説明

ポリマーソーム及び製造方法

【課題】本発明は、肌荒れ改善効果を有し、安全性、使用感触、特にべたつき感がなく、肌のなめらかさが良好で、且つ基剤安定性に優れたポリマーソーム組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を膜成分とするポリマーソーム。
(化1)
Y−[O(EO)a−(AO)b−(EO)c−R]k (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦100、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし(a+c)×k>1である。式(I)中の全オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対する、式(I)中の全オキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーソーム及び製造方法に関し、特に、その基剤安定性、皮膚刺激性及び使用感触の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤をマイクロカプセル化し生体内投与すると、該薬剤の生体内における代謝が抑制され、薬効を長期間にわたって維持できる等の利点があることから、医薬、化粧品、食品分野等において有効成分のマイクロカプセル化技術が各種模索されている。その一つとしていわゆるベシクルが注目されている。ベシクルは、両親媒性物質が形成する二分子膜構造を有した閉鎖小胞のことであり、その特異的な構造ゆえに有効成分の内包を可能とし、ドラッグデリバリーシステム等のキャリアとして注目されている。
【0003】
ベシクルを構成する両親媒性物質は多数検討されているが、特に、生体に由来したリン脂質からなるベシクルはリポソームと呼ばれ、生体への安全性の面から様々な検討がなされている。例えば、このリン脂質と特定のカチオン性界面活性剤を組み合わせてベシクル分散物を形成させ、これを化粧料に応用した報告がある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、リポソームの成分は主に天然由来であることから、pHや温度、さらには電解質の影響などを受けやすい等、経時安定性の面で多くの制約がある。
【0004】
また、ベシクルを構成する別の両親媒性物質として、合成界面活性剤についての報告も多数ある。例えば特許文献2には、モノ(長鎖脂肪族)トリ(短鎖アルキル)アンモニウム塩とジ(長鎖脂肪族)ジ(短鎖アルキル)アンモニウム塩及び高級アルコールを用いた技術が開示されている。また近年、多鎖多親水基型界面活性剤を用いたベシクル組成物の検討が行われている(特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、毛髪化粧料に関する特許文献2の技術は、カチオン性界面活性剤の配合量によっては、皮膚安全性が好ましくないことがあった。さらに、特許文献3の技術は、アミノ酸系界面活性剤を利用し、簡便な方法でベシクルを得ることを可能としているが、ベシクルの経時安定性においては不十分であった。
【0006】
ところで、特に、少なくとも1つのブロックが疎水性であり、少なくとも1つのブロックが親水性である両親媒性ジブロック及びマルチブロックコポリマーを両親媒性物質としたベシクルは「ポリマーソーム」と呼ばれ、従来のリポソーム及びミセルに比べて優れた機械安定性や独自の化学的特性を示すことが注目されていた(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。
ポリマーソームは、リポソームに共通した多くの技術(例えば、非特許文献3参照)によって、安定的に調製され得る。しかも、フィルム再水和、超音波処理、及び放出などにより、多ミクロン巨大ベシクル、及び100ナノメートルの直径を有する単分散ベシクルを得ることができる。
【0007】
ポリマーソームはさらに、水溶性親水性化合物(薬剤、ビタミン、フルオロフォアなど)を自身の水性空洞の内部に封入するだけでなく、疎水性分子を厚いラメラ膜の中に封入する能力を有することが知られている。さらに、サイズ、膜の厚さ、及びそれらの合成ベシクルの安定性は、ブロックコポリマーの化学的構造、数平均分子量、親水性から疎水性体積分率、及び様々な調合方法を介するかを選択することによって合理的に調整され得る。従って、ポリマーソームには、医療画像、ドラッグデリバリー及び美容装置などにおける様々な用途への適用が期待される多くの魅力ある特徴を付与することができる(例えば、非特許文献4参照)。
【0008】
PEO−PEE(ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン)或いはPEO−PBD(ポリエチレンオキシド−ポリブタジエン)の特定の小胞は、リポソームと比べて改善された安定性を示す膜厚(例えば、約100nm厚)のポリマーソームを形成することが知られている。例えば、Hillmeyer and Bates(非特許文献5参照)によって導入されたPEO−PEEジブロックコポリマー、特にEO 40−EE 37(OE7と命名され、EOはエチレンオキシドモノマーであり、EEはエチルエチレンモノマーである)は、あらゆる天然脂質膜と比較して非常に厚い膜を形成し、より大きな機械的安定性を示すことが報告されている(非特許文献6参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2006−193461号公報
【特許文献2】特開2006−104142号公報
【特許文献3】特開2006−290894号公報
【非特許文献1】Science,2002,297,967−973
【非特許文献2】Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS),2005,102,2922−2927
【非特許文献3】E.Biotechnol.Bioeng.2001,73,135−145
【非特許文献4】Journal of Controlled Release,2005,101,187−198.
【非特許文献5】Macromolecules, 1996,29,6994−7002
【非特許文献6】Science,1999,284,1143−1164
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、いずれのベシクルも、一般に構造自体が不安定であり、化粧品や医薬品に必要な長期保存における安定性を付与することが非常に困難であるという問題があった。
ベシクルに界面活性剤を適用する場合、その種類や配合量の調整により安定性に若干の向上は望めるが、一方で同成分が肌荒れの一因となったり、使用感触が不十分となることがあった。また、近年では皮膚外用剤に一層高い安全性が求められており、界面活性剤の製剤への配合そのものが問題とされることもある。つまり、界面活性剤は基剤の安定性向上において欠かせない成分であるが、その安定性の向上を皮膚安全性や使用感触と完全に両立させることは実質的に不可能であった。
【0011】
なお、ポリマーソームを構成する前記両親媒性コポリマーは、従来の界面活性剤に比べ分子量が大きいため、安定性および安全性が高いとされている。しかしながら、製造法によってこれらのコポリマーにモノマーが残存することがあり、これを皮膚に適用した際の安全性には課題が残る。さらに、これら両親媒性コポリマーからなるポリマーソームには、皮膚や毛髪に対する使用感触が悪いという問題があった。つまり、従来のポリマーソームにおいても、基剤の安定性と、皮膚安全性及び使用感触を両立することはできなかった。
本発明は前記の課題に鑑みなされたもので、安全性、使用感触、特にべたつき感がなく、肌のなめらかさが良好で、且つ基剤安定性に優れたポリマーソームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために本発明者等が検討を行った結果、特定構造のアルキレンオキシド誘導体によって形成されたポリマーソームが、優れた基剤安定性を有し、且つ肌荒れ改善効果を示す程の安全性と、べたつき感がなく、なめらかな使用感触とを有することを見出した。さらに、本発明者らは、該ポリマーソームに従来水性基剤への配合が難しかった低分子・高極性の油分を多量に配合することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかるポリマーソームは、下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を膜成分とする。
【0013】
(化1)
Y−[O(EO)a−(AO)b−(EO)c−R]k (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦100、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし(a+c)×k>1である。式(I)中の全オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対する、式(I)中の全オキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)
【0014】
また、前記ポリマーソームにおいて、前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体のAO基がオキシブチレン基であることが好適である。
また、前記ポリマーソームにおいて、前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体のaが0であり、AOとEOの付加順序が、式中のYに対して、(AO)−(EO)であることが好適である。
また、前記ポリマーソームにおいて、内部空孔に水溶性成分を内包することが好適である。
また、前記ポリマーソームにおいて、ラメラ構造中に油性成分を保持することが好適である。
また、前記ポリマーソームにおいて、前記油性成分が低分子油分及び/又は高極性油分を含むことが好適である。
また、本発明にかかる皮膚外用剤は、前記ポリマーソームを含むことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明にかかるポリマーソームの製造方法は、下記(a)及び(b)の工程を含むことを特徴とする。
(a)上記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体、及び水溶性アルコールを混合する工程。
(b)前記混合液を撹拌しながら水系溶媒へ滴下する工程。
また、前記製造方法は、前記(a)工程において、ブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量が0.1〜20質量%、水溶性アルコールの配合量が0.1〜50質量%であることが好適である。
また、前記製造方法は、前記(a)工程において、さらに油性成分を混合することが好適である。
また、前記製造方法は、油性成分の配合量が0.05〜30質量%であることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体を用いることにより、肌荒れ改善効果を有し、安全性、使用感触、特にべたつき感がなく、肌のなめらかさが良好で、且つ基剤安定性に優れたポリマーソームを簡便な方法で得ることができる。また、本発明のポリマーソームは、従来水性基剤への配合が困難であった低分子・高極性の油分を多量に配合することできるため、医薬品、化粧品、食品等に新たな機能や感触を付与することを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にかかるポリマーソームは、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体によって形成され、これを膜成分とするものである。
本発明のポリマーソームを構成するブロック型アルキレンオキシド誘導体は、下記式(I)で示される特定構造を有する。
(化2)
Y−[O(EO)a−(AO)b−(EO)c−R]k (I)
【0018】
上記式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体において、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基であり、kは前記多価アルコールの水酸基数であり3〜6である。3〜6個の水酸基を有する化合物としては、k=3であるグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキシレングリコール、k=4であるエリスリトール、ペンタエリスリトール、k=5であるキシリトール、k=6であるソルビトール、イノシトールが挙げられる。本発明にかかるポリマーソームに用いるブロック型アルキレンオキシド誘導体は、前記の3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの1種または2種以上の混合物の水酸基を除いた残基を基本骨格とする。
【0019】
本発明において、Yが3〜4個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基であることがより好ましく、すなわち、3≦k≦4を満たすことが好適である。kが2以下であると、ポリマーソーム使用後の肌のなめらかさが劣る傾向にあり、kが7以上であるとべたつき感を生じる傾向にある。
【0020】
EOは、炭素数2のオキシエチレン基である。AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシt−ブチレン基、オキシペンチレン基、オキシヘキシレン基などが挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基であり、さらに好ましくはオキシブチレン基である。
【0021】
b×kはAOの平均付加モル数であり、1≦b×k≦100、好ましくは3≦b×k≦70である。a×k及びc×kはEOの平均付加モル数であり、0≦a×k≦100、0≦c×k≦100であり、好ましくは3≦a×k≦70、3≦c×k≦70である。また、前記式(I)中の全オキシエチレン基の平均付加モル数の好ましい範囲は、1<(a+c)×k≦200であり、さらに好ましくは6≦(a+c)×k≦140である。AOは本発明にかかるブロック型アルキレンオキシド誘導体において疎水性部位となり、b×kが0であると、ポリマーソームの安定性に劣る傾向にあり、100を越えると使用後のなめらか感に劣る傾向がある。また、(a+c)×kが0であると、ポリマーソームの安定性に劣る傾向にあり、100を越えるとべたつき感を生じる傾向にある。
【0022】
前記式(I)中のAOとEOの合計に対する前記式(I)中の全EOの割合は10〜80質量%であり、さらに好ましくは20〜70質量%である。10質量%より小さいと使用後になめらか感に劣る傾向にあり、80質量%より大きいとべたつき感が生じる傾向にある。また、10質量%より小さいとブロック型アルキレンオキシド誘導体の親水性が足りず、80質量%より大きいとブロック型アルキレンオキシド誘導体の親油性が足りず、目的とするポリマーソームが形成されなかったり、形成されたとしても安定性が不十分な場合がある。
また、アルキレンオキシド誘導体の分子量は、800〜5000であることが好ましい。分子量が小さすぎる、または大きすぎると十分量のポリマーソームが得られないことがあり、使用感などが低下することがある。
また、AOとEOの付加形態はポリマーソーム形成性の観点からブロック状である。付加順序は式中のYに対して、(AO)−(EO)の順、(EO)−(AO)の順、(EO)−(AO)−(EO)の順のいずれであってもよい。本発明においては、式中のYに対して(AO)−(EO)の順であることが特に好ましい。式中のYに対して(AO)−(EO)の順となる場合、式中のaは0であることに相当する。
【0023】
Rは炭素数1〜4の炭化水素基で、炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。本発明においてはメチル基、エチル基であることが好ましい。炭素数が5より大きいと、保湿効果や肌荒れ改善効果あるいは基剤安定性などに劣る傾向にある。また、本発明にかかるポリマーソームに用いるブロック型アルキレンオキシド誘導体において、Rは1分子中、同一であっても又は異なっていてもよく、1分子中において同一のRを有するブッロク型アルキレンオキシド誘導体1種、または異なるRを有する2種以上の混合物であってもよい。
【0024】
本発明に用い得るブロック型アルキレンオキシド誘導体として、具体的にはPOB(15)POE(15)グリセリルトリメチルエーテル、POB(18)POE(18)グリセリルトリメチルエーテル、POB(18)POE(20)グリセリルトリメチルエーテル、POB(20)POE(22)グリセリルトリメチルエーテル、POB(25)POE(28)グリセリルトリメチルエーテル、POB(30)POE(30)グリセリルトリメチルエーテル、POB(30)POE(35)グリセリルトリメチルエーテル、POB(17)POE(28)グリセリルトリメチルエーテル、POB(27)POE(45)グリセリルトリメチルエーテル、POB(14)POE(34)グリセリルトリメチルエーテル、POB(22)POE(55)グリセリルトリメチルエーテル、POB(19)POE(55)グリセリルトリメチルエーテル、POB(40)POE(80)グリセリルトリメチルエーテル、POB(80)POE(40)グリセリルトリメチルエーテル、POB(30)POE(30)グリセリルトリエチルエーテル、POB(30)POE(35)グリセリルトリエチルエーテル、POB(14)POE(34)グリセリルトリエチルエーテル、POB(30)POE(30)グリセリルトリプロピルエーテル、POE(30)POP(30)グリセリルトリメチルエーテル、POE(35)POP(40)グリセリルトリメチルエーテル、POE(41)POP(48)グリセリルトリメチルエーテル等が挙げられる。
【0025】
なお、上記POE、POP、POBは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンの略であり、以下、このように略して記載することがある。また、上記POE、POP、POBの付加モル数は、それぞれ分子中の総付加モル数、すなわち、(a+c)×k、b×kの値として表記している。
【0026】
このようなブロック型アルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している多価アルコールに対して、エチレンオキシドおよび炭素数3〜6のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下にエーテル反応させることによって得られる。
【0027】
次に、本発明にかかるポリマーソームの製造方法について説明する。
本発明にかかるポリマーソームは、上記特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体を、水溶性アルコールと充分に混合し、次いでその混合液を水系溶媒に攪拌しながら滴下することによってポリマーソーム組成物として製造することができる。
ブロック型アルキレンオキシド誘導体と水溶性アルコールの混合状態は、混合液が透明一相状態であることが確認できればよく、これは例えば、室温〜90℃で、1〜30分程度混合を行うことで達成することができる。
【0028】
本発明にかかる製造方法において、ブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量は、最終的に生成されるポリマーソーム組成物に対して0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。ブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量が0.1質量%未満では、配合による効果の発現が十分でない場合があり、また20質量%を超えると、べたつき感を生じる場合がある。また、水溶性アルコールの配合量は、ポリマーソーム組成物に対して0.1〜50質量%となるように設定することが好ましい。
【0029】
前記水溶性アルコールとしては、低級アルコール、多価アルコール、多価アルコール重合体、2価のアルコールアルキルエーテル類、2価アルコールアルキルエーテル類、2価アルコールエーテルエステル、グリセリンモノアルキルエーテル、糖アルコール、単糖、オリゴ糖、多糖およびそれらの誘導体が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0030】
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
【0031】
多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール(例えば、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等);4価アルコール(例えば、ジグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等);5価アルコール(例えば、キシリトール、トリグリセリン等);6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等);多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等);2価のアルコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等);2価アルコールアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等);2価アルコールエーテルエステル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等);グリセリンモノアルキルエーテル(例えば、キミルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等);糖アルコール(例えば、マルトトリオ−ス、エリトリトール、グルコ−ス、フルクト−ス、デンプン分解糖、マルト−ス、デンプン分解糖還元アルコール等);グリソリッド;テトラハイドロフルフリルアルコール;POE−テトラハイドロフルフリルアルコール;POP−ブチルエーテル;POP・POE−ブチルエーテルトリポリオキシプロピレングリセリンエーテル;POP−グリセリンエーテル;POP−グリセリンエーテルリン酸;POP・POE−ペンタンエリスリトールエーテル、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0032】
単糖としては、例えば、三炭糖(例えば、D−グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等);四炭糖(例えば、D−エリトロ−ス、D−エリトルロ−ス、D−トレオ−ス、エリスリトール等);五炭糖(例えば、L−アラビノ−ス、D−キシロ−ス、L−リキソ−ス、D−アラビノ−ス、D−リボ−ス、D−リブロ−ス、D−キシルロ−ス、L−キシルロ−ス等);六炭糖(例えば、D−グルコ−ス、D−タロ−ス、D−プシコ−ス、D−ガラクト−ス、D−フルクト−ス、L−ガラクト−ス、L−マンノ−ス、D−タガト−ス等);七炭糖(例えば、アルドヘプト−ス、ヘプロ−ス等);八炭糖(例えば、オクツロ−ス等);デオキシ糖(例えば、2−デオキシ−D−リボ−ス、6−デオキシ−L−ガラクト−ス、6−デオキシ−L−マンノ−ス等);アミノ糖(例えば、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、シアル酸、アミノウロン酸、ムラミン酸等);ウロン酸(例えば、D−グルクロン酸、D−マンヌロン酸、L−グルロン酸、D−ガラクツロン酸、L−イズロン酸等)等が挙げられる。
【0033】
オリゴ糖としては、例えば、ショ糖、グンチアノ−ス、ウンベリフェロ−ス、ラクトース、プランテオース、イソリクノース類、α,α−トレハロース、ラフィノース、リクノース類、ウンビリシン、スタキオース、ベルバスコース類等が挙げられる。
【0034】
多糖としては、例えば、セルロース、クインスシード、デンプン、ガラクタン、デルマタン硫酸、グリコーゲン、アラビアガム、ヘパラン硫酸−トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、キサンタンガム、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン等が挙げられる。
【0035】
その他ポリオールとしては、ポリオキシエチレンメチルグルコシド(グルカムE−10)、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(グルカムP−10)などが挙げられる。
【0036】
なお、本発明のポリマーソーム組成物の前記製造方法おいて、水系溶媒とは、水(例えば、精製水、イオン交換水、水道水等)または水溶性成分の水溶液を表し、系における水相成分に相当する。
水溶性成分としては、例えば、通常化粧料や医薬部外品等に配合される粉末類、保湿剤、増粘剤、防腐剤等の添加物が挙げられる。なお、高融点の水溶性成分を配合する場合は、予め加熱して水に均一溶解させておくことができるが、水溶性成分が溶解した後は水溶液を室温程度に戻してからポリマーソームの製造に用いることが望ましい。
【0037】
また、前記製造方法により水系溶媒中に形成されるポリマーソームの内部空孔は、ポリマーソームの分散媒である前記水系溶媒で満たされるため、水溶性成分として薬物等を水系溶媒中分散または溶解しておくことによって、内部空孔へ該成分を内包したポリマーソームを製造することもできる。なお、これらの水溶性成分は、ポリマーソームを生成した後で水系溶媒へ添加する、もしくは適当な濃度で調製した水溶性成分の水溶液へ生成したポリマーソームを分散させることによっても内部空孔へ導入可能な場合がある。
【0038】
さらに、本発明にかかるポリマーソームは、そのラメラ構造に油性成分を保持させることによって、通常水相成分へ混合することが困難な油分を安定的に配合することができる。また、幅広い油分の配合設定によって、新たな性質や機能を備えた製品の創製が可能になると考えられる。
ポリマーソームへの油性成分の保持は、前記ポリマーソームの製造方法において、ブロック型アルキレンオキシド誘導体と水溶性アルコールとの混合の際に、膜間へ保持させたい油性成分を添加・混合することによって達成することができる。
前記油性成分の配合量は、最終的に得られるポリマーソーム組成物に対して0.05〜30質量%となるように設定することが好ましい。
【0039】
本発明のポリマーソームへ保持させる油性成分は、通常化粧品、医薬部外品等に使用される炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油、液体油脂、固体油脂、ロウ類などが挙げられ、一種または二種以上の油性成分を用いることができる。
特に、本発明のポリマーソームは、従来水相成分への配合が困難であった低分子油分や高極性の油分を多量且つ安定的に配合することを可能とする。ここでは、低分子油分は分子量500以下の油分を、高極性油分はIOB値が0.15以上の油分とする。なお、IOB値とは有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち、「無機性値(IV)/有機性値(OV)」を言う。有機概念図とは、すべての有機化合物の根源をメタン(CH)とし、他の化合物はすべてメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値、無機性値を求め、有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである(「有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生著、三共出版、1984)等)。
また、前記のように、多種の油性成分を広い量範囲において配合できることから、配合種及び量をそれぞれ設定することにより、例えば、保湿効果や肌荒れ防止効果といった所望する使用感触や機能に応じた様々なポリマーソームを製造することができる。
【0040】
炭化水素油としては、例えば流動パラフィン、ドデカン、イソドデカン、テトラデカン、イソテトラデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、エイコセン、イソエイコセン、トリデカン、テトラデカン、水素添加ポリイソブチレン、ドコサン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0041】
高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0042】
高級アルコールとしては、例えば直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)−2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0043】
合成エステル油としては、例えばミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、 12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ピバリン酸トリプロピレングリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、ジイソステアリン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート−2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0044】
シリコーン油としては、例えば鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)、アクリルシリコーン類等が挙げられる。
【0045】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0046】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0047】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、 POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0048】
前記製造方法により、ポリマーソームは水系溶媒に分散したポリマーソーム組成物として得ることができる。このようなポリマーソームは、前記組成物の形で化粧品や医薬品等の成分として好適に使用することができる。もちろん、可能であれば水系溶媒に分散したポリマーソームを単離して利用してもよい。
特に、本発明にかかるポリマーソームないしポリマーソーム組成物は、公知の化粧品・医薬品基剤へ配合することにより、安全性、使用感触、及び基剤安定性に優れた皮膚外用剤を得ることができる。
また、ポリマーソームを含む皮膚外用剤は、前記ポリマーソーム製造方法において、一般に通常化粧品や医薬部外品の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、増粘剤等、さらに所望に応じて、無機顔料、体質顔料等の粉末類、保湿剤、紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、色素、香料などを本発明の効果を損なわない範囲で水相ないし油相中に適宜配合することによっても製造することができる。
【0049】
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE−ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE−ラウリル硫酸ナトリウム等);N−アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等);リン酸エステル塩(POE−オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE−ステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N−アシルグルタミン酸塩(例えば、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POE−アルキルエーテルカルボン酸;POE−アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α−オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N−パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0050】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、セチルトリエチルアンモニウムメチルサルフェート等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。また、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド等のアミドアミン化合物が挙げられる。
【0051】
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等);ベタイン系界面活性剤(例えば、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)等が挙げられる。
【0052】
親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリンポリグリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0053】
親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POE−ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビタンモノオレエート、POE−ソルビタンモノステアレート、POE−ソルビタントリオレエート、POE−ソルビタンテトラオレエート等);POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビットモノラウレート、POE−ソルビットモノオレエート、POE−ソルビットペンタオレエート、POE−ソルビットモノステアレート等);POE−グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POE−グリセリンモノステアレート、POE−グリセリンモノイソステアレート、POE−グリセリントリイソステアレート等のPOE−モノオレエート等);POE−脂肪酸エステル類(例えば、POE−ジステアレート、POE−モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POE−アルキルエーテル類(例えば、POE−ラウリルエーテル、POE−オレイルエーテル、POE−ステアリルエーテル、POE−ベヘニルエーテル、POE−2−オクチルドデシルエーテル、POE−コレスタノールエーテル等);プルロニック型類(例えば、プルロニック等);POE・POP−アルキルエーテル類(例えば、POE・POP−セチルエーテル、POE・POP−2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POP−モノブチルエーテル、POE・POP−水添ラノリン、POE・POP−グリセリンエーテル等);テトラ
POE・テトラPOP−エチレンジアミン縮合物類(例えば、テトロニック等);POE−ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE−ヒマシ油、POE−硬化ヒマシ油、POE−硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE−硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE−硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE−硬化ヒマシ油マレイン酸等);POE−ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE−ソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POE−プロピレングリコール脂肪酸エステル;POE−アルキルアミン;POE−脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド−トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0054】
増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸A1Mg(ビーガム) 、ラポナイト、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0055】
天然の水溶性高分子としては、例えば、植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸);微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等);動物系高分子(例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等)等が挙げられる。
【0056】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等が挙げられる。
【0057】
合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000等);アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等);ポリエチレンイミン;カチオンポリマー等が挙げられる。
【0058】
粉末成分としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パ−ミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダ−、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ−酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレ−キ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等が挙げられる。
【0059】
保湿剤としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラ−ゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、DL−ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラ−ゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
【0060】
紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)−2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート−2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば−2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン−2−2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−2−2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−2−2’,4,4’
−テトラヒドロキシベンゾフェノン−2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン−2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン−2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート−2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等);3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー−2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール−2−2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール−2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール−2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン;5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等が挙げられる。
【0061】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等が挙げられる。
【0062】
アミノ酸としては、例えば、中性アミノ酸(例えば、スレオニン、システイン等);塩基性アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン等)等が挙げられる。また、アミノ酸誘導体として、例えば、アシルサルコシンナトリウム(ラウロイルサルコシンナトリウム)、アシルグルタミン酸塩、アシルβ−アラニンナトリウム、グルタチオン等が挙げられる。
【0063】
有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0064】
高分子エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸エチルエマルジョン、アクリルレジン液、ポリアクリルアルキルエステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、天然ゴムラテックス等が挙げられる。
【0065】
pH調整剤としては、例えば、乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、コハク酸−コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。
【0066】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、B1、B2、B6、C、E及びその誘導体、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン等が挙げられる。
【0067】
酸化防止剤としては、例えばトコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。
酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0068】
その他の配合可能成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキョウ、ショウキョウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)等が挙げられる。
【実施例】
【0069】
次に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。なお特に断りのない限り、配合量は全て質量%で示す。
【0070】
まず、各実施例及び比較例に用いた評価方法について説明する。
評価(1):ポリマーソーム形成能
得られた各サンプルにおいてポリマーソーム(ベシクル構造)が形成されているかどうかを、下記の方法によって判定した。判定基準は以下の通りである。
○:動的光散乱測定によって、50〜500nmサイズの粒子が確認され、吸光度測定により水溶性色素の内包(*)が確認された。また、濁り・沈殿等がまったく認められなかった。
×:動的光散乱測定によって、50〜500nmのベシクル粒子が確認されなかった。あるいは、認められた場合であっても、濁りや沈殿が同時に認められた。
【0071】
(*)水溶性色素の内包実験:目的とする組成物を調製する際、pH6以上の条件下で記載された構成成分に加え水溶性色素であるブロモフェノールブルーを添加した。得られた組成物を透析したのち、得られた透析物の吸光度測定を実施した。吸光度測定において600nm付近に明確な吸収が認められた場合、水溶性色素が内包されている、すなわちポリマーソーム(ベシクル)構造を形成していることが確認できる。
なお、上記動的光散乱測定および内包実験は簡易的な評価法であり、他に、偏光顕微鏡観察によるマルテーゼクロス像の有無の確認や、透過型電子顕微鏡による観察などによってポリマーソームおよびベシクル形成を確認することも可能である。
【0072】
評価(2):べたつき感のなさ
使用中及び使用後の肌へのべたつきのなさについて、専門パネル10名により各々の試験例の実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎:パネル8名以上が、使用中及び使用後べたつき感がないと認めた。
○:パネル6名以上8名未満が、使用中及び使用後べたつき感がないと認めた。
△:パネル3名以上6名未満が、使用中及び使用後べたつき感がないと認めた。
×:パネル3名未満が、使用中及び使用後べたつき感がないと認めた。
【0073】
評価(3):なめらかさ
使用後の肌のなめらかさについて、専門パネル10名により各々の試験例の実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎:パネル8名以上が、使用後なめらかさがあると認めた。
○:パネル6名以上8名未満が、使用後なめらかさがあると認めた。
△:パネル3名以上6名未満が、使用後なめらかさがあると認めた。
×:パネル3名未満が、使用後なめらかさがあると認めた。
【0074】
評価(4):保湿効果感
使用120分後の保湿効果感の有無について、専門パネラー10名により各々の試験例の実使用試験を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎:専門パネラー8名以上が、保湿効果感があると認めた。
○:専門パネラー6名以上8名未満が、保湿効果感があると認めた。
△:専門パネラー3名以上6名未満が、保湿効果感があると認めた。
×:専門パネラー3名未満が、保湿効果感があると認めた。
【0075】
評価(5):肌荒れ改善効果試験
顔(部位:頬)に肌荒れをおこしている10名のパネルにより、各々の試験例の肌荒れ改善効果試験を実施した。試験法は左右の頬に、異なる試験サンプルを1週間塗布し、その期間終了後の翌日に判定した。評価基準は以下の通りである。
◎:パネル8名以上が、肌荒れが改善されていると認めた。
○:パネル6名以上8名未満が、肌荒れが改善されていると認めた。
△:パネル3名以上6名未満が、肌荒れが改善されていると認めた。
×:パネル3名未満が、肌荒れが改善されていると認めた。
【0076】
評価(6):皮膚刺激試験
10名のパネルの上腕内側部に24時間の閉塞パッチを行ない、その後以下の基準により平均値を算出した。評価基準は以下の通りである。
0:全く異常が認められない。
1:わずかに赤みが認められる。
2:赤みが認められる。
3:赤みと丘疹が認められる。
皮膚刺激試験の評価基準は以下の通りである。
◎…パネル10名の平均値:0以上0.15未満
○…パネル10名の平均値:0.15以上0.2未満
△…パネル10名の平均値:0.2以上0.3未満
×…パネル10名の平均値:0.3以上
【0077】
評価(7):基剤安定性
各試験例のポリマーソーム組成物について、製造直後透明ガラス瓶に充填し50℃で4週間放置後、以下の基準に基づいて、目視観察により基剤安定性の評価を行なった。
<評価基準>
○:透明あるいは半透明
×:白濁または分離
【0078】
次に、本発明にかかるポリマーソームの製造に用いるブロック型アルキレンオキシド誘導体の合成例を示す。このような合成例に準じて、各種アルキレンオキシド誘導体が製造できる。
【0079】
<合成例1>
ポリオキシブチレン(30モル)ポリオキシエチレン(30モル)トリメチルグリセリルエーテル(ブロック型アルキレンオキシド誘導体)の合成
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム18gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりブチレンオキシド2160gを滴下させ、2時間攪拌した。続いて、滴下装置によりエチレンオキシド1320gを滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム400gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル300gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7に調整し、含有する水分を除去するため減圧−0.088MPa(ゲージ圧)100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ブロック型アルキレンオキシド誘導体を得た。
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が49、アルキレンオキシド誘導体1の水酸基価が0.4、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.008であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0080】
<合成例2>
ポリオキシエチレン(57モル)トリメチルグリセリルエーテル(アルキレンオキシド誘導体)の合成
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム18gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりエチレンオキシド2508gを滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム400gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル300gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7に調整し、含有する水分を除去するため減圧−0.088MPa(ゲージ圧)100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、アルキレンオキシド誘導体を得た。
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が66、アルキレンオキシド誘導体1の水酸基価が、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.60.009であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0081】
<合成例3>
ポリオキシブチレン(30モル)ポリオキシエチレン(30モル)グリセリルエーテル(ブロック型アルキレンオキシド誘導体)の合成
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム18gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりブチレンオキシド2160gを滴下させ、2時間攪拌した。続いて、滴下装置によりエチレンオキシド1320gを滴下させ、2時間攪拌した。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7に調整し、含有する水分を除去するため減圧−0.088MPa(ゲージ圧)100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ブロック型アルキレンオキシド誘導体を得た。
【0082】
<合成例4>
ポリオキシブチレン(30モル)ポリオキシエチレン(30モル)トリブチルグリセリルエーテル(ブロック型アルキレンオキシド誘導体)の合成
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム18gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりブチレンオキシド2160gを滴下させ、2時間攪拌した。続いて、滴下装置によりエチレンオキシド1320gを滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム800gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化ブチル1200gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7に調整し、含有する水分を除去するため減圧−0.088MPa(ゲージ圧)100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ブロック型アルキレンオキシド誘導体を得た。
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が50、アルキレンオキシド誘導体1の水酸基価が1.5、末端ブチル基数に対する水素原子数の割合は0.03であり、ほぼ完全に水素原子がブチル基に変換されている。
【0083】
<合成例5>
ポリオキシブチレン(30モル)ポリオキシエチレン(30モル)グリセリルエーテル(ランダム型アルキレンオキシド誘導体)の合成
グリセリン92gと触媒として水酸化カリウム18gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりブチレンオキシド2160gとエチレンオキシド1320gの混合物を滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム400gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル300gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7に調整し、含有する水分を除去するため減圧−0.088MPa(ゲージ圧)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、ランダム型アルキレンオキシド誘導体を得た。
【0084】
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が47、得られたランダム型アルキレンオキシド誘導体5の化合物の水酸基価が0.5、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.011であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0085】
以下の試験例において用いたブロック型アルキレンオキシド誘導体は、下記式(II)の構造を有するものであり、例えば、b+b+b=30、c+c+c=30の場合は、(BO)30(EO)30と表記する。
【化3】

【0086】
まず、表1に記載した配合組成よりなる試験例のポリマーソーム組成物を製造し、上記評価(1)〜(7)について評価試験を行った。
【0087】

【表1】

【0088】
製造方法
(1)〜(5)を透明一相状態となるまで室温下にて混合し、得られた混合液を(6)〜(11)の混合液中に撹拌しながら滴下して組成物を得た。
【0089】
表1に示すとおり、ブロック型アルキレンオキシド誘導体を用いた試験例1−1は、ポリマーソームを形成し、安定性、安全性、使用感触の全てにおいて優れた評価を得た。
一方、ブロック型アルキレンオキシド誘導体に代えて、一般的な非イオン性界面活性剤を用いた試験例1−2、1−3では、ポリマーソームの形成は認められず、いずれの評価も試験例1−1に比べ劣るものであった。特に、試験例1−2では肌荒れ改善効果やべたつき感が悪く、試験例1−3では、基剤安定性も劣る傾向にあった。
以上のことから、本発明が、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体を膜成分とすることにより得られる、使用感触、安定性、安全性に優れたポリマーソームであることが明らかである。
【0090】
続いて、下記表2に示す処方の試験例について、上記評価(1)〜(7)を行い、本発明に適したアルキレンオキシド誘導体を特定した。
【0091】

【表2】

【0092】
製造方法
(1)〜(12)、(19)を透明一相状態となるまで室温下にて混合し、得られた混合液を(13)〜(18)、(20)の混合液中に撹拌しながら滴下して組成物を得た。
【0093】
表2に示すとおり、BO及びEOのブロックポリマーであり、R〜Rがメチル基である試験例2−1〜2−5は、ポリマーソームを形成し、安定性、安全性、使用感触の全てにおいて優れた評価を得た。
一方、(EO)a(AO)b(EO)c部がオキシエチレン基のみで形成されたアルキレンオキシド誘導体を用いた試験例2−6はポリマーソームを形成せず、使用感触、肌荒れ改善効果の点が特に劣り、オキシブチレン基のみであるアルキレンオキシド誘導体を用いた試験例2−7は、ポリマーソームを形成せず、使用感触や基剤安定性に劣り、また、肌荒れ改善効果や肌のなめらかさも十分ではなかった。
【0094】
さらに末端が水素であるブロック型アルキレンオキシド誘導体を用いた試験例2−8では、ポリマーソームを形成したものの、使用感触、肌荒れ改善効果及び皮膚刺激性の点で好ましくない。また、末端が炭素数6の炭化水素基であるブロック型アルキレンオキシド誘導体を用いた試験例2−9では、ポリマーソームを形成したものの、基剤安定性の点で不十分であった。また、ランダム型のアルキレンオキシド誘導体を用いた試験例2−10はポリマーソームを形成せず、基剤安定性に劣っていた。
【0095】
以上の結果、及び更なる検討を行った結果、本発明においては、炭素数3〜4のオキシアルキレン基、オキシエチレン基によるブロック型アルキレンオキシド誘導体であって、オキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数が、それぞれ1≦b×k≦100、1<(a+c)×k≦200であり、炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合が10〜80質量%であり、Rが同一もしくは異なってもよい炭素数1〜4の炭化水素基であるブロック型アルキレンオキシド誘導体が好適である。
【0096】
次に、本発明にかかるポリマーソームの製造における特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体の好適な配合量を調べるため、表3に記載した配合組成よりなるポリマーソーム組成物を製造し、上記の評価(1)〜(6)について評価試験を行った。
【0097】

【表3】

【0098】
製造方法
(1)〜(5)、(11)を透明一相状態となるまで室温下にて混合し、得られた混合液を(6)〜(10)、(12)、(13)の混合液中に撹拌しながら滴下して組成物を得た。
【0099】
表3より、本発明にかかるポリマーソームは、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量が0.1〜20質量%の範囲において、肌荒れ改善効果を有し、優れた安全性及び使用感触を発揮することが確認された。特に、保湿効果感・肌荒れ改善効果は、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量に依存して上昇した。
これに対し、ブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量が0.01質量%である試験例3−1は、ポリマーソームを形成せず、保湿効果感・肌荒れ改善効果も不十分であった。
【0100】
以上の結果から、本発明において、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量は、ポリマーソーム組成物の製造に用いる全成分に対し、0.1〜20質量%であることが好適である。特に、べたつき感のなさ、及びなめさかさの点において、前記配合量は0.1〜10質量%であることがさらに好適である。
【0101】
次に、本発明にかかるポリマーソームの製造における水溶性アルコールの好適な配合量を調べるため、表4に記載した配合組成よりなるポリマーソーム組成物を製造し、上記の評価(1)〜(7)について評価試験を行った。
【0102】
【表4】

【0103】
製造方法
(1)〜(3)、(7)を透明一相状態となるまで室温下にて混合し、得られた混合液を(4)〜(6)、(8)、(9)の混合液中に撹拌しながら滴下して組成物を得た。
【0104】
表4に示すとおり、製造時に組成物に対して0.1〜50質量%の水溶性アルコール(ジプロピレングリコール)を配合した試験例4−2〜4−6は、ポリマーソームを形成し、使用感触、安全性、及び安定性のいずれの評価も高かった。
一方、水溶性アルコールを配合しなかった試験例4−1はポリマーソームの形成が認められず、基剤安定性も悪かった。また、水溶性アルコールであるポリオールの配合量を60質量%とした試験例4−7は、べたつきのなさ、なめらかさといった使用感触に劣り、若干の皮膚刺激性が感じられ、基剤安定性においても不十分であった。
以上の結果から、本発明において、水溶性アルコールの配合量は、ポリマーソーム組成物の製造に用いる全成分に対し、0.1〜50質量%であることが好適である。
【0105】
次に、本発明にかかるポリマーソームのラメラ構造に保持させる油性成分の好適な配合量を調べるため、表5に記載した配合組成よりなるポリマーソーム組成物を製造し評価試験を行った。表5においては、試験例5−1を基準とした場合のなめらかさ、保湿効果感について「効果が低い:×」「効果が同等:△」「効果がやや高い:○」「効果が非常に高い:◎」で示す。
【0106】
【表5】

【0107】
製造方法
(1)〜(3)、(7)を透明一相状態となるまで室温下にて混合し、得られた混合液を(4)〜(6)、(8)、(9)の混合液中に撹拌しながら滴下して組成物を得た。
【0108】
表5の試験例5−1〜5−6は何れもポリマーソームを形成し、ポリマーソームを形成していない場合に比べれば使用感、安全性及び安定性において優れていたが、特に製造時に油性成分(ピバリン酸トリプロピレングリコール)を0.05質量%以上配合した試験例5−3〜5−6は、油性成分無配合の試験例5−1に比べてなめらかさ及び保湿効果感において高い結果を示した。
一方、試験例5−1のように油性成分を配合しなくともポリマーソームは形成され、ポリマーソームによる効果が発揮されるが、油性成分による保湿効果や肌荒れ改善効果は前記試験例に比べて劣っていた。油性成分は、試験例5−2のように僅か0.01質量%の配合で比較的高い効果を発揮したが、本発明においてより高い保湿効果を得るには0.05〜30質量%の配合が好ましいと考えられた。
【0109】
次に、本ポリマーソームの好適な製造工程を調べるため、表6に記載した配合組成よりなるポリマーソーム組成物を製造し、上記の評価(1)〜(7)について評価試験を行った。

【表6】

※製造工程
A:ブロック型アルキレンオキシド誘導体、エタノール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリンおよび香料を秤量・攪拌し、均一透明な混合液を得た。その他の配合成分を十分に溶解させた水相を攪拌しながらこの混合液を滴下し、ポリマーソーム組成物を得た。
B:すべての配合成分をイオン交換水中に秤量・攪拌することにより、組成物を得た。
【0110】
表6に示すように、工程Aにて製造した試験例6−1では平均粒子径(100nm程度)も小さく、透明〜半透明外観のポリマーソーム組成物が得られ、評価(1)〜(7)のいずれの評価にも優れるものであった。
工程Bにて製造した試験例6−2では平均粒子径が大きく白濁外観のエマルション組成物が得られ、ポリマーソームは形成されなかった。試験例6−2のエマルションとしての基剤安定性は、ポリマーソームを形成したものに比べ著しく劣っていた。
また、試験例6−2には、油性成分の配合による一応の保湿効果と肌荒れ改善効果の向上が認められたが、エマルションにおける油分の分散が不十分なため、べたつきやなめらかさといった使用感触の悪化も同時に認められた。
【0111】
上記の結果より、本発明にかかるポリマーソームの製造においては、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体と水溶性アルコールの一部または全部、および油性成分を十分に混合し、次いでその混合液を水系溶媒に攪拌しながら滴下する工程を備えることが好適である。
【0112】
次に、本ポリマーソーム組成物における油性成分の好適な配合量およびエマルション組成物と比較した場合のその効果を調べるため、表7に記載した配合組成よりなるポリマーソーム組成物を製造し、上記の評価(1)〜(7)について評価試験を行った。
【0113】
【表7】

※製造工程
A:ブロック型アルキレンオキシド誘導体、ジプロピレングリコール、ピバリン酸トリプロピレングリコール、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルおよび香料を秤量・攪拌し、均一透明な混合液を得た。その他の配合成分を十分に溶解させた水相を攪拌しながらこの混合液を滴下し、ポリマーソーム組成物を得た。
C:ピバリン酸トリプロピレングリコール、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルおよび香料を秤量・攪拌し、均一透明な混合油溶液を得た。ブロック型アルキレンオキシド誘導体およびジプロピレングリコールを含むすべての配合成分をイオン交換水中に十分に溶解させた水相を攪拌しながらこの混合油溶液を徐々に添加し、さらにホモミキサーにて乳化・攪拌し、エマルション組成物を得た。
【0114】
表7に示すように、工程Aにて製造した試験例7−1〜7−3では透明〜半透明外観のポリマーソーム組成物が得られ、評価(1)〜(7)のいずれの評価にも優れるものであった。配合油分量を増加させることにより保湿効果感や肌荒れ改善効果が向上する傾向にあった。
一方、工程Cにて製造した試験例7−4〜7−6は白濁外観のエマルション組成物が得られた。配合した油分はいずれも高極性油分であり、エマルションとしての基剤安定性が著しく劣るものであった。また、試験例7−4〜7−6は、ポリマー組成物と同じく配合油分量を増加させることにより保湿効果感や肌荒れ改善効果が向上する傾向にあったものの、エマルションの安定性が不十分なため、肌上で油分を均一に拡げることができずポリマーソーム組成物に比べ効果に若干劣る傾向がみられ、さらにべたつきやなめらかさといった使用感触の悪化も同時に認められた。
【0115】
上記の結果より、本発明において、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体を膜成分とするポリマーソームとすることにより、同成分を用いたエマルションでは為し得ない多量の高極性油分を安定的に配合することが可能となり、しかも同油分配合量の増加により、従来到達し得なかった優れた使用感触が得られることが明らかである。
【0116】
以下に本発明のポリマーソームを配合した皮膚外用剤の処方例を挙げるが、本発明の技術範囲はこれらにより限定されるものではない。得られた皮膚外用剤は、安全性、使用感触が良好で、且つ高い基剤安定性を有するものであった。
【0117】
処方例1 化粧水
(質量%)
エタノール 10
ジプロピレングリコール 1
ポリエチレングリコール1000 1
ホホバ油 0.01
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.5
POB(25)POE(28) トリメチルグリセリルエーテル 0.95
N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 0.1
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.2
水酸化カリウム 0.4
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
塩酸アルギニン 0.1
L−アスコルビン酸2−グルコシド 2
オウゴンエキス 0.1
ユキノシタエキス 0.1
オドリコソウエキス 0.1
トラネキサム酸 1
エデト酸三ナトリウム 0.05
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 0.01
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 残余
【0118】
(製造方法)
POB(25)POE(28) トリメチルグリセリルエーテル、エタノール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ホホバ油、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルおよび香料を秤量・攪拌し、均一透明な混合液を得た。その他の配合成分を十分に溶解させた水相を攪拌しながらこの混合液を滴下し、ポリマーソーム組成物を得た。
【0119】
処方例2 ヘアミスト
(質量%)
イソヘキサデカン 0.1
ツバキ油 0.3
エタノール 5
グリセリン 2
ジプロピレングリコール 1
1,3−ブチレングリコール 1
塩化アルキルトリメチルアンモニウム(77%) 0.5
POB(18)POE(20)トリメチルグリセリルエーテル 1
防腐剤 適量
精製水 残余
香料 適量
【0120】
(製造方法)
POB(18)POE(20)トリメチルグリセリルエーテル、エタノール、ジプロピレングリコール、イソヘキサデカン、ツバキ油および香料を秤量・攪拌し、均一透明な混合液を得た。その他の配合成分を十分に溶解させた水相を攪拌しながらこの混合液を滴下し、ポリマーソーム組成物を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体を膜成分とするポリマーソーム。
(化1)
Y−[O(EO)a−(AO)b−(EO)c−R]k (I)
(式中、Yは3〜6個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基を除いた残基、kは前記多価アルコールの水酸基数、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜6のオキシアルキレン基でそれぞれブロック状に付加されている。a×k、b×kおよびc×kはそれぞれオキシエチレン基、炭素数3〜6のオキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、0≦a×k≦100、1≦b×k≦100、0≦c×k≦100、ただし(a+c)×k>1である。式(I)中の全オキシエチレン基と炭素数3〜6のオキシアルキレン基の合計に対する、式(I)中の全オキシエチレン基の割合は、10〜80質量%である。Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体のAO基がオキシブチレン基であることを特徴とする、請求項1に記載のポリマーソーム。
【請求項3】
前記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体のaが0であり、AOとEOの付加順序が、式中のYに対して、(AO)−(EO)であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリマーソーム。
【請求項4】
内部空孔に水溶性成分を内包することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーソーム。
【請求項5】
ラメラ構造中に油性成分を保持することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーソーム。
【請求項6】
前記油性成分が低分子油分及び/又は高極性油分を含むことを特徴とする請求項5に記載のポリマーソーム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリマーソームを含むことを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項8】
下記(a)及び(b)の工程を含むことを特徴とするポリマーソームの製造方法。
(a)上記式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体、及び水溶性アルコールを混合する工程。
(b)前記混合液を撹拌しながら水系溶媒中へ滴下する工程。
【請求項9】
前記(a)工程において、ブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量が0.1〜20質量%、水溶性アルコールの配合量が0.1〜50質量%であることを特徴とする請求項8に記載のポリマーソームの製造方法。
【請求項10】
前記(a)工程において、さらに油性成分を混合することを特徴とする請求項8又は9に記載のポリマーソームの製造方法。
【請求項11】
油性成分の配合量が0.05〜30質量%であることを特徴とする請求項10に記載のポリマーソームの製造方法。

【公開番号】特開2011−183309(P2011−183309A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51742(P2010−51742)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】