説明

ポリマー基材用の保護皮膜を製造するためのゾルゲル法

ポリマー基材用の保護皮膜を製造するためのゾルゲル法であって、本方法は、ある条件下で行われる金属又は半金属アルコキシドのゾルゲル反応に関する。得られたゾルは、制限なく、ポリマー基材上に回転塗布又は浸漬塗布され、次いで透明な耐摩耗性皮膜に熱硬化された。係る皮膜は可視光を透過させるが、基材表面を劣化させて屋外暴露時に保護皮膜の付着力を失わせる紫外線の波長を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、基材上での透明皮膜の製造方法である。
【0002】
プラスチック材料、例えば、ポリカーボネート(PC)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)は、現代では多くの適用分野、例えば、中でも自動車、建築、エレクトロニクス、前照灯及びサンルーフなどにおいて使用されている。
【0003】
それらの材料の新たな市場に参入する可能性の更なる発展は、表面硬さと耐摩耗性の欠如によって妨げられている。
【0004】
ポリマー材料の他の使用、例えば、つや出し、装飾的な建築用パネル及びミラーもまた、耐摩耗性の欠如のために制限されている。この意味では、多くの研究はこの問題点を解決するための皮膜の開発に注ぎ込まれてきた。例えば、シリカ含有溶液及びポリケイ酸フッ化コポリマー組成物などの耐スクラッチ性コーティングを使用することが提案されてきた。しかし、これらの材料は、適用の困難さ、耐湿性の不良又は高価なために商業的な使用にのみ制限されることが分かった(米国特許第3,986,997号)。
【0005】
更にそれらの研究は、一酸化炭素及び二酸化炭素の遊離並びに基材の解重合を伴う、カーボネート結合の分解を引き起こす、UV領域において、更に詳細には、287nm近くの高い波長における透明な皮膜に関係した。太陽からの紫外線は、紫外線−透明皮膜で被覆された基材の表面に達するとそれを分解させ得る。結果として、保護皮膜は粘着性を失い、物品の屋外暴露に従ってはがれ落ち始める。
【0006】
別のアプローチはローム・アンド・ハース社のWard Brownによって提案された。米国特許出願公開第2003/0134949号は自動酸化可能なアルコキシシランの使用を記載している。それらのアルコキシシランはプラスチック製品の屋外暴露に対する耐性を高めるが、まだ十分な放射線安定性を与えていない。
【0007】
透明な耐摩耗性の被覆組成物が米国特許第4,500,669号に記載されており、該組成物は金属、合金、塩及び酸化物のコロイド状分散液で作られているが、紫外線による損傷に対する解決策は提供されていない。
【0008】
耐摩耗性であると同時に紫外線安定性でもある被覆システムを得るために、ゾル−ゲル技術と紫外線安定性とを組み合わせようと試みてきた研究者は非常に少ない。
【0009】
更に、明らかなことは、導電性及び熱安定性(例えば、ポリカーボネートT=145℃)などのガラスの優れた特性といくらかの紫外線防御とを兼備するガラス状皮膜を有することが完全な適合であることである。
【0010】
本発明の対象は、中でもポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート及びポリオレフィンなどのプラスチック基材上でのガラス質皮膜の製造方法である。
【0011】
用いられた技術は、本発明者らの先の特許である国際公開第2004/007384号パンフレットに既に記載されたゾル−ゲル技術である。
【0012】
塗膜を製造するためのゾル−ゲル技術は、成分を室温で混合することによってアルコール媒体中で懸濁液を製造し、該懸濁液を制御された条件下でゲル化して、最終的に硬化工程と考えられる乾燥工程が存在することで構成されている。
【0013】
現実的には、これは正しく一般的な手順である。それというのは、全ての種類の皮膜は、特定の製造方法、即ち、懸濁液組成物、基材上での該懸濁液の適用(浸漬又は噴霧又は回転塗布技術)ゲル化条件(T)及び乾燥手順、溶媒蒸発、硬化のT、乾燥速度を必要とするためである。
【0014】
文献は複数の基材用のゾル−ゲル技術をベースとした皮膜の使用を記載しているが、係る方法の工業化は常に問題があると見られている。これは硬化のために高温が求められるためであり、例えば、特許第6,017,389号、第6,130,152号及び伊国特許第98A00004号を参照されたい。
【0015】
本発明の対象は、摩耗耐性と紫外線安定性の特性を有するゾル−ゲルベースの皮膜の製造方法であり、これは穏やかな製造条件と基材上での適用を必要とする。
【0016】
本発明の対象は、基材上での透明皮膜の製造方法であって、以下の工程:
− 式:
Xm−Me−(OR)n−m (I)
[式中、Meは周期系の第3族、第4族、又は第5族に属する金属であり;nはMeの原子価であり;
XはR1又はOR1であり、ここでR1はRと等しい又は異なり、mはゼロ又は3以下の整数であり;
R及びR1は炭素数12以下の炭化水素基である]
に対応する1種又は複数種のアルコキシドの溶媒中での溶液の製造工程;
− 得られた溶液の触媒の存在下での加水分解工程;
− 場合により紫外線吸収特性を有する化合物の添加工程
− 場合により疎水化剤の添加工程
− 場合により帯電防止剤及び反射低減剤の添加工程
− 場合により光触媒特性を有する化合物の添加工程
− 場合により増粘剤としてのポリマーの添加工程
− 場合により抗細菌性を有する化合物の添加工程
− 当該基材上でのゾルの付着工程;
− 皮膜の最終的な乾燥及び硬化工程;
を含む基材上での透明皮膜の製造方法である。
【0017】
式(I)に対応する1種又は複数種のアルコキシドの無機溶媒中での溶液の加水分解によって得られた溶液は、安定なコロイド溶液である。
【0018】
アルコキシドは有利には、テトラメチルオルトシラン、テトラエチルオルトシラン、テトラエトキシオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン又はそれらの混合物の中で選択してよい。
【0019】
アルコキシド溶液の場合、有機溶媒は有利にはアセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン及び更に有利にはエタノールの中で選んでよい。
【0020】
溶液の濃度は10〜55質量%であってよい。
【0021】
紫外線吸収特性を有する化合物は、ベンゾトリアゾール類、s-トリアジン類、オキサニリド類、サリチラート類、ヒドロキシベンゾフェノン類、ベンゾアート類及びα-シアノアクリラート類並びにTiO及びZnOの群からの無機分子の群から選択してよい。これは0.7〜8質量%であってよい。
【0022】
疎水化剤を備えた化合物はテトラフルオロクチルトリエトキシシランであってよい。これは0.1〜6質量%であってよい。
【0023】
帯電防止特性及び反射低減特性を有する化合物は、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモンスズ及び酸化チタンの群から選択してよい。これは0.1〜5質量%であってよい。
【0024】
増粘特性を有するポリマーは、300〜12000の分子量を有するポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレングリコールの群から選択してよい。パーセンテージは0.5%〜10%質量%、更に有利には2〜5質量%であってよい。
【0025】
光触媒特性を有する化合物は、二酸化チタン、酸化亜鉛の群から選択してよい。これは0.5〜7質量%であってよい。
【0026】
抗細菌性を有する化合物はAgOであってよい。これは0.05〜5質量%であってよい。
【0027】
溶媒中のアルコキシド溶液又は混合物は20質量%〜60質量%であってよい。
【0028】
アルコキシドの加水分解は制御された量の水の添加によって行ってよい。
【0029】
モル比HO/Meは0.3〜6、有利には1.5〜3であってよい。
【0030】
触媒は0.1〜3のKaを有する鉱酸及び有機酸の中で選択された酸であってよい。
【0031】
乾燥温度は60〜200℃であってよい。
【0032】
本方法は式:
−Me−(OR)n−m
[式中、Mは第3族、第4族又は第5族に属す金属であり、nは金属の原子価であり
XはR又はORであり、ここでRはRと同じか又は異なり、mはゼロ又は3以下の整数のいずれかの整数であり、
R及びR1は、炭素鎖長が12以下の原子を有する炭化水素部である]
を有する1種又は複数種のアルコキシドの溶液中でのゾルの製造に関する。
【0033】
本発明によれば、アルコキシドがテトラヒドロフラン、アセトン及びエタノールなどの溶媒に混和性であることが見出された。
【0034】
本発明に従って、疎水化剤及び機能性添加剤が、表面を化学的に改質するために利用される。当該技術分野で従来使用された疎水化剤は、シロキサン、シラン又はケイ素を含むケイ素ベース剤;フルオロシラン類、フルオロアルキルシラン類(FAS)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリビニルフルオリド、又は機能性フルオロアルキル化合物などのF−ベース疎水化剤であってよく、有利には疎水化剤はDegussa AG Germany社より供給されたDynasil F8261である。
【0035】
その後、加水分解は酸の水溶液の添加によって開始される。加水分解反応は発熱であり、このため、温度が数度上昇し、この増加はバッチサイズと加水分解条件に多分に依存する。最高温度に達するにつれて、有機UVフィルターは撹拌下でバッチに添加される。
【0036】
溶液が調製されたらすぐに、例えば、浸漬塗布又は回転塗布の方法によって該溶液を基材に塗布する。
【0037】
既に引用された特許第6,017,389号に記載された方法とは異なり、得られた溶液は1.5時間還流されず、数分間だけ撹拌されており、更にモル比TEOS:エタノールは通常は1.2より大きいのに対して、引用された特許ではこれより小さい。同特許では、シリカの多孔層が2種の異なる溶媒に関係がある2段階の工程で得られることが特許請求されている。本発明者らが本明細書で報告している工程もまた、米国特許第3986997号(実施例6)で報告されたものとは異なる。該米国特許では、1より大きいモル比のTEOS/エタノールを用いてゾルを製造するための多段階の工程が報告されたことに対して、本発明者らはTEOSよりもエタノールを多く使用することを示唆している。
【0038】
上述のUVフィルターは、ヒドロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾトリアゾール又はヒドロキシル−フェニル−トリアジン誘導体のいずれかであってよい(EP0818450)。
【0039】
その後に、有機酸又は無機酸によって触媒されるゲル化工程がある。
【0040】
基材上でのゾルの付着は、加水分解直後又は加水分解からゲル化が起こる直前までの間のいずれかに行ってよい。
【0041】
基材は任意の既知のポリマーであってよい。
【0042】
本発明の有利な形態において、基材はポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリエチレンフタレート、ABS、CR39又はナイロンの群から選んでよい。
【0043】
有利な基材はポリカーボネート(PC)、ポリスチレン又はポリメチルメタクリレート(PMMA)であってよい。
【0044】
最終工程は、既に基材表面上のゾルの硬化又は乾燥である。硬化温度は70℃より高く、有利には35〜120℃であることが重要である。硬化は、高い効率で空気が吹き込まれる炉で又はIRランプの下で又はポリマー被膜を硬化させるために使用された任意の工業的方法でのいずれかによって行うことができる。そのため、温度は基材に適合されるべきである。即ち、PMMAの場合、80℃を有することがより望ましいが、PCの場合、110℃を有することがより望ましい。
【0045】
一般的に、この配合は得られるべき層の高さによって決定される。PCの場合、厚さは800ナノメートルであるがPMMAの場合500ナノメートルである。
【0046】
実施例
実施例1
磁気撹拌棒を含む1lの丸底フラスコに、261.8gのエタノールとDynasil(TEOS)の商品名でDegussa AG社によって供給された197.28gのテトラエトキシシランを装入する。
【0047】
次に1MのHCl39.72gを、室温で且つ一定の強力な撹拌下で、非常にゆっくり添加する。加水分解反応による温度上昇は20℃である。
【0048】
そのようにして得られた溶液を、次いで長方形のポリカーボネート板(長さ10cm、幅15cm、厚さ0.3cm)上に浸漬塗布(浸漬被覆速度0.39cm/秒)によって塗布する。この板を次いで炉において120℃で12時間乾燥させる。このようにして得られた板は、特徴に関して試験が行われた:
【表1】

【0049】
被覆されたポリカーボネート板のブチルアセテート、アセトン及びテトラヒドロフランに対する化学的な安定性は、被覆されていないポリカーボネートと比較した時に変化していない。
【0050】
強度を、異なる硬さ8B(最も軟らかい)から8H(最も硬い)を有する一連の鉛筆を使用して方法ASTM D336に従って測定する。
【0051】
被膜の付着はJIS K5400に基づくグリッド付着性試験によって評価された。百部のグリッドを被覆表面上で切断した。粘着テープをグリッドに適用し、次いで(表面に対して垂直に)大きく取り除いた。「合格」は損傷が観察されなかったことを意味し、逆に、「不合格」は少なくとも1部が損傷されたことを意味する。
【0052】
表面粗さはプロフィルメーターTaylor Mod.222で測定する。
【0053】
被覆されたポリカーボネートの被覆された材料の化学的安定性は、純粋な溶媒中での板の浸漬塗布によって調べられ、また溶媒が表面の美観を変化させた場合には視覚的に確認することによって調べられる。試験された溶媒:アセトン、ブチルアセテート及びテトラヒドロフラン。
【0054】
被覆されていないポリカーボネートはそれらの溶媒中で安定ではない。
【0055】
実施例2
磁気撹拌棒を含む1lの丸底フラスコに、254.17gのエタノールとDynasil(TEOS)の商品名でDegussa AG社によって供給された191.53gのテトラエトキシシランを装入する。
【0056】
次に1MのHCl39.72gを、室温で且つ一定の撹拌下で、非常にゆっくり添加する。加水分解反応による温度上昇は20℃である。温度が最高に達した時に、Ciba社より供給された14.56gのTinuvil 1130ビス(−β−[3−(2−H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−terブチルフェニル]−プロピオン酸−ポリエチレングリコール)300−エステルを溶液に添加した。
【0057】
そのようにして得られた混合液を、次いで長方形のポリカーボネート板(長さ10cm、幅15cm、厚さ0.3cm)上に浸漬塗布(浸漬被覆速度0.39cm/秒)によって塗布する。この板を次いで炉において120℃で12時間乾燥させる。このようにして得られた板は、特徴に関して試験が行われた:
【表2】

【0058】
被覆されたポリカーボネート板のブチルアセテート、アセトン及びテトラヒドロフランに対する化学的な安定性は、被覆されていないポリカーボネート板と比較した時に改良されている。被覆されたポリカーボネートは、外観試験の下で表面の外観を変化させていない。
【0059】
実施例3
磁気撹拌棒を含む1lの丸底フラスコに、261.09gのエタノール、Dynasil A(TEOS)の商品名でDegussa AG社によって供給された176.79gのテトラエトキシシラン及びDynasil9265の商品名でDegussa AG Germany社によって供給された11.34gのトリエトキシフェニルシランを装入した。
【0060】
次に1MのHCl40.78gを、室温で且つ一定の撹拌下で、非常にゆっくり添加する。加水分解反応による温度上昇は20℃である。
【0061】
そのようにして得られた混合液を、次いで長方形のポリカーボネート板(長さ10cm、幅15cm、厚さ0.3cm)上に浸漬塗布(浸漬被覆速度0.39cm/秒)によって塗布する。この板を次いで炉において120℃で12時間乾燥させる。このようにして得られた板は、特徴に関して試験が行われた:
【表3】

【0062】
被覆されたポリカーボネート板のブチルアセテート、アセトン及びテトラヒドロフランに対する化学的な安定性は、被覆されていないポリカーボネート板と比較した時に変化していない。
【0063】
実施例4
磁気撹拌棒を含む1lの丸底フラスコに、253.48gのエタノール、Dynasil A(TEOS)の商品名でDegussa AG社によって供給された181.34gのテトラエトキシシラン及びDynasil9265の商品名でDegussa AG Germany社によって供給された11.01gのトリエトキシフェニルシランを装入した。
【0064】
次に1MのHCl39.59gを、室温で且つ一定の撹拌下で、非常にゆっくり添加する。加水分解反応による温度上昇は20℃である。温度が最高に達した時に、Ciba社より供給された14.56gのTinuvil1130ビス(−β−[3−(2−H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−terブチルフェニル]−プロピオン酸−ポリエチレングリコール)300−エステルを溶液に添加した。
【0065】
そのようにして得られた混合液を、次いで長方形のポリカーボネート板(長さ10cm、幅15cm、厚さ0.3cm)上に浸漬塗布(浸漬被覆速度0.39cm/秒)によって塗布する。この板を次いで炉において120℃で12時間乾燥させる。このようにして得られた板は、特徴に関して試験が行われた:
【表4】

【0066】
被覆されたポリカーボネート板のブチルアセテート、アセトン及びテトラヒドロフランに対する化学的な安定性は、被覆されていないポリカーボネート板と比較した時に改良されている。被覆されたポリカーボネートは、外観試験の下で表面の外観を変化させていない。
【0067】
実施例5
磁気撹拌棒を含む1lの丸底フラスコに、253.48gのエタノール、Dynasil A(TEOS)の商品名でDegussa AG社によって供給された181.34gのテトラエトキシシラン及びDynasil9265の商品名でDegussa AG Germany社によって供給された11.01gのトリエトキシフェニルシランを装入する。
【0068】
次に1MのHCl39.59gを、室温で且つ一定の撹拌下で、非常にゆっくり添加する。加水分解反応による温度上昇は20℃である。温度が最高に達した時に、Ciba社より供給された14.56gのTinuvil1130ビス(−β−[3−(2−H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−terブチルフェニル]−プロピオン酸−ポリエチレングリコール)300−エステルを溶液に添加した。
【0069】
そのようにして得られた混合液を、次いで長方形のポリメチルメタクリレート板(PMMA)(長さ10cm、幅15cm、厚さ0.3cm)上に浸漬塗布(浸漬被覆速度0.39cm/秒)によって塗布する。この板を次いで炉において120℃で12時間乾燥させる。このようにして得られた板は、特徴に関して試験が行われた:
【表5】

【0070】
被覆されたPMMA板のジクロロメタンに対する化学的な安定性は、被覆されていないPMMA板と比較した時に改良されている。被覆されたポリメチルメタクリレート板は、外観試験の下で表面の外観を変化させていない。
【0071】
実施例6
磁気撹拌棒を含む1lの丸底フラスコに、250.98gのエタノール、Dynasil A(TEOS)の商品名でDegussa AG社によって供給された181.34gのテトラエトキシシラン、Dynasil9265の商品名でDegussa AG Germany社によって供給された11.01gのトリエトキシフェニルシラン及びDegussa AG社によって供給された2.5gのDynasil F8261(テトラフルオロクチルトリエトキシシラン)を装入する。
【0072】
次に1MのHCl39.59gを、室温で且つ一定の撹拌下で、非常にゆっくり添加する。加水分解反応による温度上昇は20℃である。温度が最高に達した時に、Ciba社より供給された14.56gのTinuvil1130ビス(−β−[3−(2−H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−terブチルフェニル]−プロピオン酸−ポリエチレングリコール)300−エステルを溶液に添加した。
【0073】
そのようにして得られた混合液を、次いで長方形のポリカーボネート板(PC)(長さ10cm、幅15cm、厚さ0.3cm)上に浸漬塗布(浸漬被覆速度0.39cm/秒)によって塗布する。この板を次いで炉において120℃で12時間乾燥させる。このようにして得られた板は、特徴に関して試験が行われた:
【表6】

【0074】
被覆された過炭酸塩板のブチルアセテート、アセトン及びテトラヒドロフランに対する化学的な安定性は、被覆されていない過炭酸塩板と比較した時に改良されている。被覆されたポリカーボネートは、外観試験の下で表面の外観を変化させていない。
【0075】
実施例7
磁気撹拌棒を含む1lの丸底フラスコに、250.98gのエタノール、Dynasil A(TEOS)の商品名でDegussa AG社によって供給された181.34gのテトラエトキシシラン、Dynasil9265の商品名でDegussa AG Germany社によって供給された11.01gのトリエトキシフェニルシラン及び2.5gの酸化スズ(ITO)を装入する。
【0076】
次に1MのHCl39.59gを、室温で且つ一定の撹拌下で、非常にゆっくり添加する。加水分解反応による温度上昇は20℃である。温度が最高に達した時に、Ciba社より供給された14.56gのTinuvil1130ビス(−β−[3−(2−H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−terブチルフェニル]−プロピオン酸−ポリエチレングリコール)300−エステルを溶液に添加した。
【0077】
そのようにして得られた混合液を、次いで長方形のポリカーボネート板(PC)(長さ10cm、幅15cm、厚さ0.3cm)上に浸漬塗布(浸漬被覆速度0.39cm/秒)によって塗布する。この板を次いで炉において120℃で12時間乾燥させる。このようにして得られた板は、特徴に関して試験が行われた:
【表7】

【0078】
得られた皮膜は多孔質の面を有し、450〜750nmの範囲で測定された最小反射率などの反射防止特性によって特徴付けられる。
【0079】
実施例8
磁気撹拌棒を含む1lの丸底フラスコに、254.17gのエタノールとDynasil(TEOS)の商品名でDegussa AG社によって供給された191.53gのテトラエトキシシランを装入する。
【0080】
次に1MのHCl39.72gを、室温で且つ一定の撹拌下で、非常にゆっくり添加する。加水分解反応による温度上昇は20℃である。温度が最高に達した時に、Ciba社より供給された14.56gのTinuvil1130ビス(−β−[3−(2−H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−terブチルフェニル]−プロピオン酸−ポリエチレングリコール)300−エステルを、14gのTHFに14gのポリスチレンを加えて作られた溶液に添加した。
【0081】
そのようにして得られた混合液を、次いで長方形のポリカーボネート板(長さ10cm、幅15cm、厚さ0.3cm)上に浸漬塗布(浸漬被覆速度0.39cm/秒)によって塗布する。この板を次いで炉において120℃で12時間乾燥させる。このようにして得られた板は、特徴に関して試験が行われた:
【表8】

【0082】
皮膜の厚さは3ミクロンであるのに対して、ポリマーを使用しない同じ配合は0.8ミクロンの厚さを有する(実施例3を参照のこと)。
【0083】
得られた結果に基づいて、本発明者らは、紫外線フィルター又は改質されたエトキシシランのいずれかを添加することによって、基本の塗料配合物の溶媒、TEOS及び酸を、性能的に大きく改善できると推論することができる。
【0084】
理論に縛られることを望まないが、両方の成分はガラス状の皮膜をより壊れにくくする可塑剤として働くと考えられる。
【0085】
実施例6において、より優れた疎水効果のための作用物質としてDynasil F8261もまた列挙された。
【0086】
これらの皮膜は種々の基材において有用であり、本明細書ではPC及びPMMAのみ列挙されたが、実際には本方法は、本発明の範囲を制限することなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリエチレン−テレフタラート、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アリルジグリコールカーボネート(CR39)及びナイロンに対しても適切である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上での透明皮膜の製造方法であって、以下の工程:
− 式:
Xm−Me−(OR)n−m (I)
[式中、Meは周期系の第3族、第4族又は第5族に属する金属であり;nはMeの原子価であり;
XはR1又はOR1であり、ここでR1はRと等しい又は異なり、
mはゼロ又は3以下の整数のいずれかであり;
R及びR1は炭素数12以下の炭化水素基である]
に対応する1種又は複数種のアルコキシドの溶媒中での溶液の製造工程;
− 得られた溶液の触媒の存在下での加水分解工程;
− 場合により紫外線吸収特性を有する化合物の添加工程;
− 場合により疎水化剤の添加工程;
− 場合により帯電防止剤及び反射低減剤の添加工程;
− 場合により光触媒特性を有する化合物の添加工程;
− 場合により増粘剤としてのポリマーの添加工程;
− 場合により抗細菌性を有する化合物の添加工程;
− 当該基材上でのゾルの付着工程;
− 皮膜の最終的な乾燥及び硬化工程;
を含む基材上での透明皮膜の製造方法。
【請求項2】
アルコキシドがテトラメチル−オルトシラン、テトラエチルオルトシラン、テトラエトキシオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、又はそれらの混合物の中で選択される、請求項1記載の基材上での透明皮膜の製造方法。
【請求項3】
アルコキシドの有機溶媒溶液は有利にはアセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン及び更にエタノールの中で選ばれる、請求項1記載の透明皮膜の製造方法。
【請求項4】
紫外線吸収特性を有する化合物が、ベンゾトリアゾール類、s-トリアジン類、オキサニリド類、サリチラート類、ヒドロキシベンゾフェノン類、ベンゾアート類及びα-シアノアクリラート類並びにTiO及びZnOの群からの無機分子の群から選択される、請求項1記載の透明皮膜の製造方法。
【請求項5】
疎水化剤を備えた化合物がテトラフルオロクチルトリエトキシ−シランである、請求項1記載の透明皮膜の製造方法。
【請求項6】
帯電防止特性及び反射低減特性を有する化合物が、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモンスズ及び酸化チタンの群から選択される、請求項1記載の透明皮膜の製造方法。
【請求項7】
増粘特性を有するポリマーが、300〜12000の分子量を有するポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレングリコールの群から選択される、請求項1記載の透明皮膜の製造方法。
【請求項8】
光触媒特性を有する化合物が二酸化チタン、酸化亜鉛の群から選択される、請求項1記載の透明皮膜の製造方法。
【請求項9】
抗細菌性を有する化合物がAgOである、請求項1記載の透明皮膜の製造方法。
【請求項10】
溶媒中のアルコキシド溶液又は混合物が20質量%〜60質量%である、請求項1記載の皮膜の製造方法。
【請求項11】
アルコキシドの加水分解が制御された量の水の添加によって行われる、請求項1記載の皮膜の製造方法。
【請求項12】
モル比HO/Meが0.3〜6である、請求項12記載の皮膜の製造方法。
【請求項13】
触媒が0.1〜3のKaを有する鉱酸及び有機酸の中で選択された酸である、請求項1記載の皮膜の製造方法。
【請求項14】
乾燥温度が60〜200℃である、請求項1記載の皮膜の製造方法。

【公表番号】特表2010−513006(P2010−513006A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542045(P2009−542045)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064191
【国際公開番号】WO2008/074823
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(501094502)デグサ ノヴァラ テクノロジー ソチエタ ペル アツィオーニ (15)
【氏名又は名称原語表記】Degussa Novara Technology S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Pisacane 7/B, I−20016 Pero (MI), Italy
【Fターム(参考)】