説明

ポリマー重合装置及びポリマー重合方法

【課題】 ポリマー重合溶液に溶存している酸素を不活性ガスで置換するに際して、ポリマー重合溶液中で変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー反応溶液に吹き込まれる不活性ガスの吹き込み流量を制御し、ポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能なポリマー重合装置及びポリマー重合方法を提供する。
【解決手段】 ポリマー重合装置1において、制御装置3によるコントロールバルブ20の開閉制御に基づき、赤外吸収分析装置17及び制御部14を介してモニタされるポリマーの重合率の値が閾値(30%)以下である場合には、窒素ガスタンク18からガスパイプ19を介してポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの流量を70l/minに制御するとともに、ポリマーの重合率が閾値(30%)以上になった場合には、窒素ガスの流量を70l/minよりも小さい30l/minに制御するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応槽内に、少なくともモノマー、溶媒、重合開始剤を含有するポリマー重合溶液を充填し、撹拌しながらモノマーの重合反応を行ってポリマーを生成する重合装置及びポリマー重合方法に関し、特に、ポリマーの重合反応における阻害因子となりポリマー重合溶液に溶存している酸素を不活性ガスで置換するに際して、ポリマー重合溶液中で刻々と変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの吹き込み流量を制御することにより、ポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能なポリマー重合装置及びポリマー重合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリマーを重合生成するポリマー重合溶液に溶存している酸素は、ポリマー重合溶液に含有される重合開始剤からラジカルの生成を阻害する作用を行うことから、初期の目的に沿ってポリマーの重合反応を円滑に且つ適正に行うためには、ポリマー重合溶液中における溶存酸素濃度を適正にコントロールすることは極めて重要なものである。
【0003】
ここに、ポリマー重合溶液中に溶存している酸素をコントロールするについては、窒素等の不活性ガスをポリマー重合溶液に吹き込んで溶存酸素の不活性ガス置換を行うことが一般に行われている。このとき、不活性ガス置換を効率的に行うべく、ポリマー重合溶液の液面上部より窒素を送入する方法だけでなく、ポリマー重合溶液中に不活性ガスを吹き込みバブリングさせることで気液界面の表面積を増加させ、その不活性ガス置換効率をより高める方法も採用されている。
【0004】
ところで、ポリマー重合溶液が充填される反応槽の上方位置には、ポリマー重合溶液に含有される溶媒の揮発成分を冷却して液化し、再度反応槽中に回収するためのコンデンサ(冷却器)が配設されている。かかるコンデンサは、反応槽内のポリマー重合溶液に不活性ガスが吹き込まれ、その不活性ガスを反応系外に排出する必要があることから、反応槽の上壁に形成された孔に嵌合され上下端が開放された円筒状筒体の内部に螺旋状に形成した冷却管を配置した構成を有している。冷却管には、冷却水が循環されており、ポリマー重合溶液中の溶媒揮発成分は、冷却管で冷却されることにより液化し、再度反応槽内に回収されるものである。
【0005】
そして、反応槽内のポリマー重合溶液中でモノマーの重合反応が進行してポリマーが生成されていくと、ポリマー重合溶液は次第に粘調になって粘度が増加していく。このようにポリマー重合溶液の粘度が増加していくと、前記のようにポリマー重合溶液に吹き込まれた不活性ガスの気泡が液面に到達しても破泡し難くなり、気泡が一旦破泡すると粘調な液体が液面の上方で飛散することとなる。
【0006】
このように粘調なポリマー重合溶液がその液面の上方で飛散すると、液滴がコンデンサの円筒状筒体の内部にまで到達し、円筒状筒体の内壁や冷却管に付着してしまう虞があり、場合によってはコンデンサの円筒状筒体が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまう問題がある。
【0007】
かかる場合、例えば、特開2003−103110号公報に記載されているように、減圧タンク内に液剤を導入し、減圧下で液体を撹拌して液中の泡を膨張、浮上させるとともに、かかる泡をセンサを介して検出し、センサからの検出信号に基づきタンク上部に備えられたエアノズルから泡に対して圧力空気を噴射して泡を破泡することも考えられる。
【特許文献1】特開2003−103110号公報(第1ページ〜第4ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載された脱泡方法によれば、タンク内の液体中で生成され液面まで浮上する泡をセンサにより検出し、そのセンサ検出信号に基づきエアノズルを介して圧力空気を泡に噴射するように構成されているので、液面に存在する泡を破泡することがある程度可能なものではある。
【0009】
しかしながら、かかる特許文献1の脱泡方法を、前記したポリマー重合溶液を充填した反応槽に適用した場合、モノマーの重合反応の進行に伴いポリマー重合溶液の粘度が増加していくことに起因して液面に生成される不活性ガスの気泡をセンサで検出し、圧力空気を気泡に噴出して気泡を破泡することは可能ではあるが、気泡の破泡時にポリマー重合溶液の粘調な液体が液面の上方で飛散することを防止できない。
【0010】
従って、特許文献1の脱泡方法によっても、粘調なポリマー重合溶液がその液面の上方で飛散すると、液滴がコンデンサの円筒状筒体の内部にまで到達し、円筒状筒体の内壁や冷却管に付着してしまう虞があり、場合によってはコンデンサの円筒状筒体が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまう問題が、まだなお残存しているものである。
【0011】
本発明は、前記従来技術における問題点を解消するためになされたものであり、ポリマーの重合反応における阻害因子となりポリマー重合溶液に溶存している酸素を不活性ガスで置換するに際して、ポリマー重合溶液中で刻々と変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー反応溶液に吹き込まれる不活性ガスの吹き込み流量を制御することにより、ポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能なポリマー重合装置及びポリマー重合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため請求項1に係るポリマー重合装置は、反応槽内に、少なくともモノマー、溶媒、重合開始剤を含有するポリマー重合溶液を充填し、撹拌しながらモノマーの重合反応を行ってポリマーを生成するポリマー重合装置において、前記反応槽に連結され、反応槽内のポリマー重合溶液に不活性ガスを吹き込む不活性ガス吹き込み手段と、前記ポリマー重合溶液にて生成されたポリマーの重合率を検出する検出手段と、前記検出手段を介して検出されるポリマーの重合率をモニタするモニタ手段と、前記モニタ手段を介してモニタされるポリマーの重合率の値が所定値以下である場合には、前記不活性ガス吹き込み手段によりポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの流量を第1流量に制御するとともに、前記ポリマーの重合率が所定値以上になった場合には、前記不活性ガスの流量を第1流量よりも小さい第2流量に制御するガス流量制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
ここに、請求項2に記載されているように、前記ポリマー重合装置において、前記不活性ガスは窒素ガスであることが望ましい。
【0014】
また、請求項3に係るポリマー重合装置は、請求項1又は請求項2のポリマー重合装置において、前記検出手段は、赤外吸収分析装置から構成されていることを特徴とし、また、請求項4に係るポリマー重合装置は、請求項3のポリマー重合装置において、前記赤外吸収分析装置は、前記ポリマー重合溶液中に存在するモノマーに由来する吸収ピークの減少割合、又は、ポリマー重合溶液中で生成されるポリマーに由来する吸収ピークの増加割合に基づいてポリマー重合率を検出することを特徴とする。
【0015】
更に、請求項5に係るポリマー重合装置は、請求項1又は請求項2のポリマー重合装置において、前記検出手段は、前記ポリマー重合溶液中でポリマーが生成されるに従って変化するポリマー重合溶液の粘度を測定する粘度測定装置から構成されていることを特徴とし、また、請求項6に係るポリマー重合装置は、請求項5のポリマー重合装置において、前記ポリマー重合溶液中でポリマーが生成されるに従って変化するポリマー重合溶液の粘度とポリマーの重合率との関係を記憶する記憶手段を備え、前記モニタ手段は、前記粘度測定装置を介して測定されるポリマー重合溶液の粘度と前記記憶手段に記憶されたポリマー重合溶液の粘度とポリマーの重合率との関係に基づき、ポリマーの重合率をモニタすることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に係るポリマー重合装置は、反応槽内に、少なくともモノマー、溶媒、重合開始剤を含有するポリマー重合溶液を充填し、撹拌しながらモノマーの重合反応を行ってポリマーを生成するポリマー重合装置において、前記反応槽に連結され、反応槽内のポリマー重合溶液に不活性ガスを吹き込む不活性ガス吹き込み手段と、前記ポリマー重合溶液にて生成されたポリマーの重合率を検出する検出手段と、前記ポリマー重合溶液と同一の重合系で、予め測定されたポリマー重合率の変化とそのポリマー重合率の変化に対応して前記不活性ガス吹き込み手段により吹き込まれる不活性ガスの最適ガス流量との関係を記憶する記憶手段と、前記検出手段を介して検出されるポリマーの重合率をモニタするモニタ手段と、前記モニタ手段を介してモニタされるポリマーの重合率と前記記憶手段に記憶された最適ガス流量の関係とに基づき、前記不活性ガス吹き込み手段によりポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの流量を最適ガス流量に制御するガス流量制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
更に、請求項8に係るポリマー重合方法は、反応槽内に、少なくともモノマー、溶媒、重合開始剤を含有するポリマー重合溶液を充填し、撹拌しながらモノマーの重合反応を行ってポリマーを生成するポリマー重合方法において、前記ポリマー重合溶液にて生成されたポリマーの重合率を検出する重合率検出工程と、前記重合率検出工程にて検出されるポリマー重合率をモニタするモニタ工程と、前記モニタ工程にてモニタされるポリマーの重合率の値が所定値以下である場合には、ポリマー重合溶液に第1流量で不活性ガスを吹き込むとともに、ポリマーの重合率が所定値以上になった場合には、不活ガスの流量を第1流量よりも小さい第2流量に制御する流量制御工程とを含むことを特徴とする。
【0018】
また、請求項9に係るポリマー重合方法は、反応槽内に、少なくともモノマー、溶媒、重合開始剤を含有するポリマー重合溶液を充填し、撹拌しながらモノマーの重合反応を行ってポリマーを生成するポリマー重合方法において、前記ポリマー重合溶液にて生成されたポリマーの重合率を検出する重合率検出工程と、前記重合率検出工程にて検出されるポリマー重合率をモニタするモニタ工程と、前記モニタ工程にてモニタされるポリマー重合率と前記ポリマー重合溶液と同一の重合系で、予め測定されたポリマー重合率の変化とそのポリマー重合率の変化に対応してポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの最適ガス流量との関係に基づき、ポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの流量を最適ガス流量に制御する流量制御工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係るポリマー重合装置では、ガス流量制御手段による制御に基づき、モニタ手段を介してモニタされるポリマーの重合率の値が所定値以下である場合には、不活性ガス吹き込み手段によりポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの流量は第1流量に制御されるとともに、ポリマーの重合率が所定値以上になった場合には、不活性ガスの流量は第1流量よりも小さい第2流量に制御される。
ここに、ポリマーの重合反応における阻害因子となりポリマー重合溶液に溶存している酸素を不活性ガスで置換するに際して、ポリマーの重合率が所定値以下でポリマー重合溶液がそれほど粘調でない場合には、不活性ガスの流量は比較的大きな第1流量に制御される。このとき、ポリマーの重合率が所定値以下で小さく、ポリマー重合溶液がそれほど粘調でないことから、比較的大きな流量で不活性ガスをポリマー重合溶液に吹き込んだとしても、不活性ガスに起因して発生する気泡は、ポリマー重合溶液の液面に到達する直前又は到達と同時に直ちに破泡させることができる。
【0020】
これにより、比較的大きな流量で不活性ガスをポリマー重合溶液に吹き込むことによりモノマーの重合の初期段階で重合を阻害する重大な要因となる溶存酸素を効率的に不活性ガス置換することができるとともに、不活性ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液の液滴がコンデンサの円筒状筒体の内部にまで到達して円筒状筒体の内壁や冷却管に付着することを防止してコンデンサの円筒状筒体が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0021】
また、ポリマー重合溶液でモノマーの重合反応が進行してポリマーの重合率が所定値以上になってポリマー重合溶液が粘調になった場合には、不活性ガスの流量は第1流量よりも小さい第2流量に制御される。このとき、ポリマーの重合率が所定値以上になってポリマー重合溶液が粘調になっていることから、ポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの流量を小さくすることにより、不活性ガスに起因して発生する気泡の生成を抑制することができる。
【0022】
これにより、ポリマーの重合率が所定値以上になってポリマー重合溶液が粘調な状態になった後においても、ポリマー重合溶液に溶存している酸素を不活性ガスで置換しながらモノマーの重合反応を進行させつつ、不活性ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液の液滴がコンデンサの円筒状筒体の内部にまで到達して円筒状筒体の内壁や冷却管に付着することを防止してコンデンサの円筒状筒体が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0023】
このように、請求項1に係るポリマー重合装置によれば、ポリマー重合溶液中で刻々と変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの吹き込み流量を制御することにより、ポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能となる。
【0024】
また、請求項3及び請求項4に係るポリマー重合装置では、ポリマーの重合率を検出する検出手段は赤外吸収分析装置から構成されており、赤外吸収分析装置は、ポリマー重合溶液中に存在するモノマーに由来する吸収ピークの減少割合、又は、ポリマー重合溶液中で生成されるポリマーに由来する吸収ピークの増加割合に基づいてポリマー重合率を検出するものであり、赤外吸収分析装置によりポリマー重合溶液中におけるポリマーの重合率をリアルタイムで検出することが可能となる。
【0025】
更に、請求項5及び請求項6に係るポリマー重合装置では、ポリマーの重合率を検出する検出手段は、ポリマー重合溶液中でポリマーが生成されるに従って変化するポリマー重合溶液の粘度を測定する粘度測定装置から構成されており、かかる粘度測定装置は、ポリマー重合溶液中でポリマーが生成されるに従って変化するポリマー重合溶液の粘度とポリマーの重合率との関係を記憶手段に記憶しておき、また、モニタ手段は、粘度測定装置を介して測定されるポリマー重合溶液の粘度と記憶手段に記憶されたポリマー重合溶液の粘度とポリマーの重合率との関係に基づき、ポリマーの重合率をモニタするものであり、粘度測定装置及びモニタ手段を介してポリマー重合溶液におけるポリマーの重合率をリアルタイムでモニタすることが可能となる。
【0026】
また、請求項7に係るポリマー重合装置では、ポリマー重合溶液と同一の重合系で、予め測定されたポリマー重合率の変化とそのポリマー重合率の変化に対応して不活性ガス吹き込み手段により吹き込まれる不活性ガスの最適ガス流量との関係を予め記憶手段に記憶しておき、ガス流量制御手段による制御下で、モニタ手段を介してモニタされるポリマーの重合率と記憶手段に記憶された最適ガス流量の関係とに基づき、不活性ガス吹き込み手段によりポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの流量が最適ガス流量に制御されるので、ポリマー重合溶液中で刻々と変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの吹き込み流量を最適流量に制御することができ、これによりポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能となる。
【0027】
更に、請求項8に係るポリマー重合方法では、流量制御工程において、モニタ工程にてモニタされるポリマーの重合率の値が所定値以下である場合には、ポリマー重合溶液に第1流量で不活性ガスが吹き込まれるとともに、ポリマーの重合率が所定値以上になった場合には、不活性ガスの流量が第1流量よりも小さい第2流量に制御される。
ここに、ポリマーの重合反応における阻害因子となりポリマー重合溶液に溶存している酸素を不活性ガスで置換するに際して、ポリマーの重合率が所定値以下でポリマー重合溶液がそれほど粘調でない場合には、不活性ガスの流量は比較的大きな第1流量に制御される。このとき、ポリマーの重合率が所定値以下で小さく、ポリマー重合溶液がそれほど粘調でないことから、比較的大きな流量で不活性ガスをポリマー重合溶液に吹き込んだとしても、不活性ガスに起因して発生する気泡は、ポリマー重合溶液の液面に到達する直前又は到達と同時に直ちに破泡させることができる。
【0028】
これにより、比較的大きな流量で不活性ガスをポリマー重合溶液に吹き込むことによりモノマーの重合の初期段階で重合を阻害する重大な要因となる溶存酸素を効率的に不活性ガス置換することができるとともに、不活性ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液の液滴がコンデンサの円筒状筒体の内部にまで到達して円筒状筒体の内壁や冷却管に付着することを防止してコンデンサの円筒状筒体が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0029】
また、ポリマー重合溶液でモノマーの重合反応が進行してポリマーの重合率が所定値以上になってポリマー重合溶液が粘調になった場合には、不活性ガスの流量は第1流量よりも小さい第2流量に制御される。このとき、ポリマーの重合率が所定値以上になってポリマー重合溶液が粘調になっていることから、ポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの流量を小さくすることにより、不活性ガスに起因して発生する気泡の生成を抑制することができる。
【0030】
これにより、ポリマーの重合率が所定値以上になってポリマー重合溶液が粘調な状態になった後においても、ポリマー重合溶液に溶存している酸素を不活性ガスで置換しながらモノマーの重合反応を進行させつつ、不活性ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液の液滴がコンデンサの円筒状筒体の内部にまで到達して円筒状筒体の内壁や冷却管に付着することを防止してコンデンサの円筒状筒体が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0031】
このように、請求項8に係るポリマー重合方法によれば、ポリマー重合溶液中で刻々と変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの吹き込み流量を制御することにより、ポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能となる。
【0032】
また、請求項9に係るポリマー重合方法では、モニタ工程でモニタされるポリマー重合率と、ポリマー重合溶液と同一の重合系で、予め測定されたポリマー重合率の変化とそのポリマー重合率の変化に対応してポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの最適ガス流量との関係に基づき、ポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの流量が最適ガス流量に制御されるので、ポリマー重合溶液中で刻々と変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの吹き込み流量を最適流量に制御することができ、これによりポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係るポリマー重合装置及びそのポリマー重合方法について、本発明を具体化した第1及び第2実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、第1及び第2実施形態において使用されるポリマー重合装置の概略構成について図1及び図2に基づき説明する。図1はポリマー重合装置を模式的に示す説明図、図2はコンデンサを模式的に示す説明図である。
【0034】
図1において、ポリマー重合装置1は、基本的に、重合反応槽2、制御装置3及び窒素ガス供給系4から構成されている。重合反応槽2は、モノマー、溶媒、重合開始剤、その他重合反応に必要な各種添加剤等からなるポリマー重合溶液5が充填される反応槽6を有しており、かかる反応槽6の上部には、上蓋7が配置されている。上蓋7の略中央位置には、上蓋7を貫通して回転軸8が挿通されており、回転軸8の上端は駆動モータ9のロータに連結され、また、回転軸8の下部には、撹拌羽根10が設けられている。これより、駆動モータ9を回転駆動することにより、回転軸8と共に撹拌羽根10が回転され、ポリマー重合溶液5の撹拌が行われる。
【0035】
また、駆動モータ9に隣接して、上蓋7に形成された挿通孔12にはコンデンサ11が挿通配置されている。かかるコンデンサ11は、図2に示すように、円筒状の筒体13(挿通孔12に挿通される)及び筒体13内に配置され螺旋状に形成された冷却管13Aとから構成されている。ここに、円筒状の筒体13は、上蓋7の挿通孔12に挿通されることから、反応槽6は、筒体13を介して大気に連通されている。また、冷却管13Aには、冷却水循環装置(図示せず)を介して冷却水が循環されており、冷却管13Aは、ポリマー重合溶液に含有される揮発成分を冷却して液化し、再度反応槽6内に回収する作用を行う。
尚、冷却管13Aの構造は、螺旋構造に限定されるものではなく、揮発成分を冷却液化して回収可能であれば、螺旋構造以外の各種の構造を採用することができる。
【0036】
制御装置3は、基本的に、反応槽6内に充填されたポリマー重合溶液5において、モノマーの重合反応の進行に伴って生成されるポリマーの重合率に基づいて、窒素ガス供給系4から反応槽6内に吹き込まれる窒素ガスの流量を制御する装置である。具体的に、制御装置3は、CPU、ROM、RAM等から構成される制御部14、制御部14からの制御信号に基づき窒素ガス供給系4のコントロールバルブ20(後述する)の開閉を駆動する駆動部15、及び、制御部14に接続され各種の情報が表示される表示装置及び表示装置上に配設され各種データを入力するためのタッチパネル等からなる操作パネルから構成される表示・操作パネル16を有している。
【0037】
ここに、制御部14のROMには、赤外吸収分析装置17(後述する)を介して検出されるポリマー重合率をリアルタイムでモニタするモニタプログラム、モニタ結果に基づいてコントロールバルブ20の開閉駆動を行うべく駆動部15の駆動制御を行う駆動制御プログラム、その他ポリマー重合装置1の制御上必要な各種のプログラム、数値データ等が記憶されている。
また、表示・操作パネル16は、制御部14を介してモニタされたポリマー重合率、その他これに関連する各種のデータを表示するものであり、また、そのタッチパネルを介して各種数値データが入力される。
尚、制御装置3によるポリマー重合装置1の具体的な制御及び表示・操作パネル16の操作については、後述する第1実施形態、第2実施形態において説明する。
【0038】
また、反応槽6の底部には赤外吸収分析装置17が配設されており、かかる赤外吸収分析装置17は、反応槽6に充填されたポリマー重合溶液5におけるモノマーの重合の進行に伴い重合生成されるポリマーの重合率(%)を検出するものである。具体的には、ポリマー重合溶液中に存在するモノマーに由来する吸収ピークの減少割合又はポリマー重合溶液中で生成されるポリマーに由来する吸収ピークの増加割合に基づいてポリマー重合率を検出する。このように構成された赤外吸収分析装置17は制御部14に接続されている。尚、赤外吸収分析装置17は、反応槽6の底部に配置されているが、これに限らずポリマー重合率を検出可能であれば反応槽6におけるいずれの位置に配置されてもよい。
【0039】
更に、窒素ガス供給系4について説明すると、窒素ガス供給系4は、不活性ガスとしての窒素ガスを圧縮貯蔵する窒素ガスタンク18を有しており、この窒素ガスタンク18には、窒素ガスタンク18からガスパイプ19を介して流出される窒素ガスの流量を制御するコントロールバルブ20が接続されている。また、コントロールバルブ20には、ガスパイプ19を介して流量計21が接続されており、かかる流量計21は、コントロールバルブ20により流量制御された窒素ガスの流量を検出するものである。更に、流量計21から延出されたガスパイプ19は、前記赤外吸収分析装置17と離間した位置で、反応槽6の底部に挿嵌されており、これにより窒素ガスタンク18からコントロールバルブ20、流量計21を経て供給される窒素ガスは、反応槽6の底部からポリマー重合溶液5に吹き込まれる。
尚、ガスパイプ19は、反応槽6の底部に挿嵌されているが、これに限らずポリマー重合溶液5に窒素ガスを吹き込み可能な位置であれば反応槽6のいずれの位置に挿嵌されてもよい。
【0040】
ここに、ポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスは、ポリマー重合溶液5中に溶存している酸素を窒素ガス置換して、モノマー重合時に重合開始剤からラジカルを効率的に生成することにより、ポリマーの重合反応を円滑に且つ適正に行う作用を行う。
尚、前記窒素ガスに代えて、他の不活性ガス、例えば、アルゴンガス等を使用することも可能である。
【0041】
(第1実施形態)
続いて、前記のように構成されたポリマー重合装置1を使用する第1実施形態について図1乃至図5に基づき説明する。図3はポリマー重合溶液について予備的に測定された時間に対するポリマー重合率及びポリマー重合溶液の粘度の変化を示すグラフ、図4はポリマー重合溶液に吹き込まれる窒素ガスの流量切替を行った場合のポリマー重合率の変化及び窒素ガスの流量切替を行わなかった場合のポリマー重合率の変化を対比して示すグラフ、図5はポリマー重合溶液に吹き込まれる窒素ガスの流量切替を行った場合のポリマーの平均粒子径及び窒素ガスの流量切替を行わなかった場合のポリマーの平均粒子径を対比して示すグラフである。
【0042】
第1実施形態において、先ず、赤外吸収分析装置17を介して検出されるポリマー重合溶液5におけるポリマー重合率に対応して、窒素ガスタンク18からコントロールバルブ20を介して反応槽6内に吹き込まれる窒素ガスの流量を切り替えるべく、窒素ガスの流量切替を行うべきポリマー重合率の閾値を見い出すためポリマー重合溶液につきポリマー重合率の変化が予備的に測定される。
【0043】
具体的に、前記ポリマー重合装置1において、熱分解性重合開始剤としてアゾ系開始剤を使用し、2EHA(2−エチルヘキシルアクリレート)、BA(ブチルアクリレート)、AA(アクリル酸)等を水中で乳化重合する乳化重合溶液につきポリマー重合率の変化を測定したところ図3に示す結果(グラフ1で示す)が得られた。尚、図3に示すグラフ1において、零(ゼロ)点は、反応槽6の温度が設定重合温度に到達し、重合開始剤を反応槽6内に投入した時点を示す。
【0044】
前記のようにポリマー重合率の測定中に、ポリマー重合溶液において時間の経過に従ってモノマーの重合反応が進行していき、ポリマー重合率が増加する伴いポリマー重合溶液は次第に粘調になっていく。そして、ポリマー重合率が30%付近に達した時点で、窒素ガスを吹き込むことに起因して生成される気泡が液面に到達しても破泡し難くなることが確認された。これに基づき、第1実施形態では、窒素ガスの流量切替を行う際におけるポリマーの重合率の閾値として、ポリマー重合率30%が選択された。このように、選択されたポリマー重合率の値(30%)は、表示・操作パネル16を介して入力設定され、制御部14に設けられたRAMに記憶される。
【0045】
この後、反応槽6内に前記ポリマー重合溶液が充填され、重合開始剤から生成されるラジカルによりモノマーの重合が開始される。かかる重合開始時、赤外吸収分析装置17を介して検出されるポリマー重合率は0であり、前記のように入力設定されたポリマー重合率の閾値(30%)よりも小さいので、かかる場合には、窒素ガスタンク18から反応槽6内に吹き込まれる窒素ガスの流量が70l/minとなるように、制御部14による制御下で駆動部15を介してコントロールバルブ20の開閉制御が行われる。
【0046】
そして、モノマーの重合反応が進行していくと、生成されるポリマーの重合率は次第に増加していき、赤外吸収分析装置17によりリアルタイムで検出される。このように検出されるポリマー重合率は制御装置3の制御部14に出力され、制御部14では、モニタプログラムに従って入力されたポリマー重合率がリアルタイムでモニタされる。
【0047】
ここに、ポリマーの重合反応における阻害因子となりポリマー重合溶液5に溶存している酸素を窒素ガスで置換するに際して、ポリマーの重合率が閾値(30%)以下でポリマー重合溶液5がそれほど粘調でない場合には、窒素ガスの流量は比較的大きな70l/minに制御されることとなり、このとき、ポリマーの重合率が閾値(30%)以下で小さく、ポリマー重合溶液5がそれほど粘調でないことから、比較的大きな流量で窒素ガスをポリマー重合溶液5に吹き込んだとしても、窒素ガスに起因して発生する気泡は、ポリマー重合溶液5の液面に到達する直前又は到達と同時に直ちに破泡させることができる。
これにより、比較的大きな流量で窒素ガスをポリマー重合溶液5に吹き込むことによりモノマーの重合の初期段階で重合を阻害する重大な要因となる溶存酸素を効率的に窒素ガス置換することができるとともに、窒素ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液5の液滴がコンデンサ11の円筒状筒体13の内部にまで到達して円筒状筒体13の内壁や冷却管13Aに付着することを防止してコンデンサ11の円筒状筒体13が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0048】
更に、モノマーの重合反応が進行してポリマー重合率が増加していき、赤外吸収分析装置17を介して検出されるとともに制御部14にてモニタされるポリマー重合率の値が、閾値(30%)に達した場合には、窒素ガスタンク18から反応槽6内に吹き込まれる窒素ガスの流量が50l/minとなるように、制御部14による制御下で駆動部15を介してコントロールバルブ20の開閉制御が行われる。
【0049】
これにより、ポリマー重合溶液5でモノマーの重合反応が進行してポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が粘調になった場合には、窒素ガスの流量は70l/minよりも小さい50l/minに制御されることとなり、このとき、ポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が粘調になっていることから、ポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの流量を小さくすることにより、窒素ガスに起因して発生する気泡の生成を抑制することができる。
【0050】
従って、ポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が粘調な状態になった後においても、ポリマー重合溶液5に溶存している酸素を窒素ガスで置換しながらモノマーの重合反応を進行させつつ、窒素ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液5の液滴がコンデンサ11の円筒状筒体13の内部にまで到達して円筒状筒体13の内壁や冷却管13Aに付着することを防止してコンデンサ11の円筒状筒体13が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0051】
このように、第1実施形態に係るポリマー重合装置1によれば、ポリマー重合溶液5中で刻々と変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの吹き込み流量を制御することにより、ポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能となる。
【0052】
尚、第1実施形態のポリマー重合装置1では、ポリマー重合率の閾値として30%として設定し、ポリマー重合率が30%以下においては、窒素ガス流量を70l/minに設定するとともに、ポリマー重合率が30%以上になった時点で窒素ガス流量を50l/minに切り替えるように構成したが、このように閾値の前後で窒素流量を切り替えることが、閾値に到達した後におけるポリマー重合率に与える影響を調べるために、窒素ガスの流量切替を行った場合のポリマー重合率の変化及び窒素ガスの流量切替を行わなかった場合のポリマー重合率の変化を測定し、また、窒素ガスの流量切替を行った場合のポリマーの平均粒子径及び窒素ガスの流量切替を行わなかった場合のポリマーの平均粒子径を測定した。
【0053】
その測定結果が図4及び図5に示されている。図4において、窒素ガスの流量切替を行わなかった場合のポリマー重合率の変化はグラフ2で示され、また、窒素ガスの流量切替を行った場合のポリマー重合率の変化はグラフ3で示されている。グラフ2とグラフ3とを比較すると、閾値(30%)以降においてはグラフ2におけるポリマー重合率の方が、グラフ3におけるポリマー重合率よりも若干大きな値となっていることが分かる。
また、図5において、窒素ガスの流量切替を行わなかった場合のポリマーの平均粒子径はグラフ4に示され、また、窒素ガスの流量切替を行った場合のポリマーの平均粒子径はグラフ5で示されている。グラフ4とグラフ5とを比較すると、窒素ガスの流量切替を行わなかった場合と窒素ガスの流量切替を行った場合とで、ポリマーの平均粒子径の間には殆ど差が存在しておらず、窒素ガスの流量切替の有無はポリマー特性には殆ど影響を与えていないことが分かる。
【0054】
これより、窒素ガスの流量切替を行った場合にはポリマーの重合速度が、窒素ガスの切り替えを行わなかった場合よりも若干遅くなるものの、ポリマーの平均粒子径は殆ど同じであり、窒素ガスの流量切替の有無はポリマー特性には殆ど影響を与えないものと云える。
【0055】
以上説明した通り第1実施形態に係るポリマー重合装置1では、ポリマーの重合反応における阻害因子となりポリマー重合溶液5に溶存している酸素を窒素ガスで置換するに際して、ポリマーの重合率が閾値(30%)以下でポリマー重合溶液5がそれほど粘調でない場合には、窒素ガスの流量は比較的大きな70l/minに制御されることとなり、このとき、ポリマーの重合率が閾値(30%)以下で小さく、ポリマー重合溶液5がそれほど粘調でないことから、比較的大きな流量で窒素ガスをポリマー重合溶液5に吹き込んだとしても、窒素ガスに起因して発生する気泡は、ポリマー重合溶液5の液面に到達する直前又は到達と同時に直ちに破泡させることができる。
【0056】
これにより、比較的大きな流量で窒素ガスをポリマー重合溶液5に吹き込むことによりモノマーの重合の初期段階で重合を阻害する重大な要因となる溶存酸素を効率的に窒素ガス置換することができるとともに、窒素ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液5の液滴がコンデンサ11の円筒状筒体13の内部にまで到達して円筒状筒体13の内壁や冷却管13Aに付着することを防止してコンデンサ11の円筒状筒体13が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0057】
また、ポリマー重合溶液5でモノマーの重合反応が進行してポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が粘調になった場合には、窒素ガスの流量は70l/minよりも小さい50l/minに制御されることとなり、このとき、ポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が粘調になっていることから、ポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの流量を小さくすることにより、窒素ガスに起因して発生する気泡の生成を抑制することができる。
【0058】
従って、ポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が粘調な状態になった後においても、ポリマー重合溶液5に溶存している酸素を窒素ガスで置換しながらモノマーの重合反応を進行させつつ、窒素ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液5の液滴がコンデンサ11の円筒状筒体13の内部にまで到達して円筒状筒体13の内壁や冷却管13Aに付着することを防止してコンデンサ11の円筒状筒体13が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0059】
このように、第1実施形態に係るポリマー重合装置1によれば、ポリマー重合溶液5中で刻々と変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの吹き込み流量を制御することにより、ポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能となる。
【0060】
(第1実施形態の変形例)
次に、前記第1実施形態の変形例について説明する。第1実施形態のポリマー重合装置1では、ポリマー重合溶液5におけるポリマー重合率を赤外吸収分析装置17により検出するように構成されているが、第1実施形態の変形例では、赤外吸収分析装置17に代えて、ポリマー重合溶液5の粘度を測定する粘度測定装置22が使用される。
【0061】
第1実施形態に係る変形例について、図1乃至図3に基づき説明する。第1実施形態の変形例において、先ず、粘度測定装置22を介して測定されるポリマー重合溶液5の粘度値に基づき換算されるポリマー重合率に対応して、窒素ガスタンク18からコントロールバルブ20を介して反応槽6内に吹き込まれる窒素ガスの流量を切り替えるべく、窒素ガスの流量切替を行うべきポリマー重合率の閾値を見い出すためポリマー重合溶液5につき粘度値の変化が予備的に測定される。
【0062】
具体的に、前記ポリマー重合装置1において、熱分解性重合開始剤としてアゾ系開始剤を使用し、2EHA(2−エチルヘキシルアクリレート)、BA(ブチルアクリレート)、AA(アクリル酸)等を水中で乳化重合する乳化重合溶液につきポリマー重合溶液5の粘度値の変化を測定したところ図3に示す結果(グラフ6で示す)が得られた。尚、図3に示すグラフ6において、零(ゼロ)点は、反応槽6の温度が設定重合温度に到達し、重合開始剤を反応槽6内に投入した時点を示す。
【0063】
前記のようにポリマー重合溶液5の粘度値の測定中に、ポリマー重合溶液5において時間の経過に従ってモノマーの重合反応が進行していき、ポリマー重合率が増加するに伴いポリマー重合溶液5の粘度値は増加していき、ポリマー重合溶液5は次第に粘調になっていく。粘度値は、グラフ6に示すように、重合を開始してから130分が経過した後210分を経過するまでの間で不連続に変化し、重合を開始してから180分程度経過した時点で粘度値が60Visc[mPas]となり、窒素ガスを吹き込むことに起因して生成される気泡が液面に到達しても破泡し難くなることが確認された。この時の粘度値60Visc[mPas]をポリマー重合率に換算すると、ポリマー重合率は30%程度になる。
【0064】
ここに、ポリマー重合溶液5につき測定された粘度値とポリマー重合率との関係を示すグラフ6のデータは、制御装置14のRAMに記憶され、また、窒素ガスの流量切替を行う際におけるポリマーの重合率の閾値として、表示・操作パネル16を介して、粘度値60Visc[mPas]に対応するポリマー重合率30%が選択されるとともにRAMに記憶される。そして、制御部14は、粘度測定装置22を介して測定されるポリマー重合溶液5の粘度値と、RAMに記憶されたポリマー重合溶液5の粘度値とポリマーの重合率との関係に基づき、ポリマーの重合率をリアルタイムでモニタする。
【0065】
この後、前記第1実施形態の場合と同様、反応槽6内に前記ポリマー重合溶液が充填され、重合開始剤から生成されるラジカルによりモノマーの重合が開始される。かかる重合開始時、粘度測定装置22を介して検出される粘度値に基づくポリマー重合率は0であり、前記のように入力設定されたポリマー重合率の閾値(30%)よりも小さいので、かかる場合には、窒素ガスタンク18から反応槽6内に吹き込まれる窒素ガスの流量が70l/minとなるように、制御部14による制御下で駆動部15を介してコントロールバルブ20の開閉制御が行われる。
【0066】
そして、モノマーの重合反応が進行していくと、生成されるポリマーの重合率は次第に増加していき、粘度測定装置22によりポリマー重合溶液5の粘度値がリアルタイムで検出される。このように検出される粘度値は制御装置3の制御部14に出力され、制御部14では、検出された粘度値とRAMに記憶された粘度値とポリマーの重合率との関係に基づき、ポリマー重合率がリアルタイムでモニタされる。
【0067】
ここに、ポリマーの重合反応における阻害因子となりポリマー重合溶液5に溶存している酸素を窒素ガスで置換するに際して、ポリマーの重合率が、粘度値60Visc[mPas]に対応する閾値(30%)以下でポリマー重合溶液5がそれほど粘調でない場合には、窒素ガスの流量は比較的大きな70l/minに制御されることとなり、このとき、ポリマーの重合率が閾値(30%)以下で小さく、ポリマー重合溶液5がそれほど粘調でないことから、比較的大きな流量で窒素ガスをポリマー重合溶液5に吹き込んだとしても、窒素ガスに起因して発生する気泡は、ポリマー重合溶液5の液面に到達する直前又は到達と同時に直ちに破泡させることができる。
【0068】
これにより、比較的大きな流量で窒素ガスをポリマー重合溶液5に吹き込むことによりモノマーの重合の初期段階で重合を阻害する重大な要因となる溶存酸素を効率的に窒素ガス置換することができるとともに、窒素ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液5の液滴がコンデンサ11の円筒状筒体13の内部にまで到達して円筒状筒体13の内壁や冷却管13Aに付着することを防止してコンデンサ11の円筒状筒体13が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0069】
更に、モノマーの重合反応が進行してポリマー重合率が増加していき、粘度測定装置22を介して検出されたポリマー重合溶液5の粘度値とRAMに記憶された粘度値とポリマー重合率との関係に基づき制御部14にてモニタされるポリマー重合率の値が、閾値(30%)に達した場合には、窒素ガスタンク18から反応槽6内に吹き込まれる窒素ガスの流量が50l/minとなるように、制御部14による制御下で駆動部15を介してコントロールバルブ20の開閉制御が行われる。
【0070】
これにより、ポリマー重合溶液5でモノマーの重合反応が進行してポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が粘調になった場合には、窒素ガスの流量は70l/minよりも小さい50l/minに制御されることとなり、このとき、ポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が粘調になっていることから、ポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの流量を小さくすることにより、窒素ガスに起因して発生する気泡の生成を抑制することができる。
【0071】
従って、ポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が粘調な状態になった後においても、ポリマー重合溶液5に溶存している酸素を窒素ガスで置換しながらモノマーの重合反応を進行させつつ、窒素ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液5の液滴がコンデンサ11の円筒状筒体13の内部にまで到達して円筒状筒体13の内壁や冷却管13Aに付着することを防止してコンデンサ11の円筒状筒体13が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0072】
このように、第1実施形態の変形例に係るポリマー重合装置1によれば、ポリマー重合溶液5中で刻々と変化する粘度値に基づきポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの吹き込み流量を制御することにより、ポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能となる。
【0073】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態について図1、図2及び図6に基づき説明する。図6はポリマー重合溶液について予備的に測定して求められたポリマー重合率の変化とそのポリマー重合率の変化に対応する窒素ガスの最適流量との関係を示すグラフである。
【0074】
ここに、図6において、グラフ7は、前記ポリマー重合溶液5と同一の重合系について、予備的に測定して求められたポリマー重合率の変化とそのポリマー重合率の変化に対応する窒素ガスの最適流量との関係を示すグラフであるが、かかるグラフ7は、以下のように求められる。
即ち、先ず、前記図3のグラフ1と同様にして、前記ポリマー重合溶液5と同一の重合系についてポリマー重合率の変化を予備的に測定するとともに、その測定時における観察(窒素ガスを吹き込むことに起因して生成される気泡が液面に到達しても破泡し難くなることが確認されること)に基づき窒素ガスの流量切替を行う際におけるポリマーの重合率の閾値としてポリマー重合率30%を選択し、更に、測定されたポリマー重合率の変化と閾値とを勘案してポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの最適流量のシミュレーションを行う。これにより、ポリマー重合率の変化とそのポリマー重合率の変化に対応する窒素ガスの最適流量との関係を示すグラフ7を得ることができる。
【0075】
前記のように得られたグラフ7のデータは、制御装置14のRAMに記憶される。そして、制御部14は、赤外吸収分析装置17を介して検出されるポリマー重合溶液5のポリマー重合率をリアルタイムでモニタする。
【0076】
この後、反応槽6内に前記ポリマー重合溶液が充填され、重合開始剤から生成されるラジカルによりモノマーの重合が開始される。かかる重合開始時、赤外吸収分析装置17を介して検出されるポリマー重合率は0であり、かかる場合には、窒素ガスタンク18から反応槽6内に吹き込まれる窒素ガスの流量が70l/minとなるように、制御部14による制御下で駆動部15を介してコントロールバルブ20の開閉制御が行われる。
【0077】
そして、モノマーの重合反応が進行していくと、生成されるポリマーの重合率は次第に増加していき、赤外吸収分析装置17によりリアルタイムで検出される。このように検出されるポリマー重合率は制御装置3の制御部14に出力され、制御部14では、モニタプログラムに従って入力されたポリマー重合率がリアルタイムでモニタされる。
【0078】
ここに、ポリマーの重合反応における阻害因子となりポリマー重合溶液5に溶存している酸素を窒素ガスで置換するに際して、ポリマーの重合率が閾値(30%)以下でポリマー重合溶液5がそれほど粘調でない場合には、図6のグラフ7に従って、窒素ガスの流量は比較的大きな70l/minに制御されることとなり、このとき、ポリマーの重合率が閾値(30%)以下で小さく、ポリマー重合溶液5がそれほど粘調でないことから、比較的大きな流量で窒素ガスをポリマー重合溶液5に吹き込んだとしても、窒素ガスに起因して発生する気泡は、ポリマー重合溶液5の液面に到達する直前又は到達と同時に直ちに破泡させることができる。
【0079】
これにより、比較的大きな流量で窒素ガスをポリマー重合溶液5に吹き込むことによりモノマーの重合の初期段階で重合を阻害する重大な要因となる溶存酸素を効率的に窒素ガス置換することができるとともに、窒素ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液5の液滴がコンデンサ11の円筒状筒体13の内部にまで到達して円筒状筒体13の内壁や冷却管13Aに付着することを防止してコンデンサ11の円筒状筒体13が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0080】
更に、モノマーの重合反応が進行してポリマー重合率が増加していき、赤外吸収分析装置17を介して検出されるとともに制御部14にてモニタされるポリマー重合率の値が、閾値(30%)に達した場合には、グラフ7に従って、窒素ガスタンク18から反応槽6内に吹き込まれる窒素ガスの流量は70l/minから徐々に減少されていくように、制御部14による制御下で駆動部15を介してコントロールバルブ20の開閉制御が行われる。そして、窒素ガスの流量は、ポリマー重合率が80%に到達する直前で30l/min程度に制御される。
【0081】
これにより、ポリマー重合溶液5でモノマーの重合反応が進行してポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が次第に粘調になった場合には、窒素ガスの流量は70l/minよりも流量に制御されることとなり、このとき、ポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が粘調になっていることから、ポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの流量を小さくすることにより、窒素ガスに起因して発生する気泡の生成を抑制することができる。
【0082】
従って、ポリマーの重合率が閾値(30%)以上になってポリマー重合溶液5が次第に粘調な状態になった後においても、ポリマー重合溶液5に溶存している酸素を窒素ガスで置換しながらモノマーの重合反応を進行させつつ、窒素ガスに起因して発生する気泡が破泡してもポリマー重合溶液5の液滴がコンデンサ11の円筒状筒体13の内部にまで到達して円筒状筒体13の内壁や冷却管13Aに付着することを防止してコンデンサ11の円筒状筒体13が詰まったり、また、冷却効率を低下させてしまうことを確実に防止することができる。
【0083】
このように、第2実施形態に係るポリマー重合装置1によれば、前記第1実施形態の場合と同様、ポリマー重合溶液5中で刻々と変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの吹き込み流量を最適に制御することにより、ポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能となる。
【0084】
以上説明した通り第2実施形態に係るポリマー重合装置1では、ポリマー重合溶液5と同一の重合系で、予め測定されたポリマー重合率の変化とそのポリマー重合率の変化に対応してポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの最適ガス流量との関係を示すグラフ7を予め求めるととともに制御部14のRAMに記憶しておき、赤外吸収分析装置17及び制御部14介してモニタされるポリマーの重合率とRAMに記憶された最適ガス流量の関係を示すグラフ7とに基づき、ポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの流量が最適ガス流量に制御されるので、ポリマー重合溶液5中で刻々と変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー重合溶液5に吹き込まれる窒素ガスの吹き込み流量を最適流量に制御することができ、これによりポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能となる。
【0085】
尚、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、ポリマーの重合反応における阻害因子となりポリマー重合溶液に溶存している酸素を不活性ガスで置換するに際して、ポリマー重合溶液中で刻々と変化するポリマーの重合率をモニタしつつ、ポリマー反応溶液に吹き込まれる不活性ガスの吹き込み流量を制御することにより、ポリマー重合反応を円滑に且つ適正に行うことが可能なポリマー重合装置及びポリマー重合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】ポリマー重合装置を模式的に示す説明図である。
【図2】コンデンサを模式的に示す説明図である。
【図3】ポリマー重合溶液について予備的に測定された時間に対するポリマー重合率及びポリマー重合溶液の粘度の変化を示すグラフである。
【図4】ポリマー重合溶液に吹き込まれる窒素ガスの流量切替を行った場合のポリマー重合率の変化及び窒素ガスの流量切替を行わなかった場合のポリマー重合率の変化を対比して示すグラフである。
【図5】ポリマー重合溶液に吹き込まれる窒素ガスの流量切替を行った場合のポリマーの平均粒子径及び窒素ガスの流量切替を行わなかった場合のポリマーの平均粒子径を対比して示すグラフである。
【図6】ポリマー重合溶液について予備的に測定して求められたポリマー重合率の変化とそのポリマー重合率の変化に対応する窒素ガスの最適流量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0088】
1 ポリマー重合装置
2 重合反応槽
3 制御装置
4 窒素ガス供給系
5 ポリマー重合溶液
6 反応槽
7 上蓋
9 駆動モータ
10 撹拌羽根
11 コンデンサ
13 円筒状筒体
13A 冷却管
14 制御部
15 駆動部
16 表示・操作パネル
17 赤外吸収分析装置
18 窒素ガスタンク
19 ガスパイプ
20 コントロールバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽内に、少なくともモノマー、溶媒、重合開始剤を含有するポリマー重合溶液を充填し、撹拌しながらモノマーの重合反応を行ってポリマーを生成するポリマー重合装置において、
前記反応槽に連結され、反応槽内のポリマー重合溶液に不活性ガスを吹き込む不活性ガス吹き込み手段と、
前記ポリマー重合溶液にて生成されたポリマーの重合率を検出する検出手段と、
前記検出手段を介して検出されるポリマーの重合率をモニタするモニタ手段と、
前記モニタ手段を介してモニタされるポリマーの重合率の値が所定値以下である場合には、前記不活性ガス吹き込み手段によりポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの流量を第1流量に制御するとともに、前記ポリマーの重合率が所定値以上になった場合には、前記不活性ガスの流量を第1流量よりも小さい第2流量に制御するガス流量制御手段とを備えたことを特徴とするポリマー重合装置。
【請求項2】
前記不活性ガスは窒素ガスであることを特徴とする請求項1に記載のポリマー重合装置。
【請求項3】
前記検出手段は、赤外吸収分析装置から構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリマー重合装置。
【請求項4】
前記赤外吸収分析装置は、前記ポリマー重合溶液中に存在するモノマーに由来する吸収ピークの減少割合、又は、ポリマー重合溶液中で生成されるポリマーに由来する吸収ピークの増加割合に基づいてポリマー重合率を検出することを特徴とする請求項3に記載のポリマー重合装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記ポリマー重合溶液中でポリマーが生成されるに従って変化するポリマー重合溶液の粘度を測定する粘度測定装置から構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリマー重合装置。
【請求項6】
前記ポリマー重合溶液中でポリマーが生成されるに従って変化するポリマー重合溶液の粘度とポリマーの重合率との関係を記憶する記憶手段を備え、
前記モニタ手段は、前記粘度測定装置を介して測定されるポリマー重合溶液の粘度と前記記憶手段に記憶されたポリマー重合溶液の粘度とポリマーの重合率との関係に基づき、ポリマーの重合率をモニタすることを特徴とする請求項5に記載のポリマー重合装置。
【請求項7】
反応槽内に、少なくともモノマー、溶媒、重合開始剤を含有するポリマー重合溶液を充填し、撹拌しながらモノマーの重合反応を行ってポリマーを生成するポリマー重合装置において、
前記反応槽に連結され、反応槽内のポリマー重合溶液に不活性ガスを吹き込む不活性ガス吹き込み手段と、
前記ポリマー重合溶液にて生成されたポリマーの重合率を検出する検出手段と、
前記ポリマー重合溶液と同一の重合系で、予め測定されたポリマー重合率の変化とそのポリマー重合率の変化に対応して前記不活性ガス吹き込み手段により吹き込まれる不活性ガスの最適ガス流量との関係を記憶する記憶手段と、
前記検出手段を介して検出されるポリマーの重合率をモニタするモニタ手段と、
前記モニタ手段を介してモニタされるポリマーの重合率と前記記憶手段に記憶された最適ガス流量の関係とに基づき、前記不活性ガス吹き込み手段によりポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの流量を最適ガス流量に制御するガス流量制御手段とを備えたことを特徴とするポリマー重合装置。
【請求項8】
反応槽内に、少なくともモノマー、溶媒、重合開始剤を含有するポリマー重合溶液を充填し、撹拌しながらモノマーの重合反応を行ってポリマーを生成するポリマー重合方法において、
前記ポリマー重合溶液にて生成されたポリマーの重合率を検出する重合率検出工程と、
前記重合率検出工程にて検出されるポリマー重合率をモニタするモニタ工程と、
前記モニタ工程にてモニタされるポリマーの重合率の値が所定値以下である場合には、ポリマー重合溶液に第1流量で不活性ガスを吹き込むとともに、ポリマーの重合率が所定値以上になった場合には、不活ガスの流量を第1流量よりも小さい第2流量に制御する流量制御工程とを含むポリマー重合方法。
【請求項9】
反応槽内に、少なくともモノマー、溶媒、重合開始剤を含有するポリマー重合溶液を充填し、撹拌しながらモノマーの重合反応を行ってポリマーを生成するポリマー重合方法において、
前記ポリマー重合溶液にて生成されたポリマーの重合率を検出する重合率検出工程と、
前記重合率検出工程にて検出されるポリマー重合率をモニタするモニタ工程と、
前記モニタ工程にてモニタされるポリマー重合率と前記ポリマー重合溶液と同一の重合系で、予め測定されたポリマー重合率の変化とそのポリマー重合率の変化に対応してポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの最適ガス流量との関係に基づき、ポリマー重合溶液に吹き込まれる不活性ガスの流量を最適ガス流量に制御する流量制御工程とを含むポリマー重合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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