説明

ポリマー組成物およびこれを含むフォトレジスト

【課題】EUV用途のために、改良された(すなわち、低減された)ライン幅ラフネスを有するフォトレジストポリマーを提供する。
【解決手段】ポリマーは、酸脱保護性モノマー、塩基可溶性モノマー、ラクトン含有モノマーおよび光酸生成モノマーを含むモノマー;下記式の連鎖移動剤;並びに場合によって開始剤の重合生成物を含む:


式中、Zはy価のC1−20有機基であり、xは0または1であり、Rは置換もしくは非置換のC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、またはC7−20アラルキルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2011年6月27日に出願された米国仮出願第61/501,502号のノンプロビジョナル出願であり、かつその優先権を主張し、その出願の内容はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
次世代マイクロリソグラフィ(すなわち、193nm液浸リソグラフィを超えて、かつeビーム、X線および13.4nmの非常に短い波長で操作する極端紫外線(EUV)リソグラフィのような次世代光学素子へ向かう)についての設計規則はますます小さな寸法、例えば、30nm以下に向かっていることである。一般に、焦点深度(DOF)は、より大きな開口数(NA)のせいで解像度が高くなるにつれて必然的に浅くなり、そしてそれにより、レジスト厚さも、ますます小さくなるフィーチャサイズに対応して薄くなる。線幅がより狭くなり、かつレジスト膜がより薄くなるにつれて、解像度およびライン幅ラフネス(LWR)のような精度の問題が、フォトレジストの性能および有用性の制限の有意性を増大させるようになる。これらの現象は半導体デバイスの製造において関心を持たれており;例えば、過剰なLWRは、例えば、トランジスタおよびゲートアーキテクチャにおける劣ったエッチングおよびライン幅制御の欠如をもたらす場合があり、潜在的に短絡および信号遅延を生じさせる場合がある。
【0003】
このようなフィーチャを達成することは組成、分子量および多分散度の充分に制御された特性を有するポリマーを使用して改良されうる。アクリラートベースのEUVフォトレジストポリマーは、モノマーおよび開始剤供給速度の注意深い制御が組成を制御するのを助けるが、停止および連鎖移動反応が重合全体にわたる組成ドリフトおよび分子量の相対的に広い分布を引き起こしうる、改変されたフリーラジカル重合技術によって合成されうる。このような多様性はレジスト溶解性に影響を及ぼす有意な要因であるから、幅広い組成および分子量分布は望まれない。
【0004】
制御されたラジカル重合技術はこの十年間でより実用的になってきており、そして1.05の低さの多分散度を有するアクリラートポリマーが製造されうる。本発明は、分子量分布を成功裏に制御するジチオエステル連鎖移動剤(CTA)を使用するEUVフォトレジストのための重合条件の改変に関する。実施例のセクションに示されるように、従来のフリーラジカル重合についての約2.0のPDIに対して、1.2〜1.3の低さの多分散度が達成されうる。制御されたラジカル重合、例えば、CTAの量に基づいて特定の分子量を正確に目標にする能力、および重合のリビング状挙動のせいでポリマーを末端官能化する選択肢などを用いてさらなる利点が実現されてきた。さらに、制御されたラジカル重合は、高変換率でのフリーラジカル重合で典型的に観察される有害な効果なしに、高い変換率(>80%)に到達しうる。このことは向上したポリマー収率、および未反応モノマーからのポリマーのより容易な精製を可能にする。
【0005】
Proc.of SPIE第6923巻、2008、69232E−1〜69232E−9に記載されるように、193nmリソグラフィのためのフォトレジストポリマーを製造するために、可逆的付加開裂トランスファー(reversible addition fragmentation transfer;RAFT)重合技術が使用されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Proc.of SPIE第6923巻、2008、69232E−1〜69232E−9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、改良された(すなわち、低減された)ライン幅ラフネスを有するフォトレジストポリマーは依然としてEUV用途のために望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
式(I)を有する酸脱保護性(acid−deprotectable)モノマーと、式(II)を有する塩基可溶性モノマーと、式(III)のラクトン含有モノマーと、式(IV)の光酸発生モノマーとを含むモノマー、式(IX)の連鎖移動剤、並びに場合によっては開始剤の重合生成物を含む本発明に従ったポリマーによって、上記および他の先行技術の欠点の1以上が克服されうる:
【化1】

式中、各Rは独立してH、F、C1−10アルキルまたはC1−10フルオロアルキルであり、Rは独立してC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキルであり、および各Rは別々に分かれているかまたは少なくとも1つのRが隣のRに結合されて環構造を形成しており、Qはエステル含有もしくはエステル非含有のC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキルであり、Wは−C(=O)−OH、−C(CFOH、−NH−SO−Y(式中、YはFまたはC1−4ペルフルオロアルキルである)、芳香族−OH(aromatic−OH)、または前記のもののいずれかとビニルエーテルとの付加物を含む塩基反応性基であり、aは1〜3の整数であり、Lは単環式、多環式または縮合多環式C4−20ラクトン含有基であり、Qはエステル含有もしくはエステル非含有であって、かつフッ素化されているかもしくはフッ素化されていない、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキル基であり、Aはエステル含有もしくはエステル非含有であって、かつフッ素化されているかもしくはフッ素化されていない、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキルであり、Zはスルホナート、スルホンアミドのアニオン、またはスルホンイミドのアニオンを含むアニオン性部分であり、Gは式(V)を有しており:
【化2】

式中、XはSまたはIであり、各Rはハロゲン化されているかもしくはハロゲン化されておらず、独立してC1−30アルキル基、多環式もしくは単環式C3−30シクロアルキル基、多環式もしくは単環式C4−30アリール基であり、ここでXがSの場合には、場合によっては、R基の1つが単結合によって隣の1つのR基に結合されている;zは2または3であり、ここでXがIの場合にはzは2であり、またはXがSの場合にはzは3である;
【化3】

式(IX)中、Zはy価のC1−20有機基であり、xは0または1であり、Rは置換もしくは非置換のC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、またはC7−20アラルキルである。
【0009】
上記ポリマーを含むフォトレジスト組成物も提供される。
【0010】
(a)基体の表面上にパターン形成される1以上の層を有する基体、および(b)前記パターン形成される1以上の層上の、上記ポリマーを用いて製造されるフォトレジスト組成物の層;を含むコーティングされた基体も提供される。
【0011】
連鎖移動剤の存在下で上記モノマーをラジカル的にまたは熱的に開始させることを含む、上記ポリマーを形成する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、RAFT重合により製造されるポリマーを使用して製造された典型的なフォトレジストについての、および従来のラジカル重合方法により製造される同様の組成のポリマーを使用して製造された比較のフォトレジストについての248nm露光での厚さ(オングストローム)対露光線量(E、ミリジュール/平方センチメートル)のコントラスト曲線を示す。
【図2】図2は、RAFT重合により製造されるポリマーを使用して製造された2種類の異なる典型的なフォトレジストについての(像AおよびC)、およびそれぞれAおよびCに使用されたのとに同様の組成のポリマーを使用して、従来のラジカル重合方法によって製造された比較のフォトレジストについての(像BおよびD)、EUV露光波長で28nm名目フィーチャサイズで像形成された1:1ライン/スペースのトップダウン走査型電子顕微鏡(SEM)像A〜Dを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の上述のおよび他の目的、フィーチャ並びに利点は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかとなる。
【0014】
詳細な説明
本明細書において開示されるのは狭い多分散度(例えば、Mw/Mn<2.0)の(メタ)アクリラートベースのポリマーであり、これは重合性(メタ)アクリラートモノマーとして導入されてかつこのポリマー鎖に結合したイオン性光酸発生剤(PAG)を含む。このPAGは好ましくは結合基(tethering group)によってアニオンに結合される。このポリマーは、塩基反応性官能基、例えば、カルボン酸基などをマスクする高活性化エネルギー(E)酸感受性保護基(場合によっては本明細書において「脱離基」と称される)を有するモノマー;塩基可溶性基、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基、フェノール系OHなどを有するモノマー;並びにラクトン含有モノマーをさらに含む。
【0015】
本明細書において使用される場合、「ポリマー」は2種以上の異なるモノマー単位を有するポリマーを含み、そして2種のモノマー単位を有するコポリマー、3種のモノマー単位を有するターポリマー、4種のモノマー単位を有するテトラポリマー、5種のモノマー単位を有するペンタポリマーなどを含む。本明細書に開示されたコポリマーはランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互コポリマーもしくはこれらモチーフの2以上を含む組み合わせであってよいことも認識される。このポリマーは組成勾配を有していてもよい。好ましくは、コポリマーはランダムコポリマーであり、式によってモノマーの具体的な順序は意味されない。本明細書において使用される場合、「アリール」は芳香族基であって、単環式、例えば、フェニル基;多環式、例えば、ビフェニル基;もしくは縮合多環式、例えば、ナフチル基であることができ、「アリール」には、全ての芳香族構造、例えば、6つの炭素原子より少ない構造、例えば、ヘテロ芳香族化合物、例えば、ピラゾール類、チオフェン類、オキサゾール類、ピリジン類などを含むことが理解される。また、本明細書において使用される場合には、「アルキル」基はsp混成炭素含有基であり、かつ線状もしくは分岐であることができ、かつ他に特定されない場合には、シクロアルキルを含んでいてもよい。本明細書において使用される場合、「アラルキル」はアリール部分とアルキル部分との双方を含み、アリールまたはアルキル基のいずれかが隣の基への結合点である基を意味する。さらに、「アニオン結合」とは、有機結合基、例えば、アルキル、アリール、アルコキシ、ポリアルコキシ、アセタールもしくはケタール含有基または他の好適な基が、PAGのアニオンとポリマーとの間で共有結合構造を形成することを意味する。また、本明細書において使用される場合、「置換」とは、ハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシラート、アミド、ニトリル、チオール、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C1−10アルキル、C1−10アルコキシ、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C7−10アルキルアリール、C7−10アルキルアリールオキシ、もしくは前述の少なくとも1種を含む組み合わせのような置換基を含むことを意味する。本明細書において式に関して開示されたあらゆる基もしくは構造は、他に特定されない限りは、またはこの置換が結果的に得られる構造の望まれる特性に有意に悪影響を及ぼさない限りは、そのように置換されうるであろうことが理解される。
【0016】
本明細書に開示されるポリマーはモノマー、連鎖移動剤および開始剤の重合生成物を含む。このポリマーは式(I)を有する酸脱保護性モノマー、式(II)を有する塩基可溶性モノマー、式(III)のラクトン含有モノマー、および式(IV)の光酸発生モノマー;を含むモノマーを含んでなる:
【化4】

式中、各Rは独立してH、F、C1−10アルキルまたはC1−10フルオロアルキルである。好ましくは、RはH、F、C1−6アルキルまたはCFであり得る。本明細書を通して使用される場合、「フルオロ」もしくは「フッ素化」とは1以上のフッ素基が関連する基に結合されていることを意味する。例えば、この定義によってかつ他に特定されない限りは、「フルオロアルキル」はモノフルオロアルキル、ジフルオロアルキルなど、並びにアルキル基の実質的に全ての炭素原子においてフッ素原子が置換しているペルフルオロアルキルを包含し、同様に「フルオロアリール」はモノフルオロアリール、ペルフルオロアリールなどを意味する。この文脈における「実質的に全て」とは、炭素に結合する全ての原子の90%以上、好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上がフッ素原子であることを意味する。
【0017】
式(I)においては、Rは独立してC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキルであり、および各Rは別々に分かれているかまたは少なくとも1つのRは隣のRに結合されて環構造を形成している。好ましくは、式(I)においてRを含む第三級基はt−ブチル基である。より好ましくは、式(I)は2以上のR基を一緒にしたシクロアルキル構造、例えば、1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチルおよび1−メチルシクロヘキシルなどを含むことができる。
【0018】
式(I)の典型的な酸脱保護性モノマーには:
【化5】

または上記のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられることができ、式中、RはH、F、C1−6アルキルまたはC1−6フルオロアルキルである。
【0019】
式(II)においては、Qはエステル含有もしくはエステル非含有のC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキル基である。好ましくは、エステルが含まれる場合には、このエステルはQと二重結合への結合点との間の結合リンクを形成する。このようにして、Qがエステル基である場合には、式(II)は(メタ)アクリラートモノマーであり得る。エステルが含まれない場合には、Qは好ましくは芳香族であり、その結果、式(II)は、例えば、スチレン系モノマーまたはビニルナフトエ酸(vinyl naphthoic)モノマーでありうる。Qはフッ素化されていてよく、またはフッ素化されていなくてもよい。さらに、式(II)においては、aは1〜3の整数であり、好ましくはaは1または2である。
【0020】
また、式(II)においては、Wは−C(=O)−OH、−C(CFOH、−NH−SO−Y(式中、YはFまたはC1−4ペルフルオロアルキルである)、芳香族−OH、または前記のもののいずれかとビニルエーテルとの付加物を含む塩基反応性基である。好ましくは、Qが芳香族でない(例えば、エステル連結アルキルまたはシクロアルキル基Qを有する(メタ)アクリラート構造を式(II)が含む)場合には、Wは−C(CFOHである。また、好ましくは、Qが芳香族である(例えば、Qがエステル連結されているかまたはエステル連結されていない、フェニルもしくはナフチルのような芳香族基である)場合には、WはOHまたは−C(CFOHである。どの塩基反応性基も、酸分解性アセタール脱離基(例えば、一般構造、−O−CH(R’)−O−R”を有し、式中R’はメチル、エチルまたは他のアルキル基であり得る)によってさらに保護されうることが企図される。このような基はエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、1−アダマンタンカルボン酸の2−ビニルオキシエチルエステル、2−ナフトイルエチルビニルエーテル、または他のこのようなビニルエーテルのようなビニルエーテルの付加物である。
【0021】
式(II)を有する典型的な塩基可溶性モノマーには:
【化6】

または、上記のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられることができ、式中、RはH、F、C1−6アルキルまたはC1−6フルオロアルキルである。
【0022】
式(III)においては、Lは単環式、多環式または縮合多環式C4−20ラクトン含有基である。このようなラクトン基は基体へのポリマーの接着性を向上させ、かつ塩基現像剤中でのポリマーの溶解を抑制するために含まれうる。好ましくは、Lは単環式環炭素で(メタ)アクリラート部分に結合される単環式C4−6ラクトンであるか、またはLはノルボルナン型構造をベースにしたC6−10縮合多環式ラクトンである。
【0023】
ラクトン含有モノマーは好ましくは式(IIIa)を有することができる:
【化7】

式中、RはH、F、C1−6アルキルまたはC1−6フルオロアルキルであり、RはC1−10アルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルであり、並びにwは0〜6の整数である。式(IIIa)においては、Rは別々に分かれていてよく、またはラクトン環および/または1以上のR基に結合されていて良く、並びにメタクリラート部分はラクトン環に直接にまたはRを介して間接的に結合されうる。
【0024】
式(III)および(IIIa)の典型的なラクトン含有モノマーには:
【化8】

または、上記のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられることができ、式中、RはH、F、C1−6アルキルまたはC1−6フルオロアルキルである。
【0025】
式(IV)においては、Aはエステル含有またはエステル非含有であって、かつフッ素化されているかまたはフッ素化されていない、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキルである。有用なA基はフッ素化芳香族部分、直鎖フルオロアルキルまたは分岐フルオロアルキルエステルを含むことができる。好ましくは、Aは−[(C(RC(=O)O]−(C(R(CF−基、またはo−、m−もしくはp−置換−C−基であり、式中、各R、RおよびRはそれぞれ独立してH、F、C1−6フルオロアルキル、またはC1−6アルキルであり、cは0または1であり、xは1〜10の整数であり、yおよびzは独立して0〜10の整数であり、並びに合計y+zは少なくとも1である。
【0026】
式(IV)においては、Qはエステル含有もしくはエステル非含有であって、かつフッ素化されているかもしくはフッ素化されていない、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキル基である。好ましくは、エステルが含まれる場合には、このエステルはQと二重結合への結合点との間の結合リンクを形成する。このようにして、Qがエステル基である場合には、式(IV)は(メタ)アクリラートモノマーであり得る。エステルが含まれない場合には、Qは好ましくは芳香族であり、その結果、式(IV)は、例えば、スチレン系モノマーまたはビニルナフトエ酸モノマーでありうる。
【0027】
式(IV)においては、Zはスルホナート(−SO)、スルホンアミドのアニオン(−SO(N)R’、式中R’はC1−10アルキルもしくはC6−20アリールである)、またはスルホンイミドのアニオンを含むアニオン性基である。Zがスルホンイミドである場合には、このスルホンイミドは一般構造、A−SO−(N)−SO−Y、(式中、Aは上述のとおりであり、Yは直鎖、または分岐のC1−10フルオロアルキル基である)を有する非対称スルホンイミドでありうる。好ましくは、Y基はC1−4ペルフルオロアルキル基であり、そして対応する過フッ素化アルカンスルホン酸、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸またはペルフルオロブタンスルホン酸から生じる。
【0028】
好ましくは、式(IV)のモノマーは式(IVa)または(IVb)の構造を有しうる:
【化9】

式中、AおよびRは式(IV)について定義されるとおりである。
【0029】
式(IV)はカチオンGをさらに含み、このカチオンGは金属または非金属カチオンであり得る。好ましい非金属カチオンには、オニウムカチオン、例えば、スルホニウム、オキソニウムまたはヨードニウムをベースにしたものが挙げられる。好ましくは、カチオンGは式(V)を有するオニウムカチオンである:
【化10】

式中、XはSまたはIであり、各Rはハロゲン化されているかもしくはハロゲン化されておらず、独立してC1−30アルキル基、多環式もしくは単環式C3−30シクロアルキル基、多環式もしくは単環式C4−30アリール基であり、ここでXがSの場合には、場合によっては、R基の1つは単結合によって隣の1つのR基に結合されている;zは2または3であり、ここでXがIの場合にはzは2であり、またはXがSの場合にはzは3である。
【0030】
好ましいカチオンGは式(VI)、(VII)または(VIII)を有する:
【化11】

式中、XはIまたはSであり、各R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、ヒドロキシ、ニトリル、ハロゲン、C1−10アルキル、C1−10フルオロアルキル、C1−10アルコキシ、C1−10フルオロアルコキシ、C6−20アリール、C6−20フルオロアリール、C6−20アリールオキシまたはC6−20フルオロアリールオキシであり、ArおよびArは独立してC10−30の縮合または単結合(singly bonded)多環式アリール基であり;XがIの場合にはRは孤立電子対であり、またはXがSの場合にはRはC6−20アリール基であり;pは2または3の整数であり、XがIの場合にはpは2であり、XがSの場合にはpは3である;qおよびrはそれぞれ独立して0〜5の整数であり、sおよびtはそれぞれ独立して0〜4の整数である。
【0031】
式(IV)の典型的な光酸発生モノマーには:
【化12】

または上記のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられ、式中各Rは独立してH、F、C1−6アルキルまたはC1−6フルオロアルキルであり、kは0〜4の整数であり、lは0〜3の整数であり、並びにGは式(V)のカチオンである。好ましくは、Gは式(VI)、(VII)または(VIII)のカチオンである。
【0032】
式(IV)の典型的な具体的な光酸発生モノマーには下記式を有するものが挙げられる:
【化13】

式中、RはH、F、C1−6アルキルまたはC1−6フルオロアルキルである。
【0033】
ポリマーは連鎖移動剤の重合生成物をさらに含む。連鎖移動剤には、ジチオエステルまたはトリチオカルボナート官能基をベースにし、かつ可逆的付加開裂トランスファー(RAFT)重合の条件下での連鎖移動に適した化合物が挙げられる。連鎖移動剤は式(IX)の化合物を含む:
【化14】

式(IX)において、xは0または1であり、およびZはy価のC1−20有機基である。Zは置換されているかまたは置換されておらず、かつ好ましくはC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、またはC7−20アラルキルであり、かつハロゲン、エーテル、スルフィド、カルボン酸、エステル、アミド、ニトリルまたは他の官能基を含むことができる。基Zの価数に応じてyは1以上の任意の整数であり得るが、yは好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1または2である。
【0034】
また、式(IX)においては、Rは置換または非置換のC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキルである。好ましくは、Rはペルオキシまたはジアゾ開始剤のようなラジカル開始剤から生じる。
【0035】
好ましくは、連鎖移動剤は式(X)のもののようにZがCアリール基であるものが挙げられうる:
【化15】

式中、RはC1−10アルキル、C1−10アルコキシ、C3−10シクロアルキル、C6−10アリールまたはC7−10アラルキル基であり、zは0〜5の整数であり、およびRは置換されているかまたは置換されていない、C1−10アルキルまたはC6−10アリール基である。
【0036】
式(VI)の典型的な連鎖移動剤には:
【化16】

または、上述のものの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0037】
ポリマーは場合によっては、開始剤を伴う上記モノマーおよび連鎖移動剤の重合生成物である。適切な開始剤には、当該技術分野において有用なラジカル開始剤、例えば、ペルオキシ開始剤、ジアゾ開始剤などが挙げられうる。例えば、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシ2−エチルへキサノアート(tert−ブチルペルオクトアート)、t−ブチルペルオキシピバラート、tert−ブチルペルオキシベンゾアート、ジ−ベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシイソブチラートのようなペルオキシ開始剤、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、4,4−アゾビス(シアノ吉草酸)のようなジアゾ開始剤など。好ましい開始剤には、デュポンによる商品名バゾ(VAZO)の下で販売されているもの、例えば、VAZO52、VAZO67、VAZO88およびVAZO V−601フリーラジカル開始剤が挙げられる。もう一つの方法として、重合は熱開始(例えば、約120℃を超える、より好ましくは約150℃を超える)によって行われうる。好ましくは、熱開始は1種以上の構成成分モノマーがスチレン系である場合に使用されうる。
【0038】
よって、ポリマーはラジカル的にまたは熱的に開始されたモノマーの重合によって、好ましくは脱ガスされた溶媒中で、連鎖移動剤の存在下で、上述の可逆的付加開裂トランスファー(RAFT)プロセスを用いて製造されうる。重合は、バッチ様式で、連鎖移動剤を含む反応混合物へのモノマーおよび/または開始剤のバッチ添加によって、反応混合物への1以上のモノマーおよび/または開始剤および/または連鎖移動剤の別々のフィードの計量された添加によって、または反応物質を一緒にするのに適切な他の何らかの方法によって行われることができる。ブロックコポリマーは、反応混合物への、各ブロックのためのモノマーの逐次的添加によって製造されることができ、または段階的な組成を有するポリマーは時間の経過によってフィード中のモノマー比率および/または組成を徐々に変えることによって形成されうることが認識されるであろう。RAFT方法によって製造可能なこのようなポリマーの全てが本明細書において企図される。
【0039】
ポリマーは1,000〜100,000g/mol、好ましくは1,500〜50,000g/mol、より好ましくは2,000〜25,000g/mol、さらにより好ましくは3,000〜15,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有しうる。ポリマーは500〜100,000g/mol、好ましくは1,000〜50,000g/mol、より好ましくは1,500〜25,000g/mol、さらにより好ましくは2,000〜15,000g/molの数平均分子量(Mn)を有することもできる。分子量は適切な方法、例えば、約1ml/分の流量で、ユニバーサルキャリブレーションによるポリスチレン標準に較正された架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムを用いるゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて決定されうる。ポリマー多分散度(Mw/Mn)は好ましくは2.0未満、より好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、より好ましくは1.5以下である。
【0040】
フォトレジスト組成物は上述のようなポリマー結合PAGを有するコポリマーを含む。フォトレジストはPAG化合物およびポリマーに加えて、添加剤、例えば、光分解性(photo−destroyable)塩基および界面活性剤なども含みうる。他の添加剤、例えば、溶解速度抑制剤、増感剤、追加のPAGなども含まれうる。フォトレジスト成分は分配およびコーティングのために溶媒中に溶解される。
【0041】
フォトレジストは光分解性塩基を含むことができる。塩基材料、好ましくは光分解性カチオンのカルボキシラート塩の含有は酸分解性基からの酸の中和のためのメカニズムを提供し、かつ光発生酸の拡散を制限し、それによりフォトレジストにおける向上したコントラストを提供する。
【0042】
光分解性塩基には、弱酸(pKa>2)、例えば、C1−20カルボン酸などのアニオンと対になった、光分解性カチオンおよび好ましくはPAGを製造するのにも有用なものが挙げられる。典型的なこのカルボン酸には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、コハク酸、シクロヘキシルカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、および他のこのようなカルボン酸が挙げられる。光分解性塩基には、カチオンがトリフェニルスルホニウムもしくは下記のいずれかである、以下の構造のカチオン/アニオンペアが挙げられる:
【化17】

式中、Rは独立して、H、C1−20アルキル、C6−20アリールもしくはC6−20アルキルアリールであり、アニオンは
【化18】

であり、式中、Rは独立してH、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、C6−20アリールもしくはC6−20アルキルアリールである。他の光分解性塩基には、非イオン性光分解性発色団、例えば、2−ニトロベンジル基およびベンゾイン基などをベースにしたものが挙げられる。典型的な光塩基発生剤はオルト−ニトロベンジルカルバマートである。
【0043】
代替的にもしくは追加的に、他の添加剤には、非光分解性塩基であるクエンチャー(quencher)、例えば、ヒドロキシド、カルボキシラート、アミン、イミンおよびアミドをベースにしたものが挙げられうる。好ましくは、このクエンチャーには、C1−30有機アミン、イミンもしくはアミドが挙げられ、または強塩基(例えば、ヒドロキシドもしくはアルコキシド)もしくは弱塩基(例えば、カルボキシラート)のC1−30第四級アンモニウム塩であり得る。典型的なクエンチャーには、アミン、例えば、Troger’s塩基、ヒンダードアミン、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)もしくはジアザビシクロノネン(DBM)、またはイオン性クエンチャー、例えば、第四級アルキルアンモニウム塩、例えば、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)もしくは乳酸テトラブチルアンモニウムが挙げられる。
【0044】
界面活性剤には、フッ素化および非フッ素化界面活性剤が挙げられ、好ましくは非イオン性である。典型的なフッ素化非イオン性界面活性剤には、ペルフルオロC界面活性剤、例えば、FC−4430およびFC−4432界面活性剤(3Mコーポレーションから入手可能);並びに、フルオロジオール、例えば、ポリフォックス(POLYFOX)PF−636、PF−6320、PF−656およびPF−6520フルオロ界面活性剤(Omnovaから)が挙げられる。
【0045】
フォトレジストは、フォトレジストに使用される成分を溶解し、分配し、そしてコーティングするのに概して好適な溶媒をさらに含む。典型的な溶媒には、アニソール、アルコール、例えば、乳酸エチル、1−メトキシ−2−プロパノールおよび1−エトキシ−2プロパノール、エステル、例えば、酢酸n−ブチル、酢酸1−メトキシ−2−プロピル、メトキシエトキシプロピオナート、エトキシエトキシプロピオナート、ケトン、例えば、シクロヘキサノンおよび2−ヘプタノン、並びに上記溶媒の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0046】
本明細書に開示されるフォトレジスト組成物は、固形分の全重量を基準にして50〜99重量%、具体的には55〜95重量%、より具体的には60〜90重量%、およびさらにより具体的には65〜90の量でコポリマーを含むことができる。フォトレジストにおける成分のこの文脈において使用される「コポリマー」は、本明細書に開示されるコポリマーのみ、またはこのコポリマーとフォトレジストにおいて有用な別のポリマーとの組み合わせを意味しうることが理解されるであろう。光分解性塩基は、固形分の全重量を基準にして0.01〜5重量%、具体的には0.1〜4重量%、さらにより具体的には0.2〜3重量%の量でフォトレジスト中に存在しうる。界面活性剤は、固形分の全重量を基準にして0.01〜5重量%、具体的には0.1〜4重量%、およびさらにより具体的には0.2〜3重量%の量で含まれることができる。クエンチャーは、固形分の全重量を基準にして、例えば、0.03〜5重量%の比較的少量で含まれることができる。他の添加剤は、固形分の全重量を基準にして30重量%以下、具体的には20%以下、もしくはより具体的には10%以下の量で含まれうる。フォトレジスト組成物の全固形分量は固形分および溶媒の合計重量を基準にして0.5〜50重量%、具体的には1〜45重量%、より具体的には2〜40重量%、およびさらにより具体的には5〜35重量%でありうる。固形分は、溶媒を除く、コポリマー、光分解性塩基、クエンチャー、界面活性剤、添加されるPAG、および任意成分の添加剤を含むと理解される。
【0047】
本明細書において開示されたアニオン結合PAGを有するコポリマーを含むフォトレジストはフォトレジストを含む層を提供するために使用されることができる。コーティングされた基体はポリマー結合PAGを含むフォトレジストから形成されうる。このコーティングされた基体は(a)基体表面上のパターン形成される1以上の層を有する基体、および(b)パターン形成される1以上の層上の、ポリマー結合PAGを含むフォトレジスト組成物の層を含む。
【0048】
基体は任意の寸法および形状であることができ、好ましくはフォトリソグラフィに有用なもの、例えば、ケイ素、二酸化ケイ素、シリコンオンインシュレータ(silicon−on−insulator;SOI)、ストレインドシリコン(strained silicon)、ガリウムヒ素、コーティングされた基体、例えば、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタルでコーティングされた基体、超薄型ゲート(ultrathin gate)酸化物、例えば、酸化ハフニウム、金属もしくは金属コーティングされた基体、例えば、チタン、タンタル、銅、アルミニウム、タングステン、これらの合金およびこれらの組み合わせでコーティングされた基体である。好ましくは、本明細書においては、基体の表面はパターン形成される限界寸法層、例えば、1以上のゲートレベル層もしくは半導体製造のための基体上の他の限界寸法層を含む。このような基体には、例えば、直径が20cm、30cmもしくはより大きい寸法、またはウェハ製造に有用な他の寸法を有する円形ウェハとして形成されるケイ素、SOI、ストレインドシリコンおよび他のこのような基体材料が好ましくは挙げられうる。
【0049】
さらに、電子デバイスを形成する方法は(a)ポリマー結合PAGを含むフォトレジスト組成物の層を基体の表面上に適用し、(b)フォトレジスト組成物層を活性化放射線にパターン様に露光し、および(c)露光されたフォトレジスト組成物層を現像してレジストレリーフ像を提供することを含む。
【0050】
適用はスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディングなどをはじめとするあらゆる好適な方法によって達成されうる。フォトレジストの層の適用は好ましくは、回転するウェハ上にフォトレジストが分配されるコーティングトラックを使用して、溶媒中のフォトレジストをスピンコーティングすることにより達成される。分配中に、ウェハは4,000rpm以下、好ましくは約500〜3,000rpm、およびより好ましくは1,000〜2,500rpmの速度で回転させられうる。コーティングされたウェハは回転させられて溶媒を除去し、そしてホットプレート上でベークされて、残留する溶媒を除去し、そして膜から自由体積を除いて膜を均一な高密度にする。
【0051】
次いで、ステッパのような露光ツールを用いてパターン様露光が行われ、露光ツールにおいてはパターンマスクを通して膜が照射され、それによりパターン様に露光される。この方法は好ましくは、極端紫外線(EUV)もしくはeビーム放射線をはじめとする高解像が可能な波長で活性化放射線を発生させる改良型の露光ツールを使用する。活性化放射線を使用する露光は露光領域でPAGを分解して、酸および分解副生成物を発生させ、次いでその酸はポリマーの化学変化をもたらす(酸感受性基をデブロッキング(deblocking)して塩基可溶性基を生じさせるか、あるいは露光領域において架橋反応を触媒する)ことが認識される。この露光ツールの解像度は30nm未満であり得る。
【0052】
次いで、露光された層を、その膜の露光部分を選択的に除去できる(この場合、フォトレジストはポジティブトーンである)、またはその膜の未露光部分を選択的に除去できる(この場合、フォトレジストは露光領域で架橋可能となり、すなわちネガティブトーンである)好適な現像剤で処理することにより、露光されたフォトレジスト層の現像が達成される。好ましくは、フォトレジストは、酸感受性(脱保護可能な)基を有するポリマーをベースにしたポジティブトーンであり、そして現像剤は好ましくは金属イオンを含まない、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液、例えば、水性の0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。パターンは現像によって形成される。
【0053】
1以上のこのパターン形成プロセスに使用される場合には、フォトレジストは電子および光電子デバイス、例えば、メモリデバイス、プロセッサチップ(CPU)、グラフィックチップおよび他のこのようなデバイスを製造するために使用されることができる。
【実施例】
【0054】
本発明は以下の実施例によってさらに説明される。以下に使用される全ての化合物および試薬は、手順が示されているもの以外は市販されている。トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホナート(TPS F2 PAGモノマー)はセントラルガラス(Central Glass)から商業的に得られた。
【0055】
構造的な特徴付けはOMNI−PROBEを用いるINOVA 500NMRスペクトロメータ(プロトンについて500MHzで操作する)、またはGEMINI300NMRスペクトロメータ(フッ素について282MHzで操作する)(それぞれ、Varianから)における核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析によって行われた。ポリマー組成はNOE抑制技術(すなわち、Cr(アセチルアセトナート)および2秒のパルスディレイ)を使用する125MHzでの定量的13C NMRによって決定された。分子量(Mw)および多分散度(PD)は、1mg/mlのサンプル濃度、および0.2重量%の硝酸リチウムを含むテトラヒドロフランで、流量1ml/分で溶離させた、ポリスチレン標準物質を使用して較正されたユニバーサルキャリブレーション曲線を用いる、架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムを使用するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって決定された。
【0056】
フェニルジベンゾチオフェニウム1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホナート(ポリマー実施例2からのPDBT F2 PAGモノマー)の合成。
1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホン酸トリエチルアンモニウム(4.00g、12.1mmol)および臭化フェニルジベンゾチオフェニウム(4.50g、31.2mmol)が、30mLのジクロロメタンおよび30mLの蒸留脱イオン水と共に、100mL丸底フラスコに入れられた。この混合物は激しく一晩攪拌された。攪拌が停止させられ、この混合物は2つの透明な層に別れ、有機相は30mLの1%塩酸水溶液で2回洗浄され、そして30mLの蒸留脱イオン水で5回洗浄された。ヒドロキノン(1mg)が添加され、ロータリーエバポレーションによってジクロロメタンが除かれ、固体として生成物を得た(3.9g、80%収率)。H NMR(500MHz、CDCl)δ8.2(m,4H)、7.8(t,2H)、7.7(d,2H)、7.6(m,3H)、7.5(t,2H)、6.2(s,1H)、5.6(s,1H)、4.9(m,2H)、1.9(s,3H)。19F NMR(300MHz、アセトン−d)δ−115.8(s,2F)。
【0057】
スキーム1に示され、以下の手順に記載される反応に従って典型的なポリマー(ポリマー1)が製造された。
【化19】

【0058】
ポリマー1は以下の手順によって製造された。上記スキーム1に示される4種類のモノマー、(2−(2−フェニル)プロピルメタクリラート、PPMA:1.70g、8.32mmol;3,5−ジ−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)シクロヘキシルメタクリラート、di−HFA:1.60g、3.20mmol;アルファ−(ガンマ−ブチロラクトン)メタクリラート、a−GBLMA:2.07g、12.2mmol;TPS−F2 PAGモノマー:0.943g、1.91mmol)が20mLのバイアルに秤量された。乳酸エチルおよびシクロヘキサノンの70:30w/w混合物(上記モノマーと一緒にして40%固形分溶液を生じさせるのに充分な)9.47gが別のバイアルに秤量された。この溶媒の半分が上記モノマーに添加されて、これらを完全に溶解し、そして他方の半分は保持された。スキーム1に示されるジチオエステルRAFT連鎖移動剤(2−(2−シアノプロピル)ベンゼンジチオナート、0.166g、0.749mmol)が第三の20mLバイアルに秤量され、そして禁止剤および他の不純物を除くためにモノマー溶液が中性アルミナのプラグ(約2cm)を通してろ過された。次いで、ろ過された溶液はRAFT剤を含むバイアルに直接添加され、次いで、残りの溶媒をアルミナカラムに通してこのバイアルに入れた。次いで、アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)の溶液(0.749mL、0.150mmol、トルエン中0.2M溶液)がこのモノマー/連鎖移動剤溶液に添加され、このバイアルは蓋をされ60℃で40時間加熱された。この時点で反応物は室温まで冷却され、内容物は、ジイソプロピルエーテル:メタノールの95:5(v/v)混合物100mL中で沈殿させられた。固体ポリマーはろ過によって分離され、そしてテトラヒドロフラン(9mL)に再溶解され、前記ジイソプロピルエーテル:メタノール混合溶媒の別の100mL中で再沈殿させられた。沈殿物は48時間にわたって空気乾燥させられ、そして40℃で一晩真空で乾燥させられて、4.46g(71%)のフレーク状のピンク色のポリマーを得た。
【0059】
ポリマー1は13C NMRおよびGPCによって特徴付けられた。13C NMR積分値からの相対モノマー比率:PPMA 32%、a−GBLMA 48%、di−HFA 10%、TPS F2 PAG 10%(モル%)。GPC:Mw=5,900;Mn=3,900;Mw/Mn=1.52。
【0060】
スキーム2に示され、以下の手順に記載される反応に従って別の典型的なポリマー(ポリマー2)が製造された。
【化20】

【0061】
乾燥ボックス内で、2−フェニル−2−プロピルメタクリラート(PPMA:5.00g、24.5mmol)、アルファ−(ガンマブチロラクトン)メタクリラート(a−GBLMA:5.29g、31.1mmol)、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)シクロヘキシルメタクリラート(di−HFA:3.64g、7.27mmol)、およびフェニルジベンゾチオフェニウム1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホナート(PDBT F2 PAGモノマー:1.62g、3.31mmol)が40mLのバイアルに秤量された。ガンマ−ブチロラクトン:乳酸エチルの70:30混合物23.3gが別のバイアルに秤量された。この溶媒の半分が上記モノマーに添加されて、これらを完全に溶解し、そして他方の半分は保持された。RAFT剤である2−シアノ−2−プロピルベンゼンジチオナート(0.867g、3.92mmol)が40mLバイアルに秤量され、そしてモノマー溶液が中性アルミナのプラグを通してろ過され、RAFT剤を含むバイアルに直接添加され、次いで、残りの溶媒をアルミナカラムに通してこのバイアルに入れた。VAZO V−601開始剤(0.180g、0.782mmol)が添加され、そしてこのバイアルは蓋をされ、60℃で24時間加熱され、そしてこのバイアルは室温まで冷却され、内容物は、イソプロピルエーテル:メタノールの95:5(v/v)混合物230mL中で沈殿させられた。固体ポリマーはろ過によって集められ、テトラヒドロフラン(THF、23mL)に再溶解され、そしてイソプロピルエーテル:メタノール溶媒の別の230mL中で再沈殿させられた。生じたピンク色のポリマーは真空オーブン内で45℃で一晩乾燥させられて、13.5g(82%)を得た。
【0062】
13C NMR(100MHz、アセトン−d)積分値からの相対モノマー比率:PPMA 35%、a−GBLMA 48%、di−HFA 11%、PDBT F2 PAG 6%(モル%)。GPC:Mw=6,300g/mol;Mn=5,400g/mol;Mw/Mn=1.17。
【0063】
比較ポリマー1は連鎖移動剤を含まなかったが、ポリマー1に使用されたのと同じモノマーセットおよび方法を用いて製造された。
【0064】
比較ポリマー1は以下の手順によって製造された。2−フェニル−2−プロピルメタクリラート(PPMA:0.74g、3.62mmol)、アルファ−(ガンマ−ブチロラクトン)メタクリラート(a−GBLMA:0.63g、3.70mmol)、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)シクロヘキシルメタクリラート(di−HFA:1.50g、3.00mmol)、およびトリフェニルスルホニウム−1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホナート(TPS F2 PAGモノマー:0.59g、1.20mmol)が乳酸エチル/シクロヘキサノン(70:30v/v)溶媒27.4gに溶解された。この溶液は反応容器に入れられ、75℃に加熱された。2−フェニル−2−プロピルメタクリラート(PPMA:9.27g、45.4mmol)、アルファ−(ガンマ−ブチロラクトン)メタクリラート(a−GBLMA:11.76g、69.1mmol)、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)シクロヘキシルメタクリラート(di−HFA:10.85g、21.6mmol)、およびトリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホナート(TPS F2 PAGモノマー:3.20g、6.50mmol)が乳酸エチル/シクロヘキサノン(70:30v/v)溶媒35.4gに溶解された。2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(3.80g、15.3mmol)がアセトニトリル/テトラヒドロフラン(2:1v/v)溶媒3.8gに溶かされた。このモノマーおよび開始剤溶液が75℃を維持しつつ別々に4時間にわたって反応容器に供給され、そして加熱はさらに2時間にわたって続けられた。次いで、この反応液は室温まで冷却され、攪拌されたイソプロピルエーテル:メタノール(95:5w/w)889g中で沈殿させられた。得られたポリマーは真空ろ過によって集められ、真空で45℃で24時間にわたって乾燥させられた。クルードの乾燥ポリマーはテトラヒドロフラン(THF)中で30重量%固形分に溶解され、さらなる上述の混合イソプロピルエーテル:メタノール溶媒1,070g中で再沈殿させられた。再沈殿したポリマーは真空ろ過によって再び集められ、真空オーブン内で45℃で24時間にわたって乾燥させられて、白色粉体としてのポリマー19.5g(51%)を得た。
【0065】
比較ポリマー1は13C NMRおよびGPCによって特徴付けられた。13C NMR積分値からの相対モノマー比率:PPMA 32%、a−GBLMA 48%、di−HFA 9%、TPS F2 PAG 12%。GPC:Mw=5,661;Mn=3,606;Mw/Mn=1.57。
【0066】
比較ポリマー2は連鎖移動剤を含まなかったが、ポリマー実施例1におけるのと同じモノマーを用いて製造された。
【0067】
比較例2のポリマーは以下の手順によって製造された。2−フェニル−2−プロピルメタクリラート(PPMA:1.94g、9.50mmol)、アルファ−(ガンマブチロラクトン)メタクリラート(a−GBLMA:1.62g、9.52mmol)、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)シクロヘキシルメタクリラート(di−HFA:2.83g、5.66mmol)、およびトリフェニルスルホニウム−1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホナート(TPS F2 PAGモノマー:1.54g、3.13mmol)が乳酸エチル/シクロヘキサノン(70:30v/v)溶媒66.6gに溶解された。この溶液は反応容器に入れられ、75℃に加熱された。2−フェニル−2−プロピルメタクリラート(PPMA:30.06g、0.147mol)、アルファ−(ガンマ−ブチロラクトン)メタクリラート(a−GBLMA:33.07g、0.194mol)、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)シクロヘキシルメタクリラート(di−HFA:20.79g、0.0416mol)、トリフェニルスルホニウム−1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホナート(TPS F2 PAGモノマー:8.99g、0.0183mol)および2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10.66g、0.0612mol)が乳酸エチル/シクロヘキサノン(70:30v/v)溶媒88.0gに溶かされた。このモノマー/開始剤溶液が75℃を維持しつつ4時間にわたって反応容器に供給され、そして加熱はさらに2時間にわたって続けられた。この反応液は室温まで冷却され、イソプロピルエーテル:メタノール(95:5w/w)2,850g中で沈殿させられた。得られたポリマーは真空ろ過によって集められ、真空で45℃で24時間にわたって乾燥させられた。クルードの乾燥ポリマーはテトラヒドロフラン(THF)中で30重量%固形分に溶解され、上述の混合イソプロピルエーテル:メタノール溶媒中で再沈殿させられた。生じた再沈殿したポリマーは真空ろ過によって集められ、真空で45℃で24時間にわたって乾燥させられて、白色粉体としてのポリマー91g(62%)を得た。
【0068】
比較ポリマー2は13C NMRおよびGPCによって特徴付けられた。13C NMR積分値からの相対モノマー比率:PPMA 30%、a−GBLMA 44%、di−HFA 13%、TPS F2 PAG 13%。GPC:Mw=5,347;Mn=3,495;Mw/Mn=1.53。
【0069】
比較ポリマー3は連鎖移動剤を含まなかったが、ポリマー2におけるのと同じモノマーを用いて製造された。
【0070】
比較例3のポリマーは以下の手順によって製造された。2−フェニル−2−プロピルメタクリラート(PPMA:1.94g、9.50mmol)、アルファ−(ガンマブチロラクトン)メタクリラート(a−GBLMA:1.62g、9.52mmol)、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)シクロヘキシルメタクリラート(di−HFA:2.83g、5.66mmol)、およびフェニルジベンゾチオフェニウム−1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホナート(PDBT F2 PAGモノマー:1.54g、3.14mmol)がガンマ−ブチロラクトン:乳酸エチル(70:30v/v)溶媒66.6gに溶解された。この溶液は反応容器に入れられ、75℃に加熱された。2−フェニル−2−プロピルメタクリラート(PPMA:30.06g、0.147mol)、アルファ−(ガンマ−ブチロラクトン)メタクリラート(a−GBLMA:33.07g、0.194mol)、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル)シクロヘキシルメタクリラート(di−HFA:20.79g、0.0416mol)、およびフェニルジベンゾチオフェニウム−1,1−ジフルオロ−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−スルホナート(8.99g、0.0183mol)がガンマ−ブチロラクトン:乳酸エチル(70:30v/v)溶媒88.0gに溶かされた。2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10.66g、0.0612mol)がアセトニトリル:テトラヒドロフラン(2:1v/v)溶媒10.7gに溶かされた。このモノマー溶液および開始剤溶液が75℃を維持しつつ4時間にわたって反応容器に別々に供給され、そして加熱はさらに2時間にわたって続けられた。この反応液は室温まで冷却され、イソプロピルエーテル:メタノール(95:5w/w)2,850g中で沈殿させられた。得られたポリマーは真空ろ過によって集められ、真空で45℃で48時間にわたって乾燥させられた。クルードの乾燥ポリマーはテトラヒドロフラン(THF)中で30重量%固形分に溶解され、混合イソプロピルエーテル:メタノール(95:5w/w)中で再沈殿させられた。再沈殿したポリマーは真空ろ過によって集められ、真空で45℃で48時間にわたって乾燥させられて、白色粉体としてのポリマー90g(89%)を得た。
【0071】
比較ポリマー3は13C NMRおよびGPCによって特徴付けられた。13C NMR積分値からの相対モノマー比率:PPMA 36%、a−GBLMA 47%、di−HFA 12%、PAG 5%。GPC:Mw=5,600;Mn=3,544;Mw/Mn=1.58。
【0072】
フォトレジスト製造および処理
248nm(DUV)および13.4nm(EUV)波長でのリソグラフィデータを得るために、以下の表1に示される組成物について、配合物実施例1および2(CEx1および2)並びに配合物比較例1〜3(CFEx1〜3)が準備された。
【0073】
一般的配合手順:
ポリマー、0.5または1重量%で乳酸エチル(EL)に溶かされたテトラヒドロキシイソプロピルエチレンジアミンクエンチャー溶液、乳酸エチルに溶かされた0.5重量%のOmnova(オムノバ)PF656界面活性剤(オムノバから入手可能)、並びに追加のELおよびメチル2−ヒドロキシブチラート(HBM)溶媒を表1に示された量で一緒にすることによって、ポジティブトーンフォトレジスト組成物が製造された。この配合された溶液は0.2μmPTFEフィルタを通された。
【0074】
【表1】

【0075】
上記フォトレジスト配合物は以下のようにリソグラフィ処理された。フォトレジストはTEL ACT−8(東京エレクトロン株式会社)コーティングトラックまたは同様の装置を使用して、有機反射防止コーティング(248nm露光についてはAR商標9、ダウエレクトロニックマテリアルズLLC、またはEUVについては有機下層)を有する200mmシリコンウェハ上にスピンコートされ、130℃で90秒間ベークされて、約50〜60nm厚さのレジスト膜を形成した。得られたフォトレジスト層はKrFエキシマレーザー放射線(248nm)もしくはEUV放射線(eMET、13.4nm)にオープンフレームマスクを通して、並びに28nmの1:1ライン/スペースフィーチャを像形成するためのパターン形成されたマスクをさらに通して(EUV放射線)露光された。露光されたウェハは100℃で60秒間露光後ベークされ、0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド現像剤水溶液で現像されて、コントラストパターンまたはポジティブトーンフォトレジストパターンを形成した。ライン幅およびライン幅ラフネス(LWR)は、日立9380CD−SEMを用いて、800ボルト(V)の加速電圧、8.0ピコアンペア(pA)のプローブ電流で操作し、200Kx倍率を用いて、1.0デジタルズームで64にセットされたフレーム数で、トップダウン走査型電子顕微鏡観察(SEM)によって決定された。LWRは40nmのステップで2μmのライン幅にわたって測定され、測定された領域についての平均として報告された。未露光膜厚さ損失は、0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド現像剤水溶液での60秒間の接触前と後での基体上にコーティングされたフォトレジスト膜の厚さ損失を測定することによって得られた。
【0076】
248nm(DUV)での評価:
フォトスピードは248nm露光で得られた;クリアのための線量(ドース ツー クリア;dose to clear)値(E)(ミリジュール/平方センチメートル、mJ/cm)は表2に示される。現像後の未露光膜厚さ損失(unexposed film thickness loss;UFTL)も得られた;UFTL値(nm)は表2に示される。
【0077】
13.4nm(EUV)での評価:
以下の表2に示されるように、フォトスピード(クリアのための線量(E);測定されたライン幅についてのドース−ツー−サイズ(dose−to−size)、E)、測定されたライン幅(nm)およびLWRデータが、28nmフィーチャサイズ(CD)を目標にするライン/スペースフィーチャ(1:1ピッチ)について得られた。
【0078】
【表2】

【0079】
表2においては、RAFT重合によって製造された狭い多分散度のポリマー1を用いて製造された配合物(FEx1)は、比較のCFEx1(比較ポリマー1を用いて製造された)と比較して、248nm露光で、より低い(より速い)フォトスピードEを有し、並びにCFEx2(比較ポリマー2を用いて製造された)のと同等のDUV E、並びにEUV EおよびEを有することが認められうる。同様に、狭い多分散度のポリマー2を用いて製造された配合物(FEx2)は、CFEx2(比較ポリマー2を用いて製造された)のと同等のDUV並びにEUV EおよびEを有する。248nmで決定される未露光膜厚さ損失については、FEx1はCFEx2(3.0nm)よりも小さなUFTL(1.8nm)を有しており、FEx2はCFEx2(2.2nm)よりも小さなUFTL(0.3nm)を有している。
【0080】
図1はCFEx1(図1において「DY−33」と特定される)およびFEx1(図1において「JK−55」と特定される)について248nm(DUV)で得られた比較コントラスト曲線を示す。DUV波長で、ポリマー1を用いて配合されたFEx1は、比較ポリマー1(非RAFT重合により製造された)を用いて配合されたCFEx1と比較して、より速いフォトスピード(E)およびより鋭いコントラスト(時間に対する膜厚さ損失)を有する。よって、RAFTポリマー(ポリマー1)を用いて製造されたフォトレジストは、非RAFTポリマー(比較ポリマー1)のと比較して向上したコントラストを示すことが認められる。
【0081】
さらに、狭い多分散度のポリマー1を用いて製造された配合物(FEx1)は比較のCFEx2(5.8nm)のと比べて、EUV露光について有意に低減したLWR(4.6nm)を有している。また、狭い多分散度のポリマー2を用いて製造された配合物(FEx2)は比較のCFEx3(4.3nm)と比べて、EUVについて有意に低減したLWR(3.2nm)を有している。
【0082】
図2は、上記配合されたフォトレジストおよび比較のフォトレジストを用いて、EUV露光波長で、28nm名目フィーチャサイズで像形成された1:1ライン/スペースについてのトップダウンSEM顕微鏡写真A〜Dを示す(AはFEx1であり;BはCFEx2であり;CはFEx2であり;並びに、DはCFEx3である)。図2Aと2Bとの比較は、図2B(CFEx2)について得られた5.8nmのLWRに対して、4.6nmの測定LWRによって決定される図2A(FEx1)において得られるさらにきれいなラインを示す。同様に、図2Cと2Dとの比較は、図2D(CFEx3)について得られた4.3nmに対して、3.2nmの測定LWRによって決定される図2C(FEx2)において得られるさらにきれいなラインを示す。
【0083】
よって、RAFT重合によって製造された狭い多分散度のポリマー1および2を用いて製造された配合物(それぞれ、FEx1および2)は、標準のラジカル開始重合方法を用いてそれぞれ製造され、RAFT連鎖移動剤を含んでいない比較ポリマー2を用いて製造された配合物(CFEx2)および比較ポリマー3を用いて製造された配合物(CFEx3)と比較すると、EUV露光下で低減されたUFTLおよびLWRを有している。
【0084】
本明細書に開示された全ての範囲は終点を含み、その終点は互いに独立して組み合わせ可能である。「場合によって」および「任意の」とはその後に記載された事象もしくは状況が起こってよく、または起こらなくてよく、そしてその記載はその事象が起こる例およびその事象が起こらない例を含む。本明細書において使用される場合、「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金もしくは反応生成物を包含する。全ての参考文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
さらに、用語「第1」、「第2」などは、本明細書においては、順序、品質もしくは重要性を示すものではなく、1つの要素を他のものから区別するために使用されることもさらに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有する酸脱保護性モノマーと、式(II)を有する塩基可溶性モノマーと、式(III)のラクトン含有モノマーと、式(IV)の光酸発生モノマーとを含むモノマー、
式(IX)の連鎖移動剤、並びに
場合によっては開始剤
の重合生成物を含むポリマー:
【化1】

式中、各Rは独立してH、F、C1−10アルキルまたはC1−10フルオロアルキルであり、
は独立してC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキルであり、および各Rは別々に分かれているかまたは少なくとも1つのRが隣のRに結合されて環構造を形成しており、
はエステル含有もしくはエステル非含有のC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキルであり、
Wは−C(=O)−OH、−C(CFOH、−NH−SO−Y(式中、YはFまたはC1−4ペルフルオロアルキルである)、芳香族−OH、または前記のもののいずれかとビニルエーテルとの付加物を含む塩基反応性基であり、
aは1〜3の整数であり、
Lは単環式、多環式または縮合多環式C4−20ラクトン含有基であり、
はエステル含有もしくはエステル非含有であって、かつフッ素化されているかもしくはフッ素化されていない、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキル基であり、
Aはエステル含有もしくはエステル非含有であって、かつフッ素化されているかもしくはフッ素化されていない、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリールまたはC7−20アラルキルであり、
Zはスルホナート、スルホンアミドのアニオン、またはスルホンイミドのアニオンを含むアニオン性部分であり、
Gは式(V)を有しており:
【化2】

式中、XはSまたはIであり、各Rはハロゲン化されているかもしくはハロゲン化されておらず、独立してC1−30アルキル基、多環式もしくは単環式C3−30シクロアルキル基、多環式もしくは単環式C4−30アリール基であり、ここでXがSの場合には、場合によっては、R基の1つが単結合によって隣の1つのR基に結合されている;zは2または3であり、ここでXがIの場合にはzは2であり、またはXがSの場合にはzは3である:
【化3】

式(IX)中、
Zはy価のC1−20有機基であり、
xは0または1であり、
は置換もしくは非置換のC1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、C6−20アリール、またはC7−20アラルキルである。
【請求項2】
前記式(I)の酸脱保護性モノマーが、
【化4】

または上記のものの少なくとも1種を含む組み合わせを含み、式中、RはH、F、C1−6アルキルまたはC1−6フルオロアルキルである、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記式(II)を有する塩基可溶性モノマーが、
【化5】

または、上記のものの少なくとも1種を含む組み合わせを含み;
前記式(III)のラクトン含有モノマーが、
【化6】

または、上記のものの少なくとも1種を含む組み合わせを含み;
式中、RはH、F、C1−6アルキルまたはC1−6フルオロアルキルである;
請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
Aが−[(C(RC(=O)O]−(C(R(CF−基、またはo−、m−もしくはp−置換−C−基であり、式中、各R、RおよびRはそれぞれ独立してH、F、C1−6フルオロアルキルまたはC1−6アルキルであり、cは0または1であり、xは1〜10の整数であり、yおよびzは独立して0〜10の整数であり、並びに合計y+zは少なくとも1である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記式(IV)の光酸発生モノマーが、
【化7】

または上記のものの少なくとも1種を含む組み合わせであり、
式中、各Rは独立してH、F、C1−6アルキルまたはC1−6フルオロアルキルであり、kは0〜4の整数であり、lは0〜3の整数であり、並びにGは式(V)のカチオンである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
Gが式(VI)、(VII)または(VIII)を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマー:
【化8】

式中、XはIまたはSであり、各R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、ヒドロキシ、ニトリル、ハロゲン、C1−10アルキル、C1−10フルオロアルキル、C1−10アルコキシ、C1−10フルオロアルコキシ、C6−20アリール、C6−20フルオロアリール、C6−20アリールオキシまたはC6−20フルオロアリールオキシであり、ArおよびArは独立してC10−30の縮合または単結合多環式アリール基であり;XがIの場合にはRは孤立電子対であり、またはXがSの場合にはRはC6−20アリール基である;pは2または3の整数であり、XがIの場合にはpは2であり、XがSの場合にはpは3である;qおよびrはそれぞれ独立して0〜5の整数であり、sおよびtはそれぞれ独立して0〜4の整数である。
【請求項7】
前記式(IV)の光酸発生モノマーが下記式を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマー:
【化9】

式中、RはH、F、C1−6アルキルまたはC1−6フルオロアルキルである。
【請求項8】
前記式(IX)の連鎖移動剤が式(X)の構造を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマー:
【化10】

式中、RはC1−10アルキル、C1−10アルコキシ、C3−10シクロアルキル、C6−10アリールまたはC7−10アラルキル基であり、およびRは置換されているかまたは置換されていない、C1−10アルキルまたはC6−10アリール基である。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマーを含むフォトレジスト組成物。
【請求項10】
(a)基体表面上のパターン形成される1以上の層を有する基体、および
(b)パターン形成される1以上の層上の、請求項9に記載のフォトレジスト組成物の層、
を含むコーティングされた基体。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の前記モノマーを、前記連鎖移動剤の存在下でラジカル的にまたは熱的に開始させることを含む、ポリマーを形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−10956(P2013−10956A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−140619(P2012−140619)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】