説明

ポリマーヒドロゲル組成物

【課題】長期間皮膚に接着した状態であり得、性能の重大な損失なく、剥離し、再度適用することができるポリマー組成物を提供する。
【解決手段】(i)少なくとも一のオレフィン性不飽和水溶性モノマーからできている5〜30重量%の架橋ポリマー;(ii)50,000より小さい平均分子量を有する5〜20重量%の線状、枝分かれ状、又は星型非架橋ポリマー;(iii)40〜60重量%の多価アルコール;及び(iv)5〜20重量%より少ない水を含むポリマー組成物である。ポリマー組成物は、ヒドロゲルとして単独で、又はトランスミッション電極及びモニタリング電極等の種々の医療機器の製造に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本発明は、ポリマー組成物及び生体用電極との使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
生体接着剤ヒドロゲルは、医用(又は生物医学)装置及びパーソナルケア製品を皮膚に付ける手段として広く使用されている。ヒドロゲルは、それらの非永久接着性、相当高い含水量、及び電気伝導度を向上するためのイオン性導電性物質でドープされる受容力のために、皮膚に電極を付着させる格別の有用性が認められる。特に、ヒドロゲルを、トランスミッション(伝達、電動又は透過)電極(例えば、経皮電気神経刺激(TENS)装置);除細動器電極、及びモニタリング(又は監視)電極[例えば、心電図(ECG)電極、脳波記録(又は脳波検査)(EEG)電極、及び筋電図検査(法)(EMG)電極]と共に使用することができる。
【0003】
生体接着剤として有用であるために、ヒドロゲルにはいくつかの性質が要求される。一般的に、生体接着剤、特に生体用電極と使用されるものは、臨床診断の間皮膚にしっかりと付着しえなければならず、しばしば有毛皮膚、油性皮膚、又は湿った皮膚に接着しなければならず、長期間接着したままであることが期待される。入院による治療の場合、特に集中治療及び新生児医療の場合、電極はしばしば付けられ、除去され、再度付けられる。剥離強度(又はピール強度)(即ち、ヒドロゲルを皮膚から剥がすために必要な力)は、重大な痛み又は皮膚の損傷なく接着(又は付着)物品を取り除くことができるように、ヒトの皮膚の剥離強度(即ち、皮膚の完全性を乱すために必要な力)より、十分に小さくなければならない。ヒドロゲル組成物は、例えば、付ける際に依存する室温又は体温、電流を印加する間の高湿度又は余分な湿気等の、通常の使用条件下で、流れることに実質的に抵抗するように、十分に粘性でなければならない。
【0004】
最初に付けた後、多くは十分なタックを失うので、生体接着剤ヒドロゲルは、しばしば再使用することができない。あるいは、長期間接着性を維持する生体接着剤又は続く複数の塗布は、しばしば高すぎる剥離強度を有し、剥離する際に重大な苦痛及び/又は組織損傷を生ずる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長期間皮膚に接着(又は付着)したままであり、性能の重大な損失なく、剥離し、再度付ける(又は適用する)ことができるポリマー組成物を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
要約
一の要旨において、本発明は、(i)少なくとも一のオレフィン性不飽和水溶性モノマーからできている(又は構成される)約5〜30重量%の架橋ポリマー;(ii)約50,000より小さい平均分子量を有する約5〜20重量%の線状、枝分かれ状、又は星型の非架橋ポリマー;(iii)約40〜60重量%の多価アルコール;及び(iv)約5〜20重量%より少ない水を含んで成るポリマー組成物を提供する。
この要旨の好ましい態様では、非架橋ポリマーは、約20,000より小さい、約10,000より小さい又は約7,500より小さい平均分子量を有する。
【0007】
第二の要旨において、本発明は、(i)少なくとも一のオレフィン性不飽和水溶性モノマーからできている(又は構成される)約5〜30重量%の架橋ポリマー;(ii)約25,000,000より小さい平均分子量を有する約5〜20重量%の線状、枝分かれ状、又は星型の非架橋ポリマー、ここで非架橋ポリマーはカルボン酸系ポリマーではない;(iii)約40〜60重量%の多価アルコール;及び(iv)約5〜20重量%より少ない水を含んで成るポリマー組成物も提供する。
この要旨の好ましい態様では、非架橋ポリマーは、約10,000,000より小さい、約6,000,000より小さい又は約1,000,000より小さい平均分子量を有する。
【0008】
上述の要旨の好ましい態様において、架橋ポリマーと非架橋ポリマーは、共重合体(又はインターポリマー:interpolymer)を形成する。好ましくは、非架橋ポリマーは、架橋ポリマーにからまる(又はもつれる)。
【0009】
架橋ポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。特に有用なオレフィン性不飽和水溶性モノマーには、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリル酸、3−スルホプロピルアクリレート(SPA)、及びそれらの塩が含まれる。特に有用な塩には、例えば、水溶性モノマーのナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム及びアンモニウム塩が含まれる。特に有用なコポリマーは、AMPS/アクリル酸コポリマーである。好ましくは、AMPS:アクリル酸の比は、約0.4:1と2.1:1の間である。好ましくは、AMPS:アクリル酸の比は、約1.1:1と1.75:1、又は更に1.50:1と1.65:1の間である。
【0010】
いずれの線状、枝分かれ状、又は星型非架橋ポリマーも本発明で使用することができるが、特に有用な非架橋ポリマーは、アクリレート又はメタクリレートホモポリマー及びコポリマーである。他の有用な非架橋ポリマーには、例えば、ポリアクリレート(例えば、GOOD-RITE(登録商標)K-732、ノベオン社(Noveon, Inc.)、クリーブランド、オハイオ州から市販)、ロジンエステル(Aquatac(登録商標)9027、アリゾナ・ケミカル社(Arizona Chemical, Inc.)、ジャクソンビル(Jackson ville)、フロリダ州から市販)、ポリビニルアルコール(PVAポリマー;例えば、種々のFlexcryl(登録商標)ポリマー、エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社(Air Products and Chemicals, Inc.)、アレンタウン(Allentown)、ペンシルベニア州から市販)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリオキシエチレン(PEO)、非イオン性又はイオン性ポリアクリルアミド、インドゴム(又はカラヤゴム)、ガッティゴム(gum Ghatti)、アラビアゴム、エイガーゴム(Gum agar)、トラガカントゴム、グアーガム(guar gum)、変性グアーガム製品(例えば、ヒドロキシプロピルグアー)ローカストビーンガム、セルロース誘導体、変性セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース等)、マルトデキストリン、多糖類、トールオイル、ロジンエステル、及びそれらの二成分、三成分及び四成分混合物等が含まれる。本発明で使用する非架橋ポリマーには、ε−カプロラクタム等のナイロンポリマーも含み得る。特に有用な非カルボン酸系ポリマーには、ポリアクリルアミドが含まれる。
【0011】
有用な多価アルコールには、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンタルグリコール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、N−メチルジエタノールアミン及びイソプロパノールアミンが含まれる。望ましい態様において、多価アルコールと水とのモル比は、約1:1〜約3.5:1の間である。
【0012】
望ましい態様において、ポリマー組成物は、約40,000cpsより小さい、20,000cpsより小さい又は約1500cpsより小さいブルックフィールド粘度(Brookfield viscosity)を有する。好ましくは、ブルックフィールド粘度は、約500〜1000cpsである。
【0013】
本発明のポリマー組成物は、種々のパーソナルケア製品、医療機器、及び外傷用医薬材料(創傷包帯又は創傷被覆材)用の生体接着剤として使用することができる。本発明のヒドロゲルは、トランスミッション電極及びモニタリング電極を含む電極用の生体接着剤として、特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
例示的態様の詳細な説明
本発明は、少なくとも一のオレフィン性不飽和水溶性モノマーからできている架橋ポリマーが約5〜30重量%;20,000より小さい平均分子量を有する線状、枝分かれ状、又は星型非架橋ポリマーが約5〜20重量%;多価アルコールが約40〜60重量%;及び水が約5〜20重量%より少ないポリマー組成物を提供する。
本発明は、少なくとも一のオレフィン性不飽和水溶性モノマーからできている架橋ポリマーが約5〜30重量%;約25,000,000より小さい平均分子量を有する、線状、枝分かれ状、又は星型非架橋ポリマーが約5〜20重量%、ここで非架橋ポリマーは、カルボン酸系ポリマーではない;多価アルコールが約40〜60重量%;及び水が約5〜20重量%より少ないポリマー組成物も提供する。
好ましくは、架橋ポリマーと非架橋ポリマーは、共重合体を形成する。
本発明のポリマー組成物は、少なくとも二のポリマー−少なくとも一のオレフィン性不飽和水溶性モノマーからできている架橋ポリマー及び非架橋ポリマー、架橋剤、一又はそれ以上の重合開始剤、一又はそれ以上の保湿剤、及び中和剤(塩基)を含む。
【0015】
架橋ポリマーは、オレフィン性不飽和水溶性モノマーのコポリマー又はホモポリマーを含む。適するモノマーには、例えば、オレフィン性不飽和カルボン酸、無水カルボン酸、及びスルホン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、桂皮酸、イタコン酸、クロトン酸、エタクリル酸、シトコン酸(citoconic acid)、メサコン酸、フマル酸、β−ステアリルアクリル酸、アクリレートエステル、アクリルアミド、オレフィン、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、及び3−スルホプロピルアクリレート(SPA)、ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、エトキシエトキシエチルメタクリレート、エトキシ、エトキシエチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸が含まれる。特に有用なコポリマーには、アクリル酸/AMPS、アクリル酸/SPA、AMPS/SPA ジアセトン アクリルアミド/アクリル酸、及びアクリル酸/アクリルアミドコポリマーが含まれるが;しかし、いずれの適するモノマーのコポリマーも使用し得る。
【0016】
上述のホモポリマー及びコポリマーは、いずれかのポリエン(例えば、デカジエン及びトリビニルシクロヘキサン)、アクリルアミド(n−n’−メチレンビスアクリルアミド(nnMBA)、多官能性アクリレート(例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート)、又は少なくとも二つの末端CH基を含む多官能性ビニリデンモノマー(例えば、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びアリルアクリレート)で架橋してよい。架橋剤nnMBAは、特に有用である。コポリマーと使用できる他の架橋モノマーには、例えば、一分子当たり複数のアルケニルエーテル基を有するポリアルケニルポリエーテルが含まれる。このタイプの有用な架橋剤には、例えば、ジアリルエステル、ジメタアリルエーテル、アリル又はメタアリルアクリレート、ポリエチルグリコールメタクリレート(即ち、PEG400、PEG800等)及びアクリルアミド、テトラアリルスズ、テトラビニルシラン、ポリアルケニルメタン、ジアクリレート、及びジメタクリレート、及びジビニル化合物例えばジビニルベンゼン、ポリアリルホスフェート、及びジアリルオキシ化合物、及び四級アンモニウム化合物が含まれる。二官能性架橋剤に加え、三官能性及び四官能性モノマー(例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート)も使用できる。典型的には、使用する架橋剤の量は、低く;約1重量%より低く、好ましくは約0.7重量%より低く、より好ましくは0.4重量%より低い。
【0017】
非架橋ポリマーの存在下、不飽和水溶性モノマーを重合し架橋して架橋ポリマーを形成して、再使用可能で広範な耐摩耗性(又は摩耗性状)を有する生体接着剤ヒドロゲルを製造する。非架橋ポリマーは、重合/架橋プロセスの間に架橋ポリマーネットワークに物理的にからまるようになることで、互いになかば浸透(又は貫通)しあうポリマーネットワーク(セミ−IPN;共重合体又はインターポリマー)を形成する。適する非架橋ポリマーには、線状、枝分かれ状、星型ポリマーが含まれる。枝分かれ状及び星型ポリマーは、より大きな立体的相互作用を架橋ポリマーにもたらし、従って、より大きな粘度を与える。より高い粘度を要する場合、典型的には、少量の架橋ポリマーを有するヒドロゲルに枝分かれ状及び星形状のポリマーが使用される。適するポリマーは、典型的には、20,000より小さい、好ましくは15,000より小さい、より好ましくは10,000より小さい、更には約5,000の平均分子量を有する。そのようなポリマーには、例えば、アクリル酸、SPA、及びAMPSのホモポリマー及びコポリマー、例えばポリアクリレート(例えば、GOOD-RITE(登録商標)K732、ノベオン社)、ポリAMPS、ポリ(アクリル酸−(3−スルホプロピル)エステル)、及びFlexcryl(登録商標)PVAポリマー(エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社)が含まれる。他の有用なポリマーには、ロジンエステル、ヒュームド・シリカ(fumed silica)、イオン(例えば、カチオン)及び非イオンポリアクリルアミド、(Magnifloc(登録商標)及び/又はCyanamer(登録商標)ブランド、サイテック・インダストリーズ社(Cytec Industries)、ファイブ・ガレット・マウンテン・ロード(Five Garrett Mountain Road)、ウエスト・パターソン(West Patterson)、ニュージャージー州、米国:例えば、Cyanamer(登録商標)N−300LMW、Cyanamer(登録商標)N−100)が含まれる。これらのポリマーは、250,000〜25,000,000の範囲の平均分子量を有し、非イオン性でもアニオン性でもカチオン性でもよい。
【0018】
多価アルコールの選択と最終ポリマー組成物中の水に対するその割合は、最終組成物の所望の特性に基づいて選んでよい。多価アルコールと水との比は、高くてもよい(即ち、約3.5:1)。例えば、電極生体接着剤として特に有用であり、より高い電気インピーダンスを有するポリマー組成物を生じるので、相当低含水量であることが有利である。更に、低含水量組成物は、優れた「リスティック(restick)」特性(再粘着性又は再接着性)を有し、耐乾燥性である。これらの組成物は、低刺激性の傾向も有する。
【0019】
得られるポリマー組成物の粘度を測定し、例えばブルックフィールド粘度として表すことができる。ブルックフィールド粘度は、当業者に既知のいずれかの方法を用いて測定することができる。特定の速度で、流体中で、不可欠のプレートと加工され校正したスピンドルを回転させることで、溶液粘度を測定する。流体中で回転させることで、プレートが被る遅延、抵抗又は引きずりが、流体粘度と関連する。粘度計上部のダイアルは、0〜100スケールを表示する。速度とプレートジオメトリーを補償するファクターをスケール結果に乗じて、センチポアズ単位で粘度を得る。この特定のケースでは、ブルックフィールドRVF粘度計に20rpmの速度で、#4スピンドルを使用した。
【0020】
種々のパーソナルケア製品、医療機器、及び外傷用医薬材料と、本発明のポリマー組成物をヒドロゲルとして使用することができる。使い捨ての廃棄物取り扱い装置(即ち、尿、月経及び糞便廃棄物)に使用した場合、典型的にはポリマー組成物を、接着剤アタッチメントの開口又はフランジに適用する。本発明のポリマー組成物を、当業者に既知のいずれかの使い捨ての尿、月経、又は糞便廃棄物取り扱い装置に使用することができる。
【0021】
本発明のポリマー組成物には、頻繁な取り外し(又は除去)と再取り付け(再付着又は再適用)条件下、それらの接着特性を維持することが要求される又は長期間の皮膚との接着が必要である種々の外傷用医薬材料及び医療機器と使用する生体接着剤として、特有の有用性が認められる。そのような医療機器には、例えば、生体用電極(例えば、ECG、EMG、EEG、TENS、及び除細動(用)電極)、包帯、テープ、及びカテーテルが含まれる。
【0022】
生体用電極は当業者には既知であり、典型的には主にそれらの目的とする用途に基づいて設計される。例えば、モニタリング電極(例えば、ECG及びEEG電極)は、トランスミッション電極(TENS及び除細動電極)より小さい傾向にある。いずれのトランスミッション生体用電極の本質的特徴は、医療機器(即ち、刺激するもの又は刺激器)に取り付けられた電気ケーブルと患者の皮膚との間の電気信号を効率的に伝達する能力である。モニタリング電極は、皮膚のイオン又は電気ポテンシャルを検知する能力を有し、医療機器(即ち、モニター)に電気信号を伝達しなければならない。典型的な電極は、しばしば、接触表面上に延在する金属製又は導電性コート(即ち、カーボンブラックコート、金属コート)タブ(即ち、タブ電極)、スナップ留めによって、医療機器の電気ケーブルと電気的に接触する、電気導電性要素を含んで成る。電気導電性要素も、患者の皮膚と電気的に接触する。電気導電性要素と患者の皮膚との間に導電性ゲル材料を配置することで、この電気的接触は、典型的に行われる。このゲルは、局所に適用されてよく、生体用電極アセンブリに不可欠な吸収剤(又は吸着剤)コアに存してよく、又は生体用電極アセンブリの皮膚に対向する表面にコートしてもよい。ヒドロゲルの電気的特性は既知なので、種々の目的に対して容易にコントロールできるので、生体用電極の導電性要素と患者の皮膚との間の電気的接触のために、ポリマーヒドロゲルはしばしば用いられる。更に、多くのポリマーヒドロゲルは、望ましい生体接着性を有し、患者に生体用電極を配置し、貼る際に支援する。
【実施例】
【0023】
例1
ポリマー組成物を、下記プレ−ゲル溶液から形成した。
【表1】

【0024】
プレ−ゲル溶液は、下記のように作成した。ナトリウム アクリルアミド メチル−プロパンスルホン酸ナトリウム エステル溶液(NaAMPS)を量り、清浄で乾燥した反応器に入れた。次に、下記試薬を順に攪拌しながら加えた:脱イオン水中n,n’−メチレンビスアクリルアミド(nn−MBA)(1%w/v)、アクリル酸、追加の脱イオン水(ddHO)、グリセロール(1,2,3−プロパントリオール)、Goodrite(登録商標)K−732(未架橋ポリアクリル酸、ノベオン社)、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、AMPS酸、及び塩化ナトリウム。この溶液を混合し、全ての試薬を溶かした。水酸化ナトリウム、50%w/v溶液として、をゆっくり加えて、バッチの温度を制御した。次に、ダロキュア(Darocur)(登録商標)1173(2−ヒドロキシ 2−メチル 1−フェニル 1−プロパノン)を加え、得られた溶液を混合し、均一にした。
【0025】
上述の溶液が均一になるやいなや、基材(典型的にはシリコーン処理したプラスチックフィルム、しかし、いずれの適当な材料であってよい)にコートした。プレ−ゲル溶液をキャスティングし、フリーラジカル開始、その後の伝播及び鎖の切断を容易にする光開始剤の均一分解によって生ずるフリーラジカル重合によって重合した。硬化の程度、従って、最終の共重合体ヒドロゲルの物理的特性は、紫外光の強度及び/又は線量の継続期間を種々変えることで調節することができる。好ましいヒドロゲルは、1.2J/cm(UVA)の線量を用いて硬化して得ることができる。
【0026】
得られるポリマー組成物は、HPLCで測定して、約100ppmの残留アクリル酸モノマー及び約80ppm残留AMPSモノマーを含み、約5.1の最終pHを有する。このポリマー組成物は、凝集特性と接着特性の理想的なバランスを有し、皮膚によく付着し、電気信号及びインパルスを明瞭に伝達することができる。
【0027】
これらの組成物を開発するとともに、それらをシートの形態に重合し、試験することができるパッチに変えた。最適化の間に使用した特定の試験の属性(又は計数値)には、ボランティア(ヒト)の皮膚への接着(又は付着)性、HPLCを用いる残留モノマーのスコア(評点)、最終pH、ボランティアへの連続的再付着接着試験、湿気バランスによる含水量、及びAAMI/ANSI EC12:(2000)ガイドラインによる導電性が含まれる。
【0028】
例2
別の一連の試験では、改良した組成物用のベースとして、代替の架橋コポリマーを用いていくつかの組成物を製造した。特に、ジアセトンアクリルアミド、アクリル酸、及びカリウムアクリレートの一つのコポリマー混合物を、代替塩基(水酸化カリウム)、代替架橋剤(トリエチレングリコールジメタクリレート;「TEGDMA」ともいう)を用いて配合して、ポリマーバックボーンに共有結合で結合しない線状ポリマーを加えて肌への改良接着性を促進した。ポリマー組成物は、本質的には例1に記載したように製造した。プレ−ゲル溶液成分は、下記の通りである。
【0029】
【表2】

【0030】
これらの組成物を開発するとともに、それらをシートの形態に重合し、試験することができるパッチに変えた。最適化の間に使用した特定の試験の属性(又は計数値)には、ボランティア(ヒト)の皮膚への接着性、HPLCを用いる残留モノマーのスコア(評点)、最終pH、ボランティアへの連続的再付着接着試験、湿気バランスによる含水量、及びAAMI/ANSI EC12:(2000)ガイドラインによる導電性が含まれる。
【0031】
例3
更に、構造/特性相関性を調査するために、一連のポリマー組成物を開発した。モノマー濃度、モノマー比及び含水量を下記のように種々変えた(全ての濃度は、pphで与えた)。
【0032】
【表3】

上述のポリマー組成物の製造方法は、例1に記載の方法と同様であった。
【0033】
これらの組成物を開発するとともに、それらをシートの形態に重合し、試験することができるパッチに変えた。最適化の間に使用した特定の試験の属性(又は計数値)には、ボランティア(ヒト)の皮膚への接着性、HPLCを用いる残留モノマーのスコア(評点)、最終pH、ボランティアへの連続的再付着接着試験、湿気バランスによる含水量、及びAAMI/ANSI EC12:(2000)ガイドラインによる導電性が含まれる。
【0034】
これらの組成物の評価の一部として、好ましいサンプルを、ISO 10993ガイドラインにつき低刺激性及び生体適合性について試験し、好ましい組成物は、非細胞毒性(USP AGAR Diffusion)、及び刺激性がない(又は少ない)(Primary Skin Irritation)、非感作性(又は非増感性)(Buehler Patch Test)、低刺激性(Repeated skin Insult Patch Test)であると決定(又は判断)された。全てのこれらの試験は、GLP条件下で行った。
【0035】
この場合、より望ましいポリマーは、その接着性を大きくロスすることなく、装置(又はデバイス)用に適用され、その後取り外し及び再適用可能なものであろう。好ましい組成物は、ひとたびそれを基材(皮膚)から取り除くと、あるとしても、後ろに残渣をほとんど残さないであろう。
【0036】
上述の本開示を、理解を明確にするための例示と説明をする目的で、少し詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の開示の教示に基づいて、添付した特許請求の範囲の範囲又は精神から離れること無く、いくらかの変更及び修正をし得ることは、容易であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも一のオレフィン性不飽和水溶性モノマーからできている約5〜30重量%の架橋ポリマー;
(ii)約50,000より小さい平均分子量を有する約5〜20重量%の線状、枝分かれ状、又は星型非架橋ポリマー;
(iii)約40〜60重量%の多価アルコール;及び
(iv)約5〜20重量%より少ない水
を含んで成るポリマー組成物。
【請求項2】
該架橋ポリマーと該非架橋ポリマーは、共重合体を形成する請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
少なくとも一の該水溶性モノマーは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリル酸、3−スルホプロピルアクリレート(SPA)、及びそれらの塩から成る群から選択される請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
該架橋ポリマーは、AMPS/アクリル酸コポリマーである請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
該架橋ポリマーのAMPSとアクリル酸とのモル比は、約0.4:1と約2.1:1の間である請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
該架橋ポリマーのAMPSとアクリル酸とのモル比は、約1.50:1と1.65:1の間である請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
該ポリマー組成物の多価アルコールと水とのモル比は、約1:1と約3.5:1の間である請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
該非架橋ポリマーは、アクリレートホモポリマー又はコポリマーである請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
該非架橋ポリマーは、10,000より小さい平均分子量を有するポリアクリレートである請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
該多価アルコールは、グリセロールである請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
該ポリマー組成物は、約40,000cpsより小さいブルックフィールド粘度を有する請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
該ポリマー組成物は、約1,500cpsより小さいブルックフィールド粘度を有する請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
該ポリマー組成物は、約500〜1,000cpsのブルックフィールド粘度を有する請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
(i)少なくとも一のオレフィン性不飽和水溶性モノマーからできている約5〜30重量%の架橋ポリマー;
(ii)約25,000,000より小さい平均分子量を有する約5〜20重量%の線状、枝分かれ状、又は星型非架橋ポリマー、ただし、該非架橋ポリマーは、カルボン酸系ポリマーではない;
(iii)約40〜60重量%の多価アルコール;及び
(iv)約5〜20重量%より少ない水
を含んで成るポリマー組成物。
【請求項15】
該架橋ポリマーと該非架橋ポリマーは、共重合体を形成する請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
少なくとも一の該水溶性モノマーは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリル酸、3−スルホプロピルアクリレート(SPA)、及びそれらの塩から成る群から選択される請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
該架橋ポリマーは、AMPS/アクリル酸コポリマーである請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
該架橋ポリマーのAMPSとアクリル酸とのモル比は、約0.4:1と約2.1:1の間である請求項17に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
該非架橋ポリマーは、ポリアクリルアミドである請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
該非架橋ポリマーは、6,000,000より小さい平均分子量を有する請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
該多価アルコールは、グリセロールである請求項14に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
(i)2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)又はその塩、及びアクリル酸又はその塩からできている約5〜30重量%の架橋コポリマー、ただし、該AMPSと該アクリル酸との比は、約0.5:1〜約2.1:1である;
(ii)20,000より小さい平均分子量を有する約5〜15重量%の非架橋ポリアクリレート;及び
(iii)約40〜60重量%のグリセロール;
(iv)約5〜20重量%の水
を含んで成るポリマー組成物であって、
該架橋コポリマーと該ポリアクリレートは、共重合体を形成し、
該ポリマー組成物は、約1,500cpsより小さいブルックフィールド粘度を有する
ポリマー組成物。
【請求項23】
請求項1に記載のポリマー組成物と使用される生体用電極。
【請求項24】
請求項22に記載のポリマー組成物と使用される生体用電極。

【公開番号】特開2006−316273(P2006−316273A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−132426(P2006−132426)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(505471912)タイコ ヘルスケアー グループ リミテッド パートナーシップ (26)
【Fターム(参考)】