ポリマー凝固剤を含む逆乳化ポリマー
本発明は、(a)水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および場合によって1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含む油中水モノマー分散液を調製する段階と、(b)ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体および場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーをラジカル重合させ、それにより介在ポリマーを得る段階とを含み、ここで、ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される油中水ポリマー分散液の調製方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙において凝集剤(flocculant)、脱水(排水)助剤および歩留り向上剤として有用な油中水ポリマー分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の乳化重合は、一般に、連続水相中に微細に分散された油相(水中油ポリマー分散液)を必要とする。
【0003】
逆乳化重合においては、水溶性ポリマーが、連続油相内の分散水相(油中水ポリマー分散液)中に生成される。形成されるポリマーは、分散水滴中に留まり、乳濁液の粘度に著しく影響を及ぼすことはない。生成物は、高い平均分子量を有するポリマーを含むが低粘度を示す。これは、通常の乳濁液に対して利点を提供するのみならず、乾燥生成物を形成することに対して利点を提供する。なぜなら、逆乳濁液は、低粘度で取り扱いが容易であり、極めて濃いために輸送が容易になり得るためである。好適な量の水で希釈して乳化破壊することは、容易に可能である。油中水ポリマー分散液の含水量が比較的高い場合、油中水乳濁液を水中油乳濁液に転化するためには、少量の水しか必要としない。ポリマーは、逆乳濁液中で小滴中に形成され、既に溶液となっているので、それは、水中に容易に分散し、それによって粘度を劇的に増加させる。
【0004】
逆乳濁液を水系に分散させる場合、水の量は急に増加する。これによって、ポリマーコイルが広がり、その結果、乳濁液は、大幅に希釈されるのに、系の粘度は、大幅に増加する。例えば、1mlの油中水乳濁液を50mlの体積の水に注ぐ場合(希釈係数50)、得られる水中油乳濁液の粘度は、例えば3倍に、さらに増加する。
【0005】
水溶性ホモポリマーおよび水溶性コポリマーを含む油中水ポリマー分散液は、今日、既に広く使用されている。例えば、特に、主として石炭、アルミニウムおよび石油の原材料抽出における、水および上水処理または排水処理における、固体の沈殿における凝集剤として、あるいは製糖業および製紙における助剤として使用されている。
【0006】
紙の製造においては、製紙完成紙料(papermaking furnish)、すなわち、通常95重量%を上回る含水量を有するセルロース系繊維の水性スラリーが、一般的に5重量%未満の含水量を有する紙匹(paper sheet)に形成される。それゆえ、製紙の脱水および歩留りの態様は、製造の効率およびコストに重要である。
【0007】
沈殿による脱水は、その相対的に低いコストのために排水の好ましい方法である。重力排水の後、さらなる方法、例えば、真空、圧搾、フェルトブランケット吸い取りおよび圧搾、蒸発などが、脱水用に使用される。実際に、このような方法を組合せて所望の含水量に紙匹を脱水、または乾燥するために使用されている。重量排水は、使用される最初の脱水方法でもあり最も安価でもあるため、この排水プロセスの効率改善は、他の方法により除去する必要のある水分量を減らし、それゆえ、脱水の全体効率を改善し、そのコストを低減する。
【0008】
様々な化学添加剤が、形成された紙匹から脱水する速度を増加させ、紙匹上に保持される微細繊維および填料の量を増加させる試みとして使用されている。凝集剤および排水助剤は、水性懸濁液中の液相からの固相の分離を最適化するために広く使用される。高分子量水溶性ポリマーの使用は、紙の製造において著しい改善を示す。これらの高分子量ポリマーは、凝集剤として作用し、紙匹上に堆積する大きな綿状沈殿物を形成する。これらは、紙匹の脱水にも役立つ。
【0009】
これらの高分子量水溶性ポリマーは、例えば、油中水ポリマー分散液または水中水ポリマー分散液として使用し得る。
【0010】
例えば、米国特許第5,292,800号は、水溶性または水膨潤性ポリマーの油中水乳濁液を開示しており、ここで、乳濁液の油相は、50重量%を下回らない植物または動物起源の油からなる。前記油中水ポリマー乳濁液は、紙、板紙(board)および厚紙(cardboard)の生産における歩留り向上剤および排水助剤として使用し得る。
【0011】
米国特許第6,117,938号は、水相が、高分子量であり、高分子量の水溶性陽イオン構造を持つポリマーと、水溶性であり、直鎖であるかまたはより低い程度の構造を有するポリマーとのブレンドを含む油中水ポリマー乳濁液を開示している。このポリマーブレンドは、製紙に見出されるものなどのセルロース懸濁液の排水に有用である。
【0012】
欧州特許出願第0262 945号は、ポリマーの一方をモノマー出発原料から他方のポリマーの溶液中の重合によって形成することによる、異なる水溶性ポリマータイプの均一なブレンドの形成を開示している。ポリアミンポリマーの、しばしばジメチルアミンとエピクロロヒドリンと併用される好適なアミノまたはハロゲン化合物の重合により作製される水溶性ポリアミンとのブレンドは、紙のサイジング用に特に有用である。
【0013】
米国特許出願第2004/0034145号は、ポリマーAおよび少なくとも1種のポリマー分散剤Bを含む水中水ポリマー分散剤を製造する方法を開示しており、これによれば、水溶性分散剤Bを含む水相中に分散されたモノマーが、ラジカル重合にかけられる。得られる水中水ポリマー分散液は、製紙における優れた歩留り向上剤および排水助剤である。
【0014】
国際公開第02/083743号および米国特許出願第2005/0183837号は、第1の水溶性ポリマーおよび第1の水溶性ポリマーの存在下で重合させて第2の水溶性ポリマーを形成する1種または複数の水溶性モノマーを含む水溶性挿入錯体を開示している。挿入錯体は、製紙において使用し得る。挿入錯体は、紙匹の形成および形成された紙匹の脱水の促進を助けるために抄紙機上の好適な位置において添加される。
【0015】
欧州特許第819 651号は、(i)水溶性非イオン性モノマー、陽イオン性コモノマーおよび陽イオン性ポリマーの水溶液を形成し、(ii)この水溶液を十分な量の炭化水素油中に乳化して油中水乳濁液を形成し、(iii)これらのモノマーを重合することによって調製されるスラッジ脱水組成物を開示している。
【0016】
欧州特許第807 646号は、それによって液体の放出量の減少および液体拡散性の増加が確実になる吸水性樹脂の調製方法を開示している。この調製方法においては、吸水性樹脂は、水溶性エチレン性不飽和モノマーの重合によって調製される。水溶性エチレン性不飽和モノマーの重合は、水溶性エチレン性不飽和モノマーの重合から得られる吸水性樹脂と異なる吸水速度を有する吸水性樹脂の存在下で行うことができる。好ましい一様式においては、重合は、逆相懸濁重合法によって実施される。
【0017】
米国特許出願第2002/188040号は、第1の水溶性ポリマーおよび第1の水溶性ポリマーの存在下で重合させて第2の水溶性ポリマーを形成する1種または複数の水溶性モノマーを含む水溶性挿入錯体を開示している。水溶性挿入錯体は、不溶性ポリマー粒子を含まない水溶液を形成する。挿入錯体は、それらの有効量を廃棄スラッジに添加することによって廃棄スラッジを処理するために使用し得る。挿入錯体は、抄紙機上の好適な位置で、それらの有効量をパルプまたは形成シートに添加することによって製紙にも使用し得る。挿入錯体は、さらに、所望の粘度、レオロジーまたは流れ曲線特性をもたらすために、それらの有効量を水性媒体に添加することによって、水系においてレオロジー調節剤として使用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5,292,800号
【特許文献2】米国特許第6,117,938号
【特許文献3】欧州特許出願第0262 945号
【特許文献4】米国特許出願第2004/0034145号
【特許文献5】国際公開第02/083743号
【特許文献6】米国特許出願第2005/0183837号
【特許文献7】欧州特許第819 651号
【特許文献8】欧州特許第807 646号
【特許文献9】米国特許出願第2002/188040号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】W.C. Griffin、Journal of the Society of the Cosmetic Chemist、1巻(1950年)、311頁
【非特許文献2】Paul C. Hiemenz、Polymer Chemistry、Marcel Dekker New York、1984年、7.2章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
パルプまたは紙の製造の効率を増加させるための新たな歩留り向上剤および脱水(排水)助剤を開発することが引き続き必要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
驚くべきことに、
(a)水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤(coagulant)、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって、1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含む油中水モノマー分散液を調製する工程、および
(b)ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーをラジカル重合させ、それにより介在ポリマー(intercalated polymer)を得る工程、
を含む方法によって得られる油中水ポリマー分散液によって、歩留りおよび脱水(排水)特性が改善されることが分かり、
ここで、ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される。
【0022】
ポリマー凝固剤を含む油中水モノマー分散液中のラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体のin situ重合によって、ポリマー生成物が、ポリマー凝固剤中に挿入されている油中水ポリマー分散液(相互侵入複合体(interpenetrating complex))が得られる。
【0023】
このタイプの油中水ポリマー分散液は、ポリマー凝固剤の不存在下においてモノマーを重合させること、およびその後にポリマー凝固剤を添加することによっては得られず、重合反応の間にポリマー凝固剤が存在している必要がある。
【0024】
さもなければ、異なる特性を示す異なる生成物が得られる。特に、一方では、ポリマー凝固剤の水性分散液を、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって、1種または複数のラジカル重合性エチレン性不飽和コモノマーを重合させることによって別に得られた油中水分散液に添加する場合、ポリマー凝固剤の水性分散液中に含まれる水は、得られる混合物の含水量を増加させる。一般的に、水を追加すると、油中水ポリマー分散液を水中油ポリマー分散液に変換する、または少なくとも塊もしくは粒状物の形成を引き起こす。他方、ポリマー凝固剤の粉末(すなわち、水:油の比に影響を与えないために水を含まない)を添加する場合、油中水ポリマー分散液の水相にポリマー凝固剤を溶解することは事実上不可能である。
【0025】
本発明による油中水ポリマー分散液の含水量は、均衡が取れている。一方では、含水量は、安定な条件下での重合を可能にさせるために十分に高い。重合の間の含水量が低すぎると、熱の放散が不十分であり、重大な問題を引き起こす。他方、含水量は、輸送コストを低く保つために十分に低い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の油中水ポリマー分散液と比較した本発明による特定の油中水ポリマー分散液の総歩留り値および灰分歩留り値を示す図である。
【図2】先行技術の分散液と比較した本発明による油中水ポリマー分散液の脱水(排水)性能を示す図である。
【図3】先行技術の分散液と比較した本発明による油中水ポリマー分散液の脱水(排水)性能を示す図である。
【図4】先行技術の分散液と比較した本発明による油中水ポリマー分散液の脱水(排水)性能を示す図である。
【図5】先行技術の分散液と比較した本発明による油中水ポリマー分散液の脱水(排水)性能を示す図である。
【図6】先行技術の分散液と比較した本発明による油中水ポリマー分散液の脱水(排水)性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の態様は、
(a)水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって、1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含む油中水モノマー分散液を調製する工程、および
(b)ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーをラジカル重合させ、それにより介在ポリマーを得る工程
を含む油中水ポリマー分散液の調製方法に関する。ここで、ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される。
【0028】
「油中水分散液」という用語は、当技術分野で十分に受け入れられている。通常、この用語は、連続相が油であり、不連続相が水であり、不連続水相が連続油相中に分散している分散液(乳濁液)を意味する。好ましくは、本発明による「油中水モノマー分散液」は、少なくとも、水、油性物質、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、および、場合によって、1種または複数のラジカル重合性エチレン性不飽和コモノマーを含む。同様に、好ましくは、本発明による「油中水ポリマー分散液」は、少なくとも、水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、およびラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体のラジカル重合によって得られるポリマー、および、場合によって1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含む。上記の成分のそれぞれは、以下でより完全に説明され定義される。
【0029】
化学凝固(chemical coagulation)、すなわち、懸濁粒子およびコロイド粒子をそれらが互いに付着するように改変することは、化学処理プロセスの1種である。凝固は、電荷の中和または粒子間の析力の減少を引き起こすプロセスである。凝集(flocculation)は、より大きな塊(「綿状沈殿物」)への粒子の集合体である。凝固は、ほぼ瞬間に起こるが、凝集は、綿状沈殿物が成長するためにいくらかの時間を必要とする。本明細書の目的では、「ポリマー凝固剤」という用語は、好ましくは、水溶性または水分散性の、好ましくは、高度にイオン性の、比較的低分子量のポリマーを意味する。水中の粒子および有機物質に関連した全体の電荷が負である場合、例えば、製紙において処理されるセルロース繊維懸濁液の場合、正に帯電した凝固剤が、電荷を中和するために好ましく添加される。ポリマー凝固剤および介在ポリマーは、凝固剤(coagulant)および/または凝集剤(flocculant)として役立ち得る。
【0030】
本明細書の目的では、「水溶性」という用語は、好ましくは、少なくとも10g l-1、より好ましくは、少なくとも25 g l-1、さらにより好ましくは、少なくとも50g l-1、さらにより好ましくは、少なくとも100g l-1、最も好ましくは、少なくとも250g l-1、および、特には、少なくとも500g l-1の室温における純水中の溶解度を意味する。
【0031】
本明細書の目的では、「介在ポリマー」という用語は、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって、1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含むモノマー組成物を、ポリマー凝固剤の存在下で重合させるin situ重合反応により得られるポリマーを意味する。
【0032】
(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーのラジカル重合の間にポリマー凝固剤が存在することは、得られる油中水ポリマー分散液の特性に不可欠であることは強調されるべきである。ポリマー凝固剤の不存在下においてモノマーを重合させること、および、その後にポリマー凝固剤を添加することによってでは、同一の油中水ポリマー分散液は得られない。ポリマー凝固剤は、油中水分散液の一部であり、その中には (アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーから重合させて得られる介在ポリマーが含まれている。換言すれば、重合反応によって得られる介在ポリマーは、最初に存在するポリマー凝固剤に何らかの形で組み込まれている。
【0033】
しかし、ポリマー凝固剤および介在ポリマーの得られる相互侵入ポリマー系の内部構造は、ポリマー凝固剤および同じモノマーから介在ポリマーとして別々に得られるポリマーを単純に混合することによっては再現することができない。
【0034】
本発明による油中水モノマー分散液は、水、好ましくは、脱イオン水を含む。含水量は、0.01から99.99重量%まで変わり得る。好ましくは、含水量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、10から90重量%、より好ましくは15から85重量%、さらにより好ましくは20から80重量%、さらにより好ましくは25から75重量%、より好ましくは30から70重量%、および、特には35から65重量%の範囲内である。好ましい一実施形態においては、含水量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、30から50重量%、より好ましくは32から48重量%、さらにより好ましくは34から46重量%、さらにより好ましくは36から44重量%、最も好ましくは38から42重量%、および、特には39から41重量%の範囲内である。
【0035】
本発明による油中水モノマー分散液は、1種または複数の油性物質をさらに含む。好ましくは、油性物質は、水と実質的に不混和性(油相)の不活性有機液体である。これに関して、「水と実質的に不混和性」とは、室温での純水中の純粋な油性物質の溶解度が、好ましくは10mg l-1未満、より好ましくは1.0mg l-1未満、さらにより好ましくは0.1 mg l-1未満、さらにより好ましくは0.01 mg l-1未満、最も好ましくは1.010-3 mg l-1未満、および、特には1.010-4 mg l-1未満であることを意味する。「不活性」という用語は、油性物質それ自体は、好ましくは、ラジカル重合性エチレン性不飽和官能基を含まないことを意味する。油性物質の含有量は、0.01から99.99重量%まで変わり得る。好ましくは、油性物質の含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、0.1から60重量%、より好ましくは1.0から55重量%、さらにより好ましくは2.5から50重量%、さらにより好ましくは5.0から45重量%、最も好ましくは10から40重量%、および、特には15から35重量%の範囲内である。好ましい一実施形態においては、油性物質の含有量は、油中水分散液の総重量に対して、14から34重量%の範囲内、より好ましくは16から32重量%、さらにより好ましくは18から30重量%、さらにより好ましくは20から28重量%、最も好ましくは22から26重量%、および、特には23から25重量%である。
【0036】
油性物質は、実質的に純粋な化合物でもよく、または様々な化合物の混合物でもよい。油性物質は、ラジカル重合反応を妨げない任意の不活性脂肪族および/または芳香族疎水性液体でもよい。このような疎水性液体の例には、ベンゼン、キシレン、トルエン、鉱油、パラフィン、イソパラフィン油、灯油、ナフサ、ワックス、植物油など、およびこれらの混合物が含まれる。油性物質は、好ましくは、直鎖、環状および/または分枝の炭化水素であり、好ましくは6から30個の炭素原子、より好ましくは8から24個の炭素原子、さらにより好ましくは10から22個の炭素原子、最も好ましくは12から20個の炭素原子、および、特には14から18個の炭素原子を含む。好ましくは、炭化水素は脂肪族である。好ましくは、油性物質は、1.0g ml-1未満、より好ましくは0.9 g ml-1未満、さらにより好ましくは0.85 g ml-1未満、最も好ましくは0.83 g ml-1未満、および、特には0.82 g ml-1未満の密度を有する。好ましくは、油性物質は、-150℃から50℃、より好ましくは-120℃から20℃、さらにより好ましくは-100℃から0℃、最も好ましくは-90℃から-50℃、および、特には-80℃から-60℃の範囲内の流動点(凝固点)を有する。
【0037】
好ましい一実施形態においては、油性物質は、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカンおよびエイコサンからなる群から選択される1種または複数の脂肪族炭化水素を含み、ヘキサデカンは特に好ましい。好適な油性物質は、好ましくは、芳香族を含まない、および、好ましくは、2重量%を上回らないC15炭化水素、少なくとも約60重量%のC16炭化水素および約40重量%を上回らないC17炭化水素を含むC16-C20炭化水素の混合物である。
【0038】
別の好ましい実施形態においては、油性物質は、例えば、天然物の油性抽出物の形態における、純粋なまたは混合物としてのモノ-、ジ-およびトリグリセリドなどの植物または動物起源の油、例えば、オリーブ油、大豆油、ひまわり油、ひまし油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、レイプシードオイル(rapeseed oil)、亜麻仁油、アーモンド油、コルザオイル(colza oil)、サフラワー油、およびそれらのラフィネート、例えば、それらの水素化または部分水素化生成物および/またはそれらのエステル、特に、メチルおよびエチルエステルを含む。この油性物質は、脂肪族炭化水素および植物油の混合物も含み得る。
【0039】
さらに別の好ましい実施形態においては、油性物質は、脂肪酸エステルを含む。直鎖飽和脂肪酸、特に11個を上回る炭素原子のアルキル鎖長を有する脂肪酸、好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸のアルコールとのエステルは、特に好ましく使用される。脂肪酸エステルは、単独でまたは好ましくは炭化水素または炭化水素の混合物と一緒に使用される。
【0040】
本発明による油中水モノマー分散液は、1種または複数の油中水乳化剤をさらに含む。乳化剤は、乳濁液を安定化する物質であり、しばしば、界面活性剤である。好ましくは、油中水乳化剤は、2から9、より好ましくは3から8、さらにより好ましくは3.5から7.5、最も好ましくは4から7、および、特には4.0から6.5の範囲内のHLB(親水性-親油性バランス)値を有する (HLB値の定義については、W.C. Griffin、Journal of the Society of the Cosmetic Chemist、1巻(1950年)、311頁を参照されたい)。好ましくは、油中水乳化剤の含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、0.01から25重量%、より好ましくは0.1から10重量%、さらにより好ましくは0.5から5.0重量%、さらにより好ましくは1.0から4.0重量%、最も好ましくは1.5から3.5重量%、および、特には1.8から3.0重量%の範囲内である。好ましくは、油性物質の油中水乳化剤に対する相対重量比は、30:1から2:1、より好ましくは25:1から3:1、最も好ましくは20:1から4:1、および、特には15:1から5:1の範囲内である。
【0041】
好適な油中水乳化剤は、当業者に知られている。陰イオン性、陽イオン性、両性イオン性または非イオン性界面活性剤を、油中水乳化剤として使用することができ、非イオン性界面活性剤が好ましい。油中水乳化剤の例には、グリシジルエーテルの多価アルコールとのアルコキシル化反応生成物;モノオレエート、ジオレエート、モノステアレート、ジステアレートおよびパルミテートステアレートなどのモノ-、ジ-およびポリグリセロールの脂肪酸エステル;ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノステアレートおよびソルビタントリステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステル;ペンタエリトリチルモノミリステート、ペンタエリトリチルモノパルミテートまたはペンタエリトリチルジパルミテートなどのペンタエリトリトールの脂肪酸エステル;モノオレエートなどのポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;モノオレエートおよびトリオレエートなどのポリエチレングリコールマンニトール脂肪酸エステル;グルコースモノオレエートおよびグルコースモノステアレートなどのグルコース脂肪酸エステル;トリメチロールプロパンジステアレート;イソプロピルアミドのオレイン酸との反応生成物;グリセロールソルビタン脂肪酸エステル;アルカノールアミド、ヘキサデシルナトリウムフタレートおよびデシルナトリウムフタレートが含まれる。好ましくは、油中水乳化剤は、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される。
【0042】
好ましい一実施形態においては、本発明による油中水モノマー分散液は、第2の乳化剤をさらに含む。好ましくは、第2の乳化剤は、7から16、より好ましくは8から15、さらにより好ましくは9から14、最も好ましくは9.5から13.5、および、特には10から13の範囲内のHLB(親水性-親油性バランス)値を有する。好ましくは、第2の乳化剤の含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、0.005から25重量%、より好ましくは0.01から10重量%、さらにより好ましくは0.05から5.0重量%、さらにより好ましくは0.1から2.0重量%、最も好ましくは0.3から1.5重量%、および、特には0.5から1.0重量%の範囲内である。
【0043】
第2の乳化剤の例には、脂肪アルコールエトキシレートなどのエトキシル化アルコール;マンニチルモノラウレートまたはマンニチルモノパルミテートなどのマンニトールの脂肪酸エステル;エトキシル化アルキルアミン;およびアルキルフェノールエトキシレートが含まれる。
【0044】
本発明による油中水モノマー分散液は、1種または複数のポリマー凝固剤をさらに含み、少なくとも1種のポリマー凝固剤が、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される。
【0045】
好ましくは、ポリマー凝固剤は、水溶性または水膨潤性である。好ましくは、ポリマー凝固剤の含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、0.01から30重量%、より好ましくは0.1から20重量%、さらにより好ましくは0.5から15重量%、さらにより好ましくは1.0から10重量%、最も好ましくは3.0から8.0重量%、および、特には4.5から6.5重量%の範囲内である。
【0046】
好ましくは、ポリマー凝固剤は、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、さらにより好ましくは、少なくとも98%、さらにより好ましくは、少なくとも99%、最も好ましくは、少なくとも99.5%、および、特には、少なくとも99.9%の重合度を示す。
【0047】
好ましくは、ポリマー凝固剤の重量平均分子量Mwは、50,000から1,500,000g mol-1、より好ましくは75,000から1,250,000g mol-1、さらにより好ましくは100,000から1,000,000g mol-1、さらにより好ましくは120,000から750,000g mol-1、最も好ましくは140,000から400,000g mol-1、および、特には150,000から200,000g mol-1の範囲内である。好ましい一実施形態においては、ポリマー凝固剤の重量平均分子量Mwは、75,000から350,000g mol-1の範囲内である。
【0048】
好ましくは、ポリマー凝固剤の分子量分散Mw/Mnは、1.0から4.0、より好ましくは1.5から3.5、および、特には1.8から3.2の範囲内である。
【0049】
好ましくは、ポリマー凝固剤は、100から850mPas、より好ましくは150から800mPas、さらにより好ましくは200から750mPas、さらにより好ましくは250から700mPas、最も好ましくは300から650mPas、および、特には350から600mPasの範囲内の製品粘度(スピンドルno.1、10rpm、20℃、RVT DV-2粘度計)を有する。
【0050】
好ましい一実施形態においては、ポリマー凝固剤は、ホモポリマーまたはコポリマーである。ポリマー凝固剤がコポリマーである場合、これは、好ましくは、少なくとも1種の陽イオン性モノマーおよび少なくとも1種の非イオン性コモノマーから誘導される(下記を参照されたい)。
【0051】
これに関して、「から誘導される」は、ポリマー凝固剤のポリマー主鎖は、繰り返し単位を含み、すなわち、繰り返し単位は、ポリマー凝固剤のポリマー主鎖中に組み込まれており、これらの繰り返し単位は、重合反応の過程で対応するモノマーから形成されることを意味する。例えば、ポリマー凝固剤が、塩化メチルで四級化されたジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DIMAPA quat.)から誘導される場合、次の繰り返し単位が、ポリマー主鎖:
【0052】
【化1】
【0053】
に組み込まれる。
【0054】
ポリマー凝固剤が、少なくとも1種の陽イオン性モノマー(例えば、DIMAPA quat.)および少なくとも1種の非イオン性コモノマー(例えば、アクリルアミド)のコポリマーである場合、陽イオン性モノマーの含有量は、ポリマー凝固剤中に組み込まれている全てのモノマーの総重量に対して、好ましくは、少なくとも50重量%、より好ましくは、少なくとも60重量%、さらにより好ましくは、少なくとも70重量%、さらにより好ましくは、少なくとも80重量%、最も好ましくは、少なくとも90重量%、および、特には、少なくとも95重量%である。
【0055】
好ましくは、ポリマー凝固剤は、1種または複数の陽イオン性モノマーから、より好ましくは単一の陽イオン性モノマーから誘導される。
【0056】
ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドおよびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される1種または複数の陽イオン性モノマーから誘導される。好ましくは、前述の陽イオン性モノマーは、6から25個の炭素原子、より好ましくは7から20個の炭素原子、最も好ましくは7から15個の炭素原子、および、特には8から12個の炭素原子を含む。
【0057】
好ましくは、ポリマー凝固剤は、
-30から100重量%の(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドおよび/またはアルケニルトリアルキルアンモニウムハライド、および
-0から70重量%の非イオン性コモノマー
から誘導(合成)される。
【0058】
好ましい一実施形態においては、ポリマー凝固剤は、一般式(I)によるモノマーから誘導される
【0059】
【化2】
【0060】
[式中、
R1は、直鎖または分枝C1〜8アルキレン、好ましくはエチル、プロピル、ブチルまたはペンチルであり;
R2, R3, R4およびR5は、互いに独立に水素、C1〜C6アルキル、好ましくはメチル、エチルまたはプロピル;C5〜C10アリール、好ましくはフェニル;またはC6〜C16アリールアルキル、好ましくはベンジルであり;
Aは、O、NHまたはR6がC1〜C6アルキルであるNR6であり、好ましくはNHであり;
Xは、ハロゲン、擬ハロゲン、アルキルカルボキシレートまたはアルキルサルフェート、好ましくは塩素である]。
【0061】
好ましくは、R3、R4およびR5は、同一である。好ましい一実施形態においては、Aは、OまたはNHであり、R1は、エチレンまたはプロピレンであり、R2は、水素またはメチルであり、R3、R4およびR5は、メチルである。一般式(I)によるモノマーは、塩化メチルで四級化されたジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(ADAMS quat.)などのエステル(A = O)でもよい。しかし、好ましくは、一般式(I)によるモノマーは、アミド(A = NH)、特に塩化メチルで四級化されたジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DIMAPA quat.)である。
【0062】
好ましくは、アルキルまたはアルキレン基に1から3個のC原子を有する、プロトン化された、または四級化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドが、一般式(I)によるモノマーとして使用され、より好ましくは、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよび/またはジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩化メチルで四級化されたアンモニウム塩が使用される。ジメチルアミノエチルアクリレートおよびジメチルアミノプロピルアクリルアミドを使用することが好ましい。
【0063】
塩基性モノマーは、無機酸もしくは有機酸で中和された形態で、または四級化された形態で使用され、このような四級化は、好ましくは、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、塩化メチル、塩化エチルもしくは塩化ベンジルを用いて実施される。好ましい一実施形態においては、塩化メチルまたは塩化ベンジルで四級化されたモノマーが使用される。
【0064】
ポリマー凝固剤がコポリマーまたはターポリマーである場合、これは、好ましくは、少なくとも1種の非イオン性コモノマーと組み合わせて、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される。好適な非イオン性コモノマーには、一般式(II)の化合物が含まれる
【0065】
【化3】
【0066】
[式中、
R7は、水素またはメチルを表し、
R8およびR9は、互いに独立に、水素、1から5個のC原子を有するアルキルまたはヒドロキシアルキルを表す]。
【0067】
一般式(II)の化合物の例には、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、または、N,N-置換(メタ)アクリルアミド、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミド、またはN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが含まれる。
【0068】
さらなる好適な非イオン性コモノマーには、一般式(III)の両親媒性化合物が含まれる
【0069】
【化4】
【0070】
[式中、
R10は、水素またはメチルを表し、
R11は、2から6個の炭素原子を有するアルキレンを表し、
R12は、8から32個の炭素原子を有する水素、アルキル、アリールまたはアラルキルを表し、
Bは、OまたはNR13を表し、R13は、1から4個の炭素原子を有するアルキルを表し、
nは、1から50、好ましくは1から20の整数を表す]。
【0071】
一般式(III)の両親媒性化合物の例には、脂肪族アルコールでエーテル化されている、(メタ)アクリル酸およびポリエチレングリコール(10から50個のエチレンオキシド単位)の反応生成物、または(メタ)アクリルアミドを用いた対応する反応生成物が含まれる。
【0072】
追加の水溶性分散剤成分をポリマー凝固剤と一緒に使用する場合、ポリマー凝固剤の前記追加の水溶性分散剤成分に対する重量比は、好ましくは、1:0.01から1:0.5、より好ましくは1:0.01から1:0.3の範囲内である。一例として、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、デンプン、デンプン誘導体、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルスクシンイミド、ポリビニル-2-メチルスクシンイミド、ポリビニル-1,3-オキサゾリジン-2-オン、ポリビニル-2-メチルイミダゾリンおよび/またはこれらのそれぞれの、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリルアミド化合物の塩とのコポリマーに、追加の水溶性分散剤成分として言及し得る。
【0073】
本発明による油中水モノマー分散液は、1種または複数のラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体をさらに含む。これに関して、「(アルク)アクリル」は、アクリルおよびアルカクリルを意味し、例えば、アクリルおよびメタクリルを含む。好ましい一実施形態においては、「(アルク)アクリル」は、「(メタ)アクリル」である。「誘導体」という用語は、アルキルアルコール、アルキルチオールおよびアルキルアミンなどの、好適な反応条件下で、場合によって活性化後に(アルク)アクリル酸と反応し得る他の化合物と(アルク)アクリル酸との反応生成物を意味する。(アルク)アクリル酸と反応し得る前記化合物は、アリール部分、ヘテロアリール部分、ハロゲン残基、ヒドロキシル残基、カルボキシル残基、三級アミン残基、四級化されたアンモニウム残基などの、それら自体は、所与の反応条件下で(アルク)アクリル酸と反応し得ないさらなる官能基を有し得る。好ましいラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、陽イオン性ラジカル重合性(アルク)アクリル酸エステル、(アルク)アクリル酸チオエステルおよび(アルク)アクリル酸アミドである。
【0074】
好ましくは、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、水溶性であり、好ましくは陽イオン性である。好ましくは、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、0.1から30重量%、より好ましくは0.5から25重量%、さらにより好ましくは1.0から20重量%、さらにより好ましくは2.5から17.5重量%、最も好ましくは5.0から15重量%、および、特には7.0から9.0重量%の範囲内である。
【0075】
好ましい一実施形態においては、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライドおよび(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される1種または複数の陽イオン性モノマーから誘導される。好ましくは、前述の陽イオン性モノマーは、6から25個の炭素原子、より好ましくは7から20個の炭素原子、最も好ましくは7から15の炭素原子、および、特には8から12個の炭素原子を含む。
【0076】
好ましくは、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、上に定義された一般式(I)によるモノマーである。一般式(I)によるラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、アミド(A = NH)、例えば、塩化メチルで四級化されたジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DIMAPA quat.)でもよい。しかし、好ましくは、一般式(I)によるラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、エステル(A = O)、特に塩化メチルで四級化されたジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートである(ADAME quat.)。
【0077】
ポリマー凝固剤が、(アルク)アクリル酸誘導体からも誘導される場合、前記(アルク)アクリル酸誘導体は、油中水モノマー分散液中に含まれるラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体と異なっていてもよく、または同一でもよい。好ましくは、両方のモノマーは、介在ポリマーの繰り返し単位が、ポリマー凝固剤の繰り返し単位と異なるように互いに異なる。したがって、ポリマー凝固剤および介在ポリマーは、好ましくは、互いに異なり、前記差異は、異なる分子量および/または化学構造、さらに異なるモノマー組成などの物理的変数を場合によって含む。
【0078】
好ましくは、本発明による油中水モノマー分散液は、1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーをさらに含む。これらの条件下で、本発明による方法の工程(b)において得られる介在ポリマーは、ホモポリマーではなくコポリマーまたは、例えば、ターポリマーである。好ましくは、エチレン性不飽和コモノマーは、水溶性であり、好ましくは非イオン性である。好ましくは、1種または複数のエチレン性不飽和コモノマーの含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、1.0から90重量%、より好ましくは2.5から75重量%、さらにより好ましくは5から60重量%、さらにより好ましくは10から50重量%、最も好ましくは20から40重量%、および、特には25から35重量%の範囲内である。
【0079】
好適なエチレン性不飽和コモノマーには、上に定義された、一般式(II)の化合物および一般式(III)の両親媒性化合物が含まれる。
【0080】
好ましくは、1種または複数のエチレン性不飽和コモノマーは、(アルク)アクリルアミド、より好ましくはアクリルアミドを含む。
【0081】
好ましい一実施形態においては、油中水モノマー分散液が、1種または複数のエチレン性不飽和コモノマーを含む場合、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の含有量は、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体およびラジカル重合性、エチレン性不飽和コモマーの総重量に対して、0.1から50mol%、より好ましくは1.0から40mol%、さらにより好ましくは2.0から30mol%、さらにより好ましくは3.0から20mol%、最も好ましくは5.0から15mol%、および、特には8.0から12mol%の範囲内である。
【0082】
好ましい一実施形態においては、油中水モノマー分散液は、陽イオン性ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体および1種または複数の非イオン性エチレン性不飽和コモノマーを含む。好ましくは、陽イオン性ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の含有量(陽イオン性(cationicity))は、陽イオン性ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体および非イオン性ラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーの総量に対して、0.1から75重量%、より好ましくは1.0から65重量%、さらにより好ましくは2.0から55重量%、さらにより好ましくは5.0から45重量%、最も好ましくは10から40重量%、および、特には15から35重量%の範囲内である。
【0083】
好ましくは、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体r1のラジカル反応性比およびラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーr2のラジカル反応性比は、それぞれ、0.01から100、より好ましくは0.02から50、さらにより好ましくは0.05から20、最も好ましくは0.1から10、および、特には0.2から5の範囲内である。これに関連して、r1は、(アルク)アクリル酸誘導体のラジカルを含む2つの伝搬定数の比として定義される。この比は、ラジカルに付加する同じタイプのモノマーの伝搬定数(k11)を、コモノマーの付加の伝搬定数(k12)に対して常に比をとり、すなわち、r1 = k11/k12である。同様に、r2 = k22/k21である。さらなる詳細については、例えば、Paul C. Hiemenz、Polymer Chemistry、Marcel Dekker New York、1984年、7.2章を参照し得る。
【0084】
本発明による油中水モノマー分散液の特に好ましい実施形態においては、
- 油性物質は、6から30個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素であり、
- ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライドを含む1種または複数のモノマーから誘導され、
- ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドであり、かつ/または
- ラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーは、(アルク)アクリルアミドを含む。
【0085】
本発明による方法の工程(a)においては、水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含む油中水モノマー分散液が調製され;ここで、ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドかなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される。
【0086】
油中水モノマー分散液の調製は、当業者に知られている。成分は、同時にまたは連続的に添加し得る。好ましくは、水相および油相は、互いに別々に調製され、その後、油中水モノマー分散液を得るために一緒にされる。
【0087】
成分は、通常の手段で、例えば、液体を流し込みまたは滴下することによって、粉末を添加することなどによって添加し得る。
【0088】
好ましくは、水相は、水、ポリマー凝固剤、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、あるとすればラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーの均一な溶液を含む。水相および油相を一緒にする前に、キレート剤、緩衝剤(酸および/または塩基)、分岐剤、架橋剤、連鎖移動剤などの追加の成分を、水相に添加してもよい。
【0089】
好適な分岐剤、架橋剤および連鎖移動剤は、当業者に知られている。しかし、好ましくは、分岐剤、架橋剤または連鎖移動剤は、添加されない。
【0090】
好ましくは、水相のpHは、1.0から5.0、より好ましくは1.5から4.5、さらにより好ましくは2.0から4.0、および、最も好ましくは2.5から3.5の範囲内の値に調節される。pH値は、それぞれ、好適な酸および塩基を用いて調節してもよい。好ましい酸は、ギ酸、酢酸、塩酸および硫酸などの有機酸および無機酸である。
【0091】
好ましくは、油相は、油性物質および油中水乳化剤の均一な溶液を含む。水相および油相を一緒にする前に、追加の陰イオン性、陽イオン性、両性イオン性または非イオン性の界面活性剤またはポリマー乳化剤などの、追加の成分を油相に添加してもよい。
【0092】
好ましくは、水相は、例えば、高速ミキサー、ホモジナイザーなどによって実施し得る激しい撹拌下で油相に添加される。
【0093】
原則として、油中水モノマー分散液が、本発明による方法の工程(a)で調製される場合、各成分の全体量が、最初に存在する必要はない。別法として、ポリマー凝固剤中の完全もしくは部分的なモノマーの分散液またはモノマー溶液は、重合の初めに存在させることができ、モノマーまたはモノマー溶液の残りは、重合の全過程にわたって定量ずつ、または連続供給として配分して添加される。例えば、特定成分の特定部分のみ、例えば、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の70重量%のみを、ステップ(a)で最初に使用することができ、その後、場合によってステップ(b)の間に、前記特定成分の残り、例えば、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の残りの30重量%を使用する。
【0094】
油中水モノマー分散液を、本発明による方法のステップ(a)で調製した後、ステップ(b)において、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーをラジカル重合させ、それによって介在ポリマーを得る。
【0095】
ステップ(b)は、好ましくは、例えば、油中水乳濁液中の逆乳化重合として実施される。この逆乳化重合法においては、得られる逆相ポリマー乳濁液は、介在ポリマーを含む分散水相、および不活性油性物質から形成される連続油相を含む。
【0096】
当業者は、油中水モノマー分散液をラジカル重合させる方法を知っている。一般的に、ステップ(b)による重合反応は、1種または複数の通常の重合開始剤の存在下で実施される。
【0097】
ラジカルは、例えば、熱的に誘発されるもしくは光化学的に誘発される単結合のホモリシスまたはレドックス反応により形成し得る。
【0098】
好適な水溶性開始剤の例には、例えば、2,2'-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス-(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、4,4'-アゾビス-(4-シアノペンタン酸)、または過硫酸アンモニウム/硫酸第二鉄などのレドックス系が含まれる。油溶性開始剤には、例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウリルもしくは過酸化tert-ブチル、または2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2'-アゾビスイソブチレートおよび2,2'-アゾビス-(4-メトキシ-2, 4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物が含まれる。開始剤は、単独でまたは組み合わせてのいずれかで、一般的に油中水モノマー分散液の総重量の約0.005から0.5重量%の量で使用してもよい。当業者は、得られるポリマー生成物の特性、例えば、その平均分子量を改変するために開始剤の量およびタイプを改変する方法をたいてい知っている。
【0099】
好ましくは、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミノプロパン)ジヒドロクロリドなどのアゾ化合物、または、好ましくは、場合によって還元剤、例えばアミンまたは硫酸ナトリウムと組み合わせた、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素が、ラジカル開始剤として使用される。重合するモノマーに対する開始剤の量は、一般に、10-3から1.0重量%、好ましくは10-2から0.1重量%に及ぶ。開始剤は、重合の初めに完全に添加することができ、または一部のみを添加し、その後、重合の全体の過程にわたって残量を配分することもできる。好ましい一実施形態においては、重合を、アゾ開始剤を用いて開始し、最高温度に到達後、レドックス開始剤系を用いて継続して残余モノマーの含有量を減少させる。
【0100】
別の有利な実施形態においては、発熱重合反応が完了すると、すなわち、一般に温度が最高になった後、残余モノマーの含有量を、その後のレドックス開始剤の添加によって、さらに減少させる。
【0101】
本発明の別の有利な実施形態においては、モノマーおよびポリマー凝固剤の両方を、重合の間に重合反応器中に配分する。一般に、一部、例えば10から20%のモノマーおよびポリマー凝固剤を初めに導入する。重合の開始に続いて、場合によって、さらに重合開始剤を配分し、上述の配分を実施する。
【0102】
さらに、重合の間および/または後に油および/または水を除去すること、および、場合によって、追加のポリマー凝固剤を添加することも可能である。しかし、蒸発は、かなりエネルギーを消費するので、油中水モノマー分散液中の水および油性物質の含有量は、好ましくは、あるとしても少量のみを重合後に蒸発するように最適化する。
【0103】
重合温度は、一般的に、0から120℃、好ましくは30から90℃、より好ましくは50から70℃である。重合温度は、使用される開始剤の分解動力学に基づいて選択し得る。重合は、好ましくは、系を、不活性ガスでパージし、不活性ガス雰囲気下で、例えば窒素雰囲気下で重合させるように実施する。重合転化または重合の終了は、残余モノマーの含有率を測定することによって容易に検知し得る。この目的のための方法は、当業者によく知られている。
【0104】
重合時間は、2分の1時間の短時間が使用され得るが、当技術分野で通常使用される重合時間と同じであり、一般に0.5から3時間、好ましくは1から2.5時間である。しかし、より短時間により急速な重合を試みることによって、熱の除去についての問題が生じる。これに関して、重合媒体を、重合の間、よく撹拌する、または別のやり方でかき混ぜることが非常に好ましい。
【0105】
重合に使用される装置は、単に、水中油または油中水乳化重合に使用されるような標準の反応器であってよい。
【0106】
重合に続いて、塩または酸などの追加の添加物を、分散液に、好ましくは撹拌しながら場合によって添加する前に、反応混合物を冷却することが有利であり得る。
【0107】
残余モノマー含有量を減少させるために、重合の間に温度を高くすることも可能である。別法として、重合の間および終わりに、追加の開始剤および/または残余モノマー破壊剤(destructor)を使用することも可能である。
【0108】
本発明の意味の範囲内で残余モノマー破壊剤とは、それらがもはや重合可能ではない、したがって本発明の意味の範囲内で、それらは、もはやモノマーではなくなるように化学反応を用いて重合性モノマーを改変する物質である。モノマー中に存在する二重結合と反応する物質および/またはより大量の重合を開始し得る物質を、この目的のために使用し得る。二重結合と反応する残余モノマー破壊剤としては、還元剤、例えば、好ましくは、VI未満の酸化数を有する硫黄から誘導される酸および酸の中性塩の群からの物質、好ましくは亜ジチオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたは二亜硫酸ナトリウム、および/または硫化水素基を有する物質、好ましくは硫化水素ナトリウムまたはチオールの群からの化合物、好ましくはメルカプトエタノール、ドデシルメルカプタン、チオプロピオン酸またはチオプロピオン酸の塩またはチオプロパンスルホン酸またはチオプロパンスルホン酸の塩、および/または、アミンの群からの物質、好ましくは低揮発性を有するアミンの群からの物質、好ましくはジイソプロパノールアミンまたはアミノエチルエタノールアミン、および/またはブンテ(Bunte)塩、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化硫黄、二酸化硫黄の水性および有機溶液、硫酸ヒドロキシルアンモニウム、またはチオ尿素を含む群からの物質を使用することができる。
【0109】
好ましくは、油中水ポリマー分散液は、多くても5,000ppm、より好ましくは、多くても2,500ppm、さらにより好ましくは、多くても1,000ppm、さらにより好ましくは、多くても800ppm、最も好ましくは、多くても600ppm、および、特には、多くても400ppmのラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の残余含有量を有する。好ましい一実施形態においては、油中水ポリマー分散液は、多くても200ppm、より好ましくは、多くても100ppm、さらにより好ましくは、多くても75ppm、さらにより好ましくは、多くても50ppm、最も好ましくは、多くても30ppm、および、特には、多くても20ppmのラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の残余含有量を有する。
【0110】
好ましくは、油中水ポリマー分散液は、多くても5,000ppm、より好ましくは、多くても2,500ppm、さらにより好ましくは、多くても1,000ppm、さらにより好ましくは、多くても800ppm、最も好ましくは、多くても600ppm、および、特には、多くても400ppmのラジカル重合性エチレン性不飽和コモノマーの残余含有量を有する。
【0111】
本発明による方法の工程(b)は、油中水モノマー分散液を油中水ポリマー分散液に変換する。
【0112】
工程(b)における重合反応の後および/または間に、得られる油中水ポリマー分散液は、溶媒の含有量を減少させるために蒸留してもよい。
【0113】
好ましい一実施形態においては、本発明による方法は、
(a)以下を含む油中水モノマー分散液を調製する工程
- 水、
- 油性物質、
- 油中水乳化剤、
- 75,000から350,000g/molの重量平均分子量Mwを有し、
・ 30から100重量%の(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、および/またはアルケニルトリアルキルアンモニウムハライド、および
・ 0から70重量%の非イオン性エチレン性不飽和コモノマー
から合成されるポリマー凝固剤、および
- 以下のモノマー混合物
・ 1から99重量%、好ましくは1から60重量%の(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、アルケニルトリアルキルアンモニウムハライドおよび/またはジアルケニルジアルキルアンモニウムハライド、および
・ 1から99重量%、好ましくは40から99重量%の非イオン性エチレン性不飽和コモノマー;ならびに
(b)ラジカル開始剤を添加し、それによってモノマー混合物のラジカル重合を実施する工程
を含む。
【0114】
本発明のさらなる一態様は、水、油性物質、乳化剤、ポリマー凝固剤、および介在ポリマーを含む油中水ポリマー分散液に関し、この分散液は、上記の方法によって得られる。
【0115】
本発明による油中水ポリマー分散液は、油中水ポリマー懸濁液または油中水ポリマー乳濁液またはこれらの混合物であり得る。
【0116】
好ましくは、油性物質、水、ポリマー凝固剤、油中水乳化剤および/または油中水モノマー分散液のさらなる構成要素(含有量、相対比、化学特性など)に関する好ましい実施形態は、本発明による油中水ポリマー分散液にも当てはまる。
【0117】
本発明による油中水ポリマー分散液は、通例、自己反転、すなわち、相反転は、乳濁液が水に注がれ、分散液中に存在するポリマーが水に溶解する場合に起こる。しかし、相反転は、湿潤剤(=インバーター)を添加することによって加速し得る。これらの湿潤剤は、油中水ポリマー分散液に添加することができ、またはその中に分散液が導入される水に添加することができる。
【0118】
好ましくは、湿潤剤は、7から16、より好ましくは8から15、さらにより好ましくは9から14、最も好ましくは9.5から13.5、および、特には10から13の範囲内のHLB(親水性-親油性バランス)値を有する。好ましくは、湿潤剤の含有量は、油中水ポリマー分散液の総重量に対して、0.005から25重量%、より好ましくは0.01から10重量%、さらにより好ましくは0.1から7.5重量%、さらにより好ましくは0.5から5.0重量%、最も好ましくは1.0から4.0重量%、および、特には1.5から3.5重量%の範囲内である。
【0119】
油中水ポリマー分散液を反転させるために好ましく使用される湿潤剤は、5から20の間のエトキシル化度を有するエトキシル化アルキルフェノール、または5から20の間のエトキシル化度を有する10から22個の炭素のエトキシル化脂肪アルコールである。油中水ポリマー分散液は、全分散液に対して10重量%までの、9を上回る、好ましくは、少なくとも10のHLB値を有する湿潤剤を含んでいてもよい。10を上回るHLB値を有する好適な湿潤剤の例は、エトキシル化アルキルフェノール、アルキル基が少なくとも3個の炭素原子からなるスルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、10から22個の炭素原子の脂肪酸から誘導される石鹸、および10から26個の炭素原子のアルキル-またはアルケニルサルフェートのアルカリ金属塩である。エトキシル化脂肪アルコールおよびエトキシル化アミンも好適である。湿潤剤が重合自体に使用される場合、特に微細な油中水ポリマー分散液を得ることができる。
【0120】
特に好ましい実施形態においては、重合の間に油中水モノマー分散液に存在し得る第2の乳化剤の化学的性質は、重合後に油中水ポリマー分散液に添加される湿潤剤と同一である。
【0121】
好ましくは、本発明による油中水ポリマー分散液は、5.0から45重量%、より好ましくは10から40重量%、さらにより好ましくは15から35重量%、さらにより好ましくは20から30重量%、最も好ましくは22から29重量%、および、特には24から28重量%の範囲内の含水量を有する。
【0122】
特に好ましい実施形態においては、本発明による油中水ポリマー分散液の含水量は、油中水ポリマー分散液が、水中油ポリマー分散液に反転される限界に近い。好ましくは、自己反転は、油中水ポリマー分散液の総重量に対して、少なくとも100重量%、より好ましくは、少なくとも75重量%、さらにより好ましくは、少なくとも50重量%、さらにより好ましくは、少なくとも30重量%、最も好ましくは、少なくとも20重量%、および、特には、少なくとも10重量%の水が添加される時に起こる。
【0123】
本発明による油中水ポリマー分散液の好ましい一実施形態においては、介在ポリマーの重量平均分子量Mwは、ポリマー凝固剤の重量平均分子量Mwより大きい。当業者は、介在ポリマーの重量平均分子量を測定する方法、および、例えば、開始剤濃度を調節すること、連鎖移動剤の添加などによって、これに影響を及ぼす方法を知っている。好ましくは、重量平均分子量は、好ましくはプルラン標準に対して溶離液として1.5%ギ酸を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、またはレオロジー的測定によって測定される。
【0124】
好ましくは、介在ポリマーは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、さらにより好ましくは、少なくとも98%、さらにより好ましくは、少なくとも99%、最も好ましくは、少なくとも99.5%、および、特には、少なくとも99.9%の重合度を示す。
【0125】
好ましくは、介在ポリマーの重量平均分子量は、少なくとも1,000,000g mol-1、より好ましくは、少なくとも1,250,000g mol-1、さらにより好ましくは、少なくとも1,500,000g mol-1、さらにより好ましくは、少なくとも1,750,000g mol-1、最も好ましくは、少なくとも2,000,000g mol-1、および、特には、少なくとも2,500,000g mol-1である。
【0126】
好ましくは、介在ポリマーの重量平均分子量は、任意の油性物質が存在しないことを除いて正確に同じ条件下(逆乳化重合と対照的な溶液重合)で得られるポリマーの重量平均分子量より高い。
【0127】
好ましくは、介在ポリマーの分子量分散Mw/Mnは、1.0から4.0、より好ましくは1.5から3.5、および、特には1.8から3.2の範囲内である。
【0128】
好ましくは、介在ポリマーの含有量は、油中水ポリマー分散液の総重量に対して、1.0から90重量%、より好ましくは5.0から80重量%、さらにより好ましくは15から65重量%、さらにより好ましくは25から60重量%、最も好ましくは30から55重量%、および、特には35から50重量%の範囲内である。
【0129】
好ましくは、介在ポリマーのポリマー凝固剤との相対重量比は、50:1から0.1:1、より好ましくは30:1から0.5:1、さらにより好ましくは20:1から1:1、さらにより好ましくは10:1から2:1、最も好ましくは8:1から5:1、および、特には7:1から6:1の範囲内である。
【0130】
好ましくは、介在ポリマーおよびポリマー凝固剤を含む、油中水ポリマー分散液中に存在するポリマー混合物の重量平均分子量Mwは、GPC法により測定して1.5 106 g/molを上回る範囲にある。
【0131】
好ましくは、介在ポリマーは、水溶性または水膨潤性である。
【0132】
好ましくは、本発明による油中水ポリマー分散液は、
- 1重量%水性分散液中で、3,000から20,000mPas、より好ましくは4,000から18,000mPas、さらにより好ましくは5,000から16,000mPas、最も好ましくは6,000から14,000mPas、および、特には7,000から9,000mPasの範囲内の溶液粘度(Brookfieldによる);ならびに/または
- 少なくとも750mPas、より好ましくは、少なくとも1,000mPas、さらにより好ましくは、少なくとも1,250mPas、最も好ましくは、少なくとも1,500mPas、および、特には、少なくとも1,750mPasの塩粘度
を有する。
【0133】
本発明による油中水ポリマー分散液の好ましい実施形態AからDをtable(下表)に要約する。
【0134】
【表1】
【0135】
実施形態AからDの好ましい変数1から6をtable(下表)に要約する。
【0136】
【表2】
【0137】
上表において、全ての百分率は、油中水ポリマー分散液の総重量に基づく。
【0138】
油中水ポリマー分散液の好ましい成分およびそれらの各含有量は、実施形態AからDの変数1から6との次の組合せ: Al、A2、A3、A4、A5、A6、B1、B2、B3、B4、B5、B6、C1、C2、C3、C4、C5、C6、D1、D2、D3、D4、D5、およびD6に由来する。例えば、「C4」は、実施形態Cの変形4との組合せ、すなわち、25-75重量%の水、5.0-45重量%の少なくとも1種の脂肪族炭化水素、3.0-9.0重量%の少なくとも1種の3-8のHLB値を有する非イオン性界面活性剤、6.0-13重量%の少なくとも1種の(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライドから誘導されるポリマー凝固剤、およびa) 2.5-17.5重量%の少なくとも1種の(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドから、およびb) 10-50重量%の少なくとも1種の(アルク)アクリルアミドから誘導される少なくとも1種の介在ポリマーを含む油中水ポリマー分散液を意味し、ここで、全ての百分率は、油中水ポリマー分散液の総重量に基づく。
【0139】
好ましくは、本発明による油中水ポリマー分散液は液体である。粉末と比較して、液体分散液は添加がより容易である。粉末は、通常、高価な添加装置を必要とする。
【0140】
好ましくは、本発明による油中水ポリマー分散液の総ポリマー含有量は、油中水ポリマー分散液の総重量に対して、少なくとも20重量%、より好ましくは、少なくとも30重量%、さらにより好ましくは、少なくとも35重量%、さらにより好ましくは、少なくとも40重量%、最も好ましくは40重量%から65重量%、および、特には45重量%から50重量%の範囲内である。
【0141】
本発明による油中水ポリマー分散液の特に好ましい実施形態においては、ポリマーの総含有量の油性物質の総含有量に対する相対重量比は、10:1から0.1:1、より好ましくは8:1から0.5:1、さらにより好ましくは6:1から0.75:1、さらにより好ましくは4:1から1:1、最も好ましくは3:1から1:1、および、特には2.5:1から1.5:1の範囲内である。
【0142】
場合によっては、本発明による油中水ポリマー分散液は、例えば、水溶性または油溶性酸および/または塩の形態の追加の通常の成分を含んでもよい。それぞれ、分散液全体に対して、酸は、好ましくは、0.1から3重量%の量で存在し、塩は、0.1から3重量%の量で存在し、酸および塩は、一緒にすれば、分散液の総重量に対して、好ましくは、多くても5重量%、好ましくは、多くても4重量%の量で存在する。
【0143】
前記追加の通常の成分は、重合前、重合の間または重合後に添加し得る。
【0144】
水溶性有機酸および/または無機酸が存在し得る。より具体的には、好適な有機水溶性酸は、有機カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、好ましくは脂肪族または芳香族モノ-、ジ-、ポリカルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸、好ましくは酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、特に好ましくはクエン酸、アジピン酸および/または安息香酸である。好適な無機酸は、水溶性無機酸、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸および/またはリン酸である。非常に特に好ましいのは、クエン酸、アジピン酸、安息香酸、塩酸、硫酸および/またはリン酸である。
【0145】
アンモニウム、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属塩、好ましくはアンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび/またはマグネシウム塩を、水溶性塩として使用し得る。このような塩は、無機酸の塩または有機酸の塩、好ましくは有機カルボン酸、スルホン酸、リン酸の塩、または無機酸の塩であり得る。水溶性塩は、好ましくは、脂肪族または芳香族モノ-、ジ-、ポリ-カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、好ましくは酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩または安息香酸塩、または硫酸塩、塩酸塩またはリン酸塩である。非常に特に好ましくは、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムおよび/または硫酸ナトリウムが、水溶性塩として使用される。しかし、好ましくは、追加の塩は添加されない。
【0146】
塩は、重合前、重合の間または重合後に添加することができ、重合は、好ましくは水溶性塩の存在下で実施される。
【0147】
さらに、本発明による油中水ポリマー分散液は、水溶性多官能性アルコールおよび/または脂肪族アミンとのそれらの反応生成物を、ポリマー凝固剤に対して、最大30重量%まで、好ましくは、最大15重量%まで、より好ましくは、最大10重量%の量で含んでもよい。この関連でより明確に好適であるのは、50から50,000、好ましくは1,500から30,000の分子量を有する、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレン/エチレンオキシドのブロックコポリマー、アルキルまたはアルキレン残基中にC6〜C22を有する、多官能性水溶性アルコールおよび/またはそれらの脂肪族アミンとの反応生成物としての、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリトリトールおよび/またはソルビトールなどの低分子量多官能性アルコールである。
【0148】
前記水溶性多官能性アルコールおよび/または脂肪族アミンとのそれらの反応生成物は、重合前、重合の間または重合後に添加し得る。
【0149】
好ましくは、本発明による油中水ポリマー分散液は、少なくとも35%または少なくとも37.5%、より好ましくは、少なくとも40%または少なくとも42.5%、さらにより好ましくは、少なくとも45%または少なくとも47.5%、さらにより好ましくは、少なくとも50%または少なくとも52.5%、最も好ましくは、少なくとも55%または少なくとも57.5%、および、特には、少なくとも60%または少なくとも62.5%のパルプ製紙業界技術協会(TAPPI)の標準試験法、すなわち、T261 pm-79法(すなわち、Britt Jar法)による歩留り向上効果を示す。好ましい一実施形態においては、試験条件を応用例A-3におけるように変更する。
【0150】
本発明による油中水ポリマー分散液は、従来の油中水ポリマー分散液に比べていくつかの利点を有し、例えば、
- とりわけ、以下の油中水ポリマー分散液の改善されたレオロジー特性をもたらすより高分子量を有する介在ポリマーを得ることができ、
- ポリマー凝固剤中および/または介在ポリマー中のイオン性モノマーの非イオン性モノマーに対するモル比は、油中水ポリマー分散液の本質的な性質を著しく低下させることなく広い範囲内で変えることができ、
- ポリマー凝固剤の化学的性質は、介在ポリマーの化学的性質とは実質的に無関係であり、
- 分岐剤、架橋剤および他の重合助剤は、重合プロセスを複雑にすることなく組み込むことができる。
【0151】
本発明による油中水ポリマー分散液は、固体/液体分離プロセス、例えば、紙における歩留り向上剤または汚水処理プラントにおけるスラッジ脱水における添加剤として有用である。それらは、特に紙歩留りにおける灰分歩留りおよび脱水に関して改善された応用性能を示す。本発明により得られる油中水ポリマー分散液は、特に製紙における歩留り向上剤および脱水剤として有用な、製紙における優れた助剤であることの予想外の利点を有する。
【0152】
本発明のさらなる一態様は、好ましくは製紙における、好ましくは歩留り向上剤および/または排水助剤としての凝集剤(凝集化剤)としての本発明による油中水ポリマー分散液の使用に関する。
【0153】
本発明のさらなる一態様は、紙、板紙(paperboard)または厚紙の製造方法に関し、この方法は、(ii)本発明による油中水ポリマー分散液を水性セルロース懸濁液に添加する工程を含む。好ましくは、この方法は、(i)追加のポリマー凝固剤をセルロース懸濁液に添加する工程をさらに含み、ここで、ステップ(i)は、好ましくはステップ(ii)の前に実施される。
【0154】
好ましくは、紙の製造方法は、セルロース懸濁液を形成すること、この懸濁液を凝集させること、場合によってこの懸濁液を機械的に剪断すること、および場合によってこの懸濁液を再凝集させること、この懸濁液をスクリーン上に排出してシートを形成し、次いでシートを乾燥することを含み、ここで、この懸濁液は、本発明による油中水ポリマー分散液を導入することによって凝集させ、かつ/または再凝集させる。
【0155】
本発明による油中水ポリマー分散液は、歩留り改善に関して性能改善を与え、さらに依然として良好な排水および形成性能を維持することが驚くべきことに見いだされた。油中水ポリマー分散液は、より効率的にセルロース製紙原料のセルロース繊維および他の成分を凝集させ、したがって歩留りの改善を引き起こす。
【0156】
本発明による紙の製造方法においては、好ましくは、油中水ポリマー分散液は、セルロース懸濁液を凝集させ、次いで再凝集させる多成分凝集剤系の部分として添加することができるが、油中水ポリマー分散液は、製紙プロセスにおける単独の処理薬剤として製紙原料に添加することができる。
【0157】
本発明の一態様においては、セルロース懸濁液を、油中水ポリマー分散液(凝集化剤)によって凝集させ、次いで、セルロース懸濁液を、油中水ポリマー分散液(再凝集化剤)の追加の添加によって、または別法として、別の凝集化材料(再凝集化剤)によって再凝集させる。場合によっては、形成される綿状沈殿物を、再凝集させる前に、例えば、機械的剪断力を適用することによって分解する。これは、例えば、凝集させたセルロース懸濁液を、遠心式スクリーンまたはファンポンプなどの1つまたは複数の剪断段階に通すことで行われ得る。
【0158】
本発明の代替形態においては、セルロース懸濁液を、凝集化材料 (凝集化剤)を導入することによって凝集させ、セルロース懸濁液を、油中水ポリマー分散液(再凝集化剤)を導入することによって再凝集させる。場合によっては、綿状沈殿物を再凝集前に分解する。
【0159】
セルロース懸濁液を、任意の好適な添加点において凝集化剤を懸濁液に導入することによって凝集させてもよい。これは、例えば、ポンプ段階の1つの前またはセントリスクリーンの前またはセントリスクリーンの後でもよい。次いで、セルロース懸濁液を、それを凝集させた後の任意の好適な点において再凝集させることができる。凝集化剤および再凝集化剤を、例えば、添加の間に任意の剪断段階を用いずに、近接して添加することができる。好ましくは、凝集化剤および再凝集化剤の添加の間に少なくとも1つの(クリーニング段階、ポンプ段階および混合段階から選択される)剪断段階が存在する。望ましくは、凝集化剤を剪断段階、例えば、ファンポンプまたはセントリスクリーンの前に適用する場合、再凝集化剤をその剪断段階後に添加することができる。これは、剪断段階の直後またはより一般的にはずっと後であってよい。したがって、凝集化剤を、ファンポンプの前に添加することができ、再凝集化剤を、セントリスクリーンの後に添加することができる。
【0160】
したがって、油中水ポリマー分散液は、凝集化剤としておよび/または再凝集化剤として添加される。
【0161】
望ましくは、油中水ポリマー分散液は、固体含有量に対して、5から5,000ppm、より好ましくは50から2,500ppm、最も好ましくは200から1,000ppmの用量で原料に添加することができる。
【0162】
油中水ポリマー分散液が、多成分凝集系の一部として製紙プロセスにおいて使用される場合、それは、凝集化剤および/または再凝集化剤として添加することができる。本発明の好ましい一態様によれば、多成分凝集系は、油中水ポリマー分散液および異なる凝集化材料を含む。この凝集化材料は、水溶性ポリマー、不水溶性ポリマーマイクロビーズ、粒状の生の多糖および無機材料からなる群のいずれかであってもよい。好適な凝集化材料には、珪質材料、ミョウバン、塩化アルミニウム水和物およびポリ塩化アルミニウムなどの無機材料が含まれる。
【0163】
凝集化材料が、水溶性ポリマーである場合、それは、任意の好適な水溶性ポリマー、例えば、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性および両性デンプンまたは他の多糖などの生体高分子であってもよい。凝集化材料は、任意の好適な陽イオン性、陰イオン性、両性または非イオン性の合成水溶性ポリマーでもあってもよい。
【0164】
凝集化材料は、陰イオン性微粒子組成物の形態である珪質材料であってもよい。珪質材料には、シリカベースの粒子、コロイダルシリカ、シリカミクロゲル、シリカゾル、シリカゲル、ポリケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ポリアルミノケイ酸塩、ポリホウケイ酸塩、ゼオライトおよび粘土が含まれる。粘土は、好ましくは膨潤性粘土、例えば、これは、典型的には、ベントナイトタイプ粘土でもよい。好ましい粘土は、水中で膨潤性であり、天然に水膨潤性である粘土、またはそれらを水膨潤性にするために、例えば、イオン交換によって改変し得る粘土を含む。好適な水膨潤性粘土には、それだけには限らないが、しばしば、ヘクトライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト、アタパルジャイトおよびセピオライトと称される粘土が含まれる。
【0165】
別法として、凝集化材料は、ポリケイ酸塩およびポリアルミノケイ酸塩から選択されるコロイダルシリカである。これには、1,000m2/gを上回る表面積の多粒子状ポリ珪質ミクロゲル、例えば、水溶性多粒子状ポリアルミノケイ酸塩ミクロゲルまたはアルミネートポリケイ酸が含まれる。さらに、凝集化材料は、コロイドケイ酸であり得る。
【0166】
凝集化材料は、コロイドホウケイ酸塩でもあり得る。コロイドホウケイ酸塩は、アルカリ金属ケイ酸塩の希釈水溶液を、陽イオン交換樹脂と接触させてケイ酸を生成し、次いで、アルカリ金属ホウ酸塩の薄い溶液をアルカリ金属水酸化物と一緒に混合して7から10.5のpHを有する0.01から30%のB2O3を含む水溶液を形成することによってヒールを形成することによって調製することができる。
【0167】
セルロース原料懸濁液は、填料を含み得る。填料は、伝統的に使用されている填料材料のいずれかであってよい。例えば、填料は、カオリンなどの粘土であってよく、または、填料は、重質炭酸カルシウムまたは特に沈降炭酸カルシウムであり得る炭酸カルシウムであってよく、または、填料材料として二酸化チタンを使用するこが好ましいことがある。他の填料材料の例には、合成ポリマー填料も含まれる。製紙原料は、任意の好適な量の填料を含んでいてよい。一般に、セルロース懸濁液は、少なくとも5重量%の填料材料を含む。典型的に、填料の量は、40%以上まで、好ましくは10%から40%の間の填料となる。
【0168】
油中水ポリマー分散液と共に使用される凝集化材料は、水溶性エチレン性不飽和モノマーまたはモノマーブレンドから形成された陰イオン性、非イオン性、陽イオン性または両性の分枝水溶性ポリマーであってよい。例えば、分枝水溶性ポリマーは、a) 1.5dl/gを上回る固有粘度および/または約2.0mPa.s.を上回る食塩水ブルックフィールド粘度を示してもよい。
【0169】
別法として、油中水ポリマー分散液と共に使用される凝集化材料には、架橋陰イオン性または両性ポリマー微小粒子が含まれる。
【0170】
特に好ましい一方法は、凝集化剤として油中水ポリマー分散液および再凝集化剤として陰イオン性凝集化材料を含む多成分凝集系を用いる。陰イオン性凝集化材料には、微粒子シリカ、ポリケイ酸塩などの珪質材料、直鎖および分枝水溶性ポリマーの両方を含めた陰イオン性ポリマーマイクロビーズおよび水溶性陰イオン性ポリマーが含まれる。
【0171】
好ましくは、本発明による紙の製造方法は、少なくとも15g/m2、より好ましくは、少なくとも20g/m2、さらにより好ましくは、少なくとも25g/m2、さらにより好ましくは、少なくとも30g/m2、最も好ましくは、少なくとも35g/m2、および、特には、少なくとも40g/m2の面積重量を有する紙の製造用である。
【0172】
紙の製造方法の特に好ましい一実施形態においては、追加のポリマー凝固剤を、好ましくは油中水ポリマー分散液を導入する前にセルロース懸濁液に添加する、すなわち、前記追加のポリマー凝固剤の供給点は、好ましくは、油中水ポリマー分散液の供給点に対して抄紙機上の「上流」に位置している。追加のポリマー凝固剤の供給点は、例えば、ポンプ段階の1つの前またはセントリスクリーンの前であってよい。追加のポリマー凝固剤および油中水ポリマー分散液は、近接して、例えば、添加の間に任意の剪断段階を用いずに添加してもよい。
【0173】
前記追加の凝固剤は、油中水ポリマー分散液中に存在し、この存在下で、in situ重合反応が実施されるポリマー凝固剤と構造および/または分子量分布が同一であってもよい。しかし、好ましくは、前記追加のポリマー凝固剤は、油中水ポリマー分散液に存在するポリマー凝固剤と異なる。油中水ポリマー分散液と関連して上に記載されたポリマー凝固剤の好ましい実施形態は、好ましくは、紙の製造方法においてさらに使用される前記追加のポリマー凝固剤にも適用される。
【0174】
好ましくは、追加のポリマー凝固剤は、
- 30から100重量%の(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、アルケニルトリアルキルアンモニウムハライドおよび/もしくはジアルケニルジアルキルアンモニウムハライド;および0から70重量%の非イオン性コモノマー;または
- エピクロロヒドリンおよびジアルキルアミンの共重合物
から誘導(合成)される。
【0175】
二重の凝集系において凝集剤として本発明による油中水ポリマー分散液を使用する場合、優れた歩留りおよび排水性能が、それぞれ、良好な形成と同時に起こり得ることが驚くべきことに見出された。通常、歩留り/排水性能および形成性能は、互いに拮抗するが、驚くべきことに、本発明による油中水ポリマー分散液は、両方の点で有利である。油中水ポリマー分散液は、著しく改善された灰分歩留りを示し、これは、歩留りおよび排水性能のための十分に確立された尺度である。
【0176】
本発明による油中水ポリマー分散液を、ポリマー凝固剤を含まない通常の油中水ポリマー分散液と比較すると、灰分歩留り値は、実質的により良い。
【0177】
さらに、本発明による油中水ポリマー分散液は、油性物質を含まない通常の水中水ポリマー分散液と比較すると、実質的に改善されている。
【0178】
驚くべきことに、油中水ポリマー分散液の歩留りおよび排水効率の一層さらなる改善を、セルロース懸濁液にさらなるポリマー凝固剤を添加することによって達成し得る。
【0179】
(実施例)
粘度測定方法
溶液粘度-水性ポリマー組成物1重量%ポリマー含有量:
ブルックフィールド粘度を、RVT-DV II ブルックフィールド粘度計を用いて測定する。300mlの(ポリマー含有量に対して)1.0重量%溶液を調製するのに必要な量を、シリンジを用いて化学天秤上で秤量する。ビーカーに300mlの脱塩水を満たす。次いで、最初に導入した水を、磁気撹拌機(40/7)を用いて、ビーカーの底に達するコーンが形成されるような強度(約900Upm)で撹拌する。ここで、ポリマーをこの「撹拌漏斗」中に急速に注入する。1分後、磁気撹拌機を取り外し、撹拌を300±10Upmでフィンガー攪拌機(finger agitator)を用いて30分間続ける。温度を20±1℃に調節し、この混合物を5分間静置する。次いで、割線値は1分間一定であるという条件で、スピンドルno.3を混合物中にゆっくりと浸し、粘度を5Upmで測定する。
【0180】
塩粘度:
活性ポリマー含有量に対して0.9重量%のポリマーを含む水性混合物を調製する。30gの前記水性混合物を、270mlの水中の30gの塩化ナトリウムの溶液を添加することによって希釈する。混合物全体を30分間撹拌する。温度を20℃に調節し、混合物を5分間静置する。次いで、割線値は1分間一定であるという条件で、スピンドルno.1を混合物中にゆっくりと浸し、粘度を10Upmで測定する。スピンドルにおける気泡は厳重に避ける必要がある。
【実施例】
【0181】
比較例C-1、C-2およびC-3(ポリマー凝固剤の不存在):
(比較例C-1)
油中水モノマー分散液を、15.744kgの水、25.111kgのC16〜C20アルカン、ソルビタン脂肪酸エステルおよび脂肪アルコールエトキシレートを含む3.348kgの乳化剤組成物、10.613kgのADAME-quat.(80重量%)(すなわち、塩化メチルで四級化されたジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート)、および59.929kgのアクリルアミド(50重量%)から調製した。硫酸を添加することによって、pH値を3に調節した。アゾ開始剤を添加することによってラジカル重合を開始した。
【0182】
(比較例C-2)
油中水モノマー分散液を、21.440kgの水、25.890kgのC16〜C20アルカン、ソルビタン脂肪酸エステルおよび脂肪アルコールエトキシレートを含む3.702kgの乳化剤組成物、12.750kgのADAME-quat. (80重量%)、および50.162kgのアクリルアミド(50重量%)から調製した。硫酸を添加することによって、pHを3に調節した。比較例C-1と同じ開始剤系を添加することによって、ラジカル重合を開始した。
【0183】
(比較例C-3)
油中水モノマー分散液を、16.836kgの水、22.474kgのC16〜C20アルカン、ソルビタン脂肪酸エステルおよび脂肪アルコールエトキシレートを含む3.532kgの乳化剤組成物、20.811kgのADAME-quat. (80重量%)、および44.495kgのアクリルアミド(50重量%)から調製した。硫酸を添加することによって、pH値を3に調節した。比較例C-1およびC-2と同じ開始剤系を添加することによって、ラジカル重合を開始した。
【0184】
【表3】
【0185】
(比較例C-4)(油性物質/乳化剤の不存在)
水中水モノマー分散液を、31.953kgの水、5.569kgのADAME-quat.(80重量%)、26.720kgのアクリルアミド(50重量%)、および31.572kgのポリマー凝固剤PC-2から調製した。硫酸を添加することによって、pH値を5に調節した。ラジカル開始剤を添加することによって、ラジカル重合を開始した。
【0186】
(比較例C-5)( DADMACから誘導されるポリマー凝固剤の存在)
油中水モノマー分散液を、296.7gのC16〜C20アルカン、ソルビタン脂肪酸エステルおよび脂肪アルコールエトキシレートを含む58.2gの乳化剤組成物、125.4gのADAME-quat. (80重量%)、708.0gのアクリルアミド(50重量%)、および170.2gのポリマー凝固剤PC-1から調製した。開始剤系を添加することによって、ラジカル重合を開始した。
【0187】
(本発明実施例I-1)( DIMAPA quat.から誘導されるポリマー凝固剤の存在)
油中水モノマー分散液を、0.827kgの水、24.067kgのC16〜C20アルカン、ソルビタン脂肪酸エステルおよび脂肪アルコールエトキシレートを含む5.856kgの乳化剤組成物、10.172kgのADAME-quat.(80重量%)、57.430kgのアクリルアミド(50重量%)、および13.806kgのポリマー凝固剤PC-2から調製した。開始剤系を添加することによって、ラジカル重合を開始した。
【0188】
【表4】
【0189】
比較例C-1、比較例C-5および本発明実施例I-1の油中水モノマー分散液から重合したポリマーの陽イオン性は、同一である(22重量%)。
【0190】
しかし、比較例C-2およびC-3の油中水モノマー分散液から重合したポリマーの陽イオン性は、より高かった(それぞれ、29重量%および43重量%)。この差異は、本発明実施例を比較例と比べる場合に考慮されるべきである。
【0191】
比較例C-1における陽イオン性ポリマー凝固剤の不存在および比較例C-5および本発明実施例I-1それぞれにおけるポリマー凝固剤の存在のほかに、実験条件にさらなる小さな差異が存在するが、これは、本発明実施例I-1の比較例C-1およびC-5との比較可能性を実質的に変えない。
【0192】
ポリマー凝固剤PC-1からPC-6:
【0193】
【表5】
【0194】
応用例A-1からA-4:
(応用例A-1)
BTG Mutek製のDFS 03装置を使用して、本発明による油中水ポリマー分散液を特定の紙パルプ懸濁液に添加することによって、歩留りを測定した。
【0195】
この目的のために、本発明による油中水ポリマー分散液を、脱イオン水を用いて0.1重量%の濃度に調節した。紙パルプ懸濁液(75重量%TMP、15重量%セルロース、10重量% SM rejects、Norske Skog、Walsum)を、ショッパー-リーグラー(Schopper-Riegler)濾水度試験器中で約1%の組織密度に水道水で希釈した。組織密度(1.22重量%)の測定後、本発明による油中水ポリマー分散液の3つの異なる濃度(400/800/1200g/l)において、歩留り試験を実施した。パルプ-水混合物を、800min-1で15秒、1000min-1で10秒および800min-1で10秒維持した。希釈したポリマー分散液を、最初の10秒後に配分し、歩留り濾液を、もう15秒後に除去し、Schwarzbandグレードフィルターを通して、105℃で1時間一定重量となるまで乾燥した。
【0196】
灰分歩留りを測定するために、550℃で2時間、灰化を実施し、絶対乾燥条件において、灰分を再秤量した。
【0197】
【数1】
【0198】
PD流入:重量%で示した流入液(パルプ懸濁液)のパルプ密度
PD流出:重量%で示した濾液(背水)のパルプ密度
灰分流出:濾液(背水)の重量%で示したパーセント無機燃焼残渣
灰分流入:流入液(パルプ懸濁液)の重量%で示したパーセント無機燃焼残渣。
【0199】
結果をtable(下表)に要約し、図1に示す。
【0200】
【表6】
【0201】
測定番号4と測定番号1から3との比較によって、本発明による油中水ポリマー分散液(I-1)は、同一の陽イオン性(22重量%、C-1)を有する先行技術による油中水ポリマー分散液に対して優れていることが示されている。
【0202】
したがって、ポリマー凝固剤の存在下におけるラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体および場合によって存在するラジカル重合性エチレン性不飽和コモノマーの重合は、モノマーを重合させる場合にポリマー凝固剤を除外することによって達成し得ない特性を生じる。
【0203】
さらに、測定番号5から9、10から14、15から19および20から24の組の互いの比較は、追加のポリマー凝固剤(添加剤1)は、本発明による油中水ポリマー分散液(l-1)の排水性能を著しく改善するが、様々な陽イオン性における先行技術の油中水ポリマー分散液の排水性能は、ほとんど改善されない(C-1からC-3)ことを示している。したがって、本発明による油中水ポリマー分散液と一緒に追加のポリマー凝固剤を用いる場合に、驚くべき相乗効果がある。
【0204】
(応用例A-2)
BTG Mutek製DFS 03装置を使用して、歩留りを、応用例1の実験条件と同様に測定した。
【0205】
実験を、0.5重量%の組織密度を有する古紙(60% DIP(脱インキ部分)および40%砕木パルプ、0.402μsにおけるゼータ電位-15.4mV) に実施した。
【0206】
被験サンプル:
C-1 39%活性 7.520mPa*s
C-5 37%活性 6.980mPa*s
I-1 37%活性 8.540mPa*s(1重量%溶液中で測定された粘度)
添加:約5g(乾燥器)において200、400および600ppm
結果をtable(下表)に要約し、図2から4に示す。
【0207】
【表7】
【0208】
実験によって、本発明による油中水ポリマー分散液(I-1)は、比較の水中水ポリマー分散液(C-1およびC-5)に対して優れていることが示された。
【0209】
(応用例A-3)
脱水測定を、修正したショッパー-リーグラー法によって実施した。歩留りおよび灰分歩留りをBritt-Jar法に従って測定した。紙の実験室シートを、形成を測定するために作製した。
【0210】
結果をtable(下表)に要約し、図5および6に示す。
【0211】
【表8】
【0212】
歩留り、灰分歩留りおよび形成は、先行技術による油中水分散液の添加を増すことによって改善し得る(C-1;図5)。
【0213】
しかし、より低用量において同一結果および一層より良い結果を、本発明による油中水ポリマー分散液によって達成し得る(I-1;図6)。
【0214】
(応用例A-4)
本発明による油中水ポリマー分散液(I-1)の歩留りおよび排水性能を、先行技術による水中水ポリマー分散液(C-4)の歩留りおよび排水性能と比較した。
【0215】
セルロース(75%短繊維、25%長繊維;濾水度31°SR)を、65%セルロースおよび35%チョーク(GCC)を含む試験混合物に調整した。この試験混合物は、3g/lの濃度を有した。
【0216】
ショッパー-リーグラー: 80gの再生紙、7gのカオリンおよび1913 gの水道水の組成を有する標準の再生紙を、3000rpmで15分間ホモジナイズした。その後、3g/lの濃度を有する試験懸濁液を調製した。
【0217】
歩留りを、BTG Mutek製DFS 04装置を用いて測定した。1000ml試験懸濁液を、ポリマー分散液と混合し、1000rpmで10秒間剪断した。その後、約200mlの体積を、600rpmで篩(40メッシュ/0.22)を通して排水した。総歩留りを、濾液の固体から算出し、灰分歩留りを灰化(550℃)後に測定した。
【0218】
排水速度も、DFS 04装置を用いて測定した。このシステムは、試験プロフィール、インキュベーション時間および撹拌速度を電子的に予めセットし、それによって試験中の誤差原因を排除するという利点を有する。
【0219】
第2参照として、この方法は、ショッパー-リーグラーによる排出速度(保持時間)の測定も含む。3 g/l試験混合物について、100、200および300ppmの用量を用いた。ポリマー分散液を添加後、混合物を3回かき混ぜた。
【0220】
結果を下表に要約する。
【0221】
試験にかけた溶液は、1%の活性物質の濃度で与えられた。
【0222】
【表9】
【0223】
実験によって、本発明による油中水ポリマー分散液(I-1)は、再生紙の標準の排水および歩留り性能において比較の水中水ポリマー分散液(C-4)に対して優れていることが明らかになった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙において凝集剤(flocculant)、脱水(排水)助剤および歩留り向上剤として有用な油中水ポリマー分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の乳化重合は、一般に、連続水相中に微細に分散された油相(水中油ポリマー分散液)を必要とする。
【0003】
逆乳化重合においては、水溶性ポリマーが、連続油相内の分散水相(油中水ポリマー分散液)中に生成される。形成されるポリマーは、分散水滴中に留まり、乳濁液の粘度に著しく影響を及ぼすことはない。生成物は、高い平均分子量を有するポリマーを含むが低粘度を示す。これは、通常の乳濁液に対して利点を提供するのみならず、乾燥生成物を形成することに対して利点を提供する。なぜなら、逆乳濁液は、低粘度で取り扱いが容易であり、極めて濃いために輸送が容易になり得るためである。好適な量の水で希釈して乳化破壊することは、容易に可能である。油中水ポリマー分散液の含水量が比較的高い場合、油中水乳濁液を水中油乳濁液に転化するためには、少量の水しか必要としない。ポリマーは、逆乳濁液中で小滴中に形成され、既に溶液となっているので、それは、水中に容易に分散し、それによって粘度を劇的に増加させる。
【0004】
逆乳濁液を水系に分散させる場合、水の量は急に増加する。これによって、ポリマーコイルが広がり、その結果、乳濁液は、大幅に希釈されるのに、系の粘度は、大幅に増加する。例えば、1mlの油中水乳濁液を50mlの体積の水に注ぐ場合(希釈係数50)、得られる水中油乳濁液の粘度は、例えば3倍に、さらに増加する。
【0005】
水溶性ホモポリマーおよび水溶性コポリマーを含む油中水ポリマー分散液は、今日、既に広く使用されている。例えば、特に、主として石炭、アルミニウムおよび石油の原材料抽出における、水および上水処理または排水処理における、固体の沈殿における凝集剤として、あるいは製糖業および製紙における助剤として使用されている。
【0006】
紙の製造においては、製紙完成紙料(papermaking furnish)、すなわち、通常95重量%を上回る含水量を有するセルロース系繊維の水性スラリーが、一般的に5重量%未満の含水量を有する紙匹(paper sheet)に形成される。それゆえ、製紙の脱水および歩留りの態様は、製造の効率およびコストに重要である。
【0007】
沈殿による脱水は、その相対的に低いコストのために排水の好ましい方法である。重力排水の後、さらなる方法、例えば、真空、圧搾、フェルトブランケット吸い取りおよび圧搾、蒸発などが、脱水用に使用される。実際に、このような方法を組合せて所望の含水量に紙匹を脱水、または乾燥するために使用されている。重量排水は、使用される最初の脱水方法でもあり最も安価でもあるため、この排水プロセスの効率改善は、他の方法により除去する必要のある水分量を減らし、それゆえ、脱水の全体効率を改善し、そのコストを低減する。
【0008】
様々な化学添加剤が、形成された紙匹から脱水する速度を増加させ、紙匹上に保持される微細繊維および填料の量を増加させる試みとして使用されている。凝集剤および排水助剤は、水性懸濁液中の液相からの固相の分離を最適化するために広く使用される。高分子量水溶性ポリマーの使用は、紙の製造において著しい改善を示す。これらの高分子量ポリマーは、凝集剤として作用し、紙匹上に堆積する大きな綿状沈殿物を形成する。これらは、紙匹の脱水にも役立つ。
【0009】
これらの高分子量水溶性ポリマーは、例えば、油中水ポリマー分散液または水中水ポリマー分散液として使用し得る。
【0010】
例えば、米国特許第5,292,800号は、水溶性または水膨潤性ポリマーの油中水乳濁液を開示しており、ここで、乳濁液の油相は、50重量%を下回らない植物または動物起源の油からなる。前記油中水ポリマー乳濁液は、紙、板紙(board)および厚紙(cardboard)の生産における歩留り向上剤および排水助剤として使用し得る。
【0011】
米国特許第6,117,938号は、水相が、高分子量であり、高分子量の水溶性陽イオン構造を持つポリマーと、水溶性であり、直鎖であるかまたはより低い程度の構造を有するポリマーとのブレンドを含む油中水ポリマー乳濁液を開示している。このポリマーブレンドは、製紙に見出されるものなどのセルロース懸濁液の排水に有用である。
【0012】
欧州特許出願第0262 945号は、ポリマーの一方をモノマー出発原料から他方のポリマーの溶液中の重合によって形成することによる、異なる水溶性ポリマータイプの均一なブレンドの形成を開示している。ポリアミンポリマーの、しばしばジメチルアミンとエピクロロヒドリンと併用される好適なアミノまたはハロゲン化合物の重合により作製される水溶性ポリアミンとのブレンドは、紙のサイジング用に特に有用である。
【0013】
米国特許出願第2004/0034145号は、ポリマーAおよび少なくとも1種のポリマー分散剤Bを含む水中水ポリマー分散剤を製造する方法を開示しており、これによれば、水溶性分散剤Bを含む水相中に分散されたモノマーが、ラジカル重合にかけられる。得られる水中水ポリマー分散液は、製紙における優れた歩留り向上剤および排水助剤である。
【0014】
国際公開第02/083743号および米国特許出願第2005/0183837号は、第1の水溶性ポリマーおよび第1の水溶性ポリマーの存在下で重合させて第2の水溶性ポリマーを形成する1種または複数の水溶性モノマーを含む水溶性挿入錯体を開示している。挿入錯体は、製紙において使用し得る。挿入錯体は、紙匹の形成および形成された紙匹の脱水の促進を助けるために抄紙機上の好適な位置において添加される。
【0015】
欧州特許第819 651号は、(i)水溶性非イオン性モノマー、陽イオン性コモノマーおよび陽イオン性ポリマーの水溶液を形成し、(ii)この水溶液を十分な量の炭化水素油中に乳化して油中水乳濁液を形成し、(iii)これらのモノマーを重合することによって調製されるスラッジ脱水組成物を開示している。
【0016】
欧州特許第807 646号は、それによって液体の放出量の減少および液体拡散性の増加が確実になる吸水性樹脂の調製方法を開示している。この調製方法においては、吸水性樹脂は、水溶性エチレン性不飽和モノマーの重合によって調製される。水溶性エチレン性不飽和モノマーの重合は、水溶性エチレン性不飽和モノマーの重合から得られる吸水性樹脂と異なる吸水速度を有する吸水性樹脂の存在下で行うことができる。好ましい一様式においては、重合は、逆相懸濁重合法によって実施される。
【0017】
米国特許出願第2002/188040号は、第1の水溶性ポリマーおよび第1の水溶性ポリマーの存在下で重合させて第2の水溶性ポリマーを形成する1種または複数の水溶性モノマーを含む水溶性挿入錯体を開示している。水溶性挿入錯体は、不溶性ポリマー粒子を含まない水溶液を形成する。挿入錯体は、それらの有効量を廃棄スラッジに添加することによって廃棄スラッジを処理するために使用し得る。挿入錯体は、抄紙機上の好適な位置で、それらの有効量をパルプまたは形成シートに添加することによって製紙にも使用し得る。挿入錯体は、さらに、所望の粘度、レオロジーまたは流れ曲線特性をもたらすために、それらの有効量を水性媒体に添加することによって、水系においてレオロジー調節剤として使用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5,292,800号
【特許文献2】米国特許第6,117,938号
【特許文献3】欧州特許出願第0262 945号
【特許文献4】米国特許出願第2004/0034145号
【特許文献5】国際公開第02/083743号
【特許文献6】米国特許出願第2005/0183837号
【特許文献7】欧州特許第819 651号
【特許文献8】欧州特許第807 646号
【特許文献9】米国特許出願第2002/188040号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】W.C. Griffin、Journal of the Society of the Cosmetic Chemist、1巻(1950年)、311頁
【非特許文献2】Paul C. Hiemenz、Polymer Chemistry、Marcel Dekker New York、1984年、7.2章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
パルプまたは紙の製造の効率を増加させるための新たな歩留り向上剤および脱水(排水)助剤を開発することが引き続き必要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
驚くべきことに、
(a)水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤(coagulant)、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって、1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含む油中水モノマー分散液を調製する工程、および
(b)ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーをラジカル重合させ、それにより介在ポリマー(intercalated polymer)を得る工程、
を含む方法によって得られる油中水ポリマー分散液によって、歩留りおよび脱水(排水)特性が改善されることが分かり、
ここで、ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される。
【0022】
ポリマー凝固剤を含む油中水モノマー分散液中のラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体のin situ重合によって、ポリマー生成物が、ポリマー凝固剤中に挿入されている油中水ポリマー分散液(相互侵入複合体(interpenetrating complex))が得られる。
【0023】
このタイプの油中水ポリマー分散液は、ポリマー凝固剤の不存在下においてモノマーを重合させること、およびその後にポリマー凝固剤を添加することによっては得られず、重合反応の間にポリマー凝固剤が存在している必要がある。
【0024】
さもなければ、異なる特性を示す異なる生成物が得られる。特に、一方では、ポリマー凝固剤の水性分散液を、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって、1種または複数のラジカル重合性エチレン性不飽和コモノマーを重合させることによって別に得られた油中水分散液に添加する場合、ポリマー凝固剤の水性分散液中に含まれる水は、得られる混合物の含水量を増加させる。一般的に、水を追加すると、油中水ポリマー分散液を水中油ポリマー分散液に変換する、または少なくとも塊もしくは粒状物の形成を引き起こす。他方、ポリマー凝固剤の粉末(すなわち、水:油の比に影響を与えないために水を含まない)を添加する場合、油中水ポリマー分散液の水相にポリマー凝固剤を溶解することは事実上不可能である。
【0025】
本発明による油中水ポリマー分散液の含水量は、均衡が取れている。一方では、含水量は、安定な条件下での重合を可能にさせるために十分に高い。重合の間の含水量が低すぎると、熱の放散が不十分であり、重大な問題を引き起こす。他方、含水量は、輸送コストを低く保つために十分に低い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の油中水ポリマー分散液と比較した本発明による特定の油中水ポリマー分散液の総歩留り値および灰分歩留り値を示す図である。
【図2】先行技術の分散液と比較した本発明による油中水ポリマー分散液の脱水(排水)性能を示す図である。
【図3】先行技術の分散液と比較した本発明による油中水ポリマー分散液の脱水(排水)性能を示す図である。
【図4】先行技術の分散液と比較した本発明による油中水ポリマー分散液の脱水(排水)性能を示す図である。
【図5】先行技術の分散液と比較した本発明による油中水ポリマー分散液の脱水(排水)性能を示す図である。
【図6】先行技術の分散液と比較した本発明による油中水ポリマー分散液の脱水(排水)性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の態様は、
(a)水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって、1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含む油中水モノマー分散液を調製する工程、および
(b)ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーをラジカル重合させ、それにより介在ポリマーを得る工程
を含む油中水ポリマー分散液の調製方法に関する。ここで、ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される。
【0028】
「油中水分散液」という用語は、当技術分野で十分に受け入れられている。通常、この用語は、連続相が油であり、不連続相が水であり、不連続水相が連続油相中に分散している分散液(乳濁液)を意味する。好ましくは、本発明による「油中水モノマー分散液」は、少なくとも、水、油性物質、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、および、場合によって、1種または複数のラジカル重合性エチレン性不飽和コモノマーを含む。同様に、好ましくは、本発明による「油中水ポリマー分散液」は、少なくとも、水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、およびラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体のラジカル重合によって得られるポリマー、および、場合によって1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含む。上記の成分のそれぞれは、以下でより完全に説明され定義される。
【0029】
化学凝固(chemical coagulation)、すなわち、懸濁粒子およびコロイド粒子をそれらが互いに付着するように改変することは、化学処理プロセスの1種である。凝固は、電荷の中和または粒子間の析力の減少を引き起こすプロセスである。凝集(flocculation)は、より大きな塊(「綿状沈殿物」)への粒子の集合体である。凝固は、ほぼ瞬間に起こるが、凝集は、綿状沈殿物が成長するためにいくらかの時間を必要とする。本明細書の目的では、「ポリマー凝固剤」という用語は、好ましくは、水溶性または水分散性の、好ましくは、高度にイオン性の、比較的低分子量のポリマーを意味する。水中の粒子および有機物質に関連した全体の電荷が負である場合、例えば、製紙において処理されるセルロース繊維懸濁液の場合、正に帯電した凝固剤が、電荷を中和するために好ましく添加される。ポリマー凝固剤および介在ポリマーは、凝固剤(coagulant)および/または凝集剤(flocculant)として役立ち得る。
【0030】
本明細書の目的では、「水溶性」という用語は、好ましくは、少なくとも10g l-1、より好ましくは、少なくとも25 g l-1、さらにより好ましくは、少なくとも50g l-1、さらにより好ましくは、少なくとも100g l-1、最も好ましくは、少なくとも250g l-1、および、特には、少なくとも500g l-1の室温における純水中の溶解度を意味する。
【0031】
本明細書の目的では、「介在ポリマー」という用語は、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって、1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含むモノマー組成物を、ポリマー凝固剤の存在下で重合させるin situ重合反応により得られるポリマーを意味する。
【0032】
(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーのラジカル重合の間にポリマー凝固剤が存在することは、得られる油中水ポリマー分散液の特性に不可欠であることは強調されるべきである。ポリマー凝固剤の不存在下においてモノマーを重合させること、および、その後にポリマー凝固剤を添加することによってでは、同一の油中水ポリマー分散液は得られない。ポリマー凝固剤は、油中水分散液の一部であり、その中には (アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーから重合させて得られる介在ポリマーが含まれている。換言すれば、重合反応によって得られる介在ポリマーは、最初に存在するポリマー凝固剤に何らかの形で組み込まれている。
【0033】
しかし、ポリマー凝固剤および介在ポリマーの得られる相互侵入ポリマー系の内部構造は、ポリマー凝固剤および同じモノマーから介在ポリマーとして別々に得られるポリマーを単純に混合することによっては再現することができない。
【0034】
本発明による油中水モノマー分散液は、水、好ましくは、脱イオン水を含む。含水量は、0.01から99.99重量%まで変わり得る。好ましくは、含水量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、10から90重量%、より好ましくは15から85重量%、さらにより好ましくは20から80重量%、さらにより好ましくは25から75重量%、より好ましくは30から70重量%、および、特には35から65重量%の範囲内である。好ましい一実施形態においては、含水量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、30から50重量%、より好ましくは32から48重量%、さらにより好ましくは34から46重量%、さらにより好ましくは36から44重量%、最も好ましくは38から42重量%、および、特には39から41重量%の範囲内である。
【0035】
本発明による油中水モノマー分散液は、1種または複数の油性物質をさらに含む。好ましくは、油性物質は、水と実質的に不混和性(油相)の不活性有機液体である。これに関して、「水と実質的に不混和性」とは、室温での純水中の純粋な油性物質の溶解度が、好ましくは10mg l-1未満、より好ましくは1.0mg l-1未満、さらにより好ましくは0.1 mg l-1未満、さらにより好ましくは0.01 mg l-1未満、最も好ましくは1.010-3 mg l-1未満、および、特には1.010-4 mg l-1未満であることを意味する。「不活性」という用語は、油性物質それ自体は、好ましくは、ラジカル重合性エチレン性不飽和官能基を含まないことを意味する。油性物質の含有量は、0.01から99.99重量%まで変わり得る。好ましくは、油性物質の含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、0.1から60重量%、より好ましくは1.0から55重量%、さらにより好ましくは2.5から50重量%、さらにより好ましくは5.0から45重量%、最も好ましくは10から40重量%、および、特には15から35重量%の範囲内である。好ましい一実施形態においては、油性物質の含有量は、油中水分散液の総重量に対して、14から34重量%の範囲内、より好ましくは16から32重量%、さらにより好ましくは18から30重量%、さらにより好ましくは20から28重量%、最も好ましくは22から26重量%、および、特には23から25重量%である。
【0036】
油性物質は、実質的に純粋な化合物でもよく、または様々な化合物の混合物でもよい。油性物質は、ラジカル重合反応を妨げない任意の不活性脂肪族および/または芳香族疎水性液体でもよい。このような疎水性液体の例には、ベンゼン、キシレン、トルエン、鉱油、パラフィン、イソパラフィン油、灯油、ナフサ、ワックス、植物油など、およびこれらの混合物が含まれる。油性物質は、好ましくは、直鎖、環状および/または分枝の炭化水素であり、好ましくは6から30個の炭素原子、より好ましくは8から24個の炭素原子、さらにより好ましくは10から22個の炭素原子、最も好ましくは12から20個の炭素原子、および、特には14から18個の炭素原子を含む。好ましくは、炭化水素は脂肪族である。好ましくは、油性物質は、1.0g ml-1未満、より好ましくは0.9 g ml-1未満、さらにより好ましくは0.85 g ml-1未満、最も好ましくは0.83 g ml-1未満、および、特には0.82 g ml-1未満の密度を有する。好ましくは、油性物質は、-150℃から50℃、より好ましくは-120℃から20℃、さらにより好ましくは-100℃から0℃、最も好ましくは-90℃から-50℃、および、特には-80℃から-60℃の範囲内の流動点(凝固点)を有する。
【0037】
好ましい一実施形態においては、油性物質は、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカンおよびエイコサンからなる群から選択される1種または複数の脂肪族炭化水素を含み、ヘキサデカンは特に好ましい。好適な油性物質は、好ましくは、芳香族を含まない、および、好ましくは、2重量%を上回らないC15炭化水素、少なくとも約60重量%のC16炭化水素および約40重量%を上回らないC17炭化水素を含むC16-C20炭化水素の混合物である。
【0038】
別の好ましい実施形態においては、油性物質は、例えば、天然物の油性抽出物の形態における、純粋なまたは混合物としてのモノ-、ジ-およびトリグリセリドなどの植物または動物起源の油、例えば、オリーブ油、大豆油、ひまわり油、ひまし油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、レイプシードオイル(rapeseed oil)、亜麻仁油、アーモンド油、コルザオイル(colza oil)、サフラワー油、およびそれらのラフィネート、例えば、それらの水素化または部分水素化生成物および/またはそれらのエステル、特に、メチルおよびエチルエステルを含む。この油性物質は、脂肪族炭化水素および植物油の混合物も含み得る。
【0039】
さらに別の好ましい実施形態においては、油性物質は、脂肪酸エステルを含む。直鎖飽和脂肪酸、特に11個を上回る炭素原子のアルキル鎖長を有する脂肪酸、好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸のアルコールとのエステルは、特に好ましく使用される。脂肪酸エステルは、単独でまたは好ましくは炭化水素または炭化水素の混合物と一緒に使用される。
【0040】
本発明による油中水モノマー分散液は、1種または複数の油中水乳化剤をさらに含む。乳化剤は、乳濁液を安定化する物質であり、しばしば、界面活性剤である。好ましくは、油中水乳化剤は、2から9、より好ましくは3から8、さらにより好ましくは3.5から7.5、最も好ましくは4から7、および、特には4.0から6.5の範囲内のHLB(親水性-親油性バランス)値を有する (HLB値の定義については、W.C. Griffin、Journal of the Society of the Cosmetic Chemist、1巻(1950年)、311頁を参照されたい)。好ましくは、油中水乳化剤の含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、0.01から25重量%、より好ましくは0.1から10重量%、さらにより好ましくは0.5から5.0重量%、さらにより好ましくは1.0から4.0重量%、最も好ましくは1.5から3.5重量%、および、特には1.8から3.0重量%の範囲内である。好ましくは、油性物質の油中水乳化剤に対する相対重量比は、30:1から2:1、より好ましくは25:1から3:1、最も好ましくは20:1から4:1、および、特には15:1から5:1の範囲内である。
【0041】
好適な油中水乳化剤は、当業者に知られている。陰イオン性、陽イオン性、両性イオン性または非イオン性界面活性剤を、油中水乳化剤として使用することができ、非イオン性界面活性剤が好ましい。油中水乳化剤の例には、グリシジルエーテルの多価アルコールとのアルコキシル化反応生成物;モノオレエート、ジオレエート、モノステアレート、ジステアレートおよびパルミテートステアレートなどのモノ-、ジ-およびポリグリセロールの脂肪酸エステル;ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノステアレートおよびソルビタントリステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステル;ペンタエリトリチルモノミリステート、ペンタエリトリチルモノパルミテートまたはペンタエリトリチルジパルミテートなどのペンタエリトリトールの脂肪酸エステル;モノオレエートなどのポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;モノオレエートおよびトリオレエートなどのポリエチレングリコールマンニトール脂肪酸エステル;グルコースモノオレエートおよびグルコースモノステアレートなどのグルコース脂肪酸エステル;トリメチロールプロパンジステアレート;イソプロピルアミドのオレイン酸との反応生成物;グリセロールソルビタン脂肪酸エステル;アルカノールアミド、ヘキサデシルナトリウムフタレートおよびデシルナトリウムフタレートが含まれる。好ましくは、油中水乳化剤は、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される。
【0042】
好ましい一実施形態においては、本発明による油中水モノマー分散液は、第2の乳化剤をさらに含む。好ましくは、第2の乳化剤は、7から16、より好ましくは8から15、さらにより好ましくは9から14、最も好ましくは9.5から13.5、および、特には10から13の範囲内のHLB(親水性-親油性バランス)値を有する。好ましくは、第2の乳化剤の含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、0.005から25重量%、より好ましくは0.01から10重量%、さらにより好ましくは0.05から5.0重量%、さらにより好ましくは0.1から2.0重量%、最も好ましくは0.3から1.5重量%、および、特には0.5から1.0重量%の範囲内である。
【0043】
第2の乳化剤の例には、脂肪アルコールエトキシレートなどのエトキシル化アルコール;マンニチルモノラウレートまたはマンニチルモノパルミテートなどのマンニトールの脂肪酸エステル;エトキシル化アルキルアミン;およびアルキルフェノールエトキシレートが含まれる。
【0044】
本発明による油中水モノマー分散液は、1種または複数のポリマー凝固剤をさらに含み、少なくとも1種のポリマー凝固剤が、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される。
【0045】
好ましくは、ポリマー凝固剤は、水溶性または水膨潤性である。好ましくは、ポリマー凝固剤の含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、0.01から30重量%、より好ましくは0.1から20重量%、さらにより好ましくは0.5から15重量%、さらにより好ましくは1.0から10重量%、最も好ましくは3.0から8.0重量%、および、特には4.5から6.5重量%の範囲内である。
【0046】
好ましくは、ポリマー凝固剤は、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、さらにより好ましくは、少なくとも98%、さらにより好ましくは、少なくとも99%、最も好ましくは、少なくとも99.5%、および、特には、少なくとも99.9%の重合度を示す。
【0047】
好ましくは、ポリマー凝固剤の重量平均分子量Mwは、50,000から1,500,000g mol-1、より好ましくは75,000から1,250,000g mol-1、さらにより好ましくは100,000から1,000,000g mol-1、さらにより好ましくは120,000から750,000g mol-1、最も好ましくは140,000から400,000g mol-1、および、特には150,000から200,000g mol-1の範囲内である。好ましい一実施形態においては、ポリマー凝固剤の重量平均分子量Mwは、75,000から350,000g mol-1の範囲内である。
【0048】
好ましくは、ポリマー凝固剤の分子量分散Mw/Mnは、1.0から4.0、より好ましくは1.5から3.5、および、特には1.8から3.2の範囲内である。
【0049】
好ましくは、ポリマー凝固剤は、100から850mPas、より好ましくは150から800mPas、さらにより好ましくは200から750mPas、さらにより好ましくは250から700mPas、最も好ましくは300から650mPas、および、特には350から600mPasの範囲内の製品粘度(スピンドルno.1、10rpm、20℃、RVT DV-2粘度計)を有する。
【0050】
好ましい一実施形態においては、ポリマー凝固剤は、ホモポリマーまたはコポリマーである。ポリマー凝固剤がコポリマーである場合、これは、好ましくは、少なくとも1種の陽イオン性モノマーおよび少なくとも1種の非イオン性コモノマーから誘導される(下記を参照されたい)。
【0051】
これに関して、「から誘導される」は、ポリマー凝固剤のポリマー主鎖は、繰り返し単位を含み、すなわち、繰り返し単位は、ポリマー凝固剤のポリマー主鎖中に組み込まれており、これらの繰り返し単位は、重合反応の過程で対応するモノマーから形成されることを意味する。例えば、ポリマー凝固剤が、塩化メチルで四級化されたジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DIMAPA quat.)から誘導される場合、次の繰り返し単位が、ポリマー主鎖:
【0052】
【化1】
【0053】
に組み込まれる。
【0054】
ポリマー凝固剤が、少なくとも1種の陽イオン性モノマー(例えば、DIMAPA quat.)および少なくとも1種の非イオン性コモノマー(例えば、アクリルアミド)のコポリマーである場合、陽イオン性モノマーの含有量は、ポリマー凝固剤中に組み込まれている全てのモノマーの総重量に対して、好ましくは、少なくとも50重量%、より好ましくは、少なくとも60重量%、さらにより好ましくは、少なくとも70重量%、さらにより好ましくは、少なくとも80重量%、最も好ましくは、少なくとも90重量%、および、特には、少なくとも95重量%である。
【0055】
好ましくは、ポリマー凝固剤は、1種または複数の陽イオン性モノマーから、より好ましくは単一の陽イオン性モノマーから誘導される。
【0056】
ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドおよびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される1種または複数の陽イオン性モノマーから誘導される。好ましくは、前述の陽イオン性モノマーは、6から25個の炭素原子、より好ましくは7から20個の炭素原子、最も好ましくは7から15個の炭素原子、および、特には8から12個の炭素原子を含む。
【0057】
好ましくは、ポリマー凝固剤は、
-30から100重量%の(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドおよび/またはアルケニルトリアルキルアンモニウムハライド、および
-0から70重量%の非イオン性コモノマー
から誘導(合成)される。
【0058】
好ましい一実施形態においては、ポリマー凝固剤は、一般式(I)によるモノマーから誘導される
【0059】
【化2】
【0060】
[式中、
R1は、直鎖または分枝C1〜8アルキレン、好ましくはエチル、プロピル、ブチルまたはペンチルであり;
R2, R3, R4およびR5は、互いに独立に水素、C1〜C6アルキル、好ましくはメチル、エチルまたはプロピル;C5〜C10アリール、好ましくはフェニル;またはC6〜C16アリールアルキル、好ましくはベンジルであり;
Aは、O、NHまたはR6がC1〜C6アルキルであるNR6であり、好ましくはNHであり;
Xは、ハロゲン、擬ハロゲン、アルキルカルボキシレートまたはアルキルサルフェート、好ましくは塩素である]。
【0061】
好ましくは、R3、R4およびR5は、同一である。好ましい一実施形態においては、Aは、OまたはNHであり、R1は、エチレンまたはプロピレンであり、R2は、水素またはメチルであり、R3、R4およびR5は、メチルである。一般式(I)によるモノマーは、塩化メチルで四級化されたジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(ADAMS quat.)などのエステル(A = O)でもよい。しかし、好ましくは、一般式(I)によるモノマーは、アミド(A = NH)、特に塩化メチルで四級化されたジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DIMAPA quat.)である。
【0062】
好ましくは、アルキルまたはアルキレン基に1から3個のC原子を有する、プロトン化された、または四級化されたジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドが、一般式(I)によるモノマーとして使用され、より好ましくは、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよび/またはジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩化メチルで四級化されたアンモニウム塩が使用される。ジメチルアミノエチルアクリレートおよびジメチルアミノプロピルアクリルアミドを使用することが好ましい。
【0063】
塩基性モノマーは、無機酸もしくは有機酸で中和された形態で、または四級化された形態で使用され、このような四級化は、好ましくは、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、塩化メチル、塩化エチルもしくは塩化ベンジルを用いて実施される。好ましい一実施形態においては、塩化メチルまたは塩化ベンジルで四級化されたモノマーが使用される。
【0064】
ポリマー凝固剤がコポリマーまたはターポリマーである場合、これは、好ましくは、少なくとも1種の非イオン性コモノマーと組み合わせて、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される。好適な非イオン性コモノマーには、一般式(II)の化合物が含まれる
【0065】
【化3】
【0066】
[式中、
R7は、水素またはメチルを表し、
R8およびR9は、互いに独立に、水素、1から5個のC原子を有するアルキルまたはヒドロキシアルキルを表す]。
【0067】
一般式(II)の化合物の例には、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、または、N,N-置換(メタ)アクリルアミド、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エチル(メタ)アクリルアミド、またはN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが含まれる。
【0068】
さらなる好適な非イオン性コモノマーには、一般式(III)の両親媒性化合物が含まれる
【0069】
【化4】
【0070】
[式中、
R10は、水素またはメチルを表し、
R11は、2から6個の炭素原子を有するアルキレンを表し、
R12は、8から32個の炭素原子を有する水素、アルキル、アリールまたはアラルキルを表し、
Bは、OまたはNR13を表し、R13は、1から4個の炭素原子を有するアルキルを表し、
nは、1から50、好ましくは1から20の整数を表す]。
【0071】
一般式(III)の両親媒性化合物の例には、脂肪族アルコールでエーテル化されている、(メタ)アクリル酸およびポリエチレングリコール(10から50個のエチレンオキシド単位)の反応生成物、または(メタ)アクリルアミドを用いた対応する反応生成物が含まれる。
【0072】
追加の水溶性分散剤成分をポリマー凝固剤と一緒に使用する場合、ポリマー凝固剤の前記追加の水溶性分散剤成分に対する重量比は、好ましくは、1:0.01から1:0.5、より好ましくは1:0.01から1:0.3の範囲内である。一例として、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、デンプン、デンプン誘導体、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルスクシンイミド、ポリビニル-2-メチルスクシンイミド、ポリビニル-1,3-オキサゾリジン-2-オン、ポリビニル-2-メチルイミダゾリンおよび/またはこれらのそれぞれの、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリルアミド化合物の塩とのコポリマーに、追加の水溶性分散剤成分として言及し得る。
【0073】
本発明による油中水モノマー分散液は、1種または複数のラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体をさらに含む。これに関して、「(アルク)アクリル」は、アクリルおよびアルカクリルを意味し、例えば、アクリルおよびメタクリルを含む。好ましい一実施形態においては、「(アルク)アクリル」は、「(メタ)アクリル」である。「誘導体」という用語は、アルキルアルコール、アルキルチオールおよびアルキルアミンなどの、好適な反応条件下で、場合によって活性化後に(アルク)アクリル酸と反応し得る他の化合物と(アルク)アクリル酸との反応生成物を意味する。(アルク)アクリル酸と反応し得る前記化合物は、アリール部分、ヘテロアリール部分、ハロゲン残基、ヒドロキシル残基、カルボキシル残基、三級アミン残基、四級化されたアンモニウム残基などの、それら自体は、所与の反応条件下で(アルク)アクリル酸と反応し得ないさらなる官能基を有し得る。好ましいラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、陽イオン性ラジカル重合性(アルク)アクリル酸エステル、(アルク)アクリル酸チオエステルおよび(アルク)アクリル酸アミドである。
【0074】
好ましくは、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、水溶性であり、好ましくは陽イオン性である。好ましくは、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、0.1から30重量%、より好ましくは0.5から25重量%、さらにより好ましくは1.0から20重量%、さらにより好ましくは2.5から17.5重量%、最も好ましくは5.0から15重量%、および、特には7.0から9.0重量%の範囲内である。
【0075】
好ましい一実施形態においては、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライドおよび(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される1種または複数の陽イオン性モノマーから誘導される。好ましくは、前述の陽イオン性モノマーは、6から25個の炭素原子、より好ましくは7から20個の炭素原子、最も好ましくは7から15の炭素原子、および、特には8から12個の炭素原子を含む。
【0076】
好ましくは、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、上に定義された一般式(I)によるモノマーである。一般式(I)によるラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、アミド(A = NH)、例えば、塩化メチルで四級化されたジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DIMAPA quat.)でもよい。しかし、好ましくは、一般式(I)によるラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、エステル(A = O)、特に塩化メチルで四級化されたジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートである(ADAME quat.)。
【0077】
ポリマー凝固剤が、(アルク)アクリル酸誘導体からも誘導される場合、前記(アルク)アクリル酸誘導体は、油中水モノマー分散液中に含まれるラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体と異なっていてもよく、または同一でもよい。好ましくは、両方のモノマーは、介在ポリマーの繰り返し単位が、ポリマー凝固剤の繰り返し単位と異なるように互いに異なる。したがって、ポリマー凝固剤および介在ポリマーは、好ましくは、互いに異なり、前記差異は、異なる分子量および/または化学構造、さらに異なるモノマー組成などの物理的変数を場合によって含む。
【0078】
好ましくは、本発明による油中水モノマー分散液は、1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーをさらに含む。これらの条件下で、本発明による方法の工程(b)において得られる介在ポリマーは、ホモポリマーではなくコポリマーまたは、例えば、ターポリマーである。好ましくは、エチレン性不飽和コモノマーは、水溶性であり、好ましくは非イオン性である。好ましくは、1種または複数のエチレン性不飽和コモノマーの含有量は、油中水モノマー分散液の総重量に対して、1.0から90重量%、より好ましくは2.5から75重量%、さらにより好ましくは5から60重量%、さらにより好ましくは10から50重量%、最も好ましくは20から40重量%、および、特には25から35重量%の範囲内である。
【0079】
好適なエチレン性不飽和コモノマーには、上に定義された、一般式(II)の化合物および一般式(III)の両親媒性化合物が含まれる。
【0080】
好ましくは、1種または複数のエチレン性不飽和コモノマーは、(アルク)アクリルアミド、より好ましくはアクリルアミドを含む。
【0081】
好ましい一実施形態においては、油中水モノマー分散液が、1種または複数のエチレン性不飽和コモノマーを含む場合、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の含有量は、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体およびラジカル重合性、エチレン性不飽和コモマーの総重量に対して、0.1から50mol%、より好ましくは1.0から40mol%、さらにより好ましくは2.0から30mol%、さらにより好ましくは3.0から20mol%、最も好ましくは5.0から15mol%、および、特には8.0から12mol%の範囲内である。
【0082】
好ましい一実施形態においては、油中水モノマー分散液は、陽イオン性ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体および1種または複数の非イオン性エチレン性不飽和コモノマーを含む。好ましくは、陽イオン性ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の含有量(陽イオン性(cationicity))は、陽イオン性ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体および非イオン性ラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーの総量に対して、0.1から75重量%、より好ましくは1.0から65重量%、さらにより好ましくは2.0から55重量%、さらにより好ましくは5.0から45重量%、最も好ましくは10から40重量%、および、特には15から35重量%の範囲内である。
【0083】
好ましくは、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体r1のラジカル反応性比およびラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーr2のラジカル反応性比は、それぞれ、0.01から100、より好ましくは0.02から50、さらにより好ましくは0.05から20、最も好ましくは0.1から10、および、特には0.2から5の範囲内である。これに関連して、r1は、(アルク)アクリル酸誘導体のラジカルを含む2つの伝搬定数の比として定義される。この比は、ラジカルに付加する同じタイプのモノマーの伝搬定数(k11)を、コモノマーの付加の伝搬定数(k12)に対して常に比をとり、すなわち、r1 = k11/k12である。同様に、r2 = k22/k21である。さらなる詳細については、例えば、Paul C. Hiemenz、Polymer Chemistry、Marcel Dekker New York、1984年、7.2章を参照し得る。
【0084】
本発明による油中水モノマー分散液の特に好ましい実施形態においては、
- 油性物質は、6から30個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素であり、
- ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライドを含む1種または複数のモノマーから誘導され、
- ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体は、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドであり、かつ/または
- ラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーは、(アルク)アクリルアミドを含む。
【0085】
本発明による方法の工程(a)においては、水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含む油中水モノマー分散液が調製され;ここで、ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドかなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される。
【0086】
油中水モノマー分散液の調製は、当業者に知られている。成分は、同時にまたは連続的に添加し得る。好ましくは、水相および油相は、互いに別々に調製され、その後、油中水モノマー分散液を得るために一緒にされる。
【0087】
成分は、通常の手段で、例えば、液体を流し込みまたは滴下することによって、粉末を添加することなどによって添加し得る。
【0088】
好ましくは、水相は、水、ポリマー凝固剤、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、あるとすればラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーの均一な溶液を含む。水相および油相を一緒にする前に、キレート剤、緩衝剤(酸および/または塩基)、分岐剤、架橋剤、連鎖移動剤などの追加の成分を、水相に添加してもよい。
【0089】
好適な分岐剤、架橋剤および連鎖移動剤は、当業者に知られている。しかし、好ましくは、分岐剤、架橋剤または連鎖移動剤は、添加されない。
【0090】
好ましくは、水相のpHは、1.0から5.0、より好ましくは1.5から4.5、さらにより好ましくは2.0から4.0、および、最も好ましくは2.5から3.5の範囲内の値に調節される。pH値は、それぞれ、好適な酸および塩基を用いて調節してもよい。好ましい酸は、ギ酸、酢酸、塩酸および硫酸などの有機酸および無機酸である。
【0091】
好ましくは、油相は、油性物質および油中水乳化剤の均一な溶液を含む。水相および油相を一緒にする前に、追加の陰イオン性、陽イオン性、両性イオン性または非イオン性の界面活性剤またはポリマー乳化剤などの、追加の成分を油相に添加してもよい。
【0092】
好ましくは、水相は、例えば、高速ミキサー、ホモジナイザーなどによって実施し得る激しい撹拌下で油相に添加される。
【0093】
原則として、油中水モノマー分散液が、本発明による方法の工程(a)で調製される場合、各成分の全体量が、最初に存在する必要はない。別法として、ポリマー凝固剤中の完全もしくは部分的なモノマーの分散液またはモノマー溶液は、重合の初めに存在させることができ、モノマーまたはモノマー溶液の残りは、重合の全過程にわたって定量ずつ、または連続供給として配分して添加される。例えば、特定成分の特定部分のみ、例えば、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の70重量%のみを、ステップ(a)で最初に使用することができ、その後、場合によってステップ(b)の間に、前記特定成分の残り、例えば、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の残りの30重量%を使用する。
【0094】
油中水モノマー分散液を、本発明による方法のステップ(a)で調製した後、ステップ(b)において、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および、場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーをラジカル重合させ、それによって介在ポリマーを得る。
【0095】
ステップ(b)は、好ましくは、例えば、油中水乳濁液中の逆乳化重合として実施される。この逆乳化重合法においては、得られる逆相ポリマー乳濁液は、介在ポリマーを含む分散水相、および不活性油性物質から形成される連続油相を含む。
【0096】
当業者は、油中水モノマー分散液をラジカル重合させる方法を知っている。一般的に、ステップ(b)による重合反応は、1種または複数の通常の重合開始剤の存在下で実施される。
【0097】
ラジカルは、例えば、熱的に誘発されるもしくは光化学的に誘発される単結合のホモリシスまたはレドックス反応により形成し得る。
【0098】
好適な水溶性開始剤の例には、例えば、2,2'-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス-(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、4,4'-アゾビス-(4-シアノペンタン酸)、または過硫酸アンモニウム/硫酸第二鉄などのレドックス系が含まれる。油溶性開始剤には、例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウリルもしくは過酸化tert-ブチル、または2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2'-アゾビスイソブチレートおよび2,2'-アゾビス-(4-メトキシ-2, 4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物が含まれる。開始剤は、単独でまたは組み合わせてのいずれかで、一般的に油中水モノマー分散液の総重量の約0.005から0.5重量%の量で使用してもよい。当業者は、得られるポリマー生成物の特性、例えば、その平均分子量を改変するために開始剤の量およびタイプを改変する方法をたいてい知っている。
【0099】
好ましくは、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミノプロパン)ジヒドロクロリドなどのアゾ化合物、または、好ましくは、場合によって還元剤、例えばアミンまたは硫酸ナトリウムと組み合わせた、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素が、ラジカル開始剤として使用される。重合するモノマーに対する開始剤の量は、一般に、10-3から1.0重量%、好ましくは10-2から0.1重量%に及ぶ。開始剤は、重合の初めに完全に添加することができ、または一部のみを添加し、その後、重合の全体の過程にわたって残量を配分することもできる。好ましい一実施形態においては、重合を、アゾ開始剤を用いて開始し、最高温度に到達後、レドックス開始剤系を用いて継続して残余モノマーの含有量を減少させる。
【0100】
別の有利な実施形態においては、発熱重合反応が完了すると、すなわち、一般に温度が最高になった後、残余モノマーの含有量を、その後のレドックス開始剤の添加によって、さらに減少させる。
【0101】
本発明の別の有利な実施形態においては、モノマーおよびポリマー凝固剤の両方を、重合の間に重合反応器中に配分する。一般に、一部、例えば10から20%のモノマーおよびポリマー凝固剤を初めに導入する。重合の開始に続いて、場合によって、さらに重合開始剤を配分し、上述の配分を実施する。
【0102】
さらに、重合の間および/または後に油および/または水を除去すること、および、場合によって、追加のポリマー凝固剤を添加することも可能である。しかし、蒸発は、かなりエネルギーを消費するので、油中水モノマー分散液中の水および油性物質の含有量は、好ましくは、あるとしても少量のみを重合後に蒸発するように最適化する。
【0103】
重合温度は、一般的に、0から120℃、好ましくは30から90℃、より好ましくは50から70℃である。重合温度は、使用される開始剤の分解動力学に基づいて選択し得る。重合は、好ましくは、系を、不活性ガスでパージし、不活性ガス雰囲気下で、例えば窒素雰囲気下で重合させるように実施する。重合転化または重合の終了は、残余モノマーの含有率を測定することによって容易に検知し得る。この目的のための方法は、当業者によく知られている。
【0104】
重合時間は、2分の1時間の短時間が使用され得るが、当技術分野で通常使用される重合時間と同じであり、一般に0.5から3時間、好ましくは1から2.5時間である。しかし、より短時間により急速な重合を試みることによって、熱の除去についての問題が生じる。これに関して、重合媒体を、重合の間、よく撹拌する、または別のやり方でかき混ぜることが非常に好ましい。
【0105】
重合に使用される装置は、単に、水中油または油中水乳化重合に使用されるような標準の反応器であってよい。
【0106】
重合に続いて、塩または酸などの追加の添加物を、分散液に、好ましくは撹拌しながら場合によって添加する前に、反応混合物を冷却することが有利であり得る。
【0107】
残余モノマー含有量を減少させるために、重合の間に温度を高くすることも可能である。別法として、重合の間および終わりに、追加の開始剤および/または残余モノマー破壊剤(destructor)を使用することも可能である。
【0108】
本発明の意味の範囲内で残余モノマー破壊剤とは、それらがもはや重合可能ではない、したがって本発明の意味の範囲内で、それらは、もはやモノマーではなくなるように化学反応を用いて重合性モノマーを改変する物質である。モノマー中に存在する二重結合と反応する物質および/またはより大量の重合を開始し得る物質を、この目的のために使用し得る。二重結合と反応する残余モノマー破壊剤としては、還元剤、例えば、好ましくは、VI未満の酸化数を有する硫黄から誘導される酸および酸の中性塩の群からの物質、好ましくは亜ジチオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたは二亜硫酸ナトリウム、および/または硫化水素基を有する物質、好ましくは硫化水素ナトリウムまたはチオールの群からの化合物、好ましくはメルカプトエタノール、ドデシルメルカプタン、チオプロピオン酸またはチオプロピオン酸の塩またはチオプロパンスルホン酸またはチオプロパンスルホン酸の塩、および/または、アミンの群からの物質、好ましくは低揮発性を有するアミンの群からの物質、好ましくはジイソプロパノールアミンまたはアミノエチルエタノールアミン、および/またはブンテ(Bunte)塩、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化硫黄、二酸化硫黄の水性および有機溶液、硫酸ヒドロキシルアンモニウム、またはチオ尿素を含む群からの物質を使用することができる。
【0109】
好ましくは、油中水ポリマー分散液は、多くても5,000ppm、より好ましくは、多くても2,500ppm、さらにより好ましくは、多くても1,000ppm、さらにより好ましくは、多くても800ppm、最も好ましくは、多くても600ppm、および、特には、多くても400ppmのラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の残余含有量を有する。好ましい一実施形態においては、油中水ポリマー分散液は、多くても200ppm、より好ましくは、多くても100ppm、さらにより好ましくは、多くても75ppm、さらにより好ましくは、多くても50ppm、最も好ましくは、多くても30ppm、および、特には、多くても20ppmのラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の残余含有量を有する。
【0110】
好ましくは、油中水ポリマー分散液は、多くても5,000ppm、より好ましくは、多くても2,500ppm、さらにより好ましくは、多くても1,000ppm、さらにより好ましくは、多くても800ppm、最も好ましくは、多くても600ppm、および、特には、多くても400ppmのラジカル重合性エチレン性不飽和コモノマーの残余含有量を有する。
【0111】
本発明による方法の工程(b)は、油中水モノマー分散液を油中水ポリマー分散液に変換する。
【0112】
工程(b)における重合反応の後および/または間に、得られる油中水ポリマー分散液は、溶媒の含有量を減少させるために蒸留してもよい。
【0113】
好ましい一実施形態においては、本発明による方法は、
(a)以下を含む油中水モノマー分散液を調製する工程
- 水、
- 油性物質、
- 油中水乳化剤、
- 75,000から350,000g/molの重量平均分子量Mwを有し、
・ 30から100重量%の(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、および/またはアルケニルトリアルキルアンモニウムハライド、および
・ 0から70重量%の非イオン性エチレン性不飽和コモノマー
から合成されるポリマー凝固剤、および
- 以下のモノマー混合物
・ 1から99重量%、好ましくは1から60重量%の(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、アルケニルトリアルキルアンモニウムハライドおよび/またはジアルケニルジアルキルアンモニウムハライド、および
・ 1から99重量%、好ましくは40から99重量%の非イオン性エチレン性不飽和コモノマー;ならびに
(b)ラジカル開始剤を添加し、それによってモノマー混合物のラジカル重合を実施する工程
を含む。
【0114】
本発明のさらなる一態様は、水、油性物質、乳化剤、ポリマー凝固剤、および介在ポリマーを含む油中水ポリマー分散液に関し、この分散液は、上記の方法によって得られる。
【0115】
本発明による油中水ポリマー分散液は、油中水ポリマー懸濁液または油中水ポリマー乳濁液またはこれらの混合物であり得る。
【0116】
好ましくは、油性物質、水、ポリマー凝固剤、油中水乳化剤および/または油中水モノマー分散液のさらなる構成要素(含有量、相対比、化学特性など)に関する好ましい実施形態は、本発明による油中水ポリマー分散液にも当てはまる。
【0117】
本発明による油中水ポリマー分散液は、通例、自己反転、すなわち、相反転は、乳濁液が水に注がれ、分散液中に存在するポリマーが水に溶解する場合に起こる。しかし、相反転は、湿潤剤(=インバーター)を添加することによって加速し得る。これらの湿潤剤は、油中水ポリマー分散液に添加することができ、またはその中に分散液が導入される水に添加することができる。
【0118】
好ましくは、湿潤剤は、7から16、より好ましくは8から15、さらにより好ましくは9から14、最も好ましくは9.5から13.5、および、特には10から13の範囲内のHLB(親水性-親油性バランス)値を有する。好ましくは、湿潤剤の含有量は、油中水ポリマー分散液の総重量に対して、0.005から25重量%、より好ましくは0.01から10重量%、さらにより好ましくは0.1から7.5重量%、さらにより好ましくは0.5から5.0重量%、最も好ましくは1.0から4.0重量%、および、特には1.5から3.5重量%の範囲内である。
【0119】
油中水ポリマー分散液を反転させるために好ましく使用される湿潤剤は、5から20の間のエトキシル化度を有するエトキシル化アルキルフェノール、または5から20の間のエトキシル化度を有する10から22個の炭素のエトキシル化脂肪アルコールである。油中水ポリマー分散液は、全分散液に対して10重量%までの、9を上回る、好ましくは、少なくとも10のHLB値を有する湿潤剤を含んでいてもよい。10を上回るHLB値を有する好適な湿潤剤の例は、エトキシル化アルキルフェノール、アルキル基が少なくとも3個の炭素原子からなるスルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、10から22個の炭素原子の脂肪酸から誘導される石鹸、および10から26個の炭素原子のアルキル-またはアルケニルサルフェートのアルカリ金属塩である。エトキシル化脂肪アルコールおよびエトキシル化アミンも好適である。湿潤剤が重合自体に使用される場合、特に微細な油中水ポリマー分散液を得ることができる。
【0120】
特に好ましい実施形態においては、重合の間に油中水モノマー分散液に存在し得る第2の乳化剤の化学的性質は、重合後に油中水ポリマー分散液に添加される湿潤剤と同一である。
【0121】
好ましくは、本発明による油中水ポリマー分散液は、5.0から45重量%、より好ましくは10から40重量%、さらにより好ましくは15から35重量%、さらにより好ましくは20から30重量%、最も好ましくは22から29重量%、および、特には24から28重量%の範囲内の含水量を有する。
【0122】
特に好ましい実施形態においては、本発明による油中水ポリマー分散液の含水量は、油中水ポリマー分散液が、水中油ポリマー分散液に反転される限界に近い。好ましくは、自己反転は、油中水ポリマー分散液の総重量に対して、少なくとも100重量%、より好ましくは、少なくとも75重量%、さらにより好ましくは、少なくとも50重量%、さらにより好ましくは、少なくとも30重量%、最も好ましくは、少なくとも20重量%、および、特には、少なくとも10重量%の水が添加される時に起こる。
【0123】
本発明による油中水ポリマー分散液の好ましい一実施形態においては、介在ポリマーの重量平均分子量Mwは、ポリマー凝固剤の重量平均分子量Mwより大きい。当業者は、介在ポリマーの重量平均分子量を測定する方法、および、例えば、開始剤濃度を調節すること、連鎖移動剤の添加などによって、これに影響を及ぼす方法を知っている。好ましくは、重量平均分子量は、好ましくはプルラン標準に対して溶離液として1.5%ギ酸を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、またはレオロジー的測定によって測定される。
【0124】
好ましくは、介在ポリマーは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、さらにより好ましくは、少なくとも98%、さらにより好ましくは、少なくとも99%、最も好ましくは、少なくとも99.5%、および、特には、少なくとも99.9%の重合度を示す。
【0125】
好ましくは、介在ポリマーの重量平均分子量は、少なくとも1,000,000g mol-1、より好ましくは、少なくとも1,250,000g mol-1、さらにより好ましくは、少なくとも1,500,000g mol-1、さらにより好ましくは、少なくとも1,750,000g mol-1、最も好ましくは、少なくとも2,000,000g mol-1、および、特には、少なくとも2,500,000g mol-1である。
【0126】
好ましくは、介在ポリマーの重量平均分子量は、任意の油性物質が存在しないことを除いて正確に同じ条件下(逆乳化重合と対照的な溶液重合)で得られるポリマーの重量平均分子量より高い。
【0127】
好ましくは、介在ポリマーの分子量分散Mw/Mnは、1.0から4.0、より好ましくは1.5から3.5、および、特には1.8から3.2の範囲内である。
【0128】
好ましくは、介在ポリマーの含有量は、油中水ポリマー分散液の総重量に対して、1.0から90重量%、より好ましくは5.0から80重量%、さらにより好ましくは15から65重量%、さらにより好ましくは25から60重量%、最も好ましくは30から55重量%、および、特には35から50重量%の範囲内である。
【0129】
好ましくは、介在ポリマーのポリマー凝固剤との相対重量比は、50:1から0.1:1、より好ましくは30:1から0.5:1、さらにより好ましくは20:1から1:1、さらにより好ましくは10:1から2:1、最も好ましくは8:1から5:1、および、特には7:1から6:1の範囲内である。
【0130】
好ましくは、介在ポリマーおよびポリマー凝固剤を含む、油中水ポリマー分散液中に存在するポリマー混合物の重量平均分子量Mwは、GPC法により測定して1.5 106 g/molを上回る範囲にある。
【0131】
好ましくは、介在ポリマーは、水溶性または水膨潤性である。
【0132】
好ましくは、本発明による油中水ポリマー分散液は、
- 1重量%水性分散液中で、3,000から20,000mPas、より好ましくは4,000から18,000mPas、さらにより好ましくは5,000から16,000mPas、最も好ましくは6,000から14,000mPas、および、特には7,000から9,000mPasの範囲内の溶液粘度(Brookfieldによる);ならびに/または
- 少なくとも750mPas、より好ましくは、少なくとも1,000mPas、さらにより好ましくは、少なくとも1,250mPas、最も好ましくは、少なくとも1,500mPas、および、特には、少なくとも1,750mPasの塩粘度
を有する。
【0133】
本発明による油中水ポリマー分散液の好ましい実施形態AからDをtable(下表)に要約する。
【0134】
【表1】
【0135】
実施形態AからDの好ましい変数1から6をtable(下表)に要約する。
【0136】
【表2】
【0137】
上表において、全ての百分率は、油中水ポリマー分散液の総重量に基づく。
【0138】
油中水ポリマー分散液の好ましい成分およびそれらの各含有量は、実施形態AからDの変数1から6との次の組合せ: Al、A2、A3、A4、A5、A6、B1、B2、B3、B4、B5、B6、C1、C2、C3、C4、C5、C6、D1、D2、D3、D4、D5、およびD6に由来する。例えば、「C4」は、実施形態Cの変形4との組合せ、すなわち、25-75重量%の水、5.0-45重量%の少なくとも1種の脂肪族炭化水素、3.0-9.0重量%の少なくとも1種の3-8のHLB値を有する非イオン性界面活性剤、6.0-13重量%の少なくとも1種の(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライドから誘導されるポリマー凝固剤、およびa) 2.5-17.5重量%の少なくとも1種の(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドから、およびb) 10-50重量%の少なくとも1種の(アルク)アクリルアミドから誘導される少なくとも1種の介在ポリマーを含む油中水ポリマー分散液を意味し、ここで、全ての百分率は、油中水ポリマー分散液の総重量に基づく。
【0139】
好ましくは、本発明による油中水ポリマー分散液は液体である。粉末と比較して、液体分散液は添加がより容易である。粉末は、通常、高価な添加装置を必要とする。
【0140】
好ましくは、本発明による油中水ポリマー分散液の総ポリマー含有量は、油中水ポリマー分散液の総重量に対して、少なくとも20重量%、より好ましくは、少なくとも30重量%、さらにより好ましくは、少なくとも35重量%、さらにより好ましくは、少なくとも40重量%、最も好ましくは40重量%から65重量%、および、特には45重量%から50重量%の範囲内である。
【0141】
本発明による油中水ポリマー分散液の特に好ましい実施形態においては、ポリマーの総含有量の油性物質の総含有量に対する相対重量比は、10:1から0.1:1、より好ましくは8:1から0.5:1、さらにより好ましくは6:1から0.75:1、さらにより好ましくは4:1から1:1、最も好ましくは3:1から1:1、および、特には2.5:1から1.5:1の範囲内である。
【0142】
場合によっては、本発明による油中水ポリマー分散液は、例えば、水溶性または油溶性酸および/または塩の形態の追加の通常の成分を含んでもよい。それぞれ、分散液全体に対して、酸は、好ましくは、0.1から3重量%の量で存在し、塩は、0.1から3重量%の量で存在し、酸および塩は、一緒にすれば、分散液の総重量に対して、好ましくは、多くても5重量%、好ましくは、多くても4重量%の量で存在する。
【0143】
前記追加の通常の成分は、重合前、重合の間または重合後に添加し得る。
【0144】
水溶性有機酸および/または無機酸が存在し得る。より具体的には、好適な有機水溶性酸は、有機カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、好ましくは脂肪族または芳香族モノ-、ジ-、ポリカルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸、好ましくは酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、特に好ましくはクエン酸、アジピン酸および/または安息香酸である。好適な無機酸は、水溶性無機酸、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸および/またはリン酸である。非常に特に好ましいのは、クエン酸、アジピン酸、安息香酸、塩酸、硫酸および/またはリン酸である。
【0145】
アンモニウム、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属塩、好ましくはアンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび/またはマグネシウム塩を、水溶性塩として使用し得る。このような塩は、無機酸の塩または有機酸の塩、好ましくは有機カルボン酸、スルホン酸、リン酸の塩、または無機酸の塩であり得る。水溶性塩は、好ましくは、脂肪族または芳香族モノ-、ジ-、ポリ-カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、好ましくは酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩または安息香酸塩、または硫酸塩、塩酸塩またはリン酸塩である。非常に特に好ましくは、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムおよび/または硫酸ナトリウムが、水溶性塩として使用される。しかし、好ましくは、追加の塩は添加されない。
【0146】
塩は、重合前、重合の間または重合後に添加することができ、重合は、好ましくは水溶性塩の存在下で実施される。
【0147】
さらに、本発明による油中水ポリマー分散液は、水溶性多官能性アルコールおよび/または脂肪族アミンとのそれらの反応生成物を、ポリマー凝固剤に対して、最大30重量%まで、好ましくは、最大15重量%まで、より好ましくは、最大10重量%の量で含んでもよい。この関連でより明確に好適であるのは、50から50,000、好ましくは1,500から30,000の分子量を有する、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレン/エチレンオキシドのブロックコポリマー、アルキルまたはアルキレン残基中にC6〜C22を有する、多官能性水溶性アルコールおよび/またはそれらの脂肪族アミンとの反応生成物としての、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリトリトールおよび/またはソルビトールなどの低分子量多官能性アルコールである。
【0148】
前記水溶性多官能性アルコールおよび/または脂肪族アミンとのそれらの反応生成物は、重合前、重合の間または重合後に添加し得る。
【0149】
好ましくは、本発明による油中水ポリマー分散液は、少なくとも35%または少なくとも37.5%、より好ましくは、少なくとも40%または少なくとも42.5%、さらにより好ましくは、少なくとも45%または少なくとも47.5%、さらにより好ましくは、少なくとも50%または少なくとも52.5%、最も好ましくは、少なくとも55%または少なくとも57.5%、および、特には、少なくとも60%または少なくとも62.5%のパルプ製紙業界技術協会(TAPPI)の標準試験法、すなわち、T261 pm-79法(すなわち、Britt Jar法)による歩留り向上効果を示す。好ましい一実施形態においては、試験条件を応用例A-3におけるように変更する。
【0150】
本発明による油中水ポリマー分散液は、従来の油中水ポリマー分散液に比べていくつかの利点を有し、例えば、
- とりわけ、以下の油中水ポリマー分散液の改善されたレオロジー特性をもたらすより高分子量を有する介在ポリマーを得ることができ、
- ポリマー凝固剤中および/または介在ポリマー中のイオン性モノマーの非イオン性モノマーに対するモル比は、油中水ポリマー分散液の本質的な性質を著しく低下させることなく広い範囲内で変えることができ、
- ポリマー凝固剤の化学的性質は、介在ポリマーの化学的性質とは実質的に無関係であり、
- 分岐剤、架橋剤および他の重合助剤は、重合プロセスを複雑にすることなく組み込むことができる。
【0151】
本発明による油中水ポリマー分散液は、固体/液体分離プロセス、例えば、紙における歩留り向上剤または汚水処理プラントにおけるスラッジ脱水における添加剤として有用である。それらは、特に紙歩留りにおける灰分歩留りおよび脱水に関して改善された応用性能を示す。本発明により得られる油中水ポリマー分散液は、特に製紙における歩留り向上剤および脱水剤として有用な、製紙における優れた助剤であることの予想外の利点を有する。
【0152】
本発明のさらなる一態様は、好ましくは製紙における、好ましくは歩留り向上剤および/または排水助剤としての凝集剤(凝集化剤)としての本発明による油中水ポリマー分散液の使用に関する。
【0153】
本発明のさらなる一態様は、紙、板紙(paperboard)または厚紙の製造方法に関し、この方法は、(ii)本発明による油中水ポリマー分散液を水性セルロース懸濁液に添加する工程を含む。好ましくは、この方法は、(i)追加のポリマー凝固剤をセルロース懸濁液に添加する工程をさらに含み、ここで、ステップ(i)は、好ましくはステップ(ii)の前に実施される。
【0154】
好ましくは、紙の製造方法は、セルロース懸濁液を形成すること、この懸濁液を凝集させること、場合によってこの懸濁液を機械的に剪断すること、および場合によってこの懸濁液を再凝集させること、この懸濁液をスクリーン上に排出してシートを形成し、次いでシートを乾燥することを含み、ここで、この懸濁液は、本発明による油中水ポリマー分散液を導入することによって凝集させ、かつ/または再凝集させる。
【0155】
本発明による油中水ポリマー分散液は、歩留り改善に関して性能改善を与え、さらに依然として良好な排水および形成性能を維持することが驚くべきことに見いだされた。油中水ポリマー分散液は、より効率的にセルロース製紙原料のセルロース繊維および他の成分を凝集させ、したがって歩留りの改善を引き起こす。
【0156】
本発明による紙の製造方法においては、好ましくは、油中水ポリマー分散液は、セルロース懸濁液を凝集させ、次いで再凝集させる多成分凝集剤系の部分として添加することができるが、油中水ポリマー分散液は、製紙プロセスにおける単独の処理薬剤として製紙原料に添加することができる。
【0157】
本発明の一態様においては、セルロース懸濁液を、油中水ポリマー分散液(凝集化剤)によって凝集させ、次いで、セルロース懸濁液を、油中水ポリマー分散液(再凝集化剤)の追加の添加によって、または別法として、別の凝集化材料(再凝集化剤)によって再凝集させる。場合によっては、形成される綿状沈殿物を、再凝集させる前に、例えば、機械的剪断力を適用することによって分解する。これは、例えば、凝集させたセルロース懸濁液を、遠心式スクリーンまたはファンポンプなどの1つまたは複数の剪断段階に通すことで行われ得る。
【0158】
本発明の代替形態においては、セルロース懸濁液を、凝集化材料 (凝集化剤)を導入することによって凝集させ、セルロース懸濁液を、油中水ポリマー分散液(再凝集化剤)を導入することによって再凝集させる。場合によっては、綿状沈殿物を再凝集前に分解する。
【0159】
セルロース懸濁液を、任意の好適な添加点において凝集化剤を懸濁液に導入することによって凝集させてもよい。これは、例えば、ポンプ段階の1つの前またはセントリスクリーンの前またはセントリスクリーンの後でもよい。次いで、セルロース懸濁液を、それを凝集させた後の任意の好適な点において再凝集させることができる。凝集化剤および再凝集化剤を、例えば、添加の間に任意の剪断段階を用いずに、近接して添加することができる。好ましくは、凝集化剤および再凝集化剤の添加の間に少なくとも1つの(クリーニング段階、ポンプ段階および混合段階から選択される)剪断段階が存在する。望ましくは、凝集化剤を剪断段階、例えば、ファンポンプまたはセントリスクリーンの前に適用する場合、再凝集化剤をその剪断段階後に添加することができる。これは、剪断段階の直後またはより一般的にはずっと後であってよい。したがって、凝集化剤を、ファンポンプの前に添加することができ、再凝集化剤を、セントリスクリーンの後に添加することができる。
【0160】
したがって、油中水ポリマー分散液は、凝集化剤としておよび/または再凝集化剤として添加される。
【0161】
望ましくは、油中水ポリマー分散液は、固体含有量に対して、5から5,000ppm、より好ましくは50から2,500ppm、最も好ましくは200から1,000ppmの用量で原料に添加することができる。
【0162】
油中水ポリマー分散液が、多成分凝集系の一部として製紙プロセスにおいて使用される場合、それは、凝集化剤および/または再凝集化剤として添加することができる。本発明の好ましい一態様によれば、多成分凝集系は、油中水ポリマー分散液および異なる凝集化材料を含む。この凝集化材料は、水溶性ポリマー、不水溶性ポリマーマイクロビーズ、粒状の生の多糖および無機材料からなる群のいずれかであってもよい。好適な凝集化材料には、珪質材料、ミョウバン、塩化アルミニウム水和物およびポリ塩化アルミニウムなどの無機材料が含まれる。
【0163】
凝集化材料が、水溶性ポリマーである場合、それは、任意の好適な水溶性ポリマー、例えば、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性および両性デンプンまたは他の多糖などの生体高分子であってもよい。凝集化材料は、任意の好適な陽イオン性、陰イオン性、両性または非イオン性の合成水溶性ポリマーでもあってもよい。
【0164】
凝集化材料は、陰イオン性微粒子組成物の形態である珪質材料であってもよい。珪質材料には、シリカベースの粒子、コロイダルシリカ、シリカミクロゲル、シリカゾル、シリカゲル、ポリケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ポリアルミノケイ酸塩、ポリホウケイ酸塩、ゼオライトおよび粘土が含まれる。粘土は、好ましくは膨潤性粘土、例えば、これは、典型的には、ベントナイトタイプ粘土でもよい。好ましい粘土は、水中で膨潤性であり、天然に水膨潤性である粘土、またはそれらを水膨潤性にするために、例えば、イオン交換によって改変し得る粘土を含む。好適な水膨潤性粘土には、それだけには限らないが、しばしば、ヘクトライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト、アタパルジャイトおよびセピオライトと称される粘土が含まれる。
【0165】
別法として、凝集化材料は、ポリケイ酸塩およびポリアルミノケイ酸塩から選択されるコロイダルシリカである。これには、1,000m2/gを上回る表面積の多粒子状ポリ珪質ミクロゲル、例えば、水溶性多粒子状ポリアルミノケイ酸塩ミクロゲルまたはアルミネートポリケイ酸が含まれる。さらに、凝集化材料は、コロイドケイ酸であり得る。
【0166】
凝集化材料は、コロイドホウケイ酸塩でもあり得る。コロイドホウケイ酸塩は、アルカリ金属ケイ酸塩の希釈水溶液を、陽イオン交換樹脂と接触させてケイ酸を生成し、次いで、アルカリ金属ホウ酸塩の薄い溶液をアルカリ金属水酸化物と一緒に混合して7から10.5のpHを有する0.01から30%のB2O3を含む水溶液を形成することによってヒールを形成することによって調製することができる。
【0167】
セルロース原料懸濁液は、填料を含み得る。填料は、伝統的に使用されている填料材料のいずれかであってよい。例えば、填料は、カオリンなどの粘土であってよく、または、填料は、重質炭酸カルシウムまたは特に沈降炭酸カルシウムであり得る炭酸カルシウムであってよく、または、填料材料として二酸化チタンを使用するこが好ましいことがある。他の填料材料の例には、合成ポリマー填料も含まれる。製紙原料は、任意の好適な量の填料を含んでいてよい。一般に、セルロース懸濁液は、少なくとも5重量%の填料材料を含む。典型的に、填料の量は、40%以上まで、好ましくは10%から40%の間の填料となる。
【0168】
油中水ポリマー分散液と共に使用される凝集化材料は、水溶性エチレン性不飽和モノマーまたはモノマーブレンドから形成された陰イオン性、非イオン性、陽イオン性または両性の分枝水溶性ポリマーであってよい。例えば、分枝水溶性ポリマーは、a) 1.5dl/gを上回る固有粘度および/または約2.0mPa.s.を上回る食塩水ブルックフィールド粘度を示してもよい。
【0169】
別法として、油中水ポリマー分散液と共に使用される凝集化材料には、架橋陰イオン性または両性ポリマー微小粒子が含まれる。
【0170】
特に好ましい一方法は、凝集化剤として油中水ポリマー分散液および再凝集化剤として陰イオン性凝集化材料を含む多成分凝集系を用いる。陰イオン性凝集化材料には、微粒子シリカ、ポリケイ酸塩などの珪質材料、直鎖および分枝水溶性ポリマーの両方を含めた陰イオン性ポリマーマイクロビーズおよび水溶性陰イオン性ポリマーが含まれる。
【0171】
好ましくは、本発明による紙の製造方法は、少なくとも15g/m2、より好ましくは、少なくとも20g/m2、さらにより好ましくは、少なくとも25g/m2、さらにより好ましくは、少なくとも30g/m2、最も好ましくは、少なくとも35g/m2、および、特には、少なくとも40g/m2の面積重量を有する紙の製造用である。
【0172】
紙の製造方法の特に好ましい一実施形態においては、追加のポリマー凝固剤を、好ましくは油中水ポリマー分散液を導入する前にセルロース懸濁液に添加する、すなわち、前記追加のポリマー凝固剤の供給点は、好ましくは、油中水ポリマー分散液の供給点に対して抄紙機上の「上流」に位置している。追加のポリマー凝固剤の供給点は、例えば、ポンプ段階の1つの前またはセントリスクリーンの前であってよい。追加のポリマー凝固剤および油中水ポリマー分散液は、近接して、例えば、添加の間に任意の剪断段階を用いずに添加してもよい。
【0173】
前記追加の凝固剤は、油中水ポリマー分散液中に存在し、この存在下で、in situ重合反応が実施されるポリマー凝固剤と構造および/または分子量分布が同一であってもよい。しかし、好ましくは、前記追加のポリマー凝固剤は、油中水ポリマー分散液に存在するポリマー凝固剤と異なる。油中水ポリマー分散液と関連して上に記載されたポリマー凝固剤の好ましい実施形態は、好ましくは、紙の製造方法においてさらに使用される前記追加のポリマー凝固剤にも適用される。
【0174】
好ましくは、追加のポリマー凝固剤は、
- 30から100重量%の(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、アルケニルトリアルキルアンモニウムハライドおよび/もしくはジアルケニルジアルキルアンモニウムハライド;および0から70重量%の非イオン性コモノマー;または
- エピクロロヒドリンおよびジアルキルアミンの共重合物
から誘導(合成)される。
【0175】
二重の凝集系において凝集剤として本発明による油中水ポリマー分散液を使用する場合、優れた歩留りおよび排水性能が、それぞれ、良好な形成と同時に起こり得ることが驚くべきことに見出された。通常、歩留り/排水性能および形成性能は、互いに拮抗するが、驚くべきことに、本発明による油中水ポリマー分散液は、両方の点で有利である。油中水ポリマー分散液は、著しく改善された灰分歩留りを示し、これは、歩留りおよび排水性能のための十分に確立された尺度である。
【0176】
本発明による油中水ポリマー分散液を、ポリマー凝固剤を含まない通常の油中水ポリマー分散液と比較すると、灰分歩留り値は、実質的により良い。
【0177】
さらに、本発明による油中水ポリマー分散液は、油性物質を含まない通常の水中水ポリマー分散液と比較すると、実質的に改善されている。
【0178】
驚くべきことに、油中水ポリマー分散液の歩留りおよび排水効率の一層さらなる改善を、セルロース懸濁液にさらなるポリマー凝固剤を添加することによって達成し得る。
【0179】
(実施例)
粘度測定方法
溶液粘度-水性ポリマー組成物1重量%ポリマー含有量:
ブルックフィールド粘度を、RVT-DV II ブルックフィールド粘度計を用いて測定する。300mlの(ポリマー含有量に対して)1.0重量%溶液を調製するのに必要な量を、シリンジを用いて化学天秤上で秤量する。ビーカーに300mlの脱塩水を満たす。次いで、最初に導入した水を、磁気撹拌機(40/7)を用いて、ビーカーの底に達するコーンが形成されるような強度(約900Upm)で撹拌する。ここで、ポリマーをこの「撹拌漏斗」中に急速に注入する。1分後、磁気撹拌機を取り外し、撹拌を300±10Upmでフィンガー攪拌機(finger agitator)を用いて30分間続ける。温度を20±1℃に調節し、この混合物を5分間静置する。次いで、割線値は1分間一定であるという条件で、スピンドルno.3を混合物中にゆっくりと浸し、粘度を5Upmで測定する。
【0180】
塩粘度:
活性ポリマー含有量に対して0.9重量%のポリマーを含む水性混合物を調製する。30gの前記水性混合物を、270mlの水中の30gの塩化ナトリウムの溶液を添加することによって希釈する。混合物全体を30分間撹拌する。温度を20℃に調節し、混合物を5分間静置する。次いで、割線値は1分間一定であるという条件で、スピンドルno.1を混合物中にゆっくりと浸し、粘度を10Upmで測定する。スピンドルにおける気泡は厳重に避ける必要がある。
【実施例】
【0181】
比較例C-1、C-2およびC-3(ポリマー凝固剤の不存在):
(比較例C-1)
油中水モノマー分散液を、15.744kgの水、25.111kgのC16〜C20アルカン、ソルビタン脂肪酸エステルおよび脂肪アルコールエトキシレートを含む3.348kgの乳化剤組成物、10.613kgのADAME-quat.(80重量%)(すなわち、塩化メチルで四級化されたジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート)、および59.929kgのアクリルアミド(50重量%)から調製した。硫酸を添加することによって、pH値を3に調節した。アゾ開始剤を添加することによってラジカル重合を開始した。
【0182】
(比較例C-2)
油中水モノマー分散液を、21.440kgの水、25.890kgのC16〜C20アルカン、ソルビタン脂肪酸エステルおよび脂肪アルコールエトキシレートを含む3.702kgの乳化剤組成物、12.750kgのADAME-quat. (80重量%)、および50.162kgのアクリルアミド(50重量%)から調製した。硫酸を添加することによって、pHを3に調節した。比較例C-1と同じ開始剤系を添加することによって、ラジカル重合を開始した。
【0183】
(比較例C-3)
油中水モノマー分散液を、16.836kgの水、22.474kgのC16〜C20アルカン、ソルビタン脂肪酸エステルおよび脂肪アルコールエトキシレートを含む3.532kgの乳化剤組成物、20.811kgのADAME-quat. (80重量%)、および44.495kgのアクリルアミド(50重量%)から調製した。硫酸を添加することによって、pH値を3に調節した。比較例C-1およびC-2と同じ開始剤系を添加することによって、ラジカル重合を開始した。
【0184】
【表3】
【0185】
(比較例C-4)(油性物質/乳化剤の不存在)
水中水モノマー分散液を、31.953kgの水、5.569kgのADAME-quat.(80重量%)、26.720kgのアクリルアミド(50重量%)、および31.572kgのポリマー凝固剤PC-2から調製した。硫酸を添加することによって、pH値を5に調節した。ラジカル開始剤を添加することによって、ラジカル重合を開始した。
【0186】
(比較例C-5)( DADMACから誘導されるポリマー凝固剤の存在)
油中水モノマー分散液を、296.7gのC16〜C20アルカン、ソルビタン脂肪酸エステルおよび脂肪アルコールエトキシレートを含む58.2gの乳化剤組成物、125.4gのADAME-quat. (80重量%)、708.0gのアクリルアミド(50重量%)、および170.2gのポリマー凝固剤PC-1から調製した。開始剤系を添加することによって、ラジカル重合を開始した。
【0187】
(本発明実施例I-1)( DIMAPA quat.から誘導されるポリマー凝固剤の存在)
油中水モノマー分散液を、0.827kgの水、24.067kgのC16〜C20アルカン、ソルビタン脂肪酸エステルおよび脂肪アルコールエトキシレートを含む5.856kgの乳化剤組成物、10.172kgのADAME-quat.(80重量%)、57.430kgのアクリルアミド(50重量%)、および13.806kgのポリマー凝固剤PC-2から調製した。開始剤系を添加することによって、ラジカル重合を開始した。
【0188】
【表4】
【0189】
比較例C-1、比較例C-5および本発明実施例I-1の油中水モノマー分散液から重合したポリマーの陽イオン性は、同一である(22重量%)。
【0190】
しかし、比較例C-2およびC-3の油中水モノマー分散液から重合したポリマーの陽イオン性は、より高かった(それぞれ、29重量%および43重量%)。この差異は、本発明実施例を比較例と比べる場合に考慮されるべきである。
【0191】
比較例C-1における陽イオン性ポリマー凝固剤の不存在および比較例C-5および本発明実施例I-1それぞれにおけるポリマー凝固剤の存在のほかに、実験条件にさらなる小さな差異が存在するが、これは、本発明実施例I-1の比較例C-1およびC-5との比較可能性を実質的に変えない。
【0192】
ポリマー凝固剤PC-1からPC-6:
【0193】
【表5】
【0194】
応用例A-1からA-4:
(応用例A-1)
BTG Mutek製のDFS 03装置を使用して、本発明による油中水ポリマー分散液を特定の紙パルプ懸濁液に添加することによって、歩留りを測定した。
【0195】
この目的のために、本発明による油中水ポリマー分散液を、脱イオン水を用いて0.1重量%の濃度に調節した。紙パルプ懸濁液(75重量%TMP、15重量%セルロース、10重量% SM rejects、Norske Skog、Walsum)を、ショッパー-リーグラー(Schopper-Riegler)濾水度試験器中で約1%の組織密度に水道水で希釈した。組織密度(1.22重量%)の測定後、本発明による油中水ポリマー分散液の3つの異なる濃度(400/800/1200g/l)において、歩留り試験を実施した。パルプ-水混合物を、800min-1で15秒、1000min-1で10秒および800min-1で10秒維持した。希釈したポリマー分散液を、最初の10秒後に配分し、歩留り濾液を、もう15秒後に除去し、Schwarzbandグレードフィルターを通して、105℃で1時間一定重量となるまで乾燥した。
【0196】
灰分歩留りを測定するために、550℃で2時間、灰化を実施し、絶対乾燥条件において、灰分を再秤量した。
【0197】
【数1】
【0198】
PD流入:重量%で示した流入液(パルプ懸濁液)のパルプ密度
PD流出:重量%で示した濾液(背水)のパルプ密度
灰分流出:濾液(背水)の重量%で示したパーセント無機燃焼残渣
灰分流入:流入液(パルプ懸濁液)の重量%で示したパーセント無機燃焼残渣。
【0199】
結果をtable(下表)に要約し、図1に示す。
【0200】
【表6】
【0201】
測定番号4と測定番号1から3との比較によって、本発明による油中水ポリマー分散液(I-1)は、同一の陽イオン性(22重量%、C-1)を有する先行技術による油中水ポリマー分散液に対して優れていることが示されている。
【0202】
したがって、ポリマー凝固剤の存在下におけるラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体および場合によって存在するラジカル重合性エチレン性不飽和コモノマーの重合は、モノマーを重合させる場合にポリマー凝固剤を除外することによって達成し得ない特性を生じる。
【0203】
さらに、測定番号5から9、10から14、15から19および20から24の組の互いの比較は、追加のポリマー凝固剤(添加剤1)は、本発明による油中水ポリマー分散液(l-1)の排水性能を著しく改善するが、様々な陽イオン性における先行技術の油中水ポリマー分散液の排水性能は、ほとんど改善されない(C-1からC-3)ことを示している。したがって、本発明による油中水ポリマー分散液と一緒に追加のポリマー凝固剤を用いる場合に、驚くべき相乗効果がある。
【0204】
(応用例A-2)
BTG Mutek製DFS 03装置を使用して、歩留りを、応用例1の実験条件と同様に測定した。
【0205】
実験を、0.5重量%の組織密度を有する古紙(60% DIP(脱インキ部分)および40%砕木パルプ、0.402μsにおけるゼータ電位-15.4mV) に実施した。
【0206】
被験サンプル:
C-1 39%活性 7.520mPa*s
C-5 37%活性 6.980mPa*s
I-1 37%活性 8.540mPa*s(1重量%溶液中で測定された粘度)
添加:約5g(乾燥器)において200、400および600ppm
結果をtable(下表)に要約し、図2から4に示す。
【0207】
【表7】
【0208】
実験によって、本発明による油中水ポリマー分散液(I-1)は、比較の水中水ポリマー分散液(C-1およびC-5)に対して優れていることが示された。
【0209】
(応用例A-3)
脱水測定を、修正したショッパー-リーグラー法によって実施した。歩留りおよび灰分歩留りをBritt-Jar法に従って測定した。紙の実験室シートを、形成を測定するために作製した。
【0210】
結果をtable(下表)に要約し、図5および6に示す。
【0211】
【表8】
【0212】
歩留り、灰分歩留りおよび形成は、先行技術による油中水分散液の添加を増すことによって改善し得る(C-1;図5)。
【0213】
しかし、より低用量において同一結果および一層より良い結果を、本発明による油中水ポリマー分散液によって達成し得る(I-1;図6)。
【0214】
(応用例A-4)
本発明による油中水ポリマー分散液(I-1)の歩留りおよび排水性能を、先行技術による水中水ポリマー分散液(C-4)の歩留りおよび排水性能と比較した。
【0215】
セルロース(75%短繊維、25%長繊維;濾水度31°SR)を、65%セルロースおよび35%チョーク(GCC)を含む試験混合物に調整した。この試験混合物は、3g/lの濃度を有した。
【0216】
ショッパー-リーグラー: 80gの再生紙、7gのカオリンおよび1913 gの水道水の組成を有する標準の再生紙を、3000rpmで15分間ホモジナイズした。その後、3g/lの濃度を有する試験懸濁液を調製した。
【0217】
歩留りを、BTG Mutek製DFS 04装置を用いて測定した。1000ml試験懸濁液を、ポリマー分散液と混合し、1000rpmで10秒間剪断した。その後、約200mlの体積を、600rpmで篩(40メッシュ/0.22)を通して排水した。総歩留りを、濾液の固体から算出し、灰分歩留りを灰化(550℃)後に測定した。
【0218】
排水速度も、DFS 04装置を用いて測定した。このシステムは、試験プロフィール、インキュベーション時間および撹拌速度を電子的に予めセットし、それによって試験中の誤差原因を排除するという利点を有する。
【0219】
第2参照として、この方法は、ショッパー-リーグラーによる排出速度(保持時間)の測定も含む。3 g/l試験混合物について、100、200および300ppmの用量を用いた。ポリマー分散液を添加後、混合物を3回かき混ぜた。
【0220】
結果を下表に要約する。
【0221】
試験にかけた溶液は、1%の活性物質の濃度で与えられた。
【0222】
【表9】
【0223】
実験によって、本発明による油中水ポリマー分散液(I-1)は、再生紙の標準の排水および歩留り性能において比較の水中水ポリマー分散液(C-4)に対して優れていることが明らかになった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および場合によって1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含む油中水モノマー分散液を調製する工程と、
(b)ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体および場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーをラジカル重合させ、それによって介在ポリマーを得る工程と、
を含み
前記ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される、油中水ポリマー分散液の調製方法。
【請求項2】
前記油性物質が、脂肪族炭化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記油中水乳化剤が、2から9の範囲内のHLB値を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体が、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、アルケニルトリアルキルアンモニウムハライドおよびジアルケニルジアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される陽イオン性モノマーである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記1種または複数のエチレン性不飽和コモノマーが、(アルク)アクリルアミドを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の含有量が、前記ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体および前記ラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーの合計量に対して、0.1から50mol%の範囲内である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
- 前記油性物質が、6から30個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素であり、かつ/または
- 前記ポリマー凝固剤が、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライドを含む1種または複数のモノマーから誘導され、かつ/または
- 前記ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体が、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドであり、かつ/または
- 前記ラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーが、アクリルアミドを含む、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、および介在ポリマーを含み、請求項1から7のいずれかに記載の方法によって得られる油中水ポリマー分散液。
【請求項9】
前記介在ポリマーの重量平均分子量Mwが、前記ポリマー凝固剤の重量平均分子量Mwより大きい、請求項8に記載の油中水ポリマー分散液。
【請求項10】
- 3,000から20,000mPasの範囲内の溶液粘度、および/または
- 少なくとも750mPasの塩粘度
を有する、請求項8または9に記載の油中水ポリマー分散液。
【請求項11】
- 10から90重量%の水、
- 0.1から60重量%の少なくとも1種の油性物質、
- 0.1から25重量%の少なくとも1種の油中水乳化剤、
- 0.1から30重量%の少なくとも1種のポリマー凝固剤、および
- 少なくとも1種の介在ポリマーであって、
- 0.1から30重量%の少なくとも1種のラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および
- 1.0から90重量%の少なくとも1種のラジカル重合性エチレン性不飽和コモノマーから誘導される介在ポリマー
を含み、全ての百分率は、前記分散液の総重量に基づく、請求項8から10のいずれかに記載の油中水ポリマー分散液。
【請求項12】
請求項8から11のいずれかに記載の油中水ポリマー分散液の凝集剤としての使用。
【請求項13】
請求項8から12のいずれかに記載の油中水ポリマー分散液を水性セルロース懸濁液に添加する工程を含む、紙、板紙またはカード用厚紙の製造方法。
【請求項14】
追加のポリマー凝固剤が、前記セルロース懸濁液に添加される、請求項13に記載の方法。
【請求項1】
(a)水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および場合によって1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーを含む油中水モノマー分散液を調製する工程と、
(b)ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体および場合によって存在する1種または複数のラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーをラジカル重合させ、それによって介在ポリマーを得る工程と、
を含み
前記ポリマー凝固剤は、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、およびアルケニルトリアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される少なくとも1種の陽イオン性モノマーから誘導される、油中水ポリマー分散液の調製方法。
【請求項2】
前記油性物質が、脂肪族炭化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記油中水乳化剤が、2から9の範囲内のHLB値を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体が、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライド、アルケニルトリアルキルアンモニウムハライドおよびジアルケニルジアルキルアンモニウムハライドからなる群から選択される陽イオン性モノマーである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記1種または複数のエチレン性不飽和コモノマーが、(アルク)アクリルアミドを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体の含有量が、前記ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体および前記ラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーの合計量に対して、0.1から50mol%の範囲内である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
- 前記油性物質が、6から30個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素であり、かつ/または
- 前記ポリマー凝固剤が、(アルク)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムハライドを含む1種または複数のモノマーから誘導され、かつ/または
- 前記ラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体が、(アルク)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウムハライドであり、かつ/または
- 前記ラジカル重合性、エチレン性不飽和コモノマーが、アクリルアミドを含む、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
水、油性物質、油中水乳化剤、ポリマー凝固剤、および介在ポリマーを含み、請求項1から7のいずれかに記載の方法によって得られる油中水ポリマー分散液。
【請求項9】
前記介在ポリマーの重量平均分子量Mwが、前記ポリマー凝固剤の重量平均分子量Mwより大きい、請求項8に記載の油中水ポリマー分散液。
【請求項10】
- 3,000から20,000mPasの範囲内の溶液粘度、および/または
- 少なくとも750mPasの塩粘度
を有する、請求項8または9に記載の油中水ポリマー分散液。
【請求項11】
- 10から90重量%の水、
- 0.1から60重量%の少なくとも1種の油性物質、
- 0.1から25重量%の少なくとも1種の油中水乳化剤、
- 0.1から30重量%の少なくとも1種のポリマー凝固剤、および
- 少なくとも1種の介在ポリマーであって、
- 0.1から30重量%の少なくとも1種のラジカル重合性(アルク)アクリル酸誘導体、および
- 1.0から90重量%の少なくとも1種のラジカル重合性エチレン性不飽和コモノマーから誘導される介在ポリマー
を含み、全ての百分率は、前記分散液の総重量に基づく、請求項8から10のいずれかに記載の油中水ポリマー分散液。
【請求項12】
請求項8から11のいずれかに記載の油中水ポリマー分散液の凝集剤としての使用。
【請求項13】
請求項8から12のいずれかに記載の油中水ポリマー分散液を水性セルロース懸濁液に添加する工程を含む、紙、板紙またはカード用厚紙の製造方法。
【請求項14】
追加のポリマー凝固剤が、前記セルロース懸濁液に添加される、請求項13に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2011−502186(P2011−502186A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530324(P2010−530324)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008897
【国際公開番号】WO2009/053029
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(505301103)アシュランド・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティー・エルエルシー (40)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008897
【国際公開番号】WO2009/053029
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(505301103)アシュランド・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティー・エルエルシー (40)
【Fターム(参考)】
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