説明

ポリマー溶液中の異物検出方法および装置

【課題】
炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液に混入している異物の存否、大きさ、個数を、迅速かつ正確に検出することができるポリマー溶液中の異物検出方法および装置を提供する。
【解決手段】
炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液中の異物検出方法であって、ポリマー溶液を重合槽から送液する配管に透光部を設け、該透光部において光源より配管中のポリマー溶液に光を照射し、受光機で撮影することによってポリマー溶液中の異物の存否、大きさ、個数を検出する、ポリマー溶液中の異物検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液に含まれる異物を迅速かつ正確に評価し、品質・工程を安定化するのに適したポリマー溶液中の異物検出方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液の製造ラインにおいて、ポリマー溶液中に混入している異物の大きさ、数を迅速かつ正確に検出し、品質の状態を判断することは非常に重要なことである。このポリマー溶液の製造後に含まれる異物としては、該ポリマー溶液の作製後に外部より混入するものや、該ポリマーの貯蔵時間(滞留時間)、熱履歴変動に伴い溶液の一部が硬質化しゲルとなるものなどが該当する。これら異物がポリマー溶液を製造する次工程以降である繊維、フィルム、樹脂製品などの製造工程に混入すると、該製品の品質変動・変質が生じ、規格外製品の発生につながるという問題がある。
【0003】
従来よりポリマー溶液中に混入した異物を検出して、異物の数、大きさを検出し、品質の管理維持を行うために、これまでいくつかの技術が提案されている。
【0004】
例えば、ポリマーおよび粉体の混合物をフィルタリングし、フィルター上に残った異物をカメラなどで撮影し、画像処理を行うことによって異物を判定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、異物検出用にサンプリングした溶液について検出しているため、製造工程中の溶液全体に対する評価技術ではなく、実質の異物の個数が正確とはいえず、また、サンプリングを行うための時間が必要であり、効率的な評価技術とはいえず、目的とする品質管理方法とはなり得ないという問題がある。
【0005】
また、ポリマーの押出機のポリマー流路ラインに透光部を内蔵し光を透過させ、透過光を分割受光することにより、光の透過率の変化を検出し、異物の存否、大きさに変換する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法は、製造ラインに流れるポリマーの異物を直接検出しており、異物の検出個数が正確に把握できる方法である。しかしながら、この方法では、ポリマーの濃度変化に応じて透過率が変化してしまうため、溶媒等に溶解したポリマー溶液に対しては濃度の影響を受けるため正しく測定できないという問題がある。
【0006】
そこで、製造ラインを流れるポリマー溶液全体に対して、該ポリマー溶液に混入している異物の大きさ、数を、迅速かつ正確に検出し、ポリマー溶液の品質を安定して保つことのできる技術が求められている。
【特許文献1】特開2005−221291号公報
【特許文献2】特開平7−108580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液に混入している異物の存否、大きさ、個数を、迅速かつ正確に検出することができるポリマー溶液中の異物検出方法および装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために、次の構成を有する。すなわち、
(1)炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液中の異物検出方法であって、ポリマー溶液を重合槽から送液する配管に透光部を設け、該透光部において光源より配管中のポリマー溶液に光を照射し、受光機で撮影することによってポリマー溶液中の異物の存否、大きさ、個数を検出することを特徴とするポリマー溶液中の異物検出方法。
【0009】
(2)照射する光の波長が380〜780nmである前記(1)に記載のポリマー溶液中の異物検出方法。
【0010】
(3)透光部を挟んで光源と受光機を配置する前記(1)または(2)のいずれかに記載のポリマー溶液中の異物検出方法。
【0011】
(4)透光部に対し光源と受光機を角度をもたせて配置する前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリマー溶液中の異物検出方法。
【0012】
(5)流路配管径が1〜150mmである前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリマー溶液中の異物検出方法。
【0013】
(6)炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液中の異物検出装置であって、ポリマー溶液を重合槽から送液する配管に透光部を設けるとともに、該透光部において配管中のポリマー溶液に光を照射する光源と、該照射した光を受光する受光機を設け、該受光機で撮影することによってポリマー溶液中の異物の存否、大きさ、個数を検出することを特徴とするポリマー溶液中の異物検出装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液中に混入する異物の数、大きさを送液ライン中の該ポリマー溶液に対して直接検出することで、迅速かつ正確に行うことができ、ポリマー溶液の品質管理の時間的効率、および正確性の飛躍的な向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、より詳細に説明する。
【0016】
本発明では炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液を重合槽から送液する配管に透光部を設け、該透光部において光源より配管中のポリマー溶液に光を照射し、受光機で撮影することによってポリマー溶液中の異物の存否、大きさ、個数を検出するのである。
【0017】
本発明のポリマー溶液中の異物検出方法ヲ適用することにより、送液ライン中のポリマー溶液中の異物を直接検出するので、異物の存在箇所を正確に把握できる様になる。すなわち異物を検出した際は、次工程以降である繊維、フィルム、樹脂製品などの製造工程にポリマー溶液が移る前に、また製造工程全体を停止することなく異物の存在するポリマー溶液のみを抜き出し除去することが可能となる。
【0018】
本発明における透光部としては、光を透過させることのできる材質のものを使用することが好ましい。具体的には、ガラス、またはアクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、などのプラスチックでもよい。この中で耐腐食性、耐久性の観点からガラスを用いることが最も好ましい。
【0019】
また、本発明における透光部の設置場所は、配管部において光が入射する箇所と、光が配管内を透過し、配管から出る箇所にそれぞれ設置されていることが重要である。
【0020】
また、透光部の形状は特に制限はなく、円形、四方型、五角形、六角形などいずれの多角形体でも使用可能であり、また円筒状の透光部を配管に内蔵したものも使用できる。これらの形状のうち、送液するポリマーの観察範囲をより広くできる観点から、円筒状の透光部を配管に内蔵したものが最も好ましい。
【0021】
本発明による受光部は、透光部より透過した光を一定時間間隔で連続的に撮影し、照射した光によって写し出された異物を認識することにより、異物の存否、数、大きさを検出する。
【0022】
上記認識方法は撮影した各画像に対し、色別可能な処理装置を使って自動検出してもよいし、撮影した各画像を目視で確認して判断してもよい。
【0023】
一定時間間隔とは、0.1〜2秒が好ましく、0.5秒〜1.5秒がより好ましく、0.7〜1.2秒が最も好ましい。0.1秒より短いと、撮影した画像中に存在するポリマー溶液中の異物が、次に撮影した画像にも撮影される場合があり、異物の個数を正確に検出することが出来なくなる可能性がある。また2秒より長いと、撮影されてない時間に異物が透光部を通過し、異物の検出漏れが発生する可能性がある。
【0024】
本発明における受光機としては、透光部より透過した光を撮影し、写真現像できるか、もしくは撮影画像としてデジタル出力し記録出来るものが好ましい。具体的には、アナログカメラ、デジタルカメラ、小型CCDカメラ、デジタルビデオカメラなどが挙げられる。
【0025】
本発明において光源より照射する光の波長は、受光機で撮影することが可能な光の波長であるという観点から、380〜780nmであることが好ましく、450〜550nmであることがより好ましい。380nm未満、または780nmを超えると、不可視光であり、受光機で撮影された画像に異物が正しく表示されない可能性がある。
【0026】
本発明において、光源および透光部は、透光部を挟んで光源と受光機を配置することも可能であるし、透光部に対し光源と受光機を角度をもたせて配置させることも可能である。角度をもたせて配置させる場合、異物の大きさを正確に検出する観点からその角度は90°〜270°とすることが好ましく、135°〜225°とすることがより好ましい。
【0027】
本発明においてポリマー溶液を送液する配管の流路配管径は、光源より照射する透過光の明るさ、および異物の大きさの観点から1〜150mmであることが好ましい。1mmより小さいと、混入した異物によって配管を閉塞し、ポリマー溶液の流れが不安定になる可能性がある。また、150mmより大きいと、透光部に照射する単位面積あたりの光の強さが不足し、異物が検出出来なくなる可能性がある。
【0028】
本発明は、ポリマー溶液中の異物を受光機で画像を直接撮像することから、ポリマー濃度、粘度を問わず異物検出ができることが特徴である。すなわち、ポリマーのみの流体のみならず、溶媒等で希釈したポリマー溶液に対して好適に使用できる。さらに迅速かつ正確に検出し、ポリマー溶液の高い品質管理を可能にすることから、炭素繊維前駆体繊維であるアクリル繊維の紡糸前原液であるポリアクリロニトリル系ポリマー溶液に対して好適に用いることができる。
【0029】
本発明における炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液中の重合方法としては、重合原料を均一に重合する観点から溶液重合を用いることが好ましい。溶液重合により重合する場合の溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリル系重合体が可溶な溶媒を用いる。中でも、ポリアクリロニトリル系ポリマー溶解性の観点から、ジメチルスルホキシドがより好ましく用いられる。
【0030】
本発明において、アクリロニトリル系ポリマーの重合は、ラジカル開始剤を用いたラジカル重合により、不活性気体で置換した重合槽内で行う。重合に用いる単量体として、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリロニトリルに加えて、他のラジカル重合性単量体を共重合成分として加えてもよい。また、ラジカル開始剤としては、2’2−アゾビスイソブチロニトリル、2’2−アゾビス2’4−ジメチルバレロニトリル、1’1−アゾビス1−シクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ系化合物を用いることが好ましい。不活性気体としては、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウムなどが使用できるが、取扱い性の観点から窒素を用いることが好ましい。
【0031】
本発明を炭素繊維の前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系重合体に適用する場合には、炭素繊維前駆体繊維の耐熱性や緻密性の観点から、重合に用いる全単量体の中に、アクリロニトリルが95モル%以上、好ましくは98.5モル%以上、より好ましくは99モル%以上となるよう重合することが好ましい。また、得られる前駆体繊維の耐炎化促進性を高める観点から、重合に用いる全単量体の中に、共重合成分として、耐炎化促進作用を有する単量体を0.1〜1モル%加えるのが好ましい。耐炎化促進作用を有する単量体としては、カルボキシル基またはアミド基を一つ以上有するものが好ましく用いられる。また耐炎化反応を促進するほど、短時間で耐炎化処理でき、生産性を高めることができることから耐炎化促進作用を有する単量体の共重合量を多くすることが好ましい。しかし一方で、かかる共重合量が多くなるほど、発熱速度が大きくなり暴走反応の危険が生じることがあるため、1モル%を超えない範囲とすることが好ましく、0.15〜0.5モル%がより好ましく、0.2〜0.5モル%とすることがさらに好ましい。
【0032】
耐炎化促進作用を有する単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが好ましく用いられる。少量でより高い耐炎化促進効果を得るという観点から、アミド基よりもカルボキシル基を有する単量体を用いることが好ましい。また含有されるアミド基、カルボキシル基の数については1つよりも2つ以上であることがより好ましく、その観点からは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸がより好ましく、イタコン酸、マレイン酸、メサコン酸がさらに好ましく用いられる。
【0033】
本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系ポリマー溶液は90%以上のアクリロニトリル、およびそれと共重合可能なビニル系単量体で構成されるアクリロニトリル系ポリマーであり、該ポリマー含有率が18〜22重量%となるように溶媒に溶解してなる溶液であるものが好ましく適用できる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。
【0035】
(実施例1)
重合槽においてアクリロニトリル系ポリマーの溶液重合を行った後、引き続き重合槽から直径50mmのポリマー溶液流路配管への抜き出し操作を行った。その際のポリマー溶液の流速は100mm/秒であった。またポリマー溶液の抜き出し操作を行う前にあらかじめ重合槽から流路配管への抜き出し口から5m先の流路配管内に、異物として球形の直径500μmの不溶性プラスチックビーズを50個投入した。異物を投入した地点からさらに5m先の流路配管に円筒型のガラス製透光部を配管と同径となるように内蔵し、さらに透光部を挟んで、透光部に対して受光機と光源との角度が180°となるように、該受光機、光源を配置した。光源より波長500nmの光を照射し、受光機の撮影時間間隔を0.9(秒/回)として、ポリマー溶液がゲル投入地点を通過してから5分間撮影を行った。
表1に実験条件および結果をまとめて示す。撮影したすべて画像にある異物をカウントしたところ48個であり、異物の個数を十分正確に測定していることが分かった。また撮影したすべての画像にある異物の直径の平均値は497nmであり異物の直径を十分正確に測定していることが分かった。また、ポリマー溶液がゲル投入地点を通過してから、異物の個数と直径を測り終えるのに要した所要時間は15分であり、十分迅速に測定できることが分かった。
【0036】
(実施例2)
実施例1の光源から照射される光の波長を790nmにした以外は実施例と同じにして、異物の数、平均直径および所要時間を測定した。
表1に実験条件および結果をまとめて示す。撮影したすべて画像にある異物をカウントしたところ40個であり、異物の個数を比較的正確に測定していることが分かった。また撮影したすべての画像にある異物の直径の平均値は450nmであり異物の直径を比較的正確に測定していることが分かった。また、ポリマー溶液がゲル投入地点を通過してから、異物の個数と直径を測り終えるのに要した所要時間は15分であり、十分迅速に測定できることが分かった。
【0037】
(実施例3)
実施例1の、透光部を挟んで、透光部に対して受光機と光源との角度を80°となるようにした以外は実施例と同じにして、異物の数、平均直径および所要時間を測定した。
表1に実験条件および結果をまとめて示す。撮影したすべて画像にある異物をカウントしたところ40個であり、異物の個数を比較的正確に測定していることが分かった。また撮影したすべての画像にある異物の直径の平均値は450nmであり異物の直径を比較的正確に測定していることが分かった。また、ポリマー溶液がゲル投入地点を通過してから、異物の個数と直径を測り終えるのに要した所要時間は15分であり、十分迅速に測定できることが分かった。
【0038】
(実施例4)
実施例1の透光部の形状を円形にした以外は実施例と同じにして、異物の数、平均直径および所要時間を測定した。
表1に実験条件および結果をまとめて示す。撮影したすべて画像にある異物をカウントしたところ42個であり、異物の個数を比較的正確に測定していることが分かった。また撮影したすべての画像にある異物の直径の平均値は496nmであり異物の直径を比較的正確に測定していることが分かった。また、ポリマー溶液がゲル投入地点を通過してから、異物の個数と直径を測り終えるのに要した所要時間は15分であり、十分迅速に測定できることが分かった。
【0039】
(実施例5)
実施例1の、受光機の撮影時間間隔を2.1(秒/回)とした以外は実施例と同じにして、異物の数、平均直径および所要時間を測定した。
表1に実験条件および結果をまとめて示す。撮影したすべて画像にある異物をカウントしたところ39個であり、異物の個数を比較的正確に測定していることが分かった。また撮影したすべての画像にある異物の直径の平均値は497nmであり異物の直径を比較的正確に測定していることが分かった。また、ポリマー溶液がゲル投入地点を通過してから、異物の個数と直径を測り終えるのに要した所要時間は15分であり、十分迅速に測定できることが分かった。
【0040】
(比較例1)
重合槽においてアクリロニトリル系ポリマーの溶液重合を行った後、引き続き重合槽から直径50mmのポリマー溶液流路配管への抜き出し操作を行った。その際のポリマー溶液の流速は100mm/秒であった。重合槽から流路配管への抜き出し口から5m先の流路配管内に、異物として球形の直径500μmの不溶性プラスチックビーズを50個投入した。ポリマー溶液が始めにゲル投入地点を通過してから5分間に流れたポリマー溶液のみを採取し、直径が配管と同径である円筒のガラス容器に入れた。次に円筒のガラス容器を挟んで、透光部に対して受光機と光源との角度が180°となるように、該受光機、光源を配置した。光源より波長500nmの光を照射し、受光機の撮影時間間隔を0.9(秒/回)として、ポリマー溶液がゲル投入地点を通過してから5分間撮影を行った。。
表1に実験条件および結果をまとめて示す。撮影したすべて画像にある異物をカウントしたところ38個であり、異物の個数を比較的正確に測定していることが分かった。また撮影したすべての画像にある異物の直径の平均値は497nmであり異物の直径を比較的正確に測定していることが分かった。しかしながらポリマー溶液がゲル投入地点を通過してから、異物の個数と直径を測り終えるのに要した所要時間は35分であり、十分迅速に測定できるとはいえなかった。
【0041】
(比較例2)
重合槽においてアクリロニトリル系ポリマーの溶液重合を行った後、引き続き重合槽から直径50mmのポリマー溶液流路配管への抜き出し操作を行った。その際のポリマー溶液の流速は100mm/秒であった。重合槽から流路配管への抜き出し口から5m先の流路配管内に、異物として球形の直径500μmの不溶性プラスチックビーズを50個投入した。異物を投入した地点からさらに5m先の流路配管に円筒型のガラス製透光部を配管と同径となるように内蔵し、透光部に受光機のみを配置した。該受光機の撮影時間間隔を0.9(秒/回)として、ポリマー溶液がゲル投入地点を通過してから5分間撮影を行った。
表1に実験条件および結果をまとめて示す。撮影したすべて画像にある異物をカウントしたところ20個であり、異物の個数を十分正確に測定しているとはいえなかった。また撮影したすべての画像にある異物の直径の平均値は350nmであり異物の直径を十分正確に測定しているとはいえなかった。また、ポリマー溶液がゲル投入地点を通過してから、異物の個数と直径を測り終えるのに要した所要時間は15分であり、十分迅速に測定できることが分かった。
【0042】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液中の異物検出方法であって、ポリマー溶液を重合槽から送液する配管に透光部を設け、該透光部において光源より配管中のポリマー溶液に光を照射し、受光機で撮影することによってポリマー溶液中の異物の存否、大きさ、個数を検出することを特徴とするポリマー溶液中の異物検出方法。
【請求項2】
照射する光の波長が380〜780nmである請求項1に記載のポリマー溶液中の異物検出方法。
【請求項3】
透光部を挟んで光源と受光機を配置する請求項1または2のいずれかに記載のポリマー溶液中の異物検出方法。
【請求項4】
透光部に対し光源と受光機を角度をもたせて配置する請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー溶液中の異物検出方法。
【請求項5】
流路配管径が1〜150mmである請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー溶液中の異物検出方法。
【請求項6】
炭素繊維前駆体繊維用のポリアクリロニトリル系ポリマーの重合溶液中の異物検出装置であって、ポリマー溶液を重合槽から送液する配管に透光部を設けるとともに、該透光部において配管中のポリマー溶液に光を照射する光源と、該照射した光を受光する受光機を設け、該受光機で撮影することによってポリマー溶液中の異物の存否、大きさ、個数を検出することを特徴とするポリマー溶液中の異物検出装置。

【公開番号】特開2009−31181(P2009−31181A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197021(P2007−197021)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】