説明

ポリマー部材の製造方法およびポリマー部材

【課題】吸水性層と非吸水性層との積層構造を有し、該吸水性層と該非吸水性層との密着性が非常に優れたポリマー部材を、簡便に製造する方法を提供する。また、吸水性層と非吸水性層との密着性が非常に優れたポリマー部材を提供する。
【解決手段】本発明のポリマー部材の製造方法は、吸水性層(A)と非吸水性層(B)との積層構造を有するポリマー部材を製造する方法であって、該吸水性層(A)は吸水性物質(a)を含み、該非吸水性層(B)は重合性組成物(b)から形成され、該重合性組成物(b)は該吸水性物質(a)が吸収可能な重合性モノマー(m)を含み、該重合性組成物(b)を該吸水性層(A)に塗布する工程(I)、該重合性モノマー(m)を重合する工程(II)、該吸水性物質(a)が吸水する工程(III)、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー部材の製造方法およびポリマー部材に関する。より詳細には、本発明は、吸水性層と非吸水性層との積層構造を有するポリマー部材の製造方法およびポリマー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性層と非吸水性層との積層構造を有するポリマー部材は、医学的分野、光学的分野、電気的分野、機械的分野などにおいて、各種の新しい機能を付加した材料として期待されている。このような吸水性層と非吸水性層との積層構造を有するポリマー部材においては、吸水性層と非吸水性層との密着性が重要となる。
【0003】
例えば、ポリマー接着剤の塗布された支持体上に、親水性ポリマーの水溶液をキャストし、次いで、キャストした親水性ポリマーを架橋してハイドロゲルを形成させ、このようにして得られた複合体に、ポリマー接着剤と親水性ポリマーとの共重合を起こさせる電離線を暴露させることによって吸水性層と非吸水性層とを密着させ、吸水性層と非吸水性層との積層構造を有するポリマー部材を製造する方法が報告されている(特許文献1)。しかし、このような製造方法においては、製造工程が非常に煩雑であり、製造コストの増大につながる。また、吸水性層と非吸水性層との密着性も十分ではない。
【0004】
また、吸水性層と非吸水性層との密着性を確保するために、無機充填剤と水溶性ポリマーとを含有するハイドロゲル用プライマーを用いて吸水性層と非吸水性層との積層構造を有するポリマー部材を製造する方法が報告されている(特許文献2)。しかし、このようなプライマーによる中間層を設ける製造方法においては、製造工程が非常に煩雑であり、製造コストの増大につながる。また、吸水性層と非吸水性層との密着性も十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−315526号公報
【特許文献2】特開平11−152426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、吸水性層と非吸水性層との積層構造を有し、該吸水性層と該非吸水性層との密着性が非常に優れたポリマー部材を、簡便に製造する方法を提供することを目的とする。また、吸水性層と非吸水性層との密着性が非常に優れたポリマー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポリマー部材の製造方法は、
吸水性層(A)と非吸水性層(B)との積層構造を有するポリマー部材を製造する方法であって、
該吸水性層(A)は吸水性物質(a)を含み、
該非吸水性層(B)は重合性組成物(b)から形成され、
該重合性組成物(b)は該吸水性物質(a)が吸収可能な重合性モノマー(m)を含み、
該重合性組成物(b)を該吸水性層(A)に塗布する工程(I)、
該重合性モノマー(m)を重合する工程(II)、
該吸水性物質(a)が吸水する工程(III)、
を含む。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記吸水性物質(a)がポリマーである。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記ポリマーが架橋ポリマーである。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記吸水性物質(a)の吸水率が110%以上である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記重合性モノマー(m)を重合する工程(II)が光照射を利用する。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記重合性モノマー(m)がアクリル系モノマーである。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記重合性組成物(b)が粘着剤組成物である。
【0014】
好ましい実施形態においては、本発明のポリマー部材の製造方法は、テープ状またはシート状のポリマー部材を製造する。
【0015】
本発明のポリマー部材は、本発明の製造方法により得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸水性層と非吸水性層との積層構造を有し、該吸水性層と該非吸水性層との密着性が非常に優れたポリマー部材を、簡便に製造する方法を提供することができる。また、吸水性層と非吸水性層との密着性が非常に優れたポリマー部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪ポリマー部材の製造方法≫
本発明のポリマー部材の製造方法は、吸水性層(A)と非吸水性層(B)との積層構造を有するポリマー部材を製造する方法である。このようにして得られるポリマー部材は、任意の適切な形状を有し得るが、好ましくは、テープ状またはシート状である。
【0018】
本発明の製造方法で得られるポリマー部材は、吸水性層(A)と非吸水性層(B)との積層構造を有する限り、任意の適切な他の層を有していても良い。このような他の層は、1層のみであっても良いし、2層以上であっても良い。
【0019】
吸水性層(A)は吸水性物質(a)を含む。吸水性層(A)中の吸水性物質(a)の含有割合は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%、さらに好ましくは90重量%〜100重量%、特に好ましくは95重量%〜100重量%、最も好ましくは実質的に100重量%である。
【0020】
吸水性物質(a)としては、吸水性を示す物質であれば、任意の適切な物質を採用し得る。ここでいう吸水性とは、水を吸収し、その水を保持することが可能な性質をいう。このような吸水性物質(a)としては、例えば、天然高分子や合成高分子などのポリマー、無機質多孔質体などが挙げられる。
【0021】
吸水性物質(a)としては、ポリマーが好ましい。より好ましくは、分子量が3000以上のポリマーである。このようなポリマーとしては、架橋ポリマーが好ましい。吸水性物質(a)が架橋ポリマーの場合、分子量が実質的に無限大となり得るので、分子量の上限値は任意の適切な値を採り得る。
【0022】
天然高分子としては、例えば、多糖類、タンパク質などが挙げられる。
【0023】
合成高分子としては、例えば、アクリル系ポリマー、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)などが挙げられる。
【0024】
吸水性物質(a)の吸水率は、好ましくは110%以上であり、より好ましくは150%以上であり、さらに好ましくは200%以上であり、特に好ましくは300%以上である。ここで、吸水性物質(a)の吸水率とは、吸水性物質(a)の水の吸水能力を示す指標の一つであり、重量が0.1gの吸水性物質(a)を100gの液体中に25℃で1時間浸漬し、その後に液体中から吸水性物質(a)を取り出し、吸液後の吸水性物質(a)と乾燥後の吸水性物質(a)との重量比から求められる値であり、下記式にて求められる。
【0025】
吸水性物質(a)の吸水率(%)=[吸液後の吸水性物質(a)/乾燥後の吸水性物質(a)]×100
【0026】
上記乾燥は、熱乾燥や真空乾燥など任意の適切な乾燥方法を適用でき、代表的には、吸液させる液体が水の場合には、液体中から取り出した吸水性物質(a)を130℃で3時間熱処理する方法を採用し得る。
【0027】
吸水性層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、吸水性物質(a)以外の任意の適切な成分が含まれていても良い。
【0028】
非吸水性層(B)は重合性組成物(b)から形成される。
【0029】
重合性組成物(b)は吸水性物質(a)が吸収可能な重合性モノマー(m)を含む。重合性組成物(b)中の重合性モノマー(m)の含有割合は、好ましくは50重量%以上100重量%未満、より好ましくは70重量%〜99.999重量%、さらに好ましくは90重量%〜99.99重量%、特に好ましくは95重量%〜99.9重量%である。
【0030】
重合性モノマー(m)としては、ラジカル重合やカチオン重合などの反応機構を問わず、光エネルギーや熱エネルギーを利用して重合可能な化合物である。このような重合性モノマー(m)は、例えば、アクリル系ポリマーを形成するアクリル系モノマー等のラジカル重合性モノマー;エポキシ系樹脂を形成するエポキシ系モノマー、オキセタン系樹脂を形成するオキセタン系モノマー、ビニルエーテル系樹脂を形成するビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合性モノマー;ウレタン系樹脂を形成するポリイソシアネートとポリオールとの組み合わせ;ポリエステル系樹脂を形成するポリカルボン酸、ポリオールとの組み合わせ;等が挙げられる。なお、重合性モノマーは、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。
【0031】
重合性モノマー(m)としては、重合速度が速く、生産性に優位である点から、アクリル系モノマーが好適に用いられる。
【0032】
このように、本発明では重合性モノマー(m)としてアクリル系モノマーが好適に用いられるため、重合性組成物(b)としては、アクリル系重合性組成物が好ましい。
【0033】
アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを好適に用いることができる。
【0034】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリルおよび/またはメタクリル」を表し、他も同様である。
【0035】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。なお、ここでいう(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単官能(メタ)アクリル酸アルキルエステルを意味する。
【0036】
直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、好ましくは、アルキル基の炭素数が2〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくは、アルキル基の炭素数が2〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0037】
環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0038】
重合性モノマー(m)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは重合性モノマー(m)の主たるモノマー成分(モノマー主成分)として用いられ得る。この場合、重合性モノマー(m)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは80重量%以上である。
【0040】
重合性モノマー(m)として、極性基含有モノマーや多官能性モノマーなどの各種の共重合性モノマーも好適に用いられる。
【0041】
極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;などが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、上記の中でも、カルボキシル基含有モノマーまたはその無水物が好適であり、アクリル酸が特に好適である。
【0042】
重合性モノマー(m)中の極性基含有モノマーの含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0043】
多官能性モノマーとしては、例えば、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0044】
重合性モノマー(m)中の多官能性モノマーの含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。
【0045】
重合性モノマー(m)としては、極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマーを用いることもできる。このような共重合性モノマーとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;フッ素原子含有(メタ)アクリレート;ケイ素原子含有(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
【0046】
重合性組成物(b)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、重合性モノマー(m)以外の任意の適切な成分が含まれていても良い。このような成分としては、例えば、重合開始剤が挙げられる。
【0047】
重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤を目的に応じて適宜選択して採用し得る。
【0048】
重合開始剤は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。
【0049】
光重合開始剤としては、任意の適切な光重合開始剤を採用し得る。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0050】
光重合開始剤は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。
【0051】
ケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)など)等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)など)、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)などが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0052】
光重合開始剤の使用量としては、例えば、重合性組成物(b)中の重合性モノマー(m)100重量部に対して、好ましくは5重量部以下であり、より好ましくは0.01〜5重量部であり、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。
【0053】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤(例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど)、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤(例えば、有機過酸化物/バナジウム化合物;有機過酸化物/ジメチルアニリン;ナフテン酸金属塩/ブチルアルデヒド、アニリンあるいはアセチルブチロラクトン;等の組み合わせなど)などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。なお、レドックス系重合開始剤を熱重合開始剤として用いれば、常温で重合させることが可能である。
【0054】
熱重合開始剤の使用量としては、例えば、重合性組成物(b)中の重合性モノマー(m)100重量部に対して、好ましくは5重量部以下であり、より好ましくは0.01〜5重量部であり、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。
【0055】
重合性組成物(b)は、好ましくは粘着剤組成物である。すなわち、重合性組成物(b)は、好ましくは、粘着剤を形成し得る。
【0056】
本発明のポリマー部材の製造方法は、重合性組成物(b)を吸水性層(A)に塗布する工程(I)、重合性モノマー(m)を重合する工程(II)、吸水性物質(a)が吸水する工程(III)、を含む。
【0057】
工程(I)における塗布の方法としては、例えば、任意の適切なコーターを用いることができる。このようなコーターとしては、例えば、コンマロールコーター、ダイロールコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどが挙げられる。
【0058】
工程(I)における重合性組成物(b)の塗布の量としては、目的に応じて、任意の適切な量を採用し得る。
【0059】
工程(II)における重合性モノマー(m)の重合の方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。
【0060】
工程(II)における重合性モノマー(m)の重合は、例えば、光照射による光重合により行うことができる。光源、照射エネルギー、照射方法、照射時間などの条件については、任意の適切な条件を採用し得る。
【0061】
光照射に用いる活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられる。好ましくは紫外線である。
【0062】
活性エネルギー線の照射としては、例えば、ブラックライトランプ、ケミカルランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどによる照射が挙げられる。
【0063】
工程(II)においては加熱を施しても良い。加熱方法としては、任意の適切な加熱方法を採用し得る。加熱方法としては、例えば、電熱ヒーターを用いた加熱方法、赤外線などの電磁波を用いた加熱方法などが挙げられる。
【0064】
工程(III)においては、吸水性物質(a)が吸水する。吸水の方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、任意の適切な時間において水中に浸漬させる方法が挙げられる。
【0065】
≪ポリマー部材≫
本発明の製造方法で得られるポリマー部材は、吸水性層(A)と非吸水性層(B)との積層構造を有する。
【0066】
本発明の製造方法で得られるポリマー部材は、吸水性層(A)と非吸水性層(B)との積層構造を有する限り、任意の適切な他の層を有していても良い。このような他の層は、1層のみであっても良いし、2層以上であっても良い。
【0067】
本発明の製造方法で得られるポリマー部材は、任意の適切な形状を有し得るが、好ましくは、テープ状またはシート状である。
【0068】
本発明の製造方法で得られるポリマー部材の全体の厚さは、好ましくは1〜5000μmであり、より好ましくは10〜1000μmであり、さらに好ましくは20〜500μmである。本発明の製造方法で得られるポリマー部材の全体の厚さが上記範囲内に収まれば、シート形状として巻取りやすく、取り扱い性に優れ得る。
【0069】
本発明の製造方法で得られるポリマー部材中の吸水性層(A)の厚さは、好ましくは0.5〜2500μmであり、より好ましくは1〜500μmであり、さらに好ましくは5〜250μmである。本発明の製造方法で得られるポリマー部材中の吸水性層(A)の厚さが上記範囲内に収まれば、シート形状として巻取りやすく、取り扱い性に優れ得る。
【0070】
本発明の製造方法で得られるポリマー部材において、最外層を粘着剤層(感圧性接着剤層)とした場合には、本発明の製造方法で得られるポリマー部材を粘着テープまたは粘着シートとして用いることができる。
【0071】
本発明の製造方法で得られるポリマー部材に、任意の適切な粘着剤層(感圧性接着剤)(例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤など)による粘着剤層(感圧性接着剤層)をさらに設けることでも、本発明の製造方法で得られるポリマー部材をポリマー部材を粘着テープまたは粘着シートとして用いることができる。
【0072】
本発明の製造方法で得られるポリマー部材の表面は、カバーフィルムで保護されていてもよい。カバーフィルムは、剥がされてもよいし、あるいは剥がされることなくそのままの状態を維持してもよい。カバーフィルムは、剥離性を有していてもよいし、剥離性を有していなくてもよい。カバーフィルムは、平滑性を有していてもよいし、平滑性を有していなくてもよい。
【0073】
本発明のポリマー部材の製造方法の工程(II)において光重合を採用する場合、空気中の酸素により重合反応が阻害され得るため、工程(II)ではカバーフィルムを用いて空気中の酸素を遮断することが好ましい。
【0074】
カバーフィルムとしては、酸素を透過し難い薄葉体であれば、任意の適切なカバーフィルムを採用し得る。カバーフィルムとしては、光重合反応を用いる場合は透明なものが好ましく、例えば、任意の適切な剥離紙などが挙げられる。具体的には、カバーフィルムとしては、例えば、離型処理剤(剥離処理剤)による離型処理層(剥離処理層)を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などが挙げられる。なお、低接着性基材では、両面が離型面と利用することができ、一方、離型処理層を有する基材では、離型処理層表面を離型面(離型処理面)として利用することができる。
【0075】
カバーフィルムとしては、例えば、カバーフィルム用基材の少なくとも一方の面に離型処理層が形成されているカバーフィルム(離型処理層を有する基材)を用いてもよいし、カバーフィルム用基材をそのまま用いてもよい。
【0076】
カバーフィルム用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や、紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらを、ラミネートや共押し出しなどにより、複層化したもの(2〜3層の複合体)等が挙げられる。カバーフィルム用基材としては、透明性の高いプラスチック系基材フィルム(特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム)が用いられたカバーフィルム用基材が特に好ましい。
【0077】
離型処理剤としては、任意の適切な離型処理剤を採用し得る。離型処理剤としては、例えば、シリコーン系離型処理剤、フッ素系離型処理剤、長鎖アルキル系離型処理剤などが挙げられる。離型処理剤は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。なお、離型処理剤により離型処理が施されたカバーフィルムは、例えば、任意の適切な形成方法により、形成され得る。
【0078】
カバーフィルムの厚みとしては、任意の適切な厚みを採用し得る。カバーフィルムの厚みとしては、取り扱い易さと経済性の点から、例えば、好ましくは12〜250μmであり、より好ましくは20〜200μmである。
【0079】
カバーフィルムは、単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0081】
なお、以下の各例で用いたカバーフィルムは、いずれも、片面がシリコーン系離型処理された、厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「MRN38」、三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製)を用いた。
【0082】
〔合成例1〕(光重合性組成物(A)の調製)
シクロヘキシルアクリレート:100重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部、および光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した、シロップ状の組成物(以下、これを「光重合性組成物(A)」という)を調製した。
【0083】
〔合成例2〕(光重合性組成物(B)の調製)
ブチルアクリレート:100重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部、および光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した、シロップ状の組成物(以下、これを「光重合性組成物(B)」という)を調製した。
【0084】
〔合成例3〕(光重合性組成物(C)の調製)
テトラヒドロフルフリルアクリレート:100重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部、および光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した、シロップ状の組成物(以下、これを「光重合性組成物(C)」という)を調製した。
【0085】
〔合成例4〕(光重合性組成物(D)の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート:90重量部、アクリル酸:10重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部、および光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した、シロップ状の組成物(以下、これを「光重合性組成物(D)」という)を調製した。
【0086】
〔合成例5〕(光重合性組成物(E)の調製)
ジエチルアクリルアミド:100重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部、および光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.1重量部を、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、冷却管を備えた4つ口のセパラブルフラスコ中で均一になるまで攪拌した後、窒素ガスによりバブリングを1時間行って溶存酸素を除去した。その後、ブラックライトランプにより紫外線をフラスコ外側より照射して重合し、適度な粘度になった時点でランプを消灯、窒素吹き込みを停止して、重合率7%の一部が重合した、シロップ状の組成物(以下、これを「光重合性組成物(E)」という)を調製した。
【0087】
〔合成例6〕(水溶性物質(A)の調製)
光重合性組成物(E)を、カバーフィルムの離型処理された面に、硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、光重合性組成物層(E)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、水溶性物質(以下、これを「水溶性物質(A)」という)を調製した。
【0088】
〔合成例7〕(吸水性シート(A)の作製)
ヒドロキシエチルメタクリレート:100重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.2重量部、水溶性物質(A):10重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.2重量部、および光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.2重量部を均一に混合して得られた光重合性シロップ組成物(以下、これを「光重合性シロップ組成物(A)」という)を、カバーフィルムの離型処理された面に、硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、光重合性シロップ組成物層(A)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、吸水性シート(以下、これを「吸水性シート(A)」という)を作製した。
【0089】
〔合成例8〕(吸水性シート(B)の作製)
N−ビニルピロリドン:100重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.2重量部、水溶性物質(A):10重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.2重量部、および光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.2重量部を均一に混合して得られた光重合性シロップ組成物(以下、これを「光重合性シロップ組成物(B)」という)を、カバーフィルムの離型処理された面に、硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、光重合性シロップ組成物層(B)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、吸水性シート(以下、これを「吸水性シート(B)」という)を作製した。
【0090】
〔合成例9〕(吸水性シート(C)の作製)
ジエチルアクリルアミド:100重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.2重量部、水溶性物質(A):10重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.2重量部、および光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製):0.2重量部を均一に混合して得られた光重合性シロップ組成物(以下、これを「光重合性シロップ組成物(C)」という)を、カバーフィルムの離型処理された面に、硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、光重合性シロップ組成物層(C)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、吸水性シート(以下、これを「吸水性シート(C)」という)を作製した。
【0091】
〔合成例10〕(吸水性シート(D)の作製)
蒸留水:100重量部、ポリビニルアルコール(商品名「PVA117」、クラレ製):10重量部を、フラスコ内で均一になるまで撹拌した後、水溶性有機チタン化合物(商品名「TC310」、松本製薬工業社製):0.1重量部を加え、さらに均一になるまで撹拌して得られた水溶性シロップ組成物(以下、これを「水溶性シロップ組成物(A)」という)を、カバーフィルムの離型処理された面に、硬化後の厚さが10μmとなるように塗布し、130℃で2時間乾燥し、吸水性シート(以下、これを「吸水性シート(D)」という)を作製した。
【0092】
〔合成例11〕(含水シート(A)の作製)
両面のカバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(A)を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水溶液を除去し、含水シート(以下、これを「含水シート(A)」という)を作製した。
【0093】
〔合成例12〕(含水シート(B)の作製)
両面のカバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(B)を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水溶液を除去し、含水シート(以下、これを「含水シート(B)」という)を作製した。
【0094】
〔合成例13〕(含水シート(C)の作製)
両面のカバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(C)を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水溶液を除去し、含水シート(以下、これを「含水シート(C)」という)を作製した。
【0095】
〔合成例14〕(含水シート(D)の作製)
両面のカバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(D)を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水溶液を除去し、含水シート(以下、これを「含水シート(D)」という)を作製した。
【0096】
〔合成例15〕(光重合性組成物シート(A)の作製)
光重合性組成物(A)を、カバーフィルムの離型処理された面に塗布し、光重合性組成物層(A)(厚さ:100μm)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、光重合性組成物シート(以下、これを「光重合性組成物シート(A)」という)を作製した。
【0097】
〔合成例16〕(光重合性組成物シート(B)の作製)
光重合性組成物(B)を、カバーフィルムの離型処理された面に塗布し、光重合性組成物層(B)(厚さ:100μm)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、光重合性組成物シート(以下、これを「光重合性組成物シート(B)」という)を作製した。
【0098】
〔合成例17〕(光重合性組成物シート(C)の作製)
光重合性組成物(C)を、カバーフィルムの離型処理された面に塗布し、光重合性組成物層(C)(厚さ:100μm)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、光重合性組成物シート(以下、これを「光重合性組成物シート(C)」という)を作製した。
【0099】
〔合成例18〕(光重合性組成物シート(D)の作製)
光重合性組成物(D)を、カバーフィルムの離型処理された面に塗布し、光重合性組成物層(D)(厚さ:100μm)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、光重合性組成物シート(以下、これを「光重合性組成物シート(D)」という)を作製した。
【0100】
〔実施例1〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(A)の露出面に、光重合性組成物(A)を塗布し、光重合性組成物層(A)(厚さ:100μm)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、光重合性組成物層(A)が硬化した層が吸水性シート(A)の片面に積層した積層体を得た。この積層体を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水分を除去し、吸水性層と非吸水性層との積層構造を有するポリマー部材(1)を得た。
【0101】
〔実施例2〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(B)の露出面に、光重合性組成物(B)を塗布し、光重合性組成物層(B)(厚さ:100μm)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、光重合性組成物層(B)が硬化した層が吸水性シート(B)の片面に積層した積層体を得た。この積層体を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水分を除去し、吸水性層と非吸水性層との積層構造を有するポリマー部材(2)を得た。
【0102】
〔実施例3〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(C)の露出面に、光重合性組成物(C)を塗布し、光重合性組成物層(C)(厚さ:100μm)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、光重合性組成物層(C)が硬化した層が吸水性シート(C)の片面に積層した積層体を得た。この積層体を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水分を除去し、吸水性層と非吸水性層との積層構造を有するポリマー部材(3)を得た。
【0103】
〔実施例4〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(D)の露出面に、光重合性組成物(D)を塗布し、光重合性組成物層(D)(厚さ:100μm)を形成させた。そして、該層上に、離型処理された面が接する形態でカバーフィルムを貼り合わせ、ブラックライトを用いて紫外線(照度:5mW/cm)を3分間照射し、該層を硬化させて、光重合性組成物層(D)が硬化した層が吸水性シート(D)の片面に積層した積層体を得た。この積層体を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水分を除去し、吸水性層と非吸水性層との積層構造を有するポリマー部材(4)を得た。
【0104】
〔比較例1〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(A)の露出面と、含水シート(A)とを貼り合わせ、ポリマー部材(C1)を得た。
【0105】
〔比較例2〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(B)の露出面と、含水シート(B)とを貼り合わせ、ポリマー部材(C2)を得た。
【0106】
〔比較例3〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(C)の露出面と、含水シート(C)とを貼り合わせ、ポリマー部材(C3)を得た。
【0107】
〔比較例4〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(D)の露出面と、含水シート(D)とを貼り合わせ、ポリマー部材(C4)を得た。
【0108】
〔比較例5〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(A)の露出面と、カバーフィルムを剥がした光重合性組成物シート(A)の露出面とを貼り合わせ、積層体を得た。この積層体を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水分を除去し、ポリマー部材(C5)を得た。
【0109】
〔比較例6〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(B)の露出面と、カバーフィルムを剥がした光重合性組成物シート(B)の露出面とを貼り合わせ、積層体を得た。この積層体を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水分を除去し、ポリマー部材(C6)を得た。
【0110】
〔比較例7〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(C)の露出面と、カバーフィルムを剥がした光重合性組成物シート(C)の露出面とを貼り合わせ、積層体を得た。この積層体を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水分を除去し、ポリマー部材(C7)を得た。
【0111】
〔比較例8〕
カバーフィルムを剥がして吸水層を露出させた吸水性シート(D)の露出面と、カバーフィルムを剥がした光重合性組成物シート(D)の露出面とを貼り合わせ、積層体を得た。この積層体を蒸留水に1分間浸漬させた後、余分な水分を除去し、ポリマー部材(C8)を得た。
【0112】
〔評価〕
(投錨性試験)
実施例および比較例で得られたポリマー部材を、幅2cm×長さ5cmに切断した後、カバーフィルムを剥がして非含水層(実施例1〜4:光重合性組成物層が硬化した層、比較例1〜4:吸水性シートの層、比較例5〜8:光重合性組成物シートの層)を露出させ、露出面を両面テープにてアルミ板に固定した。
その後、含水層(実施例1〜4:吸水性シートが吸水して得られた吸水層、比較例1〜4:含水シート、比較例5〜8:吸水性シートが吸水して得られた吸水層)をクリップで挟みこみ、テンシロンにて、引張速度50mm/min、室温(23℃)で引き剥がす操作を行い、含水層と非含水層との剥離状況を評価した。
評価結果を表1に示した。
○:含水層と非含水層の界面の密着性が良好であり、無理な破壊により界面は凝集破壊した。
△:含水層と非含水層の界面の密着性が不良であり、無理な破壊により界面は界面破壊した。
×:投錨性試験を行えないほど、含水層と非含水層の界面の密着性が不良であった。
【0113】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の製造方法により得られるポリマー部材は、医学的分野、光学的分野、電気的分野、機械的分野などにおいて、各種の新しい機能を付加した材料として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性層(A)と非吸水性層(B)との積層構造を有するポリマー部材を製造する方法であって、
該吸水性層(A)は吸水性物質(a)を含み、
該非吸水性層(B)は重合性組成物(b)から形成され、
該重合性組成物(b)は該吸水性物質(a)が吸収可能な重合性モノマー(m)を含み、
該重合性組成物(b)を該吸水性層(A)に塗布する工程(I)、
該重合性モノマー(m)を重合する工程(II)、
該吸水性物質(a)が吸水する工程(III)、
を含む、ポリマー部材の製造方法。
【請求項2】
前記吸水性物質(a)がポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリマーが架橋ポリマーである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記吸水性物質(a)の吸水率が110%以上である、請求項1から3までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記重合性モノマー(m)を重合する工程(II)が光照射を利用する、請求項1から4までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記重合性モノマー(m)がアクリル系モノマーである、請求項1から5までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記重合性組成物(b)が粘着剤組成物である、請求項1から6までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
テープ状またはシート状のポリマー部材を製造する、請求項1から7までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれかに記載の製造方法により得られるポリマー部材。

【公開番号】特開2013−63605(P2013−63605A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204108(P2011−204108)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】