説明

ポリマー材料のフォトリソグラフィックパターニング

【課題】プラスチック基板上に硬化エネルギー放射線によりイメージ通りに硬化ポリマーを形成する方法を提供する。
【解決手段】プラスチック基板上にコートされる光硬化可能なポリマー組成物における形体のフォトリソグラフィックパターニングのための方法であって、プラスチック基板は、金属製障壁のような反射膜でコートされる。また、プラスチック基板は、光硬化放射線を吸収する添加剤を含むポリマー障壁層でコートされるか又は同時押し出し成形される。さらに、プラスチック基板は、光硬化放射線を吸収する内在性添加剤を含む。これらの組み合わせもまた含まれる。プラスチック基板上に支持される光硬化可能なポリマーを含むいずれの素子又は目的物の製造にも適用できるが、プラスチック基板上に支持される光硬化可能なポリマーを含む光導波路の製造に有利に適用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基板上にコートされるポリマー材料のフォトリソグラフィックパターニングを制御する方法及び当該方法によって調製される物品に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、光導波路に関して記載される。しかしながら、本発明の原理が例えばマイクロレンズアレイ又はマイクロ流体チャネルのようなフリーラジカル過程を経由して硬化可能なポリマーで構成される他の素子又は目的物のフォトリソグラフィーによる製造に適用できることが当業者によって十分に理解される。とりわけ、本発明の原理は、緻密な形状制御が要求される場合に重要である。
【0003】
基板上のポリマー材料で構成される光導波路の製造に関する当業界において知られる種々の方法が存在する。ある一般に使用される方法は、モールディング及び/又はエンボス過程を含む(例えば、US Pat. No. 5,985,084)。別の方法は、フォトリソグラフィー、それに引き続くエッチング過程(反応性イオンエッチング又はプラズマエッチングのような)を含む(例えば、US 5,497,445)。別の一般に使用される方法は、光硬化可能な材料のUV光へのイメージ通りに曝露すること(imagewise exposure)に起因する空間的に選択できる屈折率の変化に頼る(例えば、US 3.689,264)。これに密接に関係する方法は、光硬化可能な材料をUV光へのイメージ通りに曝露することによって不溶性にし、次に未曝露の材料をそれに続く“現像”工程において適切な溶剤で洗い流すことによって除去するウェットエッチ過程である(例えば、US 4,609,252)。
【0004】
図1(a)−(d)に図解される従来技術のウェットエッチ法は、光導波路の製造にとりわけ好まれるが、その理由は、当該方法が少ない処理工程を有し、迅速かつ容易に大量生産技術まで拡大可能であり、さらに比較的安価な資本設備しか要求しないからである。重要なことは、精密に位置づけられかつ非常に滑らかな側壁を有する導波路を製造することができ、その結果、散乱によってもたらされる過剰な光学的損失を最小限にできることである。基板12上の、必要に応じて下方のクラッド層13を有するUV硬化可能なポリマー膜11の堆積後、当該ポリマー膜をマスク15を介してUV光14にイメージ通りに曝露して不溶性領域16を生成する。当該ポリマー膜の残余を溶剤で除去して当該基板上又は下方のクラッド層上に立っている光導波路中心のようなパターニングされた形体17を残す。最終的に、上方のクラッド層18をパターニングされた形体の上端部上で必要に応じて堆積することができる。光導波路用途に関しては、下方のクラッド層、ポリマー中心層及び上方のクラッド層に使用される材料は通常、適用する波長に対して本質的に透明であるように選択され、さらに、下方のクラッド材料及び上方のクラッド材料は概して、それらの屈折率がポリマー中心材料の屈折率よりも小さくなるように選択される。下方のクラッド層は、基板材料が適切な透明度及び屈折率を有する場合には、省略されてもよく、必要に応じて、上方のクラッド層は全部又は一部分省略されてもよい。非導波路用途に関しては、ポリマー層及び基板のみが必要とされてもよい。上方のクラッド層及び下方のクラッド層は適切な透明度及び屈折率を有するいずれの材料で構成されていてもよく、提供されるそれらの処理条件は基板材料及びポリマー中心材料に適合する。通常、それらは、例えばスピンコーティングによって堆積されUV光で硬化されるポリマー中心層と類似するUV硬化可能なポリマーである。
【0005】
光硬化可能な組成物は通常、少なくとも2つの成分、つまり重合することができるか又は架橋することができるモノマー、オリゴマー又はポリマーのような反応性成分と放射線(通常UV光であるが、可視光、エレクトロン又はX線のような十分に高エネルギーな放射線が採用されてもよい)に曝露される際に反応を開始させる光開始剤を含む。各々の反応性成分分子は、付加重合をする能力のある少なくとも一つの置換基(概してエチレン性不飽和(すなわち、C=C)基(例えば、アクリラート、メタクリラート、ビニルエーテル及びスチレンの場合)又はエポキシ基)を含んでいなければならない。光導波路製造に関してはとりわけ、フリーラジカル開始剤(例えば、アクリラート、メタクリラート及びスチレンに適切な)が最も一般に使用される光開始剤であるが、カチオン開始剤(例えばエポキシ及びビニルエーテルに適切な)もまた使用される。
【0006】
イメージ通りの曝露過程/溶剤現像過程を介する導波路製造のために使用される光硬化可能な組成物が、いくつかのグループによって開発されてきた。フリーラジカル光開始剤を組み込んだ組成物としては、NTT(US 6,632,585)、Corning(US 6,114,090、US 6,306,563、US 6,512,874 及び US 6,162,579)、AlliedSignal(US 5,462,700)及び McGill University(US 6,054,253)によって開示されたものが挙げられる。カチオン光開始剤を組み込んだ組成物としては、NTT(US 6,537,723)、Shipley(US 6,731,857)、IBM(US 5,054,872)及び Ericsson(US 6,002,828)によって開示されたものが挙げられる。AlliedSignal はまた、フリーラジカル重合とカチオン重合の動力学の差異を利用するフリーラジカル光開始剤及びカチオン光開始剤の両方を組み込んだ光硬化可能な組成物も開示している(US 6,133,472)。イメージ通りの曝露過程/屈折率変化過程を介した導波路製造に適した多くの光硬化可能な組成物もまた知られている。これらは大部分は、例えば Bell Telephone Labs(US 3,689,264、US 3,809,732 及び US 3,993,485)、DuPont(US 5,402,514)、ICI(US 5,104,771)及び Gemfire(US 6,724,968)によって開示されたもののように、フリーラジカル光開始剤を使用するが、Coring はフリーラジカル光開始剤及びカチオン光開始剤の両方を有するシステムを開示している(US 6,599,957)。
【0007】
使用される光開始剤のタイプ又は屈折率変化若しくは溶剤現像がイメージ通りの曝露を固定するために使用されるかどうかに関わらず、光誘導性重合反応が暴露されたそれらの領域でのみ起こることが概して重要である。実際には、光硬化可能な材料の曝露領域と未曝露領域との間の境界で反応を停止する効果的な終結機構が存在しなければならない。孤立した(isolated)導波路で、不完全な反応終結は、曝露領域と未曝露領域との間の境界面を曖昧にするか又は粗くし、それによって伝播光の過度の散乱損失を引き起こす。より深刻な問題は、導波路が密集する光学素子において(例えば、方向性カプラ又は平行な導波路のアレイにおいて)又は導波路が頂点に集中する光学素子において(例えば、Yスプリッタ又はスターカプラにおいて)起こる。そのような素子において、不完全な反応終結は、当該素子の稼動を危うくする可能性のある部分的若しくは完全な隙間充填(gap filling)又は頂点丸め(vertex rounding)を引き起こす可能性がある。酸素は、迅速にフリーラジカルと反応してより反応性の低いペルオキシラジカルを形成しそれによって反応終結を引き起こす高性能のフリーラジカルスカベンジャーであることが良く知られる。他のいくつかの変数(UV強度及びUV曝露時間、固有のモノマー反応性並びに光開始剤スペクトル感度を含む)が曝露領域と未曝露領域との間のコントラストに影響することが知られるが、フリーラジカル重合を介して光硬化可能なほとんどの組成物は、要求されるコントラストを提供することを支援する反応終結剤としての溶解酸素の存在に頼っている。ニトロン(US 6,162,579)のような付加的なフリーラジカルスカベンジャーが当該コントラストを改善するために追加されてもよい。
【0008】
光学素子用基板はしばしば、機械的安定性、熱的安定性及び高度の表面の平滑度(散乱損失を最小限にするための)のような因子に関して選択されるシリコン、ガラス又はセラミックのような堅い材料で構成される。しかしながら、堅いというよりもむしろ柔軟であることが基板に関して好ましい、例えばフレキシブルディスプレー(W.A. MacDonald, "Engineered films for display technologies", Journal of Materials Chemistry vol. 14, pp. 4-10, 2004)及びフレキシブル光コネクター(US 6,709,607)のような多くの用途が存在する。柔軟な基板はまた、オープンリール式プロセシング(例えば、導波路製造のため(US 5,985,084 及び US 6,724,968))にも適合する。柔軟な基板は概して、プラスチック又はポリマー材料で構成され、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリカルボナート(PC)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリラート(PMMAのような)及びポリイミド(PI)を含む様々なタイプのプラスチックが、フラットパネルディスプレー用基板として使用されている。これらの中で、PETは圧倒的に最も広く使用されるが、それはPETが高い表面品質(すなわち、平滑度)を有しつつ安価であり広く大量に入手可能(例えば、Melinex(登録商標)又は Mylar(登録商標))であるためである。しかしながら、PETは比較的低いガラス転移温度(Tg 〜 82 ℃)を有しているので、熱安定性が主要な懸念事項である場合には、ポリカルボナート又はポリイミド(例えば、Kapton(登録商標))のような他のタイプのプラスチック基板(通常、より高価な)が使用されてもよい。しかしながら注目すべきは、プラスチック基板が必ずしも柔軟ではなく(例えば、とりわけ分厚く及び/又は半硬質であってもよい)、さらにプラスチック基板が透明性、より低い重さ及びより低いコストのような他の理由のために好ましい場合がある。数多くのプラスチックが知られ、それらの多くを光硬化可能なポリマーのための基板として使用することができることが十分に理解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
UV硬化可能なポリマーを用いたフォトリソグラフィー/ウェットエッチプロセシングは低温過程であるので、選択されるプラスチックがウェット現像過程において使用される溶剤に耐久性がある限りは、プラスチック基板に容易に適用できるはずである。しかしながら驚いたことに、シロキサンポリマー及びフリーラジカル光開始剤を含む光硬化可能な材料を用いた際に、シリコン基板からプラスチック基板への変更が、光硬化可能な材料の重合動力学に影響し、微細な構造を形成することができないことが分かった。従って、重合動力学におけるこの変化を回避する方法又は補填する方法を見出すことが必要である。
【0010】
本明細書中の従来技術のいずれの議論も、当業者の共通の一般的な知識の一部として解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要約)
第1の側面に従って、本発明は、プラスチック基板上に支持される放射線硬化可能なポリマーのパターニング方法であって、プラスチック基板上に放射線硬化可能なポリマーを堆積し、及び前記放射線硬化可能なポリマーの少なくとも一部を硬化エネルギー放射線にイメージ通りに曝露して硬化ポリマー領域を提供することを含み、さらに前記プラスチック基板が前記エネルギー放射線から保護される、前記パターニング方法を提供する。
【0012】
“含む(comprise)”、“含まれる(comprised)”、“含む(comprising)”などのような表現は、網羅的な意味というよりはむしろ包含的な意味で解釈されるべきである。
【0013】
好ましくは、当該プラスチック基板は、i)前記基板に前記エネルギー放射線を吸収するように設計される添加剤を提供すること又はii)前記基板上に堆積される前記エネルギー放射線に関して不透明な障壁層を提供すること又はiii)それらの組み合わせ、を手段として前記エネルギー放射線から保護されてもよい。
【0014】
本発明のある極めて好ましい実施態様において、当該プラスチック基板は、前記硬化エネルギー放射線を吸収するために選択される添加剤の前記基板への添加を手段として前記硬化エネルギー放射線から保護される。
【0015】
好ましくは、前記の放射線硬化可能なポリマー層のエネルギー放射線への曝露は、少なくとも一つの硬化ポリマー領域及び少なくとも一つの未曝露の放射線硬化可能なポリマー領域を提供するためのパターニングマスクを介する。あるいは、前記の放射線硬化可能なポリマー層のエネルギー放射線への曝露は、前記エネルギー放射線の有向ビームによるものである。前記未曝露の放射線硬化可能なポリマー領域から未曝露の放射線硬化可能なポリマーを除去するための溶剤を適用する付加的な工程が使用されてもよい。あるいは、当該放射線硬化可能なポリマーの性質は、硬化ポリマー領域及び未曝露の放射線硬化可能なポリマー領域が光学素子として機能することを可能にする屈折率差を有するように選択される。
【0016】
本発明の他に採り得る極めて好ましい実施態様において、当該プラスチック基板は、前記基板上に堆積される前記エネルギー放射線に関して不透明な障壁層を手段として、前記硬化エネルギー放射線から保護される。ある好ましい実施態様において、当該障壁層は金属膜を含み、金属膜は、好ましくはアルミニウムであってもよい。
【0017】
他の採り得る好ましい実施態様において、当該障壁層は、前記エネルギー放射線を吸収する添加剤を含むポリマーを含む。最も好ましくは、当該障壁層は、前記プラスチック基板と共に同時押し出し成形される。
【0018】
第2の側面に従って、本発明は、プラスチック基板上に支持されるUV硬化可能なポリマー光導波路の光パターニング方法であって、プラスチック基板上にUV硬化可能なポリマーを堆積し、前記UV硬化可能なポリマーの少なくとも一部をUV放射線にパターニングマスクを介してイメージ通りに曝露して少なくとも一つの硬化ポリマー領域及び少なくとも一つの未曝露のUV硬化可能なポリマー領域を提供し、及び前記未曝露のUV硬化可能なポリマー領域から未曝露のUV硬化可能なポリマーを除去するための溶剤を適用することを含み、さらに、前記プラスチック基板が、UV放射線を吸収するために選択される添加剤の基板への添加を手段として前記UV放射線から保護される、前記光パターニング方法を提供する。
【0019】
そのように形成される導波路はとりわけ、光学タッチスクリーンセンサーの構成要素としての使用に適している。
【0020】
第3の側面に従って、本発明は、プラスチック基板上に支持されるUV硬化可能なポリマー光導波路の光パターニング方法であって、プラスチック基板上にUV硬化可能なポリマーを堆積し、前記UV硬化可能なポリマーの少なくとも一部をUV放射線にパターニングマスクを介してイメージ通りに曝露して少なくとも一つの硬化ポリマー領域及び少なくとも一つの未曝露のUV硬化可能なポリマー領域を提供し、及び前記未曝露のUV硬化可能なポリマー領域から未曝露のUV硬化可能なポリマーを除去するための溶剤を適用することを含み、さらに、前記プラスチック基板が、前記プラスチック基板上に堆積される前記エネルギー放射線に関して不透明な障壁層によって前記UV放射線から保護される、前記光パターニング方法を提供する。最も好ましくは、当該障壁層は、前記プラスチック基板と共に同時押し出し成形される。
【0021】
そのように形成される導波路はとりわけ、光学タッチスクリーンセンサーの構成要素としての使用に適している。
【0022】
好ましい方法のどちらが当該基板を保護するために使用されるかに関わらず、本発明の実施態様は、多くの共通の改善を共有する。
【0023】
好ましくは、当該エネルギー放射線はUV放射線であり、当該添加剤はUV吸収体である。最も好ましくは、当該添加剤は、前記プラスチック基板の表面中に拡散される。
【0024】
好ましくは、当該放射線硬化可能なポリマー層は、付加重合する能力を有する少なくとも一つの官能基を有する少なくとも一つのモノマー、オリゴマー又はポリマー及び少なくとも一つの光開始剤を含む。
【0025】
好ましくは、当該少なくとも一つの官能基は、例えば、メタクリラート基、アクリラート基、スチレン基、ビニル基又はビニルエーテル基であってもよいがこれらに限定されないエチレン性不飽和基である。あるいは、当該少なくとも一つの官能基はエポキシ基である。
【0026】
好ましくは、当該放射線硬化可能なポリマーはシロキサンポリマーを含む。
【0027】
好ましくは、当該少なくとも一つの光開始剤はフリーラジカル光開始剤である。
【0028】
当該プラスチック基板は、好ましくはポリエチレンテレフタラートであるか又は同様に好ましくはポリカルボナートである。
【0029】
とりわけ好ましい実施態様において、本発明の方法は光導波路の製造のために使用される。当該方法はさらに、放射線硬化可能なポリマー層の堆積に先立って当該プラスチック基板上に下方のクラッド層を堆積する工程をさらに含んでいてもよい。
【0030】
好ましくは、当該下方のクラッド層は放射線硬化可能なポリマーを含む。
【0031】
さらに、光学素子の製造に関しては、当該方法は好ましくは、パターニングされる放射線硬化ポリマー層上に上方のクラッド層を堆積する工程をさらに含む。好ましくは、当該上方のクラッド層は放射線硬化可能なポリマーを含む。
【0032】
極めて好ましい実施態様において、当該光導波路は光学タッチスクリーンセンサーの構成要素を形成する。
【0033】
第4の側面に従って、本発明は、プラスチック基板、エネルギー放射線に関して不透明な中間障壁層及びその上に堆積されるパターニングされる放射線硬化ポリマーを含む光学素子を提供する。
【0034】
好ましくは、当該プラスチック基板はポリエチレンテレフタラート又はポリカルボナートである。好ましくは、当該障壁層は金属膜である。あるいは、当該障壁層はエネルギー放射線を吸収する添加剤と共にポリマーを含み、当該プラスチック基板及び障壁層は同時押し出し成形される。好ましくは、当該光学素子は導波路を基盤とする光学タッチスクリーンセンサーの一部を形成する。
【0035】
第5の側面に従って、本発明は、プラスチック基板及びその上に堆積されるパターニングされる放射線硬化ポリマーを含む光学素子であって、前記プラスチック基板が、当該ポリマーを硬化するために用いられる放射線を吸収する添加剤を含む、前記光学素子を提供する。
【0036】
好ましくは、当該プラスチック基板はポリエチレンテレフタラート又はポリカルボナートである。
【0037】
好ましくは、当該放射線はUV放射線である。当該添加剤は、当該基板中に溶解されてもよいし、当該基板中に分散されてもよいし又は当該基板上にコートされてもよい。
【0038】
好ましくは、当該光学素子は導波路を基盤とする光学タッチスクリーンセンサーの一部を形成する。
【0039】
第6の側面に従って、本発明は、プラスチック基板、前記プラスチック基板と共に同時押し出し成形されるUV放射線に関して不透明な中間層及びその上に堆積されるパターニングされるUV硬化ポリマーを含む光学素子を提供する。本発明はまた、そのような光学素子を含む導波路を基盤とする光学タッチスクリーンセンサーも提供する。
【0040】
第7の側面に従って、本発明は、UV吸収添加剤を含むプラスチック基板を含み、さらにその上に堆積されるパターニングされるUV硬化ポリマーを有する光学素子を提供する。本発明はまた、そのような光学素子を含む導波路を基盤とする光学タッチスクリーンセンサーも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1a−図1dは、フォトリソグラフィー/ウェットエッチ法での光硬化可能なポリマー層のパターニングの一般的な方法を図解する。
【図2】図2は、一元化レンズを有する2つの隣接導波路の概略図である。
【図3】図3は、従来技術を用いてシリコン基板上に堆積された光硬化可能なポリマーからパターニングされた2つのレンズ間の隙間領域の写真である。
【図4】図4は、従来技術を用いてポリカルボナート基板上に堆積された光硬化可能なポリマーからパターニングされた2つのレンズ間の隙間領域の写真である。
【図5】図5は、従来技術を用いてポリエチレンテレフタラート(PET)基板上に堆積された光硬化可能なポリマーからパターニングされた2つのレンズ間の隙間領域の写真である。
【図6】図6は、本発明の技術を用いてUV吸収プラスチック層と共に同時押し出し成形されたポリカルボナート基板上に堆積された光硬化可能なポリマーからパターニングされた2つのレンズ間の隙間領域の写真である。
【図7】図7は、本発明の技術を用いてUV吸収体を含むPET基板上に堆積された光硬化可能なポリマーからパターニングされた2つのレンズ間の隙間領域の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(発明の詳細な説明)
本発明は、プラスチック基板上にコートされる光硬化可能な組成物における形体のフォトリソグラフィックパターニングのための方法を提供する。当該光硬化可能な組成物は、少なくとも一つのフリーラジカル重合可能なモノマー成分、オリゴマー成分又はポリマー成分及び少なくとも一つの光開始剤を含む。当該フリーラジカル重合可能なモノマー成分、オリゴマー成分又はポリマー成分は、付加重合可能な少なくとも一つの反応基を含む。好ましくは、当該反応基はエチレン性不飽和基である。最も好ましくは、当該反応基は、メタクリラート基、アクリラート基又はスチレン基である。当該光開始剤は、エネルギー放射線に曝露される際に当該重合可能な成分のフリーラジカル重合を開始することができるほど十分な量で存在する。当該重合可能な成分は、当該光硬化可能な組成物が十分なエネルギー放射線にイメージ通りに曝露される際にコントラストを提供することができるほど十分な量で存在する。ある実施態様において、当該コントラストは屈折率差の形をとる。他の好ましい実施態様において、当該コントラストは、当該イメージ通りに曝露される組成物が適切な溶剤現像剤で洗い流される際に当該イメージ通りに曝露されていない領域を除去してイメージ通りに曝露された領域を残すように溶解度差の形をとる。好ましくは、当該エネルギー放射線はUV光である。あるいは、当該エネルギー放射線は、可視光、X線、エレクトロン又は重合を開始するのに十分に高エネルギーないずれの他の放射線であってもよい。好ましくは、当該光硬化可能な組成物は、マスクを介してUV光でイメージ通りに曝露される。あるいは、当該光硬化可能な組成物は、それを横切るUV光の集束ビームを走査することによってイメージ通りに曝露されてもよい。
【0043】
プラスチック基板上に支持される光硬化可能な組成物のフォトリソグラフィックパターニングに関する本発明の方法は、形体外観(feature shape)の緻密な制御が要求されるいずれの形体の成形にも適用できる。当該形体は例えば、光導波路、マイクロ流体チャネル又はマイクロレンズであってもよい。本発明は光導波路に関して記載されるが、これに限定されない。光導波路の特定の非限定的な適用において、US 5,914,709、US 6,181,842 及び US 6,351,260 には、光導波路がスクリーンを横切る光ビームのアレイを発射するために使用され、次に当該スクリーンの反対側でそれらを回収して位置敏感型検出器へ伝導する光学タッチスクリーンセンサーが記載されている。タッチスクリーンセンサーは、種々の家庭用電化製品機器で使用されてもよく、さらにコストを削減するために、安価なプラスチック基板上の導波路を製造するのに好都合である。製品の組み立ての間に当該基板の面外の屈曲が要求される際には、柔軟性もまた好都合である。これらの導波路は、フォトリソグラフィー/ウェット現像過程を使用して光硬化可能な材料から有利に製造することができる。
【0044】
フリーラジカル重合可能なモノマー、オリゴマー又はポリマーを含む光導波路製造に適した種々の光硬化可能な材料が、当業界で知られる。AlliedSignal 及び Corning によって開発された(US 5,462,700、US 6,114,090、US 6,162,579)多官能のアクリラート及び/又はメタクリラートは、一つのとりわけ適した種類の光硬化可能な材料である。エチレン性不飽和置換基を含むシロキサンポリマーは、シリコン、ガラス及びプラスチックを含む様々な基板材料への優れた接着を有する他のとりわけ適した種類の光硬化可能な材料である。シロキサンポリマーは例えば、McGill University(US 6,054,253)及び NTT(US 6,632,585)によって開示されたとおり“ゾル−ゲル”タイプの加水分解反応/縮合反応によって合成されてもよい。しかしながら、これらの反応は水が関与するため、近赤外領域における光吸収を増大させる(光導波路用途に関して有害である)ヒドロキシル化学種を除去することが困難になる可能性がある。代わりに、極わずかな量のヒドロキシルを含むシロキサンポリマーを、US 6,800,724、US 6,818,721 及び US 6,965,006 に開示されたような非水縮合反応によって合成することができる。光硬化可能なシロキサンポリマー上のエチレン性不飽和置換基は例えば、メタクリラート基(US 6,818,721 にあるような)、スチレン基(US 6,727,337 にあるような)又はフリーラジカル付加重合する能力のある何らかの他の基であってもよい。
【0045】
当該光硬化可能な材料は、少なくとも一つのフリーラジカル生成光開始剤をさらに含む。UV光に適した市販で入手可能なフリーラジカル生成光開始剤の例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(Irgacure 184)、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(Irgacure 907)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(Irgacure 651)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(Irgacure 369)、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Darocur 1173)、ベンゾフェノン(Darocur BP)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(Irgacure 2959)、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(DEAB)、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ベンゾイン及び4,4'-ジメトキシベンゾインが挙げられる。可視光での硬化に関しては、カムホルキノンが光開始剤として使用されてもよい。2つ以上の光開始剤の混合物が使用されてもよい。例えば、Irgacure 1000 は、80 % Darocur 1173 と 20 % Irgacure 184 の混合物である。当該光開始剤は、全組成物重量の 0.01 % − 10 % のレベル、より好ましくは、全組成物重量の 0.5 % − 4 % のレベルで存在してもよい。
【0046】
安定剤、可塑剤、コントラストエンハンサー、染料又は充填剤のような他の添加剤が、必要に応じて当該光硬化可能なポリマーの特性を向上させるために加えられてもよい。
【0047】
以下の実施例では、様々な基板上に堆積される光硬化可能なシロキサンポリマーでの一元化平面レンズを備える密集した平行導波路アレイのイメージ通りのUV曝露を介した製造について記載する。そのような導波路/レンズアレイは、導波路を基盤とする光学タッチスクリーンセンサーにおける用途を見出してもよい。図2は、50 μm 幅の隙間23によって区分される一元化レンズ22を備える2つの当該導波路21の平面図を示す。点で描いた囲み線24は、いくらかの実施例と共に提示される写真によってカバーされるおおよその範囲を表す。
【実施例】
【0048】
例1:シリコン基板上の従来のコーティング法
US 6,818,721 に開示された手順に従って、2.5[Pa・s](2500 cP)(20 ℃ で)の粘度及び1.483の屈折率(20 ℃ において室内光でアッベ屈折計を用いて測定した)を有する低屈折率のポリマーAを調製した。2.2[Pa・s](2200 cP)(20 ℃ で)の粘度及び1.509の屈折率(20 ℃で)を有する高屈折率のポリマーBを調製した。フリーラジカル生成光開始剤Irgacure 369 を、2wt% のレベルでポリマーAとポリマーBの両方に加えた。ポリマーA及びポリマーB中の 25 % のシリコン原子は、メタクリラートを含む置換基を有していた。
【0049】
ポリマーAをシリコンウェーハ上にスピンコートし、オリエル投光照明器(Oriel flood illuminator)中の水銀ランプのUV光で硬化させて 20 μm 厚で1.478の屈折率(20 ℃ 及び 1550 nm で)を有する下方のクラッド層を形成させた。ポリマーBを当該下方のクラッド上にスピンコートして 11 μm 厚の中心層を形成させ、Canon MPA500 フォトリソグラフィー器具でマスクを介してUV光にイメージ通りに曝露した。未曝露のポリマーB材料を次に、イソプロパノール中に溶解して一元化平面レンズを備える導波路アレイの形で曝露された材料を残した。曝露されたポリマーB材料は、1.505 の屈折率(20 ℃ 及び 1550 nm で)を有していた。写真(図3)は、レンズ22が滑らかな側壁を有し、当該レンズの間の隙間23中に好ましくない重合化材料の形跡(すなわち、“隙間充填”("gap filling"))が全くないことを示す。
【0050】
例2:ポリカルボナート基板上の従来のコーティング法
本実施例中のプロセス条件は、当該基板がシリコンの代わりにポリカルボナート(DE1-1、Bayer)であったことを除き例1におけるものと同一である。この場合、写真(図4)は、レンズ22の側壁上の荒れている部分41及び当該レンズの間の隙間23中の相当量の重合化材料42を示す。
【0051】
例3:PET基板上の従来のコーティング法
本実施例中のプロセス条件は、当該基板がシリコンの代わりにPET(Melinex(登録商標)518、Dupont)であったことを除き例1におけるものと同一である。例2の場合と同様に、写真(図5)は、レンズ22の側壁上の荒れている部分41及び当該レンズの間の隙間23中の相当量の重合化材料42を示す。
【0052】
シリコンからPET又はポリカルボナートへの基材の変更によって引き起こされた当該効果は、驚くべきものかつ特筆すべきものであった。ある様式において、シリコン基板からプラスチック基板への変更は、当該硬化可能な組成物の重合動力学を変化させた。ハイコントラストの構造を光で形成する能力は、その他の因子のうちで、フリーラジカル生成の割合と光硬化可能な材料中に溶解された酸素又は光硬化可能な材料中に存在する酸素によるフリーラジカルスカベンジングの割合との間のバランスに依存する。学説によって束縛されることを望まないが、当該プラスチックの存在が光パターニングプロセスの間に光硬化可能なポリマーB中の酸素含有量を何らかの形で削減したと考えられる。基板上にコートされる光硬化可能な材料の膜が光パターニング中にUV光に曝露される際に、当該基板の部分的なUV曝露もまた起こる。再び学説によって束縛されることを望まないが、光安定剤のような当該プラスチック基板中の添加剤がUV曝露によって活性化され、それらの稼動中に酸素を消耗させると考えられている。例えば、多くのヒンダードアミン(幅広い種類の光安定剤)が初期の酸化プロセスで作用することが知られる(Ciba Specialty Chemicals Publication No. 01619.500.40、"Additives for Trade Sales and Industrial Coatings")。ポリマーのうちで、シロキサン(シリコーンとしても知られる)は、高い酸素透過性を有し、ディスプレー業界で基板として一般に使用されるプラスチックにおける酸素透過性よりも確実に高いことが良く知られる。PETの酸素透過性Pはとりわけ低く、25 ℃ で 10-15 cm3(STP)・cm-1・Pa-1・s-1 オーダーであり、一方で、ポリカルボナートポリマーに関するPは、10-14 cm3(STP)・cm-1・Pa-1・s-1 オーダーである。その一方、シロキサンポリマーに関するPは概して、10-11 cm3(STP)・cm-1・Pa-1・s-1 オーダーである(Polymer Handbook, 4th edition, eds. J. Brandrup, E.H. Immergut & E.A. Grulke, John Wiley & Sons, 1999, pp. VI/543-VI/569)。シロキサンポリマーのはるかに高い酸素透過性に起因して、UV曝露が当該プラスチック基板の表面層中で酸素消耗反応を開始する際に、酸素は当該プラスチックを介したゆっくりとした拡散によって補給されるというよりもむしろ上に横たわるシロキサンフィルムを介した迅速な拡散によって補給されると考えられている。UV曝露はまたシロキサン中の酸素濃度をも消耗させているので(酸素と反応するフリーラジカルを生成することにより)、この付加的な基板関連性酸素消耗はフリーラジカル生成/消耗のバランスを変化させ、イメージ通りに曝露される領域の外側で重合が続くことを可能にする。フォトリソグラフィーの間、当該プロセスウィンドウ(process window)は閉じられていた。
【0053】
本発明は、UV光を当該プラスチック基板と有害に相互作用することから回避することによって、当該酸素消耗効果を制御する方法に対処する。ある実施態様において、本発明は、当該シロキサンポリマーと当該基板との間に金属障壁のような遮断層又は反射層の形で介在層を挿入する方法を提供する。そのような材料はオープンリール式プロセスで当該プラスチック上にアルミニウムを堆積することによって容易に製造され、例えば食品業界におけるパッケージ化のために広く使用される。
【0054】
例4:PET基板上の本発明のコーティング方法
本例中のプロセス条件は、当該基板が表面に 200 nm 厚のアルミニウムのスパッタコート層を有するPET(Melinex(登録商標)518、Dupont)であったことを除き例1におけるものと同一である。例1の結果と同様に、当該レンズは滑らかな側壁を有しており、隙間充填(gap filling)の形跡は全くなく、当該酸素消耗効果が制御されていたことを示唆した。
【0055】
本発明の他の実施態様において、当該プラスチック基板は、当該基板へのUV光の伝達を低減するためのUV吸収体を含むポリマー障壁層でコートされるか又はこれと共に同時押し出し成形される。Ciba Geigy の Tinuvin 384-2 又は Tinuvin 171 のようなポリマーに適した多くのUV吸収体が入手可能である。UV吸収障壁層と共に同時押し出し成形される市販で入手可能なプラスチックの一つの例は、Bayer のポリカルボナート Makrolon(登録商標)UVである。
【0056】
例5:UV吸収障壁層と共に同時押し出し成形されるポリカルボナート基板上の本発明のコーティング方法
本例中のプロセス条件は、シリコンの代わりに、当該基板が同時押し出し成形されるUV吸収層を有するBayerのポリカルボナートMakrolon(登録商標)UVであったことを除き例1におけるものと同一である。例1の結果と同様に、さらに例2の結果と対照的に、写真(図6)は、レンズ22が滑らかな側壁を有し、当該レンズの間の隙間23中に好ましくない重合化材料の形跡(すなわち、“隙間充填”(gap filling))が全くないことを示す。
【0057】
さらなる実施態様において、遮断層及び吸収層は組み合わせて使用されてもよい(例えば、当該基板のメタライゼーションに引き続くUV吸収障壁層の堆積及び硬化又はUV吸収層とともに同時押し出し成形されるプラスチック基板のメタライゼーション)。
【0058】
さらに別の実施態様において、当該プラスチック基板は、当該基板の至る所に分布するか又は当該基板の表面層にのみ存在するかどちらかの真性UV吸収体を含む。中心ポリマー層のパターニングの間に、このタイプのプラスチック基板がUV放射線に曝露されると、当該基板に浸透するいずれのUV放射線も当該基板の表面に近い領域で吸収される。通常、この入射エネルギーは熱に変換され、光パターニングの周辺の酸素濃度に影響するかもしれない過程(フリーラジカル又はその他)を開始しない。真性UV吸収体を含む市販で入手可能なプラスチックの2つの例は、Dupont の Melinex(登録商標)943 及び CPFilms の Courtguard(登録商標)UV保護膜であり、両方共にPETを基盤とする。
【0059】
例6:UV吸収PET基板上の本発明のコーティング方法
本例中のプロセス条件は、当該基板がシリコンの代わりにUV吸収体を含むPET(Dupont Melinex(登録商標)454 上の CPFilms Courtguard(登録商標))のグレードであったことを除き例1におけるものと同一である。例1及び例5の結果と同様に、さらに例3の結果と対照的に、写真(図7)は、レンズ22が滑らかな側壁を有し、当該レンズの間の隙間23中に好ましくない重合化材料の形跡(すなわち、“隙間充填”(gap filling))が全くないことを示す。
【0060】
本発明において、UV吸収化学種を含むコーティングを有するか又はプラスチック基板中に分散されたUV吸収化学種若しくは結合させた(graft)UV吸収化学種を有する当該プラスチック基板がとりわけ好ましい。これらの実施態様は、フォトリソグラフィーにおける反射防止コーティングの使用とは区別されるべきである。UV放射線が高反射性基板(シリコンのような)に反射することによって引き起こされる定常波が当該光パターニング過程を妨害する可能性があることがUVフォトリソグラフィーの当業界で知られる("Introduction to Microlithography: Theory, Materials and Processing", ed. L.F. Thompson, C.G. Willson & M.J. Bowden, ACS Symposium Series 219, American Chemical Society 1983, pp. 44-46)。この定常波効果は従来技術において、相殺的干渉がパターニングされる当該材料中へのUV光の反射を回避するように選択されるコーティングの厚さ及び屈折率を有する反射防止コーティングを当該基板上に堆積することによって回避されてきた。当該反射防止コーティング材料はまたUV光を吸収するかもしれないが、当業者は、この吸収が反射を回避するために十分ではなく、むしろ当該反射が主に相殺的干渉によって回避されることを理解する。本発明の保護コーティングは、UV光が当該基板中に浸透することを回避することを目的としており、UV光が光パターニングされる当該材料中に反射するのを回避することを目的としない。さらに、当該光パターニング可能なポリマーと当該プラスチック基板との間の屈折率コントラストは小さく、従って実施例4及び例5において問題を是正した障壁コーティングが反射防止コーティングとして作用していないので、例2及び例3で明らかにされたパターニングの問題が定常波効果に起因する可能性は極めて低いことが十分に理解される。実際に、光パターニングは、基板が高反射性であった(それぞれ、シリコン及びアルミニウムコートされたプラスチック)例1及び例4において完全に容認できるものであった。本発明の保護コーティングと従来技術の反射防止コーティングとの間の差異の他の点において、相殺
的干渉に依存する反射防止コーティングは概して、UV波長の狭い範囲(例えば水銀ランプのi−線)での光パターニングに関してのみ設計することができる。その一方、本発明の保護コーティングは、それらが反射性であろうと(例えば、金属膜)吸収性であろうと(例えば、UV吸収体でドープしたポリマー膜)、UV波長の広い範囲の保護を提示し、例えば水銀ランプの多様な線での光パターニングを可能にする。
【0061】
本発明は特定の実施例に関して記載されてきたが、本発明が多くの他の態様で具体化されてもよいことが当業者によって十分に理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基板上に支持される放射線硬化可能なポリマーのパターニング方法であって:
プラスチック基板上に放射線硬化可能なポリマーを堆積し;及び
前記放射線硬化可能なポリマーの少なくとも一部を硬化エネルギー放射線にイメージ通りに曝露して硬化ポリマー領域を提供することを含み、さらに
前記プラスチック基板が前記放射線から保護される、前記パターニング方法。
【請求項2】
前記プラスチック基板が、
i)前記基板に前記エネルギー放射線を吸収するように設計される添加剤を提供すること又は
ii)前記基板上に堆積される前記エネルギー放射線に関して不透明な障壁層を提供すること又は
iii)それらの組み合わせ、
を手段として前記放射線から保護される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラスチック基板が、前記硬化エネルギー放射線を吸収するために選択される添加剤の前記基板への添加によって前記硬化エネルギー放射線から保護される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記放射線硬化可能なポリマー層が、付加重合する能力を有する少なくとも一つの官能基を有する少なくとも一つのモノマー、オリゴマー又はポリマー及び少なくとも一つの光開始剤を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記放射線硬化可能なポリマー層のエネルギー放射線への曝露が、少なくとも一つの硬化ポリマー領域及び少なくとも一つの未曝露の放射線硬化可能なポリマー領域を提供するための、
i)パターニングマスクを介した曝露又は
ii)前記エネルギー放射線の有向ビームへの曝露
である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記未曝露の放射線硬化可能なポリマー領域から未曝露の放射線硬化可能なポリマーを除去するための溶剤を適用することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記の硬化ポリマー領域及び未曝露の放射線硬化可能なポリマー領域が、光学素子として機能することを可能にする屈折率差を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つの光開始剤がフリーラジカル光開始剤である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記エネルギー放射線がUV放射線であって、かつ前記添加剤がUV吸収体である、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記添加剤が、前記プラスチック基板の表面中に拡散される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つの官能基がエチレン性不飽和基である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記エチレン性不飽和基が、メタクリラート基、アクリラート基、スチレン基、ビニル基又はビニルエーテル基から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つの官能基がエポキシ基である、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記放射線硬化可能なポリマーがシロキサンポリマーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記プラスチック基板がポリエチレンテレフタラートである、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記プラスチック基板がポリカルボナートである、請求項3に記載の方法。
【請求項17】
光導波路の製造のために使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記放射線硬化可能なポリマー層の堆積前に、前記プラスチック基板上に光バッファ層を堆積することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記光バッファ層が放射線硬化可能なポリマーを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記のパターニングされる放射線硬化ポリマー層上にクラッド層を堆積することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記クラッド層が放射線硬化可能なポリマーを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記光導波路が光学タッチスクリーンセンサーの構成要素を形成する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記プラスチック基板が、前記基板上に堆積される前記エネルギー放射線に関して不透明な障壁層によって前記硬化エネルギー放射線から保護される、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記障壁層が金属膜を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記金属膜がアルミニウムを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記障壁層が前記エネルギー放射線を吸収する添加剤を含むポリマーを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記障壁層が前記プラスチック基板と共に同時押し出し成形される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記放射線硬化可能なポリマーが、付加重合する能力を有する少なくとも一つの官能基を有する少なくとも一つのモノマー、オリゴマー又はポリマー及び少なくとも一つの光開始剤を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記放射線硬化可能なポリマー層のエネルギー放射線への曝露が、少なくとも一つの硬化ポリマー領域及び少なくとも一つの未曝露の放射線硬化可能なポリマー領域を提供するための、
i)パターニングマスクを介した曝露又は
ii)前記エネルギー放射線の有向ビームへの曝露
である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記未曝露の放射線硬化可能なポリマー領域から未曝露の放射線硬化可能なポリマーを除去するための溶剤を適用することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記の硬化ポリマー領域及び未曝露の放射線硬化可能なポリマーが、光学素子として機能することを可能にする屈折率差を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも一つの光開始剤がフリーラジカル光開始剤である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記エネルギー放射線がUV放射線である、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも一つの官能基がエチレン性不飽和基である、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記エチレン性不飽和基が、メタクリラート基、アクリラート基、スチレン基、ビニル基又はビニルエーテル基から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも一つの官能基がエポキシ基である、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記放射線硬化可能なポリマーがシロキサンポリマーを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記プラスチック基板がポリエチレンテレフタラートである、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
前記プラスチック基板がポリカルボナートである、請求項23に記載の方法。
【請求項40】
光導波路の製造のために使用される、請求項23に記載の方法。
【請求項41】
前記放射線硬化可能なポリマー層の堆積前に、前記障壁層上に光バッファ層を堆積することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記光バッファ層が放射線硬化可能なポリマーを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記のパターニングされる放射線硬化ポリマー層上にクラッド層を堆積することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記クラッド層が放射線硬化可能なポリマーを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記光導波路が光学タッチスクリーンセンサーの構成要素を形成する、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
プラスチック基板;
エネルギー放射線に関して不透明な中間障壁層;及び
その上に堆積されるパターニングされる放射線硬化ポリマーを含む光学素子。
【請求項47】
前記障壁層が金属膜である、請求項46に記載の光学素子。
【請求項48】
前記プラスチック基板が、ポリエチレンテレフタラート又はポリカルボナートである、請求項47に記載の光学素子。
【請求項49】
前記パターニングされる放射線硬化ポリマーがUV放射線によって硬化され、かつ前記障壁層が前記UV放射線を吸収する添加剤を含有するポリマーを含む、請求項46に記載の光学素子。
【請求項50】
前記障壁層が前記プラスチック基板と共に同時押し出し成形される、請求項49に記載の光学素子。
【請求項51】
前記プラスチック基板が、ポリエチレンテレフタラート又はポリカルボナートである、請求項49に記載の光学素子。
【請求項52】
請求項46に記載の光学素子を含む、導波路を基盤とする光学タッチスクリーンセンサー。
【請求項53】
プラスチック基板;及び
その上に堆積されるパターニングされる放射線硬化ポリマーを含む光学素子であって、
前記プラスチック基板が、ポリマーを硬化するために用いられる放射線を吸収する添加剤を含む、前記光学素子。
【請求項54】
前記プラスチック基板が、前記ポリマーを硬化するために用いられる放射線を吸収する添加剤を含むポリエチレンテレフタラート又はポリカルボナートである、請求項53に記載の光学素子。
【請求項55】
前記放射線がUV放射線である、請求項53に記載の光学素子。
【請求項56】
請求項53に記載の光学素子を含む、導波路を基盤とする光学タッチスクリーンセンサー。
【請求項57】
プラスチック基板上に支持されるUV硬化可能なポリマーの光パターニング方法であって:
プラスチック基板上にUV硬化可能なポリマーを堆積し;
前記UV硬化可能なポリマーの少なくとも一部をUV放射線にパターニングマスクを介してイメージ通りに曝露して少なくとも一つの硬化ポリマー領域及び少なくとも一つの未曝露のUV硬化可能なポリマー領域を提供し;及び
前記未曝露のUV硬化可能なポリマー領域から未曝露のUV硬化可能なポリマーを除去するための溶剤を適用することを含み、さらに、
前記プラスチック基板が、UV放射線を吸収するために選択される添加剤の基板への添加を手段としてUV放射線から保護される、前記光パターニング方法。
【請求項58】
光導波路の製造のために使用される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記光導波路が光学タッチスクリーンセンサーの構成要素を形成する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
プラスチック基板上に支持されるUV硬化可能なポリマーの光パターニング方法であって:
プラスチック基板上にUV硬化可能なポリマーを堆積し;
前記UV硬化可能なポリマーの少なくとも一部をUV放射線にパターニングマスクを介してイメージ通りに曝露して少なくとも一つの硬化ポリマー領域及び少なくとも一つの未曝露のUV硬化可能なポリマー領域を提供し;及び
前記未曝露のUV硬化可能なポリマー領域から未曝露のUV硬化可能なポリマーを除去するための溶剤を適用することを含み、さらに、
前記プラスチック基板が、前記基板上に堆積される前記エネルギー放射線に関して不透明な障壁層によってUV放射線から保護される、前記光パターニング方法。
【請求項61】
前記障壁層が金属膜である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記障壁層が、UV放射線を吸収する添加剤を含有するポリマーを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記障壁層が前記プラスチック基板と共に同時押し出し成形される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
光導波路の製造のために使用される、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記光導波路が光学タッチスクリーンセンサーの構成要素を形成する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
光導波路の製造のために使用される、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記光導波路が光学タッチスクリーンセンサーの構成要素を形成する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
プラスチック基板;
前記プラスチック基板と共に同時押し出し成形によって形成されるUV放射線に関して不透明な中間層;及び
その上に堆積されるパターニングされるUV硬化ポリマーを含む光学素子。
【請求項69】
請求項68に記載の光学素子を含む、導波路を基盤とする光学タッチスクリーンセンサー。
【請求項70】
UV吸収性添加剤を含むプラスチック基板を含み、さらにその上に堆積されるパターニングされるUV硬化ポリマーを有する光学素子。
【請求項71】
請求項70に記載の光学素子を含む、導波路を基盤とする光学タッチスクリーンセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−80242(P2013−80242A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−267005(P2012−267005)
【出願日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【分割の表示】特願2007−555423(P2007−555423)の分割
【原出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(512230111)ゼッタ リサーチ アンド デベロップメント エルエルシー−アールピーオー シリーズ (1)
【Fターム(参考)】