説明

ポリマー系から作られた接着剤

本発明は、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の溶融粘度を低下させるプロセスによって得られた、少なくとも1つのポリマー系を含む接着剤であって、このプロセスが、少なくとも1つのラジカル供与体で、前記ポリマーブレンドの軟化点を超える温度で、剪断下で、少なくとも1つのポリマーブレンドを処理する工程を含む、接着剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の溶融粘度を低下させるプロセスによって得られた、少なくとも1つのポリマー系を含む接着剤に関し、ここで、前記プロセスは、少なくとも1つのポリマーブレンドを少なくとも1つのラジカル供与体で、前記ポリマーブレンドの軟化点を超える温度で、剪断応力下で、処理する工程を含む。
【背景技術】
【0002】
エチレン−プロピレンゴムコポリマー(EPR)および/またはエチレン−プロピレンジエンモノマーゴムターポリマー(EPDM)に基づく接着剤が当該分野で知られている。
【0003】
米国特許第5,798,175号には、天然ゴムまたは合成ゴム、およびEPRを含む非晶質ポリオレフィンブレンド、水素化ポリイソプレンおよびアタクチックポリプロピレン(APP)に基づく感圧接着剤(PSA)組成物が開示されている。この接着剤は、上記したポリマー、相溶性粘着付与剤および有機溶媒を配合することによって調製される。したがって、この接着剤は、溶媒系でありホットメルトではない。
【0004】
米国特許第5,612,144号には、少なくとも1つのEPDMゴム、または好ましくは等量の3つの異なる等級のEPDMゴム、およびポリイソプレン、ポリブタジエン、EPR、およびその混合物から選択される別のポリマーのポリマーブレンドを含む接着性テープ組成物が開示されている。
【0005】
米国特許第5,618,883号には、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマーおよび/またはスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマーのコポリマーで変性された粘着付与EPRゴムを含むホットメルト感圧接着剤組成物が開示されている。
【0006】
これらの先行技術における組成物を硬化または化学的架橋することで、良好な結合力および良好な接着特徴が得られる。
【0007】
米国特許第6,143,818号には、EPRゴムおよび/またはEPDMゴムおよび少なくとも1つの半結晶性オレフィンポリマーからなるポリマー成分を含むホットメルト接着剤組成物が開示されている。この組成物は優れた熱安定性、および種々の基材への良好な接着をもたらす。それにもかかわらず、ポリマー成分の粘度は、多数の用途に対し、特に、接着剤の低粘性または接着剤製剤中のポリマーの高い割合が強く要求される用途に対しては、高すぎる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,798,175号明細書
【特許文献2】米国特許第5,612,144号明細書
【特許文献3】米国特許第5,618,883号明細書
【特許文献4】米国特許第6,143,818号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
技術水準にもかかわらず、高い結合力、低い溶融粘度とともに狭い分子量分布、および高い柔軟性を示すEPRゴムおよび/またはEPDMゴムおよび半結晶性オレフィンポリマーに基づく接着剤を提供するのが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも1つのポリマー系を含む接着剤に関し、このポリマー系は、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の溶融粘度を低下させるプロセスによって得られ、このプロセスは、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質を、少なくとも1つのラジカル供与体で、前記ポリマーブレンド出発物質の軟化点を超える温度で、剪断応力下で、処理する工程を含み、前記ポリマー系は、:
a)エラストマーゴム、またはエチレン−プロピレンゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンモノマーターポリマーゴムからなる群より選択されるエラストマーゴムのブレンド、および
b)半結晶性オレフィンポリマーまたは半結晶性オレフィンポリマーのブレンド
を含む。
【0011】
本発明の接着剤は、前記ポリマー系を、接着剤の全量に対して15〜95重量%の量で含むことが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、少なくとも1つのポリマー系を含む接着剤を提供する。このポリマー系は、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の溶融粘度を低下させるプロセスによって得られ、このプロセスは少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質を少なくとも1つのラジカル供与体で、前記ポリマーブレンド出発物質の軟化点を超える温度で、剪断応力下で、処理する工程を含み、ポリマー系は、:
a)エラストマーゴム、またはエチレン−プロピレンゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンモノマーターポリマーゴムからなる群より選択されるエラストマーゴムのブレンド、および
b)半結晶性オレフィンポリマーまたは半結晶性オレフィンポリマーのブレンド
からなる。
【0013】
本発明のポリマー系は以下:
a)エラストマーゴム、または、エチレン−プロピレンゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンモノマーターポリマーゴムからなる群より選択されるエラストマーゴムのブレンド、および、半結晶性オレフィンポリマーまたは半結晶性オレフィンポリマーのブレンドを含むか、またはそれからなる少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質を提供する工程;
b)前記ポリマーブレンド出発物質を少なくとも1つのラジカル供与体で、該ポリマーブレンド出発物質の軟化点を超えた温度で、剪断応力下で、処理することによって、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の溶融粘度を低下させる工程;
を含むプロセスによって得ることができる。
【0014】
本発明のポリマーブレンド出発物質は、ポリマーアロイであることが好ましい。本明細書中で用いる用語「ポリマーアロイ」は、「ポリマー−ブレンド」とほとんど同一の意味を有するが、「ポリマーブレンド」よりも狭義である。ポリマーアロイにおいては、構成系の間の相互作用はポリマーブレンドにおける相互作用より強い。用語「ポリマーアロイ」は、2つの系が肉眼で区別できない程度まで相互に微細に分散している2つの系の固溶体を意味するものである。
【0015】
上記で用いる用語ポリマーとしては、ホモポリマー、およびターポリマー、テトラポリマー等のようなコポリマーが挙げられる。
【0016】
本発明で用いる用語「ポリマー系」とは、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の溶融粘度(200℃)を、少なくとも1つのラジカル供与体で、前記ポリマーブレンド出発物質の軟化点を超える温度で、剪断応力下で、低下させることによって得られるポリマー、または上記のように得られる2つ以上の異なるポリマーの混合物をいう。本発明のポリマー系は、常に、未処理ポリマーブレンド出発物質よりも低い溶融粘度を示す。ポリマー系およびポリマーブレンド出発物質の溶融粘度を比較するために、全ての溶融粘度を同一条件下で決定する。
【0017】
上記したポリマーブレンド出発物質の溶融粘度(200℃)を低下させるためのプロセスにより、異なる特性を有する変性材料を得ることができる。上記のプロセスの間に生じるポリマー鎖の制御された切断により、ポリマーブレンド出発物質が変性される。この制御された切断は、事実、ポリマー鎖の分子量を低下させる。平均分子量が低下するに従って、溶融粘度は低下し、分子量分布は狭くなる。
【0018】
好ましくは、200℃において決定されたポリマーブレンド出発物質の溶融粘度を、少なくとも1つのラジカル供与体で、得られたポリマー系の(200℃における)溶融粘度がポリマーブレンド出発物質の(200℃における)初期溶融粘度の50%未満となるまで、剪断応力下で、低下させる。
【0019】
本明細書中で用いられる用語「初期溶融粘度」とは、その溶融粘度(200℃)が上記のプロセスによって低下される前の、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の溶融粘度をいう。
【0020】
少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の溶融粘度(200℃)を、少なくとも1つのラジカル供与体で、ポリマーブレンド出発物質の軟化点を超える温度で、剪断応力下で、低下させるプロセスは、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、混練機およびロールミルで行うことができる。これらのうち、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、および混練機を用いるのが特に好ましい。
【0021】
本発明の1つの態様によれば、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質を、例えば、細粒形態のポリマーブレンドを、1つ以上の添加剤と任意に組み合わせる。次いで、得られた組成物を押出機に供給する。供給口において、またはバレル中の開口を通ってのいずれかで、少なくとも1つのラジカル供与体を、好ましくは溶液として、押出機に直接投入することにより、押出の間に得られた組成物と組み合わせる。他の態様によれば、少なくとも1つのラジカル供与体を、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質および、任意に、1つ以上の添加剤を含む組成物と、押出の前に乾式ブレンドしてもよい。さらに、添加剤を、存在する場合、少なくとも1つのラジカル供与体を含む溶液として、押出の間に溶融した樹脂に投入することにより加えてもよい。少なくとも1つのラジカル供与体またはさらなる添加剤を加える方法にかかわらず、上昇した押出温度において、ラジカル供与体により、ポリマーブレンド出発物質の平均分子量を減少させる制御された分解が開始する。真空脱気を押出機バレルに適用することができ、未反応ラジカル供与体を残存溶媒とともに除去することができる。本発明のポリマー系である、分解したポリマーブレンド出発物質は、ダイを通って押出機から排出でき、次いで、水浴によって急冷され、刻んでペレットとなる。得られた分子量の低下により、溶融粘度によって測定されるように、非常に低い溶融粘度がもたらされる。
【0022】
他の態様によれば、本発明のポリマー系を、2段階プロセスを通じて製造することができ、上記の第一段階の押出プロセスを行うことによって開始され、ポリマーペレットが得られる。これらのペレットを、出発物質が第一段階の処理から製造されたポリマーペレットであること以外は第一段階と同一である、第二段階のプロセスに通過させることもできる。1段階プロセスに関しては、押出しの前に、ポリマーを少なくとも1つのラジカル供与体と乾式混合してよい。
【0023】
上記したプロセスは、通常、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の軟化点を超える温度、好ましくは120℃〜300℃、より好ましくは150℃〜250℃で行われる。特定の態様において、上記のプロセスを窒素雰囲気下で行う。反応混合物に適用する剪断の程度は、臨界的ではないが、実施例において確認されるように、二軸スクリュー、ZSK押出機内で発生する剪断応力と同等であることが好ましい。
【0024】
少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の溶融粘度(200℃)を少なくとも1つのラジカル供与体で、前記ポリマーブレンド出発物質の軟化点を超える温度で、剪断応力下で、低下させるプロセスが、特定のラジカル供与体またはラジカル供与体の種類に限定されないことは、当業者に明らかである。アゾ化合物、ジアゾ化合物、および有機過酸化物のような過酸化物を含む多数のラジカル供与体が、本発明で有用である。有機過酸化物の種類としては、限定されるものではないが、ともにAKZOから入手可能な、TRIGONOX 101(登録商標)(2,5-ジメチル-2,5-ジ-[tert-ブチルペルオキシル]ヘキサン)およびTRIGONOX 301(登録商標)(3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン)、DTAP(登録商標)としてCK Witcoから入手可能であり、かつTrigonox 201(登録商標)としてAKZOから入手可能な(ジ-tert-アミルペルオキシド)、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3,1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0025】
本発明のラジカル供与体は、一般に、10℃〜200℃の温度でポリマーブレンド出発物質に加えられ、100℃〜300℃の温度にてラジカル供与体としてのそれらの目的において使用される。添加量は、プロセスで用いるポリマーブレンド出発物質の全量に基づいて、0.05〜10重量%、好ましくは0.2〜2重量%である。
【0026】
上記したように、前述したプロセスに従って製造される本発明のポリマー系の(200℃における)溶融粘度は、出発ポリマーブレンド(ポリマーブレンド出発物質)の(200℃における)初期溶融粘度の、50%未満、より好ましくは40%未満;または30%未満、最も好ましくは20%未満;または10%未満である。
【0027】
1つの態様において、本発明のポリマーブレンド出発物質は、200℃で少なくとも300,000mPasの初期溶融粘度を有する。別の態様において、ポリマーブレンド出発物質は、200℃で少なくとも350,000mPas;または少なくとも400,000mPas、または少なくとも450,000mPas;または少なくとも500,000mPas;または少なくとも1,000,000mPas;または少なくとも10,000,000mPas;または少なくとも20,000,000mPasの初期溶融粘度を有する。好ましくは、ポリマーブレンド出発物質の初期溶融粘度(200℃)は、300,000mPas〜15,000,000mPasの範囲である。
【0028】
別の態様において、本発明のポリマー系は、200℃で3,000〜1,000,000mPas、好ましくは3,000〜250,000mPasの溶融粘度(ブルックフィールド粘度とも称される)を有する。1つの態様において、上記のポリマー系は、200℃で4,000〜200,000mPas;または5,000〜100,000mPas;または6,000〜80,000mPas;または7,000〜70,000mPas;または8,000〜60,000mPas;または9,000〜50,000mPasの溶融粘度を有する。他の態様において、上記のポリマー系の200℃における溶融粘度は、用途に応じて、3,000〜40,000mPas;または3,500〜30,000mPas;または4,000〜20,000mPasである。
【0029】
本発明のポリマー系を、さらに、分子量分布、ガラス転移温度、融解熱、およびピーク融点(Tm)などの、特定のパラメーターにより特徴付けることができる。ポリマー系に2つ以上の化学的に異なるポリマーが存在する場合でさえ、その化学的性質のために、ポリマー系が、化学的に同一のポリマーであるように挙動することが好ましい。したがって、上記のパラメーターとは、ポリマー系の、分子量分布、ガラス転移温度、融解熱、およびピーク融点(Tm)の結果をいう。
【0030】
特定の態様において、本発明のポリマー系は、ゲル浸透クロマトグラフィで測定して、1.5〜5.0の分子量分布Mw/Mnを有する。1つの態様において、ポリマー系は1.6〜4.0;または1.7〜3.3;または2.0〜3.0;または2.2〜2.8の分子量分布Mw/Mnを有する。
【0031】
本発明のポリマー系は、その破断点伸びにより、さらに特徴付けることができる。上記のポリマー系は、EN ISO 527-3に従い測定して、少なくとも50%の破断点伸びを有することが好ましい。1つの態様において、ポリマー系は、少なくとも100%;または少なくとも200%;または少なくとも400%;または少なくとも600%;または少なくとも800%;または少なくとも1000%;または少なくとも1100%;または少なくとも1200%;または少なくとも1400%の破断点伸びを有する。別の態様において、上記のポリマーの破断点伸びは、50%〜2000%、好ましくは1000%〜1800%である。
【0032】
別の態様において、本発明のポリマー系は、EN ISO 527-3に従い測定して、少なくとも2.5MPaの破断点引張り強さを有する。特定の態様において、上記のポリマー系は、少なくとも5MPa;または少なくとも6MPa;または少なくとも8MPa;または少なくとも11MPaの破断点引張り強さを有する。別の態様において、上記のポリマー系の破断点引張り強さは、2.5MPa〜20MPa、好ましくは10MPa〜18MPaである。
【0033】
さらなる態様において、本発明のポリマー系は、DSC(示差走査熱量測定)で測定して、5〜−65℃、好ましくは−5〜−60℃、より好ましくは−10〜−50℃のガラス転移温度を有する。
【0034】
特定の態様において、本発明のポリマー系は、30〜90J/gの結果として得られた融解熱を有する。1つの態様において、ポリマー系は30〜80J/g;または35〜60J/g;または40〜50J/gの融解熱を有する。
【0035】
別の態様において、本発明のポリマー系は、125℃〜165℃の間に含まれる、結果として得られたピーク融点(Tm)を有する。別の態様において、ポリマー系は、130〜160℃;または131〜150℃;または約132〜145℃;または133〜140℃のピーク融点(Tm)を有する。
【0036】
上記のように、変性ポリマー物質を、剪断応力下で、ポリマーブレンド出発物質の溶融粘度を少なくとも1つのラジカル供与体で低下させるプロセスにより得る。分解プロセスの間、ポリマー鎖の制御された切断が起こり、これにより本発明のポリマー系がもたらされる。ポリマー系および該ポリマー系を含む接着剤は、未処理ポリマーブレンドよりも、または未処理ポリマーブレンド出発物質を含む接着剤よりも、高い柔軟性およびより良好な接着性を示す。
【0037】
本明細書中で用いる用語「エラストマーゴム」(EPR)とは、エチレンおよびプロピレンのエラストマーコポリマー、または官能性モノマーで変性させた前記コポリマーをいう。特に、用語「エラストマーゴム」は、実質的な伸びを受けた後、材料を伸長させる応力を解放すると、ほぼ初期の寸法に戻ることができるという、材料の特性を反映する。本発明のエラストマーゴムは、22℃の温度において、1分間に与えた100%の歪から回復する際、1分後に50%未満、例えば30%未満または10%未満の永久歪を有するのが好ましい。
【0038】
本明細書中で用いる用語「オレフィンポリマー」とは、重合形態の1以上のα−オレフィンを含むポリマーをいう。
【0039】
1つの態様において、本発明のエラストマーゴムは、少なくとも40重量%のエチレン、より好ましくは少なくとも50重量%のエチレン、最も好ましくは少なくとも60重量%のエチレン、例えば少なくとも70重量%のエチレンを含有する、エチレンおよびプロピレンのコポリマーを含む。
【0040】
得られる接着剤が高い凝集強さおよび靭性を示すため、少なくとも40重量%のエチレンを含むエチレン−プロピレンゴムを含むポリマー系の使用は有利である。
【0041】
別の態様において、本発明のエチレン−プロピレンエラストマーゴムは、35重量%未満のエチレン、より好ましくは32重量%未満のエチレン、最も好ましくは30重量%未満のエチレンを含有する、エチレンおよびプロピレンのコポリマーを含む。
【0042】
特に、エチレン−プロピレンゴムは、エチレン−プロピレンゴムの全量に対して、10〜35重量%のエチレン、好ましくは15〜32重量%のエチレン、特に好ましくは20〜30%のエチレンを含む。
【0043】
得られる接着剤が高い柔軟性および高い破断点伸びを示すため、35重量%未満のエチレンを含むエチレン−プロピレンゴムを含むポリマー系の使用は有利である。
【0044】
さらなる態様において、本発明のエラストマーゴムは、15〜50重量%のプロピレンを含有するエチレンおよびプロピレンのコポリマーを含む。
【0045】
別の態様において、本発明のエチレン−プロピレンゴムは、65〜90重量%、好ましくは70〜80重量%のプロピレンを含有する、エチレンおよびプロピレンのコポリマーを含む。
【0046】
特定の態様において、本発明のエラストマーゴムは、少なくとも40重量%、例えば少なくとも50重量%のエチレンおよび15〜50重量%のプロピレンを含有する、エチレンおよびプロピレンのコポリマーを含む。
【0047】
あるいは、本発明のエチレン−プロピレンゴムは、10〜35重量%のエチレンおよび65〜90重量%のプロピレンを含むこともできる。
【0048】
さらに、本発明のエラストマーゴムは、官能性モノマーで変性したエチレンおよびプロピレンのコポリマーを含むことができる。官能性モノマーは、カルボン酸基、無水物基、ヒドロキシル基、エーテル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基およびエステル基を含む1つ以上の官能基を含有する不飽和有機化合物の種類を含む。
【0049】
本発明のエラストマーゴムを、エラストマーターポリマーから選択することもできる。好ましいエラストマーターポリマー(EPDM)は、40〜80重量%のエチレン、15〜50重量%、好ましくは20〜45重量%のプロピレン、および2〜15重量%のジエンを含む。ジエンは、1,4-ヘキサジエン、ノルボルナジエン、エチリデン−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ブタジエンおよびイソプレンからなる群より選択することができる。本明細書中で用いられるEPDMは、本明細書中で上記した官能基を含有するターポリマーの官能基変性したものも含む。EPRおよびEPDMゴムは、商品名VistalonでExxon Chemical Companyから、および商品名KeltonでDMS Polymers, Inc.から、市販され入手できる。無水物基を含有する官能基変性EPDMは、商品名ExxelorでExxon Chemical Companyから市販されている。
【0050】
エラストマーゴム(a)のコモノマー含量は、エラストマーゴム(a)および半結晶性オレフィンポリマー(b)の重量比率を考慮し、半結晶性オレフィンポリマー(b)の(FTIRで)測定したコモノマー含量および最終ポリマー系から計算することができる。
【0051】
好ましい態様において、半結晶性オレフィンポリマーは、1〜35重量%で存在するエチレンおよび65〜99重量%で存在するC3-C20α−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1つのコモノマーのコポリマーである。好ましいC3-C20のα−オレフィンとしては、C3-12のα−オレフィン、例えばプロピレン、ブチレン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、ペンテン、ヘプテン、ノネン、4-メチル-ペンテン-1,3-メチル-ペンテン-1,3,5,5-トリメチル-ヘキセン-1、および5-エチル-1-ノネンが挙げられる。
【0052】
本発明の実施で用いる好ましい半結晶性オレフィンコポリマーは、一般には、コポリマーの少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも約80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%の量の、プロピレンに由来するユニットを含む。エチレンに由来するユニットの一般的な量は、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%であって、これらのコポリマーに存在するエチレンに由来するユニットの最大量は、コポリマーの35重量%を超えず、好ましくは30重量%を超えず、より好ましくは20重量%を超えない。上記のC4-C20のα−オレフィンに由来するユニットの量は、存在する場合、一般的には、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%であって、上記のC4-C20のα−オレフィンに由来するユニットの一般的な最大量は、コポリマーの35重量%を超えず、好ましくは30重量%を超えず、より好ましくは20重量%を超えない。エチレンおよびいずれかのC4-C20のα−オレフィンに由来するユニットの合計は、一般的には、コポリマーの40重量%を超えず、好ましくは30重量%を超えず、より好ましくは約20重量%を超えない。
【0053】
オレフィンポリマーについて用いる用語「半結晶性」とは、固体状態において結晶性領域および非晶質領域の両方を含有するポリマー物質をいう。結晶性領域において、ポリマーの分子鎖は全て、その構造が、結晶を記載するのに用いる最小の構造単位である単位格子により完全に特徴付けることができる、規則正しい三次元配列に配置される。一方で、非晶質ポリマーは、固体状態において規則正しい三次元構造を有さない。その分子鎖は空間において完全にランダムに配置される。半結晶性ポリマーは、融点(Tm)の有無、および加熱に際して結晶状態から液体状態への変化に由来して関連するエンタルピーまたは融解熱(ΔHm)を観察することによって、完全に非晶質なポリマーから容易に区別することができる。全ての半結晶性ポリマーは融点を示すが、非晶質ポリマーについては融点が存在しない。非晶質ポリマーは、ガラス転移温度Tg付近の狭い温度範囲においてガラス状固体からゴム状弾性状態への転移を受ける。ガラス転移温度Tgを融点Tmと混同すべきではない。結晶性物質の融解転移とは異なり、非晶質ポリマーのガラス転移はそれに関連するエンタルピー変化(ΔH)を有さない。
【0054】
上記で定義した半結晶性ポリマーとは、しばしば、取引上では結晶性ポリマーと称されることを理解されたい。実験室にて小スケールで調製した単結晶を除き、商業的世界では完全な結晶性ポリマーに遭遇せず、全てのいわゆる結晶性ポリマーは、厳密に言えば、半結晶性である。したがって、本明細書中に記載した半結晶性ポリマーの定義は、用語「結晶性ポリマー」を含む。
【0055】
半結晶性ポリマーは結晶性領域および非晶質領域の両方を含有するので、結晶の融解転移に加えて、物質の非晶質領域に関連するガラス転移を示すことができる。ガラス転移は融点未満の温度で起こる。
【0056】
融点Tm、エンタルピーまたは融解熱(ΔHm)およびガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。この技術は当業者に周知であり、科学文献によく記載されている。
【0057】
本発明で用いる用語「半結晶性オレフィンポリマー」とは、特に好ましくは、DSCで測定して、20〜95J/g、より好ましくは25〜90J/g、最も好ましくは30〜80J/gの融解熱を有するオレフィンポリマーをいう。
【0058】
上記種類の半結晶性オレフィンポリマーは、多数の商業的供給源から購入することができ、例えばHuntsman Corporation製の商品名Rexflexでのポリプロピレン系半結晶性オレフィンポリマーである。
【0059】
少なくとも1つの本発明のポリマーブレンドは、約5〜95重量%のエラストマーゴムまたはエチレン−プロピレンゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンモノマーターポリマーゴムからなる群より選択されるエラストマーゴムのブレンド、および約5〜95重量%の半結晶性オレフィンポリマーまたは半結晶性オレフィンポリマーのブレンドからなることが好ましい。
【0060】
本発明の実施で用いる好ましいポリマーブレンドは、5〜80重量%、好ましくは15〜75重量%、より好ましくは30〜60重量%のEPRおよび/またはEPDMゴム含有量を有する。あるいは、50〜80重量%、好ましくは60〜75重量%、より好ましくは65〜70重量%のEPRおよび/またはEPDMゴム含有量を有する。
【0061】
少なくとも1つのポリマーブレンドは、最も好ましくは15〜70重量%のEPR、またはEPDM、またはその混合物、および30〜85重量%の少なくとも1つの半結晶性オレフィンポリマーを含有する。特に好ましい態様において、本発明のポリマー系は、30〜70重量%のEPR、またはEPDM、またはその混合物、および30〜70重量%の少なくとも1つの半結晶性オレフィンポリマーを含有する。
【0062】
ゴムおよび半結晶性ポリマーを、予め混合して、ポリマーブレンドまたはポリマーアロイを形成することができる。ポリマーブレンドを、押出機またはバンバリーミキサー等を通じて、EPR/EPDMゴムと半結晶性オレフィンポリマーとの機械的混合により調製することができる。
【0063】
単一の反応器または一連の並列反応器中での、段階的重合により、その場で作製することもできる。そのようなインサイチュ反応器プロセスの例は、LyondellBasellにより使用されるCatalloyプロセスである。このプロセスは、並列した複数の気相反応器を使用するため、それぞれの反応器において、異なるモノマー供給原料の別々の重合が可能となる。それぞれの反応器を、他のものと独立して運転するため、それぞれの反応器の生成物は、他の反応器で製造されたものと、かなり異なる。各反応器からの生成物を、混合またはブレンドし、重合プロセスから、アロイ化ポリマーを、直接作ることができる。記載した多段階重合プロセスは、例えば、次の公開文献:欧州特許出願公開第0472946号、欧州特許出願公開第0477662号、欧州特許出願公開第0483675号および欧州特許出願公開第0489284号に開示されている。
【0064】
Catalloyプロセスで製造したポリマーブレンドまたはポリマーアロイの例は、EPRおよび半結晶性ポリプロピレンのブレンドまたはアロイである熱可塑性オレフィン(TPO)である。Catalloyプロセスで製造したブレンドまたはアロイは、LyondellBasell社から商品名表示Adflex、SoftellおよびHifaxで、市販され入手可能である。
【0065】
本発明のポリマー系を、直接、接着剤として使用することができ、または、他の成分とブレンドして接着剤を形成することができる。
【0066】
本発明の接着剤において、1つ以上の粘着付与剤を、本発明のポリマー系とともに用いてもよい。本明細書中で用いるように、用語「粘着付与剤」とは、本発明の接着剤に粘着を付与するのに有用な1つ以上の化合物をいう。適当な粘着付与剤の例は、限定されるものではないが、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族変性脂肪族炭化水素樹脂、水素化ポリシクロペンタジエン樹脂、ポリシクロペンタジエン樹脂、ロジンガム、ロジンエステルガム、ウッドロジン、ウッドロジンエステル、トール油ロジン、トール油ロジンエステル、ポリテルペン、芳香族変性ポリテルペン、テルペンフェノール類、芳香族変性水素化ポリシクロペンタジエン樹脂、水素化脂肪族樹脂、水素化脂肪族性芳香族樹脂、水素化テルペンおよび変性テルペン、水素化ロジン酸、および水素化ロジンエステルが挙げられる。いくつかの態様において、粘着付与剤は水素化されている。
【0067】
他の態様において、粘着付与剤は非極性である。非極性とは、粘着付与剤が極性基を有するモノマーを実質的に含まないことを意味する。極性基は存在しないことが好ましいが、存在する場合、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、さらにより好ましくは0.5重量%以下で存在する。いくつかの態様において、粘着付与剤は、80℃〜150℃、好ましくは100℃〜130℃の軟化点(Ring and Ball, ASTM E-28によって測定)を有する。別の態様において、樹脂は液状であって、10〜70℃のR&B軟化点を有する。
【0068】
粘着付与剤または変性剤として用いる好ましい炭化水素樹脂は以下を含む:
1. C5/C6テルペン樹脂、スチレンテルペン、α-メチルスチレンテルペン樹脂、C9テルペン樹脂、芳香族変性C5/C6、芳香族変性環状樹脂、芳香族変性ジシクロペンタジエン系樹脂またはその混合物のような樹脂。一般的には、これらの樹脂は以下のモノマー:(1-3ペンタジエン、イソプレン等のような)C5ジオレフィン;(2-メチルブテン、シクロペンテン等のような)C5オレフィン;(ヘキセンのような)C6オレフィン、(スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、メチルインデン等のような)C9ビニル芳香族;(ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン等のような)環状体;および/または(リモネン、カレン等のような)テルペンの1つ以上を含有する組成物のカチオン重合から得られる。
2. ジシクロペンタジエンの熱重合、および/または、シクロペンタジエンおよび/またはメチルシクロペンタジエンのダイマーまたはオリゴマーと、任意に、(スチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、メチルインデンのような)ビニル芳香族との熱重合によって得られる樹脂。
【0069】
重合および未反応物質の分離後に得られた樹脂は、所望により、水素化することができる。粘着付与剤は、存在する場合、一般的には、接着剤の全重量に対して約1〜約80重量%、より好ましくは2〜40重量%、さらにより好ましくは3〜30重量%で存在する。
【0070】
別の態様において、1つ以上のワックスを、本発明の接着剤中のポリマー系とともに用いる。ワックスは、好ましくは、極性ワックス、非極性ワックス、フィッシャートロプシュワックス、酸化フィッシャートロプシュワックス、ヒドロキシステアラミドワックス、官能化ワックス、ポリプロピレンワックス、例えばC3およびC2のα−オレフィンに基づくか、またはC3およびC4-20のα−オレフィンに基づくコポリマーのようなポリプロピレンホモポリマーおよび/またはポリプロピレンコポリマー、酸化ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ワックス変性剤、およびそれらの組合せから選択される。
【0071】
適当なワックスの例は、限定されるものではないが、極性ワックス、非極性ワックス、フィッシャートロプシュワックス、酸化されたフィッシャートロプシュワックス、ヒドロキシステアルアミドワックス、官能化ワックス、C3およびC2α−オレフィンに基づくコポリマーのような、ポリプロピレンホモポリマーおよび/またはポリプロピレンコポリマーのようなポリプロピレンワックス、酸化されたポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、酸化されたポリエチレンワックス、ワックス変性剤、非晶質ワックス、カルナウバワックス、ヒマシ油ワックス、微結晶ワックス、蜜蝋、カルナウバワックス、カストールワックス(castor wax)、鯨蝋、植物ワックス、キャンデリラワックス、木蝋、オウリキュリーワックス、ダグラスファーバークワックス、米糠ワックス、ホホバワックス、ヤマモモワックス、モンタンワックス、ピートワックス、オゾケライトワックス、セレシンワックス、石油ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、化学的に変性された炭化水素ワックス、置換アミドワックス、ならびにその組合せおよび誘導体が挙げられる。
【0072】
しかしながら、いくつかの態様において、ワックスは望まれないこともあり、接着剤の重量に基づいて、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満で存在する。他の態様において、ワックスは、接着剤の全重量に基づいて、一般的に約1〜約50重量%、より好ましくは2〜40重量%、さらにより好ましくは3〜30重量%で存在する。
【0073】
別の態様において、本発明の接着剤は、本発明の少なくとも1つのポリマー系、および可塑剤、充填剤、油、安定化剤、抗酸化剤、顔料、染料、ポリマー添加剤、脱泡剤、防腐剤、増粘剤、レオロジー変性剤、保湿剤、マスターバッチ、および水などの当該分野で既知の一般的な添加剤を含む。
【0074】
好ましい可塑剤としては、鉱油、ポリブテン、フタレート、ベンゾエート、アジピン酸エステル等が挙げられる。特に好ましい可塑剤は、フタレート、例えば、ジ−イソ−ウンデシルフタレート(DIUP)、ジ−イソ−ノニルフタレート(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)などを含む。特に好ましい油としては脂肪族ナフテン系油が挙げられる。
【0075】
好ましい充填剤としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、二酸化ケイ素、カーボンブラック、砂、ガラスビーズ、鉱物骨材、タルク、クレー、硫酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、チャイナクレー、カオリン、グリマー、Mg酸化物および水酸化物およびAl酸化物および水酸化物、ガラス繊維、合成繊維が挙げられる。
【0076】
適当な油としては、鉱油、脂肪族油、芳香族油、オレフィンオリゴマーおよび低分子量ポリマー、ならびに植物油および動物油およびそのような油の誘導体が挙げられる。使用できる石油由来油は、比較的小さい割合の芳香族炭化水素のみを含有する比較的高沸点の物質である。これに関し、芳香族炭化水素は、芳香族炭素原子の分率により測定して、油の好ましくは30%未満、さらに特に15%未満である。より好ましくは、油は実質的に非芳香族であり得る。オリゴマーは、約350〜約10,000の平均分子量を有する、ポリプロピレン、ポリブテン、水素化ポリイソプレン、水素化ポリブタジエン等であってよい。適当な植物油および動物油としては、通常の脂肪酸のグリセロールエステルおよびその重合生成物が挙げられる。
【0077】
しかしながら、いくつかの態様において、油は望まれないこともあり、接着剤の重量に対して、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%、より好ましくは0.5重量%未満で存在する。他の態様において、油は、接着剤の全重量に対して、一般的には約1〜約30重量%、より好ましくは10〜28重量%、さらにより好ましくは18〜25重量%で存在する。
【0078】
好ましい抗酸化剤としては、チオエステル、ホスフェート、ヒンダードフェノール、テトラキス(メチレン3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ−第三級ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル2,4,6-トリス(3,5-tertブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ジラウリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(β-ラウリルチオプロピオネート)、アルキルアリールジホスフェートおよびアルキルアリールポリホスフェート、チオホスファイト、およびその組合せまたは誘導体が挙げられる。
【0079】
他の好ましい添加剤としてはブロック、抗ブロック、加工助剤、UV安定化剤、中和剤、潤滑剤、界面活性剤および/または核形成剤が挙げられ、接着促進剤が存在してもよい。
【0080】
好ましい添加剤としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、ポリジメチルシロキサン、タルク、染料、ステアリン酸カルシウム、カーボンブラック、低分子量樹脂およびガラスビーズが挙げられる。好ましい接着促進剤としては、極性酸、ポリアミノアミド(例えば、Henkelから入手可能なVersamid 115、125、140)、ウレタン(例えば、イソシアネート/ヒドロキシ末端化ポリエステル系、例えば結合剤 TN/Mondur Cb-75 (Miles社製))、カップリング剤(例えば、シランエステル(Dow Corning製のZ-6020))、チタネートエステル(例えば、Kenrich製のKr-44)、反応性アクリレートモノマー(例えば、Sartomer製のsarbox SB-600)、金属酸塩(例えば、Sartomer製のSaret 633)、ポリフェニレンオキシド、酸化ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、および無水物変性ポリオレフィンが挙げられる。
【0081】
さらに、本発明の接着剤は、ホモポリ-α-オレフィン、α-オレフィンのコポリマー、ジオレフィンのコポリマーおよびターポリマー、エラストマー、ポリエステル、ブロックコポリマー、エステルポリマー、アクリレートポリマー、アルキルアクリレートポリマーおよび酢酸ビニルポリマーから選択される、1つ以上のポリマー添加剤を含むことができる。
【0082】
1つの態様において、本発明の接着剤は、15〜95重量%の、少なくとも1つの本発明のポリマー系を含む。接着剤が、少なくとも1つのポリマー系を、20〜80重量%の量で含むことが好ましい。用途プロフィールに応じて、本発明の接着剤は、少なくとも1つのポリマー系を30〜50重量%の量で;または15〜30重量%の量で;または25〜65重量%の量で含むことができる。
【0083】
本発明の接着剤の1つの典型製剤は、
a)本発明の少なくとも1つのポリマー系、20〜80重量%;
b)少なくとも1つの粘着付与剤、5〜80重量%;
c)少なくとも1つのワックス、0〜50重量%;および
d)少なくとも1つの添加剤、0〜30重量%
を含む。
【0084】
本発明の接着剤の別の典型製剤は、
a)本発明の少なくとも1つのポリマー系、20〜80重量%;
b)少なくとも1つの粘着付与剤、5〜80重量%;
c)少なくとも1つのワックス、0〜50重量%;および
d)少なくとも1つの添加剤、0〜30重量%
を含み、ここで、成分c)およびd)の総和は、前記接着剤の、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは5〜15重量%を含む。
【0085】
本発明の少なくとも1つのポリマー系の、特別な特性のために、比較的高いポリマー含量で低い粘度を示す接着剤を製剤化することができる。
【0086】
1つの態様において、接着剤は、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%の、少なくとも1つの本発明のポリマー系を含み、ここで、前記接着剤は、示した適用温度で測定して、100〜500,000mPasの粘度を有する。
【0087】
mPasで表される粘度は、示した適用温度で、(Brookfield Engineering Laboratories, Inc. Stoughton, Mass.USAから市販されている)Brookfield Thermosell RVT粘度計で測定することができる。100.000mPasまでの粘度については、スピンドル27を用い、より高い粘度はスピンドル29で測定した。
【0088】
用語「適用温度」とは、接着剤を1つ以上の基材に適用する温度を示す。接着剤の適用温度が90℃〜200℃であることが好ましい。
【0089】
適用プロフィールに応じて、少なくとも30重量%の少なくとも1つの本発明のポリマー系を含む、本発明の接着剤は、100〜500,000mPas、好ましくは100〜100,000mPasの粘度を有する。
【0090】
本発明の好ましい接着剤は、90〜130℃の適用温度および150〜5,000mPasの粘度;または100〜200℃の適用温度および500〜10,000mPasの粘度;または130〜200℃の適用温度および10,000〜500,000mPasの粘度を有する接着剤から選択される。
【0091】
本発明の接着剤は、限定されるものではないが、使い捨て用品、パッケージング、ラミネート、ホットメルト接着剤、感圧接着剤、テープ、ラベル、木材結合剤、紙装、不織布、道路マーキング、反射被覆物等を含む、いずれの接着剤用途にも使用することができる。
【0092】
前記接着剤の用途は、限定されるものではないが、ローラー、ノズル、スプレーユニット等での適用を含む、いずれの接着剤適用方法によっても行うことができる。
【0093】
好ましい態様において、本発明の接着剤は使い捨てオムツおよびナプキンシャーシ構築、使い捨て商品の印刷物加工における弾性付着、パッケージング、ラベリング、製本、木工、および他の組み立てに適用することができる。特に好ましい用途としては、赤ん坊オムツ、レッグエラスティック、オムツ前面テープ、オムツレッグカフ、オムツシャーシ構築、オムツコア安定化、オムツ液体移動層、オムツ外側カバーラミネーション、オムツ弾性カフラミネーション、女性ナプキンコア安定化、女性ナプキン接着ストリップ、産業用濾過結合、産業フィルター材料ラミネーション、フィルターマスクラミネーション、手術衣ラミネーション、手術用被布ラミネーション、および生鮮食料品パッケージングが挙げられる。さらに、本発明の接着剤は、カーペット、人工芝等の裏面に対する被覆物として用いることができる、したがって、本発明はカーペット、人工芝等の裏面に被覆物を提供するプロセスにも関し、前記接着剤を、カーペット、人工芝等の裏面へ、被覆物として適用する。
【0094】
上記した接着剤を、いずれの基材に適用してもよい。好ましい基材としては、木、例えばパーチクルボード、木質プラスチック複合体、ベニヤペーパーなど、メラミン含浸紙のような紙系材料、ボール紙、プラスチック、熱可塑性物質、ゴム、金属ホイル(例えばアルミニウムホイルおよびスズホイル)、金属化表面、布、不織布(特に、ポリプロピレンスパンボンド繊維または不織布)、スパンボンド繊維、ボール紙、石、プラスター、(二酸化ケイ素をフィルム表面に蒸発させることによって適用された二酸化ケイ素(SiOx)被覆物を含めた)ガラス、フォーム、岩、セラミック、フィルム、ポリマーフォーム(例えばポリウレタンフォーム)、インク、染料、顔料、PVDC等で被覆された基材、またはその組合せが挙げられる。
【0095】
さらなる好ましい基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、またはブレンドに適した上記のポリマーのいずれか、および充填剤との複合体、ガラス繊維等が挙げられる。
【0096】
好ましい基材は、天然材料または合成材料を含む生分解性フィルムの群より選択することもできる。
【0097】
上記基材、および/または本発明のポリマーのいずれも、コロナ放電処理、火炎処理、電子線照射、ガンマ照射、マイクロ波処理、プラズマ処理、またはシラン処理してもよい。
【0098】
さらに、上記基材を、少なくとも1つの接着促進剤で部分的にまたは十分に被覆することができる。
【0099】
本発明の別の目的は、本発明の接着剤を含むパッケージング接着剤である。好ましくは、本発明の接着剤はパッケージング接着剤であり、またはパッケージング接着剤として用いることができる。
【0100】
パッケージングおよび/またはラベリング用の接着剤の1つの典型製剤は、
a)本発明の少なくとも1つのポリマー系、15〜80重量%;
b)少なくとも1つの粘着付与剤、10〜70重量%;
c)少なくとも1つのワックス、0〜40重量%;および
d)少なくとも1つの添加剤、0〜30重量%
を含む。
【0101】
パッケージングおよび/またはラベリング用の接着剤の別の典型製剤は、
a)本発明の少なくとも1つのポリマー系、30〜50重量%;
b)少なくとも1つの粘着付与剤、20〜45重量%;
c)少なくとも1つのワックス、5〜30重量%;および
d)少なくとも1つの添加剤、0〜30重量%
を含む。
【0102】
本発明のさらなる目的は、上記のパッケージング接着剤を含むパッケージであり、パッケージング接着剤を、紙、板紙、容器用板紙、タグ用板紙、段ボール、チップボード、クラフト紙、ボール紙、繊維板、プラスチック樹脂、金属、金属合金、ホイル、フィルム、プラスチックフィルム、ラミネート、カートン、容器、クレート、ケース、段ポール箱、トレイ、穀物製品、クラッカー製品、ビールパッケージング、冷凍食品、紙バッグ、飲用カップ、ミルクカートン、ジュースカートン、飲用カップ、および製品出荷用のコンテナからなる群より選択される1つ以上のパッケージング要素の、少なくとも一部に適用する。
【0103】
本発明の別の目的は、本発明の接着剤を含む使い捨て製品であり、前記接着剤を、不織布、不織布ウェブ、非弾性不織布、弾性不織布、ネックボンデッドラミネート、ストレッチボンデッドラミネート、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンドラミネート、ポリプロピレンスパンボンド層、ポリエチレン層、ポリエチレン−ポリプロピレン結合スパンボンド層、弾性ストランド、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン、スチレン−コ−ブタジエン−スチレン、ポリウレタン、織布、ポリプロピレン、ポリエステル、体液非浸透性バックシート、体液非浸透性層、体液浸透性層、体液浸透性カバー、吸収剤、ティッシュ、エラストマー材料、高吸収性ポリマー、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルム、弾性アタッチメントテープ、正面裏打ちテープ、木材、紙、バリアーフィルム、フィルムラミネート、不織布複合体、テキスタイル材料、織布材料、耐久性ファブリック、吸収剤、エラストマーストランド、エラストマーウエブ、ティッシュ、フィルム、カバーストック材料、不織布ポリエチレン、開口ポリエチレン、高吸収性ポリマー、フィラメント、多孔性ウェブ、繊維、ループファスナー材料、スパンボンド不織製品、リンネル、弾性側面パネル、ファスニングテープ、弾性バンド、レーヨン、ナイロン、セルロースパルプ、セルロースフラフ、高吸収性バット、オムツ、トレーニングパンツ、衛生ナプキン、パンティーライナー、失禁ウェアー、ベッドパッド、外科ガウン、外科ドレープ、げっ歯類トラップ、フックアンドループファスナー、衣類、医療衣類、および水着からなる群より選択される1つ以上の使い捨て要素の少なくとも一部に適用する。
【0104】
使い捨て要素用の接着剤の1つの典型製剤は、
a)本発明の少なくとも1つのポリマー系15〜80重量%;
b)の少なくとも1つの粘着付与剤、10〜70重量%;
c)少なくとも1つのワックス、0〜5重量%;および
d)少なくとも1つの添加剤、0〜30重量%
を含む。
【0105】
使い捨て要素用の接着剤の別の典型製剤は、
a)本発明の少なくとも1つのポリマー、20〜60重量%;
b)少なくとも1つの粘着付与剤、30〜65重量%;
c)少なくとも1つのワックス、0〜5重量%;および
d)少なくとも1つの添加剤、0〜25重量%
を含む。
【0106】
本発明のさらなる目的は、本発明の接着剤を含むフィルムである。1つの態様において、フィルムは、さらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、そのホモポリマー、およびそのコポリマーからなる群より選択される、1つ以上のさらなるポリマー成分を含む。
【0107】
本発明のさらなる目的は、本明細書中に記載された接着剤を含む感圧接着剤である。本発明の接着剤は、感圧接着剤であるか、または、感圧接着剤として用いることができることが好ましい。
【0108】
本明細書中で用いる「感圧接着剤」は、室温(約25℃)、または約室温において、温和な圧力下で基材を十分濡らし、かつ有用な結合を形成する能力を有する接着剤組成物である。本明細書中で用いる用語「有用な結合」は、基材用途に応じて異なり、接着および凝集強さの対応するバランスをいう。
【0109】
本発明の別の目的は、本発明の接着剤を含むスパイングルー(spine glue)またはサイドグルー(side glue)である。
【0110】
本発明のさらなる目的は、2つ以上の層を、層間に存在する本発明の接着剤と組合せて含むラミネート製品である。
ラミネート製品は、適当なバインダーで互いに結合した層またはラミナからなる。ラミナは、通常、紙または不織布のような連続シート形態で、容易に入手可能な材料である。バインダーは、主にフェノール樹脂である合成樹脂であり、ベースラミナに溶媒被覆させるかまたは含浸させる。乾燥後、いくつかのラミナを積層し、全体を熱および圧力下で固定させて、その機械的、電気的、化学的または美的品質のために用いる剛性シートまたはパネルを形成する。産業において、ラミナは、その電気的特性、衝撃強度、着用品質、または化学的抵抗性のために用いられる。ラミナはエレクトロニクス用途、電気スイッチ、ギア等で用いられる。機能的には極めて重要であるが、それらはめったに顕著ではない。
【0111】
ラミネート製品は、合成樹脂状物質のマトリックスを通じて延ばした、補強性繊維状ウェブからなることができる。ウェブおよび樹脂の選択により、ラミネート製品の特性が決まり、かなりの範囲で、製造で用いるプロセスが決まる。本明細書中で用いる用語「ラミネート製品」には、熱および/または圧力に付されて、多重層構造を形成するいずれの多重層製品もが含まれる。ラミネート層はシート状物質であり、例えば、以下に記載する粘着付与剤などの樹脂で処理してもよく、熱および圧力によって堅固させてよい。一般的な層は紙、織布、マット、フェルトおよび同様の材料を含む。木質ベニヤは明らかな例外であるが、この層は通常は連続ロールの形態である。ラミネーティング層は、形態(紙、織布等)または構成成分によって分類され、吸収性有機セルロースから非吸収性無機ガラスまで種々であり得る。それぞれの層は、個々に、フィルム層、被覆層、繊維状層、フォーム層、基材層および/または他の適当な層とすることができる。ラミネートの各層は木材、プラスチック、紙、ゴム、熱可塑性物質、ボール紙、金属合金を含めた金属、配合材料、アルミニウムホイルおよびスズホイルのような金属ホイル、金属化表面、および動的に加硫されたアロイ、布、スパンボンド繊維、石、プラスター、石、プラスター、二酸化ケイ素をフィルム表面に蒸発させることによって適用された二酸化ケイ素(SiOx)被覆物を含めたガラス、岩、セラミック、フィルム、フォーム、特にポリプロピレンスパンボンド繊維を含めた不織布、およびインク、染料、顔料、PVDC等で被覆した基材、およびそのいずれかの組合せ、ブレンドおよび混合物のような、同一または異なる材料で形成されていてよい。さらに、それぞれの層は、意図した使用に応じて厚みを変えることができる。
【0112】
1つの態様において、層は単独または本明細書中に記載する接着剤と組み合わせて、以下のうちの1つ以上を含んでよい。
【0113】
本発明の別の目的は、本発明の接着剤を含むホットメルト接着剤である。本発明の接着剤は、ホットメルト接着剤であるかまたはホットメルト接着剤として用いることができることが好ましい。
【0114】
ホットメルト接着剤は、雰囲気温度で固体として存在し、熱を加えることにより粘着性の液体に変換させることができる。ホットメルト接着剤を、一般的には、溶融状態で基材に適用する。
【0115】
1つの態様において、ホットメルト接着剤は、−20℃〜250℃の固定温度、および−20℃〜250℃の開放温度を有する。さらに、別の局面において、ホットメルト接着剤は、275℃以下、または120℃以下の曇点を有する。より好ましくは、ホットメルト接着剤は100℃以下の曇点を有する。
【0116】
本明細書中に記載されたホットメルト接着剤は、当該分野で周知の慣用方法を用いて調製することができる。例えば、少なくとも1つのポリマー系、粘着付与剤、および所望の任意の成分、例えば可塑剤油、ワックス、液状樹脂粘着付与剤等を、高温で、低剪断混合下または高剪断混合下でブレンドして、流動溶融物を形成することができる。混合温度は特定の接着剤製剤に依存し、一般には、約130℃〜約200℃の範囲であり、約150℃〜約160℃が一般的に適当な範囲である。
【0117】
さらなる目的は、木工産業の製品、例えば、本発明の接着剤を含む、家具、ドア、窓、窓枠、パネルフローリング、プロファイルおよび他の家具部品である。
【0118】
特定の態様において、本発明の接着剤を、木工で用いることができる。便宜の目的で、用語「木工」は、木工産業の製品、例えば、家具、ドア、窓枠、パネル、フローリング、プロファイルおよび他の家具部品が、当該基材の少なくとも1つに適用される接着剤で基材を接合することによって作製されるプロセスを記載するのに用いる。使用する一般的なプロセスは、エッジバンディング、プロファイルラッピングおよび組み立てである。
【0119】
木工用接着剤の1つの典型製剤は、
a)本発明の少なくとも1つのポリマー系、20〜80重量%;
b)少なくとも1つの粘着付与剤、10〜50重量%;
c)少なくとも1つのワックス、0〜20重量%;および
d)少なくとも1つの添加剤、0〜50重量%
を含む。
【0120】
木工用の接着剤の別の典型製剤は、
a)本発明の少なくとも1つのポリマー系、50〜70重量%;
b)少なくとも1つの粘着付与剤、20〜40重量%;
c)少なくとも1つのワックス、0〜15重量%;および
d)少なくとも1つの添加剤、0〜30重量%
を含む。
【0121】
本発明のさらなる目的は、本発明の接着剤およびバインダー要素を含む製本製品であり、接着剤を、バインダー要素の少なくとも一部に適用する。
【0122】
特定の態様において、本発明の接着剤を製本に用いることができる。便宜の目的で、用語「製本」は、バインダー要素を有する本を製造するプロセスであって、接着剤を、バインダー要素の少なくとも一部に適用するプロセスを記載するのに用いる。しかしながら、本明細書中に記載される態様は、本のみをとじるのに適当な接着剤組成物に限定されない。本明細書中に用いる用語「本」には、文庫本、表紙が紙の本、取扱説明書、雑誌、カタログ、業界誌、名簿等の、接着剤組成物でとじられたページを含む他の製品が含まれることを意図する。
【0123】
製本用の接着剤の1つの典型製剤は、
a)本発明の少なくとも1つのポリマー系、20〜80重量%;
b)少なくとも1つの粘着付与剤、10〜70重量%;
c)少なくとも1つのワックス、0〜20重量%;および
d)少なくとも1つの添加剤、0〜30重量%
を含む。
【0124】
製本用の接着剤の別の典型製剤は、
a)本発明の少なくとも1つのポリマー系、20〜40重量%;
b)少なくとも1つの粘着付与剤、30〜65重量%;
c)少なくとも1つのワックス、5〜15重量%;および
d)少なくとも1つの添加剤、5〜30重量%
を含む。
【0125】
本発明の別の目的は、本発明の接着剤を含むシーラント組成物である。本発明の接着剤はシーラント組成物であるか、またはシーラントとして用いることができることが好ましい。
【0126】
シーラントの目的は、単一基材の2つの表面間にシールを維持し、かくして、基材を修復することであり、代替的には、基材の対の間にシールを確立し、それを維持することである。基材としてはコンクリート、屋根材、大理石、アルマイト、レンガ、モルタル、花崗岩、石灰石、磁器、ガラス、塗装された表面、木材、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ファブリック、ガスケット、パーチクルボード、プラスチック、石、石造材、パイプ、ホース、金属、配線、スキー板、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル、PVDC、紙、エチレンビニルアセテート、自動車、建物、航空機、パネル、デッキ、骨、舗装、テールゲート、ドアパネル、ホイールハウス、ロッカーパネル、防火壁、フロアヘムフランジ(floor hem flange)、トランク、およびフロアパンを挙げることができる。例えば、シーラント組成物を、液漏れのあるパイプまたは自動車の壊れたウィンドシールドを修復するために用いることができる。さらに、シーラントにより、2つ以上の表面間に負荷担持弾性ジョイントが生じ、それを通じて、空気、水および埃の通過を妨げる。
【0127】
シーラント組成物は、ギャップをうめて、修復操作中の基材の表面を結合させるのに有用であるだけでなく、第一の基材を別の基材に結合させるのに用いることができる。特に自動車産業では、本目的のためにシーラントを主に使用している。自動車は、いくつかの構造的構成要素から組み立てられ、それらは、特定の構成要素およびその構成要素が耐えなければならない応力の程度に応じて、種々の様式で共に接合される。例えば、シーラントは、ドアパネル、クォーターパネル、テールゲートおよび屋根の組み立てで利用される。一緒に溶接されるか、またはボルト止めされるなお他の自動車組立体では、その継目においてシーラント組成物が用いられる。ホイールハウス、ショックローワー(shock lower)、ロッカーパネル、防火壁、フロアヘムフランジ、フロアパンおよびトランクは、シーラントを使用する自動車適用のさらなる例である。
【0128】
〔特性把握および試験〕
特記しない限り、以下の方法を用いて、本発明のポリマーを特徴付ける。
【0129】
粘度
mPasで表される粘度は、200℃の温度にて(Brookfield Engineering Laboratories, Inc. Stoughton, Mass.USAから入手可能な)Brookfield Thermosell RVT粘度計で測定した。100.000mPasまでの粘度については、スピンドル27を用い、より高い粘度はスピンドル29で測定した。
【0130】
示差走査熱量測定(DSC)
DSC測定は、以下の条件下でTA Instruments Q2000 MDSCを用いて行った:約6〜10mgのポリマーの小さな試料を、アルミニウム試料パン中に封入し、室温で機器に投入し、−90℃まで冷却した。この温度で20分間の平衡後、10℃/分の加熱速度で、この試料を200℃まで加熱した(第一の加熱サイクル)。次いで、試料を、この温度で10分間保持して、その熱履歴を破壊した。次いで、5℃/分の冷却速度で、試料を−90℃まで冷却した。この冷却相を、以後、復帰相という。試料を−90℃にて10分間維持し、続いて、第二の加熱相において10℃/分にて250℃まで加熱した(第二の加熱サイクル)。3つの相の間で起こった全ての熱効果(例えば、ガラス転移、ピーク融点(Tm)、融解熱(ΔHm))を、続いて、実験データファイルからソフトウェアによって評価した。融解温度は、特記しない限り、第二の熱からのピーク融点である。多数のピークを呈するポリマーでは、より高い融解ピーク温度を報告した。曲線下面積を用いて、融解熱(ΔHm)を決定した。ピークの積分の結果を、試料の重量について正規化し、J/gで報告した。
【0131】
GPC法
ゲル浸透クロマトグラフィシステムは、屈折率検出器を備えたPolymer Laboratories Model PL-220機器からなるものであった。カラム区画およびカルーセル区画を150℃で操作した。3つの直線状カラム(Polymer Laboratories, Typ “Olexis”;300×8mm)を用いた。溶媒は1,2,4-トリクロロベンゼンであった。試料は、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する1.0mg/mlの濃度にて調製した。流速は1.0ml/分であった。GPCカラムセットのキャリブレーションは、狭い分子量分布のポリスチレン標準で行った。
【0132】
引張特性の測定
引張特性はZwick引張試験機(モデルZMART.PRO)で、EN ISO 527-3-3に従って測定した。全ての試料を、10mm/分の速度で測定した。試験検体を、試験の24時間前に、23℃および50パーセントの相対湿度でコンディショニングした。
【0133】
軟化点
軟化点は、Ring and Ball法を用い、ASTM E-28に従って測定した。
【実施例】
【0134】
以下の非限定的実施例とともに検討すると、本発明はより十分に理解されるであろう。
【0135】
以下の物質を用いた。
〔ポリマーブレンド出発物質〕
Adflex T100F:高含量のERRゴムを有するポリプロピレンコポリマー、LyondellBasell製
Softel CA02:高含量のERRゴムを有するポリプロピレンコポリマー、LyondellBasell製。このポリマーブレンド出発物質は、200℃で68000Pasの粘度、EN ISO 527-3で500%より大きい破断点伸び、およびEN ISO 527-3で10MPaの破断点引張り強さを有する。
【0136】
〔出発物質を含有する非エラストマーゴム(NERSM)〕
NERSM 1:ポリプロピレン/エチレンランダムコポリマー。このポリマーは、200℃で1600Pasの粘度、EN ISO 527-3で500%の破断点伸び、およびEN ISO 527−3で25MPaの破断点引張り強さを有する。
NERSM 2:ポリプロピレン/エチレン/ブテンランダムターポリマー。このポリマーは200℃で5000Pasの粘度、EN ISO 527-3で500%より大きい破断点伸び、およびEN ISO 527−3で35MPaの破断点引張り強さを有する。
【0137】
Irganox 1010:抗酸化剤、Ciba
Regalite S1100:水素化スチレン/メチルスチレン/インデンコポリマー、Eastman製
Trigonox 145-E85:2,5-ジメチル−2,5-ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、AkzoNobel製
【0138】
〔実施例1〕
ポリマー系1を、以下のプロセスで得た:
13500Pasの溶融粘度(200℃)を有するポリマーブレンド出発物質Adflex T100Fに、Adflex T100Fの全量に基づいて1.2重量%のTrigonox 145-E85を加えた。200℃で、25mm二軸スクリュー押出機(ZSK 25/40D;Werner & Pfleiderer)中で、得られた混合物を処理することにより、25Pasの溶融粘度(200℃)を示す本発明のポリマー系を得た。
【0139】
ポリマーブレンド出発物質Adflex T100Fおよび得られたポリマー系の、対応するデータを表1に示す。破断点伸びが増大し、粘度、モル重量(Mw)およびモル重量分布(MWD)が、ポリマー分解工程により顕著に低下することが見られる。
【0140】
【表1】

【0141】
〔実施例2〕
ポリマー系2を、以下のプロセスで得た。
68000Pasの溶融粘度(200℃)を有するポリマーブレンド出発物質Softel CA02に、Softel CA02の全量に基づいて2.0重量%のTrigonox 145-E85を加えた。200℃で、25mm二軸スクリュー押出機(ZSK 25/40D;Werner & Pfleiderer)中で、得られた混合物を処理することにより、107Pasの溶融粘度(200℃)を示す本発明のポリマー系を得た。
【0142】
〔実施例3〕
ポリマー1を含有する分解した非エラストマーゴム(DNERP 1)を、以下のプロセスで得た。
1600Pasの溶融粘度(200℃)を有するNERSM 1に、NERSM 1の全量に基づいて、2.0重量%のTrigonox 145-E85を加えた。200℃で、25mm二軸スクリュー押出機(ZSK 25/40D;Werner & Pfleiderer)中で、得られた混合物を処理することによって、9Pasの溶融粘度(200℃)を示す、ポリマーを含有する分解した非エラストマーゴムDNERP 1を得た。
【0143】
〔実施例4〕
ポリマー2を含有する分解した非エラストマーゴム(DNERP 2)を、以下のプロセスで得た。
5000Pasの溶融粘度(200℃)を有するNERSM 2に、NERSM 2の全量に基づいて、2.0重量%のTrigonox 145-E85を加えた。200℃で、25mm二軸スクリュー押出機(ZSK 25/40D;Werner & Pfleiderer)中で、得られた混合物を処理することによって、4.5Pasの溶融粘度(200℃)を示す、ポリマーを含有する分解した非エラストマーゴムDNERP 2を得た。
【0144】
ポリマーブレンド出発物質Adflex T100F、得られたポリマー系1および2、ポリマー1および2を含有する分解した非エラストマーゴムについて、成分を混合することによって異なるベースのホットメルト製剤が得られた。異なる製剤を表2に示す。
【0145】
【表2】

【0146】
製剤1は、非常に高い粘度のため、ホットメルト製剤を適用できなかった。
【0147】
接着剤評価
ホットメルト製剤を200℃で調製した。この温度において、KRAFTLINER段ボール板(5×5cm)の2つのストリップを、表2に示したホットメルト製剤0.9〜1.1グラムをスパチュラで適用して、互いに結合させ、続いて、手でプレスした。検体を室温(23℃)で少なくとも1日貯蔵した後、検体を手で引き離した。検体の繊維破断の程度を用いて、製剤の接着剤特性を評価した。
【0148】
〔接着の評価〕
接着の失敗:接着剤スポット上に残存する繊維が0〜30%:−
部分的な繊維破断:接着剤スポット上に残存する繊維が30〜60%:−+
繊維破断:接着剤スポット上に残存する繊維が60〜90%:+
激しい繊維破断:接着剤スポット上に残存する繊維が90%より多い:++
【0149】
表2に示すように、本発明のポリマー系を含むホットメルト製剤(製剤2および3)は、低粘度とともに高い凝集強さを有する。特に、ホットメルト製剤3は、良好な湿潤性および接着性能に悪影響を及ぼさない、顕著により高い粘度を有する。2つの比較製剤4および5は極度に脆く、接着の失敗の原因となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマー系を含む接着剤であって、該ポリマー系は、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の溶融粘度を低下させるプロセスによって得られ、該プロセスは、少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質を、少なくとも1つのラジカル供与体で、該ポリマーブレンド出発物質の軟化点を超える温度で、剪断応力下で、処理する工程を含み、該ポリマー系は、:
a)エラストマーゴム、またはエチレン−プロピレンゴムおよびエチレン−プロピレン−ジエンモノマーターポリマーゴムからなる群より選択されるエラストマーゴムのブレンド、および
b)半結晶性オレフィンポリマーまたは半結晶性オレフィンポリマーのブレンド
からなる、接着剤。
【請求項2】
少なくとも1つのポリマーブレンド出発物質の溶融粘度を、得られたポリマー系の(200℃における)溶融粘度がポリマーブレンド出発物質の (200℃における)初期溶融粘度の50%未満となるまで低下させる、請求項1に記載のポリマー系。
【請求項3】
ラジカル供与体が、アゾ化合物、ジアゾ化合物および/または過酸化物から選択される、請求項1または2に記載のポリマー系。
【請求項4】
ポリマーブレンド出発物質が、200℃で、少なくとも300,000mPasの初期溶融粘度を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項5】
ポリマー系が、200℃で、3,000〜1,000,000mPasの溶融粘度を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項6】
ポリマー系が、ゲル浸透クロマトグラフィで測定して、1.5〜5.0の分子量分布Mw/Mnを有する、請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項7】
ポリマー系が、EN ISO 527-3に従い測定して、少なくとも50%の破断点伸びを有する、請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項8】
ポリマー系が、EN ISO 527-3に従い測定して、少なくとも2.5MPaの破断点引張り強さを有する、請求項1〜7のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項9】
ポリマー系が、DSCで測定して、5〜−65℃のガラス転移温度を有する、請求項1〜8のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項10】
ポリマー系が、DSCで測定して、30〜90J/gの融解熱を有する、請求項1〜9のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項11】
ポリマー系が、DSCで測定して、125℃〜165℃の間に含まれるピーク融点(Tm)を有する、請求項1〜10のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項12】
エラストマーゴムが、少なくとも40重量%のエチレンを含有するエチレンおよびプロピレンのコポリマーを含む、請求項1〜11のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項13】
エラストマーゴムが、15〜50重量%のプロピレンを含有するエチレンおよびプロピレンのコポリマーを含む、請求項1〜12のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項14】
エラストマーゴムが、カルボン酸基、無水物基、ヒドロキシル基、エーテル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基およびエステル基から選択される官能性モノマーで変性させたエチレンおよびプロピレンのコポリマーを含む、請求項1〜13のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項15】
エラストマーゴムが、40〜80重量%のエチレン、15〜50重量%のプロピレン、および2〜15重量%のジエンのターポリマーを含む、請求項1〜14のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項16】
ターポリマーが、20〜45重量%のプロピレンを含有する、請求項15に記載のポリマー系。
【請求項17】
ジエンが、1,4-ヘキサジエン、ノルボルナジエン、エチリデン−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ブタジエンおよびイソプレンからなる群より選択される、請求項15または16に記載のポリマー系。
【請求項18】
エラストマーゴムが、35重量%未満のエチレンを含有するエチレンおよびプロピレンのコポリマーを含む、請求項1〜11のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項19】
半結晶性オレフィンポリマーが、1〜35重量%で存在するエチレンおよび65〜99重量%で存在するC3-C20のα−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1つのコモノマーのコポリマーである、請求項1〜18のいずれかに記載のポリマー系。
【請求項20】
接着剤が、15〜95重量%の量で少なくとも1つのポリマー系を含む、請求項1〜19のいずれかに記載の接着剤。
【請求項21】
接着剤が、さらに、1つ以上の粘着付与剤、および/または1つ以上のワックス、および/または可塑剤、充填剤、油、安定化剤、抗酸化剤、顔料、染料、ポリマー添加剤、脱泡剤、防腐剤、増粘剤、レオロジー変性剤、保湿剤、マスターバッチおよび水から選択される1つ以上の添加剤を含む、請求項1〜20のいずれかに記載の接着剤。
【請求項22】
a)少なくとも1つのポリマー系、20〜80重量%;
b)少なくとも1つの粘着付与剤、5〜80重量%;
c)少なくとも1つのワックス、0〜50重量%;および
d)少なくとも1つの添加剤、0〜30重量%
を含む、請求項1〜21のいずれかに記載の接着剤。
【請求項23】
少なくとも30重量%の少なくとも1つのポリマー系を含む接着剤であって、該接着剤が100〜500,000mPasの粘度を有し、ここで、該粘度は該接着剤の適用温度で測定される、請求項1〜22のいずれかに記載の接着剤。

【公表番号】特表2012−522064(P2012−522064A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501319(P2012−501319)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054045
【国際公開番号】WO2010/109018
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】