説明

ポリマーベースのステントアセンブリ

【課題】哺乳動物の血管または管路中に移植された場合に緩和関連の負の反動をほとんど示さないかまたは全く示さないポリマーベースのステントを提供すること。
【解決手段】膨張可能なバルーンカテーテルと、緩和関連性の負の反動に対して抵抗性であるポリマーベースのステントとを備えるポリマーベースのステントアセンブリを調製するための方法が提供される。この方法は、所定の最終的な形状および直径であるポリマー性円筒状デバイスを、そのポリマーのTgよりも十分に高い温度になるまで、そのデバイスの事前加工の記憶を消すために十分な時間の間加熱する工程;およびその後、そのデバイスを急冷して、上記の所定の最終的な直径および形状の記憶を有する教育されたデバイスを提供する工程;その教育された円筒状デバイスを、膨張可能なバルーンカテーテルに取り付ける工程;を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、哺乳動物被験体(好ましくは、ヒト被験体)の管(tube)、管路(duct)、または脈管(vessel)(尿道、胆管、血管、リンパ管、気管支、または前立腺管が挙げられるが、これらに限定されない)の形状を維持するための、ポリマーベースのステントアセンブリに関し、このアセンブリは、膨張可能なバルーンカテーテルと、ポリマーベースのステントとを、備える。より具体的には、本発明は、哺乳動物被験体の管、管路、または脈管中に移植された場合に、緩和関連性の負の反動をほとんど示さないかまたは全く示さない、分解性のポリマーステントを備えるアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
アテローム性動脈硬化症は、コレステロール結晶、壊死性細胞、脂質プール、過剰な線維エレメント、およびカルシウム沈着物からなる脈管病変またはプラークが、個体の動脈内壁に蓄積する疾患である。動脈におけるそのようなプラークの存在は、動脈壁の肥厚および管腔の狭窄をもたらす。最終的には、そのようなプラークの増大は、その病変部位における動脈管腔の閉塞をもたらし得る。冠状動脈のアテローム性動脈硬化症を処置するための最も成功する処置のうちの1つは、経皮的経管的冠状動脈形成術(本明細書中で、以後「PTC血管形成術」と呼ばれる)である。PTC血管形成術は、アテローム性動脈の管腔中へと収縮したバルーンを導入する工程;そのバルーンを、プラークまたはアテローム性動脈硬化症性病変の部位に近接して配置する工程;そのバルーンを、約6atm〜約20atmの圧力まで膨張させ、それによってそのプラークを「破壊」し、その動脈の管腔の断面積を増加させる工程;からなる。
【0003】
不幸なことに、PTC血管形成術の間にプラークに対して及ぼされる圧力はまた、その動脈にも損傷を与える。その症例のうちの30%〜40%において、脈管は、もとの狭窄病変の位置において、徐々に再狭窄するか、または再閉鎖する。この段階的な再狭窄または再閉鎖(これは、本明細書中で、以後、「慢性再狭窄」と呼ばれる)は、ほぼ脈管形成術の後の最初の3ヶ月〜6ヶ月の間においてのみ生じる現象である。慢性再狭窄の機構の研究は、慢性再狭窄が、圧力損傷部位における動脈の慢性的圧縮(本明細書中で、以後、「再狭窄の収縮形態」と呼ばれる)にかなりの部分起因し、そしてより少ない程度には、平滑筋細胞の増殖(本明細書中で、以後、「再狭窄の増殖形態」と呼ばれる)に起因することを示している(非特許文献1)。
【0004】
再狭窄を防ぐための多数のアプローチが、現在使用されているかまたは試験されている。あるアプローチは、平滑筋細胞の増殖を防ぐための生理活性因子の使用を含む。現在まで、生理活性因子のみの使用では、成功しないことが証明されている。別のアプローチは、PTC血管形成術後の狭窄病変部位において展開される、金属製ステントを使用する。金属製ステントは、再狭窄の収縮形態を防止するために必要な機械的強度を有するが、動脈中に金属製ステントが存在すると、生物学的問題(血管痙攣、コンプライアンスミスマッチ、および閉塞さえ挙げられる)をもたらし得る。時には、技術的困難性(遠位移動および不完全な拡張が挙げられる)もまた、金属製ステントに関して観察されている。さらに、動脈において金属製ステントを永久に移植させることから生じる、固有の重大な危険(血管壁の腐食を含む)が存在する。さらに、血液に対するこのステントの定常的暴露は、血管内における塞栓形成をもたらし得る。
分解性ポリマーから作製されたステントもまた、再狭窄を防止するために示唆されている。一般的には、金属製ステントに対する魅力的な代替法であるけれども、動物における試験によって、分解性ステントは、複数の合併症(緩和関連性の負の反動、およびステント全体またはその一部の遠位移動、ならびにそのステント管腔内における閉塞性塞栓の形成が挙げられる)に悩まされることが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lafontら,Restenosis After Experimental Angioplasty,Circulation Res.(1995)76:996〜1002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、現在のステント設計の不利点を克服する新規なステントを有することが望ましい。哺乳動物の血管または管路中に移植された場合に、緩和関連の負の反動をほとんど示さないかまたは全く示さないポリマーベースのステントが、望ましい。膨張可能なバルーンカテーテルと、その膨張可能なバルーンカテーテルに安定かつぴったり配置された分解性のポリマーステントとを備える、ステントアセンブリを有することもまた、望ましい。室温で保存された場合にかまたはヒト患者の血流において見出される生理的条件に暴露された場合に、そのステントが拡張するのを防ぐために機械的拘束を必要としない、ポリマーベースのステントアセンブリが、特に望ましい。そのようなステントおよびステントアセンブリを調製する方法もまた、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(本発明の要旨)
本発明は、膨張可能なバルーンカテーテルと、ポリマーベースのステントとを備える、ポリマーベースのステントアセンブリを調製するための方法を提供し、このポリマーベースのステントは、哺乳動物被験体(特に、ヒト被験体)の血管または管路に移植された場合に、緩和関連の負の反動に対して抵抗性である。そのポリマーベースのステントは、ポリマー(好ましくは、分解性かつ生体吸収性のポリマー)から形成された壁を備える、中空の円筒状デバイスの形態である。そのような壁は、第一開放端、第二開放端、およびその第一開放端からその第二開放端まで延びるチャネルを規定する。その壁は、その壁の厚みを実質的には変化させることなくその円筒状デバイスの直径減少および直径増加を許容する、開放空間またはスリットを中に組み込んでいる。
【0008】
一局面において、上記方法は、所定の最終的な形状(すなわち、拡張後のステントの、望ましい最終的な直径、壁厚、長さ、および設計)であるポリマー性円筒状デバイスを、そのポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも十分高い温度まで、そのポリマー性円筒状デバイスの事前加工のあらゆる記憶を消すために十分な時間の間加熱する工程;その後、そのポリマー性円筒状デバイスを急冷し(すなわち、その円筒状デバイスを、そのポリマーのTgよりも低い温度にて急速に冷却し)、所定の最終的な直径および形状の記憶を有する教育されたポリマー性円筒状デバイスを提供する(本明細書中で、以後、「円筒状デバイスを教育する」と呼ばれる)工程;を包含する。好ましくは、そのポリマー性円筒状デバイスは、そのような教育手順の間に、支持体に接触した状態で取り付けられる。その後、上記方法は、その教育された円筒状デバイスを、膨張可能なバルーンカテーテルに取り付ける工程;そのポリマーのTgの温度またはそのTgよりもわずかに高い温度まで加熱する一方でその円筒状デバイスの壁の外部表面に圧力を一様に付与することによって、教育された円筒状デバイスの直径を減少させる工程(本明細書中で、以後、「円筒状デバイスにクリンピング(crimp)する」と呼ばれる工程);その後、その円筒状デバイスをそのポリマーのTgよりも低くなるまで冷却して、膨張可能なバルーンカテーテルと、その膨張可能なバルーンカテーテルにぴったりと安定的に配置された拡張可能な教育されたポリマー性ステントとを備えるステントアセンブリを提供する工程;を包含する。クリンピング(波形を付ける)の間に壁厚を実質的には変化させることなくその円筒状デバイスの直径減少を許容する、スリット(slit)または開放空間(open space)が、膨張可能なバルーンカテーテルに円筒状デバイスがクリンピングされる前に、円筒状デバイス中に組み込まれる。クリンピングの間にその円筒状デバイスが加熱される温度は、その円筒状デバイスの直径減少を許容するためには十分に高いが、教育された円筒状デバイスの所定の最終的な形状および直径の記憶を消さないためは十分に低い。従って、教育された円筒状デバイスがクリンピングの間に加熱される温度は、その円筒状デバイスの教育の間にその円筒状デバイスが加熱される温度よりも低い。さらに、その円筒状デバイスがクリンピングの間に加熱される時間は、その円筒状デバイスがその円筒状デバイスの教育の間に加熱される時間よりも短い。本発明の方法に従って、上記ポリマー性ステントをその所定の最終的な形状まで拡張することは、そのポリマー性ステントが配置されるバルーンカテーテルを体温にて膨張させることか、またはそのポリマー性ステントが配置されるバルーンカテーテルを膨張させる一方でそのステントをそのポリマーのTg付近ではあるがそのTgよりも高くはない温度まで加熱することによって、達成され得る。
【0009】
別の局面において、本発明の方法は、最初は直径が所定の最終的な直径よりも小さい、ポリマー性の管で始まる。そのような管(これはまた、その管の直径を実質的に変化させることなくその管の拡張を許容するために、その壁にスリットまたは開放空間を有する)は、まず、そのポリマーのTg付近の温度またはそのTgよりも高い温度まで加熱され、拡張され、望ましい最終的な直径と直径が等しい円筒状デバイスが提供される。その後、その円筒状デバイスは、上記のように教育され、所定の最終的な形状および直径の記憶を有する教育された円筒状デバイスが提供され、その後、上記のようなバルーンカテーテルにおいてクリンピングされて、上記のバルーンカテーテルと、そのバルーンカテーテルにぴったり安定的に配置された拡張可能な教育されたポリマー性ステントとを備える、アセンブリが提供される。
【0010】
本発明はまた、本発明の方法に従って調製される、膨張可能なバルーンカテーテルと、ポリマー性ステントとを備える、アセンブリを提供する。
【0011】
別の局面において、本発明は、膨張可能なバルーンカテーテルと、そのバルーンカテーテルに取り付けられたポリマーベースのステントとを備える、アセンブリに関する。そのステントは、分解性かつ生体吸収性のポリマー物質から形成された円筒状デバイスであり、そのポリマー物質は、37℃よりも少なくとも8℃高いTg、好ましくは37℃を20℃より大きく上回るTg、より好ましくは約45℃〜約120℃のTgを有する。上記円筒状デバイスは、壁を備え、その壁は、第一開放端、第二開放端、その第一開放端からその第二開放端まで延びるチャネルを規定する。その壁には、バルーンカテーテルが膨張された場合にかまたは円筒状デバイスがそのポリマーのTgよりも高い温度まで加熱された場合に、より大きな直径および実質的に同じ壁厚までその円筒状デバイスが拡張されるのを許容する、間隙(void)または開放空間が組み込まれている。有利なことには、本発明のステントは、被験体の血管中に展開された場合にかまたは所定の最終的な形状および直径になるまで拡張されて37℃にて4週間〜6週間以上保存された場合に、緩和関連の負の反動をほとんど示さないかまたは全く示さない。有利なことには、本発明のアセンブリは、そのアセンブリが被験体の血管の中に容易に挿入され、標的部位へと前進されることを可能にする直径を有する。有利なことには、本発明のステントは、そのステントが展開の間にその最終的な直径まで完全には展開されていない場合、動脈の外径までの拡張(正の反動)および適合を示す。さらに、本発明のステントは、上記バルーンに安定に配置される。このことは、室温における保存の間にそのステントがその最終的な直径になるまで急速に拡張するのを防ぐために、機械的拘束を必要としないことを意味する。従って、必要ではないけれども、本発明のアセンブリはまた、必要に応じて、そのステントの外部表面を覆う、引き込み可能なシースを備える。そのようなシースは、保存の間のステントの変形および低速拡張を防止するために役立つ。
【0012】
本発明はまた、事前加工の記憶を欠如し、かつ所定の最終的な形状および直径の記憶を有するステントを作製する方法に関し、そして本発明はまた、そのような方法によって作製されたステントに関する。そのようなステントは、哺乳動物被験体の管路、脈管、または管の管腔中に移植された場合に、緩和関連反動をほとんど示さないかまたは全く示さない。
【0013】
本発明はまた、経皮的経管的冠状動脈(PTC)形成術の後に患者の動脈において発生し得る慢性再狭窄の危険を減少する方法に関する。この方法は、本発明のアセンブリを使用する。この方法は、本発明のステントアセンブリを、狭窄病変の位置まで送達する工程;そのバルーンカテーテルを膨張させて、そのステントを、所定の最終的な直径以下まで拡張させ、そのステントが狭窄病変位置の血管内壁に接触するかまたはゆっくり拡張して接触するようになるようにする工程;その後、そのバルーンカテーテルを収縮させて回収する工程;を包含する。本発明に従って、バルーンカテーテルの膨張によって所定の最終的な直径まで完全には拡張されていない本発明のステントは、バルーンを回収した後に拡張し続けることが決定された。本発明のステントは、望ましい最終的な直径の記憶を有するように教育されているので、本発明のステントは、標的部位中に移植された後に、負の反動をほとんど示さないかまたは全く示さない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
(定義)
「生体吸収性ポリマー」とは、本明細書中で使用される場合、その分解副産物が、人体において自然の経路を介して生体同化または排出され得る、ポリマーを指す。
【0015】
「クリンピング(crimping)」とは、本明細書中で使用される場合、ポリマー性円筒状デバイスの壁厚にも支柱にも実質的には影響を与えることなくそのデバイスの直径減少を許容するために、壁にスリットまたは開口部を有するポリマー性円筒状デバイスに半径方向に圧迫することを含むプロセスに関する。そのようなプロセスは、代表的には、円筒状デバイスの長さの増大ももたらす。
【0016】
「分解性ポリマー」とは、本明細書中で使用される場合、人体中または水溶液中に配置され、そして生理的媒体を模倣する温度条件、浸透圧重量モル濃度条件、pH条件などの下で維持された場合に、好ましくは、人体の抗原抗体防御系を有する危険を最小限にするために酵素的分解を伴わずに、モノマーおよびオリゴマーへと分解するポリマーを指す。
【0017】
「所定の最終的な形状および直径」とは、本明細書中で使用される場合、哺乳動物被験体(特に、ヒト被験体)における脈管(特に、血管)、管路、または管の中の標的部位に展開されたステントの、望ましい直径、長さ、設計、および壁厚を指す。
【0018】
「負の反動(recoil)」とは、本明細書中で使用される場合、拡張したステントの望ましくない直径減少を指す。
【0019】
「正の反動(recoil)」とは、望ましい最終的な直径を有するように教育されたがその望ましい最終的な直径まで完全には拡張されていない、ステントの直径増加を指す。
【0020】
「緩和関連性反動(relaxation−related recoil)」とは、本明細書中で使用される場合、粘弾性ポリマー物質の周知の挙動に従う分子立体構造の時間依存性の低速再構成に起因する、ポリマー性デバイス寸法の低速変化を指す。そのような再構成は、そのポリマー性物質が種々の環境条件下で加工された場合に、そのポリマー性物質を、その保存状態を代表とする熱力学的平衡へとゆっくり導く熱運動を指す。緩和は、Tgより低い温度(すなわち、その物質がガラス状態である場合)では非常に遅い。
【0021】
「Tg」または「ガラス転移温度」とは、本明細書中で使用される場合、ポリマーがゴム状態からガラス状態へと変化する(その逆もまた同様である)温度を指す。
【0022】
一局面において、本発明は、哺乳動物被験体(特に、ヒト被験体)の管、管路、または脈管の管腔中の領域へとポリマーベースのステントを送達するために使用され得る、アセンブリを提供する。このアセンブリは、膨張可能なバルーンカテーテルと、ポリマーステントとを備え、このポリマーステントは、所定の最終的な形状および直径まで拡張された場合に負の反動をほとんど示さないかまたは全く示さない。従って、このアセンブリは、経皮的経管的冠状動脈(PTC)形成術を受けたヒト被験体の血管中の病変へと本発明のステントを送達するために特に有用である。
【0023】
本発明のポリマーステントは、バルーンカテーテルにぴったり取り付けられており、収縮したバルーンカテーテルの外径と一致する内径を有し、そしてその内径は、被験体の管、脈管、または管路を通ってそのステントアセンブリが容易に挿入および通過され得るような所定の最終的な直径よりも小さい。本発明のポリマーステントは、室温で保存された場合にかまたは哺乳動物被験体(特に、ヒト被験体)の血管中に挿入された場合にそのステントが拡張しないように、バルーンカテーテルに安定に配置されている。必ずしも必要ではないが、本発明のアセンブリはまた、必要に応じて、ポリマーステントの外部表面に配置された引き込み可能なシースを備える。
【0024】
(I.ステント)
本発明のアセンブリのステントは、37℃よりも少なくとも8℃高いTg、好ましくは37℃よりも少なくとも20℃高いTgを有する分解性かつ生体吸収性のポリマーから形成される。上記ステントの壁を形成するポリマーは、ホモポリマーであっても、コポリマーであってもよい。好ましくは、このポリマーは、分解の間に小さい炎症結晶残渣の形成のリスクを最小にするために、全体的に非晶質である。このポリマーの鎖は、架橋していない。しかし、上記デバイスの教育、クリンピング、および展開を許容する熱的特徴および粘弾性特徴が維持される条件下では、軽度の架橋が許容される。特定の実施形態において、このポリマーは、約45℃〜約120℃のTgを有する。本発明のステントにとって適切なポリマーの型の例としては、乳酸ベースステレオコポリマー(L単位とD単位とから構成されるPLAxコポリマー(Xは、L−ラクチル単位の割合である)(55<Tg<60)、乳酸とグリコール酸とのコポリマー(PLAxGAy(X(L−ラクチル単位の割合)およびY(グリコリル単位の割合)は、コポリマーのTgが約45℃であるようになっている)、ならびにポリ(乳酸−co−グリコール酸−co−グルコン酸)(そのグルコニル単位のOH基は、多少置換され得る(PLAxGayGLx(X(L−ラクチル単位の割合)およびY(グリコリル単位の割合)およびZ(グルコニル単位の割合)は、そのターポリマーのTgが45℃よりも高いようになっている))が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なポリマーとしては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリグラクチン(PLAGAコポリマー)、ポリグリコネート(トリメチレンカーボネートとグリコリドとのコポリマー、ならびにポリグリコリドまたは乳酸もしくはポリ乳酸とε−カプロラクトンとのコポリマー)が挙げられるが、これらに限定されず、但し、上記ポリマーは、少なくとも45℃以上のTgを有する。
【0025】
本発明のアセンブリのステントは、円筒状デバイスであり、この円筒状デバイスは、第一開放端、第二開放端、その第一開放端と第二開放端とを接続するチャネルを有し、かつその円筒状デバイスの壁中にスリットまたは開口部を有する。そのようなスリットまたは開口部は、そのデバイスの壁の厚みを実質的には変化させることなく、より大きな直径からより小さい直径へのそのポリマー性円筒状デバイスのクリンピングを可能にし、かつそのようなスリットまたは開口部は、その円筒状デバイスの内側に展開されたバルーンカテーテルの膨張の際にその壁の厚みを実質的には変化させることなく、より小さい直径(例えば、クリンピングされた直径)からより大きな直径へのそのポリマー性円筒状デバイスの拡張を可能にする。そのようなスリットまたは開口部は、標準的な処理技術によって(例えば、成形、切断、彫刻、または写真平板によって)、形成され得る。
【0026】
そのポリマー性円筒状デバイスは、標準的技術(例えば、押出し成形、成形、紡績、射出成形、または未成形の(brut)ポリマーを中空の円筒状デバイスへと変換する他の任意の加工技術)によって形成される。それほど望ましくはないが、その円筒状デバイスはまた、ポリマー糸またはポリマー繊維を編むことによって形成され得、但し、その後、その網目は一緒に融合されて、連続的なポリマーネットワークが形成され、そのスリットまたは開口部は、その網目の間の間隙によって形成される。これらのプロセスのうちのいずれかによって形成される初期ポリマー性円筒状デバイスは、所定の最終的な形状、長さ、壁厚、および直径を有するように構成され得、これらはすべて、そのステントが利用されるべき適用に対して調整される。例えば、心血管適用のためには、これらのプロセスによって形成された初期ポリマー性デバイスは、0.5cm〜約3cmまでの範囲にある所定の最終的な長さを有し得る。特定の適用のために、その初期ポリマー性円筒状デバイスは、0.50mm〜8.0mmの範囲の所定の最終的な直径を有し得、0.05mm〜0.5mmの範囲にある所定の最終的な壁厚を有し得る。あるいは、これらのプロセスのうちのいずれかによって形成される初期円筒状デバイスは、その所定の最終的な直径よりも小さい直径を有し得る。
【0027】
本発明のステントは、種々の物質または生理活性因子を保有して送達することが可能であるように処方され得、但し、これらの物質または因子は、そのポリマーと固溶体を形成せず、そしてそのポリマー性デバイスのTgを45℃よりも低くなるまで減少させる可塑剤として作用しない。そのような物質としては、不透明化剤、天然因子(natural
agent)、および薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。そのポリマーは、そのような物質または因子と混合され得る。例えば、その物質または生理活性因子は、マトリックス中の固体分散物として、そのポリマー性円筒状デバイス中に組み込まれ得る。そのマトリックスは、本発明のステントに関連して本明細書中に上記された型の生体適合性ポリマー性物質中にある均質な粒子の分散物を用いて形成され得る。そのような粒子は、そのマトリックスの連続性に影響を与えないために十分に小さいもの(例えば、その円筒状デバイスの支柱または壁の1/5〜1/10)ではなければならない。その物質または生理活性因子はまた、嵌入(impacting)または化学的カップリングのいずれかによってその円筒状デバイスの外部表面または内部表面に配置され得る。
【0028】
本発明のステントは、以前の加工の記憶を欠如し、そして所定の最終的な形状および直径の記憶を有する。
【0029】
(II.ポリマーベースのステントアセンブリの調製)
別の局面において、本発明は、本発明のポリマーベースのステントおよびステントアセンブリを調製するための方法に関する。初期ポリマー性円筒状デバイスが、所定の最終的な直径よりも小さい直径を有する場合、スリットまたは開口部が、上記の円筒状デバイス中に形成され、その後、その円筒状デバイスは、最終的な形状および直径になるように変形または拡張される。これは、バルーンをそのポリマー性円筒状デバイス(本明細書中で、以後、「事前切断された円筒状デバイス」と呼ばれる)中に挿入し、その事前切断された円筒状デバイスをその事前切断された円筒状デバイスを形成するために使用されるポリマーのTg以上の温度まで加熱し、そして移植されたステントの所定の最終的な内径とほぼ等しいかまたはわずかにそれよりも大きいサイズになるまでそのバルーンを膨張させることによって、達成される。その拡張された事前切断された円筒状デバイスを、例えば、その事前切断された円筒状デバイスを固体支持体に取り付けることによって所定の最終的な形状、サイズ、および直径にて維持するが、その事前切断された円筒状デバイスは、あらゆる事前プロセスに関連する記憶を消して所定の最終的な形状、サイズ、および直径の記憶を獲得するように、教育される。初期円筒状デバイスが所定の最終的な形状、サイズ、および直径において形成される場合において、そのような変形工程または拡張工程は、必要とされない。初期円筒状デバイスが所定の最終的な形状、サイズ、および直径において形成される場合において、その円筒状デバイス中のスリットまたは開口部は、下記のような教育工程の前または後に作製され得る。
【0030】
それは所定の最終的な形状、大きさ、および直径であるが、その円筒状デバイスは、そのデバイスが形成されるポリマーのTgよりも十分に高い温度まで、事前プロセスに関連するあらゆる記憶を消してそのポリマー性円筒状デバイスに対して所定の最終的な形状および直径の新たな記憶を付与するために十分な時間の間、そのデバイスを加熱することによって、教育される。そのような条件は、そのポリマー鎖が緩和し、そのポリマー鎖が、事前加工段階に典型的な絡み合いから、その円筒状デバイスが教育される高温に典型的な絡み合いへとそれ自体を再構成するのを可能にすると、考えられる。この最後の絡み合いは、急冷(室温以下への急速冷却)によって硬化される。そのポリマー性円筒状デバイスが、最初に、所定の最終的な直径よりも小さい直径である場合において、そのポリマーのTgよりも十分に高い温度まで加熱すると、押出し成形プロセスもしくは成形プロセス(その間に、そのポリマー鎖が多少方向付けられそして冷気または冷たい型枠との接触により不均一に急冷される)により促進された異方性内部応力を消すだけでなく、そのポリマー鎖の事前加工に関連する記憶もまた消す。良好な結果は、PLA75から形成され直径1.0mmから4mmへと変形された、レーザーで事前切断されたポリマー性円筒状デバイスを、温度80℃にて30分間加熱することによって得られた。約45℃〜約120℃の温度および5分間以上の時間が、PLAx(0<X<100)、PLAxGAy(0<X<25および75<Y<100)、または任意のPLAxGAyGLzから作製されたステントを教育するために適切であると、予期される。
【0031】
なおその拡張した状態にあるが、その後、その円筒状デバイスは、そのポリマーのTgより低い温度まで、好ましくは室温より低い温度まで、より好ましくは室温よりも低い温度まで、急冷または冷却される。そのような冷却工程は、その円筒状デバイスをその新しい形状になるように硬化させるために十分に速い速度で、かつ鎖緩和が生じることなく上記Tgよりも低い温度にてポリマー塊全体が平衡に達するのを可能にするために十分に遅い速度で、実施される。上記ステントの厚みを考慮すると、この時間は、そのポリマー管が教育される時間と比較して短い。
【0032】
その後、上記の教育されたポリマー性円筒状デバイスは、収縮したバルーンカテーテルに取り付けられ、そして均一にクリンピングされて、その直径が減少し、かつ本発明のステントアセンブリを哺乳動物被験体(特に、ヒト被験体)に導入することが容易になる。クリンピングの間、上記円筒状デバイスの直径は、教育されたサイズから適切な量(例えば、100%〜400%)減少される。このクリンピングは、教育された円筒状デバイスを、教育工程の間にそのデバイスに付与された記憶を消すことなくポリマーマトリックスの変形を許容するのに十分な温度まで加熱することを包含する。従って、クリンピングの間に、上記の教育された円筒状デバイスは、上記ポリマーのTgの温度またはTgよりもわずかに高い温度まで加熱されつつ、その円筒状デバイスの外部表面に対して一様に圧力が適用される。良好な結果が、上記ポリマーのTgよりも5℃高い温度まで上記円筒状デバイスを加熱することによって、得られた。そのようなクリンピング工程は、その円筒状デバイスの直径を実質的に均一に減少させ、その円筒状デバイスがバルーン上にぴったり適合するようにする。同時に、そのクリンピング工程はまた、その設計が、その円筒状デバイスのスリット、開口部、または間隙の圧縮と、その円筒状デバイスの支柱を互いに対して近接するように配置することを可能にする条件下で、その円筒状デバイスの長さを増加させる。その円筒状デバイスのポリマーマトリックスを急冷するために、その後、ステントアセンブリは、そのポリマーのTgよりも低い温度まで、好ましくは室温まで、より好ましくは室温よりも低い温度まで急速に冷却され、一方で、その円筒状デバイスの外部表面に対して圧力が維持される。最終生成物は、ステントアセンブリであり、このステントアセンブリは、膨張可能なバルーンカテーテルを備え、このカテーテルは、そのカテーテルに安定に配置されたぴったり適合するポリマーステントを備える。本明細書中で使用される場合、句「に安定に配置された」とは、ステントが、通常の保存条件下で(すなわち、室温または室温よりも低い温度で保存される間)、または哺乳動物被験体の脈管中にそのアセンブリを医師が挿入するのを可能にする短い時間の間に、拡張しないことを意味する。
【0033】
(III.本発明のステントを教育およびクリンピングするための時間および温度を決定するための手順)
上記円筒状でデバイスを教育するため、そしてそれによって緩和関連反動に対して抵抗性であるステントを開発するために適切な、温度および時間は、本発明のステントアセンブリのバルーンカテーテルを所定の最終的な直径になるまで膨張させること、収縮後のバルーンカテーテルを除去すること、そして拡張したステントを37℃にて保存することによって、評価され得る。ステントが、これらの条件下で4〜6週間、または好ましくは経皮的経管的冠状動脈(PTC)形成術から動脈壁を除去するために見積もられる時間保存された場合にほとんど反動を示さないかもしくは全く反動を示さない場合に、そのステントを教育するために使用される時間および温度が、適切である。そのポリマーステントが少しの反動を示す場合において、上記円筒状デバイスは、その少しの負の反動を補償するために、所定の最終的な直径よりもわずかに大きな直径で教育され得る。
【0034】
ステントを、減少した直径になるようにクリンピングするために適切な時間および温度は、本発明のアセンブリのステントを取り付けたバルーンカテーテルを室温または保存温度のままにさせることによって、評価され得る。クリンピングされたステントが、これらの条件下で収縮したバルーンに対応する小さな直径にてつぶれた状態のままである場合、クリンピングの間に使用される時間および温度が、適切である。
【0035】
(IV.ステントの展開)
本発明のポリマーベースのステントアセンブリは、哺乳動物皮被験体の管路、管、または脈管(例えば、血管)中に、好ましくはガイドカテーテルと組み合わせて導入され、そして標的部位(例えば、狭窄病変部位)へと前進される。上記のポリマーベースのステントアセンブリが、その標的部位に配置された後、バルーンが急速に膨張され、それによって、上記ステントが、望ましい最終的な直径またはその最終的な直径よりもわずかに小さい直径まで拡張させられる。必要に応じて、上記の膨張流体、バルーン、およびステントは、拡張を補助するために体温よりも高い温度まで加熱される。このプロセスの間に、そのステントの直径は増加するが、そのステントの壁厚は、実質的には同じままである。
【実施例】
【0036】
本明細書中に含まれる以下の実施例は、本発明を例示することを意図するが、本発明を限定することは意図しない。
【0037】
(実施例1)
ポリマーチューブを、PLA75(サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した場合に、Mw=約130,000、Mw/Mn=1.8、Tg約58℃)から、1.2mm/1・4mmの内径/外径の色素を通して押出すことによって形成した。その後、スリットを、壁厚を変えることなく小さい直径のポリマー性円筒状デバイスの拡張を可能にする設計に従って、フェムト秒パルスレーザーを使用して、その押出したチューブ中に切り込んだ。その小さい直径の円筒状デバイスを、収縮した4mmのバルーンに取り付け、加熱浴において65℃まで加熱し、そしてそのバルーンを膨張することによって4mmまで拡張させた。その後、得られたアセンブリを、ほぼ室温まで急速に冷却した。そのバルーンを取り出し、4mmのステンレス鋼支持体を、上記円筒状デバイス中に挿入して、そのデバイスがその所定の最終的な直径および形状になるように固定した。事前加工のあらゆる記憶を消すため、そしてその円筒状デバイスに対してこの最終的な直径および形状の記憶を付与するために、上記ステンレス鋼支持体に取り付けたデバイスを、80℃に予熱したオーブンにおいて30分間加熱した。その後、この教育された円筒状デバイスを、温度20℃の流水中に挿入することによって室温まで急速に冷却した。一方で、このデバイスは、依然として上記支持体上に取り付けられていた。この冷却は、上記ポリマー性デバイスを硬化する効果を有する。その後、この新たに成形されたステントを、新たな収縮したバルーンに取り付け、その後、このバルーンおよびステントの両方を、65℃まで加熱した。65℃とは、このデバイスの変形を可能にするためには十分に高いが、短時間でその鎖を再構成させるために十分に高いものではない、温度である。その後、このステントを、そのステントの外部表面に対して等しい圧力を適用することによって、上記バルーンにクリンピングした。このステントを、金属製ステントのクリンピングのために代表的に使用される標準的システムを使用することによって、収縮したバルーンにクリンピングした。そのようなシステムは、そのデバイスの外部表面に等しい半径方向の圧力を適用する。一旦、その直径が、収縮したバルーンに安定に適合するために十分に小さいサイズまで減少した後で、この圧力を、維持し、一方で、縮小した取り付けられたステントを急速に冷却して、このステントをクリンピングされた形状および減少した直径にて硬化させた。この硬化によって、バルーンにおけるステントのぴったりした適合が確保された。
【0038】
(実施例2)
ポリマーチューブを、PLA75(サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した場合に、Mw=約130,000、Mw/Mn=1.8、Tg約55℃)から、4.0mm/4.2mmの内径/外径の色素を通して押出すことによって形成した。その後、間隙空間を、得られた教育されたポリマー性円筒状デバイスを壁厚を改変することなく小さい直径まで縮小することを可能にする設計に従って、フェムト秒パルスレーザーを使用して、その押出したチューブ中に切り込んだ。4mmのステンレス鋼支持体を、上記円筒状デバイス中に挿入して、そのデバイスがその所定の最終的な直径および形状になるように固定した。事前加工のあらゆる記憶を消すため、そしてその円筒状デバイスに対してこの最終的な直径および形状の記憶を付与するために、上記ステンレス鋼支持体に取り付けたデバイスを、80℃に予熱したオーブンにおいて30分間加熱した。その後、この教育された円筒状デバイスを、温度20℃の流水中に挿入することによって室温まで急速に冷却した。一方で、このデバイスは、依然として上記支持体上に取り付けられていた。この冷却は、上記ポリマー性デバイスを硬化する効果を有する。その後、この教育されたステントを、新たな収縮したバルーンに取り付け、その後、このバルーンおよびステントの両方を、65℃まで加熱した。65℃とは、このデバイスの変形を可能にするためには十分に高いが、短時間でその鎖を再構成させるために十分に高いものではない、温度である。その後、このステントを、そのステントの外部表面に対して等しい圧力を適用することによって、上記バルーンにクリンピングした。一旦、その直径が、収縮したバルーンに安定に適合するために十分に小さいサイズまで減少した後で、この圧力を、維持し、一方で、縮小した取り付けられたステントを急速に冷却して、このステントをクリンピングされた形状および減少した直径にて硬化させた。この硬化によって、バルーンにおけるステントのぴったりした適合が確保された。
【0039】
(実施例3)
ポリマーチューブを、PLA50(サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した場合に、Mw=約145,000、Mw/Mn=1.6、Tg約58℃)から、1.2mm/1.4mmの内径/外径の色素を通して押出すことによって形成した。このチューブを、上記実施例1において記載されるように加工して、本発明のステントアセンブリを提供した。
【0040】
(実施例4)
ポリマーチューブを、PLA50(サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した場合に、Mw=約145,000、Mw/Mn=1.6、Tg約55℃)から、4.0mm/4.2mmの内径/外径の色素を通して押出すことによって形成した。このチューブを、上記実施例2において記載されるように加工して、本発明のステントアセンブリを提供した。
【0041】
(実施例5)
ポリマーチューブを、PLA62.5(サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した場合に、Mw=約165,000、Mw/Mn=1.7、Tg約56℃)から、1.2mm/1.4mmの内径/外径の色素を通して押出すことによって形成した。このチューブを、上記実施例1において記載されるように加工して、本発明のステントアセンブリを提供した。
【0042】
(実施例6)
ポリマーチューブを、PLA62.5(サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した場合に、Mw=約165,000、Mw/Mn=1.7、Tg約56℃)から、4.0mm/4.2mmの内径/外径の色素を通して押出すことによって形成した。このチューブを、上記実施例2において記載されるように加工して、本発明のステントアセンブリを提供した。
【0043】
(実施例7)
ポリマーチューブを、PLA96GA4(サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した場合に、Mw=約185,000、Mw/Mn=1.8、Tg約51℃)から、1.2mm/1.4mmの内径/外径の色素を通して押出すことによって形成した。このチューブを、上記実施例1において記載されるように加工して、本発明のステントアセンブリを提供した。
【0044】
(実施例8)
ポリマーチューブを、PLA96G4(サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した場合に、Mw=約185,000、Mw/Mn=1.8、Tg約51℃)から、4.0mm/4.2mmの内径/外径の色素を通して押出すことによって形成した。このチューブを、上記実施例2において記載されるように加工して、本発明のステントアセンブリを提供した。
【0045】
実施例1〜8において記載したように作製したステントを、所定の最終的な直径まで拡張させ、液体環境において室温にて3ヶ月よりも長く保存した。これは、負の反動を示さなかった。
【0046】
上記から、数々の利点を有する、ステント、膨張可能なバルーンとこのステントとを備えるアセンブリ、およびそれらの使用方法が提供されることが、理解され得る。本発明のステントは、所定の最終的な形状および直径の記憶を有するので、これは、哺乳動物被験体の脈管中に移植された場合に、緩和関連反動をほとんど示さないかまたは全く示さない。さらに、所定の最終的な直径よりも小さい直径になるまで機械的応力によって拡張された場合に、本発明のステントは、正の反動を示し得、そしてこれは、そのステントが展開される脈管の外径に対する適合を示し得る。本発明のステントは、標的部位へと物質および生理活性因子を運ぶように構築および/または処理され得る。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
緩和関連反動に対して抵抗性である分解性かつ生体吸収性のポリマーステントを哺乳動物被験体に送達するためのアセンブリを調製するための方法であって、該方法は、
(a)所定の最終的な半径および壁厚であるポリマー性円筒状デバイスを、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも十分に高い温度まで、該ポリマー性デバイスの事前加工の記憶を消すために十分な時間の間、加熱する工程であって、該ポリマー性円筒状デバイスは、壁を有し、該壁は、第一開放端、第二開放端、および該第一開放端と該第二開放端とを接続するチャネルを規定する、工程;
(b)該ポリマー性円筒状デバイスを、該ポリマーのTgよりも低い温度にて急速に冷却して、該ポリマー性円筒状デバイスを急冷し、そして該所定の最終的な直径および形状の記憶を有する教育されたポリマー性円筒状デバイスを提供する工程;
(c)工程(a)の前または工程(b)の後に、該ポリマー性円筒状デバイスの壁においてスリット、間隙、または開放空間を形成する工程であって、該スリット、間隙、または開放空間は、該デバイスの壁厚を実質的には変化させることなく該デバイスの直径の減少を可能にするような構成である、工程;
(d)該教育されたポリマー性円筒状デバイスを、膨張可能なバルーンカテーテルに取り付ける工程;
(e)該円筒状デバイスを該ポリマーのTgの温度またはTgよりもわずかに高い温度まで加熱しつつ、該円筒状デバイスの壁の外部表面に圧力を一様に付与することによって、該円筒状デバイスの直径を減少させる工程;および
(f)その後、該円筒状デバイスを該ポリマーのTgよりも低くなるまで急速に冷却して、膨張可能なバルーンカテーテルと拡張可能なポリマーステントとを備えるアセンブリを提供する工程であって、該ポリマーステントは、該哺乳動物被験体の管、管路、もしくは脈管の管腔中に移植された場合にかまたは拡張されて37℃で4週間〜6週間保存された場合、緩和関連反動に対して実質的に抵抗性である、工程;
を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記円筒状デバイスは、工程(a)および工程(b)の間に、該デバイスの直径および形状を維持するための支持体に取り付けられる、方法。
(項目3)
項目1に記載の方法であって、前記ステントは、PLAおよびステレオコポリマー(L単位とD単位とから構成されるコポリマー)、PLAGA、ポリ(乳酸−co−グリコール酸−co−グルコン酸)から選択されるポリマーから形成される、方法。
(項目4)
項目1に記載の方法であって、前記円筒状デバイスの膜厚は、工程(e)の間に、標的の管、管路、または脈管の管腔の直径よりも小さい直径まで縮小される、方法。
(項目5)
項目1に記載の方法であって、前記円筒状デバイスは、工程(e)の前後で実質的に同じである、方法。
(項目6)
哺乳動物被験体の管、管路、または脈管の管腔中に分解性かつ生体吸収性のポリマーステントを送達するためのアセンブリを調製するための方法であって、該方法は、
(a)壁を有するポリマー性円筒状デバイスを提供する工程であって、該壁は、第一開放端、第二開放端、および該第一開放端と該第二開放端とを接続するチャネルを規定し、該円筒状デバイスは、該ステントの望ましい最終的な直径および壁厚に匹敵する直径および壁厚を有する、工程;
(b)該ポリマー性デバイスの事前加工の記憶を消すことによって該デバイスを教育し、所望の直径の記憶を確立する工程であって、そのような教育は、該デバイスを該ポリマーのTgよりも少なくとも8℃高い温度まで加熱することによって達成される、工程;
(c)該デバイスを急冷して、該所定の最終的な直径および形状の記憶を有する教育されたポリマー性円筒状デバイスを提供する工程;
(d)該デバイスが教育される前または後に、該ポリマー性円筒状デバイスの壁においてスリット、間隙、または開放空間を形成する工程;
(e)該教育されたポリマー性円筒状デバイスを、膨張可能なバルーンカテーテルに取り付ける工程;
(f)該円筒状デバイスを該膨張可能なバルーンカテーテルにクリンピングする一方で、該円筒状デバイスを、該ポリマーのTgの温度またはTgよりもわずかに高い温度まで加熱する工程;および
(g)その後、該円筒状デバイスを該ポリマーのTgよりも低くなるまで急速に冷却して、膨張可能なバルーンカテーテルと拡張可能なポリマーステントとを備えるアセンブリを提供する工程であって、該ポリマーステントは、該哺乳動物被験体の管、管路、もしくは脈管の管腔中に移植された場合にかまたは所定の最終的な形状および直径まで拡張されて37℃で4週間以上保存された場合、緩和関連反動に対して実質的に抵抗性である、工程;
を包含する、方法。
(項目7)
哺乳動物被験体の管、管路、または脈管の管腔中に分解性かつ生体吸収性のポリマーステントを送達するためのアセンブリを調製するための方法であって、該方法は、
(a)壁を備える中空の円筒状デバイスを提供する工程であって、該壁は、スリット、開口部、または間隙を有し、該中空の円筒状デバイスは、該ステントの所定の最終的な直径よりも小さい半径を有する、工程;
(b)該ポリマー性円筒状デバイスを、該ポリマーのTg付近の温度またはTgよりも高い温度まで加熱する一方で、該管を該所定の最終的な直径まで拡張させる、工程;
(c)該所定の最終的な直径にて該円筒状デバイスを維持するための支持体に、該円筒状デバイスを取り付ける工程;
(d)該円筒状デバイスを、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも十分に高い温度まで、該ポリマーデバイスの事前加工の記憶を消すために十分な時間の間、加熱する工程;
(e)該ポリマー性円筒状デバイスを該ポリマーのTgよりも低い温度にて急速に冷却して、該ポリマー性円筒状デバイスを急冷し、該所定の最終的な直径の記憶を有する教育されたポリマー性円筒状デバイスを提供する工程;
(f)該教育されたポリマー性円筒状デバイスを、膨張可能なバルーンカテーテルに取り付ける工程;
(g)該円筒状デバイスを該ポリマーのTgの温度またはTgよりもわずかに高い温度まで加熱しつつ、該円筒状デバイスの壁の外部表面に圧力を一様に付与することによって、該円筒状デバイスの直径を減少させる工程;および
(h)その後、該円筒状デバイスを該ポリマーのTgよりも低くなるまで急速に冷却して、膨張可能なバルーンカテーテルと拡張可能なポリマーステントとを備えるアセンブリを提供する工程であって、該ポリマーステントは、哺乳動物被験体の管、管路、もしくは脈管の管腔中に移植された場合にかまたは所定の最終的な形状および直径まで拡張されて37℃で4週間以上保存された場合、緩和関連反動に対して実質的に抵抗性である、工程;
を包含する、方法。
(項目8)
項目6に記載の方法であって、前記ステントは、PLAおよびステレオコポリマー(L単位とD単位とから構成されるコポリマー)、PLAGA、ポリ(乳酸−co−グリコール酸−co−グルコン酸)から選択されるポリマーから形成される、方法。
(項目9)
項目6に記載の方法であって、前記円筒状デバイスの壁厚は、工程(g)の前後で実質的に同じである、方法。
(項目10)
哺乳動物被験体の管、管路、または脈管の管腔中に分解性かつ生体吸収性のポリマーステントを送達するためのアセンブリを調製するための方法であって、該方法は、
(a)壁を備えるポリマー性円筒状デバイスを提供する工程であって、該壁は、第一開放端、第二開放端、および該第一開放端と該第二開放端とを接続するチャネルを規定し、該壁は、該壁の厚みを実質的には変化させることなく該デバイスの拡張および収縮を可能にするためにスリット、間隙、または開放空間を有し、該円筒状デバイスは、該ステントの望ましい最終的な直径よりも小さい半径を有する、工程;
(b)該ポリマー性円筒状デバイスを、該望ましい最終的な直径まで拡張する一方で、該ポリマーのTg付近の温度またはTgよりも高い温度まで加熱する、工程;
(c)該ポリマー性デバイスの事前加工の記憶を消しそして該望ましい直径の記憶を確立することによって、該デバイスを教育する工程であって、そのような教育は、該デバイスを該ポリマーのTgよりも少なくとも8℃高い温度まで加熱することによって達成され、該デバイスは、支持体に取り付けられている、工程;
(c)該デバイスを急冷して、所定の最終的な直径および形状の記憶を有する教育されたポリマー性円筒状デバイスを提供する工程;
(d)該教育されたポリマー性円筒状デバイスを、膨張可能なバルーンカテーテルに取り付ける工程;
(e)該円筒状デバイスを、該膨張可能なバルーンカテーテルにおいてクリンピングする一方で、該ポリマーのTgの温度またはTgよりもわずかに高い温度まで加熱する工程;および
(f)その後、該円筒状デバイスを該ポリマーのTgよりも低くなるまで急速に冷却して、膨張可能なバルーンカテーテルと拡張可能なポリマーステントとを備えるアセンブリを提供する工程であって、該ポリマーステントは、哺乳動物被験体の管、管路、もしくは脈管の管腔中に移植された場合にかまたは所定の最終的な形状および直径まで拡張されて37℃で4週間以上保存された場合、緩和関連反動に対して実質的に抵抗性である、工程;
を包含する、方法。
(項目11)
項目1、6、7、または10に記載の方法に従って調製される、膨張可能なバルーンとポリマーステントとを備えるアセンブリ。
(項目12)
哺乳動物被験体の脈管、管、または管路中に生分解性かつ生体吸収性のステントを導入するためのアセンブリであって、該アセンブリは、
膨張可能なバルーンカテーテル;および
該膨張可能なバルーンカテーテルに取り付けられたステントであって、少なくとも45℃のTgを有する分解性ポリマー物質から形成された、ステント;
を備え、該ステントは、第一開放端、第二開放端、および該第一開放端と該第二開放端とを接続するチャネルを規定する壁を備え、該ステントの壁は、該バルーンカテーテルが膨張した場合にかまたは該ステントが該ポリマーのTgよりも高い温度まで加熱された場合に、該ステントが、より大きな直径、より短い長さ、かつ同じ壁厚になるまで拡張されるのを許容する、間隙、開放空間、またはスリットを備え、
該ステントは、被験体の血管中に展開された場合にかまたは所定の最終的な形状および直径まで拡張されて37℃にて4週間以上保存された場合に、負の反動をほとんど示さないかまたは全く示さず、
該アセンブリは、該被験体の管、脈管、または管路中に該アセンブリが挿入されて標的部位へと前進させられるのを許容する直径を有する、
アセンブリ。
(項目13)
項目12に記載のアセンブリであって、該アセンブリは、前記ステントがヒト被験体の血管中に挿入されて狭窄病変へと前進させられるのを許容する直径を有する、アセンブリ。(項目14)
項目12に記載のアセンブリであって、前記ステントは、該ステントが展開の間にその最終的な直径まで完全には展開されていない場合に、正の反動と、動脈の外形に対する適合とを示す、アセンブリ。
(項目15)
項目12に記載のアセンブリであって、前記ステントは、PLAおよびステレオコポリマー(L単位とD単位とから構成されるコポリマー)、PLAGA、ポリ(乳酸−co−グリコール酸−co−グルコン酸)から選択されるポリマーから形成される、アセンブリ。(項目16)
項目12に記載のアセンブリであって、前記ステントは、前記バルーンに安定に取り付けられている、アセンブリ。
(項目17)
項目12に記載のアセンブリであって、前記ステントの外部表面を覆う、引き込み可能なシースをさらに備える、アセンブリ。
(項目18)
項目12に記載のアセンブリであって、生理活性因子または追跡因子が、前記ステントの内部または前記ステントの表面に配置されている、アセンブリ。
(項目19)
哺乳動物被験体の管、管路、または脈管の管腔中に移植するための分解性かつ生体吸収性のポリマーステントを調製するための方法であって、該方法は、
(a)所定の最終的な半径および壁厚であるポリマー性円筒状デバイスを、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも十分に高い温度まで、該ポリマー性デバイスの事前加工の記憶を消すために十分な時間の間、加熱する工程であって、該ポリマー性円筒状デバイスは、壁を有し、該壁は、第一開放端、第二開放端、および該第一開放端と該第二開放端とを接続するチャネルを規定する、工程;
(b)該ポリマー性円筒状デバイスを該ポリマーのTgよりも低い温度になるまで急速に冷却して、該ポリマー性円筒状デバイスを急冷し、そして該所定の最終的な直径および形状の記憶を有する教育されたポリマー性円筒状デバイスを提供する工程;
(c)工程(a)の前または工程(b)の後に、該ポリマー性円筒状デバイスの壁においてスリット、間隙、または開放空間を形成する工程;
を包含し、該ステントは、被験体の血管中で展開された場合にかまたは所定の最終的な形状および直径まで拡張されて37℃にて4週間以上保存された場合には、緩和関連反動に対して抵抗性である、方法。
(項目20)
項目19に記載の方法であって、前記円筒状デバイスは、工程(a)および工程(b)の間に、該デバイスの直径および形状を維持するための支持体に取り付けられる、方法。
(項目21)
項目19に記載の方法であって、前記ステントは、PLAおよびステレオコポリマー(L単位とD単位とから構成されるコポリマー)、PLAGA、ポリ(乳酸−co−グリコール酸−co−グルコン酸)から選択されるポリマーから形成される、方法。
(項目22)
分解性かつ生体吸収性のポリマーステントを調製するための方法であって、該ステントは、哺乳動物被験体の管、管路、または脈管の管腔中に移植された場合にかまたは所定の最終的な形状および直径まで拡張されて37℃にて4週間以上保存された場合には、緩和関連反動に対して抵抗性であり、該方法は、
(a)壁を備える中空の円筒状デバイスを提供する工程であって、該壁は、スリット、開口部、または間隙を有し、該中空の円筒状デバイスは、該ステントの所定の最終的な直径よりも小さい半径を有する、工程;
(b)該ポリマー性円筒状デバイスを、該ポリマーのTg付近の温度またはTgよりも高い温度まで加熱する一方で、該管を該所定の最終的な直径まで拡張させる、工程;
(c)該所定の最終的な直径にて該円筒状デバイスを維持するための支持体に、該円筒状デバイスを取り付ける工程;
(d)該取り付けられた円筒状デバイスを、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも十分に高い温度まで、該ポリマーデバイスの事前加工の記憶を消すために十分な時間の間、加熱する工程;
(e)該ポリマー性円筒状デバイスを該ポリマーのTgよりも低い温度にて急速に冷却して、該ポリマー性円筒状デバイスを急冷し、該所定の最終的な直径の記憶を有する教育されたポリマー性円筒状デバイスを提供する工程;
を包含する、方法。
(項目23)
項目22に記載の方法であって、前記ステントは、PLAおよびステレオコポリマー(L単位とD単位とから構成されるコポリマー)、PLAGA、ポリ(乳酸−co−グリコール酸−co−グルコン酸)から選択されるポリマーから形成される、方法。
(項目24)
項目19または項目22に記載の方法に従って作製された、ステント。
(項目25)
哺乳動物被験体の管、管路、または脈管の管腔中に移植された場合にかまたは所定の最終的な形状および直径まで拡張されて37℃にて4週間以上保存された場合に緩和関連反動に対して抵抗性である、ステントであって、
該ステントは、45℃以上のTgを有するポリマーから形成されており、
該ステントは、加工の記憶を欠如しており、該ステントは、所定の最終的な形状および直径の記憶を有する、
ステント。
(項目26)
経皮的経管的冠状動脈形成術後の患者の動脈において発生し得る慢性的再狭窄の危険を減少する方法であって、該方法は、
項目12に記載のアセンブリを、狭窄病変の位置へと送達する工程;
前記バルーンを膨張させて、前記ステントを、前記所定の最終的な直径以下の直径まで拡張させる工程;および
該バルーンを収縮させて回収する工程;
を包含する、方法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物被験体反動の管、管路、または脈管の管腔中に移植された場合にかまたは所定の最終的な形状および直径まで拡張されて37℃にて4週間以上保存された場合に緩和関連反動に対して実質的に抵抗性である、ステントであって、
該ステントは、45℃以上のTgを有するポリマーから形成されており、
該ステントは、加工の記憶を欠如しており、該ステントは、所定の最終的な形状および直径の記憶を有する、
ステント。

【公開番号】特開2013−46828(P2013−46828A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255125(P2012−255125)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2010−115763(P2010−115763)の分割
【原出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【出願人】(506330391)アルテリアル リモデリング テクノロジーズ, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】