説明

ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料、及びその製造方法

【課題】ポリロタキサン及び繊維を有する材料であって、該繊維特有の性質を改良するか及び/又は向上させた材料の提供。
【解決手段】ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料であって、該ポリロタキサンは、環状分子、該環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有する、上記繊維材料及びその製造方法により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料、及びその製造方法に関する。特に、本発明は、繊維特有の特性を改良するか及び/又は向上させた、ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状分子(回転子:rotator)の開口部が直鎖状分子(軸:axis)によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両末端(直鎖状分子の両末端)に、環状分子が脱離しないように封鎖基を配置して成るポリロタキサンを複数架橋してなる架橋ポリロタキサンが提案されている(特許文献1参照、なお、この文献は、その全てが参照として本明細書に組み込まれる)。この架橋ポリロタキサンは、環状分子が直鎖状分子上を移動する滑車効果を有することによって、該架橋ポリロタキサンに張力が加えられたとしても、該滑車効果により該張力を架橋ポリロタキサン内で均一に分散させることができる。したがって、従来の架橋ポリマーとは異なり、張力を加えたとしてもクラック又は傷が生じることはないため、架橋ポリロタキサンは、種々の分野への応用が期待されている。
【特許文献1】特許第3475252号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、種々の分野への応用が期待されているが、繊維との複合材料は未だ試されていない。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ポリロタキサン及び繊維を有する材料であって、該繊維特有の性質を改良するか及び/又は向上させた材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、次の発明を見出した。
<1> ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料であって、該ポリロタキサンは、環状分子、該環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有する、上記繊維材料。
<2> 上記<1>において、ポリロタキサンと繊維とが、化学的に及び/又は物理的に結合するのがよい。
【0006】
<3> 上記<1>又は<2>において、ポリロタキサンは、その分子同士が、化学的に及び/又は物理的に結合するのがよい。
<4> 上記<1>〜<3>のいずれかにおいて、ポリロタキサンと繊維とは、その重量比(繊維:ポリロタキサン)が100:0.01〜100:10、好ましくは100:0.1〜100:5、より好ましくは100:0.1〜100:3であるのがよい。
【0007】
<5> 上記<1>〜<4>のいずれかにおいて、ポリロタキサンは、環状分子が繊維の特性を改質する特性改質基を有するのがよい。
<6> 上記<5>において、特性改質基は、ヒドロキシプロピル基、−OH基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。なお、光架橋基として、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩などを挙げることができるがこれらに限定されない。また、特性改質基は水溶性付与基であるのがよい。水溶性付与基としてヒドロキシプロピル基、−OH基、−NH基又は−COOH基などを挙げることができるがこれらに限定されない。
<7> 上記<1>〜<6>のいずれかにおいて、材料は、ストレッチ性、耐洗濯性、消臭性、防しわ性、帯電防止性、保湿性、及び保温性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質、好ましくはストレッチ性、耐洗濯性、防しわ性、帯電防止性、及び消臭性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質、より好ましくはストレッチ性、耐洗濯性、防しわ性、及び帯電防止性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質が改善されるのがよい。
【0008】
<8> 上記<1>〜<7>のいずれかにおいて、繊維が、天然繊維又は人造繊維、もしくはこれらの混合物(例えば、混紡、交撚、交織など)であるのがよい。
<9> 上記<8>において、天然繊維が、綿、亜麻、ラミー、黄麻、青麻、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、マゲー麻、コイヤなどの植物繊維;又は絹、ウール、モヘア、カシミア、山羊毛、ラクダ毛、ビキュナ、アルパカ、ラマ毛、アンゴラなどの動物繊維;もしくはこれらの混合物(例えば、混紡、交撚、交織など);であるのがよい。
【0009】
<10> 上記<8>において、人造繊維が、再生繊維;半合成繊維;及び合成繊維;並びにこれらの混合物(例えば、混紡、交撚、交織など)からなる群から選ばれるのがよい。これら人造繊維として、次のものを挙げることができるがこれらに限定されない。例えば、再生繊維として、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、精製セルロース繊維、リオセル(登録商標)、テンセル(登録商標)などのセルロース系再生繊維;天然ゴム、アルギン酸、タンパク質系などを挙げることができる。また、半合成繊維として、アセテート、トリアセテートなどのセルロース系半合成繊維、プロミックスなどを挙げることができる。さらに、合成繊維として、ナイロン、アラミドなどのポリアミド系;ビニロンなどのポリビニルアルコール系;ビニリデンなどのポリ塩化ビニリデン系;ポリ塩化ビニルなどのポリ塩化ビニル系;ポリエステル、ポリ乳酸などのポリエステル系;アクリルなどのポリアクリロニトリル系;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系;ポリウレタンなどのポリウレタン系;フッ素繊維などのポリフルオロエチレン系;ポリクラールなどのポリビニルアルコール−ポリ塩化ビニル共重合系;ポリアルキレンパラオキシベンゾエート;ポリフェノール;などを挙げることができる。
【0010】
<11> 上記<1>〜<10>のいずれかにおいて、繊維及び/又は繊維材料の形態が、織物、編物、不織布、糸、バラ毛、及びスライバーからなる群から選ばれるのがよい。
<12> 上記<1>〜<11>のいずれかにおいて、直鎖状分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよく、例えばポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれるのがよく、好ましくはポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれるのがよく、特にポリエチレングリコールであるのがよい。
【0011】
<13> 上記<1>〜<12>のいずれかにおいて、直鎖状分子は、その分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
<14> 上記<1>〜<13>のいずれかにおいて、封鎖基が、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類からなる群から選ばれるのがよい。なお、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類であるのがよい。
【0012】
<15> 上記<1>〜<14>のいずれかにおいて、環状分子が置換されていてもよいシクロデキストリン分子であるのがよい。
<16> 上記<1>〜<15>のいずれかにおいて、環状分子が置換されていてもよいシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにその誘導体からなる群から選ばれるのがよい。
【0013】
<17> 上記<1>〜<16>のいずれかにおいて、環状分子が置換されていてもよいα−シクロデキストリンであり、直鎖状分子がポリエチレングリコールであるのがよい。
<18> 上記<1>〜<17>のいずれかにおいて、環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、環状分子が0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4の量で直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
【0014】
<19> 上記<1>〜<17>のいずれかにおいて、繊維がウールであるのがよい。また、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、光架橋基の例として、上述のものを挙げることができる。
<20> 上記<19>において、直鎖状分子は、その分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
【0015】
<21> 上記<19>又は<20>において、材料は、ストレッチ性、耐洗濯性、消臭性、及び帯電防止性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質が改善されるのがよく、特にストレッチ性及び耐洗濯性の双方が同時に改善されるのがよい。
特に、ストレッチ性に関して、本発明の材料は、ウールのみ、即ちポリロタキサンを含まないウールのみと比較して、同等以上である。また、本発明の材料は、後述の耐洗濯性試験を10回行った場合であっても、ストレッチ性が、前述のウールのみ(未洗濯のもの)と同等以上である。
より具体的には、ウールのみの伸長率を1とした場合、本発明の材料の伸長率が1.05〜1.2、好ましくは1.1〜1.2であり、且つ本発明の材料を後述の耐洗濯性試験10回行った場合の伸長率が1.05〜1.2、好ましくは1.1〜1.2であるのがよい。さらに、本発明の材料は、本発明の材料(未洗濯)の伸長率を1とした場合、後述の耐洗濯性試験10回を行った場合の伸長率が0.95〜1.05、好ましくは0.98〜1.03であるのがよい。
【0016】
<22> 上記<1>〜<17>のいずれかにおいて、繊維が麻であるのがよい。また、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、光架橋基の例として、上述のものを挙げることができる。
<23> 上記<22>において、直鎖状分子は、その分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
<24> 上記<22>又は<23>において、材料は、防しわ性が改善されるのがよい。特に、麻の防しわ性を1とした場合、麻を有する繊維材料の防しわ性が1.2以上、例えば1.2〜1.8、好ましくは1.3以上、例えば1.3〜1.5であるのがよい。
【0017】
<25> 上記<1>〜<17>のいずれかにおいて、繊維がポリエステル、ナイロン系繊維又はアクリル系繊維、もしくはこれらの混合物であるのがよい。また、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、光架橋基の例として、上述のものを挙げることができる。
<26> 上記<25>において、直鎖状分子は、その分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
<27> 上記<25>又は<26>において、材料は、帯電防止性が改善されるのがよい。特に、ポリロタキサンを含まないポリエステルのみ、ナイロン系繊維のみ又はアクリル系繊維のみ、もしくはそれらの混合物のみの帯電性を1とした場合、ポリエステル、ナイロン系繊維又はアクリル系繊維、もしくはこれらの混合物を有する繊維材料の帯電性が1/2以下であるのがよい。帯電性については後述するが、摩擦帯電電荷量法を用いて得られる電荷量と、半減期試験による半減期がある。電荷量が1/2以下であるのがよい。また、これに加えて、又はこれとは別に、半減期が1/2以下、特に1/3以下であるのがよい。
【0018】
<28> 上記<1>〜<17>のいずれかにおいて、繊維がウール/ポリエステル、ウール/ナイロン系繊維、又はウール/アクリル系繊維、もしくはこれらの混合物であるのがよい。また、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、光架橋基の例として、上述のものを挙げることができる。
<29> 上記<28>において、直鎖状分子は、その分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
<30> 上記<28>又は<29>において、材料は、帯電防止性が改善されるのがよい。特に、ポリロタキサンを含まないウール/ポリエステルのみ、ウール/ナイロン系繊維のみ又はウール/アクリル系繊維のみ、もしくはそれらの混合物のみの帯電性を1とした場合、ウール/ポリエステル、ウール/ナイロン系繊維又はウール/アクリル系繊維、もしくはこれらの混合物を有する繊維材料の帯電性が1/2以下であるのがよい。帯電性については後述するが、摩擦帯電電荷量法を用いて得られる電荷量と、半減期試験による半減期がある。電荷量が1/2以下であるのがよい。また、これに加えて、又はこれとは別に、半減期が1/2以下、特に1/3以下であるのがよい。
【0019】
<31> 上記<1>〜<30>のいずれかの繊維材料を有する製品。これらの製品の例として、スーツ、スラックス、スカート、ジャケット、下着類、ソックス、シャツなどの衣類製品;鞄、帽子、スリッパ、手袋、タオルなどの小物製品;カーシートなどの各種乗り物用シート;カーテン、絨毯などのインテリア製品;布団、枕カバーなどの寝具製品などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0020】
<32> ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料の製造方法であって、
a)環状分子、該環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から前記環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有してなるポリロタキサンを準備する工程;及び
b)該ポリロタキサンと繊維とを混合する工程;
を有することにより、前記材料を得る、上記方法。
【0021】
<33> ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料を有してなる繊維製品の製造方法であって、
a)環状分子、該環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から前記環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有してなるポリロタキサンを準備する工程を有し、
さらに、b)−1)該ポリロタキサンと繊維とを混合する工程;及びb)−2)得られた混合繊維から前記繊維製品を得る工程を有するか、又は
c)−1)前記繊維から繊維製品前駆体を得る工程;及びc)−2)該繊維製品前駆体に前記ポリロタキサンを混合し前記繊維製品を得る工程を有する、上記方法。
【0022】
<34> 上記<32>又は<33>において、b)の「混合」、b)−1)の「混合」、又はc)−2)の「混合」を、前記ポリロタキサンを有する水性液を準備し、該水性液に、繊維又は繊維製品前駆体を浸漬することにより行うのがよい。
<35> 水性液中のポリロタキサンの濃度が、0.001〜50%、好ましくは0.01〜20%、より好ましくは0.1〜5%であるのがよい。
【0023】
<36> 上記<32>〜<35>のいずれかにおいて、ポリロタキサンと繊維とを化学的に及び/又は物理的に結合させる工程をさらに有するのがよい。
<37> 上記<32>〜<36>のいずれかにおいて、ポリロタキサンの分子同士を化学的に及び/又は物理的に結合させる工程をさらに有するのがよい。
<38> 上記<32>〜<37>のいずれかにおいて、ポリロタキサンと繊維とは、繊維材料又は繊維製品における重量比(繊維:ポリロタキサン)が100:0.01〜100:10、好ましくは100:0.1〜100:5、より好ましくは100:0.1〜100:3となるように混合するのがよい。
【0024】
<39> 上記<32>〜<38>のいずれかにおいて、ポリロタキサンは、環状分子が繊維の特性を改質する特性改質基を有するのがよい。
<40> 上記<39>において、特性改質基は、ヒドロキシプロピル基、−OH基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。なお、光架橋基として、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩などを挙げることができるがこれらに限定されない。また、特性改質基は水溶性付与基であるのがよい。水溶性付与基としてヒドロキシプロピル基、−OH基、−NH基又は−COOH基などを挙げることができるがこれらに限定されない。
<41> 上記<32>〜<40>のいずれかにおいて、繊維材料又は繊維製品は、ストレッチ性、耐洗濯性、消臭性、防しわ性、帯電防止性、保湿性、及び保温性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質、好ましくはストレッチ性、耐洗濯性、防しわ性、帯電防止性、及び消臭性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質、より好ましくはストレッチ性、耐洗濯性、防しわ性、及び帯電防止性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質が改善されるのがよい。
【0025】
<42> 上記<32>〜<41>のいずれかにおいて、繊維が、天然繊維又は人造繊維、もしくはこれらの混合物(例えば、混紡、交撚、交織など)であるのがよい。
<43> 上記<42>において、天然繊維が、綿、亜麻、ラミー、黄麻、青麻、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、マゲー麻、コイヤなどの植物繊維;又は絹、ウール、モヘア、カシミア、山羊毛、ラクダ毛、ビキュナ、アルパカ、ラマ毛、アンゴラなどの動物繊維;もしくはこれらの混合物(例えば、混紡、交撚、交織など)であるのがよい。
【0026】
<44> 上記<42>において、人造繊維が、再生繊維;半合成繊維;及び合成繊維;並びにこれらの混合物(例えば、混紡、交撚、交織など)からなる群から選ばれるのがよい。これら人造繊維として、次のものを挙げることができるがこれらに限定されない。例えば、再生繊維として、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、精製セルロース繊維、リオセル(登録商標)、テンセル(登録商標)などのセルロース系再生繊維;天然ゴム、アルギン酸、タンパク質系などを挙げることができる。また、半合成繊維として、アセテート、トリアセテートなどのセルロース系半合成繊維、プロミックスなどを挙げることができる。さらに、合成繊維として、ナイロン、アラミドなどのポリアミド系;ビニロンなどのポリビニルアルコール系;ビニリデンなどのポリ塩化ビニリデン系;ポリ塩化ビニルなどのポリ塩化ビニル系;ポリエステル、ポリ乳酸などのポリエステル系;アクリルなどのポリアクリロニトリル系;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系;ポリウレタンなどのポリウレタン系;フッ素繊維などのポリフルオロエチレン系;ポリクラールなどのポリビニルアルコール−ポリ塩化ビニル共重合系;ポリアルキレンパラオキシベンゾエート;ポリフェノール;などを挙げることができる。
【0027】
<45> 上記<32>〜<44>のいずれかにおいて、繊維及び/又は繊維材料の形態が、織物、編物、不織布、糸、バラ毛、及びスライバーからなる群から選ばれるのがよい。
<46> 上記<32>〜<45>のいずれかにおいて、直鎖状分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよく、例えばポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれるのがよく、好ましくはポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれるのがよく、特にポリエチレングリコールであるのがよい。
【0028】
<47> 上記<32>〜<46>のいずれかにおいて、直鎖状分子は、その分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
<48> 上記<32>〜<47>のいずれかにおいて、封鎖基が、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類からなる群から選ばれるのがよい。なお、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類であるのがよい。
【0029】
<49> 上記<32>〜<48>のいずれかにおいて、環状分子が置換されていてもよいシクロデキストリン分子であるのがよい。
<50> 上記<32>〜<49>のいずれかにおいて、環状分子が置換されていてもよいシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにその誘導体からなる群から選ばれるのがよい。
【0030】
<51> 上記<32>〜<50>のいずれかにおいて、環状分子が置換されていてもよいα−シクロデキストリンであり、直鎖状分子がポリエチレングリコールであるのがよい。
<52> 上記<32>〜<51>のいずれかにおいて、環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、環状分子が0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4の量で直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
【0031】
<53> 上記<32>〜<52>のいずれかにおいて、繊維がウールであるのがよい。また、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、光架橋基の例として、上述のものを挙げることができる。
<54> 上記<53>において、直鎖状分子は、その分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
【0032】
<55> 上記<53>又は<54>において、材料は、ストレッチ性、耐洗濯性、消臭性、及び帯電防止性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質が改善されるのがよく、特にストレッチ性及び耐洗濯性の双方が同時に改善されるのがよい。
特に、ストレッチ性に関して、本発明の材料は、ウールのみ、即ちポリロタキサンを含まないウールのみと比較して、同等以上である。また、本発明の材料は、後述の耐洗濯性試験を10回行った場合であっても、ストレッチ性が、前述のウールのみ(未洗濯のもの)と同等以上である。
より具体的には、ウールのみの伸長率を1とした場合、本発明の材料の伸長率が1.05〜1.2、好ましくは1.1〜1.2であり、且つ本発明の材料を後述の耐洗濯性試験10回行った場合の伸長率が1.05〜1.2、好ましくは1.1〜1.2であるのがよい。さらに、本発明の材料は、本発明の材料(未洗濯)の伸長率を1とした場合、後述の耐洗濯性試験10回を行った場合の伸長率が0.95〜1.05、好ましくは0.98〜1.03であるのがよい。
【0033】
<56> 上記<32>〜<52>のいずれかにおいて、繊維が麻であるのがよい。また、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、光架橋基の例として、上述のものを挙げることができる。
<57> 上記<56>において、直鎖状分子は、その分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
<58> 上記<56>又は<57>において、材料は、防しわ性が改善されるのがよい。特に、麻の防しわ性を1とした場合、麻を有する繊維材料の防しわ性が1.2以上、例えば1.2〜1.8、好ましくは1.3以上、例えば1.3〜1.5であるのがよい。
【0034】
<59> 上記<32>〜<52>のいずれかにおいて、繊維がポリエステル、ナイロン系繊維又はアクリル系繊維、もしくはこれらの混合物であるのがよい。また、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、光架橋基の例として、上述のものを挙げることができる。
<60> 上記<59>において、直鎖状分子は、その分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
<61> 上記<59>又は<60>において、材料は、帯電防止性が改善されるのがよい。特に、ポリロタキサンを含まないポリエステルのみ、ナイロン系繊維のみ又はアクリル系繊維のみ、もしくはそれらの混合物のみの帯電性を1とした場合、ポリエステル、ナイロン系繊維又はアクリル系繊維、もしくはこれらの混合物を有する繊維材料の帯電性が1/2以下であるのがよい。帯電性については後述するが、摩擦帯電電荷量法を用いて得られる電荷量と、半減期試験による半減期がある。電荷量が1/2以下であるのがよい。また、これに加えて、又はこれとは別に、半減期が1/2以下、特に1/3以下であるのがよい。
【0035】
<62> 上記<32>〜<52>のいずれかにおいて、繊維がウール/ポリエステル、ウール/ナイロン系繊維、又はウール/アクリル系繊維、もしくはこれらの混合物であるのがよい。また、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、光架橋基の例として、上述のものを挙げることができる。
<63> 上記<62>において、直鎖状分子は、その分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
<64> 上記<62>又は<63>において、材料は、帯電防止性が改善されるのがよい。特に、ポリロタキサンを含まないウール/ポリエステルのみ、ウール/ナイロン系繊維のみ又はウール/アクリル系繊維のみ、もしくはそれらの混合物のみの帯電性を1とした場合、ウール/ポリエステル、ウール/ナイロン系繊維又はウール/アクリル系繊維、もしくはこれらの混合物を有する繊維材料の帯電性が1/2以下であるのがよい。帯電性については後述するが、摩擦帯電電荷量法を用いて得られる電荷量と、半減期試験による半減期がある。電荷量が1/2以下であるのがよい。また、これに加えて、又はこれとは別に、半減期が1/2以下、特に1/3以下であるのがよい。
【0036】
<65> 上記<33>〜<64>のいずれかの繊維製品は、衣類製品(例えば、スーツ、スラックス、スカート、ジャケット、下着類、ソックス、シャツなど);小物製品(例えば鞄、帽子、スリッパ、手袋、タオルなど);各種乗り物用シート(例えばカーシートなど);インテリア製品(例えばカーテン、絨毯など);及び寝具製品(例えば布団、枕カバーなど)からなる群から選ばれるのがよい。ただし、列挙した製品に限定されない。
【発明の効果】
【0037】
本発明により、ポリロタキサン及び繊維を有する材料であって、該繊維特有の性質を改良するか及び/又は向上させた材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料、該材料を有してなる製品、該材料及び製品の製造方法を提供する。
【0039】
<繊維材料>
本発明の繊維材料は、ポリロタキサン及び繊維を有する。
ここでポリロタキサンは、環状分子、該環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有する。
ポリロタキサンの少なくとも一部と繊維の少なくとも一部とは、化学的に及び/又は物理的に結合するのがよい。なお、ポリロタキサン分子の全てが繊維と化学的に及び/又は物理的に結合してもよい。また、すべての繊維がポリロタキサンと化学的に及び/又は物理的に結合してもよい。
また、ポリロタキサンの少なくとも一部はそれ自体、その分子同士が化学的に及び/又は物理的に結合してもよい。なお、ポリロタキサン分子の全てが、いずれかのポリロタキサン分子と化学的に及び/又は物理的に結合してもよい。
したがって、ポリロタキサンは、その分子同士が化学的及び/又は物理的に結合し、且つ繊維と化学的に及び/又は物理的に結合してもよい。
【0040】
本発明の繊維材料において、ポリロタキサンと繊維とは、その重量比(繊維:ポリロタキサン)が100:0.01〜100:10、好ましくは100:0.1〜100:5、より好ましくは100:0.1〜100:3であるのがよい。
上記範囲において、繊維特有の性質を改良するか及び/又は向上させることができる。
【0041】
本発明の繊維材料は、繊維特有の性質を改良するか及び/又は向上させた材料である。例えば、繊維のある特性、例えばストレッチ性が乏しい場合、本発明の材料は、該ストレッチ性を改良させるものを提供することができる。または、繊維の長所、例えば耐洗濯性が長所である場合、本発明の材料は、該長所をさらに向上させたものを提供することができる。
これらの性質として、特に限定されないが、ストレッチ性、耐洗濯性、消臭性、防しわ性、帯電防止性、保湿性、及び保温性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質が改善されるのがよく、好ましくはストレッチ性、耐洗濯性、消臭性、防しわ性、及び帯電防止性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質が改善されるのがよく、より好ましくはストレッチ性、耐洗濯性、防しわ性及び帯電防止性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質が改善されるのがよい。
【0042】
各特性は、次のように、測定することができる。なお、特性において、「繊維」と「繊維材料(又は繊維製品)」とを比較する場合、それぞれの形態が同じ状態であることが前提である。例えば、「繊維」と「繊維材料」とが双方共に糸状である場合、該糸の原料、太さ、撚り数、撚り合わせ数などが同一であることが前提となる。または、「繊維」と「繊維材料」とが双方共に布状である場合、双方の糸の原料、太さ、撚り数、撚り合わせ数、編目、混率、織組織などが全て同一であることが前提となる。
【0043】
<ストレッチ性>
JIS L1096 8.14.1のB法(定荷重法)に準拠する伸長率と、JIS L1096 8.14.2のB−1法(定荷重法)に準拠する伸長回復率とを測定することにより、ストレッチ性の有無又はその改良度合いを観察する。
上述の伸長率において、本発明の繊維材料又は繊維製品は、繊維のみの値と同等以上であるのがよい。具体的には、繊維のみを値を1として標準化した場合、本発明の繊維材料又は繊維製品の値が1.05以上であるのがよい。
また、上述の伸長回復率において、本発明の繊維材料又は繊維製品は、繊維のみの値と同等以上であるのがよい。
【0044】
<耐洗濯性>
耐洗濯性の試験は、JIS L0217−103に準拠して行う。即ち、JIS C9606に規定される遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用いて、JIS L0217−103に規定されるように、繊維材料又は繊維製品を洗濯、乾燥する。JIS L0217−103の洗濯・乾燥を10回行った寸法変化率が3%以下であり且つ外観の変化がない場合を「耐洗濯性あり」と判断する。好ましくは、JIS L0217−103の洗濯・乾燥を20回行った寸法変化率が3%以下であり且つ外観の変化がない場合を好ましい「耐洗濯性あり」と判断する。
【0045】
<防しわ性>
防しわ性の試験は、JIS L1059−1のモンサント法に準拠して行う。より具体的には、JIS L1059−1 5.1.2及び8.2.2に規定する5.0Nの荷重装置を用い、JIS L1059−1 5.2及び8.3に規定する、しわ回復角測定試験機を用いて、しわ回復角α(°)を測定し、以下の式から防しわ率を求める。
防しわ率(%)=(α/180)×100
この防しわ率において、繊維のみを値を1として標準化した場合、繊維材料又は繊維製品の値が1.05以上、好ましくは1.1〜1.8、より好ましくは1.3〜1.5であるのがよい。
【0046】
<帯電防止性>
帯電防止性の試験は、後述の摩擦帯電電荷量法及び/又は半減期測定法により行う。
摩擦帯電電荷量法の試験は、具体的には、試験試料の形態により、次のように行う。即ち、試料が生地の場合、試験片を摩擦布で摩擦した後、ファラデーケージに投入し発生した電荷量(μC/m)を測定する。試料が生地以外の場合、摩擦布を張ったタンブル内で試料を摩擦させファラデーケージに投入し発生した電荷量(μC/着)を測定する。
また、半減期測定法は、試験片に10kVの電圧を印加した後、帯電圧が1/2に半減するまでの時間(秒)を測定する。
摩擦帯電電荷量法により得られた電荷量において、繊維のみを値を1として標準化した場合、本発明の繊維材料又は繊維製品の値が0.95以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下であるのがよい。
半減期測定法により得られる半減期において、繊維のみを値を1として標準化した場合、本発明の繊維材料又は繊維製品の値が0.9以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.4以下であるのがよい。
【0047】
<繊維>
本発明の材料における繊維は、天然繊維又は人造繊維、もしくはこれらの混合物(例えば、混紡、交撚、交織など)であるのがよい。
天然繊維は、綿、亜麻、ラミー、黄麻、青麻、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、マゲー麻、コイヤなどの植物繊維;又は絹、ウール、モヘア、カシミア、山羊毛、ラクダ毛、ビキュナ、アルパカ、ラマ毛、アンゴラなどの動物繊維;もしくはこれらの混合物(例えば、混紡、交撚、交織など)であるのがよい。
【0048】
人造繊維は、再生繊維;半合成繊維;及び合成繊維;並びにこれらの混合物(例えば、混紡、交撚、交織など);からなる群から選ばれるのがよい。これら人造繊維として、次のものを挙げることができるがこれらに限定されない。例えば、再生繊維として、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、精製セルロース繊維、リオセル(登録商標)、テンセル(登録商標)などのセルロース系再生繊維;天然ゴム、アルギン酸、タンパク質系などを挙げることができる。また、半合成繊維として、アセテート、トリアセテートなどのセルロース系半合成繊維、プロミックスなどを挙げることができる。さらに、合成繊維として、ナイロン、アラミドなどのポリアミド系;ビニロンなどのポリビニルアルコール系;ビニリデンなどのポリ塩化ビニリデン系;ポリ塩化ビニルなどのポリ塩化ビニル系;ポリエステル、ポリ乳酸などのポリエステル系;アクリルなどのポリアクリロニトリル系;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系;ポリウレタンなどのポリウレタン系;フッ素繊維などのポリフルオロエチレン系;ポリクラールなどのポリビニルアルコール−ポリ塩化ビニル共重合系;ポリアルキレンパラオキシベンゾエート;ポリフェノール;などを挙げることができる。
【0049】
本発明において、繊維及び/又は繊維材料の形態は、特に限定されないが、織物、編物、不織布、糸、バラ毛、及びスライバーからなる群から選ばれるのがよい。なお、上述のように、繊維と繊維材料(又は繊維製品)との特性を比較する場合、双方の形態が同一であるのがよい。
【0050】
<ポリロタキサン>
本発明の材料において、ポリロタキサンは、環状分子、該環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有する。
ポリロタキサンは、上述のように、その一部又は全ての分子同士が、化学的に及び/又は物理的に結合していてもよい。
ポリロタキサンは、環状分子が繊維の特性を改質する特性改質基を有するのがよい。該特性改質基は、繊維の特性を改良するか又は向上させる基であれば、特に限定されないが、例えば水溶性付与基であるのがよい。特性改質基は、ヒドロキシプロピル基、−OH基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。なお、光架橋基として、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩などを挙げることができるがこれらに限定されない。また、上述のように、特性改質基は水溶性付与基であるのがよい。水溶性付与基としてヒドロキシプロピル基、−OH基、−NH基又は−COOH基などを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0051】
ポリロタキサンは、その直鎖状分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体からなる群から選ばれるのがよく、例えばポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれるのがよく、好ましくはポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれるのがよく、特にポリエチレングリコールであるのがよい。
【0052】
ポリロタキサンは、その直鎖状分子の分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
ポリロタキサンは、その封鎖基が、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニルなどを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類(置換基として、上記と同じものを挙げることができるがこれらに限定されない。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、及びステロイド類からなる群から選ばれるのがよい。なお、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、及びピレン類からなる群から選ばれるのが好ましく、より好ましくはアダマンタン基類又はトリチル基類であるのがよい。
【0053】
ポリロタキサンは、その環状分子が置換されていてもよいシクロデキストリン分子であるのがよい。置換基として、例えば、上述の特性改質基を挙げることができる。
ポリロタキサンは、その環状分子が置換されていてもよいシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにその誘導体からなる群から選ばれるのがよい。
【0054】
ポリロタキサンは、その環状分子が置換されていてもよいα−シクロデキストリンであり、直鎖状分子がポリエチレングリコールであるのがよい。
ポリロタキサンは、その環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、環状分子が0.001〜0.6、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4の量で直鎖状分子に串刺し状に包接されるのがよい。
【0055】
特に、本発明において、繊維がウールであり、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、光架橋基として、上述の基を挙げることができる。
この場合、直鎖状分子の分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
また、材料は、ストレッチ性、耐洗濯性、消臭性、及び帯電防止性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質が改善されるのがよく、特にストレッチ性及び耐洗濯性の双方が同時に改善されるのがよい。
【0056】
特に、ストレッチ性に関して、本発明の材料は、ウールのみ、即ちポリロタキサンを含まないウールのみと比較して、同等以上である。また、本発明の材料は、後述の耐洗濯性試験を10回行った場合であっても、ストレッチ性が、前述のウールのみ(未洗濯のもの)と同等以上である。
より具体的には、ウールのみの伸長率を1とした場合、本発明の材料の伸長率が1.05〜1.2、好ましくは1.1〜1.2であり、且つ本発明の材料を後述の耐洗濯性試験10回行った場合の伸長率が1.05〜1.2、好ましくは1.1〜1.2であるのがよい。さらに、本発明の材料は、本発明の材料(未洗濯)の伸長率を1とした場合、後述の耐洗濯性試験10回を行った場合の伸長率が0.95〜1.05、好ましくは0.98〜1.03であるのがよい。
【0057】
また、本発明において、繊維が麻であり、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、ここで「麻」には各種の麻が含まれる。なお、光架橋基として、上述の基を挙げることができるがこれらに限定されない。
この場合、直鎖状分子の分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
また、繊維が麻である場合、本発明の材料は、防しわ性が改善されるのがよい。特に、麻のみの防しわ性を1とした場合、麻を有する本発明の繊維材料の防しわ性が1.2以上、例えば1.2〜1.8、好ましくは1.3以上、例えば1.3〜1.5であるのがよい。
【0058】
本発明において、繊維がポリエステル、ナイロン系繊維又はアクリル系繊維、もしくはこれらの混合物であるのがよい。また、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、光架橋基の例として、上述のものを挙げることができる。
この場合、直鎖状分子の分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
また、この場合、即ち繊維がポリエステル、ナイロン系繊維又はアクリル系繊維、もしくはこれらの混合物である場合、本発明の材料は、帯電防止性が改善されるのがよい。特に、ポリロタキサンを含まないポリエステルのみ、ナイロン系繊維のみ又はアクリル系繊維のみ、もしくはそれらの混合物のみの帯電性を1とした場合、ポリエステル、ナイロン系繊維又はアクリル系繊維、もしくはこれらの混合物を有する本発明の繊維材料の帯電性が1/2以下であるのがよい。帯電性については後述するが、摩擦帯電電荷量法を用いて得られる電荷量と、半減期試験による半減期がある。電荷量が1/2以下であるのがよい。また、これに加えて、又はこれとは別に、半減期が1/2以下、特に1/3以下であるのがよい。
【0059】
本発明において、繊維がウール/ポリエステル、ウール/ナイロン系繊維、又はウール/アクリル系繊維、もしくはこれらの混合物であるのがよい。また、ポリロタキサンの直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子の−OH基の少なくとも一部がヒドロキシプロピル基、−NH基、−COOH基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換されるのがよく、好ましくはヒドロキシプロピル基で置換されるのがよい。なお、光架橋基の例として、上述のものを挙げることができる。
この場合、直鎖状分子の分子量が1万以上、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上であるのがよい。
この場合、即ち繊維がウール/ポリエステル、ウール/ナイロン系繊維、又はウール/アクリル系繊維、もしくはこれらの混合物である場合、本発明の材料は、帯電防止性が改善されるのがよい。特に、ポリロタキサンを含まないウール/ポリエステルのみ、ウール/ナイロン系繊維のみ又はウール/アクリル系繊維のみ、もしくはそれらの混合物のみの帯電性を1とした場合、ウール/ポリエステル、ウール/ナイロン系繊維又はウール/アクリル系繊維、もしくはこれらの混合物を有する繊維材料の帯電性が1/2以下であるのがよい。帯電性については後述するが、摩擦帯電電荷量法を用いて得られる電荷量と、半減期試験による半減期がある。電荷量が1/2以下であるのがよい。また、これに加えて、又はこれとは別に、半減期が1/2以下、特に1/3以下であるのがよい。
【0060】
本発明は、上述の繊維材料を有する製品を提供する。製品として、上述の繊維材料を有するものであれば特に限定されないが、例えば衣類製品(例えば、スーツ、スラックス、スカート、ジャケット、下着類、ソックス、シャツなど);小物製品(例えば鞄、帽子、スリッパ、手袋、タオルなど);各種乗り物用シート(例えばカーシートなど);インテリア製品(例えばカーテン、絨毯など);及び寝具製品(例えば布団、枕カバーなど)を挙げることができる。
【0061】
本発明は、上述の繊維材料を製造する方法、及び繊維材料を有する製品を製造する方法も提供する。
繊維材料を製造する方法の一つとして、次のものを挙げることができる。
即ち、a)環状分子、該環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から前記環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有してなるポリロタキサンを準備する工程;及び
b)該ポリロタキサンと繊維とを混合する工程;
を有することにより、ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料の製造方法を提供することができる。
【0062】
また、ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料を有してなる繊維製品の製造方法も提供することができる。
即ち、a)環状分子、該環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有してなるポリロタキサンを準備する工程を有し、
さらに、b)−1)該ポリロタキサンと繊維とを混合する工程;及びb)−2)得られた混合繊維から繊維製品を得る工程を有するか、又は
c)−1)繊維から繊維製品前駆体を得る工程;及びc)−2)該繊維製品前駆体にポリロタキサンを混合し繊維製品を得る工程を有する方法を提供することができる。
【0063】
上述の方法において、「ポリロタキサン」及び「繊維」は、上述した通りである。
なお、「繊維製品前駆体」とは、「繊維」と「繊維製品」との中間形態、又は「繊維製品」とほぼ同じ形態を有するものをいう。例えば、「繊維」の形態が糸であれば、「繊維製品前駆体」の形態が「織物」であり、「繊維製品」の形態も「織物」である場合などを例示することができる。
【0064】
上述の方法において、b)の「混合」、b)−1)の「混合」、又はc)−2)の「混合」は、ポリロタキサンを有する水性液を準備し、該水性液に、繊維又は繊維製品前駆体を浸漬するか、又は繊維又は繊維製品前駆体に該水性液を付着させて、その後、乾燥することにより行うのがよい。ここで、「水性液」とは、ポリロタキサンを溶解するか又は懸濁し、水を有する液をいう。したがって、「水性液」には、ポリロタキサン及び水を含み、さらに他の成分を含んでよい。他の成分として、例えば上記製品を得るための有効成分、例えば繊維の浸漬加工の際に有効な成分、例えばポリロタキサンの繊維への浸透・拡散を助ける薬剤;ポリロタキサンと繊維の架橋反応速度を上下する薬剤;ポリロタキサンを繊維に均一に架橋するための薬剤;などを挙げることができるが、これらに限定されない。
水性液中のポリロタキサンの濃度が、0.001〜50%、好ましくは0.01〜20%、より好ましくは0.1〜5%であるのがよい。
なお、「混合」において、ポリロタキサンと繊維とは、繊維材料又は繊維製品における重量比(繊維:ポリロタキサン)が100:0.01〜100:10、好ましくは100:0.1〜100:5、より好ましくは100:0.1〜100:3となるように混合するのがよい。
【0065】
浸漬の条件は、水性液の濃度、浸漬する繊維の種類、形態などの種々の条件に依存するため、特に限定されないが、例えば水性液の温度を25〜80℃、好ましくは30〜60℃にするのがよく、浸漬時間を5秒〜5分間、好ましくは10秒〜5分間とするのがよい。
また、乾燥は、浸漬前の繊維と浸漬後に得られる材料との水分量が同程度となるように、行うのがよい。乾燥条件は、水性液の濃度、浸漬する繊維の種類、形態などの種々の条件に依存するため、特に限定されないが、例えば100〜160℃で30〜40秒のヒートセット乾燥を行うのがよい。
【0066】
上述の方法において、ポリロタキサンと繊維とを化学的に及び/又は物理的に結合させる工程をさらに有するのがよい。双方を化学的に結合させる工程として、ポリロタキサン及び/又は繊維に、光架橋基を導入しておき光照射することによりポリロタキサンと繊維とを化学的に結合させる手法;などを、従来より公知の手法を用いることができる。
【0067】
上述の方法において、ポリロタキサンの分子同士を化学的に及び/又は物理的に結合させる工程をさらに有するのがよい。なお、ポリロタキサンの分子同士を化学的に及び/又は物理的に結合させる手法として、例えば特許第3475252号公報(この内容は全て本明細書中に組み込まれる)記載の手法、WO2005/080470公報(この内容は全て本明細書中に組み込まれる)記載の手法、PCT出願番号:PCT/JP2006/303053(この内容は全て本明細書中に組み込まれる)記載の手法などを用いることができる。
【0068】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0069】
<ポリロタキサンの準備>
WO2005/080469号公報の実施例3に記載される手法と同様の方法により、α−シクロデキストリン(以下、「シクロデキストリン」を単に「CD」と略記する場合がある)のOH基をヒドロキシプロピル基で置換したヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを調製した。具体的には次のようにヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを調製した。
【0070】
<<PEGのTEMPO酸化によるPEG−カルボン酸の調製>>
ポリエチレングリコール(以下、「PEG」と略記する場合がある)(分子量3.5万)10g、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル)100mg、及び臭化ナトリウム1gを水100mlに溶解した。得られた溶液に市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度約5%)5mlを添加し、室温で攪拌しながら反応させた。反応が進行すると添加直後から系のpHは急激に減少するが、なるべくpH:10〜11を保つように1N NaOHを添加して調製した。pHの低下は概ね3分以内に見られなくなったが、さらに10分間攪拌した。エタノールを最大5mlまでの範囲で添加して反応を終了させた。塩化メチレン50mlでの抽出を3回繰返して無機塩以外の成分を抽出した後、エバポレータで塩化メチレンを留去した。温エタノール250mlに溶解させた後、−4℃の冷凍庫に一晩おいてPEG−カルボン酸、即ちPEGの両末端をカルボン酸(−COOH)に置換したもの、を析出させた。析出したPEG−カルボン酸を遠心分離で回収した。この温エタノール溶解−析出−遠心分離のサイクルを数回繰り返し、最後に真空乾燥で乾燥させてPEG−カルボン酸を得た。収率95%以上。カルボキシル化率95%以上。
【0071】
<<PEG−カルボン酸とα−CDとを用いた包接錯体の調製>>
上記で調製したPEG−カルボン酸3g及びα−CD12gをそれぞれ別々に用意した70℃の温水50mlに溶解させた後、両者を混合し、その後、冷蔵庫(4℃)中で一晩静置した。クリーム状に析出した包接錯体を凍結乾燥し回収した。収率90%以上(収量約14g)。
【0072】
<<アダマンタンアミンとBOP試薬反応系を用いた包接錯体の封鎖>>
室温でジメチルホルムアミド(DMF)50mlにアダマンタンアミン0.13gを溶解し、上記で得られた包接錯体14gに添加した後、速やかによく振り混ぜた。続いて、BOP試薬(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート)0.38gをDMF25mlに溶解したものに添加し、同様によく振り混ぜた。さらに、ジイソプロピルエチルアミン0.14mlをDMF25mlに溶解したものに添加し、同様によく振り混ぜた。得られた混合物を冷蔵庫中で一晩静置した。その後、DMF/メタノール=1:1混合溶液100mlを加えてよく混ぜ、遠心分離して上澄みを捨てた。このDMF/メタノール混合溶液による洗浄を2回繰り返した後、さらにメタノール100mlを用いた洗浄を同様の遠心分離により2回繰り返した。得られた沈澱を真空乾燥した後、ジメチルスルホキシド(DMSO)50mlに溶解し、得られた透明な溶液を水700ml中に滴下してポリロタキサンを析出させた。析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥又は凍結乾燥させた。このDMSO溶解−水中で析出−回収−乾燥のサイクルを2回繰り返し、最終的に精製ポリロタキサンを得た。添加した包接錯体をベースにした収率約68%(包接錯体14gからの収量は9.6g)であった。
【0073】
<<α−CDのヒドロキシプロピル化>>
上記で得られたポリロタキサン3.0gを1N NaOH水溶液40mlに溶解し、大過剰のプロピレンオキシド25gを加えた。室温で24時間攪拌した後、塩酸で中和した。この溶液を透析チューブ(分画分子量:12,000)にて48時間、水道水流水下で透析した。さらに、500ml精製水中で3時間の透析を2回行った。凍結乾燥を行い、α−CDのOH基の一部をヒドロキシプロピル化したヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを得た。得られた生成物の収量は3.1gであった。
【0074】
<ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン水溶液の調製>
得られたヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを、その濃度が1wt%となるように、水に溶解し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン水溶液を調製した。なお、この水溶液は、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンのウール布への浸透を促進させるために、界面活性剤、2-(1,1-ジメチレンエトキシ)プロパノールが100ppm相当量となるように、該界面活性剤を含んでいた。
【0075】
<ウール布を繊維として用いた本発明の材料A−1の調製>
ウール布(糸番:2/60、平織り(2/60 × 2/60)、目付:168g/m)の試験片を準備した。
該試験片が十分に浸漬できる槽に、上述の1wt%ヒドロキシプロピル化ポリロタキサン水溶液を満たし、該水溶液の温度を40℃に設定した。
該水溶液中に、ウール布試験片を2分間浸漬し、引き上げ、マングル絞りを掛けた予備乾燥を行った。その後、140℃で40秒間ヒートセット乾燥を行い、浸漬前後の試験片の水分量を同一にし、ウール及びヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを有する本発明の材料A−1を得た。浸漬前後の試験片の重量を測定することにより、浸漬後の試験片は、ウール:ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンの重量比が100:1.5であることを確認した。
【0076】
<本発明の材料A−1の特性>
<<ストレッチ性>>
上述により得られた本発明の材料A−1のストレッチ性を観察した。上述のように、JIS L1096 8.14.1のB法(定荷重法)に準拠する伸長率と、JIS L1096 8.14.2のB−1法(定荷重法)に準拠する伸長回復率とを測定した。
浸漬前の試験片(ウール布のみ)の伸長率は12.4%であった。一方、浸漬後の試験片(本発明の材料A−1)の伸長率は14.0%であった。
また、浸漬前の試験片(ウール布のみ)の伸長回復率は、30秒後:76.3%、1時間後:85.3%であった。一方、浸漬後の試験片(本発明の材料A−1)の伸長回復率は、30秒後:77.7%、1時間後:89.9%であった。
これら伸長率及び伸長回復率の結果から、本発明の材料A−1は、ウールのみのストレッチ性、特に伸長率と1時間後の伸長回復率を改善していることがわかる。
【0077】
<<耐洗濯性>>
上述により得られた本発明の材料A−1の耐洗濯性を観察した。上述のように、JIS C9606に規定される遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用いて、JIS L0217−103に規定されるように、本発明の材料A−1及びウールのみ(本実施例に用いたウール布)を試験した。
ウールのみは、洗濯・乾燥回数:10回で、若干のしわの発生を観察した。一方、本発明の材料A−1は、洗濯・乾燥回数:20回を行った後であっても、しわなどの外観変化が観察されず、寸法変化率も0.5%以内であった。
本発明の材料A−1について、洗濯・乾燥回数:20回を行った後のストレッチ性を、上述と同様に試験した。その結果、本発明の材料A−1の洗濯・乾燥回数:20回後のストレッチ性は、伸長率:13.7%、伸長回復率(30秒後):76%、1時間後:80%であった。
このことから、本発明の材料A−1は、ウールのみの耐洗濯性を改善していることがわかる。
また、本発明の材料は、洗濯・乾燥試験前後において、伸長率の変化が少ない(洗濯・乾燥試験前:14.0%;洗濯・乾燥試験後:13.7%)ことから、単に耐洗濯性が改善されているだけでなく、ストレッチ性を有しつつ耐洗濯性が改善されていることがわかる。
【0078】
(比較例1)
従来のウール・ウォッシャブル加工品のストレッチ性(伸長率・伸長回復率)及び洗濯・乾燥試験後のストレッチ性(伸長率・伸長回復率)を試験した。
用いたウール・ウォッシャブル加工品は、実施例1で用いたウール布(糸番:2/60、平織り(2/60 × 2/60)、目付:168g/m)と同様のものを次のように加工して準備した。
ウール布が十分に浸漬できる槽に、10%ウレタン系樹脂溶液を満たし、該水溶液中に、ウール布を2分間浸漬し、引き上げ、マングル絞りを掛けた予備乾燥を行った。その後、140℃で40秒間ヒートセット乾燥を行い、浸漬前後の水分量を同一にし、ウール・ウォッシャブル加工品B−1を得た。浸漬前後の布の重量を測定することにより、ウール・ウォッシャブル加工品B−1は、ウール以外にウレタン系樹脂を10%含むことを確認した。
得られたウール・ウォッシャブル加工品B−1を、実施例1と同様に、ストレッチ性を観察した。ウール・ウォッシャブル加工品B−1は、伸長率:6.0%、伸長回復率(30秒後):78.5%、1時間後:92.8%であった。
また、ウール・ウォッシャブル加工品B−1を、洗濯・乾燥回数を10回とした以外、実施例1と同様に、耐洗濯性試験を行った。耐洗濯性試験を行ったウール・ウォッシャブル加工品B−1のストレッチ性は、伸長率:6.7%、伸長回復率(30秒後):71.0%、1時間後:90.4%であった。
これらの結果から、従来のウール・ウォッシャブル加工品B−1は、ストレッチ性、特に伸長率が乏しく、ウールの風合いを損ねたものであった。また、従来のウール・ウォッシャブル加工品B−1は、耐洗濯性を有するものの、ストレッチ性、特に伸長率が乏しく、ウールの風合いを損ねたものであった。
なお、以下の表1に、「ウールのみ」、比較例1のウール・ウォッシャブル加工品「B−1」(未洗濯)、比較例1の「B−1」(洗濯・乾燥10回試験後)、実施例1の「A−1」(未洗濯)、及び実施例1の「A−1」(洗濯・乾燥20回試験後)の伸長率、伸長回復率(30秒後及び1時間後)をまとめた。
【0079】
【表1】

【実施例2】
【0080】
実施例1のウール布に代えて、麻布(糸番:66/1 麻番、平織り(66/1×66/1)、目付:100g/m)を用いた以外、実施例1と同様の方法により、麻及びヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを有する本発明の材料A−2を得た。浸漬前後の試験片の重量を測定することにより、浸漬後の試験片は、麻:ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンの重量比が100:1.0であることを確認した。
【0081】
<本発明の材料A−2の特性>
上述により得られた本発明の材料A−2の防しわ性を観察した。防しわ性は、上述のように、JIS L1059−1のモンサント法に準拠して行った。
その結果、浸漬前の試験片(麻布)の防しわ率は34%であった。一方、浸漬後の試験片(本発明の材料A−3)の防しわ率は45%であった。
この結果から、本発明の材料A−2は、麻のみの防しわ性を改良していることがわかった。
【実施例3】
【0082】
実施例1のウール布に代えて、ポリエステル織物を用いた以外、実施例1と同様の方法により、ポリエステル及びヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを有する本発明の材料A−3を得た。浸漬前後の試験片の重量を測定することにより、浸漬後の試験片は、ポリエステル:ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンの重量比が100:1.5であることを確認した。
【0083】
<本発明の材料A−3の特性>
上述により得られた本発明の材料A−3の帯電防止性を観察した。帯電防止性(帯電性)は、JIS L1094の半減期測定法により行った。なお、試験室の条件は、20℃、40%RHであった。
その結果、浸漬前の試験片(ポリエステルのみ)の半減期は120秒以上であった。一方、浸漬後の試験片(本発明の材料A−3)の半減期は9.9秒であった。
この結果から、本発明の材料A−3は、ポリエステルのみの帯電防止性を大いに改善していることがわかる。
【実施例4】
【0084】
実施例1のウール布に代えて、ウール/ポリエステル混紡布(ウール/ポリエステル:30%/70%(重量比))を用いた以外、実施例1と同様の方法により、ウール/ポリエステル及びヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを有する本発明の材料A−4を得た。浸漬前後の試験片の重量を測定することにより、浸漬後の試験片は、ウール/ポリエステル:ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンの重量比が100:1.5であることを確認した。
【0085】
<本発明の材料A−4の特性>
上述により得られた本発明の材料A−4の帯電防止性を観察した。帯電防止性は、JIS L1094の半減期測定法により行った。なお、試験室の条件は、20℃、40%RHであった。
その結果、浸漬前の試験片(ウール/ポリエステルのみ)の半減期は120秒以上であった。一方、浸漬後の試験片(本発明の材料A−5)の半減期は9.9秒であった。
この結果から、本発明の材料A−4は、ウール/ポリエステルのみの帯電防止性を大いに改善していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料であって、該ポリロタキサンは、環状分子、該環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有する、上記繊維材料。
【請求項2】
前記ポリロタキサンと前記繊維とが、化学的に及び/又は物理的に結合する請求項1記載の材料。
【請求項3】
前記ポリロタキサンは、その分子同士が、化学的に及び/又は物理的に結合する請求項1又は2記載の材料。
【請求項4】
前記ポリロタキサンと前記繊維とは、その重量比(繊維:ポリロタキサン)が100:0.01〜100:10である請求項1〜3のいずれか1項記載の材料。
【請求項5】
前記ポリロタキサンは、前記環状分子が前記繊維の特性を改質する特性改質基を有する請求項1〜4のいずれか1項記載の材料。
【請求項6】
前記特性改質基が水溶性付与基である請求項5記載の材料。
【請求項7】
前記材料は、ストレッチ性、耐洗濯性、消臭性、防しわ性、帯電防止性、保湿性、及び保温性からなる群から選ばれる少なくとも1種の性質が改善されている請求項1〜6のいずれか1項記載の材料。
【請求項8】
前記繊維が、天然繊維又は人造繊維、もしくはこれらの混合物である請求項1〜7のいずれか1項記載の材料。
【請求項9】
前記天然繊維が、植物繊維;又は動物繊維;もしくはこれらの混合物である請求項8記載の材料。
【請求項10】
前記人造繊維が、再生人造繊維;半合成繊維;及び合成繊維;並びにこれらの混合物;からなる群から選ばれる請求項8記載の材料。
【請求項11】
前記繊維及び/又は繊維材料の形態が、織物、編物、不織布、糸、バラ毛及びスライバーからなる群から選ばれる請求項1〜10のいずれか1項記載の材料。
【請求項12】
前記直鎖状分子が、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選ばれる請求項1〜11のいずれか1項記載の材料。
【請求項13】
前記直鎖状分子は、その分子量が1万以上である請求項1〜12のいずれか1項記載の材料。
【請求項14】
前記封鎖基が、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類、置換されていてもよい多核芳香族類、及びステロイド類からなる群から選ばれる請求項1〜13のいずれか1項記載の材料。
【請求項15】
前記環状分子が置換されていてもよいシクロデキストリン分子である請求項1〜14のいずれか1項記載の材料。
【請求項16】
前記環状分子が置換されていてもよいシクロデキストリン分子であり、該シクロデキストリン分子がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン、並びにその誘導体からなる群から選ばれる請求項1〜15のいずれか1項記載の材料。
【請求項17】
前記環状分子が置換されていてもよいα−シクロデキストリンであり、前記直鎖状分子がポリエチレングリコールである請求項1〜16のいずれか1項記載の材料。
【請求項18】
前記環状分子が直鎖状分子により串刺し状に包接される際に環状分子が最大限に包接される量を1とした場合、前記環状分子が0.001〜0.6の量で直鎖状分子に串刺し状に包接される請求項1〜17のいずれか1項記載の材料。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項記載の繊維材料を有する製品。
【請求項20】
ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料の製造方法であって、
a)環状分子、該環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から前記環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有してなるポリロタキサンを準備する工程;及び
b)該ポリロタキサンと繊維とを混合する工程;
を有することにより、前記材料を得る、上記方法。
【請求項21】
ポリロタキサン及び繊維を有する繊維材料を有してなる繊維製品の製造方法であって、
a)環状分子、該環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子、及び該直鎖状分子から前記環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両端に配置される封鎖基を有してなるポリロタキサンを準備する工程を有し、
さらに、b)−1)該ポリロタキサンと繊維とを混合する工程;及びb)−2)得られた混合繊維から前記繊維製品を得る工程を有するか、又は
c)−1)前記繊維から繊維製品前駆体を得る工程;及びc)−2)該繊維製品前駆体に前記ポリロタキサンを混合し前記繊維製品を得る工程を有する、上記方法。

【公開番号】特開2008−1997(P2008−1997A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169526(P2006−169526)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(505136963)アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社 (19)
【出願人】(500020276)中伝毛織株式会社 (1)
【Fターム(参考)】