ポリマー複合物を得るための、有機シランによるカーボンナノチューブのサイドウォール官能化
本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)〔特に、単層カーボンナノチューブ(SWNT)〕を有機シラン化学種で官能化する方法に関し、このような官能化によって先端ポリマー複合材料の製造が可能となる。本発明はさらに、官能化CNT、このような官能化CNTを使用して製造される先端CNT-ポリマー複合材料、およびこのような先端CNT-ポリマー複合材料の製造法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海軍研究事務所(認可番号N00014-03-1-0296)、ロバートA.ウェルチ財団(認可番号C-1494)、および(米)航空宇宙局(NASA協力契約NCC-1-02038)からの支援で行われた。
(関連出願へのクロスリファレンス)
【0002】
本出願は、2003年7月28日付け出願の米国仮特許出願第60/490,664号に対する優先権を特許請求する。
【0003】
本発明は、一般にはカーボンナノチューブに関し、具体的には、カーボンナノチューブを有機シランで官能化する方法、およびこのような官能化されたナノチューブを含むポリマー複合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
カーボンナノチューブ(CNT)〔複数の同心外殻を含み、多層カーボンナノチューブ(MWNT)と呼ばれる〕は、1991年にIijimaによって発見された(Iijima,S.Nature 1991,354,56)。この発見に続いて、単層カーボンナノチューブ(SWNT)〔それ自体に対して巻かれた単一のグラフェンを含む〕が、遷移金属をドーピングした炭素電極を使用するアーク放電法によって合成された(Iijima,S.;Ichihashi,T.Nature 1993,363,603;およびBethune,D.S.,Kiang,C.H.;de Vries,M.S.;Gorman,G.;Savoy,R.;Vasquez,J;Beyers,R.Nature 1993,363,605)。これらのカーボンナノチューブ(特にSWNT)は、ユニークな機械的特性、電気的特性、および熱的特性を有し、こうした特性により、カーボンナノチューブは多種多様な用途に対して魅力的な材料となっている。
【0005】
カーボンナノチューブは、モジュラス、強度、およびフレキシビリティが極めて高く、そして軽量であることから、次世代の先端複合材料を開発する上での有望な強化用材料であると考えられている(Calvert,P.Nature,1999,399,210;Thostenson,Composite Science and Technology.2001,61,1899-1912;Maruyama,B.,Alam,K.SAMPE Journal,“Carbon Nanotubes and Nanofibers in Composites materials”,2002,38(3),59-70)。複合材料に対して向上が期待される点としては、強度と剛性の増大、靭性と剪断強さの向上、他のZ軸特性、および導電性と熱伝導性の向上、などがある。カーボンナノチューブを加えることによってポリマーナノ複合材料を進歩させるべく、多大の努力が払われている。しかしながら、ナノチューブの並外れた特性をうまく利用するためには、マトリックスからナノチューブへの効果的な組み込み移動(load transfer)が存在しなければならない(L.S.Schadler,S.C Giannaris,P.M.Ajayan,“Load Transfer in Carbon Nanotube Epoxy Composites”,Appl.Phys.Lett.,1998,73(26),3842-3844;P.M.Ajayan and L.S.Schadler,“Single-walled carbon nanotube type-Polymer Composite:Strength & Weakness”,Adv.Mater.,2000,12(10),750-753;Lau,K.T.,“Effectiveness of using carbon nanotubes as nano-reinforcements for advanced composite structures”,Carbon,2002,40,1605-6)。これまでは、ナノチューブとポリマーとの間の相互作用が弱いことから、複合材料におけるナノチューブの強化用としての役割はまだ極めて限定されていた。ナノチューブを均一に分散させることも、最適の強化効果を得るために必要な条件である。ナノチューブはバンドルとして存在する傾向があって、凝集体として絡み合っており、したがってポリマーマトリックス中の分散状態がよくない。ファンデルワールス力は幾らかの物理的相互作用をもたらすけれども、マトリックスからより小さなバンドルへの、そして理想的には個々のナノチューブへの最適の組み込み移動がなされなければならない。したがって、均一な分散を果たすためにナノチューブのロープを解くこと(デバンドリング)が、依然として複合材料としての用途に対する課題となっている。
【0006】
単層カーボンナノチューブ(SWNT)の化学的処理(特にサイドウォール官能化)が最近、基本的かつ技術的な関心(特に、このようなSWNTのデバンドリングを行うことに対して)を増大させている分野となっている。直接フッ素化とそれに続く誘導体化;ラジカルやカルベンやナイトレンの付加、および1,3-双極性付加や求電子付加;芳香族分子やポリマーとのファンデルワールス相互作用による変性;を含めて、SWNTの共有結合と非共有結合に関するサイドウォール化学(sidewall chemistry)が報告されている。Khabashesku,V.N.;Margrave,J.L.“Chemistry of Carbon Nanotubes”in Encyclopedia of Nanoscience and Nanotechnology, Ed.S.Nalwa,American Scientific Publishers,2004,Vol.1,pp.849-861,および該文献中の参照文献;Khabashesku,V.N.;Billups,W.E.;Margrave,J.L.Acc.Chem.Res.,2002,35,1087;Bahr,J.L.;Tour,J.M.J.Mater.Chem.2002,12,1952;Georgakilas,V.et al.,“Organic Functionalization of Carbon Nanotubes”,J.Am.Chem.Soc.,2002,124(5),760-761;を参照のこと。官能化されたSWNTの、共有結合的に一体化されたポリマー複合物を作製するための強化材としての用途(Barrera,E.V.JOM,2000,52,38;Zhu,J.;Kim,J.;Peng,H.;Margrave,J.L.;Khabashesku,V.N.;Barrera,E.V.Nano Lett.2003,3,1107;Zhu,J.;Peng,H.;Rodriguez-Macias,F.;Margrave,J.L.;Khabashesku,V.N.;Imam,M.A.;Lozano,K.;Barrera,E.V.Adv.Funct.Mater,2004,14(7),643-648)および標的ドラッグデリバリーのためのビヒクルとしての用途が、最近報告されている。「Pantarotto,D.;Partidos,C.D.;Graff,R.;Hoebeke,J.;Brind,J.P.;Prato,M.;Bianco,A.J.Am.Chem.Soc.2003,125,6160」を参照のこと。実際、これらの研究により、共有結合もしくは水素結合の形成を通して高い結合親和力と結合選択性をもたらすことができる有機官能基によってSWNTを誘導体化する必要があることが確認された。これらの研究はさらに、加工適性(特に生物医学的な用途において)を向上させるには、親水性置換基(たとえばヒドロキシル基)を末端に有する化学成分を使用して、共有結合によるサイドウォール官能化を果たすことが最も重要である、ということも示している。
【0007】
最近の実験的研究(Khabashesku,V.N.;Billups,W.E.;Margrave,J.L.Acc.Chem.Res.,2002,35,1087)によれば、SWNTの直接フッ素化によって製造されるフルオロナノチューブを、フッ素の求核置換反応を通してサイドウォール官能化ナノチューブ誘導体を製造するための多機能前駆体として使用することができる、ということを示している。フッ素化カーボンナノチューブを中間体として使用して、ヒドロキシル官能価をCNTに(そして特にSWNTに)導入する簡単な方法も示されており、これにより極性溶媒中へのカーボンナノチューブの分散が可能となっている(L.Zhang et al.,Chem.Mater.2004,16,2055-2061)。このような官能化CNTを、本明細書では“ヒドロキシル官能化CNT”または“ヒドロキシル官能化ナノチューブ”と呼ぶ。
【0008】
最近の研究は、官能化ナノチューブを複合材料における強化材として使用する上での多くの可能性を示しており、このような強化材は主として、向上した相互作用と界面結合から生じる改良された組み込み移動(load transfer)から誘導される(J.Zhu,H.Peng,F.Rodriguesz-Macias,J.L.Margrave,V.N.Khabashesku,A.M.Imam,K.Lozano,E.V.Barrera,Adv.Fun.Mater.,2004,14(7),643-648)。特に、このようなヒドロキシル官能化CNTを、重合可能または架橋可能な特定の化学成分をCNT上に導入するためのその後の反応に使用することができれば、このような官能化CNTを使用して、多種多様なポリマー系を含んだ高性能複合材料を作製することができる。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)〔特に、単層カーボンナノチューブ(SWNT)〕を有機シラン化学種で官能化する方法に関し、このような官能化により、先端ポリマー複合材料の製造が可能となる。本発明はさらに、官能化CNT、このような官能化CNTを使用して製造される先端CNT-ポリマー複合材料、およびこのような先端CNT-ポリマー複合材料を製造する方法に関する。
【0010】
一般には、本明細書に記載の官能化はCNTのサイドフォールに対して起こるが、さらに、あるいはこれとは別に、ナノチューブの末端に対して起こる場合もある。一般に、CNTを有機シラン化学種で官能化する方法は、1)フッ素化CNTを供給する工程;2)フッ素化CNTと1種以上の化学種とを反応させて、末端ヒドロキシル基を含んだ化学成分で官能化されたCNT(ヒドロキシル官能化CNT)を生成させる工程;および3)ヒドロキシル官能化CNTと、“ポリマーと相互作用する(polymer-interacting)”官能性部分を有する有機官能化シラノール(加水分解された有機アルコキシシラン)とを反応させて、ポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTを生成させる工程、このときポリマーと相互作用するこのような有機シラン官能化CNTは、ポリマーホスト物質と化学的に相互作用することができる;を含む。
【0011】
CNTを上記のような仕方で官能化することによって、2つの利点が得られる。第一に、官能化ナノチューブは、繊維(他のCNT)とマトリックス(ポリマー)の両方に対し、化学結合によって強い結びつきをもたらすことができる。ポリマーに対して相溶性のある有機官能性シランを使用することで、ポリマーマトリックス中への官能化ナノチューブの組み込みを達成することができる。第二に、ナノチューブに対する高レベルのロープのほどきを、そして一般的な有機溶媒に対して比較的溶解性のある物質の形成を達成することができ、これによってポリマーマトリックス中へ均一に分散させうる可能性がもたらされる。
【0012】
幾つかの実施態様においては、ポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTとポリマー前駆体物質(モノマー)とを混合して重合可能な混合物を形成させる。引き続き重合を行うことで、先端CNT-ポリマー複合材料が得られる。
【0013】
幾つかの実施態様においては、ポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTを熱可塑性ポリマー物質中にブレンドする。適切な官能化により、ポリマーホストとの改良されたブレンド適性、およびポリマーホストとの起こりうる共有結合もしくは他の相互作用が得られる。
【0014】
幾つかの実施態様においては、CNTのロープが解かれるか、またはごくわずかのCNTを含んだ小さなロープとして存在する。
【0015】
幾つかの実施態様においては、本発明の1つ以上の処理方法が、複合ポリマー系からフッ素を取り除くのに役立つ。
【0016】
幾つかの実施態様においては、ポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTに対し、以下の方法の1つ以上による特性決定がなされる:フーリエ変換赤外(FTIR)分光法、ラマン分光法、走査電子顕微鏡法(SEM)、および透過電子顕微鏡法(TEM)。
【0017】
本発明の方法によって製造されるCNT-ポリマー複合材料は、DMA分析により機械的特性が向上していることが示されている。
【0018】
これまでは、以下に記載の本発明の詳細な説明がより良く理解できるよう、本発明の特徴をどちらかと言えば大まかに説明してきた。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴と利点を以下に記載する。
【0019】
本発明と本発明の利点をより完全に理解するために、添付の図面を参照しつつ説明を行う。
【0020】
図1は、フルオロナノチューブとジアルコールとを反応させてヒドロキシル官能化CNTを生成させることができる幾つかの代表的な化学経路を示している。
【0021】
図2は、アミノ末端化学成分がサイドウォールに結びついた状態のヒドロキシル官能化カーボンナノチューブ(3 g〜i)を形成させるための、フルオロナノチューブとアミノアルコール(2 g〜i)との間の反応を示している。
【0022】
図3は、ポリマーマトリックスとガラス繊維を橋かけしているSWNTの概略図である。
【0023】
図4は、アミン-シラン試剤によるガラス繊維のサイジングを示している概略図である。
【0024】
図5は、フッ素化SWNTと、ガラス繊維上のアミノシラン官能価との間の化学結合を示している概略図である。
【0025】
図6は、SWNT上の余分のフッ素部位と硬化剤との間の化学結合を示している概略図である。
【0026】
図7は、ガラス繊維-シラン-SWNTとエポキシ樹脂(エポキシマトリックス中の)との間の化学結合を示している概略図である。
【0027】
図8は、ガラス繊維-シラン-SWNTのSEM顕微鏡写真(左)とEDAX表面の分析結果(右)を示している。
【0028】
図9は、3点曲げ試験後の破断面のSEM顕微鏡写真であって;一番上の画像は、表面上のそれぞれの化学構造を示しており、真ん中の画像は、破断した表面を示しており、一番下の画像は、ガラス繊維-シラン-SWNT-エポキシ界面を示しており;(a)は、いかなるシラン処理も行っていない標準的なサンプルであり、(b)は、シランだけで処理したサンプルであり、そして(c)は、シラン-SWNTで処理したサンプルである。
【0029】
図10は、シランとガラス繊維との間の破断を示している破断破壊(fracture failure)の概略図である。
【0030】
図11は、酸処理によるヒドロキシル基とカルボキシル基の導入を示している。
【0031】
図12は、ヒドロキシル官能化SWNT(SWNT-OH)とアミノシラン(NH2-シラン)化学種との反応によって製造されるNH2-Si-SWNTの概略図である。
【0032】
図13は、カルボキシル官能化SWNT(SWNT-COOH)とNH2-シランとの反応によって製造されるNH2-Si-SWNTの概略図である。
【0033】
図14は、(a)HO-SWNT上への、および(b)HOOC-SWNT上へのアミン-シラン(アミノシラン)付着のメカニズムを示している。
【0034】
図15は、アミノシラン官能化SWNT(SWNT-シラン-アミン)のTGAサーモグラムを示している。
【0035】
図16は、SWNT-OHとエポキシ-シランとの反応によって製造されるエポキシシラン官能化SWNT(エポキシド-Si-SWNT)の概略図である。
【0036】
図17は、SWNT-COOHとエポキシ-シランとの反応によって製造されるエポキシド-Si-SWNTの概略図である。
【0037】
図18は、エポキシド-シランと(a)HO-SWNTとの、およびエポキシド-シランと(b)HOOC-SWNTとのカップリングのメカニズムを示している。
【0038】
図19は、(a)未処理のSWNT、(b)SWNT-Si-エポキシド、(c)SWNT-Si-アミンD(ジエトキシ)、および(d)SWNT-Si-アミンB(トリエトキシ)のSEM顕微鏡写真を示している。
【0039】
図20は、ハイブリッドSWNT-Si-NH2/SWNT-Si-エポキシドの形成の概略図である。
【0040】
図21は、SWNT-Si-アミンとエポキシプレポリマーとの反応の概略図である。
【0041】
図22は、SWNT-Si-エポキシドと硬化剤との反応の概略図である。
【0042】
図23は、フッ素化SWNTとリチウムアルコキシドとの反応の概略図である。
【0043】
図24は、ビニル重合可能な部分を含有するシラン化学種とヒドロキシル官能化SWNTとの間の反応を示している。
【0044】
図25は、フルオロナノチューブ、加水分解ナノチューブ、およびシラン処理したナノチューブの赤外線スペクトルの比較を示しており、線図はそれぞれ、a)F-SWNT、b)SWNT-R-OH、およびc)メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランで処理されたSWNTに関する。
【0045】
図26は、シラン官能化SWNTの赤外線スペクトルを示しており、線図はそれぞれ、(a)3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン[CH2=CH(C6H5)CH2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]、(b)N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン[H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]、および(c)(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシエトキシ-シラン[CH2-(O)-CHCH2O(CH2)3Si(OCH3)3]による官能化に関する。
【0046】
図27は、(a)SWNT-ROHと(b)シラン処理したSWNTのラマンスペクトルを示している。
【0047】
図28は、初期状態のSWNT(左)のエタノール中への分散(左)、およびシラン処理したSWNTのエタノール中への分散(右)を示している。
【0048】
図29は、(a)F-SWNTと(b)のビニルシラン-SWNTのSEM画像を示している。
【0049】
図30は、(a)初期状態のSWNTと(b)官能化SWNTのTEM画像(縮尺目盛り20nm)を示しており、ナノチューブバンドルの解きが達成されている(個々のSWNTに注意)。
【0050】
図31は、エポキシ/SWNT複合材料の貯蔵弾性率(E’)対温度のプロットを示している:(a)SWNTなし、(b)1重量%の初期状態SWNTとシラン添加剤、(c)1重量%のヒドロキシル官能化SWNT、および(d)1重量%のシラン官能化SWNT。
【0051】
本発明は、官能性部分をカーボンナノチューブに結びつけるために、有機シラン化学種を使用してカーボンナノチューブ(CNT)を官能化する方法、およびポリマーマトリックスと共有結合的な相互作用もしくは他の相互作用を行うことができる物品に関する。本発明はさらに、ポリマーと相互作用するこのような有機シラン官能化CNTを含んだカーボンナノチューブ-ポリマー複合材料、およびこのようなCNT-ポリマー複合材料を製造する方法に関する。
【0052】
一般には、本明細書に記載の官能化は、CNTのサイドウォールに対して起こるが、これとは別に、ナノチューブの末端において起こることもある。一般に、CNTを有機シラン化学種で官能化する方法は、1)フッ素化CNTを供給する工程;2)フッ素化CNTと1種以上の化学種とを反応させて、末端ヒドロキシル基を含んだ化学成分で官能化されたCNT(ヒドロキシル官能化CNT)を生成させる工程;および3)ヒドロキシル官能化CNTと、“ポリマーと相互作用する”官能性部分を有する有機官能化シラノールとを反応させて、ポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTを生成させる工程、このようなポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTは、ポリマーホスト材料と化学的相互作用を行うことができる;を含む。
【0053】
有機シランは、繊維とポリマーマトリックスとの界面を改良するために、繊維強化複合材料に対して広く使用されている。シランカップリング剤は、有機物質と無機物質との間にじょうぶな結合を形成する能力を有し、ほとんどが1個の有機置換基と1〜3個の加水分解可能な置換基を有する。シランカップリング剤は、最初に加水分解されてシラノールを生成し、このシラノールが、一方の側において無機物質とシロキサン結合を形成する。他方の側において、官能基(たとえば、ビニル、アミノ、クロロ、エポキシ、およびメタクリルオキシ等)が適切なポリマーマトリックスと容易に反応して化学結合を形成する。Velasco-Santosらは、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを使用した、多層カーボンナノチューブ(MWNT)に対する有機シラン処理について報告している(Velasco-Santos,C,Mrtinez,A.L,Lozada-Cassou,M.Alvarez-Castillo,A.およびCastano,V.M.Nanotechnology,13(2002),495-498)。該研究においては、最初に酸化プロセスを施して、ナノチューブ表面上におけるヒドロキシル基(グラフェンシートを破壊する場合と同様)とオープンエンド(open-ends)を生成させた。引き続きシラン化プロセスを施して官能化ナノチューブを生成させた。本発明の場合は、特定の官能基を、ポリマー複合材料用途向けのナノチューブに結びつけることができるように(カーボンナノチューブを構成している“巻かれた”グラフェンシートを破壊することなく)、ヒドロキシル基末端化学成分による官能化に基づいたサイドウォール官能化法を開発した(L.Zhangら,Chem.Mater.,2004,16,2055-2061)。
【0054】
本発明によるカーボンナノチューブ(CNT)としては、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、2層カーボンナノチューブ、バッキーチューブ、フラーレンチューブ、管状フラーレン、グラファイトフィブリル、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。このようなカーボンナノチューブは、アーク放電法(Ebbesen,Annu.Rev.Mater.Sci.1994,24,235-264)、レーザーオーブン法(Thessら,Science 1996,273,483-487)、火炎合成法(Vander Walら,Chem.Phys.Lett.2001,349,178-184)、および化学蒸着法(米国特許第5,374,415号)(これらに限定されない)を含めたいかなる公知の方法によっても製造することができ、このとき担持された金属触媒であっても(Hafnerら,Chem.Phys.Lett.1998,296,195-202)、担持されていない金属触媒であっても(Chengら,Chem.Phys.Lett.1998,289,602-610;Nikolaevら,Chem.Phys.Lett.1999,313,91-97)、またはこれらの組み合わせであっても使用することができる。実施態様に応じて、CNTをフッ素化する前に、および/または、CNTに本発明の化学のいずれかを施す前に、CNTに対し1つ以上のプロセシング工程を施すことができる。幾つかの実施態様においては、キラリティー、導電性、熱伝導性、直径、長さ、層の数、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される特性に基づいてCNTを分けることができる。「O’Connellら,Science 2002,297,593-596;Bachiloら,Science 2002,298,2361-2366;Stranoら,Science 2003,301,1519-1522」を参照。幾つかの実施態様においては、CNTを精製した。代表的な精製法としては、Chiangらによる方法(Chiangら,J.Phys.Chem.B2001,105,1157-1161;Chiangら,J.Phys.Chem.B2001,105,8297-8301)があるが、これらに限定されない。幾つかの実施態様においては、CNTを切断処理によって切断した。「Liuら,Science 1998,280,1253-1256;Guら,Nano Lett.2002,2(9),1009-1013」を参照。幾つかの実施態様においては、CNTが個別のナノチューブとして存在し、このとき他の実施態様においては、CNTが、個別のCNTのロープまたはバンドルとして存在する。“CNT”と“ナノチューブ”という用語は、ここでは同意語として使用されている。
【0055】
幾つかの実施態様においては、フッ素化カーボンナノチューブ(“フルオロナノチューブ”)(一般には、約C1F0.01〜約C2Fの化学量論を含む)とジアルコールのモノ金属塩MO-R-OH〔式中、Mは金属であり、Rは、炭化水素(たとえば-(CH2)n-)、他の有機鎖、および/または環構造単位である〕とを反応させる。このような実施態様においては、-O-R-OHがナノチューブ上の-Fと置き換わり、フッ素がMFとして脱離する。一般には、フルオロナノチューブが分散されている1種以上のジアルコールにMOHを加えることによって、その場でこのようなモノ金属塩を形成させる。このようなヒドロキシル官能化CNTの製造は、“Sidewall Functionalization of Carbon Nanotubes with Hydroxyl-Terminated Moieties”(2004年6月16日付け出願)(代理人整理番号11321-P073WO)と題する、本発明の譲受人に譲渡された同時係属中の国際特許出願、および「L.Zhangら,Chem.Mater.,2004,16,2055-2061」に詳細に説明されている。
【0056】
ジアルコールは、フルオロナノチューブを分散させることができて、フルオロナノチューブが適切な条件下で反応するようなジアルコールであれがいかなるジアルコールであってもよい。代表的なジアルコールを使用する幾つかの代表的な化学経路が図1Aに示されており、フルオロナノチューブ1が、ジアルコール2a-eのいずれかとMOH(式中、Mは、Li、Na、またはKのいずれかである)とを反応させることによって得られるジアルコールのモノ金属塩と反応して、官能化された生成物3a-eを生成する。他の代表的なジアルコールとしてはビスフェノールAがある。
【0057】
図1Bに示すように、上記の化学を多価アルコール(multi-alcohols)に対しても拡張することができ、フルオロナノチューブ1が、多価アルコール2fとMOH(式中、Mは、Li、Na、またはKのいずれかである)とを反応させることによって得られる多価アルコールR(OH)nのモノ金属塩と反応して、官能化された生成物3fを生成する。したがって上記の説明を、一般式MOR(OH)n-1のモノ金属塩のいずれかとフルオロナノチューブとの反応に拡張することができる。この場合も、Rは、官能化用化学成分のための主鎖として機能することができる炭化水素、他の有機鎖、および/または環構造単位である。
【0058】
幾つかの実施態様においては、フルオロナノチューブとアミノアルコール(たとえば、H2N-R-OHのタイプ)とを反応させ、このとき-N(H)-R-OHがナノチューブ上の-Fと置き換わり、フッ素がHFとして脱離する。一般に、このような実施態様においては、フルオロナノチューブを適切なアミノアルコール中に分散して反応混合物を形成させる;反応混合物にピリジン触媒を加える;そして[反応混合物+触媒]を反応させて、アミノ(アミン)末端部分を有する官能化カーボンナノチューブを形成させる。幾つかの実施態様においては、超音波処理を使用してフルオロナノチューブの分散を容易にし、および/または、ミキシングを起こさせる。これらの実施態様または他の実施態様においては、これとは別のミキシング操作を使用することができる。反応は一般に、約0.5時間〜約5時間の範囲の継続時間にて、約50℃〜約150℃の範囲の温度で行われる。前述したように、このようなヒドロキシル官能化CNTの製造は、“Sidewall Functionalization of Carbon Nanotubes with Hydroxyl-Terminated Moieties”(2004年6月16日付け出願)(代理人整理番号11321-P073WO)と題する、本発明の譲受人に譲渡された同時係属中の国際特許出願、および「L.Zhangら,Chem.Mater.,2004,16,2055-2061」に詳細に説明されている。
【0059】
アミノアルコールは、フルオロナノチューブを分散させることができて、フルオロナノチューブが適切な条件下で反応するようなアミノアルコールであれがいかなるアミノアルコールであってもよい。代表的なアミノアルコールを使用する幾つかの代表的な化学経路が図2に示されており、フルオロナノチューブ1がアミノアルコール2g-iと反応して、アミノ末端化学成分がフルオロナノチューブのサイドウォールに結合した官能化カーボンナノチューブ3g-iを形成する。
【0060】
いったんヒドロキシル化されると、CNTは、一般式HO-Si(R1)(R2)(R3)〔式中、R1〜R3のそれぞれは、水素(H)、ヒドロキシル(OH)、チオール(SH)、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、アミン、アミド、エステル、エーテル、エポキシ、シリル、ゲルミル、スタニル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択することができる官能性部分である〕のシラノール化学種と反応することができる。一般には、R1〜R3の少なくとも1つが、共有結合または他のタイプの結合(たとえば、水素結合、ファンデルワールス力、および双極子間相互作用など)を介してある種のポリマーマトリックスと相互作用することができる“ポリマーと相互作用する”部分である。
【0061】
幾つかの実施態様においては、このようなシラノール化学種は、RO-Si(R1)(R2)(R3)〔式中、Rは炭化水素官能価(a hydrocarbon functionality)である〕のタイプのシロキサン化学種の加水分解によって形成され、このとき
RO-Si(R1)(R2)(R3) + H2O → HO-Si(R1)(R2)(R3) + ROH
【0062】
このようなシラノール化学種は、下記の反応スキーム1にしたがってヒドロキシル官能化CNTと反応する。
【化1】
【0063】
上記の化学をここでは“シリル化(silation)”と呼び、このようなシリル化の生成物をここではシラン官能化CNTと呼ぶ。一般には、ヒドロキシル部分を有するいかなるCNTも、このシリル化工程に使用することができる。
【0064】
さらに、あるいはこれとは別に、幾つかの実施態様においては、クロロシラン化学種をシラノールの代わりに使用することができる。一般には、スキーム2に示すように、このような反応を容易にするためにピリジン等の触媒が使用される。
【化2】
【0065】
シラン官能化CNT上のR1〜R3の少なくとも1つがポリマーと相互作用する部分である、という場合の幾つかの実施態様においては、シラン官能化CNTと適切なポリマー前駆体とを混合し、引き続きその場でシラン官能化CNTと重合させる。ポリマー前駆体がエポキシ前駆体であるという場合の幾つかの実施態様においては、R1〜R3の少なくとも1つが、アミン、エポキシ環、カルボン酸、チオール、イソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、これにより硬化後に得られるエポキシマトリックスとの共有結合的な一体化がなされる。
【0066】
幾つかの実施態様または他の実施態様においては、シラン官能化CNT上のR1〜R3の少なくとも1つが、アルケン、アルキン、ジエン、チオール、イソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される官能価を含んだポリマーと相互作用する部分である。幾つかのこのような実施態様においては、シラン官能化CNTと、炭素-炭素二重結合もしくは炭素-炭素三重結合を含んだポリマー前駆体とを混合する。このようなポリマー前駆体としては、スチレン、ビニルエステル、イソプレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ポリエステル、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。次いでこのような混合物をその場で重合し、シラン官能化CNTと生成するポリマーとの共有結合的な相互作用を得る。このような重合は一般に、フリーラジカル(たとえばAIBN開始剤による)、カチオン、アニオン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される重合メカニズムによる。幾つかの実施態様においては、このような重合は、光、触媒、熱、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって開始される。シラン官能化CNTに組み込むための代表的なポリマー系は、ビニルエステル、エポキシ化合物、およびポリエステルである。
【0067】
幾つかの実施態様においては、シラン官能化CNTを熱可塑性材料中にブレンドする。適切な熱可塑性材料としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。
【0068】
ポリマーと相互作用する部分を含んだシラン官能化CNTとポリマー化学種とを混合するという場合の実施態様においては、シラン官能化CNTとポリマーマトリックスとの間に、共有結合、および/または、水素結合、ファンデルワールス力、双極子間相互作用、そしてこれらの組み合わせからなる群から選択される相互作用を含めた、ポリマー相互作用(polymer interaction)が存在する。このような実施態様においては、CNTは一般に、得られる複合材料中に約0.1重量%〜約10重量%の範囲の量にて存在する。このような実施態様においては、CNTは一般に、官能化されていないCNTの場合には不可能である程度にまでデバンドルされている(展開されている)。さらに、本明細書に記載のシラン化学は、このような化学を通してCNTに付け加えることができる、ポリマーと相互作用する部分の多様性によって、このような展開されたCNTを一体化することができるシステムの範囲を広げる。
【0069】
幾つかの実施態様においては、本発明の方法は、繊維強化ポリマー(FRP)複合材料が組み込まれる。FRP複合材料の製造法は一般に、モールド中に繊維強化材を配置すること、次いで硬化後に材料が最終部品に造形できるように、繊維に未硬化のポリマーを含浸させることを含む。ナノチューブ/繊維強化ポリマー複合材料を製造するためには、先ず、乾燥した繊維強化材をナノチューブでオーバーコートし、次いで標準的なレイアップ・樹脂注入プロセシングを使用して複合材料を製造する。この方法を使用すると、樹脂中にナノチューブを直接混合することから生じる大幅な粘度増大が避けられ、したがってFRP複合材料の製造に対して、工業的に広く使用されている樹脂トランスファー成形法や注入プロセシングが容易になる。本出願者らは、真空樹脂トランスファー成形法(VARTM)、圧縮成形法、および真空バッギングプロセシング(vacuum bagging processing)を使用して、ガラス繊維織物が組み込まれたナノチューブ(たとえばSWNT)/強化FRP複合材料を製造した。この方法はさらに、FRP複合材料を製造するための他のほとんどの成形法〔たとえば、ウェットレイアップ法、吹き付け成形法、プレプレグ法、オートクレーブ法、および従来の樹脂トランスファー成形(RTM)法とその派生的プロセシング[たとえば、シーマン複合樹脂射出成形法(SCRIMP)、ダブルチャンバー式真空樹脂トランスファー成形(DCVRTM)、および構造反応射出成形(SRIM)等]〕に対しても適している。
【0070】
上記のようなFRP技術を使用して、本出願者らは、エポキシ樹脂システム、ビニルエステル樹脂システム、およびビスマレイミド樹脂システムを組み込んだナノチューブ/ガラス繊維複合材料を加工した。このナノチューブオーバーコーティング法は、他のいかなる熱硬化性樹脂システム(たとえばポリエステルシステム)に対しても適用することができる。適切な強化材としては、不連続繊維、連続繊維、クレー、ガラス繊維布帛、炭素繊維、グラファイト布帛、ケブラー布帛、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。強化材は、織布の形態であっても、不織布(たとえばマット)の形態であっても、あるいはチョップトファイバーの形態であってもよい。
【0071】
FRPが関与する上記実施態様の幾つかにおいては、ナノチューブの混合物(1種以上の溶媒中に分散)を織布またはマットの表面上にスプレー付着させるのに、そして最近では、FRP複合材料を製造する上での成形法を簡単にするために、スプレーアップ法(a spray-up process)が使用されている。溶媒を蒸発させた後、ナノチューブを、均一な分布状態にて、あるいは所定の配置にて繊維織目の表面上にオーバーコートのままにしておく。団結して複合材料にすると、ナノチューブは、積層複合材料構造物の特性(たとえば、靭性、層間剪断強度、および圧縮強度など)を向上させるための二次的な強化材として機能する。
シラン官能化CNT/ポリマー/ガラス繊維複合材料
【0072】
本発明はさらに、シラン官能化CNT/ポリマー/ガラス繊維複合材料、およびこうした複合材料の製造法に関する。このような複合材料は一般に、1)CNT;2)繊維強化材;および3)ポリマーを含み、このときCNTが、繊維強化材とポリマーとを化学的または物理的に橋架けするブリッジとして機能する。
【0073】
このような複合材料の製造法は一般に、1)繊維強化材を供給する工程;2)繊維強化材にCNTを加えてCNT被覆繊維を形成させる工程;および3)CNT被覆繊維にポリマー物質を接触させて、CNTが、繊維強化材とポリマーとを化学的または物理的に橋架けするブリッジとして機能する、という複合材料を形成させる工程;を含む。
【0074】
一般には、これらの実施態様において使用されるCNTはSWNTであるが、MWNTやさまざまな種類の繊維が用いられるバリエーションも使用することができる。
【0075】
幾つかの実施態様においては、強化用繊維をCNTで被覆するのに初期湿潤法が使用される。この方法は一般に、CNTを溶媒中に分散すること、繊維を加えること、および溶媒を除去して、CNTで被覆された強化用繊維を生成させることを含む。幾つかの実施態様においては、CNTを官能化して、強化用繊維に共有結合させる。幾つかの実施態様においては、CNTが、強化用繊維のためのサイジング剤として使用される。幾つかの実施態様においては、このような“サイジング”は、初期状態の繊維に対して、または最初のサイジング剤が除去された場合の繊維に対してなされる。
【0076】
これらの実施態様のうちの幾つかにおいては、分散を改良するための方法として、CNT(たとえばSWNT)を、最初にポリマーマトリックス中にではなく繊維強化材(たとえばガラス繊維)上に直接導入する。このような実施態様においては、図3に示すように、シラン官能化CNTを最終的にポリマーマトリックスと繊維強化材の両方に化学的に相互連結(結合)させ、このときシラン官能化SWNTが、ガラス繊維とエポキシマトリックスとの間の化学的“ブリッジ”として機能する。このような実施態様においては、粘度制御と溶媒が関与しないプロセスを使用して、ポリマー物質と繊維強化材とを接触させることができる。幾つかの実施態様においては、フッ素化CNT(たとえば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,645,455号の場合)が、アミン官能基を有するシラン試剤との化学反応によって繊維強化表面上に導入される。幾つかの実施態様においては、これは、官能的に等級付けされた界面(a functionally graded interface)をもたらす。
【0077】
シラン官能化CNT/ポリマー/ガラス繊維複合材料に関係する実施態様の幾つかにおいては、エポキシ化合物がポリマー成分として使用される。前述したように、エポキシ化合物は、本発明によれば、架橋されるポリマー化学種であり、このとき架橋は、エポキシ基を含むエポキシ樹脂化学種と、アミノ基、無水物基、またはルイス酸タイプの基を含む硬化剤との間で起こる。架橋のプロセスが“硬化”と呼ばれる。エポキシシステム(エポキシ樹脂+硬化剤)は、本発明の方法によるCNTの共有結合一体化を適切に可能にする、いかなるシステムまたはシステムの組み合わせであってもよい。
【0078】
前述したように、幾つかの実施態様においては、ガラス繊維布帛が強化用繊維として使用される。限定するつもりはないが、このような繊維強化材は一般に、約339g/cm2の単位表面積当たりの重量、0.36mmの厚さ、および16×14の平織を有する。このような繊維の各ストランドは、245本の微細なガラス繊維フィブリル(直径10μm)で構成されている。
【0079】
ガラス繊維強化材を使用する幾つかの実施態様においては、ガラス繊維布帛がリサイズ処理される。受け入れたままのガラス繊維上のシランをヒートクリーニングによって除去し、化学的に活性なシラン試剤(たとえば、アミン基を有するシランカップリング剤)で置き換える。このようなプロセスが図4に概略的に示されている。ガラス繊維上に新たなシラン試剤を2%導入するための加水分解反応を容易にするために、一般には水性アルコール溶液(たとえば、95%エタノール-5%水)が使用される。加水分解とシラノール形成にかかる時間は約5分である。シランでサイズ処理したガラス繊維布帛を100℃で2時間乾燥する。
【0080】
本発明の幾つかの実施態様においては、シランでリサイズ処理したガラス繊維布帛がフッ素化SWNTに化学結合される。このような反応は一般に、ジメチルホルムアミド(DMF)中にて80℃で1時間行われる。このような反応においては、ガラス繊維上のシランカップリング剤に結合しているアミンが一般には第一アミンであり、この第一アミンが、CNTサイドウォール上のフッ素と反応し、ナノチューブのサイドウォールにC-N結合を形成する。このカップリング反応が図5に概略的に示されている。このような反応中に生成されるフッ化水素(HF)は、ピリジンによって塩の形で捕捉される。
【0081】
本発明の幾つかの実施態様においては、CNTをガラス繊維にカップリングさせた後でも、CNT上に幾らかの未反応のフッ素部位が存在する。なぜなら、ガラス繊維に結合したシラン上のアミン基より、CNT上のフッ素部位のほうが一般には多いからである。これらのフッ素部位はさらに、図6に示すように、エポキシマトリックス中の硬化剤と反応することができる。硬化剤中のアミン基が、SWNT上のこれらの余分なフッ素部位と反応する。
【0082】
本発明の幾つかの実施態様においては、シラン官能化SWNT/ガラス繊維布帛の複数層中にエポキシ樹脂を埋め込むことによって(たとえば図7)、シラン官能化CNT/ポリマー/ガラス繊維複合材料が製造される。このようなシラン官能化CNT/エポキシ/ガラス繊維複合材料は一般に、100℃で2時間キュアーし、次いで150℃で2時間ポストキュアーする。積み重ねたガラス繊維層とSWNTとエポキシポリマーとの間のこうした化学結合を図7に示す。
【0083】
シラン官能化CNT上のシラン官能価の存在を確認するために、EDAX(エネルギー分散型X線分析)によって表面の元素分析を行った。走査電子顕微鏡(SEM)写真から、シラン官能化SWNTバンドルがガラス繊維の表面をオーバーコートしていることがわかる。SEMを使用してガラス繊維上のSWNTを画像化し、EDAXを使用してこの区域のSWNTを分析した。この結果から、シラン基がガラス繊維-SWNT上に導入されていることが確認される。図8は、ガラス繊維-シラン-SWNTのSEM顕微鏡写真(左)、およびEDAXによる表面分析結果(右)を示している。
【0084】
化学的に結合したSWNTがガラス繊維のサイジングに及ぼす影響を評価するために、一連のサンプルを作製することができる。標準のサンプルは、ガラス繊維/エポキシ複合材料をサイジングすることによって作製される。一般的な関連性のうちの特定の場合として、シラン被覆されたアミン基末端のガラス繊維/エポキシ複合材料と、SWNT被覆されたガラス繊維/エポキシ複合材料を作製し、比較した。ASTM D709規格にしたがって、3点曲げ試験取付具を使用して、少なくとも5つのサンプルにより曲げ強度試験を行った。図9を参照すると、上のSEM顕微鏡写真は、3点試験後の破断面であり、下のSEM顕微鏡写真は、ガラス繊維を引き抜いた後の、エポキシマトリックスとガラス繊維との間の界面である。これらのサンプルは、(a)が、いかなるシラン処理も行っていない標準的なサンプルであり、(b)が、シランだけで処理したサンプルであり、そして(c)が、シラン-SWNTで処理したサンプルである。
【0085】
幾つかの検体において、SEM顕微鏡写真は明らかに、ガラス繊維とエポキシマトリックスとの間の界面にSWNTが存在することを示している。曲げ試験の結果から、アミン基末端のシラン被覆ガラス繊維/エポキシ複合材料が最も高い強度とモジュラスを示した。文献によれば、脱サイズ処理したガラス繊維は、サイズ処理したガラス繊維より高い静電エネルギーと、より高い表面エネルギーを有する。サイズ処理後、表面エネルギーは約30%低下する。サイズ処理よる表面エネルギーの低下を考慮すると、化学的に変性されたSWNT/サイズ処理したガラス繊維の複合材料は、改良された機械的特性を有するようである。このような破損は、ガラス繊維/シランの界面において起こると考えられる。図10は、ガラス繊維/シラン界面の破断破損(fracture failure)の概略図であり、このときガラス繊維は、リサイズ処理の前に表面OH基を増大させるように予備処理されていない。
シラン官能化・酸化SWNT(ハイブリッドSWNT-Si-NH2/SWNT-Si-エポキシド)
【0086】
幾つかの実施態様では、SWNTを官能化するための重要な方法として、種々の有機シラン基を酸化SWNTに化学的に結合させる。これらのシラン官能化SWNTは、ペイントや複合物を含めた種々のポリマーシステムにおいて使用することができる。
【0087】
本発明の幾つかの実施態様においては、酸化性の酸(たとえば、H2SO4やHNO3)の混合物中における超音波処理によって製造された酸化SWNTにシラン基を結合させる。第1のシランカップリング剤に結合したアミン基と、第2のシランカップリング剤に結合したエポキシド基を、酸化SWNT上の(一般には、末端の、あるいはサイドウォールにおける欠陥としての)ヒドロキシル基およびカルボキシル基と反応させて、アミノシラン官能化SWNT(アミン-Si-SWNT)とエポキシシラン官能化SWNT(エポキシド-Si-SWNT)を生成させる。
【0088】
幾つかの実施態様においては、SWNT上に(一般には、ナノチューブの末端に)ヒドロキシルやカルボキシル基を結びつけるようSWNTを酸化し、次いでシラン中のアルコキシ基と反応させる。1つの例では、0.5gの未精製SWNTを400mlのHNO3/H2SO4(3:1)中に分散し、バス・ソニケーター(a bath sonicator)を使用して3時間超音波処理した。過剰量の蒸留水を加えて混合物を希釈し、これを遠心分離にかけた。次いでこの混合物約50mlを、100mlの蒸留水とアセトンを加えることによって0.2μmのテフロン膜を通して濾過して、バッキーペーパーの形態にした。サンプルを100℃で24時間乾燥した。図11は、このような酸化を図解的に示している。
シラン官能化・酸化SWNT(SWNT-Si-NH2)
【0089】
幾つかの実施態様においては、シラン(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を、攪拌しながらエタノール/水混合物に加えて、95%エタノール/5%水溶液中の最終シラン濃度2%とした。加水分解とシラノールの形成に対しては、一般には5分かかる。次いで、酸化SWNT、SWNT-COOH、またはSWNT-OHを溶液中に分散し、超音波処理し、それからエタノールによって過剰の物質をすすぎ落とす。溶液中で2〜3分攪拌し、次いで溶液をデカントすることによってSWNT-COOHをシリル化して、シリル化SWNT(SWNT-Si-アミン)を生成させることができる。一般には、SWNT-Si-アミンを、0.2μmのテフロンフィルター膜を通してエタノールですすぎ洗いする。SWNT-Si-アミンはさらに、SWNT-OHまたはSWNT-COOHとアミン-シランとの反応によって製造することもでき、図12は、SWNT-OHとNH2-シランとの反応によるNH2-Si-SWNTの製造を示しており、図13は、SWNT-COOHとアミノシラン(NH2-シラン)との反応によるNH2-Si-SWNTの製造を示している。さらに、図14は、(a)SWNT-OHまたは(b)SWNT-COOHとのアミン-シラン結合の形成のメカニズムを示している。
【0090】
幾つかの実施態様においては、SWNTへのシラン化学種の結合を確認するのに熱重量分析(TGA)が使用される。ある関連した場合において、シラン官能化SWNTとSWNTのサーモグラムを比較したときに、シラン官能化SWNTに対するサーモグラムは、アッシュの重量の増大を示した。これは、3-アミノプロピルトリエトキシシラン中のケイ素がSWNTに結合したからである。これらの結果から、SWNT-Si-アミン(3-アミノプロピルトリエトキシシラン:三官能アミン)は、乾燥状態においては粉末のようであることがわかった。シラン化されたSWNTは粘度がより高くなり、乾燥後に硬質で極めて小さな粒子を生成し、縮合反応中にネットワーク構造を形成したことがSEM顕微鏡写真からわかる。図15はSWNT-シラン-アミンのTGAサーモグラムを示している。
【0091】
J.G.Iglesiasらは、ガラス繊維の表面を変性するのにモノエトキシシラン(3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン)を使用すると、トリエトキシシラン(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を使用した場合より優れた機械的特性が得られる、ということを報告した(Iglesiasら,J.Colloid and Interface Sci.,2002,250,251-260)。トリエトキシシランは、ガラス繊維の表面上に架橋ネットワークを形成した。アミン基が近づきやすくなるほど、架橋密度は高くなった。モノエトキシ化合物(化合物2)やジエトキシ化合物(化合物1)を使用すれば、架橋の問題(たとえば、SWNT-Si-アミンとSWNT-COOHとの間の架橋、あるいはSWNT-Si-アミン間の架橋)は解決することができる。
【化3】
【化4】
シラン官能化・酸化SWNT(ハイブリッドSWNT-Si-NH2/SWNT-Si-エポキシド)
【0092】
幾つかの実施態様においては、水性アルコール溶液(95%エタノール/5%水の溶液)を、酢酸でpH4.5〜5.5に調節する。攪拌しながらシランを加え、2%の最終濃度にする。加水分解とシラノールの形成に5分かかる。SWNT-COOHを溶液中に分散し、超音波処理し、1〜2分後に取り出した。エタノール中に短時間浸漬することによって過剰の物質をすすぎ落とす。次いでSWNT-COOHをシラン-アルコール溶液中に再分散し、前記溶液中にて2〜3分攪拌することによって、そして溶液をデカントすることによってシリル化する。シランのキュアーは、110℃にて5〜10分、あるいは室温にて24時間(相対湿度60%未満)である。SWNT-Si-エポキシドは、図16に示すように、SWNT-OHとエポキシド-シランとの反応によって製造することができる。SWNT-Si-エポキシドはさらに、図17に示すように、SWNT-COOHとエポキシド-シランとの反応によって製造することができる。図18は、(a)SWNT-OHへの、および(b)SWNT-COOHへの、エポキシド-シラン付着(deposition)のメカニズムを示している。
【0093】
幾つかの場合においては、アミン-シラン-SWNTは、受け入れたままのSWNTと比較して相互に絡み合っており、バンドルの厚さと粗さが増大している、ということがSEM顕微鏡写真からわかる。図19は、(a)未処理のSWNT、(b)SWNT-Si-エポキシド、(c)SWNT-Si-アミンD(ジエトキシ)、および(d)SWNT-Si-アミンB(トリエトキシ)のSEM顕微鏡写真を示している。
シラン酸化SWNT(ハイブリッドSWNT-Si-エポキシド)
【0094】
幾つかの実施態様においては、図20に示すように、SWNT-Si-NH2とSWNT-Si-エポキシドエポキシとの反応によってハイブリッドSWNT-Si-NH2/SWNT-Si-エポキシドエポキシを製造することができる。
シラン官能化・酸化SWNT(エポキシプレポリマーを含んだSWNT-Si-NH2/エポキシド)
【0095】
幾つかの実施態様においては、SWNT-Si-NH2の量は、過剰な溶媒/エポキシプレポリマー中で反応させることによって調節することができる。SWNT-Si-NH2は、SWNTがプレポリマー中にエポキシド基を有する場合に使用することができる。図21は、SWNT-Si-アミンとエポキシプレポリマーとの反応を概略的に示している。
シラン官能化・酸化SWNT(SWNT-Si-エポキシド/アミン硬化剤)
【0096】
幾つかの実施態様においては、SWNT-Si-エポキシドの量は、過剰の溶媒/硬化剤中で反応させることによって調節することができる。SWNT-Si-エポキシドは、SWNTがプレポリマー中にアミン基を有する場合に使用することができる。図22は、SWNT-Si-エポキシドと硬化剤との反応を概略的に示している。
シラン官能化・フッ素化SWNT
【0097】
本発明は、有機シランを使用してSWNTのサイドウォールを官能化する重要な方法を提供する。さらに詳細に言うと、フッ素化SWNTをベースとしたこのような化学的官能化は、一般には3つの主要な工程を含む:すなわち、(1)SWNTをフッ素化してF-SWNTを生成させる工程;(2)末端ヒドロキシル部分を含有する化学種とF-SWNTとの反応によってヒドロキシル含有基をSWNTに結びつけて、ヒドロキシル官能化SWNTを生成させる工程;および(3)ヒドロキシル官能化SWNTとシラン化学種とを反応させて、シラン官能化SWNTを生成させる工程。これらのシラン官能化SWNTの複合材料用途に対する主要な例は、ナノチューブ強化ガラス繊維/ビニルエステル複合材料である。ビニル官能化シランを使用することで、ビニルエステルマトリックス中への官能化ナノチューブの直接的な組み込みが、その場のフリーラジカル重合によって達成することができる。この種のシラン官能化ナノチューブを使用すると、2つの利点が得られる。第一に、官能化ナノチューブが、堅牢な化学結合を介して繊維とマトリックスの両方に強い結びつきをもたらす。第二に、溶媒とポリマーマトリックス中へのナノチューブの分散が大幅に向上する。複合材料のプロセシングは一般に、ガラス繊維の表面をナノチューブで被覆すること、および圧縮成形もしくは真空樹脂トランスファー成形を行うことを含む。
【0098】
幾つの実施態様においては、有機シラン化学種を使用するSWNTのサイドウォール官能化は以下の工程を含む。先ず、フルオロナノチューブ(F-SWNT)(DMF溶媒中に分散)とエチレングリコールまたはグリセリン〔水酸化リチウム(LiOH)で処理〕とを、1〜2時間の超音波処理時に反応させる。このタイプの反応を図23に記す。膜濾過および水とエタノールによる洗浄を行った後、ヒドロキシル官能化ナノチューブを一般にはエタノール溶液中に分散し、酢酸を加えてpHを約4〜5に調整する。最後に、約1〜2%のシランカップリング剤(たとえば、ビニルエステル複合材料用途に使用されるビニルトリエトキシシランやビニルジメチルエトキシシラン)を、超音波処理しながら30分にてナノチューブ/エタノールに加えて、シラン官能化SWNTを得る。図24は、ビニル重合可能な部分を含有するシラン化学種とヒドロキシル官能化SWNTとの間の反応を示している。
【0099】
本発明のCNT-ポリマー複合材料は、向上した電気的特性、機械的特性、光学的特性、および他の特性を有することができる。実際、このような複合材料は、種々の望ましい特性を有することから“多機能の(multifunctional)”と呼ぶことができる。このような複合材料に対する用途としては、航空宇宙産業用、自動車用、建設用、静電放電、ペイントと塗料、織物、繊維、エラストマー、医療用インプラント、電磁遮蔽、避雷、耐疲労性付与、および耐衝撃性付与などがあるが、これらに限定されない。しかしながらCNTは、官能化された状態において一般には非導電性であることに留意しておかなければならない。
【0100】
本明細書に記載の官能化法では、ナノチューブの界面を、ポリマー複合材料用途向けの有機シラン化学種を使用して調整することができる。強酸を使用する酸化処理と比較すると、この非破壊的なサイドウォール官能化は、多くの欠陥を導入することなくナノチューブの構造的保全性を保持するという点でより優れており、したがってナノチューブの引張強さにそれほど影響を及ぼさないはずである。種々の官能基を有する異なった種類の有機シランを選択することで、この一般的な官能化法を、広範囲のポリマー複合材料用途に使用するのに拡張することができる。
【0101】
後述の実施例においては、単層カーボンナノチューブを、ポリマー複合材料用途向けの、ポリマーに対して相溶性の数種の有機シランで処理した。赤外線スペクトル分析とラマンスペクトル分析を使用して、ヒドロキシル官能化ナノチューブにトリアルコキシシラン化学種が結合していることの証拠を得た。この方法は、その場重合によってポリマーマトリックス中に官能化ナノチューブを直接導入できる可能性をもたらす。さらに、一般的な有機溶媒中において、高レベルのナノチューブのロープほどきが得られた。したがって、このようなシラン処理は、有機溶媒中へのナノチューブの溶解を可能にして、ポリマーマトリックス中への均一な分散をもたらすだけでなく、効果的な組み込み移動(load transfer)のための改良された界面結合ももたらす。ナノチューブ/ポリマー複合材料の製造と特性決定も可能となっている。シラン官能化ナノチューブをエポキシポリマー中に使用することによって、強化効果が増大することが実証された。
【0102】
後述の実施例は、本発明の実施態様の幾つかをより詳細に説明するために記載されている。当業者にとっては言うまでもないことであるが、後述の実施例に開示の手法は、本発明を実施する上で旨く機能するよう本発明者らによって発見された手法を示しており、したがって本発明を実施するための代表的な態様を構成しているとみなすことができる。しかしながら、当業者であれば、本発明の開示内容を考慮した上で、開示されている特定の実施態様に対して多くの変更を行ってよく、そしてさらに、本発明の要旨を逸脱することなく同様もしくは類似の結果が得られる、ということを認識しているはずである。
【0103】
後述する実施例において使用される物質は以下のようにして得た。精製SWNTバッキーパールズ(Purified SWNT BuckyPerals)は、カーボンナノテクノロジーズ社(Carbon Nanotechnologies,Inc)から入手した。SWNTは高圧HiPco法によって得、ミリメートルスケールのサイズのバッキーパール・ペレット(BuckyPearl pellets)にした。この物質は約13重量%のFe触媒を含有する。有機シランはGELEST社から購入した。4種のシランを使用した:メタクリル官能基を有するメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン;スチレン官能基を有する3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン;エポキシ基を有する(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシエトキシ-シラン;およびアミノ基を有するN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン。
【0104】
後述の実施例における生成物の特性決定は以下のように行った。全反射減衰-フーリエ変換赤外分光分析法(ATR-FTIR)とフーリエ変換ラマン分光分析法を使用して、官能化SWNTの特性決定を行った。ナノチューブのモルホロジーは、フィリップス社製の環境制御型走査電子顕微鏡を30kVの加速電圧にて使用して調べた。高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)の画像は、JOEL JSM 2010 TEMシステムを100kVにて使用して得た。
【実施例】
【0105】
(実施例1)
本実施例は、CNTのフッ素化とその後のヒドロキシル化を説明するためのものである。ライス大学において開発された方法を使用して精製SWNTをフッ素化して“フルオロナノチューブ”を生成させた(Mickelson,E.T.;Huffman,C.B.;Rinzler,A.G.;Smalley,R.E.;Hauge,R.H.;Margrave,J.L.Chem.Phys.Lett.1998,296,188;Chiang,I.W.Ph.D.Thesis,ライス大学,テキサス州ヒューストン,2001)。フッ素化は、150℃に加熱したモネル(Monel)反応器中にて12時間行った。フッ素、水素、およびヘリウムに対するガス流量比は2:1:30であった。次いで、水酸化リチウムで処理したエチレングリコールとフルオロナノチューブとを、2時間超音波処理して反応させることによってヒドロキシル化ナノチューブを製造した(図1)。“Sidewall Functionalization of Carbon Nanotubes with Hydroxyl-Terminated Moieties”(2004年6月16日付け出願)(代理人整理番号11321-P073WO)と題する、本発明の譲受人に譲渡された同時係属中の国際特許出願、および「L.Zhangら,Chem.Mater.,2004,16,2055-2061」を参照のこと。
【0106】
(実施例2)
本実施例は、ヒドロキシル官能化CNTのシリル化(silation)を説明するためのものである。ヒドロキシル官能化SWNTの溶液を水で希釈し、0.2μmの細孔径のPTFE膜フィルターを使用して濾過し、水とエタノールで数回フラッシングして未反応の残留物を除去した。次いで、超音波処理によって、ヒドロキシル官能化ナノチューブを再びエタノール溶液中に分散した(1mg/1ml)。酢酸を加えてpHを5に調整した。次いで、混合物にシランカップリング剤を加えて0.2%エタノール溶液を形成させた。混合物を、40KHzのバス・ソニケーター中にて1時間超音波処理した。本溶液を室温で乾燥してエタノールを蒸発除去し、そしてポストキュアーのために110℃で2時間加熱した。最後に、シラン官能化SWNTを、超音波を加えながらアセトン中に溶解して、未反応のシランを洗い落とした。ナノチューブ表面へのこのようなシラン反応をスキーム3に示す。
【化5】
上記のスキームにおいて、Yは、アニオン重合やフリーラジカル重合を容易に受け、ポリマー複合材料中の他のモノマーと共有結合を形成する、アミノ、エポキシ、ビニル、およびメタクリル等の有機官能基である。
【0107】
ポリマー複合材料の用途に関して、ナノチューブへのシラン結合の特性決定を行い、スペクトル分析によって確認した。ニコレット(Nicolet)FTIRを使用して、SWNTのサイドウォールに結合した官能基を分析した。図25は、フルオロナノチューブ、加水分解したナノチューブ、およびシラン処理したナノチューブの赤外線スペクトルを比較している。ヒドロキシル含有化学種とフルオロナノチューブとの反応後、3000〜3500cm-1のブロードバンドは、ナノチューブのサイドウォールに結合したOHの存在を示している。1095cm-1に現われた新たなバンドはC-O結合に帰属させることができ、C-Fピークの減少に対応している。多量のOH基が、水素結合およびシランとのありうる共有結合を生じる可能性をもたらす。水が存在すると、シランのアルコキシ基は極めて容易に加水分解されてシラノール含有化学種を形成する。オリゴマーへの縮合が先ず起こる。未反応のOH基は、ナノチューブのOH基と水素結合を形成することができる。ポストキュアー中に、ナノチューブと共有結合を形成することができ、このときスキーム3に示すように、水の消失が付随して起こる。メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランで処理したナノチューブに対するIRスペクトルを図25(c)に示す。1713cm-1と1636cm-1における強いピークの出現は、メタクリル基(ビニルエステル系やポリエステル系と相溶性がある)中に個別に存在する対応したC=OとC=Cの特徴を示している。シラン化ナノチューブのスペクトルから、OHバンドのはっきりした減少は、シラノール自体の重合形成、およびOHと1つのシラノール基との間の結合形成を示している。2つのシラノール基は縮合してSi-O-Siを形成することがある(B.Arkles,CHEMTECH,7,766,1977)。1105cm-1と1010cm-1におけるダブレットピークの出現は、それぞれSi-O-SiとSi-O-Cの非対称伸縮の存在を明確に示している(D.R.Anderson,Analysis of Silicones,A.L.Smith編,Wiley-Interscience,New York,1974,第10章)。シランポリマーがナノチューブに物理的に結びついているのではないということを確認するために、同じシラン処理手順を初期状態のナノチューブに適用した。IRは、シラン化学種の特徴を全く示さなかった。さらにモノアルコキシシランも使用したが、シラン自体が縮合しやすいために、あまり効果的ではないことがわかった。図27のラマンスペクトルにより、ナノチューブの官能化が確認された。シラン処理したナノチューブに対するピーク減衰(b)により、シランポリマーによるナノチューブのカバーもしくはラッピングが示された。
【0108】
種々のポリマー複合材料への応用に関してシラン処理の効率を明らかにするために、エポキシ用途やビニルエステル用途向けの他の幾つかの一般的なシランを使用してナノチューブを処理した。図26におけるシラン官能化SWNTのFTIRスペクトルは、対応するシランの結合を示した。たとえばアミノシランの場合、3260cm-1(弱い)と2800〜3000cm-1の領域において新たなピーク(N-H伸縮とC-H伸縮を示す)が観察された。シラノール反応により、OHバンドはほとんど消失した。シロキサンの鎖がより長くなるか又は分岐するにつれて、Si-O-Siの吸収は、よりブロードで且つより複雑に重なり合ったバンドになる。
【0109】
(実施例3)
本実施例は、官能化されていないCNTと比較した場合の、シラン官能化CNTにおいて見られる溶解性の増大を説明するためのものである。官能化ナノチューブは、エタノール溶液中においてはかなり膨潤し、ナノチューブバンドルの剥脱が起きていることを示している。シラン処理した単層ナノチューブサンプルは、アルコール、アセトン、DMF、および他の一般的な有機溶媒に対して大幅に改良された溶解性と分散性を示すことがわかった。これにより、相溶性のあるポリマーマトリックス中において、より小さなバンドルでの、そしてさらには個別のレベルでのより均一な分散が得られるはずである。図28は、シラン官能化SWNT(高濃度での暗色の均一溶液)と初期状態のSWNTをエタノール溶液中に2週間静置した後の目視比較を示している。初期状態のSWNTは、有機溶媒に対して実質的に不溶性である。シラン官能化SWNTのDMF溶液は、2ヶ月を超えても、沈殿を生じることなく安定状態のままである。SEMにより、シラン官能化SWNTはフルオロナノチューブと比較して、ナノチューブバンドルのサイズがより小さいことが確認された(図29)。より直接的な証拠を得るために、シラン処理したナノチューブを、高分解能透過型電子顕微鏡法を使用して観察し、画像を作成した。200メッシュのlacey formvar/carbon copperグリッド上に数滴のナノチューブエタノール溶液(濃度0.1mg/ml)を加え、次いでこのグリッドを一晩乾燥して溶媒を蒸発除去することによってTEMサンプルを作製した。図30のTEM画像は、分けられたナノチューブバンドルのほどき(unroping)を示しており、多くの個別のナノチューブ(直径が約1nm)を観察することができる。比較によれば、初期状態のSWNTバンドルは一般に10〜100の個別のナノチューブを有し、これらがファンデルワールス力によって互いに結びついている。この結果は、官能基が大きなバンドルを展開するのに役立ち、小さなバンドルまたは個別のナノチューブを形成する、ということを示している。ナノチューブほどきは、このようなナノチューブがポリマーマトリックス中に簡単に分散することを可能にし、またマトリックスからの組み込み移動(load transfer)を直接的に増大させることを可能にする。
【0110】
(実施例4)
本実施例は、本発明のCNT-ポリマー複合材料の動的機械的分析を説明するためのものである。複合材料用途に対する、ナノチューブの強化材としての役割は、マトリックスとナノチューブとの間の組み込み移動の程度に大きく依存する。エポキシ/ナノチューブ複合材料を幾つか作製し、従来の研究に記載の仕方(J.Zhu,J.Kim.H.Peng,J.L.Margrave,V.Khabashesku,E.V.Barrera,Nano Lett.2003,3,1107)と類似の仕方で機械的性質の特性決定を行った。しかしながら本実施例では、キュアーサイクルを12時間に延長した。試験した種々の材料は、単なるエポキシ、初期状態のSWNTとシラン添加剤を含んだエポキシ、1重量%の加水分解ナノチューブを含んだエポキシ、および1重量%のシラン官能化ナノチューブを含んだエポキシであった。ポリマーの機械的性質に及ぼす官能化ナノチューブの直接的な影響を動的機械的分析(DMA)〔材料の温度依存性特性(たとえば、貯蔵モジュラスE’、損失モジュラスE”、および損失tanδ)が得られる〕によって評価した。これらの動的特性は、充填材のフラクション、マトリックス中への分散性、および充填材とマトリックスとの間の接着性によって大きく影響される。動的機械的分析は、パーキンエルマー・パイリス・ダイヤモンド(Perkin-Elmer Pyris Diamond)DMA機器を使用して、1.0Hzの周波数にてデュアル・カンチレバー・ベンド方式(dual-cantilever bend mode)で行った。試験温度は、5℃/分の加熱速度にて25℃〜200℃の範囲であった。ナノチューブエポキシサンプルと単なるエポキシサンプルに対する動的E’曲線を図31(曲線a〜d)に示す。1重量%の官能化ナノチューブを組み込んだ複合材料は、単なるエポキシポリマー、および初期状態のナノチューブとシラン混合物を組み込んだ複合材料と比較して剛性の増大を示した。この結果は、シラン処理したナノチューブによる効率的な向上を示している。比較してみると、同じ量のシランと初期状態SWNTを直接エポキシに加えたときに、ガラス転移温度(損失tanδが最大に達する温度と定義される)低下した。これは、単にシランがエポキシを可塑化し、架橋度を低下させたからである。
【0111】
本明細書に挙げた全ての特許と刊行物を参照により本明細書に含める。言うまでもないが、上記の構造物や機能のうちの特定のもの、および上記実施態様の操作は、本発明を実施する上で必ずしも必要というわけではなく、単に代表的な実施態様の説明を完全にするために記載されている。さらに、言うまでもないことであるが、上記の特許および刊行物において記載されている特定の構造、機能、および操作は、本発明と組み合わせて実施することができるが、それらは実施に対して必須ではない。したがって理解しておかなければならないことは、本発明は、特許請求の範囲に記載の本発明の要旨を逸脱することなく、具体的に記載されているのとは別のやり方で実施することができる、という点である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】フルオロナノチューブとジアルコールとを反応させてヒドロキシル官能化CNTを生成させることができる幾つかの代表的な化学経路を示している。
【図2】アミノ末端化学成分がサイドウォールに結びついた状態のヒドロキシル官能化カーボンナノチューブ(3 g〜i)を形成させるための、フルオロナノチューブとアミノアルコール(2 g〜i)との間の反応を示している。
【図3】ポリマーマトリックスとガラス繊維を橋かけしているSWNTの概略図である。
【図4】アミン-シラン試剤によるガラス繊維のサイジングを示している概略図である。
【図5】フッ素化SWNTと、ガラス繊維上のアミノシラン官能価との間の化学結合を示している概略図である。
【図6】SWNT上の余分のフッ素部位と硬化剤との間の化学結合を示している概略図である。
【図7】ガラス繊維-シラン-SWNTとエポキシ樹脂(エポキシマトリックス中の)との間の化学結合を示している概略図である。
【図8】ガラス繊維-シラン-SWNTのSEM顕微鏡写真(左)とEDAX表面の分析結果(右)を示している。
【図9】3点曲げ試験後の破断面のSEM顕微鏡写真であって;一番上の画像は、表面上のそれぞれの化学構造を示しており、真ん中の画像は、破断した表面を示しており、一番下の画像は、ガラス繊維-シラン-SWNT-エポキシ界面を示しており;(a)は、いかなるシラン処理も行っていない標準的なサンプルであり、(b)は、シランだけで処理したサンプルであり、そして(c)は、シラン-SWNTで処理したサンプルである。
【図10】シランとガラス繊維との間の破断を示している破断破壊(fracture failure)の概略図である。
【図11】酸処理によるヒドロキシル基とカルボキシル基の導入を示している。
【図12】ヒドロキシル官能化SWNT(SWNT-OH)とアミノシラン(NH2-シラン)化学種との反応によって製造されるNH2-Si-SWNTの概略図である。
【図13】カルボキシル官能化SWNT(SWNT-COOH)とNH2-シランとの反応によって製造されるNH2-Si-SWNTの概略図である。
【図14】(a)HO-SWNT上への、および(b)HOOC-SWNT上へのアミン-シラン(アミノシラン)付着のメカニズムを示している。
【図15】アミノシラン官能化SWNT(SWNT-シラン-アミン)のTGAサーモグラムを示している。
【図16】SWNT-OHとエポキシ-シランとの反応によって製造されるエポキシシラン官能化SWNT(エポキシド-Si-SWNT)の概略図である。
【図17】SWNT-COOHとエポキシ-シランとの反応によって製造されるエポキシド-Si-SWNTの概略図である。
【図18】エポキシド-シランと(a)HO-SWNTとの、およびエポキシド-シランと(b)HOOC-SWNTとのカップリングのメカニズムを示している。
【図19】(a)未処理のSWNT、(b)SWNT-Si-エポキシド、(c)SWNT-Si-アミンD(ジエトキシ)、および(d)SWNT-Si-アミンB(トリエトキシ)のSEM顕微鏡写真を示している。
【図20】ハイブリッドSWNT-Si-NH2/SWNT-Si-エポキシドの形成の概略図である。
【図21】SWNT-Si-アミンとエポキシプレポリマーとの反応の概略図である。
【図22】SWNT-Si-エポキシドと硬化剤との反応の概略図である。
【図23】フッ素化SWNTとリチウムアルコキシドとの反応の概略図である。
【図24】ビニル重合可能な部分を含有するシラン化学種とヒドロキシル官能化SWNTとの間の反応を示している。
【図25】フルオロナノチューブ、加水分解ナノチューブ、およびシラン処理したナノチューブの赤外線スペクトルの比較を示しており、線図はそれぞれ、a)F-SWNT、b)SWNT-R-OH、およびc)メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランで処理されたSWNTに関する。
【図26】シラン官能化SWNTの赤外線スペクトルを示しており、線図はそれぞれ、(a)3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン[CH2=CH(C6H5)CH2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]、(b)N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン[H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]、および(c)(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシエトキシ-シラン[CH2-(O)-CHCH2O(CH2)3Si(OCH3)3]による官能化に関する。
【図27】(a)SWNT-ROHと(b)シラン処理したSWNTのラマンスペクトルを示している。
【図28】初期状態のSWNT(左)のエタノール中への分散(左)、およびシラン処理したSWNTのエタノール中への分散(右)を示している。
【図29】(a)F-SWNTと(b)のビニルシラン-SWNTのSEM画像を示している。
【図30】(a)初期状態のSWNTと(b)官能化SWNTのTEM画像(縮尺目盛り20nm)を示しており、ナノチューブバンドルの解きが達成されている(個々のSWNTに注意)。
【図31】エポキシ/SWNT複合材料の貯蔵弾性率(E’)対温度のプロットを示している:(a)SWNTなし、(b)1重量%の初期状態SWNTとシラン添加剤、(c)1重量%のヒドロキシル官能化SWNT、および(d)1重量%のシラン官能化SWNT。
【技術分野】
【0001】
本発明は、海軍研究事務所(認可番号N00014-03-1-0296)、ロバートA.ウェルチ財団(認可番号C-1494)、および(米)航空宇宙局(NASA協力契約NCC-1-02038)からの支援で行われた。
(関連出願へのクロスリファレンス)
【0002】
本出願は、2003年7月28日付け出願の米国仮特許出願第60/490,664号に対する優先権を特許請求する。
【0003】
本発明は、一般にはカーボンナノチューブに関し、具体的には、カーボンナノチューブを有機シランで官能化する方法、およびこのような官能化されたナノチューブを含むポリマー複合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
カーボンナノチューブ(CNT)〔複数の同心外殻を含み、多層カーボンナノチューブ(MWNT)と呼ばれる〕は、1991年にIijimaによって発見された(Iijima,S.Nature 1991,354,56)。この発見に続いて、単層カーボンナノチューブ(SWNT)〔それ自体に対して巻かれた単一のグラフェンを含む〕が、遷移金属をドーピングした炭素電極を使用するアーク放電法によって合成された(Iijima,S.;Ichihashi,T.Nature 1993,363,603;およびBethune,D.S.,Kiang,C.H.;de Vries,M.S.;Gorman,G.;Savoy,R.;Vasquez,J;Beyers,R.Nature 1993,363,605)。これらのカーボンナノチューブ(特にSWNT)は、ユニークな機械的特性、電気的特性、および熱的特性を有し、こうした特性により、カーボンナノチューブは多種多様な用途に対して魅力的な材料となっている。
【0005】
カーボンナノチューブは、モジュラス、強度、およびフレキシビリティが極めて高く、そして軽量であることから、次世代の先端複合材料を開発する上での有望な強化用材料であると考えられている(Calvert,P.Nature,1999,399,210;Thostenson,Composite Science and Technology.2001,61,1899-1912;Maruyama,B.,Alam,K.SAMPE Journal,“Carbon Nanotubes and Nanofibers in Composites materials”,2002,38(3),59-70)。複合材料に対して向上が期待される点としては、強度と剛性の増大、靭性と剪断強さの向上、他のZ軸特性、および導電性と熱伝導性の向上、などがある。カーボンナノチューブを加えることによってポリマーナノ複合材料を進歩させるべく、多大の努力が払われている。しかしながら、ナノチューブの並外れた特性をうまく利用するためには、マトリックスからナノチューブへの効果的な組み込み移動(load transfer)が存在しなければならない(L.S.Schadler,S.C Giannaris,P.M.Ajayan,“Load Transfer in Carbon Nanotube Epoxy Composites”,Appl.Phys.Lett.,1998,73(26),3842-3844;P.M.Ajayan and L.S.Schadler,“Single-walled carbon nanotube type-Polymer Composite:Strength & Weakness”,Adv.Mater.,2000,12(10),750-753;Lau,K.T.,“Effectiveness of using carbon nanotubes as nano-reinforcements for advanced composite structures”,Carbon,2002,40,1605-6)。これまでは、ナノチューブとポリマーとの間の相互作用が弱いことから、複合材料におけるナノチューブの強化用としての役割はまだ極めて限定されていた。ナノチューブを均一に分散させることも、最適の強化効果を得るために必要な条件である。ナノチューブはバンドルとして存在する傾向があって、凝集体として絡み合っており、したがってポリマーマトリックス中の分散状態がよくない。ファンデルワールス力は幾らかの物理的相互作用をもたらすけれども、マトリックスからより小さなバンドルへの、そして理想的には個々のナノチューブへの最適の組み込み移動がなされなければならない。したがって、均一な分散を果たすためにナノチューブのロープを解くこと(デバンドリング)が、依然として複合材料としての用途に対する課題となっている。
【0006】
単層カーボンナノチューブ(SWNT)の化学的処理(特にサイドウォール官能化)が最近、基本的かつ技術的な関心(特に、このようなSWNTのデバンドリングを行うことに対して)を増大させている分野となっている。直接フッ素化とそれに続く誘導体化;ラジカルやカルベンやナイトレンの付加、および1,3-双極性付加や求電子付加;芳香族分子やポリマーとのファンデルワールス相互作用による変性;を含めて、SWNTの共有結合と非共有結合に関するサイドウォール化学(sidewall chemistry)が報告されている。Khabashesku,V.N.;Margrave,J.L.“Chemistry of Carbon Nanotubes”in Encyclopedia of Nanoscience and Nanotechnology, Ed.S.Nalwa,American Scientific Publishers,2004,Vol.1,pp.849-861,および該文献中の参照文献;Khabashesku,V.N.;Billups,W.E.;Margrave,J.L.Acc.Chem.Res.,2002,35,1087;Bahr,J.L.;Tour,J.M.J.Mater.Chem.2002,12,1952;Georgakilas,V.et al.,“Organic Functionalization of Carbon Nanotubes”,J.Am.Chem.Soc.,2002,124(5),760-761;を参照のこと。官能化されたSWNTの、共有結合的に一体化されたポリマー複合物を作製するための強化材としての用途(Barrera,E.V.JOM,2000,52,38;Zhu,J.;Kim,J.;Peng,H.;Margrave,J.L.;Khabashesku,V.N.;Barrera,E.V.Nano Lett.2003,3,1107;Zhu,J.;Peng,H.;Rodriguez-Macias,F.;Margrave,J.L.;Khabashesku,V.N.;Imam,M.A.;Lozano,K.;Barrera,E.V.Adv.Funct.Mater,2004,14(7),643-648)および標的ドラッグデリバリーのためのビヒクルとしての用途が、最近報告されている。「Pantarotto,D.;Partidos,C.D.;Graff,R.;Hoebeke,J.;Brind,J.P.;Prato,M.;Bianco,A.J.Am.Chem.Soc.2003,125,6160」を参照のこと。実際、これらの研究により、共有結合もしくは水素結合の形成を通して高い結合親和力と結合選択性をもたらすことができる有機官能基によってSWNTを誘導体化する必要があることが確認された。これらの研究はさらに、加工適性(特に生物医学的な用途において)を向上させるには、親水性置換基(たとえばヒドロキシル基)を末端に有する化学成分を使用して、共有結合によるサイドウォール官能化を果たすことが最も重要である、ということも示している。
【0007】
最近の実験的研究(Khabashesku,V.N.;Billups,W.E.;Margrave,J.L.Acc.Chem.Res.,2002,35,1087)によれば、SWNTの直接フッ素化によって製造されるフルオロナノチューブを、フッ素の求核置換反応を通してサイドウォール官能化ナノチューブ誘導体を製造するための多機能前駆体として使用することができる、ということを示している。フッ素化カーボンナノチューブを中間体として使用して、ヒドロキシル官能価をCNTに(そして特にSWNTに)導入する簡単な方法も示されており、これにより極性溶媒中へのカーボンナノチューブの分散が可能となっている(L.Zhang et al.,Chem.Mater.2004,16,2055-2061)。このような官能化CNTを、本明細書では“ヒドロキシル官能化CNT”または“ヒドロキシル官能化ナノチューブ”と呼ぶ。
【0008】
最近の研究は、官能化ナノチューブを複合材料における強化材として使用する上での多くの可能性を示しており、このような強化材は主として、向上した相互作用と界面結合から生じる改良された組み込み移動(load transfer)から誘導される(J.Zhu,H.Peng,F.Rodriguesz-Macias,J.L.Margrave,V.N.Khabashesku,A.M.Imam,K.Lozano,E.V.Barrera,Adv.Fun.Mater.,2004,14(7),643-648)。特に、このようなヒドロキシル官能化CNTを、重合可能または架橋可能な特定の化学成分をCNT上に導入するためのその後の反応に使用することができれば、このような官能化CNTを使用して、多種多様なポリマー系を含んだ高性能複合材料を作製することができる。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)〔特に、単層カーボンナノチューブ(SWNT)〕を有機シラン化学種で官能化する方法に関し、このような官能化により、先端ポリマー複合材料の製造が可能となる。本発明はさらに、官能化CNT、このような官能化CNTを使用して製造される先端CNT-ポリマー複合材料、およびこのような先端CNT-ポリマー複合材料を製造する方法に関する。
【0010】
一般には、本明細書に記載の官能化はCNTのサイドフォールに対して起こるが、さらに、あるいはこれとは別に、ナノチューブの末端に対して起こる場合もある。一般に、CNTを有機シラン化学種で官能化する方法は、1)フッ素化CNTを供給する工程;2)フッ素化CNTと1種以上の化学種とを反応させて、末端ヒドロキシル基を含んだ化学成分で官能化されたCNT(ヒドロキシル官能化CNT)を生成させる工程;および3)ヒドロキシル官能化CNTと、“ポリマーと相互作用する(polymer-interacting)”官能性部分を有する有機官能化シラノール(加水分解された有機アルコキシシラン)とを反応させて、ポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTを生成させる工程、このときポリマーと相互作用するこのような有機シラン官能化CNTは、ポリマーホスト物質と化学的に相互作用することができる;を含む。
【0011】
CNTを上記のような仕方で官能化することによって、2つの利点が得られる。第一に、官能化ナノチューブは、繊維(他のCNT)とマトリックス(ポリマー)の両方に対し、化学結合によって強い結びつきをもたらすことができる。ポリマーに対して相溶性のある有機官能性シランを使用することで、ポリマーマトリックス中への官能化ナノチューブの組み込みを達成することができる。第二に、ナノチューブに対する高レベルのロープのほどきを、そして一般的な有機溶媒に対して比較的溶解性のある物質の形成を達成することができ、これによってポリマーマトリックス中へ均一に分散させうる可能性がもたらされる。
【0012】
幾つかの実施態様においては、ポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTとポリマー前駆体物質(モノマー)とを混合して重合可能な混合物を形成させる。引き続き重合を行うことで、先端CNT-ポリマー複合材料が得られる。
【0013】
幾つかの実施態様においては、ポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTを熱可塑性ポリマー物質中にブレンドする。適切な官能化により、ポリマーホストとの改良されたブレンド適性、およびポリマーホストとの起こりうる共有結合もしくは他の相互作用が得られる。
【0014】
幾つかの実施態様においては、CNTのロープが解かれるか、またはごくわずかのCNTを含んだ小さなロープとして存在する。
【0015】
幾つかの実施態様においては、本発明の1つ以上の処理方法が、複合ポリマー系からフッ素を取り除くのに役立つ。
【0016】
幾つかの実施態様においては、ポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTに対し、以下の方法の1つ以上による特性決定がなされる:フーリエ変換赤外(FTIR)分光法、ラマン分光法、走査電子顕微鏡法(SEM)、および透過電子顕微鏡法(TEM)。
【0017】
本発明の方法によって製造されるCNT-ポリマー複合材料は、DMA分析により機械的特性が向上していることが示されている。
【0018】
これまでは、以下に記載の本発明の詳細な説明がより良く理解できるよう、本発明の特徴をどちらかと言えば大まかに説明してきた。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴と利点を以下に記載する。
【0019】
本発明と本発明の利点をより完全に理解するために、添付の図面を参照しつつ説明を行う。
【0020】
図1は、フルオロナノチューブとジアルコールとを反応させてヒドロキシル官能化CNTを生成させることができる幾つかの代表的な化学経路を示している。
【0021】
図2は、アミノ末端化学成分がサイドウォールに結びついた状態のヒドロキシル官能化カーボンナノチューブ(3 g〜i)を形成させるための、フルオロナノチューブとアミノアルコール(2 g〜i)との間の反応を示している。
【0022】
図3は、ポリマーマトリックスとガラス繊維を橋かけしているSWNTの概略図である。
【0023】
図4は、アミン-シラン試剤によるガラス繊維のサイジングを示している概略図である。
【0024】
図5は、フッ素化SWNTと、ガラス繊維上のアミノシラン官能価との間の化学結合を示している概略図である。
【0025】
図6は、SWNT上の余分のフッ素部位と硬化剤との間の化学結合を示している概略図である。
【0026】
図7は、ガラス繊維-シラン-SWNTとエポキシ樹脂(エポキシマトリックス中の)との間の化学結合を示している概略図である。
【0027】
図8は、ガラス繊維-シラン-SWNTのSEM顕微鏡写真(左)とEDAX表面の分析結果(右)を示している。
【0028】
図9は、3点曲げ試験後の破断面のSEM顕微鏡写真であって;一番上の画像は、表面上のそれぞれの化学構造を示しており、真ん中の画像は、破断した表面を示しており、一番下の画像は、ガラス繊維-シラン-SWNT-エポキシ界面を示しており;(a)は、いかなるシラン処理も行っていない標準的なサンプルであり、(b)は、シランだけで処理したサンプルであり、そして(c)は、シラン-SWNTで処理したサンプルである。
【0029】
図10は、シランとガラス繊維との間の破断を示している破断破壊(fracture failure)の概略図である。
【0030】
図11は、酸処理によるヒドロキシル基とカルボキシル基の導入を示している。
【0031】
図12は、ヒドロキシル官能化SWNT(SWNT-OH)とアミノシラン(NH2-シラン)化学種との反応によって製造されるNH2-Si-SWNTの概略図である。
【0032】
図13は、カルボキシル官能化SWNT(SWNT-COOH)とNH2-シランとの反応によって製造されるNH2-Si-SWNTの概略図である。
【0033】
図14は、(a)HO-SWNT上への、および(b)HOOC-SWNT上へのアミン-シラン(アミノシラン)付着のメカニズムを示している。
【0034】
図15は、アミノシラン官能化SWNT(SWNT-シラン-アミン)のTGAサーモグラムを示している。
【0035】
図16は、SWNT-OHとエポキシ-シランとの反応によって製造されるエポキシシラン官能化SWNT(エポキシド-Si-SWNT)の概略図である。
【0036】
図17は、SWNT-COOHとエポキシ-シランとの反応によって製造されるエポキシド-Si-SWNTの概略図である。
【0037】
図18は、エポキシド-シランと(a)HO-SWNTとの、およびエポキシド-シランと(b)HOOC-SWNTとのカップリングのメカニズムを示している。
【0038】
図19は、(a)未処理のSWNT、(b)SWNT-Si-エポキシド、(c)SWNT-Si-アミンD(ジエトキシ)、および(d)SWNT-Si-アミンB(トリエトキシ)のSEM顕微鏡写真を示している。
【0039】
図20は、ハイブリッドSWNT-Si-NH2/SWNT-Si-エポキシドの形成の概略図である。
【0040】
図21は、SWNT-Si-アミンとエポキシプレポリマーとの反応の概略図である。
【0041】
図22は、SWNT-Si-エポキシドと硬化剤との反応の概略図である。
【0042】
図23は、フッ素化SWNTとリチウムアルコキシドとの反応の概略図である。
【0043】
図24は、ビニル重合可能な部分を含有するシラン化学種とヒドロキシル官能化SWNTとの間の反応を示している。
【0044】
図25は、フルオロナノチューブ、加水分解ナノチューブ、およびシラン処理したナノチューブの赤外線スペクトルの比較を示しており、線図はそれぞれ、a)F-SWNT、b)SWNT-R-OH、およびc)メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランで処理されたSWNTに関する。
【0045】
図26は、シラン官能化SWNTの赤外線スペクトルを示しており、線図はそれぞれ、(a)3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン[CH2=CH(C6H5)CH2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]、(b)N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン[H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]、および(c)(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシエトキシ-シラン[CH2-(O)-CHCH2O(CH2)3Si(OCH3)3]による官能化に関する。
【0046】
図27は、(a)SWNT-ROHと(b)シラン処理したSWNTのラマンスペクトルを示している。
【0047】
図28は、初期状態のSWNT(左)のエタノール中への分散(左)、およびシラン処理したSWNTのエタノール中への分散(右)を示している。
【0048】
図29は、(a)F-SWNTと(b)のビニルシラン-SWNTのSEM画像を示している。
【0049】
図30は、(a)初期状態のSWNTと(b)官能化SWNTのTEM画像(縮尺目盛り20nm)を示しており、ナノチューブバンドルの解きが達成されている(個々のSWNTに注意)。
【0050】
図31は、エポキシ/SWNT複合材料の貯蔵弾性率(E’)対温度のプロットを示している:(a)SWNTなし、(b)1重量%の初期状態SWNTとシラン添加剤、(c)1重量%のヒドロキシル官能化SWNT、および(d)1重量%のシラン官能化SWNT。
【0051】
本発明は、官能性部分をカーボンナノチューブに結びつけるために、有機シラン化学種を使用してカーボンナノチューブ(CNT)を官能化する方法、およびポリマーマトリックスと共有結合的な相互作用もしくは他の相互作用を行うことができる物品に関する。本発明はさらに、ポリマーと相互作用するこのような有機シラン官能化CNTを含んだカーボンナノチューブ-ポリマー複合材料、およびこのようなCNT-ポリマー複合材料を製造する方法に関する。
【0052】
一般には、本明細書に記載の官能化は、CNTのサイドウォールに対して起こるが、これとは別に、ナノチューブの末端において起こることもある。一般に、CNTを有機シラン化学種で官能化する方法は、1)フッ素化CNTを供給する工程;2)フッ素化CNTと1種以上の化学種とを反応させて、末端ヒドロキシル基を含んだ化学成分で官能化されたCNT(ヒドロキシル官能化CNT)を生成させる工程;および3)ヒドロキシル官能化CNTと、“ポリマーと相互作用する”官能性部分を有する有機官能化シラノールとを反応させて、ポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTを生成させる工程、このようなポリマーと相互作用する有機シラン官能化CNTは、ポリマーホスト材料と化学的相互作用を行うことができる;を含む。
【0053】
有機シランは、繊維とポリマーマトリックスとの界面を改良するために、繊維強化複合材料に対して広く使用されている。シランカップリング剤は、有機物質と無機物質との間にじょうぶな結合を形成する能力を有し、ほとんどが1個の有機置換基と1〜3個の加水分解可能な置換基を有する。シランカップリング剤は、最初に加水分解されてシラノールを生成し、このシラノールが、一方の側において無機物質とシロキサン結合を形成する。他方の側において、官能基(たとえば、ビニル、アミノ、クロロ、エポキシ、およびメタクリルオキシ等)が適切なポリマーマトリックスと容易に反応して化学結合を形成する。Velasco-Santosらは、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを使用した、多層カーボンナノチューブ(MWNT)に対する有機シラン処理について報告している(Velasco-Santos,C,Mrtinez,A.L,Lozada-Cassou,M.Alvarez-Castillo,A.およびCastano,V.M.Nanotechnology,13(2002),495-498)。該研究においては、最初に酸化プロセスを施して、ナノチューブ表面上におけるヒドロキシル基(グラフェンシートを破壊する場合と同様)とオープンエンド(open-ends)を生成させた。引き続きシラン化プロセスを施して官能化ナノチューブを生成させた。本発明の場合は、特定の官能基を、ポリマー複合材料用途向けのナノチューブに結びつけることができるように(カーボンナノチューブを構成している“巻かれた”グラフェンシートを破壊することなく)、ヒドロキシル基末端化学成分による官能化に基づいたサイドウォール官能化法を開発した(L.Zhangら,Chem.Mater.,2004,16,2055-2061)。
【0054】
本発明によるカーボンナノチューブ(CNT)としては、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、2層カーボンナノチューブ、バッキーチューブ、フラーレンチューブ、管状フラーレン、グラファイトフィブリル、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。このようなカーボンナノチューブは、アーク放電法(Ebbesen,Annu.Rev.Mater.Sci.1994,24,235-264)、レーザーオーブン法(Thessら,Science 1996,273,483-487)、火炎合成法(Vander Walら,Chem.Phys.Lett.2001,349,178-184)、および化学蒸着法(米国特許第5,374,415号)(これらに限定されない)を含めたいかなる公知の方法によっても製造することができ、このとき担持された金属触媒であっても(Hafnerら,Chem.Phys.Lett.1998,296,195-202)、担持されていない金属触媒であっても(Chengら,Chem.Phys.Lett.1998,289,602-610;Nikolaevら,Chem.Phys.Lett.1999,313,91-97)、またはこれらの組み合わせであっても使用することができる。実施態様に応じて、CNTをフッ素化する前に、および/または、CNTに本発明の化学のいずれかを施す前に、CNTに対し1つ以上のプロセシング工程を施すことができる。幾つかの実施態様においては、キラリティー、導電性、熱伝導性、直径、長さ、層の数、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される特性に基づいてCNTを分けることができる。「O’Connellら,Science 2002,297,593-596;Bachiloら,Science 2002,298,2361-2366;Stranoら,Science 2003,301,1519-1522」を参照。幾つかの実施態様においては、CNTを精製した。代表的な精製法としては、Chiangらによる方法(Chiangら,J.Phys.Chem.B2001,105,1157-1161;Chiangら,J.Phys.Chem.B2001,105,8297-8301)があるが、これらに限定されない。幾つかの実施態様においては、CNTを切断処理によって切断した。「Liuら,Science 1998,280,1253-1256;Guら,Nano Lett.2002,2(9),1009-1013」を参照。幾つかの実施態様においては、CNTが個別のナノチューブとして存在し、このとき他の実施態様においては、CNTが、個別のCNTのロープまたはバンドルとして存在する。“CNT”と“ナノチューブ”という用語は、ここでは同意語として使用されている。
【0055】
幾つかの実施態様においては、フッ素化カーボンナノチューブ(“フルオロナノチューブ”)(一般には、約C1F0.01〜約C2Fの化学量論を含む)とジアルコールのモノ金属塩MO-R-OH〔式中、Mは金属であり、Rは、炭化水素(たとえば-(CH2)n-)、他の有機鎖、および/または環構造単位である〕とを反応させる。このような実施態様においては、-O-R-OHがナノチューブ上の-Fと置き換わり、フッ素がMFとして脱離する。一般には、フルオロナノチューブが分散されている1種以上のジアルコールにMOHを加えることによって、その場でこのようなモノ金属塩を形成させる。このようなヒドロキシル官能化CNTの製造は、“Sidewall Functionalization of Carbon Nanotubes with Hydroxyl-Terminated Moieties”(2004年6月16日付け出願)(代理人整理番号11321-P073WO)と題する、本発明の譲受人に譲渡された同時係属中の国際特許出願、および「L.Zhangら,Chem.Mater.,2004,16,2055-2061」に詳細に説明されている。
【0056】
ジアルコールは、フルオロナノチューブを分散させることができて、フルオロナノチューブが適切な条件下で反応するようなジアルコールであれがいかなるジアルコールであってもよい。代表的なジアルコールを使用する幾つかの代表的な化学経路が図1Aに示されており、フルオロナノチューブ1が、ジアルコール2a-eのいずれかとMOH(式中、Mは、Li、Na、またはKのいずれかである)とを反応させることによって得られるジアルコールのモノ金属塩と反応して、官能化された生成物3a-eを生成する。他の代表的なジアルコールとしてはビスフェノールAがある。
【0057】
図1Bに示すように、上記の化学を多価アルコール(multi-alcohols)に対しても拡張することができ、フルオロナノチューブ1が、多価アルコール2fとMOH(式中、Mは、Li、Na、またはKのいずれかである)とを反応させることによって得られる多価アルコールR(OH)nのモノ金属塩と反応して、官能化された生成物3fを生成する。したがって上記の説明を、一般式MOR(OH)n-1のモノ金属塩のいずれかとフルオロナノチューブとの反応に拡張することができる。この場合も、Rは、官能化用化学成分のための主鎖として機能することができる炭化水素、他の有機鎖、および/または環構造単位である。
【0058】
幾つかの実施態様においては、フルオロナノチューブとアミノアルコール(たとえば、H2N-R-OHのタイプ)とを反応させ、このとき-N(H)-R-OHがナノチューブ上の-Fと置き換わり、フッ素がHFとして脱離する。一般に、このような実施態様においては、フルオロナノチューブを適切なアミノアルコール中に分散して反応混合物を形成させる;反応混合物にピリジン触媒を加える;そして[反応混合物+触媒]を反応させて、アミノ(アミン)末端部分を有する官能化カーボンナノチューブを形成させる。幾つかの実施態様においては、超音波処理を使用してフルオロナノチューブの分散を容易にし、および/または、ミキシングを起こさせる。これらの実施態様または他の実施態様においては、これとは別のミキシング操作を使用することができる。反応は一般に、約0.5時間〜約5時間の範囲の継続時間にて、約50℃〜約150℃の範囲の温度で行われる。前述したように、このようなヒドロキシル官能化CNTの製造は、“Sidewall Functionalization of Carbon Nanotubes with Hydroxyl-Terminated Moieties”(2004年6月16日付け出願)(代理人整理番号11321-P073WO)と題する、本発明の譲受人に譲渡された同時係属中の国際特許出願、および「L.Zhangら,Chem.Mater.,2004,16,2055-2061」に詳細に説明されている。
【0059】
アミノアルコールは、フルオロナノチューブを分散させることができて、フルオロナノチューブが適切な条件下で反応するようなアミノアルコールであれがいかなるアミノアルコールであってもよい。代表的なアミノアルコールを使用する幾つかの代表的な化学経路が図2に示されており、フルオロナノチューブ1がアミノアルコール2g-iと反応して、アミノ末端化学成分がフルオロナノチューブのサイドウォールに結合した官能化カーボンナノチューブ3g-iを形成する。
【0060】
いったんヒドロキシル化されると、CNTは、一般式HO-Si(R1)(R2)(R3)〔式中、R1〜R3のそれぞれは、水素(H)、ヒドロキシル(OH)、チオール(SH)、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、アミン、アミド、エステル、エーテル、エポキシ、シリル、ゲルミル、スタニル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択することができる官能性部分である〕のシラノール化学種と反応することができる。一般には、R1〜R3の少なくとも1つが、共有結合または他のタイプの結合(たとえば、水素結合、ファンデルワールス力、および双極子間相互作用など)を介してある種のポリマーマトリックスと相互作用することができる“ポリマーと相互作用する”部分である。
【0061】
幾つかの実施態様においては、このようなシラノール化学種は、RO-Si(R1)(R2)(R3)〔式中、Rは炭化水素官能価(a hydrocarbon functionality)である〕のタイプのシロキサン化学種の加水分解によって形成され、このとき
RO-Si(R1)(R2)(R3) + H2O → HO-Si(R1)(R2)(R3) + ROH
【0062】
このようなシラノール化学種は、下記の反応スキーム1にしたがってヒドロキシル官能化CNTと反応する。
【化1】
【0063】
上記の化学をここでは“シリル化(silation)”と呼び、このようなシリル化の生成物をここではシラン官能化CNTと呼ぶ。一般には、ヒドロキシル部分を有するいかなるCNTも、このシリル化工程に使用することができる。
【0064】
さらに、あるいはこれとは別に、幾つかの実施態様においては、クロロシラン化学種をシラノールの代わりに使用することができる。一般には、スキーム2に示すように、このような反応を容易にするためにピリジン等の触媒が使用される。
【化2】
【0065】
シラン官能化CNT上のR1〜R3の少なくとも1つがポリマーと相互作用する部分である、という場合の幾つかの実施態様においては、シラン官能化CNTと適切なポリマー前駆体とを混合し、引き続きその場でシラン官能化CNTと重合させる。ポリマー前駆体がエポキシ前駆体であるという場合の幾つかの実施態様においては、R1〜R3の少なくとも1つが、アミン、エポキシ環、カルボン酸、チオール、イソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、これにより硬化後に得られるエポキシマトリックスとの共有結合的な一体化がなされる。
【0066】
幾つかの実施態様または他の実施態様においては、シラン官能化CNT上のR1〜R3の少なくとも1つが、アルケン、アルキン、ジエン、チオール、イソシアネート、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される官能価を含んだポリマーと相互作用する部分である。幾つかのこのような実施態様においては、シラン官能化CNTと、炭素-炭素二重結合もしくは炭素-炭素三重結合を含んだポリマー前駆体とを混合する。このようなポリマー前駆体としては、スチレン、ビニルエステル、イソプレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ポリエステル、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。次いでこのような混合物をその場で重合し、シラン官能化CNTと生成するポリマーとの共有結合的な相互作用を得る。このような重合は一般に、フリーラジカル(たとえばAIBN開始剤による)、カチオン、アニオン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される重合メカニズムによる。幾つかの実施態様においては、このような重合は、光、触媒、熱、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって開始される。シラン官能化CNTに組み込むための代表的なポリマー系は、ビニルエステル、エポキシ化合物、およびポリエステルである。
【0067】
幾つかの実施態様においては、シラン官能化CNTを熱可塑性材料中にブレンドする。適切な熱可塑性材料としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。
【0068】
ポリマーと相互作用する部分を含んだシラン官能化CNTとポリマー化学種とを混合するという場合の実施態様においては、シラン官能化CNTとポリマーマトリックスとの間に、共有結合、および/または、水素結合、ファンデルワールス力、双極子間相互作用、そしてこれらの組み合わせからなる群から選択される相互作用を含めた、ポリマー相互作用(polymer interaction)が存在する。このような実施態様においては、CNTは一般に、得られる複合材料中に約0.1重量%〜約10重量%の範囲の量にて存在する。このような実施態様においては、CNTは一般に、官能化されていないCNTの場合には不可能である程度にまでデバンドルされている(展開されている)。さらに、本明細書に記載のシラン化学は、このような化学を通してCNTに付け加えることができる、ポリマーと相互作用する部分の多様性によって、このような展開されたCNTを一体化することができるシステムの範囲を広げる。
【0069】
幾つかの実施態様においては、本発明の方法は、繊維強化ポリマー(FRP)複合材料が組み込まれる。FRP複合材料の製造法は一般に、モールド中に繊維強化材を配置すること、次いで硬化後に材料が最終部品に造形できるように、繊維に未硬化のポリマーを含浸させることを含む。ナノチューブ/繊維強化ポリマー複合材料を製造するためには、先ず、乾燥した繊維強化材をナノチューブでオーバーコートし、次いで標準的なレイアップ・樹脂注入プロセシングを使用して複合材料を製造する。この方法を使用すると、樹脂中にナノチューブを直接混合することから生じる大幅な粘度増大が避けられ、したがってFRP複合材料の製造に対して、工業的に広く使用されている樹脂トランスファー成形法や注入プロセシングが容易になる。本出願者らは、真空樹脂トランスファー成形法(VARTM)、圧縮成形法、および真空バッギングプロセシング(vacuum bagging processing)を使用して、ガラス繊維織物が組み込まれたナノチューブ(たとえばSWNT)/強化FRP複合材料を製造した。この方法はさらに、FRP複合材料を製造するための他のほとんどの成形法〔たとえば、ウェットレイアップ法、吹き付け成形法、プレプレグ法、オートクレーブ法、および従来の樹脂トランスファー成形(RTM)法とその派生的プロセシング[たとえば、シーマン複合樹脂射出成形法(SCRIMP)、ダブルチャンバー式真空樹脂トランスファー成形(DCVRTM)、および構造反応射出成形(SRIM)等]〕に対しても適している。
【0070】
上記のようなFRP技術を使用して、本出願者らは、エポキシ樹脂システム、ビニルエステル樹脂システム、およびビスマレイミド樹脂システムを組み込んだナノチューブ/ガラス繊維複合材料を加工した。このナノチューブオーバーコーティング法は、他のいかなる熱硬化性樹脂システム(たとえばポリエステルシステム)に対しても適用することができる。適切な強化材としては、不連続繊維、連続繊維、クレー、ガラス繊維布帛、炭素繊維、グラファイト布帛、ケブラー布帛、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。強化材は、織布の形態であっても、不織布(たとえばマット)の形態であっても、あるいはチョップトファイバーの形態であってもよい。
【0071】
FRPが関与する上記実施態様の幾つかにおいては、ナノチューブの混合物(1種以上の溶媒中に分散)を織布またはマットの表面上にスプレー付着させるのに、そして最近では、FRP複合材料を製造する上での成形法を簡単にするために、スプレーアップ法(a spray-up process)が使用されている。溶媒を蒸発させた後、ナノチューブを、均一な分布状態にて、あるいは所定の配置にて繊維織目の表面上にオーバーコートのままにしておく。団結して複合材料にすると、ナノチューブは、積層複合材料構造物の特性(たとえば、靭性、層間剪断強度、および圧縮強度など)を向上させるための二次的な強化材として機能する。
シラン官能化CNT/ポリマー/ガラス繊維複合材料
【0072】
本発明はさらに、シラン官能化CNT/ポリマー/ガラス繊維複合材料、およびこうした複合材料の製造法に関する。このような複合材料は一般に、1)CNT;2)繊維強化材;および3)ポリマーを含み、このときCNTが、繊維強化材とポリマーとを化学的または物理的に橋架けするブリッジとして機能する。
【0073】
このような複合材料の製造法は一般に、1)繊維強化材を供給する工程;2)繊維強化材にCNTを加えてCNT被覆繊維を形成させる工程;および3)CNT被覆繊維にポリマー物質を接触させて、CNTが、繊維強化材とポリマーとを化学的または物理的に橋架けするブリッジとして機能する、という複合材料を形成させる工程;を含む。
【0074】
一般には、これらの実施態様において使用されるCNTはSWNTであるが、MWNTやさまざまな種類の繊維が用いられるバリエーションも使用することができる。
【0075】
幾つかの実施態様においては、強化用繊維をCNTで被覆するのに初期湿潤法が使用される。この方法は一般に、CNTを溶媒中に分散すること、繊維を加えること、および溶媒を除去して、CNTで被覆された強化用繊維を生成させることを含む。幾つかの実施態様においては、CNTを官能化して、強化用繊維に共有結合させる。幾つかの実施態様においては、CNTが、強化用繊維のためのサイジング剤として使用される。幾つかの実施態様においては、このような“サイジング”は、初期状態の繊維に対して、または最初のサイジング剤が除去された場合の繊維に対してなされる。
【0076】
これらの実施態様のうちの幾つかにおいては、分散を改良するための方法として、CNT(たとえばSWNT)を、最初にポリマーマトリックス中にではなく繊維強化材(たとえばガラス繊維)上に直接導入する。このような実施態様においては、図3に示すように、シラン官能化CNTを最終的にポリマーマトリックスと繊維強化材の両方に化学的に相互連結(結合)させ、このときシラン官能化SWNTが、ガラス繊維とエポキシマトリックスとの間の化学的“ブリッジ”として機能する。このような実施態様においては、粘度制御と溶媒が関与しないプロセスを使用して、ポリマー物質と繊維強化材とを接触させることができる。幾つかの実施態様においては、フッ素化CNT(たとえば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,645,455号の場合)が、アミン官能基を有するシラン試剤との化学反応によって繊維強化表面上に導入される。幾つかの実施態様においては、これは、官能的に等級付けされた界面(a functionally graded interface)をもたらす。
【0077】
シラン官能化CNT/ポリマー/ガラス繊維複合材料に関係する実施態様の幾つかにおいては、エポキシ化合物がポリマー成分として使用される。前述したように、エポキシ化合物は、本発明によれば、架橋されるポリマー化学種であり、このとき架橋は、エポキシ基を含むエポキシ樹脂化学種と、アミノ基、無水物基、またはルイス酸タイプの基を含む硬化剤との間で起こる。架橋のプロセスが“硬化”と呼ばれる。エポキシシステム(エポキシ樹脂+硬化剤)は、本発明の方法によるCNTの共有結合一体化を適切に可能にする、いかなるシステムまたはシステムの組み合わせであってもよい。
【0078】
前述したように、幾つかの実施態様においては、ガラス繊維布帛が強化用繊維として使用される。限定するつもりはないが、このような繊維強化材は一般に、約339g/cm2の単位表面積当たりの重量、0.36mmの厚さ、および16×14の平織を有する。このような繊維の各ストランドは、245本の微細なガラス繊維フィブリル(直径10μm)で構成されている。
【0079】
ガラス繊維強化材を使用する幾つかの実施態様においては、ガラス繊維布帛がリサイズ処理される。受け入れたままのガラス繊維上のシランをヒートクリーニングによって除去し、化学的に活性なシラン試剤(たとえば、アミン基を有するシランカップリング剤)で置き換える。このようなプロセスが図4に概略的に示されている。ガラス繊維上に新たなシラン試剤を2%導入するための加水分解反応を容易にするために、一般には水性アルコール溶液(たとえば、95%エタノール-5%水)が使用される。加水分解とシラノール形成にかかる時間は約5分である。シランでサイズ処理したガラス繊維布帛を100℃で2時間乾燥する。
【0080】
本発明の幾つかの実施態様においては、シランでリサイズ処理したガラス繊維布帛がフッ素化SWNTに化学結合される。このような反応は一般に、ジメチルホルムアミド(DMF)中にて80℃で1時間行われる。このような反応においては、ガラス繊維上のシランカップリング剤に結合しているアミンが一般には第一アミンであり、この第一アミンが、CNTサイドウォール上のフッ素と反応し、ナノチューブのサイドウォールにC-N結合を形成する。このカップリング反応が図5に概略的に示されている。このような反応中に生成されるフッ化水素(HF)は、ピリジンによって塩の形で捕捉される。
【0081】
本発明の幾つかの実施態様においては、CNTをガラス繊維にカップリングさせた後でも、CNT上に幾らかの未反応のフッ素部位が存在する。なぜなら、ガラス繊維に結合したシラン上のアミン基より、CNT上のフッ素部位のほうが一般には多いからである。これらのフッ素部位はさらに、図6に示すように、エポキシマトリックス中の硬化剤と反応することができる。硬化剤中のアミン基が、SWNT上のこれらの余分なフッ素部位と反応する。
【0082】
本発明の幾つかの実施態様においては、シラン官能化SWNT/ガラス繊維布帛の複数層中にエポキシ樹脂を埋め込むことによって(たとえば図7)、シラン官能化CNT/ポリマー/ガラス繊維複合材料が製造される。このようなシラン官能化CNT/エポキシ/ガラス繊維複合材料は一般に、100℃で2時間キュアーし、次いで150℃で2時間ポストキュアーする。積み重ねたガラス繊維層とSWNTとエポキシポリマーとの間のこうした化学結合を図7に示す。
【0083】
シラン官能化CNT上のシラン官能価の存在を確認するために、EDAX(エネルギー分散型X線分析)によって表面の元素分析を行った。走査電子顕微鏡(SEM)写真から、シラン官能化SWNTバンドルがガラス繊維の表面をオーバーコートしていることがわかる。SEMを使用してガラス繊維上のSWNTを画像化し、EDAXを使用してこの区域のSWNTを分析した。この結果から、シラン基がガラス繊維-SWNT上に導入されていることが確認される。図8は、ガラス繊維-シラン-SWNTのSEM顕微鏡写真(左)、およびEDAXによる表面分析結果(右)を示している。
【0084】
化学的に結合したSWNTがガラス繊維のサイジングに及ぼす影響を評価するために、一連のサンプルを作製することができる。標準のサンプルは、ガラス繊維/エポキシ複合材料をサイジングすることによって作製される。一般的な関連性のうちの特定の場合として、シラン被覆されたアミン基末端のガラス繊維/エポキシ複合材料と、SWNT被覆されたガラス繊維/エポキシ複合材料を作製し、比較した。ASTM D709規格にしたがって、3点曲げ試験取付具を使用して、少なくとも5つのサンプルにより曲げ強度試験を行った。図9を参照すると、上のSEM顕微鏡写真は、3点試験後の破断面であり、下のSEM顕微鏡写真は、ガラス繊維を引き抜いた後の、エポキシマトリックスとガラス繊維との間の界面である。これらのサンプルは、(a)が、いかなるシラン処理も行っていない標準的なサンプルであり、(b)が、シランだけで処理したサンプルであり、そして(c)が、シラン-SWNTで処理したサンプルである。
【0085】
幾つかの検体において、SEM顕微鏡写真は明らかに、ガラス繊維とエポキシマトリックスとの間の界面にSWNTが存在することを示している。曲げ試験の結果から、アミン基末端のシラン被覆ガラス繊維/エポキシ複合材料が最も高い強度とモジュラスを示した。文献によれば、脱サイズ処理したガラス繊維は、サイズ処理したガラス繊維より高い静電エネルギーと、より高い表面エネルギーを有する。サイズ処理後、表面エネルギーは約30%低下する。サイズ処理よる表面エネルギーの低下を考慮すると、化学的に変性されたSWNT/サイズ処理したガラス繊維の複合材料は、改良された機械的特性を有するようである。このような破損は、ガラス繊維/シランの界面において起こると考えられる。図10は、ガラス繊維/シラン界面の破断破損(fracture failure)の概略図であり、このときガラス繊維は、リサイズ処理の前に表面OH基を増大させるように予備処理されていない。
シラン官能化・酸化SWNT(ハイブリッドSWNT-Si-NH2/SWNT-Si-エポキシド)
【0086】
幾つかの実施態様では、SWNTを官能化するための重要な方法として、種々の有機シラン基を酸化SWNTに化学的に結合させる。これらのシラン官能化SWNTは、ペイントや複合物を含めた種々のポリマーシステムにおいて使用することができる。
【0087】
本発明の幾つかの実施態様においては、酸化性の酸(たとえば、H2SO4やHNO3)の混合物中における超音波処理によって製造された酸化SWNTにシラン基を結合させる。第1のシランカップリング剤に結合したアミン基と、第2のシランカップリング剤に結合したエポキシド基を、酸化SWNT上の(一般には、末端の、あるいはサイドウォールにおける欠陥としての)ヒドロキシル基およびカルボキシル基と反応させて、アミノシラン官能化SWNT(アミン-Si-SWNT)とエポキシシラン官能化SWNT(エポキシド-Si-SWNT)を生成させる。
【0088】
幾つかの実施態様においては、SWNT上に(一般には、ナノチューブの末端に)ヒドロキシルやカルボキシル基を結びつけるようSWNTを酸化し、次いでシラン中のアルコキシ基と反応させる。1つの例では、0.5gの未精製SWNTを400mlのHNO3/H2SO4(3:1)中に分散し、バス・ソニケーター(a bath sonicator)を使用して3時間超音波処理した。過剰量の蒸留水を加えて混合物を希釈し、これを遠心分離にかけた。次いでこの混合物約50mlを、100mlの蒸留水とアセトンを加えることによって0.2μmのテフロン膜を通して濾過して、バッキーペーパーの形態にした。サンプルを100℃で24時間乾燥した。図11は、このような酸化を図解的に示している。
シラン官能化・酸化SWNT(SWNT-Si-NH2)
【0089】
幾つかの実施態様においては、シラン(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を、攪拌しながらエタノール/水混合物に加えて、95%エタノール/5%水溶液中の最終シラン濃度2%とした。加水分解とシラノールの形成に対しては、一般には5分かかる。次いで、酸化SWNT、SWNT-COOH、またはSWNT-OHを溶液中に分散し、超音波処理し、それからエタノールによって過剰の物質をすすぎ落とす。溶液中で2〜3分攪拌し、次いで溶液をデカントすることによってSWNT-COOHをシリル化して、シリル化SWNT(SWNT-Si-アミン)を生成させることができる。一般には、SWNT-Si-アミンを、0.2μmのテフロンフィルター膜を通してエタノールですすぎ洗いする。SWNT-Si-アミンはさらに、SWNT-OHまたはSWNT-COOHとアミン-シランとの反応によって製造することもでき、図12は、SWNT-OHとNH2-シランとの反応によるNH2-Si-SWNTの製造を示しており、図13は、SWNT-COOHとアミノシラン(NH2-シラン)との反応によるNH2-Si-SWNTの製造を示している。さらに、図14は、(a)SWNT-OHまたは(b)SWNT-COOHとのアミン-シラン結合の形成のメカニズムを示している。
【0090】
幾つかの実施態様においては、SWNTへのシラン化学種の結合を確認するのに熱重量分析(TGA)が使用される。ある関連した場合において、シラン官能化SWNTとSWNTのサーモグラムを比較したときに、シラン官能化SWNTに対するサーモグラムは、アッシュの重量の増大を示した。これは、3-アミノプロピルトリエトキシシラン中のケイ素がSWNTに結合したからである。これらの結果から、SWNT-Si-アミン(3-アミノプロピルトリエトキシシラン:三官能アミン)は、乾燥状態においては粉末のようであることがわかった。シラン化されたSWNTは粘度がより高くなり、乾燥後に硬質で極めて小さな粒子を生成し、縮合反応中にネットワーク構造を形成したことがSEM顕微鏡写真からわかる。図15はSWNT-シラン-アミンのTGAサーモグラムを示している。
【0091】
J.G.Iglesiasらは、ガラス繊維の表面を変性するのにモノエトキシシラン(3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン)を使用すると、トリエトキシシラン(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を使用した場合より優れた機械的特性が得られる、ということを報告した(Iglesiasら,J.Colloid and Interface Sci.,2002,250,251-260)。トリエトキシシランは、ガラス繊維の表面上に架橋ネットワークを形成した。アミン基が近づきやすくなるほど、架橋密度は高くなった。モノエトキシ化合物(化合物2)やジエトキシ化合物(化合物1)を使用すれば、架橋の問題(たとえば、SWNT-Si-アミンとSWNT-COOHとの間の架橋、あるいはSWNT-Si-アミン間の架橋)は解決することができる。
【化3】
【化4】
シラン官能化・酸化SWNT(ハイブリッドSWNT-Si-NH2/SWNT-Si-エポキシド)
【0092】
幾つかの実施態様においては、水性アルコール溶液(95%エタノール/5%水の溶液)を、酢酸でpH4.5〜5.5に調節する。攪拌しながらシランを加え、2%の最終濃度にする。加水分解とシラノールの形成に5分かかる。SWNT-COOHを溶液中に分散し、超音波処理し、1〜2分後に取り出した。エタノール中に短時間浸漬することによって過剰の物質をすすぎ落とす。次いでSWNT-COOHをシラン-アルコール溶液中に再分散し、前記溶液中にて2〜3分攪拌することによって、そして溶液をデカントすることによってシリル化する。シランのキュアーは、110℃にて5〜10分、あるいは室温にて24時間(相対湿度60%未満)である。SWNT-Si-エポキシドは、図16に示すように、SWNT-OHとエポキシド-シランとの反応によって製造することができる。SWNT-Si-エポキシドはさらに、図17に示すように、SWNT-COOHとエポキシド-シランとの反応によって製造することができる。図18は、(a)SWNT-OHへの、および(b)SWNT-COOHへの、エポキシド-シラン付着(deposition)のメカニズムを示している。
【0093】
幾つかの場合においては、アミン-シラン-SWNTは、受け入れたままのSWNTと比較して相互に絡み合っており、バンドルの厚さと粗さが増大している、ということがSEM顕微鏡写真からわかる。図19は、(a)未処理のSWNT、(b)SWNT-Si-エポキシド、(c)SWNT-Si-アミンD(ジエトキシ)、および(d)SWNT-Si-アミンB(トリエトキシ)のSEM顕微鏡写真を示している。
シラン酸化SWNT(ハイブリッドSWNT-Si-エポキシド)
【0094】
幾つかの実施態様においては、図20に示すように、SWNT-Si-NH2とSWNT-Si-エポキシドエポキシとの反応によってハイブリッドSWNT-Si-NH2/SWNT-Si-エポキシドエポキシを製造することができる。
シラン官能化・酸化SWNT(エポキシプレポリマーを含んだSWNT-Si-NH2/エポキシド)
【0095】
幾つかの実施態様においては、SWNT-Si-NH2の量は、過剰な溶媒/エポキシプレポリマー中で反応させることによって調節することができる。SWNT-Si-NH2は、SWNTがプレポリマー中にエポキシド基を有する場合に使用することができる。図21は、SWNT-Si-アミンとエポキシプレポリマーとの反応を概略的に示している。
シラン官能化・酸化SWNT(SWNT-Si-エポキシド/アミン硬化剤)
【0096】
幾つかの実施態様においては、SWNT-Si-エポキシドの量は、過剰の溶媒/硬化剤中で反応させることによって調節することができる。SWNT-Si-エポキシドは、SWNTがプレポリマー中にアミン基を有する場合に使用することができる。図22は、SWNT-Si-エポキシドと硬化剤との反応を概略的に示している。
シラン官能化・フッ素化SWNT
【0097】
本発明は、有機シランを使用してSWNTのサイドウォールを官能化する重要な方法を提供する。さらに詳細に言うと、フッ素化SWNTをベースとしたこのような化学的官能化は、一般には3つの主要な工程を含む:すなわち、(1)SWNTをフッ素化してF-SWNTを生成させる工程;(2)末端ヒドロキシル部分を含有する化学種とF-SWNTとの反応によってヒドロキシル含有基をSWNTに結びつけて、ヒドロキシル官能化SWNTを生成させる工程;および(3)ヒドロキシル官能化SWNTとシラン化学種とを反応させて、シラン官能化SWNTを生成させる工程。これらのシラン官能化SWNTの複合材料用途に対する主要な例は、ナノチューブ強化ガラス繊維/ビニルエステル複合材料である。ビニル官能化シランを使用することで、ビニルエステルマトリックス中への官能化ナノチューブの直接的な組み込みが、その場のフリーラジカル重合によって達成することができる。この種のシラン官能化ナノチューブを使用すると、2つの利点が得られる。第一に、官能化ナノチューブが、堅牢な化学結合を介して繊維とマトリックスの両方に強い結びつきをもたらす。第二に、溶媒とポリマーマトリックス中へのナノチューブの分散が大幅に向上する。複合材料のプロセシングは一般に、ガラス繊維の表面をナノチューブで被覆すること、および圧縮成形もしくは真空樹脂トランスファー成形を行うことを含む。
【0098】
幾つの実施態様においては、有機シラン化学種を使用するSWNTのサイドウォール官能化は以下の工程を含む。先ず、フルオロナノチューブ(F-SWNT)(DMF溶媒中に分散)とエチレングリコールまたはグリセリン〔水酸化リチウム(LiOH)で処理〕とを、1〜2時間の超音波処理時に反応させる。このタイプの反応を図23に記す。膜濾過および水とエタノールによる洗浄を行った後、ヒドロキシル官能化ナノチューブを一般にはエタノール溶液中に分散し、酢酸を加えてpHを約4〜5に調整する。最後に、約1〜2%のシランカップリング剤(たとえば、ビニルエステル複合材料用途に使用されるビニルトリエトキシシランやビニルジメチルエトキシシラン)を、超音波処理しながら30分にてナノチューブ/エタノールに加えて、シラン官能化SWNTを得る。図24は、ビニル重合可能な部分を含有するシラン化学種とヒドロキシル官能化SWNTとの間の反応を示している。
【0099】
本発明のCNT-ポリマー複合材料は、向上した電気的特性、機械的特性、光学的特性、および他の特性を有することができる。実際、このような複合材料は、種々の望ましい特性を有することから“多機能の(multifunctional)”と呼ぶことができる。このような複合材料に対する用途としては、航空宇宙産業用、自動車用、建設用、静電放電、ペイントと塗料、織物、繊維、エラストマー、医療用インプラント、電磁遮蔽、避雷、耐疲労性付与、および耐衝撃性付与などがあるが、これらに限定されない。しかしながらCNTは、官能化された状態において一般には非導電性であることに留意しておかなければならない。
【0100】
本明細書に記載の官能化法では、ナノチューブの界面を、ポリマー複合材料用途向けの有機シラン化学種を使用して調整することができる。強酸を使用する酸化処理と比較すると、この非破壊的なサイドウォール官能化は、多くの欠陥を導入することなくナノチューブの構造的保全性を保持するという点でより優れており、したがってナノチューブの引張強さにそれほど影響を及ぼさないはずである。種々の官能基を有する異なった種類の有機シランを選択することで、この一般的な官能化法を、広範囲のポリマー複合材料用途に使用するのに拡張することができる。
【0101】
後述の実施例においては、単層カーボンナノチューブを、ポリマー複合材料用途向けの、ポリマーに対して相溶性の数種の有機シランで処理した。赤外線スペクトル分析とラマンスペクトル分析を使用して、ヒドロキシル官能化ナノチューブにトリアルコキシシラン化学種が結合していることの証拠を得た。この方法は、その場重合によってポリマーマトリックス中に官能化ナノチューブを直接導入できる可能性をもたらす。さらに、一般的な有機溶媒中において、高レベルのナノチューブのロープほどきが得られた。したがって、このようなシラン処理は、有機溶媒中へのナノチューブの溶解を可能にして、ポリマーマトリックス中への均一な分散をもたらすだけでなく、効果的な組み込み移動(load transfer)のための改良された界面結合ももたらす。ナノチューブ/ポリマー複合材料の製造と特性決定も可能となっている。シラン官能化ナノチューブをエポキシポリマー中に使用することによって、強化効果が増大することが実証された。
【0102】
後述の実施例は、本発明の実施態様の幾つかをより詳細に説明するために記載されている。当業者にとっては言うまでもないことであるが、後述の実施例に開示の手法は、本発明を実施する上で旨く機能するよう本発明者らによって発見された手法を示しており、したがって本発明を実施するための代表的な態様を構成しているとみなすことができる。しかしながら、当業者であれば、本発明の開示内容を考慮した上で、開示されている特定の実施態様に対して多くの変更を行ってよく、そしてさらに、本発明の要旨を逸脱することなく同様もしくは類似の結果が得られる、ということを認識しているはずである。
【0103】
後述する実施例において使用される物質は以下のようにして得た。精製SWNTバッキーパールズ(Purified SWNT BuckyPerals)は、カーボンナノテクノロジーズ社(Carbon Nanotechnologies,Inc)から入手した。SWNTは高圧HiPco法によって得、ミリメートルスケールのサイズのバッキーパール・ペレット(BuckyPearl pellets)にした。この物質は約13重量%のFe触媒を含有する。有機シランはGELEST社から購入した。4種のシランを使用した:メタクリル官能基を有するメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン;スチレン官能基を有する3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン;エポキシ基を有する(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシエトキシ-シラン;およびアミノ基を有するN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン。
【0104】
後述の実施例における生成物の特性決定は以下のように行った。全反射減衰-フーリエ変換赤外分光分析法(ATR-FTIR)とフーリエ変換ラマン分光分析法を使用して、官能化SWNTの特性決定を行った。ナノチューブのモルホロジーは、フィリップス社製の環境制御型走査電子顕微鏡を30kVの加速電圧にて使用して調べた。高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)の画像は、JOEL JSM 2010 TEMシステムを100kVにて使用して得た。
【実施例】
【0105】
(実施例1)
本実施例は、CNTのフッ素化とその後のヒドロキシル化を説明するためのものである。ライス大学において開発された方法を使用して精製SWNTをフッ素化して“フルオロナノチューブ”を生成させた(Mickelson,E.T.;Huffman,C.B.;Rinzler,A.G.;Smalley,R.E.;Hauge,R.H.;Margrave,J.L.Chem.Phys.Lett.1998,296,188;Chiang,I.W.Ph.D.Thesis,ライス大学,テキサス州ヒューストン,2001)。フッ素化は、150℃に加熱したモネル(Monel)反応器中にて12時間行った。フッ素、水素、およびヘリウムに対するガス流量比は2:1:30であった。次いで、水酸化リチウムで処理したエチレングリコールとフルオロナノチューブとを、2時間超音波処理して反応させることによってヒドロキシル化ナノチューブを製造した(図1)。“Sidewall Functionalization of Carbon Nanotubes with Hydroxyl-Terminated Moieties”(2004年6月16日付け出願)(代理人整理番号11321-P073WO)と題する、本発明の譲受人に譲渡された同時係属中の国際特許出願、および「L.Zhangら,Chem.Mater.,2004,16,2055-2061」を参照のこと。
【0106】
(実施例2)
本実施例は、ヒドロキシル官能化CNTのシリル化(silation)を説明するためのものである。ヒドロキシル官能化SWNTの溶液を水で希釈し、0.2μmの細孔径のPTFE膜フィルターを使用して濾過し、水とエタノールで数回フラッシングして未反応の残留物を除去した。次いで、超音波処理によって、ヒドロキシル官能化ナノチューブを再びエタノール溶液中に分散した(1mg/1ml)。酢酸を加えてpHを5に調整した。次いで、混合物にシランカップリング剤を加えて0.2%エタノール溶液を形成させた。混合物を、40KHzのバス・ソニケーター中にて1時間超音波処理した。本溶液を室温で乾燥してエタノールを蒸発除去し、そしてポストキュアーのために110℃で2時間加熱した。最後に、シラン官能化SWNTを、超音波を加えながらアセトン中に溶解して、未反応のシランを洗い落とした。ナノチューブ表面へのこのようなシラン反応をスキーム3に示す。
【化5】
上記のスキームにおいて、Yは、アニオン重合やフリーラジカル重合を容易に受け、ポリマー複合材料中の他のモノマーと共有結合を形成する、アミノ、エポキシ、ビニル、およびメタクリル等の有機官能基である。
【0107】
ポリマー複合材料の用途に関して、ナノチューブへのシラン結合の特性決定を行い、スペクトル分析によって確認した。ニコレット(Nicolet)FTIRを使用して、SWNTのサイドウォールに結合した官能基を分析した。図25は、フルオロナノチューブ、加水分解したナノチューブ、およびシラン処理したナノチューブの赤外線スペクトルを比較している。ヒドロキシル含有化学種とフルオロナノチューブとの反応後、3000〜3500cm-1のブロードバンドは、ナノチューブのサイドウォールに結合したOHの存在を示している。1095cm-1に現われた新たなバンドはC-O結合に帰属させることができ、C-Fピークの減少に対応している。多量のOH基が、水素結合およびシランとのありうる共有結合を生じる可能性をもたらす。水が存在すると、シランのアルコキシ基は極めて容易に加水分解されてシラノール含有化学種を形成する。オリゴマーへの縮合が先ず起こる。未反応のOH基は、ナノチューブのOH基と水素結合を形成することができる。ポストキュアー中に、ナノチューブと共有結合を形成することができ、このときスキーム3に示すように、水の消失が付随して起こる。メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランで処理したナノチューブに対するIRスペクトルを図25(c)に示す。1713cm-1と1636cm-1における強いピークの出現は、メタクリル基(ビニルエステル系やポリエステル系と相溶性がある)中に個別に存在する対応したC=OとC=Cの特徴を示している。シラン化ナノチューブのスペクトルから、OHバンドのはっきりした減少は、シラノール自体の重合形成、およびOHと1つのシラノール基との間の結合形成を示している。2つのシラノール基は縮合してSi-O-Siを形成することがある(B.Arkles,CHEMTECH,7,766,1977)。1105cm-1と1010cm-1におけるダブレットピークの出現は、それぞれSi-O-SiとSi-O-Cの非対称伸縮の存在を明確に示している(D.R.Anderson,Analysis of Silicones,A.L.Smith編,Wiley-Interscience,New York,1974,第10章)。シランポリマーがナノチューブに物理的に結びついているのではないということを確認するために、同じシラン処理手順を初期状態のナノチューブに適用した。IRは、シラン化学種の特徴を全く示さなかった。さらにモノアルコキシシランも使用したが、シラン自体が縮合しやすいために、あまり効果的ではないことがわかった。図27のラマンスペクトルにより、ナノチューブの官能化が確認された。シラン処理したナノチューブに対するピーク減衰(b)により、シランポリマーによるナノチューブのカバーもしくはラッピングが示された。
【0108】
種々のポリマー複合材料への応用に関してシラン処理の効率を明らかにするために、エポキシ用途やビニルエステル用途向けの他の幾つかの一般的なシランを使用してナノチューブを処理した。図26におけるシラン官能化SWNTのFTIRスペクトルは、対応するシランの結合を示した。たとえばアミノシランの場合、3260cm-1(弱い)と2800〜3000cm-1の領域において新たなピーク(N-H伸縮とC-H伸縮を示す)が観察された。シラノール反応により、OHバンドはほとんど消失した。シロキサンの鎖がより長くなるか又は分岐するにつれて、Si-O-Siの吸収は、よりブロードで且つより複雑に重なり合ったバンドになる。
【0109】
(実施例3)
本実施例は、官能化されていないCNTと比較した場合の、シラン官能化CNTにおいて見られる溶解性の増大を説明するためのものである。官能化ナノチューブは、エタノール溶液中においてはかなり膨潤し、ナノチューブバンドルの剥脱が起きていることを示している。シラン処理した単層ナノチューブサンプルは、アルコール、アセトン、DMF、および他の一般的な有機溶媒に対して大幅に改良された溶解性と分散性を示すことがわかった。これにより、相溶性のあるポリマーマトリックス中において、より小さなバンドルでの、そしてさらには個別のレベルでのより均一な分散が得られるはずである。図28は、シラン官能化SWNT(高濃度での暗色の均一溶液)と初期状態のSWNTをエタノール溶液中に2週間静置した後の目視比較を示している。初期状態のSWNTは、有機溶媒に対して実質的に不溶性である。シラン官能化SWNTのDMF溶液は、2ヶ月を超えても、沈殿を生じることなく安定状態のままである。SEMにより、シラン官能化SWNTはフルオロナノチューブと比較して、ナノチューブバンドルのサイズがより小さいことが確認された(図29)。より直接的な証拠を得るために、シラン処理したナノチューブを、高分解能透過型電子顕微鏡法を使用して観察し、画像を作成した。200メッシュのlacey formvar/carbon copperグリッド上に数滴のナノチューブエタノール溶液(濃度0.1mg/ml)を加え、次いでこのグリッドを一晩乾燥して溶媒を蒸発除去することによってTEMサンプルを作製した。図30のTEM画像は、分けられたナノチューブバンドルのほどき(unroping)を示しており、多くの個別のナノチューブ(直径が約1nm)を観察することができる。比較によれば、初期状態のSWNTバンドルは一般に10〜100の個別のナノチューブを有し、これらがファンデルワールス力によって互いに結びついている。この結果は、官能基が大きなバンドルを展開するのに役立ち、小さなバンドルまたは個別のナノチューブを形成する、ということを示している。ナノチューブほどきは、このようなナノチューブがポリマーマトリックス中に簡単に分散することを可能にし、またマトリックスからの組み込み移動(load transfer)を直接的に増大させることを可能にする。
【0110】
(実施例4)
本実施例は、本発明のCNT-ポリマー複合材料の動的機械的分析を説明するためのものである。複合材料用途に対する、ナノチューブの強化材としての役割は、マトリックスとナノチューブとの間の組み込み移動の程度に大きく依存する。エポキシ/ナノチューブ複合材料を幾つか作製し、従来の研究に記載の仕方(J.Zhu,J.Kim.H.Peng,J.L.Margrave,V.Khabashesku,E.V.Barrera,Nano Lett.2003,3,1107)と類似の仕方で機械的性質の特性決定を行った。しかしながら本実施例では、キュアーサイクルを12時間に延長した。試験した種々の材料は、単なるエポキシ、初期状態のSWNTとシラン添加剤を含んだエポキシ、1重量%の加水分解ナノチューブを含んだエポキシ、および1重量%のシラン官能化ナノチューブを含んだエポキシであった。ポリマーの機械的性質に及ぼす官能化ナノチューブの直接的な影響を動的機械的分析(DMA)〔材料の温度依存性特性(たとえば、貯蔵モジュラスE’、損失モジュラスE”、および損失tanδ)が得られる〕によって評価した。これらの動的特性は、充填材のフラクション、マトリックス中への分散性、および充填材とマトリックスとの間の接着性によって大きく影響される。動的機械的分析は、パーキンエルマー・パイリス・ダイヤモンド(Perkin-Elmer Pyris Diamond)DMA機器を使用して、1.0Hzの周波数にてデュアル・カンチレバー・ベンド方式(dual-cantilever bend mode)で行った。試験温度は、5℃/分の加熱速度にて25℃〜200℃の範囲であった。ナノチューブエポキシサンプルと単なるエポキシサンプルに対する動的E’曲線を図31(曲線a〜d)に示す。1重量%の官能化ナノチューブを組み込んだ複合材料は、単なるエポキシポリマー、および初期状態のナノチューブとシラン混合物を組み込んだ複合材料と比較して剛性の増大を示した。この結果は、シラン処理したナノチューブによる効率的な向上を示している。比較してみると、同じ量のシランと初期状態SWNTを直接エポキシに加えたときに、ガラス転移温度(損失tanδが最大に達する温度と定義される)低下した。これは、単にシランがエポキシを可塑化し、架橋度を低下させたからである。
【0111】
本明細書に挙げた全ての特許と刊行物を参照により本明細書に含める。言うまでもないが、上記の構造物や機能のうちの特定のもの、および上記実施態様の操作は、本発明を実施する上で必ずしも必要というわけではなく、単に代表的な実施態様の説明を完全にするために記載されている。さらに、言うまでもないことであるが、上記の特許および刊行物において記載されている特定の構造、機能、および操作は、本発明と組み合わせて実施することができるが、それらは実施に対して必須ではない。したがって理解しておかなければならないことは、本発明は、特許請求の範囲に記載の本発明の要旨を逸脱することなく、具体的に記載されているのとは別のやり方で実施することができる、という点である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】フルオロナノチューブとジアルコールとを反応させてヒドロキシル官能化CNTを生成させることができる幾つかの代表的な化学経路を示している。
【図2】アミノ末端化学成分がサイドウォールに結びついた状態のヒドロキシル官能化カーボンナノチューブ(3 g〜i)を形成させるための、フルオロナノチューブとアミノアルコール(2 g〜i)との間の反応を示している。
【図3】ポリマーマトリックスとガラス繊維を橋かけしているSWNTの概略図である。
【図4】アミン-シラン試剤によるガラス繊維のサイジングを示している概略図である。
【図5】フッ素化SWNTと、ガラス繊維上のアミノシラン官能価との間の化学結合を示している概略図である。
【図6】SWNT上の余分のフッ素部位と硬化剤との間の化学結合を示している概略図である。
【図7】ガラス繊維-シラン-SWNTとエポキシ樹脂(エポキシマトリックス中の)との間の化学結合を示している概略図である。
【図8】ガラス繊維-シラン-SWNTのSEM顕微鏡写真(左)とEDAX表面の分析結果(右)を示している。
【図9】3点曲げ試験後の破断面のSEM顕微鏡写真であって;一番上の画像は、表面上のそれぞれの化学構造を示しており、真ん中の画像は、破断した表面を示しており、一番下の画像は、ガラス繊維-シラン-SWNT-エポキシ界面を示しており;(a)は、いかなるシラン処理も行っていない標準的なサンプルであり、(b)は、シランだけで処理したサンプルであり、そして(c)は、シラン-SWNTで処理したサンプルである。
【図10】シランとガラス繊維との間の破断を示している破断破壊(fracture failure)の概略図である。
【図11】酸処理によるヒドロキシル基とカルボキシル基の導入を示している。
【図12】ヒドロキシル官能化SWNT(SWNT-OH)とアミノシラン(NH2-シラン)化学種との反応によって製造されるNH2-Si-SWNTの概略図である。
【図13】カルボキシル官能化SWNT(SWNT-COOH)とNH2-シランとの反応によって製造されるNH2-Si-SWNTの概略図である。
【図14】(a)HO-SWNT上への、および(b)HOOC-SWNT上へのアミン-シラン(アミノシラン)付着のメカニズムを示している。
【図15】アミノシラン官能化SWNT(SWNT-シラン-アミン)のTGAサーモグラムを示している。
【図16】SWNT-OHとエポキシ-シランとの反応によって製造されるエポキシシラン官能化SWNT(エポキシド-Si-SWNT)の概略図である。
【図17】SWNT-COOHとエポキシ-シランとの反応によって製造されるエポキシド-Si-SWNTの概略図である。
【図18】エポキシド-シランと(a)HO-SWNTとの、およびエポキシド-シランと(b)HOOC-SWNTとのカップリングのメカニズムを示している。
【図19】(a)未処理のSWNT、(b)SWNT-Si-エポキシド、(c)SWNT-Si-アミンD(ジエトキシ)、および(d)SWNT-Si-アミンB(トリエトキシ)のSEM顕微鏡写真を示している。
【図20】ハイブリッドSWNT-Si-NH2/SWNT-Si-エポキシドの形成の概略図である。
【図21】SWNT-Si-アミンとエポキシプレポリマーとの反応の概略図である。
【図22】SWNT-Si-エポキシドと硬化剤との反応の概略図である。
【図23】フッ素化SWNTとリチウムアルコキシドとの反応の概略図である。
【図24】ビニル重合可能な部分を含有するシラン化学種とヒドロキシル官能化SWNTとの間の反応を示している。
【図25】フルオロナノチューブ、加水分解ナノチューブ、およびシラン処理したナノチューブの赤外線スペクトルの比較を示しており、線図はそれぞれ、a)F-SWNT、b)SWNT-R-OH、およびc)メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランで処理されたSWNTに関する。
【図26】シラン官能化SWNTの赤外線スペクトルを示しており、線図はそれぞれ、(a)3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン[CH2=CH(C6H5)CH2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]、(b)N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン[H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3]、および(c)(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシエトキシ-シラン[CH2-(O)-CHCH2O(CH2)3Si(OCH3)3]による官能化に関する。
【図27】(a)SWNT-ROHと(b)シラン処理したSWNTのラマンスペクトルを示している。
【図28】初期状態のSWNT(左)のエタノール中への分散(左)、およびシラン処理したSWNTのエタノール中への分散(右)を示している。
【図29】(a)F-SWNTと(b)のビニルシラン-SWNTのSEM画像を示している。
【図30】(a)初期状態のSWNTと(b)官能化SWNTのTEM画像(縮尺目盛り20nm)を示しており、ナノチューブバンドルの解きが達成されている(個々のSWNTに注意)。
【図31】エポキシ/SWNT複合材料の貯蔵弾性率(E’)対温度のプロットを示している:(a)SWNTなし、(b)1重量%の初期状態SWNTとシラン添加剤、(c)1重量%のヒドロキシル官能化SWNT、および(d)1重量%のシラン官能化SWNT。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 一般式
【化1】
(式中、Rは任意の有機スペーサーである)で示されるヒドロキシル官能化CNTを供給する工程;および
b) ヒドロキシル官能化CNTと、一般式
HO-Si(R1)(R2)(R3)
(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素、ヒドロキシル、チオール、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、アミン、アミド、エステル、エーテル、エポキシ、シリル、ゲルミル、スタニル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される)で示されるシラノール化学種とを反応させて、一般式
【化2】
で示されるシラン官能化CNTを生成させる工程;
を含む方法。
【請求項2】
ヒドロキシル官能化CNTが、
a) CNTをフッ素化してフルオロナノチューブを生成させる工程;および
b) フルオロナノチューブとヒドロキシル含有化学種とを反応させてヒドロキシル官能化CNTを生成させる工程;
を含む方法によって製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヒドロキシル含有化学種がアミノアルコールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ピリジンを反応触媒として加えることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ヒドロキシル含有化学種が、少なくとも2つのヒドロキシル基が結合したアルコール化学種である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
アルコール化学種とフルオロナノチューブとの反応を容易にするための金属水酸化物化学種をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
金属水酸化物化学種が、LiOH、NaOH、KOH、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
CNTが、SWNT、MWNT、2層カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
CNTがSWNTである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
結合しているシラン官能基とカーボンナノチューブの炭素原子との比が約1:100〜約1:5の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
フルオロナノチューブが約C1F0.01〜約C2Fの範囲の化学量論を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
a) シラン官能化CNTとポリマー前駆体とを混合して前駆体混合物を作製する工程;および
b) 前駆体混合物中のポリマー前駆体を重合させてCNT-ポリマー複合物を作製する工程;
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前駆体混合物中のポリマー前駆体を重合させると、シラン官能化CNTがポリマーに共有結合するようになる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
CNT-ポリマー複合物が、約0.1重量%〜約10重量%のシラン官能化CNTを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ポリマー前駆体が、エポキシ、ビニルエステル、ポリエステル、ビスマレイミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される熱硬化性樹脂である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
シラン官能化CNTと熱可塑性ポリマー物質とをブレンドしてCNT-ポリマーブレンドを作製する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
熱可塑性ポリマー物質が、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
CNT-ポリマーブレンドが、約0.1重量%〜約10重量%のシラン官能化CNTを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
CNT-ポリマーブレンド中のシラン官能化CNTが、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、双極子間相互作用、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される様式によってポリマーマトリックスと相互作用する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
a) シラン官能化CNTとポリマー前駆体とを樹脂トランスファー成形によって接触させる工程;および
b) シラン官能化CNTと接触させた後のポリマー前駆体をキュアーして、CNT-ポリマー複合物を作製する工程;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
樹脂トランスファー成形が減圧で補助される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ガラス繊維、炭素繊維、気相成長炭素繊維、ケブラー繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される強化用繊維材料をキュアー工程の前に加えることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
a) CNT主鎖;および
b) 一般式-Si-(R1)(R2)(R3)(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素、ヒドロキシル、チオール、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、アミン、アミド、エステル、エーテル、エポキシ、シリル、ゲルミル、スタニル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される)を有していて、化学結合によってCNT主鎖に結びついているシラン化学種;
を含むシラン官能化CNT。
【請求項24】
CNTが、SWNT、MWNT、2層カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載のシラン官能化CNT。
【請求項25】
シラン化学種が、ヒドロキシル、アミノ、クロロ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー種を介してCNT主鎖に共有結合されている、請求項23に記載のシラン官能化CNT。
【請求項26】
シラン化学種の少なくとも一部がCNTのサイドウォールに結合されている、請求項23に記載のシラン官能化CNT。
【請求項27】
結合しているシラン官能基とカーボンナノチューブの炭素原子との比が約0.01:1〜約0.2:1の範囲である、請求項23に記載のシラン官能化CNT。
【請求項28】
R1〜R3の少なくとも1つがポリマー物質と相互作用することができる、請求項23に記載のシラン官能化CNT。
【請求項29】
a) シラン官能化CNT;および
b) ポリマーホスト材料;
を含み、シラン官能化CNTが、ポリマーホスト材料と相互作用することができる官能性を有する、CNT-ポリマー複合物。
【請求項30】
シラン官能化CNTが、SWNT、2層カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるCNTを含む、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項31】
ポリマーホスト材料が、エポキシ、ビニルエステル、ポリエステル、ビスマレイミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項32】
ポリマーホスト材料が熱硬化性樹脂である、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項33】
ポリマーホスト材料が熱可塑性樹脂である、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項34】
シラン官能化CNTがポリマーホスト材料と共有結合的に相互作用する、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項35】
シラン官能化CNTが、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、双極子間相互作用、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメカニズムによってポリマーホスト材料と相互作用する、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項36】
シラン官能化CNTがポリマーマトリックスの全体にわたって均一に分散されている、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項37】
シラン官能化CNTが、約0.1重量%〜約10重量%の範囲の量にてCNT-ポリマー複合物中に存在する、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項38】
シラン官能化CNTがほとんどデバンドルされている、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項39】
CNT-ポリマー複合物が、そのままの状態のポリマーホスト材料を凌ぐ少なくとも1つの特性向上を有し、前記特性向上が、機械的な向上、電気的な向上、熱的な向上、および光学的な向上からなる群から選択される、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項40】
CNT-ポリマー複合物が多機能である、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項41】
a) CNT;
b) ある量の強化用繊維材料;および
c) ポリマー;
を含む複合材料であって、このときCNTが、強化用繊維材料とポリマーとを化学的に結びつけるブリッジとして作用する、前記複合材料。
【請求項42】
CNTがシラン官能化されている、請求項41に記載の複合材料。
【請求項43】
CNTがSWNTである、請求項41に記載の複合材料。
【請求項44】
強化用繊維材料がシラン官能化されている、請求項41に記載の複合材料。
【請求項45】
強化用繊維材料がガラス繊維である、請求項41に記載の複合材料。
【請求項46】
ガラス繊維がリサイズ処理されている、請求項45に記載の複合材料。
【請求項47】
ポリマー物質がエポキシである、請求項41に記載の複合材料。
【請求項48】
ガラス繊維がシート織物の形態で存在する、請求項45に記載の複合材料。
【請求項49】
このようなシート織物を、シラン官能化CNTおよびそれらの間のポリマーと共に積み重ねる、請求項48に記載の複合材料。
【請求項50】
a) ある量の強化用繊維材料を供給する工程;
b) CNTを強化用繊維材料に加えて、CNTで被覆された繊維を形成させる工程;および
c) ポリマー物質とCNT被覆繊維とを接触させて、CNT、強化用繊維材料、およびポリマー物質を含む複合材料を形成させる工程;
を含む方法。
【請求項51】
ある量の強化用繊維材料がガラス繊維である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
CNTが、SWNT、MWNT、2層カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
CNTがSWNTである、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
CNTがシラン官能化されている、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
ガラス繊維が有機シラン化学種でリサイズ処理されている、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
CNTを強化用繊維材料に加えてCNT被覆繊維を形成させる工程が初期湿潤プロセスを含み、前記プロセスが
a) CNTと強化用繊維材料を溶媒中に分散させて混合物を作製する工程;および
b) 前記溶媒を除去して、CNTで被覆された繊維を残す工程;
を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
CNTが官能化されている、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
CNTと強化用繊維材料のどちらかに存在する官能基によって、CNTが強化用繊維材料に化学的に結びついている、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
CNTと強化用繊維材料のどちらにも存在する官能基によって、CNTが強化用繊維材料に化学的に結びついている、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
ポリマー物質が、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
ポリマー物質が、エポキシ、ビニルエステル、ポリエステル、ビスマレイミド、ポリスチレン、ポリブタジエンもしくはポリイソプレン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
ポリマー物質が少なくとも1種のポリマー前駆体を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項63】
少なくとも1種のポリマー前駆体を重合させる工程をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
少なくとも1種のポリマー前駆体をキュアーする工程をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
強化用繊維材料がCNTでサイズ処理される、請求項50に記載の方法。
【請求項66】
CNTと強化用繊維材料のどちらかがポリマー物質に化学的に結合されている、請求項58または59いずれかに記載の方法。
【請求項67】
CNTと強化用繊維材料のどちらもポリマー物質に化学的に結合されている、請求項58または59いずれかに記載の方法。
【請求項1】
a) 一般式
【化1】
(式中、Rは任意の有機スペーサーである)で示されるヒドロキシル官能化CNTを供給する工程;および
b) ヒドロキシル官能化CNTと、一般式
HO-Si(R1)(R2)(R3)
(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素、ヒドロキシル、チオール、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、アミン、アミド、エステル、エーテル、エポキシ、シリル、ゲルミル、スタニル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される)で示されるシラノール化学種とを反応させて、一般式
【化2】
で示されるシラン官能化CNTを生成させる工程;
を含む方法。
【請求項2】
ヒドロキシル官能化CNTが、
a) CNTをフッ素化してフルオロナノチューブを生成させる工程;および
b) フルオロナノチューブとヒドロキシル含有化学種とを反応させてヒドロキシル官能化CNTを生成させる工程;
を含む方法によって製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヒドロキシル含有化学種がアミノアルコールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ピリジンを反応触媒として加えることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ヒドロキシル含有化学種が、少なくとも2つのヒドロキシル基が結合したアルコール化学種である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
アルコール化学種とフルオロナノチューブとの反応を容易にするための金属水酸化物化学種をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
金属水酸化物化学種が、LiOH、NaOH、KOH、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
CNTが、SWNT、MWNT、2層カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
CNTがSWNTである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
結合しているシラン官能基とカーボンナノチューブの炭素原子との比が約1:100〜約1:5の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
フルオロナノチューブが約C1F0.01〜約C2Fの範囲の化学量論を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
a) シラン官能化CNTとポリマー前駆体とを混合して前駆体混合物を作製する工程;および
b) 前駆体混合物中のポリマー前駆体を重合させてCNT-ポリマー複合物を作製する工程;
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前駆体混合物中のポリマー前駆体を重合させると、シラン官能化CNTがポリマーに共有結合するようになる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
CNT-ポリマー複合物が、約0.1重量%〜約10重量%のシラン官能化CNTを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ポリマー前駆体が、エポキシ、ビニルエステル、ポリエステル、ビスマレイミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される熱硬化性樹脂である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
シラン官能化CNTと熱可塑性ポリマー物質とをブレンドしてCNT-ポリマーブレンドを作製する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
熱可塑性ポリマー物質が、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
CNT-ポリマーブレンドが、約0.1重量%〜約10重量%のシラン官能化CNTを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
CNT-ポリマーブレンド中のシラン官能化CNTが、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、双極子間相互作用、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される様式によってポリマーマトリックスと相互作用する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
a) シラン官能化CNTとポリマー前駆体とを樹脂トランスファー成形によって接触させる工程;および
b) シラン官能化CNTと接触させた後のポリマー前駆体をキュアーして、CNT-ポリマー複合物を作製する工程;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
樹脂トランスファー成形が減圧で補助される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ガラス繊維、炭素繊維、気相成長炭素繊維、ケブラー繊維、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される強化用繊維材料をキュアー工程の前に加えることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
a) CNT主鎖;および
b) 一般式-Si-(R1)(R2)(R3)(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素、ヒドロキシル、チオール、飽和脂肪族炭化水素、不飽和脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、アミン、アミド、エステル、エーテル、エポキシ、シリル、ゲルミル、スタニル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される)を有していて、化学結合によってCNT主鎖に結びついているシラン化学種;
を含むシラン官能化CNT。
【請求項24】
CNTが、SWNT、MWNT、2層カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載のシラン官能化CNT。
【請求項25】
シラン化学種が、ヒドロキシル、アミノ、クロロ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリンカー種を介してCNT主鎖に共有結合されている、請求項23に記載のシラン官能化CNT。
【請求項26】
シラン化学種の少なくとも一部がCNTのサイドウォールに結合されている、請求項23に記載のシラン官能化CNT。
【請求項27】
結合しているシラン官能基とカーボンナノチューブの炭素原子との比が約0.01:1〜約0.2:1の範囲である、請求項23に記載のシラン官能化CNT。
【請求項28】
R1〜R3の少なくとも1つがポリマー物質と相互作用することができる、請求項23に記載のシラン官能化CNT。
【請求項29】
a) シラン官能化CNT;および
b) ポリマーホスト材料;
を含み、シラン官能化CNTが、ポリマーホスト材料と相互作用することができる官能性を有する、CNT-ポリマー複合物。
【請求項30】
シラン官能化CNTが、SWNT、2層カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるCNTを含む、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項31】
ポリマーホスト材料が、エポキシ、ビニルエステル、ポリエステル、ビスマレイミド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項32】
ポリマーホスト材料が熱硬化性樹脂である、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項33】
ポリマーホスト材料が熱可塑性樹脂である、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項34】
シラン官能化CNTがポリマーホスト材料と共有結合的に相互作用する、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項35】
シラン官能化CNTが、共有結合、水素結合、ファンデルワールス力、双極子間相互作用、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるメカニズムによってポリマーホスト材料と相互作用する、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項36】
シラン官能化CNTがポリマーマトリックスの全体にわたって均一に分散されている、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項37】
シラン官能化CNTが、約0.1重量%〜約10重量%の範囲の量にてCNT-ポリマー複合物中に存在する、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項38】
シラン官能化CNTがほとんどデバンドルされている、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項39】
CNT-ポリマー複合物が、そのままの状態のポリマーホスト材料を凌ぐ少なくとも1つの特性向上を有し、前記特性向上が、機械的な向上、電気的な向上、熱的な向上、および光学的な向上からなる群から選択される、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項40】
CNT-ポリマー複合物が多機能である、請求項29に記載のCNT-ポリマー複合物。
【請求項41】
a) CNT;
b) ある量の強化用繊維材料;および
c) ポリマー;
を含む複合材料であって、このときCNTが、強化用繊維材料とポリマーとを化学的に結びつけるブリッジとして作用する、前記複合材料。
【請求項42】
CNTがシラン官能化されている、請求項41に記載の複合材料。
【請求項43】
CNTがSWNTである、請求項41に記載の複合材料。
【請求項44】
強化用繊維材料がシラン官能化されている、請求項41に記載の複合材料。
【請求項45】
強化用繊維材料がガラス繊維である、請求項41に記載の複合材料。
【請求項46】
ガラス繊維がリサイズ処理されている、請求項45に記載の複合材料。
【請求項47】
ポリマー物質がエポキシである、請求項41に記載の複合材料。
【請求項48】
ガラス繊維がシート織物の形態で存在する、請求項45に記載の複合材料。
【請求項49】
このようなシート織物を、シラン官能化CNTおよびそれらの間のポリマーと共に積み重ねる、請求項48に記載の複合材料。
【請求項50】
a) ある量の強化用繊維材料を供給する工程;
b) CNTを強化用繊維材料に加えて、CNTで被覆された繊維を形成させる工程;および
c) ポリマー物質とCNT被覆繊維とを接触させて、CNT、強化用繊維材料、およびポリマー物質を含む複合材料を形成させる工程;
を含む方法。
【請求項51】
ある量の強化用繊維材料がガラス繊維である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
CNTが、SWNT、MWNT、2層カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
CNTがSWNTである、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
CNTがシラン官能化されている、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
ガラス繊維が有機シラン化学種でリサイズ処理されている、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
CNTを強化用繊維材料に加えてCNT被覆繊維を形成させる工程が初期湿潤プロセスを含み、前記プロセスが
a) CNTと強化用繊維材料を溶媒中に分散させて混合物を作製する工程;および
b) 前記溶媒を除去して、CNTで被覆された繊維を残す工程;
を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
CNTが官能化されている、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
CNTと強化用繊維材料のどちらかに存在する官能基によって、CNTが強化用繊維材料に化学的に結びついている、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
CNTと強化用繊維材料のどちらにも存在する官能基によって、CNTが強化用繊維材料に化学的に結びついている、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
ポリマー物質が、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
ポリマー物質が、エポキシ、ビニルエステル、ポリエステル、ビスマレイミド、ポリスチレン、ポリブタジエンもしくはポリイソプレン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
ポリマー物質が少なくとも1種のポリマー前駆体を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項63】
少なくとも1種のポリマー前駆体を重合させる工程をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
少なくとも1種のポリマー前駆体をキュアーする工程をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
強化用繊維材料がCNTでサイズ処理される、請求項50に記載の方法。
【請求項66】
CNTと強化用繊維材料のどちらかがポリマー物質に化学的に結合されている、請求項58または59いずれかに記載の方法。
【請求項67】
CNTと強化用繊維材料のどちらもポリマー物質に化学的に結合されている、請求項58または59いずれかに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図31】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図31】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公表番号】特表2007−502246(P2007−502246A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522028(P2006−522028)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/024338
【国際公開番号】WO2005/012171
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501105635)ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ (26)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/024338
【国際公開番号】WO2005/012171
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501105635)ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ (26)
【Fターム(参考)】
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