説明

ポリマー複合材料の加工を改善するための組成物および方法

溶融加工性ポリマーバインダーにおける干渉成分の使用に関連する、溶融加工の問題に取り組むために、カップリング剤をフルオロポリマー加工助剤と共に用いた組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料の溶融加工を改善するための組成物および方法、さらに詳しくは、充填剤を含有するポリマー材料の溶融加工を高めるために、カップリング剤と組み合わせられるポリマー加工助剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは、ポリオレフィンなどのポリマー材料の溶融加工において加工助剤として利用される場合が多い。ポリマー材料は、溶融加工した場合に、完成材料において望ましくない欠陥を生じ得るという特定の粘弾性特性を有する。これは特に、それを超えると押出し物の表面が溶融欠陥(melt defect)を示す臨界せん断速度が存在する、所定の押出し可能なポリマーの押出し成形プロセスにおいて明らかである。溶融欠陥は、押出し物上の粗い表面として存在し、一般にメルトフラクチャーと呼ばれる。メルトフラクチャーは主に、ポリマーのレオロジー、およびポリマーが加工される温度および速度の関数である。メルトフラクチャーは、「サメ肌」の形態をとる場合があり、より重大な徴候では、表面光沢が減少し、押出し方向に対して多少横向きに走る隆起として現れる。さらに重大な場合には、押出し物は、表面がひどくゆがめられた場合に、「継続的メルトフラクチャー」を受けることがある。
【0003】
フルオロポリマーは、多くのポリマー材料におけるメルトフラクチャーを軽減することができる。フルオロポリマーは、一般に約2重量%以下の量でポリマー材料に組み込まれる。
【0004】
以下ポリマーバインダーと呼ばれる、溶融加工性ポリマー材料は、経済性を向上させるためと、加工材料に目的の物理的特性を付与するための両方で、特定の充填剤または添加剤と組み合わせる場合が多い。充填剤は、ポリマー母材全体に混合される種々の有機材料または無機材料を含む。例えば、溶融加工で構造建築材料として適している複合材料を製造するために、木粉または木部繊維を特定の炭化水素ポリマーに含ませる場合が多い。
【0005】
従来の充填剤および添加剤を組み込むことによって、加工助剤として溶融加工性混合物中に組み込まれるフルオロポリマーの有効性に悪影響が及ぶことがある。かかる充填剤は、メルトフラクチャーを低減するフルオロポリマーの能力を妨げる。このように、メルトフラクチャーは、好ましくない低い加工速度で起こる。さらに、ポリマー混合物中の加工助剤の量を増加すると、ポリマー材料のメルトフラクチャーが許容可能なレベルまで低減されない。本発明の目的のために、充填剤および添加剤はこれ以降、干渉成分と呼ばれる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,830,947号明細書
【特許文献2】米国特許第6,277,919 B1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,380,313 B1号明細書
【特許文献4】米国特許出願第10/211,415号明細書
【特許文献5】米国特許出願第10/211,096号明細書
【特許文献6】米国特許第6,448,353号明細書
【特許文献7】米国特許第5,284,184号明細書
【特許文献8】米国特許第6,448,253号明細書
【特許文献9】米国特許出願第10/211,0961A号明細書
【非特許文献1】Anionic Polymerization Principles and Applications. H.L.Hsieh,R.P.Quirk,Marcel Dekker,NY,NY.1996.Pg72−127
【非特許文献2】Rauwendaal,C.,Polymer Extrusion,Hansen Publishers,p.23−48,1986
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、溶融加工性ポリマーバインダーにおける干渉成分の使用によって生じる問題および従来のポリマー加工助剤の性能への干渉成分の悪影響への取り組みに関する。本発明の利用によって、干渉成分を有するポリマーバインダーを溶融加工した場合に一般に経験されるメルトフラクチャーが低減される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様において、制御ポリマー構造を有する組成物が、ポリマー加工助剤と組み合わせて、カップリング剤として用いられる。ポリマーバインダーおよび干渉成分と共に適用される場合、その組み合わせは、溶融加工性混合物におけるメルトフラクチャーを著しく低減することができる。さらに、引張り強さ、曲げ弾性率、または吸水率などの物理的性質の向上もまた達成される。
【0009】
カップリング剤は、ブロックコポリマーを含み得る。ブロックコポリマーとしては一般に、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、グラフトブロックコポリマー、星型分枝鎖ブロックコポリマーまたは超分枝鎖ブロックコポリマーが挙げられる。ブロックコポリマーは両親媒性ブロックコポリマーであることが好ましい。
【0010】
ポリマー加工助剤は一般に、ポリマーの溶融加工性を改善することができるとして、溶融加工分野において一般に認められているフルオロポリマーである。そのフルオロポリマーは熱可塑性またはエラストマー材料である。好ましいフルオロポリマーとしては、二フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンモノマーから誘導されるホモポリマーまたはコポリマーが挙げられる。さらに、従来の他の添加剤をフルオロポリマーと共に含ませて、特定の機能的特徴を付与することができる。
【0011】
ポリマー加工助剤は、フィルム、シート、パイプ、ワイヤーおよびケーブルなどのポリマー製品の加工効率を向上させる。配合物に低レベルでポリマー加工助剤を添加することによって、メルトフラクチャーのような表面欠陥を除去することにより製品の表面品質が向上し、内部もしくは外部のダイビルドアップ(die build up)の発生を防ぐこと、かつ/または加工により誘導されるゲル粒子の形成を低減するか、または解消することができる。本発明はまた、溶融体における圧力およびポリマー溶融体の見掛け粘度を下げることができ、したがって、全体的な押出し物処理量に確実に影響を与え、あるいは使用する加工温度を低くすることが可能となる。加工温度が低くなると、押出し物の色に有利な影響が及ぶ。
【0012】
従来から認められているポリマーバインダーおよび干渉成分を用いて、溶融加工に適したポリマー混合物を形成することができる。ポリマーバインダーは、炭化水素または非炭化水素ポリマーであることができる。ポリマーバインダーはオレフィンベースのポリマーであることが好ましい。干渉成分は一般に、ポリマー複合材料産業において充填剤または添加剤として用いられる有機または無機材料であり、加工助剤として溶融加工性混合物に組み込まれるフルオロポリマーの有効性に悪影響を及ぼす。
【0013】
本発明の他の態様において、好ましいセルロース系材料はポリマーバインダーにおいて干渉成分として働き、ポリマー混合物を形成する。この態様において、溶融加工性材料に組み込まれるカップリング剤としては、グラフト化ポリオレフィン、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、グラフトブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、星形分枝鎖ブロックコポリマー、超分枝鎖ブロックコポリマー、またはシランが挙げられる。有名なカップリング剤の組み合わせをポリマー加工助剤と共に用いて、溶融加工時のポリマーバインダーのメルトフラクチャーを低減することもできる。
【0014】
本発明は、新規な組成物を溶融加工する方法も企図する。本発明に適している溶融プロセスの非制限的な例としては、押出し成形、射出成形、バッチ混合および回転成形などの方法が挙げられる。
【0015】
ポリマー加工助剤およびカップリング剤は、ポリマー複合材料系の溶融加工性を向上させる。特に、本発明は、一般にポリマーバインダーとの強い界面張力を有する干渉成分の溶融加工性を実質的に向上させる。新規な組み合わせによって、ポリマーバインダーと干渉成分との間の界面張力を著しく低減することが可能であり、その結果として、ポリマー加工助剤の有効性が向上する。得られた加工材料は、メルトフラクチャーの著しい低減、ならびに吸水率、曲げ弾性率、または引張り強さなどの物理的特性の向上を示す。
【0016】
本発明の目的のために、本出願に使用される以下の用語は以下のように定義される:
「ポリマー加工助剤」とは、ポリマー加工を改善することができる、例えばメルトフラクチャーを低減する、熱可塑性またはエラストマーフルオロポリマーを意味する。
「ポリマーバインダー」とは、溶融加工性ポリマー材料を意味する。
「干渉成分」とは、ポリマーバインダーと共に組み込まれた場合に、ポリマー加工助剤の有効性に良くない影響を及ぼす材料を意味する。
「カップリング剤」とは、ポリマーと干渉成分との間の界面張力を低減するために、ポリマー配合物に添加される物質を意味する。
「制御ポリマー構造」とは、一方の鎖の末端に官能基を有する、ブロックコポリマーまたはブロックコポリマーおよびポリマーを意味する。
「溶融加工性組成物」とは、混合物において少なくとも1つの組成物の融点付近の温度で加工条件に耐えることができる、組成物または材料を意味する。
「ブロックコポリマー」とは、組成的に別個の少なくとも2つのセグメントを有するポリマー、例えばジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、グラフトブロックコポリマー、星形分枝鎖ブロックコポリマーまたは超分枝鎖ブロックコポリマーを意味する。
「ランダムブロックコポリマー」とは、少なくとも2つの別個のブロックを有するコポリマーであって、その少なくとも1つのブロックが、少なくとも2種類のモノマー単位のランダム配列を含むコポリマーを意味する。
「ジブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマー」とは、それにおけるすべての隣接モノマー単位(転移点を除いて)が同じ同一性であるポリマーを意味し、例えば、−ABは、組成的に異なる、AブロックおよびBブロックで構成されるジブロックコポリマーであり、ABCは、それぞれが組成的に異なる、A、B、およびCブロックで構成されるトリブロックコポリマーである。
「グラフトブロックコポリマー」とは、主鎖上にグラフトされた側鎖ポリマーからなるポリマーを意味する。その側鎖ポリマーは、主鎖コポリマーと組成が異なるいずれかのポリマーであり得る。
「星形分枝鎖ブロックコポリマー」または「超分枝鎖ブロックコポリマー」とは、単一の分岐または接合点によって各鎖の末端で共に連結されるいくつかの直鎖状ブロック鎖からなるポリマーを意味する。これらは、放射状ブロックコポリマーとしても知られている。
「末端官能化」とは、少なくとも1つの鎖の末端上の官能基で終結するポリマー鎖を意味する。
「両親媒性ブロックコポリマー」とは、一方が親水性であり、もう一方が疎水性である、組成的に別個の少なくとも2つのセグメントを有するコポリマーを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の組成物は、干渉成分を含有するポリマーバインダーを溶融加工する場合に遭遇するメルトフラクチャーを低減する。ポリマーバインダーと干渉成分との間の界面張力を低減するために、溶融加工性組成物中でカップリング剤が使用される。このように、カップリング剤を使用することによって、意図されるようにフルオロポリマーを機能させることが可能となり、それによって、メルトフラクチャーが低減される。
【0018】
本発明の目的では、溶融加工性組成物は、組成物の少なくとも一部が溶融状態である間に加工することができる組成物である。従来から認められている溶融加工法および装置を本発明の組成物の加工に用いることができる。溶融加工法の非制限的な例としては、押出し成形、射出成形、バッチ混合、および回転成形が挙げられる。
【0019】
ポリマーバインダーは、溶融加工性組成物のホストポリマーとして機能する。溶融加工に適していると当技術分野で認められている多種多様なポリマーが、ポリマーバインダーとして有用である。ポリマーバインダーは、時として溶融プロセスには難しいと言われる実質的に非フッ素系のポリマーを含む。それらの例としては、炭化水素ポリマーと非炭化水素ポリマーの両方が挙げられる。有用なポリマーバインダーの例としては、限定されないが、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリ尿素、ポリビニル樹脂、ポリアクリレートおよびポリメチルアクリレートが挙げられる。
【0020】
好ましいポリマーバインダーとしては、ポリオレフィン(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP))、ポリオレフィンコポリマー(例えば、エチレン−ブテン、エチレン−オクテン、エチレンビニルアルコール)、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー(例えば、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、エポキシ、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素、ビニルエステルまたはその組み合わせが挙げられる。ポリオレフィンが最も好ましい。
【0021】
ポリマーバインダーは、通常約30重量%を超える量で溶融加工性組成物中に含まれる。ポリマーバインダーの量が、例えば、ポリマーの種類、干渉成分の種類、加工装置、加工条件および目的の最終製品に応じて異なることは当業者には理解される。
【0022】
有用なポリマーバインダーとしては、種々の熱可塑性ポリマーのブレンド、および酸化防止剤、光安定剤、充填剤、ブロッキング防止剤、顔料などの従来の添加剤を含有するそのブレンドが挙げられる。ポリマーバインダーは、粉末、ペレット、顆粒の形状で、または他のいずれかの押出し可能な形状で溶融加工性組成物中に組み込まれる。
【0023】
干渉成分は一般に、従来のポリマー加工助剤の有効性に悪影響を及ぼす、溶融加工組成物中で用いられる従来のいずれかの充填剤または添加剤である。特に、干渉成分は実質的に、溶融加工性組成物のメルトフラクチャーに影響を及ぼす。干渉成分の非制限的な例としては、顔料、炭素繊維、ヒンダードアミン光安定剤、ブロッキング防止剤、ガラス繊維、カーボンブラック、酸化アルミニウム、シリカ、マイカ、セルロース系材料、または反応性もしくは極性基を有する1種または複数種のポリマーが挙げられる。反応性もしくは極性基を有するポリマーの例としては、限定されないが、ポリアミド、ポリイミド、機能性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリレートおよびメタクリレートが挙げられる。
【0024】
本発明の一態様において、干渉成分はセルロース系材料である。セルロース系材料は一般に、完成組成物に特定の物理的特性を付与するために、溶融加工性組成物中で用いられる。セルロース系材料は一般に、種々の縦横比、化学組成、密度および物理的特性を有する天然または木材材料を含む。セルロース系材料の非制限的な例としては、木粉、木部繊維、おがくず、かんな屑、新聞用紙、紙、亜麻、麻、もみ殻、ケナフ、ジュート、サイザル、ピーナッツ殻が挙げられる。セルロース系材料の組み合わせ、または他の干渉成分とセルロース系材料の組み合わせも、溶融加工性組成物において使用することができる。
【0025】
溶融加工性組成物中の干渉成分の量は、ポリマーバインダーおよび完成組成物の所望の物理的性質に応じて異なる。溶融加工の当業者は、完成材料の所望の物理的性質を得るために、ポリマーバインダーに合うように、干渉成分の適切な量を選択することができる。通常、干渉成分は、約80重量%までの量で溶融加工性組成物に組み込まれる。さらに、干渉成分(1種または複数種)は、特定のポリマーバインダーおよび最終用途に応じて、様々な形態で提供することができる。
【0026】
最終用途にしたがって、ポリマー加工助剤とカップリング剤との組み合わせによって、特に干渉成分の存在下で、ポリマーバインダーの溶融加工が向上する。本発明の一態様において、ブロックコポリマーカップリング剤がポリマー加工助剤と共に使用される。他の態様では、セルロース系干渉成分が、カップリング剤およびポリマー加工助剤と共に、溶融加工性組成物中に含まれる。
【0027】
従来から認められているポリマー加工助剤が本発明での使用に適している。本発明のポリマー加工助剤は一般に、1種または複数種のフッ素化オレフィン系モノマーの重合によって形成される。具体的なポリマー加工助剤およびそれらの材料を製造する方法の非制限的な例が、そのすべての全体が参照により本明細書に組み込まれる(特許文献1)、(特許文献2)、および(特許文献3)に包含されている。得られる加工助剤は、50重量%を超えるフッ素、好ましくは60重量%を超えるフッ素、さらに好ましくは65重量%を超えるフッ素を含有する。
【0028】
これらの構成要素オレフィン系モノマーから、このようにして製造されたフルオロポリマーは、本質的に結晶質、半結晶質または非晶質であるが、好ましいフルオロポリマー加工助剤は結晶質または半結晶質である。さらに、フルオロポリマーは、参照により既に組み込まれている、(特許文献2)において確認されるように、二峰性である。
【0029】
フルオロポリマーにおけるエチレン性不飽和は、溶融加工性組成物に存在する添加剤または他の成分により化学的攻撃を受ける部位であることから、フルオロポリマーは本質的にエチレン性不飽和を含有しないほうがよい。これは、フルオロポリマーが、その主鎖に沿って、またはその側鎖または側基においてほとんどエチレン性不飽和(例えば、炭素間二重結合)を含有しないであろうことを意味する。フルオロポリマー加工助剤において非常に低いレベルのエチレン性不飽和は、本発明において実質的に影響を及ぼすことなく許容されるが、高いレベルは、そのフルオロポリマー加工助剤の化学安定性を危くすることなく、許容することはできない。
【0030】
本発明で使用されるエラストマーまたは半結晶質フルオロポリマーは、ポリマーバインダーの加工条件下で容易に流動するほうがよく、あるいは、その中に混合される。ポリマー加工助剤と、熱可塑性炭化水素ポリマーバインダーのマッチングにおいて、フルオロポリマーは好ましくは、その溶融粘度が炭化水素ポリマーの溶融粘度と一致する、またはほぼ同じように選択すべきである。かかるマッチングでは、ポリマー加工助剤は、その溶融粘度と熱可塑性炭化水素ポリマーの溶融粘度との比が、範囲0.01〜100の比、さらに好ましくは範囲0.02〜20の比、最も好ましくは範囲0.05〜5の比であるように選択することができる。
【0031】
本発明で使用される結晶質フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレンは通常、従来の加工条件下で溶融しない。しかしながら、結晶質フルオロポリマーは、溶融加工性を向上させることができる。好ましいレベルの結晶質フルオロポリマーは、0.1〜3重量%、最も好ましくは0.25〜1.0重量%の範囲である。
【0032】
好ましいポリマー加工助剤は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニリデンのうち1種または複数種のモノマーから誘導される共重合単位を有する1種または複数種のフルオロポリマーを含む。好ましいセルロース系干渉成分に対して、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ポリマー加工助剤が最も好ましい。
【0033】
溶融加工性組成物中に存在するポリマー加工助剤の例は、例えば、ポリマーバインダー、干渉成分の種類および量、溶融加工装置の種類、加工条件等のいくつかの変数に依存する。当業者は、メルトフラクチャーの所望の低減が得られるように、ポリマー加工助剤の適切な量を選択することができる。好ましい実施形態において、ポリマー加工助剤は、複合材料に対して0.05〜3.0重量%で使用される。さらに好ましくは、ポリマー加工助剤のレベルは、0.1〜2.0%、さらに好ましくは0.25〜1.0%である。
【0034】
任意に、ポリマー加工助剤は、溶融加工時に特定の性能または物理的特性をポリマー加工助剤またはメルト組成物に付与するために用いられる潤滑剤を含有してもよい。潤滑剤の非制限的な例としては、ポリオキシアルキレン、ポリオレフィンワックス、ステアレート、およびビス−ステアルアミドが挙げられる。好ましい実施形態は、0.1〜2.0重量%、さらに好ましくは0.25〜1.0重量%でポリオキシアルキレンを含有する組成物である。
【0035】
カップリング剤は、ポリマーバインダーおよび干渉成分で構成される複合材料系に添加される材料である。本発明において、カップリング剤とポリマー加工助剤との組み合わせは、驚くべき相乗効果を有することが見出されている。ポリマー加工助剤は、低レベル(つまり、200〜2500ppm)で添加した場合に、加工性の向上(熱可塑性材料の処理量の増加、メルトフラクチャーの低減)にそれらが有用であることについては当技術分野で公知であるが、かかる材料が干渉成分を含有する溶融加工性組成物において全く効果がないということが本明細書において見出されている。かかる干渉成分はポリマー加工助剤と強く相互作用し、したがって、溶融加工中に押出機およびダイ壁をコーティングするのが妨げられることにより、加工助剤は効果がなくなる。
【0036】
本発明の好ましいカップリング剤としては、機能性ポリオレフィン、シラン、チタネート、ジルコネート、制御ポリマー構造を有する組成物、またはその組み合わせが挙げられる。本発明のさらに好ましいカップリング剤としては、制御ポリマー構造を有する組成物が挙げられる。
【0037】
制御ポリマー構造を有する好ましい組成物の非制限的な例としては、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、グラフトブロックコポリマー、星形分枝鎖コポリマーまたは超分枝鎖コポリマーが挙げられる。さらに、ブロックコポリマーは末端官能基を有し得る。
【0038】
本発明の最も好ましいカップリング剤は両親媒性ブロックコポリマーである。両親媒性ブロックコポリマーは、極性もしくは反応性ブロックおよび非極性ブロックを含有する。かかる材料の非制限的な例としては、ポリスチレン−b−メタクリル酸無水物、ポリスチレン−b−4−ビニルピリジン、ポリイソプレン−b−メタクリル酸無水物、ポリイソプレン−b−4−ビニルピリジン、ポリブタジエン−b−メタクリル酸無水物、ポリブタジエン−b−4−ビニルピリジン、ポリエチレン−b−メタクリル酸無水物、ポリエチレン−b−4−ビニルピリジン、ポリエチレン−プロピレン−b−メタクリル酸無水物、ポリエチレン−プロピレン−b−4−ビニルピリジン、ポリステアリルメタクリレート−b−メタクリル酸無水物、ポリステアリルメタクリレート−b−4−ビニルピリジン、ポリベヘニルメタクリレート−b−メタクリル酸無水物、ポリベヘニルメタクリレート−b−4−ビニルピリジン、またはその組み合わせが挙げられる。
【0039】
具体的なブロックコポリマーカップリング剤、およびそれらの材料の製造方法の非制限的な例は、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、および(非特許文献1)に包含されており;そのすべての全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
ポリマーは、当技術分野で従来から認められているように、機能性開始剤を使用することによって、またはリビングポリマーの鎖をエンドキャップすることによって合成される末端官能化ポリマー材料であることができる。本発明の末端官能化ポリマー材料は、少なくとも1つの鎖の末端上の官能基で終結するポリマーを含む。ポリマー種は、ホモポリマー、コポリマー、またはブロックコポリマーである。複数の鎖末端を有するポリマーに関しては、官能基は同一または異なる。官能基の非制限的な例としては、アミン、無水物、アルコール、カルボン酸、チオール、マレエート、シラン、およびハロゲン化物が挙げられる。当技術分野で公知のリビング重合法を用いた末端官能化手法を用いて、これらの材料を提供することができる。
【0041】
カップリング剤の量は、干渉成分の種類および量、ポリマーバインダーの種類および量、加工装置、および条件などのいくつかの変数に依存する。カップリング剤の好ましいレベルは、複合材料に対して0〜約10重量部を超える範囲である。しかしながら、さらに好ましいカップリング剤の範囲は0.05〜約2重量%である。
【0042】
本発明の最も好ましい実施形態において、ポリマーバインダーはポリオレフィンであり、干渉成分はセルロース系材料である。かかる複合材料に好ましいカップリング剤は両親媒性ブロックコポリマーであり、好ましいポリマー加工添加剤はフッ素系熱可塑性物質である。セルロース系材料は一般に、本発明において複合材料全体の20〜70重量%を構成する。カップリング剤およびポリマー加工添加剤はそれぞれ、0.1〜1.0重量%のレベルで添加される。かかる木材の複合材料は、建築製品および自動車部品などの様々な工業用途において有用性が見出されている。一例は、住宅および工業用ルーフィング材におけるかかる複合材料の使用である。
【0043】
本発明の溶融加工性組成物は、様々な方法のいずれかによって製造することができる。例えば、ポリマーバインダーおよびポリマー加工添加剤を、プラスチック産業で通常用いられるブレンド手段のいずれか、例えば配合ミル、バンバリーミキサー、または混合押出機を用いて共に合わせることができ、その中で加工添加剤がホストポリマー全体に均一に分布される。加工添加剤およびホストポリマーは、例えば粉末、ペレット、または顆粒生成物の形で使用される。混合操作は最も便利には、フルオロポリマーの融点または軟化点を超える温度で行われるが、粒子として固体状態で成分をドライブレンドし、次いで、ドライブレンドを二軸スクリュー溶融押出機にドライブレンドを供給することによって成分を均一に分布させることも可能である。得られた溶融ブレンド混合物は、最終製品の形に直接、押出し成形するか、またはペレット化するか、または所望の粒子サイズまたはサイズ分布に粉砕し、通常一軸スクリュー押出機であるだろう押出機に供給することができ、溶融プロセスによって、ブレンド混合物は最終製品の形状を形成する。
【0044】
溶融加工は一般に、180〜280℃の温度で行われるが、最適な作業温度は、ブレンドの融点、溶融粘度、および熱安定性に応じて選択される。押出機などの様々な種類の溶融加工装置を使用して、本発明の溶融加工性組成物を加工することができる。本発明での使用に適している押出機は、例えば(非特許文献2)に記載されている。押出機のダイデザインは、製造される所望の押出し物に応じて異なる。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、(特許文献7)(Nooneら)に記載のような、燃料ラインホースの製造に有用な管材料を押出し成形するために、環状のダイを使用することができる。
【0045】
本発明は、干渉成分と合わせたポリマーバインダーの溶融加工を向上させる。カップリング剤によって、ポリマーバインダーと干渉成分との間の界面張力が低減され、それによって、ポリマー加工助剤が、加工組成物のメルトフラクチャーを著しく低減することが可能になる。
【0046】
本発明の組成物は、加工材料の物理的性質も高める。例えば、加工材料は、吸水率、曲げ弾性率、または引張り強さの向上を示す。好ましい実施形態において、ポリマーバインダーがポリエチレンであり、干渉成分がセルロース系材料である場合、組成物は、3%以下の吸水率値、2200MPa以上の曲げ弾性率、または36MPa以上の引張り強さのうちの少なくとも1つを有する。
【0047】
この溶融加工性組成物を使用して、建築材および自動車部品などの製品を製造することができる。その非制限的な例としては、住宅のルーフィング材および自動車内部部品が挙げられる。さらに、本発明の組成物は、フィルム、シート、パイプ、ワイヤーまたはケーブル用途において使用することができる。
【0048】
本発明はさらに、以下の実施例において説明される。
【実施例】
【0049】
【表1】

【0050】
試験方法
引張り特性および曲げ特性の特徴付け
実施例セクションにおいて以下に記載のように、試験片を指定の寸法に射出成形した。続いて、インストロン(Instron)5564万能材料試験(マサチューセッツ州カントンのインストロン社(Instron Corporation,Canton,MA)から市販されている)を使用して、ASTM D1708およびD790にそれぞれ記載のように、各試料で引張りおよび曲げ試験を行った。すべての試料を3通り行った。
【0051】
吸水試験
各試験片の射出成形試料(5インチ×1インチ×0.25インチ)を計量し、脱イオン水で満たした容器に720時間沈めた。触ると乾燥している状態まで吸い取られた容器から、得られた試料を取り出し、再び計量した。質量の差によって吸水率%を決定した。各試料を2通り行い、その平均を報告した。
【0052】
複合材料の押出し成形
円錐形カウンター−回転スクリューおよびアキュレート・オープンへリックス乾燥材料フィーダー(Accurate open helix dry material feeder)(ウィスコンシン州ホワイトウォーターのアキュレート社(Accurate Co.Whitewater,WI)から市販の)を備えた、19mm、長さ:直径15:1のHaake Rheocord二軸スクリュー押出機(ニューハンプシャー州ニューイントンのハッケ社(Haake Inc.,Newington,NH)から市販されている)を使用して、実証実験の複合材料押出し成形を行った。押出し成形パラメーターを制御し、ハッケRC9000制御データコンピュータソフトウェア(Haake RC 9000 control data computerized software)(ニューハンプシャー州ニューイントンのハッケ社(Haake Inc.,Newington,NH)から市販されている)を使用して実験データを記録した。標準直径1/8インチ、4ストランドのダイ(ニューハンプシャー州ニューイントンのハッケ社(Haake Inc.,Newington,NH)から市販されている)を通して、材料を押出し成形した。
【0053】
比較例1.60/40HDPE/木粉の複合材料の押出し成形
最初に、木粉(800g)を真空オーブン内で105℃および約1mmHgにて予め16時間乾燥させた。次いで、比較的均一な混合物が得られるまで、HDPE(1200g)をプラスチック袋内で木粉とドライブレンドし、そのブレンドを乾燥粉末フィーダーに入れた。材料を速度20g/分(せん断速度約30s-1)で押出機に供給し、それぞれのゾーンにおいて以下の温度プロファイル:160℃/180℃/180℃/190℃を用いて加工した。実験全体を通じて、ダイも190℃に維持した。実験全体を通じて、加工パラメーター(つまり、溶融圧力、トルク)を記録した。得られた材料を回収し、視覚的に分析した。
【0054】
比較例2.潤滑剤パッケージを含有する60/40HDPE/木粉の複合材料の押出し成形。
ステアリン酸亜鉛50部、エチレンビス−ステアルアミド50部からなる潤滑剤パッケージ80gを配合物に添加したことを除いては、比較例1に詳述されるように正確に、実験を行った。
【0055】
比較例3〜4.カップリング剤を含有する60/40HDPE/木粉の複合材料の押出し成形。
比較例3において、実験前に、HDPE95部およびポリ(ODMA−C4−MAn)5部を含有するマスターバッチを以下の方法で調製した。比較的均一な混合物が得られるまで、HDPE(475g)をプラスチック袋内でポリ(ODMA−C4−tBMA)(25g)とドライブレンドし、そのブレンドを乾燥粉末フィーダーに入れた。材料を速度20g/分(せん断速度約30s-1)で押出機に供給し、それぞれのゾーンにおいて以下の温度プロファイル:200℃/240℃/240℃/240℃を用いて加工した。実験全体を通じて、ダイも240℃に維持した。押出し成形されたストランドを直ちに、室温の水浴中で冷却し、続いて、Killionペレタイザーを使用して細断し、ペレットにした。このマスターバッチ(200g)をHDPE(400g)および予備乾燥させた木粉(400g)と合わせ、次いで比較的均一な混合物が得られるまで、プラスチック袋内でドライブレンドし、そのブレンド乾燥粉末フィーダーに入れた。材料を速度20g/分(せん断速度約30s-1)で押出機に供給し、それぞれのゾーンにおいて以下の温度プロファイル:160℃/180℃/180℃/190℃を用いて加工した。実験全体を通じて、ダイも190℃に維持した。実験全体を通じて、加工パラメーター(つまり、溶融圧力、トルク)を記録した。得られた材料を回収し、視覚的に分析した。
【0056】
ODMA−C4−MAnの代わりにポリボンド(Polybond)3009 100gおよびHDPE900gを使用して、最初のマスターバッチを調製し、そのマスターバッチ400gを複合材料配合物中でHDPE200gおよび乾燥木粉400gと合わせたことを除いては、比較例3と同一の方法で比較例4を製造した。
【0057】
比較例5.ポリマー加工助剤を含有する60/40HDPE/木粉の複合材料の押出し成形
10,000ppmのポリマー加工助剤、ダイナマー(Dynamar)FX−5911をそれぞれ、配合物に添加したことを除いては、比較例1に詳述されるように正確に、比較例5を製造した。
【0058】
実施例1〜2.ポリマー加工助剤、およびカップリング剤を含有する60/40HDPE/木粉の複合材料の押出し成形。
ダイナマー(Dynamar)FX−5911 1gを配合物に添加したことを除いては、比較例4に詳述されるように正確に、実施例1を実施した。
【0059】
ポリボンド(Polybond)3009およびダイナマー(Dynamar)FX−5911の代わりに、それぞれPS−b−MAn10gおよびDyneonPA−5933 10gを使用し、カーボワックス8000 40gも配合物に添加したことを除いては、実施例1に詳述されるように正確に、実施例2を製造した。
【0060】
実施例3.ポリマー加工助剤、潤滑剤、およびカップリング剤を含有する60/40HDPE/木粉の複合材料の押出し成形。
マスターバッチ400gをHDPE200gおよび木粉400gと合わせたことを除いては、比較例3に詳述されるように正確に、実施例3を製造した。さらに、ダイナマー(Dynamar)PA−5933 1gおよびカーボワックス(Carbowax)8000 40gも配合物に添加した。
【0061】
検討した配合物の一覧を表1に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
表2には、比較例1〜5および実施例1〜3について得られた加工の結果がまとめられている。その結果から、本発明の有用性が実証されている。
【0064】
【表3】

【0065】
比較例6.ポリマー加工助剤と共にHALS3000ppmを含有するLLDPEの押出し成形。
HALS(LLDPE中に3%、200g)と、ダイナマー(Dynamar)FX−9613(LLDPE中に2.8%、93g)と、LLDPE(1707g)とのマスターバッチを、比較的均一な混合物が得られるまで、プラスチック袋内でドライブレンドし、そのブレンドを乾燥ペレット/粉末フィーダーに入れた。材料を速度66g/分(せん断速度約115s-1)で押出機に供給し、それぞれのゾーンにおいて以下の温度プロファイル:190℃/190℃/190℃/190℃を用いて加工した。実験全体を通じて、ダイも190℃に維持した。実験全体を通じて、加工パラメーター(つまり、溶融圧力、トルク)を記録した。得られた材料を回収し、メルトフラクチャーの存在に関して視覚的に分析した。
【0066】
実施例4.HALS3000ppm、加工助剤、およびカップリング剤を含有するLLDPEの押出し成形。
HALS(LLDPE中に3%、200g)と、PS−MAn(LLDPE中に3.0%、667g)と、ダイナマー(Dynamar)FX−9613(LLDPE中に2.8%、93g)と、LLDPE(1040g)とのマスターバッチを、比較的均一な混合物が得られるまで、プラスチック袋内でドライブレンドし、そのブレンドを乾燥ペレット/粉末フィーダーに入れた。材料を速度66g/分(せん断速度約115s-1)で押出機に供給し、それぞれのゾーンにおいて以下の温度プロファイル:190℃/190℃/190℃/190℃/190℃を用いて加工した。実験全体を通じて、ダイも190℃に維持した。実験全体を通じて、加工パラメーター(つまり、溶融圧力、トルク)を記録した。得られた材料を回収し、メルトフラクチャーの存在に関して視覚的に分析した。
【0067】
比較例7.ブロッキング防止剤15000ppmをポリマー加工助剤と共に含有するLLDPEの押出し成形。
ブロッキング防止剤(LLDPE中に60%、50g)と、ダイナマー(Dynamar)FX−9613(LLDPE中に2.8%、93g)と、LLDPE(1857g)とのマスターバッチを、比較的均一な混合物が得られるまで、プラスチック袋内でドライブレンドし、そのブレンドを乾燥ペレット/粉末フィーダーに入れた。材料を速度66g/分(せん断速度約115s-1)で押出機に供給し、それぞれのゾーンにおいて以下の温度プロファイル:190℃/190℃/190℃/190℃を用いて加工した。実験全体を通じて、ダイも190℃に維持した。実験全体を通じて、加工パラメーター(つまり、溶融圧力、トルク)を記録した。得られた材料を回収し、メルトフラクチャーの存在に関して視覚的に分析した。
【0068】
実施例5.ブロッキング防止剤15000ppm、ポリマー加工助剤、およびカップリング剤を含有するLLDPEの押出し成形。
ブロッキング防止剤(LLDPE中に60%、50g)と、PS−MAn(LLDPE中に3.0%、667g)と、ダイナマー(Dynamar)FX−9613(LLDPE中に2.8%、93g)と、LLDPE(1190g)とのマスターバッチを、比較的均一な混合物が得られるまで、プラスチック袋内でドライブレンドし、そのブレンドを乾燥ペレット/粉末フィーダーに入れた。材料を速度66g/分(せん断速度約115s-1)で押出機に供給し、それぞれのゾーンにおいて以下の温度プロファイル:190℃/190℃/190℃/190℃を用いて加工した。実験全体を通じて、ダイも190℃に維持した。実験全体を通じて、加工パラメーター(つまり、溶融圧力、トルク)を記録した。得られた材料を回収し、メルトフラクチャーの存在に関して視覚的に分析した。
【0069】
実施例8.顔料6000ppmをポリマー加工助剤と共に含有するLLDPEの押出し成形。
ダイナマー(Dynamar)FX−9613(LLDPE中に2.8%、93g)と、顔料(12.0g)と、LLDPE(1895g)とのマスターバッチを、比較的均一な混合物が得られるまで、プラスチック袋内でドライブレンドし、そのブレンドを乾燥ペレット/粉末フィーダーに入れた。材料を速度66g/分(せん断速度約115s-1)で押出機に供給し、それぞれのゾーンにおいて以下の温度プロファイル:190℃/190℃/190℃/190℃を用いて加工した。実験全体を通じて、ダイも190℃に維持した。実験全体を通じて、加工パラメーター(つまり、溶融圧力、トルク)を記録した。得られた材料を回収し、メルトフラクチャーの存在について視覚的に分析した。
【0070】
実施例6.顔料6000ppm、ポリマー加工助剤、およびカップリング剤を含有するLLDPEの押出し成形。
PS−MAn(LLDPE中に3.0%、667g)と、ダイナマー(Dynamar)FX−9613(LLDPE中に2.8%、93g)と、顔料(12.0g)aと、LLDPE(1228g)とのマスターバッチを、比較的均一な混合物が得られるまで、プラスチック袋内でドライブレンドし、そのブレンドを乾燥ペレット/粉末フィーダーに入れた。材料を速度66g/分(せん断速度約115s-1)で押出機に供給し、それぞれのゾーンにおいて以下の温度プロファイル:190℃/190℃/190℃/190℃を用いて加工した。実験全体を通じて、ダイも190℃に維持した。実験全体を通じて、加工パラメーター(つまり、溶融圧力、トルク)を記録した。得られた材料を回収し、メルトフラクチャーの存在について視覚的に分析した。
【0071】
比較例6〜8および実施例4〜6の配合物の一覧を表3に示す。複合材料配合物は、標準押出し成形プロセスを用いて製造された。これらの実験全体を通じて、トルクおよび溶融圧力をモニターした。製造された試料のメルトフラクチャーの全体的なレベルもまた示した。
【0072】
【表4】

【0073】
表4には、比較例6〜8および実施例4〜6について得られた加工の結果がまとめられている。
【0074】
【表5】

【0075】
この表から分かるように、PPAと組み合わせてカップリング剤を添加することによって、加工して30分後のメルトフラクチャー(%)がかなり低減される。
【0076】
本明細書に記載の本発明のその他の利点は、記載の複合材料組成物の多くが向上した物理的性質を有することである。これは実施例7〜8に例証されている。
【0077】
実施例7〜8.カップリング剤およびポリマー加工助剤を含有する60/40HDPE/木粉の複合材料の押出し成形
実施例7.最初に、真空オーブン内で105℃、約1mmHgにて、木粉(800g)を予め16時間乾燥させた。次いで、HDPE(1200g)、PS−b−PVP(40g)、およびダイナマー(Dynamar)FX−5911(1g)を、比較的均一な混合物が得られるまで、プラスチック袋内でドライブレンドし、そのブレンドを乾燥粉末フィーダーに入れた。材料を速度20g/分(せん断速度約30s-1)で押出機に供給し、それぞれのゾーンにおいて以下の温度プロファイル:210℃/180℃/180℃/180℃を用いて加工した。実験全体を通じて、ダイも180℃に維持した。実験全体を通じて、加工パラメーター(つまり、溶融圧力、トルク)を記録した。得られた材料を回収し、視覚的に分析した。
【0078】
16−Iシリーズの制御盤を備えたCincinnati−Milacron−Fanuc Roboshot 110R射出成形装置(オハイオ州バタビアのミラクロン社(Milacron Inc.,Batavia,OH)から市販)を使用して、得られたペレットを試験片に射出成形した。以下の実験パラメーターを用いた。射出速度=120mm/s、充填段階(pack step)=800kg/cm2、段階(秒):6.0、射出サイズ=42mm、減圧距離(decompression distance)=20mm、減圧速度=6.3mm/s、冷却時間=20.0秒、背圧=80kg/cm2、スクリュー回転数=60rpm、サイクル時間=30秒、金型温度=100°F、押出機ゾーン温度=210℃、210℃、200℃、200℃。すべての場合において、最初の10ショットは廃棄された。残りの試料を引張り特性および曲げ特性について試験した。
【0079】
PS−b−PVPの代わりにPS−b−MAnを使用したことを除いては、実施例7に記載のように正確に、実施例8を行った。
【0080】
表5には、実施例7〜8で調べた組成物をまとめる。表6は、これらの木材複合材料組成物2、7、および8の曲げ特性および引張り特性を示す。この表は、上述の潤滑化木材複合材料配合物(比較例2)の曲げ特性および引張り特性も示す。
【0081】
【表6】

【0082】
【表7】

【0083】
この表から分かるように、比較例2と比較すると、実施例2、7、および8に関して、曲げ特性および引張り特性の>30%の向上および吸水率の>200%の向上が認められる。
【0084】
本発明の一般原則および前述の詳細な説明の上記の開示内容から、当業者であれば、本発明が受け入れることができる種々の修正形態を容易に理解されよう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー加工助剤と、制御ポリマー構造を有する少なくとも1種類のカップリング剤と、を含有する組成物。
【請求項2】
ポリマーバインダーをさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
干渉成分をさらに含有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カップリング剤が、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、グラフトブロックコポリマー、星形分枝鎖ブロックコポリマー、または超分枝鎖ブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記カップリング剤が両親媒性ブロックコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記カップリング剤が末端官能化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマー加工助剤がフッ素系熱可塑性物質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリマーバインダーが、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、フルオロポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、エポキシ、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素、ビニルエステルまたはその組み合わせである、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記干渉成分が、顔料、炭素繊維、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、ヒドロタルサイト、ブロッキング防止剤、ガラス繊維、カーボンブラック、酸化アルミニウム、シリカ、マイカ、潤滑剤、炭酸カルシウム、または反応性もしくは極性基を有する1種または複数種のポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
反応性もしくは極性基を有する前記の少なくとも1種類のポリマーが、ポリアミド、ポリイミド、官能性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリレート、メタクリレート、またはその組み合わせを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記干渉成分が、木粉、木部繊維、おがくず、かんな屑、新聞用紙、紙、亜麻、麻、もみ殻、ケナフ、ジュート、サイザル、ピーナッツ殻またはその組み合わせを含むセルロース系干渉成分である、請求項3に記載の組成物。
が挙げられる。
【請求項12】
前記組成物が加工されて、建築材料および自動車部品が形成される、請求項3に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリマー加工助剤がポリテトラフルオロエチレンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリマー加工助剤が、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンのホモポリマーまたはコポリマーから誘導される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記カップリング剤が、ポリスチレン−b−メタクリル酸無水物、ポリスチレン−b−4−ビニルピリジン、ポリイソプレン−b−メタクリル酸無水物、ポリイソプレン−b−4−ビニルピリジン、ポリブタジエン−b−メタクリル酸無水物、ポリブタジエン−b−4−ビニルピリジン、ポリエチレン−b−メタクリル酸無水物、ポリエチレン−b−4−ビニルピリジン、ポリエチレン−プロピレン−b−メタクリル酸無水物、ポリエチレン−プロピレン−b−4−ビニルピリジン、マレイン酸変性(maleated)ポリエチレン、ポリステアリルメタクリレート−b−メタクリル酸無水物、ポリステアリルメタクリレート−b−4−ビニルピリジン、ポリベヘニルメタクリレート−b−メタクリル酸無水物、ポリベヘニルメタクリレート−b−4−ビニルピリジン、およびその組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
(a)カップリング剤;
(b)ポリマー加工助剤;
を含む組成物であって、ポリマーバインダーおよびセルロース系干渉成分と共に溶融加工すると、前記カップリング剤が、前記ポリマーバインダーと前記干渉成分との間の界面張力を低減することができる、組成物。
【請求項17】
(a)ポリマーバインダー;
(b)セルロース系干渉成分;
(c)カップリング剤;
(d)ポリマー加工助剤;
を含有する組成物。
【請求項18】
前記カップリング剤が、官能性ポリオレフィン、シラン、チタネート、ジルコネート、制御ポリマー構造を有する組成物、またはその組み合わせを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記カップリング剤が両親媒性ブロックコポリマーである、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記カップリング剤が、ポリスチレン−b−メタクリル酸無水物、ポリスチレン−b−4−ビニルピリジン、ポリイソプレン−b−メタクリル酸無水物、ポリイソプレン−b−4−ビニルピリジン、ポリブタジエン−b−メタクリル酸無水物、ポリブタジエン−b−4−ビニルピリジン、ポリエチレン−b−メタクリル酸無水物、ポリエチレン−b−4−ビニルピリジン、ポリエチレン−プロピレン−b−メタクリル酸無水物、ポリエチレン−プロピレン−b−4−ビニルピリジン、ポリステアリルメタクリレート−b−メタクリル酸無水物、ポリステアリルメタクリレート−b−4−ビニルピリジン、ポリベヘニルメタクリレート−b−メタクリル酸無水物、ポリベヘニルメタクリレート−b−4−ビニルピリジン、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエチレン−アクリル酸コポリマー、ポリプロピレン−アクリル酸コポリマーおよびその組み合わせを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリマー加工助剤がポリテトラフルオロエチレンである、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記ポリマー加工助剤が、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンのホモポリマーまたはコポリマーから誘導される、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリマーバインダーがポリエチレンであり、かつ溶融加工すると、前記組成物が、3%以下の吸水率値、2200MPa以上の曲げ弾性率、または36MPa以上の引張り強さのうちの少なくとも1つを有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
請求項3に記載の組成物を溶融加工することを含む、物品を形成する方法。
【請求項25】
溶融加工した場合に、前記組成物がメルトフラクチャーを示さない、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記溶融加工が、押出し成形、射出成形、バッチ混合、および回転成形を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、3%以下の吸水率値、2200MPa以上の曲げ弾性率、または36MPa以上の引張り強さのうちの少なくとも1つを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
請求項17に記載の組成物を溶融加工することを含む、物品を形成する方法。
【請求項29】
前記方法を用いて、建築材または自動車部品を形成する、請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2007−502355(P2007−502355A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532456(P2006−532456)
【出願日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/012519
【国際公開番号】WO2005/003228
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】