説明

ポリマー繊維および不織布

本発明は、熱可塑性ポリマーおよび無機充填剤を含む、ポリマー繊維であって、上記充填剤含有率は、上記ポリマー繊維に対して、10重量%より大きく、かつ上記充填剤の平均粒径(D50)は、6μmより小さいか、6μmに等しい、ポリマー繊維を教示する。本発明はまた、上記ポリマー繊維の製造方法について教示する。本発明はさらに、上記ポリマー繊維より製造される、織物布、特に不織布を教示する。本発明はさらに、上記織物布の製造方法についても教示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマーおよび無機充填剤を含む、ポリマー繊維に関する。このポリマー繊維は、織物布、特に不織布[vliesstoff]の製造のために提唱される。
【背景技術】
【0002】
不活性な無機充填剤の添加による、不織布の製造のためのポリマー繊維の製造は、原則として、当該分野において公知である。
【0003】
特許文献1は、クロス様構造(「クロス様特性」)を有するポリマーまたはポリマー混合物からのクロス(このクロスは、10%までの含有率の無機充填剤を含む)の製造方法を開示する。充填剤含有率を増加させながら、布の柔軟性を保証するために、充填剤混合物が使用される。特に、TiOの添加が、より高い充填剤含有率において、布の硬さの増加を防ぐことが見出された。特許文献1の教示に従い、TiOおよび別の無機充填剤の混合物がそのためにもっぱら使用される。特許文献1においては、充填剤の粒径に関して、10〜150μmのサイズが提唱される。
【0004】
特許文献1は、上記充填剤含有率が増加され、そしてTiOの添加が同時に断念された場合の、クロスの性質への言及はなされていない。より高い充填剤含有率における、最終生成物の性質に対する粒径および粒子形の重要性もまた、開示されていない。
【特許文献1】米国特許第6,797,377号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の背景に対して、本発明の課題は、より高い充填剤含有率を有するポリマー繊維の調製からなり、上記ポリマー繊維から製造される不織布は、<10重量%の充填剤含有率を有するポリマー繊維と比べて、本質的に不変の性質を有すべきである。通気性、水柱(による防水性)[Wassersaeule]、平均ポアサイズ、浸透時間、ならびに機械的性質(最大引張り応力および最大引張り伸長として測定される)は、本発明に係る充填剤含有率において本質的に不変なままである、不織布の性質の例である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、熱可塑性ポリマーおよび無機充填剤を含む、ポリマー繊維であって、
上記充填剤含有率は、上記ポリマー繊維に対して、10重量%より大きく、かつ
上記充填剤の平均粒径(D50)は、6μmより小さいか、6μmに等しい、
ポリマー繊維を教示する。
【0007】
本発明の重要な観念は、かなりの増加した充填剤含有率において、充填剤の粒径がポリマー繊維およびこのポリマー繊維より製造される不織布の一定の性質を保証するのに重大な役割を果たす、という発見よりなる。
【0008】
本発明者らはしたがって、増加した充填剤含有率において、ポリマーマトリックス中の充填剤のほとんど均一である分散が、布の性質の一定性を保証する、ということを認識しており、そして本発明者らは、分散の均一性は本質的に充填剤の粒子のサイズおよび形に依存する、ということを認識する。適切な平均粒径の範囲は、増加する充填剤含有率に対して決定された。が、10重量%より大きい充填剤含有率においては、この範囲は、≦6μm(D50)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るポリマー繊維の好ましい実施形態を記載する前に、本発明を記載するために使用される一般用語が、明確化のために初めに簡単に説明され、そして本発明に関連して示される。
【0010】
(用語)
本発明に係る「糸」[Faden−“スレッド”ともいう]は、織物布の基礎要素を形成する線形構造である。用語「糸」[Faden]はそれにより、用語「フィラメント」および「繊維」[Faser]のための慣習的かつ一般的な用語として理解される。「繊維」[Faser]は、その有限の長さにおいて、「フィラメント」と概念的に異なる。「フィラメント」はそれにより、無限の繊維[Fasern]として理解される。
【0011】
「ポリマー」は、高分子の物質であり、重合、重縮合もしくは重付加[polyaddition]により、単純な分子(モノマー)から構築される。
【0012】
本発明に係る「繊維−形成ポリマー」は、紡糸性[spinnbarkeit]状態を満たす性質を有する、その溶解物または溶液中の性質を有するポリマーである。ポリマーの紡糸性状態は、NitschmanおよびSchrade(Helv.Chem.Acta 31(1948)297)ならびにHirai(Rheol.Acta 1(1958)213),ならびにZiabickiおよびTaskerman−Krozer(Kolloid Z.198(1964)60)に記載される。
【0013】
本発明に係る「充填剤」は、上記ポリマーの押出し成形混合物に添加され得る粒子および他の物質の形態に関し、上記粒子は上記ポリマーに不都合に影響せず、かつ上記押出し成形混合物に均一に分配される。上記充填剤は、種々の物質からなり得、上記粒子の形およびサイズに関して変動の可能性もまた存在する。
【0014】
本明細書の文脈における「織物布」は、織物、たて編み、編物布、撚り[Gelege]、または不織布である。「不織布」はしたがって、織物布のサブタイプである。不織布は、例えば機械的方法によって、または繊維を結合することによって、または化学的補助によってまたはそれらの組み合わせによって、結合される繊維ウェブからなる。
【0015】
(従属請求項)
好ましい実施形態において、本発明に係るポリマー繊維の充填剤は、アルカリ土類炭酸塩、特に、炭酸カルシウムからなる。炭酸カルシウムは、理想的な充填剤であり、とりわけ、例えば、J.T.LutzおよびR.F.Grossman(編集者ら)の「Polymer modifiers and additives」 Marcel Dekker、Inc.2001、ページ125 ffに記載される以下の特性によって特徴付けられる:ポリマーもしくは他の添加物に関する化学的不活性;低比重;所望の屈折率および色;低コスト。
【0016】
炭酸カルシウムは、通常、天然のチョーク堆積物より得られ、そして地域の地理的条件がチョーク中の付加的な無機物の含有率を決める、ということを心に留めておくべきである。したがって、酸化鉄のような金属酸化物もまた、例えば他のアルカリ土類炭酸塩に加えて、チョーク中に含まれ得る。
【0017】
種々のアルカリ土類炭酸塩またはこれらの化合物の2つ以上の混合物の使用もまた当然考慮される。炭酸カルシウム(CaCO)または炭酸マグネシウム(MgCO)または炭酸バリウム(BaCO)が特に提唱される。上記充填剤はしたがって、少なくとも90重量%、好ましくは95重量%、ならびに特に、97重量%の炭酸カルシウムからなる。
【0018】
追加の充填剤で、アルカリ土類炭酸塩と共にもしくはアルカリ土類炭酸塩なしで使用可能な1つ以上の充填剤としては、酸化鉄、酸化アルミニウム(Al)または二酸化ケイ素(SiO)または酸化カルシウム(CaO)または酸化マグネシウム(MgO)または硫酸バリウム(BaSO4-)または硫酸マグネシウム(MgSO-)または硫酸アルミニウム(AlSO)または水酸化アルミニウム(AlOH)が挙げられる。粘土(カオリン)、ゼオライト、ケイ藻土、タルク、雲母またはカーボンブラックもまた考慮される。
【0019】
二酸化チタン(TiO)は一般的な充填剤であり、これもまた原則として本発明と組み合わせて使用され得る。しかし、驚くべきことに、より高い炭酸カルシウム含有率において、つや消し剤である二酸化チタン(TiO)の添加は、まったく不要であり得る、ということが示された。本発明の課題に関してこの状況は注目に値することである。なぜなら、二酸化チタンは炭酸カルシウムよりも高価であり、それにより追加のコスト優位性が得られるからである。
【0020】
本発明に係るポリマー繊維の特に好ましい実施形態において、充填剤含有率は、ポリマー繊維の重量に対して、15〜25重量%の間である。
【0021】
粒径に関しては、本発明に従い使用される充填剤の好ましい範囲は、<6μmである。これは、好ましくは、≦10μmの充填剤の粒子のトップカット(D98)に対応する。この場合の値は、充填剤の粒子の2%のみが>10μmであることを示す。
【0022】
特に好ましい実施形態において、上記粒径は2〜6μmである。記載される下限は、より小さい粒径における本発明の性能に関する言及ではなく、むしろ均一の分散性を保証し、同時に有利な初期価格で入手可能である、粒径の範囲を特徴付ける。
【0023】
上記充填剤の粒子形に関して、球形(例えば、ガラス球体もしくはシリケート球体)、立方体(例えば、炭酸カルシウム)、直方形(例えば、硫酸バリウムもしくはシリカ)、板状(例えば、タルクもしくは雲母)、または円柱形の粒子、の間に区別がなされる。
【0024】
本発明に係るポリマー繊維の製造のために、一般的に熱可塑性化合物全てが考慮される。重要な繊維形成、巻き取り可能な熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドまたはハロゲン含有ポリマーである。
【0025】
ポリオレフィンの種類としては、例えば、ポリエチレン(HDPE、LDPE、LLDPE、VLDPE;ULDPE、UHMW−PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ(1−ブテン)、ポリイソブチレン、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(4−メチルペント−1−エン)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ならびに種々のオレフィンコポリマーが挙げられる。これらに加えて、ヘテロ相ブレンドもまた、上記ポリオレフィンに含まれる。例えば、ポリオレフィン、特にポリプロピレンまたはポリエチレン、ポリオレフィンおよびα,β−不飽和カルボン酸もしくはカルボン酸無水物より作製されたグラフト共重合体またはコポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリアミドまたはこれらの化合物の2つ以上の混合物もまた、使用され得る。
【0026】
上記ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が挙げられるが、ポリ乳酸(ポリラクチド、PLA)のような生分解性ポリエステルもまた挙げられる。
【0027】
上記ハロゲン含有繊維形成ポリマーとしては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
【0028】
これまでに述べた繊維形成合成ポリマーに加えて、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリオキシメチレン、ポリイミドまたはポリ尿素などの他のポリマーがあり、例えば、本発明に係る上記ポリマー繊維のコンポーネントとして、また考慮され得る。
【0029】
さらなる好ましい実施形態において、本発明に係るポリマー繊維は、モノフィラメントもしくはマルチコンポーネントフィラメントとして構築され得る。個々のコンポーネントのポリマー組成物はしたがって、均一である必要がなく、幅広い限度で可変である。特に好ましい実施形態において、充填剤含有コンポーネントの重量パーセントは、マルチコンポーネントフィラメントの全重量に対して、50%より多い。
【0030】
バイコンポーネントフィラメントが使用される場合、種々の形態、例えば、コア/シェルもしくはサイド−トゥ−サイド形[Seite−an−Seite]が機能する。種々のポリオレフィン、特にポリプロピレンもしくはポリエチレンより作製されるバイコンポーネントフィラメントが特に好ましい。
【0031】
ポリマーフィラメントの製造のために、丸形の繊維の使用に加えて、種々の他の断面もまた機能する。特に好ましいのは、モノフィラメントで、その断面が丸形、楕円形、もしくはn角形(ここで、nは3より大きいか、3と等しく、例えば三つ葉形[trilobale]の断面形)のものである。中空断面を有する繊維[Fasern]もまた考慮される。
【0032】
本発明に係るポリマー繊維は、公知の方法に従い製造され得る。以下の工程が本発明で使用される:
i ポリマー顆粒と充填剤の粒子とを混合する工程、
ii この混合物を1つ以上のスピナレットに通して押出し成形する工程、
iii 形成したポリマー繊維を取り出す工程、
iv 必要に応じて、形成したフィラメントを伸展する、および/または緩める工程、ならびに
v 繊維を巻き取る工程、
ここで、
−上記充填剤含有率は、上記ポリマー繊維に対して、>10重量%であり、かつ
−上記充填剤の平均粒径(D50)は、≦6μmである。
【0033】
溶解紡糸法による合成ポリマーからの「紡糸不織布」の製造において、ポリマー溶解物は、圧力ポンプを備えるノズル開口部に押し込められ、そしてフィラメントの形態で取り出される。通常の溶解紡糸技術は、例えば、米国特許第3,692,618号(Metallgesellschaft AG)、同第5,032,329号(Reifenhauser)、WO03038174(BBA Nonwovens、Inc.)またはWO02063087(Ason)に記載される。
【0034】
回収したフィラメントを、圧縮空気および/または部分真空および/または伸展シリンダーによって、伸長することにより、上記高分子はフィラメントに配列され、このときにこのフィラメントは物理的特性(強度、細さ、収縮特性)を得る。伸長後、上記フィラメントは不織布にさらに結合するための支持体上に置かれるか、紡績繊維製造のための所望の長さに切断される(伸長後、フィラメントの長さへの切断がまだ実施されなくても、フィラメントはしばしば、文言上は繊維[Fasern]と称される)。溶解紡糸法中のフィラメントの結合は、当業者に公知の方法で、機械的方法(ほとんどは、ニードリングまたは水ジェット結合法([Wasserstrahlverfestigung]))、熱(溶接、熱と同時の圧力の使用)または化学的方法(結合剤)によって起こり得る。上記好ましい溶解紡糸法に加えて、カーディング法、溶解−ブロー法、湿式不織布法、静電紡績法もしくは空力不織布製造法が、不織布製造法として使用され得る。
【0035】
本発明に係る布、特に不織布はまた、上記に示した方法に従い製造され得る。フィラメントの押出し成形の前に、示された量および粒径の充填剤の添加を実施する。以下の工程が次に用いられる:
i ポリマー顆粒と充填剤の粒子とを混合する工程、
ii この混合物を1つ以上のスピナレットに通して押出し成形する工程、
iii 形成したポリマー繊維を取り出す工程、
iv 必要に応じて、形成したフィラメントを伸展する、および/または緩める工程、ならびに
v 不織布製造のために繊維を巻き取る工程、
ここで、
−充填剤含有率は、ポリマー繊維に対して、>10重量%であり、かつ
−充填剤の平均粒径(D50)は、≦6μmである。
【0036】
ポリオレフィン繊維、特に、ポリプロピレン繊維および/またはポリプロピレン−ポリエチレンバイコンポーネント繊維、特に、PPコアおよびPEシェルによるコア−シェル繊維からの織物布が、特に好ましく使用される。これらの製品は、有利な価格に加えて、化学的に激しい環境に対する高い安定性により特徴付けられる。好ましい実施形態において、織物布は単独もしくは数種の種々の天然繊維との混合物からなる。麻、ジュート、サイザルおよびタバコ葉が、例えば天然繊維として使用される。
【0037】
本発明に係る不織布のその結合のさらなる最適化(例えば、カレンダーがけにおいて、熱的結合中の熱および圧力の変化による)は、炭酸カルシウムで満たされた不織布の特性が本明細書で示された範囲を超えて変化し得る、という事実に確かに寄与し得る。
【0038】
本発明に従い製造される不織布は、示される限界において以下の特徴により正確に定義される:
− 7〜500g/m、好ましくは10〜200g/mの間の基準重量[Flachengewicht]
−基準重量(g/m)および通気性(1/ms、DIN EN ISO 9237に従う)の積[Produkt]が110,000±20%の範囲
−水柱(による防水性)(DIN EN 20811に従う)の基準重量に対する比の値が2.5±20%
−親水化されたフィラメント表面が、EDANA ERT 150値に従う、5秒未満のストライク−スルー時間を有する
−最大引張り応力(DIN 29073−3に従う)の基準重量に対する比の値が、機械の方向に対して1.7±20%、ならびに直交方向に対して1.0±20%。
−最大引張り伸長(DIN 29073−3に従う)の基準重量に対する比の値が、機械の方向に対して3.3±20%、ならびに直交方向に対して4.0±20%。
−1〜5dtex、好ましくは2〜3.5dtexの範囲のフィラメントタイター
不織布の多くの適用可能性も、本発明の状況内である。本発明に係る不織布の最も重要な適用可能性は、挿入用材料、個人用衛生物品(おむつ、サニタリーナプキン、化粧用パッド)、ダストクロスおよびモップ用クロス、ならびにガス用、エアゾール用および液体用のフィルター、包帯および傷用ガーゼの製造である。断熱材料、聴覚用不織布および屋根トラス用ブランケットの製造もまた考慮され得る。
【0039】
いわゆる地盤用シートへの適用範囲は、一般的な用語の範囲に対して、非常に広範囲にわたる。地盤用シートは、例えば、防壁の強化において、屋根の植生用構造における層として、地層および層素材の分離のための埋立てのカバーにおける層として、または道路の舗装の道床の下の中間層として、使用される。不織布はまた、作物畑および野菜畑のカバーとして農業および園芸学において有益に使用され得る。
【実施例】
【0040】
本発明のさらなる詳細および特徴は、以下の実施例によってさらに説明される。しかし、以下の実施例は、本発明を制限することを意味せず、単に実施例を説明するだけである。
【0041】
(実施例1:モノフィラメントからなる不織布)
種々の炭酸カルシウムの含有率および種々の基準重量を有するPP紡糸不織布を、従来の紡糸不織布パイロットプラント(Reicofil 3)で製造した。使用した炭酸カルシウム(Omyalene 102M−OG)は、粒状化した炭酸カルシウムであり、Omya AGより注文できる。
【0042】
不織布の製造のための出発原料として、Ziegler−Natta触媒を用いて製造されたPPを選んだ(ZN−PP:Moplen HP560R;製造者Basell)。ここで、本発明の方法はこのPPタイプに制限されず、代わりに、繊維[Faser]、フィラメント、または不織布形成に適切な他のプラスチックもまた、適切であり、例えば、メタロセン−PP、プロピレン統計共重合体およびヘテロ相プロピレンコポリマー、ポリオレフィンブロックポリマーおよびポリオレフィンブロックコポリマー、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミドなどである。
【0043】
表1は、製造された不織布の組成ならびに選択された特性をまとめる。
【0044】
純粋なPPモノフィラメントからなり、溶解紡糸法で製造された、不織布サンプル 12.1、17.1および20.1は、参照として与える。
【0045】
溶解紡糸法により製造された、不織布サンプル12.2、17.2および20.2を、90%PPおよび10%炭酸カルシウムの混合物からなるモノフィラメントから製造した。
【0046】
溶解紡糸法により製造された、不織布サンプル12.3、17.3および20.3を、85%PPおよび15%炭酸カルシウムの混合物からなるモノフィラメントから製造した。
【0047】
溶解紡糸法により製造された、不織布サンプル12.4および20.4を、75%PPおよび25%炭酸カルシウムの混合物からなるモノフィラメントから製造した。
【0048】
【表1−1】

【0049】
【表1−2】

【0050】
【表1−3】

【0051】
【表1−4】

実施例2:バイコンポーネント繊維からなる不織布
上記に示された方法に加えて、他の繊維形態[Faserformen]も考慮され得るため、不織布の製造のためのマルチコンポーネント繊維[Fasern]を紡績した。ここで、炭酸カルシウムは繊維全体に分布されず、むしろ個々の繊維[Faser]コンポーネントにのみ分布される。
【0052】
コア/シェル バイコンポーネント繊維からの不織布を実施例のように製造した。
【0053】
表2は、組成ならびに選択された特性をまとめる。
【0054】
溶解紡糸法で製造された、50/50のコア/シェル比を有する純粋なPPバイコンポーネントフィラメントからなる、不織布サンプル12.1Bおよび20.1Bを、参照として与える。
【0055】
溶解紡糸法により製造された、不織布サンプル12.2Bおよび20.2Bは、90%PPおよび10%炭酸カルシウムの混合物からなるフィラメントのコア、および純粋なPPからなるシェルである、PPバイコンポーネントからなる。コア/シェル比は75/25であった。繊維[Faser]全体に対して、上記炭酸カルシウム含有率は約7.5%である。
【0056】
溶解紡糸法により製造された、不織布サンプル12.3Bおよび20.3Bは、フィラメントのコアおよびシェルの両方が90%PPおよび10%炭酸カルシウムの混合物からなる、PPバイコンポーネントからなる。コア/シェル比は50/50であった。繊維[Faser]全体に対して、上記炭酸カルシウム含有率は約5%である。
【0057】
溶解紡糸法により製造された、不織布サンプル20.4Bは、75%PPおよび25%炭酸カルシウムの混合物からなるフィラメントのコア、および純粋なPPからなるシェルである、PPバイコンポーネントからなる。コア/シェル比は50/50であった。繊維[Faser]全体に対して、上記炭酸カルシウム含有率は約12.5%である。
【0058】
溶解紡糸法により製造された、不織布サンプル20.5Bは、75%PPおよび25%炭酸カルシウムの混合物からなるフィラメントのコア、および純粋なPPからなるシェルである、PPバイコンポーネントからなる。コア/シェル比は75/25であった。繊維[Faser]全体に対して、上記炭酸カルシウム含有率は約18.5%である。
【0059】
不織布の製造のための上記混合物はまた、上記の調合物[Mischungen]に加えて、他の添加物または添加混合物、特に、二酸化チタンまたは顔料を含み得る、ということが理解される。
【0060】
【表2−1】

【0061】
【表2−2】

表1および2における結果は、炭酸カルシウムの添加が、驚くべきことに、不織布の特性に目立つ変化を引き起こさない、ということを示す。
【0062】
実施例3:充填剤添加後の親水性
衛生製品(例えば、おむつ)のために使用される不織布は、一般的に親水性にされる。例えば、GE SILICONES社の親水化剤[Hydrophilierungsmittel] Nuwet 237が本発明で使用され得る。
【0063】
炭酸カルシウム含有率の機能としての親水性を調べるために、純粋なPPより作製される不織布と、10%の炭酸カルシウム含有率、ならびに12g/mおよび20g/mの基準重量を有する不織布との両方を、キスロール塗布[Kissroll−Auftrag]を使用して、水中で7.5% Nuwet 237からなる調合物により親水化した。この方法において塗布された活性物質含有率は、不織布の重量に対して約0.2%であった。
【0064】
炭酸カルシウムが提供されない親水化された不織布に対して、4.3秒(12g/m)および3.1秒(20g/m)の浸透時間が測定された。10%炭酸カルシウム含有率を有する親水化された不織布に対して、3.5秒(12g/m)および3.8秒(20g/m)の浸透時間が測定された。
【0065】
これより、10%の炭酸カルシウムの添加は、親水性性質に対し、顕著な効果を有さないことが見出された。
【0066】
方法
フィラメントタイターの決定
フィラメントタイターの決定を、顕微鏡により実施した。測定されたタイター(マイクロメートルで)のデシテックスへの変換は、以下の式(PPの密度=0.91g/cm):
【0067】
【数1】

に従い実施した。
【0068】
基準重量の決定
基準重量の決定を、DIN EN 29073−1に従い、10×10cm試験検体上で実施した。
【0069】
不織布の厚さは、正確なサイズの2つの平面で平行な測定表面間の距離として測定し、その間で不織布は規定された測定圧を受ける。この方法を、DIN EN ISO 9703−2に従って実施した。支持体の重量125g、測定表面25cm、測定圧5g/cm
【0070】
平均ポアサイズの決定
不織布の平均ポアサイズの決定を、キャピラリーフローポロメーター(PMI Capillary Flow Porometer CFP−34RUF8A−3−X−M2T)により実施した。特別な液体で満たされたサンプルを次に、上記ポロメーター中で連続的に増加する気圧にさらし;気圧および気流量の間の関係を測定する。
【0071】
通気性の決定
通気性の測定を、DIN EN ISO 9237に従い実施した。測定頭部の表面は、20cmであり;適用試験圧は200Paであった。
【0072】
水柱(による防水性)の決定
水柱(による防水性)の決定をDIN EN 20811に従い実施した。試験圧のグラジエントは10mbar/分であった。耐水性の基準として、試験表面の3つの位置で最初の水滴が浸透する時の、mbarの水圧もしくはmmの水柱を示す。
【0073】
機械的性質の決定
不織布の機械的性質は、DIN EN 29073−3に従い決定した。引張り長さ:100mm、サンプル幅50mm、前進率[Vorschub]200mm/分。「最高引張り応力」は、応力−伸長曲線を通しての最大達成応力であり;「最高引張り伸長」は、最高引張り応力に属する応力−伸長曲線における伸長である。
【0074】
親水性の決定
親水化された不織布の浸透時間(「液体ストライクスルー時間」)の測定を、EDANA ERT 150に従い実施した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーおよび無機充填剤を含むポリマー繊維であって、
−該充填剤含有率は、該ポリマー繊維に対して、>10重量%であり、かつ
−該充填剤の平均粒径(D50)は、≦6μmである、
ポリマー繊維。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー繊維であって、前記充填剤がアルカリ土類炭酸塩である、ポリマー繊維。
【請求項3】
請求項1および2のいずれか一項に記載のポリマー繊維であって、前記充填剤が少なくとも、90重量%、好ましくは95重量%、特に97重量%の炭酸カルシウムからなる、ポリマー繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー繊維であって、前記充填剤が二酸化チタンを含まない、ポリマー繊維。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー繊維であって、前記充填剤の含有量が、前記ポリマー繊維に対して、15〜25重量%の間である、ポリマー繊維。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー繊維であって、前記充填剤の粒子のトップカット(D98)が≦10μmである、ポリマー繊維。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー繊維であって、前記充填剤の平均粒径(D50)が、好ましくは、2μm〜6μmの間である、ポリマー繊維。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー繊維であって、前記ポリマーがポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィドもしくはハロゲン含有ポリマーである、ポリマー繊維。
【請求項9】
請求項8に記載のポリマー繊維であって、前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリイソブチレン、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、またはこれらの化合物の2つ以上の混合物である、ポリマー繊維。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリマー繊維であって、該ポリマー繊維が、モノフィラメントまたはマルチコンポーネントフィラメントであり、マルチコンポーネントフィラメントである場合、該フィラメントのコンポーネント全てが同じポリマー組成物からなるか、異なるポリマー組成物からなるかのいずれかである、ポリマー繊維。
【請求項11】
請求項10に記載のポリマー繊維であって、前記マルチコンポーネントフィラメントが、コア/シェルとして設計されるバイコンポーネントフィラメントまたはサイド−トゥ−サイド形バイコンポーネントフィラメントであり、前記充填剤が一方のコンポーネントのみに含まれる、ポリマー繊維。
【請求項12】
請求項11に記載のポリマー繊維であって、前記充填剤を含むフィラメントのコンポーネントの重量パーセントが、前記マルチコンポーネントフィラメントの重量に対し、>50重量%である、ポリマー繊維。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリマー繊維であって、該ポリマー繊維が、種々の断面、特に、中空断面もしくは三つ葉形の断面を有する、ポリマー繊維。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のポリマー繊維の製造方法であって、該方法が、以下:
i ポリマー顆粒と充填剤の粒子とを混合する工程、
ii この混合物を1つ以上のスピナレットに通して押出し成形する工程、
iii 形成したポリマー繊維を取り出す工程、
iv 必要に応じて、形成したフィラメントを伸展する、および/または緩める工程、ならびに
v 該繊維を巻き取る工程
を含み、以下
−該充填剤含有率は、該ポリマー繊維に対して、>10重量%であり、かつ
−該充填剤の平均粒径(D50)は、≦6μmである、
方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のポリマー繊維を含む、織物布。
【請求項16】
前記織物布が不織布である、請求項15に記載の織物布。
【請求項17】
請求項16に記載の織物布の製造方法であって、該方法が、
i ポリマー顆粒と充填剤の粒子とを混合する工程、
ii この混合物を1つ以上のスピナレットに通して押出し成形する工程、
iii 形成したポリマー繊維を取り出す工程、
iv 必要に応じて、形成したフィラメントを伸展する、および/または緩める工程、ならびに
v 不織布製造のために該繊維を巻き取る工程
を含み、以下
−該充填剤含有率は、該ポリマー繊維に対して、>10重量%であり、かつ
−該充填剤の平均粒径(D50)は、≦6μmである、
方法。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれか一項に記載の織物布であって、該織物布が請求項1〜13のいずれか一項に記載のポリマー繊維と、単独もしくは数種の種々の天然繊維との混合物からなる、織物布。
【請求項19】
以下、
−個人用衛生物品(おむつ、サニタリーナプキン、化粧用パッド)、
−掃除用クロス、拭き掃除用クロス、モップ用クロス、
−フィルター(例えば、ガス用、エアゾール用、液体用)
−包帯、傷用ガーゼ、
−断熱材料、聴覚用不織布、
−挿入用クロス、
−屋根トラス用ブランケット、
−地盤用シート、または
−作物畑および野菜畑のためのカバー
を製造するための、請求項16および17のいずれか一項に記載の不織布の使用。

【公表番号】特表2009−534549(P2009−534549A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506953(P2009−506953)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003415
【国際公開番号】WO2007/124866
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(597018945)ファイバーウェブ コロビン ゲーエムベーハー (16)
【住所又は居所原語表記】Woltorfer Strasse 124, D−31224 Peine,Germany
【Fターム(参考)】