説明

ポリマー分散液、及びそれの水蒸気バリアとしての使用方法

本発明は、基材と、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に重合する1種以上の非イオン性モノマー由来のポリマーを含む、水蒸気の透過を制限する被膜とを含む製品である。少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点は、好ましくは重合温度よりも低い。非イオン性界面活性剤は、好ましくは、アルキレンオキシド基の数が14以下である、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール、又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物である。本発明は、重合温度よりも低い曇点を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の存在下に重合温度で非イオン性モノマーを重合することにより形成される分散液;水蒸気バリア組成物;前記分散液から形成される被膜、前記分散液の製造方法;被膜の製造方法;基材に対して水蒸気が透過する能力を減少する方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテックスとしても知られるポリマー分散液、特に水蒸気バリアとして用いることができる、電気的に中性又はわずかにアニオン性であるポリマー分散液に関する。
【0002】
水は、多くの異なるタイプの基材に損傷を与える。例えば、木材又は木材をベースとする製品は、木材中の含水量によっては、収縮又は膨張し得、このような収縮及び膨張は、そり又は亀裂を引き起こし得る。水又は水蒸気は、セメント、コンクリート、石こう、石こうボード、れんが造りの建造物、合板、及び硬質繊維板のような他の多孔性基材上で凝縮又は浸透し得、これらの基材中の水の存在は、型を作成するこれらの材料の断熱性に影響を及ぼし、又は水中のイオンと基材との反応のために材料の構造劣化を引き起こし得る。このような浸透は、液状において水と直接接触する基材に限定されない。水蒸気は、領域間の水の分圧の違いのために、台所、浴室、工業用ルーム、及び地下室のような高湿度領域の壁にも入り込み、又は通り抜ける。更に、水蒸気は地面の下のコンクリート住宅基礎から建物へも通過していき、湿気を供給する。従って、これらのタイプの高湿度又は湿潤環境に暴露される可能性を有する基材へ水蒸気バリアを適用することが望ましい。
【0003】
ポリマー分散液を用いて、基材上に耐湿性の被膜を形成する、いくつかの水蒸気バリアコーティングが開発されてきた。ポリマー分散液又はラテックスは、水中に分散した、通常、60nm〜250nmのサイズの範囲のポリマーの小さい粒子からなる。ポリマー分散液の最低造膜温度を超える温度で乾燥した場合、ポリマー分散液は、ポリマー分散液の特定の性質によって、透明又は不透明であり、硬いか又は接着性であり、可塑性又は弾性であり得るポリマーフィルムを形成する。ポリマーフィルムは、乾燥後は可視ではないが、最終製品に対する決定的性質をもたらす場合がある。
【0004】
水に対して極めて不浸透性の被膜を形成することが知られている1つのタイプのポリマー分散液は、塩化ビニリデン及びn−ブチルアクリレートモノマーから製造される水性ポリマー分散液である。これらの分散液から形成される被膜は、水及び水蒸気を遮断するバリアとして極めて効果的であるが、ポリマー中の塩化ビニリデンはいずれ進行性加水分解を受け、塩化水素を形成する。この塩酸は、ポリマー分散液から形成されたコーティング製剤の貯蔵安定性を低下し得る。塩酸は、それが適用された基材の上又は中の金属(コンクリートの中の鉄筋等)とも反応し、金属の腐食を引き起こし、その結果、基材を損傷し得る。
【0005】
水に対して極めて不浸透性の被膜を形成することが知られている他のタイプのポリマー分散液は、米国特許第6,258,890号に開示されているような、ビニル芳香族構造及び共役ジエンから製造される水性ポリマー分散液である。米国特許第6,258,890号において、目的とする水蒸気バリア特性を与えるためのアルカル金属イオン含有量は、分散したポリマーの質量を基準として0.5%未満である。これは、一般に、アルカリ金属イオンよりも、乳化剤及び遊離基開始剤をアンモニウムイオンと一緒に用いることにより、例えば、遊離基開始剤としてペルオキソ二硫酸ナトリウムよりも、ペルオキソ二硫酸アンモニウムを用いることにより達成される。これらの被膜も、効果的な水蒸気バリアを形成するが、被膜中に存在するアンモニウムイオンが、硬化中に環境にアンモニアを放出するという結果を引き起こし得る。
【0006】
セメント及びコンクリート表面のための防湿バリアを生成するために用いられる、公知のアニオン性水性ポリマー分散液の他の不利な点は、セメント及びコンクリート表面中に存在する高い原子価のカチオン(Ca2+及びMg2+等)が、基材に対する被膜の接着力を減少するアニオン性ポリマーの凝集を引き起こすことである。コロイド安定性を維持するために、通常、ポリエチレンオキシド(EO)n(式中、n>20である)の高い分子量を有する非イオン性界面活性剤を分散液に加え、凝集を防止する。望ましくないことに、これらの非イオン性界面活性剤は、硬化ポリマー被膜の水蒸気バリアとして作用する能力を低下させる。
【0007】
本発明は、基材、及び前記基材に近接して提供される被膜を包含し、前記被膜が、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に重合する、1種以上の共重合可能な非イオン性モノマー由来のポリマーを含み、水蒸気からの暴露から少なくとも部分的に保護される材料を提供することにより、先行技術の問題を克服する。好ましくは、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点は、非イオン性モノマーを重合するために用いられる重合温度よりも低い。好ましい一実施形態において、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物を含み、アルキレンオキシド基の数が14以下である非イオン性界面活性剤を含む。更に好ましくは、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、少なくとも1種のアルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド(EO)m(PO)n付加物を含み、(m+n)≦14である。更に好ましくは、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、6〜10モルのエチレンオキシドを有するトリデシルアルコールのエチレンオキシド付加物を含む。前記ポリマーは非イオン性モノマーに由来し、好ましくはイオン性モノマーに由来しない。
【0008】
好ましい実施形態において、前記被膜は、(a)分散媒体中に分散した少なくとも1種のポリマーを含む、電気的に中性のポリマー分散液(前記ポリマー分散液は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に、重合温度において1種以上の非イオン性の共重合可能なモノマーを重合して形成されている)を基材に近接して塗布し、(b)前記分散媒体を蒸発させることにより形成される。非イオン性界面活性剤を用いることにより(例えば、乳化重合により)、コロイド的に安定したポリマー分散液を得ることができる。好ましい実施形態において、被膜はアンモニウムイオン及びアンモニアを含まない。通常は、水蒸気バリア層として用いるために、下層の基材に直接塗布される。
【0009】
本発明は、(a)分散媒体に分散した少なくとも1種のポリマー、及び(b)少なくとも1種の顔料を含む分散液であって、前記分散液が、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点は重合温度よりも低い)の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に、重合温度において1種以上の非イオン性の共重合可能なモノマーを重合して形成される分散液をも含む。少なくとも1種の好ましい非イオン性界面活性剤は、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物を含み、アルキレンオキシド基の数が14以下である非イオン性界面活性剤を含む。更に好ましくは、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド(EO)m(PO)n付加物を包含する非イオン性界面活性剤を含み、(m+n)≦14である。本発明は、前記分散液を蒸発させることにより形成される被膜をも含む。本発明の被膜は、通常は基材に近接して提供される。
【0010】
本発明は、更に、水蒸気が基材に接触する性能を低下させる方法を含む。この方法は、基材に近接して水蒸気バリア組成物を塗布することを含み、前記水蒸気バリア組成物は、基本的に、アニオン性界面活性剤の非存在下、及び少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点が重合温度よりも低い)の存在下に、重合温度において分散媒体中の1種以上のモノマーを重合することにより形成された電気的に中性のポリマー分散液を含む。好ましい一実施形態において、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物であり、アルキレンオキシド基の数が14以下である非イオン性界面活性剤を含む。更に好ましくは、少なくとも1種の界面活性剤は、前記アルキレンオキシドが式(EO)m(PO)nで表され、(EO)がエチレンオキシドであり、(PO)がプロピレンオキシドであり、(m+n)≦14である、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物を含む。水蒸気バリア組成物は、例えば、プライマー組成物として用いることができる。
【0011】
本発明は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点は重合温度よりも低い)の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に、重合温度において、分散媒体中で1種以上の非イオン性の共重合可能なモノマーを重合することにより形成されたポリマーを含む、水蒸気バリア組成物、コーティング又は被膜の製造方法を含む。好ましい非イオン性界面活性剤は前述した。
【0012】
本発明によれば、乳化重合において通常に用いられるアニオン性界面活性剤を除外し、非イオン性界面活性剤、特に、アルキレンオキシド基の数が14以下である、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物、更に具体的には(m+n)≦14である、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド(EO)m(PO)n付加物を含む非イオン性界面活性剤を用いることにより、乳化重合プロセスの間のポリマー分散液の不安定性を引き起こさないことは意外かつ予想外であった。得られるポリマー分散液は、本発明において望まれるような、効果的な水蒸気バリア被膜を提供するために用いることができる。
【0013】
本発明のこのような、及び他の特徴並びに利点は、本発明の好ましい実施形態及び他の実施形態の両方を記載する以下の詳細な説明を考慮し、当業者により容易に明らかになるであろう。
【0014】
以下に、一部であり、全てではない本発明の実施形態を記載することにより、本発明を更に詳細に説明する。実際は、本発明は多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に示される実施形態に限定される解釈すべきでない。どちらかといえば、これらの実施形態は、この開示が適用可能な法的必要条件満たすように提供される。本明細書に示される本発明の多くの修飾及び他の実施形態は、これらの発明が前述において教示の利点を示しながら関連する当業者に思い浮かばせるだろう。従って、本発明が記載された特定の実施形態に限定されないこと、並びに修飾及び他の実施形態は、添付された請求の範囲内に含まれることが意図されることが理解されるだろう。本明細書において特定の用語が用いられるが、それらは一般的及び記述的意味でのみ用いられ、限定する目的で用いられない。本明細書で用いられる用語、「含む(comprising)」及びその変形は、用語「含有する(including)」及びその変形と同義語として用いられ、確定のない、非限定的な用語である。
【0015】
本発明は、基材、及び前記基材に近接して提供された被膜を含む、水蒸気からの暴露から少なくとも部分的に保護される材料を含む。前記基板は、任意の様々な基材であり得、セメント、コンクリート、湿潤コンクリート、湿潤セメント、石こう、しっくい、れんが造りの建造物、合板、硬質繊維板、石壁、木材、セラミック、大理石、石、タイルなどのような基材を含む。基材は、ポルトランドセメント、充填材及び他の公知の成分を含む種々の材料を含み得、例えば金属成分を用いて強化され得る。
【0016】
被膜は、通常、コーティング、又は分散媒体中に分散したポリマーを含む水蒸気バリア組成物から、コーティング又は保護される表面に前記組成物を塗布し、前記分散媒体を蒸発させることによって形成される。コーティング又は水蒸気バリア組成物は、通常、基材に直接塗布され、その結果、基材にコーティングされる。しかし、その他の方法として、被膜が中間層に直接コーティングすることができるように、1層以上の中間層があってもよい。ある実施形態において、被膜は、基材の一面又は側面に層として塗布される。他の実施形態において、被膜は基材を包み込んでもよい。
【0017】
ポリマー分散液は、噴霧、はけ塗り、浸漬、ローラーを用いた塗布、又は他の公知の方法を含む、当該技術分野において公知のあらゆる方法によって塗布できる。通常、セメント及びコンクリートのような基材については、ポリマー分散液は噴霧又ははけ塗りによって塗布される。被膜は、通常は室温又はその周辺の温度で塗布されるが、低粘度が必要であるか又は他の理由のために所望される場合は約70℃以下の高温で塗布することができる。塗布する時に、ポリマー分散液の粘度は、分散液内の特定の剤形によって変化し、充填材、顔料及び増粘剤を含む添加剤は分散液の最終的な粘度に影響を及ぼすであろう。適切な粘度は、当業者に理解されるであろう。
【0018】
いったん、ポリマー分散液が基材に近接して塗布されると、分散媒体は蒸発し、ポリマー被膜又は水蒸気バリアを形成する。分散媒体は通常は水であり、前記ポリマー分散液を室温で空気にさらすことによる蒸発させる(すなわち、被膜を乾燥させる)。しかし、分散液を高温で塗布することにより、塗布された分散液の温度を上昇させるか、当該技術分野において理解されるように、高温に基材を供給することにより、分散媒体は急速に蒸発し得る。水蒸気バリア被膜は、後で乾燥させるポリマー分散液の第一の層を塗布し、次いで分散液の次の層を塗布及び乾燥することにより、複数の層を含んでいてもよい。
【0019】
一実施形態において、ポリマー分散液が基材に近接して塗布され、被膜層を形成し、少なくとも1層の付加的なコーティング層が前記被膜層に近接して塗布される。少なくとも1層の付加的なコーティング層は、例えば、トップコート組成物、接着剤、又は付加的な被膜層を含んでいてもよい。付加的な層は、追加のコーティング層又は床仕上げ材のような付加的なコーティング層に近接して加えてもよい。一実施形態において、ポリマー分散液は湿潤コンクリート基材に塗布され、被膜を形成する。被膜形成後、被膜層に接着剤を塗布し、床仕上げ材のような他の物質を塗布する。湿潤コンクリート基材に塗布される量は変化し得るが、標準的な値は、約50〜100lbコーティング(湿潤)/1000ft2である。
【0020】
本発明の被膜は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に重合する、1種以上の共重合可能な非イオン性モノマー由来のポリマーを含む。ポリマーの形成において、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点は、好ましくは重合温度よりも低い。本明細書により詳細に記載されるポリマーの形成において用いられる非イオン性界面活性剤は、好ましくはアルキレンオキシド基の数が14以下である、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物を含み、更に好ましくは、前記アルキレンオキシド基は、1個以上のエチレンオキシド(EO)m及びプロピレンオキシド(PO)nを含み、(m+n)≦14である。
【0021】
本発明のポリマー又はポリマー分散液を製造するために用いられるモノマーは非イオン性モノマーであり、好ましくは、スチレン、(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、好ましくは(メタ)アクリルアミド又はそれらの誘導体が含まれる。また、モノマーには、好ましくはスチレン及びブタジエンが含まれ、(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー、好ましくは(メタ)アクリルアミド又はそれらの誘導体を含んでもよい。重合のための分散媒体には、好ましくは水が含まれ、従って、水性ポリマー分散液が製造される。更に、ポリマー分散液を製造するためには、乳化重合が好ましく用いられる。ポリスチレンをベースとするシードラテックスのようなシードラテックスが、乳化重合プロセスにおいて好ましく用いられる。
【0022】
本発明のポリマー又はポリマー分散液は、分散、ミニエマルション、又は乳化重合プロセスを用いて製造することができ、好ましくは乳化重合プロセスが用いられる。本発明により、乳化重合プロセスは、連続的、バッチ処理、又はセミバッチであり得、好ましくはセミバッチプロセスである。本発明のプロセスは、当業者によって容易に理解される単一反応器又は一連の反応器を用いることができる。例えば、異相重合法の総説が、M.Antonelli and K.Tauer,Macromol.Chem.Phys.2003,vol.204,p.207−219において提供される。
【0023】
ポリマー分散液は、好ましくは最初に、シードラテックス、水、及び任意に少なくとも1種の非イオン性界面活性剤及び/又は少なくとも1種のモノマー(又はその一部)を用いて、反応器をチャージすることによって調製される。シードラテックスは初期重合を補助し、一貫性のある粒子サイズを有するポリマー製造するのに役立つ。特定のモノマーの反応に適切なあらゆるシードラテックスを用いることができ、好ましくはポリスチレンシードが用いられる。通常、初期のチャージは、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート材又は錯化剤をも含んでいる。乳化重合反応のために望ましいpHを与えるために、反応器にバッファーのような他の化合物を加えることができる。pHを上昇させるために、KOH又はピロリン酸四ナトリウムのような塩基又は塩基性塩を用いることができるが、pHを低下させるために酸又は酸性塩を用いることができる。次いで、初期チャージを、ある温度に又は反応温度の近くまで、例えば、50℃〜100℃まで加熱する。好ましくは、初期チャージを70℃〜95℃の温度に加熱する。
【0024】
初期チャージ後、重合において用いられるモノマーを、1種以上のモノマーフィードストリーム中に入れて反応器に連続的に供給することができる。モノマーは、重合においてアクリレートモノマーが用いられる場合、水性媒体中のプレエマルションとして供給することができる。前記プロセスにおいて1種が用いられる場合、モノマープレエマルションを加える前に、開始剤溶液の少なくとも一部を反応器に加えることを含むことも望ましいが、通常、モノマーフィードストリームを加える時に、開始剤フィードストリームも反応器に連続的に加えられる。モノマー及び開始剤フィードストリームは、通常、予め決められた時間内(例えば、1.5〜5時間)に反応器に連続的に加えられ、モノマーの重合をもたらし、その結果としてポリマー分散液を生成する。通常、本発明の非イオン性界面活性剤、及び任意の他の界面活性は、別々のフィードストリーム中に入れて供給することができるが、モノマーストリーム又は開始剤フィードストリームのいずれかの一部としてこの時にそれらも加えられる。更に、1種以上のバッファーは、モノマー又は開始剤フィードストリームのいずれかに含まれてもよく、又は別々のフィードストリーム中に入れて供給され、反応器のpHを修飾又は維持することができる。
【0025】
前述したように、モノマーフィードストリームは1種以上のモノマーを含み得る。モノマーは1以上のフィードストリーム中にいれて供給することができ、各ストリームは、重合プロセスに用いられる1種以上のモノマーを含む。例えば、スチレン及びブタジエンは、通常、別々のモノマーフィードストリーム中に入れて供給され、本発明において用いられる場合、プレエマルションとして加えることもできる。特定のポリマー特性を与えるか、又は層状構造(例えば、コア/殻構造)を与えるために、特定のモノマーの供給を遅らせることも有利であり得る。本発明によれば、1種のモノマーは重合プロセスにおいて供給され、ホモポリマーを生成することができるが、通常、2種以上のモノマーが共重合してコポリマーを生成する。
【0026】
本発明において用いられるモノマーは、好ましくは非イオン性モノマーである。具体的な非イオン性モノマーには、スチレン、アクリル酸及びメタクリル酸のC1−C8アルキル及びC2−C8ヒドロキシアルキルエステル(例えば、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及び2−ヒドロキシブチルメタクリレート)、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、1,4−ブタンジイルジアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルメチルアセトアミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、及びカプロン酸ビニルのようなビニルエステル、ジビニルベンゼン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルスチレン、イソプロピルスチレン、p−クロロスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、C4−C8ジエン(例えば、ブタジエン)、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等、及びそれらの混合物が含まれる。本発明において用いられるモノマーには、ブタンジエン、1,4−ブタンジイルジアクリレート、及びジビニルベンゼンのような架橋性モノマーが含まれ得る。
【0027】
本発明において用いられるモノマーには、少量(全モノマー質量を基準とし、0.5質量%未満)の1種以上のイオン性モノマーが含まれていてもよい。具体的なモノマーには、カルボン酸モノマー(例えば、イタコン酸、フマル酸及び(メタ)アクリル酸)が含まれる。好ましくは、本発明のポリマーはイオン性モノマーに由来しない。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態において、モノマーには、スチレン−アクリル系ラテックスを製造するために、スチレン、及び(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーが含まれる。更に好ましくは、本発明のメタ(アクリレート)モノマーには、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、及びメチルメタクリレートからなる群から選択される1種以上のモノマーが含まれる。モノマーには、分散液の安定性を向上させるために、好ましくは、アクリルアミド、メタクリルアミド及びそれらの誘導体(例えば、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、及びN−メチロールアクリルアミド)が含まれる。
【0029】
本発明の他の好ましい実施形態において、重合されるモノマーには、スチレン−ブタジエンラテックスを製造するために、スチレン及びブタジエンが含まれる。スチレン及びブタジエンに加え、この実施形態において重合されるモノマーは、場合により少なくとも1種の追加のモノマーを含んでもよい。分散液の分散又はコロイド安定性を向上させるために、好ましくは、(メタ)アクリルアミド又はそれらの誘導体を加えることができる。更に、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、及びメチルメタクリレートを含む、(メタ)アクリレートエステルモノマーのようなモノマーを加えることができる。本発明の更に好ましい別の実施形態において、前述したアクリレート及びメタクリレートモノマーを用いて、直鎖状のアクリル系ポリマーを製造することができる。直鎖状のアクリルについては、分散液の安定性を向上させるために、メタクリルアミド又はその誘導体を加えることができる。
【0030】
本発明により製造されるポリマーの分子量は、少量、一般には、重合されるモノマーを基準とし、2.5質量%以下の分子量調整剤を加えることにより調製できる。用いることのできる特定の調整剤は、有機チオ化合物、好ましくは、tert−ドデシルメルカプタン、また、アリルアルコール類及びアルデヒド類である。好ましくは、スチレン−ブタジエンポリマーのためのモノマー100部あたり、0.5〜2.0部のtert−ドデシルメルカプタンを分散媒体に加え、好ましくは、アクリル系ポリマーのためのモノマー100部あたり、0〜0.5部のtert−ドデシルメルカプタンを分散媒体に加える。
【0031】
本発明において用いられる開始剤フィードストリームには、モノマーフィードストリーム中でモノマーの重合を引き起こすために用いられる少なくとも1種の開始剤又は開始剤系が含まれ得る。開始剤ストリームは、水、及びモノマーの反応が開始するのに適した他の所望の成分をも含み得る。開始剤は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム又は過硫酸ナトリウムなどのアゾ開始剤、又は通常、酸化剤及び還元剤を含むレドックス開始剤系のような乳化重合において用いられる当該技術分野において公知のあらゆる開始剤であり得る。一般に用いられるレドックス開始剤系は、例えば、A.S.Sarac in Progress in Polymer Science 24,1149−1204(1999)に開示されている。好ましい開始剤には、非イオン性であり、分散液にアルカリ金属イオンを加えない、アゾ開始剤が含まれる。本発明において用いられる他の開始剤フィードストリームには、過硫酸ナトリウムの水溶液が含まれ得る。この開始剤ストリームは、場合により、前述したような、1種以上のバッファー又はpH調整剤が含まれていてもよい。
【0032】
モノマー及び開始剤に加え、非イオン性界面活性剤を反応器に加える。非イオン性界面活性剤は、反応器の初期チャージ中に供給され、モノマーフィードストリーム中に供給され、水性フィードストリーム中に供給され、プレエマルション中に供給され、開始剤ストリーム中に供給され、又はそれらの組み合わせに供給され得る。非イオン性界面活性剤は、反応器に、別個の連続的ストリームとして供給することもできる。非イオン性界面活性剤は、通常、モノマー及び界面活性剤の全質量を基準とし、1〜5質量%の量で供給され、好ましくは、2質量%未満の量で供給される。
【0033】
本発明において用いられる好ましい非イオン性界面活性剤は、アルキレンオキシド基の数が14以下である、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物である。更に好ましくは、本発明の非イオン性界面活性剤には、(m+n)≦14であり、好ましくは(m+n)≦12であり、更に好ましくは(m+n)≦10である(例えば、6≦(m+n)≦10)、アルキル、アルキルベンゼン又はジアルキルベンゼンアルコールのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド(EO)m(PO)n付加物が含まれる。非イオン性界面活性剤には、アルコールのエチレンオキシド付加物(n=0である)、アルコールのプロピレンオキシド付加物(m=0である)、又はアルコールのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物の付加物(m>0及びn>0である)が含まれ得る。更に好ましくは、好ましい非イオン性界面活性剤は、n=0である、アルキルアルコールのエチレンオキシド付加物である。アルキルアルコールは、好ましくは、1個のヒドロキシル基(好ましくは、エトキシル化された末端のヒドロキシル基)を有する、分岐又は直鎖状の炭化水素である。アルキル基は、好ましくは10〜22個の炭素原子、更に好ましくは10〜16個の炭素原子を含む。特に好ましい非イオン性乳化剤は、ICONOL(登録商標)の商標のBASFから入手可能な、トリデシルアルコールのエチレンオキシド(EO)m付加物であり、m=6、8又は10である。本明細書で用いられる用語、「非イオン性(nonionic)」は、分散液中で正及び負に帯電した種に解離しない物質を意味する。
【0034】
本発明において、重合が水性媒体中で実施される場合、好ましい非イオン性界面活性剤は、好ましくは、ポリマー分散液を製造するために用いられる重合温度よりも低い曇点(cloud point temperature)を有する。曇点(cloud point)、曇点(cloud temperature)、又は溶解度逆転温度としても公知の曇点は、非イオン性界面活性剤溶液が曇る温度である(すなわち、この温度で、及びこの温度以上の温度で、溶液は、濁るか、不透明に見える)。本明細書で用いられる場合、曇点は、界面活性剤の1%水溶液の曇点を意味する。曇点は、広い範囲の温度にわたる前記溶液の目視観測、又は光散乱測定により測定することができる。本発明において、曇点はASTM D2024−65R03を用いて測定される。好ましくは、非イオン性界面活性剤の1%水溶液の曇点は30℃〜90℃であり、更に好ましくは35℃〜85℃である。m=6、8又は10である、トリデシルアルコールのエチレンオキシド(EO)m付加物の曇点は、それぞれ38〜43℃、40〜45℃、及び73〜82℃である。非イオン性界面活性剤は、好ましくは、室温で8<HLB(親水性親油性バランス)<15のようなHLBを有する。更に好ましくは、HLBは14以下である。
【0035】
本発明の非イオン性界面活性剤に加え、追加の非イオン性界面活性剤を含ませることも望ましい。適切な非イオン性界面活性剤には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル);オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー;ソルビタン脂肪酸エステル(Merck Schuchardt OHGからSPAN(登録商標)20として入手可能なソルビタンモノラウレート、Merck Schuchardt OHGからSPAN(登録商標)80として入手可能なソルビタンモノオレエート、及びMerck Schuchardt OHGからSPAN(登録商標)85として入手可能なソルビタントリオレエート);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、UniqemaからTWEEN(登録商標)20及びTWEEN(登録商標)21として入手可能なポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、UniqemaからTWEEN(登録商標)40として入手可能なポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、UniqemaからTWEEN(登録商標)60、TWEEN(登録商標)60K、及びTWEEN(登録商標)61として入手可能なポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、UniqemaからTWEEN(登録商標)80、TWEEN(登録商標)80K、及びTWEEN(登録商標)81として入手可能なポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、及びUniqemaからTWEEN(登録商標)85として入手可能なポリオキシエチレンソルビタントリオレエート);ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール);グリセリン脂肪酸エステル(例えば、グリセロールモノオレエート);ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン及びモノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリン);ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート及びポリエチレングリコールモノオレエート);ポリオキシエチレンアルキルアミン;及びアセチレングリコールが含まれる。
【0036】
重合手順において、1種以上の両性界面活性剤を含ませることも有用であるかもしれない。適切な両性界面活性剤には、参考として本明細書に組み入れられる、米国特許第6,540,822号に開示されたものが含まれる。本発明において用いられる具体的な両性界面活性剤は、Akzo Nobelから入手可能な界面活性剤である、REDICOTE(登録商標)E−7000である。
【0037】
更なる非イオン性又は両性界面活性剤を本発明の非イオン性界面活性剤と併用することができるが、アニオン性界面活性剤は、通常、乳化重合反応中に含まれない。更に、カチオン性界面活性剤は、好ましくは、本発明の乳化重合反応中で用いられない。分散液又は水蒸気バリア組成物は、高分子量のポリエチレンオキシド(EO)(式中、xは20以上である)非イオン性界面活性剤をも含まない。これらの高分子量のポリエチレンオキシド非イオン性界面活性剤(20以上のxを有する)は、水及び水蒸気のためのバリアを基板上に形成するための堅固な被膜の形成を妨害する。
【0038】
重合が完了すると、好ましくは、ポリマー分散液を化学的に揮散させ、その結果、残りのモノマー含有量を減少させる。この揮散プロセスは、化学的揮散手順及び/又は物理的揮散手順を含み得る。好ましくは、ポリマー分散液は、過酸化物(例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド)のような酸化剤及び還元剤(例えば、亜硫酸ナトリウムアセトン)、又は他の酸化還元対を反応器に、高温で前もって決めた時間(例えば、0.5時間)、連続的に加えることによって、化学的に揮散される。適切な酸化還元対は、A.S.Sarac in Progress in Polymer Science 24,1149−1204(1999)に開示されている。必要に応じて、任意の消泡剤を、揮散手順の前又は間に加えることもできる。物理的揮散手順において、分散液中の重合していないモノマーを更に取り除くために、水又はスチームフラッシュを用いる。揮散手順が完了すると、ポリマー分散液のpHを調製し、殺生物剤又は他の添加剤を加えることができる。所望であれば、揮散手順の後、又は後になって最終製品に両性界面活性剤を場合により加えてもよい。
【0039】
得られたポリマー分散液のポリマー粒子は、好ましくは60〜500nm、更に好ましくは130〜250nmの平均粒子サイズを有する。本発明によって調製されたポリマー粒子は、小さい粒子サイズ分布を有することによって特徴づけられる。特に、ポリマー分散液中のポリマー粒子の結果として得られる体積平均分布は、好ましくは30%未満の標準偏差を有する。
【0040】
重合反応が完了し、揮散手順が完了すると、反応温度を下げ、これによって非イオン性界面活性剤を水溶性にする。理論に拘泥されることを望まないが、非イオン性界面活性剤の炭化水素鎖が、膨張したモノマー粒子中に界面活性剤を固定化し、界面活性剤はポリマー鎖中に物理的に捕捉されるようになると信じられている。一方、親水性の(EO)m(PO)n鎖は、ポリマー粒子/水の界面に残存し、水相まで伸長し、ポリマー分散液のためのコロイド安定性をもたらすと信じられている。従って、温度は非イオン性界面活性剤の曇点よりも低いが、界面活性剤分子は水相に向かって移動しない。従って、ラテックスの水相中に、限られた量の遊離の非イオン性界面活性剤があるので、乾燥した被膜の機械的特性は非イオン性界面活性剤の存在により不利に影響を及ぼされないと信じられている。
【0041】
本発明により、本発明によって調製された分散液は、好ましくは0.5%未満、更に好ましくは0.1%未満のアンモニウムイオン含有量を有する。最も好ましくは、この分散液は、アンモニウム塩、アンモニア、及び/又はアンモニウムイオンを実質的には含まない。アンモニウムイオン含有量は、通常、分散液を調製するために用いられる、アンモニウムイオンを含まない界面活性剤、開始剤、及び他の化合物を選択することにより調製される。結果として、分散液は、被膜の形成における蒸発手順の間、少量のアンモニア排出を有するか、又は有しない。更に、本発明により調製された分散液は、好ましくは0.20%未満、更に好ましくは0.10%未満のアルカル金属含有量を有する。
【0042】
本発明の重合手順の後のポリマー分散液は、ポリマー中に基本的に荷電群がないか、又は基本的にポリマー中のアニオン性及びカチオン性の荷電群の釣り合いがあるという点において、基本的に電気的に中性である。ポリマー分散液が基本的に電気的に中性であるとしても、測定がアニオン性の特徴を示すかもしれないことに留意するが、ポリマー分散液の電気泳動移動度(μ)は、ポリマー分散液の電荷を示すゼータ電位を測定するために用いることができる。例えば、得られたポリマー分散液は、過硫酸塩開始剤を用いた場合、又は水分子のポリマー表面への吸収のため、グラフト化硫酸基の存在のため、低い負の表面電荷を有し得る。しかし、本発明のポリマー分散液は、分散安定性に関して中性及び非イオン性であるように、基本的に電気的に中性なポリマー分散液として分類され、アニオン性又はカチオン性界面活性剤、電解質、又は高原子価の電解質の添加により、非イオン性の特徴を備えているように振る舞う。分散安定性に関して基本的に電気的に中性であり、非イオン性の特徴を備えているように振る舞うが、イオン性のゼータ電位の測定結果を有する分散液の具体例は、S.Usui,Y.Imamura and E.Barouch,Destabilization of oil−in−water emulsion with inorganic electrolytes in the absence and in the presence of sodium dodecyl sulfate,J.Dispersion Science and Technology 8(4),359−384(1987)(電解質の関数としてのデカン粒子の測定されたゼータ電位は、アニオン性界面活性剤の非存在下でも強い負電荷を示す)及びS.Usui and H.Sasaki,Zeta potential measurements of bubbles in aqueous surfactant solutions,J.Colloid and Interface Science,65(1),36−45(1978)(非イオン性界面活性剤C12POEの存在下におけるアルゴンの気泡のゼータ電位は、非常に負であることが測定される)において提供される。
【0043】
非イオン性界面活性剤及び非イオン性の共重合可能なモノマーを用いて調製されたポリマー分散液は、広いpH範囲で、ポリマーの凝集を起こすことなく、カチオン性又はアニオン性界面活性剤溶液、顔料、又は電解質と混合することができる。従って、電気的に中性な、アニオン性の(負に帯電した)、及びカチオン性の(正に帯電した)ポリマー分散液は、ほとんどの同じ従来の乳化重合装置を用いて、同じ生産能力で、凝集及び相互汚染に関連する他の問題を起こすことなく製造できる。本発明のポリマー分散液は、カチオン又はアニオン電荷を有するポリマー分散液と、本発明の基本的に中性のポリマー分散液に対して0%〜30%を超える帯電分散液の配合比で混合し、カチオン性又はアニオン性のポリマーエマルションを製造することができる。一実施形態において、カチオン性の顔料を本発明により製造された電気的に中性なポリマー分散液に加え、得られたカチオン性ポリマー分散液をアニオン性基材に塗布し、優れた接着性を備えた基材上の水蒸気バリア被膜を形成する。
【0044】
本発明により調製されたポリマー分散液は、分散液中の分散媒体を蒸発させることにより、乾燥させ、被膜を形成することができる。ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(スチレン−アクリレート)又はポリアクリレートポリマー分散液から、本発明により製造された被膜は優れた耐水性を示し、15%未満の水を吸収する。更に、40%を超えるスチレンを有するポリ(スチレン−ブタジエン)ポリマー分散液から製造された本発明の被膜も、優れた湿潤引張強度を維持している。以下の実施例に示すように、本発明の好ましい実施形態から製造された被膜は、特に40%を超えるスチレンを有するポリマーについて、10%未満の水、5%未満の水でさえ吸収することができる。親水性界面活性剤の使用は、非常に疎水性で、水との接触角が90°を超える初期前進接触角を有する乾燥被膜を製造することができることは意外であった。更に、極性の共重合可能なモノマー(例えば、アクリルアミド又はメタクリルアミド)の存在が、得られるフィルムの有利な疎水性をもたらすことは更に意外であった。高い防湿性を有する被膜をもたらす本発明のポリマー分散液のように、ポリマー分散液は、コーティング、及び種々の高水分用途のような防湿機能が要求される用途において用いることができる。
【0045】
更に、本発明によるポリ(スチレン−ブタジエン)又はポリ(スチレン−アクリレート)又はポリアクリレートポリマー分散液から製造された被膜は、ポリマーが2%以下の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体を含む場合は、従来の架橋剤の非存在下でも相対的に高い機械的強度を示す。これは、本明細書の実施例に示すように、10%未満のスチレンを含む、低いTgのポリ(スチレン−ブチルアクリレート)の系において最も明らかである。
【0046】
アニオン帯電した界面活性剤及びビニル酸の非存在下に、本発明のポリマー分散液又は水蒸気バリア組成物は広いpH範囲でコロイド的に安定であり、電解質を含まないか、低濃度の電解質を含むことができ、Ca2+、Mg2+、及びAl3+イオンのような高原子価のカチオンの存在下で安定である。これらの高原子値のカチオンは、ポルトランドセメント界面活性剤のような基材の表面から滲出し得、従って、これらのカチオンの存在下における立体安定性は、分散液中、及び基材上への堅固な耐水性被膜の形成においてポリマーの凝集を防止するのに有利である。従って、ポリマー分散液は、混合物内での凝集を防止するか、促進しない。更に、本発明の電気的に中性のポリマー分散液は、腐食保護のためのプライマーペイントにおけるような、又は防湿バリアとして作用するためのセメントに対する添加剤としての用途において望ましいような、低い電気伝導度及び高い電気抵抗を有する。
【0047】
本発明は、帯電した分散剤に変換することができ、金属塩防カビ剤、殺菌剤、及び他の殺生物剤のような、カチオン性又はアニオン性に帯電した添加剤に対して耐性である、基本的に電気的に中性のポリマー分散液を提供する。本発明の基本的に電気的に中性のポリマー分散液が、HEUR−タイプの増粘剤のような結合性増粘剤とユニークな相互作用をすることもわかった。
【0048】
本発明のポリマー分散液は、それ自体、被膜又は水蒸気バリア被膜(プライマー又はトップコート等)として塗布することができる。しかし、本発明のポリマー分散液は、他の成分を含むコーティング組成物又は水蒸気バリア組成物の成分として用いることができる。水蒸気バリア組成物は、微粉化無機顔料のような顔料を、約60容量%以下、又はそれ以上の濃度で含むことができる。顔料を含む被膜中の通常の顔料濃度は10〜60%、好ましくは10〜55%、更に好ましくは20〜45%(それぞれ容量%)である。本発明のコーティング組成物において用いるのに適した微粉化顔料は、炭酸カルシウム、マイカ、カオリン、タルク、ケイ砂、石英粉末、白亜、二酸化チタン、ドロマイト、粉末重晶石、疎水化微粉化シリカ、酸化鉄、及び他の公知の着色顔料を含む。着色の目的のために、有機顔料も用いることができる。このような顔料の最大粒子直径は、好ましくは1〜100μmである。1つの好ましい顔料は、顔料として用いることができ、また、コンクリート又は他のセメント基材のような基材の酸化速度を減少することができる炭酸カルシウムである。
【0049】
本発明の水蒸気バリア組成物は、消泡剤、増粘剤、顔料分散剤、保存剤、及び当該技術分野で公知の補助的な成分を含んでもよい。これらの補助剤の合計濃度は、好ましくは、水性組成物の全質量を基準とし、10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下である。これらの補助剤は、好ましくは非水溶性のアルカリ金属イオン又は水溶性の金属イオンを含む。公知のコーティング組成物は、通常、乾燥被膜の厚みが2mm以下又はそれ以上になるように塗布されるが、本発明の水蒸気バリア組成物は、0.1〜0.5mmの厚みで塗布することができ、それでも、既存の水蒸気バリア製品の2mmを超える厚みの被膜(例えば、4 lbのMVT値/1000ft2/日又はそれ以下)によって示されるものに比べ、防湿性を達成する。しかし、より厚い塗布は、他の目的のために望ましい。特定の用途に用いられるコーティング組成物の量は、面積あたりのポリマーの質量によって測定することもできる。一実施形態において、ポリマーの好ましい用途は、1平方フィートあたり20〜40g乾燥ポリマーであり、更に好ましくは、1平方フィートあたり約30gである。また、塗布されるコーティング組成物の量は、水蒸気透過(MVT)によって定義することができる。例えば、コンクリート基材に対する塗布については、MVT値は4 lb/1000ft2/日以下であり、又は3 lb/1000ft2/日以下でさえあり得る。塗布されるコーティングの量は、特定の基材における水蒸気バリアについての所望のMVTによって決定され、所望のMVT値は当業者に公知である。本発明のポリマー分散液は、乾燥した被膜の状態における水蒸気バリアとして、また、シーリング組成物におけるバインダーとしても用いることができる。
【0050】
本発明は、水蒸気バリアを浸潤する水蒸気の量を制限することにより、水蒸気が基材に接触する能力を低下させる方法を含む。この方法は、水蒸気バリア組成物を基材に近接して塗布することを含み、前記水蒸気バリア組成物は、アニオン性界面活性剤の非存在下、及び少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点は重合温度よりも低い)の存在下に、重合温度において分散媒体中で、1種以上のモノマーを重合することにより形成される、基本的に電気的に中性のポリマー分散液を含む。好ましい実施形態において、少なくとも1種の界面活性剤は、アルキレンオキシド基の数が14以下である、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物を含み、更に好ましくは、アルキレンオキシド基が式(EO)m(PO)nで表され、(EO)がエチレンオキシドであり、(PO)がプロピレンオキシドであり、(m+n)≦14である。
【0051】
塗布手順後、分散媒体の一部が蒸発し、基材上に被膜を形成する。この被膜は、基材の外部に存在する水蒸気、例えば、空気中の水蒸気が基材に接触することから保護するバリアとして作用し得る。例えば、一実施形態において、水蒸気バリアは、浴室のような高湿度の部屋の中の壁面に塗布される。得られた被膜は、部屋内部の空気からの水蒸気が、壁と接触し、透過する能力を低下させる。被膜は、基板の中に存在する水蒸気が、基板の表面から近接する材料、すなわち、基材の最上層、又は基材に近接する中間層に移動することを防止するバリアとしても作用することができる。例えば、一実施形態において、水蒸気バリアは、コンクリート基礎に塗布される。得られた被膜は、地面から基礎の中に拡散し、コンクリート表面と接触する水蒸気の能力を低下させる。
【0052】
更に、本発明の水蒸気バリアは、特定のタイプの建造物の性能を非常に向上させる。例えば、多くの接着剤のみが乾燥表面に完全に塗布することができるので、建築請負人は、フローリングがコンクリートのフローリングに適用されるまでコンクリートが注ぎ入れられた後、3〜4週間待たなければならない。本明細書に開示されるように、湿潤コンクリートへの分散液の塗布は、コンクリート表面への塗布と硬化の間の必要な時間、及びフローリングのような表面のトップ層への塗布に必要な時間を短縮することができる。
【0053】
以下の実施例において、本発明を更に説明する。実施例は説明にすぎず、多少なりとも、記載された、及び特許請求されたような本発明の範囲を限定するものではない。特に示さない限り、全ての部分は質量部である。
実施例
以下に記載するポリマーラテックスは、機械的撹拌機を備えたシード(seeded)セミバッチ乳化重合プロセスにおいて製造した。全固体含有量は、CEM Labware 9000 Microwave Moisture/Solids Analyzerを用いて70%のパワーのセッティングにより測定した。pHは、使用前にキャリブレーションを行ったOrion 310 pHメーターを用いて測定した。粒子サイズは、25℃において角度90°で、NICOMP(登録商標)308サブミクロン粒子サイザー、及び動的光散乱法を用いて測定した。各資料の粘度は、Brookfield RV BF−I DVII粘度計を用いて測定した。
【0054】
具体的なラテックスの合成−アクリル系ラテックス
実施例1
以下の成分:320.3gの水、14.3gの32%のアクティブシード水性エマルション(ポリスチレン)、0.7gの40%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)水溶液、0.7gの10%水酸化カリウム(KOH)水溶液を反応容器内で帯電させた。混合物を80℃に加熱した。17.8gの水及び1.9gの過硫酸ナトリウムの開始剤原材料から12%を取り除き、反応混合物に加えた。2つに分けた原材料を、一定の供給速度で容器に加えた。開始剤原材料の残りを、4.5時間かけて一定の供給速度で加えた。543.1gの水、21.3gのトリエチルアルコールの8モルエチレンオキシド付加物からなる90%の活性化非イオン性界面活性剤、5.8gの10%KOH水溶液、27.2gの53%アクリルアミド水溶液、96.0gのスチレン、240.0gの2−エチルヘキシルアクリルアミド(2−EHA)、及び609.6gのn−ブチルアクリレート(n−BA)を含むモノマーエマルション原材料を、4.0時間かけて反応器に加えた。仕込みの間、温度を80℃に維持した。モノマーエマルション原材料中の各モノマー及び界面活性剤の相対濃度を第1表に示す。仕込みが完了した後、モノマーエマルションタンクを28.8gの水で洗い流した。反応から30分が経過したら、80℃の一定温度で、1時間かけて、以下の2種の混合物:すなわち(a)2.6gの70%tert−ブチルヒドロペルオキシド溶液及び24.0gの水、及び(b)2.0gのメタ重亜硫酸ナトリウム、1.2gのアセトン、及び23.4gの水を2つに分けた原材料として加えることにより、分散液を後揮散した。2種原材料の追加後、温度を15分間維持した後、ポリマー分散液を冷却し、その後任意の添加剤(殺生剤等)を加えた。得られたポリマー分散液は49.5%の全固形分、175nmの平均粒子サイズ、3.4のpH、及び210cPの粘度を有していた。
【0055】
実施例2
実施例2は、第1表に示すような相対濃度のモノマーエマルション原材料中の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例1に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は49.6%の全固形分、156nmの平均粒子サイズ、3.0のpH、及び470cPの粘度を有していた。
【0056】
実施例3
実施例3は、第1表に示すような相対濃度のモノマーエマルション原材料中の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例1に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は49.6%の全固形分、196nmの平均粒子サイズ、3.2のpH、及び400cPの粘度を有しており、得られたポリマーは−42℃のガラス転移温度(Tg)を有していた。
【0057】
実施例4
実施例4は、第1表に示すような相対濃度のモノマーエマルション原材料中の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例1に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は49.0%の全固形分、179nmの平均粒子サイズ、2.6のpH、及び50cPの粘度を有していた。
【0058】
実施例5
実施例5は、第1表に示すような相対濃度のモノマーエマルション原材料中の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例1に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は49.9%の全固形分、185nmの平均粒子サイズ、3.2のpH、及び550cPの粘度を有していた。
【0059】
実施例6
実施例6は、初期帯電が346.7gの水を有し、モノマーエマルション混合物原材料が501.9gの水、4.9gの10%KOH水溶液、37.0gの53%アクリルアミド水溶液、441.0gのスチレン、519.4gのn−ブチルアクリレートを含み、2−エチルヘキシルアクリレートを含まない以外は、実施例1に記載された方法を用いて調製した。モノマーエマルション原材料中の各モノマー及び界面活性剤の相対濃度を第1表に示す。開始剤原材料は、26.0gの水及び1.9gの過硫酸ナトリウムからなる。得られたポリマー分散液は49.8%の全固形分、201nmの平均粒子サイズ、4.4のpH、及び1130cPの粘度を有しており、得られたポリマーは+11℃のTを有していた。
【0060】
実施例7
実施例7は、第1表に示すような相対濃度のモノマーエマルション原材料中の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例1に記載された方法を用いて調製した。開始剤原材料は、26.0gの水及び1.9gの過硫酸ナトリウムからなる。重合後に、水酸化ナトリウム(NaOH)の10%水溶液を用いて、ポリマー分散液のpHを調整した。得られたポリマー分散液は49.6%の全固形分、165nmの平均粒子サイズ、7.4のpH(pH調整後)、及び335cPの粘度を有していた。
【0061】
実施例8
実施例8は、第1表に示すような相対濃度のモノマーエマルション原材料中の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例1に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は49.2%の全固形分、160nmの平均粒子サイズ、2.7のpH、及び134cPの粘度を有していた。
【0062】
比較例1
比較例1は、実施例1における過硫酸塩を2倍用い、第1表に示すような相対濃度のモノマーエマルション原材料中の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例1に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は49.4%の全固形分、152nmの平均粒子サイズ、7.0のpH(10%NaOH水溶液を用いて調整)、及び270cPの粘度を有していた。
【0063】
比較例2
比較例2は、実施例1における過硫酸塩を2倍用い、第1表に示すような相対濃度のモノマーエマルション原材料中の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例1に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は49.0%の全固形分、146nmの平均粒子サイズ、7.2のpH(10%NaOH水溶液を用いて調整)、及び85cPの粘度を有していた。
【0064】
比較例3
比較例3は、実施例1における過硫酸塩を2倍用い、第1表に示すような相対濃度のモノマーエマルション原材料中の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例1に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は48.7%の全固形分、155nmの平均粒子サイズ、7.3のpH(10%NaOH水溶液を用いて調整)、及び55cPの粘度を有していた。
【0065】
実施例1〜8及び比較例1〜3(CE1〜CE3)において用いられるモノマー及び界面活性剤の濃度を下記第1表に要約する。Pilot Chemical CompanyからのCALFAX DB−45は、スルホン化1,1’−オキシビスベンゼンのテトラプロピレン誘導体であり、アニオン性界面活性剤である。記載された界面活性剤、(EO)6、(EO)8、及び(EO)10はトリデシルアルコールの非イオン性のエチレンオキシド付加物である。
【0066】
第1表 ポリアクリレートポリマー分散液中のモノマー及び界面活性剤濃度(単位:モノマー100個あたりの部分)
【表1】

【0067】
(a)処方は、実施例1よりも40%多くのポリスチレン原材料を含む。
【0068】
(b)処方は、実施例1の2倍量の過硫酸塩を含む。
【0069】
実施例1〜3により調製されたラテックスは、約−40〜−45℃のTを有し、1.5〜2.0%のアクリルアミドを含む、低Tのスチレン−アクリルポリマーであった。実施例4のラテックスは、アクリルアミドを含まない低Tポリマーであった。実施例5のラテックスは、短いEO−鎖の界面活性剤を用いた。実施例6及び7のラテックスは、スチレン及びn−ブチルアクリレートをベースとする高Tのポリマーであった。実施例8のラテックスは、高Tをもたらす直鎖アクリル系ポリマーであり、長いEO−鎖の界面活性剤も用いた。同じ製剤中でアクリルアミドに対するアクリル酸の選択を比較することができ、同様に、同じ製剤中で非イオン性(EO)10界面活性剤に対するCALFAX DB−45を比較することができるという点で、比較例1〜3のラテックスは、実施例7のラテックスと比較することができる。
【0070】
1滴の各ラテックスを2〜3mLの1.0M塩化カルシウム(CaCl2)溶液に滴下した時、実施例1〜8及び比較例1のラテックスは安定であり、凝集を示さなかった。アクリル酸を含む比較例2及び3のラテックスは、CaCl2溶液の存在下に直ちに凝集した。
【0071】
具体的なラテックスの合成−スチレンブタジエンラテックス
実施例9
以下の成分:1076.3gの水、36.6gの32%アクティブシード水性ポリスチレンエマルション、1.3gの40%EDTA水溶液、及び1.7gのピロリン酸四ナトリウムを、反応容器内で帯電させた。混合物を90℃まで加熱した。166.2gの水及び12.8gの過硫酸ナトリウムの開始剤原材料から、28.5%を取り除き、反応混合物に加えた。次いで、4つに分けた原材料を、一定の供給速度で加えた。原材料(a)は開始剤原料の残部であり、5.0時間かけて加えた。原材料(b)は、549.6gの水、41.5gのトリデシルアルコールの8モルエチレンオキシド付加物(水中、90%活性)、1.9gのピロリン酸四ナトリウム、及び70.5gの53%アクリルアミド水溶液を含む水性原材料であり、2.5時間かけて加えた。原材料(c)は、595.0gの1,3−ブタジエンからなり、4.0時間かけて加えた。原材料(d)は、1130.3gのスチレン及び13.5gのtert−ドデシルメルカプタンの混合物からなり、4.0時間かけて加えた。供給が完全に持続する間、温度を90℃に維持した。反応から60分が経過したら、得られた分散液を冷却し、10%KOH水溶液を用いてpHを6.5に調整した。蒸気の入口を備える揮散反応器中で、生成物をモノマー除去手順にかけた。温度を74℃に制御しながら、蒸気を分散液に通し、2種類の溶液:(e)56mLのtert−ブチルヒドロパーオキシド水溶液、及び(f)56mLの5%メタ重亜硫酸ナトリウム水溶液を、2時間以内に、2本の蒸気に同時に供給した。得られたポリマー分散液は50.6%の全固形分、156nmの平均粒子サイズ、4.6のpHを有していた。
【0072】
実施例10
実施例10は、第2表に示すような相対濃度の各モノマー及び界面活性剤を用い、反応から30分が経過したら用いた以外は、実施例9に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は49.9%の全固形分、157nmの平均粒子サイズ、3.9のpHを有しており、得られたポリマーは、+7℃のTを有していた。
【0073】
実施例11
以下の成分:880.6gの水、27.8gの32%アクティブシード水性エマルション(ポリスチレン)、1.1gの40%EDTA水溶液、及び1.4gのピロリン酸四ナトリウムを、反応容器内で帯電させた。混合物を90℃まで加熱した。146.7gの水及び11.3gの過硫酸ナトリウムの開始剤原材料から、28.5%を取り除き、反応混合物に加えた。次いで、下記の4つに分けた原材料を、一定の供給速度で加えた。原材料(a)は開始剤原料の残部であり、5.0時間かけて加えた。原材料(b)は、457.2gの水、31.3gのトリデシルアルコールの10モルエチレンオキシド付加物、1.6gのピロリン酸四ナトリウム、及び73.9gの53%アクリルアミド水溶液を含む水性原材料からなり、2.5時間かけて加えた。原材料(c)は、441.0gの1,3−ブタジエンからなり、4.0時間かけて加えた。原材料(d)は、982.4gのスチレン及び26.8gのtert−ドデシルメルカプタンの混合物からなり、4.0時間かけて加えた。供給が完全に持続する間、温度を90℃に維持した。反応から30分が経過したら、得られた分散液を冷却した。蒸気の入口を備える揮散反応器中で、生成物をモノマー除去手順にかけた。温度を74℃に制御しながら、蒸気を分散液に通し、2種類の溶液:すなわち、(e)56mLのtert−ブチルヒドロパーオキシド水溶液、及び(f)56mLの5%メタ重亜硫酸ナトリウム水溶液を、2時間以内に、2本の蒸気に同時に供給した。得られたポリマー分散液は50.3%の全固形分、164nmの平均粒子サイズ、3.2のpHを有しており、得られたポリマーは+8℃のTを有していた。
【0074】
実施例12
実施例12は、第2表に示すような相対濃度の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例9に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は51.9%の全固形分、160nmの平均粒子サイズ、4.6のpHを有し、得られたポリマーは+14℃のTを有していた。
【0075】
比較例4
比較例4は、第2表に示すような相対濃度の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例9に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は52.5%の全固形分、155nmの平均粒子サイズ、5.2のpHを有し、得られたポリマーは+9℃のTを有していた。
【0076】
比較例5
比較例5は、第2表に示すような相対濃度の各モノマー及び界面活性剤を用いた以外は、実施例9に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は50.3%の全固形分、134nmの平均粒子サイズ、2.1のpHを有し、得られたポリマーは+11℃のTを有していた。
【0077】
比較例6
比較例6は、第2表に示すような相対濃度の各モノマー及び界面活性剤を用い、より短い反応時間を用いた以外は、実施例9に記載された方法を用いて調製した。得られたポリマー分散液は53.9%の全固形分、143nmの平均粒子サイズ、8.5のpHを有し、得られたポリマーは+10℃のTを有していた。
【0078】
実施例9〜12及び比較例4〜6(CE4〜CE6)において用いられるモノマー及び界面活性剤の組成物を下記第2表に要約する。Pilot Chemical CompanyからのCALFOAM ES−303は、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムであり、アニオン性界面活性剤である。記載された界面活性剤、 (EO)8及び(EO)10はトリデシルアルコールの非イオン性のエチレンオキシド付加物である。
【0079】
第2表に記載された全てのラテックスは同じTを有していた。実施例9〜12のラテックスは非イオン性モノマー及び非イオン性界面活性剤を含むが、比較例4〜6のラテックスはカルボン酸モノマーを含み、比較例5及び比較例6のラテックスは、更にアニオン性界面活性剤を含む。
【0080】
1滴の各ラテックスを2〜3mLの1.0M塩化カルシウム(CaCl2)溶液に滴下した時、実施例9〜12の各ラテックスは安定であり、凝集を示さなかった。アクリル酸を含む比較例5及び6のラテックスは、CaCl2溶液の存在下に直ちに凝集した。
【0081】
第2表 ポリ(スチレン−ブタジエン)ポリマー分散液中のモノマー及び界面活性剤濃度(単位:モノマー100個あたりの部分)
【表2】

【0082】
機械的強度及び吸水率についての成形被膜の試験
最初に、各ポリマー分散液に、40%の全固形分含有量を得るのに十分な水を加えることにより、実施例1〜12及び比較例1〜5により調製された各ラテックスからラテックス被膜を調製した。次いで、得られた希釈分散液をテフロン鋳型に注ぎ入れ、50%の湿度、25℃で7日間風乾した。2〜3日の初期乾燥相後に、被膜を逆さまにひっくり返し、両面を空気にさらした。各乾燥ラテックスの厚みは、0.02インチのオーダーであった。
【0083】
各被膜試料の両面に剥離紙を置くことにより、引張実験のための被膜試料を調製した。0.158インチ幅に相当する「犬の骨」の形態の試料を切り取った。22 1bのロードセルを備えたInstron 4505を用いて、各被膜の3個の試料を試験した。7.9インチ/分の速度で試料を伸長し、最大強度及び破断点伸びを記録した。
【0084】
被膜の吸水率は、試料被膜を2インチ×2インチに切り取り、各試料の乾燥質量を測定し、各試料を脱イオン水中に24時間浸し、次いで水分を除去した後に試料の質量を測定することにより、測定した。吸水率は、得られる質量の割合として表わし、ラテックスあたり、3〜5個の試料の平均である。
【0085】
下記の第3表は、実施例1〜8及び比較例1〜3のラテックスの機械的特性を示す。
【0086】
第3表 アクリル系ラテックスポリマー被膜の機械的特性
【表3】

【0087】
実施例6及び7の高スチレンポリマーにおいて、最も低い吸水率が観察された。比較例1〜3は、実施例6及び7と類似のポリマーガラス転移温度を有していたが、比較例1〜3は、顕著に高い吸水率を示した。
【0088】
下記第4表は、実施例9〜11及び比較例4及び5の機械的特性を示す。
【0089】
第4表 スチレン−ブタジエンラテックスポリマー被膜の機械的特性
【表4】

【0090】
(a)ラテックスのpHを8に調整した場合、吸水率は1.9%である。
【0091】
(b)ラテックスのpHを8に調整した場合、吸水率は2.5%である。
【0092】
(c)ラテックスのpHを8に調整する。
【0093】
第4表に示すように。実施例9〜12の3種のスチレン−ブタジエンポリマーからの吸水率は非常に低く、2%のオーダーであった。比較例5のラテックスは非常に高い吸水率を有し、耐水性におけるアニオン性モノマー及び界面活性剤の有害な影響を示す。
【0094】
追加のポリマー被膜を調製し、下記の第5表に示すように、実施例6及び9の乾燥及び湿潤被膜について更に広範囲の試験を実施した。ポリマー被膜を水中に24時間浸し、ペーパータオルで押さえて水気を切り、次いで水浴から除去した直後に引張強度及び破断点伸びについて試験した(「湿潤ポリマー被膜」として示す)。実施例6及び9のポリマー被膜の他のセットを水中に24時間浸し、24時間風乾し、次いで、引張強度及び破断点伸びについて試験した(「再乾燥湿潤ポリマー被膜」として示す)。実施例6により調製したアクリル系ラテックスから形成した被膜と同様に、実施例9のスチレン−ブタジエンラテックスは、水中に24時間浸した後に結合力を失っていなかった。
【0095】
第5表 湿潤及び乾燥ポリマー被膜の機械的特性
【表5】

【0096】
コンクリートに塗布した被膜の水蒸気透過(MVT)率についての試験
実施例3、7、9、11及び比較例1、4及び6によるラテックスからコーティングを調製した。生コンクリート上のこれらのラテックスについてのMVTを測定するために、各ポリマー分散液を水で希釈して、40%全固定含有量を得た。次いで、得られた希釈分散液を、ポリマー分散液の塗布の前に48時間養生させた「湿潤」コンクリートの同じバッチの試料表面にブラシを用いて塗布した。湿潤コンクリート表面へのポリマー分散液のコーティング質量は66〜69 lb/1000ft2であった。ポリマーコーティングを、温度(25℃)及び湿度(50%)制御環境においてビニール製テントの下で、72時間乾燥させた。次いで、密封したビニール製テント下のコーティングしたコンクリート表面上に、規定量の無水CaCl2を置いた。72時間後、テントを開放し、CaCl2の質量を測定し、吸収した水分量を測定した。MVTの結果は、lb水/100ft2/日で表わされる。
【0097】
各コンクリート試料の水蒸気排出率は、ASTM E−1907−97及びASTM F−1869−98に従い、塩化カルシウム試験キットを用いて測定した。測定した水蒸気排出率を、下記第6表に示す。
【0098】
第6表 選択したポリマー分散液についての水蒸気透過(MVT)率(lb/1000ft2/日)
【表6】

【0099】
(a)ラテックスをコーティング前にpHを8に調整した場合、得られるMVTは1.9である。
【0100】
(b)ラテックスをコーティング前にpHを8に調整した場合、得られるMVTは4.2である。
【0101】
Sty−acr.=スチレン−アクリル系
SB=スチレン−ブタジエン
本発明の前記記載を読むことにより、当業者はそれらの変形及び修飾をすることができることが理解される。これらの変形及び変化は、以下に添付する請求の範囲の趣旨及び適用範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材;及び
少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点は重合温度よりも低い)の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に、重合温度において水性媒体中で重合する、1種以上の共重合可能な非イオン性モノマー由来のポリマーを含む、前記基材に近接して提供される水蒸気の透過を制限する被膜を含む製品。
【請求項2】
前記基材がコンクリート又は石こうである、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記基材がポルトランドセメントを含む、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
前記基材が石又はタイルである、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物を含み、前記アルキレンオキシド基の数が14以下である、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
前記アルキレンオキシド基が式(EO)m(PO)nで表され、(EO)がエチレンオキシドであり、(PO)がプロピレンオキシドであり、(m+n)≦14である、請求項5に記載の製品。
【請求項7】
前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、6〜10モルのエチレンオキシドを有するトリデシルアルコールのエチレンオキシド付加物を含む、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
前記1種以上の共重合可能な非イオン性モノマーが、スチレン、(メタ)アクリレート、ブタジエン、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の製品。
【請求項9】
被膜が更に顔料を含む、請求項1に記載の製品
【請求項10】
前記顔料が炭酸カルシウムを含む、請求項1に記載の製品。
【請求項11】
水中に24時間浸漬した後の被膜の吸水量が、乾燥被膜の質量を基準にして10質量%未満である、請求項1に記載の製品。
【請求項12】
前記被膜が、基材に直接コーティングされている、請求項1に記載の製品。
【請求項13】
前記被膜が、
分散媒体中に分散した少なくとも1種のポリマーを含む、電気的に中性のポリマー分散液(前記ポリマー分散液は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に、重合温度において1種以上の非イオン性の共重合可能なモノマーを重合して形成されている)を基材に近接して塗布し、及び
前記分散媒体を蒸発させることにより形成される、請求項1に記載の製品。
【請求項14】
前記ポリマーがイオン性モノマーに由来しない、請求項1に記載の製品。
【請求項15】
前記被膜に近接して提供されるコーティング層を更に含み、前記被膜が、前記基材と前記コーティング層との間に位置する、請求項1に記載の製品。
【請求項16】
前記コーティング層が接着剤を含む、請求項15に記載の製品。
【請求項17】
基材;及び
少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(非イオン性界面活性剤が、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物を含み、前記アルキレンオキシド基の数が14以下である)の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に重合する、1種以上の共重合可能な非イオン性モノマー由来のポリマーを含む、前記基材に近接して提供される水蒸気の透過を制限する被膜を含む製品。
【請求項18】
前記アルキレンオキシド基が、1個以上のエチレンオキシド(EO)m及びプロピレンオキシド(PO)nを含み、(m+n)≦14である、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
分散媒体中に分散された少なくとも1種のポリマー、及び
少なくとも1種の顔料を含む組成物であって、
前記組成物が、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に、重合温度において1種以上の非イオン性の共重合可能なモノマーを重合することにより形成されており、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点が重合温度よりも低い組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種の顔料が炭酸カルシウムを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物を含み、前記アルキレンオキシド基の数が14以下である、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記アルキレンオキシド基が式(EO)m(PO)nで表され、(EO)がエチレンオキシドであり、(PO)がプロピレンオキシドであり、(m+n)≦14である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、6〜10モルのエチレンオキシドを有するトリデシルアルコールのエチレンオキシド付加物を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記1種以上の共重合可能な非イオン性モノマーが、スチレン、(メタ)アクリレート、ブタジエン、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
請求項19に記載の組成物を乾燥させることにより形成される被膜。
【請求項26】
水中に24時間浸漬した後の被膜の吸水量が、乾燥被膜の質量を基準にして10質量%未満である、請求項25に記載の被膜。
【請求項27】
基材に近接して水蒸気バリア組成物を塗布することを含む、基材に対する水蒸気の透過に影響を及ぼす方法であって、
前記水蒸気バリア組成物が、基本的に、アニオン性界面活性剤の非存在下、及び少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点が重合温度よりも低い)の存在下に、重合温度において分散媒体中で1種以上のモノマーを重合することにより形成された電気的に中性のポリマー分散液を含む方法。
【請求項28】
前記少なくとも1種の界面活性剤が、アルキルアルコール、アルキルベンゼンアルコール又はジアルキルベンゼンアルコールのアルキレンオキシド付加物を含み、前記アルキレンオキシド基の数が14以下である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記アルキレンオキシド基が式(EO)m(PO)nで表され、(EO)がエチレンオキシドであり、(PO)がプロピレンオキシドであり、(m+n)≦14である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、6〜10モルのエチレンオキシドを有するトリデシルアルコールのエチレンオキシド付加物を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記1種以上の共重合可能な非イオン性モノマーがスチレン及びブタジエンを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記水蒸気バリア組成物が、更に少なくとも1種の顔料を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記水蒸気バリア組成物が、基材に直接塗布される、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記基材がポルトランドセメントを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記水蒸気バリア組成物が、湿潤コンクリートに塗布される、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
水蒸気バリア組成物の製造方法であって、
少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点は重合温度よりも低い)の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に、重合温度において、分散媒体中で1種以上の非イオン性の共重合可能なモノマーを重合し、ポリマー分散液を製造することと、
前記ポリマー分散液を顔料と混合することを含む製造方法。
【請求項37】
制限された水蒸気透過性を有する被膜の製造方法であって、
少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の曇点は重合温度よりも低い)の存在下、及びイオン性界面活性剤の非存在下に、重合温度において、分散媒体中で1種以上の非イオン性の共重合可能なモノマーを重合し、ポリマー分散液を製造することと、
前記ポリマー分散液を顔料と混合して水蒸気バリア組成物を製造することと、
前記水蒸気バリア組成物を蒸発させて被膜を形成することを含む製造方法。

【公表番号】特表2009−533305(P2009−533305A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504442(P2009−504442)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/065935
【国際公開番号】WO2007/118112
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】