説明

ポリマー粒子分散体

【課題】 不揮発性及び低粘性であって、高導電性を有するとともに、ポリマー粒子とのなじみが良く、長期安定性に優れるポリマー粒子分散体を提供する。
【解決手段】 ポリマー粒子及びイオン性液体を含んでなるポリマー粒子分散体であって、上記イオン性液体は、下記一般式(1);
【化1】


(式中、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。A及びBは、同一又は異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表されるアニオンを有するものであるポリマー粒子分散体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー粒子分散体に関する。より詳しくは、カチオンとアニオンとにより構成される化合物であるイオン性液体を用いたポリマー粒子分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン性液体とは、カチオンとアニオンとにより構成される液状の化合物であり、イオン性液体自体の有する種々の特性から、様々な用途への適用が検討されている。例えば、蒸気圧が極めて小さく、不揮発性であるという特性を有するものは、各種材料の分散媒としての使用が検討されている。すなわち、従来の各種材料の分散媒としては水や有機溶媒が使用されているが、これらは加熱されると揮発するため、用途によっては加熱前後の特性に影響を与える可能性があり、例えば電池の電解液や擬固体電解質に用いる場合には、加熱前後で電気伝導性を始めとした各種特性に大きな変化が生じることがあることから、水や有機溶媒に代わる分散媒として、不揮発性であるイオン性液体が注目されつつある。
【0003】
イオン性液体を用いた分散体に関し、ポリマー粒子及びイオン性液体を含有するポリマー粒子分散体が開示されており(例えば、特許文献1参照。)、実施例では、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムアイオダイドがイオン性液体として使用されている。この文献に記載された手法は、ポリマー粒子の製造工程では、通常、水や有機溶媒を分散媒とした乳化重合方法や非水分散重合等が採用されているが、有機溶媒系の分散媒では、加熱による溶媒揮発の点で近年の環境問題に充分に対応できず、しかも導電性を充分に付与できないことがあり、水系分散媒では、導電性は付与し易いものの揮発性の点で長期耐久性を充分に向上できないことから、これらの点を改善すべく、イオン性液体を分散媒として用いることとしたものである。しかしながら、このポリマー粒子分散体においては、長期安定性や導電性をより充分に発揮するとともに、ポリマー粒子を多量に用いた場合であっても充分な分散状態を維持することができ、しかも耐腐食性に優れたポリマー粒子分散体とすることができるようにするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開2004−256711号公報(第2、8〜12頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、不揮発性及び低粘性であって、高導電性を有するとともに、ポリマー粒子とのなじみが良く、長期安定性に優れるポリマー粒子分散体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、各種材料の分散媒について種々検討したところ、イオン性液体の中には、不揮発性であるという特性を有するものがあることに着目し、特定のアニオンを有するイオン性液体をポリマー粒子の分散媒として用いると、該アニオンを有することに起因して、不揮発性及び高導電性を奏するとともに、ポリマー粒子とのなじみが良くなり、ポリマー粒子を充分に安定させることができ、長期に亘って安定性を充分に発揮できることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。そして、このようなポリマー粒子及びイオン性液体を含んでなるポリマー粒子分散体が、取扱性に優れ、様々な用途に好適に用いることができるものとなることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0006】
すなわち本発明は、ポリマー粒子及びイオン性液体を含んでなるポリマー粒子分散体であって、上記イオン性液体は、下記一般式(1);
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。A及びBは、同一又は異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表されるアニオンを有するものであるポリマー粒子分散体である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明のポリマー(重合体)粒子分散体は、ポリマー粒子と、特定のアニオンを有するイオン性液体とを含んでなるものであるが、これらの成分はそれぞれ1種又は2種以上用いることができる。なお、イオン性液体とは、カチオンとアニオンとにより構成される化合物のうち液体形状のものを意味し、イオン性液体を2種以上含有する場合には、カチオンとアニオンとにより構成される化合物が2種以上含有することになればよく、カチオン又はアニオンが同種のものであってもよい。
このようなポリマー粒子分散体において、ポリマー粒子と上記イオン性液体との質量比(ポリマー粒子/上記イオン性液体)としては、ポリマー粒子分散体が使用される用途や求められる特性等に応じて適宜設定すればよいが、1/99〜80/20であることが好適である。ポリマー粒子の含有比が上記数値範囲未満であると、例えば擬固体電解質の用途において、得られるポリマー粒子分散体が充分に擬固体化できないおそれがあり、イオン性液体の含有比が上記範囲未満であると、例えば電解質の用途において、優れたイオン伝導性を発揮することができないおそれがある。より好ましくは、10/90〜60/40である。
なお、本発明のポリマー粒子分散体は、上記イオン性液体とポリマー粒子とのなじみが良く、しかも低粘性のものであることから、多量のポリマー粒子であっても充分に分散された状態とすることができ、ポリマー粒子の有する作用効果を充分に発揮しながらも取扱性に優れたものとすることが可能となる。
【0010】
上記イオン性液体は、上記一般式(1)で表されるアニオンを有するものであるが、このようなアニオンを有することにより、イオン性液体が外部に揮発することが充分に抑制され、低粘度を奏するとともに、ポリマー粒子となじみ易くなり、長期間に亘って安定性を充分に発揮することが可能となる。しかも、イオン導電性がより向上されることから、高導電性をも充分に発揮できることとなる。
なお、上記イオン性液体としては、40℃において、一定体積をもち、かつ流動性を有する液体であることが好ましく、具体的には、40℃で200mPa・s以下の液体であることが好ましい。より好ましくは、40℃で100mPa・s以下の液体であり、更に好ましくは、40℃で50mPa・s以下の液体である。粘度の測定方法としては、例えば、TV−20形粘度計 コーンプレートタイプ(トキメック社製)を用いて測定することができる。
【0011】
上記一般式(1)で表されるアニオンに関し、一般式(1)中の記号について、以下に更に説明する。
Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeから選ばれる少なくとも1種の元素を表すが、C、N又はSが好ましく、これにより、ポリマー粒子分散体の粘度をより充分に低減することができ、またポリマー粒子とのなじみを更に良くすることが可能となる。より好ましくはCであり、これによって更に耐熱性を向上することが可能となる。
A及びBは、同一又は異なって、有機連結基を表すが、それぞれ独立に、−S−、−O−、−SO−及び−CO−から選ばれる少なくとも1種の連結基であることが好ましく、より好ましくは、−SO−、−CO−である。
Qは、有機基を表すが、水素原子、ハロゲン原子、C(2p+1−q)、OC(2p+1−q)、SO(2p+1−q)、CO(2p+1−q)、COC(2p+1−q)、SO5−r、NO(式中、1≦p≦6、0<q≦13、0<r≦5である)等が好ましい。より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、C(2p+1−q)、SO(2p+1−q)である。
【0012】
またaは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数であるが、a、d及びeは、元素Xの価数によって決まることになり、例えば、Xが硫黄原子(S)の場合、a=1、d=0、e=0となり、Xが窒素原子の場合、(1)a=2、d=0、e=0、(2)a=1、d=1、e=0、又は、(3)a=1、d=0、e=1のいずれかとなる。また、b及びcは0であることが好適である。
上記一般式(1)で表されるアニオンとしては、ジシアノアミドアニオン(DCA)、チオシアネートアニオン、トリシアノメチドアニオン(TCM)、テトラシアノホウ素アニオン、シアノオキシアニオン(CYO)等が、フッ素を含まず、電極等への耐腐食性に優れるため好ましい。中でも、トリシアノメチドアニオンがより好ましい。
【0013】
上記ポリマー粒子分散体としては、本発明の作用効果を損なわない限り、その他のアニオンを含有していてもよい。その他のアニオンとしては、例えば、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン(TFSI)、テトラフルオロホウ酸アニオン、酢酸や安息香酸等のモノカルボン酸、フタル酸、マレイン酸、コハク酸アニオン等のジカルボン酸アニオン、メチル硫酸、エチル硫酸等の硫酸エステルアニオン等の1種又は2種以上の他、含フッ素無機イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロニオブ酸イオン、ヘキサフルオロタンタル酸イオン等の含フッ素無機イオン;フタル酸水素イオン、マレイン酸水素イオン、サリチル酸イオン、安息香酸イオン、アジピン酸イオン等のカルボン酸イオン;ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、パーフルオロブタンスルホン酸等のスルホン酸イオン;ホウ酸イオン、リン酸イオン等の無機オキソ酸イオン;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、パーフルオロアルキルフルオロボレートイオン、パーフルオロアルキルフルオロホスフェートイオン、ボロジカテコレート、ボロジグリコレート、ボロジサリチレート、ボロテトラキス(トリフルオロアセテート)、ビス(オキサラト)ボレート等の四配位ホウ酸イオン等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
上記ポリマー粒子分散体において、アニオンの存在量(全てのアニオンの存在量)としては、ポリマー粒子分散体100質量%に対し、アニオンの由来となる化合物の含有量の下限値が1質量%となることが好ましい。より好ましくは5質量%であり、更に好ましくは10質量%である。また、上限値としては99.5質量%が好ましい。より好ましくは95質量%であり、更に好ましくは90質量%である。
なお、ポリマー粒子分散体に含まれる全アニオン中の上記一般式(1)で表されるアニオンの質量割合としては、アニオンの総量100質量%に対し、下限が5質量%であることが好適である。これにより、長期間に亘る安定性を更に充分に発揮でき、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。より好ましい下限は20質量%である。
【0015】
本発明のポリマー粒子分散体としてはまた、イオン性液体を構成するカチオンを含有することになるが、その他のカチオンを含有することもできる。このような本発明のポリマー粒子分散体に含有されることになるカチオンとしては、ポリマー粒子分散体とした場合に種々の用途に応じて好適に作用するものであればよく、例えば、下記一般式(2);
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Lは、C、Si、N、P、S又はOを表す。Rは、同一又は異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。sは、3、4又は5であり、元素Lの価数によって決まる値である。)で表されるオニウムカチオンを必須としてなることが好適である。また、このようなカチオンは、本発明のポリマー粒子分散体に含有されるイオン性液体を形成するカチオンであることが好ましい。より好ましくは、上記イオン性液体が、上記一般式(1)で表されるアニオンと上記一般式(2)で表されるカチオンとから構成されるものであることである。この場合、上記一般式(1)で表されるアニオンと上記一般式(2)で表されるカチオンとから構成されるイオン性液体は、常温で溶融した状態を安定に保つ常温溶融塩となり、このような溶融塩を含む本発明のポリマー粒子分散体は、長期間に亘って更に充分な安定性を発揮できることとなり、種々の用途に更に有用なものとなる。なお、溶融塩とは、室温から80℃の温度範囲において液体状態を安定に保つことができるものである。
【0018】
上記一般式(2)で表されるオニウムカチオンとしては、下記一般式;
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、Rは、上記一般式(2)と同様である。)で表されるものがより好適である。これらの中でも、下記の(I)〜(IV)のオニウムカチオンが更に好ましい。
なお、下記(I)〜(III)のカチオンを表す式中、R〜R12は、同一若しくは異なって、有機基を表し、互いに結合していてもよいものであるが、例えば、水素原子、フッ素原子、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホン基、スルフィド基や、直鎖、分岐鎖又は環状で、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含んでもよい炭素数1〜18の炭化水素基、炭化フッ素基等が好ましく、より好ましくは、水素原子、フッ素原子、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜8の炭化水素基、炭化フッ素基である。
【0021】
(I)下記一般式で表される10種類の複素環オニウムカチオン。
【0022】
【化4】

【0023】
(II)下記一般式で表される5種類の不飽和オニウムカチオン。
【0024】
【化5】

【0025】
(III)下記一般式で表される9種類の飽和環オニウムカチオン。
【0026】
【化6】

【0027】
(IV)RがC〜Cのアルキル基である鎖状オニウムカチオン。
これらのオニウムカチオンの中でも、特に好ましくは、一般式(2)におけるLが窒素原子であるものであり、最も好ましくは、下記一般式;
【0028】
【化7】

【0029】
(式中、R〜R12は、上記(I)〜(III)を表す一般式におけるR〜R12と同様である。)で表される6種類のオニウムカチオンや、トリエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、ジエチルメチルメトキシエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム等の鎖状オニウムカチオン等である。
【0030】
上記ポリマー粒子分散体において、カチオンの存在量(全てのカチオンの存在量)としては、ポリマー粒子分散体中に存在するアニオン1molに対し、下限値が0.5molであることが好ましい。より好ましくは0.8molである。また、上限値としては2.0molであることが好ましく、より好ましくは1.2molである。
なお、上記ポリマー粒子分散体に含まれる全カチオン中の上記一般式(2)で表されるオニウムカチオンの質量割合としては、カチオンの総量100質量%に対し、下限が5質量%であることが好適である。これにより、長期間に亘る安定性を更に充分に発揮できることとなる。より好ましい下限は20質量%である。
【0031】
本発明のポリマー粒子分散体において、ポリマー粒子(粒子状の重合体)としては、例えば、単量体成分から形成される粒子状の重合体や、重合物を微細に粉砕したもの等が挙げられ、その平均粒子径は、例えば、下限が10nm、上限が10μmであることが好適である。これにより、ポリマー粒子をより安定的に分散することが可能となる。より好ましい下限は50nmであり、より好ましい上限は1μmである。
上記ポリマー粒子の種類としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコンゴム、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリビニル、アクリル、ウレタン、ポリアミド等が挙げられる。
上記ポリマー粒子としてはまた、内部架橋粒子であってもよい。これにより、例えば、本発明のポリマー粒子分散体を電解質として用いる場合等には、ミクロ相分離によるイオン伝導性向上の点から好適なものとすることが可能となる。また、本発明のポリマー粒子分散体が架橋剤を含有する場合には、ポリマー粒子が該架橋剤と反応する架橋性官能基を有するものであってもよい。
【0032】
上記ポリマー粒子の合成方法としては特に限定されず、通常の重合方法を用いればよく、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等が挙げられる。これらの重合方法において、乳化剤や開始剤等は、通常使用されるものを適宜用いればよく、また溶液重合に使用される溶媒としては、水や後述する有機溶媒等を使用することができる。なお、後述するように、イオン性液体中でポリマー粒子を合成してポリマー粒子分散体としてもよいし、重合体(又は粒子状の重合体)を合成した後に、イオン性液体を使用してポリマー粒子分散体を得ることとしてもよい。
またポリマー粒子の製造に使用される単量体成分としては特に限定されず、通常使用されるものを用いればよく、例えば、下記のものが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸(アクリル酸又は(メタ)アクリル酸)のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物、該多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物にε− カプロラクトンを開環重合した化合物等の水酸基含有重合性不飽和単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有重合性不飽和単量体;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有重合性不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;
【0034】
アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドメチルエーテル、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテル、ダイアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有含有重合性不飽和単量体;2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和単量体;アリル(メタ)アクリレ−ト、エチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、ジアリルテレフタレ−ト、ジビニルベンゼン等の多ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、(メタ)アクリル酸のフルオロアルキルエステル;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等の紫外線吸収性又は紫外線安定性重合性不飽和単量体等。
【0035】
上記ポリマー粒子にはまた、単量体成分や合成時の乳化剤成分等の選択、粒子合成後の変性等によって、用途に応じて種々の機能を付与することができる。例えば、ポリマー粒子自体にイオン伝導性を付与する場合には、ポリマー粒子に上述した一般式(1)で表されるアニオンや一般式(2)で表されるカチオン等を含む塩を坦持させることが好適である。これらの塩を坦持させる方法としては、ポリマー粒子を合成した後に、これらの塩と反応させる方法や、これらの塩の基を有する単量体を用いて重合を行い、ポリマー粒子を合成する方法、乳化剤等にこれらの塩を坦持させる方法等が挙げられる。また、ポリマー粒子の合成時に、これらの塩を含有する樹脂を分散剤(保護コロイド)として、その存在下に単量体成分を乳化重合する方法を用いてもよい。
【0036】
上記ポリマー粒子としてはまた、重合性不飽和基を有する上記イオン性液体自体を重合等によりポリマー化したものを分散剤(保護コロイド)とし、該分散剤の存在下に単量体成分を乳化重合する等して得られるポリマー粒子を用いることもできる。重合性不飽和基を有するイオン性液体としては、例えば、上記一般式(1)で表されるアニオンを有する、1−エチル−3−ビニルイミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0037】
本発明のポリマー粒子分散体の製造方法としては、得られるポリマー粒子分散体が、ポリマー粒子が上記イオン性液体中に分散された状態となる限り特に限定されず、例えば、通常の重合方法を用いて、上記イオン性液体中でポリマー粒子を合成することによりポリマー粒子分散体を得る方法;水系や有機溶媒系媒体の存在下で通常の重合方法によってポリマー粒子を合成した後、上記イオン性液体で置換する方法;水系や有機溶媒系媒体の存在下で通常の重合方法によって重合体を合成した後、イオン性液体中に分散し、必要に応じて有機溶媒を除去する等して粒子状とする方法等が挙げられる。
具体的には、例えば、上記イオン性液体中で重合体を合成するために上記アニオンを含有する乳化剤を用いる方法;付加開裂型の連鎖移動剤であるα−メチルスチレンダイマー及びラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合法によって得られたラジカル重合体の存在下、上記イオン性液体中にて単量体を乳化重合する方法;触媒的連鎖移動剤である金属錯体及びラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合法によって得られたラジカル重合体の存在下、上記イオン性液体中にて単量体を乳化重合する方法;水系での通常の乳化重合(上述の方法等も含む)や多段階乳化重合によってポリマー粒子を合成した後、上記イオン性液体で置換する方法;有機溶剤の存在下で非水分散重合等によって重合体粒子を合成した後、上記イオン性液体中で置換する方法;有機溶剤の存在下で溶液重合によって得られる重合体を上記イオン性液体中に分散し、必要に応じて有機溶剤を除去する等して粒子状とする方法等が挙げられる。
【0038】
本発明のポリマー粒子分散体としては、必要に応じて水や有機溶媒を含有することができる。有機溶媒としては、例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、ジオキサン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等の鎖状炭酸エステル類;炭酸エチレン、炭酸プロプレン、2,3−ジメチル炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、2−ビニル炭酸エチレン等の環状炭酸エステル類;蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル等の脂肪族カルボン酸エステル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のカルボン酸エステル類;リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル等のニトリル類;N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4ジメチルスルホラン等の硫黄化合物類:エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,6−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ニトロメタン、1,3−ジメチル−2イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
上記ポリマー粒子分散体が水や有機溶媒を含有する場合において、水や有機溶媒の含有割合としては、ポリマー粒子分散体100質量%に対し、上限値が50質量%であることが好適である。これにより、揮発分が充分に低減され、しかも例えば−55℃の低温においても凍ることがなく、化学的及び熱的安定性に優れるものとなる。より好ましくは30質量%であり、更に好ましくは10質量%である。
なお、上記ポリマー粒子分散体が非水系溶媒を含有する場合には、水分含量を制御することが好適であり、これにより、水に起因する影響が充分に軽減され、柔軟性やポリマー粒子とのなじみを良好なものとすることが可能となる。具体的には、非水系溶媒を含有する場合、上記ポリマー粒子分散体中の水分濃度の下限が1質量%であることが好適であり、より好ましくは0.1質量%である。また、上限値は0.01質量%であることが好ましい。
【0040】
上記ポリマー粒子分散体としては、共役二重結合を有する窒素複素環カチオンを必須としてなることが好ましく、これにより、電気化学的安定性がより向上されることとなる。
上記共役二重結合を有する窒素複素環カチオンとしては、上述した(I)の10種類の複素環オニウムカチオンや、上記(II)の5種類の不飽和オニウムカチオン等のうち、共役二重結合を有し、上記一般式(2)におけるLが窒素原子であるものが好適である。
【0041】
上記ポリマー粒子分散体としてはまた、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなるものであることが好ましい。このようなアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなる本発明のポリマー粒子分散体は、電解質を含有するものとなり、電気抵抗のばらつきや電圧依存性を更に充分に低減することが可能となり、また、長期間通電した場合の電気抵抗値の変動を更に充分に低減することが可能となる。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好適であり、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好適である。より好ましくは、リチウム塩である。
【0042】
上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩としては、上述のようなアニオンを必須とする化合物であっても、それ以外の化合物であってもよい。
上記アニオンを必須とする化合物の場合には、上記一般式(1)で表されるアニオンのアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であることが好ましく、リチウム塩であることがより好ましい。このようなリチウム塩としては、上述した好ましいアニオンのリチウム塩の他にも、LiC(CN)、LiSi(CN)、LiB(CN)、LiAl(CN)、LiP(CN)、LiP(CN)、LiAs(CN)、LiOCN、LiSCN等が好適である。
それ以外の化合物である場合には、ポリマー粒子分散体中での解離定数が大きい電解質塩であることが好ましく、例えば、LiCFSO、NaCFSO、KCFSO等のトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiN(CFSO、LiN(CFCFSO等のパーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiPF、NaPF、KPF等のヘキサフロロリン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiClO、NaClO等の過塩素酸アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiBF、NaBF等のテトラフロロ硼酸塩;LiAsF、LiI、NaI、NaAsF、KI等のアルカリ金属塩が好適である。これらの中でも、溶解性やイオン伝導度の点から、LiPF、LiBF、LiAsF、パーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましい。
【0043】
また上記ポリマー粒子分散体は、その他の電解質塩を含有していてもよく、過塩素酸テトラエチルアンモニウム等の過塩素酸の四級アンモニウム塩;(CNBF等のテトラフロロ硼酸の四級アンモニウム塩、(CNPF等の四級アンモニウム塩;(CHP・BF、(CP・BF等の四級ホスホニウム塩等が好適であり、溶解性やイオン伝導度の点から、四級アンモニウム塩が好適である。
【0044】
上記ポリマー粒子分散体における電解質塩の存在量としては、ポリマー粒子分散体100質量%に対して、電解質塩の下限が0.1質量%であることが好ましく、また、上限が50質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、イオンの絶対量が充分とはならず、イオン導電性を充分に向上させることができないおそれがあり、50質量%を超えると、イオンの移動がより円滑なものとはならないおそれがある。より好ましい上限値は30質量%である。
【0045】
上記ポリマー粒子分散体はまた、プロトンを含むことにより、導電性をより向上することが可能となる。このような、更にプロトンを含んでなるポリマー粒子分散体もまた、本発明の好ましい形態の1つである。なお、本発明においては、解離してプロトンを発生することができる化合物を含むことにより、溶媒中にプロトンが存在することになる。
上記ポリマー粒子分散体におけるプロトンの存在量としては、ポリマー粒子分散体に対して、下限が0.01mol/Lであることが好ましく、また、上限が10mol/Lであることが好ましい。0.01mol/L未満であると、プロトンの絶対量が充分とはならず、プロトン伝導度を向上することができないおそれがあり、10mol/Lを超えると、プロトンの移動がより円滑なものとはならないおそれがある。より好ましい上限は5mol/Lである。
【0046】
上記ポリマー粒子分散体は、本発明の作用効果を奏する限り、上記以外の構成要素を1種又は2種以上含んでいてもよく、例えば、各種無機酸化物微粒子を含有していてもよい。
上記無機酸化物微粒子としては、非電子伝導性、電気化学的に安定なものが好適である。このような微粒子としては、α、β、γ−アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、チタン酸バリウム、酸化チタン、ハイドロタルサイト等のイオン伝導性又は非電導性セラミックス微粒子が好適である。
上記無機酸化物微粒子の比表面積としては、できるだけ大きいことが好ましく、具体的には、BET法で5m/g以上であることが好ましい。より好ましくは、50m/g以上である。このような無機酸化物微粒子の結晶粒子径としては、上記ポリマー粒子分散体における他の構成要素と混合できればよいが、大きさ(平均結晶粒径)としては0.01μm以上が好ましく、また、20μm以下が好ましい。より好ましくは、0.01μm以上であり、また、2μm以下である。
【0047】
上記無機酸化物微粒子の形状としては、球形、卵形、立方体状、直方体状、円筒、棒状等の種々の形状のものを用いることができる。
上記無機酸化物微粒子の添加量としては、ポリマー粒子分散体100重量部に対して当該添加量の下限が100重量部であることが好ましい。100重量部を超えると、イオンの移動をより円滑にすることができないおそれがある。より好ましい下限は0.1重量部であり、また上限は20重量部である。
また、その他、無水酢酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物やその酸化合物、トリエチルアミン、メチルイミダゾール等の塩基性化合物を添加してもよい。添加量としては、ポリマー粒子分散体100質量%に対して、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.01質量%以上、20質量%以下である。
【0048】
上記ポリマー粒子分散体にはまた、上述した塩や溶媒の他にも種々の添加剤を含有させてもよい。添加剤を加える目的は多岐にわたり、電気伝導率の向上、熱安定性の向上、耐電圧の向上、濡れ性の改善等を挙げることができる。
このような添加剤としては、例えば、p−ニトロフェノール、m−ニトロアセトフェノン、p−ニトロ安息香酸等のニトロ化合物;リン酸ジブチル、リン酸モノブチル、リン酸ジオクチル、オクチルホスホン酸モノオクチル、リン酸等のリン化合物;ホウ酸又はホウ酸と多価アルコール(エチレングリコール、グリセリン、マンニトール、ポリビニルアルコール等)や多糖類との錯化合物等のホウ素化合物;ニトロソ化合物;尿素化合物;ヒ素化合物;チタン化合物;ケイ酸化合物;アルミン酸化合物;硝酸及び亜硝酸化合物;2−ヒドロキシ−N−メチル安息香酸、ジ(トリ)ヒドロキシ安息香酸等の安息香酸類;グルコン酸、重クロム酸、ソルビン酸、ジカルボン酸、EDTA、フルオロカルボン酸、ピクリン酸、スベリン酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘテロポリ酸(タングステン酸、モリブデン酸)、ゲンチシン酸、ボロジゲンチシン酸、サリチル酸、N−アミノサリチル酸、ボロジプロトカクテ酸、ボロジピロカテコール、バモン酸、ボン酸、ボロジレゾルシル酸、レゾルシル酸、ボロジプロトカクエル酸、グルタル酸、ジチオカルバミン酸等の酸類;そのエステル、そのアミド及びその塩;シランカップリング剤;シリカ、アミノシリケート等のケイ素化合物;トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン化合物;L−アミノ酸類;ベンゾール;多価フェノール;8−オキシキノリン;ハイドロキノン;N−メチルピロカテコール;キノリン;チオアニソール、チオクレゾール、チオ安息香酸等の硫黄化合物;ソルビトール;L−ヒスチジン等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記添加剤の含有量は特に限定されないが、例えば、ポリマー粒子分散体100質量%に対して、0.1質量%以上、また、20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5質量%以上、10質量%以下である。
【0049】
上記ポリマー粒子分散体にはまた、必要に応じ、架橋剤、増粘剤、可塑剤、紫外線吸収剤等の通常使用される添加剤を配合することもできる。
【0050】
本発明のポリマー粒子分散体のイオン伝導度としては、−55℃において1×10−7S/cm以上であることが好ましい。1×10−7S/cm未満であると、本発明のポリマー粒子分散体を、例えば電解質等に用いる場合には、優れたイオン伝導度を保って経時的に安定に機能することが充分にはできなくなるおそれがある。より好ましくは、1×10−6S/cm以上であり、更に好ましくは、5×10−5S/cm以上であり、特に好ましくは、1×10−4S/cm以上である。
上記イオン伝導度の測定方法としては、例えば、SUS電極を用いたインピーダンスアナライザーHP4294A(商品名、東陽テクニカ社製)やインピーダンスアナライザーSI1260(商品名、ソーラトロン社製)を用いて行う複素インピーダンス法により測定する方法が好適である。
【0051】
上記ポリマー粒子分散体はまた、25℃における粘度が300mPa・s以下であることが好ましく、これにより、より柔軟性が向上されるとともに、ポリマー粒子とのなじみがより良好なものとなる。より好ましくは、200mPa・s以下であり、更に好ましくは、100mPa・s以下であり、最も好ましくは、50mPa・sである。
上記粘度の測定方法としては、特に限定はないが、例えば、25℃において、TV−20形粘度計 コーンプレートタイプ(トキメック社製)を用いて測定する方法が好適である。
【発明の効果】
【0052】
本発明のポリマー粒子分散体は、上述のような構成であるので、不揮発性及び低粘性であって、高導電性を有するとともに、ポリマー粒子とのなじみが良く、長期安定性に優れることから、近年の環境問題に充分に対応することができ、種々の用途に好適に用いられるものである。例えば、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電解質として、特に擬固体電解質等の機能性材料の用途で、実用的な利用性が期待できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
下記の実施例等において、粒径は、COULTER モデル N4SD サブミクロン粒子分析装置(COULTER ELECTRONICS,INC)でメタノールに希釈して測定した。また、イオン伝導度は、上述した方法にて測定した。
【0054】
実施例1
撹拌機、温度計、水分離冷却管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、イオン性液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリシアノメチド(EMImTCM)を100部、更に「Newco1707SF」(日本乳化剤社製、アニオン界面活性剤、不揮発分30%)2.0部を加え、窒素置換撹拌しながら120℃で水分除去した。その後、90℃に冷却してから、この中にメタクリル酸メチル90部、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート10部、EMImTCM50部、過硫酸アンモニウム0.5部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後から2時間、90℃に保持した後、冷却し、重合体粒子の含有率が約40質量%であるイオン性液体分散体(ポリマー粒子分散体)を調整した。架橋体粒子の粒径は80nmであった。得られたイオン性液体分散体について、イオン伝導度を求めた。結果を表1に示す。
【0055】
実施例2
実施例1におけるEMImTCMを1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアノアミド(EMImDCA)に変更する以外同様の操作を行い、イオン性液体分散体を得た。架橋体粒子の粒径は70nmであった。得られたイオン性液体分散体について、イオン伝導度を求めた。結果を表1に示す。
【0056】
実施例3
実施例1におけるEMImTCMをメチルブチルピロリジニウムトリシアノメチド(MBPyTCM)に変更する以外同様の操作を行い、イオン性液体分散体を得た。架橋体粒子の粒径は100nmであった。得られたイオン性液体分散体について、イオン伝導度を求めた。結果を表1に示す。
【0057】
実施例4
実施例1において冷却後に加える混合物に含まれるEMImTCMを1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイドに変更する以外同様の操作を行い、イオン性液体分散体を得た。架橋体粒子の粒径は150nmであった。得られたイオン性液体分散体について、イオン伝導度を求めた。結果を表1に示す。
【0058】
比較例1
実施例1における「Newco1707SF」を添加しない以外同様の操作を行い、イオン性液体含有重合体を得た。得られたイオン性液体含有重合体について、イオン伝導度を求めた。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー粒子及びイオン性液体を含んでなるポリマー粒子分散体であって、
該イオン性液体は、下記一般式(1);
【化1】

(式中、Xは、B、C、N、O、Al、Si、P、S、As及びSeからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。A及びBは、同一又は異なって、有機連結基を表す。Qは、有機基を表す。aは、1以上の整数であり、b、c、d及びeは、0以上の整数である。)で表されるアニオンを有するものであることを特徴とするポリマー粒子分散体。

【公開番号】特開2006−321857(P2006−321857A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144633(P2005−144633)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】