説明

ポリマー基材上の2層バリヤー

電源に接続されている2以上の相対する電極の間に形成される処理空間において大気圧グロー放電プラズマを用い、該処理空間において前駆体と酸素を含むガス組成物を用いて、ポリマー基材を生産するためのプラズマ処理装置および方法。無機材料の第1層を、ポリマー基材上に、該ポリマー基材の表面に実質的に垂直に測定された該ポリマー基材の断面の最大山谷高低差として定義されるR−値の少なくとも100%の最大厚さ(d3)で付着させる。無機材料の第2層は第1層の上に付着させ、ここにおいて、処理空間において酸素は3%以上の濃度を有し、電源を、2以上の相対する電極間の間隙を横切るエネルギーが40J/cm以上になるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置と、処理空間において大気圧グロー放電プラズマを用いて基材を処理する方法に関する。より具体的には、本発明は、電源に接続されている2以上の相対する電極の間に形成される処理空間において大気圧グロー放電プラズマを用い、該処理空間において前駆体と酸素を含むガス組成物を用いて、ポリマー基材を生産するための方法に関する。さらなる観点において、本発明は、基材を処理するためのプラズマ処理装置であって、該プラズマ処理装置が、少なくとも2つの相対する電極および該少なくとも2つの相対する電極の間の処理空間を含み、該少なくとも2つの電極が、処理空間に大気圧グロー放電プラズマを発生させるためのプラズマ制御ユニットに接続されており、ガス供給機器が、操作中に処理空間にガス混合物を提供するように配置されている、前記プラズマ処理装置に関する。さらに他の観点において、本発明は、表面上に二重層バリヤーが提供されているポリマー基材に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、とりわけ、電子デバイス、光電池および/または半導体デバイスなどを伴う導電性ポリマーを含む、電子デバイスの包囲および/または支持基材に適用することができる。
【0003】
これまで、光学ガラスは、光学的および平坦度の要件を満たすことができ、耐熱性および耐薬品性および良好なバリヤー性を有するため、電子表示用途において基材として用いられてきた。ガラスの使用の主な不利点は、その重量、柔軟性のなさ、および脆性に関連する。このため、軟質プラスチック材料がガラスの代替として提案されてきた。
【0004】
ポリマー基材の使用の不利点は、それらの耐薬品性がより低く、バリヤー性が劣る点である。これらの基材を電子デバイスに用いる場合に必要とされる約10−6g/m×日以下の透湿度(WVTR)および約10−5cc/m×日以下の酸素透過度という要件を、単独で満たすことができるポリマー基材はない。
【0005】
ここでの難点の一つは大気プラズマの安定性である。この安定性を改善するために、さまざまな解決策、例えば、米国特許公報第6774569号、欧州出願公開EP−A−1383359号、EP−A−1547123号およびEP−A−1626613号に記載されているものが、提供されてきた。他の難点は、付着のために大気グロー放電プラズマを用いる際のダスト形成である。例えば、米国特許公報第5576076号には、シランの存在下で大気グロー放電プラズマを用いて基材上に酸化ケイ素を付着させることが教示されており、ここでは、酸化ケイ素の付着は粉末の形にある傾向がある。
【0006】
国際特許出願WO2005049228号には、オルトケイ酸テトラアルキルおよび大気グロー放電プラズマを用いて基材上にコーティングを付着させる方法が記載されており、ここでは、ダスト形成は妨げられるとされている。この公開物では、有孔電極が用いられている。
【0007】
ダスト形成を妨げるための他の方法は、例えば特開平07−074110号要約に記載されているように、低圧でのグロー放電プラズマの使用である。
Y.Watanabe et al.による論文‘Formation Kinetics and Control of Dust Particles in Capacitively−Coupled Reactive Plasamas’,Physica Scripta,Vol.T89,29−32,2001には、減圧における容量結合型高周波放電(13.56MHz)でのパルスオンタイム(ton)とパルスオフタイム(Toff)の両方の影響の研究が記載されている。ton持続時間が増大するとクラスターのサイズおよび体積分率が増大するが、もっとも著しい増大は、10ms以上のパルスオンタイムを超えると起こることが示されている。
【0008】
化合物または化学元素の付着に用いられる大気圧グロー放電プラズマはダスト形成の問題を有し、これにより、平滑表面の形成を得ることができず、用いられる装備品に短時間でダストが蓄積して、より劣るバリヤー性をバリヤー層の荒さとして有する生産物がもたらされることは、公知の事実である。
【0009】
Maechler et al.による“Deposition of dual−layer of SiO/SiO by Townsend dielectric barrier discharge”という論文には、二重層バリヤーをポリマー基材上に形成させることが記載されている。該方法では、処理空間において大気圧タウンゼント放電モード(グロー放電モードとは異なる)が用いられている。有機材料SiOの第1(シールド)層を付着させ、その後SiOバリヤー層を付着させる。該論文には、大気圧タウンゼント放電でポリマー上に直接付着させたSiOコーティングはポリマーの損傷を引き起こし、コーティングされていないポリマーに比べ劣ったバリヤー性をもたらすことも開示されている。達成すべきであると報告されている最良の結果は、バリヤー性の10倍の改善である(バリヤー改善率BIF=10)。
【0010】
出願人により提出されている国際特許出願WO2007139379号には、処理空間におけるダストの形成を妨げるために、所定のton時間および所定のガス組成物を用いて基材上に無機層を付着させる方法が記載されている。
【0011】
さらに、国際特許出願WO2006/097733号には、最初に平坦化コーティング組成物を施用した後、高エネルギー蒸着によりバリヤーフィルムを提供することにより、バリヤーを有する複合体フィルムを作製する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許公報第6774569号
【特許文献2】欧州出願公開EP−A−1383359号
【特許文献3】欧州出願公開EP−A−1547123号
【特許文献4】欧州出願公開EP−A−1626613号
【特許文献5】米国特許公報第5576076号
【特許文献6】国際特許出願WO2005049228号
【特許文献7】特開平07−074110号
【特許文献8】国際特許出願WO2007139379号
【特許文献9】国際特許出願WO2006/097733号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Physica Scripta,Vol.T89,29−32,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、大気圧グロー放電プラズマに用いられるガス組成物において特定の種の発生を制御することを可能にして、プラズマにおける制御された反応物プロセスを可能にし、これにより、ポリマー基材上での無機層の付着を、例えばダストの形成に起因して従来技術でこれまでに報告されているような、より制限されていない制御下で達成することができる方法を提供することを、探求するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に従って、先に定義した序文に従った方法であって、
a)無機材料の第1(緩衝)層をポリマー基材上にポリマー基材のR−値の少なくとも100%の最大厚さで付着させ、
ここにおいて、R値は、ポリマー基材の表面に実質的に垂直に測定されたポリマー基材の断面の最大山谷高低差(maximum peak to valley height)として定義される、
b)無機材料の第2(バリヤー)層を第1層上に付着させる、
ここにおいて、処理空間において酸素は3%以上の濃度を有し、電源を、2以上の相対する電極間の間隙を横切るエネルギーが40J/cm以上になるように制御する、
ことを含む方法を提供する。
【0016】
J/cm単位でのエネルギーの尺度は、電力(W/m)ではなく、基材に向けられる比エネルギーを表す。
の尺度はnm単位であり、基材の断面の最大山谷高低差である。
【0017】
この方法に従って少なくとも2つの付着を制御することにより、従来技術のシステムおよび方法で達成される結果と比較して優れたバリヤー性を有する基材を、低級グレードの基材から得ることができる。
【0018】
さらなる態様では、第1層を、酸素が2%以下の濃度を有するガス組成物を用いて付着させ、電源を、2以上の相対する電極間の間隙を横切るエネルギーが30J/cm以下になるように制御する。これは、十分に制御可能で質の良い層の付着をもたらす。さらなる態様では、第1層を付着させる時の酸素濃度を0.5%以下にして、最終基材のバリヤー性のさらなる改善を得る。
【0019】
さらなる態様において、第1層の付着中に提供されるエネルギーは10J/cm以下であり、さらに良好な最終結果が得られる。さらに他の態様では、得られるバリヤー層をさらに改善するために、第2層の付着中に提供されるエネルギーは80J/cm以上である。
【0020】
さらなる態様において、第2層を付着させる時の酸素濃度は4%以上である。これにより、さらに改善された性質のバリヤー層が得られる。
さらなる態様において、基材は移動基材であり、該基材は、処理空間を通って移動する。これにより、より大きな面積であっても、基材上の層の平坦で均一な形成が可能になる。処理空間は、第1および第2層の両方を付着させるために用いられる単一の処理空間であることができ、または、別個の処理空間を2層のそれぞれに提供することができる。
【0021】
さらなる観点において、上記序文で定義したようなプラズマ処理装置であって、プラズマ制御ユニットおよびガス供給機器が、上記態様のいずれか一つに従った方法が遂行されるように配置されているものを提供する。さらなる態様において、プラズマ処理装置はさらに、基材移動配置物(substrate movement arrangement)を含む。
【0022】
さらなる態様において、電源は、90〜100%のデューティーサイクル、例えば100%のデューティーサイクルでエネルギーを提供し、これにより、層の高い成長率が可能になる。
【0023】
さらに他の観点において、本発明は、第1層が、Si−、O−およびC−含有物を有する無機緩衝層を含み、第2層がSiOの無機バリヤー層を含む、二重層バリヤーが表面上に提供されているポリマー基材に関する。さらなる態様において、第1層は、ポリマー基材のR−値の少なくとも100%の厚さを有し、ここにおいて、R−値は、ポリマー基材の表面に実質的に垂直に測定されたポリマー基材の断面の最大山谷高低差として定義される。さらに他の態様において、第2層は少なくとも40nmの厚さを有する。
【0024】
さらに他の態様において、本発明は、上記方法または装置態様により得た、上記態様のいずれか一つに従った基材を、有機発光ダイオード(OLED)または光起電性の(PV)電池を提供するために使用することに関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明を具体化することができるプラズマ処理装置の略図を示す。
【図2】図2は、本発明の態様に従った図1のプラズマ処理装置に用いられる電極配列の略図を示す。
【図3】図3は、ウェブの形にある基材を加工するためのプラズマ処理装置の一部の略図を示す。
【図4】図4は、本発明の態様を用いて施用した2層を有する処理済み基材の横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を、添付図面を参照し、いくつかの例示的態様を用いて、より詳細に以下で論じる。
図1は、本発明を具体化し、施用することができる、プラズマ処理装置10の略図を示している。包囲物1内の処理空間であることができる処理空間5、または開いた構造を有する処理空間5は、2つの相対する電極2、3を含む。基材6または2つの基材6、7は、平坦なシートの形(図2に示す固定処理)か、移動ウェブの形(図3に示すように、起点ロール15、巻き上げロール16およびテンションロール17を使用する)で、処理空間5において処理することができる。電極2、3はプラズマ制御ユニット4に接続されており、該ユニットは、とりわけ電極2、3に電力を供給する、すなわち、電源として機能する。
【0027】
電極2、3は両方とも、平坦に方向付けられた同じ配列を有することができ(図2に示すように)、または両方ともロール電極である。図3の態様に示すように、互いに相対するロール電極2と平坦または円筒形の弧の形状をした電極3を用いて、異なる配列を施用することもできる。
【0028】
ロール電極2、3は、例えば、取り付けシャフトまたはベアリングを用いるなどして操作中の回転が可能になるように取り付けられている円筒形状電極として実現される。ロール電極2、3は、自由に回転させることができ、または、例えば周知の制御装置および駆動ユニットを用いて特定の角速度で駆動させることができる。
【0029】
電極2、3は両方とも、誘電体バリヤー層2a、3aを備えていることができる(図2の詳細な略図参照)。第1電極2上の誘電体層2aはd1(mm)の厚さを有し、第2電極3上の誘電体層3aはd2(mm)の厚さを有する。操作において、電極配列の全誘電体距離dは、図2でf1(mm)およびf2(mm)により示されている(1または2つの)被処理基材6、7の厚さも包含する。したがって、少なくとも2つの相対する電極(2、3)の間の処理空間5における誘電体バリヤーの全誘電体厚さは、d=d1+f1+f2+d2に等しい。
【0030】
さらなる態様において、d1とd2は両方とも0であり、誘電体バリヤーを形成する唯一の誘電体材料は基材6、7である。2つの基材6、7の場合、この場合の全誘電体厚さはd=f1+f2である。
【0031】
さらに他の態様では、d1とd2が両方とも0であり、1つの基材6のみを用いる。この態様では、全誘電体厚さはf1と等しく、したがってd=f1である。電極2が誘電体材料で覆われていないこの態様でも、安定な大気グロー放電プラズマを得ることが可能である。
【0032】
間隙距離gは、操作中に(すなわち、処理空間5において)大気圧グロー放電プラズマが存在することができる電極2、3間の最小間隙を示し、自由電極間空間ともよばれる。電極2、3、誘電体バリヤー層2a、3a、および電極2、3間の間隙gの寸法は、プラズマ制御ユニット4との組合わせで処理空間5において大気圧でのグロー放電プラズマが発生し維持されるように、あらかじめ決定されている。電極2、3は電源4に接続されており、該電源は、エネルギー供給が制御されている処理空間5において大気圧下でグロー放電プラズマを発生させるために、電極に電力を提供するように配置されている。
【0033】
処理空間5において、酸素ガスおよび所望により他のガスを、前駆体を含めて、ガス供給機器8を用いて導入する。ガス供給機器8は、当業者に公知のように、貯蔵、供給および混合用の構成部品を備えていることができる。目的は、処理空間5において、前駆体を、基材6、7上に付着させる化合物または化学元素に分解することである。そのような態様を用いる場合、一般に、非常に短い付着時間の後にダスト形成が観察され、ダストを含まない平滑な付着を得ることができない。高品質の用途(超小型電子機器、透過バリヤー、光学的用途)に用いられるプラズマにおいて、ダスト形成は深刻な問題である。そのような用途では、ダスト形成が、例えばバリヤー性に劣るという点で、コーティングの質を落とす可能性がある。
【0034】
あるいは、複数の相対する電極2、3をプラズマ処理装置10に提供する。取り付けシャフトまたはベアリングを用いるなどして操作中の回転が可能になるように取り付けられている円筒形状電極として実現されるロール電極であることができる電極2、3を、図1に関し記載したようなプラズマ制御ユニット4の一部である電源に接続する。プラズマ制御ユニット4は、処理空間5において大気圧下でグロー放電プラズマを発生させるために、電極2、3に電力を提供するように配置されている。処理空間5において、酸素ガスおよび所望により他のガスを、前駆体を含めて、ガス供給機器8から導入する。ガス供給機器8は、当業者に公知のように、貯蔵、供給および混合用の構成部品を備えていることができる。目的は、処理空間5において、前駆体を、移動基材6、7上に付着させる化合物または化学元素に分解して、無機バリヤー層をもたらすことである。
【0035】
意外にも、図4に略図で示すように、(移動)基材6上に少なくとも2つの無機材料層6a、6bを付着させた後、優れたバリヤー性を有する基材6、7を作製することができることが見いだされた。該基材は、山と谷を有する不規則な表面を有し、これらは、基材6の表面全体にわたり不規則に分布している。図4の例では、最も高い山をRにより、もっとも深い谷をRにより示している。基材表面の不規則性は、R−値により特徴付けることができ、ここにおいて、R値は、ポリマー基材の表面に実質的に垂直に測定されたポリマー基材の断面の最大山谷高低差として定義される、すなわち、R=R+Rである。
【0036】
これは、一態様において、処理空間5において、第1の無機層6aの付着を、(初期)ポリマー基材の荒さR−値(nm単位)の少なくとも100%の厚さd3に制御し、第2層を、2以上の相対する電極2、3間に形成される間隙に3%以上の酸素濃度を含むガス組成物を用い、処理空間5において40J/cm以上の制御されたエネルギー供給をプラズマ制御ユニット4により基材6に供給して付着させることにより、達成される。
【0037】
第1層の厚さを、基材6の固有R−値の少なくとも100%の量(nm単位)で施用することにより、一般に、固有基材の荒さの断面がマスキングされて、第2層6bの良好で頑強な付着が可能になる。
【0038】
他の態様では、2以上の相対する電極2、3間に形成される間隙に2%以下の制御された酸素濃度を含むガス組成物を用い、処理空間5において30J/cm以下の制御されたエネルギー供給をプラズマ制御ユニット4により基材6に供給して、第1の付着を行う。
【0039】
一般に、第1(緩衝)層6aの付着により、ポリマー基材単独のバリヤー性と比較して著しいバリヤー性の改善をもたらし有する基材は生じない。したがって、第1層の付着は、非常に高い付着率(DR)を有する環境で行うことができる。結果的に、第1層6aの付着方法を、迅速に、費用の視点から言うと安価に、行うことができる。
【0040】
さらに、処理空間5に3%を超える酸素濃度および40J/cm以上のより高いエネルギー供給を用いて第2の付着を施用して、第2の無機層6b(図4に示すように厚さd4を有する)を得ると、優れたバリヤー性を有する基材構造物が得られる。
【0041】
さらなる態様では、第1層6aの付着中の酸素濃度を0.5%以下に制御する。これは、以下に記載する実施例を用いてより詳細に示すように、さらに良い結果をもたらす。さらに、供給するエネルギーを10J/cm以下の値に維持しても、2層バリヤー完成品のバリヤー性が改善されることが見いだされている。エネルギーを5J/cmの値に低下させた場合であっても、さらなる改善がもたらされた。
【0042】
理論に結び付けるわけではないが、第1層6aの付着中の前記酸素濃度およびエネルギー供給を上記レベルに維持することにより、ポリマー基材表面の界面との相互作用は、基材6のポリマー表面上での酸素ラジカルのエッチングがより少ないため、低いままであると考えられる。第1の無機付着の結果、バリヤー性に劣る緩衝層6aが得られる。第2の無機層6bの付着中、ポリマー基材のこのエッチング現象は第1層6aにより妨げられ、より高い酸素濃度および/またはエネルギー供給を用いて、結果として生じる基材6と無機層6a、6bの組み合わせ全体に関し優れたバリヤー性を有する層状基材を作り出すことができる。
【0043】
初期基材6のR−値は、50〜500nm(すなわち、60nmまたは75nmまたは100nmまたは200または300nm)であることができる。
好ましい態様において、基材は、ポリエステルフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)である。
【0044】
より好ましい態様は、平滑な荒さ特性を有さず、例えば100nmを超える固有R−値を有する、低級でより安価なポリマー基材6である。とりわけ、従来技術の方法と比較して、平坦化層のコーティング施用を省くことができ、結果として、バリヤーが付着しているフィルムの製造方法の遙かに安価なプロセスを実現することができる。
【0045】
本発明の方法態様に従って、あまり平滑ではない表面および大きな固有R−値(nm単位、すなわち、例えば、75、100、120、200、250、300、さらには400nm)を有する低級ポリマーシートを用いても、なお、これまで調製することができなかった非常に良好なバリヤー性を有する生産物を大気グロープラズマ装置で得ることが可能である。
【0046】
例えば国際公開WO2006/097733号に記載されているような従来技術では、本発明の方法態様と比較して結果的に高い費用で、目的に合わせた表面を有するポリマー(一般にプライマー層および平坦化層でコーティングされている基材)を用いなければならなかった。
【0047】
さらに、本方法態様を用いることにより、均一性およびマスキング層6aとバリヤー層6bの間の親和力(無機/無機界面)が遙かに良好な生産物を得ることができ、その結果、これを、輸送および巻き付け動作中に亀裂を引き起こす欠陥がより少ない状態で、連続的なロールからロールへのモード(roll-to-roll mode)で生産することができる。
【0048】
付着段階に用いられる前駆体は、例えば、2〜500ppmの濃度で用いられるHMDSOである。
さらに、電極への周期的電力源として例えば正弦波トレイン信号のシーケンスを提供する発生機を用いて、電力を施用することができる。周波数範囲は、10kHz〜30MHz、例えば100kHz〜700kHzであることができる。
【0049】
さらなる態様では、ダスト形成を、パワーオンパルス中に発生する電荷密度(電流密度と時間の積)の絶対値を制御することにより妨げる。一態様では、この値は5マイクロクーロン/cmより小さく、例えば2または1マイクロクーロン/cmである。
【0050】
均一な厚さおよび平滑表面の付着層を得るためには、例えばストリーマー、フィラメント状放電などのような不安定性を妨げる、安定なプラズマを有することが重要である。さらなる態様では、プラズマの局所的不安定性に対抗する安定化手段により、大気グロー放電プラズマを安定化する。発電機の電力パルスにより、プラズマ電流および変位電流をもたらす電流パルスを発生させる。安定化手段は、フィラメント状放電のように動的抵抗と静的抵抗の比が小さいプラズマ種に付随する局所的電流密度の変動を制御するための変位電流変化が施用されるように配置する。パルス形成回路を用いてそのような速い変動を弱めることにより、均一なグロー放電プラズマが得られる。さらなる態様において、変位電流変化は、2つの電極への印加電圧に変化を施用することによりもたらされ、該印加電圧の変化は、交流プラズマ通電電圧(AC plasma energizing voltage)の操作周波数とほぼ同等であり、変位電流変化は印加電圧の変化より少なくとも5倍大きな値を有する。
【0051】
さらなる態様において、本発明は、ガス供給機器が、処理空間中のガス組成を制御することができる、すなわち、酸素濃度を正確に制御することができるように配置されている、プラズマ処理装置10に関する。
【0052】
第1の付着段階では、ポリマー基材のエッチングを減少させるために、処理空間において酸素濃度を2%またはさらに低濃度(例えば、1、さらには0.5%以下)に正確に制御することが必要であり得る。第2の付着段階では、同じまたは異なる処理空間において酸素濃度を3%より高濃度(すなわち4%以上)に正確に制御することが必要である。
【0053】
さらなる態様では、ガス供給機器8を、上記さまざまな態様に従った方法を実施するために配置することができる。
さらなる態様では、先に定義したような電源4を、第1層6aの付着中に前記相対する電極2、3間の間隙を(移動)基材6まで横切るエネルギーが30J/cm以下(例えば、10J/cmまたは5J/cm以下)の値に制御されるように配置する。第2層6bの付着段階では、(同じまたは異なる処理空間5において)前記相対する電極2、3間の間隙を(移動)基材6まで横切るエネルギーを、40J/cm以上(例えば、80J/cm)の値に制御する必要がある。
【0054】
移動基材6を上記のような付着プロセスに付す態様において、移動基材6のライン速度は、1cm/minから最高100m/minの範囲にある。
さらに、プラズマ制御ユニット4は、上記さらなる態様に従った方法を実施するために配置された安定化手段を含むことができる。
【0055】
さまざまな方法態様に関し上記したように、本プラズマ処理装置10は、基材6上に無機層6a、6bを付着させるのに有利に用いることができる。このために、プラズマ処理装置を、付着させる化合物または化学元素の前駆体を2〜500ppmの濃度で含むガス組成物を処理空間5に受け入れるように配置することができる。
【0056】
これまで、大気圧で高いデューティーサイクルを得ることはできなかった。大気圧でのパルス化は、出願人により提出されている国際公開WO2007/139379号に記載されているように、ダスト形成を抑えるための一つの選択肢であるが、表面の処理がより遅くなるという不利点を有する。しかしながら、意外にも、本発明のプラズマ装置の配置により、大気圧でのデューティーサイクルを、90〜100%の値、さらには最高100%の値にまで、著しく上昇させることができることが見いだされた。先に述べたように、前駆体と、酸素と、所望により他のガスの組み合わせとを含むガスの組み合わせを、処理空間5に導入する。
【0057】
他の態様では、プラズマ処理中に基材6を加熱する。基材6を少し加熱することにより、例えば、電極2、3を少し加熱することにより、意外にも、ダスト形成が減少、さらには排除されるが、なお基材6上に良好な付着結果が得られることが見いだされた。ポリマー基材6を処理する時に、例えば電極2、3の温度を、均一なグロープラズマ放電を用いる基材6上への無機層付着において標準的な温度より高温に制御することができる。温度は、基材6の材料(例えばポリマー)のガラス転移温度まで、場合によってはさらに高く、ポリマー基材6のアニール温度まで、上昇させることができる。いくつかの市販のポリマー基材は、ガラス転移温度より高温において、すなわち、ガラス転移温度より高温に加熱してから冷却した後に、寸法的に安定であり、寸法の変化は観察されない。いくつかの場合、このことは、ポリマー基材が分解し始める温度にほぼ至る温度でも当てはまりうる。例えば、150℃まで寸法的に安定であるが、ガラス転移温度が80℃である、熱安定化PET(ポリエチレンテレフタレート)が入手可能である。また、200℃より高温まで寸法的に安定であるが、そのガラス転移温度が120℃である、熱安定化PEN(ポリエチレンナフタレート)が入手可能である。
【0058】
処理空間5の温度を上昇させるために、さまざまな他の態様を用いることができる。そのような態様の例は、限定されるものではないが、出願人からの国際公開WO2008147184号に見いだすことができ、これを本明細書中で参考として援用する。
【0059】
パルス化によりダストの形成が減少するという事実に由来して、電源(プラズマ制御ユニット4の一部としての)を、オンタイムtonおよびオフタイムtoffを有する周期的電気信号をもたらすように配置することができ、ここにおいて、オンタイムとオフタイムの合計は周期的電気信号の周期またはサイクルである。オンタイムは、非常に短い、例えば20μsから、短い、例えば500μsであることができる。オンタイムは、操作周波数において一連の正弦波周期を有するパルストレインを効果的にもたらし、オンタイムの全持続期間(例えば正弦波10〜30周期)は0.1〜0.3msである。しかしながら、90%から最大100%のデューティーサイクルを用いて良好な結果が得られており、本発明のためのプラズマ装置配置物に有利な態様には、オフタイムがまったくない(デューティーサイクル=100%)。
【0060】
電源は、幅広い範囲の周波数を提供する電源であることができる。例えば、それは、オンタイム中に低周波数(f=10〜700kHz)の電気信号を提供することができる。それは、例えばf=700kHz〜30MHzの高周波数の電気信号を提供することもできる。450kHz〜1MHzまたは1〜20MHzなどのような他の周波数を提供することもできる。
【0061】
本例示的実施例では反応性ガスとしての酸素が多くの利点を有するが、例えば、水素、二酸化炭素、アンモニア、窒素酸化物などのような他の反応性ガスも用いてもよい。
グロー放電プラズマの形成は、電極2、3に接続されたプラズマ制御ユニット4を用いて変位電流を制御して(動的整合)、処理空間5において基材6の表面の均一な活性化をもたらすことにより、促進することができる。プラズマ制御ユニット4は、例えば、本明細書中で参考として援用する出願人の係属中の国際特許出願PCT/NL2006/050209号および欧州特許出願EP−A−1381257号、EP−A−1626613号に記載されているように、電源および関連する制御回路を含む。
【0062】
グロー放電の形成は、少なくとも2つの相対する電極間の処理空間の自由距離である間隙距離(g)と、誘電体バリヤーの全誘電体厚さである全誘電体距離(d)を制御することにより、さらに促進することができ、ここにおいて、間隙距離と全誘電体距離の積は、本明細書中で参考として援用する同出願人の未公開欧州特許EP08151765.8号、EP08165019.4号およびEP08168741.0号に記載されているように、1.0mm以下、さらにより好ましくは0.5mm未満である。
【0063】
本方法では、前駆体を以下から選択することができる(しかし、限定されるものではない):W(CO)、Ni(CO)、Mo(CO)、Co(CO)、Rh(CO)12、Re(CO)10、Cr(CO)、またはRu(CO)12、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン(BDMADMS)、タンタルエトキシド(Ta(OC)、テトラジメチルアミノチタン(またはTDMAT)、SiH、CH、BまたはBCl、WF、TiCl、GeH、GeSi、(GeHSiH、(GeHSiH、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラチルジシロキサン(TMDSO)、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アミノメチルトリメチルシラン、ジメチルジメチルアミノシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、1−トリメチルシリルピロール、1−トリメチルシリルピロリジン、イソプロピルアミノメチルトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、アニリノトリメチルシラン、2−ピペリジノエチルトリメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、1−トリメチルシリルイミダゾール、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、2−アミノエチルアミノメチルジメチルフェニルシラン、3−(4−メチルピペラジノプロピル)トリメチルシラン、ジメチルフェニルピペラジノメチルシラン、ブチルジメチル−3−ピペラジノプロピルシラン、ジアニリノジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ジブチルスズジアセテート、アルミニウムイソプロポキシド、トリス(2,4−ペンタジオナト)アルミニウム、ジブチルジエトキシスズ、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ブチルスズ、テトラエトキシスズ、メチルトリエトキシスズ、ジエチルジエトキシスズ、トリイソプロピルエトキシスズ、エチルエトキシスズ、メチルメトキシスズ、イソプロピルイソプロポキシスズ、テトラブトキシスズ、ジエトキシスズ、ジメトキシスズ、ジイソプロポキシスズ、ジブトキシスズ、ジブチリルオキシスズ、ジエチルスズ、テトラブチルスズ、ビス(2,4−ペンタンジオナト)スズ、アセトアセトナトエチルスズ、(2,4−ペンタンジオナト)エトキシスズ、(2,4−ペンタンジオナト)ジメチルスズ、ジアセトメチルアセタトスズ、ジアセトキシスズ、ジブトキシジアセトキシスズ、ジアセトアセトナトジアセトキシスズ、水素化スズ、二塩化スズ、四塩化スズ、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリプロポキシチタン、トリエチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジメチルチタン、トリ(2,4−ペンタンジオナト)エチルチタン、トリス(2,4−ペンタンジオナト)チタン、トリス(アセトメチルアセタト)チタン、トリアセトキシチタン、ジプロポキシプロピオニルオキシチタン、ジブチリルオキシチタン、水素化一チタン(monotitanium hydride)、水素化二チタン(dititanium hydride)、トリクロロチタン、テトラクロロチタン、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトライソプロポキシシラン、ジ(2,4−ペンタンジオナト)ジエチルシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、四水素化シラン、六水素化ジシラン、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、イソプロポキシアルミニウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ニッケル、ビス(2,4−ペンタンジオナト)マンガン、イソプロポキシホウ素、トリ−n−ブトキシアンチモン、トリ−n−ブチルアンチモン、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオナト)スズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−t−ブチルジアセトキシスズ、テトライソプロポキシスズ、ジ(2,4−ペンタンジオン酸)亜鉛、およびそれらの組み合わせ。さらに、例えば欧州出願公開EP−A−1351321号またはEP−A−1371752号に記載されているような前駆体を用いることができる。一般に、前駆体は、全ガス組成物の2〜500ppm、例えば約50ppmの濃度で用いられる。
【0064】
本発明の一態様において、第1層6aの付着段階に用いられる前記前駆体は、第2層6bの付着段階でのものと同じである。
本発明の他の一態様において、第1層6aの付着段階に用いられる前記前駆体は、第2層6bの付着段階でのものとは異なる。
【0065】
この方法および装置により、化合物または化学元素の無機層を、比較的低いTgを有する基材6上に付着させることができる。これは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、トリアセチルセルロース、PEN、PET、ポリカーボネート(PC)などのような一般的なプラスチックにも付着層を提供することができることを意味する。選ぶことができる他の基材は、例えば、ETFEもしくはPTFE(フッ素化ポリマーの群から)などの紫外線安定性ポリマーフィルムまたはシリコーンポリマーフォイルである。これらのポリマーは、耐衝撃性を改善するために、ガラス繊維により強化することもできる。本発明の態様で用いられるポリマー基材6は、非延伸または延伸ポリマーフォイルであってもよく、通常知られている方法により生産することができる。実質的に無方向性である非延伸ポリマーフォイルは、原料ポリマー樹脂を押出機内で溶融させ、T−型ダイに通して押し出し、急速に冷却することにより、生産することができる。延伸ポリマーフォイルは、一軸延伸または二軸延伸のような公知の技術により非延伸ポリマーフォイルを延伸することにより、作製することができる。本発明の態様に用いられる好ましい基材6は、多くの欠陥および/または不規則な荒さの断面を有する試料、例えば、低級延伸ポリマーフォイルである。延伸ポリマーフォイルは、その製造中の延伸作用に起因して存在する穴に関連して、バリヤーとしては比較的弱い。しかしながら、本発明の態様に起因して、ポリマーの製造時に開始する欠陥はマスキングすることができ、結果的に、優れたバリヤーを作製することができる。これは、経済的視点から、非常に安価なポリマーを用いてもよいことを意味する。
【0066】
本発明の態様に従った2層6a、6bを備える基材6は、ウェハ製造など幅広い用途で用いることができ、プラスチック用バリヤーや、断路器上の導電層が必要とされる用途などのためのバリヤーとして、用いることができる。本発明の態様は、例えばOLEDデバイスでの施用に適した性質を有する基材を生産するために、あるいは、より一般に、フィルムまたはフォイルの形にある基材であって、水および/または酸素による劣化から保護するのに使用可能で、平坦な性質を有するもの、例えば、軟質光電池の分野でのバリヤーフィルムに、有利に用いることができる。
【実施例】
【0067】
バリヤーフィルム(上記プラズマ処理装置10で処理した基材6)の透湿度(WVTR)を定量化するために、最低検出限界が5×10−4g/m・日である電量電池(電気化学電池)を用いるMocon Aquatranを用いた。この方法により、IR吸収(当業者に公知である)の使用による透過測定より敏感で正確な透過性の評価がもたらされる。測定条件は10〜40℃であることができ、同様に、相対湿度は通常60〜90%であることができる。
【0068】
表面荒さを定量化するために、Veeco MeterologyのVeeco Nano Scope IIIaからの原子間力顕微鏡を用い、これからRを算出した。
の値は、2×2ミクロンの評価面積内で初期基材6の平均表面断面から測定した山の最大高さと谷の最大深さの絶対距離として決定した。
【0069】
実験は、上記のような付着の態様を用いて実施した。第1の試験試料は、PEN基材6(試料A1〜A9には約66nmの固有R−値を有するDupont Teijin Filmsからの工業グレードTeonex Q83、試料A10〜A11には約40nmの固有R−値を有するDupont Teijin Filmsからの高級光学グレードPEN基材Teonex Q65)上に、可変量(nm単位)の第1の無機層6aを付着させることにより調製した。HMDSNを含む前駆体を10g/hrで用いた。基材6に向かって供給されるエネルギーおよび処理空間5における酸素濃度(O)などの他のプロセスパラメーターは、表1に示すように変動させた。
【0070】
【表1】

【0071】
表1から明らかにわかるように、無機材料の単一層6aのみの施用は、WVTRに対し実質的に影響を有さず、上記施用に関し探求したバリヤー改善率をもたらさない。
実験を、上記態様に明記したように第2層6bを施用することにより継続した。第1層6aを有する得られた試料(表2にAnnとして挙げる)を、図1に示す基材処理装置10で第2層6bを付着させるために処理した。表2に、(層状)基材6に向けて供給したエネルギーおよび処理空間5における酸素濃度の詳細を明記する。実施例B1〜B16では、TEOSを前駆体として5g/hrで用いた。実施例B17では、HMDSNを前駆体として10g/hrで用いた。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
表2は、プロセス条件が先に明記した範囲内にある多くの実施例において、WVTRが劇的に改善し、場合によっては5×10−4の測定限界未満でさえあることを、明らかに示している。これらの実施例を表2にI(本発明(Inventive))として示す。
【符号の説明】
【0075】
1 包囲物
2 電極
2a 誘電体バリヤー層
3 電極
3a 誘電体バリヤー層
4 プラズマ制御ユニット
5 処理空間
6 基材
6a 無機材料層
6b 無機材料層
7 基材
8 ガス供給機器
10 プラズマ処理装置
15 起点ロール
16 巻き上げロール
17 テンションロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続されている2以上の相対する電極の間に形成される処理空間において大気圧グロー放電プラズマを用い、該処理空間において前駆体と酸素を含むガス組成物を用いて、ポリマー基材を生産するための方法であって、
a)無機材料の第1層をポリマー基材上にポリマー基材のR−値の少なくとも100%の最大厚さ(d3)で付着させ、
ここにおいて、R値は、ポリマー基材の表面に実質的に垂直に測定されたポリマー基材の断面の最大山谷高低差として定義される、
b)無機材料の第2層を第1層上に付着させる、
ここにおいて、処理空間において酸素は3%以上の濃度を有し、電源を、2以上の相対する電極間の間隙を横切るエネルギーが40J/cm以上になるように制御する、
ことを含む方法。
【請求項2】
第1層を、酸素が2%以下の濃度を有するガス組成物を用いて付着させ、電源を、2以上の相対する電極間の間隙を横切るエネルギーが30J/cm以下になるように制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1層を付着させる時の酸素濃度が0.5%以下である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1層の付着中に提供されるエネルギーが10J/cm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第2層の付着中に提供されるエネルギーが80J/cm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2層を付着させる時の酸素濃度が4%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
基材が、処理空間を通って移動する移動基材である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
基材(6)を処理するためのプラズマ処理装置であって、該プラズマ処理装置(10)が、少なくとも2つの相対する電極(2、3)および該少なくとも2つの相対する電極(2、3)の間の処理空間(5)を含み、該少なくとも2つの電極(2、3)が、処理空間(5)において大気圧グロー放電プラズマを発生させるためのプラズマ制御ユニット(4)に接続されており、ガス供給機器(8)が、操作中に処理空間(5)にガス混合物を提供するように配置されており、該プラズマ制御ユニット(4)およびガス供給機器(8)が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法が遂行されるように配置されている、前記プラズマ処理装置。
【請求項9】
さらに、基材移動配置物(15、16、17)を含む、請求項11に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
第1層が、Si−、O−およびC−含有物を有する無機緩衝層を含み、第2層がSiOの無機バリヤー層を含む、二重層バリヤーが表面上に提供されているポリマー基材であって、
第1層が、ポリマー基材のR−値の少なくとも100%の厚さを有し、ここにおいて、R−値は、ポリマー基材の表面に実質的に垂直に測定されたポリマー基材の断面の最大山谷高低差として定義され、
第2層が、少なくとも40nmの厚さを有する、
前記ポリマー基材。
【請求項11】
電源(4)が90〜100%のデューティーサイクルでエネルギーを提供する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
電源(4)が100%のデューティーサイクルでエネルギーを提供する、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
OLEDまたはPV−電池を提供するための、請求項10〜12のいずれか一項に記載の基材の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−517530(P2012−517530A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549670(P2011−549670)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050208
【国際公開番号】WO2010/092384
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(509077761)フジフィルム・マニュファクチュアリング・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ (25)
【Fターム(参考)】