説明

ポリマーポリオールから2種金属シアン化物(DMC)触媒を除去及び再生する方法

【課題】DMC触媒を活性な状態で回収する場合の不具合を解決し、簡単かつ経済的に有効な方法でDMC触媒を元来の活性を有するまで再生させつつ、DMC触媒をポリオールから除去する簡単な方法を提供する。
【解決手段】2種金属シアン化物触媒の存在下にポリオールを形成する工程と、ポリオールに可溶の酸重合体を添加する工程と、酸重合体と、2種金属シアン化物触媒とを反応させて凝集体を形成する工程と、ポリオールから凝集体を除去する工程と、を含むことを特徴とする方法が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種金属シアン化物触媒を用いて形成されたポリオールから2種金属シアン化物触媒を除去し、再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2種金属シアン化物(DMC)触媒を用いてポリエーテルポリオールを製造する方法は公知である。一般に、DMC触媒は、ポリオール生成物に対して20ppm〜40ppmの量で使用され、ポリオール鎖の形成を触媒する。しかしながら、このようにDMC触媒を少量で用いる場合には、反応パラメータを厳重に制御し、触媒毒が反応混合物に微量たりとも混入することにより触媒の失活が生ずることを回避しなければならない。この制御は大量生産の環境下では困難である。更に、DMC触媒の濃度を低くすると、DMC触媒自体も非常に厳密に監視しなければならない。DMC触媒の濃度が100ppm未満である場合には反応パラメータと処理条件を極めて厳密な範囲に維持しなければならないと考えられる。ポリオール形成反応にはDMC触媒を100ppm〜500ppm又はこれを上回る割合で添加すると好ましいことがわかっている。しかしながら、DMC触媒をこのように高添加率とすると、得られたポリオールからDMC触媒を再生しない場合には、コストが非常に増大する。更に、DMC触媒の使用量が多く、これがポリウレタンポリマーの製造に用いられる際にポリオール中に残存すると、得られるポリウレタンポリマーの性質が不都合な影響を受ける。
【0003】
開始剤と、アルキレンオキサイドモノマーと、二酸化炭素モノマーとの反応によりポリエーテルカーボネートポリオールを製造する場合にも、高添加率のDMC触媒、好ましくは100ppm〜500ppmの触媒が必要である。このような高添加割合のDMC触媒が必要とされるため、ポリウレタンポリマーの製造に使用する前に、ポリエーテルカーボネートポリオールからDMC触媒を除去しなければならない。また、コストの面からはDMC触媒の回収が必要である。
【0004】
更に、オキサイド−キャップされたポリオールは、DMC触媒のみを用いて製造することが困難である。従って、エチレンオキサイド添加工程の前であって、DMC触媒の除去又は失活の後に、第二の触媒、例えばKOHを用いることが必要である。このため、ポリオール製造の主要部であるDMC触媒を用いたポリオール形成反応工程の後に、DMC触媒を迅速に除去する方法を開発する必要性がある。
【0005】
米国特許第5627120号明細書には、高活性のDMC触媒の製造法が開示されている。同製造法では、DMC触媒を低濃度で使用することが可能とされ、触媒の除去の必要性を除外している。しかしながら、DMC触媒を非常に低濃度で使用すると、開始剤やモノマー中に存在する微量の触媒毒によりDMC触媒が失活するという不具合が生ずる。更に、同文献に開示された方法は、PO−EOブロック共重合体ポリオールが得られてしまう不具合を解決するものではない。この場合、POブロックの完成後にDMC触媒を定量的に除去しなければならない。
【0006】
これまで、液体ポリオールからDMC触媒を除去するために種々の試みがなされてきた。一般的な除去の形態は、ケーキ濾過によるものである。この方法の一例が米国特許第4721818号明細書に開示されている。同明細書によると、粗ポリオールとアルカリ金属水素化物とを反応させることにより、DMC触媒を不溶の材料に変換し、これを濾過により除去可能とする技術が示されている。ポリオール中に含まれるDMC触媒粒子は非常に微細であるために、ポリオール生成物からDMC触媒を効果的に除去するため、通常は付加的な濾過助剤、例えば濾過媒体上にフィルターケーキを形成するための珪藻土をあらかじめ施すことが必要である。DMC触媒は、フィルターケーキからは回収できず、この濾過方法は非常に時間がかかる。更に、DMC触媒の一部はポリオールポリマー鎖に付着したままとされることもあるため、ポリオール中に取り込まれると、濾過によっては除去できない。
【0007】
米国特許第5416241号明細書には、DMC含有ポリオールをアルカリ金属化合物で処理してDMCを除去し、次いでケイ酸マグネシウム吸収剤と濾過を用いる方法が開示されている。この除去方法もDMC触媒を濾過可能な形態に変換するものであり、分解処理を伴い、DMC触媒残渣がフィルターケーキ中に閉じ込められる。
【0008】
米国特許第5099075号明細書には、DMC含有ポリオールを酸化剤で処理し、次いで残留物を濾過、抽出、又は遠心分離により除去する方法が開示されている。この除去方法もDMC触媒を濾過可能な形態に変換し、活性DMC触媒を分解する技術である。
【0009】
DE19809539号公報によると、不活性担体上に施されたDMC触媒を製造、使用する方法が開示されている。担体を有するDMC触媒は濾過により簡単に除去可能であり、又は連続製造法の一部において反応器中に残存する。この技術の不具合は、DMC触媒の安定性が不足する可能性があることにある。すなわちDMC触媒が担体を離れて処理対象の混合物中に放出され、ポリオール生成物がDMC触媒により汚染され、更に触媒の活性が失われるという不具合がある。
【0010】
米国特許第5248833号明細書にはDMC含有ポリオール生成物を脂肪族アルコール及びキレート剤と接触させて得られた不溶の錯体を除去する方法が記載されている。同方法では、上記キレート剤と共に希釈溶媒を使用することが必須とされ、DMC触媒を除去した後にこの溶媒を除去することも必要となり、処理工程が複雑化かつ高価となる。
【0011】
DMC触媒の分離と、分離されたDMC触媒の再利用についても種々の試みがなされている。
【0012】
ヨーロッパ特許第385619号公報には、DMC触媒粒子をポリオール生成物から除去するために非極性溶媒を添加する方法が記載されている。濾過助剤が添加され、DMC触媒は濾過により除去される。この方法により回収されたDMC触媒は濾過助剤中に大量に含まれる可能性があり、DMC触媒の当初の活性を回復させるための措置は何ら講じられていない。
【0013】
ヨーロッパ特許第19957105公報には、沈殿法と遠心分離法によりポリオール生成物からDMC触媒を分離する方法が記載されている。この方法では大量の濾過助剤を添加することが回避され、DMC触媒は再利用される。しかしながら、純粋に機械的な手段により非常に微細なDMC粒子の分別がなされるため、技術的に困難であり、時間と費用がかかる。このためこの方法は経済性に欠ける。
【0014】
上記各特許により、ポリオールからDMC触媒を分離する種々の方法が開示されているが、これらの特許にはポリオールから活性なDMC触媒を再利用のために回収することに伴う不具合を解決する方法は開示されていない。上記のポリオールからDMC触媒を分離する先行技術による各方法は、DMC触媒を分解するか、DMC触媒の再利用を可能とするための処理工程を加える非経済的なものであるかのいずれかである。
【0015】
【特許文献1】米国特許第5627120号明細書
【特許文献2】米国特許第4721818号明細書
【特許文献3】米国特許第5416241号明細書
【特許文献4】米国特許第5099075号明細書
【特許文献5】ヨーロッパ特許19809539号公報
【特許文献6】米国特許第5248833号明細書
【特許文献7】ヨーロッパ特許第385619号公報
【特許文献8】ヨーロッパ特許第19957105公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、DMC触媒を活性な状態で回収する場合の不具合を解決し、簡単かつ経済的に有効な方法でDMC触媒を元来の活性を有するまで再生させつつ、DMC触媒をポリオールから除去する簡単な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明によるとポリオールの製造の間に使用する2種金属シアン化物触媒を除去、再生する方法が得られた。ポリオール媒体中で可溶の試薬が液体ポリオール製品に添加される。この試薬は液体ポリオール中で可溶の酸重合体であることが好ましい。試薬はDMC触媒と反応し、液体ポリオール中に不溶のDMC触媒と試薬との凝集体を形成する。更に、ポリマーポリオール鎖末端のプロトン化によりポリオール鎖の反応サイトから試薬がDMC触媒を抽出し、凝集体が形成される。更に、DMC触媒の凝集体粒子の大きさは、標準的な濾過媒体を用い濾過助剤を用いない濾過によってポリオール生成物からDMC触媒を除去することが可能な大きさとされる。また、DMC触媒から試薬は分離可能であり、初めからDMC触媒中に含まれていた酸による簡単な処理により当初の活性を有するDMC触媒を再生することが可能である。
【0018】
遊離のDMC触媒と反応可能であり、かつポリオール活性サイトに結合したままのDMC触媒を分離することが可能な試薬を導入することによって、上述の従来技術により言及されていない不具合の解決がなされる。本発明の試薬はDMC触媒と凝集体を構成し、DMCの有効粒径を増大させ、慣用の方法によりポリオールからDMC触媒を容易に濾過することが可能とする。従って、インデクシングペーパーフィルター(indexing paper filter)等の慣用のフィルターを用い、ポリオールからDMC触媒を濾過することができる。この場合、まずDMC触媒のフィルターケーキを形成する必要はない。ポリオールからDMC触媒が分離されれば、DMC触媒は酸重合体から容易に回収される。ポリオール生成物からDMC触媒を効率的かつ有効に除去し、元来のDMC触媒を再生させることにより、ポリオール製造工程で高濃度のDMC触媒を使用することが可能となる。これにより低品質、安価なDMC触媒が使用可能となり、反応混合物に混入したDMC触媒毒によりDMC触媒が失活する危険性を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
2種金属シアン化物(DMC)触媒はポリオールの製造に広く用いられている。ポリオールをイソシアネートと反応させることによりフォーム及びエラストマー等のウレタン生成物が製造される。当業者に公知であるように、アルキレンオキサイドと、少なくとも1種類の開始剤とを、触媒の存在下に反応させることによりポリオールが製造される。すなわち、重合反応により所望のポリオールが得られる。
【0020】
一般的に使用されるアルキレンオキサイドの例には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドがある。ポリエーテルカーボネートポリオールを形成するためには、二酸化炭素の存在下に重合反応が行われ、二酸化炭素はポリオール構造に導入される。本発明に好適に用いられる開始剤分子の例としては、少なくとも1個のアルキレンオキサイド活性の水素、例えばアルコール、多価アルコール及びアミン化合物が挙げられる。アルコールの例には、脂肪族アルコール及び芳香族アルコール、例えばラウリルアルコール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、及びC12−C18脂肪族アルコールが含まれる。多価アルコールの例としては、ジオール、トリオール、及び多官能性アルコール、例えばサッカロース及びソルビトールがある。アミン化合物の例には、ジアミン、例えばエチレンジアミン、トルエンジアミン、及び他のポリアミンがある。好ましい実施の形態において、開始剤化合物を用いることにより数平均分子量約200〜1500のオリゴマーが形成される。このようなオリゴマーは、複数種類のアルキレンオキサイドを開始剤分子に付加する自己触媒開始剤又は塩基性触媒のいずれかを用いることにより得られる。このように得られたオリゴマー分子は本発明のDMC触媒と共に使用され、所望のポリオールが得られる。
【0021】
重合反応の速度を向上させるため、及び制御するために2種金属シアン化物触媒が用いられる。有効であることがわかっている2種金属シアン化物触媒の例は以下の通りである。
【0022】
ヘキサシアノ鉄酸(III)亜鉛、ヘキサシアノ鉄酸(II)亜鉛、ヘキサシアノ鉄酸(II)ニッケル(II)、ヘキサシアノ鉄酸(III)ニッケル(II)、ヘキサシアノ鉄酸(III)亜鉛水和物、ヘキサシアノ鉄酸(II)コバルト(II)、ヘキサシアノ鉄酸(III)ニッケル(II)水和物、ヘキサシアノ鉄酸(III)鉄、ヘキサコバルト酸(III)コバルト(II)、シアノコバルト酸(II)亜鉛、ヘキサシアノマンガン酸(II)亜鉛、ヘキサシアノクロム酸(III)亜鉛、ペンタシアノ鉄酸(III)亜鉛ヨウ素、クロロペンタシアノ鉄酸(II)コバルト(II)、ブロモペンタシアノ鉄酸(II)コバルト(II)、フルオロペンタシアノ鉄酸(III)鉄(II)、クロロブロモテトラシアノ鉄酸(III)亜鉛、ヘキサシアノ鉄酸(III)鉄(III)、ジクロロテトラシアノ鉄酸(III)アルミニウム、ブロモペンタシアノ鉄酸(III)モリブデン(IV)、クロロペンタシアノ鉄酸(II)モリブデン(VI)、ヘキサシアノクロム酸(II)バナジウム(IV)、ヘキサシアノ鉄酸(III)バナジウム(V)、ヘキサシアノマンガン酸(III)ストロンチウム(II)、ヘキサシアノバナジウム酸(IV)タングステン(IV)、クロロペンタシアノバナジウム酸(V)アルミニウム、ヘキサシアノ鉄酸(III)タングステン(VI),ヘキサシアノ鉄酸(II)マンガン(II)、ヘキサシアノ鉄酸(III)クロム(III)等。この他のシアン化物錯体、例えばZn[Fe(CN)5NO]、Zn3[Fe(CN)5NO22、Zn[Fe(CN)5CO]、Zn[Fe(CN)52O]、Fe[Fe(CN)5OH]、Cr[Fe(CN)5NCO]、Cr[Fe(CN)5NCS]、Al[CO(CN)5NCO]、Ni3[Mn(CN)5NCS]2等も使用可能である。これらの化合物の混合物も使用可能である。各2種金属シアン化触媒及びこれを製造する方法は、米国特許第4472560号明細書、同第45500704号明細書、同第4826887明細書、同第4826952明細書、同第4826953明細書に記載されており、これらの文献の内容は本明細書に記載されているものとする。
【0023】
所望の分子量の種々のポリオールを製造するためには、種々の濃度のDMC触媒が必要とされる。ポリエーテルカーボネートポリオールを形成するためには、例えば対応のポリエーテルポリオールを製造するために使用されるよりも大幅に高い添加率でDMC触媒を用いることが必要とされる。このように高添加率で用いられるDMC触媒はポリマーに結合(付着)せず、明確に視認可能であり、ポリオールが白濁した状態で観察される。従って、高触濃度のDMC触媒をポリオール生成物から除去しなければならない。DMC触媒は高価であるため、DMC触媒粒子を十分な割合で再生し、これを、次いで行われるポリオール製造工程に使用することが望ましく、経済的に有利である。既に述べたように、ポリエーテルカーボネートポリオールを得るためには重合反応にDMC触媒が高濃度で添加され、これにより所望の分子量のポリオールが得られる。特に、重合反応に100〜500ppmの濃度のDMC触媒を用いると好ましい。得られたポリオールからこのような濃度で使用されたDMC触媒を再生することは困難であるため、ポリオールの価格が増大し、かつポリオールの所望の性質に不都合な影響が与えられる。
【0024】
上記重合反応に所定の試薬を導入することにより、DMC触媒が試薬による凝集体を構成し、この凝集体はポリオールから容易に濾過可能であるということが見出された。ポリオールに可溶の酸重合体を上記試薬として液体ポリオールに導入し、DMC触媒との凝集体を構成する。理論に拘束されなければ、酸重合体における酸基がポリエーテルポリオールの末端基又はDMC触媒が付着するポリエーテルカーボネートポリオールの反応サイトをプロトン化させると考えられる。ポリオール鎖の活性な末端をプロトン化させることにより、ポリオールがDMC触媒から離れ、DMC触媒に対して酸重合体が結合し、プロトン化された状態の反応サイトから除去される。DMC触媒の金属における活性部位において結合が起こるものと考えられる。酸重合体は、ポリオールをプロトン化し、1個以上のDMC触媒粒子と反応することが可能な2種類以上の反応性の基を有することが好ましい。酸重合体が多数のDMC触媒粒子と反応可能である複数の反応基を有し、これによりポリオール成分から容易に除去可能な大きな凝集体を構成すると更に好ましい。
【0025】
DMCに対し所望の活性を有することが知られている所望の酸重合体の例には、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、ポリアクリル酸及びこれらの混合物が挙げられる。酸重合体の分子量は500〜10000であると好ましい。この範囲の大きさの酸重合体は、ポリオール成分からDMC触媒を吸収することにおいて有効である。酸重合体:DMC触媒のモル比は0.01:1〜100:1であると好ましく、0.1:1〜10:1であると更に好ましい。
【0026】
酸重合体をDMC触媒に結合させる他の方法も使用可能である。DMC触媒との結合力が強い酸重合体を選択すれば、酸重合体とDMC触媒との好ましいモル比が使用可能となりプロトン化が可能とされる。また、酸重合体をDMC触媒に結合する質量作用法を用いてもよく、この方法によるとDMC触媒に対してモル過剰量の酸重合体が、ポリオール成分に添加される。この場合、酸重合体は、DMC触媒に対し高い結合力を有する必要はない。
【0027】
DMC触媒と試薬により形成された凝集体は、粒径に応じた標準的な濾過媒体を用いることによりポリオールから容易に濾過される。更に、ポリオールからDMC触媒が大量に除去されるため、これにより得られたDMC触媒を再利用のために再生することができる。DMC触媒を酸重合体から分離するため、凝集体を酸で処理する。酸は、酸のアニオンをDMC触媒中に取り込み、処理中にDMC触媒を再構成する目的で用いられる。通常は塩酸又は酢酸が使用される。例えば、弱酸の重合体を用いて活性DMC触媒を再生するには、酢酸が有効であることがわかっている。遊離した酸重合体は濾過と複数回の洗浄によりDMC触媒から容易に除去される。そして、DMC触媒は酢酸アニオンを含むことにより元来の活性な状態に再構成される。他の酸重合体を洗浄と再生に用いる場合は、塩酸が使用可能である。これにより、再生したDMC触媒が塩化物対イオンを有するようになる。DMC触媒を更に水で洗浄してもよい。これにより、水中でもポリオール成分中でも可溶の酸重合体を得ると好ましい。洗浄されたDMC触媒を当業者に公知の方法により再結晶してもよい。
【0028】
DMC触媒凝集物に関して試薬として酸重合体を使用すること、及び濾過方法を用いることにより、ポリオール生成物からDMC触媒を簡単に除去することが可能となり、元来の活性を有するDMC触媒が再構成される。本発明の一実施の形態において、ポリエチレンイミン等のポリアミン化合物をDMC粒子の凝集体に作用させることも可能である。DMC−ポリアミド凝集体は、所望の酸を単に添加することによっては当初のDMC触媒を容易に再生させるこができないため、ポリ酸を使用することが好ましい。
【0029】
DMC触媒の除去の例を以下の実施例により更に説明する。
【実施例】
【0030】
ポリエチレンアルコールポリオールの大規模生産における一般的方法
【0031】
[実施例1]
撹拌機、外部加熱部材、冷却コイルによる内部冷却部材、プロピレンオキサイド給送ライン、ガス供給ライン、温度センサ及び圧力センサを具備する、清浄な乾燥した容量2ガロンのオートクレーブに、精製した開始剤ポリオール、グリセリンとプロピレンオキサイドモノマーの付加物(分子量MW730、含水率0.03%未満、残留触媒含有率5ppm未満)、及びDMC触媒を装填した。開始剤−触媒混合物を1mmHg未満の減圧下に、2時間にわたり、130℃まで加熱して、残留湿分を除去した。減圧装置を取り外し、アルゴンガスにより0psiまで加圧した。200gのプロピレンオキサイドを添加し、反応器の圧力増加を監視した。15分〜30分間で、反応器圧が再度0psiに低下した。これによりDMC触媒が活性を有することが示されている。次いで、1800gのプロピレンオキサイドモノマーを130℃にて、3時間にわたり実質的に一定の速度で添加した。プロピレンオキサイド添加工程の完了後、残存する未反応のプロピレンオキサイドが130℃にて反応しつくした。次いで反応器を開放し、冷却し、生成物を回収した。ピーク値の分子量及び質量平均分子量をゲル透過クロマトグラフィーにて測定した。Brookfield DV-III粘弾性測定器を用い25℃にて粘度を測定した。
【0032】
2ガロンのオートクレーブ操作に次いで、精製された開始剤ポリオール1000g、DMC触媒の懸濁液20g(精製された開始剤ポリオール中5%、グリセリンとプロピレンオキサイドモノマーの付加物、MW730=0.025gの触媒)を用いた。反応温度は130℃であった。反応生成物の収量は2835gであった。ピーク値の分子量は1874であり、質量平均分子量は2066であった。多分散性Mw/Mnは1.05であり、生成物の粘度は499cPであった。
【0033】
[実施例2]
撹拌機、外部加熱部材、冷却コイルによる内部冷却部材、プロピレンオキサイド給送ライン、ガス供給ライン、温度センサ及び圧力センサを具備する、清浄な乾燥した容量5ガロンのオートクレーブに、5907gの精製した開始剤ポリオール、グリセリンとプロピレンオキサイドモノマーの付加物(分子量MW430、含水率0.03%未満、残留触媒含有率5ppm未満)を装填した。次いで、DMC触媒と、グリセリンとプロピレンオキサイドモノマーとの付加物(MW900)の5%懸濁液=0.025gの触媒)の5%懸濁液168gを添加した。開始剤−触媒混合物を10mmHg未満の減圧下に、1時間にわたり120℃まで加熱して、残留湿分を除去した。減圧装置を取り外し、窒素ガスにより0〜2psiまで加圧した。400gのプロピレンオキサイドを15分間で添加し、反応器の圧力増加を監視した。15分〜30分間で、反応器圧が0psiまで再下降した。これによりDMC触媒が活性を有することが示されている。次いで、7533gのプロピレンオキサイドモノマーを120℃にて、2000g/時間の一定速度で添加した。
【0034】
プロピレンオキサイド添加工程の完了後、残存する未反応のプロピレンオキサイドが120℃にて反応しつくした。次いで反応器を開放し、1時間にわたり10mm未満まで排気した。N2ガスを用いて減圧状態を緩和させた。冷却後、生成物を回収した。ピーク値の分子量及び質量平均分子量をゲル透過クロマトグラフィーにより測定した。ピーク値の分子量は840であった。質量平均分子量は935であった。多分散度Mw/Mnは1.06であった。ヒドロキシル価は171.6であり、酸価は0.006であった。触媒除去の実験において、得られた生成物を分子量730のグリセリン−プロピレンオキサイド付加物(割合2:3w/w)と混合した。得られた混合物におけるDMC触媒の濃度を原子吸光分光法により測定した。これにより亜鉛濃度が53ppm、一酸化炭素濃度が24ppmであることが示された。
【0035】
ポリエチレンカーボネートポリオールの合成
ポリエチレンカーボネートポリオールの製造における一般的方法
【0036】
[実施例3]
撹拌機、外部加熱部材、冷却コイルによる内部冷却部材、プロピレンオキサイド給送ライン、ガス供給ライン、温度センサ及び圧力センサを具備する、清浄な乾燥した容量2ガロンのオートクレーブに、精製した開始剤ポリオール、グリセリンとプロピレンオキサイドモノマーの付加物(分子量MW730、含水率0.03%未満、残留触媒含有率5ppm未満)及びDMC触媒を装填した。開始剤−触媒混合物を1mmHg未満の減圧下に、2時間にわたり130℃まで加熱して、残留湿分を除去した。減圧装置を取り外し、アルゴンガスにより0psiまで加圧した。200gのプロピレンオキサイドを添加し、反応器の圧力増加を監視した。15分〜30分間で、反応器圧が0psiまで再下降した。これによりDMC触媒が活性を有することが示されている。2500gのプロピレンオキサイドモノマーを130℃にて、3時間にわたり、一定速度で添加した。プロピレンオキサイド給送を開始した10分後、プロピレンオキサイドの給送とその反応の行われている間に、反応器をCO2ガスで加圧した。プロピレンオキサイド添加工程の完了後、残存する未反応のプロピレンオキサイドが130℃にて反応しつくした。次いで反応器を開放し、冷却後、生成物を回収した。ピーク値の分子量及び質量平均分子量をゲル透過クロマトグラフィーにより測定した。Brookfield DV-III粘弾性測定器を用い粘度を測定した。ポリマーのカーボネート含有率を、赤外分光法により測定し、ポリマー中のCO3の質量割合を算出した。
【0037】
2ガロンのオートクレーブ操作に次いで、精製された開始剤ポリオール100g、DMC触媒の懸濁液20g(精製された開始剤ポリオール中5%、グリセリンとプロピレンオキサイドモノマーの付加物、MW730=0.025gの触媒)を用いた。反応温度は130℃であった。608gのCO2をゆっくりと添加することにより反応器を加圧した。反応生成物の収量は3859gであった。ピーク値の分子量は2111であり、質量平均分子量は2990であった。多分散性Mw/Mnは1.26であり、生成物の粘度は1230cPであった。プロピレンカーボネートを除去した後の生成物の粘度は1500cPであった。ポリエチレンカーボネートポリオールのカーボネート含有率は5.8%であった。
【0038】
ポリエチレンアルコールとポリエチレンカーボネートポリオールからのDMC触媒の除去
触媒残留分の除去についての一般的方法
オーバーヘッド撹拌機、加熱マントル、温度制御装置、及びポンプに対するN2除去用管連結部材、及びカートリッジフィルター装置を具備する、容量5リットルの4頸ガラス容器に粗ポリオールを装填した。濾過した生成物を、全ての揮発成分を除去するための後濾過用の容量5リットルの第二のフラスコに回収した。
【0039】
粗ポリオールを90℃に加熱した。使用可能な場合には、濾過助剤を添加して1時間撹拌した。撹拌後、マグネシウム−アルミニウム吸収剤(Magnesol(登録商標))及び1%の水を添加した。得られた懸濁液を、90℃にて1時間撹拌した。次いで、取り付けられたカートリッジフィルターを通して懸濁液をポンプ給送し、精製したポリオールを回収した。この後、全ての揮発成分を110℃、5mmHg未満の減圧下に除去した。原子吸光分光法を用いたZn及びCo分析により分残留するDMC触媒の濃度を測定した。
【0040】
[除去例1]
上記一般的操作の後、実施例1における粗プロピレンアルコールポリオールを、Magnesol(登録商標)吸収剤(3%)と水(1%)を用いて精製した。Zn/Co分析結果としての粗ポリオールにおけるDMC触媒濃度は、Zn:76ppm、CO:33ppmであった。精製後の残留DMC触媒濃度は、Zn:42ppm、CO:19ppmであった。この結果は、濾過助剤のみを用いた場合に、ポリエチレンアルコールポリオールからDMC触媒が部分的に除去可能であることを示している。
【0041】
[除去例2]
上記一般的操作の後、実施例3における粗ポリエチレンカーボネートポリオールを、Perlite(登録商標)(3%)と水(1%)を用いて精製した。Zn/Co分析結果としての粗ポリオールにおけるDMC触媒濃度は、Zn:61ppm、CO:27ppmであった。Perlite(登録商標)による精製後の残留DMC触媒濃度は、Zn:39ppm、CO:17ppmであった。この結果は、濾過助剤を用いて、ポリエチレンカーボネートポリオールからDMC触媒が部分的に除去可能であることを示している。
【0042】
[除去例3]
上記一般的操作の後、実施例2により得られた2000gの粗ポリエチレンアルコールポリオールを、20gのMagnesol(登録商標)吸収剤(1%)と10gの水(0.5%)を用いて精製した。Zn/Co分析結果としての粗ポリオールにおけるDMC触媒濃度は、Zn:53ppm、CO:24ppmであった。精製後の残留DMC触媒濃度は、Zn:14ppm、CO:6ppmであった。この結果は、Magnesol(登録商標)吸収剤を用いてポリエチレンアルコールポリオールからDMC触媒を除去しても、DMC濃度を部分的に低下させるのみであることを示している。
【0043】
[除去例4]
上記一般的操作の後、実施例2により得られた2000gの粗ポリエチレンアルコールポリオールを、20gのHyflo(登録商標)濾過助剤(1%)と10gの水(0.5%)を用いて精製した。Zn/Co分析結果としての粗ポリオールにおけるDMC触媒濃度は、Zn:52ppm、CO:24ppmであった。精製後の残留DMC触媒濃度は、Zn:14ppm、CO:6ppmであった。この結果は、Hyflo(登録商標)濾過助剤を用いてポリエチレンカーボネートポリオールからDMC触媒を除去しても、DMC濃度を部分的に低下させるのみであることを示している。
【0044】
[除去例5]
上記一般的操作の後、実施例2により得られた2000gの粗ポリエチレンアルコールポリオールを、1gのグルタル酸、20gのMagnesol(登録商標)吸収剤(1%)と10gの水(0.5%)を用いて精製した。Zn/Co分析結果としての粗ポリオールにおけるDMC触媒濃度は、Zn:53ppm、CO:24ppmであった。精製後の残留DMC触媒濃度は、Zn:9ppm、CO:<6ppmであった。この結果によると、Magnesol(登録商標)と水の他にモノマー状の多官能性の酸を用いてポリエチレンアルコールポリオールからのDMC触媒の除去を行うと、除去例3に比較してDMC濃度が更に低下することを示している。
【0045】
[除去例6]
上記一般的操作の後、実施例2により得られた2000gの粗ポリエチレンアルコールポリオールを、10gのポリアクリル酸(粉体状、MW2,000,000)、20gのMagnesol(登録商標)吸収剤(1%)と10gの水(0.5%)を用いて精製した。この高分子量のポリアクリル酸は、ポリオールにあまり溶解しなかった。Zn/Co分析結果としての粗ポリオールにおけるDMC触媒濃度は、Zn:53ppm、CO:24ppmであった。精製後の残留DMC触媒濃度は、Zn:26ppm、CO:11ppmであった。この結果によると、生成物のポリオール中に不溶性の高分子量の酸を用いてDMC触媒の除去を行うと、除去例3の場合のMagnesol(登録商標)のみを用いた場合よりもDMC触媒が低下することが示されている。
【0046】
[除去例7]
上記一般的操作の後、実施例2により得られた2000gの粗ポリエチレンアルコールポリオールを、10gのポリアクリル酸(MW5000、50%水溶液、5g=2500ppm=1ミリモル)、20gのMagnesol(登録商標)吸収剤(1%)と10gの水(0.5%)を用いて精製した。Zn/Co分析結果としての粗ポリオールにおけるDMC触媒濃度は、Zn:53ppm、CO:24ppmであった。精製後の残留DMC触媒濃度は、Zn<2ppm(検出限界未満)、CO:0ppm(検出限界未満)であった。この結果によると、可溶の酸化合物重合体によりDMC触媒が定量的に除去されたことが示されている。
【0047】
DMC触媒の再利用
【0048】
[再利用例1]
950mgのDMC触媒1362、1ミリモルの酢酸ZnDMCを、2000mlの水に40〜50℃にて懸濁させた。得られた懸濁液に20gのポリ酢酸(MW5000、水中50%(2ミリモル))を添加し、40℃〜50℃にて2時間攪拌した。濾紙によるろ過にて固体を回収し、水で3回フラッシュし、炉中65℃にて一晩乾燥させた。この固体のIRスペクトルは、元のDMC触媒1362のスペクトルと同一であった。この結果により、ポリ酢酸によっては、DMC触媒表面からAcOH残渣が除外されなかったことが示されている。
【0049】
[再利用例2]
1.5gのDMC懸濁液(5%、75mg触媒、0.075ミリモル)を、105gのグリセリン-プロピレンオキサイド付加物(MW730)に懸濁し、1gのポリ酢酸(MW5000、水中50%、0.1ミリモル)に添加した。懸濁液を回転式蒸発機に、60℃〜80℃にて4時間配置した。得られた懸濁液を一晩減圧下に置き、以下の方法において触媒懸濁液として用いた。
【0050】
撹拌機、外部加熱部材、冷却コイルによる内部冷却部材、プロピレンオキサイド給送ライン、ガス供給ライン、温度センサ及び圧力センサを具備する、清浄な乾燥した容量300mlのオートクレーブに、上述のように製造された触媒懸濁液70gを装填した。開始剤−触媒混合物を1mmHg未満の減圧下に、3時間にわたり、110℃まで加熱して、残留湿分を除去した。減圧装置を取り外し、アルゴンガスにより反応器を0psiまで加圧した。次いで5gのプロピレンオキサイドを添加し、反応器の圧力増加を監視した。15分〜30分間で、反応器圧が再度0psiに低下した。これによりDMC触媒が活性を有することが示されている。次いで、170gのプロピレンオキサイドモノマーを110℃にて1g/分の一定の速度で添加した。プロピレンオキサイド添加工程の完了後、残留する未反応のプロピレンオキサイドが110℃にて反応しつくした。次いで反応器を開放し、冷却し、生成物を回収した。収量は230gであった。ピーク値の分子量は1475、質量平均分子量は29160、多分散性は12.8であった。すべての値はゲル透過クロマトグラフィーにて測定した。
【0051】
この結果によると、ポリアクリル酸が懸濁液状で存在すると、DMC触媒の活性に悪影響が与えられることがわかる。従って、重合開始段階で酸重合体が懸濁液状体であることは望ましくない。
【0052】
[再利用例3]
ポリ酢酸によるDMC触媒の処理、及び酢酸を用いたDMC触媒の再生
活性DMC触媒懸濁液の製造
撹拌機、外部加熱部材、冷却コイルによる内部冷却部材、プロピレンオキサイド給送ライン、ガス供給ライン、温度センサ及び圧力センサを具備する、清浄な乾燥した容量300mlのオートクレーブに、DMC触媒懸濁液40g(5%、2gのDMC触媒)、及び60gのグリセリン-プロピレンオキサイド付加物(MW730)を装填した。開始剤−触媒混合物を1mmHg未満の減圧下に、1時間にわたり、130℃まで加熱して、残留湿分を除去した。減圧装置を取り外し、アルゴンガスにより0psiまで加圧した。次いで10gのプロピレンオキサイドを添加し、反応器の圧力増加を監視した。15分〜30分間で、反応器圧が再度0psiに低下した。これによりDMC触媒が活性を有することが示されている。次いで、100gのプロピレンオキサイドモノマーを110℃にて2g/分の一定の速度で添加した。プロピレンオキサイド添加工程の完了後、残留する未反応のプロピレンオキサイドが110℃にて反応しつくした。次いで反応器を開放し、冷却し、生成物を回収した。収量は230gであった。ピーク値の分子量、及び質量平均分子量をゲル透過クロマトグラフィーにて測定した。
【0053】
[再利用例4]
活性化したDMC触媒のポリ酢酸による処理、及び酢酸を用いたDMC触媒の再生
得られた活性DMC触媒と、1gの活性DMC触媒を含むポリエチレンアルコール(1ミリモル)との懸濁液100gを、ポリアクリル酸(分子量5000、水中50%、濃度2ミリモル)と混合し、回転式蒸発機に50℃〜60℃にて施し、過剰の水を除去した。30分で、白色、ポリマー状のゴム状材料が懸濁液から分離された。濾過により、ポリエチレンアルコールポリオール相からDMCポリアクリル酸ポリマーが分離された。ポリオール相は透明であり、DMC-ポリアクリル酸ポリマーにDMCが取り込まれていることが示されている。このポリマー材料を水:t−ブタノール(1:1)でフラッシュした。ポリアクリル酸(10g)、DMC触媒(1g)、及びポリエチレンアルコールポリオール(7.5g)を含む質量は18.5gである。DMC-ポリアクリル酸ポリマー9.2gを150mlの水:t−ブタノール(2:1)中に施し、更に10mlの酢酸(99%)を添加した。混合物を環境温度で2時間、更に50℃で2時間攪拌した。ポリマー材料をゆっくりと溶解させ、微細な懸濁液を得た。結晶状の固体を濾過により回収し、水:t-ブタノール(2:1)で3回フラッシュし、65℃にて一晩乾燥した。固体(0.28g)のIRスペクトルにより、再生したDMC触媒が存在し、CNストレッチによる2183cm-1の顕著なピークが示された。
【0054】
[再利用例5]
活性化したDMC触媒のポリアクリル酸による処理、酢酸を用いたDMC触媒の再生、及び再生したDMCの触媒としての使用
得られた活性DMC触媒と、1gの活性DMC触媒を含むポリエチレンアルコールポリオール(濃度1ミリモル)との懸濁液100gを、2gのポリアクリル酸(分子量5000、水中50%、濃度0.2ミリモル)と混合し、回転式蒸発機に50℃〜60℃にて施し、過剰の水を除去した。3時間後、粗い結晶懸濁液が得られた。DMC/ポリアクリル酸結晶を、濾紙を用いた濾過によりポリエチレンアルコールポリオール相から分離した。ポリオール相は透明であり、すべてのDMC触媒がDMC/ポリアクリル酸結晶に取り込まれていることを示していた。湿潤したフィルターケーキは4.9gであり、取り込まれたポリアクリル酸は1g、DMC触媒1g、及びポリエチレンアルコールポリオール2.9gであった。
【0055】
3gのDMC/ポリアクリル酸結晶材料を150mlの水:t−ブタノール(2:1)中に施し、5mlの酢酸(99%)を添加した。混合物を環境温度で2時間、更に50℃で1時間攪拌した。微細な懸濁液がゆっくりと得られた。結晶状の固体を濾過により回収し、水で3回フラッシュし、65℃にて一晩乾燥した。固体(0.77g)のIRスペクトルにより、再生したDMC触媒が存在し、CNストレッチによる2183cm-1の顕著なピークが示された。
【0056】
再生DMC化合物の触媒としての使用
撹拌機、外部加熱部材、冷却コイルによる内部冷却部材、プロピレンオキサイド給送ライン、ガス供給ライン、温度センサ及び圧力センサを具備する、清浄な乾燥した容量300mlのオートクレーに、70gのグリセリン-プロピレンオキサイド付加物(MW730)、及び0.2gの上述の再生したDMC触媒を装填した。開始剤−触媒混合物を1mmHg未満の減圧下に、1時間にわたり、130℃まで加熱して、残留湿分を除去した。減圧装置を取り外し、アルゴンガスにより0psiまで加圧した。次いで5gのプロピレンオキサイドを添加し、反応器の圧力増加を監視した。15分〜30分間で、反応器圧が再度0psiに低下した。これによりDMC触媒が活性を有することが示されている。次いで、170gのプロピレンオキサイドを110℃にて1g/分の一定の速度で添加した。プロピレンオキサイド添加工程の完了後、残留する未反応のプロピレンオキサイドが110℃にて反応しつくした。次いで反応器を開放し、冷却し、生成物を回収した。収量は236gであった。ピーク値の分子量は2105、質量平均分子量は2486、多分散性は1.13であった。これらの値はゲル透過クロマトグラフィーにて測定した。
【0057】
本発明の上記実施例は一例に過ぎず、各実施例に使用した用語は説明のために用いたものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
また、本発明の上記技術範囲を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。従って、本発明の請求の範囲に記載した範囲内においては上記記載以外の実施の形態にて、本発明を実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種金属シアン化物触媒の存在下にポリオールを形成する工程と、
ポリオールに可溶の酸重合体を添加する工程と、
酸重合体と、2種金属シアン化物触媒とを反応させて凝集体を形成する工程と、
ポリオールから凝集体を除去する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
酸重合体が、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、ポリアクリル酸及びこれらの混合物のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸重合体と、2種金属シアン化物触媒とを反応させる工程において、ポリオールをプロトン化してポリオールから2種金属シアン化物触媒を除去することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酸重合体の分子量が約500〜約10000であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
酸重合体が少なくとも2個の反応性基を有し、各反応性基が2種金属シアン化物触媒と反応可能であり、これにより前記凝集体が形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記除去工程の後に凝集体と酸とを反応させ、これにより凝集体を酸重合体と2種金属シアン化物触媒とに分離し、DMC触媒を当初の活性状態に再生することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
酸重合体を、酸重合体:2種金属シアン化物触媒のモル比が0.01:1〜10:1の範囲となるような量で添加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
酸重合体を、酸重合体:2種金属シアン化物触媒のモル比が0.1:1〜1:1の範囲となるような量で添加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
DMC含有ポリオールを酸重合体で処理し、少なくとも1時間にわたり凝集体に作用させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
DMC含有ポリオールを酸重合体で処理し、90℃〜150℃の温度で凝集体に作用させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ポリオールから凝集体を除去する工程において、遠心分離又はインデクシングフィルタの少なくともいずれか一方によりポリオールからの凝集体の濾過が行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
酸重合体が水に可溶であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記除去工程の後に、酢酸又は塩酸のいずれか一方を凝集体に添加する工程を更に含み、これにより凝集体を2種金属シアン化触媒と酸重合体とに分離することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
2種金属シアン化物触媒を回収して再利用する工程を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
2種金属シアン化物触媒を回収し、水で洗浄し、乾燥させ、これを再利用する工程を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
2種金属シアン化物触媒を回収し、再結晶により精製し、これを再利用する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
酢酸又は塩酸のいずれか一方を酢酸又は塩酸:2種金属シアン化触媒のモル比が約0.1:1〜100:1となるような量で添加することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
酢酸又は塩酸のいずれか一方を、酢酸又は塩酸:2種金属シアン化触媒のモル比が約1:1〜約10:1となるような量で添加することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
ポリオールが所望の分子量に到達した時点で酸重合体をポリオールに添加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
2種金属シアン化物触媒の存在下にポリオールを形成する工程と、
ポリオールに可溶のアミン重合体を添加する工程と、
アミン重合体と、2種金属シアン化物触媒とを反応させて凝集体を形成する工程と、
ポリオールから凝集体を除去する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
ポリオールから凝集体を除去する工程において、遠心分離又はインデクシングフィルタによりポリオールからの凝集体の濾過が行われることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
複数種金属シアン化物触媒の存在下にポリオールを形成する工程と、
ポリオールに、ポリオールをプロトン化することが可能な少なくとも2箇所の反応サイトを有する吸収剤を添加する工程と、
ポリオールをプロトン化して、ポリオールから複数種金属シアン化物触媒を分離する工程と、
複数種金属シアン化物触媒と吸収剤との凝集体を形成する工程と、
ポリオールから凝集体を分離する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
吸収剤がポリオールにも、水にも可溶であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
吸収剤が酸重合体であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
酸重合体が、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、ポリアクリル酸、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
複数種金属シアン化物触媒から吸収剤を分離する工程を更に含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項27】
更に酢酸又は塩酸のいずれか一方を凝集体に添加し、これにより吸収剤から複数種金属シアン化物触媒を分離することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項28】
酢酸又は塩酸を酢酸又は塩酸:複数種金属シアン化触媒のモル比が約1:1〜10:1となるような量で添加することを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ポリオールが所望の分子量に到達した時点で吸収剤をポリオールに添加することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項30】
2種金属シアン化物触媒の存在下にポリオールを形成する工程と、
ポリオールに可溶の酸重合体を添加する工程と、
酸重合体と、2種金属シアン化物触媒とを反応させて凝集体を形成する工程と、
ポリオールから凝集体を除去する工程と、
2種金属シアン化物触媒を再生する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
ポリオールから凝集体を除去する工程において、遠心分離又はインデクシングフィルタの少なくともいずれか一方によりポリオールからの凝集体の濾過が行われることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
2種金属シアン化物触媒を再生する工程において、酢酸又は塩酸のいずれか一方で凝集体を洗浄することを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項33】
酸重合体が、ポリカルボン酸、ポリスルホン酸、ポリアクリル酸、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項34】
酸重合体と、2種金属シアン化物触媒とを反応させる工程において、ポリオールをプロトン化してポリオールから2種金属シアン化物触媒を除去することを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項35】
酸重合体の分子量が約500〜約10000であることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項36】
酸重合体が少なくとも2個の反応性基を有し、各反応性基が2種金属シアン化物触媒と反応可能であり、これにより前記凝集体が形成されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項37】
更に、酸と凝集体とを反応させ、これにより2種金属シアン化物触媒から酸重合体を分離することを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項38】
酸重合体を、酸重合体:2種金属シアン化触媒のモル比が0.1:1〜10:1となるような量で添加することを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項39】
酸重合体が水に可溶であることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項40】
ポリオールに可溶の酸重合体を添加する工程において、ポリオールが所望の分子量に到達した時点で酸重合体を添加することを特徴とする請求項30に記載の方法。

【公表番号】特表2006−514131(P2006−514131A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568113(P2004−568113)
【出願日】平成15年10月17日(2003.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011505
【国際公開番号】WO2004/072148
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】3000 Continental Drive−North,Mount Olive, NJ 07828−1234, U.S.A
【Fターム(参考)】