説明

ポリマー分散液

本発明は、二階段で得られるポリマーの分散液を含有する被覆剤、その製造法及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二段階で得られるポリマーの分散液を含有する被覆剤、その製造法及びその使用に関する。
【0002】
US3957711には、in situで製造され、引き続き他のモノマーの重合が行われる保護コロイドとしてのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを有する、一段階ポリマーが記載されている。
【0003】
US7317056には、第一段において高割合のアクリル酸及びヒドロキシアルキルアクリレートが重合導入される、感圧性接着剤のための二段階で製造されたポリマーが記載されている。そこに記載されている方法による該ポリマーは高い粘度を示しており、これにより完成分散液における固体割合の低減が不可欠となる。
【0004】
E. P. Pedraza, M. D. Soucek, Polymer(2005), 46(24), 11174-85には、コアが(メタ)アクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートから構成されており、かつシェルが(メタ)アクリレート及びメタクリル酸から構成されている、コア・シェルポリマーからのラテックスが記載されている。重合により、300nmを上回る平均粒径及び部分的に二峰性の粒径分布を有する大きな粒子がもたらされる。
【0005】
該文献の教示によれば、使用されるモノマーの合計に対して4%を上回る高い乳化剤の割合が必要であるという点が不利である。
【0006】
G. Teng, M. D. Soucek, Journal of Polymer Science:Part A: Polymer Chemistry, Vol. 40, 4256-4265(2002)には、コア及びシェルが、それぞれ(メタ)アクリレートからか、又は(メタ)アクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートから構成されている、コア・シェルポリマーからのラテックスが記載されている。重合により、250nmを上回る平均粒径を有する大きな粒子がもたらされる。ここでも、該文献の教示によれば、使用されるモノマーの合計に対して4%を上回る高い乳化剤の割合が必要であるという点が不利である。
【0007】
EP1602701A1には、特定の疎水性及び親水性モノマーから製造される保護コロイドの存在での、モノマーの重合が記載されている。該文献の教示によれば、40%を上回る高い親水性モノマーの割合が重合に使用されるが、これは水安定性の低いポリマーを招くという点が不利である。
【0008】
WO00/5276には、第一段において高割合のアクリル酸が重合導入される、二段階で製造されたポリマーが記載されている。そこに記載されている方法による該ポリマーは高い粘度を示しており、これにより完成分散液における固体割合の低減が不可欠となる。
【0009】
本発明の課題は、製造の際に出来る限り乳化剤なしか又は少量のみで済み、低減された粘度を示し、かつ改善された水安定性を有する被覆をもたらす被覆剤のためのポリマー分散液を提供することであった。
【0010】
前記課題は、以下の少なくとも二段の乳化重合:
第一段において、以下:
(A1)少なくとも1の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(B1)場合により、20個までのC原子を有する少なくとも1のビニル芳香族化合物、
(C1)少なくとも1のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、
(D1)場合により、20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル、20個までのC原子を含むカルボン酸のビニルエステル、10個までのC原子を有するハロゲン化ビニル、及び1〜10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテルからなる群から選択された、少なくとも1のラジカル重合性化合物、
(E1)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、
(F1)場合により、少なくとも1の架橋剤、
(G1)場合により、(メタ)アクリル酸2−(2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−エチルエステル(ウレイドエチル(メタ)アクリレート)、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)及びジアセトンメタクリルアミドからなる群から選択された少なくとも1の化合物、
(H1)場合により、(メタ)アクリレート基及びエポキシ基を有する少なくとも1の化合物、及び
(I1)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド
を、少なくとも1の開始剤の存在で、かつ場合により少なくとも1の乳化剤の存在で、並びに場合により少なくとも1の調節剤の存在で反応させるが、
但し、第一段から得られたコポリマーが、
・10mg KOH/g ポリマー以下の酸価、
・2〜100mg KOH/g ポリマーのヒドロキシ価、
・20〜300、有利には30〜200nmの粒径、及び
・5,000〜200,000g/モルの質量平均分子量
を有しており、
かつ、モノマー(C1)と(I1)との合計が0.5〜20質量%であるものとし、
引き続き、後続段において、第一段において製造されたコポリマーの存在で、以下:
(A2)少なくとも1の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(B2)場合により、20個までのC原子を有する少なくとも1のビニル芳香族化合物、
(C2)場合により、少なくとも1のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、
(D2)場合により、20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル、20個までのC原子を含むカルボン酸のビニルエステル、10個までのC原子を有するハロゲン化ビニル、及び1〜10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテルからなる群から選択された、少なくとも1のラジカル重合性化合物、
(E2)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、
(F2)場合により、少なくとも1の架橋剤、及び
(G2)場合により、(メタ)アクリル酸2−(2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−エチルエステル(ウレイドエチル(メタ)アクリレート)、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)及びジアセトンメタクリルアミドからなる群から選択された少なくとも1の化合物、
(H2)場合により、(メタ)アクリレート基及びエポキシ基を有する少なくとも1の化合物、及び
(I2)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド
をラジカル重合させ、
場合により引き続き、1以上のさらなる段で、少なくとも1のモノマーをラジカル重合させ、
その際、任意の少なくとも1の乳化剤の量が、全ての段においてラジカル重合に供給されるラジカル重合性モノマーの全量に対して0〜3.5質量%であるが、
但し、
・第一段のモノマー(A1)〜(I1)の合計対後続段のモノマー(A2)〜(I2)の合計の質量比が、5:95〜70:30であり、
・最終段から得られた生成物が50〜500nmの粒径を有しており、
・最終段の生成物の酸価が、第一段の生成物の酸価以下であり、かつ、
・最終段の生成物のヒドロキシ価が、第一段の生成物のヒドロキシ価以下であるものとする、
により得られる少なくとも1のポリマー分散液を含有する、被覆剤により解決された。
【0011】
重合において、本発明によれば以下のモノマーを使用することができる:
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(A1)及び(A2)
これらは、有利には、直鎖又は分枝鎖アルキル基が1〜20個の炭素原子、特に有利には1〜10個、極めて特に有利には1〜8個、特に1〜4個の炭素原子を有している、(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0012】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに関する例として、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−プロピルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−イソ−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸−イソ−ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メチル−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸アミルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−オクチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−2−プロピルヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル及び(メタ)アクリル酸−n−ドデシルエステルが挙げられる。
【0013】
有利なものは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及び3−プロピルヘプチルアクリレートである。
【0014】
特に、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物も好適である。
【0015】
20個までのC原子を有するビニル芳香族化合物(B1)及び(B2)
これは、芳香環系と共役しているビニル基を有する、場合により置換された芳香族系である。
【0016】
そのような置換されたビニル芳香族化合物は、1以上、有利には1〜10個の炭素原子、有利には1〜6個、特に有利には1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を有しており、該アルキル基は、芳香族化合物上か又はビニル基上に存在し得る。該置換基が芳香族化合物上に存在してる場合、該置換基は有利には、ビニル基に対して、オルト位又はパラ位に、特に有利にはパラ位に存在し得る。
【0017】
ビニル芳香族化合物として、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、α−及びp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、及び有利にはスチレン及びα−メチルスチレンが挙げられる。
【0018】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(C1)及び(C2)
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、アルキレン基が1〜10個、有利には2〜8個、特に有利には2〜6個、極めて特に有利には2〜4個、特に2又は3個の炭素原子を含む(メタ)アクリル酸エステルである。
【0019】
有利なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、例えば(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピルエステル及び(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチルエステルである。
【0020】
特に有利なものは(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル及び(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルエステルであり、極めて特に有利なものは、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステルである。
【0021】
1を上回る、例えば2〜5個、有利には2〜4個、特に有利には2〜3個のヒドロキシ基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートも考えられる。それに関する例は、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットモノ(メタ)アクリレート、及び、糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリトリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、マルチトール及びイソマルトースのモノ(メタ)アクリレートである。
【0022】
ラジカル重合性化合物(D1)及び(D2)
化合物(D1)及び(D2)は、20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル、20個までのC原子を含むカルボン酸のビニルエステル、10個までのC原子を有するハロゲン化ビニル、及び1〜10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテルからなる群から選択され、有利には、20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル及び1〜10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテルからなる群から選択され、特に有利には20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリルである。
【0023】
20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル
エチレン性不飽和ニトリルに関する例は、フマル酸ジニトリル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル、有利にはアクリロニトリル及びメタクリロニトリルであり、特に有利にはアクリロニトリルである。
【0024】
20個までのC原子を含むカルボン酸のビニルエステル
1〜20個のC原子を含むカルボン酸のビニルエステルは、例えば、ビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピオネート、バーサチック酸ビニルエステル、ビニルブチレート及びビニルアセテート、有利にはビニルアセテートである。
【0025】
10個までのC原子を有するハロゲン化ビニル
ハロゲン化ビニルは、塩素、フッ素又は臭素で置換されたエチレン性不飽和化合物、有利には塩化ビニル及び塩化ビニリデンである。
【0026】
1〜10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテル
ビニルエーテルとして、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソ−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、イソ−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル及びn−オクチルビニルエーテルが挙げられる。有利なものは、1〜4個のC原子を含むアルコールのビニルエーテルである。
【0027】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸(E1)及び(E2)
これは、3〜10個、有利には3〜6個、特に有利には3〜4個の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸である。
【0028】
有利なものは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸又はジカルボン酸、例えばイタコン酸、マレイン酸又はフマル酸であり、特に有利なものはメタクリル酸及びアクリル酸である。
【0029】
(メタ)アクリル酸とは、本願明細書中で、メタクリル酸及びアクリル酸を表す。
【0030】
架橋剤(F1)及び(F2)
架橋剤とは、少なくとも2個、有利には2〜6個、特に有利には2〜4個、極めて特に有利には2〜3個、特にちょうど2個のラジカル重合性二重結合を有するものを指す。
【0031】
例として、ジ−及びポリ(メタ)アクリレート1,2−、1,3−及び1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,2−及び1,3−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリー及び−テトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
さらに、ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0033】
特に有利なものは、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジアクリレート及びアリルメタクリレートからなる群から選択された架橋剤である。
【0034】
化合物(F1)及び(F2)が使用される場合には、これらの化合物は有利には第一段においてではなく第二段において使用され、即ち、((F1)+(F2))の量≠0である場合には、有利には(F2)の量≠0でありかつ(F1)の量=0である。
【0035】
化合物(G1)及び(G2)は、(メタ)アクリル酸2−(2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−エチルエステル(ウレイドエチル(メタ)アクリレート)、N−[2−(2−オキソ−オキサゾリジン−3−イル)−エチル]−メタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)及びジアセトンメタクリルアミドからなる群から選択されている。
【0036】
有利なものは、(メタ)アクリル酸2−(2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−エチルエステル、(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート及びジアセトンアクリルアミドであり、特に有利なものは、(メタ)アクリル酸2−(2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−エチルエステル及び(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートであり、極めて特に有利なものはジアセトンアクリルアミドである。
【0037】
化合物(G1)及び(G2)が使用される場合には、これらの化合物は有利には第二段においてではなく第一段において使用され、即ち、((G1)+(G2))の量≠0である場合には、有利には(G1)の量≠0でありかつ(G2)の量=0である。
【0038】
(H1)及び(H2)
これらの化合物は、(メタ)アクリレート基及びエポキシ基を有する少なくとも1の化合物である。特に、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートが挙げられ、有利にはグリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0039】
(I1)及び(I2)
これらの化合物は、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミドであり、有利には、(C1)及び(C2)で説明されたカルボン酸のアミドである。
【0040】
特に有利なものは、(メタ)アクリル酸アミド、クロトン酸アミド又はジカルボン酸のアミド、例えばイタコン酸ジアミド、マレイン酸ジアミド又はフマル酸ジアミドであり、特に有利なものは、メタクリル酸アミド及びアクリル酸アミドであり、極めて特に有利なものはアクリル酸アミドである。
【0041】
化合物(I1)及び(I2)が使用される場合には、これらの化合物は有利には第二段においてではなく第一段において使用され、即ち、((I1)+(I2))の量≠0である場合には、有利には(I1)の量≠0でありかつ(I2)の量=0である。
【0042】
さらに、副次的な量で、例えば5質量%未満、有利には3質量%未満、特に有利には1質量%未満、極めて特に有利には0質量%で、上で挙げられたものとは異なるモノマーを使用することができるが、しかしながらこれはあまり有利ではない。
【0043】
第一段のモノマー組成物は、通常は以下の通り:
(A1)少なくとも1の(メタ)アクリル酸アルキルエステル 30〜99.5、有利には40〜99、特に有利には50〜97質量%、
(B1)20個までのC原子を有する少なくとも1のビニル芳香族化合物 0〜70、有利には5〜60、特に有利には10〜50質量%、
(C1)少なくとも1のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート 0.5〜20、有利には1〜15、特に有利には3〜10質量%、
(D1)20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル、20個までのC原子を含むカルボン酸のビニルエステル、10個までのC原子を有するハロゲン化ビニル、及び1〜10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテルからなる群から選択された、少なくとも1のラジカル重合性化合物 0〜20、有利には0〜10、特に有利には0〜5、極めて特に有利には0質量%、及び
(E1)少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸 0〜5、有利には0〜3、特に有利には0〜1、極めて特に有利には0〜0.5、特に0質量%、
(F1)0〜20、有利には0〜10、特に有利には0〜5、極めて特に有利には0質量%、
(G1)0〜20、有利には0〜10、特に有利には0〜5、極めて特に有利には0質量%、
(H1)0〜20、有利には0〜10、特に有利には0〜5、極めて特に有利には0質量%、
(I1)0〜19.5、有利には0〜10、特に有利には0〜5、極めて特に有利には0質量%
であり、その際、第一段において使用されるモノマーに関する合計は常に100質量%であり、かつ、モノマー(E1)の量は、第一段から得られたポリマーが10mg KOH/g以下、有利には8以下、特に有利には5以下、極めて特に有利には3以下、特に1mg KOH/g以下、特に0mg KOH/gの酸価を有するように計量されているが、但し、モノマー(C1)及び(I1)の合計は0.5〜20質量%、有利には0.5〜15、特に有利には0.5〜10、極めて特に有利には1〜10質量%であるものとする。
【0044】
酸価は、本願明細書中では他に記載がない限り、DIN EN ISO 3682(電位差分析)により測定される。
【0045】
第一段から得られたポリマーのヒドロキシ価は、2〜100mg KOH/g、有利には5〜80、特に有利には8〜60mg KOH/gである。
【0046】
ヒドロキシ価は、本願明細書中では他に記載がない限り、DIN 53240−2(アセチル化時間20分間での電位差分析)により測定される。
【0047】
少なくとも1の乳化剤の存在で作業された場合、第一段から得られたポリマーの粒径は、通常は20〜80nm、有利には30〜60nmである。
【0048】
それに対して乳化剤不在の場合には、粒径は350nmまで、有利には300nmまで、特に有利には250nmまで、極めて特に有利には200nmまでであり得る。
【0049】
粒径とは、本願明細書中では、分散液中のポリマー粒子の質量平均直径(ISO 13321により、Malvern社製High Performance Particle Sizerを用いて、22℃、波長633nmで測定されたもの)であると理解される。
【0050】
第一段から得られたポリマーの質量平均分子量Mwは、5,000〜200,000g/モル、有利には7,000〜100,000、特に有利には8,000〜50,000、極めて特に有利には10,000〜30,000である。
【0051】
本願明細書中で、質量平均分子量Mwは、他に記載がない限り、サイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography, SEC)により、溶出液としてテトラヒドロフラン+0.1質量%トリフルオロ酢酸を用いて、流量速度1ml/分でかつカラム温度35℃で測定される。試料溶液を0.2μmフィルター(Sartorius Minisart SRP 25)に通して濾過し、それにより場合により生じうるゲル分を除去した後で、該試料を溶出液中で2mg/mlの濃度に希釈し、そのうち100μlを注入する。カラムとして、内径7.5mmの3つのカラムを以下のように組み合わせる:5cm前置カラム(Plgel 10μ Guard 前置カラム)、これに引き続き2つの30cm分離カラム(それぞれPlgel 10μ Mixed B)。検出を、示差屈折率検出器Agilent 1100、UV光度計Agilent 1100 VWD、PSS SLD7000-BI-MwA(UV/254nm/Agilent)を用いて行った。較正は、分子量M=580〜M=7,500,000のPolymer Laboratories社製の分布の狭いポリスチレン標準並びにヘキシルベンゼン(M=162)を用いて実施した。溶出範囲外の値は、外挿により求めた。
【0052】
分子量測定に前接続された濾過により、場合により生じる得るポリマーのゲル分が除去されるため、示された値はゾル分に関するものである。
【0053】
ポリマーの不溶性分は、ソックスレー装置においてテトラヒドロフランで4時間抽出し、残滓を恒量になるまで乾燥した後、残留する残滓を秤量することにより測定されることができる。
【0054】
第一段の後、使用されたモノマーの少なくとも90%、有利には少なくとも95%、特に有利には少なくとも98%が反応している。
【0055】
第二段、及び場合によりそれに引き続くさらなる段におけるモノマーフィードは、通常は以下の通り:
(A2)少なくとも1の(メタ)アクリル酸アルキルエステル 1〜100、有利には2〜95、特に有利には5〜90質量%、極めて特に有利には10〜80質量%、
(B2)20個までのC原子を有する少なくとも1のビニル芳香族化合物 0〜70、有利には0〜60、特に有利には0〜50質量%、
(C2)少なくとも1のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート 0〜20、有利には0〜15、特に有利には0〜10質量%、
(D2)20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル、20個までのC原子を含むカルボン酸のビニルエステル、10個までのC原子を有するハロゲン化ビニル、及び1〜10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテルからなる群から選択された、少なくとも1のラジカル重合性化合物 0〜40、有利には0〜30、特に有利には0〜25、極めて特に有利には0〜20質量%、
(E2)少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸 0〜5、有利には0〜3、特に有利には0〜1、極めて特に有利には0〜0.5、特に0質量%、
(F2)少なくとも1の架橋剤 0〜3.5質量%、有利には0〜2.5、特に有利には0〜1.5、極めて特に有利には0〜1質量%、及び
(G2)0〜10、有利には1〜10、特に有利には2〜10、極めて特に有利には5〜10質量%、
(H2)0〜20、有利には0〜10、特に有利には0〜5、極めて特に有利には0質量%、
(I2)0〜20、有利には0〜10、特に有利には0〜5、極めて特に有利には0質量%
であり、その際、第二段及びさらなる段において計量供給されるモノマーに関する合計は常に100質量%である。
【0056】
第一段のモノマー(A1)〜(I1)の合計対第二及びさらなる段のモノマー(A2)〜(I2)の合計の質量比は、5:95〜70:30、有利には10:90〜70:30、特に有利には20:80〜65:35、極めて特に有利には30:70〜60:40、特に40:60〜60:40である。
【0057】
この第二段に、場合によりさらに、1以上のモノマー(A2)〜(I2)とのラジカル重合の1以上の段が引き続くことができる。
【0058】
少なくとも1の乳化剤の存在で作業された場合、最終段から得られた生成物は、通常は、50〜300nm、有利には60〜250、特に有利には70〜200nmの粒径を有する。
【0059】
乳化剤の不在で作業された場合には、最終段から得られたポリマーの粒径は、500nmまで、有利には400nmまでであり得る。
【0060】
第一段から第二段への粒子の直径の増加は、第一段及び第二段の重合導入されたモノマー量に依存する。通常は、第一段から第二段への粒子の直径の増加は5〜50%であり、有利には10〜40%であり、特に有利には20〜35%であり、極めて特に有利には25〜35%であり、特に30%である。
【0061】
最終段から得られた生成物は、通常は50,000〜300,000g/モルの、ゾル分に関する質量平均分子量Mwを有する。
【0062】
通常、最終段から得られた生成物の粒子は、乳化剤が多いほど、また、第一段からの生成物が多く存在しているほど、小さくなる。
【0063】
ポリマー分散液は、自体公知の方法で、一般に公知の乳化重合法により、モノマーから通常の乳化−及び分散助剤及び重合開始剤を用いて製造することができる。
【0064】
ラジカル水性乳化重合を実施するための分散剤として、全ての段においてラジカル重合に供給されるラジカル重合性モノマーの全量に対して0〜3.5質量%、有利には0〜3質量%、特に有利には0.1〜2、極めて特に有利には0.1〜1.5、特に0.1〜1質量%の量の、慣用の乳化剤が該当する。少なくとも1の乳化剤が存在していることが有利である。
【0065】
本願明細書の意味合いにおいて、有機相と水性相との間の界面張力の低減によりこれらの相の分散液を安定化できる化合物が乳化剤と称される。
【0066】
他の慣用の乳化剤は、例えばC8〜C20−アルキルスルホネート、−スルフェート、−ホスホネート、−ホスフェート及び−カルボキシレート、例えば高級脂肪アルコールスルフェート、例えばNa−n−ラウリルスルフェートのアンモニウム−又はアルカリ金属塩、又は、C8〜C20−アルキルベンゼンスルホネート、−スルフェート、−ホスホネート、−ホスフェート及び−カルボキシレートのアンモニウム−又はアルカリ金属塩、アルコキシ化、有利には3〜30のエトキシ化度を有するエトキシ化C8〜C12−アルキルフェノール、並びに、アルコキシ化、有利には5〜50のエトキシ化度を有するエトキシ化C8〜C25−脂肪アルコールである。このアルコキシ化アルコールは、エステル化されて、対イオンとしてアンモニウム−又はアルカリ金属イオンを有する、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、ポリホスフェート又はホスホネートとして存在していてもよい。
【0067】
その他の好適な乳化剤は、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV巻, Makromolekulare Stoffe, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1961, 第192頁〜第209頁に記載されている。
【0068】
有利に、本発明により使用される乳化剤は、イオン性、特にアニオン性の乳化剤であるか、又はその組合せである。
【0069】
有利な一実施態様において、乳化剤として、ラジカル重合の際にポリマー中に組み込まれるものが使用される。これは、通常は、有利にはアリル、アクリレート、メタクリレート及びビニルエーテルからなる群から選択された少なくとも1のラジカル重合性基と、有利には上記基から選択された少なくとも1の乳化作用を有する基とを有する化合物である。
【0070】
これらは例えば、Laporte社製の商標Bisomer(R) MPEG 350 MA、Hitenol(R) BC-20 (APEO)、Hitenol(R) BC-2020、Hitenol(R) KH-10又はDai-Ichi Kogyo Seiyaku Co., Ltd.社製のNoigen(R) RN-50 (APEO)、Croda社製のMaxemul(R) 6106、Maxemul(R) 6112、Maxemul(R) 5010、Maxemul(R) 5011、Rhodia社製のSipomer(R) PAM 100、Sipomer(R) PAM 200、Sipomer(R) PAM 300、Sipomer(R) PAM 4000、Sipomer(R) PAM 5000、Adeka社製のAdeka(R) Reasoap(R) PP-70、Adeka(R) Reasoap(R) NE-10、Adeka(R) Reasoap(R) NE-20、Adeka(R) Reasoap(R) NE-30、Adeka(R) Reasoap(R) NE-40、Adeka(R) Reasoap(R) SE-10N、Adeka(R) Reasoap(R) SE-1025A、Adeka(R) Reasoap(R) SR-10、Adeka(R) Reasoap(R) SR-1025、Adeka(R) Reasoap(R) SR-20、Adeka(R) Reasoap(R) ER-10、Adeka(R) Reasoap(R) ER-20、Adeka(R) Reasoap(R) ER-30、Adeka(R) Reasoap(R) ER-40、BASF社製のPluriol(R) A 010 R、Pluriol(R) A 12 R、Pluriol(R) A 23 R、Pluriol(R) A 46 R、Pluriol(R) A 750 R、Pluriol(R) A 950 R、Pluriol(R) A 590 I、Pluriol(R) A 1190 I、Pluriol(R) A 590 V、Pluriol(R) A 1190 V、Pluriol(R) A 5890 V、Pluriol(R) A 308 R及びDAA ES 8761、Kao社製のLatemul(R) S 180 A及びLatemul (R)S 180、Sanyou Kasei社製のEleminol(R) JS-2、Daiichi Kogyou Seiyaku社製のAquaron(R) HS-1025並びにLubrizol社製のC12-AMPSの、組み込み可能な乳化剤である。
【0071】
重合開始剤として、水性媒体中でラジカル乳化重合を生じさせることのできる全てのものが該当する。該重合開始剤は、モノマーに対して一般に0.1〜10質量%、有利には0.2〜4質量%の量で使用される。慣用の化合物は、無機ペルオキシド、例えばナトリウム−及びアンモニウムペルオキシジスルフェート及び過酸化水素、有機ペルオキシド、例えばベンゾイルペルオキシド又はtert.−ブチルヒドロペルオキシド、並びにアゾ化合物、例えばアゾイソ酪酸ジニトリルである。これらの開始剤は、ラジカル乳化重合の際に慣用の50〜100℃の反応温度に関して好適である。より低い、例えば40〜60℃の反応温度が望ましい場合には、レドックス系、例えばペル化合物と還元性共開始剤であるヒドロキシメタンスルフィン酸、アスコルビン酸のナトリウム塩又は鉄II塩とからの組合せが有利である。
【0072】
ラジカル乳化重合法の後の水性ポリマー分散液の製造は、自体公知である(Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV巻, Makromolekulare Stoffe, I.c., 第133頁以下を参照のこと)。
【0073】
特に、モノマーの一部(一般には20質量%まで)、水、乳化剤及び開始剤からなる装入物から出発するフィード法が好適であることが実証された。モノマー残分及び場合により乳化形の調節剤、並びにさらに他の重合開始剤の水溶液が、重合に応じて添加される。
【0074】
ここで、モノマーを複数のフィードに分け、かつ計量供給速度を変え、かつ/又は1以上のモノマーの含分を変えることもできる。
【0075】
可能な一実施態様において、反応混合物中でモノマーの濃度と架橋剤の濃度とを実質的に一定にするが、但し調節剤(連鎖移動剤)の量を変えることによって、内部範囲の架橋度と外部範囲の架橋度とを相違させることができる。
【0076】
重合において調節剤が存在することにより、連鎖停止及び新たな鎖の開始によって、そのように生じた新規のラジカルのために、通常は、生じるポリマーの分子量が低減され、かつ架橋剤が存在している場合には架橋箇所の数(架橋密度)も低減する。重合の過程で調節剤の濃度が高められた場合、架橋密度は重合の過程でさらに低減される。
【0077】
このような分子量調節剤は公知であり、例えばメルカプト化合物であってよく、例えば有利には、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、イソ−オクチルメルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸、二量体α−メチルスチレン、2−エチルヘキシル−チオグリコール酸エステル(EHTG)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MTMO)又はテルピノールである。該分子量調節剤は公知であり、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Bd. XIV/1 , 第297頁以下, 1961, Stuttgartに記載されている。
【0078】
本発明の有利な一実施態様において、重合はEP853636又はUS3804881に記載されている通りに行われてよい。これら2つの刊行物の開示は、これを以て参照により明確に引用される。
【0079】
そのようにして得られた水性ポリマー分散液は、有利には35〜65、特に有利には38〜55質量%の固体含分を有する。
【0080】
該ポリマー分散液は安定性の高さが顕著であり、ほとんど凝塊物の形成を示さない。ヒドロキシ価、固体含分及び分子量が同じである場合、本発明によるポリマー分散液は、本発明によらずに得られた同等のポリマー分散液よりも低い粘度を有する。
【0081】
ガラス転移温度Tgは、本願明細書中では有利に、ISO 11357−2−3−7により、示差走査熱量測定(DSC)により、有利には20℃/分の加熱速度で測定される。
【0082】
有利な一実施態様において、第一段から得られたコポリマーは、40〜150℃、有利には50〜120℃、特に有利には50〜100℃のガラス転移温度を有し、かつ最終段から得られた生成物は、少なくとも40℃だけより低いガラス転移温度を有する。このようなポリマー分散液は、有利には基材を被覆するための被覆剤において使用することができる。
【0083】
そのような被覆剤のために使用されるポリマー分散液の最低造膜温度(MFT)は、有利には5℃以下である。その際、それにもかかわらず、得られた皮膜は非粘着性である。
【0084】
最低造膜温度の測定は、分散液をプレート上に広げ、該プレートの端部を加熱し、かつもう一方の端部を冷却するという方法で行われる(DIN ISO 2115:2001−04)。目視による評価、及びプレートに沿った密な間隔の温度センサにより、最低造膜温度を求めることができる。
【0085】
もう1つの有利な実施態様において、第一段から得られたコポリマーは、0℃以下、有利には0〜−40℃、特に有利には−5℃〜−25℃のガラス転移温度を有し、かつ、最終段から得られた生成物は、0℃以下、有利には0〜−40℃、特に有利には−5℃〜−25℃のガラス転移温度を有する。このようなポリマー分散液は、有利には、基材の接着のための接着剤として使用することができる。最低造膜温度は、この使用においては当然のことながらそれほど重要でない。
【0086】
該ポリマー分散液は、単一成分系又は二成分系の被覆剤のための、例えばラッカー、保護コーティング、道路標識、装飾コーティング、ペイント、被覆のためのバインダーとして使用できる。
【0087】
種々の使用に関して、好適な助剤、例えば均展剤、増粘剤、消泡剤、フィラー、顔料、顔料用の分散助剤等を添加することができる。
【0088】
被覆は、該被覆剤を適当な基材、例えば木材、コンクリート、金属、ガラス、プラスチック、セラミックス、モルタル、石、アスファルト、テキスタイル、ペイントされた、プライマー塗布された、又は風化した基体に施与することにより得ることができる。
【0089】
二成分系の被覆剤の場合には、他の成分として架橋剤が必須であり、これは例えば、当業者にこの目的のために公知であるポリイソシアネートである。
【0090】
基材への施与は、公知の方法で、例えば吹き付け、ヘラ塗、ナイフ塗布、はけ塗、ロール塗、圧延又は注型により行うことができる。被覆厚さは、通常は約3〜1000g/m2、有利には10〜200g/m2の範囲内である。引き続き、分散液の揮発性成分が除去される。このプロセスは、所望の場合には1回又は複数回繰り返されてよい。
【0091】
分散液中に含まれる水を除去するために、基材への施与後に、例えばトンネル炉中か又はフラッシュオフにより乾燥される。乾燥はNIR線により行うこともでき、その際、ここでは、760nm〜2.5μm、有利には900〜1500nmの波長範囲内の電磁線がNIR線と称される。乾燥は、100℃までの周囲温度の温度で、数分〜数日の期間にわたり行われてよい。
【0092】
特に、本発明によるポリマー分散液は、特別な一実施態様において、ラッカーのためのバインダーとして、及びペイントのためのバインダーとして好適である。
【0093】
防食ラッカーとしての適用においては、該ポリマー分散液に加えてさらに、防食剤、例えば腐食阻害剤又は活性防食顔料、例えばリン酸亜鉛が含まれていてもよい。
【0094】
該ポリマー分散液を用いて、防食のために、基材として鉄、鋼、Zn、Zn合金、Al又はAl合金の表面が処理される。該表面は未被覆であってもよいし、亜鉛、アルミニウム又はその合金でコーティングされていてもよく、溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっき、シェラダイズ又はプライマーで予備被覆されていてもよい。
【0095】
分散液ペイントとも呼称されるペイントは、ラッカー−及びペイント工業の極めて大きな製品群の一つである(Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, 第4版, 第15巻, Verlag Chemie, Weinheim 1978, 第665頁を参照のこと)。分散液ペイントは、通常はバインダーとして造膜性ポリマー、及び色を付与する成分として少なくとも1の無機顔料、さらには無機フィラー及び助剤、例えば消泡剤、増粘剤、湿潤剤及び場合により造膜助剤を含有する。
【0096】
該ポリマー分散液のもう1つの重要な特性は、ペイントの良好な耐ブロッキング性であり、これは、圧力負荷及び高められた温度下であっても塗膜の粘着がわずかであること(良好な耐ブロッキング性)と理解される。
【0097】
本発明によるペイント(分散液ペイント)は、顔料及びフィラーを、有利には、顔料体積濃度(PVK)が15%〜85%、特に有利には25%〜55%となるような量で含有する。
【0098】
典型的な顔料は、例えば二酸化チタン(有利にはルチル型)、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛、三酸化アンチモン、リトポン(硫化亜鉛+硫酸バリウム)である。しかしながら該分散液ペイントは、着色顔料、例えば酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、発光顔料、亜鉛黄、亜鉛緑、ウルトラマリン、マンガン黒、アンチモン黒、マンガン紫、プルシアンブルー又はエメラルドグリーンを含有してもよい。無機顔料に加えて、本発明による分散液ペイントは、有機着色顔料、例えばセピア、ガンボージ、バンダイクブラウン、トルイジンレッド、パラレッド、ハンザイエロー、インジゴ、アゾ染料、アントラキノイド及びインジゴイド染料並びにジオキサジン、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料及び金属錯体顔料を含有することができる。
【0099】
好適なフィラーには、アルモシリケート、例えば長石、シリケート、例えばカオリン、タルク、マイカ、マグネサイト、アルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウム(例えば方解石又はチョークの形)、炭酸マグネシウム、ドロマイト、アルカリ土類金属硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、二酸化ケイ素等が含まれる。該フィラーは、単一成分として使用されてもよい。しかしながら実地においては、フィラー混合物、例えば炭酸カルシウム/カオリン、炭酸カルシウム/タルクの有効性が実証された。
【0100】
隠蔽力の向上及び白色顔料の削減のために、しばしば微粉フィラー、例えば微粉炭酸カルシウム、又は、種々の粒径を有する種々の炭酸カルシウムの混合物が使用される。色調及び色の深みの隠蔽力を調節するために、有利には着色顔料とフィラーとからの混合物が使用される。
【0101】
さらに、本発明による水性ポリマー分散液から、容易に(例えば凍結−及び噴霧乾燥)相応するポリマー粉末が入手可能である。この本発明により入手可能なポリマー粉末は、同様に、接着剤、シーラント、樹脂モルタル、紙塗工液、繊維不織布、塗料及び有機基材のための被覆剤を製造する際の成分として、並びに無機バインダーの改質のために使用することができる。
【0102】
以下、本発明を実施例をもとに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0103】
固体含分を、全般的に、所定量の水性ポリマー分散液(約1g)を、内径約5cmのアルミニウム坩堝内で、140℃で乾燥棚中で恒量になるまで乾燥させることにより測定した。測定を2回別個に行った。実施例に示されている値は、それぞれのこれら2つの測定結果の平均値を表す。
【0104】
得られた分散液の粘度を、動的に、23℃でかつ100s-1の剪断速度で、DIN EN ISO 3219により測定した。
【実施例】
【0105】
水性ポリマー分散液の製造
実施例1(B1):
計量供給装置及び温度調節部を備えた重合容器中に、20〜25℃(室温)で窒素雰囲気下に、
脱イオン水 290.9g、及び
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 12.0g
を装入し、撹拌下に80℃に加熱した。この温度に達したら、ナトリウムペルオキソジスルフェートの7質量%水溶液25.7gを添加し、2分間撹拌した。引き続き、この温度の保持下にフィード1を40分以内で一定流量で連続的に計量供給した。フィード1の終了後に、この重合混合物に水12gを添加した。その後、この重合混合物を80℃でさらに10分間、後反応させた。それに引き続き、この重合混合物に3質量%アンモニア水溶液3.1gを添加した。
【0106】
それに引き続き、一定流量で90分以内に、フィード2を連続的に計量供給した。
【0107】
フィード2の終了後、この重合混合物に水12gを添加した。その後、この重合混合物を80℃でさらに100分間、後反応させた。
【0108】
引き続き、得られた水性ポリマー分散液を室温に冷却し、脱イオン水62.9gと混合し、125μmフィルターを通して濾過した。
【0109】
フィード1(以下のものからの均質混合物):
脱イオン水 76.2g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 3.0g
エチルヘキシルチオグリコラート 2.16g
ヒドロキシエチルメタクリレート 13.5g
ブチルアクリレート 13.5g
スチレン 13.5g
メチルメタクリレート 94.5g
フィード2(以下のものからの均質混合物):
脱イオン水 124.4g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 6.0g
n−ブチルアクリレート 157.5g
メチルメタクリレート 157.5g
【0110】
得られた水性ポリマー分散液は、42.5質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は78nmであった。
【0111】
得られた水性ポリマー分散液は、6mg KOH/gのヒドロキシ価及び0.3mg KOH/gの酸価を有していた。
【0112】
比較例1(V1):
比較例1の製造を、実施例1の製造と同様に行ったが、但し、フィード1において、メタクリル酸13.5gをヒドロキシエチルメタクリレートの代わりに使用し、かつ、3質量%アンモニア水溶液3.1gの代わりに、3質量%アンモニア水溶液5.0gを添加した。
【0113】
得られた水性ポリマー分散液は、42.6質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は74nmであった。
【0114】
該分散液をゴム型へ注ぎ出し、室温で恒量になるまで乾燥させることにより得られる自由皮膜の吸水性を測定(皮膜を水中に24時間にわたり浸漬し、質量変化を測定)したところ、実施例1に関する吸水性は明らかに比較例1の吸水性を下回ることが明らかとなった(V1に関しては、乾燥皮膜の質量に対して30%超であり、B1に関しては、乾燥皮膜の質量に対して10%未満)。
【0115】
実施例2(B2):
計量供給装置及び温度調節部を備えた重合容器中に、20〜25℃(室温)で窒素雰囲気下に、
脱イオン水 289.6g、及び
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 12.0g
25質量%アンモニア水溶液 1.1g
を装入し、撹拌下に80℃に加熱した。この温度に達したら、ナトリウムペルオキソジスルフェートの7質量%水溶液25.7gを添加し、2分間撹拌した。引き続き、この温度の保持下にフィード1を40分以内で一定流量で連続的に計量供給した。フィード1の終了後、この重合混合物を80℃でさらに10分間、後反応させた。その後、この重合混合物に2質量%アンモニア水溶液13.5gを10分以内に一定流量で連続的に計量供給した。
【0116】
それに引き続き、一定流量で90分以内に、フィード2を連続的に計量供給した。
【0117】
フィード2の終了後、この重合混合物に水12gを添加した。その後、この重合混合物を80℃でさらに100分間、後反応させた。
【0118】
引き続き、得られた水性ポリマー分散液を室温に冷却し、アジピン酸ジヒドラジドの18.7質量%水溶液57.8gと混合し、125μmフィルターを通して濾過した。
【0119】
フィード1(以下のものからの均質混合物):
脱イオン水 33.0g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 3.0g
エチルヘキシルチオグリコラート 2.16g
ジアセトンアクリルアミドの20質量%水溶液 54.0g
ブタンジオールモノアクリレート 10.8g
n−ブチルアクリレート 13.5g
スチレン 13.5g
メチルメタクリレート 86.4g
フィード2(以下のものからの均質混合物):
脱イオン水 116.5g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 6.0g
ジアセトンアクリルアミドの20質量%水溶液 54.0g
n−ブチルアクリレート 217.8g
メチルメタクリレート 86.4g
【0120】
得られた水性ポリマー分散液は、42.5質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は91nmであった。粘度を測定したところ39mPasであった。
【0121】
比較例2(V2):
計量供給装置及び温度調節部を備えた重合容器中に、20〜25℃(室温)で窒素雰囲気下に、
脱イオン水 289.6g、及び
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 12.0g
25質量%アンモニア水溶液 1.1g
を装入し、撹拌下に80℃に加熱した。この温度に達したら、ナトリウムペルオキソジスルフェートの7質量%水溶液25.7gを添加し、2分間撹拌した。引き続き、この温度の保持下にフィード1を150分以内で一定流量で連続的に計量供給した。その後、この重合混合物に2質量%アンモニア水溶液13.5gを10分以内に一定流量で連続的に計量供給した。
【0122】
それに引き続き、この重合混合物に水12gを添加した。その後、この重合混合物を80℃でさらに90分間、後反応させた。
【0123】
引き続き、得られた水性ポリマー分散液を室温に冷却し、アジピン酸ジヒドラジドの18.7質量%水溶液57.8gと混合し、125μmフィルターを通して濾過した。
【0124】
フィード1(以下のものからの均質混合物):
脱イオン水 149.5g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 9.0g
エチルヘキシルチオグリコラート 2.16g
ジアセトンアクリルアミドの20質量%水溶液 108.0g
ブタンジオールモノアクリレート 10.8g
n−ブチルアクリレート 231.3g
スチレン 13.5g
メチルメタクリレート 172.8g
【0125】
得られた水性ポリマー分散液は、42.6質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は77nmであった。粘度を測定したところ75mPasであった。
【0126】
このポリマー分散液により、実施例2により製造されたポリマー分散液とは対照的に、混濁した皮膜のみが得られた。
【0127】
実施例3(B3):
計量供給装置及び温度調節部を備えた重合容器中に、20〜25℃(室温)で窒素雰囲気下に、
脱イオン水 290.9g、及び
Adeka(R) Reasoap(R) SR-1025(Asahi Denka Co) 14.4g
を装入し、撹拌下に80℃に加熱した。この温度に達したら、ナトリウムペルオキソジスルフェートの7質量%水溶液25.7gを添加し、2分間撹拌した。
【0128】
引き続き、この温度の保持下にフィード1を40分以内で一定流量で連続的に計量供給した。フィード1の終了後、この重合混合物に脱イオン水12.0gを添加した。引き続き、この重合混合物を80℃でさらに10分間、後反応させた。その後、この重合混合物に3質量%アンモニア水溶液1.9gを10分以内に一定流量で連続的に計量供給した。
【0129】
それに引き続き、90分以内で一定流量で、フィード2を連続的に計量供給した。フィード2の開始40分後に、フィード2の継続に並行して、この重合混合物に3質量%アンモニア水溶液0.9gを10分以内に一定流量で連続的に計量供給した。
【0130】
フィード2の終了後、この重合混合物に水12gを添加した。その後、この重合混合物を80℃でさらに90分間、後反応させた。その後、この重合混合物に5質量%アンモニア水溶液1.7gを10分以内で一定流量で連続的に計量供給した。
【0131】
引き続き、得られた水性ポリマー分散液を室温に冷却し、アジピン酸ジヒドラジドの13.2質量%水溶液40.9gと混合し、125μmフィルターを通して濾過した。
【0132】
フィード1(以下のものからの均質混合物):
脱イオン水 33.1g
Adeka(R) Reasoap(R) SR-1025(Asahi Denka Co) 3.6g
エチルヘキシルチオグリコラート 2.16g
ジアセトンアクリルアミドの20質量%水溶液 54.0g
ヒドロキシエチルメタクリレート 10.8g
スチレン 13.5g
メチルメタクリレート 99.9g
フィード2(以下のものからの均質混合物):
脱イオン水 162.8g
Adeka(R) Reasoap(R) SR-1025(Asahi Denka Co) 7.2g
n−ブチルアクリレート 217.8g
メチルメタクリレート 97.2g
【0133】
得られた水性ポリマー分散液は、42.6質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は97nmであった。粘度を測定したところ42mPasであった。
【0134】
実施例4(B4):
計量供給装置及び温度調節部を備えた重合容器中に、20〜25℃(室温)で窒素雰囲気下に、
脱イオン水 493.5g、及び
BASF Lipamin OK 9.0g
を装入し、撹拌下に70℃に加熱した。この温度に達したら、アゾ開始剤V50(Wako Chemicals GmbH)の7質量%水溶液154.3gを添加し、5分間撹拌した。引き続き、この温度の保持下にフィード1を40分以内で一定流量で連続的に計量供給した。フィード1の終了後、この重合混合物に脱イオン水24.0gを添加した。引き続き、この重合混合物を70℃でさらに20分間、後反応させた。
【0135】
それに引き続き、90分間以内で一定流量でフィード2を連続的に計量供給した。
【0136】
フィード2の終了後、この重合混合物に水24gを添加した。その後、この重合混合物を70℃でさらに100分間、後反応させた。
【0137】
引き続き、得られた水性ポリマー分散液を室温に冷却し、アジピン酸ジヒドラジドの18.7質量%水溶液115.5gと混合し、125μmフィルターを通して濾過した。
【0138】
フィード1(以下のものからの均質混合物):
脱イオン水 66.0g
BASF Lipamin(R) OK 2.25g
エチルヘキシルチオグリコラート 4.32g
ジアセトンアクリルアミドの20質量%水溶液 108.0g
ブタンジオールモノアクリレート 21.6g
スチレン 27.0g
メチルメタクリレート 172.8g
フィード2(以下のものからの均質混合物):
脱イオン水 285.9g
BASF Lipamin(R) OK 4.5g
ジアセトンアクリルアミドの20質量%水溶液 108.0g
n−ブチルアクリレート 435.6g
メチルメタクリレート 172.8g
【0139】
得られた水性ポリマー分散液は、41.6質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は140nmであった。粘度を測定したところ10mPasであった。
【0140】
実施例5(B5):
実施例5の製造を、実施例1の製造と同様に行ったが、但し、フィード1において、n−ブチルアクリレート13.5gの代わりにn−ブチルアクリレート85.5gを使用し、かつ、メチルメタクリレート86.4gの代わりにメチルメタクリレート14.4gを使用し、アジピン酸ジヒドラジドの18.7質量%水溶液57.8gの代わりにアジピン酸ジヒドラジドの12質量%水溶液45.0gを使用し、かつフィード2は、以下:
脱イオン水 159.7g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 6.0g
エチルヘキシルアクリレート 315.0g
からの均質混合物からなっていた。
【0141】
得られた水性ポリマー分散液は、40.2質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は93nmであった。得られたポリマー分散液の粘度は、73mPasであった。この分散液を例えばガラス板にドクターブレードコーティングし(ボックス型ドクター(Kastenrakel)を用いて、皮膜厚200μm、湿潤)、かつ室温で24時間乾燥させることにより、粘着性の皮膜を得ることができた。
【0142】
実施例6(B6):
実施例6の製造を、実施例3の製造と同様に行ったが、但し、Adeka(R) Reasoap(R) SR-1025 14.4gの代わりにラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液12.0gを装入し、アジピン酸ジヒドラジドの13.2質量%水溶液40.9gの代わりにアジピン酸ジヒドラジドの26.2質量%水溶液48.1gを使用し、フィード1は以下:
脱イオン水 77.0g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 6.9g
ジアセトンアクリルアミドの20質量%水溶液 126.0g
メタクリルアミド 9.0g
ヒドロキシエチルメタクリレート 25.2g
スチレン 22.5g
メチルメタクリレート 233.1g
からの均質混合物からなっており、かつフィード2は以下:
脱イオン水 64.6g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 2.7g
n−ブチルアクリレート 135.0g
からの均質混合物からなっていた。
【0143】
さらに、その他の相違点として、フィード1を40分ではなく90分で一定に計量供給し、フィード2を90分ではなく40分で一定に計量供給した。フィード1及び2の供給に引き続き、脱イオン水12.0gずつの添加を行い、アンモニア水溶液の添加を、反応開始から、実施例3と同じだけ離して行った。
【0144】
得られた水性ポリマー分散液は、42.4質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は99nmであった。得られたポリマー分散液の粘度は39mPasであった。
【0145】
実施例7(B7):
実施例7の製造を、実施例6の製造と同様に行ったが、但し、ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液12.0gの代わりにラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液6.0gを装入し、フィード2において、脱イオン水64.6gの代わりに脱イオン水71.6gを使用し、ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液2.7gの代わりにラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液1.35gを使用し、かつ、フィード1は以下:
脱イオン水 77.0g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 3.45g
ジアセトンアクリルアミドの20質量%水溶液 126.0g
ヒドロキシエチルメタクリレート 45.0g
スチレン 11.7g
メチルメタクリレート 233.1g
からの均質混合物からなっていた。
【0146】
得られた水性ポリマー分散液は、42.7質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は102nmであった。得られたポリマー分散液の粘度は23mPasであった。
【0147】
実施例8(B8):
実施例8の製造を、実施例3の製造と同様に行ったが、但し、フィード1は以下:
脱イオン水 33.0g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 3.0g
エチルヘキシルチオグリコラート 2.16g
ジアセトンアクリルアミドの20質量%水溶液 54.0g
ヒドロキシエチルメタクリレート 21.6g
グリシジルメタクリレート 18.0g
スチレン 13.5g
メチルメタクリレート 71.1g
からの均質混合物からなっていた。
【0148】
試料採取により、第一段の生成物は13,900g/モルの質量平均分子量Mw及び60nmの質量平均粒径を有していることが判明した。
【0149】
また、フィード2は以下:
脱イオン水 159.7g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 6.0g
n−ブチルアクリレート 315.0g
からの均質混合物からなっていた。
【0150】
得られた水性ポリマー分散液は、43.1質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は143nmであった。得られたポリマー分散液の粘度は21mPasであった。得られたポリマー分散液は、約204000g/モルの、ゾル割合に関する質量平均分子量を有していた。
【0151】
実施例9(B9):
実施例9の製造を、実施例8の製造と同様に行ったが、但し、フィード1において、ヒドロキシエチルメタクリレート21.6gの代わりにヒドロキシエチルアクリレート21.6gを使用した。
【0152】
得られた水性ポリマー分散液は、42.9質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は153nmであった。得られたポリマー分散液の粘度は22mPasであった。
【0153】
実施例10(B10):
実施例10の製造を、実施例8の製造と同様に行ったが、但し、フィード1は以下:
脱イオン水 5.5g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 0.51g
エチルヘキシルチオグリコラート 0.36g
ジアセトンアクリルアミドの20質量%水溶液 9.0g
ヒドロキシエチルメタクリレート 1.8g
グリシジルメタクリレート 1.5g
スチレン 2.25g
メチルメタクリレート 15.2g
からの均質混合物からなっており、
かつ、フィード2は以下:
脱イオン水 214.8g
ラウリル硫酸ナトリウムの15質量%水溶液 8.1g
n−ブチルアクリレート 427.5g
からの均質混合物からなっていた。
【0154】
さらに、その他の相違点として、フィード1を40分ではなく5分で一定に計量供給し、フィード2を90分ではなく125分で一定に計量供給した。フィード1及び2の供給に引き続き、脱イオン水12.0gずつの添加を行い、アンモニア水溶液の添加を、反応開始から、実施例3と同じだけ離して行い、さらに、アジピン酸ジヒドラジドの13.2質量%水溶液40.9gの代わりにアジピン酸ジヒドラジドの2.5質量%水溶液36.4gを使用した。
【0155】
得られた水性ポリマー分散液は、43.0質量%の固体含分を有していた。該ポリマー分散液の質量平均粒径は128nmであった。得られたポリマー分散液の粘度は23mPasであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の少なくとも二段の乳化重合:
第一段において、以下:
(A1)少なくとも1の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(B1)場合により、20個までのC原子を有する少なくとも1のビニル芳香族化合物、
(C1)少なくとも1のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、
(D1)場合により、20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル、20個までのC原子を含むカルボン酸のビニルエステル、10個までのC原子を有するハロゲン化ビニル、及び1〜10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテルからなる群から選択された、少なくとも1のラジカル重合性化合物、
(E1)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、
(F1)場合により、少なくとも1の架橋剤、
(G1)場合により、(メタ)アクリル酸2−(2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−エチルエステル(ウレイドエチル(メタ)アクリレート)、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)及びジアセトンメタクリルアミドからなる群から選択された少なくとも1の化合物、
(H1)場合により、(メタ)アクリレート基及びエポキシ基を有する少なくとも1の化合物、及び
(I1)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド
を、少なくとも1の開始剤の存在で、かつ場合により少なくとも1の乳化剤の存在で、並びに場合により少なくとも1の調節剤の存在で反応させるが、
但し、第一段から得られたコポリマーが、
・10mg KOH/g ポリマー以下の酸価、
・2〜100mg KOH/g ポリマーのヒドロキシ価、
・20〜300、有利には30〜200nmの粒径、及び
・5,000〜200,000g/モルの質量平均分子量
を有しており、
かつ、モノマー(C1)と(I1)との合計が0.5〜20質量%であるものとし、
引き続き、後続段において、第一段において製造されたコポリマーの存在で、以下:
(A2)少なくとも1の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(B2)場合により、20個までのC原子を有する少なくとも1のビニル芳香族化合物、
(C2)場合により、少なくとも1のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、
(D2)場合により、20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル、20個までのC原子を含むカルボン酸のビニルエステル、10個までのC原子を有するハロゲン化ビニル、及び1〜10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテルからなる群から選択された、少なくとも1のラジカル重合性化合物、
(E2)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、
(F2)場合により、少なくとも1の架橋剤、及び
(G2)場合により、(メタ)アクリル酸2−(2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−エチルエステル(ウレイドエチル(メタ)アクリレート)、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)及びジアセトンメタクリルアミドからなる群から選択された少なくとも1の化合物、
(H2)場合により、(メタ)アクリレート基及びエポキシ基を有する少なくとも1の化合物、及び
(I2)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド
をラジカル重合させ、
場合により引き続き、1以上のさらなる段で、少なくとも1のモノマーをラジカル重合させ、
その際、任意の少なくとも1の乳化剤の量が、全ての段においてラジカル重合に供給されるラジカル重合性モノマーの全量に対して0〜3.5質量%であるが、
但し、
・第一段のモノマー(A1)〜(I1)の合計対後続段のモノマー(A2)〜(I2)の合計の質量比が、5:95〜70:30であり、
・最終段から得られた生成物が50〜500nmの粒径を有しており、
・最終段の生成物の酸価が、第一段の生成物の酸価以下であり、かつ、
・最終段の生成物のヒドロキシ価が、第一段の生成物のヒドロキシ価以下であるものとする、
により得られる少なくとも1のポリマー分散液を含有する、被覆剤。
【請求項2】
モノマー(A2)が、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及び3−プロピルヘプチルアクリレートからなる群から選択されている、請求項1記載の被覆剤。
【請求項3】
モノマー(B2)が、スチレン及びα−メチルスチレンからなる群から選択されている、請求項1又は2記載の被覆剤。
【請求項4】
モノマー(C1)が、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルエステル及び(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピルエステルからなる群から選択されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項5】
モノマー(G1)が存在しており、かつ該モノマー(G1)がジアセトンアクリルアミドである、請求項1から4までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項6】
乳化剤が、イオン性乳化剤、有利にはアニオン性乳化剤である、請求項1から5までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項7】
5℃以下の最低造膜温度を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項8】
第一段から得られたコポリマーが40〜150℃のガラス転移温度を有しており、かつ、第二段から得られた生成物が少なくとも40℃だけより低いガラス転移温度を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項9】
第一段から得られたコポリマーが0℃以下のガラス転移温度を有しており、かつ、第二段から得られた生成物が0℃以下のガラス転移温度を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載のポリマー分散液の製造法において、
少なくとも二段の乳化重合を実施し、
その際、第一段において、以下:
(A1)少なくとも1の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(B1)場合により、20個までのC原子を有する少なくとも1のビニル芳香族化合物、
(C1)少なくとも1のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、
(D1)場合により、20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル、20個までのC原子を含むカルボン酸のビニルエステル、10個までのC原子を有するハロゲン化ビニル、及び1〜10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテルからなる群から選択された、少なくとも1のラジカル重合性化合物、
(E1)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、
(F1)場合により、少なくとも1の架橋剤、
(G1)場合により、(メタ)アクリル酸2−(2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−エチルエステル(ウレイドエチル(メタ)アクリレート)、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)及びジアセトンメタクリルアミドからなる群から選択された少なくとも1の化合物、
(H1)場合により、(メタ)アクリレート基及びエポキシ基を有する少なくとも1の化合物、及び
(I1)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド
を、少なくとも1の開始剤の存在で、かつ場合により少なくとも1の乳化剤の存在で、並びに場合により少なくとも1の調節剤の存在で反応させるが、
但し、第一段から得られたコポリマーが、
・10mg KOH/g ポリマー以下の酸価、
・2〜100mg KOH/g ポリマーのヒドロキシ価、
・20〜300、有利には30〜200nmの粒径、及び
・5,000〜200,000g/モルの質量平均分子量
を有しており、
かつ、モノマー(C1)と(I1)との合計が0.5〜20質量%であるものとし、
引き続き、後続段において、第一段において製造されたコポリマーの存在で、以下:
(A2)少なくとも1の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(B2)場合により、20個までのC原子を有する少なくとも1のビニル芳香族化合物、
(C2)場合により、少なくとも1のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、
(D2)場合により、20個までのC原子を有するエチレン性不飽和ニトリル、20個までのC原子を含むカルボン酸のビニルエステル、10個までのC原子を有するハロゲン化ビニル、及び1〜10個のC原子を含むアルコールのビニルエーテルからなる群から選択された、少なくとも1のラジカル重合性化合物、
(E2)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、
(F2)場合により、少なくとも1の架橋剤、及び
(G2)場合により、(メタ)アクリル酸2−(2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−エチルエステル(ウレイドエチル(メタ)アクリレート)、アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)及びジアセトンメタクリルアミドからなる群から選択された少なくとも1の化合物、
(H2)場合により、(メタ)アクリレート基及びエポキシ基を有する少なくとも1の化合物、及び
(I2)場合により、少なくとも1のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド
をラジカル重合させ、
場合により引き続き、1以上のさらなる段で、少なくとも1のモノマーをラジカル重合させ、
その際、任意の少なくとも1の乳化剤の量が、全ての段においてラジカル重合に供給されるラジカル重合性モノマーの全量に対して0〜3.5質量%であるが、
但し、
・第一段のモノマー(A1)〜(I1)の合計対後続段のモノマー(A2)〜(I2)の合計の質量比が、5:95〜70:30であり、
・最終段から得られた生成物が50〜500nmの粒径を有しており、
・最終段の生成物の酸価が、第一段の生成物の酸価以下であり、かつ、
・最終段の生成物のヒドロキシ価が、第一段の生成物のヒドロキシ価以下であるものとする、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
プラスチック、木材、紙及び金属の、単一成分系又は二成分系の被覆のための、請求項8記載の被覆剤の使用。
【請求項12】
接着剤としての、請求項9記載の被覆剤の使用。

【公表番号】特表2013−514414(P2013−514414A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543764(P2012−543764)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069959
【国際公開番号】WO2011/073341
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】