説明

ポリマー分散剤で安定化された水性コロイド分散液

水、分散された顔料粒子、炭素原子数12以上のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーから誘導される単位およびカルボン酸置換基を含有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される単位を含む第1のポリマー分散剤、および芳香族基含有置換基を含有するモノマーから誘導される単位およびカルボン酸置換基を含有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される単位を含む第2のポリマー分散剤を含有し、該第2のポリマー分散剤が炭素原子数12以上のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーから誘導される単位を含有せず、かつ該第2のポリマー分散剤の酸価が270未満であるコロイド顔料分散組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、ポリマー分散剤を用いた水不溶性物質の水性コロイド分散液に関するものであり、特にポリマー分散剤を用いた水性顔料分散液に関するものである。より詳しくは、本発明はポリマー分散剤を用いたインクジェットインク用水性顔料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
水性キャリア中の水不溶性物質のコロイド分散液は、例えばいくつかの例を挙げると、塗料、インク、農薬、医薬品、および建築用化学製品等の数多くの重要な用途において、幅広く使用されている。ここで、コロイド分散液とは、微細に分割された粒径約10〜1000ナノメートルの粒子が、容易に凝集したり、素早く沈降したりするのを防止する方法により、連続液体キャリア内に分散された系として定義される。最近では、一般に直径が100ナノメートル未満の粒子として定義されるナノ粒子の系がますます重要になっている。これらの系の多くの系においては、粒子のキャリアは水または水と水混和性補助溶剤との混合物が好ましい。全てのこの種のコロイド系における重要な性能は、当該系がその有効寿命にわたって固有の粒子安定性を示すことである。
【0003】
長期にわたって凝集や沈降に対して安定な顔料系インク等の水性コロイド分散液を設計するために、多くの探求がなされている。ここで「コロイドが安定である」とは、コロイドの好ましい粒径または粒径分布が時間または貯蔵条件によっても比較的変化しないことを意味する。熟成(ripening)、癒着(coalescence)、集合、または凝集などの多くの現象によって、コロイドは不安定になり得る。コロイドの安定化のための好ましいひとつの方法は、イオン性または非イオン性の小分子界面活性剤を使用する方法である。しかしながら、これらの系には、含有される水性キャリアおよび該キャリア中に添加される添加剤の複雑さに基づく制限がある。
【0004】
第2の方法は、ポリマー分散剤を使用する方法である。ポリマー分散剤は一般的には、疎水性の分散剤部分と親水性の分散剤部分とを有するように設計される。ポリマー分散剤は一般的には、ランダムポリマー、ブロックポリマー、またはグラフトポリマーとして定義され、該分散剤は水不溶性コロイドの比表面積および水性キャリア液体の補給に適合した様々なコンホメーションおよび化学的組成を有し得る。
【0005】
水不溶性コロイドの商業的に重要な一群のコロイドは顔料である。顔料は一般的には無機顔料または有機顔料として定義できる。無機顔料として、例えば、二酸化チタン、二酸化ケイ素、およびその他の多数の金属酸化物を含む金属酸化物が挙げられる。有機顔料は、インク技術の分野で着色剤として通常使用されているものであり、例えば、キナクリドン類、フタロシアニン類、アゾ類、カーボンブラック等が挙げられる。水性キャリア中へ顔料を分散させるために、数多くのポリマー分散剤系が提案されている。しかしながら、所定のポリマー分散剤に対して、顔料の表面は実質的に変化し、著しく異なる親和性を示すことがある。コロイド分散液の水相での水混和性有機補助溶剤(water-miscible organic co-solvents)の使用も、顔料表面に対するポリマー分散剤の親和性に大きな影響を与える。
【0006】
インクジェット印刷は、デジタル信号に応じて画像記録素子にピクセル・バイ・ピクセル法(a pixel-by-pixel manner)でインク液滴を付着させることにより印刷画像を作成する非衝撃法(non-impact method)である。所望の印刷画像を得るために、画像記録素子へのインク液滴の付着を制御するための様々な方法が利用されている。ドロップ・オン・デマンド・インクジェット(dorp-on-demand inkjet)として知られている方法では、個々の液滴を必要に応じて画像記録素子上へ発射し、所望の印刷画像を形成する。ドロップ・オン・デマンド印刷方式でインク液滴の射出を制御する一般的な方法として、サーマル・バブル・フォーメーション(thermal bubble formation)(サーマル・インクジェット(thermal inkjet)(TIJ))法および圧電変換器を用いる方法がある。連続インクジェット(continuous inkjet)(CIJ)法として知られている別の方法では、液滴の連続流を発生させ、これを画像記録素子の表面に画像状に吐出させ、一方で非画像の液滴は偏向させて捕獲し、インク溜めに再循環される。インクジェットプリンタには、机の上の書類や写真品質の画像から短時間印刷や工業的ラベル付けまでの市場に及ぶ広い用途が見い出されている。
【0007】
インクジェットプリンタで使用される着色剤含有インク組成物は、着色剤がインク組成物中に懸濁された顔料粒子として存在する顔料系、または着色剤が1種または複数種の染料分子からなる完全溶媒和染料種として存在する染料系のいずれかとして分類することができる。顔料は染料よりもはるかに退色に対する耐久性があるため、非常に好ましい。しかしながら、顔料系インクには多くの欠点がある。顔料を十分に小さい粒径まで粉砕し、十分なコロイド安定性を粒子に付与するためには、長時間の処理を必要とする。
【0008】
水性キャリア中で顔料を分散させる方法のひとつに、ポリマー分散剤の存在下で顔料を機械的に粉砕(milling)する方法が挙げられる。顔料を粉砕するためのポリマー分散剤として、特許文献1〜6に記載のものが挙げられる。ごく最近のコポリマー分散剤の設計では、特許文献7および8に開示されているように、疎水性部分が多様な類型の親水性部分と組み合わせて用いられている。
【0009】
これらのポリマー分散剤は水中での顔料のためのコロイド安定剤として知られているが、水および有機補助溶剤の混合液中での顔料表面に対しては不十分な安定剤である。このことは、40℃を超える温度のような促進保存条件(accelerated keeping conditions)下で特に該当する。最新のインクジェットインクの用途の場合のように、このような有機補助溶剤の存在は、コロイド懸濁液またはインク中において、大粒子や粒子凝集物の数が増加するという有害な結果をもたらす。粒子成長に関する不利な効果の具体例として、インクジェット印刷ヘッドの小径ノズルの詰まり、印刷画像における光沢の消失、およびインクジェットインクタンクまたはカートリッジ中での貯蔵時におけるコロイドの沈降が挙げられる。
【0010】
ポリマー分散剤で顔料を分散させる第2の研究方法には、当該ポリマーを顔料表面に共有結合させる方法、または顔料表面をポリマーでカプセル化する方法が含まれる。顔料安定性に係るこの方法に関して数多くの方法が提案されており、例えば、特許文献9〜12が挙げられる。しかしながら、これらの方法は、顔料の存在下での重合を注意深く制御することを伴ったり、または当該方法における幾つかの段階で揮発性溶剤を除去する必要性を伴ったりする。このような方法の複雑さや追加された処理段階は、コロイド懸濁液またはインクの製造方法に好ましくない付加的コストをもたらす。
【0011】
粒径の変化に対して経時的に安定で、特に高温および/または有機補助溶剤配合のような苛酷な条件下でも安定な粒径分布をもたらす水性キャリア中に水不溶性顔料粒子を分散させたコロイド分散液を簡便に製造する方法が依然として必要である。さらに、多くの様々な類型または種類の顔料と良好に適合するポリマー分散剤の開発が依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,245,832号明細書
【特許文献2】米国特許第5,085,698号明細書
【特許文献3】米国特許第4,597,794号明細書
【特許文献4】米国公開第2006/0014855号明細書
【特許文献5】米国公開第2007/0043144号明細書
【特許文献6】米国公開第2007/0043146号明細書
【特許文献7】米国公開第2006/0084720号明細書
【特許文献8】欧州特許第1666547号明細書
【特許文献9】米国特許第5,990,202号明細書
【特許文献10】米国特許第6,635,693号明細書
【特許文献11】米国特許第6,972,303号号明細書
【特許文献12】米国公開第2006/0155006号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記に説明した1またはそれ以上の問題を解決することを目的とする。簡潔にまとめると、本発明のひとつの側面によれば、長期貯蔵または高温保存の条件下で最小の粒径増大しか示さない水性コロイド顔料分散組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、一実施形態によれば、水、分散された顔料粒子、炭素原子数12以上のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーから誘導される単位およびカルボン酸置換基を含有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される単位を含む第1のポリマー分散剤、および芳香族基含有置換基を含有するモノマーから誘導される単位およびカルボン酸置換基を含有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される単位を含む第2のポリマー分散剤を含有し、該第2のポリマー分散剤が炭素原子数12以上のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーから誘導される単位を含有せず、該第2のポリマー分散剤の酸価が270未満であるコロイド顔料分散組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水不溶性コロイド粒子は、水性キャリア媒体中に複数のポリマー分散剤で分散された顔料粒子である。特定の態様において、コロイド顔料分散液は、例えばインク、特にインクジェット印刷用インクとして使用される。本発明における使用に適した顔料としては、制限されるものではないが、例えば、アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、β−ナフタール顔料(β−Naphthal pigments)、ナフタールAS顔料(Naphthal AS pigments)、ベンズイミダゾロン顔料、ジアゾ縮合顔料、金属錯体顔料、イソインドリノンおよびイソインドリン顔料、多環式顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料(flavanthrone pigments)、アンタントロン顔料(anthanthrone pigments)、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料(quinophthalone pigments)、ジケトピロロピロール顔料(diketopyrrolo pyrrole pigments)、酸化チタン、酸化鉄、およびカーボンブラックが挙げられる。
【0016】
使用される顔料の具体例として、例えば、カラー・インデックス(C.I.)ピグメントイエロー1,2,3,5,6,10,12,13,14,16,17,62,65,73,74,75,81,83,87,90,93,94,95,97,98,99,100,101,104,106,108,109,110,111,113,114,116,117,120,121,123,124,126,127,128,129,130,133,136,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,165,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,183,184,185,187,188,190,191,192,193,194;C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,21,22,23,31,32,38,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,49:3,50:1,51,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,68,81,95,112,114,119,122,136,144,146,147,148,149,150,151,164,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,181,184,185,187,188,190,192,194,200,202,204,206,207,210,211,212,213,214,216,220,222,237,238,239,240,242,243,245,247,248,251,252,253,254,255,256,258,261,264;C.I.ピグメントブルー1,2,9,10,14,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,18,19,24:1,25,56,60,61,62,63,64,66,橋かけアルミニウムフタロシアニン顔料(bridged aluminum phthalocyanine pigments);C.I.ピグメントブラック1,7,20,31,32;C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,6,13,15,16,17,17:1,19,22,24,31,34,36,38,40,43,44,46,48,49,51,59,60,61,62,64,65,66,67,68,69;C.I.ピグメントグリーン1,2,4,7,8,10,36,45;C.I.ピグメントバイオレット1,2,3,5:1,13,19,23,25,27,29,31,32,37,39,42,44,50;またはC.I.ピグメントブラウン1,5,22,23,25,38,41,42が挙げられる。
【0017】
本発明は、インク配合物中における粒子の不安定性および成長に対する感受性(susceptibility)を有する一般構造式1;
【化1】

で表されるモノアゾ顔料に対して特に有用である。
【0018】
一般構造式1中、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のフルオロアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基またはそのアルカリ土類金属塩、N−フェニルアミノスルホニル基、カルボキシル基またはそのアルカリ土類金属塩、カルボアミド基、N−フェニルカルバモイル基、ウレイレン(ureylene)基、イミノジカルボニル基、またはカルボキシレート基を示す。一般構造式1で表される顔料の具体例としては、特に限定的ではないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,5,6,49,65,73,74,75,97,98,111,116,130,61,62:1,133,168,169等が挙げられる。本発明において特に有用な顔料はC.I.ピグメントイエロー74である。
【0019】
第1の分散剤
本発明の顔料粒子は第1の分散剤の使用によって安定化され、当該第1の分散剤はここで定義されるアクリルポリマーである。ここで用語(メタ)アクリレートは、メタクリレートまたはアクリレートを互換的に意味する。第1の分散剤は、炭素原子数12以上のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートから誘導される単位、およびカルボン酸含有置換基を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから誘導される単位を含むものである。
【0020】
本発明において有用な炭素原子数12以上のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレート単位の具体例として、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソ−セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソ−ステアリル(メタ)アクリレート、デシルテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましいアクリル単位はステアリルメタクリレートまたはステアリルアクリレートである。
【0021】
本発明において有用なカルボン酸含有置換基を含有するエチレン性不飽和モノマーの具体例として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、カルボキシメチル(メタ)アクリレート、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロキシプロピオン酸、メタクリロキシエチルスクシネート(methlacryloxyethyl succinate)等が挙げられる。他の有用なカルボン酸含有モノマーとしては、構造式2;
【化2】

(式中、RはHまたはメチルであり、nは1〜6である。)で表されるオリゴマー性アクリル酸の混合物であってよい。第1のポリマー分散剤において、カルボン酸含有モノマーは2種以上組み合わせて使用されてよい。
【0022】
本発明の好ましい第1の分散剤は、以下の量で複数の単位を含有する;炭素原子数12以上のアクリレートまたはメタクリレート単位少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも15重量%;ベンジル(メタ)アクリレート少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%;および置換基を含有するエチレン性不飽和カルボン酸少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%を含有する。第1のポリマー分散剤として有用な好ましいポリマー分散剤として、米国公開第2007/0043144および2007/0043146号に記載のものも挙げられる。
【0023】
第2の分散剤
本発明の顔料粒子は、第1の分散剤とともに、第2の分散剤を使用することにより安定化され、当該第2の分散剤はここで定義されるコポリマーである。第2の分散剤は、芳香族基含有置換基を含有するモノマーから誘導される少なくとも疎水性の単位(例えば、以下において追加的に記載されたもの)、およびカルボン酸置換基を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから誘導される単位(例えば、第1の分散剤に関連して上記したもの)、ならびに必要により、炭素原子数12以上のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーから誘導されない追加的モノマー単位を含有する。第2の分散剤は酸価が270未満であり、好ましくは260以下である。酸価は、1グラムのポリマーを中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数として定義される。従って、所定のポリマーの酸価は、酸を含有する1種または複数種のモノマーの割合と関係する。酸価が高いほど、当該ポリマー中にはより多くの酸性官能基が存在する。
【0024】
芳香族基含有置換基を含有するモノマーから誘導される疎水性単位は、芳香族基を含有する(メタ)アクリレート、例えば、ベンジル(メタ)アクリレートであってよい。芳香族基含有置換基を含有する疎水性単位はスチレン誘導体であってよく、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、アセトキシスチレン、ビニルフェノール、(t−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン、メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、メチルビニルベンゾエートエステル、ビニル安息香酸(vinylbenzoic acid)等が挙げられる。
【0025】
第1および第2のポリマー分散剤は、任意に、以下からなる群から選択される1種または複数種の追加的単位を含有してもよい;アクリル酸またはメタクリル酸のエステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ナトリウム−2−スルホエチルアクリレート、2−アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、グリシジルメタクリレート、およびエチレングリコールジメタクリレート);ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1−メチルー2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、およびテトラヒドロフルフリルビニルエーテル);ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルジメチルプロピオネート、ビニルエチルブチレート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、およびビニルアセトアセテート);ビニルヘテロ環式化合物(例えば、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルチオフェン、およびN−ビニルエチルアセトアミド)、オレフィン(例えば、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、および5,5−ジメチル−1−オクテン)、ハロゲン化オレフィン(例えば、ビニルクロライドおよびビニリデンクロライド);不飽和ニトリル(例えば、アクリロニトリル);およびアクリルアミドおよびメタクリルアミド(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−s−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロライド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロライド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−(1,1,2−トリメチルプロピル)アクリルアミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アクリルアミド、N−(1−フタルアミドメチル)アクリルアミド、ナトリウムN−(1,1−ジメチル−2−スルホエチル)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−(2−カルボキシエチル)アクリルアミド、3−アクリルアミド−3−メチルブタン酸、およびメチレンビスアクリルアミド)。
【0026】
本発明の第1および第2のポリマー分散剤は、当該ポリマーを構成する反復単位の配置について制限されない。モノマーの配置は全体的にランダムであってもよいし、またはモノマーは例えばABまたはABA(式中、Aは疎水性モノマーを示し、Bは親水性の酸基含有モノマーを示す)等のブロックに配置されてもよい。さらに当該ポリマーは、ランダムターポリマーまたはABCトリブロック(式中、A,BおよびCブロックのうちの少なくとも1つのブロックは親水性モノマーであるように選択され、残りのブロックは互いに異なる疎水性ブロックである)の形態をとってよい。好ましい当該ポリマー分散剤はランダムポリマーである。
【0027】
本発明の複数のポリマー分散剤は、ポリマー合成の分野で周知の乳化重合、溶液重合または塊状重合等のいずれの技術によっても製造できる。本発明の複数のポリマー分散剤は、重量平均分子量が50,000未満であることが好ましく、より好ましくは20,000未満である。本発明の複数のポリマー分散剤は水溶性であることが好ましい。水溶性とは、当該ポリマーが水に溶解されたとき、視覚的に透明な溶液を与えるという意味である。
【0028】
本発明の複数のポリマー分散剤におけるカルボン酸基は一般的には、無機塩基または有機塩基を用いて少なくとも部分的に中和されて塩に変換されている。一般的な有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。好ましい無機塩基として、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化アンモニウムまたは水酸化リチウムが挙げられる。当該ポリマーを無機塩基によって中和させることにより、サーマルインクジェット印刷ヘッドからの発射性能(firing performance)を向上させることが好ましい。好ましい態様においては、当該ポリマーにおける有効な酸基の少なくとも50%を塩基を用いて塩に変換し、より好ましくは有効な酸基の少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも85%を塩基を用いて塩に変換する。顔料粒子をインクと混合するとき、pHの制御が失われるので、製造の面からは、酸基の100%未満を中和することが好ましい。有用なインクのpHは好ましくは5〜10であり、より好ましくは6〜8である。
【0029】
好ましい態様において、本発明で用いられるコロイド顔料分散液はインクジェット印刷に適したインク組成物を調製するために使用される。本発明で有用な顔料粒子はインクジェット印刷の分野で既知のいずれかの方法によって調製されてよい。有用な方法は、一般的には次の工程(a)および(b)を含む:(a)顔料を所望の粒径範囲まで破砕する顔料の分散工程または粉砕工程、および(b)工程(a)で得られる顔料分散液を残りのインク成分で希釈して使用濃度のインク(working strength ink)を得る希釈工程。
【0030】
顔料の分散または粉砕工程(a)は、例えば、メディアミル(media mill)、ボールミル、二本ロールミル(two-roll mill)、三本ロールミル(three-roll mill)、ビーズミル、およびエアージェットミル等の粉砕ミル(grinding mill);アトリッター(attritor);または液体相互作用チャンバー(liquid interaction chamber)等のいずれかのタイプのものを用いて行ってよい。粉砕工程(a)では、顔料を必要により、工程(b)で顔料分散液を希釈するのに使用される媒体と同じか、または類似する媒体中に懸濁させる。粉砕工程(a)では必要により不活性粉砕媒体を存在させ、顔料の一次粒子までの破砕処理を促進させる。不活性粉砕媒体としては、例えば米国特許第5,891,231号に記載されているような、ポリマービーズ、ガラス、セラミックス、金属およびプラスチック等の材料が挙げられる。粉砕媒体は、工程(a)で得られた顔料分散液または工程(b)で得られたインク組成物から取り除かれる。
【0031】
少なくとも1種の第1分散剤(分散剤1)を粉砕工程(a)に存在させることによって、顔料粒子の破砕を促進する。工程(a)で得られた顔料分散液または工程(b)で得られたインク組成物中には、少なくとも1種の第2分散剤(分散剤2)を存在させることによって、粒子安定性を維持して沈降を防止する。使用される第1および第2の分散剤の量は、顔料粒子の量、顔料の粒径および水性キャリア液体の組成に依存する。第1および第2の分散剤は一般的には、顔料の重量に対して少なくとも20重量%の合計量で存在することが好ましい。顔料の全ポリマー分散剤に対する重量比率は10:1〜1:2の範囲内が好ましく、より好ましくは5:1〜1:1である。有用なインク組成物は、当該インク組成物の全重量に対して、顔料粒子を0.5〜10重量%、より好ましくは1〜6%、最も好ましくは1〜4%で含有し、また、分散剤の全量は、インク成分の全重量に基づいて、0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5%、最も好ましくは1〜4%である。
【0032】
本発明のコロイド分散液およびインク組成物の顔料粒子は一般的には粒径分布を有している。インク組成物における顔料粒子の有用な粒径範囲は10〜1000ナノメートルである。顔料粒子の粒径は好ましくは10〜500ナノメートル、より好ましくは10〜300ナノメートルの範囲内である。このような粒径範囲においては、大部分の粒子が100ナノメートル未満の粒径を有することが好ましい。粒子の90体積%が100ナノメートル未満の粒径を有することが好ましく、より好ましくは60ナノメートル未満の粒径を有する。本発明の顔料粒子は単一粒子として分散されていることが望ましい。
【0033】
本発明で使用されるコロイド顔料分散液およびインク組成物のキャリア媒体は水を含有する。当該キャリア媒体はさらに1種または複数種の水溶性保湿剤または補助溶剤を含有してよく、これによって、特にインクジェットインクに有用な特性が付与される。ここで「水溶性」とは、使用される保湿剤または補助溶剤と水との混合物が均一であることを意味する。一般的に有用な特性としては、特に制限されるものではないが、例えば、次の特性が挙げられる:インク組成物が印刷ヘッドのノズルにおいて乾燥したり、固まりついたりするのを防止すること;インク組成物中における成分の溶解を補助すること;エジェクター(ejector)からのインクの発射特性を補助すること;印刷後においてインク組成物の画像記録素子への浸透を促進すること;光沢を補助すること;色のにじみを防止すること;癒着を防止すること;印刷中および印刷後において紙のしわおよびカールの発生などの機械的影響を抑制すること。保湿剤または補助溶剤は個別に使用できるが、有用なインクジェットインクは、それぞれがインクジェットインクに有用な特性を付与する2種、3種またはそれ以上のものの混合物を使用できる。
【0034】
本発明で有用なインク組成物は、高頻度の発射を低ばらつきで達成するために、保湿剤を含有することが好ましい。本発明で使用されてよい保湿剤の代表例として、例えば、(1)トリオール、例えばグリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、アルコキシル化トリオール、アルコキシル化ペンタエリスリトール、サッカリド、および糖アルコール;(2)ジオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、4個以上のアルキレンオキシド基を有するポリアルキレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール;および(3)チオグリコール、またはこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、グリセロールおよびその多価アルコール誘導体が好ましく、グリセロールが特に好ましい。グリセロールの多価アルコール誘導体として、例えば、グリセロールエトキシド、グリセロールプロポキシド、およびグリセリルが挙げられる。有用な保湿剤は、所定のプリンタシステムの典型的な作動温度未満の融点を有するものであり、これによって印刷ヘッドまたは保守システムにおいて結晶性析出物の形成が回避される。このことは、実用的には、有用な保湿剤の融点が30℃未満、好ましくは20℃未満、より好ましくは10℃未満であることを意味する。本発明において有用な典型的な水性インク組成物は、このような保湿剤を2〜25重量%、好ましくは6〜20重量%、最も好ましくは8〜15重量%含有する。
【0035】
本発明のインク組成物は、上記保湿剤に加えて、さらに他の水混和性補助溶剤または浸透剤を含有してもよい。水性インク組成物に使用される他の補助溶剤の代表例として、例えば、以下の溶剤が挙げられる:(1)アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソ−ブチルアルコール、フルフリルアルコール、およびテトラヒドロフルフリルアルコール;(2)多価アルコールから誘導された低級モノ−およびジ−アルキルエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート;(3)窒素含有化合物、例えばウレア、2−ピロリジノン(pyrrolidinone)、N−メチル−2−ピロリジノン、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(imidazolidinone);(4)硫黄含有化合物、例えば2,2'−チオジエタノール、ジメチルスルホキシド、およびテトラメチレンスルホン。本発明において有用な典型的な水性インク組成物はこのような他の補助溶剤を2〜10重量%で含有してよい。
【0036】
特定の態様では、本発明において有用な保湿剤または補助溶剤として、1,2−アルカンジオール(例えば、1,2−ヘキサンジオールおよび1,2−ペンタンジオール)および低級アルキルグリコールエーテル(例えば、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノメチルエーテル)を用いてもよい。このような化合物を用いるとき、本発明は特に有利である。何故ならば、このような化合物を使用するとき、本発明による分散剤の組み合わせによって系は安定化されるのに対し、当該分野において知られている他の界面活性剤または他のポリマーで分散された顔料は、1,2アルカンジオールまたはアルキルグリコールエーテルの高い界面活性によって不安定にされるからである。
【0037】
界面活性剤を添加して、インクの表面張力を適切なレベルに調整してもよい。特定の態様においては、インクセットの様々な顔料系インクおよび無色保護インク(colorless protective ink)の相対的な動的および静的表面張力を、同時係属中の一般承継された2006年2月12日出願の米国特許出願第12/029,986号に記載されているように制御し、インク間のにじみを制御する。特に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックおよび無色のインクを用いる場合、当該インクの表面張力は以下の関係を有する;(i)インクセットの全てのインクの表面年齢(surface age)10ミリ秒での動的表面張力は35mN/m以上である;(ii)イエローインクおよび無色保護インクの静的表面張力は、インクセットのシアン、マゼンタおよびブラックインクの静的表面張力よりも少なくとも2.0mN/m小さい;および(iii)無色保護インクの静的表面張力は、イエローインクの静的表面張力よりも少なくとも1.0mN/m小さい。
【0038】
界面活性剤はアニオン性、カチオン性、両性またはノニオン性であってよく、インク組成物の0.01〜5%の濃度で使用される。適切なノニオン性界面活性剤として、例えば、線状または第2アルコールエトキシレート(例えば、ユニオン・カーバイド(Union Carbide)社から入手できるターギトール(TERGITOL)(登録商標)15−Sおよびターギトール(登録商標)ティー・エム・エヌ(TMN)シリーズならびにユニクエマ(Uniquema)社から入手できるビー・アール・アイ・ジェイ(BRIJ)(登録商標)シリーズ)、エトキシル化アルキルフェノール(例えば、ユニオン・カーバイド社から入手できるトリトン(TRITON)(登録商標)シリーズ)、フルオロ界面活性剤(例えば、デュポン(DuPont)社から入手できるゾニルス(ZONYLS)(登録商標);および3M社から入手できるフルオラッドス(FLUORADS)(登録商標))、脂肪酸エトキシル化物、脂肪酸アミドエトキシル化物、エトキシル化およびプロポキシル化ブロックコポリマー(例えば、ビー・エー・エス・エフ(BASF)社から入手できるプルロニック(PLURONIC)(登録商標)およびテトロニック(TETRONIC)(登録商標)シリーズ)、エトキシル化およびプロポキシル化シリコーン系界面活性剤(例えば、シー・ケー・ウィトコ(CK Witco)社から入手できるシルウェット(SILWET)(登録商標))、アルキルポリグリコシド(例えば、コグニス(Cognis)社から入手できるグルコポンズ(GLUCOPONS)(登録商標))、およびアセチレン性ポリエチレンオキシド界面活性剤(例えば、エアー・プロダクツ(Air Products)社から入手できるスルフィノールズ(Surfynols))が挙げられる。
【0039】
アニオン性界面活性剤の具体例として、例えば、カルボキシル化物(例えば、エーテルカルボキシレートおよびスルホスクシネート)、スルフェート化物(例えば、ナトリウムドデシルスルフェート)、スルホネート化物(例えば、ドデシルベンゼンスルホネート、α−オレフィンスルホネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、脂肪酸タウレート(fatty acid taurates)、およびアルキルナフタレンスルホネート)、ホスフェート化物(例えば、アルキルおよびアリールアルコールのホスフェート化エステル、例えば、デクスター・ケミカル(Dexter Chemical)社から入手できるストロデクス(STRODEX)(登録商標)シリーズ)、ホスホネート化およびアミンオキシド界面活性剤、およびアニオン性フッ素化界面活性剤が挙げられる。両性界面活性剤の具体例として、例えば、ベタイン、スルタイン(sultaines)、およびアミノプロピオネートが挙げられる。カチオン性界面活性剤の具体例として、例えば、第4級アンモニウム化合物、カチオン性アミンオキシド、エトキシル化脂肪アミン、およびイミダゾリン界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤の追加例として、「マッカーチオンの乳化剤と洗剤(McCutcheon's Emulsifiers and Detergents)」(1995年、ノース・アメリカン編(North American Editor))に記載のものが挙げられる。
【0040】
顔料系インク組成物は任意に追加的添加剤を含有してよい。当該添加剤は、顔料粒子のコロイド安定性を阻害しないが、他のインク特性に望ましいものである。例えば、経時的にインク中で起こる望ましくない微生物の増殖を抑制するために、殺生剤(biocide)を0.01〜1.0重量%添加してもよい。好ましい殺生剤として、例えば、プロクセル(PROXEL)(登録商標)ジー・エックス・エル(ゼネカ・カラーズ・コーポ(Zeneca Colors Co.)社製)(使用濃度0.05〜0.1重量%)およびコーデック(KORDEC)(登録商標)(ローム・アンド・ハース・コーポ(Rohm and Haas Co.)社製)(使用濃度0.05〜0.1重量%)が挙げられる(前記の濃度は活性成分100%に基づく値である)。インク組成物中に任意で存在してよい追加的添加剤として、例えば、増粘剤、導電性向上剤、アンチコゲーション剤(anti-kogation agents)、乾燥剤、耐水剤(waterfast agents)、染料可溶化剤、キレート剤、ポリマーバインダー、光安定剤、ビスコシファイヤー(viscosifiers)、緩衝剤、かび防止剤、カール防止剤(anti-curl agents)、安定剤、および消泡剤が挙げられる。
【0041】
本発明のインク中に存在できる特に有用な添加剤は耐久性を高めるポリマーバインダーであり、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレアまたはポリウレタンが挙げられる。特に有用なポリマーは、米国公開第2006/0100308および2006/0100306号ならびに同時係属中の未公開米国仮出願第60/892,171および60/892,158号に記載されているような水分散性ポリウレタンである。ここで「水分散性」とは、分散助剤を必要とすることなしに、インク中に安定に分散される個々のポリマー分子またはポリマー分子のコロイド集合体を包含すること意味するものとする。本発明において特に有用な水分散性ポリウレタンは一般構造式3;
【化3】

で表される。
【0042】
当該構造(構造式3)において、Rは、ジイソシアネートの重合物であるモノマー単位の中央部を表す;Rは、少なくとも1つのポリオールまたは、必要によるポリアミンの重合物である単位の中央部を表す;Rは、酸基を含有する単位の中央部を表す;XおよびYは同一または異なるものであって、−O−または−N−原子を表す。
【0043】
構造式3のRは好ましくは2価の炭化水素基であり、より好ましくは置換または非置換の脂環式基、脂肪族基または芳香族基を含有するものであり、好ましくは以下の構造式のうちの1またはそれ以上の基で表されるものである:
【化4】

【0044】
構造式3のRは好ましくはエステル、カーボネートまたはエーテル結合を有するプレポリマーを含有するソフトセグメント(soft segment)を表す。
【0045】
ソフトセグメントは、両端をヒドロキシル(ジオール)基またはアミノ(ジアミン)基末端としたプレポリマーを用いることによってポリウレタンの主鎖に導入される。ヒドロキシル基末端を有するプレポリマーはポリオールとして知られており、アミノ基末端を有するプレポリマーはポリアミンとして知られている。本発明の実施に有用なポリオールとして、例えば、a)例えば、ジカルボン酸とジオールとのエステル化またはラクトン(例えばε−カプロラクトン)およびジオールの開環反応によって得られるポリエステルポリオール;b)例えば、ジオールを、ジアリールカーボネートまたはホスゲン、およびポリエーテルジオールと反応させることによって得られるポリカーボネートポリオール;およびc)例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはテトラメチレングリコールの縮合物としてのポリエーテルポリオールが挙げられる。ポリオールの分子量は300より高く、3000未満であることが好ましい。本発明の実施に有用なポリアミンとして、例えば、ハンツマン(Huntsman)社から商標名ジェファミン(JEFFAMINE)(登録商標)D,EDおよびMシリーズとして市販されているものが挙げられる。別のより好ましいポリエーテルジアミンは、分子量1,000のポリテトラヒドロフランビス(3−アミノプロピル)を末端基とするものである。
【0046】
構造式3のRは好ましくはリン酸基、カルボン酸基、またはスルホン酸基を含有するモノマー単位の中央部を表し、最も好ましくは2,2'−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2'−ビス(ヒドロキシメチル)ブトリック酸(2,2'-bis(hydroxymethyl)butoric acid)、4,4'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸のヒドロキシエチルエーテル等のカルボン酸であるモノマー単位の中央部を表す。これらの原料は、ポリウレタン製造の分野で周知のいずれかの技術によって製造されてよく、例えば、米国特許第4,335,029号(ダディ等、譲受人:ヴィトコ・ケミカル・コーポレーション(Witco Chemical Corporation)(ニューヨーク)および「水性ポリウレタン分散液(Aqueous Polyurethane Dispersions)」(ビー・ケイ・キム著、コロイド・アンド・ポリマーサイエンス、第274巻、No.7(1996年)、第599頁〜第611頁、ステイノフ・フェアラーク(Steinopff Verlag)1996年)に記載の方法によって製造される。
【0047】
本発明で使用される好ましいポリウレタンは、分子中に十分量の酸基を有し、50〜150、より好ましくは60〜140、最も好ましくは65〜130の酸価を有する。酸価は、1グラムのポリマーを中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数として定義される。ポリマーの酸価は以下の数式によって計算される。
【0048】
酸価=(酸モノマーのモル数)×(56グラム/モル)×(1000)/(モノマーの合計グラム数)
【0049】
式中、酸モノマーのモル数は当該ポリマーを構成する全ての酸基含有モノマーの全モル数であり、56は水酸化カリウムの式量であり、モノマーの合計グラム数は当該ポリマーを構成する全てのモノマーのグラム単位での総重量である。
【0050】
本発明で有用なポリウレタン分散液は、比較的低い分子量を有し、かつ少過剰のイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、分散処理中に当該プレポリマーを連鎖延長剤で高分子量ポリウレタンに鎖延長することによって製造できる。このような方法は、例えば、以下の文献に記載されている:米国特許第4,335,029号(ダディ等;ヴィトコ・ケミカル・コーポレーション(ニューヨーク)に譲渡);「水性ポリウレタン分散液」(ビー・ケイ・キム著、コロイド・アンド・ポリマーサイエンス、第274巻、No.7(1996年)、第599頁〜第611頁、ステイノフ・フェアラーク、1996年);および「ポリウレタンの分散方法(Polyurethane Dispersion Process)」(マニア(Mania)等、ペイント・アンド・コーティング・インダストリー、2007年1月、第30頁)。
【0051】
好ましいジアミン連鎖延長剤として、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、3,3'−ジニトロベンジデン(dinitrobenzidene)、エチレンメチレンビス(2−クロロアニリン)、3,3'−ジクロロ−4,4'−ビフェニルジアミン、2,6−ジアミノピリジン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミンとアクリレートとの付加物またはその加水分解物、ヒドラジン、および置換ヒドラジンが挙げられる。
【0052】
本発明で有用なポリウレタン分散液は、分散工程中において鎖延長工程を行うことなく製造することもできる。当該方法において、ウレタンまたはウレア結合を形成するための化学反応は分散工程前に完了する。
【0053】
本発明で有用なポリウレタンの最小分子量は少なくとも8,000である。当該ポリウレタンの最大分子量は150,000であることが好ましい。より好ましいポリウレタンの分子量は10,000〜100,000であり、最も好ましくは15,000〜50,000である。本発明の実施に有用なポリウレタン分散液の平均粒径は100nm未満であることが好ましく、より好ましくは50nm未満である。ポリマー分散剤のように、ポリウレタンの酸基は、有機塩基または無機塩基、好ましくは1価の無機塩基、最も好ましくは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、および水酸化リチウムから選択されるアルカリ金属水酸化物の水溶液を用いて少なくとも部分的に中和されて塩に変換されている。
【0054】
水分散性ポリマーバインダーを複数のポリマー分散剤と併用する場合、水溶性ポリマー分散剤と水分散性ポリマーバインダーとの合計量に対する分散顔料の重量比が4:1〜1:3、より好ましくは3:1〜1:2、最も好ましくは2:1〜1:2のときに最良の結果が得られる。ポリマーの量が少ないと、噴射(jetting)が悪化したり、フィルム形成が悪化したりする。一方、ポリマーの量が多いと、噴射が悪化し、エジェクターまたはプリンタの保守機構(printer maintenance stations)の目詰まりが起こり、多くの印刷媒体上でインク癒着(ink coalescence)が起こる。
【0055】
本発明のインクはインクジェットの印刷ヘッドを経て印刷できる。印刷ヘッドの構造はインクジェット印刷の分野で既知のいずれかのものを使用できる。インクジェットプリンタはサーマルインクジェット印刷ヘッドが備わっているものが好ましい。特に好ましい印刷ヘッドの構造は米国特許第7,350,902号および一般承継された同時継続中の米国公開第2008/0136867号に開示されている。
【0056】
本発明のインクは写真光沢受像紙または普通受像紙に適用可能である。当該2つのタイプの受像紙は、写真光沢受像紙が下地の紙支持体上に被覆層を形成させて製造される点で互いに区別される。普通紙の具体例として、例えば、コダック・ブライト・ホワイト・インクジェット・ペーパー、ヒューレット・パッカード・カラー・インクジェット・ペーパー、ゼロックス・エクストラ・ブライト・ホワイト・インクジェット・ペーパー、ジョージア・パシフィック・インクジェット・ペーパー・カタログ番号999013、ステープルズ・インクジェット・ペーパー・インターナショナル・ペーパー・グレート・ホワイト・マルチユース20ペーパー、ゼロックス・プレミアム・マルチパーパス・ペーパー、ハンマーミル・コピー・プラスまたはフォア・エム・ピー・ペーパー、およびヒューレット・パッカード・マルチパーパス・ペーパーが挙げられる。普通紙は、当該紙の製造中または製造後において多価塩で処理された紙を包含する。
【0057】
本発明のインクは、光沢インクジェットペーパー等の適切な記録媒体を使用する場合、写真画質を有するデジタル画像として印刷できる。写真光沢受像紙は、ハイブリッド構造を有するものも周知であるが、非多孔質ポリマー被膜を有する膨潤性媒体または微多孔質媒体にさらに分類される。微多孔質媒体は一般的には、吸水性微粒子または粉体をポリマー親水性バインダーと混合してなり、微多孔質構造の被膜を有する。当該親水性微粒子または粉体は一般的には、例えば、ベーマイトアルミナ、多孔質および非多孔質シリカ(例えば、シロジェット(Sylojet)またはルドックス(Ludox)粒子)等の多結晶無機材料、またはアルミニウムシリケート等の非晶質無機材料である。微多孔質写真光沢媒体は、膨潤性媒体と比較して、相対的に迅速な乾燥能を有し、かつ改善された耐水性および耐汚染性(smudge resistance)を有するので好ましい。普通紙および写真光沢媒体の両方の構造は、材料および製紙方法に依存して広範囲に変化させることができ、本発明の範囲は制限して解釈されるべきではない。
以下に実施例を示すが、本発明の有用性はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0058】
顔料分散液の製造に使用されるポリマー分散剤の例
ポリマー分散剤PD−1; ベンジルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、メタクリル酸およびカルボキシエチルアクリレートオリゴマー(平均Mwが170であって、構造式2におけるnが0〜3である)のコポリマーを調製したところ、酸価196、モノマー重量比30/30/20/20、サイズ排除クロマトグラフィーで測定された重量平均分子量8330、数平均分子量3800を有していた。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度90%とした。
【0059】
ポリマー分散剤PD−2; ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のコポリマーを調製したところ、酸価135、モノマー重量比77/23、サイズ排除クロマトグラフィーで測定された重量平均分子量7160、数平均分子量4320を有していた。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度85%とした。
【0060】
ポリマー分散剤PD−3; ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のコポリマーを調製したところ、酸価215、モノマー重量比67/33、重量平均分子量8000、数平均分子量5000を有していた。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度90%とした。
【0061】
ポリマー分散剤PD−4; ベンジルメタクリレート、スチレンおよびメタクリル酸のコポリマーを調製したところ、酸価195、モノマー重量比20/50/30、重量平均分子量13,400、数平均分子量5050を有していた。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度90%とした。
【0062】
ポリマー分散剤PD−5; ベンジルメタクリレート、スチレン、メタクリル酸およびカルボキシエチルアクリレートオリゴマー(平均Mwが170、構造式2におけるnが0〜3である)のコポリマーを調製したところ、酸価164、モノマー重量比12.5/50/12.5/25、サイズ排除クロマトグラフィーで測定された重量平均分子量14900、数平均分子量5060を有していた。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度90%とした。
【0063】
ポリマー分散剤PD−6; エス・エム・エー(SMA)17352(登録商標)、サートマー・カンパニー・インク(SARTOMER COMPANY, INC.)社の市販品であって、酸価270のスチレン・無水マレイン酸コポリマー。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度85%とした。
【0064】
ポリマー分散剤PD−7; トゥルドット(TRUDOT)(登録商標)アイ・ジェイ(IJ)−4655、ウェストバコ・コーポレーション(WESTVACO CORPORATION)社の市販品であって、酸価230のスチレン・アクリル酸コポリマー。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度95%とした。
【0065】
ポリマー分散剤PD−8; ジョンクリル(JONCRYL)−678(登録商標)、ビー・エー・エス・エフ(BASF)社の市販品であって、酸価215のスチレン・アクリル酸コポリマー。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度95%とした。
【0066】
ポリマー分散剤PD−9; ベンジルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、およびメタクリル酸のコポリマーを調製したところ、酸価215、重量パーセント換算のモノマー比37/30/33、サイズ排除クロマトグラフィーで測定された重量平均分子量8230、数平均分子量4110を有していた。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度90%とした。
【0067】
ポリマー分散剤PD−10; スチレンおよびメタクリル酸のコポリマーを調製したところ、酸価163、重量パーセント換算のモノマー比75/25、サイズ排除クロマトグラフィーで測定された重量平均分子量14000、数平均分子量4040を有していた。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度90%とした。
【0068】
ポリマー分散剤PD−11; ベンジルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、メタクリル酸、およびカルボキシエチルアクリレートのコポリマーを調製したところ、酸価208、重量パーセント換算のモノマー比30/30/20/20、サイズ排除クロマトグラフィーで測定された重量平均分子量10300、数平均分子量4480を有していた。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度90%とした。
【0069】
ポリマー分散剤PD−12; ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のコポリマーを調製したところ、酸価260、重量パーセント換算のモノマー比60/40、重量平均分子量8370、数平均分子量4490を有していた。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度90%とした。
【0070】
ポリマー分散剤PD−13; ベンジルメタクリレートおよびメタクリル酸のコポリマーを調製したところ、酸価325、重量パーセント換算のモノマー比50/50、重量平均分子量8660、数平均分子量4640を有していた。当該ポリマーを水酸化カリウムで中和して中和度90%とした。
【0071】
インクに使用されるポリウレタンバインダーの例
ポリウレタンバインダー−PU−B1; 酸価76、重量平均分子量13,300のポリウレタンを、イソホロンジイソシアネート、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールおよび2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を反応させて製造し、該ポリマー中の100%の酸基を水酸化カリウムで中和した。
【0072】
ポリウレタンバインダー−PU−B2; 酸価100のポリウレタンを、イソホロンジイソシアネート、Mw2000のポリ(テトラヒドロフラン)ジオールおよび2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を反応させて製造し、該ポリマー中の85%の酸基を水酸化カリウムで中和した。
【0073】
ポリウレタンバインダー−PU−B3; 酸価85のポリウレタンを、イソホロンジイソシアネート、Mw2000のポリ(テトラヒドロフラン)ジオールおよび2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を反応させて製造し、該ポリマー中の85%の酸基を水酸化カリウムで中和した。
【0074】
顔料分散液の例
顔料分散液YD−1
ポリマービーズ(粉砕媒体)、C.I.ピグメントイエロー74(サン・ケミカル・コープ(Sun Chemical Corp.)社製)、およびポリマー分散剤PD−1水溶液の混合物を調製し、蒸留水で希釈した。混合物を24時間粉砕し、粉砕媒体を顔料分散液から分離した。その後、得られた顔料分散液を、1マイクロメーターの、バインダーを含まないガラス繊維フィルター(ポール・コーポ(Poal Corp.)社製)で濾過し、最終的に顔料約10%およびポリマー分散剤PD−1約5%含有する顔料分散液を得た。当該イエロー顔料の分散液をYD−1と呼ぶものとする。
【0075】
顔料分散液YD−2
粉砕時にポリマー分散剤PD−1およびPD−4を存在させること以外、YD−1の調製に用いた手順を用いた。顔料分散液YD−2は最終的に顔料約10%、ポリマー分散剤PD−1約4.5%およびポリマー分散剤PD−4約3.0%を含有していた。
【0076】
顔料分散液YD−3
粉砕時にポリマー分散剤PD−1およびPD−10を存在させること以外、YD−1の調製に用いた手順を用いた。顔料分散液YD−3は最終的に顔料約10%、ポリマー分散剤PD−1約4.5%およびポリマー分散剤PD−10約3.0%を含有していた。
【0077】
顔料分散液YD−4
粉砕時にポリマー分散剤PD−11およびPD−2を存在させること以外、YD−1の調製に用いた手順を用いた。顔料分散液YD−4は最終的に顔料約10%、ポリマー分散剤PD−11約5.0%およびポリマー分散剤PD−2約3.75%を含有していた。
【0078】
顔料分散液YD−5
粉砕時にポリマー分散剤PD−1およびPD−2を存在させること以外、YD−1の調製に用いた手順を用いた。顔料分散液YD−5は最終的に顔料約10%、ポリマー分散剤PD−1約5.0%およびポリマー分散剤PD−2約3.75%を含有していた。
【0079】
顔料系インクの調製
イエローインク、Y1; 構成成分の濃度が以下のようになるように、YD−1を顔料粒子源として用い、イエロー顔料系インクを調製した;2.75%ピグメント・イエロー74;1.37%ポリマー分散剤PD−1;10%グリセロール;7%ジエチレングリコール;0.75%ターギトール(登録商標)15−S−5(ダウ・ケミカル・コーポ社製);0.02%コーデック(KORDEC)(登録商標)(ローム・アンド・ハース・コーポ(Rohm and Haas Co.)社製);1.2%PU−B1;1.2%PD−2;および脱イオン水(残部)。
【0080】
イエローインク、Y2; 構成成分の濃度が以下のようになるように、YD−1を顔料粒子源として用い、イエロー顔料系インクを調製した;2.75%ピグメント・イエロー74;1.37%ポリマー分散剤PD−1;10%グリセロール;7%ジエチレングリコール;0.5%ストロデクス(STRODEX)(登録商標)PK−90(デクスター・ケミカル・コーポ(Dexter Chemical Corp.)社製);0.02%コーデック(登録商標)(ローム・アンド・ハース・コーポ社製);1.2%PU−B1;1.2%PD−2;および脱イオン水(残部)。
【0081】
イエローインク、Y3〜Y13; 第2のポリマー分散剤および/またはポリウレタンバインダーを表1に従い変更したこと以外、Y2に従って、一連のイエローインクを調製した。
【0082】
イエローインク、Y14; 構成成分の濃度が以下のようになるように、YD−1を顔料粒子源として用い、イエロー顔料系インクを調製した;2.75%ピグメント・イエロー74;1.37%ポリマー分散剤PD−1;10%グリセロール;7%ジエチレングリコール;3%1,2−ヘキサンジオール;0.5%ストロデクス(登録商標)PK−90(デクスター・ケミカル・コーポ社製);0.02%コーデック(登録商標)(ローム・アンド・ハース・コーポ社製);1.0%PU−B1;0.5%PD−2;および脱イオン水(残部)。
【0083】
イエローインク、Y15; PD−2を存在させなかったこと以外、Y14と同様に調製した。
【0084】
イエローインク、Y16; 1,2−ヘキサンジオールの代わりに5%1,2−ペンタンジオールを用いたこと、および水の含有量を調整したこと以外、Y14と同様に調製した。
【0085】
イエローインク、Y17; 0.5%PD−2を存在させなかったこと、および水の含有量を調整したこと以外、Y16と同様に調製した。
【0086】
イエローインクY18; 構成成分の濃度が以下のようになるように、YD−2を顔料粒子源として用い、イエロー顔料系インクを調製した;2.75%ピグメント・イエロー74;1.37%ポリマー分散剤PD−1;1.37%ポリマー分散剤PD−4;10%グリセロール;2%エチレングリコール;0.5%ストロデクス(登録商標)PK−90(デクスター・ケミカル・コーポ社製);0.02%コーデック(登録商標)(ローム・アンド・ハース・コーポ社製);1.2%PU−B1;および脱イオン水(残部)。
【0087】
イエローインクY19; YD−2の代わりにYD−3を顔料粒子源として用いたこと以外、イエローインクY18と同様にしてイエロー顔料系インクを調製した。
【0088】
イエローインクY20; YD−2の代わりにYD−4を顔料粒子源として用いたこと以外、イエローインクY18と同様にしてイエロー顔料系インクを調製した。
【0089】
イエローインクY21; YD−2の代わりにYD−5を顔料粒子源として用いたこと以外、イエローインクY18と同様にしてイエロー顔料系インクを調製した。
【0090】
イエローインクY22; 構成成分の濃度が以下のようになるように、YD−1を顔料粒子源として用い、イエロー顔料系インクを調製した;2.75%ピグメント・イエロー74;1.37%ポリマー分散剤PD−1;1.0%ポリマー分散剤PD−11;8%グリセロール;5%エチレングリコール;0.5%ストロデクス(登録商標)PK−90(デクスター・ケミカル・コーポ社製);0.02%コーデック(登録商標)(ローム・アンド・ハース・コーポ社製);1.0%PU−B3;および脱イオン水(残部)。
【0091】
イエローインクY23; 第2のポリマー分散剤としてPD−11の代わりにPD−12を用いたこと以外、イエローインクY22と同様にしてイエロー顔料系インクを調製した。
【0092】
イエローインクY24; 第2のポリマー分散剤としてPD−11の代わりにPD−2を用いたこと以外、イエローインクY22と同様にしてイエロー顔料系インクを調製した。
【0093】
【表1】

【0094】
イエローインクY1〜Y24を、マイクロトラック・インコーポレーティッド(Microtrac Incorporated)製のナノトラック(NANOTRAC)(登録商標)エヌ・エー・エス(NAS)35測定器を用いて粒径安定性について評価した。粒径は、強度モード分布(the intensity mode distribution)における第50百分位数および第95百分位数(50th and 95th percentiles)の直径としてナノメートル(nm)で示す。第50百分位数は、強度モード分布における中央の直径を示す。強度モード分布は、体積分布および数分布とは異なり、ミー散乱理論(Mie scattering theory)を用いず、大径粒子の数に対してより一層高感度である。インクは調製後すぐに評価し、50%および95%の百分位数に対する初期の粒径データをコロイド安定性の初期状態の指標として用いた。その後、インクのサンプルを密閉プラスチック容器に入れ、当該インクを60℃の温度で1週間インキュベートした。当該温度は同様の強度分析法(intensity analysis methodology)を用いて再度評価する温度である。表2に、初期の強度の粒径をナノメートルで示すとともに、インキュベーション後の粒径の変化率(the percent change)を示す。当該変化率の値が大きいほど、コロイド安定性がより一層、悪化した状態にあることを示す。第50百分位数の変化率が25未満のインクはコロイド安定性に優れていると考えられる。反対に、第50百分位数の変化率が25を超えるインクはコロイド安定性に劣ると考えられ、サーマルインクジェットの印刷ヘッドの性能が悪化する一因となり得る。
【0095】
【表2】

【0096】
表2では、複数のポリマー分散剤を組み合わせて配合したイエロー顔料系インクは、インキュベーション前において初期の粒径およびコロイド安定性の状態がほとんど等しいように調製できることが示されている。特定のポリマー分散剤の所定の組み合わせによって、インク中における顔料粒子の長期のコロイド安定性が本質的に改善できることも示されている。比較インクY7およびY23では、第2のポリマーの酸価が270以上のとき、インキュベートされたインク中において顔料粒子安定性が劣化することを示す。インクY10〜Y12では、第1および第2のポリマー分散剤の両方がモノマー単位として長鎖アルキル(メタ)アクリレートを含むとき、顔料粒子のコロイド安定性が劣化することを示す。比較インクY15およびY17では、第2のポリマー分散剤が存在しないとき、顔料粒子のコロイド安定性が劣化することを示す。
【0097】
本発明のインクY1〜Y6,Y8,Y9,Y13,Y14,Y16,Y18〜Y22,およびY24では、1,2−ヘキサンジオールおよび1,2−ペンタンジオール等の侵攻性補助溶剤保湿剤(aggressive co-solvent humectants)の存在下および/または高温貯蔵の条件下であっても、ここで示されるようなポリマー分散剤の相乗的な組み合わせによって、インク配合物中での顔料粒子のコロイド安定性が改善されることを示す。
【0098】
顔料源としてピグメントレッド122およびシアンピグメントPB15:3を用い、ポリマー分散剤としてPD−1とPD−2とを組み合わせて用いて同様の実験を行った。これらの系においては、60℃で1週間のインキュベーション後の強度モードUPA(intensity mode UPA)における第50百分位数の初期値からの偏差は25%未満であり、優れたコロイド安定性が達成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、
分散された顔料粒子、
炭素原子数12以上のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーから誘導される単位およびカルボン酸置換基を含有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される単位を含む第1のポリマー分散剤、および
芳香族基含有置換基を含有するモノマーから誘導される単位およびカルボン酸置換基を含有するエチレン性不飽和モノマーから誘導される単位を含む第2のポリマー分散剤を含有し、
該第2のポリマー分散剤が炭素原子数12以上のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーから誘導される単位を含有せず、かつ該第2のポリマー分散剤の酸価が270未満であるコロイド顔料分散組成物。
【請求項2】
第1のポリマー分散剤がベンジルメタクリレートから誘導される単位をさらに含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第1のポリマー分散剤がステアリルメタクリレートまたはステアリルアクリレートから誘導される単位を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
第1のポリマー分散剤がメタクリル酸から誘導される単位を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
第1のポリマー分散剤が式;
【化1】

(式中、RはHまたはメチルであり、nは1〜6である)
で表される少なくとも1種のオリゴマー性アクリル酸から誘導される単位を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
第1のポリマー分散剤がメタクリル酸から誘導される単位をさらに含有する請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
第1のポリマー分散剤がステアリルメタクリレートまたはステアリルアクリレートから誘導される単位を含有する請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
顔料が一般構造式1;
【化2】

(式中、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のフルオロアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基またはそのアルカリ土類金属塩、N−フェニルアミノスルホニル基、カルボキシル基またはそのアルカリ土類金属塩、カルボアミド基、N−フェニルカルバモイル基、ウレイレン基、およびイミノジカルボニル基またはカルボキシレート基を示す)
で表されるモノアゾ顔料を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
顔料がCIピグメントイエロー74である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物がインクジェットインクであって、保湿剤をさらに含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
顔料がCIピグメントイエロー74である請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物がインクジェットインクであって、1,2−アルカンジオールをさらに含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
1,2−アルカンジオールが1,2−ペンタンジオールおよび1,2−ヘキサンジオールから選択される請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
顔料がCIピグメントイエロー74である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
第2のポリマー分散剤がベンジルメタクリレートから誘導される単位を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
第2のポリマー分散剤がメタクリル酸から誘導される単位をさらに含有する請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
第2のポリマー分散剤がスチレンまたはα−メチルスチレンから誘導される単位をさらに含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
第2のポリマー分散剤がメタクリル酸から誘導される単位を含有する請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
第1のポリマー分散剤および第2のポリマー分散剤の両方が20,000未満の重量平均分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、またはポリエステルから選択されるポリマーバインダーをさらに含有する請求項1に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−508806(P2011−508806A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540639(P2010−540639)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/013727
【国際公開番号】WO2009/085140
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】