説明

ポリマーブレンド、ならびにこのポリマーブレンドを用いる組成物および方法

【課題】異なる化学を有するシーラント処方物を一緒に使用することにしばしば伴う、長期間の適合性の問題を解決すること。
【解決手段】少なくとも1種のポリスルフィド成分および少なくとも1種のポリチオエーテル成分を有するポリマーブレンドが、開示される。このポリマーブレンドは、多数の利点を提供し、これらの利点としては、ポリスルフィド化学またはポリチオエーテル化学のいずれかの単独に基づく処方物と適合する能力が挙げられる。ポリマーブレンドを含有する組成物、特に、航空宇宙産業用途において使用するためのシーラント処方物はまた、多層シーラントアセンブリとして開示され、そしてこの処方物を修復するための方法もまた、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、少なくとも1種のポリスルフィド成分および少なくとも1種のポリチオエーテル成分を含有する、ポリマーブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
硫黄含有ポリマーは、それらの架橋の際の燃料抵抗特性に起因して、航空宇宙産業用のシーラントにおける使用のためによく適していることが、公知である。ポリスルフィドシーラントは、高い引張り強度、高い引き裂き強度、熱抵抗および高い紫外線に対する抵抗を提供する。このようなシーラントはまた、燃料に対する抵抗性を提供し、そして燃料への曝露の際に、それらの接着を維持する。
【0003】
種々の硫黄含有ポリマー(例えば、チオール末端を有する硫黄含有ポリマーおよびポリスルフィドポリマーが挙げられる)は、市販のシーラント処方物において使用されている。異なるシーラント処方物を組み合わせて使用して、互いによって寄与される望ましい特性を達成することが、しばしば望ましい。例えば、ポリスルフィドから調製されるシーラントは、良好な化学的耐性を有し、一方で、ポリチオエーテルを用いて調製されるシーラントは、より低いTgおよびより高い有用温度を有する。しかし、異なる化学を有するシーラント処方物を一緒に使用することは、しばしば、長期間の適合性の問題を有し得る。本発明はこの問題に取り組む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、少なくとも1種のポリスルフィド成分および少なくとも1種のポリチオエーテル成分を含有する、ポリマーブレンドに関する。このブレンドおよび硬化剤を含有するシーラントは、さらに、本発明の範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一般に、少なくとも1種のポリスルフィド成分および少なくとも1種のポリチオエーテル成分を含有する、ポリマーブレンドに関する。
【0006】
本発明の「ポリスルフィド成分」は、複数の硫黄−硫黄結合(すなわち、−[S−S]−)を、ポリマー骨格中および/またはポリマー鎖の末端もしくはペンダント位置に含む、ポリスルフィドポリマーを包含する。代表的に、本発明におけるポリスルフィドポリマーは、2つ以上の硫黄−硫黄結合を有する。適切なポリスルフィドは、Akzo Nobelから、THIOPLASTの名称で市販されている。THIOPLAST製品は、広範な分子量で入手可能であり、この分子量の範囲は、例えば、1100未満〜8000より大であり、この分子量は、1モルあたりのグラム数としての平均分子量である。特に好ましいものは、1000〜4000の数平均分子量である。これらの製品の架橋密度もまた、使用される架橋剤の量に依存して、変動する。これらの製品の「−SH」含有量(すなわち、メルカプタン含有量)もまた、変動し得る。ポリスルフィドのメルカプタン含有量および分子量は、ブレンドの硬化速度に影響を与え得、硬化速度は、分子量とともに増加する。
【0007】
いくつかの実施形態において、ポリスルフィドの組み合わせを使用して、望ましい分子量および/またはポリマーブレンド中での架橋密度を達成することが望ましい。異なる分子量および/または架橋密度は、さまざまな特徴を、ブレンドおよびこのブレンドを組み込む組成物に与え得る。例えば、ポリスルフィド成分が1つより多くのポリスルフィドポリマーを含有し、そしてこれらのポリスルフィドポリマーのうちの1つが、約1000の分子量を有するブレンドは、望ましい非結晶化特性を有する。
【0008】
本発明のポリマーブレンドにおける第二の成分は、ポリチオエーテルである。本発明の「ポリチオエーテル成分」は、少なくとも1つのポリチオエーテル結合(すなわち、−[−CH−CH−S−CH−CH−]−)を含むポリマーである。代表的なポリチオエーテルは、8個から200個のこれらの結合を有する。本発明において使用するために適切なポリチオエーテルとしては、米国特許第6,372,849号に記載されるものが挙げられる。適切なポリチオエーテルは、代表的に、1000〜10,000(例えば、2,000〜5,000、または3,000〜4,000)の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、ポリチオエーテル成分は、非反応性基(例えば、アルキル)の末端を有し、そして他の実施形態において、末端位置またはペンダント位置に、反応性基を含む。代表的な反応性基は、チオール、ヒドロキシル、アミノ、ビニルおよびエポキシである。反応性官能基を含むポリチオエーテル成分について、平均官能性は、代表的に、2.05〜3.0(例えば、2.1〜2.6)の範囲である。特定の平均官能性は、反応性成分の適切な選択によって、達成され得る。適切なポリチオエーテルの例は、PRC−Desoto International,Inc.から、商標PERMAPOL(例えば、PERMAPOL P−3.1eまたはPERMAPOL P−3)で入手可能である。ポリスルフィド成分の場合と同様に、ポリチオエーテルの組み合わせを使用して、本発明によるポリチオエーテル成分を調製し得る。
【0009】
本発明のポリマーブレンドは、当該分野において公知である任意の標準的な方法(例えば、ポリスルフィド成分とポリチオエーテル成分とを混合し、そして標準的なミキサー(例えば、カウルミキサーまたはプラネタリミキサー)中でブレンドすること)に従って調製され得る。このブレンド中の、ポリスルフィド成分対ポリチオエーテル成分の比は、10:90〜90:10の範囲であり得る。50:50の比が、いくつかの実施形態について(例えば、クラスAのシーラントを作製する場合)、特に適切である。本発明のポリマーブレンドの分子量は、理論的にかまたはGPCを使用して測定される場合に、代表的に、1,000〜8,000であり、例えば、3,500〜4,500である。ポリマーブレンドのTgは、代表的に、−70℃以下であり、例えば、−60℃以下である。このブレンドの粘度は、代表的に、匹敵する分子量を有するポリスルフィドの粘度より低い。このことは、本発明のブレンドの取り扱いおよび使用の容易さに寄与し、そして特定のシーラントにおいて、溶媒の必要性を、排除しない場合であっても最小にし得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーブレンドを、他のポリマーまたは添加剤とさらに混合して、このブレンドの種々の物理的性能パラメータを制御することが、望ましくあり得る。例えば、比較的硬化が速い(すなわち、8時間より速い)ブレンドは、比較的遅い硬化(すなわち、8時間より長い)を有するポリマーと混合されて、望ましい硬化速度を得ることが可能である。この実施形態において、適切な遅く硬化するポリマーは、ポリスルフィドと、DMDSと、アミンとの反応生成物である。このような生成物は、PRC−DeSoto International,Inc.から、PERMAPOL P.5として市販されている。
【0011】
本発明のブレンドのために特に適切な用途は、全てのクラスのシーラントにおける用途である。「シーラント」などの用語は、周囲条件(例えば、水分および温度)に抵抗する能力を有し、そして材料(例えば、水、燃料、および他の液体および気体)の移動を少なくとも部分的に遮断する、組成物をいう。シーラントは、しばしば、接着特性もまた有する。シーラントは、一般に、それらの粘度に基づいて、「クラス」によって見分けられる。クラスAのシーラントは、一般に、100ポアズ〜400ポアズの粘度を有する。これらのシーラントは、代表的に、ブラシで塗布されるので、これらのシーラントは、しばしば、「ブラシコート」と称される。クラスBのシーラントは、代表的に、6000ポアズ〜18000ポアズの粘度を有し、そして代表的に、押出し銃またはスパチュラの使用によって塗布される。これらのシーラントは、代表的に、フィレット(fillet)シール上に使用され、そして通常、燃料タンクのシーラントとして使用される。クラスCのシーラントは、一般に、クラスAのシーラントとクラスBのシーラントとの間の粘度を有し、例えば、1000ポアズ〜4000ポアズである。クラスCのシーラントは、種々の様式で塗布され得、例えば、ブラシ、ローラまたは押出し銃を用いて塗布され得、そして代表的に、「フェイ(fay)シール」のために使用される。異なるクラスのシーラントが、しばしば、組み合わせて使用される。異なる化学が異なるシーラントに存在する場合、適合性の問題(特に、長期間の適合性)が生じ得る。例えば、ポリチオエーテル含有シーラントを、硬化したポリスルフィド含有シーラント上に塗布すると、経時的に機能しなくなり得る。本発明のポリマーブレンドを含有する組成物は、ポリスルフィド含有シーラントとポリチオエーテル含有シーラントとの間の接着を促進する際に、非常に効果的である。ポリスルフィド化学およびポリチオエーテル化学は、非適合性である傾向があるので、本発明のポリマーブレンドが調製され得、次いでシーラント処方物において使用され得ることは、驚くべきことであった。実際に、ポリスルフィドシーラント処方物およびポリチオエーテルシーラント処方物を含有するブレンドは、作製され得なかった。
【0012】
2種の異なるシーラント層の間の適合性または接着を促進する能力に加えて、本発明におけるポリスルフィド化学とポリチオエーテル化学との組み合わせは、各化学の望ましい特性を、1つの処方物中で組み合わせる。例えば、いくつかの実施形態において、このブレンドは、ポリスルフィド処方物より低い粘度、およびポリスルフィド処方物より高い低温安定性、およびポリチオエーテル処方物より高い化学耐性を有する。本発明のポリマーブレンドを含有する組成物の硬化速度はまた、ポリスルフィドまたはポリチオエーテルのいずれか単独を含有する組成物より速い。航空宇宙産業用のシーラントが、比較的長い塗布時間(すなわち、シーラントが使用可能なままである時間)および短い硬化時間(すなわち、所定の強度に達するまでに必要とされる時間)を有することは、特に望ましい。本発明のポリマーブレンドを含有する組成物は、約1時間の塗布時間および約6時間の硬化時間を有し得る。
【0013】
本発明のポリマーブレンド、およびこれらのブレンドが組み込まれる組成物はまた、比較的低いガラス転位温度(「Tg」)(すなわち、−70℃以下)を有する。低いTgは、多くの航空宇宙産業用途において望ましい。なぜなら、良好な低温可撓性を示すからである。Tgは、公知の方法(例えば、DSC、DMA、またはTMA、およびASTM(American Society for Testing and Materials)D 522−88に記載される方法と類似の方法)によって決定され得る。さらに、本発明のポリマーおよび組成物は、良好な性能および取り扱い特性を有し、そしていくつかの実施形態において、種々の基材に対する良好な接着を有する。
【0014】
本発明は、本発明のポリマーブレンドを含有する組成物に、さらに関する。特に適切な組成物は、シーラントとして使用される組成物である。シーラントは、本発明に従って、多くの異なる粘度を有するように調製され得る。本発明のポリマーブレンドを使用して調製される、クラスAのシーラント(すなわち、約100ポアズ〜400ポアズの粘度を有する)は、しばしば、他のクラスAのシーラントより少ない溶媒を必要とする。なぜなら、このポリマーブレンドは、ポリスルフィド単独よりも低い粘度を有するからである。従って、本発明のクラスAのシーラントは、環境的な利点を提供する本発明のポリマーブレンドを使用して調製される。クラスBのシーラント(すなわち、6000〜18000の粘度を有するシーラント)は、しばしば、ポリスルフィド単独を用いて調製されたクラスBのシーラントよりも低いTgおよび高い温度抵抗性を有し、そしてポリチオエーテル単独を用いて調製されたシーラントよりも良好な化学耐性を有する。本発明のポリマーブレンドはまた、クラスCのシーラントの調製において使用され得、このシーラントは、1000ポアズ〜4000ポアズの粘度を有する。
【0015】
上記のように、本発明のポリマーブレンド、およびこれらのブレンドを含有する組成物の、特定の実施形態は、非結晶化性であり得る。「非結晶化性」などの用語は、周囲温度で液体であるポリマーをいい、そして半結晶の蝋でも、ゴムでも、固体でもない。非結晶化ポリマーは、固体になるために充分に低い温度まで冷却される場合でさえも、アモルファス固体であり、温度が周囲温度まで上昇すると、液体状態に戻る。従って、本発明は、少なくとも1種のポリスルフィド成分および少なくとも1種のポリチオエーテル成分を含有する、ポリマーブレンドを含有する非結晶化組成物にさらに関する。1つの実施形態において、非結晶化組成物中のポリスルフィド成分の分子量は、1500未満であり、例えば、約1000である。
【0016】
上記ポリスルフィド/ポリチオエーテルブレンドに加えて、本発明の組成物は、代表的に、硬化剤および1種以上の添加剤をさらに含有する。用語「硬化剤」とは、本発明のポリマーブレンドの硬化またはゲル化を加速するために、このブレンドに添加され得る材料をいう。「硬化」または「硬化する」とは、シーラントが、ASTM D2240に従って測定される場合に、30 Durometer 「A」の硬化硬度を達成する点をいう。任意の適切な硬化剤が、使用され得る。特定の実施形態において、この硬化剤は、末端メルカプタン基を酸化してジスルフィド結合を形成する、酸化剤を含有する。適切な酸化硬化剤としては、例えば、二酸化鉛、二酸化マンガン、二酸化カルシウム、過ホウ酸ナトリウム一水和物、過酸化カルシウム、過酸化亜鉛、二クロム酸塩およびエポキシが挙げられる。他の適切な硬化剤は、ポリマーブレンド中の官能基と反応性である、反応性官能基を含み得る。例としては、ポリチオール(例えば、ポリチオエーテル);ポリイソシアネート(例えば、イソホロン、ジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネート(これらの混合物およびイソシアヌレート誘導体を含む));ならびにポリエポキシドが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエポキシドの例としては、ヒダントインジエポキシド、ビスフェノール−Aエポキシド、ビスフェノール−Fエポキシド、ノボラック系エポキシド、脂肪族ポリエポキシド、ならびにエポキシ化不飽和樹脂およびエポキシ化フェノール樹脂のいずれかが挙げられる。用語「ポリエポキシド」とは、1より大きい1,2−エポキシ当量を有する物質をいい、モノマー、オリゴマー、およびポリマーを含む。
【0017】
種々の添加剤(例えば、充填剤、接着促進剤および可塑剤)もまた、本発明の組成物において使用され得る。本発明の組成物において(特に、航空宇宙産業用途について)有用な充填剤としては、当該分野において通常使用されているもの(例えば、カーボンブラック、重炭酸カルシウム(CaCO)、シリカ、ナイロンなど)が挙げられる。ポッティング化合物充填剤としては、高いバンドギャップの材料(例えば、硫化亜鉛および無機バリウム化合物)が挙げられる。1つの実施形態において、これらの組成物は、この組成物の総重量に基づいて、約10重量%〜約70重量%(例えば、約10重量%〜50重量%)の、選択された充填剤または充填剤の組み合わせを含有する。
【0018】
1種以上の接着促進剤もまた、使用され得る。適切な接着促進剤としては、フェノール(例えば、Occidental Chemicalsから入手可能なMETHYLONフェノール樹脂)、オルガノシラン(例えば、エポキシ官能性シラン、メルカプト官能性シランまたはアミノ官能性シラン(例えば、Osi Specialtiesから入手可能なA−187およびA−1100))が挙げられる。接着促進剤は、処方物の総重量に基づいて、0.1重量%〜15重量%の量で使用され得る。
【0019】
可塑剤は、組成物において、この処方物の総重量に基づいて、1重量%〜8重量%の範囲の量で使用され得る。有用な可塑剤としては、フタル酸エステル、塩素化パラフィン、および水素化テルフェニルが挙げられる。
【0020】
組成物は、1種以上の有機溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)を、この処方物の総重量に基づいて0重量%〜15重量%の範囲の量(例えば、15重量%未満または10重量%未満)でさらに含有し得る。
【0021】
本発明の組成物はまた、必要に応じて、当該分野において標準的である他の添加剤(例えば、顔料;揺変剤;遅延剤;触媒;およびマスキング剤)を含有し得る。
【0022】
有用な顔料としては、シーラントの分野において従来的である顔料(例えば、カーボンブラックおよび金属酸化物)が挙げられる。顔料は、処方物の総重量に基づいて、約0.1重量%〜約10重量%の量で存在し得る。
【0023】
揺変剤(例えば、フュームドシリカまたはカーボンブラック)は、組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%〜5重量%の量で使用され得る。
【0024】
本発明の組成物は、代表的に、20重量%〜70重量%(例えば、35重量%〜50重量%)の、本発明のポリマーブレンド;1重量%〜50重量%(例えば、5重量%〜25重量%、または約10重量%)の、硬化剤;および10重量%〜50重量%(例えば、5重量%〜30重量%、または約25重量%)の、他の添加剤を含有し、重量%は、この組成物の総重量に基づく。
【0025】
本発明の組成物は、代表的に、2成分または「2K」システムとして、パッケージされる。1つの成分は、本発明のポリマーブレンドおよび種々の添加剤(例えば、充填剤、増量剤、接着促進剤、加速剤、および/または遅延剤)を含有する;第二の成分は、一般に、硬化剤および種々の添加剤(例えば、可塑剤、充填剤、加速剤、および/または遅延剤)を含有する。次いで、これらの2つの成分は、使用の直前に混合される。例えば、これらの2つの成分は、特別に適合されたカートリッジ/棒システム(例えば、PRC−DeSoto International,Inc.からSEMKITとして市販されているもの)を使用して、混合され得る。あるいは、これらの成分は、一緒に混合され得、そしてこの混合物が、硬化剤が反応性である温度より低い温度に維持され得る。用語「反応性」とは、化学反応が可能であることを意味し、そして反応物質の部分的な反応から完全な反応までの、任意の反応レベルを包含する。約−40℃未満の貯蔵温度は、硬化剤と、ポリマーブレンドのポリスルフィド成分および/またはポリチオエーテル成分との間の反応を遅延させるかまたは防止するために、代表的に適切である。
【0026】
本発明の組成物は、ポリスルフィド化学とポリチオエーテル化学との適合化において、特別な用途を見出すので、本発明の組成物は、シーラント処方物において使用される場合、修復を行う際に特に有用である。「修復」は、代表的に、シーラントの漏出または損傷の場合に必要とされる。例えば、ポリスルフィド化学を有するシーラントが、基材上に堆積され得る。ポリチオエーテル層が、このポリスルフィド層の上部に直接堆積される場合、このポリチオエーテル層は、すでに硬化したポリスルフィド層との適合性を長期間にわたって維持しない。本発明のシーラントを、すでに硬化したポリスルフィド層に塗布することによって、引き続いて堆積されるポリチオエーテル層との接着が容易にされる。従って、本発明は、シーラントを修復するための方法にさらに関し、この方法は、本発明の組成物を、すでに硬化した第一のシーラントに塗布する工程、および第二のシーラントを、本発明の組成物上に堆積させる工程を包含する。第一のシーラントまたは第二のシーラントのいずれかが、ポリスルフィド化学を利用し、そして他方が、ポリチオエーテル化学を利用する。第二のシーラントは、本発明の組成物上に、任意の時点(例えば、本発明の組成物が「タックフリー」であるために充分な硬化を起こした場合には、湿ったままである間、または、より進行した硬化レベルになった後)で堆積され得る。
【0027】
多層シーラントの組み合わせもまた、本発明の主題であり、この組み合わせは、第一のシーラント層、および第二のシーラント層を含み、本発明のシーラントの層が、第一のシーラント層と第二のシーラント層との間にある。ここでまた、第一のシーラント層または第二のシーラント層のいずれかが、ポリスルフィド化学に基づき、そして他方が、ポリチオエーテル化学に基づく。
【0028】
本発明の組成物は、多数の基材(例えば、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、およびこれらのプライマーコートされた形態、有機コーティングされた形態、およびクロメート処理された形態、エポキシ、ウレタン、黒鉛、ガラス繊維複合材料、KEVLAR、アクリルおよびポリカーボネート)に塗布され得る。本発明の組成物は、航空宇宙産業用途(例えば、航空宇宙産業用のシーラントならびに燃料タンク、機体などのライニング)において、特に有用である。本発明による航空宇宙産業用シーラント材料は、高温耐性、燃料耐性および曲げ強度が挙げられる特性を示し得る。本明細書中に記載される処方物はまた、極端な温度、化学的に厳しい環境および/または機械的振動を受ける用途に、よく適している。
【0029】
本発明のポリマーブレンドは、一般に、ゲル化していない。このことは、このポリマーブレンドが、測定され得る固有粘度を有することを意味する。しかし、本発明のポリマーブレンドは、上記のように、適切な硬化剤を用いて硬化させられ得る。本発明の硬化した処方物は、一般に、良好な低温可撓性を有し、これは、航空宇宙産業用途において望ましい。なぜなら、これらの処方物は、環境条件(例えば、温度および圧力)ならびに物理条件(例えば、接合部の収縮および膨張、ならびに振動)の広い変動に曝露されるからである。
【0030】
本明細書中に報告される粘度は、ASTM D−2849、第79段落〜第90段落に従って、Brookfield Viscometerを使用して決定される、約25℃の温度および約760mmHgの圧力で、測定される。
【0031】
本明細書中で使用される場合、他に明白に特定されない限り、全ての数字(例えば、値、範囲、量または百分率を説明する数字)は、単語「約」が明白に現れない場合でさえも、この用語が前にあるかのように読み取られ得る。本明細書中に記載される任意の数字範囲は、この範囲に含まれるすべての部分範囲を包含することが意図される。複数形は、単数形を包含し、そして逆もまたそうである。また、本明細書中で使用される場合、用語「ポリマー」は、プレポリマー、オリゴマー、およびホモポリマーとコポリマーとの両方をいうことを意味し、接頭辞「ポリ」は、2以上をいう。
【実施例】
【0032】
以下の実施例は、本発明を説明することが意図され、そしていかなる方法においても、本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0033】
表1に列挙される成分を、二軸カウル型バッチミキサー中で、27インチ水銀以上の減圧下で均一になるまで混合することによって、クラスAのシーラントを調製した。成分Bは、本発明のポリマーブレンドを表し、そして成分Aは、加速剤を表す。成分Bおよび成分Aを、100:12の重量比で混合し、最終シーラントを調製した。このシーラントを、BMS 5−45 Rev.B Class A Grade 1の要件について試験した。例えば、このシーラントの長期間の適合性を試験した。このブレンドを含有するシーラントを、硬化したポリスルフィド航空宇宙産業用シーラントの上に塗布し、これを、ジェット参照流体に曝露した。このブレンドを含有するシーラントを、タックフリー状態まで硬化させ、次いで、ポリチオエーテルシーラントを、このブレンドを含有するシーラントの上に塗布し、14日間硬化させ、ジェット参照流体に、140°Fで42日間浸漬し、次いで、BMS 5−45 Rev.B要件に対する接着について試験した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

本発明の特定の実施形態が、説明の目的で上に記載されたが、本発明の細部の多数のバリエーションが、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明から逸脱することなくなされ得ることが、当業者に明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の好適な実施形態によれば、以下の組成物、方法などが提供される:
(項目1)
ポリマーブレンドであって、該ポリマーブレンドは、
a)少なくとも1種のポリスルフィド成分、および
b)少なくとも1種のポリチオエーテル成分、
を含有する、ポリマーブレンド。
(項目2)
a:bの比が、10:90〜90:10である、項目1に記載のポリマーブレンド。
(項目3)
a:bの比が、50:50である、項目2に記載のポリマーブレンド。
(項目4)
前記ポリスルフィド成分が、1種より多くのポリスルフィドポリマーを含有する、項目1に記載のポリマーブレンド。
(項目5)
前記ポリスルフィド成分中の1種のポリスルフィドポリマーが、1000の分子量を有し、そして該ポリスルフィド成分中の1種のポリスルフィドポリマーが、4000の分子量を有する、項目4に記載のポリマーブレンド。
(項目6)
前記ポリスルフィド成分が、1000〜4000の数平均分子量を有する、項目1に記載のポリマーブレンド。
(項目7)
前記ポリチオエーテル成分が、3000〜4000の数平均分子量を有する、項目1に記載のポリマーブレンド。
(項目8)
前記ポリチオエーテル成分が、2.1〜2.6の平均官能性を有する、項目7に記載のポリマーブレンド。
(項目9)
−70℃以下のTgを有する、項目1に記載のポリマーブレンド。
(項目10)
項目1に記載のポリマーブレンドを含有する、非結晶化組成物。
(項目11)
前記ポリスルフィド成分の数平均分子量が、1500未満である、項目10に記載の非結晶化組成物。
(項目12)
項目1に記載のポリマーブレンドを含有する、組成物。
(項目13)
100ポアズ〜400ポアズの粘度を有する、項目12に記載の組成物。
(項目14)
6000ポアズ〜18000ポアズの粘度を有する、項目12に記載の組成物。
(項目15)
1000ポアズ〜4000ポアズの粘度を有する、項目13に記載の組成物。
(項目16)
シーラント組成物であって、該シーラント組成物は、
a)ポリマーブレンドであって:
i)少なくとも1種のポリスルフィド成分、および
ii)少なくとも1種のポリチオエーテル成分、
を含有する、ポリマーブレンド;ならびに
b)硬化剤、
を含有する、シーラント組成物。
(項目17)
前記硬化剤が、酸化剤を含有する、項目16に記載のシーラント。
(項目18)
前記硬化剤が、二酸化マンガンを含有する、項目17に記載のシーラント。
(項目19)
充填剤、接着促進剤、可塑剤、顔料、揺変剤、遅延剤、触媒、およびマスキング剤から選択される、少なくとも1種の添加剤をさらに含有する、項目16に記載のシーラント。
(項目20)
充填剤を含有する、項目19に記載のシーラント。
(項目21)
第一のシーラントを修復する方法であって、該方法は、
a)項目12に記載の組成物を、該第一のシーラント層に塗布する工程;および
b)該組成物上に、第二のシーラント層を塗布する工程、
を包含し、ここで、該第一のシーラント層または第二のシーラント層のいずれかが、ポリスルフィド化学に基づき、そして他方のシーラント層が、ポリチオエーテル化学に基づく、方法。
(項目22)
多層シーラント組成物であって、該組成物は、
a)第一のシーラント;
b)第二のシーラント;ならびに
c)少なくとも1種のポリスルフィド成分および少なくとも1種のポリチオエーテル成分を含有するポリマーブレンドを含有する、シーラント、
を含有し、ここで、該ポリマーブレンドを含有するシーラント層は、該第一のシーラントと第二のシーラントとの間にあり、そして該第一のシーラントまたは第二のシーラントのいずれかは、ポリスルフィド化学に基づき、そして該第一のシーラントまたは第二のシーラントの他方は、ポリチオエーテル化学に基づく、多層シーラント組成物。
(項目23)
混合物であって、該混合物は、
a)項目1に記載のポリマーブレンド;および
b)8時間より長い硬化時間を有するポリマー、
を含有する、混合物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2010−132924(P2010−132924A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43556(P2010−43556)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【分割の表示】特願2007−531264(P2007−531264)の分割
【原出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(502328466)ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド (29)
【Fターム(参考)】