説明

ポリマー接着用組成物

少なくとも1種のアルコキシシラン部分と、ニトロソ芳香族もしくはニトロソ芳香族先駆物質およびそれらの組合せから選択される少なくとも1種の部分とを含有する化合物、および水性若しくは水含有キャリヤー媒体を有する組成物が、ポリマー接着において使用するために提供される。水は、化合物の十分な加水分解を可能にする。適当なポリマーは、ポリマー鎖内にジエンまたはアリル性基を有してもよく、例えば、エラストマー、例えば天然または合成ゴムである。ポリマーは、金属若しくはヒドロキシル化表面、例えばガラスなどの基体と接着できる。ニトロソベンゼン先駆物質は、キノンジオキシムまたはキノンオキシムの少なくとも1つであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリマー接着、例えば、エラストマー接着(例えばゴム接着用途など)において使用するのに適当な接着剤組成物が提供される。1態様は、このような接着用途向けの十分に加水分解され官能化されるシラン分子を含有する接着剤組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
強化複合材料は、軽量であるが、過酷な荷重と操作条件に付すのに十分な強度を必要とする高性能製品を製造する場合において重要な役割を果たす。一般的な強化材料には、木、ガラス、金属、水晶および炭素繊維が含まれる。このような材料で強化された複合材料は、種々の構造材料、例えば航空宇宙用材料およびレーシングカー車体などの製造における用途が見出されている。
【0003】
ポリマーと金属および特にゴムと金属の接着は、長年に亘り実施されている。ポリマー若しくはゴムと金属との接着をもたらす配合物に関して、多くの適用例が存在する。金属に対するゴムの接着は、天然または合成ゴムに対して種々の金属を接着させるために幅広く使用されている。金属に対するポリマーの接着は、種々の理由に基づき行われている。金属に対してゴムを接着することの1態様は、金属の構造強度とゴムのゴム状弾性とを組合せることである。
【0004】
その結果、金属およびポリマー(例えばゴムなど)は、例えばベアリング、ホイール、ショックアブソーバー、移動アームなどの衝撃吸収用途向けに、相互に接着される場合がある。このような構成部分は、極めて小さなスケール、例えば、PCの構成部分、または極めて大きなスケール、例えば橋およびビルなどの構造物において使用できる。また、金属とゴムの接着を用いることにより、防音をもたらすことができる。金属とゴムの相互接着を含む任意の構成部分により、強力な力の付与にも受容できる。したがって、金属またはゴムを相互に分離させることなく、衝撃を含む圧縮圧力、または広範囲におよぶ圧力などの著しい力に抵抗できる、金属とゴムとの接着を提供することが望ましい。様々な他の、ゴムと金属との接着用途が存在し、該用途には、タイヤ用の内部ワイヤー強化材とタイヤゴムとを接着させるタイヤ製造が含まれる。先行技術における組成物を以下に記載する。
【0005】
ガラス繊維強化複合材料は、マトリックス中に埋め込まれた高強度のガラス繊維から構成される。例えば、ガラス繊維強化コンクリートは、セメント系マトリックス中に埋め込まれたガラス繊維を含有し、ビルおよび他の構造的な建物における用途が見出されている。同様に、ガラス強化プラスチックは、プラスチック材料中に埋め込まれたガラス繊維を含有する。ガラス強化プラスチックは、高強度特性を有する軽量な材料を提供することを兼ね備える、非常に多目的な材料である。ガラス強化プラスチックは、構造工学から通信技術に至る多種多様な範囲において、その用途が見出されている。
【0006】
ガラスに対するエラストマーの接着は、エラストマー/ゴムのゴム状弾性とガラスの構造強度を組合わることにより、魅力的な手段を提供する。ガラス繊維などの強化繊維は、ゴム物品、例えばゴムベルト、タイヤおよびホースなどにおける強化材料として使用されている。特に、ガラス繊維は、慣性を損失することなく、クランクシャフトからオーバーヘッドカムシャフトへ力を同時に伝達する必要がある自動車のタイミングベルトを強化するのに使用されている。
【0007】
伝統的に、このようなガラスコード複合材料は、特殊なコーティング、例えばレソルシノールホルムアルデヒドラテックス(RFL)配合物などで、ガラス糸の各フィラメントをコーティングすることにより製造される。次いで、常套のゴムと金属の接着製品は、加硫工程を経由して、ゴムにRFLラテックスを接着させて使用される。
【0008】
従来の金属に対するゴムの接着技術は2段階法を包含し、第1工程はプライマーが塗布され、その後、第2工程において、接着剤が施される。通常、プライマーは、塩化ゴムおよび反応性基を含有するフェノール系樹脂、ならびに顔料、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、およびカーボンブラックなどの溶液または懸濁液からなる。一般に、プライマーは、例えば、グリットブラストまたは化学的に処理されている構成要素、例えば、処理されたスチール要素などの、処理(洗浄)金属成分の表面に薄い層として施される。
【0009】
通常、接着剤は、多くのゴム材料と架橋剤から構成される。これらは、塩化ゴムおよび臭化塩素化ゴム、架橋剤としての芳香族ニトロソベンゼン化合物およびビスマレイミド、溶媒としてのキシレン、ペルクロロエチレンおよびエチルベンゼン、ならびに鉛塩または亜鉛塩を含む(ただし、これらの限定されない)。一般に、接着剤層は、下塗りされた金属とゴムとの間の結合体である。ゴムと金属の接着技術において使用されている他の架橋剤は、芳香族ニトロソ化合物、例えばp-ジニトロソベンゼンなどである。
【0010】
金属とゴムの接着用に、多くの配合物が存在する。例えば、シランは、腐食防止剤として使用され、ゴムと金属接着の接着促進剤としても使用されている。US特許出願公開第2009/0181248は、ゴムと金属の接着組成物において使用するために、十分に加水分解されたシラン溶液、例えば、ビス(トリメトキシプロピル)アミンおよびビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィドを開示する。エタノール/水溶液中に、アミノシランとスルフィドシランはそれぞれ1:3の割合で配合される。
【0011】
国際特許出願(PCT)第WO2004/078867号明細書(Lord社)は、アルコキシシラン/ウレタン付加物と塩素化ポリマーを含有する、熱可塑性エラストマーを接着するために設計された単一被膜溶媒系接着剤を開示する。合成方法と配合は、この特許文献内に記載されている。US特許第4031120(Lord社)は、ポリイソシアネートと芳香族ニトロソ化合物と併用して、イソシアネート官能性オルガノシランを含有する組成物を開示する。得られる系は、種々の弾性材料を金属および他の基体と接着させるためのワン-コート接着剤として記載されている。
【0012】
一般に、例えば流れまたは温風を用いる、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、およびオートクレーブ加熱のような加硫工程の間に、接着がもたらされることが望ましい。例えば、半固体ゴムは金型内へ射出できる。次いで、半固体ゴムは、架橋され、完全に硬化したゴムへと変換され、基体との接着が同時に形成される。
【0013】
硬化系において幾つかの必要条件が所望されている。これらは、加工の容易性、安定性(例えば沈殿の回避)、塗布の容易性、早い乾燥(汚損することなく扱うことができる)、良好な湿潤特性、および良好な硬化強度を含む。硬化は、使用されるエラストマー(ゴム)の種類とは関係なく行われるべきであり、また、基体の種類と関係なく行われるべきである。あるゴムは混合材料であることが好ましいので、良好な硬化は、このような混合材料を用いてもたらされることが望ましい。適当で確実な硬化は、種々の処理パラメーターに基づきもたらされる。また、耐久性も所望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0181248号明細書
【特許文献2】国際特許出願公開第2004/078867号明細書
【特許文献3】米国特許第4031120号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
技術状態に関係なく、既知の欠陥の一部または全てを改善し及び/または現存する技術に選択肢をもたらす種々の基体(例えば、金属、ガラスおよび水晶など)に対して、ポリマー基体を接着させる組成物を提供することが望ましく、その結果、消費者は、該組成物から、より多くの選択肢を有することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、接着剤組成物を提供し、該組成物とポリマー基体とを接着する方法を提供する。適当には、ポリマーは、ポリマー鎖内にジエンおよび/またはアリル官能性を有するものである。ポリマーはポリマー鎖内にアリル官能性を有することができる。例えば、ポリマーはエラストマー、例えば天然ゴムまたは合成ゴムなどであってもよい。合成ゴムは、ニトリルブタジエンゴムであってもよい。合成ゴムは、水素化されたニトリルブタジエンゴム(HNBR)であってもよい。
【0017】
1実施態様において、本発明は(i)および(ii)を含有する接着剤組成物を提供する:
(i)a)およびb)を含有する化合物:
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分、および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分、および
(ii)該化合物用のキャリヤー、該キャリヤーは、少なくとも0.1%w/wの水を含有する。
【0018】
少なくとも0.1%w/wの水を含有するキャリヤーは、少なくとも1つのアルコキシシラン部分を含有する化合物の加水分解を可能とする。ここで使用されるような化合物の加水分解はアルコキシシラン部分の加水分解に関連し、すなわち、任意のアルコキシ部分の加水分解によりヒドロキシ部分を生成する。化合物中の少なくとも1つのアルコキシ部分は加水分解され、良好な接着を確実にする。有利には、接着前に化合物を加水分解することは、改良された接着性をもたらすことができる。接着前に化合物を加水分解することは、改良された接着強度をもたらすことができる。接着前に化合物の加水分解をもたらすことは、ポリマー鎖内にジエンおよび/またはアリル官能性を有するポリマー基体と金属またはヒドロキシル化表面とを接着する場合において、改良された接着強度をもたらすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による組成物は、エラストマーに基体を接着させる場合に有用であることが見出されている。本発明による組成物は、基体を天然または合成ゴムに接着させる場合に有用であることが見出されている。合成ゴムは、HNBRであってもよい。
【0020】
基体は、金属またはヒドロキシル化表面である。ここで使用されるような用語「ヒドロキシル化表面」は、ヒドロキシ基に結合した原子を含有する表面を有する任意の基体に関する。適当な、限定されない例には、含水の金属酸化物、表面Si-OH結合を含有するガラス基体、または表面Al-OH結合を含有するクレー基体を含む。適当なヒドロキシル化表面は、シリケート、アルミン酸塩、ゲルマニウム酸塩およびそれらの組み合せのものを含む。ヒドロキシル化表面は、シリケート、アルミン酸塩またはそれらの組合せであってもよい。ここで使用されるように、用語「シリケート」はSi-OH結合を含有する基体に関する。用語「アルミン酸塩」は、Al-OH結合を有する基体に関し、用語「ゲルマニウム酸塩」は、Ge-OH結合を有する基体に関する。例えば、ヒドロキシル化表面は、ガラス(例えばガラス繊維など)、水晶、クレー、タルク、ゼオライト、磁器、セラミック、およびケイ素基体(例えばケイ素ウェハーなど)、ならびにそれらの組合せの1つであってもよい。
【0021】
種々の異なる金属は、本発明による組成物で処理されることができる。適当な金属には、亜鉛、亜鉛合金、例えば、亜鉛-ニッケルおよび亜鉛-コバルト合金など、亜鉛含有コーティングを有する金属基体、鋼および特に冷延鋼と炭素鋼、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、例えば、真ちゅう、ならびにスズおよびスズ含有コーティングを有する金属基体を含むスズ合金が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
この明細書に関連して、用語「芳香族ニトロソ部分」は、少なくとも1つのニトロソ基を有する芳香族部分に関する。同様に、用語「芳香族ニトロソ先駆物質部分」は、少なくとも1つのニトロソ基を有する芳香族ニトロソ部分へと変換されることができる任意の化合物に関する。用語「芳香族」は、縮合および非縮合芳香族環を共に含む。例えば、本発明により包含される縮合および非縮合芳香族ニトロソ部分の限定されない選択は、以下に詳細が記載される:
【0023】
【化1】

【0024】
当業者によって理解されるように、上記ニトロソ構造は、例えば、C1-C20アルキル、C1-C20シクロアルキル、C1-C20アルコキシ、C7-C20アラルキル、C7-C20アルカリール(alkaryl)、C6-C20アリールアミン、C6-C20アリールニトロソ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1種で、1回以上、所望により置換されてもよい。このような置換は、組成物の効果的な接着または硬化を妨げることなくもたらすことができる。
【0025】
本発明の組成物において使用される化合物は、ガラス結合または金属結合へのポリマー形成に助力できる。ポリマーは、エラストマー、例えば、天然または合成ゴムなどであってもよい。合成ゴムは、ニトリルブタジエンゴムであってもよい。合成ゴムはHNBRであってもよい。化合物は、ポリマーとガラス基体若しくは金属基体の間の境界面にて容易に施されることができ、硬化過程の間に強くて耐久性のある接着をもたらすことを助力できる。
【0026】
記載される組成物は、種々の利点をもたらすことができる。例えば、一液型接着剤系を配合できる。このような系は、便利で常套の技術、例えば噴霧または浸漬を用いる単一工程において、基体へ容易に施すことができる。このようにもたらされる組成物は、常套のジニトロソベンゼン配合物と比べて、減少した毒性を有することができる。また、このようにもたらされる組成物は、優れた接着強度をもたらすことができる。
【0027】
本発明による接着剤系は、加硫および接着形成の前に、未加硫のゴム基体(金属またはガラス基体とは区別される)に施すことができ、それに続く加硫の際に、接着を生じさせる。組成物は、金属またはヒドロキシル化表面に施されることができる。このことは、接着剤系を、ゴムなどのポリマー基体または金属もしくはガラス基体の何れにも施すことができることを意味する。常套の系は、この方法で施した場合、接着を形成しない。
【0028】
芳香族ニトロソ先駆物質部分は、任意の芳香族オキシム、芳香族ジオキシムおよびそれらの組合せを含有し得る。例えば、芳香族ニトロソ先駆物質部分は、以下のものから選択される化合物のモノ-またはジ-オキシムであってもよい:
【0029】
【化2】

【0030】
当業者によって理解できるように、上記ジケトン構造は、C1-C20アルキル、C-C20シクロアルキル、C1-C20アルコキシ、C7-C20アラルキル、C7-C20アルカリール(alkaryl)、C6-C20アリールアミン、C6-C20アリールニトロソ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1種で、1回以上、所望により置換されてもよい。このような置換は、組成物の効果的な接着または硬化を妨げることなくもたらすことができる。例えば、イン-サイチュ(in-situ)における芳香族ニトロソ化合物の生成を妨げることなくもたらされる。
【0031】
本発明による化合物における芳香族ニトロソ部分は、ニトロソベンゼン部分を含有できる。ニトロソベンゼン部分は、モノニトロソベンゼン、ジニトロソベンゼン、またはそれらの組合せであってもよい。同様に、本発明による組成物の芳香族ニトロソ先駆物質部分は、ニトロソベンゼン部分先駆物質を含有してもよい。ニトロソベンゼン先駆物質は、モノニトロソベンゼン先駆物質、ジニトロソベンゼン先駆物質、またはそれらの組合せであってもよい。ニトロソベンゼン先駆物質は、イン-サイチュにおいてニトロソベンゼン構造を形成し得ることが好ましい。ニトロソベンゼン先駆物質は、キノンジオキシムまたはキノンオキシムのうちの少なくとも1種であってもよい。
【0032】
当業者によって理解されるように、ニトロソベンゼンおよびニトロソベンゼン先駆物質部分に対する言及は、C1-C20アルキル、C-C20シクロアルキル、C1-C20アルコキシ、C7-C20アラルキル、C7-C20アルカリール(alkaryl)、C6-C20アリールアミン、C6-C20アリールニトロソ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1種で、1回以上、所望により置換されることができるニトロソベンゼンおよびニトロソベンゼン先駆物質部分を含む。このような置換は、組成物の効果的な接着または硬化を妨げることなくもたらすことができる。例えば、イン-サイチュにおけるニトロソベンゼン部分の生成を妨げることなくもたらされる。
【0033】
シラン部分は以下の構造であってもよい:
【0034】
【化3】

式中、「a」は1-3であることができ、および「b」は0-2であることができ、ただしa+b=3であり、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C1-C24アルキル、C3-C24アシル、好ましくはC1-C4アルキルから選択でき;ただし、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく、および
は、C1-C24アルキルおよびC3-C24アシル、好ましくはC1-C4アルキルから選択できる。
【0035】
1実施態様において、aは3であり、RはC1-C24アルキルである。RはC1-C4アルキルであってもよく、aは3であってもよい。
【0036】
化合物は、イソシアネートまたはイソチオシアネートと、活性水素化合物、例えば-NH(式中、x=1または2)、-SHまたはOHなどとの反応生成物であってもよい。この方法において、記載されるような化合物は、以下に記載される少なくとも1つの結合を含有すべきである:
【0037】
【化4】

式中、XはSまたはOであることができ、およびYは-NH(式中、x=1または2)、-Sまたは-Oを含む。
【0038】
これらの化合物に関する一般的な構造は、以下に示される:
【0039】
【化5】

式中、「a」は1-3であることができ、および「b」は0-2であることができ、;ただしa+b=3であり、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C1-C24アルキル、C3-C24アシル、好ましくはC1-C4アルキルから選択でき、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく、
は、C1-C24アルキルおよびC3-C24アシル、好ましくはC1-C4アルキルから選択でき;
nは1-10であることができ、
XはOまたはSであることができ、
Yは-O、-S、または-NH(式中、x=1または2)であることができ;および
は、ここで定義されるようなニトロソ芳香族、またはニトロソ芳香族先駆物質を含有する部分であってもよい。
【0040】
は、ニトロソベンゼン、キノンジオキシムまたはキノンオキシムを含有する部分であってもよい。
【0041】
は、C1-C24アルキル、C3-C24アシルから選択できる。Rは、C1-C24アルキル、C3-C24アシルから選択でき、および「a」は3であってもよい。XはOであってもよい。Yは、Oまたは-NH(式中、x=1)であってもよい。YはOであってもよい。XおよびYはOであってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、「a」は3である。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、YはOであってもよく、および「a」は3であってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、Yは-NH(式中、x=1)であってもよく、「a」は3であってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、YはOであってもよく、「a」は3であってもよく、Rは、ニトロソベンゼンを含有する部分であってもよい。
【0042】
「Y]を介する結合を示す、Rに関する構造は、以下のものを含むことができる:
【0043】
【化6】

式中、RはC1-C10であってもよく、および
Zは、上記構造における環が、C1-C20アルキル、C-C20シクロアルキル、C1-C20アルコキシ、C7-C20アラルキル、C7-C20アルカリール(alkaryl)、C5-C20アリールアミン、C5-C20アリールニトロソ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの組合せからなる群で、所望によりモノ-、ジ-、トリ-またはテトラ置換でき、さらに、環の各炭素原子において、置換基は同じであってもよく、異なっていてもよいことを示す。このような置換は、組成物の効果的な接着または硬化を妨げることなくもたらすことができる。例えば、イン-サイチュにおけるニトロソベンゼン化合物の生成を妨げることなくもたらされる。
【0044】
本発明による組成物において利用される化合物は、以下の一般構造を有することができる:
【0045】
【化7】

式中、「a」は1-3であることができ、および「b」は0-2であることができ、;ただしa+b=3であり、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C1-C24アルキル、C3-C24アシル、好ましくはC1-C4アルキルから選択でき、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく、および
は、C1-C24アルキルおよびC3-C24アシル、好ましくはC1-C4アルキルから選択でき;
mおよびnは同一または異なることができ、および1-10であることができ、
XはOまたはSであることができ、
Yは-O、-S、または-NHであることができ、
はC1-C10であることができ、ならびに
Zは、上記構造における環が、C1-C20アルキル、C-C20シクロアルキル、C1-C20アルコキシ、C7-C20アラルキル、C7-C20アルカリール(alkaryl)、C5-C20アリールアミン、C5-C20アリールニトロソ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの組合せからなる群で、所望によりモノ-、ジ-、トリ-またはテトラ置換でき、さらに、環の各炭素原子において、置換基は同じであってもよく、異なっていてもよいことを示す。このような置換は、化合物を含有する接着剤組成物の効果的な接着または硬化を妨げることなくもたらすことができる。
【0046】
は、C1-C24アルキルまたはC3-C24アシルから選択できる。Rは、C1-C24アルキル、C3-C24アシルから選択でき、および「a」は3であってもよい。XはOであってもよい。Yは、Oまたは-NHであってもよい。YはOであってもよい。XおよびYはOであってもよい。nはC2-C5アルキルであってもよい。mはC2-C5アルキルであってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、「a」は3である。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、YはOであってもよく、および「a」は3であってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、Yは-NHであってもよく、「a」は3であってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、YはOであってもよく、「a」は3であってもよく、R4は、C1-C10であってもよい。
【0047】
本発明による組成物における化合物は、以下の一般構造を有してもよい:
【0048】
【化8】

式中、nは1-10であることができ、
「a」は1-3であることができ、「b」は0-2であることができ、ただしa+b=3であり、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し、cは、「a」であるか1-3であることができ、dは「b」であるか1-3であることができ、
は、H、C1-C24アルキル、C3-C24アシル、好ましくはC1-C4アルキルから選択でき、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく、
はC1-C24アルキルおよびC3-C24アシル、好ましくはC1-C4アルキルから選択でき、
XはOまたはSであることができ、および
Yは-O、-S、または-NH(式中、x=1または2)であることができる。
【0049】
は、C1-C24アルキル、C3-C24アシルから選択できる。Rは、C1-C24アルキル、C3-C24アシルから選択でき、および「a」は3であってもよい。XはOであってもよい。Yは、Oまたは-NH(式中、x=1)であってもよい。YはOであってもよい。XおよびYはOであってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、「a」は3である。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、YはOであってもよく、および「a」は3であってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、Yは-NH(式中、x=1)であってもよく、および「a」は3であってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、YはOであってもよく、nは3であってもよく、および「a」は3であってもよい。
【0050】
さらなる実施態様において、本発明による組成物における化合物は、以下の一般構造のオリゴマー性または共オリゴマー性化合物であってもよい:
【0051】
【化9】

式中、mは1-100であることができ、nは1-10であることができ、pは1-10であることができ、qは0-50であることができ、q=0の場合、m≧2であり、
はH、C1-C24アルキル、C3-C24アシル、および好ましくはC1-C4アルキルから選択でき、
は、OR、C1-C24アルキルおよびC3-C24アシルから選択でき、R=ORの場合、少なくとも1つのRは水素ではなく、
は、アクリレート、アルデヒド、アミノ、無水物、アジド、マレイミド、カルボキシレート、スルフォネート、エポキシド、エステル官能基、ハロゲン、ヒドロキシ、イソシアネートまたはブロック化イソシアネート、硫黄官能基、ビニルおよびオレフィン官能基またはポリマー構造から選択でき、
XはOまたはSであることができ、
Yは-O、-Sまたは-NH(式中、x=1または2)であることができ、および
は、ここで定義されるようなニトロソ芳香族、またはニトロソ芳香族先駆物質を含有する部分であってもよい。
【0052】
は、ニトロソベンゼン、キノンジオキシムまたはキノンオキシムを含有する部分であってもよい。
【0053】
は、C1-C24アルキル、C3-C24アシルから選択できる。Rは、C1-C24アルキル、C3-C24アシルから選択でき、およびRはORであってもよい。XはOであってもよい。Yは、Oまたは-NH(式中、x=1)であってもよい。YはOであってもよい。XおよびYはOであってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、RはORであってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、YはOであってもよく、RはORであってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、Yは-NH(式中、x=1)であってもよく、RはORであってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、YはOであってもよく、nは3であってもよく、RはORであってもよく、Rはニトロソベンゼンを含有する部分であってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、YはOであってもよく、nは3であってもよく、RはORであってもよく、Rはニトロソベンゼンを含有する部分であってもよく、qは0であってもよく、mは2以上であってもよい。RはC1-C4アルキルから選択されてもよく、XはOであってもよく、YはOであってもよく、nは3であってもよく、RはORであってもよく、Rはニトロソベンゼンを含有する部分であってもよく、qは0であってもよく、mは2以上であってもよく、およびRはビニルまたはエステルであってもよい。
【0054】
本発明による組成物において使用される化合物の具体例は、以下のものを含んでもよい:
【0055】
【化10】

【0056】
本発明による組成物は、以下の化合物を含有してもよい:
【0057】
【化11】

【0058】
化合物(A)の合成に関する反応スキームは以下のとおりである(全ての化合物は、類似する方法で調製される)。
【0059】
【化12】

【0060】
少なくとも1つのアルコキシシラン部分と、芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質(ニトロソシランとも称される)から選択される少なくとも1つの部分を含有する化合物は、総組成物の1〜20%w/wの量で存在できる。適当には、少なくとも1つの芳香族ニトロソ化合物先駆物質は、1〜15%w/wの量、例えば4〜12%w/wの量で存在できる。少なくとも1つの芳香族ニトロソ化合物先駆物質は、総組成物の6%w/wで存在できる。
【0061】
本発明による組成物中に水が存在することは、ニトロソシラン(すなわち、本発明における組成物において使用される化合物)の十分な加水分解を促進する。化合物における少なくとも1つのアルコキシ部分は、加水分解され良好な接着を確実にできる。キャリヤーは、有機溶媒を更に含有してもよい。望ましくは、有機溶媒は水と混和性である。このことは、ニトロソシランの効果的な溶解と加水分解を可能とする。有機溶媒は、アルコール、カルボン酸、アセトン、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランからなる群から選択できる。有機溶媒はアルコールであってもよい。適当なアルコールには、メタノール、エタノール、プロパノールおよびそれらの異性体、ブタノールおよびそれらの異性体、およびペンタノールおよびそれらの異性体が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
本発明における組成物のキャリヤーは、0.1〜100%w/wの水を含有してもよい。本発明における組成物のキャリヤーは、0.5〜50%w/wの水を含有してもよい。本発明における組成物のキャリヤーは、1〜20%w/wの水を含有してもよい。適当には、約5w/wの水を含有するキャリヤーは、ニトロソシランを十分に加水分解し得る。
【0063】
望ましくは、キャリヤーは水とアルコールからなる。アルコール:水キャリヤーは、キャリヤー中でニトロソシランの溶解をもたらし、それによって、目的となる基体に対するフィルムまたはコーティングのように、化合物を均一に施すことができる。組成物の一部としてのニトロソシラン化合物を均一に施すことは、改良された接着性をもたらすことができる。
【0064】
本発明による組成物は、イン-サイチュにおいて芳香族ニトロソ部分を形成することが望ましいあらゆる用途において、その有用性が見出されている。同様に、本発明による組成物は、イン-サイチュにおいて芳香族ジニトロソ部分を形成することが望ましいあらゆる用途において、その有用性が見出されている。これらの組成物の内部で、化合物はインサイチュで反応し、ニトロソベンゼン部分を形成できることが好ましい。化合物はインサイチュで反応し、ジニトロソベンゼン部分を形成できることも予期できる。例えば、特に良好な接着のために、化合物がイン-サイチュにおいて反応し、パラ-ニトロソフェノール部分を形成することが望ましい。
【0065】
本発明による組成物は、1液型(one-part)組成物であってもよく、2液型(two-part)組成物であってもよい。
【0066】
本発明による組成物は、酸を更に含有してもよい。適当な酸は、有機酸を含む。例えば、酢酸、シュウ酸、ギ酸、およびプロピオン酸である。
【0067】
アルコキシシランの加水分解(シラノール基、すなわちSiOHの形成)は、一般的に3-7のpH領域内で効果的に生じる。この領域よりも高いか低い場合、シロキサンを形成するシラノールの自己縮合工程により、シラン縮合を生じ得る。この工程の間、隣接した分子のヒドロキシル分子は相互に反応して水分子を取り除き、そしてSi-O-Si-O-Si−官能基を含有する架橋シロキサン構造を形成する。
【0068】
シランの加水分解を促進し、加水分解工程の間シラン縮合を抑止するために、シラン溶液のpHは、約7未満に維持され、好ましくは、約4〜6.5の範囲の弱酸性に維持され得る。
【0069】
本発明における組成物は、常套の添加剤、例えば、充填剤、顔料、安定剤および水捕獲剤さらに含有してもよく、組成物の効果的な硬化を妨げない添加剤が施される。組成物は、カーボンブラックを含有してもよい。カーボンブラックは酸性であってもよく、塩基性であってもよい。組成物は、シリカを含有してもよい。組成物は、ポリビニルブチラール樹脂を含有してもよい。
【0070】
本発明による組成物は、付加的なシランを含有できる。これらのシランは、以下の一般式であってもよい:
【0071】
【化13】

式中、
nは1または2であり、
y=(2-n)、
各RはC1-C24アルキルまたはC2-C24アシルから選択され;
各RはC1-C30脂肪族基、または置換もしくは非置換のC6-C30芳香族基であり、
は、水素、C1-C10アルキレン、1以上のアミノ基で置換されたC1-C10アルキレン、1以上のアミノ基で置換されたC2-C10アルケニレン、C6-C10アリーレン、またはC7-C20アルカリーレン(alkarlyene)、
X-Rは任意であり、Xは以下のどちらかであり、
【0072】
【化14】

(式中、各Rは、水素、C1-C30脂肪族基、またはC6-C30芳香族基であり、および
はC1-C30脂肪族基、またはC6-C30芳香族基から選択される)、ならびに
【0073】
n=1の場合、RおよびRのうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0074】
1実施態様において、X-Rは存在する。RはC1-C24アルキルから選択でき、RはC1-C30脂肪族基から選択でき、XはN-Rであることができ、Rは水素若しくはC1-C10アルキレンから選択できる。これらから判るように、X-Rが存在しない場合、シランは以下の一般式で表わされてもよい(式中、RおよびRは上述の通りである):
【0075】
【化15】

【0076】
好ましいシランは、ビス-シリルシラン、例えば、2つの3置換シリル基を有するものなどが含まれる。置換基は、C1-C20アルコキシ、C6-C30アリールオキシおよびC2-C30アシルオキシからそれぞれ選択できる。本発明において使用される適当なビス-シリルシランには、以下のものが含まれる:
【0077】
【化16】

式中、
各RはC1-C24アルキルまたはC2-C24アシルから選択でき、
各RはC1-C20脂肪族基またはC6-C30芳香族基から選択でき、
Xは任意であり、Xは以下のどちらかである:
【0078】
【化17】

(式中、各Rは、水素、C1-C20脂肪族基、またはC6-C30芳香族基であり、および
はC1-C20脂肪族基、またはC6-C30芳香族基から選択できる)。
【0079】
1実施態様において、Xは存在する。RはC1-C24アルキルから選択でき、RはC1-C30脂肪族基から選択でき、およびXはN-Rであることができる。これらから判るように、Xが存在しない場合、ビス-シランは以下の一般式で表わされてもよい(式中、R1およびR2は上述の通りである):
【0080】
【化18】

【0081】
本発明により受け入れられるビス-シリルアミノシランの例には、以下のものが含まれる:ビス-(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス-(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス-(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-[2-(ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、およびアミノエチル-アミノプロピルトリメトキシシラン。このようなシランは、ニトロソシラン化合物に対して(化学量論的に)1:3〜3:1の範囲で含むことができる。シランとニトロソシランのこのような混合は、ゴム基体に対して優れた接着をもたらす。
【0082】
シランは、総組成物の1〜10%w/wの量で存在できる。適当には、シランは1〜5%w/wの量、例えば1〜3%w/wの量で存在できる。シランは、総組成物の約3%w/wで存在できる。
【0083】
特に、ニトロソシランに加えて、アミノビス(プロピルトリメトキシシラン)を含むことは、ゴムに対する接着強度を著しく向上させる。アミノビス(プロピルトリメトキシシラン)は、配合物内で多官能性を有するからであると考えられる。これはフィルム形成と、金属表面の湿潤を手助けする。
【0084】
一般に、目的となる基体に塗布される最終的な溶液は、総シラン濃度と割合(ニトロソシランに対するシラン)において、幅広い範囲で変化でき、それにより有益な結果をもたらす。最終的な溶液は、少なくとも約0.1体積%の総シラン濃度(すなわち、最終溶液中のシランとニトロソシランの組合せの濃度)を含むべきである。一般に、約0.1体積%と約10体積%の間の総シラン濃度を有する溶液は、有益なシランを無駄にすることなく強い接着をもたらす。
【0085】
更なる態様において、本発明は、2つの基体を相互に接着させる方法を提供し、該方法は、以下の工程を含む:
1. a)およびb)を含有する化合物を十分に加水分解し、
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分、
2. 工程1の十分に加水分解させた化合物を、少なくとも1種の基体へ施し、および
3. それらの間に接着を形成するように、第1基体と第2基体を合わせる。
【0086】
化合物中の少なくとも1つのアルコキシ部分は、加水分解され、良好な接着を確かにできる。当業者によって理解されるように、工程1および2の順序は重要ではない。例えば、生成物は少なくとも1つの基体へ施され、次いで加水分解されてもよく、少なくとも1つの基体へ施す前に、生成物は加水分解されてもよい。方法は、第1基体と第2基体を合わせた後に、加熱工程を更に含んでもよい。有利には、加熱は、接着形成速度を増加させ得る。加熱は、接着強度を改良できる。
【0087】
更なる実施態様において、本発明は以下の工程を含む、2つの基体を相互に接着する方法を提供する:
1. (i)および(ii)を含有する(本発明による)組成物を調製し、
(i)a)およびb)を含有する化合物、
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分、
(ii)化合物用のキャリヤー、該キャリヤーは少なくとも0.1w/w%の水を含有し、
2. 組成物を加熱し、および
3. 基体のうちの少なくとも1つの接着面に対して組成物を施し、基体の接着面を相互にもたらす。
【0088】
当業者によって理解されるように、工程2と3の順番は重要ではない。例えば、組成物は、少なくとも1つの基体に施され、次いで加熱されてもよく、または組成物は、少なくとも1つの基体へ施される前に加熱されてもよい。
【0089】
熱を提供することは、化合物のアルコキシシラン部分の加水分解に役立ち得る。組成物は30〜100℃の間の温度まで加熱され得る。適当には、組成物は40〜60℃の間の温度にまで加熱され得る。組成物は、50℃まで加熱され得る。組成物は1〜2時間加熱され得る。組成物は、最大2時間加熱され得る。組成物は、目的となる基体に対して直接施されてもよい。組成物は、目的となる基体へ施される前に冷却されてもよい。
【0090】
組成物は、薄膜またはコーティングとして目的となる基体へ施されてもよい。このことは、目的となる基体へ組成物を均一に(または均等に)施すことを可能とする。目的となる基体へ組成物を均一に施すことは改良された接着を可能とする。
【0091】
方法は、表面を相互にもたらした後に、加熱工程を更に含んでもよい。有利には、加熱は接着形成の速度を増加させ得る。加熱は、接着強度を改良できる。
【0092】
本発明による方法は、それらに組成物を施す前に、洗浄工程、例えば研磨洗浄、例えばブラストすること(例えば、基体をグリットブラストすること)を付加的に含んでもよい。
【0093】
本発明による方法において、第1基体は金属またはヒドロキシル化表面であってもよい。適当な金属には、亜鉛および亜鉛合金、例えば亜鉛-ニッケルおよび亜鉛-コバルト合金、亜鉛含有コーティングを有する金属基体、鋼および特に冷延鋼と炭素鋼、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、例えば、真ちゅう、ならびにスズおよびスズ含有コーティングを有する金属基体を含むスズ合金が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
ここで使用されるように、用語「ヒドロキシル化表面」は、ヒドロキシ基に結合した原子を含有する表面を有する任意の基体に関する。適当な、限定されない例には、含水の金属酸化物、表面Si-OH結合を含有するガラス基体、または表面Al-OH結合を含有するクレー基体を含む。適当なヒドロキシル化表面は、シリケート、アルミン酸塩、ゲルマニウム酸塩およびそれらの組み合せのものを含む。ヒドロキシル化表面は、シリケート、アルミン酸塩またはそれらの組合せであってもよい。ここで使用されるように、用語「シリケート」はSi-OH結合を含有する基体に関する。用語「アルミン酸塩」は、Al-OH結合を有する基体に関し、用語「ゲルマニウム酸塩」は、Ge-OH結合を有する基体に関する。例えば、ヒドロキシル化表面は、ガラス(例えばガラス繊維など)、水晶、クレー、タルク、ゼオライト、磁器、セラミック、およびケイ素基体(例えばケイ素ウェハーなど)、ならびにそれらの組合せのうちの1つであってもよい。
【0095】
本発明による方法において、第2基体はポリマーを含有してもよい。ポリマーは、ポリマー鎖内にアルケンおよび/またはアリル官能性を含有してもよい。例えば、ジエンおよび/またはアリル官能性が、ポリマー鎖内に存在してもよい。適当には、ポリマーはアリル官能性を含有してもよい。適当なポリマーはエラストマーを含んでもよい。適当なエラストマーは天然または合成ゴムを含有してもよい。合成ゴムは、ニトリルブタジエンゴムであってもよい。合成ゴムはHNBRであってもよい。ポリマーはC2-C1,000,000ポリマー、例えば、C2-C10,000ポリマーであってもよい。
【0096】
例えば、第1基体は、他の基体に接着される天然ゴム若しくは合成ゴムから構成されてもよい。合成ゴムはニトリルブタジエンゴムであってもよい。合成ゴムはHNBRであってもよい。別のまたは第2基体は金属基体であってもよい。一般に、化合物のアルコキシシラン部分は、金属表面に固定される。芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質から選択される部分は、一般に、ゴムに固定されるようになる。同様に、ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン先駆物質から選択される部分は、一般にゴムに固定されるようになる。よって、分子の各末端は官能化され、強くて耐久性のある接着をもたらすと共に、材料の接着を手助けする。
【0097】
従って、接着剤組成物で被覆された金属の上に、未硬化状態のポリマー材料を施し、該ポリマー材料を硬化させて金属にそれを接着させることにより、記載されるような接着剤組成物で被覆された金属は、ポリマー材料、例えばゴム複合材料に接着され得る。ゴム製のポリマー材料の場合、未硬化のゴムは、ゴムが硬化するまでの時間に亘り、熱および圧力を介して加硫することができ、その結果、金属に対するゴムの接着が生じる。
【0098】
金属および/またはヒドロキシル化表面へのこのような接着は、ポリマーと反応できるニトロソ基を介してもたらされる。ポリマーはポリマー鎖内にアルケン/アリル官能性を含有できる。例えば、ポリマー鎖内にジエンまたはアリル官能性を有することができる。
【0099】
あるいは、適当なポリマーは、それらの間で架橋をもたらすことができるように、ニトロソ基と反応できるものである。このような反応は、種々の架橋、例えばニトロソ基とゴム材料との間での架橋を引き起す。本発明による材料は、分子構造内のニトロソ基のような遊離ニトロソ基を減少させると考えられる。ニトロソ基およびシランの反応において、ニトロソは天然ゴム内のアリル官能性と反応でき、一方、シランは、第二基体、例えばヒドロキシル化表面または金属と結合を形成する。
【0100】
シラン溶液の最小限の消費を伴う、ポリマー材料(例えばゴム組成物)と、金属またはヒドロキシル化表面との間の優れた接着は、記載されたような化合物と組成物を使用することにより実現できる。接着剤用途におけるそれらの使用に関して、本発明による組成物は、一般に、性能特性を失うことなく、ゴム接着に関する従来の接着剤系に存在する組成物よりもより薄い。
【0101】
更なる態様において、本発明は、第2基体への後接着のために、基体に予め施される本発明に係る組成物を有する該基体を提供する。ここで使用されるように、用語「予め施される」は、本発明による組成物が基体へ固定され留まるように、本発明による組成物が基体へ施されることを示し、その結果、予め処理された基体は貯蔵に適する。組成物は、長期に亘りその有効性を保持するであろう。予め処理された基体は、第2基体に対する後接着のために貯蔵できる。有利には、基体は、予備処理工程において組成物で被覆でき、所望により貯蔵され、そして、(自動化された)製造工程においてその後使用される。組成物はポリマー基体(例えば、エラストマーなど、例えば天然または合成ゴム)、金属またはヒドロキシル化表面に予め施されてもよい。組成物は、金属またはヒドロキシル化表面に予め施されてもよい。
【0102】
更なる態様において、本発明は、以下のものを含有する(本発明に係る)組成物をその中に有する容器を提供する:
1.a)およびb)を含有する化合物:
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分;ならびに
2.該化合物向けのキャリヤー、該キャリヤーは、少なくとも0.1%w/wの水を含有する。
【0103】
化合物は十分に加水分解されることができる。
【0104】
更なる実施態様において、本発明は2つの基体を相互に接着するために、30〜100℃に加熱された接着剤組成物(本発明に係る)の使用を提供し、該組成物(本発明に係る)は以下のものを含有する:
1.a)およびb)を含有する化合物:
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分;および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分;ならびに
2.化合物向けのキャリヤー、該キャリヤーは少なくとも0.1%w/wの水を含有する。
【0105】
組成物は40〜60℃間の温度まで加熱され得る。組成物は50℃まで加熱され得る。加熱された組成物は目的とする基体へ直接施されてもよい。組成物は、目的とする基体へ施される前に冷却されてもよい。
【0106】
組成物におけるキャリヤーは、0.1〜100%w/wの間の水を含有できる。組成物におけるキャリヤーは0.5〜50%w/wの間の水を含有し得る。キャリヤーは、1〜20%w/wの間の水を含有し得る。適当には、約5%w/wの水を含有するキャリヤーは、ニトロソシランを十分に加水分解できる。
【0107】
詳細な説明
本発明によるゴム接着において使用されるゴム組成は、ゴム組成に対して常套で既知の添加剤を更に含んでもよい。これらには、強化カーボンブラック、炭酸カルシウムなどの不活性充填剤、チョーク、タルクまたは金属酸化物、促進系、加硫抑制剤、酸化亜鉛またはステアリン酸などの促進剤;芳香族、パラフィン系、ナフテン系および合成鉱油などの可塑剤、老化防止剤、光り保護剤、オゾン保護剤、疲労、着色および加工助剤、ならびに硫黄が含まれる。通常、これらの添加剤はゴム組成の100重量部あたり、約0.1部〜約80部の量で存在できる。
【0108】
良好な接着を可能とするために、シラン溶液を施す前に、被覆される表面は洗浄され得る。例えば、溶媒またはアルカリ性物質を用いて洗浄する。更にまたはあるいは、基体はグリットブラストに付してもよい。その後、金属を溶液に浸漬すること、金属に溶液を噴霧すること、刷毛塗りすることまたは拭くことを含む種々の方法により、施すことができる。ゴム接着を改良するために、コーティングは加硫前に、部分的に架橋されたままである。従って、加熱乾燥は、ゴムと金属表面の間の乏しい接着を生じさせるより高い架橋度を導くので、通常、コーティングは室温で乾燥される。
【0109】
本発明の組成物において使用される成分は以下のようにして調製した。
【0110】
化合物の合成
化合物A、B、CおよびD(上記)は以下の実験的な方法に従い合成され、上記反応スキームにおいて説明される。
【0111】
反応(1)(上記参照)は、J.J D'Amico,C.C TungおよびL.A.Walker,J.Am.Chem.Soc.,5957(1959)のようにしておこなった。
反応(2):γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(γ-Isocyantopropyltrimethoxysilane,GE バイエル シリコーン A-1310)(2.35g、9.5mmol)を50mLの丸底フラスコ中の10mLの無水THFに溶解させた。反応フラスコを窒素でフラッシュし、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソ−アニリン(2g、9.5mmol)で充填させ、その後、触媒量のジブチルスズジラウレート(1.5μmol)を添加した。反応を窒素下にてさらに2時間還流した。イソシアネート(2275cm−1)の消費は、赤外線分光法を用いて監視された。溶媒を減圧下で除去し、定量的収率で生成物を得た。
【0112】
【化19】

【0113】
反応(3):γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(ABCR GmbH)(1.5g、7.3mmol)を50mLの丸底フラスコ中の8mLの無水THFに溶解させた。反応フラスコを窒素でフラッシュし、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソ−アニリン(1.53g、7.3mmol)で充填させ、その後、触媒量のジブチルスズジラウレート(1μmol)を添加した。反応を窒素下にてさらに2時間還流した。イソシアネート(2275cm−1)の消費は、赤外線分光法を用いて監視された。溶媒を減圧下で除去し、定量的収率で生成物を得た。
【0114】
【化20】

【0115】
反応(4):γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(GE バイエル シリコーン A-1310)(2.35g、9.5mmol)を50mLの丸底フラスコ中の10mLの無水THFに溶解させた。反応フラスコを窒素でフラッシュし、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−4−ニトロソ−アニリン(1g、4.75mmol)で充填させ、その後、触媒量のジブチルスズジラウレート(1.5μmol)を添加した。反応を窒素下にてさらに5時間還流した。イソシアネート(2275cm−1)の消費は、赤外線分光法を用いて監視された。溶媒を減圧下で除去し、定量的収率で生成物を得た。
【0116】
【化21】

【0117】
反応(5):γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(GE バイエル シリコーン A-1310)(10.68g、43.18mmol)を100mLの丸底フラスコ中の30mLの無水THFに溶解させた。反応フラスコを窒素でフラッシュし、p−ベンゾキノンジオキシム(シグマ-アルドリッヒ)(3g、21.72mmol)で充填し、その後、触媒量のジブチルスズジラウレート(1.5μmol)を添加した。反応を窒素下にてさらに5時間還流した。イソシアネート(2275cm−1)の消費は、赤外線分光法を用いて監視された。溶媒を減圧下で除去し、定量的収率で生成物を得た。
【0118】
反応(6):γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(GE バイエル シリコーン A-1310)(2.35g、9.5mmol)を、50mLの丸底フラスコ中の10mLの無水THFに溶解させた。反応フラスコを窒素でフラッシュし、2-(N-エチルアニリノ)エタノール(0.78g、4.75mmol)で充填し、その後、触媒量のジブチルスズジラウレート(1.5μmol)を添加した。反応を窒素下にてさらに5時間還流した。イソシアネート(2275cm−1)の消費は、赤外線分光法を用いて監視された。溶媒を減圧下で除去し、定量的収率で生成物を得た。
【0119】
【化22】

【0120】
本発明による化合物を含有する配合物は、以下のようにして調製された。
【0121】
天然ゴム組成物-Merl社から入手可能(Merl 硫黄硬化 NR60)
試験は、以下の組成の天然ゴムを用いて行われた。
【0122】
【表1】

【実施例】
【0123】
各配合物1〜7において、以下のニトロソシランが使用された:
【0124】
【化23】

【0125】
サンプル調製と試験
金属表面に対するゴムの接着について、本発明の接着剤系の有効性を評価するために、45°の角度に調整されたASTM429-B基準に従い、一連の試験が行われた。グリットブラストしたスチールラップ(2.54cm(1インチ)幅、10.16cm(4インチ)長さのパネルまたはクーポン)を接着剤組成物で被覆し、加硫工程において、天然ゴムと付着させた。接着剤は冷却せずにスチールラップに施された。あるいは、室温まで冷却されている接着剤が、スチールラップに施されてもよい。天然ゴム組成物は、配合表で設定されたように硫黄-硬化組成物である。
【0126】
接着剤を施す前に、グリットブラストしたスチールラップの両端において、2.54cm(1インチ)の長さと2.54cm(1インチ)の幅の該ラップは隠され、領域がゴムへの接着を可能とすることを妨げ、2.54cm(1インチ)の幅と5.08cm(2インチ)の長さを有する残りの中央部は、ゴムへの接着を可能とした。
【0127】
次いで、未硬化ゴムの層を、各クーポン上に配置し、ゴムの硬化プロファイルにより規定された時間の間、標準的な油圧式の加硫プレスで硬化させた。本発明における接着方法において使用される天然ゴムの場合、ゴムは20-30トンの圧力のもと、150℃にて20分間かけて硬化され、接着される表面と接着剤の密接な接触を確実にする。
【0128】
硬化後、接着させたサンプルを、試験に付される前に室温にて24時間熟成させ、引裂きパターンを記録した。剥離が完了するまで、1分あたり50mmの負荷速度にて、インストロン装置(インストロン試験機、モデル番号.5500R)を用い、45°角に変更されたASTM429-B基準に従い、各サンプルを試験した。
【0129】
「ゴム被覆率」は、剥離試験後に、接着した金属基体上に残存するゴムのパーセンテージである。100%ゴム破損は、金属の表面から剥離するゴムが一部たりともなく、ゴムが完全に破壊されたことを意味する(そして、100%のゴム破損と一致する)。一般に、ゴム接着に付される基体が破損する前に、ゴム基体が破損することが望ましい。本発明による配合を用いてもたらされる結果を以下に示す。
R-ゴム破損である。
事前ベークは、加硫前に、示された時間、温度にて加熱することを示す。
【0130】
【表2】

【0131】
ニトロソシランを、エタノール/水(1:1)混合液中に溶解させ、溶液になるまで攪拌した。これに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミンと酢酸を添加し、2時間、50℃まで加熱した。
【0132】
【表3】

【0133】
ニトロソシランを、エタノール/水(95:5)混合液中に溶解させ、溶液になるまで攪拌した。これに、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、CK3カーボンブラック、N990カーボンブラックおよびAerosil 200を添加し、2時間、50℃まで加熱した。
【0134】
【表4】

【0135】
ニトロソシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、Aerosil 200およびエタノール/水(95:5)溶液を相互に攪拌し、2時間、50℃にて加熱した。その時間が経過した後、エタノール/水(95:5)溶液中のButvar B-72Aを添加し、30分間室温にて攪拌した。次いで、N990を添加し、グリットブラストしたスチールラップへ施す前に10分間攪拌した。
【0136】
【表5】

【0137】
ニトロソシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、Aerosil 200およびエタノール/水(95:5)溶液を相互に攪拌し、2時間、50℃にて加熱した。その時間が経過した後、エタノール/水(95:5)溶液中のButvar B-76を添加し、30分間室温にて攪拌した。次いで、N990を添加し、グリットブラストしたスチールラップへ施す前に更に10分間攪拌した。
【0138】
【表6】

【0139】
ニトロソシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、Aerosil 200およびエタノール/水(95:5)溶液を相互に攪拌し、2時間、50℃にて加熱した。その時間が経過した後、エタノール/水(95:5)溶液中のButvar B-72Aを添加し、30分間室温にて攪拌した。次いで、CSX-691を添加し、グリットブラストしたスチールラップへ施す前に更に10分間、激しく攪拌した。
【0140】
【表7】

【0141】
ニトロソシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、Aerosil 200およびエタノール/水(95:5)溶液を相互に攪拌し、2時間、50℃にて加熱した。その時間が経過した後、エタノール/水(95:5)溶液中のButvar B-72Aを添加し、30分間室温にて攪拌した。次いで、CSX-691を添加し、グリットブラストしたスチールラップへ施す前に更に10分間、激しく攪拌した。
【0142】
【表8】

【0143】
ニトロソシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、Aerosil 200およびエタノール/水(95:5)溶液を相互に攪拌し、2時間、50℃にて加熱した。その時間が経過した後、エタノール/水(95:5)溶液中のButvar B-72Aを添加し、30分間室温にて攪拌した。次いで、スペシャルブラック4を添加し、グリットブラストしたスチールラップへ施す前に更に10分間、激しく攪拌した。
【0144】
【表9】

【0145】
ニトロソシランを、エタノール/水(95:5)混合液中に溶解させ、溶液になるまで攪拌した。これに、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、CK3カーボンブラック、N990カーボンブラックおよびAerosil 200を添加し、2時間、50℃まで加熱した。
【0146】
a. N990は、Cancarbインターナショナル製のアルカリ性カーボンブラックである。
b. CK3は、エボニック製の酸性カーボンブラックである。
c. Aerosil 200は、エボニック製の親水性シリカである。
d. Butvar B-72Aは、Solutia社製のポリビニルブチラール樹脂である。
e. Butvar B-76は、Butvar B-72Aよりも低粘度の、Solutia社製のポリビニルブチラール樹脂である。
f. CSX-691は、キャボット社製のアルカリ性カーボンブラックである。
g. スペシャルブラック4は、エボニック社製の酸性のカーボンブラックである。
【0147】
明確にするために、個々の実施態様に即して記載される本発明による一定の特徴は、単一の実施態様を用いて組合された形態でもたらされてもよいことが理解される。逆に、簡潔さのために、単一の実施態様に即して記載される発明による一定の特徴は、別々にまたは任意の適した準組合せで提供されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)および(ii)を含有する接着剤組成物:
(i)a)およびb)を含有する化合物:
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分、および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分、ならびに
(ii)該化合物用のキャリヤー、該キャリヤーは少なくとも0.1%の水を含有する。
【請求項2】
芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質から選択される少なくとも1つの部分が、ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン先駆物質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ニトロソベンゼン先駆物質が、キノンジオキシムまたはキノンオキシムのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
アルコキシシラン部分が以下の構造のものである、請求項1に記載の組成物:
【化1】

式中、「a」は1-3であることができ、および「b」は0-2であることができ、ただしa+b=3であり、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C1-C24アルキル、C3-C24アシルからなる群から選択でき;ただし、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく、および
は、C1-C24アルキルおよびC3-C24アシルから選択できる。
【請求項5】
化合物が、イソシアネートまたはイソチオシアネートと、活性水素化合物との反応生成物の形態をとる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
化合物が以下の一般構造に包含される、請求項1に記載の組成物:
【化2】

式中、nは1-10であることができ、
「a」は1-3であることができ、および「b」は0-2であることができ、;ただしa+b=3であり、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C1-C24アルキル、C3-C24アシルからなる群から選択でき、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく、
は、C1-C24アルキルおよびC3-C24アシルから選択でき;
XはOまたはSであることができ、
Yは-O、-S、または-NHであることができ;および
は、ニトロソ芳香族またはニトロソ芳香族先駆物質を含有する部分であることができる。
【請求項7】
がニトロソベンゼン、キノンジオキシムまたはキノンオキシムを含有する部分である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
が以下のもの(Yを介する結合を示す)を含有する群から選択される、請求項6に記載の組成物:
【化3】

式中、RはC1-C10であることができ、および
Zは、上記構造における環が、C1-C20アルキル、C-C20シクロアルキル、C1-C20アルコキシ、C7-C20アラルキル、C7-C20アルカリール(alkaryl)、C5-C20アリールアミン、C5-C20アリールニトロソ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの組合せからなる群で、所望によりモノ-、ジ-、トリ-またはテトラ置換できることを示し、さらに、該環の各炭素原子において、該置換基は同じであってもよく、異なっていてもよいことを示す。
【請求項9】
化合物が以下の一般構造の化合物である、請求項1に記載の組成物:
【化4】

式中、「a」は1-3であることができ、および「b」は0-2であることができ、;ただしa+b=3であり、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し;
は、H、C1-C24アルキル、C3-C24アシルからなる群から選択でき、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく、および
は、C1-C24アルキルおよびC3-C24アシルから選択でき;
mおよびnは同一または異なることができ、および1-10であることができ、
XはOまたはSであることができ、
Yは-O、-S、または-NHであることができ、
はC1-C10であることができ、ならびに
Zは、上記構造における環が、C1-C20アルキル、C-C20シクロアルキル、C1-C20アルコキシ、C7-C20アラルキル、C7-C20アルカリール(alkaryl)、C5-C20アリールアミン、C5-C20アリールニトロソ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの組合せからなる群で、所望によりモノ-、ジ-、トリ-またはテトラ置換できることを示し、さらに、該環の各炭素原子において、該置換基は同じであってもよく、異なっていてもよいことを示す。
【請求項10】
化合物が以下の一般構造のものである、請求項1に記載の組成物:
【化5】

式中、nは1-10であることができ、
「a」は1-3であることができ、「b」は0-2であることができ、ただしa+b=3であり、少なくとも1つのアルコキシ基が存在し、
は、H、C1-C24アルキル、C3-C24アシルからなる群から選択でき、a≧1の場合、少なくとも1つのRは水素ではなく、
はC1-C24アルキルおよびC3-C24アシルから選択でき、
XはOまたはSであることができ、および
Yは-O、-S、または-NH(式中、x=1または2)であることができる。
【請求項11】
化合物が以下の一般構造のものである、請求項1に記載の組成物:
【化6】

式中、mは1-100であることができ、nは1-10であることができ、pは1-10であることができ、qは0-50であることができ、q=0の場合、m≧2であり、
はH、C1-C24アルキル、C3-C24アシルからなる群から選択でき、
は、OR、C1-C24アルキルおよびC3-C24アシルからなる群から選択でき、R=ORの場合少なくとも1つのRは水素ではなく、
は、アクリレート、アルデヒド、アミノ、無水物、アジド、マレイミド、カルボキシレート、スルフォネート、エポキシド、エステル官能基、ハロゲン、ヒドロキシ、イソシアネートまたはブロック化イソシアネート、硫黄官能基、ビニルおよびオレフィン官能基またはポリマー構造からなる群から選択でき、
XはOまたはSであることができ、
Yは-O、-Sまたは-NH(式中、x=1または2)であることができ、および
は、ニトロソ芳香族、またはニトロソ芳香族先駆物質を含有する部分であることができる。
【請求項12】
は、ニトロソベンゼン、キノンジオキシムまたはキノンオキシムを含有する部分である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
エラストマーもしくは天然ゴムもしくは合成ゴムに基体を接着する場合において使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
基体が金属である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
基体がヒドロキシル化表面である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
ヒドロキシル化表面が、含水の金属酸化物、シリケート、アルミン酸塩、ゲルマニウム酸塩およびそれらの組み合せのうちの少なくとも1つを含有する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
ヒドロキシル化表面が、ガラス、水晶、クレー、タルク、ゼオライト、磁器、セラミック、シリコンウェハおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
化合物がイン-サイチュ(in-situ)で反応して、ニトロソベンゼン部分、ジニトロソベンゼン部分、またはパラ-ニトロソフェノール部分のうちの1つを形成できる、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
カーボンブラックを更に含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
シランを更に含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
シランがアミノシランである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
2つの基体を相互に接着する方法であって、該方法は以下の(i)〜(iii)を含む:
(i)a)およびb)を含有する化合物を十分に加水分解させ、
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分、および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質、およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分、
(ii)少なくとも1つの基体へ、工程(i)の十分に加水分解された化合物を施し、および
(iii)それらの間で接着を形成するように、該第1および該第2基体を合わせる。
【請求項23】
第1および第2基体を合わせた後に加熱工程を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
2つの基体を相互に接着する方法であって、該方法は以下のA)〜C)を含む:
A. 以下の(i)および(ii)を含有する組成物を供給し、
(i)以下のa)およびb)を含有する化合物:
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分、および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質、およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分、ならびに
(ii)該化合物用のキャリヤー、該キャリヤーは少なくとも0.1%の水を含有する、
B. 該組成物を加熱し、および、
C. 基体のうちの少なくとも1つの接着面に該組成物を施して、該基体の該接着面を相互に接着させる。
【請求項25】
基体を相互に合わせた後に、加熱工程を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
以下の工程を含む、接着剤組成物を使用する方法:
A. 合わせ面を有する2つの基体を供給し、
B. 以下の(i)および(ii)を含有する組成物を供給し、
(i)以下のa)およびb)を含有する化合物:
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分、および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質、およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分、ならびに
(ii)該化合物用のキャリヤー、なお、該キャリヤーは少なくとも0.1%の水を含有し、
C. 少なくとも1つの基体の少なくとも1つの合わせ面に該組成物を供給するか、または2つの基体の合わせ面の間に該組成物を供給し、
D. 30〜100℃の範囲の温度条件に該組成物をさらす。
【請求項27】
以下の(i)および(ii)を含有する組成物をその中に有する容器:
(i)以下のa)およびb)を含有する化合物:
a)少なくとも1つのアルコキシシラン部分、および
b)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ先駆物質、およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分、ならびに
(ii)該化合物用のキャリヤー、該キャリヤーは少なくとも0.1%の水を含有する、
ただし、該化合物は十分に加水分解される。

【公表番号】特表2013−504637(P2013−504637A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528317(P2012−528317)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062757
【国際公開番号】WO2011/029752
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(501194879)ロックタイト (アール アンド ディー) リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】LOCTITE (R & D) LIMITED
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】