説明

ポリマー修飾脂質を含むガス封入微小胞

診断および/または治療方法に用いるための、安定性が増強された特にガス封入微小胞の形の画像強調造影剤。ガス封入微小胞は、両親媒性物質の層により安定化され、親水性ポリマーを保持する脂質を0.15%〜1.0%(モル)含む。該親水性ポリマーを保持する脂質は好ましくはポリエチレングリコールと結合したリン脂質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断および/または治療方法に用いるための、特にガス封入微小胞の形の画像強調造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特に超音波映像法(画像化)用の造影剤として有用な注射用製剤は、水性媒質中に分散した直径数ミクロンの気泡のサスペンジョンを含む。例えば乳化剤、油、増粘剤、もしくは糖のような適切な添加剤によるか、または種々の系中にガスもしくはその前駆体を封入またはカプセル化することにより安定化される気泡が特に興味深い。この安定化された気泡は、一般的には当該分野でガス封入微小胞と呼ばれる。
【0003】
有用なガス封入微小胞には、気泡が、液体界面にガスで配置された安定化両親媒性物質を含む非常に薄い膜(フィルム)によりガス/液体界面に結合している、水性サスペンジョンが含まれる。このサスペンジョンは、典型的には、好ましくは製造直後に投与することができるガス封入微小胞のサスペンジョンが生成されるように撹拌しながら、粉末両親媒性物質、例えば、予め形成した凍結乾燥リポソームまたは凍結乾燥もしくはスプレー乾燥した脂質溶液を空気もしくは他のガス、次いで水性担体と接触させて製造する。ガス封入微小胞の水性サスペンジョンとその製造方法の例は、例えばUS 5,271,928、US 5,445,813、US 5,413,774、US 5,556,610、5,597,549、US 5,827,504、WO 97/29783、およびWO2004/069284に開示されている(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。
【0004】
ガス封入微小胞を安定化する脂質の成分については、種々の量の親水性ポリマーを保持する脂質、例えばポリエチレングリコールと結合したリン脂質を導入することも示唆されている。例えば米国特許6,416,740は、該ポリマー保持脂質の量が約1モルパーセントより大きい(該脂質がポリエチレングリコール保持リン脂質であるときは少なくとも5モルパーセントである)組成物を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、今回、本出願人は、親水性ポリマーを保持する脂質のそのような量は、安定な微小胞を得るのに必要でなく、そのような安定性は、思いがけなく非常に低濃度の親水性ポリマーを保持する脂質で得ることができることをみいだした。本出願人は、さらにそのような低量の親水性ポリマーを保持する脂質が高容量のガスを微小胞中に取り込むのを可能にすることをみいだした。さらに、本出願人は、そのような非常に低濃度の親水性ポリマーを保持する脂質が思いがけず微小胞数の増加ももたらしうることもみいだした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要約)
本発明のある局面は、0.15%〜1.0%(モル)の親水性ポリマーを保持する脂質を含む両親媒性物質の層により安定化されたガス封入微小胞に関する。好ましくは、該濃度は、少なくとも0.3%(モル)、より好ましくは約0.5%(モル)である。
【0007】
親水性ポリマーを保持する脂質は、好ましくはポリエチレングリコールと共有結合したリン脂質である。
本発明のさらなる局面には、特に該両親媒性物質および該親水性ポリマーを保持する脂質を含む乾燥粉末の形の該微小胞の各前駆体、該微小胞またはその前駆体を含む医薬キット、該微小胞の製造方法、ならびに該微小胞の使用方法が含まれる。
【発明の効果】
【0008】
(本発明の詳細な説明)
本明細書に記載のガス封入微小胞は、両親媒性化合物を含む水性サスペンジョン中のマイクロおよびマイクロ未満のサイズの気泡の分散物を含む。少なくとも該両親媒性化合物の部分は、液体界面にガスで配置され、気泡に望ましい安定性をもたらす薄い外皮(典型的にはフィルムの形の)を形成する。
【0009】
安定化膜(外皮)を形成するのに有用な両親媒性化合物は合成または天然の生体適合性化合物であってよく、例えば、フィルム形成脂質、特にリン脂質が含まれうる。両親媒性化合物の例には、例えば、リン脂質;リソリン脂質;脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、もしくはオレイン酸;以下のようなポリマーを保持する脂質、例えば、キチン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン、またはポリエチレングリコール (PEG)(「ペグ化脂質」とも呼ばれる);スルホン化モノ-、ジ-、オリゴ-、またはポリサッカライドを保持する脂質;コレステロール、コレステロールサルフェート、またはコレステロールヘミスクシネート;トコフェロールヘミスクシネート;エーテルまたはエステル-結合脂肪酸を含む脂質;ポリマー化脂質;ジアセチルホスフェート;ジセチルホスフェート;セラミド;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル (例えばポリオキシエチレン脂肪酸ステアレート)、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチル化ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールポリエチレングリコールリシノレエート、エトシキ化ダイズステロール、エトシキ化ヒマシ油またはエチレンオキシド (EO)、およびプロピレンオキシド (PO)ブロックコポリマー;ステロール脂肪酸エステル(コレステロールブチレート、コレステロール イソ-ブチレート、コレステロールパルミテート、コレステロールステアレート、ラノステロールアセテート、エルゴステロールパルミテート、またはフィトステロールn-ブチレートを含む);糖酸のステロールエステル(コレステロールグルクロニド、ラノステロールグルコロニド、7-デヒドロコレステロール グルコロニド、エルゴステロールグルコロニド、コレステロールグルコネート、ラノステロールグルコネート、もしくはエルゴステロールグルコネートを含む);糖酸およびアルコールのエステル(ラウリルグルコロニド、ステロイルグルコロニド、ミリストイルグルコロニド、ラウリルグルコネート、ミリストイルグルコネート、またはステアロイルグルコネートを含む);糖の脂肪酸とのエステル(シュークロースラウレート、フルクトースラウレート、シュークロースパルミテート、シュークロースステアレート、グルクロン酸、グルコン酸、またはポリウロン酸を含む);サポニン(サルササポゲニン、スミラゲニン、ヘデラゲニン、オレアノール酸、またはディジトキシゲニンを含む);グリセロールまたはグリセロールエステル(グリセロールトリパルミテート、グリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレート、グリセロールジミリステート、グリセロールトリミリステート、グリセロールジラウレート、グリセロールトリラウレート、グリセロールジパルミテートを含む);長鎖アルコール(n-デシルアルコール、ラウリル アルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、またはn-オクタデシルアルコールを含む);6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;ジガラクトシルジグリセリド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシル-1-チオ-β-D-マンノピラノシド;12-(((7’-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチルアミノ)オクタデカン酸;N-[12-(((7’-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチルアミノ)オクタデカノイル]-2-アミノパルミチン酸;N-スクシニルジオレイルホスファチジルエタノールアミン;1,2-ジオレイル-sn-グリセロール;1,2-ジパルミトイル-sn-3-スクシニルグリセロール;1,3-ジパルミトイル-2-スクシニルグリセロール;1-ヘキサデシル-2-パルミトイルグリセロホスホエタノールアミン、またはパルミトイルホモシステイン;少なくとも1の(C10-C20)、好ましくは(C14-C18)のアルキル鎖を含むアルキルアミンまたはアルキルアンモニウム塩、例えば、N-ステアリルアミン、N,N’-ジステアリルアミン、N-ヘキサデシルアミン、N,N’-ジヘキサデシルアミン、N-塩化ステアリルアンモニウム、N,N’-ジステアリルアンモニウムクロリド、N-ヘキサデシルアンモニウムクロリド、N,N’-ジヘキサデシルアンモニウムクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド (DDAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド (CTAB);1または好ましくは2の(C10-C20)、好ましくは(C14-C18)の、(C3-C6)アルキレン架橋を介してN原子と結合したアシル鎖を含む第3または第4アンモニウム塩、例えば、1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン (DSTAP)、1,2-ジパルミトイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン (DPTAP)、1,2-オレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン (DOTAP)、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン (DSDAP);ならびにその混合物または組み合わせが含まれる。
【0010】
成分の組み合わせおよび微小胞の製造方法に応じて、上記の典型的化合物を微小胞外皮を形成するための主化合物として、または単に添加物(すなわち、小量で存在する)として用いることができる。
【0011】
好ましい態様によれば、微小胞外皮を形成する化合物の少なくとも1は、所望により他の上記のフィルム形成物質のいずれかと組み合わせたリン脂質である。本明細書によれば、用語リン脂質は、最終の微小胞サスペンジョンにおいてガス-水境界面に物質の安定なフィルムを形成することができるあらゆる両親媒性リン脂質化合物を含むことを意図する。したがって、これら物質は、当該分野では「フィルム形成リン脂質」とも呼ばれる。
【0012】
両親媒性リン脂質化合物は、典型的には少なくとも1のリン酸基および少なくとも1の、好ましくは2の脂溶性長鎖炭化水素基を含む。
【0013】
適切なリン脂質の例には、脂肪酸の1、好ましくは2(同じかまたは異なる)残基およびリン酸とグリセロールとのエステルが含まれ、同様に、リン酸残基は、親水基、例えば、コリン (ホスファチジルコリン-PC)、セリン (ホスファチジルセリン-PS)、グリセロール (ホスファチジルグリセロール-PG)、エタノールアミン (ホスファチジルエタノールアミン-PE)、イノシトール (ホスファチジルイノシトール)と結合している。リン脂質と脂肪酸の1残基のみとのエステルは当該分野では一般にリン脂質の「リソ」形または「リソリン脂質」と呼ばれる。リン脂質中に存在する脂肪酸残基は、一般に炭素数12〜24、好ましくは14〜22の長鎖脂肪酸であり、該脂肪族鎖は1またはそれ以上の不飽和を含みうるか、または好ましくは完全に飽和している。リン脂質に含まれる適切な脂肪酸の例には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸がある。好ましい、飽和脂肪酸、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびアラキジン酸を用いる。
【0014】
さらなるリン脂質の例には、ホスファチジン酸、すなわち、グリセロール-リン酸と脂肪酸とのジエステル;スフィンゴ脂質、例えばスフィンゴミエリン、すなわち、脂肪酸とのグリセロールジエステル残基がセラミド鎖で置換しているそのホスファチジルコリン類似体;カルジオリピン、すなわち、1,3-ジホスファチジルグリセロールと脂肪酸とのエステル;糖脂質、例えばガングリオシドGM1(またはGM2)またはセレブロシド;糖脂質;スルファチドおよびグリコスフィンゴ脂質がある。
【0015】
本明細書で用いている用語リン脂質には、単独でもしくは混合物として用いることができる天然、半合成、または合成生成物が含まれる。
【0016】
天然リン脂質の例には、天然レシチン (ホスファチジルコリン (PC)誘導体)、例えば典型的にはダイズまたは卵黄レシチンがある。
【0017】
半合成リン脂質の例には、天然レシチンの部分的または完全な水素化誘導体がある。好ましいリン脂質は、ホスファチジルコリン、エチルホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、またはスフィンゴミエリンの脂肪酸ジ-エステルがある。
【0018】
好ましいリン脂質の例には、例えば、ジラウロイル-ホスファチジルコリン (DLPC)、ジミリストイル-ホスファチジルコリン (DMPC)、ジパルミトイル-ホスファチジルコリン (DPPC)、ジアラキドイル-ホスファチジルコリン (DAPC)、ジステアロイル-ホスファチジルコリン (DSPC)、ジオレオイル-ホスファチジルコリン (DOPC)、1,2 ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン (エチル-DSPC)、ジペンタデカノイル-ホスファチジルコリン (DPDPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン (MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイル-ホスファチジルコリン (PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイル-ホスファチジルコリン (PSPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン (SPPC)、1-パルミトイル-2-オレイルホスファチジルコリン (POPC)、1-オレイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン (OPPC)、ジラウロイル-ホスファチジルグリセロール (DLPG)およびそのアルカリ金属塩、ジアラキドイルホスファチジル-グリセロール (DAPG)およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジルグリセロール (DMPG)およびそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール (DPPG)およびそのアルカリ金属塩、ジステアロイルホスファチジルグリセロール (DSPG)およびそのアルカリ金属塩、ジオレオイル-ホスファチジルグリセロール (DOPG)およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジン酸 (DMPA)およびそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジン酸 (DPPA)およびそのアルカリ金属塩、ジステアロイル ホスファチジン酸 (DSPA)、ジアラキドイルホスファチジン酸 (DAPA)およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン (DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン (DPPE)、ジステアロイルホスファチジル-エタノールアミン (DSPE)、ジオレイルホスファチジル-エタノールアミン (DOPE)、ジアラキドイルホスファチジルエタノールアミン (DAPE)、ジリノレイルホスファチジルエタノールアミン (DLPE)、ジミリストイルホスファチジルセリン (DMPS)、ジアラキドイルホスファチジルセリン (DAPS)、 ジパルミトイルホスファチジルセリン (DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン (DSPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン (DOPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン (DPSP)、およびジステアロイルスフィンゴミエリン (DSSP)、ジラウロイル-ホスファチジルイノシトール (DLPI)、ジアラキドイルホスファチジルイノシトール (DAPI)、ジミリストイルホスファチジルイノシトール (DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール (DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール (DSPI)、ジオレオイル-ホスファチジルイノシトール (DOPI)がある。
【0019】
特に好ましいリン脂質は、DAPC、DSPC、DPPA、DSPA、DMPS、DPPS、DSPS、およびエチル-DSPCである。最も好ましいのは、DPPSまたはDSPCである。
【0020】
リン脂質の混合物は、例えば、DPPE、DPPC、DSPC、および/またはDAPCと、DSPS、DPPS、DSPA、DPPA、DSPG、DPPG、エチル-DSPC、および/またはエチル-DPPCとの混合物などを用いることもできる。
【0021】
好ましい態様において、該リン脂質は微小胞の安定化膜の主成分であり、ガス封入微小胞の外皮を形成する成分の総量の少なくとも50% (w/w)に達する。ある好ましい態様において、実質的に外皮全体(すなわち、少なくとも90%〜100%(重量))をリン脂質で形成することができる。
【0022】
該リン脂質は、常套的に、上記の両親媒性化合物のいずれかと組み合わせて用いることができる。すなわち、例えば、脂質、例えば、コレステロール、エルゴステロール、フィトステロール、シトステロール、ラノステロール、トコフェロール、プロピルガレート、またはアスコルビルパルミテート、脂肪酸、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、およびそれらの誘導体、またはブチル化ヒドロキシルトルエン、および/または他の非リン脂質化合物は、所望により1またはそれ以上の前記リン脂質に0〜50%(重量)、好ましくは25%(重量)以下の割合で加えることができる。パルミチン酸が特に好ましい。
【0023】
好ましい態様によれば、本発明の組成物を形成する微小胞の外皮には全体的に(正または負の)正味の荷電を有する化合物を含む。該化合物は、荷電両親媒性物質、好ましくは脂質、またはリン脂質でありうる。
【0024】
全体的に負の荷電を保持するリン脂質の例には、以下の化合物の誘導体、特に脂肪酸ジ-エステル誘導体がある:ホスファチジルセリン、例えば、DMPS、DPPS、DSPS;ホスファチジン酸、例えば、DMPA、DPPA、DSPA;ホスファチジルグリセロール、例えば、DMPG、DPPG、およびDSPG;またはホスファチジルイノシトール、例えば、DMPI、DPPI、またはDPPI。また、上記のリン脂質のリソ形、例えば、リソホスファチジルセリン誘導体 (例えば、リソ-DMPS、-DPPS、または-DSPS)、リソホスファチジン酸誘導体 (例えば、リソ-DMPA、-DPPA、または-DSPA)、およびリソホスファチジルグリセロール誘導体 (例えば、リソ-DMPG、-DPPG、および-DSPG)を、好都合に負に荷電した化合物として用いることができる。負に荷電した脂質の例には、胆汁酸塩、例えばコール酸塩、デオキシコール酸塩、またはグリココール酸塩;および(C12-C24)、好ましくは(C14-C22)脂肪酸塩、例えばパルミチン酸塩、ステアリン酸塩、1,2-ジパルミトイル-sn-3-スクシニルグリセロール塩、または1,3-ジパルミトイル-2-スクシニルグリセロール塩がある。
【0025】
好ましくは、負に荷電した化合物は、DPPA、DPPS、DSPG、またはその混合物から選ばれる。
【0026】
負に荷電した成分は、典型的には一価(例えば、アルカリ金属またはアンモニウム)、二価(例えば、アルカリ土類金属)、または三価(例えば、アルミニウム)でありうる対応する陽対イオンと結合している。好ましくは該対イオンは、アルカリ金属カチオン、例えば、Li+、Na+、またはK+から選ばれ、より好ましくはNa+である。
【0027】
全体的に正の荷電を有するリン脂質の例には、エチルホスファチジルコリンの誘導体、特に、エチルホスファチジルコリンと脂肪酸とのジエステル、例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン (エチル-DSPCまたはDSEPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン (エチル-DPPCまたはDPEPC)がある。負の対イオンは、好ましくはハロゲンイオン、特に塩素または臭素である。正に荷電した脂質の例には、少なくとも1の(C10-C20)、好ましくは(C14-C18)のアルキル鎖、例えば、モノまたはジ-塩化ステアリルアンモニウム、塩化モノ-またはジ-ヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド (DDAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド (CTAB)を含むハロゲン対イオン(例えば、塩素もしくは臭素)とのアルキルアンモニウム塩がある。正に荷電した脂質のさらなる例には、1または好ましくは2の(C10-C20)、好ましくは(C14-C18)の、(C3-C6)アルキレン架橋を介してN原子と結合したアシル鎖、を含むハロゲン対イオン (例えば、塩素、または臭素)を有する第3もしくは第4アンモニウム塩、例えば1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン (DSTAP)、1,2-ジパルミトイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン (DPTAP)、1,2-オレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン (DOTAP)、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン (DSDAP)などがある。
【0028】
正に荷電した成分は、典型的には1価(例えば、ハロゲン)、2価(例えば、サルフェート)、または3価(例えば、ホスフェート)でありうる対応する負の対イオンと結合している。好ましくは、対イオンはハロゲンイオン、例えば、F-(フッ素)、Cl-(塩素)、またはBr-(臭素)から選ばれる。
【0029】
特にリン脂質および/または脂質の中性および荷電化合物の混合物を十分に用いて微小胞外皮を形成することができる。荷電脂質またはリン脂質の量は、脂質およびリン脂質の総量の約95%〜約1%(モル)、好ましくは80%〜20%(モル)で変化しうる。
【0030】
好ましい中性リン脂質および荷電脂質もしくはリン脂質の混合物には、例えば、DPPG/DSPC、DPPG/DAPC、DPPS/DSPC、DPPS/DAPC、DPPE/DPPG、DSPA/DAPC、DSPA/DSPC、およびDSPG/DSPCがある。
【0031】
本発明によれば、水性サスペンジョン中に含まれる両親媒性物質は、さらに0.15%〜1.0%の親水性ポリマーを保持する脂質(以後、本明細書では「ポリマー修飾脂質」という)を含む。好ましくは該濃度は、少なくとも0.3%(モル)、より好ましくは約0.5%(モル)である。該脂質は、好ましくはリン脂質、より好ましくはホスファチジルエタノールアミン、特にホスファチジルエタノールアミンの脂肪酸ジ-エステル、例えば上記のDMPE、DPPE、DSPE、DOPE、DAPE、またはDLPEである。該脂質と結合した親水性ポリマーは、好ましくはそれと共有結合している。該ポリマーは、分子量が約500〜約50’000ダルトン、好ましくは約1’000〜約20’000ダルトン、さらにより好ましくは約2’000〜約10’000ダルトンである。適切な親水性ポリマーは、キチン、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール (PEG)、ポリプロピレングリコール (PPG)、ポリビニルアルコール (PVA)、ポリビニルピロリドン (PVP)、ポリアクリルアミド、ポリ(アセチエチレンイミン)、ポリエチレンイミン (PEI)、ポリシアノアクリレート、ポリ乳酸 (PLA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド) (PLGA)、およびそれらの混合物およびコポリマーであり、それらから選ぶことができる。該ポリマーは、好都合には生体適合性および/または生分解性ポリマーでありうる。好ましくは、該親水性ポリマーはPEGであり、分子量が1’000〜約10’000ダルトン、好ましくは4’000〜7’500ダルトンである。ポリマー修飾脂質の好ましい例には、ポリエチレングリコール (PEG)で修飾されたホスファチジルエタノールアミン、すなわち、親水性エタノールアミン部分が種々の分子量のPEG分子と共有結合しているホスファチジルエタノールアミンがある。用語PEGは、保護基または反応基を有するポリエチレングリコールを含むポリエチレングリコールおよびそのあらゆる修飾された修飾物を表す。例えば、PEGは、MPEG、すなわち、その末端ヒドロキシル部分がメチル化されているポリエチレングリコールを含む。好ましい態様によれば、ホスファチジルエタノールアミン、特にDPPEまたはDSPEは、種々の分子量のポリエチレングリコール、例えばPEG2000、PEG4000、またはPEG5000 (すなわち、平均分子量がそれぞれ2000、4000、または5000のポリエチレングリコール)と結合して対応する分子量の各ペグ化リン脂質 (例えば、DSPE-PEGまたはDPPE-PEG)を形成する。適切な市販のペグ化脂質が例えばGenzyme (Massachusetts、USA)から利用可能である。他の適切なポリマー修飾脂質は、PEGが脂肪酸とエステル結合を介して共有結合しているペグ化脂質(例えば、ポリオキシエチレングリコールパルミテート、ステアレート、ラウレート、またはオレエート)(例えば商標名Myrj(登録商標)で市販されている)、またはPEGが脂肪酸アルコールとエーテル結合を介して共有結合しているペグ化脂質(例えば、ポリオキシエチレングリコールラウリル-、セチル-、ステアリル-、もしくはオレイル-エーテル)(例えば、商標名Brij(登録商標)で市販されている)である。
【0032】
先に示したように、本出願人は、低量のポリマー修飾脂質を用いてより高量のポリマー修飾脂質を含む同等の微小胞と少なくとも同様に安定なガス封入微小胞を得ることができることをみいだした。さらに、そのような低量のポリマー修飾物は、より高量のポリマー修飾脂質を含む組成物に対して、比較的多数のガス封入微小胞を得るのを可能にし、より高容量のガスを微小胞に取り込むのを可能にする。
【0033】
一般的に、低量の、高分子量ポリマーを保持する脂質を、低分子量ポリマーを保持する対応する脂質に対して用い、同様の結果を得ることができる。
【0034】
例えば、特にポリマー修飾脂質が上記のPEGと結合したリン脂質(例えば、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン)であるときは、その相対量を最大約5.0%(モル)まで、好ましくは最大3.0%(モル)まで増加させることが望ましいかもしれない。
【0035】
他の賦形剤または添加剤は、微小胞の乾燥製剤中に存在するか、またはその再構成に用いる水性担体と一緒に加えてよい(微小胞の安定化外皮の形成においては必ずしも含まれない(または部分的にのみ含む))。これらには、pH調節剤、浸透圧調節剤、増粘剤、乳化剤、増量剤などが含まれ、常套的量で用いることができる。例えば、ポリオキシプロピレングリコールおよびポリオキシエチレングリコール、ならびにそのコポリマーのような化合物を用いることができる。増粘剤または安定化剤の例には、直鎖状および架橋ポリ-およびオリゴ-サッカライド、糖、親水性ポリマー、例えばポリエチレングリコールから選ばれる化合物がある。
【0036】
ガス封入微小胞の製造は凍結乾燥またはスプレードライ工程を含んでよいので、製剤中に凍結乾燥添加剤、例えば凍結防止および/またはリオプロテクティブ(lyoprotective)効果を有する物質、および/または増量剤、例えばアミノ酸、例えばグリシン;炭化水素、例えば糖、例えばシュークロース、マンニトール、マルトース、トレハロース、グルコース、ラクトース、もしくはシクロデキストリン、または多糖、例えばデキストラン;またはポリグリコール、例えばポリエチレングリコールを含むことが好都合かもしれない。
【0037】
あらゆる生体適合ガス、ガス前駆体、またはその混合物を用いて本発明の微小胞を製造することができる。
【0038】
該ガスには、例えば空気;窒素;酸素;二酸化炭素;水素;亜酸化窒素;希ガスもしくは不活性ガス、例えばヘリウム、アルゴン、キセノン、もしくはクリプトン;放射性ガス、例えばXe133もしくはKr81;過分極希ガス、例えば過分極ヘリウム、過分極キセノン、もしくは過分極ネオン;低分子量炭化水素(例えば炭素数7以下の)、例えば、アルカン、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、もしくはイソペンタン、シクロアルカン、例えばシクロブタンもしくはシクロペンタン、アルケン、例えば、プロペン、ブテン、もしくはイソブテン、またはアルキン、例えばアセチレン;エーテル;ケトン;エステル;ハロゲン化ガス、好ましくはフッ素化ガス、例えば、ハロゲン化、フッ素化、もしくはペルフルオロ(prefluorinated)低分子量炭化水素 (例えば炭素数7以下の);または前記のあらゆる混合物が含まれうる。ハロゲン化炭化水素を用いる場合は、該化合物中のハロゲン原子の好ましくは少なくともいくつか、より好ましくはすべてがフッ素原子である。
【0039】
特に超音波画像化の分野では、フッ素化ガス、特にペルフルオル化ガスが好ましい。フッ素化ガスには、少なくとも1のフッ素原子を含む物質、例えば、フッ素化炭化水素 (1またはそれ以上の炭素原子およびフッ素を含む有機化合物);6フッ化イオウ;フッ素化、好ましくはペルフルオル化、ケトン、例えばペルフルオロアセトン;およびフッ素化、好ましくはペルフルオル化エーテル、例えばペルフルオロジエチルエーテルが含まれる。好ましい化合物は、ペルフルオル化ガス、例えば、SF6もしくはペルフルオロ炭素 (ペルフルオル化炭化水素)、すなわち、すべての水素原子がフッ素原子で置換されている炭化水素が含まれ、これらは例えばEP 0554 213(この内容は本明細書の一部を構成する)に開示しているように特に安定な微小胞サスペンジョンを形成することが知られている。
【0040】
用語ペルフルオロ炭素には、飽和、不飽和、および環状ペルフルオロ炭素が含まれる。生体適合、生理学的に許容されるペルフルオロ炭素の例には、ペルフルオロアルカン、例えば、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン (例えば、ペルフルオロ-n-ブタン、所望により他のイソマー、例えばペルフルオロ-イソブタンと混合している)、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、またはペルフルオロヘプタン;ペルフルオロアルカン、例えば、ペルフルオロプロペン、ペルフルオロブテン(例えば、ペルフルオロブタ-2-エン)、もしくはペルフルオロブタジエン;ペルフルオロアルキン (例えば、ペルフルオロブタ-2-イン);またはペルフルオロシクロアルカン(例えば、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロメチルシクロブタン、ペルフルオロジメチルシクロブタン、ペルフルオロトリメチルシクロブタン、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロメチルシクロペンタン、ペルフルオロジメチルシクロペンタン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、およびペルフルオロシクロヘプタン)がある。好ましい飽和ペルフルオロ炭素は式:CnFn+2を有する(式中、nは1〜12、好ましくは2〜10、最も好ましくは3〜8、およびさらにより好ましくは3〜6である。)。適切なペルフルオロ炭素には、例えばCF4、C2F6、C3F8、C4F8、C4F10、C5F12、C6F12、C6F14、C7F14、C7F16、C8F18、およびC9F20が含まれる。
【0041】
特に、好ましいガスは、SF6、またはCF4、C2F6、C3F8、C4F8、C4F10、もしくはそれらの混合物から選ばれるペルフルオロ炭素であり、SF6、C3F8、またはC4F10が特に好ましい。
【0042】
上記ガスのいずれかの混合物をあらゆる比で用いることも好都合かもしれない。例えば、該混合物は、通常のガス、例えば、窒素、空気、もしくは二酸化炭素、および安定な微小胞サスペンジョンを形成するガス、例えば、6フッ化イオウもしくは上記のペルフルオロ炭素を含みうる。適切なガス混合物の例は、例えばWO 94/09829に記載されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。以下の組み合わせが特に好ましい:ガス(A)および(B)の混合物(ここで、ガス(B)は、好ましくはSF6、CF4、C2F6、C3F6、C3F8、C4F6、C4F8、C4F10、C5F10、C5F12、もしくはその混合物から選ばれるフッ素化ガスであり、(A)は、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、もしくはその混合物から選ばれる。ガス(B)の量は、全混合物の約0.5%〜約95%v/v、好ましくは約5%〜80%でありうる。
【0043】
ある場合には、ガス状物質の前駆体(すなわち、in vivoでガスに変換されることができる物質)を含むことが望ましいかもしれない。好ましくはガス状前駆体およびそれから誘導されるガスは生理学的に許容される。ガス状前駆体は、pH、光、温度などで活性化することができる。例えば、あるペルフルオロ炭素は温度活性化ガス状前駆体として用いることができる。これらペルフルオロ炭素、例えば、ペルフルオロペンタン、またはペルフルオロヘキサンは、室温(すなわち、該物質が製造および/または保存される温度)以上、体温以下の液体/ガス相遷移温度を有し、液体/ガス相遷移を受けてヒト体内でガスに変換される。
【0044】
超音波検査では、生体適応ガスまたはガス混合物は、好ましくは、空気、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、クリプトン、キセノン、アルゴン、メタン、ハロゲン化炭化水素 (フッ素化ガス、例えばペルフルオロ炭素および6フッ化イオウを含む)、またはそれらの混合物から選ばれる。好都合には、ペルフルオロ炭素 (特にC4F10またはC3F8)またはSF6は、所望により空気または窒素と混合して用いることができる。
【0045】
MRIで用いるには、微小胞は、好ましくは、所望により空気、CO2、酸素、窒素、ヘリウム、キセノン、または上記のハロゲン化炭化水素のいずれかと混合した、過分極希ガス、例えば過分極ネオン、過分極ヘリウム、過分極キセノン、またはその混合物を含む。
【0046】
シンチグラフィーに用いるには、微小胞は、好ましくは放射性ガス、例えばXe133もしくはKr81またはその混合物を含み、所望により空気、CO2、酸素、窒素、ヘリウム、クリプトン、または上記のハロゲン化炭化水素のいずれかと混合される。
【0047】
本発明の微小胞は、当該分野で知られたあらゆる方法により製造することができる。典型的には、該製造方法には、上記の両親媒性物質を含む乾燥粉末物質の形の前駆体の、好ましくは該物質を含む水性または有機サスペンジョンの凍結乾燥(freeze drying)による製造が含まれる。
【0048】
例えば、WO 91/15244に記載のごとく、フィルム形成両親媒性化合物は、最初にあらゆるリポソーム形成法により層状形に変換することができる。そのために、フィルム形成脂質および所望により他の添加剤(例えば、増粘剤、非フィルム形成界面活性剤、電解質など)を含む水性溶液を、高速機械的ホモゲナイゼーション、または音波もしくは超音波周波数下のソニケーション、次いで凍結乾燥にかけて遊離流動性粉末を形成することができ、次いでこれをガス存在下で保存する。所望により、例えばUS 5,597,549に記載の洗浄工程を凍結乾燥前に行うことができる。
【0049】
別の態様(例えばUS 5,597,549に記載の)によれば、フィルム形成化合物および親水性安定化剤(例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グリコール酸、リンゴ酸、またはマルトール)を有機溶媒(例えば、第3ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、またはC2Cl4F2)に溶解し、次いで、該溶液を凍結乾燥して乾燥粉末を形成することができる。
【0050】
好ましくは、国際特許出願WO2004/069284に開示しているようにリン脂質(上記のものから選ばれ、上記荷電リン脂質の少なくとも1を含む)およびリオプロテクト剤(例えば上記のもの、特に炭化水素、糖アルコール、ポリグリコール、およびその混合物)は、水と混和しない有機溶媒(例えば、分岐鎖または直鎖アルカン、アルケン、シクロ-アルカン、芳香族炭化水素、アルキルエーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、ペルフルオル化炭化水素、またはその混合物)と水とのエマルジョン中に撹拌下で分散させることができる。該エマルジョンは、少なくとも1のリン脂質の存在下で水性媒質および溶媒を当該分野で知られたあらゆる適切なエマルジョン生成技術、例えばソニケーション、振盪、高圧ホモゲナイゼーション、ミクロ混合、膜乳化、高速撹拌、または高剪断混合にかけて得ることができる。例えば、電動式ホモゲナイザー(rotor-stator homogenizer)、例えば、Polytron(登録商標)PT3000を用いることができる。電動式ホモゲナイザーの撹拌速度は、エマルジョンの成分、エマルジョンの容量、有機溶媒の相対容量、エマルジョンを含む容器の直径、およびエマルジョン中の溶媒の微小滴の目的とする最終直径に応じて選ぶことができる。あるいはまた、ミクロ混合技術を用いて例えば、有機溶媒を第1注入口(例えば、流速0.05〜5ml/minで)からミキサーに導入し、次いで水性層を第2注入口(例えば、流速2〜100ml/minで)に導入することにより、混合物を乳化することができる。次に、ミクロミキサーの排出口を水性層を含む容器に接続し、直ぐに容器から取り出し、ミクロミキサーに導入した水性層が増加した量の乳化溶媒を含むようにする。溶媒の全容量を加えたら、容器からのエマルジョンを、さらに予め決定した時間、例えば、5〜120分間ミクロミキサーを介して再循環させ、エマルジョンを完結させることができる。エマルジョン技術に応じて、有機溶媒を、乳化工程中徐々に、または乳化工程開始前に一度に導入することができる。あるいはまた、水性媒質を、水非混和性溶媒に乳化工程中徐々に、または乳化工程開始前に一度に加えることができる。好ましくは、該リン脂質を水性溶媒中に分散させ、次いで有機溶媒と混合する。あるいはまた、該リン脂質を有機溶媒に分散させるか、乳化工程中またはその前に水性-有機混合物に別個に加えることができる。そうして得られたミクロエマルジョンは、リン脂質物質(および所望により他の両親媒性フィルム形成化合物および/または添加剤)により取り囲まれ安定化された溶媒の微小滴を含み、次いでこれを常套的技術に従って凍結乾燥して凍結乾燥物質を得、これを保存し(例えば、適切なガスの存在下でバイアル中に)、次いでこれを水性担体に再構成して、最終的にガス封入微小胞サスペンジョンを得ることができる(ここで、該微小胞の容積およびサイズ分布は、微小滴のサスペンジョンの容積およびサイズ分布と実質的に同等である)。
【0051】
ガス封入微小胞のさらなる製造方法には、リン脂質を含む水性媒質(および所望により他の両親媒性フィルム形成化合物および/または添加剤)を望ましいガスの存在下で制御された高撹拌エネルギー(例えば、電動ミキサーにより)にかけてガス微小胞分散液を生成し、次いで、得られた分散液を凍結乾燥して再構成可能な乾燥生成物を得ることが含まれる。この方法の例は、例えばWO97/29782に記載されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。
【0052】
スプレー乾燥技術(例えばUS 5,605,673に記載している)を用いて、生理学的水性担体と接触させて再構成し、ガス封入微小胞を得ることができる乾燥粉末を得ることもできる。
【0053】
上記技術のいずれかを用いて得られた乾燥または凍結乾燥生成物は、一般的には粉末またはケーキの形であり、望ましいガスと接触させて(例えばバイアル中に)保存することができる。該生成物は、上記ガスのいずれかの存在下で適切な生理学的に許容される水性液体担体(典型的には注射可能な)中で容易に再構成することができ、該サスペンジョンを静かに撹拌するとガス封入微小胞が形成される。
【0054】
本発明の微小胞は、所望により、微小胞構造中に含まれるかまたはそれと結合している標的化リガンド、診断薬、および/または生物活性剤を含みうる。
【0055】
用語「標的化リガンド」には、その意味内に、生体内のあらゆる生物学的もしくは病的部位への本発明組成物の微小胞の標的化活性(例えば選択的結合を含む)を有するか、またはそれを促進することができるあらゆる化合物、部分、または残基が含まれる。標的化リガンドが結合することができる標的には、組織、例えば心筋組織(心筋細胞およびカルディオミオサイト(cardiomyocite)を含む)、膜組織(内皮および上皮を含む)、層(lamina)、結合組織(間質組織を含む)、または腫瘍;血栓;およびレセプター、例えばペプチドホルモン、神経伝達物質、抗原、補体断片、および免疫グロブリンの細胞表面レセプター、ならびにステロイドホルモンの細胞質レセプターが含まれる。
【0056】
標的化リガンドは、合成、半合成、または天然でありうる。標的化リガンドとして用いることができる材料もしくは物質には、例えば限定されるものではないが、抗体、抗体断片、レセプター分子、レセプター結合分子、糖タンパク質、およびレクチンを含むタンパク質;オリゴペプチドおよびポリペプチドを含むペプチド;ペプチド模倣物;単糖および多糖を含む糖;ビタミン;ステロイド、ステロイド類似体、ホルモン、補助因子、生物活性剤;ならびにヌクレオシド、ヌクレオチド、およびポリヌクレオチドを含む遺伝物質が含まれる。
【0057】
適切な標的および標的化リガンドの例は、例えば米国特許6,139,819に記載されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。
【0058】
標的化リガンドは、微小胞の他の成分と混合する化合物自体であるか、または微小胞を形成するために用いる両親媒性分子と結合している化合物でありうる。
【0059】
ある好ましい態様において、標的化リガンドは、共有結合を介して微小胞の両親媒性分子と結合しうる。その場合は、両親媒性分子上に存在する必要がある特異的反応部分は、それと結合している特定の標的化リガンドに依存するだろう。例として、標的化リガンドがアミノ基を介して両親媒性分子と結合することができる場合は、両親媒性分子の適切な反応部分は、イソチオシアネート基(チオウレア結合を形成する)、反応性エステル(アミド結合を形成するための)、アルデヒド基(アルキルアミン結合に還元されるイミン結合を形成するための)などであってよく、標的化リガンドがチオール基を介して両親媒性分子と結合することができる場合は、両親媒性分子のための適切な相補性反応部分は、ハロアセチル誘導体またはマレイミド(チオエーテル結合を形成するための)を含み、標的化リガンドがカルボキシル基を介して両親媒性分子と結合することができる場合は、両親媒性分子のための適切な反応部分はアミンおよびヒドラジド(アミドまたはアルキルアミド結合を形成するための)であるかもしれない。目的とする標的化リガンドと共有結合するために、微小胞を形成する両親媒性化合物の少なくとも部分は適切な反応部分を含むものとし、相補的官能性を含む標的化リガンドは、既知の技術にしたがって、例えば微小胞の両親媒性成分を含む分散液に加えることにより該反応部分と結合するだろう。好ましくは、両親媒性化合物は、親水性ポリマーを保持する脂質、例えば、先に記載のもの、好ましくはペグ化リン脂質である。この場合、標的化リガンドは親水性ポリマー上の適切な反応部分と結合する。微小胞を製造する前に両親媒性化合物を目的とする標的化リガンドと混合し、得られた混合物を微小胞の製造工程に用いることができる。あるいはまた、標的化リガンドを微小胞の製造工程中に各両親媒性化合物と結合させることができる。
【0060】
別の態様によれば、標的化リガンドを、物理的および/または静電気的相互作用により微小胞と適切に結合させることもできよう。例として、相補性部分に対する高親和性および選択性を有する官能性部分を両親媒性分子に導入することができるが、該相補性部分は標的化リガンドと結合するだろう。例えば、アビジン(またはストレプトアビジン)部分(ビオチンに対する高親和性を有する)は、リン脂質(またはペグ化リン脂質)と共有結合することができるが、相補性ビオチン部分は適切な標的化リガンド、例えばペプチドまたは抗体、に組み込むことができる。すなわち、ビオチン標識標的化リガンドは、アビジン-ビオチン結合系により微小胞のアビジン標識リン脂質と結合する。あるいはまた、リン脂質と標的化リガンドはともに、ビオチン部分を提供し、次いでアビジン(2つのビオチン部分を架橋することができる二機能性成分である)により互いに結合することができる。リン脂質とペプチドのビオチン/アビジン結合の例も上記US 6,139,819に開示されている。あるいはまた、ファン・デル・ワールス相互作用、静電気的相互作用、および他の結合プロセスは、両親媒性分子と標的化リガンドを結びつけるか結合させることができる。別の態様において、標的化リガンドは、微小胞を形成する成分と混合し、最終的に、例えば、国際特許出願WO 98/18501または99/55383(これらの内容は本明細書の一部を構成する)に開示のリポペプチドのような、微小胞構造に組み込まれる化合物でありうる。
【0061】
あるいはまた、最初に、標的化リガンドの対応する相補性部分と相互作用することができる適切な部分を有する化合物(脂質またはポリマー修飾脂質)を含む微小胞を製造することができ、次いで目的とする標的化リガンドを微小胞サスペンジョンに加え、微小胞上の対応する相補性部分と結合させる。微小胞が目指す適切な特異標的の例には、例えばフィブリンおよび活性化血小板上のGPIIbIIIa結合レセプターがある。実際に、フィブリンおよび血小板は、一般的に「血栓」、すなわち血流中に形成され、血管閉塞を生じる凝血中に存在する。適切な結合ペプチドは、例えば上記US 6,139,819に開示されている。フィブリン標的化に特異的なさらなる結合ペプチドは、例えば国際特許出願WO 02/055544に開示されている(この内容は本明細書の一部を構成する)。
【0062】
重要な標的の他の例には、不安定プラーク中のレセプター、腫瘍特異的レセプター、例えばキナーゼドメイン領域(KDR)およびVEGF(血管内皮成長因子)/KDR複合体が含まれる。KDRまたはVEGF/KDR複合体に適した結合ペプチドは、例えば、国際特許出願WO 03/74005およびWO 03/084574に開示されている(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。
【0063】
用語「診断薬」には、その意味内に、患者の内部領域を画像化し、および/または患者における疾患の存在の有無を診断するための方法と組み合わせて用いることができるあらゆる化合物、組成物、または粒子が含まれる。特に、本発明の組成物中の微小胞に組み込まれるかまたは微小胞と結合する診断薬には、磁気共鳴映像(画像化)法、X線、特にコンピュータ化トモグラフィ、光学画像化、核画像化、または分子画像化を含む診断技術に関連して画像化の増強を可能にするあらゆる化合物、組成物、または粒子がある。適切な診断薬の例には、例えばマグネタイト・ナノ粒子、ヨウ化化合物、例えばIomeprol(登録商標)、または常磁性イオン錯体、例えば、疎水性ガドニウム錯体がある。
【0064】
用語「治療薬」には、その意味内に、あらゆる治療的適用、例えば患者の疾患の治療方法に用いることができるあらゆる物質、組成物、または粒子、ならびにin vitroおよび/またはin vivoで生物学的効果を発揮することができるかまたは発揮するのに関与するあらゆる物質が含まれる。すなわち、治療剤には、患者のあらゆる病的状態(病気、苦痛、病変、または損傷を含む)の治療(診断、予防、緩和、痛みの除去、または治癒を含む)に用いることができるあらゆる化合物または物質が含まれる。治療薬の例には、薬剤、調合剤、生物活性剤、細胞毒性剤、化学療法剤、放射線療法剤、タンパク質、天然もしくは合成ペプチド(オリゴペプチドおよびポリペプチドを含む)、ビタミン、ステロイド、および遺伝物質(ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、およびプラスミドを含む)がある。これらのうち、薬剤または調合剤が好ましい。
【0065】
本発明の微小胞は、例えばリポソームまたはミセルのような他の成分と結合させることもでき、該成分は単に微小胞と混合するか、または微小胞の安定化膜との物理的および/または化学的相互作用を介して、例えば共有結合、静電気的もしくはイオン的相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、疎水性または親水性相互作用を介してアセンブリーを形成することができる。これら結合微小胞組成物およびその製造法の例は、例えば米国特許6,258,378および国際特許出願WO2005/063305およびWO2005/063306に開示されている(これらの内容は本明細書の一部を構成する)。微小胞と関連づけられるかまたは結合するこれらの成分は、上記標的化リガンド、生物活性剤の診断薬のいずれかを保持することができ、該結合成分を介して微小胞と結合する。例えば、マグネタイト・ナノ粒子を荷電両親媒性物質、例えば、先に記載のものと混合して該粒子を安定化させ、それらを水性溶液中分散状態に保ち(例えばUS 5,545,395(この内容は本明細書の一部を構成する)に開示の)、それを微小胞と結合させる。あるいはまた、ガドリニウム錯体を欧州特許EP 804 251(この内容は本明細書の一部を構成する)に記載のごとく適切なミセル形成化合物と混合し、形成されたミセルを微小胞と結合させることができる。同様に、治療薬はミセルもしくはリポソームサスペンジョンとして製造することができ、それ自体が微小胞と結合している。
【0066】
本発明の微小胞は、好ましくは乾燥粉末形で保存され、それ自体が、好ましくは注射により投与するための2成分の診断および/または治療用キットに好都合に包装することができる。該キットは、好ましくは選択した微小胞形成ガスと接する凍結乾燥組成物を含む第1容器と、生理学的に許容される水性担体を含む第2容器を含む。適切な担体の例には、水、典型的には無菌の、発熱物質不含水(中間凍結乾燥生成物の汚染を可能な限り防ぐために)、水性溶液、例えば生理食塩水(好都合には、注射用最終生成物が低張でないように平衡化してよい)、または1またはそれ以上の等張性調節物質(例えば塩もしくは糖、糖アルコール、グリコール、または他の非イオン性ポリオール物質(例えばグルコース、シュークロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水性溶液がある。該2成分キットは、2つの分離した容器または二室(dual-chamber)容器を含みうる。前者では容器は好ましくは通常の隔壁封入バイアルであり、凍結乾燥残渣を含むバイアルが隔壁で密封され、それを通して担体液を所望により予め充填したシリンジを用いて注射することができる。その場合、第二成分の容器として用いるシリンジは、造影剤を注射するのにも用いられる。後の場合は、二室容器は好ましくは二室シリンジであり、凍結乾燥物を再構成し、次いで適切に混合または静かに撹拌すると、該容器を造影剤を注射するのに直接用いることができる。
【0067】
本発明の微小胞は、特に超音波および磁気共鳴を含む種々の診断および/または治療技術を用いることができる。用語診断的画像化には、その意味内に、造影剤の使用により、前臨床および臨床研究目的の画像化を含む、動物(ヒトを含む)体の部分もしくは一部の可視化を増強することができるあらゆる方法が含まれる。用語治療的画像化には、その意味内に、造影剤の使用(例えば、生物活性化合物を選択した標的部位もしくは組織に送達するための)を含み、in vitroおよび/またはin vivoの生物学的効果を発揮することができるかまたは発揮するのに関与する、患者の疾患のあらゆる治療方法が含まれる。考えられる他の診断的画像化適用には、シンチグラフィー、光画像化、およびX線画像化(X線位相コントラスト画像化を含む)が含まれる。望ましい3次元画像化を用いる場合は、種々の画像化技術を、例えば、基本および高調和(harmonic)Bモード画像化、パルスまたは位相反転画像化、および基礎および高調和ドップラー画像化を含む超音波適用に用いることができる。本発明の微小胞は、典型的には、例えば、各組成物、画像化する組織や器官、および/または選択した画像化技術に応じてガスを約0.01〜約1.0μl/kg患者の濃度で投与することができる。もちろん、この一般的濃度は、例えば、信号をカラードップラーやパワーパルス変換のように非常に低用量で観察することができる時には、特定の画像化適用に応じて変化させることができる。
【0068】
以下の実施例は本発明をさらに例示するのを役立つであろう。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下の実施例では、サスペンジョン中のガス封入微小胞の数およびその中に含まれるガスの容量は、コールターカウンター(測定範囲が0.7〜20μmのアパチャー30μmのCounter Mark II装置)により決定される。
【実施例1】
【0070】
4gのグリセロールおよび1gのポリプロピレングリコールを含む100mLの水性サスペンジョンに120mgのDAPCおよび70mgのDPPSを溶解させることによりサスペンジョンを製造する。混合物を70℃に加熱し、次いで0.2μmのポリカーボネート膜(Nuclepore(登録商標))から3回押し出した。次に、得られるサスペンジョンをC4F10ガス下でMegatron(登録商標)(20'000 rpmおよび3min.)を用いる高速機械的撹拌によりホモゲナイズする。得られるサスペンジョンを遠心して過剰な脂質粒子、グリセロール、およびプロピレングリコールを除去し、10%デキストラン(MW15000)に再懸濁し、次いで10mLのグラスバイアルに分配する。バイアル(それぞれ2mLのサスペンジョンを含む)を-45℃で凍結し、20mbarの減圧下で凍結乾燥する。得られた乾燥試料をバイアル中でC4F10に曝露し、次いで2mLの無菌水で再構成する。
【0071】
上記のごとく測定したサスペンジョン中の微小胞濃度は約4.26・109個/mlであった。この量を表1の結果では100%に正規化する。この調製物を調製物1Aとする。
【0072】
上記製造法を、最初の混合物に約0.5%(モル) (3.2 mg)、1%(モル) (6.6 mg)、2%(モル) (13 mg)、3%(モル) (20 mg)、および5%(モル) (34 mg)のDPPE-PEG2000を加えて反復し、それぞれ対応する調製物1B、1C、1D、1E、および1Fを得る。表1は、このさらなる4調製物について測定した微小胞の正規化数を示す。

【0073】
上記表から推測できるように、過剰量のポリマー修飾脂質は得られる微小胞の量に悪影響があるかもしれない。
【実施例2】
【0074】
60mgのDAPC、30mgのDPPG-Na、および4gのPEG4000を、透明溶液が得られるまで60℃の20 mlのtert-ブタノールに分散する。次に、該溶液を丸いガラス瓶に入れ、-45℃で凍結し、次いで20mbarの減圧下で凍結乾燥する。得られた乾燥試料を20 mlのガラスバイアルに入れ、SF6 (100mgの凍結乾燥物/バイアル)に曝露し、次いで10mLの生理食塩水(0.9% NaCl)で再構成した。
上記のごとく測定したサスペンジョン中の微小胞の濃度は約1.90・109個/mlであった。この量を表2の結果では100%に正規化し、この調製物を調製物2Aとする。
【0075】
上記製造法を、最初の混合物に約0.46%(モル) (1.5 mg)、0.97%(モル) (3.2mg)、1.51%(モル) (5mg)、2.97%(モル) (10mg)、および7.12%(モル)(40mg)のDPPE-PEG2000を加えて反復し、それぞれ対応する調製物2B、2C、2D、2E、および2Fを得る。表2は、このさらなる4調製物について測定した微小胞の正規化数を示す。

【0076】
上記表から推測できるように、過剰量のポリマー修飾脂質は得られる微小胞の量に悪影響があるかもしれない。
【実施例3】
【0077】
ガス封入微小胞の種々のサスペンジョン(表2では2A〜2Fで示す)を以下の方法に従って製造する:25 mgのDSPC/DSPA混合物(表3に示す種々のモル比の)を4 mlのシクロオクタンに完全に溶解するまで超音波プローブを用いて溶解する。この有機相を、Megatron(登録商標)(11'000 rpmおよび3min.)を用いる高速機械式撹拌下でホモゲナイズした50 mlのPEG4000 10%溶液に加える。得られるエマルジョンを撹拌下80℃で1時間加熱し、10mLガラスバイアルに分配する。バイアル(それぞれ1mLのサスペンジョンを含む)を-50℃で凍結し、0.2mbarの減圧下で凍結乾燥する。得られる乾燥試料をバイアル中でC4F10/N2の35/65 (vol./vol.)混合物に曝露し、次いで2mLの無菌水で再構成する。
【0078】
上記と同じ製造法を、該混合物に0.5%(モル)または1%(モル)のDSPE-PEGを加えて反復する(表3参照。対応する調製物3A’〜3F’を得る)。
【0079】
次に、微小胞濃度を製造直後と6時間後に上記調製物のそれぞれについて測定した。表3に結果を示す。結果は各調製物について6時間静置後の微小胞のパーセントを示す。

【0080】
上記結果は、最小量のポリマー修飾脂質は、ポリマー修飾脂質が存在しない調製物と異なり、6時間後に比較的高量の微小胞を保つことができることを示す。
【実施例4】
【0081】
DPPE-MPEG5000量が異なる(表4参照)6種のガス封入微小胞組成物(表4の4A〜4F)を以下のごとく製造する。
【0082】
25 mgのDSPC/DSPA混合物(80/20モル比)を4 mlのシクロオクタンに完全に溶解するまで超音波プローブを用いて溶解する。この有機相を、Megatron(登録商標)(11'000 rpmおよび3min.)を用いる高速機械式撹拌下でホモゲナイズした50 mlのPEG4000 10%溶液に加える。エマルジョンを撹拌下80℃で1時間加熱し、次いで1容量のPEG4000 10%溶液で希釈する。得られるエマルジョンを10mLガラスバイアルに分配する。バイアル(それぞれ0.75mLのサスペンジョンを含む)を-50℃で凍結し、0.2mbarの減圧下で凍結乾燥する。得られる乾燥試料をバイアル中でC4F10/N2の35/65混合物に曝露し、次いで1.5mLの生理食塩水溶液で再構成する。
【0083】
得られた微小胞に封入されたガスの量および上記各調製物の微小胞の総数をCoulter(登録商標)測定により測定する。下記表4は、ガス容積の測定値を示す。

【0084】
上記結果から推測できるように、安定化微小胞の組成物中の低量のポリマー修飾脂質は、微小胞への比較的高量のガスの取り込みを可能にする。
【0085】
次に、6時間後のサスペンジョン中の微小胞の量を測定し、各初期サスペンジョン中の量と比較した。結果を下記表5に示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ポリマーを保持する脂質を0.15%(モル)〜1%(モル)含む、両親媒性物質を含むガス封入微小胞の水性サスペンジョン。
【請求項2】
該親水性ポリマーを保持する脂質を少なくとも0.3%(モル)含む請求項1記載のサスペンジョン。
【請求項3】
該親水性ポリマーを保持する脂質を約0.5%(モル)含む請求項1記載のサスペンジョン。
【請求項4】
該親水性ポリマーを保持する脂質がリン脂質である請求項1記載のサスペンジョン。
【請求項5】
該リン脂質がホスファチジルエタノールアミンである請求項4記載のサスペンジョン。
【請求項6】
該ホスファチジルエタノールアミンがホスファチジルエタノールアミンの脂肪酸ジ-エステルである請求項5記載のサスペンジョン。
【請求項7】
該親水性ポリマーが、キチン、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール (PEG)、ポリプロピレングリコール (PPG)、ポリビニルアルコール (PVA)、ポリビニルピロリドン (PVP)、それらの混合物およびコポリマーから選ばれる先の請求項のいずれかに記載のサスペンジョン。
【請求項8】
該ポリマーが約500〜約50’000ダルトンの分子量を有する請求項7に記載のサスペンジョン。
【請求項9】
該ポリマーが好ましくは約1’000〜約20’000ダルトンの分子量を有する請求項7に記載のサスペンジョン。
【請求項10】
該両親媒性化合物がリン脂質である先の請求項のいずれかに記載のサスペンジョン。

【公表番号】特表2010−502671(P2010−502671A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527133(P2009−527133)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059256
【国際公開番号】WO2008/028917
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(398063065)ブラッコ・リサーチ・ソシエテ・アノニム (13)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO RESEARCH S.A.
【Fターム(参考)】