説明

ポリマー性人工涙液系

本発明は、人工涙液処方物および薬物送達に適した眼用処方物に関する。上記処方物は、ガラクトマンナン(例えば、グアールもしくはヒドロキシプロピルグアール)およびボレート源(例えば、ホウ酸)を含む。上記処方物は、cis−ジオール(例えば、ソルビトール(これは、ガラクトマンナンおよびボレートの架橋を妨げる))をさらに含む。必要に応じて、上記処方物は、二価カチオン(例えば、マグネシウム、亜鉛およびカルシウム)を実質的に含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願との相互参照)
本願は米国特許法§119に基づき、2008年4月26日に出願された米国特許仮出願第61/048,175号に対する優先権を主張する。この仮特許出願の内容は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、人工涙液処方物および眼用薬物送達のための処方物、およびより具体的には、cis−ジオールを含むガラクトマンナン−ボレートポリマー系に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
多くの眼用処方物は、潤滑および他の望ましい特性を提供する化合物を含む。これら処方物は点眼される場合、このような化合物の特性は、望ましくない問題(例えば、生体接着および摩擦誘導性組織損傷の形成)を防止し得、また、以前に損傷した組織の自然治癒および回復を促進し得る。
【0004】
多くの市販の人工涙液製品は、揺変性特性および粘弾性特性を示すポリマーを含む。これらポリマーのうちのいくつかとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ガラクトマンナン(例えば、グアールおよびヒドロキシプロピルグアール)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、およびアルギン酸ナトリウムが挙げられる。ポリマーのずれ揺変および粘弾性プロフィールは、上記涙膜と混合された場合に重要な役割を果たす。
【0005】
人工涙液製品中のポリマーの保持プロフィール、潤滑および粘膜模倣特性は、上記涙膜を安定化するのを助けかつドライアイ疾患を有する患者に改善された快適さを提供することによって重要な役割を果たし得る。例えば、ヒドロキシプロピルグアール、ならびに活性成分ポリエチレングリコール400およびプロピレングリコールを含む製品Systane(登録商標)(Alcon,Inc.)は、眼の不快感を除去することにおいて、類似の粘性増強ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース)より有効であると、Paughら,(2008)によって報告された。
【0006】
人工涙液において使用されるポリマーのバルクレオロジーは、しばしば、定常状態剪断力(ずれ揺変)および動的振動試験(粘弾性)によって特徴付けられる。これら試験は価値があるが、これらバルクレオロジー実験は、このようなポリマーの界面特性を十分に特徴付けるわけではない。上記ポリマーの界面特性の理解は重要である。なぜなら、これら特性は、角膜/涙膜界面および涙膜/空気界面の両方において、涙膜成分との相互作用において重要な役割を果たし得るからである。人工涙液において使用されるポリマーの動的特性および界面特性を理解するのを助け得る別のレオロジー試験は、本明細書で記載される振動液滴実験である。
【0007】
眼用処方物は、以前記載されてきており、これらは、ガラクトマンナン−ボレートゲル化系を利用する。特許文献1(Asgharian,発明の名称「Ophthalmic compositions containing galactomannan polymers and borate」)は、このような系を記載しており、その全体が本明細書に参考として援用される。ガラクトマンナンおよびボレートの架橋は、記載される処方物のゲル形成挙動の原因である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,403,609号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般に、ガラクトマンナン(例えば、グアールもしくはヒドロキシプロピルグアール)を含む、ガラクトマンナンを含む眼用処方物に関する。本発明の処方物はまた、ボレート源(例えば、ホウ酸)を含む。cis−ジオール(例えば、ソルビトールもしくはプロピレングリコール)は、上記処方物中に存在し、上記ガラクトマンナンおよびボレートの架橋を妨げる。上記cis−ジオールは、上記ガラクトマンナンに対するその拡散特性に基づいて選択される。代表的には、本発明の眼用処方物は、比較的低分子であり、上記眼の涙膜において、上記ガラクトマンナンより迅速に拡散するcis−ジオール(例えば、ソルビトール)を含む。点眼すると、上記cis−ジオールの濃度は、上記ガラクトマンナンとは異なる速度で低下し、上記ガラクトマンナンおよびボレートが架橋して、その場で構造化されたポリマーネットワークを形成することを可能にする。従って、上記処方物の点眼後のゲル化挙動およびレオロジー特徴は、上記cis−ジオールの選択を介して制御される。
【0010】
本発明の処方物は、上記ガラクトマンナンおよびボレートの架橋を強め得る二価カチオン(例えば、マグネシウム、亜鉛およびカルシウム)を実質的に含まない。いったん処方物が点眼されると、上記涙膜中に存在する二価カチオンは、構造化されたガラクトマンナン−ボレートポリマーネットワークの形成を増強する。
【0011】
本発明の処方物はまた、眼の治療剤のための薬物送達ビヒクルとして有用である。処方物を点眼すると、ガラクトマンナン−ボレートポリマーネットワークが形成される;このネットワークは、粘滑剤を含め、眼上で種々の治療剤を保持し得る。
【0012】
前述の概要は、本発明の特定の実施形態の特徴および技術的利点を広く記載する。さらなる特徴および技術的利点は、以下の発明の詳細な説明に記載される。
【0013】
本発明のより完全な理解およびその利点は、添付の図面の図とともに考えれば、以下の説明に言及することによって獲得され得る。添付の図面において、類似の参照番号は、類似の特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、ボレートおよびガラクトマンナンの架橋挙動の模式図である。
【図2】図2は、pH7.9およびpH7.6におけるガラクトマンナン−ボレート処方物についての、剪断速度の関数としての定常状態流動(SSF)粘性を示すグラフである。
【図3】図3は、0.0w/v%、0.5w/v%、1.0w/v%および1.4w/v%のソルビトールを含む処方物についての、剪断速度の関数としての定常状態流動(SSF) 対 粘性を示すグラフである。
【図4】図4は、pH7.9およびpH7.6における処方物についての液滴の振幅の関数としての、振動液滴振幅掃引弾性率(oscillating drop amplitude sweep elastic moduli)(Re|E1|)を示すグラフである。
【図5】図5は、0.0w/v%、0.5w/v%、1.0w/v%および1.4w/v%のソルビトールを有する処方物についての、トルクの関数としての応力掃引tan(δ)を示すグラフである。
【図6】図6は、0.0w/v%および1.4w/v%のソルビトールを有する処方物についての、液滴の振幅の関数としての振動液滴振幅掃引弾性率(Re|E1*|)を示すグラフである。
【図7】図7は、眼に処方物を適用した後の状態を模倣するために、生理食塩水コントロール、OPTIVE(登録商標)、blink Tears(登録商標)およびソルビトールなしのガラクトマンナン−ボレート処方物(pH7.6)について、摩擦スクリーニングモデルにおける組織へ適用した1分後および2分後の、平均摩擦係数を示すグラフである。
【図8】図8は、生理食塩水コントロール、OPTIVE(登録商標)、blink Tears(登録商標)およびソルビトールなしのガラクトマンナン−ボレート処方物(pH7.6)について、処方物適用の1分後および2分後;3ブロット/Unisol(登録商標)適用の各々の後(すすぎ後1、2および3)における、ベースライン(Unisol(登録商標),生理食塩水コントロール)と比較した、試験処方物に摩擦係数における平均%低下のグラフである。
【図9】図9は、Unisol(登録商標)生理食塩水コントロールと本発明のガラクトマンナン−ボレート人工涙液処方物の平均保持時間を比較する棒グラフである。
【図10】図10は、Optive(登録商標)(カルボキシメチルセルロース(CMC)およびグリセリンがベースの人工涙液)および本発明のガラクトマンナン−ボレート人工涙液処方物を比較する研究結果をまとめる棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明の処方物は、水溶液中のガラクトマンナン−ボレート系を利用する。ボレートアニオンは、上記ガラクトマンナン分子のcis−ジオール基上で縮合し、図1に示されるように、第2のガラクトマンナン分子と架橋し得る。ボレートおよびガラクトマンナンの架橋は、とりわけ、pHのような要因によって影響を受け、このような架橋は、続いて、上記溶液の粘性に影響を及ぼす。本発明は、眼用処方物におけるボレートおよびガラクトマンナンの架橋を妨害し、それによって、上記処方物のゲル化および他のレオロジー特徴に影響を及ぼすための、cis−ジオール(例えば、ソルビトールおよびプロピレングリコール)の使用に関する。cis−ジオールの存在下で、ボレートおよびガラクトマンナンは、水溶液中で低下した架橋挙動を示し、低い溶液粘性を生じる。点眼可能な眼用処方物において使用される場合、上記低い粘性溶液は、目のかすみのような視覚に対して望ましくない効果を引き起こす可能性が低下する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、上記cis−ジオールであるソルビトールは、ガラクトマンナン含有処方物およびボレート含有処方物において使用される。ソルビトールは、上記ガラクトマンナンおよびボレートの架橋を阻害する第1の濃度で存在する。いったん点眼されると、上記ソルビトールは、天然の涙膜によって希釈され、上記ガラクトマンナンおよびボレートの架橋において徐々に増大すること、および対応して、粘性および弾性において徐々に増大することを可能にする。粘性、架橋、および弾性においてこの徐々に増大することは、接触した際の効率的拡がりおよび目のかすみが少なくなることを可能にし、長期間の潤滑および角膜表面保護をさらに提供する。
【0017】
二価カチオン(例えば、カルシウム)は、一般に、ガラクトマンナンおよびボレートと相互作用して、架橋挙動を強める。ガラクトマンナン含有処方物およびボレート含有処方物に存在する場合、二価カチオンは、このような処方物の全体的な粘性を増大させ得る。本発明の処方物は、ガラクトマンナン−ボレート架橋において望ましくない変化、よって、処方物粘性を別の方法で与える二価カチオンを実質的に含まない。二価カチオンとしては、マグネシウム、クロリド(chloride)、および亜鉛カチオンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、用語「二価カチオンを実質的に含まない」とは、上記処方物が、上記処方物のガラクトマンナン−ボレートポリマー系の架橋を妨げない二価カチオン濃度を含むことを意味する。一般に、二価カチオンの濃度は、ガラクトマンナン−ボレートポリマー系との干渉を回避するために、5ppm未満であるべきである。
【0018】
本発明において使用され得るガラクトマンナンのタイプは、代表的には、グアールガム、イナゴ豆ガムおよびタラガム(tara gum)に由来する。本明細書で使用される場合、用語「ガラクトマンナン」とは、主な構造成分として、マンノース部分もしくはガラクトース部分、または両方の基を含む、上記天然のガム、または類似の天然もしくは合成のガムから誘導されるポリサッカリドをいう。本発明の好ましいガラクトマンナンは、(1−4)−β−D−マンノピラノシルユニットと、(1−6)結合によって結合したα−D−ガラクトピラノシルユニットとの直鎖から構成される。好ましいガラクトマンナンでは、D−ガラクトース 対 D−マンノースの比は変動するが、一般に、約1:2〜1:4である。D−ガラクトース:D−マンノース比が約1:2であるガラクトマンナンが、最も好ましい。さらに、上記ポリサッカリドの他の化学的に改変されたバリエーションはまた、「ガラクトマンナン」の定義に含まれる。例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルおよびカルボキシメチルヒドロキシプロピル置換は、本発明のガラクトマンナンに対して行われ得る。上記ガラクトマンナンに対する非イオン性のバリエーション(例えば、アルコキシ基およびアルキル(C1−C6)基を含むもの)は、柔らかいゲルが所望される場合に特に好ましい(例えば、ヒドロキシルプロピル置換)。上記非cisヒドロキシル位置での置換は、最も好ましい。本発明のガラクトマンナンの非イオン性置換の例は、約0.4のモル置換を有するヒドロキシプロピルグアールである。アニオン性置換はまた、上記ガラクトマンナンに対して行われ得る。アニオン性置換は、強い応答性のゲルが望ましい場合に、特に好ましい。ガラクトマンナンは、代表的には、約0.01〜約10w/v%の濃度、好ましくは、約0.1w/v%〜約2.0w/v%の濃度、および最も好ましくは、約0.16〜約0.19w/v%の濃度において、本発明の処方物中に存在する。本発明の好ましいガラクトマンナンは、グアールおよびヒドロキシプロピルグアールである。
【0019】
本発明の実施形態で使用され得る上記cis−ジオール化合物としては、cis−ジオール基(隣り合う炭素原子に結合したヒドロキシル基)を含む親水性炭水化物(例えば、ソルビトールもしくはマンニトール)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましいcis−ジオール化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリエチレンオキシド−ポリブチレンオキシドブロックコポリマーが挙げられる。特に好ましいcis−ジオール化合物は、ソルビトールおよびマンニトールである。上記cis−ジオール化合物は、本発明の処方物において約0.5〜5.0w/v%の濃度で存在し、好ましくは、約1.4%の濃度で存在する。上記cis−ジオール化合物の分子量は、上記cis−ジオールが拡散し、上記ガラクトマンナンより速い速度で涙膜から除去されることを確実にし、増大したガラクトマンナン−ボレート架橋を可能にするように、選択される。一般に、このようなcis−ジオール化合物の分子量は、400g/mol〜5000000g/molの間である。
【0020】
ボレートは、代表的には、約0.2〜約2.0w/v%の濃度で、好ましくは、約0.7w/v%で存在する。本明細書で使用される場合、用語「ボレート」とは、ボレートの全ての薬学的に適切な形態に言及し、ホウ酸、およびアルカリ金属ボレート(例えば、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム)が挙げられるが、これらに限定されない。ホウ酸は、本発明の実施形態で使用される好ましいボレートである。
【0021】
本発明の組成物において使用され得る上記ボレート化合物は、ホウ酸および他の薬学的に受容可能な塩(例えば、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)およびホウ酸カリウム)である。本明細書で使用される場合、用語「ボレート」とは、ボレートの全ての薬学的に適切な形態をいう。ボレートは、生理学的pHでの良好な緩衝能、ならびに周知の安全性、および広い範囲の薬物および保存剤との適合性に起因して、眼用処方物において一般的な賦形剤である。ボレートはまた、固有の静菌特性および静真菌特性を有し、従って、上記組成物の保存を助ける。
【0022】
本発明の処方物は、必用に応じて、1種以上のさらなる賦形剤および/もしくは1種以上のさらなる活性成分を含み得る。薬学的処方物中で一般に使用される賦形剤としては、粘滑剤、張度調節剤(tonicity agent)、保存剤、キレート化剤、緩衝化剤、および界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の賦形剤は、可溶化剤、安定化剤、快適さを高める薬剤、ポリマー、緩和剤(emollient)、pH調節剤および/もしくは滑沢剤を含み得る。種々の賦形剤のうちのいずれも、本発明の処方物において使用され得る。上記賦形剤としては、水、水と水混和性溶媒(例えば、C1−C7−アルカノール)との混合物、0.5〜5% 非毒性水溶性ポリマーを含む植物性油もしくはミネラルオイル、天然産物(例えば、アルギネート、ペクチン、トラガカントガム、カラヤゴム、キサンタンガム、カラギーナン、寒天およびアカシアガム)、デンプン誘導体(例えば、デンプンアセテートおよびヒドロキシプロピルデンプン)、ならびに同様に他の合成生成物(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、好ましくは架橋されたポリアクリル酸、ならびにこれら生成物の混合物が挙げられる。
【0023】
本発明の実施形態で使用される粘滑剤としては、グリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびポリアクリル酸が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい粘滑剤は、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール 400である。
【0024】
適切な張度調節剤としては、マンニトール、塩化ナトリウム、グリセリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。適切な緩衝化剤としては、ホスフェート、アセテートなど、およびアミノアルコール(例えば、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP))が挙げられるが、これらに限定されない。適切な界面活性剤としては、イオン性および非イオン性の界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されないが、非イオン性界面活性剤が好ましい(RLM 100、POE 20 セチルステアリルエーテル(例えば、Procol(登録商標) CS20およびポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標)F68))。
【0025】
本明細書で記載される処方物は、1種以上の保存剤を含み得る。このような保存剤の例としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、過ホウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、アルコール(例えば、クロロブタノール、ベンジルアルコールもしくはフェニルエタノール)、グアニジン誘導体(例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド)、過ホウ酸ナトリウム、ポリクオタニウム−1、もしくはソルビン酸が挙げられる。特定の実施形態において、上記処方物は、保存剤が必要とされないように自己保存性であり得る。
【0026】
本発明の処方物は、被験体の眼への適用のために眼科的に(ophthalmically)適切である。用語「水性の」とは、代表的には、水性処方物を示し、ここで上記賦形剤は、水の重量の、>50%、より好ましくは、>75%および特に、>90%である。これら点眼剤は単一用量アンプルから送達され得る。このアンプルは、好ましくは無菌であり得、従って、上記処方物の静菌成分を不要にする。あるいは、上記点眼剤は、複数用量ボトルから送達され得、上記ボトルは、好ましくは、送達されるときに、上記処方物から任意の保存剤を抽出するデバイスを含み得る。このようなデバイスは、当該分野で公知である。
【0027】
本発明の処方物は、蒸発および/もしくは疾患によって引き起こされる涙液のいかなる高張性とも戦うために、好ましくは、等張性であるか、またはわずかに低張性である。このことは、上記処方物の重量オスモル濃度を、210〜320ミリオスモル/キログラム(mOsm/kg)もしくはその付近のレベルにまでするために、張度調節剤を必要とし得る。本発明の処方物は、一般に、220〜320mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有し、好ましくは、235〜300mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する。上記眼用処方物は、一般に、滅菌水溶液として処方される。
【0028】
本発明の組成物はまた、薬学的に活性な化合物を投与するために使用され得る。このような化合物としては、緑内障治療剤、疼痛緩和剤、抗炎症薬および抗アレルギー薬、ならびに抗菌剤が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に活性な化合物のより具体的な例としては、ベタキソロール、チモロール、ピロカルピン、カルボニックアンヒドラーゼインヒビターおよびプロスタグランジン;ドパミン作用性アンタゴニスト;手術後降圧剤(例えば、パラ−アミノクロニジン(アプラクロニジン);抗感染剤(例えば、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、およびトブラマイシン);非ステロイド性およびステロイド性の抗炎症剤(例えば、ナプロキセン、ジクロフェナク、ネパフェナク、スプロフェン、ケトロラク、テトラヒドロコルチゾールおよびデキサメタゾン);ドライアイ治療剤(例えば、PDE4インヒビター);ならびに抗アレルギー薬(例えば、H1/H4インヒビター、H4インヒビター、およびオロパタジン)が挙げられる。
【0029】
本発明の処方物を構成する成分の濃度は変動し得ることもまた、予測される。当業者は、所定の処方物中の成分の追加、置換、および/もしくは除去に依存して、上記濃度は変動し得ることを理解する。
【0030】
好ましい処方物は、pH約6.5〜pH約8.0において上記処方物を維持する緩衝系を使用して調製される。局所的処方物(特に、上記に記載されるような、局所的眼用処方物)が好ましく、これは、上記処方物が適用されるかもしくは供給される組織と合う生理学的pHを有する。
【0031】
特定の実施形態において、本発明の処方物は、1日に1回投与される。しかし、上記処方物はまた、任意の投与頻度(1週間に1回、5日ごとに1回、3日ごとに1回、2日ごとに1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、1日に5回、1日に6回、1日に8回、1時間ごと、もしくはより高い頻度が挙げられる)での投与のために処方され得る。このような投与頻度はまた、治療レジメンに依存して、変動する継続時間にわたって維持される。特定の治療レジメンの継続時間は、1回投与から数ヶ月もしくは数年にわたって延びるレジメンまで変動し得る。当業者は、特定の適応症についての治療レジメンを決定することに精通している。
【0032】
以下の実施例は、本発明の選択された実施例をさらに例示するために示される。
【実施例】
【0033】
実施例1は、本発明の実施形態に従う処方物である。実施例2および実施例3は、本発明の実施形態に従う処方物に対して行われた研究をまとめる。
【0034】
(実施例1)
【0035】
【表1】

(実施例2)
ヒドロキシプロピルグアール、ボレートおよびソルビトールを含む種々の溶液を、cis−ジオール(例えば、ソルビトール)の使用が、ヒドロキシプロピルグアール−ボレート処方物のバルクレオロジー、界面レオロジーおよび潤滑特性をいかにして改変し得るかを調査するために、インビトロで特徴付けた。上記行った実験は、ガラクトマンナン−ボレート架橋系を含むpH7.9の処方物におけるソルビトールの効果を示し、より低いpH(7.6)において眼にこのような処方物を導入することを模倣する。ヒドロキシプロピルグアール(M=3×10g/mol,多分散系比率(polydispersity ratio)(PD)=2−3)を、これら実験において使用される人工涙液(ATDS)の調製において使用した。これら実験のために使用したATDSが、上記実施例1の処方物であり、pHを、7.9もしくは7.6に調節し、ソルビトールの濃度を変動させたものである。
【0036】
バルクレオロジー実験を、制御された応力レオメーター(AR 2000ex,TA Instruments,Inc.)を使用して行った。上記測定システムは、40mmのアクリル性の2°円錐および0.58mLのサンプル体積を有するプレートであった。25℃±0.1℃の温度を維持し、上記溶液の蒸発を防止するために、上記測定システムの上にカバーを置いた。定常状態流動(SSF)実験については、上記機器は、制御された応力を適用し、これは、次に、粘性 対 剪断速度としての結果を与える。2つの動的試験を行った:振動応力掃引および振動周波数掃引。上記振動応力掃引は、上記溶液の周波数を一定に保持しながら、応力の範囲を測定する。上記振動応力掃引は、G’(弾性/貯蔵弾性率)およびG”(粘性の損失率)を測定する。この情報から、線形粘弾性領域(LVR)を決定し得る。上記LVRは、G’から得られた応力掃引における領域である。ここで上記溶液は、ある範囲の応力に対して、その弾性G’を保持する。相対的弾性であるtan(δ)=G”/G’の尺度は、これら実験から得られる。上記振動周波数掃引は、上記LVR内の応力を一定に保持しながら、ある範囲の周波数を測定する。この測定値は、G’、G”およびtan(δ)をも決定し得る。上記振動周波数掃引は、溶液が、その構造をいかに十分に維持するかを示す。
【0037】
界面レオロジー実験を、上記液滴の振動を制御する圧電デバイスおよび増幅器を装備した光学的振動液滴生成デバイス(OCA20,Dataphysics Instruments)を使用して行った。1.65mm外径のステンレス鋼ニードルの先端にある温度および湿度制御セル中にぶら下がっている液滴を、500イメージ/秒においてCCDカメラ(768×576ピクセル)で観察した。上記振動液滴生成器(ODG)技術は、ある範囲の振幅にわたって設定周波数において上記液滴の形状を分析することによって形成される膜の機械的強度を特徴付ける。(Liら(1999);Paddayら,(1969);Mianoら(2006);およびMianoら(2005)を参照のこと)。上記振幅は、上記液滴の体積および形状、従って、表面積を変化させる。
【0038】
上記動的界面張力を、上記液滴形状プロフィールを分析することによって決定した。重力gの下での密度ρの吊り下げ液滴のYoung−Laplaceモデルは、以下によって表面張力γを与える:
【0039】
【数1】

いったん上記液滴が平衡に達すると、上記液滴体積は、設定周波数において正弦的に変動すると同時に、上記振動の振幅は変化する。この技術は、上記液滴の表面張力が、その表面の動的変動の過程において上記液滴の表面にわたって均一なままであると仮定する。このことから、ギブスの式に従って、上記界面膨張率Eを決定することが可能である:
【0040】
【数2】

ここでRe|E1|は、上記界面の弾性率である。上記界面の弾性率は、界面構造の有意性を示し、界面弾性特性を示す。Im|E1|は、上記界面の損失率である。
【0041】
摩擦スクリーニング実験を、Meyerらの方法(2006)を使用して、組織を重ねた(tissue−on−tissue)(心膜を重ねた(pericardium−on−pericardium))基材を備えたピンオンディスク摩擦計(pin−on−disc tribometer)を使用して行った。新たな組織−組織対を、この研究において使用した全ての新たな溶液について使用した。使用した溶液は、眼の中の状態(ソルビトールなしおよびpH7.6)を模倣するために、Unisol(登録商標)生理食塩水コントロール(Alcon,Inc.)、OPTIVE(登録商標)(Allergan,Inc.)、blink(登録商標) Tears(Abbott Medical Optics,Inc.)および上記ATDSを含んだ。上記試験した4種の溶液のうち、上記ATDSのみが、上記眼に適用される場合に、ゲル化挙動を示す。上記装置条件を、瞬目率については30回の完全サイクル/分、瞬目速度については2.5cm/秒、および瞬目圧については8kPaで設定した。上記摩擦スクリーニングプロトコルは、以下の工程を含んだ。第1に、50μl Unisol(登録商標)生理食塩水コントロールを使用したベースライン測定を行った。次に、すすぎおよび瞬目の前の眼への溶液の拡がり、ぬれおよび最初の保持の模倣を、上記試験処方物50μlを組織へ適用することによって行った。次いで、上記組織対を、接触状態に戻した。測定を適用後、かつ50μl Unisol(登録商標)で3回組織をすすいだ各々の、1分後および2分後に行った。
【0042】
(結果)
図2は、pH7.9およびpH7.6における上記ATDSについての、剪断速度の関数として、定常状態流動(SSF)粘性を示すグラフである。上記SSFデータは、上記pHが、7.9から7.6へと低下するにつれて、上記粘性が低下し、そしてpH7.6およびpH7.9の上記ATDSは、いくらかのずれ揺変特性を示したことを実証する。よって、pH7.9の上記ATDSは、涙膜と混合した場合に、および低い方のpH7.6への調節を介して、剪断力が希薄化し、効率的に拡がり、そして接触の際のかすみが少なくなる。
【0043】
図3は、0.0w/v%、0.5w/v%、1.0w/v%、および1.4w/v%のソルビトールを有する上記ATDSについての剪断力速度の関数として、定常状態流動(SSF)粘性を示すグラフである。上記SSFデータは、上記ATDSのSSF流動特性に対するソルビトールの調節効果、およびソルビトール濃度の低下が粘性の増加をもたらすことを示す。図3は、ガラクトマンナンおよびボレート溶液のソルビトール濃度が増加するにつれて、その溶液の測定される値性が低下することを示す。
【0044】
図4は、pH7.9およびpH7.6の上記ATDSについての液滴の振幅の関数として、振動液滴振幅応力掃引弾性率(Re|E1*|)を示すグラフである。これら実験において、高い弾性率は、上記水/空気界面においてより多くの構造体に相関する。上記応力掃引データは、上記水/空気界面における上記ATDSの弾性の寄与の重要性を示す。pH7.9およびpH7.6の両方で、上記ATDSは、界面において顕著に弾性であった。このデータは、上記ATDSが、図2において示されるデータによって実証されたその希薄化および拡がる特性にも拘わらず、弾性の構造を維持したことを示す。
【0045】
図5は、0.0w/v%、0.5w/v%、1.0w/v%および1.4w/v%のソルビトールを有するATDSについてのトルクの関数として、応力掃引tan(δ)を示すグラフである。低いtan(δ)は、より弾性であることに相関する。ソルビトールの低下は、上記ATDSの弾性を増大させる。ソルビトールを有さない上記処方物は、最も高い弾性および最も低いtan(δ)を有する。この実験は、ガラクトマンナンボレート溶液のポリマー構造が、ソルビトールの希釈を介して増大することを示し、このことは、ガラクトマンナン−ボレート架橋についてのより大きなボレートの利用性を示す。
【0046】
図6は、0.0w/v%および1.4w/v%のソルビトールを有する上記ATDSについての液滴の振幅の関数として、振動液滴振幅掃引弾性率(Re|E1|)を示すグラフである。図3のデータと同様に、高い弾性率は、上記界面においてより多くの構造体に相関する。上記実験は、ソルビトールの希釈が、上記ATDSの表面弾性を増大させることを示す。さらに、上記ODGデータは、両方のATDSが、顕著に弾性でありかつ上記水/空気界面においてゲル様特性を有することを示す。
【0047】
図7は、摩擦スクリーニングモデルにおいて上記組織へ試験溶液を適用して1分後および2分後の、平均摩擦係数(Cof)を示すグラフである。上記使用した試験溶液は、生理食塩水コントロール、Optive(登録商標)、blink Tears(登録商標)および眼模倣溶液(ソルビトールなし、pH7.6)中の上記ATDSであった。上記Cofデータは、t=1分およびt=2分において測定した後の、上記試験溶液間の有意差を示した。上記生理食塩水コントロールは、t=1分およびt=2分の両方において最も高いCofを有し、続いて、blink Tears(登録商標)およびOptive(登録商標)であった。活性成分であるポリエチレングリコール 400およびプロピレングリコールと、ヒドロキシプロピルグアールを含む上記ATDSは、上記試験溶液の最低のCofを示した。
【0048】
図8は、生理食塩水コントロール、Optive(登録商標)、blink Tears(登録商標)およびソルビトールなしのATDSについて、処方物の適用の1分後および2分後;および3ブロット/Unisol(登録商標)適用の各々の後(すすぎ後1、すすぎ後2およびすすぎ後3)の、ベースライン(Unisol(登録商標),生理食塩水コントロール)と比較して、摩擦係数における平均%低下を示すグラフである。上記摩擦係数(Cof)は、表面での処方物潤滑能の尺度である。上記Cofデータは、すすぎ後サイクルの後の試験溶液間の有意差を示し、上記ATDSが上記すすぎサイクルを介して低い摩擦係数を維持する能力を実証する。例えば、t=1分、t=2分、すすぎ後1およびすすぎ後3における上記ATDSについての%Cofデータは、それぞれ、82%、83%、85%および75%であった。生理食塩水コントロール、blink Tears(登録商標)、Optive(登録商標)および上記ATDSについてのすすぎ後3の時点での平均%Cofは、それぞれ、3%、6%、11%および75%であった。上記ATDSは、上記心膜組織基材に対して、上記試験溶液の最低のCofを維持した。上記ATDSを上記試験基材に適用した際の上記低いCofデータおよびすすぎサイクル後にも上記低いCofデータが残っていることは、図2〜6に示されるように、上記ATDSのバルクレオロジー特性および界面レオロジー特性を示すと考えられた。
【0049】
(実施例3)
実施例1のATDS処方物を、生理食塩水コントロール溶液(Unisol(登録商標))およびカルボキシメチルセルロース/グリセリン処方物であるOptive(登録商標)に対する2回のインビボ研究において比較した。
【0050】
(保持時間研究)
潤滑点眼剤の重要な尺度は、眼の表面保持もしくは膨潤時間の評価である。本発明のガラクトマンナン−ボレート溶液(実施例1のATDS処方物)の平均保持時間を、蛍光光度分析技術を使用して、生理食塩水コントロール溶液(Unisol(登録商標))と比較した。簡潔には、約70kDのフルオレセイン標識デキストラントレーサー(Molecular Probes,Eugene,Oregon)を、0.1w/v%の濃度にて各試験処方物に添加した。走査式蛍光光度計(Ocumetrics,Mountain View,California)を使用して、上記処方物の除去に対応するシグナル減衰をモニターした。25名のドライアイ患者を調査し、上記試験処方物の適用のおよそ2分ごとに測定を行った。
【0051】
上記調査の結果は、Laneら(2009)によって報告されるように、上記ATDS処方物が上記生理食塩水コントロール溶液より有意に長く維持された(平均保持時間31分 対 コントロール22分)ことを示す。この統計学的に有意な(p=0.0003)データは、上記のインビトロ研究と一致する。例えば、図8は、上記ATDSが、瞬目の効果を模倣する数回の洗浄にも拘わらず、他の溶液(Unisol(登録商標)およびOptive(登録商標)を含む)と比較して、インビトロで低い摩擦係数(Cof)を維持することを示す。従って、上記ATDS溶液のレオロジー特性は、眼に適用される場合に、優れた保持時間性能を生じるようである。
【0052】
(瞬目間間隔視力低下)
視覚機能に対するドライアイの影響を、瞬目間の視力低下のリアルタイム測定を使用して、瞬目間間隔視力低下(interblink interval visual acuity decay)(IVAD)を試験することによって評価し得る。図10は、Optive(登録商標)(カルボキシメチルセルロース(CMC)およびグリセリンがベースの人工涙液)および実施例1のATDS処方物を比較する研究の結果をまとめる棒グラフである。
【0053】
上記研究において、48名のドライアイ患者に、期間中7日間の洗浄を伴う無作為化様式で、両方の製品を与えた。瞬目期間内に患者が最高の矯正視力(BCA)を維持し得る時間(秒)として記録したIVADのベースライン測定を行った。試験溶液の1液滴の後、15分後、45分後および90分後に、IVAD測定を反復した。
【0054】
Torkildsenら(2009)によって報告されるように、上記ATDS処方物で処置された患者は、上記Optive(登録商標)処方物と比較して、点眼の90分後に、BCVAの一線減少(one−line loss)に対して有意に長期化したメジアン時間を有した。上記ATDS処方物は、ベースラインと比較して、瞬目間期間内のBCVAにおいて、時間単位で58%増加を可能にし、上記CMC/グリセリンOptive(登録商標)処方物より有意に長かった(33%)。
【0055】
本発明およびその実施形態は、詳細に記載されてきた。しかし、本発明の範囲は、本明細書に記載されるいかなるプロセス、製造、組成物、化合物、手段、方法、および/もしくは工程の特定の実施形態にも限定されないことが意図される。種々の改変、置換、およびバリエーションが、本発明の趣旨および/もしくは本質的な特徴から逸脱することなく、開示される物質に対して行われ得る。よって、当業者は、本明細書で記載される実施形態と同じ機能を実質的に発揮するかもしくは同じ結果を実質的に達成する後の改変、置換、および/もしくはバリエーションが、本発明のこのような関連する実施形態に従って利用され得ることを、上記開示から容易に認識する。従って、以下の特許請求の範囲は、本明細書で開示されるプロセス、製造、組成物、化合物、手段、方法および/もしくは工程に対して、それらの範囲内で改変、置換、およびバリエーションを包含することが意図される。
【0056】
(参考文献)
以下の刊行物は、その全体が本明細書に参考として援用される:
Aragona P, Papa V, Micali A, Santocono M, Milazzo G, “Long term treatment with sodium hyaluronate−containing artificial tears reduces ocular surface damage in patients with dry eye”, Br J Ophthalmology, Vol. 86:181−184, 2002。
【0057】
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【0058】
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【0059】
D’Arienzo P, Ousler G, Schindelar M, “A comparison of two marketed artificial tears in improvement of tear film stability as measured by tear film break−up time (TFBUT) and ocular protection index (OPI)”, Poster presentation, Tear Film and Ocular Surface Society Meeting 2007, Taormina, Sicily。
【0060】
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【0061】
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【0062】
Li J, Kretzschmar G, Miller R, Mohwald H, Colloids and Surfaces A, Vol. 149:491, 1999。
【0063】
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【0065】
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【0068】
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【0069】
Ousler G, Michaelson C, Christensen M, “An Evaluation of Tear Film Break−up Time Extension and Ocular Protection Index Scores between Three Marketed Lubricant Eye Drops”, Cornea, Vol. 26(8):949−952, 2007。
【0070】
Padday J, Matijevic E, (Ed.), Surface and Colloid Science, Vol. 1:101, Wiley−Interscience, New York, 1969。
【0071】
Paugh J, Nguyen A, Ketelson H, Christensen M, Meadows D, “The pre−corneal residence time of artificial tears measured in dry eye subjects”, Optometry of Vision Science, Vol. 85(8):725−731, 2008。
【0072】
Pezron E, Ricard A, Lafuma F, Audebert R, “Reversible gel formation induced by ion complexation. 1. Borax−galactomannan interaction”, Macromolecules, Vol. 21:1121−1125, 1988。
【0073】
Pezron E, Ricard A, Leibler L, “Rheology of Galactomannan−Borax Gels”, Journal of Poly. Science: Part B: Poly. Phys., Vol. 28:2445−2461, 1990。
【0074】
Pollard S, Stone R, Christensen M, Ousler G, Abelson M, “Extension in tear film break−up time after instillation of HP−guar artificial tear substitute”, IOVS, Vol. 44, 2003 [E−Abstract 2489]。
【0075】
Torkildsen G, Martin A, Tudor M, Griffin J, Ousler G, Welch D, Abelson M, “Evaluation of functional visual performance using the IVAD method with currently marketed artificial tear products”, Poster Presentation, Association for Research in Vision and Ophthalmology Annual Meeting (ARVO) 2009。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトマンナン、ボレート、およびcis−ジオールを含む眼用処方物であって、ここで該処方物は、実質的に二価カチオンを含まない、処方物。
【請求項2】
前記ガラクトマンナンは、約0.1w/v%〜約2.0w/v%の濃度で存在し、前記ボレートは、約0.2w/v%〜約2.0w/v%の濃度で存在する、請求項1に記載の処方物。
【請求項3】
前記ガラクトマンナンは、約0.16w/v%〜約0.19w/v%の濃度で存在し、前記ボレートは、約0.7w/v%の濃度で存在する、請求項1に記載の処方物。
【請求項4】
前記ガラクトマンナンは、グアール、ヒドロキシプロピルグアール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の処方物。
【請求項5】
前記cis−ジオールは、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド−ポリブチレンオキシドブロックコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の処方物。
【請求項6】
前記cis−ジオールは、ソルビトールもしくはマンニトールである、請求項1に記載の処方物。
【請求項7】
前記cis−ジオールは、約1.4w/v%の濃度で存在する、請求項6に記載の処方物。
【請求項8】
前記ボレートは、ホウ酸である、請求項1に記載の処方物。
【請求項9】
グリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリアクリル酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される粘滑剤をさらに含む、請求項1に記載の処方物。
【請求項10】
前記粘滑剤が、ポリプロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールである、請求項9に記載の処方物。
【請求項11】
ガラクトマンナンおよびボレートを含む眼用処方物において、改善は、ガラクトマンナンおよびボレート架橋を防止するためにcis−ジオールを添加すること、それによって、該処方物の粘性を低減することを含む、眼用処方物。
【請求項12】
前記処方物はさらに、二価カチオンを実質的に含まず、それによって、前記処方物の粘性を低減する、請求項11に記載の処方物。
【請求項13】
眼を潤滑するための方法であって、該方法は、請求項1に記載の処方物を眼に投与する工程を包含する、方法。
【請求項14】
眼に薬学的に活性な薬剤を送達するための方法であって、該方法は、薬学的に活性な薬剤をさらに含む請求項1に記載の処方物を眼に投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
ガラクトマンナンおよびボレートを含む、改善された眼用処方物であって、該処方物は、該処方物が点眼される場合に、cis−ジオールを含み、該cis−ジオールは、該ガラクトマンナンより迅速に涙膜から除去される、処方物。
【請求項16】
前記ガラクトマンナンは、約0.16w/v%〜約0.19w/v%の濃度で存在し、前記ボレートは、約0.7w/v%の濃度で存在する、請求項15に記載の改善された眼用処方物。
【請求項17】
前記ガラクトマンナンは、グアール、ヒドロキシプロピルグアール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16に記載の改善された眼用処方物。
【請求項18】
前記cis−ジオールは、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド−ポリブチレンオキシドブロックコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項15に記載の改善された眼用処方物。
【請求項19】
前記cis−ジオールは、ソルビトールもしくはマンニトールである、請求項18に記載の改善された眼用処方物。
【請求項20】
前記処方物はさらに、二価カチオンを実質的に含まず、それによって、該処方物の粘性を低減する、請求項15に記載の改善された眼用処方物。
【請求項21】
前記処方物は、グリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリアクリル酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される粘滑剤をさらに含む、請求項15に記載の改善された眼用処方物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−518842(P2011−518842A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506485(P2011−506485)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/041699
【国際公開番号】WO2009/132294
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】