説明

ポリマー溶液の製造方法、ポリマーの精製方法

【課題】本発明は、上記実情に鑑みて、工業的なスケールで適用でき、親水性有機溶媒やポリマー合成時に発生した親水性の反応副生成物などの親水性化合物などの除去性が高く、ポリマーの回収率も高く、塗布液としても使用可能なポリマー溶液の製造方法、及びポリマーの精製方法を提供することを目的とする。
【解決手段】一般式(A)で表されるユニット及び一般式(B)で表されるユニットを含有するポリマーと、炭素数とOH基数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコールとを含有するポリマー溶液の製造方法であって、
前記ポリマーを溶解し、前記アルコールと相溶する有機溶媒と、前記ポリマーとを含むポリマー溶液Aに、前記アルコールを加えて、ポリマー溶液Bを得る添加工程と、
前記ポリマー溶液Bに水を用いた抽出処理を施す抽出工程とを備える、とを備える、ポリマー溶液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー溶液の製造方法、及びポリマーの精製方法に関する。より詳細には、所定の官能基を有するポリマーが有機溶媒に溶解した溶液に、炭素数とOH基数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコールを添加して、その後、水と接触させてポリマー溶液を製造する方法、及びポリマーの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属膜との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、金属配線として使用する際の高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理するが必要であるため、金属膜と基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
【0004】
この問題を解決する手段として、基板上に該基板と直接結合したグラフトポリマーを生成させてポリマー層を形成し、このポリマー層に対してめっきを施して、得られた金属膜をエッチングする方法が知られている(特許文献1)。該方法によれば、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良することができる。
なお、該方法において、ポリマー層の形成のためには、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基を有するポリマーが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公報第08/050715号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1でポリマー層形成のために使用されているポリマーの合成の際には、反応副生成物や未反応物を除去するために、再沈殿処理が行われていた。
一方、該ポリマーは、基板と金属膜との密着性を確保するために、そのガラス転移温度が室温以下である場合が多い。そのため、再沈殿処理によって析出したポリマーは、取扱い性が悪い粘調固体となり、再沈殿処理時に使用した容器などにへばりつくため、回収が困難となり、結果として収率が低下するという問題があった。特に、該ポリマーがイオン性極性基を有する場合には、ポリマーの吸湿性が増加してより粘調な固形分となり、取扱い性がさらに悪化していた。
【0007】
また、上記のようにイオン性極性基を有するポリマーを合成する際に使用される溶媒は極性の高い有機溶媒(特に、親水性有機溶媒)が使用される傾向にあるが、該溶媒は比較的沸点が高い。該ポリマーを含有するポリマー溶液中に該溶媒(特に、親水性有機溶媒)が残存すると、該ポリマー溶液を用いてポリマー層を形成する際に、以下のような問題が生じていた。まず、溶媒が高沸点であるため、乾燥処理時に層形成が阻害されるという問題や、ポリマー層中に該溶媒が残存してしまい電子分野への応用が制限されてしまうという問題があり、特に、親水性有機溶媒に関する除去性に関してもさらなる改良で必要であった。
さらに、再沈殿処理ではポリマー合成時などに生じる反応副生成物(特に、親水性の不純物)を必ずしも十分に除去することができておらず、不純物によってポリマー層の形成が阻害される懸念があった。
このように、再沈殿処理では、ポリマーの回収率、及び、不純物(特に、親水性の不純物)などの除去性が十分ではなく、工業的なスケールで該ポリマーを大量に製造することは困難であった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、工業的なスケールで適用でき、親水性有機溶媒やポリマー合成時に発生した親水性の反応副生成物などの親水性化合物の除去性が高く、かつ、ポリマーの回収率も高く、塗布液としても使用可能なポリマー溶液の製造方法、及びポリマーの精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、所定の官能基を有するポリマーの溶解性に着目し、上記課題について鋭意検討を行った結果、所定の炭素数を有するアルコールと水とを使用する抽出操作を行うことによって、上記課題が解決できることを見出した。
即ち、本発明者らは、上記課題が下記構成により解決されることを見出した。
【0010】
<1> 後述する一般式(A)で表されるユニット及び後述する一般式(B)で表されるユニットを含有するポリマーと、炭素数とOH基数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコールとを含有するポリマー溶液の製造方法であって、
前記ポリマーを溶解し、前記アルコールと相溶する有機溶媒と、前記ポリマーとを含むポリマー溶液Aに、前記アルコールを加えて、ポリマー溶液Bを得る添加工程と、
前記ポリマー溶液Bに水を用いた抽出処理を施す抽出工程とを備える、ポリマー溶液の製造方法。
<2> 前記ポリマーが、さらに後述する一般式(C)で表されるユニットを有する、<1>に記載のポリマー溶液の製造方法。
【0011】
<3> 前記ポリマー溶液Aが、前記有機溶媒中で、前記ポリマーを合成して得られたポリマー溶液である、<1>又は<2>に記載のポリマー溶液の製造方法。
<4> 前記有機溶媒が、アミド基を含有する親水性の溶媒である、<1>〜<3>のいずれかに記載のポリマー溶液の製造方法。
<5> 前記アルコールが、第2級又は第3級アルコールである、<1>〜<4>のいずれかに記載のポリマー溶液の製造方法。
<6> 前記水が、無機塩を含有する水溶液である、<1>〜<5>のいずれかに記載のポリマー溶液の製造方法。
<7> 前記無機塩の含有量が、前記水溶液全量に対して、10〜25質量%である、<6>に記載のポリマー溶液の製造方法。
【0012】
<8> 前記抽出工程の後に、得られたポリマー溶液に固体塩基を添加して、溶液を中和する中和工程を備える、<1>〜<7>のいずれかに記載のポリマー溶液の製造方法。
<9> 前記ポリマーが水に溶解したポリマー溶液の製造方法であって、
<1>〜<7>のいずれかに記載のポリマー溶液の製造方法の抽出工程の後に、得られたポリマー溶液に塩基性水溶液を接触させ、前記ポリマーを塩基性水溶液に分配して、前記ポリマーが水に溶解したポリマー溶液を得る分配工程を備える、ポリマー溶液の製造方法。
<10> 前記塩基性水溶液が、無機塩基を含有する水溶液である、<9>に記載のポリマー溶液の製造方法。
【0013】
<11> 後述する一般式(A)で表されるユニット及び後述する一般式(B)で表されるユニットを含有するポリマーの精製方法であって、
前記ポリマーと、炭素数とOH基数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコールと、前記ポリマーを溶解し、前記アルコールと相溶する有機溶媒とを含有するポリマー溶液に水を接触させる接触工程を備える、ポリマーの精製方法。
<12> 前記ポリマー溶液が、前記有機溶媒中で、前記ポリマーを合成して得られたポリマー溶液に前記アルコールを添加して得られるポリマー溶液である、<11>に記載のポリマーの精製方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、工業的なスケールで適用でき、親水性有機溶媒やポリマー合成時に発生した親水性の反応副生成物などの親水性化合物の除去性が高く、かつ、ポリマーの回収率も高く、塗布液としても使用可能なポリマー溶液の製造方法、及びポリマーの精製方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明のポリマー溶液の製造方法について説明する。
本発明のポリマー溶液には、後述する一般式(A)で表されるユニット及び一般式(B)で表されるユニットを含有するポリマーと、炭素数とOH基数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコールとが含有される。該方法によって得られるポリマー溶液は、親水性有機溶媒といった高沸点溶媒や、親水性(水溶性)の反応副生成物といった親水性の不純物の含有率が低い。また、ポリマー溶液を基板上などに塗布した場合、ポリマーと上記アルコールとの良好な相互作用、及び、乾燥工程の簡便さから、塗膜の膜厚制御や塗膜の成膜性に優れ、塗布溶液としても有用である。特に、めっき触媒又はその前駆体を受容するポリマー層の形成に用いられるポリマー層形成用組成物として有用に使用することができる。
該ポリマー溶液を製造するために、以下の2つの工程が実施される。
(添加工程) 上記ポリマーと、上記ポリマーを溶解し、上記アルコールと相溶する有機溶媒とを含むポリマー溶液Aに、上記アルコールを加えて、ポリマー溶液Bを得る工程
(抽出工程) 前記ポリマー溶液Bに水を用いた抽出処理を施す工程
以下に各工程で使用される材料、及び工程の手順について説明する。
【0016】
<添加工程>
該添加工程では、一般式(A)で表されるユニット及び一般式(B)で表されるユニットを含有するポリマー(以後、単にポリマーとも称する)と、所定の性質を示す有機溶媒とを含むポリマー溶液Aに、上記アルコールを加えて、ポリマー溶液Bを得る工程である。該工程によって、所定のアルコールを含む混合溶液中に、ポリマーが溶解した均一溶液を製造できる。
まず、使用されるポリマー、有機溶媒、アルコールについて詳述する。
【0017】
<ポリマー>
本発明で用いられるポリマーは、以下の一般式(A)で表されるユニット及び一般式(B)で表されるユニットを含有するポリマーである。
以下に各ユニットに関して詳述する。
【0018】
(一般式(A)で表されるユニット)
本発明で使用されるポリマーは、一般式(A)で表されるユニットを含有する。該ユニットがポリマーに含まれることによって、該ポリマーを用いたポリマー層を形成した場合、ポリマー層へのめっき触媒などの優れた吸着性が達成され、結果としてめっき処理の際に十分な厚さのめっき膜をポリマー層上に得ることができる。
【0019】
【化1】

【0020】
一般式(A)中、R1は、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
1が、置換又は無置換のアルキル基である場合、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1のアルキル基がより好ましい。より具体的には、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
1としては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。この中でも、水素原子、メチル基が好ましく、更に好ましくは水素原子である。
【0021】
1は、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜10)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜14)、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、又はこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。該有機基は、発明の効果を損なわない範囲で、ヒドロキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0022】
置換又は無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、または、これらの基がメトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたものが好ましい。
置換又は無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニレン基、または、メトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)などで置換されたフェニレン基が好ましい。
【0023】
Xは、単結合、又は、エステル基、アミド基、エーテル基、アリーレン基若しくはアルキレン基を表す。好ましくは、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基であり、より好ましくは、単結合、エステル基、アミド基であり、最も好ましくは、単結合、エステル基である。
【0024】
1は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい態様の1つである。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、L1は、総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、総炭素数とは、例えば、L1で表される置換又は無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシル基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0025】
Wは、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表す。非解離性官能基とは、官能基が解離によりプロトンを生成しない官能基を意味する。
非解離性官能基としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などが好ましい。具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン基構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、カーボネート基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基などの含酸素官能基、チオフェン基、チオール基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、ホスフォート基、ホスフォロアミド基、フォスフィン基などの含リン官能基、及び、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基等が挙げられる。また、隣接する原子又は原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。更には、例えば、シクロデキストリンや、クラウンエーテルなどの包接能を有する化合物に由来する官能基であってもよい。
中でも、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いことから、エーテル基、又はシアノ基が特に好ましく、シアノ基が最も好ましいものとして挙げられる。
【0026】
また、本発明における非解離性官能基としては、アルキルシアノ基であることが更に好ましい。これは、芳香族シアノ基は芳香環に電子を吸引されており、めっき触媒等への吸着性として重要な不対電子の供与性が低めになるが、アルキルシアノ基はこの芳香環が結合していないため、めっき触媒やめっき金属等への吸着性の点で好ましい。
【0027】
このような非解離性官能基は、非解離性官能基がペンダントされたモノマーを共重合することでポリマー中に導入してもよいし、予め合成されたポリマーの一部に付加・置換させることで、ポリマー中に導入してもよい。これらのなかでも、合成が簡便であるという点から、非解離性官能基がペンダントされたモノマーを共重合させることにより、非解離性官能基をポリマー中に導入する態様をとることが好ましい。
【0028】
(好適態様)
一般式(A)で表されるユニットの好適態様として、一般式(A−1)で表されるユニットが挙げられる。
【0029】
【化2】

【0030】
一般式(A−1)において、R1は一般式(A)で表されるユニットにおけるR1と同義である。一般式(A)で表されるユニットとして、一般式(A−1)で表されるユニットを選択することで、ポリマーの重量あたりに含まれるシアノ基の数が多くなり、該ポリマーを含むポリマー層の単位重量あたりのめっき触媒等の吸着効率がより向上する。
【0031】
(一般式(B)で表されるユニット)
本発明で使用されるポリマーは、一般式(B)で表されるユニットを含有する。該ユニットがポリマーに含まれることによって、該ポリマーを用いたポリマー層を形成した場合、ポリマー層のアルカリ水溶液に対する親和性が向上し、現像性などがより向上する。また、イオン結合によりポリマーに吸着するメッキ触媒に対しては、吸着性も上がる。
【0032】
【化3】

【0033】
一般式(B)中、R2は、水素原子、又は、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R2で表される置換又は無置換のアルキル基は、上述したR1で表される置換又は無置換のアルキル基と同義である。
2としては、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。更に、好ましくは、水素原子、メチル基であり、水素原子が最も好ましい。
【0034】
Uは、単結合、又は、エステル基、アミド基、エーテル基、アリーレン基若しくはアルキレン基を表す。
2は、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記L1で表される二価の有機基と同義である。
Uの好ましい態様は、上記Xの好ましい態様と同じである。
2の好ましい態様は、上記L1の好ましい態様と同じである。
【0035】
Vは、イオン性極性基を表し、ポリマーの水溶液への現像性を付与しうるものであれば特に限定されず、具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基が挙げられる。中でも、適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点から、カルボン酸基が好ましく、電気配線として必要な低吸水性という観点で、特に、ポリマー主鎖に直接結合しているカルボン酸基が好ましい。
【0036】
このようなイオン性極性基は、ポリマーの一部に付加・置換させることで、ポリマー中に導入していてもよいし、また、イオン性極性基がペンダントされたモノマーを共重合することで、ポリマー中に導入してもよい。
【0037】
一方、一般式(B)で表されるユニットにおいて、Vがカルボン酸基であり、且つ、U及びL2が単結合であることも好ましい態様の1つである。この態様であると、ポリマー主鎖でカルボン酸基が遮蔽されると予想される。その結果、疎水化でき、金属パターン形成直後において、基板と金属パターンとの密着性を高めることができ、また、ポリマー層の水に対する耐性を高めることができる。
【0038】
(一般式(C)で表されるユニット)
本発明で使用されるポリマーは、さらに一般式(C)で表されるユニットを含有していてもよい。該ユニットがポリマーに含まれることにより、該ポリマーを用いて基板上にポリマー層を形成した場合、ポリマー層と基板と間で優れた密着性が発現されると共に、膜中で架橋反応が進行し強度に優れた膜を得ることができる。
【0039】
【化4】

【0040】
一般式(C)中、R3〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R3〜R6で表される置換又は無置換のアルキル基は、上述したR1で表される置換又は無置換のアルキル基と同義である。
なお、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。更に好ましくは、水素原子、メチル基であり、最も好ましくは、水素原子である。
5としては、水素原子が好ましい。
6としては、水素原子が好ましい。
【0041】
3は、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記L1で表される二価の有機基と同義である。
Z及びYは、それぞれ独立して、単結合、又は、エステル基、アミド基、エーテル基、アリーレン基若しくはアルキレン基を表す。Z及びYの好ましい態様は、上記Xの好ましい態様と同じである。
【0042】
3における総炭素数は、1〜10であることがより好ましく、L3で表される二価の有機基は直鎖状であってもよく、分岐鎖を有していてもよい。また、L3に導入可能な置換基としては、エステル基、アミド基、ハロゲン原子、ホウ素原子、エーテル基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、及び、チオール基が挙げられ、これらをその構造中に1つ以上有していてもよい。なお、該ポリマーを用いて形成されるポリマー層の疎水性を維持するという観点からは、水酸基、チオール基、アミノ基、カルボン酸基、リン酸基などの置換基を有することは好ましくない。
特に、L3としては、その連結基の構造中に実質的に水酸基を有しない態様が好ましい。L3に水酸基を有しない場合、水酸基を含む構造に比較して、架橋部に無電解めっき液(アルカリ水)を含有し難く、めっき液に起因する膜強度の低下や、それに伴う形成された金属膜の密着力低下がより抑制される。
【0043】
ポリマー中における一般式(A)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性、合成のしやすさの観点から、ポリマー中の全ユニット(100モル%)に対して、5〜40モル%が好ましく、更に好ましくは10〜35モル%である。
ポリマー中における一般式(B)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、ポリマー中の全ユニット(100モル%)に対して、20〜70モル%が好ましく、更に好ましくは20〜60モル%である。特に好ましくは30〜50モル%である。この範囲にて、より現像性と耐湿密着力を両立することができる。
ポリマー中における一般式(C)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、反応性(硬化性、重合性)及び合成の際のゲル化の抑制の点から、ポリマー中の全ユニット(100モル%)に対して、5〜50モル%が好ましく、更に好ましくは10〜40モル%である。
【0044】
本発明のポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記一般式(A)〜(C)で表されるユニット以外のユニットを有していてもよい。該ユニットは特に限定されないが、例えば、一般的な、ラジカル重合系のモノマーから得られるユニットが挙げられ、該モノマーとしては、ジエン系モノマー、アクリル系モノマー等が挙げられる。中でも、無置換アルキルのアクリル系モノマーが好ましい。具体的には、ターシャリーブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどが好ましく使用できる。
【0045】
なお、ポリマーのイオン性極性価(イオン性極性基がカルボン酸基の場合は酸価)としては、1.5mmol/g〜7.0mmol/gが好ましく、2.0mmol/g〜5.0mmol/gがより好ましく、3.5mmol/g〜4.7mmol/gが特に好ましい。イオン性極性価がこの範囲であることで、水溶液での現像性付与と湿熱経時時の密着力低下の抑制とを両立させることができる。
なお、イオン性極性を有するユニットの分子量により最適なユニット数とイオン性極性価は変化するが、その場合はイオン性極性価が上記範囲に入ることを優先とする。
【0046】
本発明におけるポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、3000以上15万以下が好ましく、更に好ましくは5000以上10万以下である。特に、重合感度の観点から、本発明におけるポリマーの重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。なお、合成中のゲル化抑制の観点から分子量の上限値は15万であることが好ましく、さらに好ましくは10万以下である。
なお、ここで記載の重量平均分子量とは、GPC(使用溶媒:N−メチルピロリドン)を用いてポリスチレン換算により測定される値であり、例えば、次の条件で測定することができる。
・カラム:ガードカラムTOSOH TSKguardcolum Super AW-H、分離カラム TOSOH TSKgel Super AWM-H(サイズ6.0mm×15cmを3本連結)
・溶離液:N−メチルピロリドン(LiBr10mM含有)
・流速:0.35mL/min
・検出方法:RI
・温度:カラム40℃、インレット40℃、RI40℃
・サンプル濃度:0.1wt%
・注入量:60μL
【0047】
また、本発明におけるポリマーの重合度としては、20量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは30量体以上のものである。また、1500量体以下が好ましく、1000量体以下がより好ましい。
【0048】
本発明におけるポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、式中の数値は、各ユニットのモル%を表す。
【0049】
【化5】

【0050】
【化6】

【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
【化12】

【0057】
<有機溶媒>
本発明では、上述したポリマーを溶解させる有機溶媒が使用される。用いられる有機溶媒としては、上記のポリマーを溶解させ、炭素数とOH基数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコールと相溶する有機溶媒であれば特に制限されない。なお、アルコールと相溶するとは、どのような比率で該溶媒と該アルコールとを混合しても、均一溶媒になる関係を意味する。
具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶媒、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶媒、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンの如きアミド系溶媒(アミド基を含有する溶媒)、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶媒、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの如きカーボネート系溶媒、この他にも、エーテル系溶媒、グリコール系溶媒、アミン系溶媒、チオール系溶媒、ハロゲン系溶媒などが挙げられる。
上述した溶媒の中でも、水に可溶な溶媒(親水性有機溶媒)であると、分液精製時に溶媒が水層に除去されやすくなるため、ポリマーの純度を高める事ができる点で、好ましい。また更に、上述したポリマーはイオン性極性基を多く有するため、溶解性の観点から、上記溶媒の中でも、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンの如きアミド系溶媒(アミド基を含有する親水性の溶媒)が好ましい。
【0058】
<炭素数とOH基数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコール>
本発明においては、上記ポリマーと、親水性有機溶媒やポリマー合成時に発生した親水性の反応副生成物とを分離するために、総炭素数と含有されるOH基(アルコール基)数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコールが使用される。該アルコールは上述のポリマーに対する溶解性に優れ、後述する水層と二層化する。そのため、該アルコールを使用すると、反応合成時に発生する親水性の反応副生成物や反応合成時に使用する親水性有機溶媒などをポリマーから容易に分離することができる。通常、物質の溶解性に関連する溶媒の極性を規定するパラメータとしてSP値があるが、本願発明においては上記アルコールと同じようなSP値を有する溶媒を使用しても、必ずしもポリマーが溶解するわけではない。これは、ポリマー中のイオン性極性基と上記アルコール中の水酸基が効果的に相互作用し、溶媒和するため、ポリマーが溶解する、と推測される。このことからも、所定のOH基と炭素数とを備えるアルコールを使用することによって初めて得られる効果であることが分かる。
なお、該アルコールは、水に少量溶解はするが、混合させると2層に分離するため、親水性化合物(親水性有機溶媒)には該当しない。
【0059】
使用されるアルコールとしては、炭素数と含有されるOH基数との比(炭素数/OH基数)が所定の範囲にあれば、特に限定されない。後述するように抽出操作の際に水層と2層化する必要があるために、比が4以上のアルコールを使用する必要がある。また、上記のポリマーの溶解性を考慮すると、比が7以下のアルコールを使用する必要がある。
該アルコールのなかでも、発明の効果がより優れる点で、含有される炭素数(総炭素数)が4〜14であるアルコールが好ましく、4〜7がより好ましい。また、含有されるOH基数としては、1〜2が好ましい。
【0060】
例えば、比(炭素数/OH基数)が4のアルコールとしては、ブタノール、2−メチル−プロパノール、2−ブタノールなどが挙げられる。
比(炭素数/OH基数)が5のアルコールとしては、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノールなどが挙げられる。
比(炭素数/OH基数)が6のアルコールとしては、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。
比(炭素数/OH基数)が7のアルコールとしては、2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、4,4−ジメチル−2−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、5−メチル−1−ヘキサノール、5−メチル−2−ヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロヘキサンメタノール、1−シクロペンチルエタノール、1−ヘプテン−3−オール、2−ヘプテン−3−オール、3−ヘプテン−3−オール、4−ヘプテン−3−オールが挙げられる。
上記の中で、ポリマー溶液の安定性を考えた場合、アルコールによる分解(エステル交換反応など)などが起る可能性があるため、第1級アルコールより第2級アルコールが、第2級アルコールよりは第3級アルコールが好ましい。また、溶解性・分離性の観点から、比(炭素数/OH基数)が5のアルコールが好ましい。
【0061】
<ポリマー溶液の製造方法>
以下に、上記ポリマー、アルコールなどを使用した本発明のポリマー溶液の製造方法の各工程の手順について詳述する。
【0062】
添加工程で使用されるポリマーが溶解したポリマー溶液Aの製造方法は特に限定されないが、本発明のポリマー溶液の製造方法においては、上記有機溶媒中でポリマーを合成してポリマー溶液Aを製造する工程(合成工程)を備えることが好ましい。
以下に、有機溶媒中でのポリマーの合成方法について詳述する。
【0063】
上記ポリマーを合成する方法は特に限定されず、使用される材料も所定のポリマーを構成する材料が適宜選択される。
上記一般式(A)で表されるユニット及び一般式(B)で表されるユニットを有するポリマーの合成方法としては、非解離性官能基を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーとを共重合する方法が挙げられる。
【0064】
また、ポリマーの好適態様である上記一般式(A)〜一般式(C)で表されるユニットを有するポリマーの合成方法としては、下記の(i)〜(iii)の方法が好ましく挙げられる。
(i)非解離性官能基を有するモノマーと、ラジカル重合性基を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーと、を共重合する方法、
(ii)非解離性官能基を有するモノマーと、二重結合前駆体を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーとを共重合させてポリマーを得て、次に塩基などの処理によりポリマー中に二重結合を導入する方法、
(iii)非解離性官能基を有するモノマー及びイオン性極性基を有するモノマーを用いて合成され、且つ、反応性基を有するポリマーと、該ポリマー中の反応性基と反応しうる反応性基を有し、ラジカル重合性基を有するモノマーとを反応させ、ポリマー中に二重結合を導入(重合性基を導入する)方法
これらの中でも、合成適性の観点から、(ii)の方法、及び、(iii)の方法が好ましい。その中でも、低温で合成を行うことができるので、(ii)の方法が好ましい。
なお、上記のように、ラジカル重合性基は、ラジカル重合性基がペンダントされたモノマーを共重合することでポリマー中に導入してもよいし、予め合成されたポリマー(例えば、イオン性極性基及び非解離性官能基を有するポリマー)の一部に付加・置換させることで、ポリマー中に導入してもよい。
以下に、各方法の手順について詳述する。
【0065】
<(i)方法>
(i)方法は、非解離性官能基を有するモノマーと、ラジカル重合性基を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーと、を共重合する方法である。
まず、以下に使用されるモノマーについて詳述する。
【0066】
(i)方法において使用される非解離性官能基を有するモノマーとしては、上述した非解離性官能基を有するモノマーであればよいが、具体的には以下の式(1)で表されるモノマーであることが好ましい。
【0067】
【化13】

【0068】
一般式(1)中の各基は、上記の一般式(A)中の各基と同義である。
非解離性官能基を有するモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、アクリロニトリル、シアノエチルアクリレート、1−メチル−シアノメチルアクリレート、2−ニトロ−エチルアクリレート、2−シアノ−エチルアクリルアミド、1−メチル−シアノメチルメタクリルアミド、4−シアノ−フェニルアクリレート、N−シアノエチル−N−エチル−アクリルアミド、3−シアノ−プロピルアクリレート、2−シアノ−2−メチル−エチルアクリレート、4−シアノ−ブチルアクリレート、5−シアノ−ペンチルアクリレート、6−シアノ−ヘキシルアクリレート、1−シアノ−メチルアクリレート、1−シアノ−シクロヘキシルアクリレート、p−シアノ−スチレン、4−シアノ−2,2−ジエチル−ブチルメタクリレート、更に、下記の化合物が挙げられる。
【0069】
【化14】

【0070】
【化15】

【0071】
(i)方法において使用されるイオン性極性基を有するモノマーとしては、上述したイオン性極性基を有するモノマーであればよいが、具体的には以下の一般式(2)で表されるモノマーであることが好ましい。
【0072】
【化16】

【0073】
一般式(2)中の各基は、上記の一般式(B)中の各基と同義である。
イオン性極性基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、フマル酸、メタクリル酸、4−安息香酸ビニル、更に、下記の化合物が挙げられる。
【0074】
【化17】

【0075】
(i)方法において使用されるラジカル重合性基を有するモノマーとしては、上述した一般式(C)で表されるユニットがポリマー中に導入されるモノマーであれば特に限定されない。例えば、以下の一般式(3)で表されるモノマーなどが挙げられる。
【0076】
【化18】

【0077】
一般式(3)で表される各基は、上記の一般式(C)中の各基と同義である。
一般式(3)で表されるモノマーとしては、例えば、以下の化合物などが挙げられる。
【0078】
【化19】

【0079】
上記記載のモノマーを重合させる重合反応の種類(例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合など)は特に限定されないが、反応制御の観点から、ラジカル重合を用いることが好ましい。
ラジカル重合の方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、実験化学講座「高分子化学」2章−2(p34)に記載の方法や、「高分子合成の実験方法」大津隆行著 5章(p125)に記載の方法が使用できる。なお、ラジカル重合に使用される開始剤は、公知の開始剤が使用でき、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキソ2硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビル−2,4−ジメチルバレロニトリルが挙げられる。
また、ラジカル重合においては必要に応じて、溶媒を使用してもよい。使用される溶媒としては、上記の有機溶媒が挙げられる。さらに、ラジカル重合の条件(温度、時間など)は、使用されるモノマーに応じて最適な条件が選択される。
【0080】
<(ii)方法>
(ii)方法は、非解離性官能基を有するモノマーと、二重結合前駆体を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合前駆体から二重結合を導入する方法である。
該方法で使用される非解離性官能基を有するモノマー、イオン性極性基を有するモノマーは、上述の通りである。
【0081】
該方法で使用される二重結合前駆体を有するモノマーとは、所定の処理によって二重結合が生じるモノマーを意味しており、具体的には、一般式(4)で表されるモノマーが挙げられる。
【0082】
【化20】

【0083】
一般式(4)中、R3〜R6、Z及びL3は、上記の一般式(C)中の各基と同義である。S及びTは、それぞれ独立して、脱離反応により除去される脱離基であり、S、Tのいずれか一方が水素原子であり、他方がハロゲン原子、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、エーテル基、又はチオエーテル基を表す。
ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりTが引き抜かれ、Sが脱離するもの、あるいは塩基の作用によりSが引き抜かれ、Tが脱離するものである。前者の場合、Sはアニオンとして、且つ、Tはカチオンとして脱離するものが好ましく、後者の場合、Tはアニオンとして、且つ、Sはカチオンとして脱離するものが好ましい。
一般式(4)で表されるモノマーとしては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
【0084】
【化21】

【0085】
【化22】

【0086】
【化23】

【0087】
【化24】

【0088】
非解離性官能基を有するモノマーと、二重結合前駆体を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーを重合させる重合反応の種類は特に限定されないが、反応制御の観点から、上記(i)方法と同様に、ラジカル重合を用いることが好ましい。
【0089】
なお、(ii)方法において、上記重合によって得られるポリマーとしては、上述した一般式(A)で表されるユニット、一般式(B)で表されるユニット、下記一般式(C−0)で表されるユニットを有するポリマーが好ましく挙げられる。
【0090】
【化25】

【0091】
一般式(C−0)中のR3〜R6、Z及びL3は、一般式(C)中の各基と同義である。S及びTは、上記一般式(4)中の各基と同義である。
【0092】
上記の二重結合前駆体を二重結合に変換する方法としては、下記に示すように、S、Tで表される脱離基を脱離反応により除去する方法が好ましい。なお、下記式は、一般式(4)中の一部を表す。なお、このSTが、合成時に発生する反応副生成物となる。
【0093】
【化26】

【0094】
上記の脱離反応において用いられる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミン化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。
アルカリ金属類の水素化物、水酸化物、又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネン(DBN)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。以上の化合物の中で、塩基性の観点で、DBU及びDBNが好ましい。
【0095】
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基(S、Tで表される脱離基)の量に対して、当量以下であっても、当量以上であってもよい。また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。
なお、脱離反応の反応条件(温度、時間など)は、使用される材料に応じて適宜最適な条件が選択される。
なお、塩基を作用させた場合、イオン性極性基が対塩構造をとるため、脱離反応後は、酸を作用させて、イオン性極性基を再生しても良い。使用される酸としては、塩化水素、臭化水素、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、硝酸が挙げられる。この中でも、酸性度の観点から、硫酸、メタンスルホン酸が好ましい。
【0096】
<(iii)方法>
(iii)方法は、非解離性官能基を有するモノマー及びイオン性極性基を有するモノマーを用いて合成され、且つ、反応性基Aを有するポリマーに、該ポリマー中の反応性基Aと反応しうる反応性基Bを有し、ラジカル重合性基を有するモノマーを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法である。
【0097】
該方法において用いられるポリマーの合成方法は特に制限されないが、非解離性官能基を有するモノマー、イオン性極性基を有するモノマー、二重結合導入のための反応性基Aを有するモノマーと、をラジカル重合することにより合成されることが好ましい。
非解離性官能基を有するモノマー、イオン性極性基を有するモノマーは、上述の通りである。
二重結合導入のための反応性基Aを有するモノマーとしては、反応性基Aとして、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。
【0098】
該二重結合導入のための反応性基Aを有するモノマーとしては、例えば、一般式(5)で表されるモノマーが挙げられる。
【0099】
【化27】

【0100】
一般式(5)中、R3及びZは、一般式(C)中の各基と同義である。
Qは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、又はイソシアネート基である。
【0101】
(iii)方法において、反応性基Aを有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ハロゲン化ベンジル基などの反応性基Bを有することが好ましい。
該反応性基Bと二重結合を有するモノマーとしては、例えば、一般式(6)で表されるモノマーが挙げられる。
【0102】
【化28】

【0103】
一般式(6)中、R4〜R6、及びYは、一般式(C)中の各基と同義である。
一般式(6)中、Kは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、又はハロゲン化ベンジル基を表す。
【0104】
ポリマー中の反応性基と、モノマー中の反応性官能基の組み合わせとしては、以下のものが挙げられる。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(ヒドロキシル基、カルボキシル基)、(ヒドロキシル基、エポキシ基)、(ヒドロキシル基、イソシアネート基)、(ヒドロキシル基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、ヒドロキシル基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
上記のような反応性基Bを有するモノマーとして、具体的には、アクリル酸、グリシジルアクリレート、サイクロマーA(ダイセル化学製)、カレンズAOI(昭和電工製)、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、サイクロマーM(ダイセル化学製)、カレンズMOI(昭和電工製)を使用することができる。
【0105】
反応性基Aを有するポリマーと、該反応性基Aと反応しうるラジカル重合性基を有するモノマーとの反応条件(温度、時間など)は、使用される材料に応じて適宜最適な条件が選択される。
【0106】
なお、(iii)方法のように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが第4のユニットとなる可能性もある。
【0107】
上記(i)〜(iii)方法においては、その反応経路に応じて、未反応モノマーや塩などの反応副生成物(特に、親水性の反応副生成物)が発生し、ポリマー溶液Aに含有される場合がある。例えば、(i)方法においては、不純物として未反応モノマーが挙げられる。また、(ii)方法においては、不純物として上述した脱離物(ST)が挙げられ、より具体的には、DBUを用いた場合、DBU塩が不純物に該当する。さらに、(iii)方法においては、不純物として付加させるモノマーの未反応物、および、分解物が該当する。
【0108】
<手順>
添加工程は、上記ポリマーと上記有機溶媒を含むポリマー溶液Aに炭素数とOH基数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコールを添加して、ポリマー溶液Bを得る工程である。該工程で、上記有機溶媒と上記アルコールとの混合溶媒に、ポリマーが均一に溶解したポリマー溶液Bが得られる。
【0109】
使用されるポリマー溶液A中のポリマーの含有量は特に制限されないが、通常、溶液A全量に対して、5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。該範囲内であれば、ポリマーの析出が抑えられ、後述する抽出工程での2層の分離性に優れる。
【0110】
添加されるアルコール量は特に制限されないが、ポリマー溶液100質量部に対して、10〜200質量部が好ましく、30〜100質量部がより好ましい。上記範囲内であれば、ポリマーの析出が抑えられ、後述する抽出工程での2層の分離性に優れる。
アルコールの添加方法は特に制限されず、一括で添加しても、分割して添加してもよい。
【0111】
ポリマー溶液Aにアルコールを添加した後、必要に応じて、溶液を攪拌する処理を施してもよい。該攪拌処理は、加熱環境下で行ってもよい。攪拌する時間は特に制限はないが、生産性などの観点から、1〜10分程度である。
【0112】
<抽出工程>
抽出工程は、ポリマー溶液Bに水を用いた抽出処理を施す工程である。より具体的には、水を用いて、添加工程で得られたポリマー溶液Bから、親水性有機溶媒や反応副生成物(特に、親水性の反応副生成物)を含む親水性化合物を抽出除去する工程である。より詳細には、ポリマー溶液Bに水を接触させて、水洗操作(抽出操作)を行い、ポリマーを上記アルコール層(有機層)中に、含有される上記親水性有機溶媒、及び、ポリマー合成時に生じる、親水性の残存モノマーや塩などの親水性の反応副生成物などの親水性化合物を水層中に分配する。該分配によって、特に、親水性の反応副生成物が効率よく水層に分配される。例えば、有機溶媒中で上記ポリマーを(ii)方法などによって合成した場合は、上述した反応副生成物などポリマー溶液中に生じるが、該工程によってその大部分が溶液から除去される。
この工程によって、親水性有機溶媒および親水性の反応副生成物などの不純物(親水性化合物)が少なく、金属膜に対する密着性に優れたポリマー層を形成することができるポリマー溶液を得ることができる。
なお、本発明において、親水性化合物とは水に相溶する化合物であって、上述した親水性有機溶媒や、ポリマー合成時に生じる残存モノマー(特に親水性残存モノマー)、塩などの反応副生成物(特に、親水性の反応副生成物(水に可溶な反応副生成物))などを意味する。
【0113】
抽出工程で使用される水に特に制限はないが、通常、純水を使用する。
なかでも、有機層との分離性を良好にする観点から、無機塩を含有する水溶液を使用することが好ましい。無機塩としては、水への溶解性が高く、低反応性であればいずれも使用することが可能であり、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。なかでも、安価で手に入れやすいという観点で、塩化ナトリウムが好ましい。
水溶液中の無機塩の濃度は特に制限されないが、水溶液全量に対して、10〜25質量%が好ましく、15〜20質量%がより好ましい。含有量が高すぎると含有される不純物を水層に除去しにくくなり、含有量が低すぎると水層との分離性が悪くなる。
【0114】
抽出工程で使用される水の量は特に制限されないが、通常、上記ポリマー溶液B100質量部に対して、30〜200質量部が好ましく、50〜150がより好ましい。上記範囲内であれば、効率よく不純物を除去できる。
【0115】
抽出操作(抽出処理)は慣用の方法で行うことができ、回分式、半回分式、連続式のいずれの方式で行ってもよい。例えば、ポリマー溶液Bと水とを混合攪拌して、静置した後に水層を分取する回分式抽出方法、ポリマー溶液Bを水と連続的に数回接触させる並流多回抽出方法、ポリマー溶液Bと水とを向流接触させる向流多段抽出方法などが挙げられる。
抽出操作は複数回(例えば、2〜10回程度)繰り返してもよい。抽出温度は、操作性や溶解性等を考慮して適宜選択でき、例えば、0〜100℃、好ましくは25〜50℃程度である。
【0116】
該抽出工程によって、水層に親水性有機溶媒や反応副生成物(例えば、塩化合物)などの不純物が分配され、取り除かれる。反応副生成物は、ポリマーの合成方法に応じて異なるが、例えば、上記(ii)方法でポリマーを合成した場合、二重結合前駆体から脱離している化合物(スキーム1中のSTで表される化合物)(具体的には、塩基のハロゲン化水素塩(DBUの場合は、DBUの臭化水素塩))や、塩基処理した後に酸処理した場合は、その塩(メタンスルホン酸の場合は、DBUのメタンスルホン酸塩)が不純物となる。
また、上述したようにポリマー合成に使用される有機溶媒は、沸点が高い場合が多く、ポリマー溶液を基板へ塗布乾燥する場合に、乾燥できないなどの不具合が生じるため、除去することが望ましい。
上記方法で得られたポリマー溶液には、実質的に親水性有機溶媒や、ポリマー合成時に生じる反応副生成物などの親水性の不純物が含まれていないことが好ましい。より具体的には、上記方法で得られたポリマー溶液中の親水性有機溶媒の含有量は、ポリマー溶液全量に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。また、反応副生成物の含有量は、ポリマー溶液全量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。下限は、0質量%である。
なお、抽出工程で得られたポリマー溶液中のポリマーの含有量は特に限定されず、例えば、その含有量としては、上述したポリマー溶液A中のポリマーの含有量の範囲が挙げられる。
【0117】
上記方法では、上記ポリマーが、上記アルコールと水とを用いて精製されている。
つまり、本発明では、上記ポリマーと、炭素数とOH基数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコールと、上記ポリマーを溶解し、上記アルコールと相溶する親水性有機溶媒とを含有するポリマー溶液に水を接触させる接触工程によって、ポリマー中に含まれる親水性有機溶媒や親水性の反応副生成物などの親水性化合物が除去される、ポリマーの精製方法も提供する。接触工程での水とポリマー溶液との接触方法は、上記の抽出工程と同じである。
なお、該ポリマー溶液は、上述したように、有機溶媒とポリマーとを含むポリマー溶液Aに、アルコールを添加して得ることができる。
【0118】
<中和工程>
上記抽出工程の後、必要に応じて、抽出工程で得られたポリマー溶液(以後、ポリマー溶液Cと称する)に固体塩基を添加して、溶液を中和する工程を実施してもよい。上記抽出工程の実施に際して、水層に除去したい親水性化合物(不純物)が酸性である場合、完全に除去する事は難しく、精製後の有機層が酸性となる場合がある。この場合、酸が触媒となりポリマー中の結合(例えば、エステル結合)が、溶媒であるアルコール類と反応(例えば、エステル交換反応)してしまい、保存安定性が悪くなることがある。そこで、ポリマー溶液Cに固体塩基を加えることにより、溶液を中和し、保存安定性に優れたポリマー溶液を得ることができる。なお、保存安定性に優れたポリマー溶液とは、保存時に含有されるポリマーが実質的に化学変化しないことを意味する。
【0119】
使用される固体塩基は特に制限されず、イオン性極性基との解離性の観点から、アルカリ金属の固体無機塩基が好ましい。より具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0120】
添加される固体塩基の量は、液を中和できる量であれば、特に制限されないが、通常、ポリマー溶液C100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜1質量部がより好ましい。上記範囲内であれば、より保存安定性に優れたポリマー溶液を得ることができる。
【0121】
固体塩基を添加する方法は特に制限されず、一回で添加してもよいし、分割して添加してもよい。また、必要に応じて、添加後に溶液を攪拌する処理を施してもよい。
【0122】
<ポリマーが水に溶解したポリマー溶液の製造方法>
上述した抽出工程の後に、抽出工程で得られたポリマー溶液Cに塩基性水溶液を接触させ、ポリマーを塩基性水溶液に分配して、ポリマーが水に溶解したポリマー溶液(以後、適宜ポリマー溶液D、またはポリマー水溶液とも称する)を得ることができる。上述したように、含有される不純物が強酸性である場合、上記した抽出工程で完全にこれらを除去することが難しく、抽出工程で得られたポリマー溶液Cは酸性を示すことがある。そのため、ポリマー溶液の保存安定性が損なわれる場合があるが、本分配工程によって塩基性水溶液中にポリマーを溶解させて、中和することにより保存安定性を向上させることができる。
【0123】
使用される塩基性水溶液は塩基性(アルカリ性)を示す水溶液であれば、特に限定されないが、塩基性化合物を含有する水溶液が好ましい。塩基性化合物は特に限定されないが、例えば、有機塩基や無機塩基が挙げられる。なかでも、水への溶解性の観点から、有機塩基よりも無機塩基の方が好ましい。さらに、無機塩基の中でも、イオン性極性基との解離性の観点から、アルカリ金属の無機塩基が好ましい。より具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
なお、塩基性水溶液中の塩基性化合物の量は特に限定されないが、通常、イオン性極性基に対して、0.3〜2等量が好ましく、0.5〜1等量がより好ましい。上記範囲内であれば、得られるポリマー溶液の保存安定性が優れ、塩基性水溶液へのポリマーの溶解性も良好となる。
【0124】
ポリマー溶液と塩基性水溶液との接触方法は特に限定されず、上記抽出工程と同様に、回分式、半回分式、連続式の何れの方式で行ってもよい。
【0125】
上記分配工程を経て得られるポリマー溶液のpHは特に制限されないが、3〜9が好ましく、4〜8がより好ましい。上記範囲であれば、含有されるポリマーの保存安定性がより向上する。
【0126】
上記抽出工程又は分配工程を経て得られる上記ポリマーを含有するポリマー溶液は、様々な用途へ応用することができる。例えば、光硬化性組成物、成型材料、コーティング材料、表面改質材料、基板用材料として、電子分野、機械分野、食品分野、建築分野、自動車分野などにおいて用いることができる。
種々の用途の中でも、めっき触媒に対する吸着性と重合性に優れる点から、本発明のポリマー溶液は、めっき膜を形成するための表面処理材料として用いられることが好ましい。より具体的には、めっき触媒又はその前駆体を受容するポリマー層の形成に用いられるポリマー層形成用組成物(ポリマー層形成用ポリマー溶液)として好ましく用いられる。
【0127】
<表面金属膜材料、およびその製造方法>
上述した製造方法より得られるポリマー溶液(以後、適宜ポリマー層形成用組成物と称する)を用いることにより、表面に金属膜を有する表面金属膜材料を得ることができる。以下に、表面金属膜材料およびその製造方法について詳述する。
表面金属膜材料は、基板と、基板上に形成された上記ポリマー層形成用組成物から形成されるポリマー層(被めっき層)と、ポリマー層上に形成される金属膜とを有する材料である。この表面金属膜材料の製造方法は特に限定されないが、以下の(a1)〜(a3)工程を有する方法が好ましい。
(a1)基板上に、上記ポリマー層形成用組成物を用いてポリマー層を形成する工程
(a2)該ポリマー層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程
(a3)該めっき触媒またはその前駆体に対してめっきを行う工程
以下に各工程の手順について説明する。
【0128】
<a1工程(ポリマー層形成工程)>
(a1)工程では、基板上に、上述したポリマー層形成用組成物を用いてポリマー層を形成する工程(ポリマー層形成工程)である。
ポリマー層の形成方法は特に限定されないが、ポリマー層形成用組成物を基板上に塗布して、ポリマー層を形成する方法が挙げられる。なかでも、組成物を塗布して得られる塗膜に加熱または光照射によりエネルギー(例えば、加熱又は露光)を付与する方法が好ましく、特に、基板表面(後述する密着補助層表面)にポリマーを直接化学結合させる態様であることが好ましい。
【0129】
(基板)
本工程で用いられる基板としては、形状保持性を有するものであればよく、その表面が、上述のポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体が露光によりラジカルを発生しうるものであるか、基板上に、露光によりラジカルを発生しうる中間層(例えば、後述する密着補助層)を設けていてもよい。
【0130】
(基板)
本発明に使用される基板は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙、またはプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基板としては、エポキシ樹脂、またはポリイミド樹脂が好ましい。
【0131】
(密着補助層)
上述した基板と、その上に形成されるポリマー層との密着性を向上させる目的で、以下に示す密着補助層を形成することもできる。密着補助層は、基板とポリマー層との密着を確保する中間層であり、この層は基板とポリマー層に親和性があるものでもよく、硬化時にポリマーと反応し、化学結合を形成してもよい。
基板が板状物であれば、その両面に密着補助層を形成してもよい。密着補助層としては、上記ポリマーと光硬化時に化学結合を生じるものが好ましい。このような化学結合を生じる密着補助層には、光ラジカル発生剤を導入することが好ましい。
【0132】
本発明における密着補助層としては、例えば、基板が、多層積層板、ビルドアップ基板、又はフレキシブル基板の材料として用いられてきた公知の絶縁樹脂からなる場合には、該基板との密着性の観点から、密着補助層を形成する際に用いられる樹脂組成物としても、絶縁樹脂組成物が用いられることが好ましい。
【0133】
絶縁樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ABS樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0134】
密着補助層の厚みは、一般に、0.1μm〜10μmの範囲であり、0.2μm〜5μmの範囲であることが好ましい。密着補助層を設ける場合、厚みが上記一般的な範囲であれば、隣接する基板や、ポリマー層との十分な密着強度が得られる。
【0135】
(エネルギーの付与)
基板表面へのエネルギー付与方法としては、例えば、加熱や露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱が可能である。
光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯などがある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
エネルギー付与に要する時間としては、光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0136】
なお、エネルギーの付与を露光にて行う場合、その露光パワーは、10mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲であることが好ましく、より好ましくは、50mJ/cm2〜3000mJ/cm2の範囲である。
【0137】
以上説明した(a1)工程により、基板上には、非解離性官能基を有するポリマー層(グラフトポリマー層)を形成することができ、基板とポリマー層とを備える積層体を得ることができる。
ポリマー層の層厚は特に限定されないが、金属膜との密着性を確保する点からは、0.1〜5μmが好ましく、0.3〜4μmがより好ましい。
【0138】
<(a2)工程(めっき触媒付与工程)>
(a2)工程では、上記(a1)工程において形成されたポリマー層に、めっき触媒またはその前駆体を付与する工程である(めっき触媒付与工程)。本工程においては、ポリマー層を構成するポリマーが有する非解離性官能基が、その機能に応じて、付与されためっき触媒またはその前駆体を付着(吸着)する。
ここで、めっき触媒またはその前駆体としては、後述する(a3)工程(めっき工程)における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒またはその前駆体は、(a3)めっき工程におけるめっきの種類により決定される。
なお、ここで、本工程において用いられるめっき触媒またはその前駆体は、無電解めっき触媒またはその前駆体であることが好ましい。
【0139】
(無電解めっき触媒)
本発明において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができる。具体的には、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(例えば、Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Pdが特に好ましい。
【0140】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンをポリマー層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0141】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いてポリマー層上に付与される。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)Pd(OAc)n(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、および触媒能の点で、Pdイオンが好ましい。
【0142】
無電解めっき触媒である金属、または、無電解めっき前駆体である金属塩をポリマー層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、または、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液若しくは溶液をポリマー層上に塗布するか、または、その分散液若しくは溶液中にポリマー層が形成された基板を浸漬すればよい。
【0143】
上記のように無電解めっき触媒またはその前駆体を接触させることで、ポリマー層中の非解離性官能基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、または、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、無電解めっき触媒またはその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、または溶液中の金属イオン濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0144】
(その他の触媒)
本発明において、後述の(a3)工程において、ポリマー層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、非解離性官能基基(シアノ基)に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0145】
以上説明した(a2)工程を経ることで、ポリマー層中の非解離性官能基とめっき触媒またはその前駆体との間に相互作用を形成することができる。めっき触媒が付与されたポリマー層は、めっき処理が施されるめっき受容性層として用いられる。
【0146】
<(a3)工程(めっき工程)>
(a3)工程では、無電解めっき触媒またはその前駆体が付与されたポリマー層に対し、めっき処理を施すことで、めっき膜(金属膜)を形成する工程である。形成されためっき膜は、優れた導電性、およびポリマー層との間で優れた密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、上記(a2)工程において、ポリマー層との間に相互作用を形成しためっき触媒またはその前駆体の機能によって、適宜選択することができる。つまり、本工程では、めっき触媒またはその前駆体が付与されたポリマー層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、ポリマー層中に発現するハイブリッド構造の形成性および密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。以下、本工程において好適に行われるめっき処理について説明する。
【0147】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体がポリマー層に吸着または含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき浴を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、その濃度は0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%がよい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
【0148】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、公知の添加物が含まれていてもよい。
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶剤である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
【0149】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、または、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0150】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき膜は、SEMによる断面観察により、ポリマー層中に無電解めっき触媒やめっき金属からなる微粒子がぎっしりと分散しており、更にポリマー層上にめっき金属が析出していることが確認された。基板とめっき膜との界面は、ポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(触媒金属またはめっき金属)との界面が平滑(例えば、凹凸差が500nm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0151】
(電気めっき)
本工程おいては、(a2)工程において付与されためっき触媒またはその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒またはその前駆体が付与されたポリマー層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0152】
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0153】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0154】
上述した方法により得られた表面金属膜材料は、高温高湿下であっても、金属膜の密着力の変動が少ないといった効果を有する。この表面金属膜材料は、例えば、電磁波防止膜、コーティング膜、2層CCL(Copper Clad Laminate)材料、電気配線用材料等の種々の用途に適用することができる。
【0155】
<金属パターン材料、およびその製造方法>
上記の表面金属膜材料における金属膜を、パターン状にエッチングする工程を行うことで、金属パターン材料を製造することができる。即ち、表面金属膜材料中の金属膜(めっき膜)をパターニングすることで配線(金属パターン)とすることができる。
このエッチング工程(a4工程)について以下に詳述する。
【0156】
<(a4)工程(エッチング工程)>
(a4)工程は、上記(a3)工程で形成された金属膜(めっき膜)をパターン状にエッチングする工程である。即ち、本工程では、基板表面全体に形成されためっき膜の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望の金属パターンを形成することができる。
この金属パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
【0157】
上記の(a1)〜(a4)工程を経ることにより、所望の金属パターンを有する金属パターン材料を製造することができる。
【0158】
なお、(a1)工程で得られるポリマー層をパターン状に形成し、パターン状のポリマー層に対して、(a2)工程および(a3)工程を行うことで、金属パターン材料を作製することもできる(フルアディティブ工程)。
(a1)工程においてポリマー層をパターン状に形成する方法としては、具体的には、ポリマー層を形成する際に付与されるエネルギーをパターン状とすればよく、また、エネルギーを付与しない部分を現像で除去することでパターン状のポリマー層を形成することができる。
【0159】
上述した金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
【実施例】
【0160】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0161】
(合成例1:ポリマー溶液1)
2Lの三口フラスコに酢酸エチル1L、2−アミノエタノール159gを入れ、氷浴にて冷却した。そこへ、2−ブロモイソ酪酸ブロミド150gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、反応液に蒸留水300mLを追加して反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、該層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、酢酸エチルを留去することで原料Aを80g得た。
次に、500mLの三口フラスコに原料A47.4g、ピリジン22g、酢酸エチル150mLを入れて、氷浴にて冷却した。そこへ、アクリル酸クロライド25gを内温20℃以下になるように調節をして滴下した。その後、室温に上げて、3時間反応させた。反応終了後、反応液に蒸留水300mLを追加して、反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、該層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、酢酸エチルを留去した後、カラムクロマトグラフィーにて精製し、モノマーAを20g得た。
【0162】
500mLの三口フラスコに、N−エチル−ピロリドン8gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、上記で得たモノマーA14.3g、アクリロニトリル(東京化成製)3.0g、アクリル酸(東京化成製)6.5g、V−65(和光純薬製)0.4gのN−エチル−ピロリドン8g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を更に3時間撹拌した。その後、N−エチル−ピロリドン41gを加え、室温まで反応液を冷却した。上記の反応液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.09g、DBU54.8gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液54g加え、下記構造のポリマー1を含有するポリマー溶液1(ポリマー含有量:10質量%)を合成した。ポリマー1の重量平均分子量は5.3万であり、酸価は3.9mmol/gであった。下記式中の数値は、各ユニットのモル%を表す。
なお、得られたポリマー溶液1中には、DBUのHBr塩、DBUのメタンスルホン酸塩、未反応のメタンスルホン酸などの反応副生成物が含まれ、また、溶媒であるN−エチル−ピロリドンも不純物としてポリマーと共存していた。
【0163】
【化29】

【0164】
(合成例2:ポリマー溶液2)
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド6gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、メチルアクリレート(東京化成製)5.9g、アクリロニトリル(東京化成製)2.3g、アクリル酸(東京化成製)4.3g、V−601(和光純薬製)0.63gのN,N−ジメチルアセトアミド6g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌し、下記構造のポリマー2を含有するポリマー溶液2(ポリマー含有量:50質量%)を合成した。ポリマー2の重量平均分子量は2.7万であり、酸価は4.7mmol/gであった。下記式中の数値は、各ユニットのモル%を表す。
なお、得られたポリマー溶液2中には、残存モノマーである、メチルアクリレート、アクリル酸、などの反応副生成物が含まれていた。また、溶媒であるN,N−ジメチルアセトアミドも不純物としてポリマーと共存していた。
【0165】
【化30】

【0166】
(合成例3:ポリマー溶液3)
500mLの三口フラスコに、N−エチルピロリドン(NEP)11gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成製)5.6g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成製)5g、アクリル酸(東京化成製)4.6g、V−601(和光純薬製)0.39gのNEP11g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、NEPを5g、TEMPOを0.1g、U−600(日東化成製)を0.3g、カレンズAOI(昭和電工製)を7.6g加え、45℃で6時間反応させ、下記構造のポリマー3を含有するポリマー溶液3(ポリマー含有量:25質量%)を合成した。ポリマー3の重量平均分子量は3.4万であり、酸価は3.2mmol/gであった。下記式中の数値は、各ユニットのモル%を表す。
なお、得られたポリマー溶液3中には、残存モノマーである、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、アクリル酸、カレンズAOIが反応系中の水で分解した化合物などの反応副生成物が含まれていた。また、溶媒であるNEPも不純物としてポリマーと共存していた。
【0167】
【化31】

【0168】
(合成例4:ポリマー溶液4)
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド18gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、下記モノマーB:20.7g、2−シアノエチルアクリルアミド12.5g、アクリル酸(東京化成製)21.6g、V−65(和光純薬製)1.0gのN,N−ジメチルアセトアミド20g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド91gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0169】
【化32】

【0170】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.17g、トリエチルアミン101.2gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液150gを加え、下記構造のポリマー4を含有するポリマー溶液4(ポリマー含有量:15質量%)を合成した。ポリマー4の重量平均分子量は8.4万であり、酸価は5.8mmol/gであった。下記式中の数値は、各ユニットのモル%を表す。
なお、得られたポリマー溶液4中には、残存モノマーの他、トリエチルアミンの塩酸塩、トリエチルアミンのメタンスルホン酸塩、などの反応副生成物が含まれていた。また、溶媒であるN,N−ジメチルアセトアミドも不純物としてポリマーと共存していた。
【0171】
【化33】

【0172】
(合成例5:ポリマー溶液5)
500mLの三口フラスコに、N−メチルピロリドン5gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、アリルアクリレート7.6g、アクリロニトリル(東京化成製)2.3g、2-carboxylic acid - ethyl acrylate8.6g、V−601(和光純薬製)0.63gのN−メチルピロリドン5g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌し、下記構造のポリマー5を含有するポリマー溶液5(ポリマー含有量:50質量%)を合成した。ポリマー5の重量平均分子量は3.1万であり、酸価は4.1mmol/gであった。下記式中の数値は、各ユニットのモル%を表す。
なお、得られたポリマー溶液5中には、残存モノマーである、2-carboxylic acid - ethyl acrylate、アリルアクリレート、アクリロニトリルなどの反応副生成物が含まれていた。また、溶媒であるN−メチルピロリドンも不純物としてポリマーと共存していた。
【0173】
【化34】

【0174】
(合成例6:ポリマー溶液6)
合成例5のポリマーの溶媒であるN−メチルピロリドンをメチルエチルケトンに変更して、合成例5と同様の操作を行い、ポリマー溶液6を得た。
なお、得られたポリマー溶液6中には、残存モノマーである、2-carboxylic acid - ethyl acrylate、アリルアクリレート、アクリロニトリルなどの反応副生成物が含まれていた。
【0175】
<溶解性評価>
上記で合成した各ポリマー溶液に、所定のアルコールをポリマー溶液100質量部に対して30質量部添加して、室温で5分間攪拌した。攪拌終了後、混合液を静置し、液の外観を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表1にまとめて示す。なお、実用上、該評価が「×」でないことが必要である。
◎:クリアーな溶液
○:若干濁りのある溶液
△:濁りのある溶液
×:ポリマーが析出
【0176】
<分液性評価>
上記<溶解性評価>で得られたアルコールを含有するポリマー溶液(上記ポリマー溶液Bに該当)に、該溶液と同量の19質量%NaCl水溶液を添加した後、室温で5分間攪拌して混合した。攪拌終了後、5分間溶液を静置し、溶液の2層化の状況を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表1にまとめて示す。
○:2層化し、分離界面がクリアーに確認できる。
△:2層に分離するが、分離界面がクリアーに確認できない。
×:2層化の確認不可
【0177】
<不純物(親水性化合物)の除去性評価>
上記<分液性評価>に記載の洗浄を6回繰返し、得られた有機層(アルコール層)を分取し、更にその有機層に、加えた同量のアルコールを加え、該層に含まれる不純物量を確認した。確認方法としては、HPLC、GC、NMR、固形分測定にて確認を行った。
評価基準は以下の通りである。結果を表1にまとめて示す。
なお、ここで不純物とは、ポリマー溶液中におけるポリマーおよび上記アルコール以外の成分(例えば、反応副生成物、N−メチルピロリドンなどの溶媒など)を意味する。
【0178】
「除去性の評価基準」
◎:ポリマーの純度(溶液中における不純物質量とポリマー質量との合計質量に対する、ポリマー質量の割合)が除去前後で、7倍以上になる場合
○:ポリマーの純度(溶液中における不純物質量とポリマー質量との合計質量に対する、ポリマー質量の割合)が除去前後で、4倍以上7倍未満になる場合
△:ポリマーの純度(溶液中における不純物質量とポリマー質量との合計質量に対する、ポリマー質量の割合)が除去前後で、1.1倍以上4倍未満になる場合
×:ポリマーの純度(溶液中における不純物質量とポリマー質量との合計質量に対する、ポリマー質量の割合)が除去前後で、1.1倍未満になる場合
【0179】
例えば、実施例3の場合は、ポリマー溶液中の洗浄前後の組成を解析すると、表1の通りであった。実施例3の場合は、ポリマーの純度は本発明の方法を経ることにより、7.8倍に高まった。
なお、表1中の各成分の質量%は、ポリマー質量と不純物(NEP、DBU塩、メタンスルホン酸、その他など)との合計量に対する各成分の質量割合を表す。表2中のいずれの項目にも「×」が含まれていないことが好ましい。
【0180】
【表1】

【0181】
【表2】

【0182】
表2より、本発明の製造方法を用いることにより、含有される不純物が低減されたポリマー溶液を得ることができた。なかでも、実施例3〜5を比較すると、第3級アルコールである実施例3を使用した場合に、より優れた溶解性を示すことが分かった。
一方、比較例1及び2に示すように所定の炭素数/OH基数の比を下回るエタノール及びイソプロパノールを用いた場合、分液性が悪く、所望のポリマー溶液を得ることができなった。
また、比較例3に示すように、炭素数/OH基数の比を上回る2−エチル−1−ヘキサノールを用いた場合、該アルコールを加えた時点でポリマーが溶解してしまい、抽出操作を行うことができなかった。
なお、上記表2中の比較例1〜3の評価項目中の「―」は未実施を意味する。
【0183】
<回収率>
上記実施例3の条件では、12質量%のポリマー溶液が105g得られた。
一方、実施例3で用いられたポリマー溶液1を水2L中に添加して、再沈殿処理を行ったところ、粘調なポリマーが析出した。該ポリマーを取り出し、NEP/2-メチル−2−ブタノール=1/1の混合液にて上記同様12質量%のポリマー溶液に調液した結果、80gのポリマー溶液が得られた。また、不純物であるDBU塩の含率を測定すると、本発明のポリマー精製(分液)を行うと、得られたポリマーに対するDBU塩量は1質量%であるのに対して、再沈殿処理して得られたポリマーのDBU塩量は、5質量%であった。
上記結果より、本発明のポリマー溶液の製造方法を用いたほうが、より高いポリマーの回収率を示すことが分かった。この原因としては、以下の二つが考えられる。一点目としては、再沈殿処理によりポリマーが析出するものの、ポリマーが非常に粘調で取り扱いにくく、処理容器から完全に取り出すことが困難であった点が挙げられる。二点目としては、再沈殿処理では大量の水を使用するため、ポリマーが析出せずに、水層に溶解してしまった点が挙げられる。また、不純物の除去性に関しては、分液精製では水層で複数回洗浄することができるため、除去性が高まっている、と考えられる。
【0184】
<塩基性水溶液への分配>
上記実施例3で得られた精製後のポリマー溶液(上記ポリマー溶液Cに該当)は固形分12質量%、酸価3.9mmol/gであり、該ポリマー溶液20gに対して、炭酸水素ナトリウム0.67gおよび水10gからなる塩基性水溶液を添加した。該混合溶液を60分間攪拌して、30分間静置した後、水層を分取した。水層のpHは6であった。
なお、塩基性水溶液の処理前には、2−メチル−2−ブタノール層の固形分(ポリマー成分量)は12質量%であったが、塩基性水溶液の処理後には、2−メチル−2−ブタノール層の固形分が0.1質量%となったことから、ポリマーが水層に転層したことを確認した。
【0185】
<固体塩基の添加>
上記実施例3で得られた精製後のポリマー溶液(上記ポリマー溶液Cに該当)2gに対して、炭酸水素ナトリウムを6mg加えた。これにより、ポリマー溶液のpHを1から4に中和することができた。
【0186】
<保存安定性>
上記実施例4で得られたポリマー溶液(上記ポリマー溶液Cに該当、以後ポリマー溶液C4と称す)と、実施例4のポリマー溶液を用いて上記<塩基性水溶液への分配>と同様の方法を行い、得られたポリマー溶液(上記ポリマー溶液Dに該当、以後ポリマー溶液D4と称す)とを、60℃で1週間静置し、ポリマー溶液の保存安定性について評価した。
ポリマー溶液C4中のポリマーのエステル部分のうち13モル%が分解しているのに対して、ポリマー溶液D4中のポリマーのエステル部分の分解は認められなかった。このように、塩基性水溶液で処理することにより、より保存安定性に優れたポリマー溶液を得ることができた。
なお、上記<固体塩基の添加>で得られたポリマー溶液においても、ポリマー溶液D4と同じように、ポリマーのエステル部分の分解は認められなかった。
【0187】
<比較例1>
本発明で使用されるアルコール(2−メチル−2−ブタノール(SP値=20.25MPa(1/2))、1−ペンタノール(SP値=21.4MPa(1/2))、2−ペンタノール(SP値=21.26MPa(1/2)))とSP値の近い溶媒であるジエチレングリコールジアセテート(SP値=20.75MPa(1/2))を用いて、上記<溶解性評価>と同じ手順でポリマー溶液1中に該溶媒を添加した。
ジエチレングリコールジアセテートを用いてポリマー溶液の希釈を行った所、ポリマーが析出した。該実験結果より、本発明で使用されるアルコールと同程度のSP値を有する溶媒を使用したとしても、本発明の効果が得られないことが分かった。この原因の詳細は不明であるが、本発明で使用されるアルコールは、ポリマー中に含まれるイオン性極性基に対して、水素結合などをとりやすく、より相互作用(溶媒和)しやすいためと推測される。なお、上記SP値の算出は、沖津法に従った。
【0188】
<金属パターン材料の製造(その1)>
[被めっき層形成用組成物の調製]
実施例3で得られたポリマー溶液をメタノールで希釈し、ポリマー濃度7質量%の被めっき層形成用組成物を調整した。
[基板の作製]
ガラスエポキシ基板上に、密着補助層として9質量%のABS樹脂(Aldrich社製)のシクロヘキサン溶液をスピンコート法(条件:250rpmで5秒、その後、750rpmで20秒)にて塗布し、乾燥して基板A1を得た。
【0189】
[被めっき層の形成]
調製された被めっき層形成用組成物を、上記基板A1の密着補助層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥して塗膜を得た。
その後、得られた塗膜に対し、UV露光機(型番:三永電機製 型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、10mW/cm2の照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、フォトマスクを通じて300秒間、パターン露光を行った。
露光後の基板を、1質量%Na2CO3水溶液中に5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。これにより、密着補助層と直接結合したパターン状の被めっき層を有する基板A2を得た。
【0190】
[めっき触媒の付与]
被めっき層を有する基板A2を、硝酸銀10質量%水溶液に、10分間浸漬した後、水に浸漬して洗浄した。
【0191】
[無電解めっき]
上記のようにして、めっき触媒が付与された被めっき層を有する基板A2に対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、26℃で10分間、無電解めっきを行うことで、電気配線が得られた。
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 774g
・ATSアドカッパーIW−A(奥野製薬工業製) 45mL
・ATSアドカッパーIW−M(奥野製薬工業製) 72mL
・ATSアドカッパーIW−C(奥野製薬工業製) 9mL
・NaOH 1.98g
・2,2’−ビピリジル 1.8mg
【0192】
<金属パターン材料の製造(その2)>
上記、実施例3で得られたポリマー溶液を用いて上記<塩基性水溶液への分配>の処理を行って得られた、ポリマーを含有する塩基性水溶液を、アセトニトリルでポリマー濃度7質量%に希釈した後に、上記<金属パターン材料の製造(その1)>と同様の方法でメッキを行なうことで、電気配線が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)で表されるユニット及び一般式(B)で表されるユニットを含有するポリマーと、炭素数とOH基数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコールとを含有するポリマー溶液の製造方法であって、
前記ポリマーを溶解し、前記アルコールと相溶する有機溶媒と、前記ポリマーとを含むポリマー溶液Aに、前記アルコールを加えて、ポリマー溶液Bを得る添加工程と、
前記ポリマー溶液Bに水を用いた抽出処理を施す抽出工程とを備える、ポリマー溶液の製造方法。
【化1】

(一般式(A)中、R1は、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Xは、単結合、又は、エステル基、アミド基、エーテル基、アリーレン基若しくはアルキレン基を表す。L1は、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基を表す。Wは、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表す。
一般式(B)中、R2は、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Uは、単結合、又は、エステル基、アミド基、エーテル基、アリーレン基若しくはアルキレン基を表す。L2は、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基を表す。Vは、イオン性極性基を表す。)
【請求項2】
前記ポリマーが、さらに式(C)で表されるユニットを有する、請求項1に記載のポリマー溶液の製造方法。
【化2】

(一般式(C)中、R3〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Z及びYは、それぞれ独立して、単結合、又は、エステル基、アミド基、エーテル基、アリーレン基若しくはアルキレン基を表す。L3は、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。)
【請求項3】
前記ポリマー溶液Aが、前記有機溶媒中で、前記ポリマーを合成して得られたポリマー溶液である、請求項1又は2に記載のポリマー溶液の製造方法。
【請求項4】
前記有機溶媒が、アミド基を含有する親水性の溶媒である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー溶液の製造方法。
【請求項5】
前記アルコールが、第2級又は第3級アルコールである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー溶液の製造方法。
【請求項6】
前記水が、無機塩を含有する水溶液である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー溶液の製造方法。
【請求項7】
前記無機塩の含有量が、前記水溶液全量に対して、10〜25質量%である、請求項6に記載のポリマー溶液の製造方法。
【請求項8】
前記抽出工程の後に、得られたポリマー溶液に固体塩基を添加して、溶液を中和する中和工程を備える、請求項1〜7のいずれかに記載のポリマー溶液の製造方法。
【請求項9】
前記ポリマーが水に溶解したポリマー溶液の製造方法であって、
請求項1〜7のいずれかに記載のポリマー溶液の製造方法の抽出工程の後に、得られたポリマー溶液に塩基性水溶液を接触させ、前記ポリマーを塩基性水溶液に分配して、前記ポリマーが水に溶解したポリマー溶液を得る分配工程を備える、ポリマー溶液の製造方法。
【請求項10】
前記塩基性水溶液が、無機塩基を含有する水溶液である、請求項9に記載のポリマー溶液の製造方法。
【請求項11】
一般式(A)で表されるユニット及び一般式(B)で表されるユニットを含有するポリマーの精製方法であって、
前記ポリマーと、炭素数とOH基数との比(炭素数/OH基数)が4〜7のアルコールと、前記ポリマーを溶解し、前記アルコールと相溶する有機溶媒とを含有するポリマー溶液に水を接触させる接触工程を備える、ポリマーの精製方法。
【化3】

(一般式(A)中、R1は、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Xは、単結合、又は、エステル基、アミド基、エーテル基、アリーレン基若しくはアルキレン基を表す。L1は、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Wは、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表す。
一般式(B)中、R2は、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Uは、単結合、又は、エステル基、アミド基、エーテル基、アリーレン基若しくはアルキレン基を表す。L2は、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Vは、イオン性極性基を表す。)
【請求項12】
前記ポリマー溶液が、前記有機溶媒中で、前記ポリマーを合成して得られたポリマー溶液に前記アルコールを添加して得られるポリマー溶液である、請求項11に記載のポリマーの精製方法。

【公開番号】特開2011−213782(P2011−213782A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81193(P2010−81193)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】