説明

ポリマーマトリックスから生物学的環境中へのタンパク質制御放出のための難溶性生体適合性粒子上被着タンパク質

【課題】1種類以上のタンパク質又はペプチドの放出を調節するための組成物及び方法の提供。
【解決手段】組成物は、生体適合性ポリマーマトリックスと、タンパク質及び/又はペプチドと、難水溶性又は本質的不溶性粒子とから構成され、タンパク質は難水溶性生体適合性粒子上に吸着又は何らかの他の機構によって被着し、タンパク質−粒子組み合わせがポリマーマトリックス内に分散する。粒子上のタンパク質被着が、長時間作用性投与系を含めた投与形からのタンパク質又はペプチドの放出を調節するように作用する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、米国仮出願第60/195,700号(2000年4月7日出願)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、薬物デリバリー系からのタンパク質制御放出のための組成物及び方法に関する。特に、塩又は酸化物を包含する難水溶性又は本質的不溶性の生体適合性粒子上にタンパク質を被着させることによって、投与形からのタンパク質放出速度が低減する。
【0003】
発明の背景
生物学的系又は環境への適当な場所、適当な時間における、適当な投与量でのタンパク質又はペプチドのデリバリーを制御して、所望の効果を得るという問題に対処するために多くのアプローチが存在する。これらの系は一般に、周囲環境における物理的又は化学的刺激物の使用に依存する。さらに、これらの環境刺激物は通常、薬物デリバリー系に対して外部的性質のもの(of external nature)である。このような刺激物又はシグナルに反応する機構はタンパク質結合、ヒドロゲル膨張若しくは膨潤、ポリマー侵食、膜再組織、溶解性変化、エネルギー変換、浸透のための活性化エネルギーの供給、系を構成する物質の物理的性質変化、又は相転移現象等を包含する。例はJ.Heller,Chemically self−regulated drug delivery systems,J.Control.Rel.,8,111−125(1988)に提示される。
【0004】
最近、安全であると共に、より大きく制御された形式でタンパク質又はペプチドをデリバーする新規なタンパク質デリバリー系の開発への関心が高まっている。さらに、タンパク質デリバリーを数週間又はそれ以上にも延長させることがますます望ましくなっている。通常用いられる製薬的デリバリーデバイスは、非分解性キャリヤー、生分解性キャリヤー又は吸収性キャリヤーの形態でのインプラント、ミクロカプセル、微小球及び/又はナノ球の使用を包含する。さらに、薬物制御放出の他のミクロ粒子方法はミセル、リポソーム等の使用を包含している。
【0005】
非分解性キャリヤーはシリコーンゴム、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PST)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリエチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリアミド等を包含する。これらのキャリヤーは有効であり、時には有用でありうるが、移植された又は注入された化合物は、タンパク質の放出後に、体内に異物として留まり、それらの除去のために外科的処置を必要とする可能性がある。さらに、非分解性キャリヤーは体内である一定の副作用を惹起する可能性もある。
【0006】
これに反して、生分解性及び/又は吸収性キャリヤーを用いる場合には、キャリヤーが体内でタンパク質放出と共に又はタンパク質放出後に徐々に分解又は吸収される。実際に、生分解性ポリマーはin vivoで所定期間にわたって制御された形式で分解するように設計されることができる。このような持続放出製剤に用いるための適当な生分解性ポリマーは他の場所で充分に述べられているが、例えばポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、及びポリアミノ酸、ポリ(オルトエステル)、ポリ無水物、及びポリ(アルキルシアノアクリレート)のようなポリエステルを包含する。これらのポリマーは、水性生物学的環境に置かれたときに、酵素加水分解又は非酵素加水分解によって徐々に分解される。多くのポリマーのin vivo分解の主要な機構は、酵素も関与しうる加水分解である。加水分解に影響する重要な要因は、若干を挙げると、水透過性、化学構造、分子量、形態、ガラス転移温度、添加剤、並びに例えばpH,イオン強度及び移植部位のような、他の環境的要因を包含する。
【0007】
ミクロ粒子、インプラント、環境反応性ゲル等が非分解性キャリヤー、生分解性キャリヤー又は吸収性キャリヤーのいずれであっても、これらの薬物デリバリー媒体の全てに共通した根本的原理は、より長期間の制御されたタンパク質デリバリープロセスである。
【0008】
ミクロ粒子・キャリヤー中にタンパク質又はペプチドを組み入れる、種々なミクロカプセル充填手法は先行技術に教示されている。しかし、生分解性ポリマーマトリックスを有するミクロ粒子は、上記で示唆した利用から特に有益である。生分解性ミクロ粒子の作製方法は、若干を挙げると、(a)乳化とその後の有機溶媒蒸発による相分離(例えばO/Wエマルジョン、W/Oエマルジョン及びW/O/Wエマルジョンのような複合エマルジョン方法を包含する)、(b)コアセルベーション相分離、(c)メルト分散(melt dispersion)、(d)界面沈着(interfacial deposition)、(e)現場重合、(f)噴霧乾燥と噴霧凝固、(g)エアサスペンジョン・コーティング、及び(h)パン・コーティングを包含する。
【0009】
次に、ゲル状態で存在しうる生体適合性ポリマー(ブロックコポリマー、コポリマー等を包含する)を考慮すると、このようなポリマーはより長期間の、制御されたタンパク質又はペプチド・デリバリーのために有用である。実際に、それらの環境に感受性であるポリマーは特に有用である。これらの種類のポリマーに影響を及ぼしうる環境条件は温度の変化、pH、イオン強度、溶媒、圧力、ストレス、光度、電界、磁界及び/又は例えばグルコースのような特定の化学的トリガーを包含する。所望のタンパク質又はペプチドを含有するポリマーゲルは、非経口、眼、局所、経皮、膣、尿管、頬側、経粘膜、肺、経尿管、鼻、経口、耳、舌下、結膜を介する経路を包含する多様な経路によって、又は他の既知方法によって液体若しくはゲル状態で投与されうる。タンパク質又はペプチド負荷生体適合性及び/又は生分解性ポリマーはひと度投与されたならば、ポリマーはタンパク質又はペプチドを身体中に、それが分解する、吸収される又は他の方法で無害な生成物に還元されるにつれて、放出する。
【0010】
上記方法、即ち、ミクロ粒子、インプラント及び環境反応性ゲル・デリバリーは体内におけるタンパク質又はペプチドの制御デリバリーにある程度有効であったが、これらの個々のテクノロジーには多少の制限もあった。例えば、多くの薬物デリバリー系に付随する知られた問題は、一般にバーストと呼ばれる効果を包含する。薬物デリバリー系が例えばタンパク質のような生体活性剤(bioactive agent)を特定の時点において必要であるよりも多く放出するときに、バーストが生じる。バーストの結果は、身体へのタンパク質の所望の一様なデリバリーが確認されないことである。換言すると、場合によっては、in vivo条件下での生分解性ポリマーは、高すぎる又は低すぎる薬物放出の初期レベル(又は他の別な時点におけるレベル)を有しうる。
【0011】
他の制限は、例えばタンパク質及びペプチドのような、多くの生物学的に活性なマクロ分子が低い安定性を有するという事実を包含する。このことは特に、タンパク質又はペプチド・デリバリー組成物の調製時に存在するような激しい製造条件下に置かれるときに、例えば有機溶媒、空気−液体界面、激しい撹拌、超音波処理等に暴露されるときに該当する。さらに、多くのタンパク質又はペプチドは高度に水溶性である。
【0012】
先行技術では、タンパク質又はペプチドを例えば、若干を挙げると、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、銅、第2鉄及びニッケルのような多価カチオンによって複合体化すること(complexing)によって、タンパク質及びペプチドを安定化する及び/又はタンパク質及びペプチドの溶解性を減ずる試みがなされている。例えば、亜鉛複合体化インシュリン(zinc complexed insulin)は難水溶性であり、長時間作用性デポー製剤に製剤化されうる。さらに、米国特許第5,912,015号及び第5,891,478号に開示されるように、ヒト成長ホルモン(hGH)は亜鉛イオンによって複合体化されて、沈殿を生成している。この沈殿は生物学的環境内での1か月間持続デリバリーのために微小球中に取り入れられている。しかし、これらの特許のいずれも、薬物デリバリー・バイオポリマーからのタンパク質の放出を安定化する及び/又は延長させるために、生体適合性難溶性粒子上にタンパク質又はペプチドを被着させることを開示していない。したがって、薬物デリバリー・バイオポリマー・デバイスからのタンパク質の溶解性及び/又はタンパク質の溶解速度が低減されるような組成物を提供することが望ましいと考えられる。
【0013】
発明の概要
本発明は生物学的環境における1種類以上のタンパク質又はペプチドの調節放出のための組成物及び方法に関する。詳しくは、(a)難溶性生体適合性粒子と;(b)実質的不溶性タンパク質−粒子組み合わせを形成する、粒子上に被着した有効量のタンパク質又はペプチドと;(c)その中に分散した該タンパク質/粒子組み合わせを有する生体適合性ポリマーマトリックスとを含む、生物学的環境へのタンパク質制御放出のための薬物デリバリー系が開示される。本発明は粒子上にタンパク質又はペプチドを被着させることを単に必要とするに過ぎないが、1つの被着機構は好ましくは吸着である。他の被着機構は吸収と共沈を包含する。
【0014】
粒子表面上にタンパク質又はペプチドを吸着させることによって、先行技術の大部分に見られるよりも長時間にわたってより均一なタンパク質放出曲線を有する長時間作用性投与形中にタンパク質−粒子組み合わせを組み入れることができる。本発明はまた、生体適合性ポリマーマトリックスからのタンパク質及び/又はペプチドの放出を調節する方法に関する。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明を開示し、説明する前に、本明細書に開示した特定のプロセス工程及び物質はある程度変化することができるので、本発明がこのような特定のプロセス工程及び物質に限定されないことを理解するべきである。さらに、本発明の範囲は特許請求の範囲及びその同等物によってのみ限定されるので、本明細書で用いた用語が特定の実施態様のみを説明するために用いられ、限定であることを意図されないことを理解するべきである。
【0016】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる単数形の表現(a,an,and the)は、内容が明確に他の意味を指示しない限り、複数の対象をも包含することに注意しなければならない。
【0017】
“生体適合性”は、身体又は生物学的環境に対して有害ではない、任意の物質を意味する。ポリマー又はポリマーマトリックスは、ポリマー及びポリマーの任意の分解生成物がレシピエント又は生物学的環境に対して無害であり、また生物学的環境に明白な有害効果を及ぼさないならば、生体適合性である。粒子は、その物質が完全な粒子として又は解離イオンとして(難溶性粒子が特定の生物学的環境において解離しうる程度及び量で)身体又は生物学的環境に対して有害ではないならば、生体適合性である。
【0018】
“生分解性”は、タンパク質又はペプチドが酵素的、化学的、物理的又は他のプロセスによってより小さい化学種を形成するために放出された後に又は放出されつつある間に、ポリマーマトリックスが生物学的環境内で破壊される、分解する又は侵食されて無害な成分になりうることを意味する。
【0019】
“タンパク質”は、炭素、水素、酸素、窒素、及びときには硫黄を含有する複雑な有機化合物の群のいずれかを包含するように意図される。詳しくは、インシュリン、ホルモン、ワクチン、酵素、抗生物質、抗体、神経刺激作用剤(neuroactive agent)、成長因子、サイトカイン、抗原、糖タンパク質及び他の既知タンパク質の任意の組み合わせが包含される。
【0020】
“生物学的環境”は、in vitro又はin vivoのいずれであっても、生物学的活性がタンパク質又はペプチドの放出によって制御されうる、任意の環境を意味する。
【0021】
“有効量”なるフレーズは、タンパク質に関する場合に、当業者によって決定されうる、治療的、予防的又は診断的有効量を意味する。生物学的環境が例えばヒトのような温血動物である場合には、考慮すべき要因は体重、体表面積、年齢、物理的状態、用いる作用剤又はタンパク質の種類、用いるポリマーの種類、用いる粒子の種類、負荷用量とその後の望ましい放出レベル及び速度を包含する。
【0022】
“生体適合性ポリマーマトリックス”又は“ポリマーマトリックス”は、任意の環境反応性ポリマー又はゲル(例えば、感熱性、pH感受性、電気感受性等)、粒子、フィルム、ペレット、シリンダー、ディスク、インプラント、ミクロカプセル、微小球、ナノ球、ミクロ粒子、ウェファー、ミセル、リポソーム、及び薬物デリバリーに用いられる他の既知ポリマー形態を包含するように意図される。微小球又はミクロカプセル充填(micro-encapsulation)の形態に関して、一般に、直径は約1mm未満であり、球状、非球状又は不規則な形を有しうる。
【0023】
“ポリマーのゲル”又は“ポリマーゲル”は生物学的環境内に投与されたときに、ある一定時間ゲル化性質を示すが、その環境内に存在しない状態下では液体でありうる、任意のポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー等を意味する。
【0024】
“感熱性ポリマーゲル”は、可逆熱ゲル化性質を有するゲルを含めて、温度に依存して、液体状態又はゲル状態で存在しうる、任意のポリマーゲルを意味する。
【0025】
“表面”は、粒子に関する場合に、孔内の表面点を含めて、粒子上の任意の表面点を包含するように意図される。
“粒子”は、本発明に役立つ、任意の実質的不溶性又は難溶性の粒子を意味する。好ましくは、粒子は有機又は無機塩又は酸化物粒子であるが、他の粒子も役立ちうる。
【0026】
“難溶性”又は“本質的不溶性”は、粒子に関する場合に、高度に不溶性の塩及び酸化物並びに、粒子が本発明に役立つほど充分に不溶性である限り、単に実質的に不溶性である粒子を包含する。換言すると、若干の溶解性を示す粒子は、それらが本発明に役立つ限り、包含される。“タンパク質−粒子組み合わせ”は、例えば塩又は酸化物粒子のような難溶性粒子に被着した、任意のタンパク質又はペプチドの組み合わせ又は複合体を意味する。1つの可能な被着機構は吸着である。他の可能な機構は吸収及び共沈を包含する。
【0027】
“酸化物”及び“酸化物類(oxides)”は、特に、タンパク質又はペプチドが被着する粒子として使用可能である水酸化物並びに酸化物を包含するように意図される。
【0028】
“塩”は、タンパク質又はペプチドが被着する粒子として使用可能である有機塩と無機塩の両方を包含するように意図される。
“温血動物”は、一般的に理解される意味の他に、特にヒトをも包含するように意図される。
【0029】
これに留意して、本発明は、タンパク質の放出レベルの制御が強化され、制御放出が維持されうる期間が延長されるように、薬物デリバリー系からタンパク質をデリバーするための組成物及び方法に関する。本発明の組成物及び方法は、本発明の組成物が薬物デリバリー系からのタンパク質の溶解速度を低下させる及び/又は所望のタンパク質の溶解性も非常に低下させるという点で、先行技術を超えて必要な改良を提供する。
【0030】
詳しくは、(a)塩及び酸化物を包含する、難溶性生体適合性粒子と;(b)実質的に不溶性のタンパク質/粒子組み合わせを形成する、粒子上に少なくとも部分的に被着した有効量のタンパク質又はペプチドと;(c)その中に分散した該タンパク質−粒子組み合わせを有する生体適合性ポリマーマトリックスとを含む、生物学的環境へのタンパク質制御放出のための薬物デリバリー系が開示される。
【0031】
また、(a)難溶性生体適合性粒子上にタンパク質又はペプチドを被着させて、タンパク質−粒子組み合わせを形成する工程と;(b)該タンパク質−粒子組み合わせを生体適合性ポリマーマトリックスに負荷させる工程と;(c)負荷された生体適合性ポリマーマトリックスを温血動物に投与する工程とを含む、温血動物へのタンパク質の制御デリバリー方法も開示される。
【0032】
さらに、(a)難溶性生体適合性粒子上にタンパク質又はペプチドを被着させて、タンパク質−粒子組み合わせを形成する工程と;(b)該タンパク質−粒子組み合わせを生体適合性ポリマーマトリックスに負荷させる工程とを含む、タンパク質デリバリー系の製造方法が開示される。
【0033】
本発明の組成物又は方法のいずれにおいても、タンパク質−粒子組み合わせは好ましくは約1:10から100,000:1までの生体適合性粒子:タンパク質又はペプチドの重量比率で製造される。典型的には、重量で1:10から1000:1までのより実際的な範囲が用いられうる。さらに、タンパク質−粒子組み合わせはポリマーマトリックスに対して約0.01〜30重量%で存在するべきである。
【0034】
上記薬物デリバリー系及び方法は、好ましくは吸着によってタンパク質が被着するための生体適合性の難溶性又は本質的不溶性粒子の使用を必要とする。具体的な粒子は亜鉛塩と酸化亜鉛、マグネシウム塩と酸化マグネシウム、カルシウム塩と酸化カルシウムを、これらの塩が生体適合性であり、難溶性又は本質的不溶性であるという条件で、包含するが、他の生体適合性の難溶性粒子も使用可能である。詳しくは、好ましい粒子は炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酒石酸亜鉛、水酸化亜鉛、リン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム及び/又は炭酸カルシウムを包含する。
【0035】
本発明の粒子上に被着しうるタンパク質又はペプチドは、非限定的に、オキシトシン、バソプレッシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、プロラクチン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアゴニスト、LHRHアゴニスト、成長ホルモン(ヒト、ブタ及びウシを包含する)、成長ホルモン放出因子、インシュリン、エリトロポエチン(エリトロポエチン活性を有する全てのタンパク質を包含する)、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン(IL−2、IL−11、IL−12等を包含する)、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンギオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、神経成長因子(NGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、ヘパリナーゼ、血管内皮細胞成長因子(VEG−F)、骨形態形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、サイクロスポリン(その合成類似体及び薬理学的活性なフラグメントを包含する)、酵素、サイトカイン、抗体、ワクチン、抗生物質、抗体及び糖タンパク質を包含する。
【0036】
本発明の範囲内で、生体適合性ポリマーマトリックスは幾つかの形態で供給されうる。例えば、環境反応性ポリマー又はゲル(例えば、感熱性、pH感受性、電気感受性)、粒子、フィルム、ペレット、シリンダー、ディスク、インプラント、ミクロカプセル、微小球、ナノ球、ミクロ粒子、ミセル及びリポソームの使用が、使用可能である具体的なポリマーマトリックスであるが、他の既知ポリマー形態も使用可能である。さらに、生体適合性ポリマーマトリックスは、当該技術分野で一般に知られるような、非分解性ポリマー、生分解性ポリマー、吸収性ポリマー及び/又は生侵食性ポリマー(bioerodible polymer)の形態でありうる。
【0037】
ポリマーマトリックスに生分解性ポリマーを用いる場合には、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アルキルシアノアクリレート)並びにこれらのブレンド及びコポリマーが使用可能である。
【0038】
ブロックコポリマーを用いる場合には、A−B−Aブロックコポリマー、B−A−Bブロックコポリマー及び/又はA−Bブロックコポリマーを包含するブロックコポリマーが好ましく、この場合、前記Aブロックは疎水性ポリマーを含み、Bブロックは親水性ポリマーを含む。特に、上記ブロックコポリマーの1つを用いる場合には、最も好ましいポリマーマトリックスは、Aブロックが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(アルキルシアノアクリレート)並びにこれらのブレンド及びコポリマーから成る群から選択された生分解性ポリマーであり、Bブロックがポリエチレングリコール又は例えばメトキシポリエチレングリコールのような単官能基誘導(monofunctionally derived)ポリエチレングリコールである場合であると定義される。これらの組み合わせの多くは、容認される熱可逆性ゲルを形成する。
【0039】
非分解性ポリマーを用いる予定である場合には、ポリアクリレート、ポリアクリレートエステル、シリコーンゴム、ポロキサマー、テトロニック(tetronics)、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートエステル、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニルのポリマー、アシル置換セルロースアセテート、非分解性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリ(エチレンオキシド)、並びにこれらのブレンド及びコポリマーが容認される。
【0040】
さらに、ポリマー又はポリマーマトリックスはブロックドポリマー(blocked polymer)、非ブロックドポリマー(unblocked polymer)、又はブロックドポリマーと非ブロックドポリマーとのブレンドを包含しうる。ブロックドポリマーは一般的に、ブロックされたカルボキシル末端基を有すると定義される。非ブロックドポリマーは、当該技術分野での古典的な定義によると、特に遊離カルボキシル末端基を有する。
【0041】
ポリマーの許容分子量は当業者によって決定されうる。分子量を決定する際に考慮されうる要因は所望のポリマー分解速度、機械的強度、及び溶媒中でのポリマーの溶解速度を包含する。典型的に、分子量の許容範囲は、他の要因の中でも特に、用いるためにどのポリマーを選択するかに依存して、約2,500Dalton〜約100,000Daltonの範囲である。
【0042】
典型的に、本発明の組成物及び方法は、複数のタンパク質又はペプチド分子が存在する製剤を含む。このような状況下で、複数のタンパク質又はペプチド分子の第1部分は、ポリマーマトリックス内に分散したタンパク質−粒子組み合わせの一部としての粒子上に被着することができ、複数のタンパク質又はペプチド分子の第2部分はポリマーマトリックス内に分散することができる。或いは、多重種類のタンパク質又はペプチドが単一製剤の一部として存在しうる。例えば、第2タンパク質又はペプチドが存在することができる。このような状況下で、第2タンパク質又はペプチドはポリマーマトリックス内に分散した粒子上に被着するか、又はポリマーマトリックス自体内に分散することができる。典型的に、第2タンパク質又はペプチドは複数の第2タンパク質又はペプチド分子として存在する。したがって、複数の第2タンパク質又はペプチド分子の第1部分が、ポリマーマトリックス内に分散したタンパク質−粒子組み合わせの一部としての粒子上に被着することができ、複数の第2タンパク質又はペプチド分子の第2部分がポリマーマトリックス内に分散する。
【0043】
本発明の組成物は、in vitro又はin vivoのいずれであっても、タンパク質の制御デリバリーが望ましい、任意の生物学的環境に投与されることができる。例えば、該組成物は、既知パラメータに基づいて望ましい投与量の生物学的活性剤を供給して、種々な医学的状態をタンパク質又はペプチドによって治療するために、ヒト又は他の動物に注射及び/又は移植によって皮下、筋肉内、腹腔内、皮内、静脈内、動脈内又はくも膜下に投与される、又は粘膜への投与によって、又はin situデリバリーによって投与されることができる。
【0044】
該組成物は、難溶性粒子上にタンパク質又はペプチドを被着させることによって製造されるが、粒子の表面上にタンパク質又はペプチドを吸着させることがこれを達成する好ましい方法である。他の被着方法は、特に、吸収及び共沈手法を包含する。難水溶性粒子上にタンパク質を被着させることによって、タンパク質−粒子組み合わせを本発明の薬物デリバリー系に組み入れることができる。
【0045】
米国特許5,912,015では、亜鉛カチオンとマグネシウムカチオンとを用いて、ポリマーマトリックスの分解を調節して、それによって、タンパク質を含めた生物学的活性剤の放出を遅延させていた。しかし、金属カチオン成分を生物学的活性剤とは別に組み入れなければならないことが繰り返して述べられていた。本発明では、タンパク質薬物を例えば塩又は酸化物のような難溶性粒子に付着させる。それ故、タンパク質と難溶性粒子とは分離しないで、物理的に隣接する。したがって、先行技術に述べられているようにポリマーマトリックスの分解を単に調節するのではなく、上述したように、粒子はタンパク質又はペプチド自体に関して機能的である。
【0046】
本発明が先行技術を超えた改良であるには、他の幾つかの理由がある。第一に、上述したように、タンパク質又はペプチドの水溶性が抑圧されるので、タンパク質又はペプチドを長時間作用性製剤中に組み入れることができる。本発明の前には、この限定のために、タンパク質とペプチドは長時間作用性用量の薬物デリバリー系のための好ましくない候補であったと考えられる。第二に、タンパク質は、濃縮状態で、凝集し、脱アミド化又は他の形式の好ましくない変化を受ける傾向があるので、タンパク質をそれらの有用な形で長時間維持することは困難である。これらの改良の両方のために、単回投与が長時間放出を生じることができる。第三に、このような組成物は、一般にこのような組成物において生ずる初期バーストを弱める又は除去する。したがって、タンパク質放出の高い初期ピーク及び他の変動が減少する。実際問題として、これらの水不溶性粒子上に被着したタンパク質又はペプチドはさらに、タンパク質が製薬業者にとって望ましい性質である乾燥粉末として貯蔵され、加工されるようにすることができる。したがって、タンパク質含有粒子を薬物デリバリー系中に容易に組み入れることができる。さらに、適当な粒子、被着する薬物量、薬物負荷パラメータ、ポリマーマトリックス、粒度等を選択することによって、薬物デリバリー系からの薬物放出速度を制御することもできる。
【0047】
実施例
下記実施例は、本発明の組成物及び方法を例示する。下記実施例は限定と見なされるべきではなく、現在の実験データに基づいて最良の既知薬物デリバリー系をどのように作製するかを単に教示するに過ぎない。
【0048】
実施例1 炭酸亜鉛上へのhGHの被着
ヒト成長ホルモン(hGH)(Humatrope(登録商標);5mg/ボトル)を3mlの無菌注射用水によって再構成した。約100mgの炭酸亜鉛粒子を加えて、この懸濁液を冷蔵庫内で4℃において約16時間静置させた。粒子を沈降させた後に、上清のHPLC分析を行なった、検出可能なレベルのhGHは存在しなかった。固体物質を遠心分離によって回収し、脱イオン水によって洗浄し、凍結乾燥によって乾燥させた。HPLC分析は、EDTA(50mM)を用いて亜鉛を除去した後に、hGHの物質収支回収(mass balance recovery)が定量的であることを示した。
【0049】
実施例2 酒石酸亜鉛上へのhGHの被着
炭酸亜鉛の代わりに約100mgの酒石酸亜鉛をhGH溶液に加えたことを除いて、実施例1に述べたと同じような処置に従った。上清のHPLC分析を行なった、添加したhGHの10%未満が検出された。固体物質を遠心分離によって回収し、脱イオン水によって洗浄し、凍結乾燥によって乾燥させた。HPLC分析は、EDTA(50mM)を用いて亜鉛を除去した後に、hGHの物質収支回収が定量的であったことを示した。
【0050】
実施例3 炭酸亜鉛上へのインシュリンの被着
約25mgの亜鉛インシュリンを約25mlのHEPESバッファー(10mM,pH6)中に溶解した。約100mgの炭酸亜鉛を加え、この溶液を冷蔵庫内で4℃において16時間以上静置させた。上清のHPLC分析は、インシュリンの濃度が無視できるほどであることを示した。固体物質を回収し、脱イオン水によって洗浄し、水分を凍結乾燥によって除去した。固体物質のHPLC分析は、インシュリンの回収が定量的であったことを示した。
【0051】
実施例4 炭酸亜鉛上へのhGHの被着
hGH溶液(1.67mg/ml)の幾つかの50μlアリコートを個別に1ml遠心バイアル(centrifuge vial)に入れた。これらの溶液に、炭酸亜鉛水性懸濁液(31.54mg/ml)の60μlまでアリコートを、炭酸亜鉛がhGHに比べて、0から22.7:1までの重量比率で存在するように、加えた。各バイアルの量を脱イオン水を用いて110μlに調節した。次に、各混合物を5分間手で振とうしから、続いて遠心分離した。各バイアルの上清中のhGH濃度をHPLCによって測定し、データを図1に示す。
【0052】
詳しくは、図1は、炭酸亜鉛:hGHの重量比率の関数として炭酸亜鉛上のhGH被着を示す。約15:1より大きい、ZnCO3:hGHの重量比率で炭酸亜鉛上へのhGHの本質的に完全な被着が生じた。
【0053】
実施例5 酒石酸亜鉛上へのhGHの被着
炭酸亜鉛の代わりに酒石酸亜鉛を用いたことを除いて、実施例4に述べたと同じような処置に従った。溶液中に残留するhGHをHPLCによって分析した。上清中のhGH濃度をHPLCによって測定し、データを図2に示す。
【0054】
図に示すように、D−酒石酸亜鉛上のhGH被着は、D−酒石酸亜鉛:hGHの重量比率の関数として、変化する。約10:1より大きい、酒石酸Zn:hGHの重量比率において90%より大きいhGHが酒石酸亜鉛上へ被着した。
【0055】
実施例6 hGHのin vitro溶解と、炭酸亜鉛上のhGH被着
hGH/炭酸亜鉛粒子(1:20のhGH:ZnCO3重量比率において304μgのhGH)をバイアルに入れ、ReGel(登録商標)(水中20%w/wコポリマー)として知られる感熱性トリブロックコポリマーゲル 100μl中に懸濁させた。ReGel(登録商標)は、例えば、米国特許第6,201,072号、第6,117,949号又は第6,004,573号のいずれにも開示されるような、可逆熱ゲル化性を有する生分解性低分子量トリブロック・ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)ポリエチレングリコールコポリマーである。このゲルが37℃において凝固した後に、1mlのHEPESバッファー(10mM、pH7.4,0.02%TWEEN−80含有)を溶解媒質として加えた。この組成物を、対照として、ZnCO3を含まないReGel(登録商標)中のhGHに比較した。各バイアルを37℃環境に置き、1ml溶解媒質の全てを定期的に交換した。各溶解媒質中のhGHをHPLCによって測定し、データを図3に示す。
【0056】
図3に関連した説明は次の通りである:
■=ZnCO3を含まないReGel(登録商標)(水中20%w/wポリマー)から0.02%TWEEN−80含有10mM HEPESバッファー(pH7.4)中へのhGHのin vitro溶解(37℃)
▲=0.02%TWEEN−80含有10mM HEPESバッファー(pH7.4)中への、炭酸亜鉛上に被着し、ReGel(登録商標)(水中20%w/wポリマー)中に懸濁したhGH
図3のデータが示すように、ゲルからのhGH放出は、hGHが炭酸亜鉛粒子上に被着した場合には、有意に抑圧された。
【0057】
実施例7 炭酸亜鉛上に被着したインシュリンのin vitro溶解
10.22mlの水に、32.7mgの亜鉛インシュリンを加えた。3滴の酢酸を加え、この溶液を冷蔵庫内で4℃において16時間静置させることによって、完全な溶解が達成された。次に、この溶液を0.2μフィルターに通して濾過した。この溶液の3mlアリコート2つに、それぞれ、99.5mgと30.5mgの炭酸亜鉛を加えた。各混合物を冷蔵庫内で4℃において約16時間静置させた。懸濁液を遠心分離した後に、各上清中のインシュリンレベルは無視できる程度であることがHPLC分析によって判明した。沈殿を脱イオン水によって洗浄し、凍結乾燥によって水分を除去した。1mgの亜鉛インシュリンに相当する固形分を1mlバイアルに入れ、ReGel(登録商標)(水中20%w/wポリマー)として知られた感熱性ブロックコポリマーゲル 100μl中に懸濁させた。ReGel(登録商標)を37℃オーブン中で凝固させ、1mlの等張性(NaCl)HERESバッファー溶液(10mM、50mM EDTA、pH7.4と0.02%TWEEN−80とを含有する)を溶解媒質として加えた。各溶液中の媒質全体を定期的に新たな溶液と交換した。各溶解媒質中のインシュリンをHPLCによって分析し、データを図4に提示する。
【0058】
図4に関連した説明は次の通りである:
□=1:3比率でのインシュリン/ZnCO3からのインシュリン溶解
▲=1:10比率でのインシュリン/ZnCO3からのインシュリン溶解
図4のデータが示すように、インシュリンと炭酸亜鉛との重量比率を変えることによって、インシュリン放出が調節された。
【0059】
実施例8 ラットにおけるhGH持続放出製剤のin vivo薬物動態的研究
難水溶性炭酸亜鉛塩上に被着したhGHの効果を実証するために、ラットにおいて研究を行なった。Sprague−Dawleyラットに種々な溶液ベース(solution base)を有する5種類の異なる製剤の1つを与えた。各製剤は0.3mlの溶液当り55μgのhGHの同等物を含有した。皮下投与した後に、血液サンプル(1ml)を7日間まで所定の間隔で採取した。血漿を分離して、分析まで−40℃において貯蔵した。各血漿サンプル中のhGH濃度をDSL Inc.から入手したキットを用いて、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した。用いた対照は、Eli Lily and Companyによって商標Humatrope(登録商標)下で販売される製品であった。データは図5に示す。
【0060】
図5に関連した説明は次の通りである:
■=希釈剤中のhGHを投与されたラットの血漿hGH濃度プロフィル
△=20%ReGel(登録商標)中のhGH
◇=20%ReGel(登録商標)中に懸濁した亜鉛−hGH複合体
□=炭酸亜鉛上に被着してから(hGH:ZnCO3、1:20の重量比率)、10mM HEPESバッファー(pH7.0)中に懸濁したhGH
▲=1:20重量比率で亜鉛炭酸粒子上に被着してから、20%ReGel(登録商標)中に懸濁したhGH
図5のデータは、ReGel(登録商標)(20%)から単独でのhGHの放出が対照にほぼ同じであったことを示す。20%ReGel(登録商標)中に亜鉛−hGH複合体を懸濁させると、ピーク血漿レベル時間(tmax)が遅延したが、期間は実質的に延長しなかった。しかし、1:20のhGH:炭酸亜鉛の重量比率で炭酸亜鉛上にhGHを被着させると(ReGel(登録商標)は存在せず)、該時間(tmax)が遅延するのみでなく、ピーク血漿レベル(Cmax)も有意に低下した。さらに、hGH−炭酸亜鉛粒子をReGel(登録商標)(水中20%w/wポリマー)中に組み入れると、ピーク血漿レベル(Cmax)はさらに低下した。このデータは、本発明がポリマーキャリヤーからのタンパク質放出を調節することができることを示し、バースト効果の低減と、持続期間の延長とを例示する。
【0061】
本発明をある一定の好ましい実施態様に関連して説明したが、当業者は、種々な改変、変更、削除及び置換が発明の要旨から逸脱せずになされうることを理解するであろう。それ故、本発明は特許請求の範囲及びその同等物によってのみ限定されるように意図される。
【0062】
添付図面において、本発明の実施態様を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、炭酸亜鉛のhGHに対する重量比率の関数として、炭酸亜鉛上のhGH被着を示すグラフ表示である;
【図2】図2は、D−酒石酸亜鉛のhGHに対する重量比率の関数として、D−酒石酸亜鉛上のhGH被着を示すグラフ表示である;
【図3】図3は、炭酸亜鉛粒子上に被着した場合のゲルからのhGH放出の抑圧を示すグラフ表示である;
【図4】図4は、インシュリン放出がインシュリンと炭酸亜鉛粒子との重量比率に関係するときに、インシュリン放出の調節を示すグラフ表示である;
【図5】図5は、本発明の組成物を含めた、種々な組成物からデリバーされる、ラットにおけるhGH放出を示すグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的環境へのタンパク質制御放出のための薬物デリバリー系であって、(a)難溶性生体適合性粒子と;(b)実質的不溶性タンパク質/粒子組み合わせを形成する、粒子上に被着した有効量のタンパク質又はペプチドと;(c)その中に分散した該タンパク質/粒子組み合わせを有する生体適合性ポリマーマトリックスとを含む前記薬物デリバリー系。
【請求項2】
生物学的環境へのタンパク質制御放出のための薬物デリバリー系であって、(a)亜鉛塩、酸化亜鉛、マグネシウム塩、酸化マグネシウム、カルシウム塩、酸化カルシウム及びこれらの組み合わせから成る群から選択される難溶性生体適合性粒子と;(b)実質的に不溶性タンパク質/粒子組み合わせを形成し、該タンパク質/粒子組み合わせが約1:10から100,000:1までの生体適合性粒子:タンパク質又はペプチドの重量比率を有するように、粒子上に被着した有効量のタンパク質又はペプチドと;(c)その中に分散したタンパク質/粒子組み合わせを有する生体適合性ポリマーマトリックスとを含み、該タンパク質/粒子組み合わせがポリマーマトリックスに関して約0.01〜30重量%で存在する前記薬物デリバリー系。
【請求項3】
生物学的環境へのタンパク質制御放出のための薬物デリバリー系であって、(a)難溶性生体適合性粒子と;(b)実質的に不溶性タンパク質/粒子組み合わせを形成する、粒子上に被着した有効量のタンパク質又はペプチドと;(c)生体適合性ポリマーマトリックスとを含み、前記ポリマーマトリックスが非分解性ポリマー、生分解性ポリマー、吸収性ポリマー、生侵食性ポリマー、ブロックコポリマー及びこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマー又はゲル物質から構成され、前記ポリマーマトリックスがポリマー粒子、インプラント、ミクロカプセル、微小球、ナノ球、ポリマーゲル、環境反応性ポリマー若しくはゲル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される形状であり、前記ポリマーマトリックスがその中に分散した該タンパク質/粒子組み合わせを有する前記薬物デリバリー系。
【請求項4】
タンパク質/粒子組み合わせが約1:10から100,000:1までの生体適合性粒子:タンパク質又はペプチドの重量比率を有する、請求項1又は3に記載の薬物デリバリー系。
【請求項5】
タンパク質/粒子組み合わせが約1:10から1000:1までの生体適合性粒子:タンパク質又はペプチドの重量比率を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の薬物デリバリー系。
【請求項6】
タンパク質/粒子組み合わせがポリマーマトリックスに関して約0.01〜30重量%で存在する、請求項1又は3に記載の薬物デリバリー系。
【請求項7】
前記生体適合性粒子が亜鉛塩、酸化亜鉛、マグネシウム塩、酸化マグネシウム、カルシウム塩及び酸化カルシウムから成る群から選択される難溶性塩又は酸化物である、請求項1又は3に記載の薬物デリバリー系。
【請求項8】
前記難溶性粒子が炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酒石酸亜鉛、水酸化亜鉛、リン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の薬物デリバリー系。
【請求項9】
前記タンパク質又はペプチドがオキシトシン、バソプレッシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、プロラクチン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアゴニスト、LHRHアゴニスト、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、インシュリン、エリトロポエチン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン(IL−2、IL−11、IL−12等を包含する)、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンギオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、神経成長因子(NGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、ヘパリナーゼ、血管内皮細胞成長因子(VEG−F)、骨形態形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、サイクロスポリン、酵素、サイトカイン、抗体、ワクチン、抗生物質、抗体、糖タンパク質、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の薬物デリバリー系。
【請求項10】
前記タンパク質がヒト成長ホルモンとインシュリンから成る群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の薬物デリバリー系。
【請求項11】
前記生体適合性ポリマーマトリックスがポリマー粒子、インプラント、ミクロカプセル、微小球、ナノ球、ポリマーゲル、環境反応性ポリマー若しくはゲル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1又は2に記載の薬物デリバリー系。
【請求項12】
前記生体適合性ポリマーマトリックスが非分解性ポリマー、生分解性ポリマー、吸収性ポリマー、生侵食性ポリマー、ブロックコポリマー及びこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマー又はゲル物質から構成される、請求項1又は2に記載の薬物デリバリー系。
【請求項13】
前記生体適合性ポリマーマトリックスが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリアミノ酸、並びにこれらのブレンド及びコポリマーから成る群から選択される生分解性ポリマーから構成される、請求項12記載の薬物デリバリー系。
【請求項14】
前記生体適合性ポリマーマトリックスがA−B−Aブロックコポリマー、B−A−Bブロックコポリマー、A−Bブロックコポリマー及びこれらの組み合わせから成る群から選択されるブロックコポリマーであり、前記Aブロックがポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ無水物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(オルトエステル)、並びにこれらのブレンド及びコポリマーから成る群から選択される生分解性ポリマーであり、前記Bブロックがポリエチレングリコールである、請求項12記載の薬物デリバリー系。
【請求項15】
前記生体適合性ポリマーマトリックスが、ポリアクリレート、ポリアクリレートエステル、シリコーンゴム、ポロキサマー、テトロニック、ポリエチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリメチルメタクリレートエステル、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニルのポリマー、アシル置換セルロースアセテート、非分解性ポリウレタン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリ(エチレンオキシド)、並びにこれらのブレンド及びコポリマーから成る群から選択される非分解性ポリマーから構成される、請求項12記載の薬物デリバリー系。
【請求項16】
タンパク質又はペプチドが粒子の表面に被着する、請求項1〜3のいずれかに記載の薬物デリバリー系。
【請求項17】
その中に分散したタンパク質/粒子組み合わせを有する生体適合性ポリマーマトリックスが温血動物に投与される、請求項1〜3のいずれかに記載の薬物デリバリー系。
【請求項18】
投与が、非経口、眼、局所、移植、吸入、膣、頬側、経粘膜、経尿管、直腸、鼻、肺及びこれらの組み合わせから成る群から選択される経路によって行なわれる、請求項17記載の薬物デリバリー系。
【請求項19】
経路が非経口経路である、請求項19記載の薬物デリバリー系。
【請求項20】
複数のタンパク質又はペプチド分子が存在し、前記複数のタンパク質又はペプチド分子の第1部分がポリマーマトリックス内に分散したタンパク質−粒子組み合わせの一部としての粒子上に被着し、前記複数のタンパク質又はペプチド分子の第2部分がポリマーマトリックス内に分散する、請求項1〜3のいずれかに記載の薬物デリバリー系。
【請求項21】
第2タンパク質又はペプチドをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の薬物デリバリー系。
【請求項22】
第2タンパク質又はペプチドがポリマーマトリックス内に分散した粒子上に被着する、請求項21記載の薬物デリバリー系。
【請求項23】
第2タンパク質又はペプチドがポリマーマトリックス内に分散する、請求項21記載の薬物デリバリー系。
【請求項24】
複数の第2タンパク質又はペプチド分子が存在し、前記複数の第2タンパク質又はペプチド分子の第1部分がポリマーマトリックス内に分散したタンパク質−粒子組み合わせの一部としての粒子上に被着し、前記複数の第2タンパク質又はペプチド分子の第2部分がポリマーマトリックス内に分散する、請求項21記載の薬物デリバリー系。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−26336(P2011−26336A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223933(P2010−223933)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願2001−574076(P2001−574076)の分割
【原出願日】平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願人】(507050160)プロセリックス・ソルト・レイク・シティ,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】