説明

ポリマー製造のための、C11ジオール、又はC11ジオール混合物の使用

モノマー化合物から重縮合又は重付加形成により得られるポリマーであって、モノマー化合物として、式(I)の2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、又はそのアルコキシ化された誘導体(以降、まとめてC11ジオールと呼ぶ)を併用することを特徴とする、前記ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー化合物から重縮合又は重付加形成により得られるポリマーであって、モノマー化合物として、式(I)
【化1】

の2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、又はそのアルコキシ化された誘導体(以降、まとめてC11ジオールと呼ぶ)を併用する、前記ポリマーに関する。
【0002】
ジオールは、ポリマーの製造、例えばポリエステル又はポリウレタンの製造に必要となる。EP-A 562 578には例えば、ポリエステルを製造するために様々なシクロヘキサンジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、又は1,4−シクロヘキサンジエタノールの使用が記載されている。
【0003】
ポリエステルを製造するための式IIの2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールの使用は、特開平03-161452から公知である。
【0004】
様々な使用におけるポリマーの適用技術特性を改善することが、基本的に望ましい。
【0005】
被覆材料、接着剤、又は封止材料中で結合剤としてポリマーを使用する場合、とりわけ重要となるのは、溶融粘度(100%系)であれ、溶液粘度(ポリマー溶液)であれ、いずれにせよ粘度である。製造された被覆は、塗料適用のために良好な機械的特性、例えば耐衝撃性と弾性、高い耐引掻性と衝撃強度、水、溶剤、グリース、及び薬品に対する良好な耐性と環境への影響を有し、並びに高い光沢を有するのが望ましい。
【0006】
本発明の課題は、このようなポリマーを利用可能にすることであった。
【0007】
これに従って、冒頭で定義されたポリマー、並びに被覆材料、封止材料、又は接着剤中での結合材としてのその使用が判明した。
【0008】
C11ジオール又はC11ジオール混合物について
本発明によるポリマーを製造するために、他のモノマー化合物に加えて、式I
【化2】

の2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオールを併用する。
【0009】
以降、式Iの2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、及びまた後述する式IIの2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオールには、常にアルコキシ化されたその誘導体も含まれている。これらのジオールはとりわけ、エチレンオキシド若しくはプロピレンオキシド、又はこれらの混合物によってアルコキシ化されていてよい。これらのアルコール基は例えば、1〜20個、とりわけ1〜10個のアルコキシ基によってアルコキシ化されていてよい。
【0010】
好ましい実施態様では、両方のジオールがアルコキシ化されていない。
【0011】
好適には、式Iの2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオールの他に、式II
【化3】

の2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオールとの混合物で本発明によるポリマーを製造するためにモノマー化合物として使用する。
【0012】
式Iの2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールは、以下、C11ジオールとも呼ぶ;2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオールと2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオールは、以下、C11ジオール混合物とも呼ぶ。
【0013】
C11ジオール混合物は例えば、
1〜99質量%、とりわけ5〜95質量%の2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、及び
1〜99質量%、とりわけ5〜95質量%の2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、
を含み、ここで質量パーセントは、上記ジオールの全質量に対するものである。
【0014】
C11ジオール混合物は好ましくは、
1〜50質量%、とりわけ2〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%、及び極めて特に好ましくは7〜15質量%の、2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、及びこれに相応して
50〜99質量%、とりわけ70〜98質量%、特に好ましくは80〜95質量%、及び極めて特に好ましくは85〜93質量%の2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール
を含み、ここで質量パーセントは、双方の上記ジオールの全質量に対するものである。
【0015】
極めて特に適切なC11ジオール混合物は、2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、及び2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオールを、約8〜12:1の質量比で、すなわち、2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオールと比較して8〜12倍の量、とりわけ約10倍の量で2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオールを含む。
【0016】
C11ジオール混合物はさらなる成分を含むことができ、先の質量の記載は、両方のジオールが互いに存在する場合の質量比のみを定義するものである。
【0017】
C11ジオール又はC11ジオール混合物の製造について
2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール及び/又は2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオールは、従来技術の方法に従って製造可能である。
【0018】
C11ジオール混合物の場合、両方のジオールは、例えばそれぞれを合成し、そして引き続き所望の比で混合するか、又は独立して事前の混合無しでポリマーの製造に使用することもできる;C11ジオール混合物の場合に重要となるのは、ポリマーが両方のジオールを相応する量で含むことである。
【0019】
好適には、C11ジオール混合物は事前に混合物として製造し、また混合物としてポリマー製造のために使用する。
【0020】
以下、C11ジオール混合物のための好ましい合成法を記載する。C11ジオール混合物からは所望のジオールを分離することができ、また所望の場合には、2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール及び/又は2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオールが純粋な形態で得られ、又はこれらの両方のジオールの任意の混合物が製造できる。
【0021】
WO 03/018192には、2−プロピルヘプテナール及び2−プロピル−4−メチルヘキセナールを(例えば、約10:1の量で)含む、C10混合物の製造が記載されている(特許請求されている方法の方法工程a)〜c))。ブテンのヒドロホルミル化によって、ペンタナール(n−バレルアルデヒド)の混合物、及び僅少量の2−メチル−ブタナールが得られる。引き続き、アルドール縮合と水の脱離により、2−プロピルヘプテナールと、2−プロピル−4−メチルヘキセナールとの混合物が生じる。
【0022】
こうして得られる2−プロピルヘプテナールと2−プロピル−4−メチルヘキセナールとの混合物は、第一方法工程で相応するアルカナール(2−プロピルヘプタナール及び2−プロピル−4−メチルヘキサナール)へと水素化することができる。水素化は、通常の方法で行うことができる。適切な水素化法は例えば、DE-A 19524971に記載されている。
【0023】
好ましいのは、通常の水素化触媒、例えばパラジウム/Al23を用いる接触水素化である。
【0024】
水素化のためには例えば、ニッケル触媒、銅触媒、銅/ニッケル触媒、銅/クロム触媒、銅/クロム/ニッケル触媒、亜鉛/クロム触媒、ニッケル/モリブデン触媒も使用可能である。触媒は非担持触媒であってよく、又は水素化活性物質若しくはその前駆体は、担体、例えばSiO2又はAl23上に施与されていてよい。好適なのは、液相水素化である。水素化は、1〜100barの圧力で行うことができる。反応温度は好ましくは、50〜200℃の範囲、好ましくは80〜150℃の範囲である。
【0025】
水素化により得られる2−プロピルヘプタナールと2−プロピル−4−メチルヘキセナールとの混合物は、交差カニッツァーロ反応によって得られる(2つの異なるアルデヒドを用いるカニッツァーロ反応;ここではアルデヒド1が上述の混合物であり、アルデヒド2がホルムアルデヒドである)。このような交差カニッツァーロ反応の実施は当業者に公知であり、例えば特開平03-161452に記載されている。触媒として好適には、アルカリ金属水酸化物(例えばNaOH、Ca(OH)2、KOH)を使用する。交差カニッツァーロ反応の際にギ酸が形成され、これは塩として(例えばギ酸ナトリウム又はギ酸カリウムとして)沈殿し、かつ容易に分離可能である。
【0026】
交差カニッツァーロ反応に代わる他の合成法は例えば、2−プロピルヘプテナール及び2−プロピル−4−メチルヘキセナールと、ホルムアルデヒドとのアルドール反応、及び引き続いたC11ジオール混合物への水素化(例えばWO 04/092097に記載)である。
【0027】
上記の方法は、すべての方法工程で非連続的に、又は好ましくは連続的に行うことができる。
【0028】
特に好ましいのは、上述の方法により得られるC11ジオール混合物、すなわち、
a)ブテンからペンタナール及び2−メチル−ブタナールへのヒドロホルミル化、
b)引き続き、水脱離下での2−プロピルヘプテナール及び2−プロピル−4−メチルヘキセナールへのアルドール反応、
c)引き続き、2−プロピルヘプタナール及び2−プロピル−4−メチルヘキサナールへの水素化、及び
d)2−プロピルヘプタナール及び2−プロピル−4−メチルヘキサナール及びホルムアルデヒドの交差カニッツァーロ反応、又は代替的に、2−プロピルヘプテナール及び2−プロピル−4−メチルヘキセナールと、ホルムアルデヒドとのアルドール反応、及び引き続いた水素化、
によって得られるC11ジオール混合物である。
【0029】
こうして得られるC11ジオール混合物は場合により、別のさらなる成分、とりわけ他のジオール又は別のアルデヒドを含んでいてよい。
【0030】
こうして得られるC11ジオール混合物は一般的に、少なくとも90質量%が、式I及びIIの両方のジオールから成る。
【0031】
得られる混合物からは、個々のジオールが蒸留により分離可能であるか、又は個々のジオールの濃度を変え、かつ適切に調整することができる。
【0032】
アルコキシ化されたジオールが所望の場合には、引き続きヒドロキシ基のアルコキシ化を、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドによって行うことができる。
【0033】
ポリマーについて
ポリマーは、C11ジオール又はC11ジオール混合物を併用して、モノマー化合物から重縮合又は重付加形成により得られる;これらのポリマーは所望の場合には、他の、又はさらなる反応により化学的に変性可能である、例えば官能化若しくは架橋できる。
【0034】
モノマー化合物からの重縮合の場合、水又はアルコールの脱離につながり、重付加形成の場合は、脱離にはつながらない。
【0035】
好ましい重縮合物は、ジオール又はポリオールと、反応性誘導体の形、例えば無水物又はエステルの形でも使用可能なジカルボン酸又はポリカルボン酸との反応によって得られる、ポリエステルである。以下でポリエステルという言葉は、50質量%超、特に好ましくは70質量%超、及びとりわけ90質量%超が、ジオール、ポリオール、ジカルボン酸及びポリカルボン酸から選択される構成要素から成るポリマーと理解されるべきである。
【0036】
アルコールの脱離下、ジアルキルカーボネートとジオールとの反応によって得られる、ポリカーボネートジオールも挙げられる。
【0037】
重付加物としてはとりわけ、ポリウレタンが挙げられる。考慮されるのはまた、例えば、ラクトン又はラクタムの開環重合によって得られる重付加物である。
【0038】
以下でポリウレタンという言葉は、50質量%超、特に好ましくは70質量%超、及びとりわけ90質量%超が、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、ジオール及びポリオールから選択される構成要素から成るポリマーと理解されるべきである。
【0039】
これらすべてのポリマーに共通するのは、基本的に、ジオールと、これらのジオールと反応性の化合物、例えばジカルボン酸若しくはポリカルボン酸(ポリエステル)又はジイソシアネート若しくはポリイソシアネート(ポリウレタン)とから構成されていることである。
【0040】
好ましいポリマーはポリエステルとポリウレタンであり、特に好ましいのはポリエステルである。
【0041】
本発明によるポリマーは好適には、後述のC11ジオール又はC11ジオール混合物含分を有する;ここで、ポリマー中でのC11ジオール又はC11ジオール混合物の含分についての後述の質量の記載は、C11ジオール又はC11ジオール混合物から誘導されるポリマー単位に対するものである。重付加物の場合、これらの単位の質量はそのままC11ジオール又はC11ジオール混合物に対応し、重縮合の場合、これらの単位の質量は、ヒドロキシ基の水素原子の分だけ減っている。
【0042】
好ましいポリマーは少なくとも少なくとも0.5質量%、特に好適には少なくとも2質量%、極めて特に好ましくは少なくとも5質量%、及びとりわけ少なくとも10質量%、及び特別な実施態様では少なくとも20質量%が、C11ジオール又はC11ジオール混合物から成る。ジオールに対して反応性の他の化合物の併用が必須なため、ポリマーは一般的に70質量%以下、とりわけ60質量%以下、若しくは50質量%以下が、C11ジオール又はC11ジオール混合物から成る。
【0043】
C11ジオール又はC11ジオール混合物の他に、ポリマーは他のジオール又はポリオールを構成成分として含むことができる。好ましい実施態様では、ポリマーを構成するジオールとポリオールが、少なくとも10質量%、特に好ましくは少なくとも25質量%、及び極めて特に好ましくは少なくとも50質量%、C11ジオール又はC11ジオール混合物である。
【0044】
ポリマーを構成するジオールとポリオールはとりわけ、少なくとも70質量%、若しくは少なくとも90質量%、C11ジオール又はC11ジオール混合物である。
【0045】
特に好ましい実施態様では、ポリマーを構成するすべてのジオールとポリオールが100質量%、C11ジオール又はC11ジオール混合物である。
【0046】
ポリエステルのさらなる成分
C11ジオール又はC11ジオール混合物の他に、ポリエステルはさらなるジオール又はポリオールを構成成分として含むことができる。
【0047】
ジオールとして挙げられるのは例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びより高度に縮合されたその代替物、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシ化されたフェノール性化合物、例えばエトキシ化若しくはプロポキシ化されたビスフェノール、シクロヘキサンジメタノールである;さらなる構成成分として適しているポリオールは、三官能性の、及びより高官能性のアルコール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、ネオペンチルグリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリット、ソルビット、マンニットである。
【0048】
上記のジオール又はポリオールは、アルコキシ化、とりわけエトキシ化、及びプロポキシ化されていてよい。アルコキシ化生成物は公知の方法で、上記のアルコールと、アルキレンオキシド、とりわけエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドとの反応により得られる。アルコキシ化度は、ヒドロキシル基当たり0〜10であることが好ましい、すなわち1モルのヒドロキシル基は好ましくは最大10molのアルキレンオキシドでアルコキシ化してよい。
【0049】
ポリエステルはさらに、ジカルボン酸又はポリカルボン酸を構成成分として含む。ジカルボン酸又はポリカルボン酸は、ポリエステル製造の際にその反応性誘導体の形で、例えば無水物若しくはエステルとしても使用可能である。適切なジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの異性体、及び水素化生成物、例えばテトラヒドロフタル酸である。考慮されるのはまた、不飽和ポリエステルのためのマレイン酸及びフマル酸である。
【0050】
ポリエステルはまた、モノアルコール又はモノカルボン酸を成分として含むことができる:このような化合物の併用によって、分子量を調整若しくは限定することができる。
【0051】
特別な特性を達成するために、ポリエステルは特別な官能基を含むことができる。水溶性又は水に分散可能なポリエステルは、水溶性又は水分散性を得るために、親水性基、例えばカルボキシ基若しくはカルボキシレート基の必要量を含む。架橋可能なポリエステル、例えば粉末塗料のためのものは、使用される架橋剤と一緒に架橋反応を引き起こす官能基を含む。ヒドロキシ基含有化合物、例えばヒドロキシアルキルアミドによる架橋が企図されている場合、ここでこれは同様にカルボン酸基である。官能基とは、エチレン性不飽和基であってよく、例えば不飽和カルボン酸(マレイン酸)によるポリエステルの変性によるもの、又は(メタ)アクリル酸との反応によるものであってよい;このようなポリエステルは、光硬化可能である。
【0052】
不飽和ポリエステルはまた、モノエチレン性又はポリエチレン性不飽和のラジカル重合可能な化合物、例えばスチレン、C1〜C10アルキルアクリレート、ジアルキルアクリレート、例えばエタンジオール若しくはブタンジオールのジアクリレートと、共重合させることができる。このために不飽和ポリエステルは、エチレン性不飽和モノマーとの混合物で使用可能であり、例えばWO 00/23495及びEP 1 131372に記載されている。上述のエチレン性不飽和化合物はこの際、同時に溶剤(反応性希釈剤)として用いられ、その結果この混合物は当該化合物中で好適にはポリエステルの溶液として存在する。この混合物は例えば、被覆剤若しくは含浸剤として、とりわけまた積層材の製造のために使用することができる。硬化は熱的に、又は光化学的に行うことができ、両方の場合で場合により開始剤も添加して行うことができる。
【0053】
ポリウレタンのさらなる成分について
ポリウレタンは基本的な構成成分として、ジイソシアネート又はポリイソシアネートを含む。
【0054】
特にジイソシアネートX(NCO)2を挙げることができ、ここで、Xは、炭素原子4〜15個を有する脂肪族炭化水素基、炭素原子6〜15個を有する脂環式炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基又は炭素原子7〜15個を有する芳香脂肪族炭化水素基を表す。そのようなジイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,2−ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−プロパン、トリメチルヘキサンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(HMDI)の異性体、例えばトランス/トランス−異性体、シス/シス−異性体及びシス/トランス−異性体並びにこれらの化合物からなる混合物である。
【0055】
そのようなジイソシアネートは、市販で入手可能である。
【0056】
これらのイソシアネートの混合物として、特に、ジイソシアナトトルエン及びジイソシアナトジフェニルメタンのそれぞれの構造異性体の混合物が重要であり、特に、2,4−ジイソシアナトトルエン80mol%及び2,6−ジイソシアナトトルエン20mol%からなる混合物が好適である。さらに、芳香族イソシアネート、例えば2,4−ジイソシアナトトルエン及び/又は2,6−ジイソシアナトトルエンと、脂肪族又は脂環式のイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート又はIPDIとの混合物が特に有利であり、その際、脂肪族イソシアネート対芳香族イソシアネートの好ましい混合比は4:1〜1:4である。
【0057】
ジイソシアネート若しくはポリイソシアネートと反応させるジオール若しくはポリオールとしては、本発明によればC11ジオールを単独で、又はC11ジオールを他のジオール若しくはポリオールとの混合物で使用する。
【0058】
ポリウレタンの場合、ジオールとして好適にはポリエステルオール、とりわけポリエステルジオールを使用する。このようなポリエステルオールは、事前にジオール又はポリオールと、ジカルボン酸又はポリカルボン酸との反応により得られる(前述のポリエステルの記載を参照)。C11ジオールは、ポリウレタン中でこのようなポリエステルオールの形で含まれていてよい。さらなるジオール、ポリオールとして考慮されるのは、構成成分としてジイソシアネート又はポリイソシアネートと直接反応させるものとしてであろうと、ポリエステルジオールの成分としてであろうと、上述のものである。ポリエステルジオールのためのジカルボン酸又はポリカルボン酸としては、同様に上記のものが考慮される。
【0059】
ポリウレタンはまた、モノアルコール又はモノイソシアネートを成分として含むことができる:このような化合物の併用によって、分子量を調整若しくは限定することができる。
【0060】
特別な特性を達成するために、ポリウレタンは特別な官能基を含むことができる。水溶性又は水に分散可能なポリウレタンは、水溶性又は水分散性を得るために、親水性基、例えばカルボキシ基若しくはカルボキシレート基の必要量を含む。適切な構成成分としては例えば、ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。架橋可能なポリウレタンは、使用される架橋剤と一緒に架橋反応を引き起こす官能基を含む。ポリウレタンはウレタン基の他に、とりわけまた他の官能基、例えば尿素基を含むことができ、これはジイソシアネート又はポリイソシアネートとアミノ化合物との反応により生じる。
【0061】
ポリマーは所望の場合には、その最中に、とりわけまた後の時点で、例えば使用の際に、他の又はさらなる反応によって化学変性、例えば官能化又は架橋することができる。
【0062】
ポリマーはとりわけ、必要な条件が存在すれば直ちに架橋反応を引き起こす架橋性基を含むことができる。ポリマーはとりわけまた、所望の時点で必要な条件下(とりわけ高温下)、ポリマーとの架橋反応を引き起こす架橋剤との混合物で使用することができる。
【0063】
架橋剤の反応性により、1成分系(1K)と、2成分系(2K)とが区別される。
【0064】
2Kシステムの場合、架橋剤を比較的後で使用する直前に添加し、1Kシステムでは架橋剤を早い時点でシステムに添加することができる(潜在的な架橋剤)。架橋は、後に調整される条件下、例えば溶剤の除去、及び/又は温度上昇の際に初めて起こる。
【0065】
通常の架橋剤は例えば、イソシアネート、エポキシド、酸無水物であり、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有するポリマーの場合は、エチレン性不飽和モノマー、例えばスチレンでもある。
【0066】
ポリマーの使用について
ポリマーは、熱可塑性組成物の成分として適している。ポリマー、例えばポリエステル又はポリウレタンは、好適には充分に高い分子量を有し、ひいてはこれらのポリマーは熱可塑特性を有する。
【0067】
熱可塑性組成物は一般的に、成形体の製造のために使用され、この際に通常の方法、例えば射出成形、押出成形、又は吹き込み成形が適用可能である。
【0068】
とりわけポリマーは、被覆材料、封止材料又は接着剤の成分として適している。
【0069】
被覆材料、封止材料、又は接着剤は、本発明によるポリマーを好適には結合剤として含む。これらはさらなる結合剤、及びその他の添加剤、例えば抗酸化剤、安定化剤、着色剤、顔料、流量調整助剤、粘稠剤、又は湿潤助剤を含むことができる。
【0070】
被覆材料、封止材料、又は接着剤とは、水性若しくは溶剤含有材料であり得る。水性材料が好ましい。
【0071】
このような材料は、本発明による結合剤を好適には溶液又は分散液の形で、水若しくは有機溶剤中、又はこれらの混合物中に含む。必要であれば、ポリマーは、水中若しくは有機溶剤中、好ましくは水中への溶解性又は分散可能性に影響を与える、付加的な官能基を含むことができる(上記参照)。
【0072】
被覆材料、封止材料、又は接着剤とはまた、ほとんど水若しくは有機溶剤不含の材料(いわゆる100%システム)であり得る。このような材料は一般的に、水又は他の有機溶剤(1barで沸点150℃未満)を、材料100質量部に対して10質量部未満含む。このような材料は特に好ましくは、水又はその他の有機溶剤(1barで沸点150℃未満)を、材料100質量部に対して2質量部未満、極めて特に好ましくは1質量部未満、若しくは0.5質量部未満含む。
【0073】
この際にこれは、室温でなお流動性を有するものであり得、或いは例えば粉末として存在する材料、及び高められた温度で初めて加工される材料であり得る。
【0074】
材料、とりわけ被覆材料は、光硬化可能であってよく、若しくは光硬化可能な材料若しくは被覆材料として使用可能である。これらの材料は好適には、そのために光硬化可能な本発明によるポリマー、とりわけ光硬化可能なポリエステルを含む(上記参照)。光硬化は、エネルギー豊富な光線、例えば電子線、又はUV光によって行うことができる:UV光を使用する際、好適にはポリマーに光開始剤を添加することができる。
【0075】
本発明の範囲における好ましい使用は、粉末塗料として、又は粉末塗料中での、本発明によるポリマーの使用である。好適には、架橋可能なポリエステルを粉末塗料として使用する。
【0076】
好ましい実施態様では、ポリエステル、架橋剤、及びさらなる添加剤、例えば顔料や流量制御剤を混合及び溶融することによって、粉末塗料を高温下で製造する。この混合物は、引き続いた押出成形と、その押出成形体の適切な加工によって、粉末状にすることができる。
【0077】
粉末塗料は通常の方法、例えば静電的に、所望の基材、例えば金属表面、プラスチック表面、又は木材表面を有する基材上に被覆することができる。
【0078】
本発明によるポリマーは粘度が低く、また溶融粘度が低い(100%システム)か、又は溶液粘度が低い(ポリマー溶液)。低い粘度によって、容易な取り扱いが可能になり、良好な被覆特性という作用がもたらされ、かつ溶液又は分散液中でのより高い固体含分、又は顔料含有材料中のより低い結合剤含分が可能になる。本発明によるポリマーはとりわけ、耐加水分解性も非常に高い。
【0079】
本発明によるポリマーは、被覆材料、封止材料、及び接着剤中での使用の際に、良好な機械的特性作用をもたらす:とりわけ被覆材料、例えば粉末塗料は、高い耐衝撃性、良好な弾性、及び良好な光沢を有する。
【0080】
実施例
C11ジオール混合物の製造
2−プロピルヘプテナール、2−プロピル−4−メチルヘキセナールの選択水素化
出発溶液としては、WO 2003 018192 A1に記載のようにC5アルデヒド異性体混合物から製造された、とりわけ2−プロピルヘプテナール及び2−プロピル−4−メチルヘキセナール(〜10:1)からの異性体混合物を用いた。
【0081】
この混合物を水素化供給流(混合物は、C10アルデヒドを91質量%含んでいた)として、トリクル法で、H2圧力40barで105℃に加熱した反応器(14lの固定床反応器、直径70mm)に入れた。負荷量は、0.1kg有機物/l触媒*hであった。水素化搬出物の一部を、供給流に再び混ぜた(循環運転方式)。循環流対供給流の比は、10:1であった。供給流1.3kg/h、新鮮なガス500Nl/hを、反応器に入れた。搬出物中には、とりわけ2−プロピル−4−メチルヘキサナール10.7%、2−プロピルヘプタナール78.7%、及びC10アルコール2%が存在した。
【0082】
交差カニッツァーロ反応
冷却された還流冷却器、液受け皿、クリオスタット、及びKPG撹拌機を有する5000mlの反応フラスコHWSに、2−プロピルヘプタナール及び2−プロピル−4−メチルヘキサナールからの混合物865g(この混合物はC10飽和アルデヒドを87%含んでいた)、ホルムアルデヒド(水中で30%)1500g、及びメタノール238gを装入した。3時間にわたって50℃で、HPLCポンプを用いて25%のNaOHを1273g滴加した。このバッチを1時間、55℃でさらに撹拌した。室温で冷却後、pH値をギ酸で調整した。これらの相を分離し、そして有機相から低沸点成分を除去し(20mbar、85℃)、続いて充填カラム(長さ250mm、直径40mm)を介して真空下で蒸留した。2−プロピル−2−(2−メチルブチル)−1,3−プロパンジオール(93%)と、2−プロピル−2−ペンチル−1,3−プロパンジオール(5.8%)との混合物(〜10:1、96%のもの)が780g(収率83%)得られた。主な画分は、128〜132℃の塔頂温度(塔底温度152〜165℃)で、1mbarの圧力で得られた。ジオールの構造は、GC、GC−MS、及びNMR(1H、13C)を用いて測定した。
【化4】

【0083】
主な異性体(DMSO)に対する、13C−NMRでの化学シフト:

【0084】
2−プロピル−2−(2−メチルブチル)−1,3−プロパンジオールと、2−プロピル−2−ペンチル−1,3−プロパンジオールとの混合物(〜50:50)の製造
C11ジオール混合物(2−プロピル−2−(2−メチルブチル)−1,3−プロパンジオールと、2−プロピル−2−ペンチル−1,3−プロパンジオールが、10:90)を、充填カラム(長さ2m)を用いて蒸留した。圧力1mbar、塔頂温度120〜122℃(塔底温度172〜178℃)で、50:50のジオールの混合物が得られた。これらのジオールの比は、GCとNMRを用いて測定した。
【0085】
2−プロピル−2−ペンチル−1,3−プロパンジオールの製造(純度は96GC面積%)
Iのジオールは、C11ジオール混合物(2−プロピル−2−(2−メチルブチル)−1,3−プロパンジオールと、2−プロピル−2−ペンチル−1,3−プロパンジオールが、〜10:90)の主な画分を蒸留することによって、充填カラム(長さ2m)を用いて得た。この純粋な2−プロピル−2−ペンチル−1,3−プロパンジオールは、圧力1mbar、塔頂温度123℃(175〜81℃)で得られた。この純度と構造は、GCとNMRを用いて測定した。
【0086】
使用例
実施例
略号
ADS:アジピン酸
D:多分散性指数(Mw/Mn
DPG:ジプロピレングリコール
DBZO:酸化ジブチルスズ
DSC:示差走査熱量測定
GPC:ゲル透過クロマトグラフィー
IPS:イソフタル酸
n:数平均分子量(g/mol)
w:質量平均分子量(g/mol)
nFA:非揮発性含分
NPG:ネオペンチルグリコール
OHZ:OH数
質量比が10:1の、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールと、2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールからの(上記式I及びII)C11ジオール混合物
PPPD:2−ペンチル−2−プロピル−1,2−プロパンジオール
SZ:酸価
g:ガラス転移点
TMP:トリメチロールプロパン
TMSA:無水トリメリット酸
TPS:テレフタル酸
η1:溶融粘度
η2:溶液粘度。
【0087】
ポリマー特性測定法
分子量の測定は、GPCで行う。固定相:高度に架橋された多孔質ポリスチレン−ジビニルベンゼン、PL−GELとしてPolymer Laboratories社から市販で得られるもの。溶離液:THF。流量:0.3ml/分。PSS社製の、分子量が28700〜194ダルトンまでのポリエチレングリコールを用いて較正。
【0088】
ポリエステルの酸価は、DIN標準の測定法53169に従って測定する。ポリエステルの溶融粘度η1の測定は、コーンプレート粘度計を用いて160℃で、振動モードで、0.1rad/秒の角速度を用いて行う。ポリエステルの溶液粘度η2の測定は、コーンプレート粘度計を用いて、室温で回転モードで行う。これらの溶液は、ポリエステル70%と、溶剤30%とからなる(Solvesso 100(登録商標)/Solvenon PM(登録商標)が5/1の混合物)。ポリエステルのTgは、DSCを用いてASTM D3418に従って測定する。
【0089】
COOH基を有する粉末ポリエステルの製造
ポリエステルP1
工程I:OH基含有オリゴマーの製造
C11ジオール混合物149.1g(0.80mol)、NPG 266.7g(2.56mol)、TMP 53.7g(0.4mol)、TPS 532.1g(3.21mol)、及び触媒DBZO 0.7gを、温度計、保護ガス導入部、撹拌機、及び還流冷却器を備える2Lの四つ口フラスコに装入する。窒素流の導入下、還流下で反応体混合物を180℃に素早く加熱する。水は連続的に留去する。引き続き、この反応混合物を段階的に3〜5時間以内に、撹拌及び窒素流下で230℃に加熱し、そして、オリゴマーのSZが10〜15mgKOH/gになるまで、230℃でさらに撹拌する。オリゴマーのSZは、10mgKOH/gである。
【0090】
工程II:COOH基含有ポリマーP1の製造
先に合成されたオリゴマーを180℃に冷却し、それからIPS 133.0g(0.80mol)を添加する。温度を230℃に上昇させ、そしてこの条件下で、ポリマーのSZが30〜40mgKOH/gになるまでさらに縮合する。重合から生成する水は、反応の最後に弱い真空で吸い込み、所望のSZを達成する。分枝状のCOOH基含有粉末ポリエステルP1(SZは30mgKOH/g)が得られる。P1は、ガラス転移点Tgが66℃であり、160℃での溶融粘度η1が327Pa・sである。GPC分析により、以下の値が得られる:Mn=2980g/mol;D=19.4(表1参照)。
【0091】
ポリエステルP2〜P7
表1にまとめられた組成物を用いて、P1を製造する場合のように行った。分枝状のCOOH基含有粉末ポリエステルが得られ、その特性データSZ、Mn、D、Tg、及びη1は表1に列記されている。
【0092】
P2は比較例
P3
P4
P5は比較例
P6
P7は比較例
【表1】

【0093】
本発明によるポリマーP1、P3及びP6は、相応する比較ポリマーP2、P5及びP7よりも明らかに低い溶融粘度を有する。
【0094】
比較例ポリエステルP8
表2にまとめられた組成物を用いて、P1を製造する場合のように行った。ポリエステルは、C11ジオール混合物を含まず、線状PPPDを含む。
【表2】

【0095】
本発明によるC11ジオール混合物含有ポリマーP3(表1)は、相応するPPPD含有比較ポリマーP8よりも、溶融粘度が低い。
【0096】
OH基を有する、非晶質ポリエステルの製造
ポリエステルP9
C11ジオール混合物206.25g(1.11mol)、NPG 182.98g(1.76mol)、TMP 148.59g(1.11mol)、IPS 429.50g(2.59mol)、ADS 161.90g(1.11mol)及び触媒DBZO 0.5gを、温度計、保護ガス導入部、撹拌機、及び還流冷却器を備える2Lの四つ口フラスコに装入する。窒素流の導入下、還流下で反応体混合物を160℃に素早く加熱する。水は連続的に留去する。引き続き、この反応混合物を段階的に3〜5時間以内に、撹拌及び窒素流下で230℃に加熱し、そして、ポリエステルP8のSZが10〜15mgKOH/gになるまで、230℃でさらに撹拌する。非晶質のOH基含有ポリエステルP9(SZは14mgKOH/g)が得られる。P8は、OHZが82mgKOH/g、そしてガラス転移点Tgが19℃である。GPC分析により、以下の値が得られる:Mn=2000g/mol;D=5.3。P9は、溶融粘度η1が160℃で1.3Pa・sである。ポリエステルP8の溶液粘度η2は室温で(70%のnFA、及び溶剤としてSolvesso100(登録商標)/Solvenon PM(登録商標)5/1の混合物を有する、P8溶液)、12.1Pa・sである(表3参照)。
【0097】
ポリエステルP10(比較例)
表3にまとめられた組成物を用いて、P9を製造する場合のように行う。ポリエステルP10の特性データは、表3に列挙されている。
【表3】

【0098】
本発明によるポリマーP9は、比較ポリマーP10よりも明らかに低い溶融粘度と、明らかに低い溶液粘度を有する。
【0099】
水で希釈可能なポリエステルの製造
ポリエステルP11
工程I:OH基含有オリゴマーの製造C11ジオール混合物242.8g(1.29mol)、NPG 302.2g(2.91mol)、IPS 401.9g(2.42mol)、及び触媒DBZO 0.5gを、温度計、保護ガス導入部、撹拌機、及び還流冷却器を備える2Lの四つ口フラスコに装入する。窒素流の導入下、還流下で反応体混合物を160℃に素早く加熱する。水は連続的に留去する。引き続き、この反応混合物を段階的に3〜5時間以内に、撹拌及び窒素流下で220℃に加熱し、そして、反応混合物のSZが10〜15mgKOH/gになるまで、220℃でさらに撹拌する。オリゴマーのSZは、15mgKOH/gである。
【0100】
工程II:ポリマーP11の製造
先に合成されたオリゴマーを160℃に冷却し、それからTMSA 155.0g(0.81mol)を添加する。温度を230℃に上昇させ、そしてこの条件下で、ポリマーのSZが42〜48mgKOH/gになるまでさらに縮合する。重合から生成する水は、反応の最後に弱い真空で吸い込み、所望のSZを達成する。水で希釈可能な線状のポリエステルP11(SZは46mgKOH/g)が得られる。P11はガラス転移点Tgが41℃であり、溶融粘度η1が、160℃で1.4Pa・sである。GPC分析により、以下の値が得られる:Mn=1200g/mol;D=1.9(表4参照)。
【0101】
P11の加水分解耐性の評価
P11の20%コロイド水溶液を製造し、N,N,−ジメチルエタノールアミンでpHを8にし、45℃で貯蔵する。コロイド溶液が沈殿するまでの時間の間隔を、ポリエステルの加水分解耐性に対する基準として採用する(表5参照)。
【0102】
ポリエステルP12(比較例)
表4にまとめられた組成物を用いて、P11を製造する場合のように行った。ポリエステルP12の特性データは、表4に列挙されている。
【表4】

【0103】
本発明によるポリマーP11は、比較ポリマーP12よりも、明らかに低い溶融粘度を有する。
【表5】

【0104】
本発明によるポリマーP11は、比較ポリマーP12よりも、明らかに加水分解耐性が高い。
【0105】
粉末塗料の製造
対照用結合剤(REF)として、DSM Resins B.V.社のポリエステル樹脂Uralac(登録商標)P-862(Tg58.0℃、SZ35mgKOH/g)を利用する。粉末塗料PL3、PL4、PL5、及びPLRを製造するために、相応して粉末ポリエステルP3、P4、P5(比較のため)又はREFをそれぞれ570.0gずつ、市販の硬化剤Primid(登録商標)XL-552(DSM社のヒドロキシアルキルアミド)30.0g、二酸化チタン顔料Kronos(登録商標)2160(Kronos社)300.0g、流量制御剤Resiflow(登録商標)PV5(Worlee Chemie GmbH社)9.0g、及びベンゾインを用いた脱泡剤2.5gと、実験室用汎用混合器(MIT Mischtechnik GmbH社)内で混合し、溶融させ、引き続き2スクリュー式押出機(APV社のMP19)内で80〜100℃で押出成形する。得られる押出成形体は、その後、粗めに壊し、粉砕して、ふるい分けする。こうして得られる粉末塗料PL3、PL4、及びPL5は、以下の試験に供する:
【表6】

【0106】
続いて、この粉末塗料をスチール試験プレート(Q−Panel R−36)上に静電的に適用し、160℃で10分間、焼く。ここでは、60μm〜80μmの層厚を得るのが目的である。生成する被覆は、以下の試験に供する:
【表7】

【0107】
塗料試験の結果は、表6にまとめられている。
【表8】

【0108】
本発明による粉末塗料は、非常に良好な適用技術特性を有する。PL3とPL4は、より良好な光沢を有し、PL4は、PL5よりも良好な機械的特性を有する。
【0109】
固体含分が豊富な1成分塗料(1K)の製造
固体含分が豊富な1K塗料、1K−PL9と1K−PL10を製造するために、相応して、酢酸ブチル中で70%のポリエステルP9及びP10の溶液を製造する。70%のポリエステル溶液80gを、その都度市販の硬化剤Luwipal(登録商標)066(BASF社のメラミン縮合物)14g、n−ブタノール4g、及び触媒のp−トルエンスルホン酸2gと混合する。生成する溶液(nFA70%)を、ガラスプレートと、スチール試験プレート上に箱形ドクターブレードを用いて適用する。ここでは、40μm〜50μmの層厚を得るのが目的である。続いて、被覆された試験プレートを、140℃で30分間焼く。生成する被覆は、以下の試験に供する:
【表9】

【0110】
塗料試験の結果は、表7にまとめられている。1K−PL9(ポリエステルP9ベースのもの)は、本発明によるものであり、1K−PL10(ポリエステルP10ベースのもの)は、比較例として有用である。
【表10】

【0111】
本発明による固体が豊富な塗料、1K−PL9は、非常に良好な特性プロフィールを示す。とりわけ、C11ジオール混合物はNPGに比して、塗膜の弾性の点、また酸耐性の点でも利点を有する。
【0112】
固体が豊富な2成分塗料(2K)の製造
固体含分が豊富な2K塗料、2K−PL9と2K−PL10を製造するために、相応して、酢酸ブチル中で70%のポリエステルP9及びP10の溶液を製造する。70%のポリエステル溶液70gをその都度、流量制御剤Baysilon(登録商標)OL17(Borchers GmbH社のポリエーテル)の溶液(酢酸ブチル中で10%のもの)1g、触媒のジラウリン酸ジブチルスズ溶液(酢酸ブチル中で5%のもの)1g、メトキシプロピルアセテート3g、市販の硬化剤Basonat(登録商標)Hl 190 BS(BASF社のポリイソシアネート、90%のもの)20g、及び酢酸ブチル5gと混合する。生成する溶液(nFA67%)を、ガラスプレートと、スチール試験プレート上に箱形ドクターブレードを用いて適用する。ここでは、40μm〜50μmの層厚を得るのが目的である。続いて、被覆された試験プレートを、80℃で30分間焼く。生成する被覆は、以下の試験に供する:
【表11】

【0113】
塗料試験の結果は、表8にまとめられている。
【0114】
2K−PL9(ポリエステルP9ベースのもの)は、本発明によるものであり、2K−PL10(ポリエステルP10ベースのもの)は、比較例として有用である。
【表12】

【0115】
本発明による固体が豊富な塗料、2K−PL9は、非常に良好な特性プロフィールを示す。機械的特性は、NPGベースの2K−PL10の場合よりも、明らかにより良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー化合物から重縮合又は重付加形成により得られるポリマーにおいて、モノマー化合物として、式(I)
【化1】

の2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、又はそのアルコキシ化された誘導体(以降、まとめてC11ジオールと呼ぶ)を併用することを特徴とする、前記ポリマー。
【請求項2】
モノマー化合物として、2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、又はそのアルコキシ化された誘導体と、式II
【化2】

の2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、又はそのアルコキシ化された誘導体(以降、C11ジオール混合物と呼ぶ)とからの混合物を併用することを特徴とする、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記C11ジオール混合物が、
1〜99質量%の2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、又はそのアルコキシ化された誘導体と、
1〜99質量%の2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、又はそのアルコキシ化された誘導体とから成ることを特徴とする、請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記C11ジオール混合物が、
a)ブテンからペンタナール及び2−メチルブタナールへのヒドロホルミル化、
b)引き続き、水脱離下での2−プロピルヘプテナール及び2−プロピル−4−メチルヘキセナールへのアルドール反応、
c)引き続き、2−プロピルヘプタナール及び2−プロピル−4−メチルヘキサナールへの水素化、及び
d)2−プロピルヘプタナール及び2−プロピル−4−メチルヘキサナール及びホルムアルデヒドの交差カニッツァーロ反応、又は代替的に、2−プロピルヘプテナール及び2−プロピル−4−メチルヘキセナールと、ホルムアルデヒドとのアルドール反応、及び引き続いた水素化、
によって得られることを特徴とする、請求項2又は3に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーが、0.5〜70質量%、2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、そのアルコキシ化された誘導体(C11ジオール)、又はC11ジオール混合物から成ることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
ポリエステルであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項7】
ポリカーボネートジオール(ジアルキルカーボネートとジオールとの反応により、アルコールが脱離して得られる)であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項8】
ポリウレタンであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項9】
ラクトン又はラクタムの開環重合により得られる重付加物であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のポリマーを含む、熱可塑性組成物。
【請求項11】
成形体を製造するための、請求項10に記載の熱可塑性組成物の使用。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のポリマーを含む、被覆材料、封止材料、又は接着剤。
【請求項13】
水性材料であることを特徴とする、請求項12に記載の被覆材料、封止材料、又は接着剤。
【請求項14】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のポリマーを含む、粉末塗料。
【請求項15】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のポリマーを含む、光硬化可能な被覆材料。
【請求項16】
2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール又はそのアルコキシ化された誘導体と、2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール又はそのアルコキシ化された誘導体とからのジオール混合物。
【請求項17】
式I
【化3】

の2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール、又はそのアルコキシ化された誘導体。
【請求項18】
1〜99質量%の2−(2−メチル)ブチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール又はそのアルコキシ化された誘導体と、
1〜99質量%の2−ペンチル−2−プロピル−1,3プロパンジオール又はそのアルコキシ化された誘導体と、
からのジオール混合物。

【公表番号】特表2011−524451(P2011−524451A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513990(P2011−513990)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057133
【国際公開番号】WO2009/153193
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】