説明

ポリマー補助された有益剤デリバリーシステム

有益剤デリバリーシステム、このような有益剤デリバリーシステムを導入する組成物、及びこの組成物中のデリバリーシステムを製造する方法を提供する。本発明の有益剤デリバリーシステムは、香料のような選択された有益剤に対して親和性を示すポリマー粒子を使用して、ポリマー補助された有益剤デリバリーシステムを形成し、このデリバリーシステムは、基材、例えば洗濯される布地、硬質表面、毛髪、皮膚又は爪の表面上に有益剤を有効に付着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー補助された有益剤の送達に関する。より詳細には、ポリマー粒子は、香料のような選択された有益剤に対して親和性を示し、ポリマー補助された有益剤デリバリーシステムを形成し、このデリバリーシステムが、基材、例えば洗濯される布地、硬質表面、毛髪、皮膚又は爪の表面上に有益剤を有効に付着させる。本発明はまた、ポリマー補助された有益剤デリバリーシステムを含有する組成物、及び好ましくは別々の添加によってそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布地、皮膚及び毛髪のような種々の基材の表面を有益剤で処理することが望ましい又は有利であることが多い;代表的な有益剤には、香料;フレーバ;医薬品又はバイオコントロール剤、例えば殺生物剤、殺虫剤、及びカビ制御剤などが含まれる。
【0003】
有益剤を基材表面に付着させるための製品、システム及び方法は、当該技術分野において周知である。例えば、布地の洗濯を含む布地処理の背景において、有益剤を含有する水性洗浄溶液又はすすぎ浴を形成するために使用できる種々の洗濯製品及びその他の製品が存在し;この溶液又は浴と接触する際に、有益剤が布地に付着する。同様に皮膚及び毛髪のような基材に有益剤を送達するパーソナルケア製品も存在する。これらの洗濯、パーソナルケア及びその他の製品は、リーブオン製品又は洗い流し製品として基材表面に直接適用されることができる。いずれの製品形態においても、基材処理にこうした製品を用いる目的は、基材の処理が完了した後に基材表面に利益が残る又はより長続きするように十分な有益剤を基材表面に付着させることである。
【0004】
さらに、多くの消費者製品では、香料原料のような特定の有益剤が、表面により有効に付着及び/又は制御された様式で時間とともに放出されることが望ましい。「トップノート」と呼ばれる大部分の揮発性香料原料は「清々しい感覚」を消費者に体感させることに関与するので、より揮発性のトップノートが、より有効に付着し、及び/又は制御された様式で長期間放出されるのが特に望ましい。
【0005】
トップノートは普通、水性媒体中での溶解及び/又は蒸発によって失われるので、配合者は、基材が多量の水に含浸され又は多量の水で処理されても、及び/又は基材が後で湿った雰囲気に晒されても、基材へのトップノートの付着を向上させる技術を探究することによって、トップノートの消失を最小限にしようとする。基材に直接付着させる場合でも、長期間制御された様式で香料原料を放出することが依然として必要とされている。
【0006】
先行技術の試みは、表面への香料原料の付着及び/又は表面からの香料の放出の制御を助けるために事前に充填された香料ポリマー粒子の使用を開示する。このような試みには、芳香剤がポリマーマトリックスに溶解又は分散したマトリックスシステム、並びに芳香剤が速度制御膜によって囲まれた貯蔵システムが含まれる。他の試みには、ポリマー粒子に香料原料を重合すること、又は香料をポリマー粒子に吸収させることが含まれている。これらのシステムは、「事前充填香料ポリマー粒子」である。これらの試みの詳細は、米国特許第6,149,375号;PCT国際公開特許WO98/2839;PCT国際公開特許WO00/68352;PCT国際公開特許WO01/79303及びEP925,776に記載されている。
【0007】
配合者は、事前充填香料ポリマー粒子を用いて、香料原料、特にトップノートを基材に効率良く付着させることには成功していない。理論によって束縛されるものではないが、効率が悪いのは、製品内で貯蔵される間に有益剤とデリバリーシステムとの相互作用が減少又は消失することによるものであり得る。例えば、香料とポリマー粒子との相互作用は、香料原料が事前充填香料ポリマー粒子から製品マトリックス又は雰囲気に制御されることなく拡散することで消失することがある。このような消失は、消費者製品が通常経験する貯蔵期間の下ではかなり一般的なことである。
【0008】
事前充填香料ポリマー粒子を製品内の拡散に対し安定化させようとする試みは、ある程度の成功しか修めていない。安定性を向上させる試みによって、デリバリーシステムからの有益剤の放出速度が望ましくない変化を生じることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当該技術分野の進展にもかかわらず、良好な有益剤デリバリーシステム、特にそのようなデリバリーシステムで処理された基材に残る及び長続きする有益剤を送達するのに有効なデリバリーシステムが必要とされ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様の1つは、基材に有益剤を送達するのに好適な有益剤デリバリーシステムに関し、前記有益剤デリバリーシステムは、ポリマー粒子及び有益剤を含み、前記ポリマー粒子及び前記有益剤は、別々にマトリックスに添加されて前記有益剤デリバリーシステムを形成し;前記有益剤デリバリーシステムが前記基材上に直接的又は間接的に付着される場合、前記有益剤デリバリーシステムによって示される応答因子(RF)は、少なくとも約1.5である。
【0011】
本発明の別の態様は、有益剤デリバリーシステムを含有する顆粒状又は液体組成物を製造する方法に関し、次の工程:
a)顆粒状又は液体マトリックスを提供する工程;
b)ポリマー粒子を前記マトリックスに添加する工程;及び
c)有益剤を前記マトリックスに添加する工程;
を含み、前記ポリマー粒子及び有益剤は、分離した別個の成分として異なる供給源から添加されて、前記有益剤デリバリーシステムを形成する。
【0012】
本発明はまた、ポリマー補助された有益剤デリバリーシステムを含む組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(定義)
本明細書で使用する時、「別々に添加」とは、香料及び事前形成されたポリマー粒子が、補助剤成分を含有するマトリックス又は媒体に別々に添加され、混合されて、最終製品/組成物中に香料ポリマー粒子を形成することを意味する。換言すれば、香料及びポリマー粒子は、最終製品を形成するために、補助剤成分を含有するマトリックス又は媒体に添加される前に、キャリア溶媒中に事前混合されて香料ポリマー粒子を形成しない。
【0014】
本明細書で使用する時、「異なる供給源」とは、ポリマー粒子及び有益剤がマトリックスに添加される前に互いに接触しない限り、異なる容器、異なる導管、容器又は導管の異なる区画などを意味する。
【0015】
本明細書で使用する時、「非ポリマー的に結び付いた」とは、ポリマーが形成された後に、有益剤がそのポリマーに吸収され、吸着され、または別の方法で結び付くことを意味する。換言すれば、有益剤は、ポリマーの重合又は溶融の間にポリマーと共に存在するのではなく、有益剤が事前形成されたポリマー粒子と混合されて有益剤デリバリーシステムを生成する。本発明の目的上、この定義は、ポリマーが香料を封入するような封入を排除する。
【0016】
「有益剤デリバリーシステム」又は「デリバリーシステム」は、有益剤及びポリマー粒子を含み、それらは、(i)有益剤の基材への付着を向上及び増大させる、及び/又は(ii)前記基材が前記有益剤デリバリーシステムに晒された後で基材からの有益剤の放出を増大又は延長するような様式で組み合わされる。有益剤デリバリーシステムは、任意の補助剤成分を含んでいてもよい製品組成物に組み込まれることができる。このような製品組成物としては、パーソナルケア/クレンジング製品、布地ケア/洗浄製品、硬質表面ケア/洗浄製品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用する時、「補助剤成分」とは、最終製品組成物に使用される配合成分を意味する。このような補助剤成分は、本発明の有益剤デリバリーシステムの基礎を形成するポリマー粒子を製造するプロセスで使用される成分、例えば加工助剤及び/又は安定化剤であることを意図しない。
【0018】
本明細書で使用する時、「直接的に適用される」、「直接適用」又は「直接的に送達する」とは、有益剤によって提供される利益が、希釈の前に又は後で希釈されることなく実現され及び/又は認識されるように有益剤デリバリーシステムを含有する組成物を介して有益剤が基材に適用されることを意味する。すなわち、有益剤デリバリーシステムは、希釈又は洗い流されることなく基材に適用されるリーブオン製品として使用される組成物に配合されることができる。例えば、有益剤デリバリーシステム又はそれを含有する製品組成物は、有益剤デリバリーシステム又はそれを含有する製品組成物を希釈溶液(すなわち洗浄溶液)から基材に間接的に接触又は付着させるのではなくむしろ、基材に噴霧され、及び/又は基材に拭きつけられる。非限定例としては、ファインフレグランス香料用途又は製品;ホームケア香料製品、例えば通常、室内装飾材料、カーペット及びその他の布地物品に適用されるフレッシュニング組成物;硬質表面処理製品;美容ケア製品、例えばクリーム、ローション、防臭剤、制汗剤、及びその他の局所用組成物;ヘアケア製品、例えばヘアスプレー、リーブインコンディショナーなどが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用する時、「間接的に適用される(indirectly applied)」、「間接適用」又は「間接的に適用される(applied indirectly)」とは、基材が有益剤デリバリーシステム又はそれを含有する製品組成物の希釈溶液、例えばこのようなデリバリーシステム又は製品組成物の水溶液又は分散液に接触されることを意味する。本発明の目的上、デリバリーシステム又は製品組成物の「希釈溶液」は、このような希釈前のデリバリーシステム又は製品組成物の有益剤濃度より、少なくとも約10%低い、好ましくは少なくとも約30%低い、より好ましくは少なくとも約50%低い濃度の有益剤を含有する溶液である。このような希釈溶液又は分散液は、勿論、デリバリーシステム又はそれを含有する製品組成物を水で希釈することによって形成されることができる。例えば、香料デリバリーシステムを含有する洗濯洗剤は水で希釈され、希釈溶液は布地物品を洗濯するための洗浄溶液又は浴として使用される。
【0020】
間接適用にはまた、基材が最初に濃縮デリバリーシステムを含有する製品と接触し、その後希釈される/すすがれるような状況も含まれる。例えば、シャンプー又はボディウォッシュ製品は毛髪又は皮膚に最初に接触され、直接適用され得るけれども、このような製品は、水を加えられることで直ぐに希釈され、その後は有益剤デリバリーシステムの間接適用として使用される。間接適用に関して、希釈又はすすぎが生じる前に、少なくともある程度測定可能な量の有益剤が表面に付着するために、基材とデリバリーシステムとは十分接触しなければならないことを理解する。このような接触時間は、約5秒〜約30分、好ましくは約15秒〜約15分、より好ましくは約30秒〜約5分の範囲であることができる。
【0021】
本発明の目的上、デリバリーシステム又は製品組成物の水溶液又は分散液は、約5000ppm以下、好ましくは約500ppm以下、より好ましくは約50ppm以下、最も好ましくは約10ppm以下で含有され得る。一部の実施形態では、デリバリーシステム又は製品組成物の希釈溶液は、約1ppm以下の有益剤を含有することさえできる。
【0022】
(有益剤デリバリーシステム)
本発明は、有益剤を基材に送達するのに好適な有益剤デリバリーシステムを提供するが、この有益剤デリバリーシステムは有益剤及びポリマー粒子を含み、ポリマー粒子及び有益剤が基材に直接的又は間接的に適用される場合、ポリマー粒子が存在することなく有益剤が基材に送達される場合よりも、有益剤がより強い及び/又は長期間の利益を基材に提供するようになる。
【0023】
本有益剤デリバリーシステムによって提供される向上は、基材表面に付着した有益剤の量又は基材表面から放出される有益剤の量に示されることができる。向上はまた、他の送達方法又は送達ビヒクルによっては基材に送達されるのが困難又は不可能な種類の有益剤、特に基材表面に対してよりも製品マトリックスに対してより高い親和性を有する傾向にある種類の有益剤、及び/又はすすぎプロセスの間に基材表面から容易に流れ落ちる種類の有益剤にて示されることができる。
【0024】
さらに、向上は、有益剤デリバリーシステムが直接的又は間接的に基材に適用される場合、有益剤がポリマー粒子が存在することなく基材に送達される場合に比べて、有益剤がより長期間にわたって基材に利益を提供することで示される。
【0025】
ポリマー粒子及び有益剤は、そのプレミックスを製品マトリックス又は媒体に添加する前に事前混合(すなわち、両方がキャリア溶媒中に高濃度で存在する)されるべきであるという一般的な見解とは逆に、驚くべきことに、ポリマー粒子及び有益剤を別個の成分として別々に製品マトリックス(例えば、顆粒状又は液体マトリックス)に添加する場合に、それらは、基材表面に向上した及び/又は長期の利益を付与する有益剤デリバリーシステムを形成するのに有効でもあることを見出した。理論に束縛されるものではないが、ポリマー粒子及び有益剤は、それらが補助剤成分の存在下で製品マトリックスによって希釈される場合であっても、ポリマー粒子と有益剤が結び付くことになり得るように、互いに対する選択性又は親和性に関して選択される/組にすることができると考えられている。
【0026】
さらに、有益剤とポリマー粒子との間の選択性又は親和性のために、それらは別々に製品組成物の希釈溶液又は分散液、好ましくは水性溶液又は分散液に添加されることができ、なお基材表面に向上した及び/又は長期の利益を送達する有益剤デリバリーシステムを形成することができる。さらに、有益剤及びポリマー粒子は、別々の希釈されていない溶液又は分散液にて基材表面に適用されることができ、なお基材表面に向上した及び/又は長期の利益を送達する有益剤デリバリーシステムを形成することができる。
【0027】
ポリマー粒子及び有益剤がマトリックスに添加される順序に関係なく、別々の添加モード(すなわちプレミックスモードではない)によって製造された結果として得られた有益剤デリバリーシステムは、基材表面に向上した利益を付与することも見出した。
【0028】
実施形態の1つでは、ポリマー粒子は、有益剤を導入する供給源とは異なる供給源を介して製品マトリックス又は組成物に導入される。別の実施形態では、ポリマー粒子は、有益剤の前、後又は同時に製品マトリックスに導入される。さらに別の実施形態では、製品又は組成物が製造された後の少なくとも1つの時点で、ポリマー粒子及び有益剤が分離した別個の成分であり、基材に直接的及び/又は間接的に適用される前、適用される間又は適用された結果として互いに結び付くことになる。
【0029】
本発明の特定の実施形態において、有益剤は香料原料、好ましくは約1700未満のKovats指数(KI)を有する香料原料、より好ましくは約1000〜約1400のKovats指数を有する香料原料である。「Kovats指数」は、香料業界で既知の用語である。本明細書に開示される全てのKIは、カラムに非極性固定相としてポリジメチルシロキサンを用いて(「DB−5カラム」と呼ばれる)測定される。
【0030】
液体マトリックスにおいて、特に重量基準で、ポリマー粒子と有益剤との比は幅広く変動し得、多くの場合、約1000:1〜約1:50の範囲である。実施形態の1つでは、ポリマー粒子と有益剤との比は、約1000:1〜約1:5、より典型的には約100:1〜約1:2、さらにより典型的には約50:1〜約1:1の範囲である。
【0031】
本発明の実施形態の1つでは、ポリマー粒子は、最終組成物においてその組成物の約0.002〜約10重量%、より好ましくは約0.05〜約5重量%の濃度で存在する。
【0032】
本発明の別の実施形態では、有益剤は、最終組成物においてその組成物の約0.001〜約10重量%、より好ましくは約0.01〜約5重量%の濃度で存在する。
【0033】
(液体又は顆粒状マトリックス)
有益剤デリバリーシステムは、液体マトリックスに導入されて最終製品を形成することができる。本明細書で使用する時、「液体」という用語には、流体並びにゲル及び泡が含まれる。液体マトリックスは、水性又は非水性であることができ、ここで水は通常、水性マトリックスの主成分であり、従来の有機溶媒(例えば、低級アルコール)は非水性マトリックスに関してマトリックスを形成するために使用できる。液体製品、すなわち約10%を超える水又は他の溶媒を含有するものは、本発明にとって代表的なものである。
【0034】
有益剤デリバリーシステムは、顆粒状マトリックスに導入されることができる。本明細書で使用する時、「顆粒状マトリックス」という用語は、粒塊、錠剤、シートなどに構築されることができる多孔質及び非多孔質粒子、粉末又はスポンジを含むいずれかの種類の固体材料を含む。一部の実施形態において、顆粒状マトリックスは、大きさが約1μm〜約100mmの範囲である粒子又は顆粒を含む。顆粒状マトリックスはさらに、不活性又は活性成分、あるいはその両方を含んでいてもよい。
【0035】
本明細書のデリバリーシステムを形成するのに使用される液体又は顆粒状マトリックスは、1以上の補助成分、例えば界面活性剤、ポリマー添加剤、付着ポリマー、増粘剤などを、水の存在下又は非存在下で含むことができる。水を含まない場合、補助剤成分はマトリックスとして作用し得る。
【0036】
ポリマー粒子及び有益剤は、液体又は顆粒状マトリックスに別々に添加されて、本発明のデリバリーシステムを含有する最終製品を形成できる。最終製品の例としては、洗濯又は硬質表面洗浄のための液体又は顆粒状洗剤組成物;毛髪又は皮膚の洗浄又は維持のためのパーソナルケア組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
(ポリマー粒子及び有益剤の別々の添加)
上記で議論されたように、ポリマー粒子及び有益剤は液体又は顆粒状マトリックスに別々に添加されるのが有利である。故に、ポリマー粒子及び有益剤は、別々の時間に、或いは別々の容器及び/或いは導管から、又は別々の保持又は送達手段からマトリックスに添加されることができる。
【0038】
別々の添加方法の別の実施形態では、ポリマー粒子及び有益剤は、キャリア流体又はマトリックスの一部と別々に調製又は混合されることができ、次いで事前分散液又は混合物が合わされて、最終製品中に有益剤デリバリーシステムを形成する。例えば、ポリマー粒子又は有益剤は、濃縮物又は水性分散液の形態でマトリックスに別々に添加されることができ、ここで各濃縮物又は分散液は、少なくとも約50重量%のポリマー粒子又は有益剤を含む。
【0039】
別々の添加方法のさらに別の実施形態では、ポリマー粒子及び有益剤はさらに、マトリックスと接触する前にこれら材料間で実質的に化学相互作用を起こさない限り、マトリックスと組み合わせる前に共に混合されてもよい。
【0040】
別々の添加方法のさらなる実施形態では、ポリマー粒子は、完全に配合された香料含有製品に添加される。
【0041】
追加の補助剤成分は、いかなる時でもマトリックスに添加されることができる。補助剤成分はまた、ポリマー粒子及び有益剤が導入されるマトリックスとして作用し得る。
【0042】
ポリマーが物理的に有益剤を取り囲む構造として述べられる封入は、本発明の有益剤デリバリーシステムから排除される。封入の例は、シクロデキストリン及び香料によって示される物理的関係である。しかし、本発明のポリマー粒子は、本明細書に開示される有益剤ではない材料を封入してもよい。さらに、ポリマーはその融点まで加熱されてもよく、香料は冷却前にその溶融物に添加される。これらの構造は、本発明の有益剤デリバリーシステムの範囲外である。
【0043】
(ポリマー粒子)
本発明のポリマー粒子は、少なくとも1つの陽イオン性モノマー及び1以上の非陽イオン性モノマー、好ましくはまた架橋モノマーから重合される。重合方法は、エマルション、懸濁又はミニエマルション重合のような、当該技術分野において既知の好適な方法のいずれかであることができる。重合の間、乳化剤又は安定剤は、ポリマー粒子が形成される水溶液からポリマー粒子が凝固、崩壊及び/又は沈殿するのを妨げるために存在してもよい。
【0044】
ポリマー粒子のモノマーは、得られたポリマー粒子が、約200未満の分子量、約250℃未満の沸点、約3未満のClogP、又は約1700未満のKovats指数、好ましくは約1000〜約1400のKovats指数を有する香料原料に対して親和性を有するように選択されることができる。
【0045】
ポリマー粒子は、約50重量%〜約100重量%、好ましくは約60〜約95重量%の非陽イオン性モノマー;約0重量%〜約50重量%、好ましくは約0重量%〜約10重量%の陽イオン性又は陰イオン性モノマー;約0重量%〜約25重量%、好ましくは約1重量%〜約10重量%の架橋モノマーから誘導されることができる。重合されてポリマー粒子を形成するモノマーは、非陽イオン性モノマー:陽イオン性モノマー:架橋モノマーの重量比が約10:0.02:0〜約5:2.5:1で使用されることができる。
【0046】
ポリマー粒子は、ブルックヘブン粒径分析計又はホリバ(Horiba)粒径分析計を用いて光散乱によって測定される場合に、約100nm〜約50μmの平均粒径を有するミクロ粒子又はナノ粒子の形態であることができる。実施形態の1つでは、ポリマー粒子は、約1μm〜約39μm、好ましくは約3μm〜約20μm、より好ましくは約5μm〜約12μmの平均粒径を有することができる。別の実施形態において、ポリマー粒子は、約100nm〜約1μm、好ましくは約200nm〜約900nm、より好ましくは約700nm〜約900nmの平均粒径を有することができる。
【0047】
実施形態の1つでは、ポリマー粒子は、約50℃〜約150℃、好ましくは約80℃〜約120℃のガラス転移温度Tgを有する。
【0048】
実施形態の1つでは、ポリマー粒子はモノマーの重合後に単一ポリマーを含んでいてもよい。別の実施形態において、ポリマー粒子は、乳化剤或いは安定剤と、重合モノマー或いは得られたポリマー粒子との間の反応(例えば、グラフト)によって生成される2以上のポリマーを含んでいてもよい。例えば、ポリマー粒子は、モノマーの重合から得られる第1のポリマーと、第1のポリマーとグラフト又は結び付けられる第2のポリマーとを、例えばポリスチレンとポリ(メチルメタクリレート−ジメチルアミノエチルメタクリレート)コポリマーを含んでいてもよい。
【0049】
ポリマー粒子は水性分散液中で安定であるのが望ましい。ポリマー粒子は、香料組成物、又は洗濯補助剤、柔軟仕上げ剤などを含有する柔軟仕上げ剤組成物のような製品配合物内で安定であるのも望ましい。
【0050】
ポリマー粒子の安定性は、得られたポリマー粒子の平均粒径、得られたポリマー粒子の正味の電荷、ポリマー粒子と組成物中の他の成分、例えば乳化剤又は安定剤との間の相互作用又は相溶性のような要因によって影響され得る。
【0051】
実施形態の1つでは、ポリマー粒子は、ブルックヘブンゼータ電位分析計によって測定される場合、約20mV〜約80mV、好ましくは約30mV〜約50mV、より好ましくは約35mV〜約45mVの正味の陽イオン電荷を有する。
【0052】
水性分散液及び/又は製品配合物、例えば香料組成物中のポリマー粒子を安定化させるのを助けるために、コロイド状安定剤としても知られる安定剤を水性分散液及び/又は製品配合物に添加してもよい。コロイド状安定剤は、水性分散液及び/又は製品配合物内で他の成分と相溶性であるのが望ましい。
【0053】
ポリマー粒子は非水溶性であってもよい。換言すれば、水に添加される場合、ポリマー粒子は添加後5分以内に、物理的に水と分離(すなわち、沈殿、凝集、浮遊)する一方で、「水に可溶性」の材料は、添加後5分以内に水から物理的に分離しない。本発明の目的上、非水溶性材料を説明する別の方法は、非水溶性材料が、25℃で、水及びポリマー粒子を含有する混合物の約5重量%を超える、好ましくは約3重量%を超える、より好ましくは約1重量%を超える濃度では、蒸留(又は同等)水に可溶性でないという事実である。
【0054】
ポリマー粒子は、約0.0017(1,000)〜約3.32(2,000,000)、好ましくは約0.008(5,000)〜約1.66(1,000,000)、より好ましくは約0.017(10,000)〜約1.24(750,000)、より好ましくは約0.033(20,000)〜約0.83ag(500,000ダルトン)の重量平均分子量を有していてもよい。ポリマー粒子の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーのような従来の方法を介して決定されることができる。
【0055】
A.(非陽イオン性モノマー)
非陽イオン性モノマーは、疎水性基含有モノマーであることができる。疎水性基の例としては、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
非陽イオン性モノマーは、ヒドロキシル基含有モノマー、陰イオン性含有モノマー、又は双性イオン性モノマーであってもよい。非陽イオン性モノマーとしては、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート(EGPhA)、トランス−ケイ皮酸、2−エチルヘキシルアクリレート、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
好適な非陽イオン性モノマーの非限定例としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、フェニルメタクリルアミド、tーブチルメタクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアセテート、ビニルフェノール、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホネート、ビニルプロピオネート、メチルアリルスルホン酸、N−ビニルホルムアミド、及びN−ビニルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
B.(陽イオン性モノマー)
本発明の陽イオン性モノマーは、陽イオン性単位を含む。本発明の目的上、「陽イオン性単位」という用語は、本発明のポリマー粒子の構造に導入される場合に、約2〜約8のpH範囲内で陽イオン電荷を維持できる部分として定義される。陽イオン性単位は、約2〜約8の範囲内のいかなるpH値においてもプロトン化される必要がない。陽イオン性部分を含む単位の非限定例としては、次式を有する陽イオン性単位が挙げられる:
【化1】

【0059】
式中、R、R及びRの各々は、水素又はC〜Cアルキル、好ましくは水素、C〜Cアルキル、より好ましくは水素又はメチルから独立して選択され;Tは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、アラルキル、複素環、シリル、ニトロ、ハロ、シアノ、スルホナト、アルコキシ、ケト、エステル、エーテル、カルボニル、アミド、アミノ、グリシジル、カルバナト、カルバメート、カルボン酸、カルボアルコキシ、及びこれらの混合物から成る群から選択される置換又は非置換、飽和又は不飽和、直鎖又は分枝鎖部分であり;Zは、次から成る群から選択される部分であり:−(CH)−、(CH−CH=CH)−、−(CH−CHOH)−、(CH−CHNR)−、−(CH−CHR−O)−、及びこれらの混合物、好ましくは−(CH)−、式中、R及びRは、水素又はC〜Cアルキル、好ましくは水素、メチル、エチルから独立して選択される;zは0〜12、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6の整数であり;zは0〜12、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6の整数であり;AはNR又はNRであり、式中、R、R及びRの各々は、H、C〜C直鎖若しくは分枝鎖アルキル、又は次式を有するアルキレンオキシから独立して選択される:
【化2】

【0060】
式中、RはC〜C直鎖又は分枝鎖アルキレン又はカルボニルアルキルであり;R10は水素又はC〜Cアルキルであり;yは1〜約10である。実施形態の1つでは、R、R及びRは独立に、水素、C〜Cアルキルである。あるいは、NR又はNRは、4〜7個の炭素原子を含有し、任意に追加のヘテロ原子を含有し、任意にベンゼン環と縮合し、任意にC〜Cヒドロカルビル又はアセテートで置換される複素環を形成できる。好適な複素環の例は、置換及び非置換の両方について、インドリル、イソインドリニル イミダゾリル、イミダゾリニル、ピペリジニル ピラゾリル、ピラゾリニル、ピリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、ピロリジニル、グアニジノ、アミジノ、キニジニル、チアゾリニル、モルホリン及びこれらの混合物であり、モルホリノ及びピペラジニルが好ましい。
【0061】
本発明に好適な陽イオン性モノマーの非限定例としては、ジメチルアミノアルキルアクリレート、特にジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾイル、ジアルキルアミノ基を有するビニルエーテル、ビニルピリジン、アルキルアクリルアミド、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド、及びアミノアルキルアクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
C.(架橋モノマー)
架橋モノマーは、本発明のポリマー粒子に存在してもよい。好適な架橋モノマーの非限定例としては、ジアクリレート、ジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリアリルスクロース、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルトルエン、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコール(tetraethylenglycol)ジメタクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルマレエート、及び1,4−ブタンジオールジアクリレート、トリアリルマレエート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン、及びエチレングリコールジアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
D.(乳化剤又はコロイド状安定剤)
本発明に用いるのに好適な乳化剤及び/又はコロイド状安定剤は、当該技術分野において既知である。このような乳化剤又はコロイド状安定剤の非限定例としては、リチノリアミドプロピルトリメチル(ricinolyamidopropyltrimethyl)−アンモニウムメトサルフェート、ココペンチルエトキシメチル−アンモニウムエチルサルフェート、ココビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、塩化セチルピリジニウム、グリセリルステアレート、ステアラドアミドエチル(stearadamidoethyl)ジエチルアミン、エトキシ化オレイルアミン、エトキシ化脂肪族アミン、エトキシ化四級化(quaternised)脂肪族アミン、エトキシ化脂肪族アルコール、ソルビタンステアレート、ポリソルベート、ステアレート、ドデシル硫酸ナトリウム、アンモニウムノノキシノール(ammoniumnonoxynol)サルフェート、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ゼラチン、ポリビニルアルコール、アミノメチル化デンプン、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアセテート)コポリマー、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースのような変性セルロース、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンコポリマー、ポリエーテル−変性ジメチコン及びポリエーテル−アルキル−ジメチコンコポリマー、陽イオン性シリコーン及びポリアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
コロイド状安定剤は、粒子の分散安定性、特により大きいサイズの粒子の分散安定性を維持するために使用できる。好適なコロイド状安定剤としては、プロピレンオキシド−エチレンオキシドコポリマー、又はエチレンオキシド−プロピレンオキシドグラフト化ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレン(X)イソオクチルフェニルエーテル(ここで、Xは20〜80の整数である)、脂肪族アルコールエトキシレート、ポリエトキシレート化ポリテレフタレートブロックコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドンを含有するコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
E.(反応開始剤)
本発明の重合方法に用いるのに好適な反応開始剤は、当該技術分野において既知である。例としては、過硫酸ナトリウム及びアゾ系反応開始剤、例えば2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドロクロリド;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド;2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン(dimethyleneisobutyramidine))ジヒドロクロリド;2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4ジメチルバレロニトリル;及び2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
(有益剤)
本発明の有益剤デリバリーシステムに用いるのに好適な有益剤としては、フレーバ成分、医薬活性物質、バイオコントロール活性物質、香料原料、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一部の実施形態では、有益剤は、香料原料又はトップノートのような揮発性材料であることができる。本発明の目的上、揮発性材料は、約250℃未満の沸点を有する材料を指す。
【0067】
フレーバ成分は、有益剤デリバリーシステムを導入する製品のフレーバ知覚全体に寄与するスパイス又はフレーバ向上剤を含む。医薬有益剤は薬物を含む。バイオコントロール剤は、殺生物剤、抗菌剤、殺菌剤、殺真菌剤、殺藻剤、カビ駆除剤、消毒剤、消毒様漂白剤、防腐剤、殺虫剤、昆虫又は蛾忌避剤、駆虫剤、植物成長ホルモンなどを含む。代表的な抗菌剤はグルタルアルデヒド、シンナムアルデヒド、及びその混合物を包含する。典型的な防虫剤又は防蛾剤は、シトロネラール、シトラール、N,N−ジエチルメタトルアミド、ロツンジアール(Rotundial)、8−アセトキシカルボタンアセトン、及びこれらの混合物のような香料成分である。
【0068】
本発明のデリバリーシステムを形成するために使用される好ましい有益剤は、香料又は香料原料である。従来から香料として使用されている好適な香料原料の代表的な開示は、「香料及びフレーバ化学品(Perfume and Flavor Chemicals)」(I巻及びII巻、S.アークタンダー(S.Arctander)、アルレード出版(Allured Publishing)、1994年、ISBN 0−931710−35−5)に見出され得る。1700未満のKovats指数を有する香料トップノートは、本発明のデリバリーシステムに使用される最も好ましい有益剤である。
【0069】
(補助剤成分)
好適な補助剤成分としては、界面活性剤、ビルダー、キレート剤、染料移行阻害剤、分散剤、酵素、及び酵素安定剤、触媒金属錯体、ポリマー分散剤、粘土汚れ除去/再付着防止剤、光沢剤、泡抑制剤、染料、香料、構造柔軟剤、柔軟仕上げ剤、粘度調整剤、キャリア、向水性物質、加工助剤、及び/又は顔料が含まれるが、これらに限定されない。さらに、このような他の補助剤の好適な例及び使用濃度は、米国特許第5,576,282号、同第6,306,812B1号;同第6,326,348B1号;PCT国際公開特許WO00/02982及びWO00/02987中に見出される。
【0070】
パーソナルケア組成物に使用するのに好適な他の補助剤成分としては、審美剤及びその他の活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、組成物は、吸収体、研磨材、固化防止剤、消泡剤、抗菌剤、結合剤、緩衝剤、充填剤、化粧用殺生物剤、コンディショニング剤、付着ポリマー、皮膜形成剤、可塑剤、防腐剤、防腐剤向上剤、追加のスキン−コンディショニング剤、皮膚浸透向上剤、皮膚保護剤、溶媒、乳化剤、界面活性剤、向水性物質、増粘剤、可溶化剤、日焼け止め剤、日焼け防止剤、紫外線吸収剤又は散乱剤、サンレスタンニング剤、酸化防止剤、ラジカルスカベンジャー、キレート剤、隔離剤、抗ニキビ剤、抗炎症剤、抗アンドロゲン剤、脱毛剤、落屑剤/剥離剤、有機ヒドロキシ酸、皮膚回復剤、ビタミン及びそれらの誘導体、及び天然抽出物、保湿剤、静電気防止剤、希釈剤、皮膚軟化剤、真珠光沢助剤、起泡増進剤、殺シラミ剤、pH調整剤、粘度調整剤、タンパク質、及び審美成分、例えば着色剤、顔料、染料、不透明化剤、乳白剤、精油、収れん剤、外用鎮痛剤、皮膚鎮静剤などを含んでいてもよい。任意成分のこの列挙は限定することを意味せず、他の任意成分も使用できる。このような他の材料が、当該技術分野で既知である。このような材料の包括的例は、ハリーの化粧品科学(Harry's Cosmeticology)、第7版、ハリー(Harry)及びウィルキンソン(Wilkinson)(ヒル・パブリッシャーズ(Hill Publishers)、ロンドン、1982);医薬品剤形−分散システム(Pharmaceutical Dosage Forms-Disperse Systems);リエバーメン(Lieberman)、リガー(Rieger)及びバンカー(Banker)、第1版、(1988)及び第2版(1989);マーセルデッカー(Marcel Decker,Inc.);化粧品の化学及び製造(The Chemistry and Manufacture of Cosmetics)、第2版、デナバレ(deNavarre)(バン・ノストランド(Van Nostrand)1962−1965);及び化粧品科学及び技術のハンドブック(The Handbook of Cosmetic Science and Technology)、第1版、ノールトン(Knowlton)及びパース(Pearce)(エルスバー(Elsevier)1993)に記載されている。
【0071】
(プロトコル1−送達又は寿命試験(間接適用))
次のプロトコルは、有益剤デリバリーシステムが付着する有益剤の濃度を増大させ、及び/又は基材からの後に起こる放出を長続き若しくは増大させるかどうかを測定するために提供される。有益剤デリバリーシステムは、以下の試験プロトコルの全てに当てはまらない場合に本発明の範囲外である。例示のために、香料原料を有益剤として使用し、有益剤デリバリーシステムは、次のプロトコルにおいて香料デリバリーシステム(例えば、香料ポリマー粒子)である。香料又は香料原料を用いる試験プロトコルのさらなる詳細は、同時出願された(co-filed)特許出願(名称「香料ポリマー粒子」、ヨルダン(Jordan)ら、(P&G Case9083M&))に記載されている。
【0072】
(プロトコルIA(香料アコード送達又は寿命試験)):本発明の香料デリバリーシステムは、基材に付着し、及び/又は後に基材から放出される香料原料(PRM)の濃度を向上/増大させるポリマー粒子を含む;ポリマー粒子は、約1700未満、好ましくは約1000〜約1400のKovats指数値を有する香料原料に対して親和性を有するように選択されることができる。市販の香料アコード(accord)の形態で利用可能な複数のPRMは、単一又は、分析測定(例えば、クロマトグラフィー)が複数のポリマーの組み合わせに影響されない限り、複数のポリマー粒子の存在下で共に試験されることができる。通常、PRMの濃度は約10倍(factor)以内である場合、測定は同一試験における他のPRMの存在によって影響されることはないようである。水性媒体中の布地物品は、この試験プロトコルの目的上、基材として使用される。
【0073】
a)試験溶液中のPRMとPPの濃度
寿命試験(LT)に使用されるべきPRM及びPPの濃度は、初期試験溶液(TS)から調製される一連の溶液のうち最低濃度であり、その濃度で試験溶液中の各PRMが、1以上の指定時点で処理された基材から収集されるヘッドスペースサンプルにて検出される。この条件をTSが満たさない場合、試験溶液中のPRM及びPPの濃度を2倍し、新しい溶液(TS)を同じ様式で試験する。上記PRM検出条件が満たされるまでプロセスを繰り返す。上記PRM検出条件を満たす試験溶液(TS)中のPRM及びPPの濃度は、次の式に従うTS中のPRM及びPPの濃度に関連する:
TS中の[PRM,PP]=2TS中の[PRM,PP];式中、n=0、1、2、3...
場合によっては、PRM及びPPの両方の濃度が試験溶液の5重量%を超えるまで濃度を2倍にするプロセスを繰り返しても、上記PRM検出条件がなおも満たされない。そのときは、試験を行うのに次の代替案を使用してもよい。基材上に移動したTSのアリコートは、(i)上記PRM検出条件が満たされるまで、又は(ii)0.1重量%を超える濃度の香料を有する個々のPRMに関して、次の2つの代替条件の少なくとも1つが満たされるまで、1.0mL〜3mLに増大させ、次いで10mLに増大させるか、又は基材の大きさを1.0g、3gに増大させ、次いで10gに増大させる:
(1)試験溶液中の低KIのPRMの少なくとも80%及び試験溶液の高KIのPRMの少なくとも80%が、1以上の指定時点で処理された基材から収集されるヘッドスペースサンプルにて検出される;又は
(2)試験溶液中の少なくとも10個の低KIのPRM及び試験溶液中の少なくとも5個の高KIのPRMが、1以上の指定時点にて処理された基材から収集されるヘッドスペースサンプルにて検出される。
【0074】
b)試験手順
試験溶液は、洗濯洗剤のような消費者製品に使用されるものと同等の濃度で組成物に別々に添加されるPRM及びPPを溶解又は混合することによって調製される。例えば、消費者製品におけるPRM及びPPのそれぞれの濃度は、製品の2.0重量%及び4.0重量%であることができる。混合物は、視覚的に均一になるまで完全に混合される。混合物を雰囲気に近づけ、室温で24時間熟成させ、TSと称される初期試験溶液を得る。
【0075】
重さ0.45〜0.65gの4cm直径の布地サークルは、86/14の綿/ポリテリー織洗い布(EMC(オハイオ州45237、シンシナティ、レインフォールドドライブ(Reinfold Drive)7616)から得られた)から切断され、試験基材として使用される。所与の試験において基材の重さは、互いに±0.02gの範囲内であるべきである。TSのアリコート1.0mLは、ピペットで基材上に移されるが、その際基材の中心近くにピペットを近づける。次いで、1.0mLの脱イオン水(DI)アリコートを同様の様式で基材に添加する。基材を、ニトリル手袋をはめた手のひらで1分間擦ることによって泡立てる。次いで基材を、35℃のDI水40mLを含有する瓶に入れる;瓶は蓋をして、30秒間振盪する。次いで基材をピンセットを用いて取り除き、紙タオル上で優しく拭き取り、過剰の水を取り除く。上記工程(試験溶液の充填、希釈、泡立て/洗浄及びすすぎを含む)で処理された基材を、周囲条件下で雰囲気に開放し、特定の期間風乾させる。続いて、基材をヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)によって分析し、次の時間毎にヘッドスペース中の各香料原料の量を測定する:2、6及び24時間。
【0076】
c)ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)
好適な装置は、S.マエノ(S.Maeno)及びP.A.ロドリゲス(P.A.Rodriguez)によるJ.Chromatography、第A731巻(1996)、201〜215頁にて記載される。装置は次を含む:
1)基材(上述のように処理されて、風乾される)を含有し、PRMをヘッドスペースに分配し、平衡に到達させるヘッドスペースコレクター;
2)多孔質ポリマーを含有し、芳香材料(例えば、香料又は香料原料)を保持できるトラップ;
3)トラップされたヘッドスペース蒸気を定量分析用のGCに移動させる移動装置;及び
4)ヘッドスペース検出性能を有し、移動相としてヘリウムを用いるGC−MS。
【0077】
上述のように処理され、特定期間風乾された基材を、ヘッドスペースコレクターに入れ、分配させて、平衡に到達させるが、それは約2時間で行われる。平衡後、芳香材料を保持できる多孔質ポリマーを含有するトラップ、好ましくはタネックス(Tenax)(登録商標)TA35/60メッシュ(ガーステル(Gerstel,Inc.))、メリーランド州バルチモア(Baltimore)より入手可能)は、平衡化されたヘッドスペース蒸気を捕捉するためにヘッドスペースコレクターに作動関係で連結される。移動装置は、定量分析用のGC上に、香料原料を含有するトラップされたヘッドスペース蒸気を移動させるために使用される。この装置は、収集されたヘッドスペース蒸気を含有する多孔質ポリマートラップを加熱でき、約−100℃未満(一般に液体窒素によって)に冷却された冷トラップに蒸気を移動させることができる。冷トラップに完全に移動された後、冷トラップは、短時間、通常約1分、約280℃の温度にフラッシュ加熱され、毛管GCカラムに直接ヘッドスペース蒸気を移動させる。
【0078】
代表的なカラムは長さが30〜60メートルであり、内側直径が0.18〜0.32mmであり、固定相が100%ジメチルポリシロキサン(DB−5カラム)又は約5%のフェニルを含有するフェニルメチルポリシロキサンであることができる。GC−MSは、アルデヒド−又はケトン−タイプのPRMを同定及び定量できる。同定は、質量分析によって達成され、定量は、別の検出器、例えばFID(炎イオン化)検出器又はPID(光イオン化)検出器を用いて行われる。特定のGC/MS条件は以下に記載される。
【0079】
香料成分は、MS(同定用)及びFID(定量用)の両方についてスプリットモードのDB−5カラム(ジメチルシロキサン、60m×0.32mm、0.25μm)にて分離される。GC条件は以下の通りである:サンプルは、約35℃のオーブン温度で2分間保持され、次いでGCは、4℃/分で200℃まで上昇するようにプログラムされ、次いで10℃/分で325℃まで上昇させる。注入圧力は、94.5kPa(13.7psi(9.45N/m))にて一定に保持され、それは約2.4mL/分の不活性ガス(例えば、ヘリウム)流量に等しい。MS条件は次の通りである:走査幅35〜400amu(原子単位)。移動ラインは、約250℃に維持される。
【0080】
定量測定は、実行からの平均の20%以内に再現可能でなければならない。所与の実行からの結果が上記範囲内でない場合、その実行からのデータは無視され、試験を繰り返すべきである。少なくとも3回の満足のいく実行の平均が報告される。
【0081】
d)代表的な結果
上述されたPRM検出条件又は代替条件を満たす好適な試験溶液TSが調製される。第2の試験溶液TSは、ポリマー粒子が除去されている以外、TSと同一の濃度で全ての成分を含有するように調製される。TSは、試験の対照溶液として作用する。データは、上述されるような所与の試験溶液(TS又はTS)について集められ、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)によって分析されて、次の3つの指定時間毎にヘッドスペース中の各有益剤の量を測定する:2、6及び24時間。
【0082】
3つの指定時点のいずれかにおいてTSで処理された基材から収集されたヘッドスペース中のPRMの定量的な量が、対応する時点でTSにて処理された基材から収集されたヘッドスペース中の同じPRMの量よりも多い場合に、特定PRM/PPデリバリーシステムに関して寿命利益が確認される。
【0083】
寿命試験の結果は、応答因子(Response Factor)(RF)として報告されることができ、それは特定時点でTSにて処理された基材から収集されたヘッドスペース中の有益剤(例えば香料原料)の量と、同じ時点でTSにて処理された基材から収集されたヘッドスペース中の同じ有益剤の量とを比較した比である。有益剤デリバリーシステムは、そのRFが少なくとも約1.5、好ましくは少なくとも約3、より好ましくは少なくとも約5、最も好ましくは少なくとも約10である場合に、本発明の範囲内である。
【0084】
次の表は、寿命試験から得られることのできる結果を示す。データからは、PRM及びPRMと比較した場合に、PRM及びPRMについての寿命利益がより大きいことがわかる(t=24h、面積カウント(area count)TS>TS)。
【表1】

【0085】
別の方法としては、約1000〜1400のKovats指数を有するいずれかの香料原料について報告される応答因子(RFLKI)が、約1700より大きいKovats指数を有するいずれかの香料原料について報告される応答因子(RFHKI)より大きい場合、香料デリバリーシステムは本発明の範囲内である。換言すれば、比RFLKI/RFHKIが少なくとも約1.2、好ましくは少なくとも約3、より好ましくは少なくとも約5、最も好ましくは少なくとも約10である場合に、香料デリバリーシステムは本発明の範囲内である。
【0086】
さらに、香料デリバリーシステムは、約1000〜1400のKovats指数を有する全ての測定される香料原料について報告される平均応答因子(ARFLKI)が、約1700より大きいKovats指数を有する全ての測定される香料原料について報告される平均応答因子(ARFHKI)より大きい場合、香料デリバリーシステムは本発明の範囲内である。特に、比ARFLKI/ARFHKIが少なくとも約1.2、好ましくは少なくとも約3、より好ましくは少なくとも約5、最も好ましくは少なくとも約10である場合に、香料デリバリーシステムは本発明の範囲内である。
【0087】
(プロトコルIB(選択された香料原料アコード)):ポリマー粒子を含む各有益剤デリバリーシステムは、プロトコルIBに従って試験されるが、ここで選択された香料原料から製造されるアコードは、各ポリマー粒子(PP)と共に試験され、PRMとPPの組み合わせが、PRM単独で得られる場合と比べて、基材に送達される、又は基材から放出されるPRMの濃度若しくは持続放出時間の向上又は増大を示すかどうかを測定する。選択されたPRMアコードは、試験溶液(TS及びTS)を調製するために使用され、プロトコルIAにて上述されるような様式で試験される。
【0088】
本発明のポリマー粒子は、望ましくは低KIのPRM(すなわちトップノート)に対する向上した親和性を有するべきであるので、低KIのPRMはTSにて検出できない場合があり、TSでは検出可能となることが予想され、それは、前記PRMの基材に対する向上した送達が、ポリマー粒子が存在する場合に達成されることを示している;この状況では、このような低KIのPRMについての応答因子値は、10xとして定義される。しかし、高KIのPRMはTSにて検出できず、TSにて検出可能となる場合、このような高KIのPRMからの結果は、分析から排除される。20個のPRMのいずれかが、TS(対照溶液)でのHSGC面積カウント未満である、TS(サンプル溶液)でのHSGC面積カウントを示す場合、このようなPRMの応答因子値は1.0xとして定義される。
【0089】
香料デリバリーシステムは、次の10個の低Kovats指数PRM標準について報告される平均応答因子(ARF)が、次の10個の高Kovats指数PRM標準について報告される平均応答因子(ARF)より大きい場合、香料デリバリーシステムは、本発明の範囲内である。特にARFLKI/ARFHKIの比は、少なくとも約1.2、好ましくは少なくとも約2、より好ましくは少なくとも約4である。さらに、この比はまた、高KIのPRMよりも低KIのPRMに対してポリマー粒子が選択性又は親和性があることを示す。
【表2】

【0090】
プロトコルII(直接適用):間接適用の場合と同じ手順に従うが、変更点は(1)TSのアリコートを基材に添加するが、基材は水又はリンスで後に希釈されない;及び(2)試験結果を評価する時点は、7日目の4番目の時点を含むことである。
【0091】
4つの指定時点のいずれかにおいてTSからのヘッドスペース中のいずれかのPRMの定量的な量が、対応する時点でTSからのヘッドスペース中の同じPRMの量よりも多い場合に、特定ポリマー粒子(PP)に関して寿命利益が確認される。
【0092】
香料デリバリーシステムが直接適用モード(例えば、リーブオン製品)で使用される実施形態の1つでは、香料デリバリーシステムのポリマー粒子は、PRMの放出特性を「平坦にする」ことができる。すなわち、PRMの初期ブルーミングは低減/抑えられ、代わりにPRMは、長時間制御され、拡張された様式で香料放出システムから放出される。初期ブルーミングの抑制は、短時間(例えば約30分〜約1時間)にてTS(PRM及びPPを含有)で処理された基材から放出されるPRMの初期ヘッドスペースカウントが、対応する時点でのTS(PRMを含有し、PPを含まない)で処理された基材から放出され収集されたPRMのヘッドスペースカウントよりも低くなり得る。しかし、さらに時間が経てば寿命利益が観測される。好ましくは本発明のポリマー粒子は、1700未満のKovats指数を有するPRMの寿命を増大させ、より好ましくは約1000〜約1400である低Kovats指数を有するPRMの寿命を増大させ、その程度は約1700を超える高Kovats指数を有するPRMよりも大きい。
【0093】
次の表は、直接適用に関する寿命試験から得られことのできる種類の結果を示す。データからは、ポリマー粒子(PP)の存在下、PRM(t=6時間、TS>TSの面積カウント)及びPRM(t=2及び6時間、TS>TSの面積カウント)についての寿命利益が確認される。
【表3】

ND=検出されない。
【0094】
(プロトコルIII 親和性試験)
本発明の香料デリバリーシステムに有用なポリマー粒子は、次の1以上の特性を有するPRMに対して、これらの特性を備えていない他のPRMに対する親和性よりも大きい親和性を示す:約200未満の分子量;約250℃未満の沸点;約3未満のClogP;又は約1700未満、好ましくは約1000〜約1400のKovat指数値。次のポリマー粒子親和性試験プロトコルIIIは、ポリマー粒子が本発明の範囲内にあるかどうかを決定するために使用できる。
【0095】
ポリマー粒子は、香料を含有する液体消費者製品(例えば、市販の液体柔軟仕上げ剤は、通常香料を含有する)に完全に混合される(攪拌、振盪などを介して)。製品及びポリマー粒子は平衡化(例えば、3〜4日間)され、その間にポリマー粒子が香料中の1以上のPRMと結び付く(又は「充填される」)。次いで、製品及び充填されたポリマー粒子は、16時間、4,189rad/s(40,000rpm)での超遠心分離によって分離される。遠心分離に続いて、内容物は、区別可能な層、例えば上部の脂質層、中間の水相、及び底部の粒子相に分離する。各層からのサンプルは、好適な有機溶媒(例えば、アセトン)で抽出され、上記で与えられた装置条件を用いて香料同定用のGC/MSを介して分析される。
【0096】
GC/MS分析結果に示されるようなポリマー粒子の選択性又は親和性は、底部の粒子層が、Kovats指数値、分子量、沸点及び/又はClogPの上記基準を満たすPRMについて、上部又は中間層のいずれかの同一PRM濃度と比較した場合に相対的に豊富である場合に示される。換言すれば、底部の粒子層の低KIのPRMのARFは、上部又は中間層の低KIのPRMのARFより少なくとも約1,2x、好ましくは少なくとも約4x高い。
【0097】
(有益剤デリバリーシステム及び製品調製)
ポリマー粒子及び有益剤を含む有益剤デリバリーシステムは、最終製品配合物を調製する際に製品マトリックスに成分を添加する様式と同様に、ポリマー粒子及び有益剤を製品マトリックス(液体又は顆粒状)に別々に添加する別々の添加モードによって調製される。別々の添加モードにおいて、有益剤デリバリーシステムの形成は、そのために設計された有益剤に対するポリマー粒子の親和性によって促進される。完全な混合は、高剪断攪拌を用いて行われることが多い。約40℃〜約65℃の穏やかな加熱が使用される場合もある。必須成分又は補助剤成分は、有益剤及びポリマー粒子の添加に関していかなる時でもマトリックスに添加でき、完全な最終製品を形成する。
【0098】
(洗浄及び布地処理製品)
本発明の有益剤デリバリーシステムは、種々広範の洗浄製品及び布地処理製品に導入されるのが好ましい。このような製品には、通常、布地の洗濯、並びに硬質表面、例えば、食器、床、浴室、トイレ、台所、及び有益剤を長期に又は遅延放出させる必要のあるその他の表面などの洗浄に使用される、洗濯組成物及び洗浄組成物の両方が含まれる。すなわち、本発明の洗濯組成物及び洗浄組成物には、布地洗浄利益をもたらす洗剤組成物だけでなく、硬質表面の洗浄利益をもたらす洗浄組成物のような組成物も包含される。さらに、本発明のデリバリーシステムを含有する組成物はまた、柔軟仕上げ剤又は布地向上剤のような布地処理又は仕上げ製品を包含する。
【0099】
本発明の有益剤デリバリーシステムを導入する製品にはまた、皮膚、毛髪及び/又は爪に利益を送達するパーソナルケア製品も包含される。このような製品は、シャンプー又はボディウォッシュ組成物の形態で基材に洗浄利益を提供するため、又はヘアコンディショナー又はスキンローションの形態で基材に非洗浄利益を提供するために使用できる。
【0100】
有益剤が香料を含む特定の実施形態において、有益剤の処理表面への送達有効性は、乾燥表面臭気指数(Dry Surface Odor Index)と呼ばれるパラメータによって定量化され得る。こうしたパラメータの測定は、PCT国際公開特許WO00/02982に十分に記載されている。好ましくは、香料デリバリーシステムが洗浄製品及び布地処理製品中に導入される場合、約5を超える、好ましくは少なくとも約10の乾燥表面臭気指数が得られる。他の実施形態において、香料デリバリーシステムは、乾燥表面臭気指数を必ずしも増大させないが、基材表面上の香料の現れ又は特性に所望の変化を提供する。
【0101】
一般に、本明細書の有益剤デリバリーシステムは、ポリマー粒子に有益剤を加えた濃度が、製品組成物の約0.005重量%〜20重量%、より好ましくは約0.05重量%〜10重量%、さらにより好ましくは約0.1重量%〜5重量%の範囲になるように、本明細書の洗浄又は布地処理製品に導入されることができる。洗浄製品に関して、ポリマー粒子と有益剤との組み合わせは、一般に、製品組成物の約1重量%〜50重量%の界面活性剤とともに、約0.005重量%〜10重量%の濃度で導入される。布地処理製品に関して、ポリマー粒子/有益剤の組み合わせは、一般に、製品組成物の約1重量%〜50重量%の柔軟仕上げ剤又は処理剤とともに、製品組成物の約0.05重量%〜10重量%の濃度で導入される。
【0102】
本発明の特定の実施形態において、香料ポリマー粒子は、布地洗濯製品に配合されて、その製品中での配合適合性及び安定性を達成することができる。布地洗濯組成物は、香料ポリマー粒子の付着を促進するために付着ポリマーを含んでいてもよい。これらの付着ポリマーは、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、及び/又は双性イオン性であってもよい。ポリマー粒子が陰イオン性モノマーを含む場合、洗濯組成物のための付着ポリマーは陽イオン性であるのが好ましい。
【実施例】
【0103】
本明細書の有益剤デリバリーシステムの調製、及び特定の種類の洗浄製品への導入については、以下の実施例によって説明され得る。
【0104】
(実施例I:液体洗剤組成物の調製)
本発明に従う重質液体洗剤組成物は、次のように製造されることができる:
工程1−従来の重質液体洗剤組成物は、当該技術分野において既知の従来の方法のいずれかによって製造される;
工程2−本発明に従うポリマー粒子2重量%を、工程1の組成物に添加し、次いでその組成物を約1〜3分間混合する;
工程3−本発明に従う有益剤0.15重量%を、工程2のポリマー粒子組成物に添加し、次いでその組成物を約5分間混合する;
*工程2及び工程3は分離した別個の添加工程であることに留意されたい。
【0105】
(実施例II:パーソナルクレンジング組成物の調製)
本発明に従うパーソナルクレンジング組成物は、次のように製造されることができる:
工程1−界面活性剤(以下の表における成分1〜4)、EDTA、トリヒドロキシステアリン、及びラウリン酸を容器にて混合し、87.8℃(190°F)に加熱し、冷却させる;温度が60℃(140°F)未満に下がったら、グリダント(glydant)を混合する;
工程2−別の容器にて、陽イオン性付着ポリマー(7,8)を、溶液が透明で粘稠になるまで水中で完全に水和させる;
工程3−ポリマー粒子(例えば、アリアンズ(Allianz)(登録商標)OPT)を、工程2にて調製された混合物に添加し、均一になるまで混合する;次いで有益剤(例えば、香料又は香料原料)を容器に添加し、混合する;並びに
工程4−工程1からの事前製造界面活性剤混合物を、工程3からの容器に添加し、バッチ全体を滑らかになるまで十分混合する;次いでそのpHを6.3に調整し、硫酸ナトリウムを用いて粘度を7Pa・s(7000cps)〜10Pa・s(10,000cps)に調整する。
【0106】
(パーソナルケア組成物の実施例)
【表4】

アリアンツ(Allianz)(登録商標)は、アリアンゼ社(Allianze Corp.)(カリフォルニア州ロサンジェルス)から入手可能である;
グリダント(Glydant)(登録商標)は、グリコール・ケミカルズ社(Glycol Chemicals,Inc.)(コネチカット州グリーンウィッチ(Greenwich))から入手可能である;
ユーケア(Ucare)(登録商標)は、ユニオンカーバイド社(Union Carbide Corp.)(コネチカット州ダンブリー(Danbury))から入手可能である;及び
ナンス(Nhance)(登録商標)は、ハリスリサーチ社(Harris Research Inc.)(ユタ州ローガン(Logan))から入手可能である。
【0107】
(実施例III:パーソナルクレンジング組成物の調製)
本発明に従うパーソナルクレンジング組成物は、次のように製造されることができる:
工程1−界面活性剤(成分1〜4)、EDTA、トリヒドロキシステアリン、及びラウリン酸を容器にて混合し、87.8℃(190°F)に加熱し、冷却させる;温度が60℃(140°F)未満に下がったら、グリダント(glydant)を混合する;
工程2−別の容器にて、陽イオン性付着ポリマー(7,8)を、溶液が透明で粘稠になるまで水中で完全に水和させる;
工程3−工程1からの事前製造界面活性剤混合物を、工程2からの容器に添加し、バッチ全体を混合する;次いで有益剤(例えば、香料又は香料原料)を容器に添加し、混合する;並びに
工程4−ポリマー粒子(例えば、アリアンツ(Allianz)(登録商標)OPT)を、工程3にて調製された混合物に添加し、混合する;次いでそのpHを6.3に調整し、硫酸ナトリウムを用いて粘度を7Pa・s(7000cps)〜10Pa・s(10,000cps)に調整する。
【0108】
優先権文書を含む引用されるすべての文献は、その関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用もそれが本発明に関して先行技術であるとの容認として解釈されるべきではない。
【0109】
本発明の特定の実施形態を例示し、記載してきたが、様々なその他の変更及び修正を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことが可能であることは当業者には明白である。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に有益剤を送達するのに好適な有益剤デリバリーシステムであって、前記有益剤デリバリーシステムが、ポリマー粒子及び有益剤を含み、前記ポリマー粒子及び前記有益剤が、別々にマトリックスに添加されて前記有益剤デリバリーシステムを形成することを特徴とし;前記有益剤デリバリーシステムが前記基材上に直接的又は間接的に付着される場合、前記有益剤デリバリーシステムによって示される応答因子(RF)が、試験プロトコルI又はIIによって測定される場合に少なくとも約1.5である、デリバリーシステム。
【請求項2】
前記マトリックスが、顆粒状マトリックス又は液体マトリックスであることを特徴とする、請求項1に記載のデリバリーシステム。
【請求項3】
前記デリバリーシステム及び前記マトリックスが、前記基材と接触する前及び/又は後に水で希釈されることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載のデリバリーシステム。
【請求項4】
前記ポリマー粒子及び前記有益剤が、前記マトリックス中で非ポリマー的に結び付くことになることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のデリバリーシステム。
【請求項5】
前記有益剤が、香料原料であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のデリバリーシステム。
【請求項6】
前記ポリマー粒子が、親和性試験プロトコルIIIによって測定される場合に、約1000〜約1400のKovats指数を有するLKI香料原料に対する第1の親和性が、約1700を超えるKovats指数を有するHKI香料原料に対する第2親和性よりも少なくとも2倍大きいポリマーを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のデリバリーシステム。
【請求項7】
前記有益剤が、各々が約1000〜約1400のKovats指数値を有する1以上のLKI香料原料、及び各々が約1700を超えるKovats指数値を有する1以上のHKI香料原料を含む香料アコードであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のデリバリーシステム。
【請求項8】
前記LKI香料原料が、集合的に第1の平均応答因子(ARFLKI)を提供し、前記HKI香料原料が、集合的に第2の平均応答因子(ARFHKI)を提供することを特徴とし;
前記香料ポリマー粒子が、少なくとも約1.2のARFLKI/ARFHKIの比を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のデリバリーシステム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の有益剤デリバリーシステム及び補助剤成分を含む、組成物。
【請求項10】
前記組成物が、パーソナルケア組成物、布地ケア組成物、又は硬質表面ケア組成物であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が製造された後の少なくとも1つの時点で、前記ポリマー粒子及び前記有益剤が分離した別個の成分であり、基材に直接的及び/又は間接的に適用される前、適用される間又は適用された結果として互いに結び付くことになることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の有益剤デリバリーシステムを含有する顆粒状又は液体組成物を製造する方法であって、次の工程:
a)顆粒状又は液体マトリックスを提供する工程;
b)ポリマー粒子を前記マトリックスに添加する工程;及び
c)有益剤を前記マトリックスに添加する工程;
を含み、前記ポリマー粒子及び有益剤が、分離した別個の成分として異なる供給源から添加されて、前記有益剤デリバリーシステムを形成することを特徴とする、方法。

【公表番号】特表2006−514704(P2006−514704A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550334(P2004−550334)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/034677
【国際公開番号】WO2004/041233
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】