ポリマー不織布の改質方法、及び改質ポリマー不織布
【課題】 不織布基材上でのポリマー繊維の共形コーティングのためのポリマー不織布の改質方法を提供する。
【解決手段】 ポリマー不織布の改質方法は、エッチングおよび酸化の程度を制御することによるポリマー繊維表面の改質に基づく。この改質方法によると、不織布表面への開始剤の接着性を向上させ、かつその後の共形ポリマーグラフティングを促進する。改質された繊維表面は、親水性の増加、配位子の結合、または表面エネルギーの変化等の新たな機能性を表面に提供する。
【解決手段】 ポリマー不織布の改質方法は、エッチングおよび酸化の程度を制御することによるポリマー繊維表面の改質に基づく。この改質方法によると、不織布表面への開始剤の接着性を向上させ、かつその後の共形ポリマーグラフティングを促進する。改質された繊維表面は、親水性の増加、配位子の結合、または表面エネルギーの変化等の新たな機能性を表面に提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織基材上のポリマー繊維の共形コーティングのためのポリマー不織布の改質方法、及び、その方法によって産生される改質ポリマー不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,871,823号[Andres,Hoecker,Klee,and Lorenz][特許文献1]は、2×10-5〜2×10-2バールの分圧で、酸素の存在下で、ポリマー表面を活性化するために、125〜310nmの波長範囲の紫外線(以下、「UV」という。)を使用することを報告する。活性化された表面は、その後グラフティングされる。しかしながら、この特許は、グラフティングを開始するための、UV活性化から得られる表面のヒドロペルオキシドの使用の場合に制限される。
【0003】
米国特許第5,629,084号[Moya,Wilson][特許文献2]は、多孔質ポリマー基材、ならびに熱およびUVによって架橋されている第2のポリマーから形成される、複合多孔質膜を開示する。第2のポリマーの改質は、全表面に及び、これは、第2のポリマーを基材表面上で架橋するために、膜を、第2のポリマー溶液および開始剤と接触させて定置し、かつ全てをUVまたは中熱に曝露することによって達成される。このスキームは、繊維表面への第2のポリマーの吸着が重要なステップである、「〜へのグラフティング」技術として分類することができる。
【0004】
UVによって開始されるグラフティングは、一般的に、基材をモノマー溶液中でUV光に曝露することによって実施される。これは、さまざまな分子に対して、100〜450nmの範囲で行うことができる。米国特許第5,871,823号[Andres,Hoecker,Klee,and Lorenz][特許文献1]は、290〜320nmの範囲の、好ましいUV波長の使用を報告した。PCT/WO/02/28947 A1号[Belfort,Crivello and Pieracci][特許文献3]は、280〜300nmの範囲のUV波長の使用を報告した。これらの発明は、グラフティングプロセスにおける光増感剤の使用に言及しない。
【0005】
また、米国特許第5,468,390号[Crivello,Belfort,Yamagishi][特許文献4]は、光増感剤を用いずに、ポリスルホン多孔質膜を改質するためのプロセスを開示する。その結果、本参考文献に説明する膜の外表面のみが、処理を介して改質された。ポリスルホン膜は、乾燥後に、再湿潤することはできない。
【0006】
米国特許第5,883,150号[Charkaudian][特許文献5]は、光増感剤をポリスルホン膜の骨格内に埋め込むことが、より優れた湿潤特性をもたらすことを報告する。それにもかかわらず、これらの埋め込まれた光増感剤の大半が、ポリマープロセスのために一般的に使用される高温条件を満足することは困難である。例えば、メルトブローイングプロセスを使用する繊維または不織布の産生には、120℃以上の温度が必要である。
なお、下記の非特許文献は、以降の説明の中で引用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,871,823号明細書
【特許文献2】米国特許第5,629,084号明細書
【特許文献3】PCT国際公開WO2002/28947A1号
【特許文献4】米国特許第5,468,390号明細書
【特許文献5】米国特許第5,883,150号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D.J.Carlsson,D.M.Wiles,“The photo−oxidative degradation of polypropylene,part−I photo−oxidation and photo−initialization processes,”Polymer Reviews,14,(1976),65.
【非特許文献2】J.H.Adams,“Analysis of nonvolatile oxidation products of polypropylene. III. Photodegradation,”Journal of polymer Science PartA−1,8,(1970),1279.
【非特許文献3】Zhang LL,Li HJ,Li KZ,Li XT,Zhai YQ,Mang YL,“Effect of surface roughness of Carbon/Carbon composites on osteoblasts growth behaviour,”,Journal of Inorganic Materials,23,(2008),341.
【非特許文献4】Porwal,PK,Hui,CY,“Strength statistics of adhesive contact between a fibrillar structure and a rough substrate,”Journal of the Royal Society Interface,5,(2008),441.
【非特許文献5】Fuller KNG,Tabor D,“Effect of surface−roughness on adhesion of elastic solids”,Proceedings of the Royal Society of London Series A− Mathematical Physical and Engineering Sciences,345,(1975),327.
【非特許文献6】LF.Vieira Ferreira,J.C.Netto−Ferreira,I.V.Khmelinskii,A.R.Garcia,S.M.B.Costa,“Photochemistry on surfaces:matrix isolation mechanisms study of interactions of benzophenone adsorbed on microcrystalline cellulose investigated by diffusion reflectance and luminescence techniques,”Langmuir,11,(1995),231.
【非特許文献7】K.Matyjaszewski,P.J.Miller,N.Shukla,B.Immarapom,A.Gelman,B.B.Luokala,T.M.Siclovan,G.Kickelbick,T.Valiant,H.Hoffmann,T.Pakula,“Polymers at interfaces: using atom transfer radical polymerization in the controlled growth of homopolymers and block copolymers from silicon surfaces in the absence of untethered sacrificial initiator,”Macromolecules,32,(1999),8716.
【非特許文献8】Polymer Handbook Fourth Edition(J.Brandrup,E.H.Immergut.E.A.Grulke),John Wiley & Sons 1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
要約すると、上述の方法等の表面改質方法は、繊維不織ウェブまたはマットの繊維表面上に何らかのコーティングを生成し得る。しかし、上述の方法は、基材と第2のポリマーの表面エネルギー間の考えられる差異を克服するか、または高密度の開始剤で表面を生成するために必要な手段を提供しない。そのため、上述の方法によって共形コーティングを保証することはできない。
【0010】
したがって、多様なポリマー繊維に共形コーティングを保証することができる表面改質方法を提供することが望まれる。また、その方法は、外乱の影響を受けにくく、かつスケールアップが容易であることも望ましい。本発明は、これらの必要性および関連した必要性を満たすことを目指す。
【0011】
本発明は、グラフティングによる繊維表面上の異なる第2のポリマーの共形コーティングを達成するために、ポリマー繊維、または繊維不織ウェブもしくはマットを改質する方法を提供する。共形コーティングは、繊維の円筒または不規則な形状の湾曲に適合し、したがって、グラフトされたポリマーの均一な厚さによって、繊維の完全な被覆を達成するコーティングを指す。共形コーティングは、診断、分離、およびマットが複合混合物に曝露される他の用途等の、表面特性の完全な制御を必要とする不織布システム用途に必要とされる。
【0012】
本発明の目的は、エッチングおよび酸化の程度を制御することによって、ポリマー繊維表面を改質することである。これは、表面への開始剤の接着性を有意に向上させ、したがって、その後の共形ポリマーグラフティングを促進する。改質された繊維表面は、親水性の増加、配位子の結合、および表面エネルギーの変化等の新たな機能性を表面に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のポリマー不織布の改質方法は、ポリマー不織布基材の繊維表面を改質して高密度の共形コーティングを得るための方法であって、下記のステップを含む。
1)ポリマー表面の粗度を増加させることができる紫外線オゾンもしくはプラズマへの曝露、またはエッチング技術によって繊維表面の粗度を増加させる第1ステップ、
2)酸化処理または酸化剤を用いてヒドロキシル、カルボニル、または他の酸素含有化合物を増加させる第2ステップ、
3)基材をモノマーもしくは開始溶液、または、モノマーおよび開始剤の両方を含有する溶液に浸漬する第3ステップ、
4)基材を2つのガラスの間に挟み込み、または基材を制限された形状内に挿入する第4ステップ、
5)基材を紫外線または熱に曝露させてグラフティングする第5ステップ、
6)基材を洗浄し、乾燥させる第6ステップ、
【0014】
第3ステップにおいて、モノマーは、ラジカル重合によって重合し、かつヒドロキシル、アミン、カルボン酸、アルデヒド、ホルムアミド、ピリジン、ピロリドン、エポキシ等から選択される官能基を有する二官能性分子でありうる。
例は、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルメチルエーテル、ビニルホルムアミド、ポリビニルアミン、ビニルホスホン酸、ビニルアルコール−コ−ビニルアミン、ビニルピリジン、酸化プロピレン、酸化エチレン、およびこれらの組み合わせである。
【0015】
粗度を増加させる第1ステップ、ならびにヒドロキシル、カルボニル、および他の酸素含有化合物を増加させる第2ステップは、単一のステップまたは2つの個別のステップを含んでもよい。
【0016】
第3ステップにおける溶液の溶媒は、少なくとも0.5%のモノマーを溶解することができるアルコールおよび炭化水素でありうる。
第3ステップにおける開始剤は、光増感剤、アゾ化合物、過硫酸、または過酸化化合物でありうる。
さらに、開始剤は、ベンゾフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、または過酸化ベンゾイルでありうる。
【0017】
第1ステップおよび第2ステップは、繊維表面が既に高濃度の極性基を有することによって代替することができる。
【0018】
第1ステップにおける紫外線は、エッチングのためのオゾンを生成するのに好適な波長の紫外線でありうる。第5ステップにおける紫外線は、光増感剤を活性化するための波長の紫外線でありうる。
【0019】
第1ステップにおけるプラズマは、ポリマー表面をエッチングするのに十分でありうる。第5ステップにおける熱は、アゾまたは過酸化化合物を活性化するのに十分でありうる。
【0020】
第2ステップにおける酸化剤は、ヒドロペルオキシド、過硫酸カリウム、または過塩素酸カリウムでありうる。
第3ステップにおける溶液は、0.5〜20重量%のモノマーを含有しうる。
第3ステップにおける開始剤およびモノマーは、0〜1:4の比率を有しうる。
【0021】
未反応モノマーまたは未結合ホモポリマーは、水、アルコール、または炭化水素によって除去されうる。
【0022】
第3ステップは、a)不織布を光増感剤溶液で浸漬するステップと、b)不織布をモノマー溶液で浸漬するステップと、を順不同に、かつ、さらに分割可能に含んでもよい。
【0023】
本発明はまた、上述のポリマー不織布の改質方法によって産生される改質ポリマー不織布を提供する。
ポリマー不織布は、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリウレタン繊維、液晶コポリエステル繊維、剛体棒繊維、またはこれらの組み合わせでありうる。
【0024】
改質ポリマー不織布は、平坦シート、ロール、または積層体でありうる。
改質ポリマー不織布は、ステープルまたは連続繊維でありうる。
改質ポリマー不織布は、円形、三角形、四角形、または不規則な形状の断面を有する形状でありうる。
【0025】
改質ポリマー不織布は、不織布の内部に第2のポリマーの一様分布または勾配分布を有しうる。
改質ポリマー不織布は、適合性を損なわずに他の分子と反応する能力を有しうる。
【0026】
本発明は、先行技術において開示された方法に対し、UV活性化を使用して、グラフティングを開始するための代替的方法を提供する。本発明は、ポリマー基材を事前処理するための方法として、UVの使用に依存するが、それは、UV放射の異なる効果に拠る。オゾンと組み合わせる特定の波長でのUVは、ポリマー表面をエッチングし、酸化することができ、より高い表面の粗度およびヒドロキシルおよびカルボニル基の濃度をもたらすことが公知である[非特許文献1、2]。
本発明は、開始剤の増強された吸着、および、ポリマー繊維表面と溶液からのモノマーとのより優れた接触を得て共形コーティングを達成するために、この効果を利用する。さらに、本発明は、その後のグラフティングでは、ヒドロペルオキシドに依存しない。エッチングに使用される同一の範囲の波長で、UVによって空気中にオゾンを生成することができるため、オゾンの外部供給は不必要である。
【0027】
本発明は、当該技術分野において既知の「〜へのグラフティング」方法を使用するものではなく、むしろ、ポリマーグラフトが、モノマーおよび開始剤溶液中の基材表面から成長する「〜からのグラフティング」方法である。実施例が示すとおり、適切な事前処理を行わずに、ポリオレフィンのポリマー繊維等の特定の種類のポリマー繊維上で共形グラフティングを得ることは不可能である。これは、基材ポリマーと第2のポリマーの間の表面エネルギーの不整合によるものである。
【0028】
先行技術によって教示されるものとは対照的に、本発明では、非光活性のポリマー不織布に焦点を置くため、ポリオレフィン繊維上の高密度共形被覆を達成するためには、光増感剤または熱的に分解可能な開始剤の存在が不可欠であることが分かっている。さらに、事前処理ステップから生成された過酸化化合物およびラジカルは、共形コーティングを達成するには、遥かに十分ではないことが認められている。したがって、この目的を達成するためには、光増感剤およびモノマーの組み合わせが必要である。しかしながら、先行技術とは対照的に、光増感剤は、分解するのを防止するため、室温で、モノマー溶媒内にのみ適用される。
【0029】
本発明の他の目的、利点、および特性は、図面を参照して実施形態の説明を一読することによって明らかになるであろう。なお、実施形態は、一実施例として説明されるものであり、これに制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】グラフティング前後のポリプロピレン(PP)不織繊維の画像:A)本来のPP不織繊維、B)本来の単一PP不織繊維の表面、C)洗浄前のグラフトされたPP不織布、D)洗浄前のグラフトされた単一PP不織繊維の表面、E)洗浄後のグラフトされた不織布、およびF)洗浄後のグラフトされた単一PP不織繊維の表面。
【図2】グラフティング前後のPP不織繊維の断面画像:A)本来のPP不織繊維、B)本来の単一PP不織繊維の断面、C)グラフトされたPP不織繊維、およびD)グラフトされた単一PP不織繊維の断面。
【図3】本来のPP、UVによって事前処理されたPP、純メタクリル酸ポリグリシジル(PGMA)およびPGMAグラフトされたPPのFTIRスペクトル。
【図4】I:M=1:5でグラフトされたPP不織布の画像:A)グラフトされたPP不織繊維、B)グラフトされた単一PP不織繊維の表面、C)PP不織繊維の断面、およびD)グラフトされた単一PP不織繊維の断面。
【図5】0〜30分のUV/O処理後のPGMAでグラフトされたPP繊維のSEM画像:A)ゼロ(0)分、B)5分、C)15分、およびD)30分。
【図6】0分、15分、および30分の事前処理、並びに同一の30分のグラフティング後のPGMAでグラフトされたPP不織繊維ウェブのSEM画像:A)ゼロ(0)分、B)15分、C)30分。
【図7】異なる浸漬時間で測定された、UV事前処理時間と相対的ベンゾフェノン(BP)吸着値との相関を示すグラフ。
【図8】A)異なる事前処理時間の試料における、グラフティング時間とグラフティング効率との相関を示すグラフ、およびB)異なるグラフティング時間での相対的ベンゾフェノン(BP)吸着値とグラフティング効率との相関を示すグラフ。
【図9】モノマーおよび開始剤濃度(I:M)とグラフティング効率との相関を示すグラフ。
【図10】グラフティング前後のポリアミド不織繊維の画像:A)単一の本来のポリアミド不織繊維、B)本来のポリアミド不織繊維の表面、C)単一のグラフトされたポリアミド不織繊維、およびD)グラフトされたポリアミド不織繊維の表面。
【図11】事前処理の有無でのPBT不織ウェブ上のグラフティングの画像:A)本来のPBT不織布、B)事前処理を受けグラフトされたPBT不織布、C)事前処理を受けていないグラフトPBT不織布。
【図12】BP中への基材の浸漬と、UV/Oを用いる事前処理のグラフティング効果の差異を示す画像:A)BPでの浸漬、およびB)UVオゾンによる事前処理。
【図13】乾燥したPP不織布積層体およびモノマー溶液で浸漬されたPP不織布積層体を通過するUV光の透過率を示すグラフ。
【図14】異なる孔径のPP不織布を通過するUV光の透過率を示すグラフ。
【図15】事前処理条件による不織布内部の位置(深度)に対するグラフティング効率の変化を示すグラフ。
【図16】グラフティング条件による不織布内部の位置(深度)に対するグラフティング効率の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、グラフティングによる繊維表面上で異なる第2のポリマーの共形コーティングを達成するために、ポリオレフィン(ポリプロピレン)繊維、もしくはこれらの不織ウェブまたはマットを改質するポリマー不織布の改質方法に関する。
該改質方法は、制限しないが、とりわけ、セルロース(綿)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(フェノールホルムアルデヒド)(PF)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ塩化ビニル(PVC)、芳香族ポリアミド(Twaron(商品名)、Kevlar(登録商標)およびNomex(登録商標))、ポリアクリロニトリル(PAN)、およびポリウレタン(PU)等の他のポリマー繊維にも適用することができる。
該改質方法は、繊維基材上の第2のポリマーの高密度表面グラフティング重合に依拠する。繊維表面上の第2のポリマーの共形コーティングは、繊維表面上のグラフトの被覆が高く、グラフトと基材の間に形成された化学結合が巨大なエネルギーバリアを作成して、コーティング分離が発生するのを防止するため、常に、この方法で保証することができる。
【0032】
該改質方法は、繊維またはそれらの不織ウェブを、空気中の150〜300nmの範囲のUV放射に曝露するステップで開始する。曝露中、オゾンは、UV光へのO2の曝露の結果として同時に生成される。本発明におけるUV放射とオゾン処理の使用に隠された目的とは、繊維表面上にラジカルまたは過酸化物を生成しないことである。その代わりに、表面をエッチングして、その粗度を増加させ、かつヒドロキシルおよび他の酸素含有化合物の濃度を同時に増加させることが目標である[非特許文献1、2]。複合効果は、その後のグラフティングステップにおいて、開始剤の吸着を有意に増加させる(実施例5を参照)。
【0033】
ポリマー繊維は、ポリマーが融解するか、または溶液が非常に高速で細いノズルを通過するように、繊維製品状態の結果である平滑または施釉された表面を有し得る。施釉された表面は、他の分子が表面に結合するのを防止する。一方、粗表面は、表面への開始剤等の他の分子の吸着を増加することができる[非特許文献3〜5]。
開始剤は、穏和な条件下でフリーラジカルを産生し、かつラジカル重合反応を開始することができる分子である。ヒドロキシルおよび他の酸素含有化合物等の極性基と開始剤との相互作用は、吸着を安定化させる機能をさらに果たすことができる[非特許文献6]。
UV放射とオゾンは、表面の粗度を増加させるために、繊維表面の非常に薄い層のみをエッチングし、かつヒドロキシルおよびカルボニル基を同時に生成する上で非常に効果的である。プラズマ処理、過酸化物酸化、塩基および酸、または表面の粗度を増加し、酸化することができる任意の方法等の他の取り組みも、本目的に使用することができる。
【0034】
いくつかのポリマーは、アミン、カルボニル、およびヒドロキシル等の極性基を既に含有するモノマーから作製される。開始剤は、共形コーティングが、事前処理さえも行わずに得ることができる程度まで、これらの表面に吸着され得る。しかしながら、炭化水素のみを含有するポリマー、例えば、ポリオレフィンでは、事前処理は、共形コーティングにおいて不可欠である。
【0035】
事前処理後、機能性モノマーは、フリーラジカル重合によって、表面にグラフトすることができる。本改質方法は、UVによって開始されるラジカル重合または熱によって開始されるラジカル重合を使用することができる。光増感剤および熱的に分解可能な開始剤は、それぞれのプロセスにおいて使用されるべきである。光増感剤には、ベンゾフェノン(以下、適宜「BP」という。)、アントラキノン、ナフトキノン、または開始時に水素引き抜き反応を伴う任意の化合物が挙げられる。熱的に分解可能な開始剤としては、アゾ化合物または過酸化化合物が挙げられる。モノマー濃度は、1〜20%の範囲である。開始剤濃度は、0.5〜7%の範囲である。アルコールおよび炭化水素は、溶媒として使用することができる。グラフティングは、約1〜120分間、実施される。
【0036】
期待される機能性に応じて、さまざまなアクリレートモノマー、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、および同様のアクリレート誘導体をグラフティングに選択することができる。さらに、ラジカル重合によって重合することができる任意のポリマーをグラフティングに使用することができる。
【0037】
波長300〜450nmの連続UV放射は、UVによって開始されるグラフティングに必要である。事前処理され、モノマーの溶液および光増感剤で事前浸漬された基材は、2つの薄いガラスプレート(または、制限された形状)の間に挿入され、既定時間の間、UVに曝露される。基材の表面付近に飽和気相を形成する、制限された形状は、溶媒の高速損失を防止する利点を有する。また、制限された形状は、グラフティング溶液を最小限に抑え、脱ガスおよび不活性ガスの保護の欠如を可能にする。使用前、ガラスプレートは、離型剤、例えば、Frekote(登録商標)で事前処理し得る。
【0038】
グラフティングは、室温または昇温で実施することができるが、モノマー溶液の沸点を遥かに下回る温度である。溶媒があまりにも早く蒸発するときは、冷却が必要である。
【0039】
昇温は、開始剤が効率的に分解することができる熱によって開始されるグラフティングに必要である。また、同一の制限された形状も使用することができる。
【0040】
グラフティング後、基材を適切な溶媒で洗浄して、未反応モノマーおよび未結合ホモポリマーを抽出する。水は、水可溶性であるモノマーおよびホモポリマーにとって最良の溶媒である。ないしは、アルコール、炭化水素、または任意の他の好適な溶媒によって抽出することができる。
【実施例1】
【0041】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン(PP)不織布の試料を、150〜300nm(UV/O)および50mw/cm2の強度のUV放射に、15分間、曝露した。次いで、基材を、ブタノール溶液中の20%のメタクリル酸グリシジルおよびベンゾフェノン(開始剤:モノマーまたはI:M=1:25)で浸漬した。基材を、Frekote(登録商標)でコーティングされた2つのガラススライドの間に挟み込み、次いで、300〜450nmおよび5mw/cm2の強度のUVに、15分間、グラフティングのために曝露した。次いで、グラフトされた不織基材をTHFおよびメタノール中で超音波処理によって洗浄して、未反応および未結合化合物を除去した。
【0042】
図1A)およびB)は、本来のPP不織ウェブおよび繊維を示す。本来のPP繊維の表面は、メルトブローンプロセスの結果として、亀裂で覆われている。図1C)およびD)は、グラフティング後であるが、洗浄前の不織ウェブおよび繊維を示す。非常に平滑なコーティングは、繊維上に形成される。しかしながら、これらのコーティングは、永久的ではない。図1E)およびF)は、洗浄後の不織ウェブおよび繊維を示す。高密度の粗メタクリル酸ポリグリシジル(PGMA)コーティングは、繊維表面に共有結合される。ウェブの多孔質構造は変化していない。
【0043】
図2A)およびB)は、PP不織ウェブおよび繊維の断面を示す。図2C)およびD)は、グラフティング後の断面を示す。見て分かるように、グラフティングは、円筒および不規則形状の繊維にさえ、非常に共形的である。厚さは、コーティングと繊維との間の低コントラストのため、測定することは困難である。約100〜200nmと推定される。
【0044】
図3は、本来のPP、UVによって処理されたPP、純PGMAおよびPGMAでグラフトされたPPのFTIRスペクトルを示す。グラフトされた不織布上の1720cm-1での特性ピークは、PGMAグラフティングの明確な証拠である。
【実施例2】
【0045】
図4に示すグラフティング結果は、ベンゾフェノン対モノマーの比率(I:M)が1:5であった、実施例2の結果を除き、実施例1において、図1E)およびF)を産出する同一のプロセスからの結果である。図4の結果は、本技術が、ベンゾフェノン対モノマー比率を単に調節することによって、コーティング形態を非常に粗野から平滑に変化させることができることを明確に示す。
【実施例3】
【0046】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン不織布の4つの試料を、150〜300nmおよび50mw/cm2の強度のUV放射に、それぞれ、0分間、5分間、15分間、および30分間、曝露した。次いで、事前処理された試料を、実施例1と同一方法でPGMAを用いてグラフトした。図5は、PGMAグラフトの密度および適合性の両方が、UV/O処理の時間とともに増加することを示す。
【実施例4】
【0047】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン不織布の3つの試料を、150〜300nmおよび50mw/cm2の強度のUV放射に、それぞれ、0分間、15分間、および30分間、曝露した。次いで、この実施例では、グラフティング時間が30分間であったことを除き、事前処理された試料を、実施例1と同一の方法でPGMAを用いてグラフトした。15分間のグラフティングの約2倍のグラフティングが得られた。しかしながら、グラフティング効率における増加は、グラフトの適合性を必ずしも増加しない。図6では、事前処理を行わず、グラフティングは、繊維に共形しない。これは、15分間および30分間の事前処理後の共形グラフティングと対照的である。
【実施例5】
【0048】
UV/O事前処理時間とPP繊維上のベンゾフェノンの吸着値との関係を、以下の手順によって測定した。試料を、最初に、指定期間、事前処理した。次いで、それらを、UV放射が欠如するブタノール溶液中の1.3%(w/w)のベンゾフェノン内に浸漬した。ベンゾフェノンの濃度は、20%のグラフティング溶液内で使用された濃度と同一であり、浸漬時間は、1分間、10分間、15分間、および30分間であった。浸漬後、試料を取り出し、孔内に捕捉された溶液を除去するために、2つのペーパータオル(Wypall(登録商標)X60)の間で強く押圧し、空気中で乾燥し、FTIR−ATRで分析した。
【0049】
図7では、事前処理時間と相対的BP吸着値との相関をプロットする。標準誤差を、同一の試料上の異なる場所で測定されたデータから推定した。吸着曲線は、BP吸着がUV/O事前処理時間とともに増加することを明確に示す。これは、事前処理前のヒドロキシル基の粗度および濃度の増加の結果として説明することができる。さらに、さまざまな浸漬時間に関わらず、吸着曲線は、実験誤差内の単一の曲線内に崩壊する。これは、BP溶液に接触した時点で、BPの均衡が、溶液と繊維表面との間で迅速に確立されたことを意味する。
【0050】
グラフティング密度が、基材上の開始剤密度に依存するため、UV/Oを用いて事前処理されたPP不織布は、グラフトの適合性の非常に強化された適合性をもたらす。
【実施例6】
【0051】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン(PP)不織布の試料を、150〜300nm(UV/O)および50mw/cm2の強度のUV放射に、0〜15分、曝露した。次いで、試料を、ブタノール溶液中の20%のメタクリル酸グリシジルおよびベンゾフェノン(I:M=1:25)で浸漬し、Frekote(登録商標)でコーティングされた2つのガラススライドの間に挟み込み、次いで、さまざまな期間のグラフティングのために、300〜450nmおよび5mw/cm2の強度のUVに曝露した。グラフトされた不織布基材を、THFおよびメタノール中で超音波処理によって洗浄し、未反応および未結合化合物を除去した。
【0052】
図8A)は、グラフティング率が、事前処理時間とともに増加することを示す。増加は、開始剤密度、または事前処理時間とともに増加する繊維表面へのベンゾフェノンの吸着によるものである。高い開始剤密度は、表面上により多いグラフティング部位をもたらす。したがって、全体のグラフティング率は、さらに高い。また、興味深いことには、すべての試料は、約5分間の遅延期間を示す。この遅延期間は、恐らく、グラフティングの開始を遅延することができる、システム内に捕捉された酸素によるものであろう。さらに、10分間および15分間の事前処理の曲線は、互いに重なり合う。これは、それらが、開始剤密度の差異に関わらず、同様のグラフティング率を有することを示唆する。隣接するグラフトからの立体効果によって抑制されるため、表面上のすべての開始剤がグラフトを開始するために使用されるわけではないことが仮定されている[非特許文献7]。したがって、カットオフ開始剤密度が存在し、グラフティング率は、その濃度をわずかに超えて増加する。
【0053】
図8B)は、BP吸着値と、一定のグラフティング時間で測定されたグラフティング効率との相関を示す。グラフティング効率は、低い開始剤密度への依存は高いが、高い開始剤濃度への依存は低いことを示す。カットオフ密度は、約0.08の相対的BP吸着値である。
【実施例7】
【0054】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン(PP)不織布の試料を、150〜300nm(UV/O)および50mw/cm2の強度のUV放射に、0〜15分間、曝露した。次いで、試料を、ブタノール溶液中の10%、15%、または20%のメタクリル酸グリシジルおよびベンゾフェノン(I:M=0〜1:4)で浸漬し、Frekote(登録商標)でコーティングされた2つのガラススライドの間に挟み込み、次いで、さまざまな期間のグラフティングのために、300〜450nmおよび5mw/cm2の強度のUVに曝露した。グラフトされた不織布基材をTHFおよびメタノール中で超音波処理によって洗浄し、未反応および未結合化合物を除去した。
【0055】
3つのモノマー濃度におけるグラフティング効率を、プロットする。それぞれの濃度では、開始剤対モノマーの比率は、0〜24%と異なった。図9に示すとおり、グラフティング効率は、すべての3つのモノマー濃度では、低い開始剤対モノマー比率(I:M)で急速に増加する。比率が2%を上回るとき、グラフティング効率は、停滞期に達する。開始剤へのグラフティング効率の非依存性は、これらの開始剤濃度において、繊維表面上の開始剤密度が、すでにカットオフBP密度を上回るという事実によるものである。開始剤のさらなる増加は、グラフティング効率のわずかな変化を引き起こす。
【実施例8】
【0056】
2×4cm×厚さ140μmの寸法のポリアミド6、6不織布の試料を、150〜300nmおよび50mW/cm2強度のUVに、15分間(UV/O)曝露した。次いで、基材を、溶媒としてのブタノールでの20%のメタクリル酸グリシジルおよび1.3%のベンゾフェノン溶液で浸漬した。基材を、Frekote(登録商標)でコーティングされた2つのガラススライドの間に挟み込み、次いで、300〜450nmおよび5mW/cm2の強度のUVに、15分間、曝露した。次いで、グラフトされた不織布基材を、THFおよびメタノール中で超音波処理によって洗浄して、未反応および未結合化合物を除去した。図10は、共形グラフティングが、ポリアミド繊維上に形成されていることを示す。ポリアミドの表面エネルギーが、PPとは非常に異なるにもかかわらず、同一の技術は、両方の材料に共形グラフティングを生成することができる。
【実施例9】
【0057】
2×4cm×厚さ160μmの寸法のポリブチレンテレフタレート(PBT)不織布の試料を、150〜300nm、および50mW/cm2の強度のUVに、15分間、曝露した。別の試料は、全く事前処理しなかった。次いで、両方の基材を、ブタノール溶液中の20%のメタクリル酸グリシジルおよびベンゾフェノン(I:M=1:25)で浸漬した。基材を、Frekote(登録商標)でコーティングされた2つのガラススライドの間に挟み込み、次いで、300〜450nm、および4mW/cm2の強度のUVに、15分間、曝露した。次いで、グラフトされた不織布基材をTHFおよびメタノール中で超音波処理によって洗浄して、未反応および未結合化合物を除去した。図11は、不織布上のPBT繊維が高密度および共形PGMAグラフトによってグラフトされていることを示す。事前処理を行わずに、共形グラフティングは、依然として、PBT繊維上に形成することができる。これは、PBTが、PPよりも極性であり、ベンゾフェノンとPBTの間の双極子−双極子相互作用が、その吸着を向上させるという事実によるものである。その結果、事前処理さえも行わずに、高密度の開始剤を得ることができる。
【実施例10】
【0058】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン不織布の試料を、メタノール中の100mMのベンゾフェノン(〜2%)中に、18時間、浸漬した。浸漬直後に、それを、ブタノール溶液中の20%のGMAおよびベンゾフェノン(I:M=1:25)を用いて、2つのガラスの間に挟みこんだ。グラフティング重合の時間は、15分間であった。別のポリプロピレン不織布を、実施例1と同一の方法で処理した。すべての試料を、一晩、THF内で抽出し、メタノールで洗浄した。図12は、UV/Oによって事前に処理された基材が、ベンゾフェノン中での浸漬よりもさらに高い密度のグラフトを呈することを明確に示す。
【実施例11】
【0059】
厚さ40〜60μmの不織布の層を、厚さ250μmのPP不織布から取り除いた。5つの取り除かれた層を、互いに再積層して、本来の不織布と同様の厚さの不織布を得た。光浸透性の効果を研究するために、異なる厚さの不織布を調製した。UVセンサを、不織布によって覆われたセンサ表面を用いて不織布の積層体の1つの側面上に定置し、UVランプを反対側に定置した。全システムを、周囲からの光への曝露を回避するように黒いホイルで覆われた内部を有する筐体内に定置した。センサと光源の間の距離を調節して、それぞれの試験のための所望の初期強度を得た。
【0060】
図13は、乾燥した不織布およびモノマー溶液で浸漬された不織布を介するUV光の透過率を示す。不織布地がモノマー溶液に浸漬されるとき、その光強度は、乾燥状態下よりも、さらにゆっくりと減退することは、驚くべきことである。モノマー溶液がUV光を吸着することができるため、UV強度がより早く減退するべきであることは、妥当な予想であろう。減退の減速は、実際、屈折率整合として周知の現象に関連する。基本的に、溶媒の不応性屈折が、空気と比較して、基材の不応性屈折に近いと、表面でフレネル反射を低減し、したがって、純光透過率を増加させることができる。PPの不応性屈折は、1.471[非特許文献8]であり、ブタノールの不応性屈折は、1.397[非特許文献8]であり、空気の不応性屈折は、約1である。
【0061】
同一の材料から作製されるが、異なる平均孔径を有する不織布は、異なる浸透率プロファイルを示す。図14では、平均孔径が17.25μmから0μmに減少すると、深度に対するUV強度の減退の程度が増す。
【0062】
不織布を介するUV光の減退により、グラフティング効率は、事前処理およびグラフティングステップの両方において、曝露されたUV光の強度に応じても異なり得る。図15は、事前処理によって生じた、深度に対するグラフティング効率の変化を示す。図16は、グラフティングによって生じた、深度に対するグラフティング効率の変化を示す。事前処理を行うがベンゾフェノンを用いないグラフティング(条件2、b)および、事前処理を行わないがベンゾフェノンを用いるグラフティング(条件3、c)の2つの対照もプロットする。
【0063】
条件1aのプロットは、深度が増加すると、グラフティング効率が減少することを明確に示す。条件2bのプロットは、名目上のグラフティングのみを示す。これらの結果は、ベンゾフェノンを用いなければ、グラフティング効率が非常に低いことを示す。条件3c等の不織布が事前処理されない場合、グラフティング効率の空間的変動は、処理された不織布よりも少ない。しかし、これらのグラフティング効率も、事前処理されたものよりもさらに低い。
【0064】
本発明の上述の実施形態は、例示することのみを目的とする。本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、修正、および変更した形態で実施することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織基材上のポリマー繊維の共形コーティングのためのポリマー不織布の改質方法、及び、その方法によって産生される改質ポリマー不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,871,823号[Andres,Hoecker,Klee,and Lorenz][特許文献1]は、2×10-5〜2×10-2バールの分圧で、酸素の存在下で、ポリマー表面を活性化するために、125〜310nmの波長範囲の紫外線(以下、「UV」という。)を使用することを報告する。活性化された表面は、その後グラフティングされる。しかしながら、この特許は、グラフティングを開始するための、UV活性化から得られる表面のヒドロペルオキシドの使用の場合に制限される。
【0003】
米国特許第5,629,084号[Moya,Wilson][特許文献2]は、多孔質ポリマー基材、ならびに熱およびUVによって架橋されている第2のポリマーから形成される、複合多孔質膜を開示する。第2のポリマーの改質は、全表面に及び、これは、第2のポリマーを基材表面上で架橋するために、膜を、第2のポリマー溶液および開始剤と接触させて定置し、かつ全てをUVまたは中熱に曝露することによって達成される。このスキームは、繊維表面への第2のポリマーの吸着が重要なステップである、「〜へのグラフティング」技術として分類することができる。
【0004】
UVによって開始されるグラフティングは、一般的に、基材をモノマー溶液中でUV光に曝露することによって実施される。これは、さまざまな分子に対して、100〜450nmの範囲で行うことができる。米国特許第5,871,823号[Andres,Hoecker,Klee,and Lorenz][特許文献1]は、290〜320nmの範囲の、好ましいUV波長の使用を報告した。PCT/WO/02/28947 A1号[Belfort,Crivello and Pieracci][特許文献3]は、280〜300nmの範囲のUV波長の使用を報告した。これらの発明は、グラフティングプロセスにおける光増感剤の使用に言及しない。
【0005】
また、米国特許第5,468,390号[Crivello,Belfort,Yamagishi][特許文献4]は、光増感剤を用いずに、ポリスルホン多孔質膜を改質するためのプロセスを開示する。その結果、本参考文献に説明する膜の外表面のみが、処理を介して改質された。ポリスルホン膜は、乾燥後に、再湿潤することはできない。
【0006】
米国特許第5,883,150号[Charkaudian][特許文献5]は、光増感剤をポリスルホン膜の骨格内に埋め込むことが、より優れた湿潤特性をもたらすことを報告する。それにもかかわらず、これらの埋め込まれた光増感剤の大半が、ポリマープロセスのために一般的に使用される高温条件を満足することは困難である。例えば、メルトブローイングプロセスを使用する繊維または不織布の産生には、120℃以上の温度が必要である。
なお、下記の非特許文献は、以降の説明の中で引用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,871,823号明細書
【特許文献2】米国特許第5,629,084号明細書
【特許文献3】PCT国際公開WO2002/28947A1号
【特許文献4】米国特許第5,468,390号明細書
【特許文献5】米国特許第5,883,150号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D.J.Carlsson,D.M.Wiles,“The photo−oxidative degradation of polypropylene,part−I photo−oxidation and photo−initialization processes,”Polymer Reviews,14,(1976),65.
【非特許文献2】J.H.Adams,“Analysis of nonvolatile oxidation products of polypropylene. III. Photodegradation,”Journal of polymer Science PartA−1,8,(1970),1279.
【非特許文献3】Zhang LL,Li HJ,Li KZ,Li XT,Zhai YQ,Mang YL,“Effect of surface roughness of Carbon/Carbon composites on osteoblasts growth behaviour,”,Journal of Inorganic Materials,23,(2008),341.
【非特許文献4】Porwal,PK,Hui,CY,“Strength statistics of adhesive contact between a fibrillar structure and a rough substrate,”Journal of the Royal Society Interface,5,(2008),441.
【非特許文献5】Fuller KNG,Tabor D,“Effect of surface−roughness on adhesion of elastic solids”,Proceedings of the Royal Society of London Series A− Mathematical Physical and Engineering Sciences,345,(1975),327.
【非特許文献6】LF.Vieira Ferreira,J.C.Netto−Ferreira,I.V.Khmelinskii,A.R.Garcia,S.M.B.Costa,“Photochemistry on surfaces:matrix isolation mechanisms study of interactions of benzophenone adsorbed on microcrystalline cellulose investigated by diffusion reflectance and luminescence techniques,”Langmuir,11,(1995),231.
【非特許文献7】K.Matyjaszewski,P.J.Miller,N.Shukla,B.Immarapom,A.Gelman,B.B.Luokala,T.M.Siclovan,G.Kickelbick,T.Valiant,H.Hoffmann,T.Pakula,“Polymers at interfaces: using atom transfer radical polymerization in the controlled growth of homopolymers and block copolymers from silicon surfaces in the absence of untethered sacrificial initiator,”Macromolecules,32,(1999),8716.
【非特許文献8】Polymer Handbook Fourth Edition(J.Brandrup,E.H.Immergut.E.A.Grulke),John Wiley & Sons 1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
要約すると、上述の方法等の表面改質方法は、繊維不織ウェブまたはマットの繊維表面上に何らかのコーティングを生成し得る。しかし、上述の方法は、基材と第2のポリマーの表面エネルギー間の考えられる差異を克服するか、または高密度の開始剤で表面を生成するために必要な手段を提供しない。そのため、上述の方法によって共形コーティングを保証することはできない。
【0010】
したがって、多様なポリマー繊維に共形コーティングを保証することができる表面改質方法を提供することが望まれる。また、その方法は、外乱の影響を受けにくく、かつスケールアップが容易であることも望ましい。本発明は、これらの必要性および関連した必要性を満たすことを目指す。
【0011】
本発明は、グラフティングによる繊維表面上の異なる第2のポリマーの共形コーティングを達成するために、ポリマー繊維、または繊維不織ウェブもしくはマットを改質する方法を提供する。共形コーティングは、繊維の円筒または不規則な形状の湾曲に適合し、したがって、グラフトされたポリマーの均一な厚さによって、繊維の完全な被覆を達成するコーティングを指す。共形コーティングは、診断、分離、およびマットが複合混合物に曝露される他の用途等の、表面特性の完全な制御を必要とする不織布システム用途に必要とされる。
【0012】
本発明の目的は、エッチングおよび酸化の程度を制御することによって、ポリマー繊維表面を改質することである。これは、表面への開始剤の接着性を有意に向上させ、したがって、その後の共形ポリマーグラフティングを促進する。改質された繊維表面は、親水性の増加、配位子の結合、および表面エネルギーの変化等の新たな機能性を表面に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のポリマー不織布の改質方法は、ポリマー不織布基材の繊維表面を改質して高密度の共形コーティングを得るための方法であって、下記のステップを含む。
1)ポリマー表面の粗度を増加させることができる紫外線オゾンもしくはプラズマへの曝露、またはエッチング技術によって繊維表面の粗度を増加させる第1ステップ、
2)酸化処理または酸化剤を用いてヒドロキシル、カルボニル、または他の酸素含有化合物を増加させる第2ステップ、
3)基材をモノマーもしくは開始溶液、または、モノマーおよび開始剤の両方を含有する溶液に浸漬する第3ステップ、
4)基材を2つのガラスの間に挟み込み、または基材を制限された形状内に挿入する第4ステップ、
5)基材を紫外線または熱に曝露させてグラフティングする第5ステップ、
6)基材を洗浄し、乾燥させる第6ステップ、
【0014】
第3ステップにおいて、モノマーは、ラジカル重合によって重合し、かつヒドロキシル、アミン、カルボン酸、アルデヒド、ホルムアミド、ピリジン、ピロリドン、エポキシ等から選択される官能基を有する二官能性分子でありうる。
例は、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルメチルエーテル、ビニルホルムアミド、ポリビニルアミン、ビニルホスホン酸、ビニルアルコール−コ−ビニルアミン、ビニルピリジン、酸化プロピレン、酸化エチレン、およびこれらの組み合わせである。
【0015】
粗度を増加させる第1ステップ、ならびにヒドロキシル、カルボニル、および他の酸素含有化合物を増加させる第2ステップは、単一のステップまたは2つの個別のステップを含んでもよい。
【0016】
第3ステップにおける溶液の溶媒は、少なくとも0.5%のモノマーを溶解することができるアルコールおよび炭化水素でありうる。
第3ステップにおける開始剤は、光増感剤、アゾ化合物、過硫酸、または過酸化化合物でありうる。
さらに、開始剤は、ベンゾフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、または過酸化ベンゾイルでありうる。
【0017】
第1ステップおよび第2ステップは、繊維表面が既に高濃度の極性基を有することによって代替することができる。
【0018】
第1ステップにおける紫外線は、エッチングのためのオゾンを生成するのに好適な波長の紫外線でありうる。第5ステップにおける紫外線は、光増感剤を活性化するための波長の紫外線でありうる。
【0019】
第1ステップにおけるプラズマは、ポリマー表面をエッチングするのに十分でありうる。第5ステップにおける熱は、アゾまたは過酸化化合物を活性化するのに十分でありうる。
【0020】
第2ステップにおける酸化剤は、ヒドロペルオキシド、過硫酸カリウム、または過塩素酸カリウムでありうる。
第3ステップにおける溶液は、0.5〜20重量%のモノマーを含有しうる。
第3ステップにおける開始剤およびモノマーは、0〜1:4の比率を有しうる。
【0021】
未反応モノマーまたは未結合ホモポリマーは、水、アルコール、または炭化水素によって除去されうる。
【0022】
第3ステップは、a)不織布を光増感剤溶液で浸漬するステップと、b)不織布をモノマー溶液で浸漬するステップと、を順不同に、かつ、さらに分割可能に含んでもよい。
【0023】
本発明はまた、上述のポリマー不織布の改質方法によって産生される改質ポリマー不織布を提供する。
ポリマー不織布は、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリウレタン繊維、液晶コポリエステル繊維、剛体棒繊維、またはこれらの組み合わせでありうる。
【0024】
改質ポリマー不織布は、平坦シート、ロール、または積層体でありうる。
改質ポリマー不織布は、ステープルまたは連続繊維でありうる。
改質ポリマー不織布は、円形、三角形、四角形、または不規則な形状の断面を有する形状でありうる。
【0025】
改質ポリマー不織布は、不織布の内部に第2のポリマーの一様分布または勾配分布を有しうる。
改質ポリマー不織布は、適合性を損なわずに他の分子と反応する能力を有しうる。
【0026】
本発明は、先行技術において開示された方法に対し、UV活性化を使用して、グラフティングを開始するための代替的方法を提供する。本発明は、ポリマー基材を事前処理するための方法として、UVの使用に依存するが、それは、UV放射の異なる効果に拠る。オゾンと組み合わせる特定の波長でのUVは、ポリマー表面をエッチングし、酸化することができ、より高い表面の粗度およびヒドロキシルおよびカルボニル基の濃度をもたらすことが公知である[非特許文献1、2]。
本発明は、開始剤の増強された吸着、および、ポリマー繊維表面と溶液からのモノマーとのより優れた接触を得て共形コーティングを達成するために、この効果を利用する。さらに、本発明は、その後のグラフティングでは、ヒドロペルオキシドに依存しない。エッチングに使用される同一の範囲の波長で、UVによって空気中にオゾンを生成することができるため、オゾンの外部供給は不必要である。
【0027】
本発明は、当該技術分野において既知の「〜へのグラフティング」方法を使用するものではなく、むしろ、ポリマーグラフトが、モノマーおよび開始剤溶液中の基材表面から成長する「〜からのグラフティング」方法である。実施例が示すとおり、適切な事前処理を行わずに、ポリオレフィンのポリマー繊維等の特定の種類のポリマー繊維上で共形グラフティングを得ることは不可能である。これは、基材ポリマーと第2のポリマーの間の表面エネルギーの不整合によるものである。
【0028】
先行技術によって教示されるものとは対照的に、本発明では、非光活性のポリマー不織布に焦点を置くため、ポリオレフィン繊維上の高密度共形被覆を達成するためには、光増感剤または熱的に分解可能な開始剤の存在が不可欠であることが分かっている。さらに、事前処理ステップから生成された過酸化化合物およびラジカルは、共形コーティングを達成するには、遥かに十分ではないことが認められている。したがって、この目的を達成するためには、光増感剤およびモノマーの組み合わせが必要である。しかしながら、先行技術とは対照的に、光増感剤は、分解するのを防止するため、室温で、モノマー溶媒内にのみ適用される。
【0029】
本発明の他の目的、利点、および特性は、図面を参照して実施形態の説明を一読することによって明らかになるであろう。なお、実施形態は、一実施例として説明されるものであり、これに制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】グラフティング前後のポリプロピレン(PP)不織繊維の画像:A)本来のPP不織繊維、B)本来の単一PP不織繊維の表面、C)洗浄前のグラフトされたPP不織布、D)洗浄前のグラフトされた単一PP不織繊維の表面、E)洗浄後のグラフトされた不織布、およびF)洗浄後のグラフトされた単一PP不織繊維の表面。
【図2】グラフティング前後のPP不織繊維の断面画像:A)本来のPP不織繊維、B)本来の単一PP不織繊維の断面、C)グラフトされたPP不織繊維、およびD)グラフトされた単一PP不織繊維の断面。
【図3】本来のPP、UVによって事前処理されたPP、純メタクリル酸ポリグリシジル(PGMA)およびPGMAグラフトされたPPのFTIRスペクトル。
【図4】I:M=1:5でグラフトされたPP不織布の画像:A)グラフトされたPP不織繊維、B)グラフトされた単一PP不織繊維の表面、C)PP不織繊維の断面、およびD)グラフトされた単一PP不織繊維の断面。
【図5】0〜30分のUV/O処理後のPGMAでグラフトされたPP繊維のSEM画像:A)ゼロ(0)分、B)5分、C)15分、およびD)30分。
【図6】0分、15分、および30分の事前処理、並びに同一の30分のグラフティング後のPGMAでグラフトされたPP不織繊維ウェブのSEM画像:A)ゼロ(0)分、B)15分、C)30分。
【図7】異なる浸漬時間で測定された、UV事前処理時間と相対的ベンゾフェノン(BP)吸着値との相関を示すグラフ。
【図8】A)異なる事前処理時間の試料における、グラフティング時間とグラフティング効率との相関を示すグラフ、およびB)異なるグラフティング時間での相対的ベンゾフェノン(BP)吸着値とグラフティング効率との相関を示すグラフ。
【図9】モノマーおよび開始剤濃度(I:M)とグラフティング効率との相関を示すグラフ。
【図10】グラフティング前後のポリアミド不織繊維の画像:A)単一の本来のポリアミド不織繊維、B)本来のポリアミド不織繊維の表面、C)単一のグラフトされたポリアミド不織繊維、およびD)グラフトされたポリアミド不織繊維の表面。
【図11】事前処理の有無でのPBT不織ウェブ上のグラフティングの画像:A)本来のPBT不織布、B)事前処理を受けグラフトされたPBT不織布、C)事前処理を受けていないグラフトPBT不織布。
【図12】BP中への基材の浸漬と、UV/Oを用いる事前処理のグラフティング効果の差異を示す画像:A)BPでの浸漬、およびB)UVオゾンによる事前処理。
【図13】乾燥したPP不織布積層体およびモノマー溶液で浸漬されたPP不織布積層体を通過するUV光の透過率を示すグラフ。
【図14】異なる孔径のPP不織布を通過するUV光の透過率を示すグラフ。
【図15】事前処理条件による不織布内部の位置(深度)に対するグラフティング効率の変化を示すグラフ。
【図16】グラフティング条件による不織布内部の位置(深度)に対するグラフティング効率の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、グラフティングによる繊維表面上で異なる第2のポリマーの共形コーティングを達成するために、ポリオレフィン(ポリプロピレン)繊維、もしくはこれらの不織ウェブまたはマットを改質するポリマー不織布の改質方法に関する。
該改質方法は、制限しないが、とりわけ、セルロース(綿)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(フェノールホルムアルデヒド)(PF)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ塩化ビニル(PVC)、芳香族ポリアミド(Twaron(商品名)、Kevlar(登録商標)およびNomex(登録商標))、ポリアクリロニトリル(PAN)、およびポリウレタン(PU)等の他のポリマー繊維にも適用することができる。
該改質方法は、繊維基材上の第2のポリマーの高密度表面グラフティング重合に依拠する。繊維表面上の第2のポリマーの共形コーティングは、繊維表面上のグラフトの被覆が高く、グラフトと基材の間に形成された化学結合が巨大なエネルギーバリアを作成して、コーティング分離が発生するのを防止するため、常に、この方法で保証することができる。
【0032】
該改質方法は、繊維またはそれらの不織ウェブを、空気中の150〜300nmの範囲のUV放射に曝露するステップで開始する。曝露中、オゾンは、UV光へのO2の曝露の結果として同時に生成される。本発明におけるUV放射とオゾン処理の使用に隠された目的とは、繊維表面上にラジカルまたは過酸化物を生成しないことである。その代わりに、表面をエッチングして、その粗度を増加させ、かつヒドロキシルおよび他の酸素含有化合物の濃度を同時に増加させることが目標である[非特許文献1、2]。複合効果は、その後のグラフティングステップにおいて、開始剤の吸着を有意に増加させる(実施例5を参照)。
【0033】
ポリマー繊維は、ポリマーが融解するか、または溶液が非常に高速で細いノズルを通過するように、繊維製品状態の結果である平滑または施釉された表面を有し得る。施釉された表面は、他の分子が表面に結合するのを防止する。一方、粗表面は、表面への開始剤等の他の分子の吸着を増加することができる[非特許文献3〜5]。
開始剤は、穏和な条件下でフリーラジカルを産生し、かつラジカル重合反応を開始することができる分子である。ヒドロキシルおよび他の酸素含有化合物等の極性基と開始剤との相互作用は、吸着を安定化させる機能をさらに果たすことができる[非特許文献6]。
UV放射とオゾンは、表面の粗度を増加させるために、繊維表面の非常に薄い層のみをエッチングし、かつヒドロキシルおよびカルボニル基を同時に生成する上で非常に効果的である。プラズマ処理、過酸化物酸化、塩基および酸、または表面の粗度を増加し、酸化することができる任意の方法等の他の取り組みも、本目的に使用することができる。
【0034】
いくつかのポリマーは、アミン、カルボニル、およびヒドロキシル等の極性基を既に含有するモノマーから作製される。開始剤は、共形コーティングが、事前処理さえも行わずに得ることができる程度まで、これらの表面に吸着され得る。しかしながら、炭化水素のみを含有するポリマー、例えば、ポリオレフィンでは、事前処理は、共形コーティングにおいて不可欠である。
【0035】
事前処理後、機能性モノマーは、フリーラジカル重合によって、表面にグラフトすることができる。本改質方法は、UVによって開始されるラジカル重合または熱によって開始されるラジカル重合を使用することができる。光増感剤および熱的に分解可能な開始剤は、それぞれのプロセスにおいて使用されるべきである。光増感剤には、ベンゾフェノン(以下、適宜「BP」という。)、アントラキノン、ナフトキノン、または開始時に水素引き抜き反応を伴う任意の化合物が挙げられる。熱的に分解可能な開始剤としては、アゾ化合物または過酸化化合物が挙げられる。モノマー濃度は、1〜20%の範囲である。開始剤濃度は、0.5〜7%の範囲である。アルコールおよび炭化水素は、溶媒として使用することができる。グラフティングは、約1〜120分間、実施される。
【0036】
期待される機能性に応じて、さまざまなアクリレートモノマー、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、および同様のアクリレート誘導体をグラフティングに選択することができる。さらに、ラジカル重合によって重合することができる任意のポリマーをグラフティングに使用することができる。
【0037】
波長300〜450nmの連続UV放射は、UVによって開始されるグラフティングに必要である。事前処理され、モノマーの溶液および光増感剤で事前浸漬された基材は、2つの薄いガラスプレート(または、制限された形状)の間に挿入され、既定時間の間、UVに曝露される。基材の表面付近に飽和気相を形成する、制限された形状は、溶媒の高速損失を防止する利点を有する。また、制限された形状は、グラフティング溶液を最小限に抑え、脱ガスおよび不活性ガスの保護の欠如を可能にする。使用前、ガラスプレートは、離型剤、例えば、Frekote(登録商標)で事前処理し得る。
【0038】
グラフティングは、室温または昇温で実施することができるが、モノマー溶液の沸点を遥かに下回る温度である。溶媒があまりにも早く蒸発するときは、冷却が必要である。
【0039】
昇温は、開始剤が効率的に分解することができる熱によって開始されるグラフティングに必要である。また、同一の制限された形状も使用することができる。
【0040】
グラフティング後、基材を適切な溶媒で洗浄して、未反応モノマーおよび未結合ホモポリマーを抽出する。水は、水可溶性であるモノマーおよびホモポリマーにとって最良の溶媒である。ないしは、アルコール、炭化水素、または任意の他の好適な溶媒によって抽出することができる。
【実施例1】
【0041】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン(PP)不織布の試料を、150〜300nm(UV/O)および50mw/cm2の強度のUV放射に、15分間、曝露した。次いで、基材を、ブタノール溶液中の20%のメタクリル酸グリシジルおよびベンゾフェノン(開始剤:モノマーまたはI:M=1:25)で浸漬した。基材を、Frekote(登録商標)でコーティングされた2つのガラススライドの間に挟み込み、次いで、300〜450nmおよび5mw/cm2の強度のUVに、15分間、グラフティングのために曝露した。次いで、グラフトされた不織基材をTHFおよびメタノール中で超音波処理によって洗浄して、未反応および未結合化合物を除去した。
【0042】
図1A)およびB)は、本来のPP不織ウェブおよび繊維を示す。本来のPP繊維の表面は、メルトブローンプロセスの結果として、亀裂で覆われている。図1C)およびD)は、グラフティング後であるが、洗浄前の不織ウェブおよび繊維を示す。非常に平滑なコーティングは、繊維上に形成される。しかしながら、これらのコーティングは、永久的ではない。図1E)およびF)は、洗浄後の不織ウェブおよび繊維を示す。高密度の粗メタクリル酸ポリグリシジル(PGMA)コーティングは、繊維表面に共有結合される。ウェブの多孔質構造は変化していない。
【0043】
図2A)およびB)は、PP不織ウェブおよび繊維の断面を示す。図2C)およびD)は、グラフティング後の断面を示す。見て分かるように、グラフティングは、円筒および不規則形状の繊維にさえ、非常に共形的である。厚さは、コーティングと繊維との間の低コントラストのため、測定することは困難である。約100〜200nmと推定される。
【0044】
図3は、本来のPP、UVによって処理されたPP、純PGMAおよびPGMAでグラフトされたPPのFTIRスペクトルを示す。グラフトされた不織布上の1720cm-1での特性ピークは、PGMAグラフティングの明確な証拠である。
【実施例2】
【0045】
図4に示すグラフティング結果は、ベンゾフェノン対モノマーの比率(I:M)が1:5であった、実施例2の結果を除き、実施例1において、図1E)およびF)を産出する同一のプロセスからの結果である。図4の結果は、本技術が、ベンゾフェノン対モノマー比率を単に調節することによって、コーティング形態を非常に粗野から平滑に変化させることができることを明確に示す。
【実施例3】
【0046】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン不織布の4つの試料を、150〜300nmおよび50mw/cm2の強度のUV放射に、それぞれ、0分間、5分間、15分間、および30分間、曝露した。次いで、事前処理された試料を、実施例1と同一方法でPGMAを用いてグラフトした。図5は、PGMAグラフトの密度および適合性の両方が、UV/O処理の時間とともに増加することを示す。
【実施例4】
【0047】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン不織布の3つの試料を、150〜300nmおよび50mw/cm2の強度のUV放射に、それぞれ、0分間、15分間、および30分間、曝露した。次いで、この実施例では、グラフティング時間が30分間であったことを除き、事前処理された試料を、実施例1と同一の方法でPGMAを用いてグラフトした。15分間のグラフティングの約2倍のグラフティングが得られた。しかしながら、グラフティング効率における増加は、グラフトの適合性を必ずしも増加しない。図6では、事前処理を行わず、グラフティングは、繊維に共形しない。これは、15分間および30分間の事前処理後の共形グラフティングと対照的である。
【実施例5】
【0048】
UV/O事前処理時間とPP繊維上のベンゾフェノンの吸着値との関係を、以下の手順によって測定した。試料を、最初に、指定期間、事前処理した。次いで、それらを、UV放射が欠如するブタノール溶液中の1.3%(w/w)のベンゾフェノン内に浸漬した。ベンゾフェノンの濃度は、20%のグラフティング溶液内で使用された濃度と同一であり、浸漬時間は、1分間、10分間、15分間、および30分間であった。浸漬後、試料を取り出し、孔内に捕捉された溶液を除去するために、2つのペーパータオル(Wypall(登録商標)X60)の間で強く押圧し、空気中で乾燥し、FTIR−ATRで分析した。
【0049】
図7では、事前処理時間と相対的BP吸着値との相関をプロットする。標準誤差を、同一の試料上の異なる場所で測定されたデータから推定した。吸着曲線は、BP吸着がUV/O事前処理時間とともに増加することを明確に示す。これは、事前処理前のヒドロキシル基の粗度および濃度の増加の結果として説明することができる。さらに、さまざまな浸漬時間に関わらず、吸着曲線は、実験誤差内の単一の曲線内に崩壊する。これは、BP溶液に接触した時点で、BPの均衡が、溶液と繊維表面との間で迅速に確立されたことを意味する。
【0050】
グラフティング密度が、基材上の開始剤密度に依存するため、UV/Oを用いて事前処理されたPP不織布は、グラフトの適合性の非常に強化された適合性をもたらす。
【実施例6】
【0051】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン(PP)不織布の試料を、150〜300nm(UV/O)および50mw/cm2の強度のUV放射に、0〜15分、曝露した。次いで、試料を、ブタノール溶液中の20%のメタクリル酸グリシジルおよびベンゾフェノン(I:M=1:25)で浸漬し、Frekote(登録商標)でコーティングされた2つのガラススライドの間に挟み込み、次いで、さまざまな期間のグラフティングのために、300〜450nmおよび5mw/cm2の強度のUVに曝露した。グラフトされた不織布基材を、THFおよびメタノール中で超音波処理によって洗浄し、未反応および未結合化合物を除去した。
【0052】
図8A)は、グラフティング率が、事前処理時間とともに増加することを示す。増加は、開始剤密度、または事前処理時間とともに増加する繊維表面へのベンゾフェノンの吸着によるものである。高い開始剤密度は、表面上により多いグラフティング部位をもたらす。したがって、全体のグラフティング率は、さらに高い。また、興味深いことには、すべての試料は、約5分間の遅延期間を示す。この遅延期間は、恐らく、グラフティングの開始を遅延することができる、システム内に捕捉された酸素によるものであろう。さらに、10分間および15分間の事前処理の曲線は、互いに重なり合う。これは、それらが、開始剤密度の差異に関わらず、同様のグラフティング率を有することを示唆する。隣接するグラフトからの立体効果によって抑制されるため、表面上のすべての開始剤がグラフトを開始するために使用されるわけではないことが仮定されている[非特許文献7]。したがって、カットオフ開始剤密度が存在し、グラフティング率は、その濃度をわずかに超えて増加する。
【0053】
図8B)は、BP吸着値と、一定のグラフティング時間で測定されたグラフティング効率との相関を示す。グラフティング効率は、低い開始剤密度への依存は高いが、高い開始剤濃度への依存は低いことを示す。カットオフ密度は、約0.08の相対的BP吸着値である。
【実施例7】
【0054】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン(PP)不織布の試料を、150〜300nm(UV/O)および50mw/cm2の強度のUV放射に、0〜15分間、曝露した。次いで、試料を、ブタノール溶液中の10%、15%、または20%のメタクリル酸グリシジルおよびベンゾフェノン(I:M=0〜1:4)で浸漬し、Frekote(登録商標)でコーティングされた2つのガラススライドの間に挟み込み、次いで、さまざまな期間のグラフティングのために、300〜450nmおよび5mw/cm2の強度のUVに曝露した。グラフトされた不織布基材をTHFおよびメタノール中で超音波処理によって洗浄し、未反応および未結合化合物を除去した。
【0055】
3つのモノマー濃度におけるグラフティング効率を、プロットする。それぞれの濃度では、開始剤対モノマーの比率は、0〜24%と異なった。図9に示すとおり、グラフティング効率は、すべての3つのモノマー濃度では、低い開始剤対モノマー比率(I:M)で急速に増加する。比率が2%を上回るとき、グラフティング効率は、停滞期に達する。開始剤へのグラフティング効率の非依存性は、これらの開始剤濃度において、繊維表面上の開始剤密度が、すでにカットオフBP密度を上回るという事実によるものである。開始剤のさらなる増加は、グラフティング効率のわずかな変化を引き起こす。
【実施例8】
【0056】
2×4cm×厚さ140μmの寸法のポリアミド6、6不織布の試料を、150〜300nmおよび50mW/cm2強度のUVに、15分間(UV/O)曝露した。次いで、基材を、溶媒としてのブタノールでの20%のメタクリル酸グリシジルおよび1.3%のベンゾフェノン溶液で浸漬した。基材を、Frekote(登録商標)でコーティングされた2つのガラススライドの間に挟み込み、次いで、300〜450nmおよび5mW/cm2の強度のUVに、15分間、曝露した。次いで、グラフトされた不織布基材を、THFおよびメタノール中で超音波処理によって洗浄して、未反応および未結合化合物を除去した。図10は、共形グラフティングが、ポリアミド繊維上に形成されていることを示す。ポリアミドの表面エネルギーが、PPとは非常に異なるにもかかわらず、同一の技術は、両方の材料に共形グラフティングを生成することができる。
【実施例9】
【0057】
2×4cm×厚さ160μmの寸法のポリブチレンテレフタレート(PBT)不織布の試料を、150〜300nm、および50mW/cm2の強度のUVに、15分間、曝露した。別の試料は、全く事前処理しなかった。次いで、両方の基材を、ブタノール溶液中の20%のメタクリル酸グリシジルおよびベンゾフェノン(I:M=1:25)で浸漬した。基材を、Frekote(登録商標)でコーティングされた2つのガラススライドの間に挟み込み、次いで、300〜450nm、および4mW/cm2の強度のUVに、15分間、曝露した。次いで、グラフトされた不織布基材をTHFおよびメタノール中で超音波処理によって洗浄して、未反応および未結合化合物を除去した。図11は、不織布上のPBT繊維が高密度および共形PGMAグラフトによってグラフトされていることを示す。事前処理を行わずに、共形グラフティングは、依然として、PBT繊維上に形成することができる。これは、PBTが、PPよりも極性であり、ベンゾフェノンとPBTの間の双極子−双極子相互作用が、その吸着を向上させるという事実によるものである。その結果、事前処理さえも行わずに、高密度の開始剤を得ることができる。
【実施例10】
【0058】
2×4cm×厚さ250μmの寸法のポリプロピレン不織布の試料を、メタノール中の100mMのベンゾフェノン(〜2%)中に、18時間、浸漬した。浸漬直後に、それを、ブタノール溶液中の20%のGMAおよびベンゾフェノン(I:M=1:25)を用いて、2つのガラスの間に挟みこんだ。グラフティング重合の時間は、15分間であった。別のポリプロピレン不織布を、実施例1と同一の方法で処理した。すべての試料を、一晩、THF内で抽出し、メタノールで洗浄した。図12は、UV/Oによって事前に処理された基材が、ベンゾフェノン中での浸漬よりもさらに高い密度のグラフトを呈することを明確に示す。
【実施例11】
【0059】
厚さ40〜60μmの不織布の層を、厚さ250μmのPP不織布から取り除いた。5つの取り除かれた層を、互いに再積層して、本来の不織布と同様の厚さの不織布を得た。光浸透性の効果を研究するために、異なる厚さの不織布を調製した。UVセンサを、不織布によって覆われたセンサ表面を用いて不織布の積層体の1つの側面上に定置し、UVランプを反対側に定置した。全システムを、周囲からの光への曝露を回避するように黒いホイルで覆われた内部を有する筐体内に定置した。センサと光源の間の距離を調節して、それぞれの試験のための所望の初期強度を得た。
【0060】
図13は、乾燥した不織布およびモノマー溶液で浸漬された不織布を介するUV光の透過率を示す。不織布地がモノマー溶液に浸漬されるとき、その光強度は、乾燥状態下よりも、さらにゆっくりと減退することは、驚くべきことである。モノマー溶液がUV光を吸着することができるため、UV強度がより早く減退するべきであることは、妥当な予想であろう。減退の減速は、実際、屈折率整合として周知の現象に関連する。基本的に、溶媒の不応性屈折が、空気と比較して、基材の不応性屈折に近いと、表面でフレネル反射を低減し、したがって、純光透過率を増加させることができる。PPの不応性屈折は、1.471[非特許文献8]であり、ブタノールの不応性屈折は、1.397[非特許文献8]であり、空気の不応性屈折は、約1である。
【0061】
同一の材料から作製されるが、異なる平均孔径を有する不織布は、異なる浸透率プロファイルを示す。図14では、平均孔径が17.25μmから0μmに減少すると、深度に対するUV強度の減退の程度が増す。
【0062】
不織布を介するUV光の減退により、グラフティング効率は、事前処理およびグラフティングステップの両方において、曝露されたUV光の強度に応じても異なり得る。図15は、事前処理によって生じた、深度に対するグラフティング効率の変化を示す。図16は、グラフティングによって生じた、深度に対するグラフティング効率の変化を示す。事前処理を行うがベンゾフェノンを用いないグラフティング(条件2、b)および、事前処理を行わないがベンゾフェノンを用いるグラフティング(条件3、c)の2つの対照もプロットする。
【0063】
条件1aのプロットは、深度が増加すると、グラフティング効率が減少することを明確に示す。条件2bのプロットは、名目上のグラフティングのみを示す。これらの結果は、ベンゾフェノンを用いなければ、グラフティング効率が非常に低いことを示す。条件3c等の不織布が事前処理されない場合、グラフティング効率の空間的変動は、処理された不織布よりも少ない。しかし、これらのグラフティング効率も、事前処理されたものよりもさらに低い。
【0064】
本発明の上述の実施形態は、例示することのみを目的とする。本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、修正、および変更した形態で実施することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー不織布基材の繊維表面を改質して高密度の共形コーティングを得るためのポリマー不織布の改質方法であって、
1)ポリマー表面の粗度を増加させることができる紫外線オゾンもしくはプラズマへの曝露、またはエッチング技術によって前記繊維表面の粗度を増加させる第1ステップと、
2)酸化処理または酸化剤を用いてヒドロキシル、カルボニル、または他の酸素含有化合物を増加させる第2ステップと、
3)前記基材をモノマーもしくは開始溶液、または、モノマーおよび開始剤の両方を含有する溶液に浸漬する第3ステップと、
4)前記基材を2つのガラスの間に挟み込み、または前記基材を制限された形状内に挿入する第4ステップと、
5)前記基材を紫外線または熱に曝露させてグラフティングする第5ステップと、
6)前記基材を洗浄し、乾燥させる第6ステップと、
を含むポリマー不織布の改質方法。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法によって産生される改質ポリマー不織布。
【請求項3】
前記ポリマー不織布は、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリウレタン繊維、液晶コポリエステル繊維、剛体棒繊維、またはこれらの組み合わせである請求項2に記載の改質ポリマー不織布。
【請求項4】
平坦シート、ロール、または積層体である請求項3に記載の改質ポリマー不織布。
【請求項5】
ステープルまたは連続繊維である請求項3に記載の改質ポリマー不織布。
【請求項6】
円形、三角形、四角形、または不規則な形状の断面を有する請求項5に記載の改質ポリマー不織布。
【請求項7】
前記第3ステップにおいて、前記モノマーは、ラジカル重合によって重合し、かつヒドロキシル、アミン、カルボン酸、アルデヒド、ホルムアミド、ピリジン、ピロリドン、エポキシ等から選択される官能基を有する二官能性分子である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項8】
粗度を増加させる前記第1ステップ、ならびにヒドロキシル、カルボニル、および他の酸素含有化合物を増加させる前記第2ステップは、単一のステップまたは2つの個別のステップを含む請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項9】
前記第3ステップにおける前記溶液の溶媒は、少なくとも0.5%のモノマーを溶解することができるアルコールおよび炭化水素である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項10】
前記第3ステップにおける前記開始剤は、光増感剤、アゾ化合物、過硫酸、または過酸化化合物である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項11】
前記開始剤は、ベンゾフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、または過酸化ベンゾイルである請求項10に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項12】
前記第1ステップおよび前記第2ステップは、前記繊維表面が既に高濃度の極性基を有することによって代替することができる請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項13】
前記第1ステップにおける前記紫外線は、エッチングのためのオゾンを生成するのに好適な波長の紫外線である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項14】
前記第5ステップにおける前記紫外線は、光増感剤を活性化するための波長の紫外線である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項15】
前記第1ステップにおける前記プラズマは、ポリマー表面をエッチングするのに十分である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項16】
前記第5ステップにおける前記熱は、アゾまたは過酸化化合物を活性化するのに十分である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項17】
前記第2ステップにおける前記酸化剤は、ヒドロペルオキシド、過硫酸カリウム、または過塩素酸カリウムである請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項18】
前記第3ステップにおける前記溶液は、0.5〜20重量%のモノマーを含有する請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項19】
前記第3ステップにおける前記開始剤およびモノマーは、0〜1:4の比率を有する請求項7および10に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項20】
未反応モノマーまたは未結合ホモポリマーは、水、アルコール、または炭化水素によって除去される請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項21】
前記第3ステップは、
a)前記不織布を光増感剤溶液で浸漬するステップと、
b)前記不織布をモノマー溶液で浸漬するステップと、
を順不同に、かつ、さらに分割可能に含む請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項22】
前記不織布の内部に第2のポリマーの一様分布または勾配分布を有する請求項2に記載の改質ポリマー不織布。
【請求項23】
適合性を損なわずに他の分子と反応する能力を有する請求項2に記載の改質ポリマー不織布。
【請求項1】
ポリマー不織布基材の繊維表面を改質して高密度の共形コーティングを得るためのポリマー不織布の改質方法であって、
1)ポリマー表面の粗度を増加させることができる紫外線オゾンもしくはプラズマへの曝露、またはエッチング技術によって前記繊維表面の粗度を増加させる第1ステップと、
2)酸化処理または酸化剤を用いてヒドロキシル、カルボニル、または他の酸素含有化合物を増加させる第2ステップと、
3)前記基材をモノマーもしくは開始溶液、または、モノマーおよび開始剤の両方を含有する溶液に浸漬する第3ステップと、
4)前記基材を2つのガラスの間に挟み込み、または前記基材を制限された形状内に挿入する第4ステップと、
5)前記基材を紫外線または熱に曝露させてグラフティングする第5ステップと、
6)前記基材を洗浄し、乾燥させる第6ステップと、
を含むポリマー不織布の改質方法。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法によって産生される改質ポリマー不織布。
【請求項3】
前記ポリマー不織布は、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリウレタン繊維、液晶コポリエステル繊維、剛体棒繊維、またはこれらの組み合わせである請求項2に記載の改質ポリマー不織布。
【請求項4】
平坦シート、ロール、または積層体である請求項3に記載の改質ポリマー不織布。
【請求項5】
ステープルまたは連続繊維である請求項3に記載の改質ポリマー不織布。
【請求項6】
円形、三角形、四角形、または不規則な形状の断面を有する請求項5に記載の改質ポリマー不織布。
【請求項7】
前記第3ステップにおいて、前記モノマーは、ラジカル重合によって重合し、かつヒドロキシル、アミン、カルボン酸、アルデヒド、ホルムアミド、ピリジン、ピロリドン、エポキシ等から選択される官能基を有する二官能性分子である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項8】
粗度を増加させる前記第1ステップ、ならびにヒドロキシル、カルボニル、および他の酸素含有化合物を増加させる前記第2ステップは、単一のステップまたは2つの個別のステップを含む請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項9】
前記第3ステップにおける前記溶液の溶媒は、少なくとも0.5%のモノマーを溶解することができるアルコールおよび炭化水素である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項10】
前記第3ステップにおける前記開始剤は、光増感剤、アゾ化合物、過硫酸、または過酸化化合物である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項11】
前記開始剤は、ベンゾフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、または過酸化ベンゾイルである請求項10に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項12】
前記第1ステップおよび前記第2ステップは、前記繊維表面が既に高濃度の極性基を有することによって代替することができる請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項13】
前記第1ステップにおける前記紫外線は、エッチングのためのオゾンを生成するのに好適な波長の紫外線である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項14】
前記第5ステップにおける前記紫外線は、光増感剤を活性化するための波長の紫外線である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項15】
前記第1ステップにおける前記プラズマは、ポリマー表面をエッチングするのに十分である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項16】
前記第5ステップにおける前記熱は、アゾまたは過酸化化合物を活性化するのに十分である請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項17】
前記第2ステップにおける前記酸化剤は、ヒドロペルオキシド、過硫酸カリウム、または過塩素酸カリウムである請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項18】
前記第3ステップにおける前記溶液は、0.5〜20重量%のモノマーを含有する請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項19】
前記第3ステップにおける前記開始剤およびモノマーは、0〜1:4の比率を有する請求項7および10に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項20】
未反応モノマーまたは未結合ホモポリマーは、水、アルコール、または炭化水素によって除去される請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項21】
前記第3ステップは、
a)前記不織布を光増感剤溶液で浸漬するステップと、
b)前記不織布をモノマー溶液で浸漬するステップと、
を順不同に、かつ、さらに分割可能に含む請求項1に記載のポリマー不織布の改質方法。
【請求項22】
前記不織布の内部に第2のポリマーの一様分布または勾配分布を有する請求項2に記載の改質ポリマー不織布。
【請求項23】
適合性を損なわずに他の分子と反応する能力を有する請求項2に記載の改質ポリマー不織布。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−523986(P2011−523986A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513496(P2011−513496)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/003486
【国際公開番号】WO2009/151593
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510324997)パソジェン リムーバル アンド ダイアグノスティック テクノロジーズ インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Pathogen Removal and Diagnostic Technologies, Inc.
【出願人】(510325008)ノース カロライナ ステイト ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】North Carolina State University
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/003486
【国際公開番号】WO2009/151593
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510324997)パソジェン リムーバル アンド ダイアグノスティック テクノロジーズ インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Pathogen Removal and Diagnostic Technologies, Inc.
【出願人】(510325008)ノース カロライナ ステイト ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】North Carolina State University
【Fターム(参考)】
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