルやコンクリートとして使用することができる。本発明では、これらもセメント成分の範疇に含める。
【0086】
モルタルやコンクリートとして使用する際の水の配合量は、ポリマーセメント組成物の固形分に対して50重量%以下であることが好ましく、更には30重量%以下であることが好ましい。
【0087】
また、モルタルやコンクリートとして使用する際の砂・砂利の配合量としては、ポリマーセメント組成物の固形分に対して30〜300重量%であることが好ましく、更には50〜150重量%であることが好ましい。
【0088】
なお、本発明のポリマーセメント組成物には、必要に応じて、セメントの減水剤あるいは流動化剤(例えば、リグニン系、ナフタレン系、メラミン系、カルボン酸系等)、収縮低減剤(例えば、グリコールエーテル系、ポリエーテル系等)、耐寒剤(例えば、塩化カルシウム等)、防水剤(例えば、ステアリン酸等)、防錆剤(例えば、リン酸塩等)、粘度調整剤(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等)、分散剤(例えば、ポリカルボン酸系、無機リン系等)、消泡剤(例えば、シリコン系、鉱油系等)、防腐剤、補強剤(例えば、鋼繊維、ガラス繊維、合成繊維、炭素繊維等)等を、単独でもしくは2種以上併用しても差し支えない。
【0089】
また、上記各成分以外にも、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、珪藻土、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ等のポゾラン材料、天然および人工軽量骨材等の各種骨材を配合しても差し支えない。
【0090】
上記ポリマーセメント組成物は、23℃、回転数10rpmの条件で、B型粘度計で測定した粘度が、5000mPa・s以下であることが好ましく、特に好ましくは50〜4500mPa・s、さらに好ましくは100〜4000mPa・sである。粘度が低すぎると、無機粉体が沈降して塗膜の均一性が損なわれやすい傾向がみられ、粘度が高すぎると、塗工時の作業性が低下しやすい傾向がみられる。
【0091】
なお、ポリマーセメント組成物を用いて、モルタルとする場合には、一般のモルタルと同様、必須成分、および任意成分を加え、これに適当量の水を加えた上で、混練機等を用いて混練することにより調製することができる。
【0092】
本発明のポリマーセメント組成物は、水への溶解度〔水100gに対する溶解量〕が20g/100g以下であり、かつ不飽和基を有しない有機溶剤(A)と水との存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系樹脂エマルジョンと、セメント成分とを含有するものであり、塗膜の柔軟性や耐候性に優れるとともに、塗膜の伸度も優れるものであることから、塗膜防水剤として用いることが有用である。
【0093】
本発明のポリマーセメント組成物を用いてなる塗膜防水材は、例えば、ポリマーセメント組成物をローラー、左官刷毛またはコテで塗布したり、スプレーによる吹き付け施工等により得ることができる。
【0094】
なお、上記塗膜防水材の厚みは、施行場所等により異なるが、通常0.3〜5mm、好ましくは0.5〜3mm、特に好ましくは0.7〜2mmである。
【0095】
上記塗膜防水材が形成される対象物としては、例えば、モルタル、コンクリート、鉄板、アスファルト等からなる建築物の屋上、勾配屋根、外壁、庇、ベランダ、ルーフバルコニー、外部廊下、階段、建築物の地下埋め戻し部分、地下打ち継ぎ部、地下ピットや雑排水槽、防火水槽等の屋内または地下水槽、サッシ枠周りの防水部、上水道の貯水槽等があげられる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例等において示す「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」の意味である。
【0097】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示すアクリル系樹脂エマルジョンを調製した。
<アクリル系樹脂エマルジョン1の調製>
予め容器に、水28部、界面活性剤(ADEKA社製、商品名「アデカリアソープSR−10」)1.3部、(ADEKA社製、商品名「アデカリアソープER−30」)1.5部、有機溶剤(A)として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(EASTMAN社製、商品名「テキサノール」、溶解度:不溶、沸点:253℃)3.6部、ブチルアクリレート66.9部、メチルメタクリレート31.6部、アクリル酸0.5部、メタクリルアミド1部を秤量し、単量体乳化混合液(エチレン性不飽和単量体100.0部)を調製した。
つぎに、温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたステンレス製反応容器に、水31部、(ADEKA社製、商品名「アデカリアソープER−30」)0.3部を秤量し、80℃に保温した。
続いて、先に調製した単量体乳化混合液の10%を、上記ステンレス製反応容器に加えた後、10%過硫酸ナトリウム(重合開始剤)1.7部を、上記反応容器に添加し30分間反応させた。その後、残りの単量体乳化混合液と10%過硫酸ナトリウム4.6部とを、4時間にわたってガラス製反応容器に滴下し、80℃で重合を行った。
滴下終了後、80℃で60分間熟成を行い、さらにt−ブチルハイドロパーオキサイドの10%水溶液0.5部と酸性亜硫酸ナトリウム10%水溶液を0.6部添加して1時間の追加重合を行い、反応を完結させ、固形分:58%のアクリル系樹脂エマルジョン1を得た(平均粒子径:300nm)。
なお、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−20℃であった。
【0098】
<アクリル系樹脂エマルジョン2の調製>
有機溶剤(A)として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名「テキサノール」)に代えて、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジノイソブチレート(チッソ社製、商品名「CS−16」、溶解度:0.00015g/100g、沸点:280℃)を使用した以外は、上記アクリル系樹脂エマルジョン1と同様にして、アクリル系樹脂エマルジョン2(固形分:52.3%)を得た(平均粒子径:300nm)。なお、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−20℃であった。
【0099】
<アクリル系樹脂エマルジョン3の調製>
有機溶剤(A)として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名「テキサノール」)に代えて、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル〔ダウ・ケミカル社製、商品名「ダワノールPnB」、溶解度:6g/100g、沸点:170℃〕を使用した以外は、上記アクリル系樹脂エマルジョン1と同様にして、アクリル系樹脂エマルジョン3(固形分:52.3%)を得た(平均粒子径:300nm)。なお、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−20℃であった。
【0100】
<アクリル系樹脂エマルジョン4の調製>
有機溶剤(A)として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名「テキサノール」)に代えて、ジブチルフタレート〔三協化学社製、商品名「DBP」、溶解度:0.0013g/100g、沸点:340℃〕を使用した以外は、上記アクリル系樹脂エマルジョン1と同様にして、アクリル系樹脂エマルジョン4(固形分:52.3%)を得た(平均粒子径:300nm)。なお、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−20℃であった。
【0101】
<アクリル系樹脂エマルジョン5(比較例用)の調製>
エチレン性不飽和単量体の乳化重合時に、有機溶剤(A)〔2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〕を添加せず、アクリル系樹脂エマルジョン1の同量となる量を後添加した以外は、上記アクリル系樹脂エマルジョン1の調製と同様にして、アクリル系樹脂エマルジョン5を得た。
すなわち、予め容器に、水28部、界面活性剤(ADEKA社製、商品名「アデカリアソープSR−10」)1.3部、(ADEKA社製、商品名「アデカリアソープER−30」)1.5部、ブチルアクリレート66.9部、メチルメタクリレート31.6部、アクリル酸0.5部、メタクリルアミド1部を秤量し、単量体乳化混合液(エチレン性不飽和単量体100.0部)を調製した。
つぎに、温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたステンレス製反応容器に、水31部、(ADEKA社製、商品名「アデカリアソープER−30」)0.3部を秤量し、80℃に保温した。
続いて、先に調製した単量体乳化混合液の10%を、上記ステンレス製反応容器に加えた後、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(EASTMAN社製、商品名「テキサノール」)3.6部、10%過硫酸ナトリウム(重合開始剤)1.7部を、上記反応容器に添加し30分間反応させた。その後、残りの単量体乳化混合液と10%過硫酸ナトリウム4.6部とを、4時間にわたってガラス製反応容器に滴下し、80℃で重合を行った。
滴下終了後、80℃で60分間熟成を行い、さらにt−ブチルハイドロパーオキサイドの10%水溶液0.5部と酸性亜硫酸ナトリウム10%水溶液を0.6部添加して1時間の追加重合を行い、反応を完結させ、固形分:58%のアクリル系樹脂エマルジョン5を得た(平均粒子径:300nm)。なお、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−20℃であった。
【0102】
<アクリル系樹脂エマルジョンの調製(重合不可)>
有機溶剤(A)として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名「テキサノール」)に代えて、プロピレングリコールメチルエーテル(ダウ・ケミカル社製、商品名「ダワノールPM」、溶解度:∞、沸点:120℃)を使用した以外は、上記アクリル系樹脂エマルジョン1の調製と同様にした場合は、重合が進行せず、アクリル系樹脂エマルジョンを得ることができなかった。
【0103】
また、有機溶剤(A)として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名「テキサノール」)に代えて、ジプロピレングリコールジメチルエーテル〔ダウ・ケミカル社製、商品名「ダワノールDMH」、溶解度:53g/100g、沸点:175℃〕を使用した以外は、上記アクリル系樹脂エマルジョン1の調製と同様にした場合も、重合が進行せず、アクリル系樹脂エマルジョンを得ることができなかった。
【0104】
〔実施例1〕
上記で得たアクリル系樹脂エマルジョン1を室温(25℃)まで冷却し、アクリル系樹脂エマルジョン1の固形分100部に対して、中和剤である10%苛性ソ−ダ水溶液2.2部を添加した後、ポリオキシアルキレン化合物〔日本油脂社製、シュドックスDSP E−20(Mw=2000)〕の50%水溶液を6部(固形分換算3部)添加し、水で希釈することにより、固形分(不揮発分)55%、pH=7〜10のエマルジョン組成物とした後、ポルトランドセメント135部を投入し、ディスパーを用いて1000rpmで1分間撹拌してポリマーセメント組成物を得た。
【0105】
《粘度》
上記ポリマーセメント組成物の粘度を、BH型粘度計(東京計器社製)を用いて、23℃、回転数10rpmで測定した。
なお、粘度は5000mPa・s以下であることが好ましい。
【0106】
《塗膜強度、塗膜伸度》
上記ポリマーセメント組成物を、幅25cm×奥行き25cm×厚み2mmの型枠に流し込み、温度20℃±2℃、湿度65%±10%で養生を行った。材齢7日の塗膜を2号ダンベルの形に打ち抜いた。引張試験機で、チャック間距離60mmでダンベルを挟み、200mm/minのスピードで引張試験を行い、最大引張荷重と破断時の標線間距離から塗膜強度および塗膜伸度を算出した。
算出方法は以下の(1)および(2)式による。
TB=PB/A・・・・(1)
TB:塗膜強度(N/mm2
PB:最大引張荷重(N)
A:断面積(mm2
E=〔(L−20)/20〕×100・・・・(2)
E:塗膜伸度(%)
L:破断時の標線間距離
なお、塗膜強度は0.7N/mm2以上が好ましく、塗膜伸度は200%以上であることが好ましい。
【0107】
〔実施例2〜4、比較例1〕
アクリル系樹脂エマルジョンの種類を下記の表1に示すものに変更する以外は、実施例1に準じて、ポリマーセメント組成物を作製した。
そして、各ポリマーセメント組成物を用いて、実施例1と同様して、各特性の評価を行った。その結果を、下記の表1に併せて示した。
【0108】
【表1】

【0109】
上記表1の結果より、実施例は、特定の水溶解性を示す有機溶剤(A)の存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られたアクリル系樹脂エマルジョン1〜4を使用しているため、塗工適正と塗膜物性にバランスよく優れていた。
【0110】
これに対して、比較例1は、有機溶剤(A)を存在させずに、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られたアクリル系樹脂エマルジョンに、有機溶剤(A)を後添加しているため、塗膜伸度が劣るものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のポリマーセメント組成物は、土木・建築分野において有用であり、特に、塗膜防水材用組成物として、建築物の屋上、勾配屋根、ベランダ、ルーフバルコニー、外壁、庇、外部廊下、階段、建築物の地下埋め戻し部分、地下打ち継ぎ部、地下ピットや雑排水槽、防火水槽等の屋内または地下水槽、サッシ枠周りの防水部、上水道の貯水槽、床や地下鉄の周壁等の防水工事において使用することが非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水への溶解度〔水100gに対する溶解量〕が20g/100g以下であり、かつ不飽和基を有しない有機溶剤(A)と水との存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系樹脂エマルジョンを含有することを特徴とするポリマーセメント組成物。
【請求項2】
有機溶剤(A)の沸点が170〜350℃であることを特徴とする請求項1記載のポリマーセメント組成物。
【請求項3】
有機溶剤(A)が、炭素数5〜20のエステル系溶剤または炭素数5〜20のエーテル系溶剤であることを特徴とする請求項1または2記載のポリマーセメント組成物。
【請求項4】
有機溶剤(A)が、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートであることを特徴とする請求項1または2記載のポリマーセメント組成物。
【請求項5】
有機溶剤(A)の使用量が、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマーセメント組成物。
【請求項6】
エチレン性不飽和単量体が、少なくともカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を含むものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマーセメント組成物。
【請求項7】
エチレン性不飽和単量体が、少なくともアミノ基含有エチレン性不飽和単量体を含むものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマーセメント組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマーセメント組成物を含有してなることを特徴とする塗膜防水材。
【請求項9】
水への溶解度〔水100gに対する溶解量〕が20g/100g以下であり、かつ不飽和基を有しない有機溶剤(A)と水との存在下で、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られるアクリル系樹脂エマルジョンを含有することを特徴とするポリマーセメント用エマルジョン組成物。

【公開番号】特開2012−206895(P2012−206895A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73694(P2011−73694)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】