説明

ポリマー被覆金属酸化物およびその製造方法

本発明は、新規なポリマー被覆金属酸化物を提供することを目的とする。本発明のポリマー被覆金属酸化物は、ポリマーがシロキサン骨格を有する。本発明のポリマー被覆金属酸化物の製造方法は、シロキサン骨格を有するポリマーの溶液に、金属酸化物を接触させる方法である。これにより、ポリマーを金属酸化物の表面に結合させることができる。ここで、ポリマーは分岐構造を有することが好ましい。また、その分岐構造を有するポリマーがデンドリティックポリマーであることが好ましい。また、金属酸化物が、ガラス、シリカゲル、酸化チタン、チタン酸バリウム、インジウムチンオキシド(ITO)、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄などであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポリマー被覆金属酸化物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
従来、金属酸化物の表面処理にはシランカップリング剤が使用されていた(Yoshioka,Hiroshi.Silane coupling agents.Nippon Setchaku Kyokaishi(1985),21(6),252−60.CODEN;NSKSAZ ISSN:0001−8201,CAN103;105586 AN 1985:505586 CAPLUS(Copyright2003ACS),または、Tadanaga,Kiyoharu;Ueyama,Kaori;Sueki,Toshitsugu;Matsuda,Atsunori;Minami,tsutomu,Micropatterning of Inorganic−Organic Hybrid Coating Films from Various Tri−Functional SiliCon Alkoxides with a Double Bond in Their Organic Components.Journal of Sol−Gel Science and Technology(2003),26(1−3),431−434,CODEN;JSGTEC ISSN;0928−0707,AN2002;815093 CAPLUS(Copyright2003ACS))。
一方、デンドリティックポリマーが直鎖状ポリマーと異なり、多数の末端を高密度に有するという点で注目されつつある(特表平8−510761号公報)。
【発明の開示】
上述した従来のシランカップリング剤では、導入できる機能団は一分子につき一個のみであった。これでは、表面処理による機能のコントロールが困難であるという問題がある。そのため、一度に数多くの機能団の導入が可能な化合物が望まれている。
一方、従来のデンドリティックポリマーは金属酸化物との密着性が悪いために金属酸化物に被覆しようとする試みは行われていなかった。
本発明の目的は、新規なポリマー被覆金属酸化物およびその製造方法を提供することである。
本発明のポリマー被覆金属酸化物は、ポリマーがシロキサン骨格を有するものである。これにより、ポリマーを金属酸化物の表面に結合させることができる。
ここで、ポリマーは分岐構造を有することが好ましい。また、その分岐構造を有するポリマーがデンドリティックポリマーであることが好ましい。さらに、そのポリマーが、ビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、ビス(ジメチルアリルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルアリルシロキシ)シランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したもの、あるいはビス(ジメチルシロキシ)メチルビニルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)ビニルシラン、ビス(ジメチルシロキシ)メチルアリルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)アリルシランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したものであることが好ましい。さらにまた、金属酸化物が、ガラス、シリカゲル、酸化チタン、チタン酸バリウム、インジウムチンオキシド(ITO)、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄の単独、もしくは2種以上を組み合わせたものであることが好ましい。
また、本発明のポリマー被覆金属酸化物の製造方法は、シロキサン骨格を有するポリマーの溶液に、金属酸化物を接触させる方法である。これにより、ポリマーを金属酸化物の表面に結合させることができる。
ここで、ポリマーが分岐構造を有することが好ましい。また、その分岐構造を有するポリマーがデンドリティックポリマーであることが好ましい。さらに、そのポリマーが、ビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、ビス(ジメチルアリルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルアリルシロキシ)シランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したもの、あるいはビス(ジメチルシロキシ)メチルビニルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)ビニルシラン、ビス(ジメチルシロキシ)メチルアリルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)アリルシランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したものであることが好ましい。さらにまた、金属酸化物は、ガラス、シリカゲル、酸化チタン、チタン酸バリウム、インジウムチンオキシド(ITO)、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄の単独、もしくは2種以上を組み合わせたものであることが好ましい。
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
シロキサン骨格を有するポリマーで被覆する金属酸化物とすることにより、または、シロキサン骨格を有するポリマーの溶液に、金属酸化物を接触させることにより、新規な化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、参考例1により合成された中間体のNMRスペクトルである。
図2は、参考例2により合成されたモノマーのNMRスペクトルである。
図3は、参考例3により合成されたポリマーのNMRスペクトルである。
図4は、参考例3により合成されたポリマーの赤外吸収スペクトルである。
図5は、参考3により合成されたポリマーのGPCチャートである。
図6は、実施例1における、未処理シリカゲルのXPSスペクトルである。
図7は、実施例1における、処理済みシリカゲル粒子のXPSスペクトルである。
図8は、比較例1における、処理済みシリカゲル粒子のXPSスペクトルである。
図9は、実施例2における、未処理シリカゲルのXPSスペクトルである。
図10は、実施例2における、処理済みシリカゲル粒子のXPSスペクトルである。
図11Aは、実施例2における、未処理シリカゲルのSEM写真である。
図11Bは、実施例2における、処理済みシリカゲル粒子のSEM写真である。
図12は、実施例3における、未処理酸化チタン粒子のXPSスペクトルである。
図13は、実施例3における、処理済み酸化チタン粒子のXPSスペクトルである。
図14Aは、実施例3における、未処理酸化チタンのSEM写真である。
図14Bは、実施例3における、処理済み酸化チタン粒子のSEM写真である。
図15は、比較例2における、処理済み酸化チタン粒子のXPSスペクトルである。
図16は、比較例2における、処理済み酸化チタン粒子のSEM写真である。
図17は、実施例4における、未処理チタン酸バリウム粒子のXPSスペクトルである。
図18は、実施例4における、未処理チタン酸バリウム粒子のXPSスペクトルである。
図19は、実施例4における、未処理チタン酸バリウム粒子のXPSスペクトルである。
図20は、実施例4における、未処理チタン酸バリウム粒子のXPSスペクトルである。
図21は、実施例4における、処理済みチタン酸バリウム粒子のXPSスペクトルである。
図22は、実施例4における、処理済みチタン酸バリウム粒子のXPSスペクトルである。
図23は、実施例4における、処理済みチタン酸バリウム粒子のXPSスペクトルである。
図24は、実施例4における、処理済みチタン酸バリウム粒子のXPSスペクトルである。
図25は、実施例6における、処理済みチタン酸バリウム粒子(左の試験管)および未処理チタン酸バリウム粒子(右の試験管)のメチルエチルケトン中での分散状態を示す写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、ポリマー被覆金属酸化物およびその製造方法にかかる発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、ポリマー被覆金属酸化物の出発原料について説明する。出発原料としては、金属酸化物とポリマーを使用する。
金属酸化物について説明する。金属酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えばガラス、シリカゲル、酸化チタン、チタン酸バリウム、インジウムチンオキシド(ITO)、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄の単独、もしくは2種以上を組み合わせたものが挙げられる。これらのものは目的に応じて使い分ければ良い。
また、その形状も限定されるものではなく、粒状、糸状、板状の単独、もしくは2種以上を組み合わせたもので良い。
また、金属酸化物は、化合物全体が酸化物である必要はない。例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、スズなどの金属において、その金属表面に形成された金属酸化物被膜であってもよい。
ポリマーについて説明する。本発明のポリマーとはポリシロキサン骨格を有するポリマーであれば特に限定されるものではない。好ましくは、そのポリマーは分岐構造有するものが良く、さらに好ましくはその分岐構造を有するポリマーがデンドリティックポリマーであることが良い。そのデンドリティックポリマーの一例を挙げると式(化1〜8)に示すようなビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、ビス(ジメチルアリルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルアリルシロキシ)シランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したもの、あるいはビス(ジメチルシロキシ)メチルビニルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)ビニルシラン、ビス(ジメチルシロキシ)メチルアリルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)アリルシランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したものなどがある。







被覆されるポリマーの分子量は特に限定されるものではないが、1000〜80000の範囲内であることが良く、好ましくは1000〜60000、さらに好ましくは1000〜45000のものが良い。分子量が1000未満であると、分子量が低すぎ金属酸化物に被覆させても十分な被覆量を得ることができず、また、分子量が80000を越えると、今度はポリマーの分子量が高すぎるため分子がかさ高くなり被覆量も減少してしまうこととなる。
本発明のポリマーは金属酸化物に強固に被覆されている。ポリマーは金属酸化物に被覆されていれば特に限定されるものではなく、その結合様式は共有結合であっても、あるいはイオン結合、水素結合、疎水結合などによるものであっても、さらにはそれらが組み合わさったものでも良い。
金属酸化物が粒子状であった場合、ポリマーの被覆量は金属酸化物1g当たり0.005〜0.2gの範囲内が良く、好ましくは0.007〜0.19gが良く、さらに好ましくは0.008〜0.19gが良い。被覆量が0.005g未満であると被覆した効果が小さく、また0.2gを越えると被覆されたものの機能を消失させることとなり好ましくない。
ポリマー被覆金属酸化物の製造方法について説明する。ポリマー被覆金属酸化物は、シロキサン骨格を有するポリマーの溶液に、金属酸化物を接触することにより作ることができる。
その際に用いられる溶媒はポリマーを溶解もしくは分散させるものであれば良く、例えば、アセトン、ヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、水の単独、もしくは2種以上を組み合わせたものが挙げられるが、特に制約されるものではない。
反応温度はポリマーと被覆させる金属酸化物との間で何らかの反応が起これば限定されるものではないが、溶液中で加熱する場合には、通常3〜200℃の範囲で行われ、好ましくは5〜180℃、さらに好ましくは10〜150℃の範囲内で行われる。
また、シロキサン骨格を有するポリマーを溶液中で、金属酸化物と接触させた後に、空気中または窒素ガス雰囲気下で加熱して強固に結合させることもできる。この場合の加熱温度は20〜250℃の範囲で行われ、好ましくは30〜200℃、さらに好ましくは50〜150℃の範囲内で行われる。
本発明では、反応液中のポリマー濃度についても特に制約されるものではないが好ましくは0.01〜10質量%で行われ、好ましくは0.05〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%で行われる。
ポリマー被覆金属酸化物の製造方法は、金属酸化物をポリマー溶液に浸すことに限定されない。このほか、ポリマー溶液を塗布したり、電界中で電着させるなどの方法を採用することができる。
ポリマー被覆金属酸化物について説明する。ポリマーと金属酸化物の結合状態は、つぎのようであると考えられる。ポリマー骨格中のシロキサン結合と金属酸化物中のM−OH(Mは金属)との間で組みかえ反応が起こり、M−O−Si結合が生成することによるものと推定される。
以上のことから、本実施の形態によれば、シロキサン骨格を有するポリマーで被覆する金属酸化物とすることにより、または、シロキサン骨格を有するポリマーの溶液に金属酸化物を接触させることにより、ポリマーを金属酸化物の表面に結合させることができる。この結果、新規な化合物を提供することができる。
分岐構造のポリマーは、直鎖状ポリマーと異なり、多くの末端基を有しており、ここに種々な官能基を導入できる。よって、金属酸化物表面を種々な官能基で修飾することができる。
本発明は、クロマトグラフィー担体、防汚処理ガラス、表面処理コンポジットフィラー、表面処理コンデンサー、化粧品用基材、毛髪洗浄剤、毛髪処理剤、衣類用洗浄剤、衣類用処理剤などに適用することができる。
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
本発明にかかる実施例について具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
参考例1
ジメチルビニルシラノールの合成
還流管をつけた1Lの三口フラスコを窒素置換した後、氷浴中でエチルエーテル700mlを入れ、アニリン8.38g(0.09mol)、水1.48g(0.087mol)を加え攪拌した。50mlのエチルエーテルにあらかじめ溶解しておいたビニルジメチルクロロシラン10g(0.082mol)をゆっくりと滴下し、室温で15分攪拌した。反応は化9に示すとおりである。生成する塩を濾過により除去後、無水硫酸マグネシウムで脱水を行い、溶媒を減圧留去し、目的物を得た。収率は63%であった。NMRスペクトルを図1に示す。

参考例2
ビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシランの合成
還流管をつけた1Lの三口フラスコを窒素置換した後、氷浴中でエチルエーテル500ml、トリエチルアミン8.21g(0.081mol)を入れ、7.54g(0.074mol)のジメチルビニルシラノールを加え攪拌した。これへ、50mlのエチルエーテルに溶解したジクロロメチルシラン4.24g(0.037mol)をゆっくりと滴下し、室温で20分間攪拌した。反応は化10に示すとおりである。生成する塩を濾過により除去後、エバポレーターで低沸点溶媒等を除去した。蒸留により、無色透明のビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシランを得た。収率は62%であった。沸点(bp)は46〜48℃/10mmHgであった。NMRスペクトルを図2に示す。

参考例3
分岐(ハイパーブランチ)ポリマーの合成
還流管をつけた100mlの三口フラスコを窒素置換した後、このフラスコ中でビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン2.49g(0.01mol)を50mlのTHFに溶解した。Karstedt触媒(platinum(O)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane complex 0.1M in xylene)を数滴加え、IRスペクトルで完全にSi−H基が消失するまで加熱還流し、室温まで冷却した。エバポレーターで低沸点溶媒等を除去後、アセトニトリルに生成物を滴下して無色粘性液状のポリマーを得た。収率は92%であった。
ポリスチレンを標準とし、THFを展開溶媒とするGPC分量測定の結果、重量平均分子量は4700であった。NMRスペクトルを図3に、赤外吸収スペクトルを図4に、GPCチャートを図5示す。ポリマーの分子構造は化11のようであると考えられる。

参考例4
参考例3の分岐(ハイパーブランチ)ポリマーの合成実験を、反応時間を変化させて行った。結果を表1に示す。最大72時間行ったところ、重量平均分子量は64000に達した。

【実施例1】
カラムクロマトグラフィー用シリカゲル粒子(平均粒径150μm)1.0g、ヘキサン50ml、参考例3のポリマー0.1gを混合し、一晩攪拌した。シリカゲル粒子を吸引ろ過後、ヘキサンで洗浄し、100℃のオーブンで真空乾燥して処理済みシリカゲル粒子を得た。ここで用いた未処理シリカゲルのXPSスペクトルを図6に、処理済みシリカゲル粒子のXPSスペクトルを図7に示す。図7におけるC1sピークが図6にものに比べ明かに大きくなっており、表面にポリマーが担持されたことがわかる。
比較例1
実施例1と同じカラムクロマトグラフィー用シリカゲル粒子(平均粒径150μm)1.0g、ヘキサン50ml、アリルトリエトキシシラン0.1gを混合し、一晩攪拌した。シリカゲル粒子を吸引ろ過後、ヘキサンで洗浄し、100℃のオーブンで真空乾燥して処理済みシリカゲル粒子を得た。処理済みシリカゲル粒子のXPSスペクトルを図8に示す。図8におけるC1sピークが図6にものに比べ明かに大きくなっており、表面にポリマーが担持されたことがわかるが、その程度は実施例1(図7)よりも小さいことがわかる。
【実施例2】
カラムクロマトグラフィー用シリカゲル粒子(平均粒径3μm)1.0g、ヘキサン50ml、参考例3のポリマー0.1gを混合し、一晩攪拌した。シリカゲル粒子を吸引ろ過後、ヘキサンで洗浄し、100℃のオーブンで真空乾燥して処理済みシリカゲル粒子を得た。ここで用いた未処理シリカゲルのXPSスペクトルを図9に、処理済みシリカゲル粒子のXPSスペクトルを図10に示す。図10におけるC1sピークが図9にものに比べ明かに大きくなっており、表面にポリマーが担持されたことがわかる。また、未処理シリカゲルのSEM写真を図11Aに、処理済みシリカゲル粒子のSEM写真を図11Bに示す。図11Bの粒子表面は図11Aのものと比べ滑らかになっており、表面にポリマーが担持されたことがわかる。
【実施例3】
酸化チタン粒子(平均粒径1μm)1.0g、ヘキサン50ml、参考例3のポリマー0.1gを混合し、一晩攪拌した。酸化チタン粒子を吸引ろ過後、ヘキサンで洗浄し、100℃のオーブンで真空乾燥して処理済み酸化チタン粒子を得た。ここで用いた未処理酸化チタン粒子のXPSスペクトルを図12に、処理済み酸化チタン粒子のXPSスペクトルを図13に示す。Si2sおよびSi2pのピークが図12では確認できないが、図13では現れており、表面にポリマーが担持されたことがわかる。未処理酸化チタンのSEM写真を図14Aに、処理済み酸化チタン粒子のSEM写真を図14Bに示す。図14Bの粒子表面は図14Aのものと比べ滑らかになっており、表面にポリマーが担持されたことがわかる。
比較例2
酸化チタン粒子(平均粒径1μm)1.0g、ヘキサン50ml、アリルトリエトキシシラン0.1gを混合し、一晩攪拌した。酸化チタン粒子を吸引ろ過後、ヘキサンで洗浄し、100℃のオーブンで真空乾燥して処理済み酸化チタン粒子を得た。処理済み酸化チタン粒子のXPSスペクトルを図15に示す。Si2sおよびSi2pのピークが図12では確認できないが、図15では現れており、表面にアリルトリエトキシシランが担持されたことがわかる。しかしその程度は、実施例3の図13と比べ小さいものであった。処理済み酸化チタン粒子のSEM写真を図16に示す。図16の粒子表面は図14Aのものと比べ滑らかになっており、表面にアリルトリエトキシシランが担持されたことがわかる。しかしその程度は図14Bほどではないことがわかる。
【実施例4】
チタン酸バリウム粒子(平均粒径0.9μm)1.0g、ヘキサン50ml、参考例3のポリマー0.1gを混合し、一晩攪拌した。チタン酸バリウム粒子を吸引ろ過後、ヘキサンで洗浄し、100℃のオーブンで真空乾燥して処理済みチタン酸バリウム粒子を得た。ここで用いた未処理チタン酸バリウム粒子のXPSスペクトルを図17〜20に、処理済みチタン酸バリウム粒子のXPSスペクトルを図21〜24に示す。Si2sおよびSi2pのピークが図17では確認できないが、図21では現れており、また、O1sピークの拡大図(図18,図22)において、参考例3のポリマーのシロキサン結合に由来する新たなピークが図22で観察されている。図19と23、および図20と24を比較すると、処理前と処理後でBa3dとTi2pのピークに変化はない。以上のことから、表面にポリマーが担持されたことがわかる。
【実施例5】
ビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン0.83g(サンプル1)、3.74g(サンプル2,3)、4.98g(サンプル4,5)、0.03g(サンプル6)、9.96g(サンプル7)を50mlのTHFに溶解する以外は参考例3と同様な方法で分岐ポリマーを合成した。得られた各ポリマーの分子量を表2に示す。これらのポリマーを用い、ヘキサン50ml中に0.1g(サンプル1,2,4,6,7)、0.2g(サンプル3,5)を混合する以外は実施例3に示す同様な方法で、粒径1μmの酸化チタン表面にポリマーを被覆した。それぞれの処理済み酸化チタン粒子表面に被覆されたポリマー被覆量を表2に示す。なお、ポリマー被覆量の測定方法は、酸化チタン粒子の処理前と処理後の重量を測定し算出したものである。
得られた処理済み酸化チタン粒子を以下の方法で機能評価した。まず、処理済み酸化チタン粒子0.5gをメチルエチルケトン10ml中に混合し、5分間強振攪拌した。その後、その混合液を2時間静置させた。得られた結果を表2に示す。サンプル1〜5では、処理済み酸化チタン粒子がほとんど沈降してこないことを確認した。サンプル6,7では、沈殿物が多いことを確認した。サンプル1〜5において、処理済み酸化チタン粒子がほとんど沈降してこない理由は、酸化チタン粒子の表面がメチルエチルケトンと親和性の高い分岐シロキサンで被われたためであると考えられる。

【実施例6】
試験管に1gのチタン酸バリウム粒子を入れ、さらに17mlのメチルエチルケトンを加えたものを2本用意した。その1本に参考例3のハイパーブランチポリシロキサンを0.1g加えた。2本の試験管を5分間強振攪拌した後、24時間後に撮影したのが図25である。ハイパーブランチポリシロキサンを加えた左の試験管ではチタン酸バリウム粒子の沈降は起きないが、ハイパーブランチポリシロキサンを加えなかった右の試験管ではチタン酸バリウム粒子は沈降してしまっている。以上のことから、ハイパーブランチポリシロキサンが無機金属酸化物粒子を分散させる高い能力を持っていることがわかる。
【実施例7】
ガラス表面に対するハイパーブランチポリシロキサンの密着性の検討
あらかじめ洗浄液と純水で洗浄したガラス基板を、飽和水酸化カリウムエタノール溶液に2時間浸し、超音波洗浄器を用いて純水で三回洗浄した後、クリーンベンチ内で自然乾燥させた。前記親水性処理したガラス基板を参考例3のハイパーブランチポリシロキサンのヘキサン溶液に所定時間浸し、大量のヘキサンとアセトンで順次洗浄した後、クリーンベンチ内で自然乾燥させた。純水を用いて静的接触角を測定した。さらに表3に示すサンプル5,6,7の処理を行い、静的接触角を測定した。結果を表3に示す。表から明らかなようにハイパーブランチポリマーはガラス表面と強固に密着していることがわかる。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【図12】

【図13】


【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーがシロキサン骨格を有することを特徴とするポリマー被覆金属酸化物。
【請求項2】
ポリマーが分岐構造を有することを特徴とする請求の範囲第1項記載のポリマー被覆金属酸化物。
【請求項3】
分岐構造を有するポリマーがデンドリティックポリマーであることを特徴とする請求の範囲第2項記載のポリマー被覆金属酸化物。
【請求項4】
分岐構造を有するポリマーが被覆される金属酸化物に強固に結合していることを特徴とする請求の範囲第2項記載のポリマー被覆金属酸化物。
【請求項5】
ポリマーが、ビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、ビス(ジメチルアリルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルアリルシロキシ)シランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したもの、あるいはビス(ジメチルシロキシ)メチルビニルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)ビニルシラン、ビス(ジメチルシロキシ)メチルアリルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)アリルシランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したものであることを特徴とする請求の範囲第1項記載のポリマー被覆金属酸化物。
【請求項6】
ポリマーの分子量が1000〜80000の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第5項記載のポリマー被覆金属酸化物。
【請求項7】
金属酸化物が、ガラス、シリカゲル、酸化チタン、チタン酸バリウム、インジウムチンオキシド(ITO)、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄の単独、もしくは2種以上を組み合わせたものであることを特徴とする請求の範囲第1項記載のポリマー被覆金属酸化物。
【請求項8】
金属酸化物が粒状、糸状、板状の単独、もしくは2種以上を組み合わせたものであることを特徴とする請求の範囲第1項記載のポリマー被覆金属酸化物。
【請求項9】
ポリマーの被覆量が金属酸化物1g当たり0.005〜0.2gの範囲内であることを特徴とする請求の範囲第7項記載のポリマー被覆金属酸化物。
【請求項10】
シロキシ骨格を有するポリマーの溶液に、金属酸化物を接触させることを特徴とするポリマー被覆金属酸化物の製造方法。
【請求項11】
ポリマーが分岐構造を有することを特徴とする請求の範囲第10項記載のポリマー被覆金属酸化物の製造方法。
【請求項12】
分岐構造を有するポリマーがデンドリティックポリマーであることを特徴とする請求の範囲第11項記載のポリマー被覆金属酸化物の製造方法。
【請求項13】
ポリマーが、ビス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン、ビス(ジメチルアリルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルアリルシロキシ)シランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したもの、あるいはビス(ジメチルシロキシ)メチルビニルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)ビニルシラン、ビス(ジメチルシロキシ)メチルアリルシラン、トリス(ジメチルシロキシ)アリルシランを単独、もしくは2種以上を混合して重合したものであることを特徴とする請求の範囲第10項記載のポリマー被覆金属酸化物の製造方法。
【請求項14】
ポリマーの分子量が1000〜80000の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第13項記載のポリマー被覆金属酸化物の製造方法。
【請求項15】
金属酸化物が、ガラス、シリカゲル、酸化チタン、チタン酸バリウム、インジウムチンオキシド(ITO)、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄の単独、もしくは2種以上を組み合わせたものであることを特徴とする請求の範囲第10項記載のポリマー被覆金属酸化物の製造方法。
【請求項16】
金属酸化物が粒状、糸状、板状の単独、もしくは2種以上を組み合わせたものであることを特徴とする請求の範囲第10項記載のポリマー被覆金属酸化物の製造方法。
【請求項17】
ポリマーの被覆量が金属酸化物1g当たり0.005〜0.2gの範囲内であることを特徴とする請求の範囲第15項記載のポリマー被覆金属酸化物の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/074177
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502731(P2005−502731)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001789
【国際出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【出願人】(899000013)財団法人理工学振興会 (81)
【Fターム(参考)】