ポリマーナノ微粒子及び光分子イメージング用造影剤
【課題】FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)効率と分散性に優れたポリマーナノ微粒子及びそれを用いた光分子イメージング用造影剤を提供すること。
【解決手段】蛍光性ポリマーのマトリックス中に蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子であって、該微粒子表面が界面活性剤で保護され、前記蛍光性ポリマーと前記蛍光色素間のFRETで蛍光を発光することを特徴とするポリマーナノ微粒子及び前記ポリマーナノ微粒子を用いた光分子イメージング用造影剤。
【解決手段】蛍光性ポリマーのマトリックス中に蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子であって、該微粒子表面が界面活性剤で保護され、前記蛍光性ポリマーと前記蛍光色素間のFRETで蛍光を発光することを特徴とするポリマーナノ微粒子及び前記ポリマーナノ微粒子を用いた光分子イメージング用造影剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光共鳴エネルギー移動で蛍光を発光するポリマーナノ微粒子、及び、前記ポリマーナノ微粒子を用いた光分子イメージング用造影剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な産業分野への応用を指向して、ポリマーナノ微粒子に関する研究開発が盛んに行われており、中でも医薬、診断薬等、医療・診断分野への応用が加速している。特に最近では、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET:Fluorescence Resonance Energy Transfer、以降「FRET」と記載する)を利用したポリマーナノ微粒子が光分子イメージング用造影剤として注目されつつある。
【0003】
FRETで蛍光を発光するポリマーナノ微粒子として、非特許文献1には、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)で表面保護されたポリフルオレンナノ微粒子の表面に、カチオン性蛍光色素を静電的に吸着させて固定化したポリマーナノ微粒子に関する技術が開示されている。そこでは、ポリフルオレン(PF2/6)を光励起することによって、FRETでカチオン性蛍光色素(ローダミン6G)から蛍光が発光すると報告されている。
【0004】
一方、非特許文献2には、2種類の異なるポリマーから成るポリマーブレンドナノ微粒子を得る技術が開示されている。具体的には、2種類の異なる蛍光性ポリマー(PF2/6、m−LPPP)を溶解したクロロホルムをSDS水溶液と混合した後、超音波照射によって形成したエマルジョンを加温してクロロホルムを除去することにより得られることが開示されている。そこでは、PF2/6を光励起することによって、FRETでm−LPPPから蛍光が発光すると報告されている。
【0005】
更に、非特許文献3には、蛍光性ポリマーのマトリックス中に蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子を得る技術が開示されている。具体的には、まず、蛍光性ポリマー(PDHF)と蛍光色素(クマリン6)を溶解したTHF(テトラヒドロフラン)溶液を脱塩水中に超音波照射しながら注入する。続いて、得られたサスペンションを0.2μmのメンブランフィルターに通した後、THFを減圧留去することで得ることが出来る。そこでは、PDHFを光励起することによって、FRETでクマリン6から蛍光が発光すると報告されている。
【0006】
特許文献1では、スルホン酸(又はカルボン酸)表面のポリスチレンラテックス粒子をTHF(又はDMF)で膨潤し、1種類又は複数の有機色素を取込ませることで、当該粒子中に有機色素が分散したポリマーナノ微粒子を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5763189号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】"Macromol.Rapid.Commun."、2006,27,200から202頁
【非特許文献2】"Nature Materials",2003,2,408から412頁
【非特許文献3】"J.Phys.Chem.C,2008、112,1772から1781頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1において、ポリフルオレン(PF2/6)を光励起することによって、FRETでカチオン性蛍光色素(ローダミン6G)から蛍光が発光すると報告されているが、そのFRET効率は高くない。
【0010】
また、非特許文献1のポリマーナノ微粒子では、微粒子表面に静電吸着させたカチオン性蛍光色素は、生理食塩水のような塩を含有する水溶液中において脱着する恐れがあり、その結果、FRET効率の低下を招く恐れが考えられる。
【0011】
一方、非特許文献2においては、PF2/6を光励起することによって、FRETでm−LPPPから蛍光が発光すると報告されているが、FRET効率に関する明確な記載はなされていない。
【0012】
また、非特許文献2のポリマーナノ微粒子では、微粒子内に2種類の異なる蛍光性ポリマーを内包しているが、このように異なるポリマーを使用する場合、相溶性の問題、即ち、相分離の可能性があり、その結果、FRET効率の低下を招く恐れが考えられる。
【0013】
一方、非特許文献3においては、微粒子表面が界面活性剤で保護されていないことから、生理食塩水のような塩を含有する水溶液中において、ポリマーナノ微粒子の凝集が懸念される。
【0014】
一方、特許文献1においては、微粒子内にドナー色素、アクセプター色素を仕込み比通りに内包させることは困難であり、色素の仕込み比にバラツキが生じ易く、FRET効率の低下や蛍光強度の低下を招く恐れが考えられる。
【0015】
本発明は、このような背景技術に鑑みてなされたものであり、FRET効率が優れ、且つ分散性に優れたポリマーナノ微粒子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のポリマーナノ微粒子は、蛍光性ポリマーのマトリックス中に蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子であって、該微粒子表面が界面活性剤で保護され、前記蛍光性ポリマーと前記蛍光色素間のFRETで蛍光を発光することを特徴とする。
【0017】
また、別の本発明のポリマーナノ微粒子は、ポリマーのマトリックス中に2種類の異なる蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子であって、該微粒子表面が界面活性剤で保護され、前記2種類の異なる蛍光色素間のFRETで蛍光を発光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蛍光性ポリマーのマトリックス中に蛍光色素が分散した構造を有することから、従来技術に比べてFRET効率の優れたポリマーナノ微粒子を提供することができる。
【0019】
また、別の本発明によれば、ポリマーのマトリックス中に2種類の異なる蛍光色素が分散した構造を有することから、従来技術に比べてFRET効率の優れたポリマーナノ微粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一の本発明に係るポリマーナノ微粒子の構造を示す概略図である。
【図2】第二の本発明に係るポリマーナノ微粒子の構造を示す概略図である。
【図3】第一の本発明に係るポリマーナノ微粒子を製造する工程の一例を示す図である。
【図4】第二の本発明に係るポリマーナノ微粒子を製造する工程の一例を示す図である。
【図5】実施例1におけるポリマーナノ微粒子1のFRET特性を示すグラフである。
【図6】実施例2におけるポリマーナノ微粒子2のFRET特性を示すグラフである。
【図7】実施例8におけるポリマーナノ微粒子8のFRET特性を示すグラフである。
【図8】実施例12におけるポリマーナノ微粒子12のFRET特性を示すグラフである。
【図9】実施例18におけるポリマーナノ微粒子18のFRET特性を示すグラフである。
【図10】実施例19におけるポリマーナノ微粒子19のTEM写真である。
【図11】実施例37におけるポリマーナノ微粒子37の蛍光像である。
【図12】実施例37におけるQD565の蛍光像である。
【図13】実施例37におけるポリマーナノ微粒子37とQD565の輝度ヒストグラムである。
【図14】実施例38におけるポリマーナノ微粒子38のTEM写真である。
【図15】実施例38におけるポリマーナノ微粒子38の蛍光像である。
【図16】実施例38におけるQD565の蛍光像である。
【図17】実施例38におけるポリマーナノ微粒子38とQD565の輝度ヒストグラムである。
【図18】塩化ナトリウム水溶液中におけるポリマーナノ微粒子39、40、41の粒径分布を示すグラフである。
【図19】PBSおよびFBS中におけるポリマーナノ微粒子18の粒径分布を示すグラフである。
【図20】PBSおよびFBS中におけるポリマーナノ微粒子40の粒径分布を示すグラフである。
【図21】PBSおよびFBS中におけるポリマーナノ微粒子41の粒径分布を示すグラフである。
【図22】実施例40におけるポリマーナノ微粒子42のTEM写真である。
【図23】実施例40におけるポリマーナノ微粒子42のFRET特性を示すグラフである。
【図24】実施例40におけるポリマーナノ微粒子42の蛍光像である。
【図25】実施例40におけるQD800の蛍光像である。
【図26】実施例40におけるポリマーナノ微粒子42とQD800の輝度ヒストグラムである。
【図27】PBSおよびFBS中におけるポリマーナノ微粒子43の粒径分布を示すグラフである。
【図28】実施例40におけるポリマーナノ微粒子42を投与したヌードマウスの蛍光像である。
【図29】特許文献1に開示の方法に従って合成したポリマーナノ微粒子の規格化した蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図30】ポリマーナノ微粒子49、50の蛍光強度を比較したグラフである。
【図31】実施例18におけるポリマーナノ微粒子18を投与したヌードマウスの蛍光像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
(ポリマーナノ微粒子)
第一の本発明は、図1に示すように蛍光性ポリマー2のマトリックス中に蛍光色素(アクセプター)3が分散したポリマーナノ微粒子1であり、界面活性剤4がポリマーナノ微粒子1の表面に存在する。
【0023】
また、第二の本発明は、図2に示すように、ポリマー6のマトリックス中に2種類の異なる蛍光色素3及び5が分散したポリマーナノ微粒子10であり、界面活性剤4がポリマーナノ微粒子10の表面に存在する。
【0024】
また、本発明のポリマーナノ微粒子の好ましい態様の一つは、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する蛍光色素と蛍光性ポリマーの組合せからなるFRETによって、生体透過性の優れた蛍光を発光することを特徴とする。
【0025】
また、別の本発明のポリマーナノ微粒子の好ましい態様の一つは、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する2種類の異なる蛍光色素(ドナー、アクセプター)の組合せからなるFRETによって、生体透過性の優れた蛍光を発光することを特徴とする。
【0026】
また、本発明のポリマーナノ微粒子は、該微粒子表面が界面活性剤で保護されていることから、生理食塩水のような塩を含む水溶液中においても優れた分散性を有することを特徴とする。
【0027】
ポリマーナノ微粒子は、蛍光性ポリマーと蛍光色素と界面活性剤とを有する。該蛍光色素は蛍光性ポリマーのマトリックス中に分散しており、該界面活性剤はポリマーナノ微粒子表面に存在する。
【0028】
本発明のポリマーナノ微粒子は、目的とする用途に対して平均粒径を制御することが可能であり、その平均粒径は10nm以上、200nm以下であることを特徴とする。
【0029】
(FRET)
FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer;蛍光共鳴エネルギー移動)とは、ドナーとなる蛍光分子の蛍光スペクトルとアクセプターとなる蛍光分子の吸収スペクトルに重なりを有する2種類の蛍光分子が、1から10nm以内に接近している状況下において、励起された蛍光分子(ドナー)の光エネルギーが別の蛍光分子(アクセプター)に移動して励起される現象のことである。FRETの強度は両分子間の距離の6乗に反比例し、距離と共に急速に減少する。2種類の蛍光分子として、蛍光性ポリマーと蛍光色素もしくは、異なる2種類の蛍光色素を用いることができる。
【0030】
(蛍光性ポリマー)
第一の本発明における蛍光性ポリマーとは、励起光によって励起された後、基底状態に戻る際に蛍光を発光するポリマーであり、また、その蛍光スペクトルが蛍光色素の吸収スペクトルとの重なりを有するポリマーであれば、特に限定されない。蛍光性ポリマーの一部として、以下のような共役ポリマーを挙げることができる。上記共役ポリマーの具体例としては、
化学式1で示されるF8BT:poly[2,1,3-benzothiadiazole-4,7-diyl(9,9-dioctyl-9H-fluorene-2,7-diyl)]、
化学式2で示されるMEH−PPV:poly(2-methoxy-5-(2'-ethyl-hexyloxy)-p-phenylene vinylene)、
化学式3で示されるP−1:copoly(2,3-diphenylthieno [3,4-b] pyrazine -alt- 9,9- didecylfluorene)、
化学式4で示されるP−2:copoly(thieno [3,4-b] pyrazine -alt- 9,9- didecylfluorene)、
化学式5で示されるPF11112:poly(9,9-bis(3,7,11-trimethyldodecyl) fluorene)、
化学式6で示されるm−LPPP:ladder-type poly(para-phenylene)、
化学式7で示されるPFB:poly(9,9-dioctylfluorene-co- N,N'- bis(4-butylphenyl)-N,N'- diphenyl-1,4-phenylenediamine)、
化学式8で示されるPF2/6:poly[9,9-bis(2-ethylhexyl)fluorene-2,7-diyl]、
化学式9で示されるADS104RE:poly[(2-methoxy-5-(3,7-dimethyl-octyloxy)-1,4- phenylenevinylene)end capped with DMP、
化学式10で示されるADS106RE:poly[9,9-di-(2-ethylhexyl)-fluorenyl-2,7-diyl] end capped with 2,5-diphenyl-1,2,4-oxadiazole、
化学式11で示されるADS300RE:poly[2,5-bis(3,7-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylene- vinylene]、
化学式12で示されるADS129BE:poly(9,9-dioctyfluorenyl-2,7-diyl)end capped with dimethylphenyl、
化学式13で示されるCDPDOF:copoly(2,3-diphenylthieno[3,4-b]pyrazine-alt-9,9- dioctylfluorene)、
化学式14で示されるCOTTOF:copoly(thienothiadiazole-alt-9,9-ioctylfluorene)(式中、X:Yは1:0〜0.1:1)、
化学式15で示されるCOBBOF:copoly(benzobisthiadiazole-alt-9,9-dioctylfluorene) (式中、X:Yは1:0〜0.1:1)等である。但し、本発明における蛍光性ポリマーとは上記に限定されるものではない。
【0031】
これらの蛍光性ポリマーの平均分子量は2000〜1000000であり、好ましくは10000〜600000のものを好適に利用できる。
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
【化15】
【0047】
(蛍光色素)
第一の本発明における蛍光色素とは、その吸収スペクトルが蛍光性ポリマーの蛍光スペクトルと重なりを持つ蛍光色素であれば、特に限定されないが、生体透過性の観点から、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する蛍光色素が好ましい。
【0048】
第二の本発明における2種類の異なる蛍光色素は、一方の蛍光色素の吸収スペクトルが他方の蛍光色素の蛍光スペクトルと重なりを持つ蛍光色素、即ち、ドナー、アクセプターの蛍光色素の組合せであれば、特に限定されない。ただし、生体透過性の観点から、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する蛍光色素が好ましい。なお、第二の本発明に係るポリマーナノ微粒子は、3種類以上の異なる蛍光色素を含んでいてもよい。
【0049】
これらの蛍光色素として、以下のような色素を挙げることができる。
化学式16で示されるDiD:1,1'-Dioctadecyl-3,3,3',3'-tetramethylindodicarbocyanine perchlorate、化学式17で示されるDiR:1;1'-Dioctadecyl-3;3;3';3'-tetramethylindotricarbocyanine iodide、DiI:1,1'-Dioctadecyl-3,3,3',3'-tetramethylindocarbocyanine perchlorate、ICG(インドシアニングリーン)等のシアニン系蛍光色素、化学式18で示されるSiPcTHSO:silicon phthalocycanine bis(trihexyl-silyloxide)、silicon 2,3,9,10,16,17,23,24- octakis (octyloxy) -29H,31H-phthalocycanine dihydroxide、silicon 2,9,16,23-tetra-tert- butyl-29H,31H- phthalocycanine dihydroxide、化学式19で示されるβ tetra (neopentyloxy) -29H, 31H- phthalocycanine、2,3,9,10,16,17,23,24-octa(4-tert-butylphenoxy) -29H,31H- phthalocycanine、β tetra (thiobuthoxy)-29H, 31H- phthalocycanine、1,4,8,11,15,18,22,25 octa ethoxy-zinc phthalocycanine等のフタロシアニン系蛍光色素、化学式20で示されるsilicon 2,3-naphthalocyanine dioctyloxide、silicon 2,3- naphthalocyanine dihydroxide、silicon 2,3-naphthalocyanine bis(trihexylsilyloxide)等のナフタロシアニン系蛍光色素、hexapropyl -3,6-diphenyl tetraazaporphyrin、5,10,15,20-Tetraphenyl-22H, 24H-prophyrin等のポルフィリン系蛍光色素、β tetra(tert-buthyl)- tetra pyrazino porphyrazin等のポルフィラジン系蛍光色素、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミンX、テトラメチルロ−ダミン等のキサンテン系蛍光色素、メチレンブルー等のチアジン系蛍光色素、クマリン6等のクマリン系蛍光色素、オキサジン系蛍光色素、ポリメチン系蛍光色素、ポリフェニル系蛍光色素、スチルベン系蛍光色素、オキサゾール系蛍光色素、オキサジアゾール系蛍光色素、ペリレン系蛍光色素、アクリジン系蛍光色素、BODIPY系蛍光色素等の蛍光色素である。但し、本発明における蛍光色素とは上記に限定されるものではない。
【0050】
【化16】
【0051】
【化17】
【0052】
【化18】
【0053】
【化19】
【0054】
【化20】
【0055】
(ポリマー)
第二の本発明におけるポリマーは、後述する有機溶媒に溶解するポリマーであれば、特に限定されないが、例えば、PS:Polystyrene(ポリスチレン)、PMMA(Poly(methyl methacrylate):ポリメタクリル酸メチル)、PBMA(Poly(butyl methacrylate):ポリメタクリル酸ブチル)、P(BMA−co−MMA)(Poly(butyl methacrylate-co-methyl methacrylate):ポリ(メタクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)共重合体)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオルソエステル、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ酸無水物、デキストラン誘導体、セルロース誘導体等のポリマーを挙げることができる。
【0056】
(ポリマーナノ微粒子の製造方法)
第一の本発明におけるポリマーナノ微粒子の製造方法について説明する。
【0057】
第一の本発明におけるポリマーナノ微粒子の製造方法は、
蛍光性ポリマーと蛍光色素を含有する第一液体を、界面活性剤を含有する第二液体に加えて混合液を得る工程と、前記混合液からエマルジョンを得る工程と、前記エマルジョンの分散質から前記第一液体を留去する工程と、を有する。即ち、本発明のポリマーナノ微粒子を得る方法としては、ミニエマルジョン法を挙げることができるが、上記に限定されるものではない。
【0058】
次に第二の発明におけるポリマーナノ微粒子の製造方法について説明する。
【0059】
第二の本発明におけるポリマーナノ微粒子の製造方法は、
2種類の異なる蛍光色素及びポリマーを含有する第一液体を、界面活性剤を含有する第二液体に加えて混合液を得る工程と、前記混合液からエマルジョンを得る工程と、前記エマルジョンの分散質から前記第一液体を留去する工程と、を有する。即ち、本発明のポリマーナノ微粒子を得る方法としては、ミニエマルジョン法を挙げることができるが、上記に限定されるものではない。
【0060】
(第一液体)
第一液体とは有機溶媒であり、水への溶解性がないか又は溶解性が小さく、且つ前述の蛍光性ポリマー、ポリマー、蛍光色素を溶解する有機溶媒であればいかなる溶媒も適用可能であるが、揮発性の有機溶媒であることが好ましい。
【0061】
このような有機溶媒の具体例として、次の溶媒が挙げられる。ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、エーテル類(エチルエーテル、イソブチルエーテル等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)等。これらを単独で用いても良いし、あるいは2種類以上を適宜の割合で混合して用いることもできる。但し、第一液体である有機溶媒は上記に限定されるものではない。
【0062】
また、第一液体における蛍光性ポリマーおよび蛍光色素の濃度はこれらが溶解する範囲であれば特に限定されないが、好ましい濃度として例えば、蛍光性ポリマーについては0.5〜100mg/mlとすることができる。また、蛍光色素の好ましい濃度として、例えば0.0005〜1mg/mlとすることができる。
【0063】
また、第一液体における蛍光性ポリマーと蛍光色素との重量比は、好ましくは、1000:1〜4:1の範囲である。
【0064】
また、第一液体におけるポリマーおよび2種類の異なる蛍光色素の濃度はこれらが溶解する範囲であれば特に限定されないが、好ましい濃度として、例えば、ポリマーについては0.5〜100mg/mlとすることができる。また、2種類の異なる蛍光色素の好ましい濃度としては、例えば0.0005〜5mg/mlとすることができる。
【0065】
また、第一液体におけるポリマーと2種類の異なる蛍光色素の総量との重量比は、好ましくは、1000:1〜4:1の範囲である。また、第一液体における2種類の異なる蛍光色素のうち、ドナー蛍光色素とアクセプター蛍光色素との重量比が1000:1〜0.1:1の範囲にあることが好ましい。
【0066】
(第二液体)
第二液体とは水または水溶液である。第一液体と混合した際にエマルジョンを安定化させることを目的として、第二液体に分散剤として界面活性剤をあらかじめ共存させることが好ましい。ただし、第一、第二液体を混合した分散液に界面活性剤を含ませることができれば、上記の方法に限定されるものではない。
【0067】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、以下の材料を使用することができる。
【0068】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、Tween85、Brij35、Brij58、Brij76、Brij98、Triton X−100、Triton X−114、TritonX−305、Triton N−101、Nonidet P−40、Igepol CO530、Igepol CO630、Igepol CO720、Igepol CO730等が挙げられる。
【0069】
また、アニオン性界面活性剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホネート、デシルベンゼンスルホネート、ウンデシルベンゼンスルホネート、トリデシルベンゼンスルホネート、ノニルベンゼンスルホネート並びにこれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等。
【0070】
また、カチオン性界面活性剤としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、塩化ヘキサデシルピリジニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。このうち好ましくは非イオン性界面活性剤である。
【0071】
また、第二液体に含まれる界面活性剤の濃度は、第一液体との混合比にも依るが、好ましい濃度として例えば、0.1mg/ml〜100mg/mlとすることができる。
【0072】
(エマルジョン)
エマルジョンとは、本発明の目的を達成可能な範囲において如何なる物性のエマルジョンも含めるものであるが、好ましくは1ピークの粒径分布を有し、且つ、平均粒径が10nm以上、200nm以下の単分散エマルジョンである。
【0073】
このようなエマルジョンは従来公知の乳化手法によって調製することが可能である。従来公知の方法とは、例えば、断続振とう法、プロペラ型攪拌機、タービン型攪拌機等のミキサーを利用する攪拌法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法等がある。これらの方法は、単独で用いることも、あるいは複数を組み合わせて用いることも可能である。また、エマルジョンは1段階の乳化によって調製しても良いし、多段階の乳化によって調製しても良い。但し、エマルジョンは、本発明の目的を達成できる範囲において上記手法に限定されない。
【0074】
エマルジョンは、第二液体に第一液体を加えて得られる混合液から調製される水中油(O/W)型のエマルジョンである。ここで、第一液体と第二液体の混合とは、第一液体と第二液体を空間的に隔離せずに互いに接触して存在させることであり、必ずしも互いに混和することを要さない。
【0075】
混合液における第一液体と第二液体との割合は、水中油(O/W)型のエマルジョンを形成することができれば特に限定はないが、好ましくは、第一液体と第二液体との重量比が、1:2.5〜1:12.5となる範囲で混合することが好ましい。
【0076】
(留去)
留去とは、エマルジョンの分散質から第一液体を除去する操作である。即ち、蛍光性ポリマー、ポリマー、蛍光色素、有機溶媒から構成された分散質から有機溶媒を除去することである。
【0077】
留去は、従来知られる何れの方法でも実施可能であるが、加熱によって除去する方法、あるいはエバポレーター等の減圧装置を利用した方法を挙げることができる。加熱による除去の場合の加熱温度は、O/W型のエマルジョンを維持できれば特に限定されないが、好ましい温度は0℃から80℃の範囲である。但し、留去は、本発明の目的を達成できる範囲において上記手法に限定されない。
【0078】
第一の本発明におけるポリマーナノ微粒子1を製造する工程の一例を図3に示している。具体的には、以下の(1)から(3)の工程を経てポリマーナノ微粒子の水分散液を得られる。
(1)蛍光性ポリマー2と蛍光色素(アクセプター)3を含有する水に不溶または難溶の有機溶媒7を、界面活性剤4を含有する水溶液8に加えて混合液を得る工程。
(2)前記混合液を乳化することによりO/W型のエマルジョン9を得る工程。
(3)前記エマルジョン9の分散質から有機溶媒を留去する工程。
【0079】
また、第二の本発明におけるポリマーナノ微粒子10を製造する工程の一例を図4に示す。具体的には、以下の(1)から(3)の工程を経てポリマーナノ微粒子の水分散液を得られる。
(1)ポリマー6と2種類の異なる蛍光色素3(アクセプター)及び蛍光色素5(ドナー)を含有する水に不溶または難溶の有機溶媒を、界面活性剤4を含有する水溶液8に加えて混合液を得る工程。
(2)前記混合液を乳化することによりO/W型のエマルジョン11を得る工程。
(3)前記エマルジョン11の分散質から有機溶媒を留去する工程。
【0080】
(光分子イメージング用造影剤)
本発明におけるポリマーナノ微粒子は、微粒子内での蛍光性ポリマーと蛍光色素間のFRET、又は微粒子内での2種類の異なる蛍光色素間のFRETを利用して、光分子イメージング用造影剤として応用することができる。
【0081】
また、本発明におけるポリマーナノ微粒子は、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する蛍光色素と蛍光性ポリマーの組合せからなるFRETによって、生体透過性の優れた蛍光を発光することから、光分子イメージング用造影剤として好適である。
【0082】
また、本発明におけるポリマーナノ微粒子は、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する2種類の異なる蛍光色素の組合せからなるFRETによって、生体透過性の優れた蛍光を発光することから、光分子イメージング用造影剤として好適である。
【0083】
本発明における光分子イメージング用造影剤は、EPR(Enhanced Permeability and Retention:増強されたパーミアビリティーおよび保持)効果を利用して腫瘍部位にポリマーナノ微粒子を送達させることができる。腫瘍部位に到達した後、ポリマーナノ微粒子を光励起して、FRETに伴う蛍光発光を検出することによって腫瘍部位を可視化することができる。
【0084】
本発明のポリマーナノ微粒子は表面が界面活性剤で保護されていることから、光分子イメージング用造影剤として使用する際も、ポリマーナノ微粒子は水に分散させたものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を用いて更に詳細に本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、材料、組成条件、反応条件等、同様な機能、効果を有するポリマーナノ微粒子が得られる範囲で自由に変えることができる。
【0086】
まず、第一の本発明に関して詳細を説明する。
【0087】
<実施例1>
(ポリマーナノ微粒子1の合成)
前記化学式1で示されるF8BT(0.4mg、平均分子量10,000〜30,000、ADS製)と前記化学式16で示されるDiD(0.087mg、Biotium,Inc製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0088】
次に、Tween20(TCI製)を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した。その後、超音波分散機(Misonix,Inc製、Microson XL2000)で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0089】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つF8BT中にDiDが分散したポリマーナノ微粒子1の水分散液を得た。
【0090】
得られたポリマーナノ微粒子1の粒径を動的光散乱解析装置(大塚電子製、ELS-Z)で分析したところ、平均粒径は87.4nmであった。
【0091】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置(日立製、F−4500)を用いて、前記ポリマーナノ微粒子1の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図5に示した。
【0092】
ポリマーナノ微粒子1の水分散液に450nmの励起光を照射すると、F8BTの蛍光が大きく減少し、且つ680nmのDiDの蛍光発光が見られたことから、F8BTからDiDへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0093】
<実施例2>
(ポリマーナノ微粒子2の合成)
前記化学式2で示されるMEH−PPV(0.4mg、平均分子量40,000〜70,000、Aldrich製)とDiD(0.04mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0094】
次に、Tween20を溶解した水溶液(2重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0095】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つMEH−PPVマトリックス中にDiDが分散したポリマーナノ微粒子2の水分散液を得た。
【0096】
得られたポリマーナノ微粒子2の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は102.3nmであった。
【0097】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置を用いて、前記ポリマーナノ微粒子2の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図6に示した。
【0098】
ポリマーナノ微粒子2の水分散液に500nmの励起光を照射すると、MEH−PPVの蛍光が大きく減少し、且つ680nmのDiDの蛍光発光が見られたことから、MEH−PPVからDiDへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0099】
<実施例3>
(ポリマーナノ微粒子3の合成)
実施例2のDiDの使用量を0.04mgから0.004mgに替えた以外は、実施例2と同様にして、ポリマーナノ微粒子3の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子3の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は59.3nmであった。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0100】
<実施例4>
(ポリマーナノ微粒子4の合成)
実施例2のDiDの使用量を0.04mgから0.0004mgに替えた以外は、実施例2と同様にして、ポリマーナノ微粒子4の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子4の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は90.1nmであった。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0101】
<実施例5>
(ポリマーナノ微粒子5の合成)
MEH−PPV(0.4mg)とDiD(0.046mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0102】
次に、DTAC(塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、Alfa Aesar製)を溶解した水溶液(0.70重量%、2g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とした。この混合液を2時間攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0103】
次に、前記エマルジョンを60℃で30分間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がDTACで保護され、且つMEH−PPVマトリックス中にDiDが分散したポリマーナノ微粒子5の水分散液を得た。
【0104】
得られたポリマーナノ微粒子5の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は42.0nmであった。また、FRET特性に関しては、その結果を表1に示した。
【0105】
<実施例6>
(ポリマーナノ微粒子6の合成)
実施例5のDiDの使用量を0.046mgから0.0046mgに替えた以外は、実施例5と同様にして、ポリマーナノ微粒子6の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子6の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は51.7nmであった。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0106】
<実施例7>
(ポリマーナノ微粒子7の合成)
実施例5のDiDの使用量を0.046mgから0.00046mgに替えた以外は、実施例5と同様にして、ポリマーナノ微粒子7の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子7の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は19.7nmであった。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0107】
<実施例8>
(ポリマーナノ微粒子8の合成)
前記化学式1で示されるF8BT(0.4mg)と前記化学式18で示されるSiPcTHSO(0.04mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0108】
次に、DTACを溶解した水溶液(0.70重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0109】
次に、前記エマルジョンを60℃で30分間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がDTACで保護され、且つF8BTマトリックス中にSiPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子8の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子8の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は34.3nmであった。
【0110】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置を用いて、前記ポリマーナノ微粒子8の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図7に示した。
【0111】
ポリマーナノ微粒子8の水分散液に450nmの励起光を照射すると、F8BTの蛍光が大きく減少し、且つ669.8nmのSiPcTHSOの蛍光発光が見られたことから、F8BTからSiPcTHSOへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0112】
<実施例9>
(ポリマーナノ微粒子9の合成)
実施例8のSiPcTHSOの使用量を0.04mgから0.02mgに替えた以外は、実施例8と同様にして、ポリマーナノ微粒子9の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0113】
<実施例10>
(ポリマーナノ微粒子10の合成)
実施例8のSiPcTHSOの使用量を0.04mgから0.01mgに替えた以外は、実施例8と同様にして、ポリマーナノ微粒子10の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0114】
<実施例11>
(ポリマーナノ微粒子11の合成)
実施例8のSiPcTHSOの使用量を0.04mgから0.004mgに替えた以外は、実施例8と同様にして、ポリマーナノ微粒子11の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0115】
<実施例12>
(ポリマーナノ微粒子12の合成)
前記化学式10で示されるADS106RE(0.4mg、平均分子量50,000〜200,000、ADS製)と化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.04mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0116】
【化21】
【0117】
次に、DTAC(塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、Alfa Aesar製)を溶解した水溶液(0.70重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とした。この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0118】
次に、前記エマルジョンを60℃で30分間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がDTACで保護され、且つADS106REマトリックス中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子12の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子12の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は25.9nmであった。
【0119】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置(日立製、F−4500)を用いて、前記ポリマーナノ微粒子12の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図8に示した。
【0120】
ポリマーナノ微粒子12の水分散液に450nmの励起光を照射すると、ADS106REの蛍光が大きく減少し、且つ777.0nmのSiNPcTHSOの蛍光発光が見られた。このことから、ADS106REからSiNPcTHSOへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0121】
<実施例13>
(ポリマーナノ微粒子13の合成)
実施例12のSiNPcTHSOの使用量を0.04mgから0.03mgに替えた以外は、実施例12と同様にして、ポリマーナノ微粒子13の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0122】
<実施例14>
(ポリマーナノ微粒子14の合成)
実施例12のSiNPcTHSOの使用量を0.04mgから0.02mgに替えた以外は、実施例12と同様にして、ポリマーナノ微粒子14の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0123】
<実施例15>
(ポリマーナノ微粒子15の合成)
実施例12のSiNPcTHSOの使用量を0.04mgから0.01mgに替えた以外は、実施例12と同様にして、ポリマーナノ微粒子15の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0124】
<実施例16>
(ポリマーナノ微粒子16の合成)
実施例12のSiNPcTHSOの使用量を0.04mgから0.004mgに替えた以外は、実施例12と同様にして、ポリマーナノ微粒子16の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0125】
<実施例17>
(ポリマーナノ微粒子17の合成)
実施例12のSiNPcTHSOの使用量を0.04mgから0.002mgに替えた以外は、実施例12と同様にして、ポリマーナノ微粒子17の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0126】
<実施例18>
(ポリマーナノ微粒子18の合成)
前記化学式13で示されるCDPDOF(4mg、平均分子量18,000(GPC(Gel Permeation Chromatography)によるポリスチレン換算値)、筆者合成品)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.1mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0127】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0128】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つCDPDOF中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子18の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子18の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は78.6nmであった。
【0129】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置(日本分光製、FP−6600)を用いて、前記ポリマーナノ微粒子18の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図9に示した。
【0130】
ポリマーナノ微粒子18の水分散液に600nmの励起光を照射すると、CDPDOFの蛍光が大きく減少し、且つ780nmのSiNPcTHSOの蛍光発光が見られた。このことから、CDPDOFからSiNPcTHSOへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0131】
(ヌードマウスのin vivo蛍光イメージング)
前記ポリマーナノ微粒子18の水分散液を滅菌済みの限外濾過フィルターで2倍に濃縮した。濃縮した水分散液について、滅菌済みのシリンジフィルター(0.20μm径)で処理を行った後、PBSで2倍に希釈し、ヌードマウス(BALB/c−nu/nu、9週齢、メス)の尾静脈から0.2ml投与した。投与してから15分、3時間、1日、2日、3日後に蛍光イメージング装置(Xenogen製、IVIS200)でヌードマウスの蛍光像を撮影した。その結果を図31に示した。ヌードマウスの体内から強い蛍光が検出され、in vivo蛍光イメージングできることが確認できた。
【0132】
<実施例19>
(ポリマーナノ微粒子19の合成)
実施例18のSiNPcTHSOの使用量を0.1mgから0.04mgに替えた以外は、実施例18と同様にして、ポリマーナノ微粒子19の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。また、ポリマーナノ微粒子19のTEM写真を図10に示した。
【0133】
<実施例20>
(ポリマーナノ微粒子20の合成)
実施例18のSiNPcTHSOの使用量を0.1mgから0.17mgに替えた以外は、実施例18と同様にして、ポリマーナノ微粒子20の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0134】
<実施例21>
(ポリマーナノ微粒子21の合成)
実施例18のSiNPcHSOの使用量を0.1mgから0.3mgに替えた以外は、実施例18と同様にして、ポリマーナノ微粒子21の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0135】
<実施例22>
(ポリマーナノ微粒子22の合成)
実施例19のCDPDOFの使用量を4mgから0.4mgに替えた以外は、実施例19と同様にして、ポリマーナノ微粒子22の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0136】
<実施例23>
(ポリマーナノ微粒子23の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.01mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子23の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0137】
<実施例24>
(ポリマーナノ微粒子24の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.013mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子24の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0138】
<実施例25>
(ポリマーナノ微粒子25の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.017mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子25の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0139】
<実施例26>
(ポリマーナノ微粒子26の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.02mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子26の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0140】
<実施例27>
(ポリマーナノ微粒子27の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.03mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子27の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0141】
<実施例28>
(ポリマーナノ微粒子28の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.054mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子28の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0142】
<実施例29>
(ポリマーナノ微粒子29の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.08mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子29の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0143】
<実施例30>
(ポリマーナノ微粒子30の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.2mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子30の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0144】
<実施例31>
(ポリマーナノ微粒子31の合成)
前記化学式13で示されるCDPDOF(0.4mg、筆者合成品)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.004mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0145】
次に、DTAC(塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、Alfa Aesar製)を溶解した水溶液(0.70重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とした。この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルションを調製した。
【0146】
次に、前記エマルションを60℃で30分間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がDTACで保護され、且つCDPDOFマトリックス中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子31の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0147】
<実施例32>
(ポリマーナノ微粒子32の合成)
実施例31のSiNPcTHSOの使用量を0.004mgから0.01mgに替えた以外は、実施例31と同様にして、ポリマーナノ微粒子32の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0148】
<実施例33>
(ポリマーナノ微粒子33の合成)
実施例31のSiNPcTHSOの使用量を0.004mgから0.03mgに替えた以外は、実施例31と同様にして、ポリマーナノ微粒子33の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0149】
<実施例34>
(ポリマーナノ微粒子34の合成)
前記化学式10で示されるADS106RE(0.4mg)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.03mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0150】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0151】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つADS106RE中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子34の水分散液を得た。
【0152】
得られたポリマーナノ微粒子34の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は73.1nmであった。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0153】
<実施例35>
(ポリマーナノ微粒子35の合成)
実施例34のSiNPcTHSOの使用量を0.03mgから0.01mgに替えた以外は、実施例34と同様にして、ポリマーナノ微粒子35の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0154】
<実施例36>
(ポリマーナノ微粒子36の合成)
実施例34のSiNPcTHSOの使用量を0.03mgから0.02mgに替えた以外は、実施例34と同様にして、ポリマーナノ微粒子36の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0155】
<比較例1>
非特許文献1で得られた微粒子を比較例1とし、実施例1から36で得られたポリマーナノ微粒子1から36、及び比較例1の微粒子のFRET効率を比較した。その結果を表1にまとめて示した。
【0156】
表1の結果から、本発明のポリマーナノ微粒子1〜36(ポリマーナノ微粒子23、及び31〜33は除く)のFRET効率が比較例1(非特許文献1)よりも優れていることが確認された。
【0157】
【表1−1】
【0158】
【表1−2】
【0159】
<実施例37>
(ポリマーナノ微粒子37とQD(量子ドット)の輝度比較)
本発明のポリマーナノ微粒子37、及びQDを用いて輝度比較を行った。評価に用いたポリマーナノ微粒子37は、以下の合成例に従って合成した。また、QDとして、QD565(invitrogen)を使用した。
【0160】
(ポリマーナノ微粒子37の合成例)
前記化学式1で示されるF8BT(4mg)と前記化学式18で示されるSiPcTHSO(0.04mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0161】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0162】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つF8BTマトリックス中にSiPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子37の水分散液を得た。
【0163】
(輝度比較)
ポリマーナノ微粒子37及びQD565を同一PVA(ポリビニルアルコール)film内に分散させ、蛍光顕微鏡により観察した。その際、観察にはそれぞれの粒子しか観察できないフィルターを用い同一箇所で、別々に蛍光像を取得した。その結果を図11、図12に示した。
【0164】
また、ポリマーナノ微粒子37及びQD565の輝度分布をヒストグラム化し、比較した結果を図13に示した。以上の結果から、ポリマーナノ微粒子37がQD565よりも大きな輝度を示すことが確認できた。
【0165】
<実施例38>
(ポリマーナノ微粒子38とQDの輝度比較)
本発明のポリマーナノ微粒子38、及びQDを用いて輝度比較を行った。評価に用いたポリマーナノ微粒子38は、以下の合成例に従って合成した。また、QDとして、実施例37と同様にQD565を使用した。
【0166】
(ポリマーナノ微粒子38の合成例)
前記化学式10で示されるADS106RE(4mg)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.04mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0167】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0168】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つADS106RE中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子38の水分散液を得た。また、ポリマーナノ微粒子38のTEM写真を図14に示した。
【0169】
(輝度比較)
実施例37と同様に、ポリマーナノ微粒子38及びQD565を同一PVA film内に分散させ、蛍光顕微鏡により観察した。その際、観察にはそれぞれの粒子しか観察できないフィルターを用い同一箇所で、別々に蛍光像を取得した。その結果を図15、図16に示した。
【0170】
また、ポリマーナノ微粒子38及びQD565の輝度分布をヒストグラム化し、比較した結果を図17に示した。以上の結果から、ポリマーナノ微粒子38がQD565よりも大きな輝度を示すことが確認できた。
【0171】
<実施例39>
(ポリマーナノ微粒子の分散安定性評価)
本発明のポリマーナノ微粒子18、39、40、及び非特許文献3の方法で得たポリマーナノ微粒子41を用いて、分散安定性に関する評価を行った。評価に用いたポリマーナノ微粒子39から41は以下の合成例に従って合成した。また、ポリマーナノ微粒子18は実施例18に従って合成した。
【0172】
(ポリマーナノ微粒子39の合成例)
前記化学式10で示されるADS106RE(0.4mg)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.04mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0173】
次に、DTACを溶解した水溶液(0.70重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0174】
次に、前記エマルジョンを60℃で30分間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がDTACで保護され、且つADS106REマトリックス中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子39の水分散液を得た。
【0175】
(ポリマーナノ微粒子40の合成例)
前記化学式10で示されるADS106RE(0.4mg)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.04mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0176】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0177】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つADS106RE中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子40の水分散液を得た。
【0178】
(ポリマーナノ微粒子41の合成例)
前記化学式10で示されるADS106RE(0.08mg)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.004mg)をTHF(2g)に溶解させて、THF溶液を調製した。
【0179】
次に、超純水(8g)に、前記THF溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理した。
【0180】
次に、この溶液を70℃で30分間加熱し、分散質からTHFを留去することによって、ADS106RE中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子41の水分散液を得た。
【0181】
(分散安定性評価1)
前記ポリマーナノ微粒子39、40、41の粒径を動的光散乱解析装置で分析した。粒径を測定した後、各ポリマーナノ微粒子の水分散液(1.8g)に対して、1.5mol/Lの塩化ナトリウム水溶液(0.2g)を加えた。一晩放置した後、再び動的光散乱解析装置で粒径を分析し、その結果を図18に示した。
【0182】
図18から、本発明のポリマーナノ微粒子39、40において、分散液を調製してから一晩放置後においても目立った凝集は観察されず、特に、ポリマーナノ微粒子40は、分散安定性に優れていることが確認された。一方、比較例のポリマーナノ微粒子41では、微粒子表面が界面活性剤で保護されていないことから、一晩放置後、大きな凝集体が生成し、本発明のポリマーナノ微粒子39、40と比較して分散安定性に劣ることが確認された。
【0183】
(分散安定性評価2)
前記ポリマーナノ微粒子18、40、41の粒径を動的光散乱解析装置で分析した。粒径を測定した後、各ポリマーナノ微粒子の水分散液(1.8g)に対して、リン酸緩衝液(PBS、0.2g)およびウシ胎児血清(FBS、0.2g)を加えた。室温で一晩放置した後、再び動的光散乱解析装置で粒径を分析し、その結果を図19〜21に示した。
【0184】
図19〜21より、本発明のポリマーナノ微粒子18、40において、分散液を調製してから一晩放置後においてもリン酸緩衝液およびウシ胎児血清中で目立った凝集は観察されず、分散安定性に優れていることが確認された。一方、比較例のポリマーナノ微粒子41では、微粒子表面が界面活性剤で保護されていないことから、一晩放置後、リン酸緩衝液中で大きな凝集体が生成し、本発明のポリマーナノ微粒子18、40と比較して分散安定性に劣ることが確認された。
【0185】
次に、第二の本発明に関して、実施例を用いて説明する。
【0186】
<実施例40>
(ポリマーナノ微粒子42の合成)
PS(4mg、SCIENTIFIC POLYMER PRODUCTS製、分子量22,000)、前記化学式18で示されるSiPcTHSO(0.756mg、Aldrich製)、前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.042mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0187】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1.5重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0188】
次に、前記エマルジョンを40℃で2時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つPS中にSiPcTHSOとSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子42の水分散液を得た。また、ポリマーナノ微粒子42のTEM写真を図22に示した。得られたポリマーナノ微粒子42の粒径を透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径は66.9nmであった。
【0189】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置を用いて、前記ポリマーナノ微粒子42の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図23に示した。
【0190】
ポリマーナノ微粒子42の水分散液に600nmの励起光を照射すると、SiPcTHSOの蛍光が大きく減少し、且つ780nmのSiNPcTHSOの蛍光発光が見られたことから、SiPcTHSOからSiNPcTHSOへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表3に示した。
【0191】
(輝度比較)
ポリマーナノ微粒子42またはQD800を分散させたPVA filmを別々のスライドガラス上に作製し、それぞれ蛍光顕微鏡により観察した。その際、観察には共通の励起フィルター、ダイクロイックミラー、蛍光フィルターを用い、別々に蛍光像を取得した。その結果を図24、図25に示した。また、1粒子当たりの吸光係数、蛍光量子収率、蛍光強度を表2に示した。
【0192】
更に、ポリマーナノ微粒子42またはQD800の輝度分布をヒストグラム化し、比較した結果を図26に示した。以上の結果から、ポリマーナノ微粒子42がQD800よりも大きな輝度を示すことが確認できた。
【0193】
【表2】
【0194】
(分散安定性評価)
SiPcTHSO及びSiNPcTHSOを含まないこと以外は、実施例40と同様にして、PSのみからなるポリマーナノ微粒子43を作製し、その粒径を動的光散乱解析装置で分析した。粒径を測定した後、ポリマーナノ微粒子43の水分散液(0.9g)に対して、リン酸緩衝液(PBS、0.1g)またはウシ胎児血清(FBS、0.1g)を加えた。室温で一晩放置した後、再び動的光散乱解析装置で粒径を分析し、その結果を図27に示した。
【0195】
図27より、ポリマーナノ微粒子43において、分散液を調製してから一晩放置後においてもリン酸緩衝液およびウシ胎児血清中で目立った凝集は観察されず、分散安定性に優れていることが確認された。
【0196】
(ヌードマウスのin vivo蛍光イメージング)
前記ポリマーナノ微粒子42の水分散液をPBSで4倍に希釈し、滅菌済みの限外濾過フィルター(0.22μm径)で処理を行った後、ヌードマウス(BALB/c−nu/nu、9週齢、メス)の尾静脈から0.2ml投与した。投与してから15分、3時間、1日、2日、3日後に蛍光イメージング装置(Xenogen製、IVIS200)でヌードマウスの蛍光像を撮影した。その結果を図28に示した。ヌードマウスの体内から強い蛍光が検出され、in vivo蛍光イメージングできることが確認できた。
【0197】
<実施例41>
(ポリマーナノ微粒子44の合成)
実施例40のSiNPcTHSOの使用量を0.042mgから0.0084mgに替えた以外は、実施例40と同様にして、ポリマーナノ微粒子44の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表3に示した。
【0198】
<実施例42>
(ポリマーナノ微粒子45の合成)
実施例40のSiNPcTHSOの使用量を0.042mgから0.021mgに替えた以外は、実施例40と同様にして、ポリマーナノ微粒子45の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表3に示した。
【0199】
<実施例43>
(ポリマーナノ微粒子46の合成)
実施例40のSiNPcTHSOの使用量を0.042mgから0.084mgに替えた以外は、実施例40と同様にして、ポリマーナノ微粒子46の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表3に示した。
【0200】
<実施例44>
(ポリマーナノ微粒子47の合成)
実施例40のSiNPcTHSOの使用量を0.042mgから0.14mgに替えた以外は、実施例40と同様にして、ポリマーナノ微粒子47の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表3に示した。
【0201】
【表3】
【0202】
<実施例45>
(ポリマーナノ微粒子48の合成例)
特許文献1に開示されている方法に従って、ポリマーナノ微粒子48を合成した。
【0203】
攪拌中のLatex溶液(0.6mL,4%w/v:Interfacial Dynamics Corp. Inc.)にDMF(1.33mL)を5分かけて滴下し、更に30分間攪拌してLatexを膨潤させた。続いて、色素(溶液全量 (2mL)に対してSiPcTHSO 0.668mg、SiNPcTHSO 0.2mg)を溶解させたDMF(0.07mL)を5分かけて滴下し、更に30分間攪拌した。最後に冷蔵庫内(約7°C)で15時間透析を行い、DMFを除去してポリマーナノ微粒子48を得た。
【0204】
(ポリマーナノ微粒子のFRET効率比較)
特許文献1に開示されている方法に従って、SiPcTHSOのみ、SiNPcTHSOのみ、SiPcTHSOとSiNPcTHSOを含有したポリマーナノ微粒子を作製し蛍光を測定した。図29はその規格化した蛍光スペクトルである。SiPcTHSOとSiNPcTHSOを含有したポリマーナノ微粒子48は、SiPcTHSOの蛍光が消光し、SiNPcTHSOの蛍光が観察された。
【0205】
本発明のポリマーナノ微粒子42、及び特許文献1に開示されている製造方法で得たポリマーナノ微粒子48を用いて、FRET効率に関する比較を行った。その結果、ポリマーナノ微粒子48のFRET効率は32.3%であり、本発明のポリマーナノ微粒子42(FRET効率96.4%)の方が優れていることが確認された。
【0206】
(ポリマーナノ微粒子の蛍光強度比較)
本発明のポリマーナノ微粒子と特許文献1に開示されているポリマーナノ微粒子のポリマー濃度が同程度(0.0089%wv-1)になるように調製して得られた微粒子をそれぞれポリマーナノ微粒子49、ポリマーナノ微粒子50とした。それらの蛍光強度を比較し、その結果を図30に示した。781nmにおける蛍光強度はポリマーナノ微粒子49が2243、ポリマーナノ微粒子50が19であり、ポリマーナノ微粒子49の蛍光強度の方が100倍以上大きいことが確認された。
【0207】
また、吸光度からポリマーに対する色素濃度を計算すると、ポリマーナノ微粒子49ではSiPcTHSOが2.7wt%、SiNPcTHSOが0.3wt%含有していた。これに対して、ポリマーナノ微粒子50ではSiPcTHSOが0.054wt%、SiNPcTHSOが0.013wt%であった。
【0208】
更に1粒子当たりの色素含有量は、ポリマーナノ微粒子49ではSiPcTHSOが3800個、SiNPcTHSOが400個であるのに対して、ポリマーナノ微粒子50はSiPcTHSOが150個、SiNPcTHSOが30個となった。これらのことから、特許文献1に開示されている製造方法ではポリマー粒子内にドナー色素、アクセプター色素を効率的に内包させることは困難であることが分かった。また、SiPcTHSO、SiNPcTHSOはDMFに溶け難く、これ以上の濃度で仕込むのは難しいと考えられる。以上の結果を表4にまとめた。
【0209】
【表4】
【符号の説明】
【0210】
1 ポリマーナノ微粒子
2 蛍光性ポリマー
3 蛍光色素(アクセプター)
4 界面活性剤
5 蛍光色素(ドナー)
6 ポリマー
7 有機溶媒
8 界面活性剤を有する水溶液
9 エマルジョン
10 ポリマーナノ微粒子
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光共鳴エネルギー移動で蛍光を発光するポリマーナノ微粒子、及び、前記ポリマーナノ微粒子を用いた光分子イメージング用造影剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な産業分野への応用を指向して、ポリマーナノ微粒子に関する研究開発が盛んに行われており、中でも医薬、診断薬等、医療・診断分野への応用が加速している。特に最近では、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET:Fluorescence Resonance Energy Transfer、以降「FRET」と記載する)を利用したポリマーナノ微粒子が光分子イメージング用造影剤として注目されつつある。
【0003】
FRETで蛍光を発光するポリマーナノ微粒子として、非特許文献1には、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)で表面保護されたポリフルオレンナノ微粒子の表面に、カチオン性蛍光色素を静電的に吸着させて固定化したポリマーナノ微粒子に関する技術が開示されている。そこでは、ポリフルオレン(PF2/6)を光励起することによって、FRETでカチオン性蛍光色素(ローダミン6G)から蛍光が発光すると報告されている。
【0004】
一方、非特許文献2には、2種類の異なるポリマーから成るポリマーブレンドナノ微粒子を得る技術が開示されている。具体的には、2種類の異なる蛍光性ポリマー(PF2/6、m−LPPP)を溶解したクロロホルムをSDS水溶液と混合した後、超音波照射によって形成したエマルジョンを加温してクロロホルムを除去することにより得られることが開示されている。そこでは、PF2/6を光励起することによって、FRETでm−LPPPから蛍光が発光すると報告されている。
【0005】
更に、非特許文献3には、蛍光性ポリマーのマトリックス中に蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子を得る技術が開示されている。具体的には、まず、蛍光性ポリマー(PDHF)と蛍光色素(クマリン6)を溶解したTHF(テトラヒドロフラン)溶液を脱塩水中に超音波照射しながら注入する。続いて、得られたサスペンションを0.2μmのメンブランフィルターに通した後、THFを減圧留去することで得ることが出来る。そこでは、PDHFを光励起することによって、FRETでクマリン6から蛍光が発光すると報告されている。
【0006】
特許文献1では、スルホン酸(又はカルボン酸)表面のポリスチレンラテックス粒子をTHF(又はDMF)で膨潤し、1種類又は複数の有機色素を取込ませることで、当該粒子中に有機色素が分散したポリマーナノ微粒子を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5763189号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】"Macromol.Rapid.Commun."、2006,27,200から202頁
【非特許文献2】"Nature Materials",2003,2,408から412頁
【非特許文献3】"J.Phys.Chem.C,2008、112,1772から1781頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1において、ポリフルオレン(PF2/6)を光励起することによって、FRETでカチオン性蛍光色素(ローダミン6G)から蛍光が発光すると報告されているが、そのFRET効率は高くない。
【0010】
また、非特許文献1のポリマーナノ微粒子では、微粒子表面に静電吸着させたカチオン性蛍光色素は、生理食塩水のような塩を含有する水溶液中において脱着する恐れがあり、その結果、FRET効率の低下を招く恐れが考えられる。
【0011】
一方、非特許文献2においては、PF2/6を光励起することによって、FRETでm−LPPPから蛍光が発光すると報告されているが、FRET効率に関する明確な記載はなされていない。
【0012】
また、非特許文献2のポリマーナノ微粒子では、微粒子内に2種類の異なる蛍光性ポリマーを内包しているが、このように異なるポリマーを使用する場合、相溶性の問題、即ち、相分離の可能性があり、その結果、FRET効率の低下を招く恐れが考えられる。
【0013】
一方、非特許文献3においては、微粒子表面が界面活性剤で保護されていないことから、生理食塩水のような塩を含有する水溶液中において、ポリマーナノ微粒子の凝集が懸念される。
【0014】
一方、特許文献1においては、微粒子内にドナー色素、アクセプター色素を仕込み比通りに内包させることは困難であり、色素の仕込み比にバラツキが生じ易く、FRET効率の低下や蛍光強度の低下を招く恐れが考えられる。
【0015】
本発明は、このような背景技術に鑑みてなされたものであり、FRET効率が優れ、且つ分散性に優れたポリマーナノ微粒子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のポリマーナノ微粒子は、蛍光性ポリマーのマトリックス中に蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子であって、該微粒子表面が界面活性剤で保護され、前記蛍光性ポリマーと前記蛍光色素間のFRETで蛍光を発光することを特徴とする。
【0017】
また、別の本発明のポリマーナノ微粒子は、ポリマーのマトリックス中に2種類の異なる蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子であって、該微粒子表面が界面活性剤で保護され、前記2種類の異なる蛍光色素間のFRETで蛍光を発光することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蛍光性ポリマーのマトリックス中に蛍光色素が分散した構造を有することから、従来技術に比べてFRET効率の優れたポリマーナノ微粒子を提供することができる。
【0019】
また、別の本発明によれば、ポリマーのマトリックス中に2種類の異なる蛍光色素が分散した構造を有することから、従来技術に比べてFRET効率の優れたポリマーナノ微粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一の本発明に係るポリマーナノ微粒子の構造を示す概略図である。
【図2】第二の本発明に係るポリマーナノ微粒子の構造を示す概略図である。
【図3】第一の本発明に係るポリマーナノ微粒子を製造する工程の一例を示す図である。
【図4】第二の本発明に係るポリマーナノ微粒子を製造する工程の一例を示す図である。
【図5】実施例1におけるポリマーナノ微粒子1のFRET特性を示すグラフである。
【図6】実施例2におけるポリマーナノ微粒子2のFRET特性を示すグラフである。
【図7】実施例8におけるポリマーナノ微粒子8のFRET特性を示すグラフである。
【図8】実施例12におけるポリマーナノ微粒子12のFRET特性を示すグラフである。
【図9】実施例18におけるポリマーナノ微粒子18のFRET特性を示すグラフである。
【図10】実施例19におけるポリマーナノ微粒子19のTEM写真である。
【図11】実施例37におけるポリマーナノ微粒子37の蛍光像である。
【図12】実施例37におけるQD565の蛍光像である。
【図13】実施例37におけるポリマーナノ微粒子37とQD565の輝度ヒストグラムである。
【図14】実施例38におけるポリマーナノ微粒子38のTEM写真である。
【図15】実施例38におけるポリマーナノ微粒子38の蛍光像である。
【図16】実施例38におけるQD565の蛍光像である。
【図17】実施例38におけるポリマーナノ微粒子38とQD565の輝度ヒストグラムである。
【図18】塩化ナトリウム水溶液中におけるポリマーナノ微粒子39、40、41の粒径分布を示すグラフである。
【図19】PBSおよびFBS中におけるポリマーナノ微粒子18の粒径分布を示すグラフである。
【図20】PBSおよびFBS中におけるポリマーナノ微粒子40の粒径分布を示すグラフである。
【図21】PBSおよびFBS中におけるポリマーナノ微粒子41の粒径分布を示すグラフである。
【図22】実施例40におけるポリマーナノ微粒子42のTEM写真である。
【図23】実施例40におけるポリマーナノ微粒子42のFRET特性を示すグラフである。
【図24】実施例40におけるポリマーナノ微粒子42の蛍光像である。
【図25】実施例40におけるQD800の蛍光像である。
【図26】実施例40におけるポリマーナノ微粒子42とQD800の輝度ヒストグラムである。
【図27】PBSおよびFBS中におけるポリマーナノ微粒子43の粒径分布を示すグラフである。
【図28】実施例40におけるポリマーナノ微粒子42を投与したヌードマウスの蛍光像である。
【図29】特許文献1に開示の方法に従って合成したポリマーナノ微粒子の規格化した蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図30】ポリマーナノ微粒子49、50の蛍光強度を比較したグラフである。
【図31】実施例18におけるポリマーナノ微粒子18を投与したヌードマウスの蛍光像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
(ポリマーナノ微粒子)
第一の本発明は、図1に示すように蛍光性ポリマー2のマトリックス中に蛍光色素(アクセプター)3が分散したポリマーナノ微粒子1であり、界面活性剤4がポリマーナノ微粒子1の表面に存在する。
【0023】
また、第二の本発明は、図2に示すように、ポリマー6のマトリックス中に2種類の異なる蛍光色素3及び5が分散したポリマーナノ微粒子10であり、界面活性剤4がポリマーナノ微粒子10の表面に存在する。
【0024】
また、本発明のポリマーナノ微粒子の好ましい態様の一つは、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する蛍光色素と蛍光性ポリマーの組合せからなるFRETによって、生体透過性の優れた蛍光を発光することを特徴とする。
【0025】
また、別の本発明のポリマーナノ微粒子の好ましい態様の一つは、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する2種類の異なる蛍光色素(ドナー、アクセプター)の組合せからなるFRETによって、生体透過性の優れた蛍光を発光することを特徴とする。
【0026】
また、本発明のポリマーナノ微粒子は、該微粒子表面が界面活性剤で保護されていることから、生理食塩水のような塩を含む水溶液中においても優れた分散性を有することを特徴とする。
【0027】
ポリマーナノ微粒子は、蛍光性ポリマーと蛍光色素と界面活性剤とを有する。該蛍光色素は蛍光性ポリマーのマトリックス中に分散しており、該界面活性剤はポリマーナノ微粒子表面に存在する。
【0028】
本発明のポリマーナノ微粒子は、目的とする用途に対して平均粒径を制御することが可能であり、その平均粒径は10nm以上、200nm以下であることを特徴とする。
【0029】
(FRET)
FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer;蛍光共鳴エネルギー移動)とは、ドナーとなる蛍光分子の蛍光スペクトルとアクセプターとなる蛍光分子の吸収スペクトルに重なりを有する2種類の蛍光分子が、1から10nm以内に接近している状況下において、励起された蛍光分子(ドナー)の光エネルギーが別の蛍光分子(アクセプター)に移動して励起される現象のことである。FRETの強度は両分子間の距離の6乗に反比例し、距離と共に急速に減少する。2種類の蛍光分子として、蛍光性ポリマーと蛍光色素もしくは、異なる2種類の蛍光色素を用いることができる。
【0030】
(蛍光性ポリマー)
第一の本発明における蛍光性ポリマーとは、励起光によって励起された後、基底状態に戻る際に蛍光を発光するポリマーであり、また、その蛍光スペクトルが蛍光色素の吸収スペクトルとの重なりを有するポリマーであれば、特に限定されない。蛍光性ポリマーの一部として、以下のような共役ポリマーを挙げることができる。上記共役ポリマーの具体例としては、
化学式1で示されるF8BT:poly[2,1,3-benzothiadiazole-4,7-diyl(9,9-dioctyl-9H-fluorene-2,7-diyl)]、
化学式2で示されるMEH−PPV:poly(2-methoxy-5-(2'-ethyl-hexyloxy)-p-phenylene vinylene)、
化学式3で示されるP−1:copoly(2,3-diphenylthieno [3,4-b] pyrazine -alt- 9,9- didecylfluorene)、
化学式4で示されるP−2:copoly(thieno [3,4-b] pyrazine -alt- 9,9- didecylfluorene)、
化学式5で示されるPF11112:poly(9,9-bis(3,7,11-trimethyldodecyl) fluorene)、
化学式6で示されるm−LPPP:ladder-type poly(para-phenylene)、
化学式7で示されるPFB:poly(9,9-dioctylfluorene-co- N,N'- bis(4-butylphenyl)-N,N'- diphenyl-1,4-phenylenediamine)、
化学式8で示されるPF2/6:poly[9,9-bis(2-ethylhexyl)fluorene-2,7-diyl]、
化学式9で示されるADS104RE:poly[(2-methoxy-5-(3,7-dimethyl-octyloxy)-1,4- phenylenevinylene)end capped with DMP、
化学式10で示されるADS106RE:poly[9,9-di-(2-ethylhexyl)-fluorenyl-2,7-diyl] end capped with 2,5-diphenyl-1,2,4-oxadiazole、
化学式11で示されるADS300RE:poly[2,5-bis(3,7-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylene- vinylene]、
化学式12で示されるADS129BE:poly(9,9-dioctyfluorenyl-2,7-diyl)end capped with dimethylphenyl、
化学式13で示されるCDPDOF:copoly(2,3-diphenylthieno[3,4-b]pyrazine-alt-9,9- dioctylfluorene)、
化学式14で示されるCOTTOF:copoly(thienothiadiazole-alt-9,9-ioctylfluorene)(式中、X:Yは1:0〜0.1:1)、
化学式15で示されるCOBBOF:copoly(benzobisthiadiazole-alt-9,9-dioctylfluorene) (式中、X:Yは1:0〜0.1:1)等である。但し、本発明における蛍光性ポリマーとは上記に限定されるものではない。
【0031】
これらの蛍光性ポリマーの平均分子量は2000〜1000000であり、好ましくは10000〜600000のものを好適に利用できる。
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
【化15】
【0047】
(蛍光色素)
第一の本発明における蛍光色素とは、その吸収スペクトルが蛍光性ポリマーの蛍光スペクトルと重なりを持つ蛍光色素であれば、特に限定されないが、生体透過性の観点から、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する蛍光色素が好ましい。
【0048】
第二の本発明における2種類の異なる蛍光色素は、一方の蛍光色素の吸収スペクトルが他方の蛍光色素の蛍光スペクトルと重なりを持つ蛍光色素、即ち、ドナー、アクセプターの蛍光色素の組合せであれば、特に限定されない。ただし、生体透過性の観点から、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する蛍光色素が好ましい。なお、第二の本発明に係るポリマーナノ微粒子は、3種類以上の異なる蛍光色素を含んでいてもよい。
【0049】
これらの蛍光色素として、以下のような色素を挙げることができる。
化学式16で示されるDiD:1,1'-Dioctadecyl-3,3,3',3'-tetramethylindodicarbocyanine perchlorate、化学式17で示されるDiR:1;1'-Dioctadecyl-3;3;3';3'-tetramethylindotricarbocyanine iodide、DiI:1,1'-Dioctadecyl-3,3,3',3'-tetramethylindocarbocyanine perchlorate、ICG(インドシアニングリーン)等のシアニン系蛍光色素、化学式18で示されるSiPcTHSO:silicon phthalocycanine bis(trihexyl-silyloxide)、silicon 2,3,9,10,16,17,23,24- octakis (octyloxy) -29H,31H-phthalocycanine dihydroxide、silicon 2,9,16,23-tetra-tert- butyl-29H,31H- phthalocycanine dihydroxide、化学式19で示されるβ tetra (neopentyloxy) -29H, 31H- phthalocycanine、2,3,9,10,16,17,23,24-octa(4-tert-butylphenoxy) -29H,31H- phthalocycanine、β tetra (thiobuthoxy)-29H, 31H- phthalocycanine、1,4,8,11,15,18,22,25 octa ethoxy-zinc phthalocycanine等のフタロシアニン系蛍光色素、化学式20で示されるsilicon 2,3-naphthalocyanine dioctyloxide、silicon 2,3- naphthalocyanine dihydroxide、silicon 2,3-naphthalocyanine bis(trihexylsilyloxide)等のナフタロシアニン系蛍光色素、hexapropyl -3,6-diphenyl tetraazaporphyrin、5,10,15,20-Tetraphenyl-22H, 24H-prophyrin等のポルフィリン系蛍光色素、β tetra(tert-buthyl)- tetra pyrazino porphyrazin等のポルフィラジン系蛍光色素、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミンX、テトラメチルロ−ダミン等のキサンテン系蛍光色素、メチレンブルー等のチアジン系蛍光色素、クマリン6等のクマリン系蛍光色素、オキサジン系蛍光色素、ポリメチン系蛍光色素、ポリフェニル系蛍光色素、スチルベン系蛍光色素、オキサゾール系蛍光色素、オキサジアゾール系蛍光色素、ペリレン系蛍光色素、アクリジン系蛍光色素、BODIPY系蛍光色素等の蛍光色素である。但し、本発明における蛍光色素とは上記に限定されるものではない。
【0050】
【化16】
【0051】
【化17】
【0052】
【化18】
【0053】
【化19】
【0054】
【化20】
【0055】
(ポリマー)
第二の本発明におけるポリマーは、後述する有機溶媒に溶解するポリマーであれば、特に限定されないが、例えば、PS:Polystyrene(ポリスチレン)、PMMA(Poly(methyl methacrylate):ポリメタクリル酸メチル)、PBMA(Poly(butyl methacrylate):ポリメタクリル酸ブチル)、P(BMA−co−MMA)(Poly(butyl methacrylate-co-methyl methacrylate):ポリ(メタクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)共重合体)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオルソエステル、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ酸無水物、デキストラン誘導体、セルロース誘導体等のポリマーを挙げることができる。
【0056】
(ポリマーナノ微粒子の製造方法)
第一の本発明におけるポリマーナノ微粒子の製造方法について説明する。
【0057】
第一の本発明におけるポリマーナノ微粒子の製造方法は、
蛍光性ポリマーと蛍光色素を含有する第一液体を、界面活性剤を含有する第二液体に加えて混合液を得る工程と、前記混合液からエマルジョンを得る工程と、前記エマルジョンの分散質から前記第一液体を留去する工程と、を有する。即ち、本発明のポリマーナノ微粒子を得る方法としては、ミニエマルジョン法を挙げることができるが、上記に限定されるものではない。
【0058】
次に第二の発明におけるポリマーナノ微粒子の製造方法について説明する。
【0059】
第二の本発明におけるポリマーナノ微粒子の製造方法は、
2種類の異なる蛍光色素及びポリマーを含有する第一液体を、界面活性剤を含有する第二液体に加えて混合液を得る工程と、前記混合液からエマルジョンを得る工程と、前記エマルジョンの分散質から前記第一液体を留去する工程と、を有する。即ち、本発明のポリマーナノ微粒子を得る方法としては、ミニエマルジョン法を挙げることができるが、上記に限定されるものではない。
【0060】
(第一液体)
第一液体とは有機溶媒であり、水への溶解性がないか又は溶解性が小さく、且つ前述の蛍光性ポリマー、ポリマー、蛍光色素を溶解する有機溶媒であればいかなる溶媒も適用可能であるが、揮発性の有機溶媒であることが好ましい。
【0061】
このような有機溶媒の具体例として、次の溶媒が挙げられる。ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、エーテル類(エチルエーテル、イソブチルエーテル等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)等。これらを単独で用いても良いし、あるいは2種類以上を適宜の割合で混合して用いることもできる。但し、第一液体である有機溶媒は上記に限定されるものではない。
【0062】
また、第一液体における蛍光性ポリマーおよび蛍光色素の濃度はこれらが溶解する範囲であれば特に限定されないが、好ましい濃度として例えば、蛍光性ポリマーについては0.5〜100mg/mlとすることができる。また、蛍光色素の好ましい濃度として、例えば0.0005〜1mg/mlとすることができる。
【0063】
また、第一液体における蛍光性ポリマーと蛍光色素との重量比は、好ましくは、1000:1〜4:1の範囲である。
【0064】
また、第一液体におけるポリマーおよび2種類の異なる蛍光色素の濃度はこれらが溶解する範囲であれば特に限定されないが、好ましい濃度として、例えば、ポリマーについては0.5〜100mg/mlとすることができる。また、2種類の異なる蛍光色素の好ましい濃度としては、例えば0.0005〜5mg/mlとすることができる。
【0065】
また、第一液体におけるポリマーと2種類の異なる蛍光色素の総量との重量比は、好ましくは、1000:1〜4:1の範囲である。また、第一液体における2種類の異なる蛍光色素のうち、ドナー蛍光色素とアクセプター蛍光色素との重量比が1000:1〜0.1:1の範囲にあることが好ましい。
【0066】
(第二液体)
第二液体とは水または水溶液である。第一液体と混合した際にエマルジョンを安定化させることを目的として、第二液体に分散剤として界面活性剤をあらかじめ共存させることが好ましい。ただし、第一、第二液体を混合した分散液に界面活性剤を含ませることができれば、上記の方法に限定されるものではない。
【0067】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、以下の材料を使用することができる。
【0068】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、Tween85、Brij35、Brij58、Brij76、Brij98、Triton X−100、Triton X−114、TritonX−305、Triton N−101、Nonidet P−40、Igepol CO530、Igepol CO630、Igepol CO720、Igepol CO730等が挙げられる。
【0069】
また、アニオン性界面活性剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホネート、デシルベンゼンスルホネート、ウンデシルベンゼンスルホネート、トリデシルベンゼンスルホネート、ノニルベンゼンスルホネート並びにこれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等。
【0070】
また、カチオン性界面活性剤としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、塩化ヘキサデシルピリジニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。このうち好ましくは非イオン性界面活性剤である。
【0071】
また、第二液体に含まれる界面活性剤の濃度は、第一液体との混合比にも依るが、好ましい濃度として例えば、0.1mg/ml〜100mg/mlとすることができる。
【0072】
(エマルジョン)
エマルジョンとは、本発明の目的を達成可能な範囲において如何なる物性のエマルジョンも含めるものであるが、好ましくは1ピークの粒径分布を有し、且つ、平均粒径が10nm以上、200nm以下の単分散エマルジョンである。
【0073】
このようなエマルジョンは従来公知の乳化手法によって調製することが可能である。従来公知の方法とは、例えば、断続振とう法、プロペラ型攪拌機、タービン型攪拌機等のミキサーを利用する攪拌法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法等がある。これらの方法は、単独で用いることも、あるいは複数を組み合わせて用いることも可能である。また、エマルジョンは1段階の乳化によって調製しても良いし、多段階の乳化によって調製しても良い。但し、エマルジョンは、本発明の目的を達成できる範囲において上記手法に限定されない。
【0074】
エマルジョンは、第二液体に第一液体を加えて得られる混合液から調製される水中油(O/W)型のエマルジョンである。ここで、第一液体と第二液体の混合とは、第一液体と第二液体を空間的に隔離せずに互いに接触して存在させることであり、必ずしも互いに混和することを要さない。
【0075】
混合液における第一液体と第二液体との割合は、水中油(O/W)型のエマルジョンを形成することができれば特に限定はないが、好ましくは、第一液体と第二液体との重量比が、1:2.5〜1:12.5となる範囲で混合することが好ましい。
【0076】
(留去)
留去とは、エマルジョンの分散質から第一液体を除去する操作である。即ち、蛍光性ポリマー、ポリマー、蛍光色素、有機溶媒から構成された分散質から有機溶媒を除去することである。
【0077】
留去は、従来知られる何れの方法でも実施可能であるが、加熱によって除去する方法、あるいはエバポレーター等の減圧装置を利用した方法を挙げることができる。加熱による除去の場合の加熱温度は、O/W型のエマルジョンを維持できれば特に限定されないが、好ましい温度は0℃から80℃の範囲である。但し、留去は、本発明の目的を達成できる範囲において上記手法に限定されない。
【0078】
第一の本発明におけるポリマーナノ微粒子1を製造する工程の一例を図3に示している。具体的には、以下の(1)から(3)の工程を経てポリマーナノ微粒子の水分散液を得られる。
(1)蛍光性ポリマー2と蛍光色素(アクセプター)3を含有する水に不溶または難溶の有機溶媒7を、界面活性剤4を含有する水溶液8に加えて混合液を得る工程。
(2)前記混合液を乳化することによりO/W型のエマルジョン9を得る工程。
(3)前記エマルジョン9の分散質から有機溶媒を留去する工程。
【0079】
また、第二の本発明におけるポリマーナノ微粒子10を製造する工程の一例を図4に示す。具体的には、以下の(1)から(3)の工程を経てポリマーナノ微粒子の水分散液を得られる。
(1)ポリマー6と2種類の異なる蛍光色素3(アクセプター)及び蛍光色素5(ドナー)を含有する水に不溶または難溶の有機溶媒を、界面活性剤4を含有する水溶液8に加えて混合液を得る工程。
(2)前記混合液を乳化することによりO/W型のエマルジョン11を得る工程。
(3)前記エマルジョン11の分散質から有機溶媒を留去する工程。
【0080】
(光分子イメージング用造影剤)
本発明におけるポリマーナノ微粒子は、微粒子内での蛍光性ポリマーと蛍光色素間のFRET、又は微粒子内での2種類の異なる蛍光色素間のFRETを利用して、光分子イメージング用造影剤として応用することができる。
【0081】
また、本発明におけるポリマーナノ微粒子は、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する蛍光色素と蛍光性ポリマーの組合せからなるFRETによって、生体透過性の優れた蛍光を発光することから、光分子イメージング用造影剤として好適である。
【0082】
また、本発明におけるポリマーナノ微粒子は、600nm以上、1000nm以下の近赤外波長域に蛍光発光を有する2種類の異なる蛍光色素の組合せからなるFRETによって、生体透過性の優れた蛍光を発光することから、光分子イメージング用造影剤として好適である。
【0083】
本発明における光分子イメージング用造影剤は、EPR(Enhanced Permeability and Retention:増強されたパーミアビリティーおよび保持)効果を利用して腫瘍部位にポリマーナノ微粒子を送達させることができる。腫瘍部位に到達した後、ポリマーナノ微粒子を光励起して、FRETに伴う蛍光発光を検出することによって腫瘍部位を可視化することができる。
【0084】
本発明のポリマーナノ微粒子は表面が界面活性剤で保護されていることから、光分子イメージング用造影剤として使用する際も、ポリマーナノ微粒子は水に分散させたものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を用いて更に詳細に本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、材料、組成条件、反応条件等、同様な機能、効果を有するポリマーナノ微粒子が得られる範囲で自由に変えることができる。
【0086】
まず、第一の本発明に関して詳細を説明する。
【0087】
<実施例1>
(ポリマーナノ微粒子1の合成)
前記化学式1で示されるF8BT(0.4mg、平均分子量10,000〜30,000、ADS製)と前記化学式16で示されるDiD(0.087mg、Biotium,Inc製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0088】
次に、Tween20(TCI製)を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した。その後、超音波分散機(Misonix,Inc製、Microson XL2000)で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0089】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つF8BT中にDiDが分散したポリマーナノ微粒子1の水分散液を得た。
【0090】
得られたポリマーナノ微粒子1の粒径を動的光散乱解析装置(大塚電子製、ELS-Z)で分析したところ、平均粒径は87.4nmであった。
【0091】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置(日立製、F−4500)を用いて、前記ポリマーナノ微粒子1の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図5に示した。
【0092】
ポリマーナノ微粒子1の水分散液に450nmの励起光を照射すると、F8BTの蛍光が大きく減少し、且つ680nmのDiDの蛍光発光が見られたことから、F8BTからDiDへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0093】
<実施例2>
(ポリマーナノ微粒子2の合成)
前記化学式2で示されるMEH−PPV(0.4mg、平均分子量40,000〜70,000、Aldrich製)とDiD(0.04mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0094】
次に、Tween20を溶解した水溶液(2重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0095】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つMEH−PPVマトリックス中にDiDが分散したポリマーナノ微粒子2の水分散液を得た。
【0096】
得られたポリマーナノ微粒子2の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は102.3nmであった。
【0097】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置を用いて、前記ポリマーナノ微粒子2の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図6に示した。
【0098】
ポリマーナノ微粒子2の水分散液に500nmの励起光を照射すると、MEH−PPVの蛍光が大きく減少し、且つ680nmのDiDの蛍光発光が見られたことから、MEH−PPVからDiDへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0099】
<実施例3>
(ポリマーナノ微粒子3の合成)
実施例2のDiDの使用量を0.04mgから0.004mgに替えた以外は、実施例2と同様にして、ポリマーナノ微粒子3の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子3の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は59.3nmであった。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0100】
<実施例4>
(ポリマーナノ微粒子4の合成)
実施例2のDiDの使用量を0.04mgから0.0004mgに替えた以外は、実施例2と同様にして、ポリマーナノ微粒子4の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子4の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は90.1nmであった。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0101】
<実施例5>
(ポリマーナノ微粒子5の合成)
MEH−PPV(0.4mg)とDiD(0.046mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0102】
次に、DTAC(塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、Alfa Aesar製)を溶解した水溶液(0.70重量%、2g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とした。この混合液を2時間攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0103】
次に、前記エマルジョンを60℃で30分間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がDTACで保護され、且つMEH−PPVマトリックス中にDiDが分散したポリマーナノ微粒子5の水分散液を得た。
【0104】
得られたポリマーナノ微粒子5の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は42.0nmであった。また、FRET特性に関しては、その結果を表1に示した。
【0105】
<実施例6>
(ポリマーナノ微粒子6の合成)
実施例5のDiDの使用量を0.046mgから0.0046mgに替えた以外は、実施例5と同様にして、ポリマーナノ微粒子6の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子6の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は51.7nmであった。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0106】
<実施例7>
(ポリマーナノ微粒子7の合成)
実施例5のDiDの使用量を0.046mgから0.00046mgに替えた以外は、実施例5と同様にして、ポリマーナノ微粒子7の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子7の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は19.7nmであった。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0107】
<実施例8>
(ポリマーナノ微粒子8の合成)
前記化学式1で示されるF8BT(0.4mg)と前記化学式18で示されるSiPcTHSO(0.04mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0108】
次に、DTACを溶解した水溶液(0.70重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0109】
次に、前記エマルジョンを60℃で30分間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がDTACで保護され、且つF8BTマトリックス中にSiPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子8の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子8の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は34.3nmであった。
【0110】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置を用いて、前記ポリマーナノ微粒子8の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図7に示した。
【0111】
ポリマーナノ微粒子8の水分散液に450nmの励起光を照射すると、F8BTの蛍光が大きく減少し、且つ669.8nmのSiPcTHSOの蛍光発光が見られたことから、F8BTからSiPcTHSOへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0112】
<実施例9>
(ポリマーナノ微粒子9の合成)
実施例8のSiPcTHSOの使用量を0.04mgから0.02mgに替えた以外は、実施例8と同様にして、ポリマーナノ微粒子9の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0113】
<実施例10>
(ポリマーナノ微粒子10の合成)
実施例8のSiPcTHSOの使用量を0.04mgから0.01mgに替えた以外は、実施例8と同様にして、ポリマーナノ微粒子10の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0114】
<実施例11>
(ポリマーナノ微粒子11の合成)
実施例8のSiPcTHSOの使用量を0.04mgから0.004mgに替えた以外は、実施例8と同様にして、ポリマーナノ微粒子11の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0115】
<実施例12>
(ポリマーナノ微粒子12の合成)
前記化学式10で示されるADS106RE(0.4mg、平均分子量50,000〜200,000、ADS製)と化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.04mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0116】
【化21】
【0117】
次に、DTAC(塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、Alfa Aesar製)を溶解した水溶液(0.70重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とした。この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0118】
次に、前記エマルジョンを60℃で30分間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がDTACで保護され、且つADS106REマトリックス中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子12の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子12の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は25.9nmであった。
【0119】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置(日立製、F−4500)を用いて、前記ポリマーナノ微粒子12の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図8に示した。
【0120】
ポリマーナノ微粒子12の水分散液に450nmの励起光を照射すると、ADS106REの蛍光が大きく減少し、且つ777.0nmのSiNPcTHSOの蛍光発光が見られた。このことから、ADS106REからSiNPcTHSOへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0121】
<実施例13>
(ポリマーナノ微粒子13の合成)
実施例12のSiNPcTHSOの使用量を0.04mgから0.03mgに替えた以外は、実施例12と同様にして、ポリマーナノ微粒子13の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0122】
<実施例14>
(ポリマーナノ微粒子14の合成)
実施例12のSiNPcTHSOの使用量を0.04mgから0.02mgに替えた以外は、実施例12と同様にして、ポリマーナノ微粒子14の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0123】
<実施例15>
(ポリマーナノ微粒子15の合成)
実施例12のSiNPcTHSOの使用量を0.04mgから0.01mgに替えた以外は、実施例12と同様にして、ポリマーナノ微粒子15の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0124】
<実施例16>
(ポリマーナノ微粒子16の合成)
実施例12のSiNPcTHSOの使用量を0.04mgから0.004mgに替えた以外は、実施例12と同様にして、ポリマーナノ微粒子16の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0125】
<実施例17>
(ポリマーナノ微粒子17の合成)
実施例12のSiNPcTHSOの使用量を0.04mgから0.002mgに替えた以外は、実施例12と同様にして、ポリマーナノ微粒子17の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0126】
<実施例18>
(ポリマーナノ微粒子18の合成)
前記化学式13で示されるCDPDOF(4mg、平均分子量18,000(GPC(Gel Permeation Chromatography)によるポリスチレン換算値)、筆者合成品)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.1mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0127】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0128】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つCDPDOF中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子18の水分散液を得た。得られたポリマーナノ微粒子18の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は78.6nmであった。
【0129】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置(日本分光製、FP−6600)を用いて、前記ポリマーナノ微粒子18の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図9に示した。
【0130】
ポリマーナノ微粒子18の水分散液に600nmの励起光を照射すると、CDPDOFの蛍光が大きく減少し、且つ780nmのSiNPcTHSOの蛍光発光が見られた。このことから、CDPDOFからSiNPcTHSOへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0131】
(ヌードマウスのin vivo蛍光イメージング)
前記ポリマーナノ微粒子18の水分散液を滅菌済みの限外濾過フィルターで2倍に濃縮した。濃縮した水分散液について、滅菌済みのシリンジフィルター(0.20μm径)で処理を行った後、PBSで2倍に希釈し、ヌードマウス(BALB/c−nu/nu、9週齢、メス)の尾静脈から0.2ml投与した。投与してから15分、3時間、1日、2日、3日後に蛍光イメージング装置(Xenogen製、IVIS200)でヌードマウスの蛍光像を撮影した。その結果を図31に示した。ヌードマウスの体内から強い蛍光が検出され、in vivo蛍光イメージングできることが確認できた。
【0132】
<実施例19>
(ポリマーナノ微粒子19の合成)
実施例18のSiNPcTHSOの使用量を0.1mgから0.04mgに替えた以外は、実施例18と同様にして、ポリマーナノ微粒子19の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。また、ポリマーナノ微粒子19のTEM写真を図10に示した。
【0133】
<実施例20>
(ポリマーナノ微粒子20の合成)
実施例18のSiNPcTHSOの使用量を0.1mgから0.17mgに替えた以外は、実施例18と同様にして、ポリマーナノ微粒子20の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0134】
<実施例21>
(ポリマーナノ微粒子21の合成)
実施例18のSiNPcHSOの使用量を0.1mgから0.3mgに替えた以外は、実施例18と同様にして、ポリマーナノ微粒子21の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0135】
<実施例22>
(ポリマーナノ微粒子22の合成)
実施例19のCDPDOFの使用量を4mgから0.4mgに替えた以外は、実施例19と同様にして、ポリマーナノ微粒子22の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0136】
<実施例23>
(ポリマーナノ微粒子23の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.01mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子23の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0137】
<実施例24>
(ポリマーナノ微粒子24の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.013mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子24の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0138】
<実施例25>
(ポリマーナノ微粒子25の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.017mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子25の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0139】
<実施例26>
(ポリマーナノ微粒子26の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.02mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子26の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0140】
<実施例27>
(ポリマーナノ微粒子27の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.03mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子27の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0141】
<実施例28>
(ポリマーナノ微粒子28の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.054mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子28の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0142】
<実施例29>
(ポリマーナノ微粒子29の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.08mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子29の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0143】
<実施例30>
(ポリマーナノ微粒子30の合成)
実施例22のSiNPcHSOの使用量を0.04mgから0.2mgに替えた以外は、実施例22と同様にして、ポリマーナノ微粒子30の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0144】
<実施例31>
(ポリマーナノ微粒子31の合成)
前記化学式13で示されるCDPDOF(0.4mg、筆者合成品)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.004mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0145】
次に、DTAC(塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、Alfa Aesar製)を溶解した水溶液(0.70重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とした。この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルションを調製した。
【0146】
次に、前記エマルションを60℃で30分間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がDTACで保護され、且つCDPDOFマトリックス中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子31の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0147】
<実施例32>
(ポリマーナノ微粒子32の合成)
実施例31のSiNPcTHSOの使用量を0.004mgから0.01mgに替えた以外は、実施例31と同様にして、ポリマーナノ微粒子32の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0148】
<実施例33>
(ポリマーナノ微粒子33の合成)
実施例31のSiNPcTHSOの使用量を0.004mgから0.03mgに替えた以外は、実施例31と同様にして、ポリマーナノ微粒子33の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0149】
<実施例34>
(ポリマーナノ微粒子34の合成)
前記化学式10で示されるADS106RE(0.4mg)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.03mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0150】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0151】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つADS106RE中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子34の水分散液を得た。
【0152】
得られたポリマーナノ微粒子34の粒径を動的光散乱解析装置で分析したところ、平均粒径は73.1nmであった。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0153】
<実施例35>
(ポリマーナノ微粒子35の合成)
実施例34のSiNPcTHSOの使用量を0.03mgから0.01mgに替えた以外は、実施例34と同様にして、ポリマーナノ微粒子35の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0154】
<実施例36>
(ポリマーナノ微粒子36の合成)
実施例34のSiNPcTHSOの使用量を0.03mgから0.02mgに替えた以外は、実施例34と同様にして、ポリマーナノ微粒子36の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表1に示した。
【0155】
<比較例1>
非特許文献1で得られた微粒子を比較例1とし、実施例1から36で得られたポリマーナノ微粒子1から36、及び比較例1の微粒子のFRET効率を比較した。その結果を表1にまとめて示した。
【0156】
表1の結果から、本発明のポリマーナノ微粒子1〜36(ポリマーナノ微粒子23、及び31〜33は除く)のFRET効率が比較例1(非特許文献1)よりも優れていることが確認された。
【0157】
【表1−1】
【0158】
【表1−2】
【0159】
<実施例37>
(ポリマーナノ微粒子37とQD(量子ドット)の輝度比較)
本発明のポリマーナノ微粒子37、及びQDを用いて輝度比較を行った。評価に用いたポリマーナノ微粒子37は、以下の合成例に従って合成した。また、QDとして、QD565(invitrogen)を使用した。
【0160】
(ポリマーナノ微粒子37の合成例)
前記化学式1で示されるF8BT(4mg)と前記化学式18で示されるSiPcTHSO(0.04mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0161】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0162】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つF8BTマトリックス中にSiPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子37の水分散液を得た。
【0163】
(輝度比較)
ポリマーナノ微粒子37及びQD565を同一PVA(ポリビニルアルコール)film内に分散させ、蛍光顕微鏡により観察した。その際、観察にはそれぞれの粒子しか観察できないフィルターを用い同一箇所で、別々に蛍光像を取得した。その結果を図11、図12に示した。
【0164】
また、ポリマーナノ微粒子37及びQD565の輝度分布をヒストグラム化し、比較した結果を図13に示した。以上の結果から、ポリマーナノ微粒子37がQD565よりも大きな輝度を示すことが確認できた。
【0165】
<実施例38>
(ポリマーナノ微粒子38とQDの輝度比較)
本発明のポリマーナノ微粒子38、及びQDを用いて輝度比較を行った。評価に用いたポリマーナノ微粒子38は、以下の合成例に従って合成した。また、QDとして、実施例37と同様にQD565を使用した。
【0166】
(ポリマーナノ微粒子38の合成例)
前記化学式10で示されるADS106RE(4mg)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.04mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0167】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0168】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つADS106RE中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子38の水分散液を得た。また、ポリマーナノ微粒子38のTEM写真を図14に示した。
【0169】
(輝度比較)
実施例37と同様に、ポリマーナノ微粒子38及びQD565を同一PVA film内に分散させ、蛍光顕微鏡により観察した。その際、観察にはそれぞれの粒子しか観察できないフィルターを用い同一箇所で、別々に蛍光像を取得した。その結果を図15、図16に示した。
【0170】
また、ポリマーナノ微粒子38及びQD565の輝度分布をヒストグラム化し、比較した結果を図17に示した。以上の結果から、ポリマーナノ微粒子38がQD565よりも大きな輝度を示すことが確認できた。
【0171】
<実施例39>
(ポリマーナノ微粒子の分散安定性評価)
本発明のポリマーナノ微粒子18、39、40、及び非特許文献3の方法で得たポリマーナノ微粒子41を用いて、分散安定性に関する評価を行った。評価に用いたポリマーナノ微粒子39から41は以下の合成例に従って合成した。また、ポリマーナノ微粒子18は実施例18に従って合成した。
【0172】
(ポリマーナノ微粒子39の合成例)
前記化学式10で示されるADS106RE(0.4mg)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.04mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0173】
次に、DTACを溶解した水溶液(0.70重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0174】
次に、前記エマルジョンを60℃で30分間加熱し、クロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がDTACで保護され、且つADS106REマトリックス中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子39の水分散液を得た。
【0175】
(ポリマーナノ微粒子40の合成例)
前記化学式10で示されるADS106RE(0.4mg)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.04mg)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0176】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0177】
次に、前記エマルジョンを40℃で1時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つADS106RE中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子40の水分散液を得た。
【0178】
(ポリマーナノ微粒子41の合成例)
前記化学式10で示されるADS106RE(0.08mg)と前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.004mg)をTHF(2g)に溶解させて、THF溶液を調製した。
【0179】
次に、超純水(8g)に、前記THF溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理した。
【0180】
次に、この溶液を70℃で30分間加熱し、分散質からTHFを留去することによって、ADS106RE中にSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子41の水分散液を得た。
【0181】
(分散安定性評価1)
前記ポリマーナノ微粒子39、40、41の粒径を動的光散乱解析装置で分析した。粒径を測定した後、各ポリマーナノ微粒子の水分散液(1.8g)に対して、1.5mol/Lの塩化ナトリウム水溶液(0.2g)を加えた。一晩放置した後、再び動的光散乱解析装置で粒径を分析し、その結果を図18に示した。
【0182】
図18から、本発明のポリマーナノ微粒子39、40において、分散液を調製してから一晩放置後においても目立った凝集は観察されず、特に、ポリマーナノ微粒子40は、分散安定性に優れていることが確認された。一方、比較例のポリマーナノ微粒子41では、微粒子表面が界面活性剤で保護されていないことから、一晩放置後、大きな凝集体が生成し、本発明のポリマーナノ微粒子39、40と比較して分散安定性に劣ることが確認された。
【0183】
(分散安定性評価2)
前記ポリマーナノ微粒子18、40、41の粒径を動的光散乱解析装置で分析した。粒径を測定した後、各ポリマーナノ微粒子の水分散液(1.8g)に対して、リン酸緩衝液(PBS、0.2g)およびウシ胎児血清(FBS、0.2g)を加えた。室温で一晩放置した後、再び動的光散乱解析装置で粒径を分析し、その結果を図19〜21に示した。
【0184】
図19〜21より、本発明のポリマーナノ微粒子18、40において、分散液を調製してから一晩放置後においてもリン酸緩衝液およびウシ胎児血清中で目立った凝集は観察されず、分散安定性に優れていることが確認された。一方、比較例のポリマーナノ微粒子41では、微粒子表面が界面活性剤で保護されていないことから、一晩放置後、リン酸緩衝液中で大きな凝集体が生成し、本発明のポリマーナノ微粒子18、40と比較して分散安定性に劣ることが確認された。
【0185】
次に、第二の本発明に関して、実施例を用いて説明する。
【0186】
<実施例40>
(ポリマーナノ微粒子42の合成)
PS(4mg、SCIENTIFIC POLYMER PRODUCTS製、分子量22,000)、前記化学式18で示されるSiPcTHSO(0.756mg、Aldrich製)、前記化学式21で示されるSiNPcTHSO(0.042mg、Aldrich製)をクロロホルム(0.8g)に溶解させて、クロロホルム溶液を調製した。
【0187】
次に、Tween20を溶解した水溶液(1.5重量%、10g)に、前記クロロホルム溶液を加えて混合液とし、この混合液を攪拌した後、超音波分散機で30秒間処理することによってO/W型のエマルジョンを調製した。
【0188】
次に、前記エマルジョンを40℃で2時間加熱し、分散質からクロロホルムを留去することによって、微粒子の表面がTween20で保護され、且つPS中にSiPcTHSOとSiNPcTHSOが分散したポリマーナノ微粒子42の水分散液を得た。また、ポリマーナノ微粒子42のTEM写真を図22に示した。得られたポリマーナノ微粒子42の粒径を透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径は66.9nmであった。
【0189】
(FRET特性評価)
蛍光分光測定装置を用いて、前記ポリマーナノ微粒子42の水分散液のFRET特性を評価した。その結果を図23に示した。
【0190】
ポリマーナノ微粒子42の水分散液に600nmの励起光を照射すると、SiPcTHSOの蛍光が大きく減少し、且つ780nmのSiNPcTHSOの蛍光発光が見られたことから、SiPcTHSOからSiNPcTHSOへのFRETが効率良く起こることが確認された。また、FRET効率に関しては、その結果を表3に示した。
【0191】
(輝度比較)
ポリマーナノ微粒子42またはQD800を分散させたPVA filmを別々のスライドガラス上に作製し、それぞれ蛍光顕微鏡により観察した。その際、観察には共通の励起フィルター、ダイクロイックミラー、蛍光フィルターを用い、別々に蛍光像を取得した。その結果を図24、図25に示した。また、1粒子当たりの吸光係数、蛍光量子収率、蛍光強度を表2に示した。
【0192】
更に、ポリマーナノ微粒子42またはQD800の輝度分布をヒストグラム化し、比較した結果を図26に示した。以上の結果から、ポリマーナノ微粒子42がQD800よりも大きな輝度を示すことが確認できた。
【0193】
【表2】
【0194】
(分散安定性評価)
SiPcTHSO及びSiNPcTHSOを含まないこと以外は、実施例40と同様にして、PSのみからなるポリマーナノ微粒子43を作製し、その粒径を動的光散乱解析装置で分析した。粒径を測定した後、ポリマーナノ微粒子43の水分散液(0.9g)に対して、リン酸緩衝液(PBS、0.1g)またはウシ胎児血清(FBS、0.1g)を加えた。室温で一晩放置した後、再び動的光散乱解析装置で粒径を分析し、その結果を図27に示した。
【0195】
図27より、ポリマーナノ微粒子43において、分散液を調製してから一晩放置後においてもリン酸緩衝液およびウシ胎児血清中で目立った凝集は観察されず、分散安定性に優れていることが確認された。
【0196】
(ヌードマウスのin vivo蛍光イメージング)
前記ポリマーナノ微粒子42の水分散液をPBSで4倍に希釈し、滅菌済みの限外濾過フィルター(0.22μm径)で処理を行った後、ヌードマウス(BALB/c−nu/nu、9週齢、メス)の尾静脈から0.2ml投与した。投与してから15分、3時間、1日、2日、3日後に蛍光イメージング装置(Xenogen製、IVIS200)でヌードマウスの蛍光像を撮影した。その結果を図28に示した。ヌードマウスの体内から強い蛍光が検出され、in vivo蛍光イメージングできることが確認できた。
【0197】
<実施例41>
(ポリマーナノ微粒子44の合成)
実施例40のSiNPcTHSOの使用量を0.042mgから0.0084mgに替えた以外は、実施例40と同様にして、ポリマーナノ微粒子44の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表3に示した。
【0198】
<実施例42>
(ポリマーナノ微粒子45の合成)
実施例40のSiNPcTHSOの使用量を0.042mgから0.021mgに替えた以外は、実施例40と同様にして、ポリマーナノ微粒子45の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表3に示した。
【0199】
<実施例43>
(ポリマーナノ微粒子46の合成)
実施例40のSiNPcTHSOの使用量を0.042mgから0.084mgに替えた以外は、実施例40と同様にして、ポリマーナノ微粒子46の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表3に示した。
【0200】
<実施例44>
(ポリマーナノ微粒子47の合成)
実施例40のSiNPcTHSOの使用量を0.042mgから0.14mgに替えた以外は、実施例40と同様にして、ポリマーナノ微粒子47の水分散液を得た。また、FRET効率に関しては、その結果を表3に示した。
【0201】
【表3】
【0202】
<実施例45>
(ポリマーナノ微粒子48の合成例)
特許文献1に開示されている方法に従って、ポリマーナノ微粒子48を合成した。
【0203】
攪拌中のLatex溶液(0.6mL,4%w/v:Interfacial Dynamics Corp. Inc.)にDMF(1.33mL)を5分かけて滴下し、更に30分間攪拌してLatexを膨潤させた。続いて、色素(溶液全量 (2mL)に対してSiPcTHSO 0.668mg、SiNPcTHSO 0.2mg)を溶解させたDMF(0.07mL)を5分かけて滴下し、更に30分間攪拌した。最後に冷蔵庫内(約7°C)で15時間透析を行い、DMFを除去してポリマーナノ微粒子48を得た。
【0204】
(ポリマーナノ微粒子のFRET効率比較)
特許文献1に開示されている方法に従って、SiPcTHSOのみ、SiNPcTHSOのみ、SiPcTHSOとSiNPcTHSOを含有したポリマーナノ微粒子を作製し蛍光を測定した。図29はその規格化した蛍光スペクトルである。SiPcTHSOとSiNPcTHSOを含有したポリマーナノ微粒子48は、SiPcTHSOの蛍光が消光し、SiNPcTHSOの蛍光が観察された。
【0205】
本発明のポリマーナノ微粒子42、及び特許文献1に開示されている製造方法で得たポリマーナノ微粒子48を用いて、FRET効率に関する比較を行った。その結果、ポリマーナノ微粒子48のFRET効率は32.3%であり、本発明のポリマーナノ微粒子42(FRET効率96.4%)の方が優れていることが確認された。
【0206】
(ポリマーナノ微粒子の蛍光強度比較)
本発明のポリマーナノ微粒子と特許文献1に開示されているポリマーナノ微粒子のポリマー濃度が同程度(0.0089%wv-1)になるように調製して得られた微粒子をそれぞれポリマーナノ微粒子49、ポリマーナノ微粒子50とした。それらの蛍光強度を比較し、その結果を図30に示した。781nmにおける蛍光強度はポリマーナノ微粒子49が2243、ポリマーナノ微粒子50が19であり、ポリマーナノ微粒子49の蛍光強度の方が100倍以上大きいことが確認された。
【0207】
また、吸光度からポリマーに対する色素濃度を計算すると、ポリマーナノ微粒子49ではSiPcTHSOが2.7wt%、SiNPcTHSOが0.3wt%含有していた。これに対して、ポリマーナノ微粒子50ではSiPcTHSOが0.054wt%、SiNPcTHSOが0.013wt%であった。
【0208】
更に1粒子当たりの色素含有量は、ポリマーナノ微粒子49ではSiPcTHSOが3800個、SiNPcTHSOが400個であるのに対して、ポリマーナノ微粒子50はSiPcTHSOが150個、SiNPcTHSOが30個となった。これらのことから、特許文献1に開示されている製造方法ではポリマー粒子内にドナー色素、アクセプター色素を効率的に内包させることは困難であることが分かった。また、SiPcTHSO、SiNPcTHSOはDMFに溶け難く、これ以上の濃度で仕込むのは難しいと考えられる。以上の結果を表4にまとめた。
【0209】
【表4】
【符号の説明】
【0210】
1 ポリマーナノ微粒子
2 蛍光性ポリマー
3 蛍光色素(アクセプター)
4 界面活性剤
5 蛍光色素(ドナー)
6 ポリマー
7 有機溶媒
8 界面活性剤を有する水溶液
9 エマルジョン
10 ポリマーナノ微粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光性ポリマーのマトリックス中に蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子であって、該微粒子表面が界面活性剤で保護され、前記蛍光性ポリマーと前記蛍光色素間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)で蛍光を発光することを特徴とするポリマーナノ微粒子。
【請求項2】
前記蛍光性ポリマーが共役ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーナノ微粒子。
【請求項3】
ポリマーのマトリックス中に2種類の異なる蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子であって、該微粒子表面が界面活性剤で保護され、前記2種類の異なる蛍光色素間のFRETで蛍光を発光することを特徴とするポリマーナノ微粒子。
【請求項4】
前記のFRETで発光する蛍光が600nm以上、1000nm以下の近赤外波長であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリマーナノ微粒子。
【請求項5】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のポリマーナノ微粒子。
【請求項6】
前記微粒子の平均粒径が10nm以上、200nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のポリマーナノ微粒子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のポリマーナノ微粒子を含有することを特徴とする光分子イメージング用造影剤。
【請求項1】
蛍光性ポリマーのマトリックス中に蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子であって、該微粒子表面が界面活性剤で保護され、前記蛍光性ポリマーと前記蛍光色素間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)で蛍光を発光することを特徴とするポリマーナノ微粒子。
【請求項2】
前記蛍光性ポリマーが共役ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のポリマーナノ微粒子。
【請求項3】
ポリマーのマトリックス中に2種類の異なる蛍光色素が分散したポリマーナノ微粒子であって、該微粒子表面が界面活性剤で保護され、前記2種類の異なる蛍光色素間のFRETで蛍光を発光することを特徴とするポリマーナノ微粒子。
【請求項4】
前記のFRETで発光する蛍光が600nm以上、1000nm以下の近赤外波長であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリマーナノ微粒子。
【請求項5】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のポリマーナノ微粒子。
【請求項6】
前記微粒子の平均粒径が10nm以上、200nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のポリマーナノ微粒子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のポリマーナノ微粒子を含有することを特徴とする光分子イメージング用造影剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図24】
【図25】
【図27】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図17】
【図22】
【図23】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図24】
【図25】
【図27】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図17】
【図22】
【図23】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2010−83860(P2010−83860A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44222(P2009−44222)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、文部科学省、「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成(高次生体イメージング先端テクノハブ)」に係わる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、文部科学省、「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成(高次生体イメージング先端テクノハブ)」に係わる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]