説明

ポリマー組成物−腐食防止剤

本発明は、ポリマー、陰極腐食防止剤、及び酸性腐食性試剤を含むポリマー組成物である。このポリマー組成物は発泡剤及び/又は第2の腐食防止剤を更に含むものであり得る。本発明は特に水分架橋型ポリマー組成物も含む。この水分架橋型組成物はコーティングとして使用可能であり、ワイヤ又はケーブルの上に塗布可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、このポリマー組成物の加工時及び/又は前記ポリマー組成物を製品に製造した後で腐食を防止するポリマー組成物に関する。このポリマー組成物は、ワイヤ、ケーブル、コーティング、フォーム、成形物品、フィルム、繊維、接着剤、シーラント、シート、ガスケット、ホース、自動車パーツ及びトリム、履物、パイプ断熱、家具、玩具、スポーツ用品、及び熱可塑性加硫物の製造に有用である。本発明は、また、低電圧ないし高電圧のワイヤ及びケーブル用途に有用な水分架橋型ポリマー組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
腐食は、金属を元素状態から結合状態に変換させる電気化学的な過程である。基本的な腐食反応は酸に暴露された場合に金属の酸化を伴う。酸性シラノール縮合触媒に暴露される間の金属器具の腐食は、この器具を使用して水分架橋型ポリマー組成物を加工する場合この基本的な腐食反応を例示する。
【0003】
金属器具の腐食は、腐食性試剤を含有するポリマー組成物を含む種々の技術の使用を制限してきた。同じように、腐食性環境は最終使用の用途におけるポリマー物品の使用を制限してきた。
【0004】
PCT出願番号WO 95/17463は、加水分解型シラン基の付いた架橋型ポリマーと置換芳香族スルホン酸シラノール縮合触媒を含有する架橋型ポリマー組成物を開示している。WO 95/17463は、この架橋型ポリマー組成物が従来のシラノール縮合触媒を更に含有し得るということを教示する一方で、置換芳香族スルホン酸シラノール縮合触媒又は腐食試剤一般により引き起こされる腐食を防止するいずれの成分も特定している。さらに、WO 95/17463は、置換芳香族スルホン酸性シラノール縮合触媒が触媒性能又は酸触媒一般を保持して、触媒性能を保持することを可能とするいかなる腐食防止剤も教示していない。
【0005】
PCT出願番号WO 02/12354とWO02/12355はポリエチレンを架橋するためのスルホン酸触媒を開示している。特に、WO 02/12354はアルキルアリール及びアリールアルキルモノスルホン酸触媒を開示し、WO 02/12355はアルキル化アリールジスルホン酸触媒を開示する。いずれの特許出願も、開示されたスルホン酸触媒又は酸性腐食試剤一般により引き起こされる腐食を防止するいかなる成分も教示していない。さらに、スルホン酸触媒が触媒性能又は酸触媒一般を保持して、触媒性能を保持することを可能とするいずれもいかなる腐食防止剤も教示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このポリマー組成物の加工時及び/又は前記ポリマー組成物を製品に製造した後で腐食を防止するポリマー組成物に対する必要性が存在する。特に、酸性シラノール縮合触媒を含有し、従来の器具の金属表面の腐食を防止し、従来の器具で加工され得る水分架橋型ポリマー組成物に対する必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリマー、酸性腐食性試剤が生じる腐食を防止する陰極腐食防止剤、及び酸性腐食性試剤を含むポリマー組成物である。このポリマー組成物は発泡剤及び/又は第2の腐食防止剤を更に含むものであり得る。本発明は特に水分架橋型ポリマー組成物も含む。この水分架橋型組成物はコーティングとして使用可能であり、ワイヤ又はケーブルの上に塗布可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のポリマー組成物は、ポリマー、陰極腐食防止剤、及び酸性腐食性試剤を含む。
【0009】
好適なポリマーは、アクリルアミドポリマー、アクリレートポリマー、カルボン酸ポリマー、エポキシポリマー、メタクリレートポリマー、オレフィン系ポリマー、ポリイミドポリマー、ポリ炭酸塩、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルクロリドポリマー、ポリビニリデンクロリドポリマー、シロキサンポリマー、スチレン系ポリマー、熱可塑性ウレタン、ビニルアセテートポリマー、及びこれらのブレンドを含む。とりわけ、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スチレン系及びビニルアセテートモノマーのモノマー類ならびにこれらの誘導体の1つ又はそれ以上から製造されるポリマー(コポリマーを含む)が本発明で有用である。加えて、有用なポリマーが官能性モノマー、例えばヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリルアミド及びこれらの誘導体から製造され、これにより架橋部位をもたらすことができる。
【0010】
さらに、本明細書では、ポリビニルクロリドポリマーとポリビニリデンクロリドポリマーが本発明に有用なものとして特定されているが、当業者ならば有用な他のハロゲン化ポリマーを認識するであろう。これらのポリマーは本発明の範囲内と考えられる。
【0011】
当業者ならばこれらのポリマーを周知の重合法から製造することができる。
【0012】
優先的には、このポリマーは、オレフィン系ポリマー、結合した酸触媒反応性官能基を有するポリマー、又はシラン官能基化されたポリマーである。更に優先的には、このポリマーはシラン官能基化されたポリマーである。
【0013】
好適なオレフィン系ポリマーは、ポリエチレンポリマー、ポリプロピレンポリマー、及びこれらのブレンドを含む。
【0014】
本明細書で使用されるポリエチレンポリマーという用語は、エチレンのホモポリマー又はエチレンと3〜12個の炭素原子、好ましくは4〜8個の炭素原子を有する少量部分の1つ又はそれ以上のアルファ−オレフィン、場合によってはジエンのコポリマー又はこのようなホモポリマー及びコポリマーの混合物又はブレンドである。この混合物は機械的ブレンド又は系内のブレンドであることができる。このアルファ−オレフィンの例は、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテンである。このポリエチレンは、また、エチレンと不飽和エステル、例えばビニルエステル(例えば、ビニルアセテート又はアクリルあるいはメタクリル酸エステル)のコポリマー又はエチレンとビニルシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン)のコポリマーであることもできる。本明細書では、エチレンとビニルシランのコポリマーはポリエチレンとして包含される一方で、下記ではこのコポリマーはシラン官能基化されたポリマーとしても包含される。
【0015】
このポリエチレンは均質あるいは不均質であることができる。この均質なポリエチレンは、通常、1.5〜3.5の範囲の多分散性(Mw/Mn)と本質的に均一なコモノマー分布を有し、示差走査熱量計で測定して単一で、比較的低い融点を特徴とする。この不均質なポリエチレンは、通常、3.5よりも大きい多分散性(Mw/Mn)を有し、均一なコモノマー分布を欠く。Mwは重量平均分子量と定義され、そしてMnは数平均分子量と定義される。
【0016】
このポリエチレンは1立方センチメートル当たり0.860〜0.970グラムの範囲の密度を有することができ、好ましくは1立方センチメートル当たり0.870〜0.930グラムの範囲の密度を有する。これらは、10分間当たり0.1〜50グラムの範囲のメルトインデックスを有することもできる。このポリエチレンがホモポリマーである場合には、このメルトインデックスは好ましくは10分間当たり0.75〜3グラムの範囲にある。メルトインデックスはASTMD−1238、条件E下で求められ、190℃及び2160グラムで測定される。
【0017】
低圧あるいは高圧法がこのポリエチレンを生成することができる。これらは気相法又は液相法(すなわち、溶液法又はスラリー法)で従来の方法により製造可能である。低圧法は、通常、1平方インチ当たり1000ポンド(「psi」)以下の圧力で行われ、高圧法は、通常、15,000psi以上の圧力で行われる。
【0018】
これらのポリエチレンを製造するための通常の触媒系は、マグネシウム/チタンベースの触媒系、バナジウムベースの触媒系、クロムベースの触媒系、メタロセン触媒系、及び他の遷移金属触媒系を含む。これらの触媒系の多くは、しばしばチーグラー・ナッタ触媒系又はフィリップス触媒系と呼ばれる。有用な触媒系は、シリカ−アルミナ担体上のクロムあるいはモリブデン酸化物を使用する触媒を含む。
【0019】
有用なポリエチレンは、高圧法により製造される低密度のエチレンホモポリマー(HP−LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びメタロセンコポリマーを含む。
【0020】
高圧法は、通常、フリーラジカル開始される重合であり、管状反応器又は撹拌オートクレーブ中で行われる。管状反応器中では、圧力は25,000〜45,000psiの範囲内にあり、そして温度は200〜350℃の範囲にある。撹拌オートクレーブ中では、圧力は10,000〜30,000psiの範囲にあり、そして温度は175〜250℃の範囲にある。
【0021】
エチレンと不飽和エステルから構成されるコポリマーは周知であり、従来の高圧法により製造可能である。この不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、又はビニルカルボキシレートであることができる。このアルキル基は1〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。このカルボキシレート基は2〜8個の炭素原子を有することができ、好ましくは2〜5個の炭素原子を有する。エステルコモノマーに帰属されるコポリマーの部分は、このコポリマーの重量基準で5〜50重量パーセントの範囲にあることができ、好ましくは15〜40重量パーセントの範囲にある。このアクリレート及びメタクリレートの例は、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートである。このビニルカルボキシレートの例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、及びビニルブタノエートである。このエチレン/不飽和エステルコポリマーのメルトインデックスは、10分間当たり0.5〜50グラムの範囲にあることができ、好ましくは10分間当たり2〜25グラムの範囲にある。
【0022】
エチレンとビニルシランのコポリマーも使用され得る。好適なシランの例はビニルトリメトキシシランとビニルトリエトキシシランである。このようなポリマーは、通常、高圧法を用いて製造される。水分架橋型組成物を所望する場合には、このようなエチレン−ビニルシランコポリマーの使用が望ましい。
【0023】
VLDPE又はULDPEは、エチレンと3〜12個の炭素原子、好ましくは3〜8個の炭素原子を有する1つ又はそれ以上のアルファ−オレフィンのコポリマーであることができる。VLDPE又はULDPEの密度は1立方センチメートル当たり0.870〜0.915グラムの範囲にあることができる。VLDPE又はULDPEのメルトインデックスは10分間当たり0.1〜20グラムの範囲にあることができ、好ましくは10分間当たり0.3〜5グラムの範囲にある。エチレン以外のコモノマーに帰属されるVLDPE又はULDPEの部分は、このコポリマーの重量基準で1〜49重量パーセントの範囲にあることができ、好ましくは15〜40重量パーセントの範囲にある。
【0024】
第3のコモノマー、例えば別のアルファ−オレフィン又はジエン、例えばエチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、又はジシクロペンタジエンが包含可能である。エチレン/プロピレンコポリマーは一般にEPRと呼ばれ、そしてエチレン/プロピレン/ジエンターポリマーは一般にEPDMと呼ばれる。この第3のコモノマーは、このコポリマーの重量基準で1〜15重量パーセントの量で存在することができ、好ましくは1〜10重量パーセントの量で存在する。このコポリマーはエチレンを含めて2つあるいは3つのコモノマーを含有することが好ましい。
【0025】
このLLDPEは、VLDPE、ULDPE、及びMDPEを含むことができ、直鎖状であるが、一般に、1立方センチメートル当たり0.916〜0.925グラムの範囲の密度を有する。これは、エチレンと3〜12個の炭素原子、好ましくは3〜8個の炭素原子を有する1つ又はそれ以上のアルファ−オレフィンのコポリマーであることができる。このメルトインデックスは、10分間当たり1〜20グラムの範囲にあることができ、好ましくは10分間当たり3〜8グラムの範囲にある。
【0026】
いかなるポリプロピレンもこれらの組成物中で使用され得る。例は、プロピレンのホモポリマー、プロピレンと他のオレフィンのコポリマー、及びプロピレン、エチレン、及びジエン(例えば、ノルボナジエン及びデカジエン)のターポリマーを含む。加えて、このポリプロピレンはEPR又はEPDMなどの他のポリマーと分散あるいはブレンドされ得る。好適なポリプロピレンはTPE、TPO及びTPVを含む。ポリプロピレンの例は、「Polypropylene Handbook: Polymerization, Characterization, Properties, Processing, Applications」3-14, 113-176(E.Moore, Jr.ed., 1996)に記載されている。
【0027】
好適なシラン官能基化されたポリオレフィン系ポリマーは、(i)エチレンと加水分解
型シランのコポリマー、(ii)エチレン、加水分解型シラン、及び1つ又はそれ以上のC3あるいは更に高級なアルファ−オレフィン及び不飽和エステルのコポリマー、(iii)骨格にグラフトされた加水分解型シランを有するエチレンのホモポリマー、及び(iv)骨格にグラフトされた加水分解型シランを有するエチレンと1つ又はそれ以上のC3あるいは更に高級なアルファ−オレフィン及び不飽和エステルのコポリマーを含む。ビニルアルコキシシランはグラフトに好適なシラン化合物である。
【0028】
好適な陰極腐食防止剤は、IIB族金属、IIIA族金属、IVA族金属、VA族金属、先行の金属の塩、及び酸性腐食性試剤の金属塩を含む。好ましくは、この陰極腐食防止剤は、アンチモン、ヒ素、亜鉛、スズ、カドミウム、先行の金属の塩、及び酸性腐食性試剤の金属塩からなる群から選択される。
【0029】
好適な陰極腐食防止剤化合物は、このポリマー組成物の加工時及び/又はこのポリマー組成物を製品に製造した後で腐食を防止する。理想的には、この酸性腐食性試剤が酸触媒である場合には、この陰極腐食防止剤は、酸触媒が触媒性能を保持する一方で、酸触媒が生じる腐食を防止する。
【0030】
このポリマーがオレフィン系ポリマーであり、そしてこの酸性腐食性試剤が置換芳香族スルホン酸性シラノール縮合触媒である場合には、この陰極腐食防止剤は、好ましくは0.78ミリモル/キログラム・オレフィン系ポリマー以上の量で存在する従来のシラノール縮合触媒でない。更に好ましくは、この腐食防止剤は従来のシラノール縮合触媒でない。WO 95/17463に述べられているように、従来のシラノール縮合触媒は、特に金属スズ、亜鉛、鉄、鉛、及びコバルトのカルボン酸塩を含む。この特許出願の目的には、従来のシラノール縮合触媒は、アルキルスズトリクロリドの加水分解生成物、有機塩基、無機酸、及び有機酸も含むものとする。
【0031】
好適な第2の腐食防止剤は、陽極防止剤、緩衝剤、膜形成剤、及びこれらのブレンドを含む。本発明で有用な第2の腐食防止剤の例は、アミン、ヒドラジン、ホウ酸塩、炭酸塩、及びチオエステルを含む。
【0032】
この酸性腐食性試剤は、(i)直接添加成分、(ii)このポリマー組成物に直接添加される成分の反応から生じる生成物、(iii)このポリマー組成物に直接添加される成分とこの成分と接触させられる反応性種との反応から生じる生成物、及び(iv)このポリマー組成物と接触させられる腐食性種からなる群から選択される。好ましくは、この酸性腐食性試剤は直接添加成分である。
【0033】
直接添加成分の例は酸性シラノール縮合触媒である。好適な酸性シラノール縮合触媒は、(a)有機スルホン酸とこれらの加水分解型前駆体、(b)有機ホスホン酸とこれらの加水分解型前駆体、及び(c)ハロゲン酸を含む。好ましくは、この酸性シラノール縮合触媒は有機スルホン酸である。更に好ましくは、この酸性シラノール縮合触媒は、アルキルアリールスルホン酸、アリールアルキルスルホン酸、及びアルキル化アリールジスルホン酸からなる群から選択される。なお更に好ましくは、この酸性シラノール縮合触媒は、置換ベンゼンスルホン酸及び置換ナフタレンスルホン酸からなる群から選択される。最も好ましくは、この酸性シラノール縮合触媒は、ドデシルベンジルスルホン酸又はジノニルナフチルスルホン酸である。
【0034】
このポリマー組成物は発泡剤を更に含み、単独で、あるいは1又はそれ以上の他の発泡剤との組み合わせで添加され得る。発泡剤の量は、一般に、ポリマー1キログラム当たり0.05〜5.0グラムモルの量で添加される。好ましくは、この量はポリマー1キログラム当たり0.2〜3.0グラムモルである。更に好ましくは、この量はポリマー1キログラム当たり0.5〜2.5グラムモルである。
【0035】
有用な発泡剤は無機及び有機発泡剤を含む。好適な無機発泡剤は、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水、空気、六フッ化イオウ(SF6)及びヘリウムを含む。好適な有機発泡剤は、1〜9個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、1〜3個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、及び1〜4個の炭素原子を有する完全及び部分ハロゲン化脂肪族炭化水素を含む。
【0036】
脂肪族炭化水素は、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、及びネオペンタンを含む。脂肪族アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、及びイソプロパノールを含む。完全及び部分ハロゲン化脂肪族炭化水素は、フルオロカーボン、クロロカーボン、及びクロロフルオロカーボンを含む。
【0037】
フルオロカーボンの例は、メチルフルオリド、ペルフルオロメタン、エチルフルオリド、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペルフルオロエタン、2,2−ジフルオロプロパン、1,1,1−トリフルオロプロパン、ペルフルオロプロパン、ジクロロプロパン、ジフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、及びペルフルオロシクロブタンを含む。クロロカーボンの例は、メチルクロリド、メチレンクロリド、エチルクロリド、及び1,1,1−トリクロロエタンを含む。クロロフルオロカーボンの例は、トリクロロモノフルオロメタン(CFC−11)、ジクロロジフルオロメタン(CFC−12)、トリクロロトリフルオロエタン(CFC−113)、ジクロロテトラフルオロエタン(CFC−114)、クロロヘプタフルオロプロパン、ジクロロヘキサフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)、クロロジフルオロメタン(HCFC−22)、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(HCFC−123)及び1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)を含む。
【0038】
他の好適な発泡剤は、アゾジカルボンアミド、アゾジイソブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、ベンゼンスルホンヒドラジド、4,4−オキシベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、及びクエン酸と重炭酸ナトリウムの混合物を含む。
【0039】
加えて、この組成物は、他の添加剤、例えば酸化防止剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、触媒、加工助剤、臭素化難燃剤、ナノ充填剤、粘土、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シロキサン/シリコーン/シラン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、及び着色剤を含有し得る。
【0040】
好ましい実施形態においては、本発明は、
(a)(i)エチレンと加水分解型シランのコポリマー、(ii)エチレン、加水分解
型シラン、及び1又はそれ以上のC3あるいは更に高級なアルファ−オレフィン及び不飽和エステルのコポリマー、(iii)骨格にグラフトされた加水分解型シランを有するエチレンのホモポリマー、及び(iv)骨格にグラフトされた加水分解型シランを有するエチレンと1又はそれ以上のC3あるいは更に高級なアルファ−オレフィン及び不飽和エステルのコポリマーからなる群から選択されるシラン官能基化されたポリマー、
(b)アルキルアリールスルホン酸、アリールアルキルスルホン酸、及びアルキル化アリールジスルホン酸からなる群から選択され、このポリマー組成物が水分架橋型である酸性シラノール縮合触媒、及び
(c)アンチモン、ヒ素、亜鉛、スズ、カドミウム、前記金属の塩、及び前記酸性シラノール縮合触媒の金属塩からなる群から選択される陰極腐食防止剤
を含むポリマー組成物である。好ましい実施形態においては、この陰極腐食防止剤は、好ましくは0.78ミリモル/キログラム・シラン官能基化されたポリマー以上の量で存在する従来のシラノール縮合触媒ではない。
【0041】
別の実施形態においては、本発明は、酸触媒反応性官能基を有するポリマー及び陰極腐食防止剤を含み、この酸触媒反応性官能基が触媒性能保持するポリマー組成物である。
【0042】
代替の実施形態においては、本発明は、ワイヤ又はケーブルの上にこのポリマー組成物を塗布することにより製造されるワイヤあるいはケーブル構成物である。
【0043】
更に別の実施形態においては、本発明は、金属基材の上にこのポリマー組成物を塗布することにより製造される製品である。この製品は、押し出し、圧縮成形、射出成形、ブロー成形、回転成形、カレンダー加工、熱成形、及び注型により製造可能である。この物品を製造する他の方法、製造方法は当業者には容易に明白であろう。これらの方法は本発明の範囲内であると考えられる。
【実施例】
【0044】
この非限定的な実施例は本発明を例示する。
【0045】
金属合金腐食速度
図1は、NACURE(商標)B201としてKing Industriesから入手可能なアルキル芳香族スルホン酸中での4つの温度における種々の金属合金タイプの腐食速度(「1年当たりのミル(MPY))を示す。試験対象の金属合金は次のものを含む。

【表1】

【0046】
金属クーポンを0.118インチの厚さを有する金属あるいは合金板から作製した。この板を1インチの長さ及び0.625インチの幅に切断することにより、金属クーポンを作製した。各クーポンの実際の寸法を+/−0.001インチで測定した。次に、各クーポンを(1)せっけんと水によりクリーニングし、(2)アセトンにより脱脂し、そして(3)+/−0.0001グラムで秤量した。
【0047】
次に、2インチの長さ×0.75インチの直径のパイプ部分、頂部のパイプキャップ、及び底部のパイプキャップを使用して加工した、インコネルアンプルの中にこのクーポンを挿入した。この管の自由端を平らにし、溶接して、2インチの長さ×0.25インチの直径の管を頂部のパイプキャップの中に溶接した。絶縁性のクーポンの「いす」を0.125インチの溝をフライス加工したテフロン(登録商標)フルオロポリマー樹脂のボタンから加工した。このクーポンがアンプルの側部又は底部に触れないで、自立し、腐食性試剤を含有する組成物中に浸漬されるように、このボタンを作製した。
【0048】
各アンプルを所望の評価温度で7日間高温オーブンに入れた。この時間は熱上げ時間と冷却時間を含まないものであった。暴露に続いてアンプルを冷却した後、各アンプルを解体した。
【0049】
再度、各クーポンをクリーニングし、脱脂した。次に、このクーポン(表面腐食を除去して)を+/−0.0001グラムで秤量した。得られた重量減少を等価の厚さ減少(MPY)として求め、式:
減少(MPY)=
[(デルタ重量(グラム)/密度(グラム/立方インチ))*1000(ミル/インチ)] / 表面積(平方インチ)*暴露時間(時)*8544(時/年)
で計算した。
【0050】
比較例1及び実施例2〜4:H13スチール金属クーポン
上述の金属合金評価に使用したのと同一の方法を用い、評価温度及び時間を変えてポリマー組成物中のアルキル芳香族スルホン酸の腐食性の影響を求めた。これらの実施例に対しては、このアルキル芳香族スルホン酸も前述のKing Industriesから入手可能なNACURE(商標)B201であった。
【0051】
この例示のポリマー組成物の各々を46.15重量パーセントのAMPLIFY EA100(商標)のエチレンエチルアクリレートコポリマー、46.15重量パーセントの直鎖状低密度ポリエチレン、4.0重量パーセントのLowinox 22IB46(商標)のイソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、及び0.7重量パーセントのオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)(「OABH」)により作製した。
【0052】
AMPLIFY EA100(商標)のエチレンエチルアクリレートコポリマーは、The Dow Chemical Companyから入手可能であり、1.5グラム/10分間のメルトインデックスと15重量パーセントのエチルアクリレート濃度を有する。この直鎖状低密度ポリエチレンは1−ブテンとエテンのコポリマーであり、0.7グラム/10分間のメルトインデックスと0.92グラム/立方センチメートルの密度を有する。Lowinox 22IB46(商標)のイソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)はGreat Lakes Chemicals Corporationから入手可能な酸化防止剤である。OABHはEastman Chemical Companyから入手可能な金属不活性化剤である。
【0053】
この例示の組成物の各々は、3重量パーセントのこのアルキル芳香族スルホン酸を含有し、どのポリマー組成物を例示したかに依って、非ドーピングあるいはドーピングであった。比較例1は非ドーピングのスルホン酸を使用した。このドーピングされたスルホン酸ポリマー組成物の各々は、10パーツ・パー・ミリオン(ppm)の評価対象の腐食防止剤を含有していた。実施例2に対する腐食防止剤はCrompton Companyから入手可能なFomrez SUL−4(商標)ジブチルスズジラウレート(「DBTDL」)であった。実施例3については、この腐食防止剤はAldrich Chemical Companyの硫酸スズであった。実施例4については、この腐食防止剤はHydroChem Laboraties,Inc.から入手可能なA120(商標)酸化アンチモンであった。
【0054】
この金属クーポンの各々は1.903平方インチの全表面積を有していた。この金属クーポンを140℃で24時間このポリマー組成物中に入れた。このアンプルをポリマー組成物への暴露に続いて冷却した後、各アンプルを解体し、そしてこの金属クーポンを固化したポリマーにより包んだ。ポリマーをクーポンの表面からはがすことにより、クーポンを回収した。次に、クーポンをA120で防止した酸溶液中に浸漬し、クーポンを洗浄し、そしてクーポンをアセトンにより脱脂/乾燥することにより、クーポンをクリーニングした。表面腐食を除去した後、各クーポンを秤量した。ポリマー組成物中に入れる前後で金属クーポンを秤量して、腐食速度を1年当たりのミルで(MPY)求めた。
【0055】
この結果を下記の表1に示す。

【表2】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、アルキル芳香族スルホン酸中での4つの温度における種々の金属合金タイプの腐食速度(「1年当たりのミル(MPY)」を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ポリマー、
b.陰極腐食防止剤、及び
c.酸性腐食性試剤
を含むポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマーがアクリルアミドポリマー、アクリレートポリマー、カルボン酸ポリマー、エポキシポリマー、メタクリレートポリマー、オレフィン系ポリマー、ポリアミドポリマー、ポリ炭酸塩、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルクロリドポリマー、ポリビニリデンクロリドポリマー、シロキサンポリマー、スチレン系ポリマー、熱可塑性ウレタン、及びビニルアセテートポリマーからなる群から選択される請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマーがシラン官能基化されたポリマーである請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記シラン官能基化されたポリマーが(i)エチレンと加水分解型シランのコポリマー
、(ii)エチレン、加水分解型シラン、及び1つ以上のC3あるいは更に高級なアルファ−オレフィン及び不飽和エステルのコポリマー、(iii)骨格にグラフトされた加水分解型シランを有するエチレンのホモポリマー、及び(iv)骨格にグラフトされた加水分解型シランを有するエチレンと1又はそれ以上のC3あるいは更に高級なアルファ−オレフィン及び不飽和エステルのコポリマーからなる群から選択される請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記陰極腐食防止剤がIIB族金属、IIIA族金属、IVA族金属、VA族金属、前記金属の塩、及び前記腐食性試剤の金属塩からなる群から選択される請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記陰極腐食防止剤がアンチモン、ヒ素、亜鉛、スズ、カドミウム、及び前記金属の塩からなる群から選択される請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記陰極腐食防止剤が前記ポリマー組成物の加工時に腐食を防止する請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリマー組成物を製品に製造した後で前記陰極腐食防止剤が腐食を防止する請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記酸性腐食性試剤が(i)直接添加成分、(ii)前記ポリマー組成物に直接に添加される成分の反応から生じる生成物、(iii)前記ポリマー組成物に直接に添加される成分と前記成分と接触させられる反応性種との反応から生じる生成物、及び(iv)前記ポリマー組成物と接触させられる腐食性種からなる群から選択される請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記酸性腐食性試剤が酸触媒であり、触媒性能を保持する請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
酸触媒が酸性シラノール縮合触媒である請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記酸性シラノール縮合触媒が(a)有機スルホン酸とこれらの加水分解型前駆体、(b)有機ホスホン酸とこれらの加水分解型前駆体、及び(c)ハロゲン酸からなる群から選択される請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記酸性シラノール縮合触媒がアルキルアリールスルホン酸、アリールアルキルスルホン酸、及びアルキル化アリールジスルホン酸からなる群から選択される有機スルホン酸である請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記有機スルホン酸が置換ベンゼンスルホン酸と置換ナフタレンスルホン酸からなる群から選択される請求項13に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記有機スルホン酸がドデシルベンジルスルホン酸である請求項13に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記有機スルホン酸がジノニルナフチルスルホン酸である請求項13に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記ポリマー組成物が水分架橋型である請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記ポリマーがオレフィン系ポリマーであり、前記陰極腐食防止剤が0.78ミリモル/キログラム・前記オレフィン系ポリマー以上の量で存在する従来のシラノール縮合触媒でなく、そして前記酸性腐食性試剤が置換芳香族スルホン酸性シラノール縮合触媒である
請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
発泡剤を更に含む請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
(a)膜形成剤、(b)緩衝剤、及び(c)陽極防止剤からなる群から選択される第2の腐食防止剤を更に含む請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
前記第2の腐食防止剤がアミン、ヒドラジン、ホウ酸塩、炭酸塩、及びチオエステルからなる群から選択される請求項20に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
請求項1に記載のポリマー組成物をワイヤ又はケーブルの上に塗布することにより製造されるワイヤあるいはケーブル構成物。
【請求項23】
請求項1に記載のポリマー組成物を金属基材の上に塗布することにより製造される製品。
【請求項24】
a.(i)エチレンと加水分解型シランのコポリマー、(ii)エチレン、加水分解型
シラン、及び1つ又はそれ以上のC3あるいは更に高級なアルファ−オレフィン及び不飽和エステルのコポリマー、(iii)骨格にグラフトされた加水分解型シランを有するエチレンのホモポリマー、及び(iv)骨格にグラフトされた加水分解型シランを有するエチレンと1つ又はそれ以上のC3あるいは更に高級なアルファ−オレフィン及び不飽和エステルのコポリマーからなる群から選択されるシラン官能基化されたポリマー、
b.アルキルアリールスルホン酸、アリールアルキルスルホン酸、及びアルキル化アリールジスルホン酸からなる群から選択される酸性シラノール縮合触媒、及び
c.アンチモン、ヒ素、亜鉛、スズ、カドミウム、前記金属の塩、及び前記酸性シラノール縮合触媒の金属塩からなる群から選択される陰極腐食防止剤
を含み、
前記ポリマー組成物が水分架橋型であるポリマー組成物。
【請求項25】
前記陰極腐食防止剤が0.78ミリモル/グラム・前記シラン官能基化されたポリマー以上の量で存在する従来のシラノール縮合触媒でない請求項24に記載のポリマー組成物。
【請求項26】
a.酸触媒反応性官能基を有するポリマー、及び
b.陰極腐食防止剤
を含み、
前記酸触媒反応性官能基が触媒性能を保持するポリマー組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−524723(P2007−524723A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517514(P2006−517514)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/019905
【国際公開番号】WO2005/003220
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】