説明

ポリマーミクロゲルビーズおよびその製造方法

本発明は、全体に実質的に均一に分散されたナノ磁性粒子を含むポリマーマトリックスを有するポリマーミクロゲルビーズであって、立体安定剤が粒子と結合し、立体安定剤は、(i)ビーズのポリマーマトリックスの少なくとも一部を形成し、(ii)立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを含むポリマー材料であり、立体安定化ポリマーセグメントは固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントは、ナノ磁性粒子の表面に対して親和性を有し、安定剤を粒子に固定するポリマーミクロゲルビーズに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ポリマーミクロゲルビーズに関する。特に、本発明は、ナノ磁性粒子を含むポリマーミクロゲルビーズ、およびその製造方法に関する。本発明によるポリマーミクロゲルビーズは、組織における温熱の誘発などの生物医学的用途における使用に特に適するため、この用途に重点を向けて本発明を説明するのが便利である。しかし、該ポリマーミクロゲルビーズを様々な他の用途に使用できることが理解されるべきである。
【背景技術】
【0002】
磁性粒子を含むポリマービーズは既知である。当該ビーズは、生物医学的用途での使用に特に好適であることが判明した。特に、該ビーズを治療または分析の目的に使用することができる。例えば、磁性ポリマービーズは、担体として機能し、被験体の特定部位における薬物の誘導および放出を可能にすることができる。該ビーズを使用して、被験体における患部組織などの組織の温熱治療を行うことができる。
【0003】
磁性粒子を含むポリマービーズを製造するために何年にもわたって様々な技術が開発されてきた。これらは、層間堆積技術、古典的な不均一重合法(例えば、エマルジョン、懸濁物、分散体、ミクロエマルジョンおよびミニエマルジョン技術)ならびに予め形成されたポリマービーズの孔内の磁性体の析出を含む。
【0004】
殆どの生物医学的用途では、均一な粒径および組成を有し、磁性粒子の含有量が比較的大きいビーズを製造することが一般に重要である。また、磁性粒子がポリマービーズ全体に実質的に均一に分散されることも一般に重要である。
【0005】
磁性粒子を含むポリマービーズを製造するための分散技術に関する多くの研究が今日までに実施されてきた。当該技術には、典型的には、磁性粒子を液相に分散させ、モノマーを重合して、粒子を封入するポリマーを形成することを含む前記古典的不均一重合法が含まれる。
【0006】
ある程度成功しているが、従来の分散重合法におけるポリマー粒子の核化の複雑さ、および分散磁性粒子の安定性の制御に伴う困難さが、ポリマービーズを効率的に、高い磁性粒子含有量で製造する上で大きな障害になっていることが証明された。例えば、従来のエマルジョン重合法における粒子核化のための主要な部位は、一般には、水相またはモノマー膨潤ミセルにある。しかし、水相に分散された磁性粒子の存在は、これらの粒子の表面にさらなる核化部位を提供し得る。よって、これらのメカニズム間の競合は、磁性粒子含有量が殆どまたは全く存在しないポリマービーズを形成させ得る。
【0007】
ポリマービーズを製造する磁性粒子が段々小さくなっているため、分散技術の効果も問題になり得る。特に、磁性粒子がより小さく(例えば100nm以下に)なると、粒子が実質的に均一に分散されたビーズを製造するように粒子を分散状態に維持することがますます困難になる(例えば、ビーズ製造中に磁性粒子の凝集を防止することが困難になる)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Greenlee、R.Z.、Polymer Handbook第3版、(Brandup, J.およびImmergut. E.H.編) Wiley:New York、1989、11/53頁
【非特許文献2】Moad and Solomon、「the Chemistry of Free Radical Polymerisation」、Pergamon、London、1995、53〜95頁
【非特許文献3】Martin、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.、Easton、PA、(1990)
【非特許文献4】Preparation of aqueous magnetic liquids in alkaline and acidic media. IEEE Transactions on Magnetics、1981. MAG-17(2):1247〜1248頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、磁性粒子を含む既存のポリマービーズおよび/またはそれらの製造方法に伴う1つまたは複数の欠点または短所を改善し、または磁性粒子を含む従来のポリマービーズおよび/またはそれらの製造方法の有用な代替を少なくとも提供する機会が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、ナノ磁性粒子を含むポリマーミクロゲルビーズを製造する方法であって、
(i)連続有機相および分散水相を含む分散体を調製するステップであって、分散水相は、親水性液、および水相全体に分散されたナノ磁性粒子を含み、ナノ磁性粒子は、立体安定剤によって分散状態に維持されており、立体安定剤は、
(a)立体安定化ポリマーセグメントが固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントが、ナノ磁性粒子に対して親和性を有し、立体安定剤を粒子に固定する立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントと、
(b)1つまたは複数の反応性官能基とを含むポリマー材料であり、
(ii)親水性液を水相から除去するステップと、
(iii)立体安定剤の反応性官能基の間の反応を促進することによって、ナノ磁性粒子を含むポリマーミクロゲルを形成するステップと
を含む方法を提供する。
【0011】
ここで、本発明に従って使用される立体安定剤は、(i)水相内のナノ磁性粒子の高安定性分散体を提供し、(ii)安定剤を互いに結合させ、ビーズのポリマーマトリックスを形成するように互いに反応することができる官能基を提供するように機能することができることが判明した。特に、親水性液を水相から除去すると、分散水相液滴の容量が減少する。これは、次に、所定の粒子に固定された安定剤の反応性官能基を、近隣粒子に固定された安定剤の反応性官能基との反応のために近接して配置するように分散水相液滴の各々におけるナノ磁性粒子を互いに結合させる。次いで、当該官能基同士の反応は、ナノ磁性粒子が含まれたミクロゲルビーズのポリマーマトリックスを提供することができる。
【0012】
立体安定剤は、粒径が約100nm未満、例えば約50nm未満または20nm未満のナノ磁性粒子を水相中で安定させるのに特に効果的である。
【0013】
ナノ磁性粒子を実質的に封入するミクロゲルビーズのポリマーマトリックスを、有利には、制御され、かつ再現性があり、かつ効率的な方法で調製することができる。したがって、比較的高い(例えば、ビーズの全質量に対して約80重量%までの)実質的に均一に分布された磁性粒子含有量のポリマーミクロゲルビーズを所望の大きさで製造することが可能である。
【0014】
したがって、本発明は、また、全体に実質的に均一に分散されたナノ磁性粒子を含むポリマーマトリックスを有するポリマーミクロゲルビーズであって、立体安定剤が粒子と結合し、立体安定剤は、(i)ビーズのポリマーマトリックスの少なくとも一部を形成し、(ii)立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを含むポリマー材料であり、立体安定化ポリマーセグメントは固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントは、ナノ磁性粒子の表面に対して親和性を有し、安定剤を粒子に固定するポリマーミクロゲルビーズを提供する。
【0015】
本発明によるポリマーミクロゲルビーズを様々な生物医学的用途に使用することができる。例えば、ビーズを使用して被験体における疾患または状態を治療し得る。
【0016】
よって、本発明は、また、被験体への投与に好適な組成物であって、本発明によるポリマーミクロゲルビーズおよび薬理学的に許容し得る担体を含む組成物を提供する。
【0017】
一実施形態において、本発明による組成物は、温熱療法に向けられる。
【0018】
さらなる実施形態において、温熱療法のための本発明による組成物の使用が提供される。
【0019】
別の実施形態において、被験体における対象の標的部位に対して温熱療法を実施する方法であって、本発明による組成物を被験体に投与するステップと、臨床的に許容し得る周波数および強度の磁場に少なくとも標的部位を曝露して温熱療法を促進するステップとを含む方法が提供される。
【0020】
さらなる実施形態において、温熱療法を実施するための製剤の製造における本発明による組成物の使用が提供される。
【0021】
別の実施形態において、被験体における対象の標的部位を加熱するための方法であって、
(i)本発明による組成物を被験体に投与するステップと、
(ii)組成物からのミクロゲルビーズが標的部位で熱を放射するように、臨床的に許容し得る周波数および強度の磁場に少なくとも標的部位を曝露するステップと
を含む方法が提供される。
【0022】
いくつかの用途において、ポリマーミクロゲルビーズが被験体に投与されるとそれらを画像化することが望ましい。したがって、ビーズは、造影を目的として放射性同位体を含む。
【0023】
本発明のさらなる態様は、以下の発明の詳細な説明に記載される。
【0024】
以下の非限定的な図面を参照しながら本発明を本明細書に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】固定ポリマーセグメント(B)およびナノ磁性粒子(P)と、液体担体に可溶化され、反応性官能基(F)を提供する立体安定化セグメント(A)との複数の結合相互作用を示す非縮尺概略図である。
【図2】固定ポリマーセグメント(B)およびナノ磁性粒子(P)と、液体担体に可溶化され、それぞれのセグメント(A)が反応性官能基(F)を提供する立体安定化セグメント(A)との複数の結合相互作用を示す非縮尺概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書に使用されているように、「ポリマーミクロゲル」という表現は、水性液を吸収することができ、水性液よって膨潤され得るポリマーマトリックスを集合的に形成するポリマー鎖の三次元ネットワークを指すことを意図する。「ビーズ」という用語は、「ポリマーミクロゲル」という表現と併用されて、ポリマーミクロゲル塊が不連続な形であることを伝えることを意図する。ビーズがとり得る不連続な形に関して特に制限はないが、それらは全体的に球形である。
【0027】
水性液を吸収することができ、水性液よって膨潤され得るポリマーマトリックスを有するビーズによって、マトリックスを形成するポリマー鎖は、水性液によって完全に(すなわちビーズ構造が破壊されるまで)溶媒和され得ないように実質的に互いに結合されることが理解されるであろう。ポリマーマトリックスは、少なくともビーズの集合的な複合構造を介して当該特性を導く。特に、所定の粒子に固定された立体安定剤の反応性官能基と、近隣粒子に固定された立体安定剤の反応性官能基との反応は、安定剤および粒子の架橋複合構造を実質的に形成する。
【0028】
立体安定剤は、1つを超える反応性官能基をそれぞれ含むことができ、その効果は、また、立体安定剤同士の架橋を促進することができる。水相は、立体安定剤の官能基と反応することができる1つまたは複数の官能基を有する立体安定剤以外のポリマー鎖を含むこともできる。したがって、親水性液を水相から除去すると、当該ポリマー鎖および立体安定剤の官能基は、ビーズのポリマーマトリックスを集合的に形成するように反応し得る。
【0029】
したがって、ビーズの架橋構造は、安定剤および粒子の架橋複合構造および/または立体安定剤同士の架橋構造および/または場合により立体安定剤および立体安定剤以外のポリマー鎖の架橋構造によって与えられることがわかる。
【0030】
以下により詳細に記載されるように、ポリマーミクロゲルビーズの粒径は、連続有機相全体に分散された水相液滴の大きさおよび組成の制御を介して、本発明の方法を通じて効果的および効率的に調整され得る。
【0031】
製造されるビーズの粒径は、一般には、それらの意図する用途に左右されることになる。一般には、ビーズは、約100nmから約200ミクロン、例えば約10から約100ミクロン、または約10から約50ミクロンの範囲の粒径を有することになる。いくつかの用途において、ビーズは、約20から約50ミクロンの範囲の粒径を有することが望ましい。ビーズを、有利には、約10ミクロン未満、例えば約500nmから約10ミクロン、または約1ミクロンから約10ミクロンの粒径を有するように製造し得る。
【0032】
疑問を回避するために、ポリマーミクロゲルビーズまたはナノ磁性粒子の「粒径」の本明細書での言及は、所定のビーズまたは粒子の最大の寸法に基づくビーズまたは粒子の平均粒径を指すことを意図する。約1ミクロン以上の粒径を有するポリマーミクロゲルビーズは、光学顕微鏡法によって測定されるのに対して、約1ミクロン未満の粒径を有するナノ磁性粒子およびポリマーミクロゲルビーズは、透過型電子顕微鏡法(TEM)によって測定される。
【0033】
本発明によるポリマーミクロゲルビーズは、ナノ磁性粒子を含む。ナノ磁性粒子を「含む」ビーズとは、粒子が各ポリマーミクロゲルビーズのポリマーマトリックス内およびその全体に保持されることを意味する。本発明による方法は、有利には、ナノ磁性粒子をビーズのポリマーマトリックス全体に実質的に均一または均質に分布させることを可能にする。また、ナノ磁性粒子を個々の粒子または一次粒子として(すなわち各ビーズ全体にわたって実質的に非凝集の形で)このように分布させ得る。
【0034】
本発明によるポリマーミクロゲルビーズは、有利には、低から高ナノ磁性粒子含有量を有し得る。例えば、ビーズは、ビーズの全質量に対して、約10重量%まで、または約20重量%まで、または約30重量%まで、または約40重量%まで、または約50重量%まで、または約60重量%まで、または約70重量%まで、または約80重量%までのナノ磁性粒子を含み得る。したがって、ビーズは、ビーズの全質量に対して、少なくとも10重量%、または少なくとも約20重量%、または少なくとも約30重量%、または少なくとも約40重量%、または少なくとも約50重量%、または少なくとも約60重量%、または少なくとも約70重量%のナノ磁性粒子を含み得る。
【0035】
ビーズに含められるナノ磁性粒子含有量は、一般には、ビーズの意図する用途に左右されることになる。例えば、ビーズが温熱療法、または本明細書で道義的に使用される温熱治療を実施するために使用される場合は、容量吸収率(VAR)は、適切な磁場条件下で、標的部位における治療加熱を促進するのに十分である必要があることを当業者なら理解するであろう。一般に、当該ビーズのVARは、臨床的に許容し得る周波数および強度の磁場に曝露された場合に、少なくとも約1ワット/cm3、好ましくは少なくとも約10ワット/cm3である。
【0036】
本明細書に使用されているように、「VAR」は、ポリマーミクロゲルビーズの加熱品質を定義することを意図し、定められた周波数および磁場強度の磁場への曝露中に単位時間当たりの単位容量のビーズによって放射された熱の量で表される。
【0037】
ポリマーミクロゲルビーズのナノ磁性粒子含有量に関して、ビーズのポリマーマトリックスとナノ磁性粒子との比は、潜在的にビーズの加熱効率に影響し得ることを当業者なら理解するであろう。例えば、ビーズのナノ磁性粒子含有量が大きくなるに従って、粒子が、凝集することでビーズの有効VARを低下させる可能性が大きくなり得る。しかし、本発明によるポリマーミクロゲルビーズを、有利には、粒子を殆どまたは全く凝集させることなく比較的高いナノ磁性粒子含有量を用いて製造できる。よって、ビーズの加熱品質を、所定のナノ磁性粒子含有量に対して最大にし得る。
【0038】
本発明に従って使用される「ナノ磁性粒子」は、粒径が1ミクロン未満である。粒子の組成および/または粒径は、それらの磁気特性に影響し得ることを当業者なら理解するであろう。ナノ磁性粒子は、一般には、強磁性、フェリ磁性または超常磁性を示す。
【0039】
使用されるナノ磁性粒子の具体的な粒径は、一般には、ポリマーミクロゲルビーズの意図する用途に左右される。用途によっては、ナノ磁性粒子は、約500nm未満、例えば、約100nm未満または約50nm未満の粒径を有することが望ましい。本発明の方法は、約1nmから約40nmの範囲の粒径を有するナノ磁性粒子を含むポリマービーズを製造するのに特に適することが判明した。
【0040】
ポリマーミクロゲルビーズが温熱治療を実施するために使用される場合は、使用されるナノ磁性粒子は、一般には、約50nm未満、例えば約10nmから約40nmの範囲の粒径を有する。
【0041】
本発明に従って使用できるナノ磁性粒子の種類に特別な制限はない。好適な磁性材料の例としては、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、それらの酸化物、またはこれらのいずれかの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。好適な酸化鉄磁性材料としては、γ-酸化鉄(すなわち、磁赤鉄鉱としても知られるγ-Fe2O3)および磁鉄鉱(Fe3O4)が挙げられる。
【0042】
いくつかの用途において、ポリマーミクロゲルビーズは、超常磁性であるナノ磁性粒子(すなわちナノ超常磁性粒子)を含むことが望ましい。本明細書に使用されているように、「超常磁性」という用語は、以下の特性、すなわち(i)保磁力、(ii)残留磁気、または(iii)印加磁場の変化率が準静的であるときのヒステリシスループを有さない磁性粒子を指すことを意図する。
【0043】
超常磁性粒子のVARは、複雑磁化率、すなわちχ"の直交成分に比例することを当業者なら理解するであろう。ネール緩和時間τNが磁場周波数ωの逆数に等しいとき、すなわち
τNω=1
のときに最大のVARが得られる。
【0044】
次に、τNは、磁気異方性エネルギーKV(Kは磁気異方性であり、Vは粒子容量である)によって測定される。Kの値は、結晶磁気異方性、または完全な球形でなければ粒子形状によって決定づけられる。これは、粒子が磁性領域の形成のための臨界粒径より小さいことを、すなわちそれらが超常磁性状態にあることを前提とする。
【0045】
VAR、磁化率、磁気モーメントおよび飽和磁化の特性は、当業者に既知の標準的な方法によって測定可能である。
【0046】
ナノ磁性粒子を、MがFe、Co、Ni、Mn、Be、Mg、Ca、Ba、Sr、Cu、Zn、Ptもしくはそれらの混合物などの二価金属である一般式MO.Fe2O3のフェライト、またはMが大きな二価イオン、金属イオン、コバルトもしくはニッケルである一般式MO.6Fe2O3のマグネットプランバイト型酸化物から選択できる。また、それらは、純粋のFe、Ni、CrもしくはCoまたはこれらの酸化物の粒子であり得る。あるいは、それらは、これらのいずれかの混合物であり得る。
【0047】
一実施形態において、ナノ磁性粒子は、粒径が好ましくは50ナノメートル、例えば1から40ナノメートルである磁鉄鉱(Fe3O4)または磁赤鉄鉱(γ-Fe2O3)などの酸化鉄の粒子である。
【0048】
さらなる実施形態において、ナノ磁性粒子は、磁赤鉄鉱の粒子である。当該粒子は、最適な粒径の磁赤鉄鉱ナノ粒子が臨床的に適切な磁場条件に曝されたときに最適な粒径の磁鉄鉱ナノ粒子より高いVARを有し、磁赤鉄鉱が一般には磁鉄鉱より化学的に安定した形の酸化鉄である点でいくつかの長所を提供できる。
【0049】
磁赤鉄鉱のより高いVARは、より低いナノ磁性粒子含有量を用いて、必要なVARを有するポリマーミクロゲルビーズを製造できることを意味することを当業者なら理解するであろう。
【0050】
本発明に従って使用されるナノ磁性粒子を、便利には、当該技術分野で既知の技術を使用して製造し得る。
【0051】
本発明の方法によれば、連続有機相および分散水相を含む分散体が提供される。当業者は、一般に、当該分散体を逆エマルジョンまたは油中水分散体と呼び得る。したがって、本発明に従って使用される分散体は、単純には、水性液の液滴が分散された有機液と記載され得る。したがって、「相」という用語は、本明細書では、単純に、液体が実質的に不混和性であるために形成された有機液と水性液との相互作用が存在することを意味する。
【0052】
個別に、有機相および水相は、実質的にそれぞれ有機液および水性液であることが理解されるであろう。換言すれば、相という用語は、単純に、分散体の形で提供された場合におけるこれらの液体を説明するのに役立つ。しかし、便宜上、分散体を調製するための有機液および水性液は、以降、単純にそれぞれ有機相および水相と称し得る。有機相および水相を、それぞれ有機溶媒および水性溶媒を含むものと呼ぶことも便利であり得る。
【0053】
有機相は、一般には、疎水性液体を含むか、または疎水性液体である。好適な疎水性液体としては、1つまたは複数の水不溶性脂肪族または芳香族有機液、例えば、6から20個の炭素原子を有する炭化水素、ケロセン、ペトロラタム、キシレン、トルエン、分枝鎖イソパラフィンおよびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0054】
分散水相の他に、連続有機相は、当該技術分野に典型的に採用される1つまたは複数の添加剤を含み得る。例えば、水相を連続有機相全体にわたって分散状態に維持することを容易にするために分散剤の使用が必要であり得る。当業者は、この目的のために好適な分散剤を選択することが可能である。
【0055】
好適な分散剤は、一般には、連続有機相全体にわたる分散水相を安定化できる任意の界面活性剤である。分散剤は、典型的には、有機相に添加されるが、使用される薬剤の溶解度に応じて水相に添加され得る。
【0056】
当該分散剤の代表例としては、非イオン性界面活性剤、例えばモノオレイン酸ソルビタンおよびモノラウリル酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル、例えばモノオレイン酸グリセロールおよびモノリシノール酸グリセロールなどのグリセロールエステル、フタル酸エステル、ポリグリセロールの部分脂肪酸エステル、オレイン酸とイソプロパノールアミドとの反応生成物、12-ヒドロキシステアリン酸-ポリエチレングリコールブロックコポリマー(Hypermer B246およびHypermer B261として商業的に入手可能)、脂肪酸グリセリド、グリセリンエステル、ならびにそれらのエトキシ化誘導体;ジステアリールジメチルアンモニウム塩化物およびジオレイルジメチルアンモニウム二塩化物などのアンモニウム塩を含むが、それらに限定されない陽イオン界面活性剤;ならびにビス-トリ-デシルスルホコハク酸塩などの陰イオン界面活性剤;またはそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0057】
ポリマー分散剤が一般に好適であり、12-ヒドロキシステアリン酸-ポリエチレングリコールブロックコポリマー、ポリ(イソブチレン)コハク酸水素化物ジエチルエタノールアミン(PIBSADEEA)、エチレン-co-無水マレイン酸、ポリ(α-オレフィン-co-無水マレイン酸)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびカルボキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル、ポリ(メタクリル酸ラウリル-co-アクリル酸)、セルロースエステル、例えば酢酸エステル、プロピオン酸エステルおよび酪酸エステルから選択され得る。
【0058】
分散剤を単独で、または組み合わせて使用し得る。分散剤は、水性液が除去されるまで分散を維持するのに十分な量で採用される。採用される分散剤の量および種類は、有機相および水相の組成に応じて異なる。当業者は、所定の分散体に対する好適な分散剤およびその量を選択することが可能である。一般に、分散剤は、分散体全体の約5重量%以下の量で採用される。
【0059】
分散水相に関しては以下により詳細に記載されるが、概して、水相は、実質的に有機相に不溶であることが理解されるであろう。ナノ磁性粒子に加えて、水相は、親水性液体を含むとも言われる。「親水性液体」とは、水および水と混和性を有する液体を指す。「水性」であることによって、水相は、当然のことながら水を含むが、メタノール、エタノールおよびジオキサン等の1つまたは複数の他の親水性液体を含むこともできる。したがって、本明細書において、「親水性液体」を含む水相の言及は、水相液滴を形成する液体組成物の言及であることを意図する。
【0060】
水相は、一般には、エチレン不飽和モノマーを含まない。
【0061】
本発明に従って使用される分散体を、当該技術分野で周知の技術を使用して製造し得る。例えば、好適な水性液体を好適な有機液と混合し、例えば何らかの剪断手段によって撹拌させ得る。以上に示されているように、分散剤を使用して、得られた水相を、得られた連続有機相全体にわたって分散状態に維持することを容易にできる。このプロセスの適切な制御を介して、該方法に従って形成されたポリマーミクロゲルビーズの粒径を調整するように分散水相液滴の大きさを選択できる。
【0062】
分散水相は、分散されているナノ磁性粒子を含む。したがって、実質的に親水性液体全体に分散されており、連続有機相全体に分散された水相を集合的に形成することが理解されるであろう。したがって、水相の各分散液滴は、ナノ磁性粒子の実質的に均一な分散体を含む。
【0063】
ポリマーミクロゲルビーズに、各ビーズのポリマーマトリックス全体にわたるナノ磁性粒子の実質的に均一な分布を確保するために、ナノ磁性粒子が水相全体に分散される。ナノ磁性粒子は、立体安定剤によって分散状態に維持される。
【0064】
立体安定剤は、それ自体がポリマー材料であり、立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを含む。立体安定化ポリマーセグメントは、固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントは、ナノ磁性粒子の表面に対して親和性を有し、安定剤を粒子に固定する。立体安定剤は、また、1つまたは複数の反応性官能基を有する。反応性官能基は、立体安定化ポリマーセグメントおよび/または固定ポリマーセグメントに存在し得る。一般に、それらは、立体安定化ポリマーセグメントのみに存在することになる。
【0065】
立体安定剤の文脈における「反応性官能基」とは、それらの間に共有結合を形成するように、別の立体安定剤によって提供される相補的官能基と反応し得る、1つの立体安定剤によって提供される官能基を指す。
【0066】
理論によって制限されることを望まないが、本発明に従って使用される立体安定剤は、ナノ磁性粒子と強い結合を形成し、水相全体にわたって粒子の特に安定した分散体を提供すると考えられる。粒子と立体安定剤との強い結合は、セグメントと粒子との結合相互作用のための複数の部位を提供する安定剤の固定セグメントのポリマー特性に起因すると考えられる。安定剤の立体安定化ポリマーセグメントは、立体反発力を提供することによって粒子の効果的かつ効率的な安定化を促進すると考えられる。
【0067】
本発明に従って使用される立体安定剤は、水相全体にわたって比較的小さい(すなわち粒径が約100nm未満の)ナノ磁性粒子を安定化するのに特に効果的であることが判明した。特に、安定剤は、水相全体にわたって実質的に非凝集の形の比較的小さいナノ磁性粒子を効果的および効率的に安定化させることが判明した。この効果的および効率的な安定化の形により、ポリマーミクロゲルビーズを比較的高いナノ磁性粒子含有量(例えば約80重量%までの含有量)で本発明に従って製造するとともに、ナノ磁性粒子の実質的に均一および非凝集の分布を維持し得る。
【0068】
水相組成物の一部として、ナノ磁性粒子は、立体安定剤によって分散状態に維持される。この文脈において、「維持される」とは、立体安定剤が存在しなければ、ナノ磁性粒子が凝集するか、または沈殿として水相から沈降することを意味する。換言すれば、立体安定剤は、ナノ磁性粒子を分散状態に維持するように機能する。
【0069】
本発明に従って使用される立体安定剤は、ポリマー組成物を有する。立体安定剤の分子量に特別な制限はなく、安定剤のこの特徴は、一部に、安定化されることになるナノ磁性粒子の性質に左右され得る。一般に、立体安定剤は、約50000未満の数平均分子量を有することになる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態において、立体安定剤の数平均分子量は、約30000未満、または約20000未満、または約10000未満、またはさらに約5000未満であることが好ましい。立体安定剤の数平均分子量は、約2000から約3000の範囲であってもよい。
【0071】
数平均分子量が比較的小さい(例えば、約5000未満、好ましくは約2000から約3000の範囲である)、本発明に従って使用される立体安定剤は、比較的小さいナノ磁性粒子(すなわち粒径が約100nm未満の粒子)を安定化させるのに特に効果的であることが判明した。
【0072】
本明細書に定められる分子量値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して測定された値である。
【0073】
ナノ磁性粒子に対して使用される立体安定剤の量は、粒子の性質、特に粒子の粒径に応じて異なる。例えば、1gの5nmのナノ磁性粒子は、その表面積が大きいために1gの1ミクロンのナノ磁性粒子より多くの安定剤を必要とすることになる。当業者は、選択されたナノ磁性粒子に対して必要な安定剤の量を決定することが可能である。
【0074】
本発明に従って使用される立体安定剤は、任意の好適な重合技術によって製造できるポリマー材料である。
【0075】
一実施形態において、立体安定剤を構成する立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントの少なくとも一方は、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される。少なくとも1つの当該セグメントを採用すると、立体安定剤の安定化特性が向上すると考えられる。好適なリビング重合技術については以下にさらに詳細に記載する。それらのセグメントの一方のみがこのように誘導される場合は、他方のセグメントは、当業者に既知の任意の他の従来の重合技術によって誘導され得る。
【0076】
「立体安定化ポリマーセグメント」とは、ポリマー(すなわち少なくとも1つの種類のモノマーの重合によって形成されたポリマー)であり、立体安定剤の立体安定化機能を提供する立体安定剤のセグメントまたは領域を指す。便宜上、立体安定化ポリマーセグメントは、以後、ポリマーセグメント「A」と称し得る。
【0077】
以上に言及されているように、立体安定化ポリマーセグメントは、立体反発力を提供することによって、特定の材料を水相全体にわたって安定化させるように機能する。
【0078】
ポリマーであることにより、立体安定化セグメントは、重合モノマー残留物を含むことが理解されるであろう。したがって、該セグメントは、必要な立体安定化特性をもたらす重合モノマー残留物を含む。立体安定化ポリマーセグメントを構成する重合モノマー残留物は同一であっても異なっていてもよい。
【0079】
立体安定化ポリマーセグメントは、部分(例えば本明細書に記載の任意の置換基)で置換されていてよく、または静電安定化特性を与える重合モノマー残留物を含み得る。
【0080】
立体安定化セグメントが1つまたは複数の反応性官能基を含む場合は、セグメントは、反応性官能基を提供する1つまたは複数の重合モノマー残留物を含み得る。あるいは、セグメントを調製した後に反応性官能基で置換できる。その場合、セグメントは、当然のことながら、容易に置換できるように調製されることになる。
【0081】
所望の立体安定化効果を提供するために、立体安定化ポリマーセグメントは、当然のことながら、水相に可溶である。所定の水相に対する所定の立体安定化ポリマーセグメントの溶解度を、単にポリマーセグメントを分離した形で調製し、選択した水性溶媒での好適な溶解試験を実施することによって容易に測定できる。
【0082】
立体安定剤は、全体的に、選択した水性溶媒に可溶であってもなくてもよいが、立体安定化ポリマーセグメントを提供する。
【0083】
当業者は、立体安定化ポリマーセグメントとして採用できるポリマー材料を、当該ポリマーを形成するために重合できるモノマーに関して理解するであろう。例えば、好適なポリマー材料としては、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリN-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドンおよびそれらのコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。安定化ポリマーセグメントを形成するために使用できる好適なモノマーとしては、アクリルアミド、エチレンオキシド、ヒドロキシエチルアクリレート、N-イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピロリドンおよびそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0084】
立体安定化セグメントが1つまたは複数の反応性官能基を含む場合は、セグメントが、反応性官能基を提供する1つまたは複数の重合モノマー残留物を含むようにセグメントを調製することが好ましい。その場合、好適な反応性官能基を提供することになる好適なモノマーとしては、メタクリル酸アセトアセトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、N-メチロールアクリルアミド、(イソブトキシメチル)アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸t-ブチルカルボジイミドエチル、アクリル酸、γ-メタクリルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、メタクリル酸2-イソシアノエチルおよびジアセトンアクリルアミド、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0085】
立体安定剤の必要な相補的反応性官能基を提供するのに使用できる、以上にそのまま挙げられているモノマーの対の例としては、N-メチロールアクリルアミド同士、(イソブトキシメチル)アクリルアミド同士、γ-メタクリルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン同士、メタクリル酸2-イソシアノエチルとアクリル酸ヒドロキシエチル、およびメタクリル酸t-ブチル-カルボジイミドエチルとアクリル酸が挙げられる。
【0086】
固定ポリマーセグメントと無関係に特定の立体安定化ポリマーセグメントを選択することが可能であることによって、本発明に従って使用される立体安定剤を、有利には、特定の水相に適するように調整設計することによって、立体安定剤の立体安定特性を最大にできる。
【0087】
立体安定化セグメントを調製するのに使用できる重合技術に特別な制限はないが、リビング重合技術は、いくつかの利点を提供できる。「リビング重合」は、連鎖移動を実質的に伴わず、デッドポリマー鎖をもたらす停止を実質的に伴わずに連鎖成長を伝搬する付加重合の形であることを当業者なら理解するであろう。「デッドポリマー鎖」とは、モノマーがさらに付加され得ないものを指す。
【0088】
リビング重合において、典型的にはすべてのポリマー鎖が、重合の開始時点で発生し、重合の後の段階で発生する新たな鎖は最小限にとどめられる。この発生プロセスの後に、すべてのポリマー鎖が実質的に同じ速度で成長する。リビング重合の特徴および特性は、一般には、(i)変換とともにポリマーの分子量が増大すること、(ii)ポリマー鎖の長さの分布が狭いこと(すなわち、それらが同様の分子量を有すること)および(iii)さらなるモノマーをポリマー鎖に付加してブロックコポリマー構造を生成できることを含む。したがって、リビング重合は、リビング重合以外の方法では達成することができない、得られたポリマーの分子量、ポリマー鎖構造および多分散度に対する優れた制御を可能にする。
【0089】
好適なリビング重合技術をイオン重合および制御ラジカル重合(CRP)から選択できる。CRPの例としては、イニファーター重合、安定フリーラジカル媒介重合(SFRP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)および可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合が挙げられるが、それらに限定されない。
【0090】
リビングイオン重合は、動力学的連鎖担体をイオンまたはイオン対にする付加重合の形である。重合は、陰イオンまたは陽イオン動力学的連鎖担体を介して進行する。換言すれば、伝搬種は、負または正電荷を運ぶため、それぞれ付随する対陽イオンまたは対陰イオンも存在することになる。例えば、陰イオン重合の場合は、Iが有機陰イオン(例えば場合により置換されたアルキル陰イオン)を表し、Mが付随する対陽イオンを表すI-M+で表される部分を使用することによって重合を実施でき、あるいはリビング陽イオン重合の場合は、その部分を、Iが有機陽イオン(例えば場合により置換されたアルキル陽イオン)を表し、Mが付随する対陰イオンを表すI+M-で表すことができる。陰イオンおよび陽イオンリビング重合を実施するための好適な部分は、当業者に周知である。
【0091】
リビング重合技術は、CRP技術であってよい。
【0092】
イニファーター重合は、CRPから周知であり、以下のスキーム1に例示されるメカニズムで進行することが広く理解されている。
【0093】
【化1】

【0094】
スキーム1を参照すると、イニファーターABが化学的、熱的または光化学的に解離して、反応性ラジカル種Aおよび一般に相対的に安定なラジカル種Bを生成する(対称イニファーターでは、ラジカル種Bは、ラジカル種Aと同じである)(ステップa)。ラジカル種Aは、(ステップbにおいて)モノマーMの重合を開始でき、(ステップcにおいて)ラジカル種Bとのカップリングによって不活性化され得る。(ステップdにおいて)イニファーターに移動し、かつ/または(ステップeにおいて)休眠ポリマーに移動した後で(ステップfにおいて)停止することがイニファーターの化学の特徴である。
【0095】
イニファーター重合を実施するための好適な部分は、当業者に周知であり、ジチオカーボネート、二硫化物および二硫化チウラム部分を含むが、それらに限定されない。
【0096】
SFRPは、CRPの周知の形であり、以下のスキーム2に例示されるメカニズムによって進行することが広く理解されている。
【0097】
【化2】

【0098】
スキーム2を参照すると、SFRP部分CDが解離して、活性ラジカル種Cおよび安定ラジカル種Dを生成する。活性ラジカル種Cは、モノマーMと反応し、得られた伝搬連鎖が安定ラジカル種Dと再結合し得る。SFRP部分は、イニファーター部分と異なり、移動ステップがない。
【0099】
SFRPを実施するための好適な部分は、当業者に周知であり、フェノキシおよびニトロオキシラジカルを生成することが可能な部分を含むが、それらに限定されない。部分がニトロオキシラジカルを生成する場合は、重合技術は、ニトロオキシド媒介重合(NMP)としてより広く知られる。
【0100】
フェノキシラジカルを生成することが可能なSFRP部分の例としては、tert-アルキル(例えばt-ブチル)、フェニルもしくはジメチルベンジルなどの嵩高い基によって2および6位が置換され、アルキル、アルキルオキシ、アリールもしくはアリールオキシ基によって、またはジメチルアミノもしくはジフェニルアミノ基などのヘテロ原子(例えばS、NもしくはO)含有基によって4位が場合により置換されたフェノキシ基を含むものが挙げられる。
【0101】
ニトロオキシラジカルを生成することが可能なSFRP部分としては、R1およびR2が三級アルキル基であり、またはR1およびR2がN原子と一緒になって、好ましくはN原子に対するα位に三次分岐を有する環式構造を形成する置換基R1R2N-O-を含むものが挙げられる。当該ニトロオキシ置換基の例としては、2,2,5,5-テトラアルキルピロリジンオキシル、ならびに5員複素環式環が脂環式もしくは芳香族環に縮合されたもの、ヒンダード脂肪族ジアルキルアミノオキシルおよびイミノオキシル置換基が挙げられる。SFRPに採用される一般的なニトロオキシ置換基は、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシである。
【0102】
ATRPは、CRPの周知の形であり、以下のスキーム3に例示されるように、ハロゲン原子などの移動可能原子もしくは基を伝搬ポリマー鎖に移動させることにより、金属触媒の酸化状態を低下させることによって伝搬ラジカルを可逆的に不活性化するために遷移金属触媒を一般に採用する。
【0103】
【化3】

【0104】
スキーム3を参照すると、移動可能基または原子(X、例えば、ハロゲン化物、ヒドロキシル、C1〜C6-アルコキシ、シアノ、シアナト、チオシアナトもしくはアジド)は、有機化合物(E)(例えば、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたアルキルアリールまたはポリマー鎖)から、モノマー(M)との重合を開始するラジカル種を形成させる酸化数(n)を有する遷移金属触媒(Mt、例えば、銅、鉄、金、銀、水銀、パラジウム、プラチナ、コバルト、マンガン、ルテニウム、モリブデン、ニオビウムまたは亜鉛)に移される。このプロセスの一部として、金属錯体が酸化される((Mtn+1X)。次いで、伝搬ポリマー鎖と休眠X末端封止ポリマー鎖との間に同様の反応シーケンスが確立される。
【0105】
RAFT重合は、当該技術分野で周知であり、以下のスキーム4に概要が示されるメカニズムを介して作用すると考えられる。
【0106】
【化4】

【0107】
スキーム4を参照すると、RAFT重合は、伝搬ラジカルを有するRAFT部分(1)の反応を含む初期反応シーケンス(a)を介して進行すると考えられる。形成される不安定な中間ラジカル種(2)が細分化して、RAFT部分から誘導されたラジカル(R)とともに、一時的に不活性化された休眠ポリマー種(3)を形成する。次いで、このラジカルは、モノマー(M)の重合を促進することによって、重合を再開させ得る。次いで、伝搬ポリマー鎖は、休眠ポリマー種(3)と反応して、反応シーケンス(a)と類似した反応シーケンス(b)を促進させる。したがって、不安定な中間ラジカル(4)が形成され、続いて細分化して、さらなる連鎖成長が可能なラジカルとともに、休眠ポリマー種を再び形成する。
【0108】
RAFT部分は、一般には、-C(S)S-で表される二価の部分である)チオカルボニルチオ基を含み、キサンテート、ジチオエステル、ジチオカーボネート、ジチオカルバネートおよびトリチオカーボネートを含む。
【0109】
立体安定化ポリマーセグメントを1種類のモノマーまたは2種以上の異なるモノマーの重合によって形成できる。よって、立体安定化ポリマーセグメントは、ホモポリマーセグメントまたはコポリマーセグメントであってよい。
【0110】
安定化ポリマーセグメントが、その数平均分子量の点で、立体安定化ポリマーセグメントを定めるのでなく立体安定剤の一部のみを形成するのであれば、セグメントを集合的に形成する重合モノマー単位の数を参照することが有用であり得る。したがって、立体安定化ポリマーセグメントを集合的に形成する当該単位の数に特別な制限はないが、本発明のいくつかの実施形態において、立体安定剤は、比較的低数平均分子量を有することが望ましい。その場合、立体安定化ポリマーセグメントは、セグメント全体を構成する約50個未満、より好ましくは約40個未満、最も好ましくは約15から約30個の重合モノマー残留物を有するのが好ましい。
【0111】
一実施形態において、立体安定化ポリマーセグメントを構成する重合モノマー残留物反復単位の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つが、先述の反応性官能基を提供するモノマーの重合残留物である。
【0112】
「固定ポリマーセグメント」とは、ポリマーであり、ナノ磁性粒子の表面に対して親和性を有し、粒子に立体安定剤を固定するように機能する立体安定剤のセグメントまたは領域を指す。便宜上、固定ポリマーセグメントは、以降、ポリマーセグメント「B」と称することができる。
【0113】
ポリマーであることによって、固定セグメントは、重合モノマー残留物を含むことが理解されるであろう。特に、セグメントは、ナノ磁性粒子に対する必要な結合親和性をもたらす重合モノマー残留物を含む。固定ポリマーセグメントを構成する重合モノマー残留物は同一であっても異なっていてもよい。
【0114】
ナノ磁性粒子とも結合相互作用のための複数の部位を提供する固定セグメントの能力は、少なくとも一部に、立体安定剤によって提供される優れた安定化特性をもたらす。
【0115】
一般に、固定セグメントは、ナノ磁性微粒との結合のための部位をそれぞれ提供する少なくとも2つの重合モノマー残留物、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも5つ、さらにより好ましくは少なくとも7つ、最も好ましくは少なくとも10個の当該重合モノマー残留物を有する。固定セグメントを構成する重合モノマー残留物のすべてが、必ずしも粒子との結合相互作用をもたらす必要がなく、固定セグメントを構成する重合モノマー残留物のすべてでなくても大多数が粒子との結合相互作用をもたらすことが一般的に好適である。
【0116】
したがって、固定セグメントは、安定剤を粒子材料に集合的に固定する複数の部位を有するものと記載され得る。
【0117】
固定ポリマーセグメントを、ナノ磁性粒子との結合相互作用をもたらすことができる、またはできない部分(例えば本明細書に記載の任意の置換基)で置換することもできる。
【0118】
固定ポリマーセグメントが1つまたは複数の反応性官能基を含む場合は、該セグメントは、立体安定化ポリマーセグメントに関して既に記載されている反応性官能基を提供する1つまたは複数の重合モノマー残留物を含み得る。あるいは、固定ポリマーセグメントは、調製された後に反応性官能基で置換されてよい。その場合、該セグメントは、当然のことながら、それを容易に置換できるように調製されることになる。
【0119】
所望の固定効果を提供するために、固定ポリマーセグメントは、ナノ磁性粒子に対する結合親和性を有する。固定セグメントを粒子に結合させる具体的な方式は、特に重要でなく、例えば、静電力、水素結合、イオン電荷、ファンデルワールス力、またはそれらの組合せによるものであり得る。固定ポリマーセグメントによって提供される特定の利点は、粒子との結合相互作用のための複数の部位を提供できることである。したがって、所定の結合部位が粒子との比較的弱い相互作用しか提供しない場合でも、セグメント内の複数の当該部位の存在は、それが全体的に粒子と固定的に結合することを可能にする。
【0120】
必要とされる具体的な固定ポリマーセグメントは、それが結合するナノ磁性粒子の性質に左右される。固定ポリマーセグメントと粒子との相互作用を説明するときは、該セグメントおよび粒子の親水性および疎水性に言及するのが便利であり得る。したがって、概して、好適な結合相互作用は、該セグメントおよび粒子が類似の親水性または疎水性を有するときに生じる。例えば、粒子が比較的親水性の表面を有する場合(例えば、その表面を水溶液で湿らせることができる場合)は、親水性を有する固定ポリマーセグメントを使用して良好な結合が達成されるはずである(例えば、その分離された形では、セグメントは、水性媒体に可溶である)。当該例は、粒子がその表面に電荷を形成できるタイプである場合に実現され得る。その場合、該セグメントは、該セグメントと粒子の間のイオン結合を促進するように、やはり電荷を形成することができるモノマーの重合残留物(例えばイオン性モノマーの残留物)を含むことが望ましい。安定剤および粒子が残留する水相のpHを調整することによって、当該帯電種の形成の促進を容易にし得る。
【0121】
本発明に従って使用されるナノ磁性粒子は、一般には、比較的親水性の表面を有し、それらの表面に電荷を形成することが可能であり得る。その場合、固定ポリマーセグメントは、好ましくは、イオン性モノマーの重合残留物を含むことになる。
【0122】
「イオン性モノマー」という用語は、溶液中でイオン化されて陽イオンまたは陰イオン基を形成することができる官能基を含むことを意味する。当該官能基は、一般に、陽子の損失または受容を通じて酸性または塩基性条件下でイオン化することが可能である。概して、官能基は酸基または塩基基である。例えば、カルボン酸官能基は、塩基性条件下でカルボン酸陰イオンを形成でき、アミン官能基は、酸性条件下で四級アンモニウム陽イオンを形成することができる。官能基は、イオン交換プロセスを介してイオン化することも可能であり得る。
【0123】
酸基を有する好適なイオン性モノマーの例としては、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、p-スチレンカルボン酸、p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、リン酸モノアクリルオキシエチル、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸およびマレイン酸が挙げられるが、それらに限定されない。塩基基を有する好適なイオン性モノマーの例としては、アクリル酸およびメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピル、ならびに対応するアクリル酸およびメタクリル酸3-(ジエチルアミノ)エチルおよびプロピルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0124】
当業者は、選択したナノ磁性粒子の表面と結合する適切な固定ポリマーセグメントを選択することが可能である。
【0125】
立体安定化ポリマーセグメントとは無関係に特定の固定ポリマーセグメントを選択することができることによって、本発明に従って使用される立体安定剤を、有利には、特定のナノ磁性粒子に適応させることによって立体安定剤の固定特性を最大に高めるように調整設計できる。
【0126】
当業者は、固定ポリマーセグメントとして採用できる様々なポリマー材料を、当該ポリマーを形成するために重合することができるモノマーに関して理解するであろう。例えば、好適なポリマー材料としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリイタコン酸、ポリ-p-スチレンカルボン酸、ポリ-p-スチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリモノアクリルオキシエチルホスフェート、ポリ-2-(メチルアクリロイルオキシ)エチルホスフェート、ポリエタクリル酸、ポリ-α-クロロアクリル酸、ポリクロトン酸、ポリフマル酸、ポリシトラコン酸、ポリメサコン酸、ポリマレイン酸、ポリ-2-(ジメチルアミノ)エチル、ならびにプロピルアクリレートおよびメタクリレート、対応するポリ-3-(ジエチルアミノ)エチル、ならびにプロピルアクリレートおよびメタクリレート、疎水性アクリレートおよびメタクリレートポリマー、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ならびにそれらのコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。したがって、固定ポリマーセグメントを形成するのに使用できる好適なモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、p-スチレンカルボン酸、p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、リン酸モノアクリルオキシエチル、リン酸2-(メチルアクリルオキシ)エチル、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピル、対応するアクリル酸およびメタクリル酸3-(ジエチルアミノ)エチルおよびプロピル、スチレン、疎水性アクリレートおよびメタクリレートモノマー、ジメチルアミノエチルメタクリレートならびにそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0127】
固定ポリマーセグメントが1つまたは複数の反応性官能基を含む場合は、該セグメントが、立体安定化ポリマーセグメントに関して既に記載されている反応性官能基を提供する1つまたは複数の重合モノマー残留物を含むようにそのセグメントを調製できる。しかし、1つまたは複数の反応性官能基が立体安定化セグメントに残留することが好ましい。
【0128】
固定ポリマーセグメントを調製するために使用できる重合技術に特別な制限はない。本明細書に記載されているもののようなリビング重合技術が、固定ポリマーセグメントを調製するのに特に有用であることが判明した。立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントの少なくとも一方がリビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導され、これは固定ポリマーセグメントであることが好ましい。
【0129】
一実施形態において、立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントの両方が、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される。
【0130】
固定ポリマーセグメントを1種類のモノマーまたは2種以上の異なるモノマーの組合せの重合によって形成できる。よって、固定ポリマーセグメントは、ホモポリマーセグメントまたはコポリマーセグメントであってよい。
【0131】
固定ポリマーセグメントが、その数平均分子量の観点で固定ポリマーセグメントを定めるのでなく立体安定剤の一部のみを形成するのであれば、そのセグメントを集合的に形成する重合モノマー単位の数を参照することが有用であり得る。したがって、固定ポリマーセグメントを集合的に形成する当該単位の数に特別の制限はないが、本発明のいくつかの実施形態において、立体安定剤は、数平均分子量が比較的小さいことが望ましい。その場合、固定ポリマーセグメントは、セグメント全体を構成する約50個未満、より好ましくは約40個未満、さらにより好ましくは約30個未満、さらにより好ましくは約5から約25個、最も好ましくは約5から約15個の重合モノマー残留物反復単位を有することが好ましい。
【0132】
一実施形態において、固定ポリマーセグメントを構成する重合モノマー残留物反復単位の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つが、立体安定化ポリマーセグメントに関して既に記載されている反応性官能基を提供するモノマーの重合残留物である。
【0133】
安定剤が本明細書に記載されているように機能するのであれば、安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントをどのように空間配置するかということに対する特別な制限はない。
【0134】
立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを任意の好適な手段によって互いにカップリングさせて立体安定剤を形成することができるが、一般には、それらは共有結合を介して互いに直接カップリングされるため、安定剤を、単純にA-Bブロックコポリマーとして、または当該コポリマーを含むものとして示し得る。その場合、Aは立体安定化ポリマーセグメントを表し、Bは固定ポリマーセグメントを表す。AおよびBの各々はホモポリマーまたはコポリマー(例えば、ランダム、ブロック、テーパ等)であり得ることが以上の記載から理解されるであろう。
【0135】
安定剤は、1個を超える立体安定化ポリマーセグメント(A)および1個を超える固定ポリマーセグメント(B)を含み得る。例えば、安定剤を、A-B-Aブロックコポリマーとして、または当該コポリマーを含むものとして示し得る。その場合、各Aは、同一であっても異なっていてもよい立体安定化ポリマーセグメントを表し、Bは、固定ポリマーセグメントを表す。安定剤をB-A-Bブロックコポリマーとして、または当該コポリマーを含むものとして示すこともでき、その場合、各Bは、同一であっても異なっていてもよい固定ポリマーセグメントを表し、Aは、それが、水相に伸びる「ループ」を形成し、その安定化の役割を果たすように十分な鎖長を有する立体安定化ポリマーセグメントを表す。
【0136】
安定剤は、星型および櫛形ポリマー構造などのより複雑な構造を有し得る。その場合、固定ポリマーセグメントBは、複数の立体安定化ポリマーセグメントAが結合した当該構造の主ポリマー骨格を表し得る。
【0137】
(A-Bブロックコポリマー構造の形の)本発明に従って使用される立体安定剤と水相におけるナノ磁性粒子との相互作用は、図1に示す非縮尺概略図に例示され得る。
【0138】
図1を参照すると、A-Bブロックコポリマーによって表される立体安定剤は、固定ポリマーセグメント(B)を介してナノ磁性粒子(P)の表面に対して親和性を示す。したがって、固定ポリマーセグメント(B)は、立体安定剤を粒子に固定する。固定ポリマーセグメント(B)は、セグメントと粒子との結合相互作用のための複数の部位を提供する。セグメント(B)と異なる立体安定化ポリマーセグメント(A)は、水相に可溶であり、(i)粒子を水相全体に分散した状態に維持するように機能し、(ii)反応性官能基(F)を提供する。実際、粒子の表面には多くの立体安定剤が固定されていること、およびこれらは、明確にするために、図1の図から省略されていることが理解されるであろう。
【0139】
本発明に従って使用される立体安定剤がA-B-Aブロックコポリマーの形である、図1の図と同様の図を図2に示す。
【0140】
ブロックコポリマーとして、本発明に従って使用される立体安定剤を任意の好適な重合技術によって製造することができる。ポリマーセグメントAおよびBの要件に関して、当業者は、当該技術分野で既知の技術を使用して好適なブロックコポリマーを調製することが可能である。
【0141】
一実施形態において、本発明に従って使用される立体安定剤の立体安定化ポリマーセグメントおよび/または固定ポリマーセグメントは、本明細書に記載されているリビング重合技術を使用して調製される。さらなる実施形態において、本発明に従って使用される立体安定剤の少なくとも固定ポリマーセグメントは、本明細書に記載されているリビング重合技術を使用して調製される。本明細書に記載されているリビング重合技術のなかでもRAFT重合が好適である。
【0142】
RAFT重合は、十分に確定された分子構造および低い多分散度を有するポリマーを製造することを可能にする周知のラジカル重合技術である。RAFT重合は、RAFT剤を使用して実施され、RAFT剤の制御下で形成されたポリマー(すなわち、ポリマーを形成するためのRAFTメカニズムを介して重合されたポリマー)は、便利には、「RAFTポリマー」または「RAFT誘導ポリマー」と称し得る。
【0143】
本発明の一実施形態において、立体安定剤は、RAFT誘導ポリマーである。
【0144】
RAFT剤は、一般構造Z-C(S)-S-Rを有するものとして一般的に示されること、およびRAFT誘導ポリマーは、形成されると、RAFT剤の反応残留物を含むことを当業者なら理解するであろう。したがって、本発明に従って使用される立体安定剤は、式(I):
【0145】
【化5】

【0146】
[式中、Xは、(例えば、先述のA-BまたはB-Aブロックコポリマー構造等を有する)立体安定剤のポリマー構造を表し、R1およびZは、立体安定剤を製造するのに使用されるRAFT剤から誘導され、それがXを与えるモノマーの重合におけるRAFT剤として機能できるように独立して選択される]によって示される構造を有する。
【0147】
1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーの重合においてRAFT剤として機能するために、R1は、典型的には、採用される重合条件下でフリーラジカル脱離基として機能し、さらにフリーラジカル脱離基として、重合を再開する能力を保持する有機基であることを当業者なら理解するであろう。同様に、Zは、典型的には、重合を過度に遅延させる程度にRAFT付加ラジカルの細分の速度を低下させることなく、フリーラジカル付加に向けたRAFT剤におけるC=S部分の適度に高い反応性を与えるように機能する有機基であることを当業者なら理解するであろう。
【0148】
好適なR1基の例としては、それぞれが1つまたは複数の親水性基で場合により置換されたアルキル、アルキルアリール、アルコキシアリールおよびアルコキシヘテロアリールが挙げられる。
【0149】
好適なR1基のより具体的な例としては、それぞれが-CO2H、-CO2RN、-SO3H、-OSO3H、-SORN、-SO2RN、-OP(OH)2、-P(OH)2、-PO(OH)2、-OH、-ORN、-(OCH2-CHR)w-OH、-CONH2、CONHR'、CONR'R"、-NR'R"、-N+R'R"R'"[Rは、C1〜C6アルキルから選択され、wは1から10であり、R'、R"およびR'"は、-CO2H、-SO3H、-OSO3H、-OH、-(COCH2-CHR)w-OH、-CONH2、-SORおよびSO2R、ならびにそれらの塩から選択される1つまたは複数の親水性置換基で場合により置換されたアルキルおよびアリールから独立して選択され、Rおよびwは以上に定義されている通りである]から選択される1つまたは複数の親水性基で場合により置換されたC1〜C6アルキル、C1〜C6アルキルアリールおよびC1〜C6アルコキシアリールまたはヘテロアリールを挙げ得る。好適なR1基としては、-CH(CH3)CO2H、-CH(CO2H)CH2CO2H、-C(CH3)2CO2Hが挙げられるが、それらに限定されない。
【0150】
好適なZ基を場合により置換されたアルコキシ、場合により置換されたアリールオキシ、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアリールアルキル、場合により置換されたアルキルチオ、場合により置換されたアリールアルキルチオ、ジアルコキシもしくはジアリールオキシホスフィニル[-P(=O)OR22]、ジアルキルもしくはジアリールホスフィニル[-P(=O)OR22]、場合により置換されたアシルアミノ、場合により置換されたアシルイミノ、場合により置換されたアミノ、R1-(X)-S-[R1およびXは以上に定義されている通りであり、R2は、場合により置換されたC1〜C18アルキル、場合により置換されたC2〜C18アルケニル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアラルキルおよび場合により置換されたアルカリールから選択される]および任意のメカニズムによって形成されたポリマー鎖、例えば、水溶性ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキシドポリマーおよびそれらのアルキル末端封止誘導体から選択できる。好適なZ基としては、-CH2(C6H5)、C1〜C20アルキル、
【0151】
【化6】

【0152】
[式中、eは2から4である]、-SR3[R3は、C1からC20のアルキルから選択される]が挙げられるが、それらに限定されない。
【0153】
R2およびZ基に対する好適な任意の置換基としては、エポキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ(および塩)、スルホン酸(および塩)、アルコキシもしくはアリールオキシカルボニル、イソシアネート、シアノ、シリル、ハロおよびジアルキルアミノが挙げられる。
【0154】
式(I)のR1およびZ基の両方を選択する際に、好適なR1およびZ基のいずれの組合せも好適である。
【0155】
親水基が-N+R'R"R'"である場合は、付随する対陰イオンが存在することになる。
【0156】
R1は、1つまたは複数の疎水性基で場合により置換された有機基であってもよい。その場合、Zは、好ましくは、1つまたは複数の親水性基で場合により置換された有機基である。
【0157】
本明細書に使用されているように、「アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、それぞれ1つまたは複数の芳香族または複素芳香族環を含みまたはからなる、環原子を介して結合された任意の置換基を指す。環は、単環式または多環式環系であってよいが、単環式または二環式5または6員環が好適である。好適な環の例としては、それぞれ場合により置換されていてよいベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、1-ベンジルナフタレン、アントラセン、ジヒドロアントラセン、ベンズアントラセン、ジベンズアントラセン、フェナントラセン、ペリレン、ピリジン、4-フェニルピリジン、3-フェニルピリジン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ナフトチオフェン、チアントレン、フラン、ベンゾフラン、ピレン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサンチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、インドリジン、イソインドール、プリン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イソチアゾール、イソオキサゾールおよびフェノキサジン等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0158】
本明細書において、「場合により置換された」とは、基が、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、アセチレノ、カルボキシミジル、ハロアリールオキシ、イソシアノ、シアノ、ホルミル、カルボキシル、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロアリール、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ベンジルアミノ、イミノ、アルキルイミン、アルケニルイミン、アルキニルイミノ、アリールイミノ、ベンジルイミノ、ジベンジルアミノ、アシル、アルケニルアシル、アルキニルアシル、アリールアシル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルフェニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルソルフィニル、アリールスルフィニル、カルボアルコキシ、アルキルチオ、ベンジルチオ、アシルチオ、スルホンアミド、スルファニル、スルホ、およびリン含有基、アルコキシシリル、シリル、アルキルシリル、アルキルアルコキシシリル、フェノキシシリル、アルキルフェノキシシリル、アルコキシフェノキシシリル、アリールフェノキシシリル、アロファニル、グアニジノ、ヒダントイル、ウレイドおよびウレイレンから選択されるが、それらに限定されない1つまたは複数の基でさらに置換されていてもいなくてもよいことを意味する。
【0159】
他に指定する場合を除いて、本明細書に使用されている「ハロゲン」および「ハロ」という用語は、I、Br、ClおよびFを指す。
【0160】
本明細書において、単独で、または「アルケニルオキシアルキル」、「アルキルチオ」、「アルキルアミノ」および「ジアルキルアミノ」などの複合語で使用される「アルキル」という用語は、直鎖状、分枝状または環式アルキル、好ましくはC1〜20アルキルまたはシクロアルキルを表す。直鎖状および分枝状アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アミル、イソアミル、sec-アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチル-プロピル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、ヘプチル、5-メトキシヘキシル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、オクチル、6-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、ノニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-もしくは7-メチル-オクチル、1-、2-、3-、4もしくは5-エチルヘプチル、1-、2-もしくは3-プロピルヘキシル、デシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-および8-メチルノニル、1-、2-、3-、4-、5- or 6-エチルオクチル、1-、2-、3-もしくは4-プロピルヘプチル、ウンデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-もしくは9-メチルデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-もしくは7-エチルノニル、1-、2-、3-、4-もしくは5-プロピルオクチル、1-、2-もしくは3-ブチルヘプチル、1-ペンチルヘキシル、ドデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-もしくは10-メチルウンデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-エチルデシル、1-、2-、3-、4-、5-もしくは6-プロピルノニル、1-、2-、3-もしくは4-ブチルオクチルおよび1-2-ペンチルヘプチル等が挙げられる。環式アルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルおよびシクロデシル等の単環式または多環式アルキル基が挙げられる。
【0161】
本明細書に使用されているように、「塩」という用語は、イオン化された形の種を指し、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含む。RAFTポリマーを形成するという文脈において、好適な塩は、RAFT化学作用に干渉しない塩である。
【0162】
本明細書に使用されているように、「対陰イオン」という用語は、対応する陽イオンの電荷のバランスをとるために負電荷を提供することが可能な種を指す。対陰イオンの例としては、Cl-、I-、Br-、F-、NO3-、CN-およびPO3-が挙げられる。
【0163】
本明細書に使用されているように、「アルコキシ」という用語は、直鎖状または分枝状アルコキシ、好ましくはC1〜20アルコキシを指す。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシおよび異なるブトキシ異性体が挙げられる。
【0164】
本明細書に使用されているように、「アルケニル」という用語は、既に定義されているエチレン一、二もしくは多不飽和アルキルまたはシクロアルキル基を含む直鎖状、分枝状もしくは環式アルケンから形成された基、好ましくはC2〜20アルケニルを指す。アルケニルの例としては、ビニル、アリル、1-メチルビニル、ブテニル、イソ-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、シクロペンテニル、1-メチル-シクロペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、シクロヘキセニル、1-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、シクロオクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、3-デセニル、1,3-ブタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1,3-シクロペンタジエニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,3-シクロヘキサジエニル、1,4-シクロヘキサジエニル、1,3-シクロヘプタジエニル、1,3,5-シクロヘプタトリエニルおよび1,3,5,7-シクロオクタテトラエニルが挙げられる。
【0165】
本明細書に使用されているように、「アルキニル」という用語は、既に定義されているアルキルおよびシクロアルキル基と構造的に類似したものを含む直鎖状、分枝状もしくは環式アルキンから形成された基、好ましくはC2〜20アルキニルを指す。アルキニルの例としては、エチニル、2-プロピニルおよび2-もしくは3-ブチニルが挙げられる。
【0166】
本明細書に使用されているように、「アシル」という用語は、単独で、または「アシルオキシ」、「アシルチオ」、「アシルアミノ」もしくは「ジアシルアミノ」などの複合語で、カルバモイル、脂肪族アシル基、および芳香族アシルと称する芳香族環または複素環式アシルと称する複素環式環を含むアシル基、好ましくはC1〜20アシルを指す。アシルの例としては、カルバモイル:ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2-メチルプロパノイル、ペンタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイルおよびイコサノイルなどの直鎖状または分枝状アルカノイル;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、t-ペンチルオキシカルボニルおよびヘプチルオキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル;シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニルおよびシクロヘキシルカルボニルなどのシクロアルキルカルボニル;メチルスルホニルおよびエチルスルホニルなどのアルキルスルホニル;メトキシスルホニルおよびエトキシスルホニルなどのアルコキシスルホニル;ベンゾイル、トルオイルおよびナフトイルなどのアロイル;フェニルアルカノイル(例えば、フェニルアセチル、フェニルプロパノイル、フェニルブタノイル、フェニルイソブチリル、フェニルペンタノイルおよびフェニルヘキサノイル)ならびにナフチルアルカノイル(例えば、ナフチルアセチル、ナフチルプロパノイルおよびナフチルブタノイル)などのアラルカノイル;フェニルアルケノイル(例えば、フェニルプロペノイル、フェニルブテノイル、フェニルメタクリロイル、フェニルペンテノイルおよびフェニルヘキセノイル)ならびにナフチルアルケノイル(例えば、ナフチルプロペノイル、ナフチルブテノイルおよびナフチルペンテノイル)などのアラルケノイル;フェニルアルコキシカルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニル)などのアラルコキシカルボニル;フェノキシカルボニルおよびナフチルオキシカルボニルなどのアリールオキシカルボニル;フェノキシアセチルおよびフェノキシプロピオニルなどのアリールオキシアルカノイル;フェニルカルバモイルなどのアリールカルバモイル;フェニルチオカルバモイルなどのアリールチオカルバモイル;フェニルグリオキシロイルおよびナフチルグリオキシロイルなどのアリールグリオキシロイル;フェニルスルホニルおよびナフチルスルホニルなどのアリールスルホニル;複素環式カルボニル;チエニルアセチル、チエニルプロパノイル、チエニルブタノイル、チエニルペンタノイル、チエニルヘキサノイル、チアゾリルアセチル、チアジアゾリルアセチルおよびテトラゾリルアセチルなどの複素環式カルカノイル;複素環式プロペノイル、複素環式ブテノイル、複素環式ペンテノイルおよび複素環式ヘキセノイルなどの複素環式カルケノイル;ならびにチアゾリルグリオキシロイルおよびチエニルグリオキシロイルなどの複素環式グリオキシロイルが挙げられる。
【0167】
本明細書に使用されているように、それ自体で、または「複素環式アルケノイル」、「ヘテロシクロオキシ」または「ハロヘテロシクリル」などの用語の一部として使用される「複素環式」、「ヘテロシクリル」および「複素環」という用語は、N、SおよびOから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含み、場合により置換されていてよい芳香族、擬似芳香族および非芳香族環または環系を指す。好ましくは、環または環系は、3から20個の炭素原子を有する。環または環系を、「ヘテロアリール」の定義に関して以上に記載されているものから選択することができる。
【0168】
式(I)の好適な立体安定剤としては、以下の一般式(II)から(X):
【0169】
【化7】

【0170】
[R3およびXは既に定義されている通りである]が挙げられるが、それらに限定されない。
【0171】
RAFT重合による立体安定剤の製造は、少なくとも1つの立体安定化ポリマーセグメント(A)を調製するための(i)1種または複数のエチレン不飽和モノマーおよび少なくとも1つの固定ポリマーセグメント(B)を調製するための(ii)1種または複数の異なるモノマーをRAFT剤の制御下で重合するステップを含み得る(すなわち、AおよびBが構造(I)におけるXを集合的に形成する場合)。便利には、RAFT重合の技術分野の当業者によって既知の技術、条件および試薬を使用して、当該安定剤前駆体を製造できる。
【0172】
一般式(I)のZ-C(S)-S-およびR1-部分が、本発明に従って使用される立体安定剤にその有利な特性を付与することに関して特に重要でない場合は、これらの部分の一方または両方(またはその一部)を、当該技術分野で既知の技術を使用して除去または変性できる。RAFT誘導ポリマーから少なくともZ-C(S)-S-部分またはその一部を除去または変性(例えば、硫黄含有基の除去)することが知られる多くの技術が存在する。例えば、RAFT誘導ポリマーとベンゾイルペルオキシドとを反応させ得る。
【0173】
立体安定剤を製造するための好適なRAFT剤としては、一般式(IA):
【0174】
【化8】

【0175】
[式中、R1およびZは既に定義されている通りである]のものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0176】
式(IA)のRAFT剤のためにR1およびZ基の両方を選択する際に、好適なR1およびZ基の組合せから得られる薬剤も好適である。
【0177】
立体安定剤を製造するための好適なRAFT剤としては、以下の一般式(XI)から(IXX):
【0178】
【化9】

【0179】
[R3は既に定義されている通りである]によって表されるものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0180】
RAFT重合を含む任意の重合技術によって立体安定剤のブロックコポリマー構造体を調製する場合は、各セグメントを適切なモノマーの重合によって順次形成できることを当業者なら理解するであろう。あるいは、予め形成されたポリマーをそれらのセグメントの一方として採用し、他方のセグメントを適切なモノマーの重合によってそれにグラフトできる。
【0181】
立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを調製するのに使用できるモノマーの必要な属性に関する上記説明に関して、概して使用できる好適なモノマーは、フリーラジカル法によって重合できるモノマーである。好適なモノマーは、また、他のモノマーと重合することが可能でなければならない。様々なモノマーの共重合性を決定づける要因は、当該技術分野において十分に述べられている。例えば、Greenlee、R.Z.、Polymer Handbook第3版、(Brandup, J.およびImmergut. E.H.編) Wiley:New York、1989、11/53頁を参照されたい。
【0182】
以上に挙げたモノマーを含む当該モノマーを、一般式(XX)を有するモノマーから選択できる。
【0183】
【化10】

【0184】
[式中、
UおよびWは、-CO2H、-CO2R1、-COR1、-CSR1、-CSOR1、-COSR1、-CONH2、-CONHR1、-CONR12、水素、ハロゲンおよび場合により置換されたC1〜C4アルキルからなる群から独立して選択され、あるいはUおよびWは、一緒になって、それ自体が場合により置換されていてよいラクトン、無水物またはイミド環を形成し、置換基は、ヒドロキシ、-CO2H、-CO2R1、-COR1、-CSR1、-CSOR1、-COSR1、-CN、-CONH2、-CONHR1、-CONR12、-OR1、-SR1、-O2CR1、-SCOR1および-OCSR1からなる群から独立して選択され;
Vは、水素、R2、-CO2H、-CO2R2、-COR2、-CSR2、-CSOR2、-COSR2、-CONH2、-CONHR2、-CONR22、-OR2、-SR2、-O2CR2、-SCOR2および-OCSR2からなる群から選択され;
R2は、場合により置換されたC1〜C18アルキル、場合により置換されたC1〜C18アルケニル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されたカルボシクリル、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアラルキル、場合により置換されたヘテロアリールアルキル、場合により置換されたアルカリール、場合により置換されたアルキルヘテロアリールおよびポリマー鎖からなる群から選択され、置換基は、それらの塩および誘導体を含めて、アルキレンオキシジル(エポキシ)、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、ホルミル、アルキルカルボニル、カルボキシ、スルホン酸、アルコキシ-もしくはアリールオキシ-カルボニル、イソシアナト、シアノ、シリル、ハロ、アミノからなる群から独立して選択される。]。好適なポリマー鎖としては、ポリアルキレンオキシド、ポリアリーレンエーテルおよびポリアルキレンエーテルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0185】
一般式(XX)のモノマーの例としては、無水マレイン酸、N-アルキルマレイミド、N-アリールマレイミド、フマル酸ジアルキルおよび環化重合性モノマー、アクリル酸およびメタクリル酸エステル、アクリル酸およびメタクリル酸、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびメタクリロニトリル、これらのモノマー、ならびにこれらのモノマーと他のモノマーとの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0186】
一般式(XX)のモノマーのさらなる例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(すべての異性体)、メタクリル酸ブチル(すべての異性体)、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリロニトリル、α-メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(すべての異性体)、アクリル酸ブチル(すべての異性体)、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(すべての異性体)、メタクリル酸ヒドロキシブチル(すべての異性体)、メタクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリエチレングリコールから選択される官能性メタクリレート、無水イタコン酸、イタコン酸、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル(すべての異性体)、アクリル酸ヒドロキシブチル(すべての異性体)、アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、アクリル酸トリエチレングリコール、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-エチロールメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-エチロールアクリルアミド、ビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノスチレン(すべての異性体)、α-メチルビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノα-メチルスチレン(すべての異性体)、p-ビニルベンゼンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、メ
タクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸トリブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピル、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、ブタジエン、エチレンおよびクロロプレンが挙げられる。このリストは網羅的でない。
【0187】
エチレン不飽和モノマーの重合によって本発明による使用のための立体安定剤を製造するときは、重合は、フリーラジカル源から開始することを必要とし得る。開始ラジカル源を、好適な化合物(ペルオキシド、ペルオキシエステルまたはアゾ化合物などの熱開始剤)の熱誘起均一開裂、モノマー(例えばスチレン)からの自然生成、酸化還元開始系、光化学開始系または電子ビーム、X線もしくはγ放射線などの高エネルギー放射などの、フリーラジカルを生成する任意の好適な方法によって提供できる。開始系は、反応条件下で、開始剤または開始ラジカルと存在する他の試薬との実質的な有害な相互作用が存在しないように選択される。
【0188】
熱開始剤は、重合の温度で適切な半減期を有するように選択される。これらの開始剤は、以下の化合物の1種または複数を含み得る。
2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シアノブタン)、ジメチル2,2'-アゾビス(イソブチレート)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-エチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2,2'-アゾビス(2,2,4-トリメチルペンタン)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロパン)、ペルオキシ酢酸t-ブチル、ペルオキシ安息香酸t-ブチル、ペルオキシネオデカン酸t-ブチル、イソ酪酸t-ブチルペルオキシ、ペルオキシピバル酸t-アミル、ペルオキシピバル酸t-ブチル、ペルオキシ二炭酸ジイソプロピル、ペルオキシ二炭酸ジシクロヘキシル、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ペルオキシ二硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、次亜硝酸ジ-t-ブチル、次亜硝酸ジクミル。このリストは網羅的でない。
【0189】
光化学開始剤系は、反応媒体への必要な溶解度を有し、重合の条件下でラジカル生成のための適切な量子収率を有するように選択される。例としては、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルホスフィン酸化物および光酸化還元系が挙げられる。
【0190】
酸化還元開始剤系は、反応媒体への必要な溶解度を有し、重合の条件下で適切なラジカル生成速度を有するように選択される。これらの開始系としては、以下の酸化剤および還元剤の組合せを挙げることができるが、それらに限定されない。
酸化剤:カリウム、ペルオキシ二硫酸塩、過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド。
還元剤:鉄(II)、チタン(III)、チオ亜硫酸カリウム、重亜硫酸カリウム。
【0191】
他の好適な開始系は、最近の文献に記載されている。例えば、Moad and Solomon、「the Chemistry of Free Radical Polymerisation」、Pergamon、London、1995、53〜95頁を参照されたい。
【0192】
水などの親水性反応媒体への相当の溶解度を有する好適な開始剤としては、4,4-アゾビス(シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-エチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物およびそれらの誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0193】
疎水性反応媒体への相当の溶解度を有する好適な開始剤は、反応媒体の極性に応じて異なり得るが、典型的には、周知の物質2,2'-アゾビスイソブチロニトリルによって例示されるアゾ化合物などの油溶性開始剤を含む。他の容易に入手可能な開始剤は、アセチルペルオキシドおよびベンゾイルなどのアシルペルオキシド、ならびにクミルペルオキシドおよびt-ブチルペルオキシドなどのアルキルペルオキシドである。t-ブチルヒドロペルオキシドおよびクミルペルオキシドなどのヒドロペルオキシドを使用することもできる。
【0194】
本明細書に記載されているように分散体を調製すると、親水性液体が水相から除去される。したがって、水および(存在すれば)任意の他の親水性溶媒または液体が水相から除去される。この方法の機能は、所定の粒子に固定された安定剤の反応性官能基を、近隣粒子に固定された安定剤の反応性官能基との反応のために近接して配置するように、水相に分散されたナノ磁性粒子を互いに近接させることである。したがって、これを達成するために十分な親水性液体を除去するだけでよい。一般に、水相を形成する親水性液体の多く、例えば、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%が除去されることになる。
【0195】
親水性液体を除去すると、水相の組成物が実質的に濃縮されることが理解されるであろう。ここで親水性液体を殆どまたは全く含んでいない濃縮「水相」は、有利には、連続有機相全体に分散した状態を維持できる。したがって、濃縮「液相」を、立体安定剤が固定されたナノ磁性粒子の凝集体を含む分散相として示すこともできる。「凝集した」形であるにも関わらず、凝集体内の各ナノ磁性粒子は、立体安定剤の少なくともポリマー鎖によって近隣粒子から分離されることが理解されるであろう。
【0196】
分散した水相の保全性が維持されるのであれば、親水性液体を除去できる手段に特別な制限はない。例えば、親水性液体を共沸蒸留によって除去できる。
【0197】
十分な親水性液体を水相から除去した後に、ビーズのポリマーマトリックスを形成するように安定剤の反応性官能基同士の反応を促進できる。反応を促進する方法は、安定剤によって提供される反応性官能基の種類に応じて異なることを当業者なら理解するであろう。例えば、官能基同士の反応を熱的に活性化させ得る。その場合、凝集ナノ磁性粒子を含む分散相に熱を伝えることによって、立体安定剤の官能基の反応を促進するように、連続有機相を加熱できる。あるいは、十分な親水性液体が除去されるのであれば、前駆体粒子をポリマーミクロゲルビーズに提供するように、例えば濾過によって分散相を連続相から分離できる。次いで、反応性官能基の反応を促進し、ポリマーミクロゲルビーズを形成するために、得られた分離前駆体粒子を、例えばオーブンに仕込むことによって加熱できる。
【0198】
親水性液体を水相からそのまま除去するだけでも反応を促進するのに十分であり得る。
【0199】
したがって、立体安定剤を実質的に共有結合させて、ビーズのポリマーマトリックスを形成し得る。
【0200】
便利には、立体安定剤の分子量を増加または減少させることによってポリマーミクロゲルビーズのポリマー含有量を変化させ得る。したがって、一定のナノ磁性粒子含有量と比較して、安定剤の分子量が増加すると、ビーズのポリマー含有量が増加するのに対して、安定剤の分子量が減少すると、ビーズのポリマー含有量が減少することになる。
【0201】
立体安定剤の官能基と反応し得る1つまたは複数の官能基を有するポリマー(以降ポリマー改質剤と称する)を水相に含めることによって、ポリマーミクロゲルビーズのポリマー含有量を変化させ得る。したがって、親水性液体を水相から除去すると、ポリマー改質剤が残留し、その官能基は、ビーズのポリマーマトリックスを立体安定剤と集合的に形成するように反応できる。
【0202】
したがって、立体安定剤を、立体安定剤以外の1つまたは複数のポリマーと共有結合させて、ビーズのポリマーマトリックスを形成できる。
【0203】
この目的に好適なポリマー改質剤は、水相に可溶であり、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリN-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドンおよびそれらのコポリマーを含むが、それらに限定されない。したがって、当該ポリマーを製造するために使用できるモノマーは、アクリルアミド、エチレンオキシド、ヒドロキシエチルアクリレート、N-イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピロリドンおよびそれらの組合せである。
【0204】
ポリマー改質剤は、当然のことながら、立体安定剤の反応性官能基と反応し得る1つまたは複数の反応性官能基をも提供する。したがって、ポリマー改質剤は、反応性官能基を提供する1つまたは複数の重合モノマーを含むことができ、または製造後にポリマー改質剤を反応性官能基で置換し得る、後者の場合、ポリマー改質剤は、当然のことながら、それを容易に置換できるように製造されることになる。
【0205】
一般には、ポリマー改質剤は、反応性官能基を提供する1つまたは複数の重合モノマー残留物を含むように製造されることになる。ポリマー改質剤は、好ましくは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの当該重合モノマー残留物を含むことになる。この点で反応性官能基を提供するために使用することができるモノマーとしては、立体安定剤のための上記のモノマーが挙げられる。
【0206】
ビーズのポリマーマトリックスの架橋密度を、立体安定剤および/または(存在すれば)ポリマー改質剤によって提供される反応性官能基の数を増加または減少させることによって変化させ得る。
【0207】
本発明によるポリマーミクロゲルビーズを様々な用途に使用できる。ビーズは、組織における温熱の誘発などの生物医学的用途での使用に特に適すると考えられる。温熱療法は、患部組織の治療として提案された。温熱療法は、癌の成長を含む疾患の治療に有効であることを示唆する証拠がある。温熱療法の治療上の利点は、2つの主たるメカニズムに媒介される。第1に、温熱療法は、温度を約41または42℃を超える温度まで上昇させて癌細胞に不可逆的な損傷をもたらすことによって、組織に対する直接的な殺腫瘍効果を有する。第2に、温熱療法は、癌細胞を放射線療法の効果および特定の化学療法薬に対して敏感にすることが知られる。
【0208】
放射線療法または化学療法と対照的に、温熱療法は、累積的な毒性効果の傾向がない。
【0209】
したがって、本発明は、また、被験体への投与に好適な組成物であって、本発明によるポリマーミクロゲルビーズおよび薬理学的に許容し得る担体を含む組成物を提供する。
【0210】
本発明による組成物は、被験体への投与に好適である。「被験体」という用語は、動物またはヒト被験体を指す。「動物」は、霊長類、(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタおよびヤギを含む)家畜動物、(イヌ、ネコ、ウサギおよびモルモットを含む)コンパニオン動物ならびに(動物園環境に広く見られる動物を含む)捕獲性野生動物を指す。ウサギ、マウス、ラット、モルモットおよびハムスターなどの実験動物も、便利な試験システムを提供することができるため考えられる。好ましくは、被験体は、ヒト被験体である。
【0211】
被験体への投与に「好適」である組成物は、被験体への組成物の投与が、アレルギー反応および疾患状態を含む許容し得ない毒性をもたらさないことを意味する。
【0212】
被験体への組成物の「投与」は、組成物を被験体に伝達することを意味する。投与方式に特別な制限はなく、意図する用途が、一般に、投与方式を左右することになる。一般に、組成物は、ポリマーミクロゲルビーズを標的部位に集中させるように投与される。例えば、組成物を、腫瘍内、腫瘍周囲または血管内、静脈内、腹腔内、皮下投与、クモ膜下腔内注射または表面散布を介して投与できる。本発明による組成物は、好ましくは、動脈または静脈血液供給を介して投与される。
【0213】
本発明による組成物は、薬理学的に許容し得る担体を含む。「薬理学的に許容し得る」とは、担体がそれ自体で被験体への投与に好適であることを意味する。換言すれば、被験体への担体の投与は、アレルギー反応および疾患状態を含む許容し得ない毒性をもたらさない。「担体」という用語は、ポリマーミクロゲルビーズを投与するための媒体を指す。
【0214】
単に手引きとして、当業者は、「薬理学的に許容し得る」を、連邦または州政府の管理機関によって承認された物質、あるいは米国薬局方、または動物、特にヒトにおける使用に対する他の広く認識された薬局方に掲載されている物質と見なし得る。
【0215】
好適な薬理学的に許容し得る担体は、Martin、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.、Easton、PA、(1990)に記載されており、水、ならびに落花生油、大豆油、鉱油およびゴマ油等の石油、動物、植物または合成起源のものを含む油などの滅菌できる液体を含むが、それらに限定されない。水または可溶性生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液は、好ましくは、特に注射可能液のための担体として採用される。
【0216】
本発明による組成物は、様々な緩衝剤内容物(例えばトリス-HCL、酢酸塩、リン酸塩)、pHおよびイオン強度の希釈剤;可溶化剤、抗酸化剤および防腐剤などの添加剤を含み得る。
【0217】
本発明による組成物は、被験体における標的部位の温熱治療の提供に使用され得る。
【0218】
本明細書に使用されているように、「被験体における標的部位」は、温熱治療が施されるべきであると考えられる被験体の領域を指すことを意図する。本発明による組成物をそれに投与することができ、標的部位を適切な磁場に曝露することができるのであれば、標的部位の箇所に関して特別な制限はない。標的部位は、一般に、癌組織などの患部組織である。
【0219】
本発明による組成物の好適な使用は、肝臓癌などの深在癌の温熱治療を提供することになる。
【0220】
被験体の組織を加熱するために使用されるときは、本発明による組成物は、好ましくは、それらが、組織を通じて静脈供給源に入ることが可能にするのでなく、それらを組織の毛管床(例えば腫瘍)に閉じこめることを可能にする粒径のポリマーミクロゲルビーズを含む。この閉じ込めを実現するために、ビーズは、好ましくは、約10ミクロンから約100ミクロンの範囲の粒径を有することになる。
【0221】
温熱治療を促進するために、標的部位は、ビーズに標的部位で熱を放射させる臨床的に許容し得る周波数および強度の磁場に曝露される。「臨床的に許容し得る周波数および強度」の磁場とは、それが磁場そのものであっても熱を放射するビーズに対するその影響であっても、治療されている被験体に許容し得ない、または望ましくない生理的応答をもたらさない磁場を指す。
【0222】
一般に、採用される磁場は、交流またはAC磁場である。
【0223】
磁場に曝露されると、標的部位におけるポリマーミクロゲルビーズは、一般には、少なくとも約1ワット/cm3、より好ましくは少なくとも約10ワット/cm3、最も好ましくは少なくとも約20ワット/cm3のVARを示す。
【0224】
一般に、標的部位におけるビーズは、周波数が約50〜300kHzの範囲であり、強度が約50〜120Oe、例えば、周波数が約100kHzであり、強度が約90OeであるAC磁場に曝露される。
【0225】
適切な磁場に対する標的部位の曝露は、当該部位におけるポリマーミクロゲルビーズに熱を放射させ、この熱は、直近的周囲部位(例えば患部組織)内に伝えられる。この熱治療方法は、一般には、選択的誘導温熱療法(STH)として知られる。
【0226】
温熱治療が効果的であるためには標的部位を十分に加熱することが必要であることが理解されるであろう。したがって、本発明による標的部位を加熱するための方法は、標的部位の温度を約41℃に上昇させる手段を提供する。患部組織の治療に関する使用では、所望の結果は、悪性細胞の生存率を低下させることである。悪性細胞の生存率の低下は、細胞死、またはイオン化放射線もしくは化学療法薬に対する細胞敏感性の増大をもたらし得る。
【0227】
本発明による標的部位の加熱方法は、少なくとも30分間にわたる標的部位における42℃の加熱を促進する。移植されたポリマーミクロゲルビーズによって誘発される加熱の程度は、ビーズのVAR、標的部位およびその付近に局在化することができる物質の量、ならびに血液灌流などのポリマービーズの環境における冷却要因を含むいくつかの要因に左右されることになる。
【0228】
ミクロゲルビーズを、適宜、治療または診断有効量で投与することができる。治療または診断有効量は、所望の投与計画に従って投与されると、治療および/または評価されている特定の状態の症候の緩和、当該状態の予防もしくはその発生の遅延、当該状態の進行の抑制もしくはその緩慢化、当該状態の診断、または当該状態の発生もしくは進行の完全な停止もしくは逆転の1つまたは複数を含む所望の治療または診断効果を達成する量を含むことを意図する。
【0229】
これを達成するための好適な投与量および投与計画は、担当医によって決定され、治療または診断されている特定の状態、状態の重度、ならびに被験体の概略の年齢、健康状態および体重に左右され得る。
【0230】
ミクロゲルビーズを含む組成物を単一投与物または一連の投与物で投与できる。
【0231】
ミクロゲルビーズを含む組成物が非経口投与に好適である場合は、それらは、一般には、組成物に意図する被験体の血液との等張性を付与する抗酸化剤、緩衝剤、殺菌剤もしくは溶質の1種または複数を含み得る水性または非水性等張性無菌注射液の形である。当該組成物を単位投与または多投与密封容器、例えばアンプルおよびバイアルにて提供し得る。
【0232】
用途によっては、ポリマーミクロゲルビーズが被験体に投与されるとそれらを画像化することが望ましい、したがって、ビーズは、造影を目的として放射性同位体を含み得る。好適な放射性同位体の例としては、99mTc、67Ga、64Cu、89Zrおよび18Fが挙げられる。ビーズを任意の好適な手段によって放射能標識できる。例えば、便利には、同位体を、本発明に従って使用されるナノ磁性粒子と組み合わせ得る。
【0233】
次に、本発明のいくつかの好適な実施形態を例示する以下の実施例を参照しながら本発明を説明する。しかし、以下の説明の詳細は、本発明の要旨の記載の一般性を超えないことが理解されるべきである。
【実施例1】
【0234】
酸化鉄ナノ粒子を含むポリ(アクリルアミド)ミクロゲルマトリックスの調製
パート(a)酸性媒体中で安定な希釈水性強磁性流体の調製
Massartの方法(Preparation of aqueous magnetic liquids in alkaline and acidic media. IEEE Transactions on Magnetics、1981. MAG-17(2):1247〜1248頁)に従って磁赤鉄鉱ナノ粒子を製造した。塩化第二鉄と塩化第一鉄の水性混合物をアンモニア溶液に添加した。得られた沈殿を遠心によって分離し、次いで硝酸鉄溶液と混合し、加熱することによって磁赤鉄鉱に酸化した。次いで、沈殿を2モルの硝酸で洗浄し、次いで最後に水で解膠させて、固形分が約5重量%の希釈水性強磁性流体を形成した。
【0235】
パート(b):2-{[ブチルスルファニル)カルボノチオイル]-スルファニル}プロパン酸を使用するポリ(アクリル酸)10-ブロック-ポリ(アクリルアミド)35-N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド)3マクロRAFT剤の調製
ジオキサン(15g)および水(7.6g)中2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]-スルファニル}プロパン酸(0.46g、1.9mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.03g、0.12mmol)、アクリルアミド(4.79g、67.4mmol)、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド(0.91g、5.8mM)の溶液を100mLの丸底フラスコ中で調製した。これを磁気撹拌し、15分間にわたって窒素を散布した。次いで、フラスコを70℃で2時間加熱した。この時間の終了時に、アクリル酸(1.39g、19.4mmol)および4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.03g、0.12mmol)をフラスコに添加した。混合物を脱酸素化し、70℃でさらに3時間加熱を継続した。コポリマー溶液は、32.8%の固形分を有していた。次いで、それをMQ水で0.6重量%まで希釈した。0.1MのNaOHを用いて希釈コポリマー溶液のpHを5に調整した。
【0236】
パート(c):パート(a)の水性強磁性流体およびパート(b)のマクロRAFT剤からの立体安定化酸化鉄ナノ粒子の調製
パート(a)で調製された40gのナノ粒子分散体(5重量%)をMQ水で200gまで希釈して1重量%のナノ粒子分散体を得た。次いで、調製したこのナノ粒子分散体のpHを5に上昇させた。次いで、パート(b)のやはりpH5のコポリマーのマクロRAFTの100gの0.6重量%溶液を同じpHに維持された酸化鉄の1重量%分散体に添加した。混合物を室温で2時間激しく撹拌した。このpHにおいて、コポリマーは部分的に中和されているが、ナノ粒子は、それらのゼロ電荷の点を十分に上回っていても安定する。コポリマーのアクリル酸ブロックからのカルボン酸イオンを粒子表面に化学的に吸着させて、水中ナノ粒子の安定した立体安定化分散体を得た。次いで、分散体を透析して、塩、残留溶媒、望ましくない低分子量反応副産物および未結合ポリマーを除去した。透析された分散体を、高エネルギー音波プローブを使用して30%の振幅で10分間にわたって音波処理した。精製および音波処理されたナノ粒子分散体を蒸留して、水性強磁性流体分散体における固体含有量を約55重量%まで増加させた。得られた水性強磁性流体は、60%の硝酸アンモニウム溶液中で安定していた。
【0237】
パート(d):パート(c)の水性強磁性流体からのポリ(アクリルアミド)マトリックス封入Fe2O3の調製
パート(c)で調製された1gの水性強磁性流体を10mlのシンチレーションバイアルに採取した。油溶性界面活性剤の100gの2重量%溶液、すなわちトルエン中PIBSADEAを100mlのビーカーにて個別に調製した。次いで、この界面活性剤溶液の2gを、強磁性流体を含むシンチレーションバイアルに添加した。シンチレーションバイアル内の混合物を約1分間にわたって渦流ミキサーで乳化した。次いで、エマルジョンを250mlの丸底フラスコ中の界面活性剤溶液に添加した。丸底フラスコにおける溶液を機械的に撹拌した。次いで、フラスコをトルエンの還流温度(110℃)まで徐々に加熱した。エマルジョン液滴からの水がトルエンとともに共沸物の形で脱落して、連続的な相で乾燥微小球体を残した。微小球体を重力下で沈殿させながらトルエンを混合物からデカントした。次いで、微小球体をアセトンで2回洗浄して残留トルエンおよびPIBSADEA界面活性剤を除去した。このステップの最後の微小球体は、乾燥粉末の形である。次いで、乾燥微小球体を加熱炉にて180℃で約2時間硬化させた。これによって、微小球体内の酸化鉄ナノ粒子を安定させるポリマー分子の架橋が生じた。ビーズは、光学顕微鏡法によって測定した平均粒径が35ミクロンであった。得られたミクロゲルビーズを100kHzおよび90Oeの振動磁場に配置すると、それらは2.9W/gの速度で熱を生成した。
【実施例2】
【0238】
酸化鉄ナノ粒子を含むポリ(アクリルアミド)ミクロゲルマトリックスの調製
パート(a):酸性媒体中で安定した希釈水性強磁性流体の調製
Massartの方法(Preparation of aqueous magnetic liquids in alkaline and acidic media. IEEE Transactions on Magnetics、1981. MAG-17(2):1247〜1248頁)に従って磁赤鉄鉱ナノ粒子を製造した。塩化第二鉄と塩化第一鉄の水性混合物をアンモニア溶液と混合した。得られた沈殿を磁気沈降法によって分離し、次いで硝酸鉄溶液と混合し、加熱することによって磁赤鉄鉱に酸化した。次いで、沈殿を2モルの硝酸およびアセトンで洗浄した。沈殿を水によって解膠させて、固形分が約13重量%の希釈水性強磁性流体を形成し、約3〜20nmの粒径を透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定した。
【0239】
パート(b):2-{[ドデシルスルファニル)カルボノチオイル]-スルファニル}プロパン酸を使用するポリ(アクリル酸)10-ブロック-ポリ(アクリルアミド)20-N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド)3マクロRAFT剤の調製
ジオキサン(30g)および水(15g)中2-{[(ドデシルスルファニル)カルボノチオイル]-スルファニル}プロパン酸(2.11g、6.0mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.09g、0.31mmol)、アクリルアミド(8.55g、120.3mmol)、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド(2.75g、17.5mM)の溶液を250mLの丸底フラスコ中で調製した。これを磁気撹拌し、15分間にわたって窒素を散布した。次いで、フラスコを70℃で3時間加熱した。この時間の終了時に、アクリル酸(4.58g、63.5mmol)および4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.09g、0.31mmol)をフラスコに添加した。混合物を脱酸素化し、70℃でさらに3時間加熱を継続した。コポリマー溶液は、31.6%の固形分を有していた。次いで、それをMQ水で0.6重量%まで希釈した。0.1MのNaOHを用いて希釈コポリマー溶液のpHを5に調整した。
【0240】
パート(c):パート(a)の水性強磁性流体およびパート(b)のマクロRAFT剤からの立体安定化酸化鉄ナノ粒子の調製
パート(a)で調製された42gのナノ粒子分散体(13重量%)をMQ水で550gまで希釈して1重量%のナノ粒子分散体を得た。次いで、調製したこのナノ粒子分散体のpHを5に上昇させた。次いで、実施例2パート(b)のやはりpH5のマクロRAFTの500gの0.6重量%溶液を同じpHに維持された酸化鉄の1重量%分散体と混合した。混合物を室温で2時間激しく撹拌した。このpHにおいて、コポリマーは部分的に中和されているが、ナノ粒子は、それらのゼロ電荷の点を十分に上回っていても安定する。コポリマーのアクリル酸ブロックからのカルボン酸イオンを粒子表面に化学的に吸着させて、水中ナノ粒子の安定した立体安定化分散体を得た。次いで、分散体を透析して、塩、残留溶媒、望ましくない低分子量反応副産物および未結合ポリマーを除去した。透析された分散体を、高エネルギー音波プローブを使用して50%の振幅で30分間にわたって音波処理した。精製および音波処理されたナノ粒子分散体を蒸留して、水性強磁性流体分散体における固体含有量を約40重量%まで増加させた。得られた水性強磁性流体は、濃塩化ナトリウム溶液および標準リン酸緩衝食塩水中で安定していた。
【0241】
パート(d):パート(c)の水性強磁性流体からのポリ(アクリルアミド)マトリックス封入Fe2O3の調製
パート(c)で調製された14gの水性強磁性流体を500mlのガラス瓶に採取した。油溶性界面活性剤の710gの4.8重量%溶液、すなわちトルエン中PIBSADEAを1lの丸底フラスコにて個別に調製した。次いで、この界面活性剤溶液の160gを、強磁性流体を含む瓶に添加した。ガラス瓶内の混合物を音波浴にて10分間にわたって乳化させ、ほぼ半透明になるまで30%の振幅で5分間音波処理した。次いで、エマルジョンを2lの丸底フラスコ中の界面活性剤溶液に添加した。丸底フラスコ中の溶液を機械的に撹拌した。次いで、フラスコをトルエンの還流温度(110℃)まで徐々に加熱した。エマルジョン液滴からの水がトルエンとともに共沸物の形で脱落して、連続的な相で乾燥微小球体を残した。微小球体を磁石の上に沈殿させながらトルエンを混合物からデカントした。次いで、微小球体をトルエンで2回洗浄してPIBSADEA界面活性剤を除去した。微小球体を60℃で約2時間乾燥させ、このステップの最後に乾燥粉末の形になる。次いで、乾燥微小球体を加熱炉にて180℃で約5時間硬化させた。これによって、微小球体内の酸化鉄ナノ粒子を安定させるポリマー分子の架橋が生じた。ビーズの粒径をTEMによって測定したところ、直径が400〜700nmの範囲であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体に実質的に均一に分散されたナノ磁性粒子を含むポリマーマトリックスを有するポリマーミクロゲルビーズであって、立体安定剤が粒子と結合し、立体安定剤は、(i)ビーズのポリマーマトリックスの少なくとも一部を形成し、(ii)立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを含むポリマー材料であり、立体安定化ポリマーセグメントは固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントは、ナノ磁性粒子の表面に対して親和性を有し、安定剤を粒子に固定するポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項2】
前記ビーズが、約10ミクロンから約50ミクロンの範囲の粒径を有する、請求項1に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項3】
ナノ磁性粒子が、50nm未満の粒径を有する、請求項1または2に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項4】
ナノ磁性粒子が、少なくとも30重量%の量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項5】
ナノ磁性粒子が、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、それらの酸化物およびそれらの組合せから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項6】
ナノ磁性粒子が、磁鉄鉱(Fe3O4)、磁赤鉄鉱(γ-Fe2O3)およびそれらの組合せから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項7】
前記立体安定剤が、共有結合し、前記ビーズのポリマーマトリックスを形成する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項8】
前記立体安定剤が、前記立体安定剤以外の1つまたは複数のポリマーと共有結合し、前記ビーズのポリマーマトリックスを形成する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項9】
前記立体安定剤が、メタクリル酸アセトアセトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、N-メチロールアクリルアミド、(イソブトキシメチル)アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸t-ブチルカルボジイミドエチル、アクリル酸、γ-メタクリルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、メタクリル酸2-イソシアノエチルおよびジアセトンアクリルアミドから選択される1つまたは複数の官能基の反応残留物と共有結合する、請求項7または8に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項10】
前記立体安定剤が、約1000から約3000の範囲の数平均分子量を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項11】
立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントの少なくとも一方が、リビング重合によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項12】
前記立体安定化ポリマーセグメントが、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリN-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドンまたはそれらのコポリマーを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項13】
前記固定ポリマーセグメントが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリイタコン酸、ポリ-p-スチレンカルボン酸、ポリ-p-スチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリモノアクリルオキシエチルホスフェート、ポリ-2-(メチルアクリロイルオキシ)エチルホスフェート、ポリエタクリル酸、ポリ-α-クロロアクリル酸、ポリクロトン酸、ポリフマル酸、ポリシトラコン酸、ポリメサコン酸、ポリマレイン酸、ポリ-2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリレートおよびメタクリレート、ポリ-3-(ジエチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリレートおよびメタクリレート、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートまたはそれらのコポリマーを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項14】
前記固定ポリマーセグメントが、前記安定剤を前記粒子に固定するように機能する部位をそれぞれ提供する少なくとも5つの重合モノマー残留物を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項15】
1つまたは複数の放射性同位体をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズ。
【請求項16】
ナノ磁性粒子を含むポリマーミクロゲルビーズを製造する方法であって、
(i)連続有機相および分散水相を含む分散体を調製するステップであって、分散水相は、親水性液、および水相全体に分散されたナノ磁性粒子を含み、ナノ磁性粒子は、立体安定剤によって分散状態に維持されており、立体安定剤は、
(a)固定ポリマーセグメントと異なる立体安定化ポリマーセグメント、およびナノ磁性粒子に対して親和性を有し、立体安定剤を前記粒子に固定する固定ポリマーセグメントと、
(b)1つまたは複数の反応性官能基と
を含むポリマー材料であり、
(ii)親水性液を水相から除去するステップと、
(iii)立体安定剤の反応性官能基の間の反応を促進することによって、ナノ磁性粒子を含むポリマーミクロゲルを形成するステップと
を含む方法。
【請求項17】
被験体への投与に好適な組成物であって、薬理学的に許容し得る担体および請求項1から15のいずれか一項に記載のポリマーミクロゲルビーズを含む組成物。
【請求項18】
意図する被験体の血液との等張性を前記組成物に付与する抗酸化剤、緩衝剤、殺菌剤または溶質の1種または複数を場合により含む水性または非水性無菌注射可能液の形である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
被験体における対象の標的部位を加熱するための方法であって、
(i)請求項17または18に記載の組成物を被験体に投与するステップと、
(ii)前記組成物からの前記ミクロゲルビーズが前記標的部位で熱を放射するように、臨床的に許容し得る周波数および強度の磁場に少なくとも前記対象の標的部位を曝露するステップと
を含む方法。
【請求項20】
被験体における対象の標的部位に対する温熱療法を実施する方法であって、請求項17または18に記載の組成物を該被験体に投与するステップと、少なくとも該対象部位を臨床的に許容し得る周波数および強度の磁場に曝露して、温熱療法を促進するステップとを含む方法。
【請求項21】
対象の前記標的部位が癌組織である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物を前記被験体に投与し、少なくとも前記標的部位を前記磁場に曝露した後に、前記対象部位における前記ポリマーミクロゲルビーズが、少なくとも1ワット/cm3の容量吸収率(VAR)を示す、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
温熱療法を実施する方法における、請求項18または19に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−523961(P2011−523961A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508771(P2011−508771)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000618
【国際公開番号】WO2009/137888
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(501305257)ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー (6)
【Fターム(参考)】