説明

ポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物及びそれを含む樹脂組成物

【課題】ポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物を提供すること。
【解決手段】層状珪酸鉱物に、該層状珪酸鉱物と反応する反応基およびラジカル重合開始基を有する化合物を反応させることにより、ラジカル重合開始基を有する層状珪酸鉱物を調製し、この層状珪酸鉱物にあるラジカル重合開始基を起点として、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーをさらに重合させることより得られるポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
層状珪酸鉱物に高分子化合物が化学結合していることを特徴とするポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物及びそれを用いる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂にカオリナイトやモンモリロナイト等の層状珪酸鉱物を添加することにより、機械的強度、耐熱性、ガスバリア性、難燃性等の物性を向上させた成形体の検討が行われている。この際、成形体中に層状珪酸鉱物を高分散化させることにより、諸物性を向上させることが可能になることが知られている。
層状珪酸鉱物の結晶構造は珪酸四面体層−アルミナ八面体層−珪酸四面体層の三層が積み重なっており、各結晶層自体は負に帯電している。そのため、結晶層間にナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの陽イオンを取り込むことで安定化して凝集している。成形体中の層状珪酸鉱物を高分散化させるためには、この凝集を抑制する必要がある。そこで、層状珪酸鉱物の凝集を抑制するために、オニウムイオンを有する有機物(有機化剤)を添加し、有機化剤が層間に修飾されることで層状珪酸鉱物(有機化した層状珪酸鉱物)を用いる検討がなされている。
例えば、非特許文献1では有機化した層状珪酸鉱物を用い、該層状珪酸鉱物と樹脂(ポリイミド)とを共通の溶媒に分散させ、混合後、この溶媒を蒸発させることで分散化がなされている。非特許文献2では有機化した層状珪酸鉱物と樹脂(ポリプロピレン)を、二軸押出機を使用して溶融混練しながら分散化する検討がされている。また、非特許文献3では、有機化した層状珪酸鉱物存在下で熱可塑性樹脂を重合し、層状珪酸鉱物の層間の広がった樹脂組成物を得ている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献2】J. Polym. Sci., Part A; Polym. Chem., 1997, 35, 2289.
【非特許文献3】J. Appl. Polym. Sci., 1997, 66, 1781.
【非特許文献4】J. Mater. Res., 1993, 8, 1179.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1〜非特許文献3で用いられている低分子の有機化剤は耐熱性に乏しいことから、適応可能な樹脂及び製造プロセスに限りのあるものであった。また、有機化した層状珪酸鉱物を含む樹脂組成物から得られる成形体は、そのガスバリア性は改良の余地があった。また、光学特性(透明性)は劣る傾向があり、高分散化の効果が必ずしも充分なものとはいえなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、層状珪酸鉱物を成形体中に高分散化することができる層状珪酸鉱物、その製造方法および、ガスバリア性および透明性に優れた成形体を与える樹脂組成物を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、層状珪酸鉱物にあらかじめ特定の化合物を用いてラジカル重合開始基を導入し、さらにモノマーを重合させることで、ポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、
層状珪酸鉱物(以下、層状珪酸鉱物(1)と称する。)に、該層状珪酸鉱物と反応する反応基およびラジカル重合開始基を有する化合物を反応させることにより、ラジカル重合開始基を有する層状珪酸鉱物を調製し、この層状珪酸鉱物にあるラジカル重合開始基を起点として、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーをさらに重合させることを特徴とするポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物(以下、層状珪酸鉱物(2)と称する。);及び
層状珪酸鉱物(2)と、樹脂と、を含む樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の層状珪酸鉱物(2)と樹脂とを含む樹脂組成物から得られる成形体は、層状珪酸鉱物(2)が均一に分散し、この樹脂を単独で用いた成形体よりもガスバリア性を向上させることができる。また、本発明の樹脂組成物から得られる成形体は、該成形体中に層状珪酸鉱物(2)が均一に分散していることから透明性にも優れるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、層状珪酸鉱物(1)について説明する。
【0009】
層状珪酸鉱物(1)としては特に限定されないが、例えば、リーザダイト、バーチェリン、アメサイト、クロンステダイト、ネポーアイト、ケリアイト、フレンポナイト、ブリンドリアイト、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、オーディナイト等の蛇紋石−カオリン族層状鉱物
【0010】
タルク、ウィレムサイト、ケロライト、ピメライト、パイロフィライト、フェリパイロフィライト等のラルク−パイロフィライト族
【0011】
サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、スインホルダイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロライト、ボルコンスコアイト等のスメクタイト族層状鉱物
【0012】
3八面体型バーミュライト、2八面体型バーミュライトなどのバーミュライト族層状鉱物、黒雲母、金雲母、鉄雲母、イーストナイト、シデロフィライトテトラフェリ鉄雲母、鱗雲母、ポリリシオナイト、白雲母、セラドン石、鉄セラドン石、鉄アルミナセラドン石、アルミナセラドン石、ソーダ雲母等の雲母族層状鉱物などが挙げられる。これらの層状珪酸鉱物は天然由来の天然層状珪酸鉱物であってもよいし、人工的に合成された合成層状珪酸鉱物であってもよい。
【0013】
好ましくは、スメクタイト族層状鉱物が挙げられる。
【0014】
「ラジカル重合開始基」とは、光や熱、又はその他の電磁照射の条件下でラジカルを発生する官能基及び触媒等と反応してラジカルを発生する官能基であり、ラジカル重合の開始点(起点)となりうる官能基であれば、特に限定されない。例えば、アゾ基やパーオキシド基、非特許文献4に記載されているような、ヨウ素など、さらには、非特許文献5に記載されているような、Nitroxide−Mediated Polymerization(NMP)の開始基となるニトロキシド基、非特許文献6に記載されているような、Reversible Addition−Fragmentation Polymerization(RAFT)の開始基となるチオカルボニルチオ基、非特許文献7及び8に記載されているようなAtom Transfer Radical Polymerization(ATRP:原子移動ラジカル重合)の開始基となる、α−ハロカルボニルオキシ基、α−ハロカルボニル基、ハロスルホニル基、ハロメチルアリール基などが挙げられ、生成するポリマー鎖の一次構造や鎖長を制御できるという観点から「リビングラジカル重合開始基」である、例えば、非特許文献4〜8に記載されている官能基が好ましく、さらに非特許文献7及び8に記載されているような「原子移動ラジカル重合開始基」である官能基がより好ましい。
【0015】
[非特許文献4]
Chem.Rev.2006,106,3936.
[非特許文献5]
Chem.Rev.2001,101,3661.
[非特許文献6]
Aust.J.Chem.2005,58,379.
[非特許文献7]
Chem.Rev.2001,101,2921.
[非特許文献8]
Chem.Rev.2001,101,3689.
【0016】
「リビングラジカル重合開始基」としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ヨウ素やニトロキシド基、チオカルボニルチオ基、α−ハロカルボニルオキシ基、α−ハロカルボニル基、ハロスルホニル基、ハロメチルアリール基などが挙げられる。
【0017】
「原子移動ラジカル重合開始基」としては、特に限定されるわけではないが、例えば、α−ハロカルボニルオキシ基、α−ハロカルボニル基、ハロスルホニル基、ハロメチルアリール基などが挙げられる。
【0018】
ラジカル重合開始基を有する化合物には、該ラジカル重合開始基のほかに、層状珪酸鉱物と反応する反応基を有している。この反応基は層状珪酸鉱物に反応するものであれば特に限定されるわけではなく、例えば、リン酸基、カルボン酸基、酸ハライド基、酸無水物基、イソシアナト基、グリシジル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基またはヒドロキシシリル基が挙げられる。これらから選ばれる反応基およびラジカル重合開始基を有する化合物(以下、場合により「含ラジカル重合開始基化合物」という。)には、これらから選ばれる反応基を複数種有していてもよい。好ましくは、クロロシリル基、アルコキシシラン基、又はヒドロキシシリル基の反応基が好ましく、アルコキシシラン基がさらに好ましい。
【0019】
以下に、層状珪酸鉱物(1)と、含ラジカル重合開始基化合物とを反応させ、この化合物にある反応基により形成される結合の例を、概念図を用いて表わすが、これらに限定されるわけではない。
i)リン酸基の場合;

(Yは、ラジカル重合開始基を有する置換基、Zは、ヒドロキシル基又は置換基を有していてもよいリン酸エステル基を表わす。)

ii)カルボン酸基、酸ハライド基、酸無水物基の場合;

(Yは、ラジカル重合開始基を有する置換基を表わす。)

iii)イソシアナート基の場合;

(Yは、ラジカル重合開始基を有する置換基を表わす。)

iv)クロロシラン基、アルコキシシリル基、シラノール基の場合;

(Yは、ラジカル重合開始基を有する置換基を表し、Z及びZは、同一又は相異なり、クロロ原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アルキル基又は置換されていてもよいシロキシ基を表わす。)
【0020】
上述のようにして得られる含ラジカル重合開始基化合物および層状珪酸鉱物(1)を反応させることにより得られる層状珪酸鉱物において、この層状珪酸鉱物にあるラジカル重合開始基を起点として、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーをさらに重合させて層状珪酸鉱物(2)について説明する。
ここで「ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマー」は、有機ラジカルの存在下にラジカル重合を行い得る不飽和結合を有するモノマーであり、特に限定されない。例えば、メタクリレート系モノマー、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマーなどである。
【0021】
メタクリル系モノマーの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、などが挙げられる。また、メタクリル酸も使用できる。
【0022】
アクリル系モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、などが挙げられる。また、アクリル酸も使用できる。
【0023】
スチレン系モノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、p−メトキシスチレン、o−、m−、p−t−ブチルスチレン、o−、m−、p−クロロスチレン、o−、m−、p−ヒドロキシスチレン、o−、m−、p−スチレンスルホン酸などが挙げられる。
【0024】
本発明には、2つ以上の不飽和結合を有するモノマーも使用可能である。例えば、ブタジエン、イソプレンなどのジエン化合物、ジアリルフタレートなどのアリル基を2つ有する化合物、ジオール化合物のジメタクリレート、ジオール化合物のジアクリレートなどである。
【0025】
上記以外の不飽和結合を有するモノマーも使用可能であり、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、1−へキセン、シクロヘキセンなどのオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドールなどのN−ビニル化合物、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリドなどの(メタ)アクリルアミド類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラクロロエチレン、ヘキサクロロプロピレン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、マレイン酸及びその誘導体(例えば、無水マレイン酸)などである。尚、これらのモノマーは単独で使用してもよいし、二種類以上を使用してもよい。
【0026】
「ポリマー鎖」は、ラジカル重合開始基を起点として、モノマーが10個以上重合されたものであれば特に限定されない。
【0027】
次に、層状珪酸鉱物(1)と反応させるラジカル重合開始基を有する化合物について、上述の好適な反応基を有するものを、具体例を挙げて説明する。
該化合物としては、例えば、
4−クロロメチルフェニルホスホン酸、4−ブロモメチルフェニルホスホン酸、
2−クロロプロピオン酸、2−ブロモプロピオン酸、2−ヨードプロピオン酸、
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸、
【0028】
2−クロロプロピオニルクロリド、2−クロロプロピオニルブロミド、2−ブロモプロピオニルクロリド、2−ブロモプロピオニルブロミド、
2−クロロ−2−メチル−プロピオニルクロリド、2−クロロ−2−メチル−プロピオニルブロミド、2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルクロリド、2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルブロミド、
【0029】
トリクロロアセチルイソシアネート、
【0030】
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリクロロシリル)ペンチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリクロロシリル)へキシル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{6−(トリクロロシリル)ブチル}、
【0031】
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)へキシル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ブチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)へキシル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ペンチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(メチルジエトキシシリル)へキシル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(ジメチルエトキシシリル)へキシル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)へキシル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}、
4−{2−(トリメトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(トリエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(メチルジエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(ジメチルエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、
1−(クロロメチル)−4−(トリメトキシシリル)ベンゼン、1−(クロロメチル)−4−(トリエトキシシリル)ベンゼン、1−(ブロモメチル)−4−(トリメトキシシリル)ベンゼン、1−(ブロモメチル)−4−(トリエトキシシリル)ベンゼン、
【0032】
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)ペンチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)へキシル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)ブチル}、2−ブロモプロピオン酸{6−(トリヒドロキシシリル)へキシル}
等が挙げられ、
【0033】
2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)へキシル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}、2−クロロ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ブチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)へキシル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ペンチル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(メチルジエトキシシリル)へキシル}、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(ジメチルエトキシシリル)へキシル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{6−(トリメトキシシリル)へキシル}、2−ヨード−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}、
4−{2−(トリメトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(トリエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(メチルジエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、4−{2−(ジメチルエトキシシリル)エチル}ベンゼンスルホニルクロリド、
1−(クロロメチル)−4−(トリメトキシシリル)ベンゼン、1−(クロロメチル)−4−(トリエトキシシリル)ベンゼン、1−(ブロモメチル)−4−(トリメトキシシリル)ベンゼン、1−(ブロモメチル)−4−(トリエトキシシリル)ベンゼン
等のアルコキシシリル基及びラジカル重合開始基を有する化合物が好ましい。
【0034】
層状珪酸鉱物(1)と、
前記した含ラジカル重合開始基化合物との反応は、両者を接触させることにより実施される。
【0035】
接触させる際は、無溶媒でもよいが、通常、溶媒中で、両者を混合することにより実施される。溶媒としては、水、有機溶媒及び水と有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t―ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒等が挙げられる。
【0036】
接触温度は、通常、−78〜200℃である。
必要に応じて、適当な添加物(例えば、酢酸などの酸やアンモニア水などの塩基等)の存在下に接触させてもよい。
尚、上記に示した(a)リン酸基、カルボン酸基、酸ハライド基、酸無水物基、イソシアナート基、グリシジル基、クロロシラン基、アルコキシシリル基、シラノール基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の官能基、且つ、(b)ラジカル重合開始基を有する化合物の使用量は特に制限されない。
【0037】
得られた化合物(3)は、例えば、濃縮やろ過、遠心分離することにより、取り出すことができる。取り出した化合物(3)は、水や有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒などで洗浄することでさらに精製してもよい。
【0038】
続いて、層状珪酸鉱物(1)と、
含ラジカル重合開始基化合物と、
を反応させることで、層状珪酸鉱物(1)にラジカル重合開始基が導入された化合物(3)を取得し、得られた化合物(3)とラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーをラジカル重合させる。
【0039】
ラジカル重合としては、どのような重合方法であってもよいが、層状珪酸鉱物に結合しているポリマー鎖が分岐構造の無い鎖状ポリマーで且つ分子量が均一であることが好ましいことから、リビングラジカル重合が好ましく、非特許文献5及び6に記載されているような原子移動ラジカル重合がより好ましい。
従って、原子移動ラジカル重合により反応可能なモノマーであれば特に限定はなく、例えば、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸ブチル、アクリル酸t−ブチル、N,N−ジメチルメタアクリルアミド、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、4−ビニルピリジン、酢酸ビニル等が挙げられる。尚、これらのモノマーは一種類であってもよいし、二種類以上のものを用いてもよい。使用するモノマーの量は、特に限定されないが、化合物(3)に含まれる重合開始基に対して、通常、10モル倍から10000モル倍である。
【0040】
原子移動ラジカル重合に用いられる触媒としては、特に限定されないが、例えば、2価の銅、1価の銅、0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄、又は2価のニッケルの錯体が挙げられ、銅の錯体が好ましい。尚、これらの錯体は一種類であってもよいし、二種類以上のものを用いてもよい。
【0041】
銅の錯体は、塩化第二銅、臭化第二銅、塩化第一銅、臭化第一銅、又は銅粉などの銅化合物を用い、配位子を添加することにより得ることができる。
配位子としては、特に限定されないが、例えば、2,2−ビピリジル、その誘導体などのビピリジル系化合物、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’, N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミンなどが挙げられる。使用する配位子の量は、特に限定されないが、好ましくは、銅化合物の総量に対して、0.3モル倍〜5モル倍である。
【0042】
使用する銅化合物の総量は、化合物(3)に含まれる重合開始基に対して、通常0.0001〜100モル倍、好ましくは、0.001〜50モル倍である。
【0043】
原子移動ラジカル重合は、無溶媒で行ってもよいし、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert―ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル等のエーテル溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒等が挙げられる。尚、これらの溶媒は一種類であってもよいし、二種類以上のものを用いてもよい。
【0044】
化合物(3)とモノマーを原子移動ラジカル重合させる温度は、通常−20℃〜200℃であり、好ましくは、0℃〜150℃である。
【0045】
重合終了後、未反応のモノマーや溶媒の留去、重合反応の懸濁液のろ過、又は懸濁液の遠心分離により、ポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物(2)と未反応のモノマーや溶媒とを分離することができる。得られた層状珪酸鉱物(2)は、適当な溶媒などで洗浄することでさらに精製してもよい。
【0046】
次に、層状珪酸鉱物(2)と樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物に関して述べる。
【0047】
樹脂の種類は、有機ラジカルの存在下にラジカル重合を行い得る不飽和結合を有するモノマーを単独重合させることで得られる樹脂が好ましく、かかる樹脂であれば特に限定されない。例えば、メタクリレート系モノマー、アクリレート系モノマー、スチレン系モノマーなどである。層状珪酸鉱物(2)中に含まれるポリマーと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
メタクリル系モノマーの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、などが挙げられる。また、メタクリル酸も使用できる。
【0049】
アクリル系モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、などが挙げられる。また、アクリル酸も使用できる。
【0050】
スチレン系モノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、p−メトキシスチレン、o−、m−、p−t−ブチルスチレン、o−、m−、p−クロロスチレン、o−、m−、p−ヒドロキシスチレン、o−、m−、p−スチレンスルホン酸などが挙げられる。
【0051】
上記以外の不飽和結合を有するモノマーも使用可能であり、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン、1−へキセン、シクロヘキセンなどのオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドールなどのN−ビニル化合物、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリドなどの(メタ)アクリルアミド類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラクロロエチレン、ヘキサクロロプロピレン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、マレイン酸及びその誘導体(例えば、無水マレイン酸)などである。
【0052】
層状珪酸鉱物(2)と樹脂の混合割合は、特に限定されないが、通常、層状珪酸鉱物(2)における珪酸鉱物の重量(すなわち、化学修飾されたポリマー鎖の重量を除いた重量)と樹脂の重量の割合は、0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲である。好ましくは1:99〜80:20である。
【0053】
層状珪酸鉱物(2)と樹脂の混合方法に関しても、特に限定されるわけではないが、例えば、直接混合する方法や混練する方法、さらには、一旦溶媒を使用して混合させた後、溶媒を留去する方法等が挙げられる。
【0054】
尚、層状珪酸鉱物(2)と樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形及びシート加工後の真空成形、圧縮成形などの方法を用いて成形加工することも可能である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
[2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}の合成]
下記非特許文献8を参考にして合成した。
冷却装置を取り付けた反応容器に、室温で、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸−5−ヘキセン56.5g、トルエン700mLを加えた。得られた溶液へトリエトキシシラン206.9mLを滴下した。得られた混合物へ白金錯体(Aldrich製;platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane complex solution,0.10M in xylene)850μLを加えた後、室温で一晩攪拌した。その後、32℃で、反応溶液を濃縮し、さらに55℃で、3時間、減圧乾燥して、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}89.74gを得た。尚、ガスクロマトグラフィー分析により得られた面積百分率値は、93%であった。
[非特許文献8]
Macromolecules,2005,38,2137.
【0057】
[実施例2]
[層状珪酸鉱物の表面に化学結合を介してラジカル重合開始基が導入された化合物(3)の合成;合成スメクタイトと2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}との反応]
冷却装置を取り付けた反応容器に、室温で、合成スメクタイト族層状鉱物[コープケミカル(株)製「SWN」 BET比表面積160m/g]120.0g、エタノール333.3mL、28%アンモニア水200mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した後、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}58.2gをエタノール66.7mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。滴下後、さらに、40℃で20時間攪拌した。その後、不溶部を遠心分離により回収し、エタノール100mLで2回、テトラヒドロフラン100mLで2回、クロロホルム100mLで2回洗浄した。得られた固体を室温で、10時間、減圧乾燥して、層状珪酸鉱物の表面に化学結合を介してラジカル重合開始基が導入された化合物(スメクタイトと2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}とを反応させた化合物)141.24gを得た。
元素分析:C:10.1%、Br:2.7%
【0058】
[実施例3]
[層状珪酸鉱物の表面に化学結合を介してラジカル重合開始基が導入された化合物(3)の合成;スメクタイトと2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}との反応]
冷却装置を取り付けた反応容器に、室温で、合成スメクタイト族層状鉱物[コープケミカル(株)製「SWN」 BET比表面積160m/g]120.0g、エタノール333.3mL、28%アンモニア水200.0mLを加えた。得られた混合物を40℃で2時間攪拌した後、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)へキシル}10.94gをエタノール66.7mLに溶解させて得られた溶液を滴下した。滴下後、さらに、40℃で20時間攪拌した。その後、不溶部を遠心分離により回収し、エタノール100mLで2回、テトラヒドロフラン100mLで2回、クロロホルム100mLで2回洗浄した。得られた固体を室温で、10時間、減圧乾燥して、層状珪酸鉱物の表面に化学結合を介してラジカル重合開始基が導入された化合物(スメクタイトと2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}とを反応させた化合物)127.79gを得た。
元素分析:C:7.6%、Br:0.43%
【0059】
[実施例4]
[層状珪酸鉱物の表面に化学結合を介してラジカル重合開始基が導入された化合物(3)(「SWN」と2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}とを反応させた化合物)からのメチルメタクリレートの原子移動ラジカル重合]
冷却装置を取り付けた反応容器に、室温で、実施例2で合成した「層状珪酸鉱物の表面に化学結合を介してラジカル重合開始基が導入された化合物;「SWN」と2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}とを反応させた化合物」(元素分析:C:10.1%、Br:2.7%)35.0g、臭化銅(I)678.8mg、銅紛620.0mg、アニソール204.0mL、N,N,N’,N’’, N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液7.88mL(0.40mol/L)、メチルメタクリレート379.6mLを加えて、室温で1分間攪拌し、さらに、90℃で30分攪拌した。その後、不溶部を遠心分離により回収し、テトラヒドロフラン400mLで4回洗浄した。得られた固体を60℃で、10時間、減圧乾燥して、ポリメチルメタクリレートで修飾されたスメクタイト138.6gを得た。
元素分析:C:48.8%
TG−DTAより算出したポリマー含量:81.3%
【0060】
[実施例5]
[層状珪酸鉱物の表面に化学結合を介してラジカル重合開始基が導入された化合物(3)(「SWN」と2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}とを反応させた化合物)からのメチルメタクリレートの原子移動ラジカル重合]
冷却装置を取り付けた反応容器に、室温で、実施例2で合成した「層状珪酸鉱物の表面に化学結合を介してラジカル重合開始基が導入された化合物;「SWN」と2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}を反応させた化合物(元素分析:C:10.1%、Br:2.7%)」30.0g、臭化銅(I)581.8mg、銅紛531.5mg、アニソール55.5mL、N,N,N’,N’’, N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン5.00mL、メチルメタクリレート108.5mLを加えて、室温で1分間攪拌し、さらに、90℃で6分攪拌した。その後、不溶部を遠心分離により回収し、テトラヒドロフラン400mLで4回洗浄した。得られた固体を60℃で、10時間、減圧乾燥して、ポリメチルメタクリレートで修飾されたスメクタイト73.36gを得た。
元素分析:C:41.5%
TG−DTAより算出したポリマー含量:68.8%
【0061】
[実施例6]
[層状珪酸鉱物の表面に化学結合を介してラジカル重合開始基が導入された化合物(3)(「SWN」と2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}とを反応させた化合物)からのメチルメタクリレートの原子移動ラジカル重合]
冷却装置を取り付けた反応容器に、室温で、「層状珪酸鉱物の表面に化学結合を介してラジカル重合開始基が導入された化合物;「SWN」と2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸{6−(トリエトキシシリル)ヘキシル}とを反応させた化合物(元素分析:C:7.6%、Br:0.43%)」120.0g、臭化銅(I)370.5mg、銅紛338.4mg、アニソール76.9mL、N,N,N’,N’’, N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンのアニソール溶液38.72mL(0.40mol/L)、メチルメタクリレート207.2mLを加えて、室温で1分間攪拌し、さらに、90℃で30分攪拌した。その後、不溶部を遠心分離により回収し、テトラヒドロフラン400mLで4回洗浄した。得られた固体を60℃で、10時間、減圧乾燥して、ポリメチルメタクリレートで修飾されたスメクタイト185.9gを得た。
元素分析:C:30.2%
TG−DTAより算出したポリマー含量:51.6%
【0062】
[ガラス転移温度の測定]
【0063】
実施例4〜6及びポリメチルメタクリレート(Aldrich製;Mw〜120,000)に関して、DSC(TAインスツルメンツ製;DSC Q2000)を用いてガラス転移温度を測定した。(測定条件;昇温速度20℃/分)。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
[実施例7]
実施例4により得られたポリメチルメタクリレートで修飾された合成スメクタイト12.8g、メタクリル樹脂(住友化学(株)製 「MHF」)47.2gを、ラボプラストミル[東洋精機(株)製]に加え、200℃で10分間(回転数50rpm)溶融混練した。混練後、得られた樹脂組成物について、プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、温度200℃(予熱5分間、昇圧(15MPa)後3分間)でプレスした後、30℃で5分間冷却することで縦150mm×横150mm×厚さ約100μm及び縦150mm×横150mm×厚さ約3mmを得た。得られたプレスシートを用い、光透過試験を実施した。酸素透過試験用の試験片の作成は、25トン油圧式成形機(東洋プレス製)を用い、温度200℃、成形圧力50〜100kgf/cm(成形時間:4〜5分間)で実施した。結果を表2に示す。
【0066】
[実施例8]
実施例5により得られたポリメチルメタクリレートで修飾された合成スメクタイト7.69g、メタクリル樹脂(住友化学(株)製 「MHF」)52.3gを、ラボプラストミル[東洋精機(株)製]に加え、200℃で10分間(回転数50rpm)溶融混練した。混練後、得られた樹脂組成物について、プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、温度200℃(予熱5分間、昇圧(15MPa)後3分間)でプレスした後、30℃で5分間冷却することで縦150mm×横150mm×厚さ約100μm及び縦150mm×横150mm×厚さ約3mmを得た。得られたプレスシートを用い、光透過試験を実施した。酸素透過試験用の試験片の作成は、25トン油圧式成形機(東洋プレス製)を用い、温度200℃、成形圧力50〜100kgf/cm(成形時間:4〜5分間)で実施した。結果を表2に示す。
【0067】
[実施例9]
実施例6により得られたポリメタクリル酸メチルで修飾された合成スメクタイト4.96g、メタクリル樹脂(住友化学(株)製 「MHF」)55.0gを、ラボプラストミル[東洋精機(株)製]に加え、200℃で10分間(回転数50rpm)溶融混練した。混練後、得られた樹脂組成物について、プレス成形機(神藤金属工業所製;圧縮成形機 NF−37)を用いて、温度200℃(予熱5分間、昇圧(15MPa)後3分間)でプレスした後、30℃で5分間冷却することで縦150mm×横150mm×厚さ約100μm及び縦150mm×横150mm×厚さ約3mmを得た。得られたプレスシートを用い、光透過試験を実施した。酸素透過試験用の試験片の作成は、25トン油圧式成形機(東洋プレス製)を用い、温度200℃、成形圧力50〜100kgf/cm(成形時間:4〜5分間)で実施した。結果を表2に示す。
【0068】
[比較例1]
実施例6において、メタクリル樹脂(住友化学(株)製 「MHF」)60.0gのみを用いた以外は、実施例6と同様に実施した。得られたプレスシートを用い、光透過試験を実施した。酸素透過試験用の試験片の作成は、25トン油圧式成形機(東洋プレス製)を用い、温度200℃、成形圧力50〜100kgf/cm(成形時間:4〜5分間)で実施した。結果を表2に示す。
【0069】
[比較例2]
実施例6において、ポリメタクリル酸メチルで修飾された合成スメクタイトの代わりに、「SWN」2.40g、メタクリル樹脂(住友化学(株)製 「MHF」)57.6gを用いた以外は、実施例6と同様に実施した。
得られたプレスシートを用い、光透過試験を実施した。酸素透過試験用の試験片の作成は、25トン油圧式成形機(東洋プレス製)を用い、温度200℃、成形圧力50〜100kgf/cm(成形時間:4〜5分間)で実施した。結果を表2に示す。
【0070】
[光透過性試験の実施]
光透過性試験の条件:
装置:日本電色工業(株)製 HAZE METER NDH2000
条件:JIS K7136に対応させ測定。
【0071】
[酸素透過性試験の実施]
酸素透過性試験の条件:
測定装置:差圧式ガス・蒸気透過率測定装置(GTR−30XAD2、G2700T・F)[GTRテック(株)・ヤナコテクニカルサイエンス(株)製]
試験方法:差圧法
試験差圧:1atm
試験気体:酸素ガス(O)(乾燥状態)
試験温度:23±2℃
【0072】
[光透過試験及び酸素透過試験結果]
【0073】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状珪酸鉱物に、該層状珪酸鉱物と反応する反応基およびラジカル重合開始基を有する化合物を反応させることにより、ラジカル重合開始基を有する層状珪酸鉱物を調製し、この層状珪酸鉱物にあるラジカル重合開始基を起点として、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーをさらに重合させることより得られるポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物。
【請求項2】
ラジカル重合開始基が、リビングラジカル重合開始基である請求項1に記載のポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物。
【請求項3】
ラジカル重合開始基が、原子移動ラジカル重合開始基である請求項1に記載のポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物。
【請求項4】
層状珪酸鉱物と反応する反応基が、リン酸基、カルボン酸基、酸ハライド基、酸無水物基、イソシアナト基、グリシジル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一種類である請求項1に記載のポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物。
【請求項5】
層状珪酸鉱物と反応する反応基が、アルコキシシリル基である請求項1に記載のポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物。
【請求項6】
層状珪酸鉱物が、スメクタイト族層状珪酸鉱物である請求項1に記載のポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物。
【請求項7】
層状珪酸鉱物と、
(a)リン酸基、カルボン酸基、酸ハライド基、酸無水物基、イソシアナト基、グリシジル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基及びヒドロキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の反応基を有し、
且つ
(b)リビングラジカル重合開始基
を有する化合物と、
を反応させることによりリビングラジカル重合開始基を有する層状珪酸鉱物を調製する工程;
この層状珪酸鉱物にあるリビングラジカル重合開始基を起点として、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーをさらに重合させる工程;
を有するポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー鎖で化学修飾された層状珪酸鉱物と、
樹脂と、
を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8記載の樹脂が、(メタ)アクリル樹脂である請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項8記載の樹脂が、ポリメタクリル酸メチルである請求項8に記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−275442(P2010−275442A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130142(P2009−130142)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】