ポリ不飽和脂肪酸に富む油を産生するための新規Δ9−エロンガーゼ
本発明は、Δ9−エロンガーゼをコードする単離ポリヌクレオチド、前記単離ポリヌクレオチドによりコードされるΔ9−エロンガーゼ、前記単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記発現ベクターを含む宿主細胞、並びにΔ9−エロンガーゼ及びポリ不飽和脂肪酸の産生方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Δ9−エロンガーゼをコードする単離ポリヌクレオチド、前記単離ポリヌクレオチドによりコードされるΔ9−エロンガーゼ、前記単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記発現ベクターを含む宿主細胞、並びにΔ9−エロンガーゼ及びポリ不飽和脂肪酸の産生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)は生活形の適切な機能において多くの役割を発揮する。例えば、PUFAは細胞の血漿膜の重要な成分であり、血漿膜でPUFAはリン脂質の形態で存在している。PUFAは哺乳動物のプロスタサイクリン、エイコサノイド、ロイコトリエン及びプロスタグランジンに対する前駆体としても役立つ。更に、PUFAは発達中の乳児の脳を適切に発達させるために、及び組織の形成及び修復のために必要である。PUFAの生物学的重要性にてらして、PUFA及びPUFAの産生につながる中間体を効率的に産生するための試みがなされている。
【0003】
多数の酵素、最も注目すべきデサチュラーゼ及びエロンガーゼがPUFA生合成に関与している(図1を参照されたい)。デサチュラーゼは基質の脂肪酸アルキル鎖内の炭素原子間への不飽和(例えば、二重結合)の導入を触媒する。エロンガーゼは2−炭素単位の脂肪酸基質への付加を触媒する。例えば、リノール酸(LA,18:2 n−6)はオレイン酸(OA,18:1 n−9)からΔ12−デサチュラーゼにより産生される。エイコサジエン酸(EDA、20:2 n−6)はリノール酸(LA、18:2 n−6)からΔ9−エロンガーゼにより産生される。ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA,20:3n−6)はエイコサジエン酸(EDA,20:2 n−6)からΔ8−デサチュラーゼにより産生される。アラキドン酸(ARA,20:4 n−6)はジホモ−γ−リノレン酸(DGLA,20:3n−6)からΔ5−デサチュラーゼにより産生される(図1を参照されたい)。
【0004】
エロンガーゼはγ−リノレン酸(GLA,18:3n−6)のジホモ−γ−リノレン酸(DGLA,20:3n−6)への変換及びステアリドン酸(SDA,18:4 n−3)のエイコサテトラエン酸(ETA,20:4 n−3)への変換を触媒する。エロンガーゼをアラキドン酸(ARA,20:4 n−6)のアドレン酸(ADA,22:4 n−6)への変換及びエイコサペンタエン酸(EPA,20:5 n−3)のω3−ドコサペンタエン酸(22:5 n−3)への変換も触媒する。Δ9−エロンガーゼは炭素9位に不飽和を含むポリ不飽和脂肪酸を延長させる。例えば、Δ9−エロンガーゼはリノール酸(LA,18:2 n−6)のエイコサジエン酸(EDA,20:2 n−6)への変換及びα−リノレン酸(ALA,18:3 n−3)のエイコサトリエン酸(ETrA,20:3 n−3)への変換を触媒する。その後、ω3−ETrAはΔ8−デサチュラーゼによりω3−ETAに変換され得る。その後、ω3−ETAは、医薬組成物、栄養組成物、動物飼料、及び化粧品のような他の製品に添加され得る他のポリ不飽和脂肪酸(例えば、ω3−EPA)の製造に使用され得る。
【0005】
今までに同定されたエロンガーゼは該エロンガーゼが作用する基質の点で異なる。更に、エロンガーゼは動物及び植物の両方に存在する。哺乳動物中に存在するエロンガーゼは飽和、モノ不飽和及びポリ不飽和脂肪酸に作用する能力を有する。対照的に、植物中に存在するエロンガーゼは飽和またはモノ不飽和脂肪酸に対して特異的である。よって、植物中でポリ不飽和脂肪酸を生成するためにはPUFA特異的エロンガーゼが必要である。
【0006】
植物及び動物において、延長プロセスは4ステップメカニズムの結果であると考えられる(Lassnerら,The Plant Cell,8:281−292(1996))。CoAはアシル担体である。ステップ1は、二酸化炭素及びアシル部分が2個の炭素原子により延長されたβ−ケトアシル−CoAを得るためのマロニル−CoAと長鎖アシル−CoAの縮合を含む。後続の反応は、延長アシル−CoAを得るためのβ−ヒドロキシアシル−CoAへの還元、エノイル−CoAへの脱水及び第2還元を含む。最初の縮合反応は基質特異的ステップだけでなく、律速ステップでもある。
【0007】
動物はΔ9位を超えて脱飽和することができず、従ってオレイン酸(OA,18:1 n−9)をリノール酸(LA,18:2 n−6)に変換させることができないことに注目すべきである。同様に、哺乳動物はΔ15−デサュラーゼ活性を持っていないので、α−リノレン酸(ALA,8:3 n−3)は哺乳動物により合成され得ない。しかしながら、α−リノレン酸は哺乳動物及び藻類においてΔ6−デサチュラーゼによりステアリドン酸(SDA,18:4 n−3)に変換され(WO 96/13591及び米国特許No.5,552,306も参照されたい)、その後エイコサテトラエン酸(ETA,20:4 n−3)に延長され得る。その後、このポリ不飽和脂肪酸(すなわち、ETA,20:4 n−3)はΔ5−デサチュラーゼによりエイコサペンタエン酸(EPA,20:5 n−3)に変換され得る。真菌及び植物を含めた他の真核細胞は炭素12(WO 94/11516及び米国特許No.5,443,974を参照されたい)及び炭素15(WO 93/11245を参照されたい)で脱飽和する酵素を有している。従って、動物の主要ポリ不飽和脂肪酸は食餌に由来し及び/またはリノール酸またはα−リノレン酸の脱飽和及び延長により誘導される。哺乳動物がこれらの必須長鎖脂肪酸を産生できないことにてらして、PUFA生合成に関与する遺伝子を本来上記脂肪酸を産生する種から単離し、これらの遺伝子を大量の1つ以上のPUFAを産生するように改変され得る微生物、植物または動物系において発現させることが非常に興味深い。従って、エロンガーゼ酵素、前記酵素をコードする遺伝子及び前記酵素を産生する組換え方法に対する明確な要望がある。
【0008】
上記した検討に照らして、天然に存在するレベルを超えるレベルのPUFAを含有する油及び新規PUFAに富む油に対する明確な要望もある。前記油はエロンガーゼ遺伝子を単離し、発現させることにより作成され得る。
【0009】
最も重要な長鎖PUFAの1つはエイコサペンタエン酸(EPA)である。EPAは真菌及び魚油中に存在している。ドコサヘキサエン酸(DHA)も別の重要な長鎖PUFAである。DHAは最も多くの場合魚油中に存在し、また哺乳動物脳組織から精製され得る。アラキドン酸(ARA)は第3の重要な長鎖PUFAである。ARAは糸状菌中に存在し、また肝臓や副腎を含めた哺乳動物組織からも精製され得る。
【0010】
例えば、ARA、EPA及び/またはDHAは交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路または従来のΔ6経路を介して産生され得る(図1を参照されたい)。長鎖PUFA、特にARA、EPA及びDHAを産生するための従来のΔ6経路において基質脂肪酸に対して活性であるエロンガーゼは既に同定されている。LAをDGLAに変換するため及びALAをω3−ETAに変換するための従来のΔ6経路は、LAをGLAに、ALAをステアリドン酸(SDA)に変換するためにΔ6−デサチュラーゼ酵素、及びGLAをDGLAに、SDAをω3−ETAに変換するためにΔ6−エロンガーゼ酵素を利用している。しかしながら、ある例では、交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路が従来のΔ6経路より好ましいことがある。例えば、GLAまたはSDAのような特定の残留ω−6またはω−3脂肪酸中間体がDGLA、ω3−ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA及び/またはDHAの産生中に望ましくないならば、GLA及びSDA形成を回避するために従来のΔ6経路の代わりに交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を使用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第96/13591号
【特許文献2】米国特許第5,552,306号明細書
【特許文献3】国際公開第94/11516号
【特許文献4】米国特許第5,443,974号明細書
【特許文献5】国際公開第93/11245号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Lassnerら,The Plant Cell,8:281−292(1996)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、Δ9−エロンガーゼの新規なソースが長鎖PUFA、特にDGLA、ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA及び/またはDHAの産生のために同定された。本発明のΔ9−エロンガーゼ酵素は、例えばLAをω6−EDAに、ALAをω3−ETrAに変換する。その後のω6−EDAからのDGLAの産生及びDGLAからのARAの産生はそれぞれΔ8−デサチュラーゼ及びΔ5−デサチュラーゼにより触媒される。
【0014】
1つの態様で、本発明は、エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離ヌクレオチド配列を含むまたはそれに対して相補的な単離核酸分子またはその断片に関し、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号18及び配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも68%の配列同一性を有している。
【0015】
別の態様で、本発明は、配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的な単離ヌクレオチド配列またはその断片に関する。前記単離ヌクレオチド配列またはその断片は基質としてポリ不飽和脂肪酸を用いる機能的に活性なエロンガーゼ、特に機能的に活性なΔ9−エロンガーゼをコードする。
【0016】
ヌクレオチド配列は例えばミドリムシ属(Euglenoid sp.)由来であり得、具体的には例えばユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916から単離され得る。
【0017】
別の態様で、本発明は、上記単離ヌクレオチド配列によりコードされる精製ポリペプチド、並びに炭素9位に不飽和を含むポリ不飽和脂肪酸を延長させ且つ配列番号18及び配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも68%のアミノ酸同一性を有している精製ポリペプチドに関する。
【0018】
もっと別の態様で、本発明は発現ベクターに関する。この発現ベクターは調節配列に機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列は配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的である。本発明はこの発現ベクターを含む宿主細胞にも関する。この宿主細胞は例えば真核細胞または原核細胞であり得る。適当な真核細胞及び原核細胞は本明細書中に記載されている。本発明は発現ベクターを含むトランスジェニック種子にも関する。
【0019】
別の態様で、本発明は、上記発現ベクターを含む植物細胞、植物種子、植物または植物組織に関し、発現ベクターのヌクレオチド配列を発現させると植物細胞、植物または植物組織により少なくとも1つのポリ不飽和脂肪酸が産生される。ポリ不飽和脂肪酸は例えばω6−EDA、ω3−ETrA及びその組合せからなる群から選択され得る。本発明は上記した植物細胞、植物種子、植物または植物組織により発現させた1つ以上の植物油または脂肪酸をも包含する。
【0020】
更に、本発明はΔ9−エロンガーゼの産生方法に関する。この方法は、a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離するステップ;b)ii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;及びc)発現ベクターを宿主細胞にΔ9−エロンガーゼの発現のために適宜十分な時間及び条件下で導入するステップ;を含む。宿主細胞は例えば真核細胞または原核細胞であり得る。特に、真核細胞は例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞または真菌細胞であり得る。植物細胞はダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来であり得る。
【0021】
加えて、本発明は、a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離するステップ;b)調節配列に機能し得る形で連結された単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;c)発現ベクターを宿主細胞にΔ9−エロンガーゼの発現のために十分な時間及び条件下で導入するステップ;及びd)発現させたΔ9−エロンガーゼを基質ポリ不飽和脂肪酸に曝して、基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換するステップ;を含むポリ不飽和脂肪酸の産生方法に関する。「基質」ポリ不飽和脂肪酸は例えばLAまたはALAであり、「第1産物」ポリ不飽和脂肪酸は、例えばω6−EDAまたはω3−ETrAである。この方法は更に、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つのデサチュラーゼ、少なくとも1つの追加エロンガーゼまたはその組合せに曝して、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を第2またはその次のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップを含み得る。第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸は、例えばDGLA、またはω3−ETA、ARA、EPA、DPA、DHAまたはその組合せであり得る。
【0022】
別の態様で、本発明は、a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離するステップ;b)調節配列に機能し得る形で連結された単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;c)i)発現ベクター及びii)Δ8−デサチュラーゼをコードし且つ調節配列に機能し得る形で連結された少なくとも1つの単離ヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの追加組換えDNA構築物を宿主細胞にΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼの発現のために十分な時間及び条件下で導入するステップ;及びd)発現させたΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼをLA、ALA及びその組合せからなる群から選択される基質ポリ不飽和脂肪酸に曝して、基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換するステップ;を含む宿主細胞におけるポリ不飽和脂肪酸の産生方法に関する。第1産物ポリ不飽和脂肪酸は、例えばDGLA、ω3−ETAまたはその組合せであり得る。この方法は更に、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つのデサチュラーゼ、少なくとも1つの追加エロンガーゼまたはその組合せに曝して、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を第2またはその次のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップを含み得る。第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸は、例えばARA、EPA、DPA、DHAまたはその組合せであり得る。1つの態様で、この方法は更に、宿主細胞にii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)Δ5−デサチュラーゼをコードする単離ヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物を導入することを含み得る。宿主細胞は上記した通りであり得る。
【0023】
別の態様で、本発明は、植物細胞を配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的な少なくとも1つの単離ヌクレオチド配列またはその断片で形質転換し、この形質転換した植物細胞からトランスジェニック植物を再生することを含むトランスジェニック植物の作成方法に関する。植物細胞はダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来であり得る。別の態様で、本発明は、本方法により作成されるトランスジェニック植物から得た種子に関する。
【0024】
本明細書中で言及されている各ヌクレオチド及びアミノ酸配列に特定の配列識別番号が割り当てられていることにも注目されるべきである。参照により本明細書に組み入れられる配列表(本明細書に添付されている)は前記した各配列及びその対応する番号をリストしている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】脂肪酸生合成経路及びこの経路におけるΔ9−エロンガーゼの役割を示す。
【図2A】実施例3で検討されているベクターpYX242のBamHI/HindIII部位にクローン化される、それぞれEug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14バリアントのヌクレオチド配列であるヌクレオチド配列配列番号26及び配列番号27のアラインメントを示す。バリアントは四角に囲まれている。
【図2B】実施例3で検討されているベクターpYX242のBamHI/HindIII部位にクローン化される、それぞれEug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14バリアントのヌクレオチド配列であるヌクレオチド配列配列番号26及び配列番号27のアラインメントを示す。バリアントは四角に囲まれている。
【図3A】ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916(Eug−MO7−ELO#10)由来のΔ9−エロンガーゼのアミノ酸配列(配列番号18)とユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)(配列番号4)、ハブト藻(Isochrysis galbana)(配列番号2)、マウスElovl4エロンガーゼ(受託番号AAG47667;配列番号21)、ヒトELOVL2エロンガーゼ(受託番号NP 060240;配列番号22)及びシー・エレガンス(C.elegans)エロンガーゼ(受託番号AF244356;配列番号23)由来の公知のΔ9−エロンガーゼのアミノ酸配列のアラインメントを示す。インバリアント残基に陰影が付けられている。
【図3B】ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916(Eug−MO7−ELO#10)由来のΔ9−エロンガーゼのアミノ酸配列(配列番号18)とユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)(配列番号4)、ハブト藻(Isochrysis galbana)(配列番号2)、マウスElovl4エロンガーゼ(受託番号AAG47667;配列番号21)、ヒトELOVL2エロンガーゼ(受託番号NP 060240;配列番号22)及びシー・エレガンス(C.elegans)エロンガーゼ(受託番号AF244356;配列番号23)由来の公知のΔ9−エロンガーゼのアミノ酸配列のアラインメントを示す。インバリアント残基に陰影が付けられている。
【図4A】パブロバ・サリナ(Pavlova salina)由来のΔ9−エロンガーゼアミノ酸配列(受託番号AAY15135;配列番号1)を示す。
【図4B】ハブト藻(Isochrysis galbana)由来のΔ9−エロンガーゼアミノ酸配列(受託番号AF390174;配列番号2)を示す。
【図4C】ユートレプティエラ属(Eutreptiella sp.)由来のΔ9−エロンガーゼアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【図4D】ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)由来のΔ9−エロンガーゼアミノ酸配列(受託番号CAT16687;配列番号4)を示す。
【図4E】ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabena)由来のA9−エロンガーゼアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
【図5A】実施例1に記載されているように得たクローンプレート2 MO7のヌクレオチド配列(配列番号6)を示す。
【図5B】実施例1に記載されているように得たクローンプレート2 MO7の推定アミノ酸配列(配列番号7)を示す。
【図6A】実施例2に記載されているように得たプレート2 MO7遺伝子断片推定上の3’末端のヌクレオチド配列(配列番号13)を示す。
【図6B】実施例2に記載されているように得たプレート2 MO7遺伝子断片推定上の3’末端の予測アミノ酸配列(配列番号14及び30〜32)を示す。配列番号14及び30〜32は終止コドンを表す“*”で分かれている。
【図6C】配列番号14を示す。
【図6D】配列番号30を示す。
【図6E】配列番号31を示す。
【図6F】配列番号32を示す。
【図7A】実施例3に記載されているように得たユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来の推定上のΔ9−エロンガーゼ(Eug−MO7−ELO#10)のヌクレオチド配列(配列番号17)を示す。
【図7B】実施例3に記載されているように得たユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916の推定上のΔ9−エロンガーゼ(Eug−MO7−ELO#10)のヌクレオチド配列(配列番号17)によりコードされる予測アミノ酸配列(配列番号18)を示す。
【図8A】実施例3に記載されているように得たユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来のバリアントΔ9−エロンガーゼ(Eug−MO7−ELO#14)のヌクレオチド配列(配列番号19)を示す。
【図8B】実施例3に記載されているように得たユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来のバリアントΔ9−エロンガーゼ(Eug−MO7−ELO#14)のヌクレオチド配列(配列番号19)によりコードされる予測アミノ酸配列(配列番号20)を示す。
【図9A】マウスElovl4エロンガーゼ由来のアミノ酸配列(受託番号AAG47667;配列番号21)を示す。
【図9B】ヒトELOVL2エロンガーゼ由来のアミノ酸配列(受託番号NP 060240;配列番号22)を示す。
【図9C】シー・エレガンス(C.elegans)エロンガーゼ由来のアミノ酸配列(受託番号AF244356;配列番号23)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、ミドリムシ属(Euglenoid sp.)、例えばユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.、具体的にはユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来のΔ9−エロンガーゼ遺伝子のヌクレオチド(例えば、遺伝子)及び翻訳アミノ酸配列に関する。更に、本発明は、前記遺伝子及び前記遺伝子によりコードされる酵素の使用をも含む。例えば、遺伝子及び対応する酵素は、医薬組成物、栄養組成物及び他の有用な製品に添加され得るポリ不飽和脂肪酸(例えば、ω6−EDA、ω3−EtrA、DGLA、ω3−ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA、DHAまたはその組合せ)を産生する際に使用され得る。
【0027】
定義
本明細書中で使用されている単数形“a”、“an”及び“the”は、文脈上明確な断りがない限り複数を含む。本明細書中の数値範囲の記述に関して、同じ程度の精度でその間に介在する各々の数が明白に考えられる。例えば、範囲6〜9の場合6及び9に加えて数7及び8が考えられ、範囲6.0〜7.0の場合数6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0が明白に考えられる。
【0028】
キメラ構築物:本明細書中で使用されているフレーズ「キメラ構築物」は通常自然界には一緒に存在しない核酸分子の組合せを指す。従って、キメラ構築物は異なるソース由来の調節配列及びコード配列、または同一ソースに由来するが通常自然界に存在する様式とは異なる様式で配置され得る調節配列及びコード配列を含む。
【0029】
コード配列:本明細書中で使用されている用語「コード配列」は特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、その中またはその下流(3’非コード配列)に位置し、関連するコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、または翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。調節配列にはプロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン及びポリアデニル化認識配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
相補性:本明細書中で使用されている用語「相補性」は2つのDNAセグメント間の関連度を指す。相補性は、適切な条件下で1つのDNAセグメントのセンス鎖が他のDNAセグメントのアンチセンス鎖とハイブリダイズして二重らせんを形成する能力を測定することにより調べられる。二重らせん中、アデニンは1本の鎖中に存在し、チミンは他の鎖中に存在している。同様に、グアニンが1本の鎖中に存在している場合にはシトシンは他の鎖中に存在している。2つのDNAセグメントのヌクレオチド配列の関連性が大きければ、2つのDNAセグメントの鎖間でハイブリッド二本鎖を形成する能力が高くなる。
【0031】
によりコードされる、ハイブリダイゼーション、及びストリンジェントな条件:本明細書中で使用されているフレーズ「によりコードされる」はポリペプチド配列をコードする核酸配列を指し、前記ポリペプチド配列またはその一部は核酸配列によりコードされるポリペプチド由来の少なくとも3個の連続アミノ酸、より好ましくは少なくとも8個の連続アミノ酸、更により好ましくは少なくとも15個の連続アミノ酸のアミノ酸配列を含む。
【0032】
本発明は、PUFAエロンガーゼ活性を有する酵素をコードし、中程度のストリンジェントな条件下で配列番号17または配列番号19(それぞれ図7A及び8Aに示す)からなるヌクレオチド配列を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を有する核酸にハイブリダイズし得る単離ヌクレオチド配列をも包含する。核酸分子は、一本鎖形の核酸分子が適切な温度及びイオン強度条件下で他の核酸分子にアニールし得るときには別の核酸分子にハイブリダイズし得る(Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)を参照されたい)。温度及びイオン強度の条件がハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決める。「ハイブリダイゼーション」は2つの核酸が相補配列を含んでいることが必要である。しかしながら、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチが生ずる恐れがある。核酸をハイブリダイズするための適切なストリンジェンシーは核酸の長さ及び相補度に依存する。これらの変数は当業者に公知である。より具体的には、2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が高いほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのTmの値が大きくなる。長さが100を超えるヌクレオチドのハイブリッドの場合、Tmを計算するための式が誘導されている(上掲のSambrookらを参照されたい)。より短い核酸とのハイブリダイゼーションの場合、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決める(上掲のSambrookらを参照されたい)。
【0033】
典型的には、ストリンジェントな条件とは、塩濃度がpH7.0〜8.3で約1.5M Naイオン未満、典型的には約0.01〜1.0M Naイオン濃度(または他の塩)であり、温度が短プローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)の場合には少なくとも約30℃、長プローブ(例えば、50を超えるヌクレオチド)の場合には少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件は不安定化剤(例えば、ホルムアミド)を添加しても得られ得る。低ストリンジェンシー条件の例には、37℃での30〜35% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)のバッファー溶液を用いるハイブリダイゼーション及び50〜55℃での1×〜2×SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3M クエン酸トリナトリウム)中での洗浄が含まれる。中ストリンジェンシー条件の例には、37℃での40〜45% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS中でのハイブリダイゼーション及び55〜60℃での0.5×〜1×SSC中での洗浄が含まれる。高ストリンジェンシー条件の例には、37℃での50% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS中でのハイブリダイゼーション及び60〜65℃での0.1×SSCでの洗浄が含まれる。
【0034】
エキソン:本明細書中で使用されている用語「エキソン」は、転写され、遺伝子由来の成熟メッセンジャーRNA中に存在するが、必ずしも最終遺伝子産物をコードする配列の一部でない遺伝子の配列の部分を指す。
【0035】
発現、アンチセンス阻害、及びコサプレッション:本明細書中で使用されている用語「発現」は機能性最終産物の産生を指す。遺伝子の発現は遺伝子の転写及びmRNAの前駆体または成熟タンパク質への翻訳を含む。
【0036】
本明細書中で使用されているフレーズ「アンチセンス阻害」は、標的タンパク質の発現を抑えることができるアンチセンスRNA転写物の産生を指す。
【0037】
本明細書中で使用されている用語「コサプレッション」は、同一または実質的に類似の外因性または内因性遺伝子の発現を抑えることができるセンスRNA転写物の産生を指す(米国特許No.5,231,020を参照されたい)。
【0038】
機能的に均等である断片またはサブ断片:本明細書中で互換可能に使用されている用語「機能的に均等である断片またはサブ断片」及び「機能的に均等な断片またはサブ断片」は、断片またはサブ断片が活性酵素をコードしてもしなくても遺伝子発現を変化させたりある表現型を生ずる能力が保持されている単離核酸分子の部分またはサブ配列を指す。例えば、断片またはサブ断片は形質転換植物において所望の表現型を生ずるためのキメラ構築物の設計において使用され得る。キメラ構築物は、活性酵素をコードしてもしなくても核酸断片またはそのサブ断片を植物プロモーター配列に対して適切な方向に連結させることによるコサプレッションまたはアンチセンス阻害において使用するために設計され得る。
【0039】
遺伝子、天然遺伝子、外因性遺伝子及びトランスジーン:本明細書中で使用されている用語「遺伝子」は、コード配列の前の調節配列(5’非コード配列)及び後の調節配列(3’非コード配列)を含む特定タンパク質を発現させる核酸分子を指す。
【0040】
本明細書中で使用されているフレーズ「天然遺伝子」はそれ自身の調節配列を有する自然界に存在する遺伝子を指す。
【0041】
「外因性」遺伝子は、通常宿主生物中に存在しないが、遺伝子導入により宿主生物に導入される遺伝子を指す。外因性遺伝子は非天然生物中に挿入される天然遺伝子またはキメラ構築物を含み得る。
【0042】
本明細書中で使用されている用語「トランスジーン」は形質転換手順によりゲノムに導入した遺伝子を指す。
【0043】
ワタ属(Gossypium species):本明細書中で使用されているフレーズ「ワタ属(Gossypium species)」は、キダチワタ(Gossypium arboreum)、カイトウメン(Gossypium barbadense)、アジアワタ(Gossypium herbaceum)、リクチワタ(Gossypium hirsutum)、ゴシピウム・ヒルスツム(Gossypium hirsutum)var hirsutum、ゴシピウム・ヒルスツム(Gossypium hirsutum)var marie−galante、ゴシピウム・ラピデウム(Gossypium lapideum)、スタート・デザート・ローズ(Gossypium sturtianum)、Gossypium thuberi、アリゾナ・ワイルド・コットン(Gossypium thurberi)、ハワイアンコットン(Gossypium tomentosum)またはGossypium tormentosumの植物を指す。
【0044】
相同性:用語「相同性」、「相同的」、「実質的に類似」及び「実質的に対応する」は本明細書中で互換可能に使用されており、1つ以上のヌクレオチド塩基の変化が核酸分子の遺伝子発現を媒介するまたはある表現型を生ずる能力に影響を与えない核酸分子を指す。これらの用語は、生じた核酸分子の機能的特性を初期の未修飾分子に比して実質的に変化させない1つ以上のヌクレオチドの欠失または挿入のような本発明の核酸分子の修飾をも指す。従って、当業者が認識しているように、本発明は具体的に例示されている配列以上を包含すると理解される。
【0045】
宿主細胞:本明細書中で使用されているフレーズ「宿主細胞」は本発明の単離核酸配列またはその断片を含む細胞を意味する。宿主細胞は、原核細胞(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、シアノバクテリア及び枯草菌(Bacillus subtilis))または真核細胞(例えば、真菌、昆虫、植物または哺乳動物細胞)であり得る。
【0046】
使用し得る真菌細胞の例は、サッカロミセス属(Saccharomyces spp.)、カンジダ属(Candida spp.)、リポミセス属(Lipomyces spp.)、ヤロウイア属(Yarrowia spp.)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces spp.)、ハンセヌラ属(Hansenula spp.)、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ニューロスポラ属(Neurospora spp.)、トリコデルマ属(Trichoderma spp.)及びピチア属(Pichia spp.)である。特に好ましい真菌細胞はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0047】
植物細胞は単子葉または双子葉植物細胞であり得る。特に好ましい植物細胞は、ダイズ(Glycine max)(例えば、ダイズ)、アブラナ科植物、ベニバナ(Carthamus tinctorius L.)(例えば、サフラワー)、ヒマワリ(Helianthus annuus)(例えば、ヒマワリ)、トウモロコシ(Zea mays)(例えば、トウモロコシ)、ワタ属(Gossypium species)(ワタ)及びアマ(Linum usitatissimitm)(例えば、アマ)のような油糧種子植物由来である。
【0048】
同一性、配列同一性及び配列同一性のパーセンテージ(%同一性):本明細書中で互換可能に使用されている用語「同一性」または「配列同一性」は、ヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関連して使用されているときには、特定の比較ウィンドウにわたる最大対応性についてアラインしたときに同一である2つの配列中の核酸塩基またはアミノ酸残基を指す。よって、同一性は2つのDNAまたはポリペプチドセグメントの同一鎖(センスまたはアンチセンスのいずれか)間の同一性、対応性または同等性の程度として定義される。
【0049】
「配列同一性のパーセンテージ」または「%同一性」は、2つの最適にアラインさせた配列を特定領域にわたって比較し、同一塩基が両配列中に存在する位置の数を調べて一致した位置の数を求め、その位置の数を比較対象のセグメント中の位置の総数で割り、結果に100を掛けることにより計算される。配列の最適アラインメントは、Smith & Waterman,Appl.Math.,2:482(1981)のアルゴリズムにより、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.,48:443(1970)のアルゴリズムにより、Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),85:2444(1988)の方法により、及び関連アルゴニズム(例えば、Higginsら,CABIOS,5Ll51−153(1989)、FASTDB(Intelligenetics)、BLAST(National Center for Biomedical Information;Altschulら,Nucleic Acids Research,25:3389−3402(1997))、PILEUP(ウィスコンシン州マジソンに所在のGenetics Computer Group)またはGAP,BESTFIT,FASTA及びTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,ウィスコンシン州マジソンに所在のGenetics Computer Group))を実行するコンピュータープログラムにより実施され得る(米国特許No.5,912,120を参照されたい)。配列同一性の%の有用な例には68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が含まれるが、これらに限定されない。これらの同一性は本明細書中に記載されているプログラムを用いて調べることができる。
【0050】
間接的または直接:本明細書中で使用されている用語「間接的」は、ポリ不飽和脂肪酸の産生における遺伝子及びその対応する酵素の使用に関連して使用されているときには、第1の酸を第1の酵素により第2の酸(すなわち、経路中間体)に(例えば、LAを例えばΔ9−エロンガーゼによりω6−EDAに)変換し、その後第2の酸を第2の酵素を用いて第3の酸に(例えば、ω6−EDAを例えばΔ8−デサチュラーゼによりDGLAに)変換する状況を包含する。
【0051】
本明細書中で使用されている用語「直接」は、ポリ不飽和脂肪酸の産生における遺伝子及びその対応する酵素の使用に関連して使用されているときには、酵素が直接第1の酸を第2の酸に変換し、その後第2の酸を組成物中に利用する状況(例えば、LAの例えばΔ9−エロンガーゼによるω6−EDAへの変換、またはω3−ETrAの例えばΔ8−デサチュラーゼによるω3−ETAへの変換)を包含する。
【0052】
イントロン:本明細書中で使用されている用語「イントロン」は、タンパク質配列の一部をコードしない遺伝子中の介在配列を指す。よって、前記配列はRNAに転写されるが、その後切出され、翻訳されない。この用語は切出されたRNA配列に対しても使用される。
【0053】
単離(された):本明細書中で使用されている用語「単離」は、当業界で公知のルーチンの技術を用いて天然に存在する環境またはソースから(例えば、細菌、藻類、真菌、植物、脊椎動物、哺乳動物等から)除去される核酸分子(DNAまたはRNA)、或いはタンパク質またはその生物学的に活性な部分を指す。単離された核酸分子またはタンパク質は天然環境中の核酸分子またはタンパク質を通常伴うまたはそれと相互作用する成分を実質的または本質的に含んでいない。
【0054】
単離核酸断片または単離核酸配列:本明細書中で使用されているフレーズ「単離核酸断片」または「単離核酸配列」は、場合により合成、非天然または改変ヌクレオチド塩基を含有する一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーを指す。DNAのポリマーの形の単離核酸断片はcDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つ以上のセグメントから構成され得る。(特定のポリヌクレオチドの「断片」は、具体的ヌクレオチド配列の領域に対して同一またはそれに対して相補的なだいたい少なくとも約6個の連続ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約8個の連続ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10個の連続ヌクレオチド、少なくとも約15個の連続ヌクレオチド、少なくとも約20個の連続ヌクレオチド、少なくとも約25個の連続ヌクレオチドの隣接配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。)ヌクレオチド(通常その5’モノホスフェートの形で存在している)は以下のようにその一文字表記により言及される:アデニル酸またはデオキシアデニル酸(それぞれ、RNAまたはDNAに対して)に対して“A”、シチジル酸またはデオキシシチジル酸に対して“C”、グアニル酸またはデオキシグアニル酸に対して“G”、ウリジル酸に対して“U”、デオキシチミジル酸に対して“T”、プリン(AまたはG)に対して“R”、ピリミジン(CまたはT)に対して“Y”、GまたはTに対して“K”、AまたはCまたはTに対して“H”、イノシンに対して“I”、及びヌクレオチドに対して“N”。
【0055】
成熟及び前駆体:本明細書中で使用されている用語「成熟」は、用語「タンパク質」に関連して使用されているときには、翻訳後プロセシングされたポリペプチド、すなわち一次翻訳産物中に存在するプレ−またはプロペプチドが除去されているものを指す。本明細書中で使用されている用語「前駆体」は、用語「タンパク質」に関連して使用されているときには、mRNAの翻訳の一次産物、すなわちプレ−及びプロペプチドがなお存在するものを指す。プレ−及びプロペプチドは、非限定的に細胞内局在化シグナルであり得る。
【0056】
3’非コード配列:本明細書中で使用されているフレーズ「3’非コード配列」はコード配列の下流に位置するDNA配列を指し、ポリアデニル化認識配列及びmRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を与え得る調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは通常ポリアデニル酸部分のmRNA前駆体の3’末端への付加に影響を与えることにより特徴づけられる。各種3’非コード配列の使用がIngelbrechtら,(1989)Plant Cell,1:671−680に例示されている。
【0057】
非天然:本明細書中で使用されているフレーズ「非天然」は人工であり、通常天然に存在するものと一致しないものを指す。
【0058】
機能し得る形で連結された:本明細書中で使用されているフレーズ「機能し得る形で連結された」は、1つの配列の機能が他の配列により調節されるような単一の核酸分子上の核酸配列の結合を指す。例えば、コード配列の発現を調節することができる(すなわち、コード配列がプロモーターの転写コントロール下にある)ときプロモーターはコード配列に対して機能し得る形で連結されている。コード配列はセンスまたはアンチセンス方向で調節配列に機能し得る形で連結され得る。別の例では、本発明の相補的RNA領域は標的mRNAに対して5’、標的mRNAに対して3’、標的mRNA内に直接または間接的に機能し得る形で連結され得、第1相補的領域は標的mRNAに対して5’、その補体は3’である。
【0059】
植物:本明細書中で使用されている用語「植物」は全植物、植物器官、植物組織、種子、植物細胞、その種子及び子孫を指す。植物細胞には、非限定的に種子、懸濁培養物、胚、分裂組織的領域、カルス組織、葉、根、茎、配偶体、胞子体、花粉及び小胞子由来の細胞が含まれる。
【0060】
ポリメラーゼ連鎖反応またはPCR:本明細書中で使用されているフレーズ「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、一連の反復サイクルから構成される大量の特定のDNAセグメントを合成するための技術を指す(コネチカット州ノーウォークに所在のPerkin Elmer Cetus instruments)。典型的には、二本鎖DNAを熱変性し、標的セグメントの3’境界に対して相補的な2つのプライマーを低温でアニールした後、中間温度で延長させる。これら3つの連続ステップの1組をサイクルと称する。
【0061】
PCRは、鋳型を反復複製することにより短時間にDNAを数百万倍に増幅させるために使用される強力な技術である(Mullisら,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,51:263−273(1986);Erlichら,欧州特許出願50,424;欧州特許出願84,796;欧州特許出願258,017、欧州特許出願237,362、Mullisら,欧州特許出願201,184、Mullisら,米国特許No.4,683,202;Erlich,米国特許No.4,582,788;及びSaikiら,米国特許No.4,683,194)。この方法はDNA合成をプライムさせるために特定のインビトロで合成したオリゴヌクレオチドの複数の組を用いている。プライマーの設計は分析したいDNAの配列に依存する。この技術は、鋳型を高温で融解し、プライマーを鋳型内の相補的配列に対してアニーリングした後、鋳型をDNAポリメラーゼを用いて複製するサイクルを複数回(通常20〜50回)行うことにより実施される。PCR反応の産物はアガロースゲルを用いて分離した後、臭化エチジウム染色し、UV透照で可視化することにより分析される。或いは、産物中に標識を取込むために放射性dNTPをPCRに添加してもよい。この場合、PCR産物はゲルをX線フィルムに曝すことにより可視化される。放射標識PCR産物の更なる効果は個々の増幅産物のレベルを定量し得ることである。
【0062】
プロモーター及びエンハンサー:本明細書中で使用されている用語「プロモーター」は、コード配列または機能RNAの発現をコントロールすることができるDNA配列を指す。プロモーター配列は近位及びより遠位の上流要素から構成され、後者要素がしばしばエンハンサーと称されている。
【0063】
本明細書中で使用されている用語「エンハンサー」はプロモーター活性を刺激することができるDNA配列を指し、プロモーターの組織特異性のレベルを高めるために挿入されるプロモーターの生来の要素または異質要素であり得る。プロモーター配列はまた遺伝子の転写された部分内に及び/または転写された配列の下流に位置し得る。プロモーターは完全に天然遺伝子に由来し得、或いは天然に存在する各種プロモーターに由来する各種要素から構成され得、または合成DNAセグメントを含むことさえある。各種プロモーターが遺伝子の発現を各種組織または細胞型中で、または各種発生段階で、または各種環境条件に応答して指向させ得ることを当業者は理解している。遺伝子を多くの細胞型において大抵発現させるプロモーターは「構成的プロモーター」と称される。植物細胞において有用な各種タイプの新規プロモーターが絶えず発見されている。多数の例がOkamuro and Goldberg,(1989)Biochemistry of Plants,15:1−82による編集物中に見つけることができる。更に、多くの場合調節配列の正確な境界が完全に規定されていないので、幾つかの変異のDNA分子が同一のプロモーター活性を有し得ることも認識されている。
【0064】
組換え体:本明細書中で使用されている用語「組換え体」は例えば化学合成により、または核酸の単離セグメントを遺伝子工学技術により操作することにより配列の2つのそうでなければばらばらのセグメントの人工的組合せを指す。
【0065】
組換え構築物、発現構築物及び組換え発現構築物:フレーズ「組換え構築物」、「発現構築物」及び「組換え発現構築物」は本明細書中で互換可能に使用されており、当業者に公知の標準方法を用いて細胞のゲノムに挿入され得る遺伝物質の機能性単位を指す。前記構築物はそれ自体であり得、またはベクターと一緒に使用され得る。ベクターを使用する場合、ベクターの選択は当業者に公知のように宿主植物を形質転換するために使用される方法に依存する。例えば、プラスミドベクターを使用し得る。当業者は、本発明の単離核酸分子を含む宿主細胞をうまく形質転換させ、選択し、増殖させるためにベクター上に存在させなければならない遺伝要素を周知している。当業者は異なる独立形質転換事象により発現のレベル及びパターンが異なり(Jonesら,(1985)EMBO J.,4:2411−2418;DeAlmeidaら,(1989)Mol.Gen.Genetics,218:78−86)、よって所望の発現レベル及びパターンを示す株を得るためには複数の事象をスクリーニングにかけなければならないことも認識している。前記スクリニングはDNAのサザン分析、mRNA発現のノーザン分析、タンパク質発現のウェスタン分析または表現型分析によりなし得る。
【0066】
RNA転写物、メッセンジャーRNA、cDNA、機能RNA及び内因性RNA:本明細書中で使用されているフレーズ「RNA転写物」は、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写から生ずる産物を指す。RNA転写物がDNA配列の完全相補的コピーであるときには一次転写物と称され、または一次転写物の転写後プロセシング由来のRNA配列であり得、成熟RNAと称される。
【0067】
本明細書中で使用されているフレーズ「メッセンジャーRNA(mRNA)」は、イントロンを含まず、細胞によりタンパク質に翻訳され得るRNAを指す。
【0068】
本明細書中で使用されている用語「cDNA」は、mRNA鋳型に対して相補的であり、酵素逆転写酵素を用いてmRNA鋳型から合成されるDNAを指す。cDNAは一本鎖であり得、またはDNAポリメラーゼIのクレノウ分子を用いて二本鎖の形に変換され得る。「センス」RNAは、mRNAを含み、細胞内またはインビトロでタンパク質に翻訳され得るRNA転写物を指す。「アンチセンスRNA」は、標的一次転写物またはmRNAの全部または一部に対して相補的であり、標的遺伝子の発現を阻止するRNA転写物を指す(米国特許No.5,107,065)。アンチセンスRNAの相補性は特定遺伝子転写物の一部、すなわち5’非コード配列、3’非コード配列、イントロンまたはコード配列であり得る。
【0069】
本明細書中で使用されているフレーズ「機能RNA」は、アンチセンスRNA、リボザイムRNA、または翻訳され得ないが細胞プロセスに対してなお影響を有する他のRNAを指す。
【0070】
用語「補体」及び「逆補体」はmRNA転写物に関して本明細書中で互換可能に使用されており、メッセージのアンチセンスRNAを規定することを意味する。
【0071】
本明細書中で使用されているフレーズ「内因性RNA」は、本発明の組換え構築物で形質転換する前に、天然に存在するまたは存在せず、すなわち組換え手段、変異誘発等により導入される宿主のゲノム中に存在する核酸配列によりコードされるRNAを指す。
【0072】
類似性:2つのアミノ酸配列、タンパク質またはポリペプチド間の「類似性」を指すとき、用語「類似性」は両配列中の一連の同一及び保存アミノ酸残基の存在を指す。2つのアミノ酸配列間の類似度が高ければ、2つの配列の対応性、類似性または同等性が高くなる。
【0073】
安定な形質転換、一過性形質転換及び形質転換:本明細書中で使用されているフレーズ「安定な形質転換」は、遺伝的に安定な遺伝を生ずる核及び細胞小器官ゲノムを含めた宿主生物のゲノムへの核酸分子の転移を指す。
【0074】
対照的に、本明細書中で使用されているフレーズ「一過性形質転換」は、組込みまたは安定な遺伝なしに遺伝子発現を生ずる核酸分子の宿主生物の核またはDNA含有細胞小器官への転移を指す。形質転換させた核酸分子を含む宿主生物を「トランスジェニック」生物と称する。コメ、ワタ及び他の単子葉植物を細胞形質転換するための好ましい方法は粒子加速または「遺伝子銃」形質転換技術(Kleinら,(1987)Nature(London),327:70−73;米国特許No.4,945,050)、またはトランスジーンを含有する適切なTiプラスミドを用いるアグロバクテリウム媒介方法(Ishida Y.ら,(1996)Nature Biotech.,14:745−750)を使用する。
【0075】
本明細書中で使用されている用語「形質転換」は安定な形質転換及び一過性形質転換の両方を指す。
【0076】
翻訳リーダー配列:本明細書中で使用されているフレーズ「翻訳リーダー配列」は、遺伝子のプロモーター配列とコード配列の間に位置するDNA配列を指す。翻訳リーダー配列は翻訳開始配列の上流の完全にプロセシングされたmRNA中に存在する。翻訳リーダー配列は一次転写物のmRNAへのプロセシング、mRNA安定性または翻訳効率に影響を及ぼし得る。翻訳リーダー配列の例は記載されている(Turner,R.and Foster,G.D.(1995)Molecular Biotechnology,3:225)。
【0077】
本明細書中で引用されている特許、特許公開明細書及び優先権書類のすべてが参照により本明細書に組み入れられる。
【0078】
A9−エロンガーゼ遺伝子及び該遺伝子によりコードされる酵素
本発明のΔ9−エロンガーゼ遺伝子によりコードされる酵素は、交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を介する20個以上の炭素の長さを有する長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LC−PUFA)の産生において必須である。単離ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916 Δ9−エロンガーゼ遺伝子のヌクレオチドの配列を図7Aに示し、対応するタンパク質の予測アミノ酸配列を図7Bに示す。
【0079】
Δ9−エロンガーゼ酵素及びΔ8−デサチュラーゼ酵素を用いるLAのDGLAへの変換及びALAのω3−ETAへの変換を交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路と称する。LAのDGLAへの変換及びALAのω3−ETAへの変換のための従来のΔ6経路はそれぞれLAをGLAに、ALAをSDAに変換させるためにΔ6−デサチュラーゼ酵素;及びGLAをDGLAに、SDAをω3−ETAに変換させるためにΔ6−エロンガーゼを使用している。いずれの経路でも、その後ARAまたはEPAの産生は例えばΔ5−デサチュラーゼにより触媒される。例えば、DHAは例えばそれぞれΔ5−エロンガーゼ及びΔ4−デサチュラーゼを用いてEPAをω3−ドコサペンタエン酸(DPA)に、ω3−ドコサペンタエン酸をDHAに変換させる際に産生され得る。
【0080】
例えばDGLA、ω3−ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA及び/またはDHAは交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路または従来のΔ6経路を介して産生され得るが、ある例では交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路が従来のΔ6経路よりも好ましいことがある。例えば、DGLA、ω3−ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA及び/またはDHAの産生中に特定の残留ω−6またはω−3脂肪酸中間体(例えば、GLAまたはSDA)が望ましくないならば、GLA及びSDA形成を回避するために交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を従来のΔ6経路の代替として使用し得る。
【0081】
先に検討したように、Δ9−エロンガーゼは交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路における必須酵素である。例えば、EPAはΔ9−エロンガーゼ遺伝子及びΔ9−エロンガーゼによりコードされる酵素なしでは交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を介して合成され得ない。図1に示すように、本発明の単離Δ9−エロンガーゼ酵素は例えばALAをω3−ETrAに、LAをω6−EDAに変換させる。その後、ω3−ETrAからのω3−ETA及びω3−ETAからのEPAの産生はそれぞれ例えばΔ8−デサチュラーゼ及びΔ5−デサチュラーゼにより触媒される。交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を使用する結果として、中間体GLA及びSDA脂肪酸が回避される。
【0082】
本発明は、配列番号17(すなわち、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916のΔ9−エロンガーゼ遺伝子の単離ヌクレオチド配列)または配列番号19(すなわち、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916のバリアントΔ9−エロンガーゼ遺伝子)(に対して配列同一性を有する)配列中のヌクレオチドの少なくとも68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を含む、それから構成される、またはそれに対して相補的な配列を有するヌクレオチド配列(及び対応するコード化タンパク質)をも包含することに注目すべである。前記配列はヒトソース及び他の非ヒトソース(例えば、シー・エレガンス(C.elegans)またはマウス)由来であり得る。
【0083】
更に、本発明は、配列番号17(図7Aに示す)または配列番号19(図8Aに示す)のヌクレオチド配列及び他のソース由来の配列を含みまたはそれから構成され、上記相補性または対応性を有する断片及び誘導体をも包含する。上記配列(すなわち、Δ9−エロンガーゼ活性を有する配列)の機能均等物も本発明に包含される。
【0084】
配列番号17または配列番号19由来の断片は、10〜約780ヌクレオチド、10〜約700ヌクレオチド、10〜約650ヌクレオチド、10〜約500ヌクレオチド、10〜約250ヌクレオチド、10〜約100ヌクレオチド、10〜約50ヌクレオチドまたは15〜40ヌクレオチドを含むまたはそれから構成される長さを有し得る。1つの態様で、配列番号17及び配列番号19の断片はΔ9−エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。別の態様で、配列番号17及び配列番号19の断片はプライマー及びプローブとして使用され得る。プライマー及びプローブの作製方法は当業者に公知である。前記プライマー及びプローブは10〜50ヌクレオチド、好ましくは15〜40ヌクレオチドの長さを有し得る。
【0085】
配列番号17または配列番号19のヌクレオチド配列のバリアントも本発明において考えられる。前記バリアントは1つ以上の塩基対付加、置換または欠失を含み得る。本発明に包含される配列番号17のヌクレオチドバリアントの非限定例を下表Aに示す。配列番号17のバリアントの1つの具体例は配列番号19(図8Aを参照されたい)である。
【0086】
【表1】
【0087】
本発明は、他のソース由来であり且つ配列番号17または配列番号19に対して上記した相補性または対応性を有するヌクレオチド配列をも包含する。配列番号17または配列番号19の機能的均等物(すなわち、Δ9−エロンガーゼ活性を有する配列)も本発明に包含される。
【0088】
本発明は、Δ9−エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその断片をも包含し、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号18または配列番号20を含むアミノ酸配列に対して少なくとも68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。前記配列はヒトソース及び他の非ヒトソース(例えば、シー・エレガンス(C.elegans)またはマウス)由来であり得る。
【0089】
本発明は、炭素9位に不飽和を含むポリ不飽和脂肪酸を延長させ(すなわち、Δ9−エロンガーゼ活性を有する)且つアミノ酸配列(すなわち、配列番号18(図7Bに示す)または配列番号20(図8Bに示す)に対して少なくとも68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の類似性または同一性を有する単離及び/または精製ポリペプチドをも包含する。具体的には、本発明は配列番号18または配列番号20のアミノ酸配列を有する精製ポリペプチドを包含する。
【0090】
配列番号18または配列番号20の配列を有するポリペプチドの断片も本発明において考えられている。前記断片は10〜約260連続アミノ酸、10〜約200連続アミノ酸、10〜約100連続アミノ酸、10〜約50連続アミノ酸、10〜約40連続アミノ酸、10〜約30連続アミノ酸または10〜約20連続アミノ酸を含むまたはそれから構成される長さを有し得る。
【0091】
配列番号18または配列番号20の配列を有するポリペプチドのバリアントも本発明において考えられている。前記バリアントは1つ以上のアミノ酸付加、置換または欠失を含み得る。本発明により包含される配列番号18のアミノ酸バリアントの非限定例を下表Bに示す。配列番号18のバリアントの1つの具体例は配列番号20(図8Bを参照されたい)である。
【0092】
【表2】
【0093】
Δ9−エロンガーゼ酵素の産生
Δ9−エロンガーゼ酵素をコードする核酸(例えば、遺伝子)を単離及び/または精製したら、その核酸をベクターまたは構築物を用いて原核または真核宿主細胞に導入し得る。ベクター、例えばバクテリオファージ、コスミドまたはプラスミドは、Δ9−エロンガーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列及び宿主細胞において機能的であり且つヌクレオチド配列によりコードされるΔ9−エロンガーゼの発現を引き出すことができる調節配列(例えば、プロモーター)を含み得る。調節配列はヌクレオチド配列と機能し得る形で関係しており、ヌクレオチド配列に対して機能し得る形で連結されている。(上述したように、調節配列がコード配列の転写または発現に影響を与えるならば、調節は「機能し得る形で連結されている」と言われる。)適当なプロモーターには例えばアルコールデヒドロゲナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホグロコイソメラーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、酸ホスファターゼ、T7、TP1、ラクターゼ、メタロチオネイン、サイトメガロウイルス前初期、ホエー酸性タンパク質、グルコアミラーゼ、及びガラクトース(例えば、GAL1及びGAL10)の存在下で活性化されるプロモーターをコードする遺伝子由来のものが含まれる。加えて、他のタンパク質、オリゴ糖、脂質等をコードするヌクレオチド配列はベクター内、及びポリアデニル化シグナル(例えば、SV−40T−抗原、オボアルブミンまたはウシ成長ホルモンのpoly−Aシグナル)のような他の調節配列内にも含まれ得る。構築物中に存在させる配列の選択は所望する発現産物及び宿主細胞の種類に依存する。
【0094】
上述したように、ベクターを構築したら、そのベクターを例えばトランスフェクション、形質転換及びエレクトロポレーションを含めた当業者に公知の方法により選択した宿主細胞に導入し得る(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Vol.1−3,Sambrookら編,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)を参照されたい)。次いで、宿主細胞を所望のPUFAの産生をもたらす遺伝子を発現させることができる適当な条件下で培養し、前記PUFAは当業界で公知のルーチンの技術を用いて回収、精製される。
【0095】
適当な原核宿主細胞の例には、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)のような細菌、及びスピルリナ属(Spirulina spp.)(すなわち、らん藻類)のようなシアノバクテリアが含まれるが、これらに限定されない。真核細胞は例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞または真菌細胞であり得る。真菌細胞は例えばサッカロミセス属(Saccharomyces spp.)、カンジダ属(Candida spp.)、リポミセス属(Lipomyces spp.)、ヤロウイア属(Yarrowia spp.)、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ニューロスポラ属(Neurospora spp.)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces spp.)、ハンセヌラ属(Hansenula spp.)、トリコデルマ属(Trichoderma spp.)及びピチア属(Pichia spp.)であり得る。特に、真菌細胞は、酵母細胞、例えばサッカロミセス属(Saccharomyces spp.)、カンジダ属(Candida spp.)、ハンセヌラ属(Hansenula spp.)及びピチア属(Pichia spp.)であり得る。酵母細胞はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)でもあり得る。植物細胞には、ダイズ(Glycine max)(例えば、ダイズ)、アブラナ科植物、ベニバナ(Carthamυs tinctorius L.)(例えば、サフラワー)、ヒマワリ(Helianthus anntius)(例えば、ヒマワリ)、トウモロコシ(Zea mays)(例えば、トウモロコシ)、ワタ属(Gossypium species)(ワタ)及びアマ(Linum usitatissimum)(例えば、アマ)のような油糧種子植物由来の植物細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
宿主細胞における発現は一過性または安定的に実施され得る。一過性発現は、宿主細胞において機能的な発現シグナルを含む導入構築物から生じ得るが、前記構築物は宿主細胞において複製せず、まれにしか組込まれず、または宿主細胞は増殖性でない。一過性発現は当該遺伝子に対して機能し得る形で連結された調節可能なプロモーターの活性を誘導することによっても実施され得るが、この誘導可能な系はしばしば発現の低い基礎レベルしか示さない。安定発現は宿主ゲノムに組込まれ得るかまたは宿主細胞において自律的に複製する構築物を導入することにより達成され得る。当該遺伝子の安定発現は、発現構築物上に位置するかまたは発現構築物をトランスフェクトした選択可能なマーカーを使用した後、前記マーカーを発現する細胞を選択することにより選択され得る。組込みから安定発現が生ずる場合には、構築物の組込みの部位は宿主ゲノム内にランダムに存在し得、または宿主遺伝子座との組換えを標的とするのに十分な宿主ゲノムとの相同性の領域を含む構築物を使用することにより標的化され得る。構築物が内因性遺伝子座に対して標的化される場合には、転写及び翻訳調節領域の全部または一部は内因性遺伝子座により与えられ得る。
【0097】
トランスジェニック哺乳動物はΔ9−エロンガーゼ酵素、最終的には当該PUFAを発現するためにも使用され得る。より具体的には、上記構築物を作成したら、その構築物を胚の前核に挿入し得る。次いで、胚をレシピエントの雌に移植し得る。或いは、核移植方法も利用し得る(Schniekeら,Science,278:2130−2133(1997))。次いで、妊娠し、出生させる(例えば、米国特許No.5,750,176及び米国特許No.5,700,671を参照されたい)。この場合、子孫からの乳、組織または他の流体サンプルは、非トランスジェニック動物中で通常見られるPUFAレベルに比較して変化したPUFAレベルを含有すべきである。後続の世代をPUFAの変化したまたは向上したレベルの生成、よって所望のデサチュラーゼ酵素をコードする遺伝子のそのゲノムへの取込みについてモニターし得る。宿主として用いられる哺乳動物は例えばマウス、ラット、家兎、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ及びウシからなる群から選択され得る。しかしながら、当該酵素をコードするDNAをそのゲノムに取込む能力を有しているならば、いずれの哺乳動物も使用し得る。
【0098】
Δ9−エロンガーゼポリペプチドの発現の場合、機能的転写及び翻訳の開始または終止領域はエロンガーゼポリペプチドをコードするDNAに対して機能し得る形で連結されている。転写及び翻訳の開始及び終止領域は、発現させようとするDNA、所望の系において発現し得ることが公知であるかまたは疑われる遺伝子、発現ベクター、化学合成を含めた各種の非排他的ソース、または宿主細胞中の内因性遺伝子座に由来する。植物組織及び/または植物部分における発現は幾つかの有効性を、特に前記組織または部分が種子、葉、果実、花、根等のような早期に収穫されるものの場合に与える。発現は、米国特許Nos.5,463,174、4,943,674、5,106,739、5,175,095、5,420,034、5,188,958及び5,589,379の調節配列のような特定の調節配列を用いて植物とその位置に標的化され得る。
【0099】
或いは、発現タンパク質は、直接または更なる修飾時に宿主植物由来の流体画分に取込まれ得る産物を産生する酵素であり得る。Δ9−エロンガーゼ遺伝子またはアンチセンスΔ9−エロンガーゼ転写物を発現させると、植物部分及び/または植物組織中に存在する特定のPUFAまたはその誘導体のレベルが変化し得る。
【0100】
Δ9−エロンガーゼポリペプチドコード領域は、所望のPUFAを高比率で含有する組織及び/または植物部分を産生するためにそれ自身、または他の遺伝子(例えば、Δ8−デサチュラーゼをコードする遺伝子、Δ5−デサチュラーゼをコードする遺伝子、Δ17−デサチュラーゼをコードする遺伝子、Δ5−エロンガーゼをコードする遺伝子及び/またはΔ4−デサチュラーゼをコードする遺伝子)と一緒に発現され得、または前記PUFA組成はヒト母乳の組成に非常に似ている(WO 95/24494を参照されたい)。終止領域は開始領域を得た遺伝子の3’領域または異なる遺伝子に由来し得る。多数の終止領域が公知であり、同一または異なる属及び種由来の各種宿主において満足であることが判明している。終止領域は通常具体的特性の理由よりはむしろ便宜的に選択される。
【0101】
上述したように、植物(例えば、ダイズ(Glycine max)(ダイズ)またはセイヨウアブラナ(Brassica napus)(カノーラ))、或いは植物組織もそれぞれΔ9−エロンガーゼ酵素の発現のための宿主または宿主細胞としても使用され得、Δ9−エロンガーゼ酵素はポリ不飽和脂肪酸の産生においても利用され得る。より具体的には、所望のPUFASを種子において発現させ得る。種子油の単離方法は当業界で公知である。よって、PUFAソースを与える以外に、種子油成分は栄養組成物、医薬組成物、動物飼料及び化粧品に添加され得る種子油を提供するためにΔ9−エロンガーゼ遺伝子、並びに多分デサチュラーゼ遺伝子(例えば、Δ8−デサチュラーゼ、Δ17−デサチュラーゼ、Δ5−デサチュラーゼ、Δ4−デサチュラーゼ等)及び他のエロンガーゼ遺伝子(例えば、Δ5−エロンガーゼ等)の発現により操作され得る。ここでも、プロモーターに対して機能し得る形で連結されたΔ9−エロンガーゼをコードするDNA配列を含むベクターを植物組織または植物にΔ9−エロンガーゼの発現のために十分な時間及び条件下で導入する。ベクターは他の酵素、例えばΔ4−デサチュラーゼ、Δ5−デサチュラーゼ、Δ6−デサチュラーゼ、Δ10−デサチュラーゼ、Δ12−デサチュラーゼ、Δ15−デサチュラーゼ、Δ17−デサチュラーゼ、Δ19−デサチュラーゼ、Δ6−エロンガーゼ及び/またはΔ5−エロンガーゼをコードする1つ以上の遺伝子をも含み得る。植物組織または植物は酵素が作用する関連基質を産生し得、または前記基質を産生する酵素をコードするベクターを植物組織、植物細胞または植物に導入し得る。加えて、基質を適切な酵素を発現する植物組織に噴霧する。これらの各種技術を用いると、植物細胞、植物組織または植物を用いることによりPUFAを産生し得る。本発明は上記ベクターを含むトランスジェニック植物をも包含し、ベクターのヌクレオチド配列を発現させると例えばトランスジェニック植物の種子中でポリ不飽和脂肪酸が産生することにも注目すべきである。
【0102】
単一植物プロトプラスト形質転換体または各種形質転換外植片からの植物の再生、発育及び栽培は当業界で公知である(Weissbach and Weissbach:Methods for Plant Molecular Biology,(Eds.),Academic Press Inc.,San Diego,CA(1988))。この再生及び成長プロセスは、典型的には形質転換細胞を選択するステップ、個々の細胞を胚性発生から根づいた小植物の段階までの通常の段階を経て培養するステップを含む。トランスジェニック胚及び種子も同様に再生される。生じたトランスジェニック根づいた苗をその後土壌のような適切な植物成長培地に植える。
【0103】
当該タンパク質をコードする外因性外来遺伝子を含む植物の発育または再生は当業界で公知である。ホモ接合性トランスジェニック植物を提供すべく再生植物が自家受粉されることが好ましい。さもなければ、再生植物から得た花粉を農業上重要な株の種子成長させた植物に交雑させる。逆に、重要な株の植物からの花粉を使用して再生植物を受粉させる。所望のポリペプチドを含む本発明のトランスジェニック植物は当業者に公知の方法を用いて栽培される。
【0104】
植物の植物組織からの再生方法は多数ある。具体的な再生方法は出発植物組織及び再生させようとする具体的植物種に依存している。
【0105】
双子葉植物を主にアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を使用することにより形質転換し、トランスジェニック植物を得る方法は、ワタ(米国特許No.5,004,863、米国特許No.5,159,135、米国特許No.5,518,908);ダイズ(米国特許No.5,569,834、米国特許No.5,416,011、McCabeら,Bio/Technology,6:923(1988)、Christouら,Plant Physiol.,87:671−674(1988));アブラナ属(米国特許No.5,463,174);落花生(Chengら,Plant Cell Rep.,15:653−657(1996)、McKentlyら,Plant Cell Rep.,14:699−703(1995)):パパヤ;及びエンドウ(Grantら,Plant Cell Rep.,15:254−258(1995))について記載されている。
【0106】
単子葉植物のエレクトロポレーション、粒子衝撃及びアグロバクテリウムを用いる形質転換も報告されている。形質転換及び植物再生は、アスパラガス(Bytebierら,Proc.Natl.Acad Sci(USA),84:5354(1987));オオムギ(Wan and Lemaux,Plant Physiol.,104:37(1994));トウモロコシ(Zea mays)(Rhodesら,Science,240:204(1988)、Gordon−Kammら,Plant Cell,2:603−618(1990)、Frommら,Bio/Technology,8:833(1990)、Kozielら,Bio/Technology,11:194(1993)、Armstrongら,Crop Science,35:550−557(1995));オートムギ(Somersら,Bio/Teclnology,10:15−89(1992));オーチャードグラス(Hornら,Plant Cell Rep.,7:469(1988));コメ(Toriyamaら,Theor.Appl.Genet.,205:34(1986)、Partら,Plant Mol.Biol.,32:1135−1148(1996)、Abediniaら,Aust.J.Plant Physiol.,24:133−141(1997)、Zhang and Wu,Theor.Appl.Genet.,76:835(1988)、Zhangら,Plant Cell Rep.,7:379(1988)、Battraw and Hall,Plant Sci.,86:191−202(1992)、Christouら,Bio/Technology,9:957(1991));ライムギ(De la Penaら,Nature,325:274(1987));サトウキビ(Bower and Birch,Plant J.,2:409(1992));ヒロハノウシノケグサ(Wangら,Bio/Technology,10:691(1992))及び小麦(Vasilら,Bio/Technology,10:667(1992);米国特許No.5,631,152)で達成されている。
【0107】
クローン化核酸構築物の一時的発現に基づく遺伝子発現のためのアッセイは、核酸分子をポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーションまたは粒子衝撃により植物細胞に導入することにより開発された(Marcotteら,Nature,335:454−457(1988);Marcotteら,Plant Cell,1:523−532(1989);McCartyら,Cell,66:895−905(1991);Hattoriら,Genes Dev.,6:609−618(1992);Goffら,EMBO J.,9:2517−2522(1990))。
【0108】
遺伝子構築物を機能的に精査するために一過性発現システムを使用し得る(概略的に、Maligaら,Methods in Plant Molecular Biology,Cold Spring Harbor Press(1995)を参照されたい)。本発明の核酸分子を他の遺伝子要素(例えば、ベクター、プロモーター、エンハンサー等)と一緒に植物細胞に恒久的または一時的に導入し得ると理解される。
【0109】
先に検討した手順に加えて、専門家は、マクロ分子(例えば、DNA分子、プラスミド等)の構築、操作及び単離、組換え生物の作成、並びにクローンのスクリーニング及び単離のための具体的条件及び手順を記載している標準リソースマテリアルを周知している(例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1989);Maligaら,Methods in Plant Molecular Biology,Cold Spring Harbor Press(1995);Birrenら,Genome Analysis:Detecting Genes,1,Cold Spring Harbor,New York(1998):Birrenら,Genome Analysis:Analyzing DNA,2,Cold Spring Harbor,New York(1998);Plant Molecular Biology:A Laboratory Manual,Clark編.Springer,New York(1997)を参照されたい)。
【0110】
宿主細胞により自然にまたはトランスジェニック的に産生され得る基質及びその後宿主細胞に導入されるベクター中に存在するDNA配列によりコードされ得る酵素を図1に示す。
【0111】
上記にてらして、本発明は、1)Δ9−エロンガーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列)の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離するステップ:2)調節配列に機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ:及び3)ベクターを宿主細胞にΔ9−エロンガーゼ酵素の産生に十分な時間及び条件下で導入するステップを含むΔ9−エロンガーゼ酵素の産生方法を包含する。
【0112】
本発明はポリ不飽和脂肪酸の産生方法をも包含する。1つの態様において、この方法は、1)Δ9−エロンガーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列)の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離すること;2)調節配列に機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築すること;3)発現ベクターを宿主細胞にΔ9−エロンガーゼ酵素の産生のために十分な時間及び条件下で導入すること;及び4)発現させたΔ9−エロンガーゼを基質ポリ不飽和脂肪酸に曝して、基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換させること;を含む。基質PUFAの例にはLA、ALA及びその組合せが含まれる。本方法により産生され得る第1産物ポリ不飽和脂肪酸の例はω6−EDA、ω3−ETrA、またはω6−EDAとω3−ETrAの両方である。例えば、LAをΔ9−エロンガーゼ酵素に曝すと、LAはω6−EDAに変換される。別の例では、ALAをΔ9−エロンガーゼ酵素に曝すと、ALAはω3−ETrAに変換される。
【0113】
方法は更に、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つのデサチュラーゼ、少なくとも1つの追加エロンガーゼまたはその組合せに曝すステップ及び場合によりこのステップを繰り返すステップ(すなわち、第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸をデサチュラーゼまたはエロンガーゼ(前に使用したデサチュラーゼまたはエロンガーゼと同一でも異なっていてもよい)に曝して、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を第2またはその次の(例えば、第3、第4、第5、第6等)産物ポリ不飽和脂肪酸に変換するステップを含み得る。このステップを所望産物ポリ不飽和脂肪酸が得られるまで必要なだけ何度繰り返してもよい。例えば、第1産物ポリ不飽和脂肪酸がω6−EDAであるならば、方法は更にω6−EDAを例えばω6−EDAをDGLA(第2産物ポリ不飽和脂肪酸)に変換させるΔ8−デサチュラーゼに曝すことを含み得る。次いで、場合によりDGLAを例えばΔ5−デサチュラーゼに曝すことによりDGLAをARA(第3産物ポリ不飽和脂肪酸)に変換し得る。次いで、ARAをΔ17−デサチュラーゼに曝すと、EPA(第4産物ポリ不飽和脂肪酸)が産生され得る。さらに、場合によりEPAをΔ5−エロンガーゼに曝すと、DPA(第5産物ポリ不飽和脂肪酸)が産生され得る。次いで、場合によりDPAをΔ4−デサチュラーゼに曝すと、DHA(第6産物ポリ不飽和脂肪酸)が産生され得る。別の例では、第1産物ポリ不飽和脂肪酸がω3−ETrAであるならば、方法は更にω3−ETrAを例えばω3−ETrAをETA(第2産物ポリ不飽和脂肪酸)に変換させるΔ8−デサチュラーゼに曝すことを含み得る。次いで、ETAを例えばΔ5−デサチュラーゼに曝すことによりETAをEPA(第3産物ポリ不飽和脂肪酸)に変換され得る。EPAは更に上記した他のポリ不飽和脂肪酸に変換され得る。
【0114】
別の態様で、方法は、1)Δ9−エロンガーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列)の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離すること;2)調節配列に機能し得る形で連結された単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築すること;3)発現ベクター及びΔ8−デサチュラーゼをコードし且つ少なくとも1つの調節配列に機能し得る形で連結された単離ヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの追加組換えDNA構築物を宿主細胞にΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼの発現のために十分な時間及び条件下で導入すること;及び4)発現させたΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼをLA、ALA及びその組合せからなる群から選択される基質ポリ不飽和脂肪酸に曝して、基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換させることを含む。第1産物ポリ不飽和脂肪酸の例にはDGLA、ω3−ETA及びその組合せが含まれる。更に、この方法は更に、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つの追加デサチュラーゼまたは少なくとも1つの追加エロンガーゼに曝すステップ及び場合によりこのステップを繰り返す(すなわち、第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸をデサチュラーゼまたはエロンガーゼ(前に使用したデサチュラーゼまたはエロンガーゼと同じでも異なっていてもよい)に曝して、第1産物ポリ不飽和脂肪酸(例えば、DGLA及び/またはω3−ETA)を第2またはその次の(例えば、第3、第4,第5、第6等)産物ポリ不飽和脂肪酸に変換するステップを含む)。このステップを所望産物ポリ不飽和脂肪酸が得られるまで必要なだけ何度繰り返してもよい。1つの態様で、方法は更に、調節配列に機能し得る形で連結されたΔ5−デサチュラーゼをコードする単離ヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物を宿主細胞に導入することを含む。
【0115】
よって、Δ9−エロンガーゼはポリ不飽和脂肪酸の産生において使用され得、ポリ不飽和脂肪酸は特定の有用な目的のために使用され得、または他のPUFAの産生において使用され得る。
【0116】
Δ9−エロンガーゼ遺伝子の使用
上述したように、Δ9−単離エロンガーゼ遺伝子及び該遺伝子によりコードされるΔ9−エロンガーゼ酵素は多くの用途を有し得る。例えば、遺伝子及び対応する酵素はポリ不飽和脂肪酸の産生において間接的にまたは直接使用され得る。例えば、Δ9−エロンガーゼはω6−EDA、ω3−ETrA、DGLA、ω3−ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA及び/またはDHAの産生において使用され得る。「直接」は、酵素が直接酸を組成物中に利用される別の酸に変換する(例えば、LAをω6−EDAに変換する)状況を包含すると意味する。「間接的に」は、酸が酵素により別の酸(すなわち、経路中間体)に変換され(例えば、LAがω6−EDAに変換される)、その後後者の酸が非エロンガーゼ酵素により別の酸に変換される(例えば、ω6−EDAが例えばΔ8−デサチュラーゼによりDGLAに変換される)状況を包含することを意味する。これらのポリ不飽和脂肪酸(すなわち、Δ9−エロンガーゼ酵素の活性により直接または間接的に産生されるもの)は、例えばいずれも本発明に包含される栄養組成物、医薬組成物、化粧品及び動物飼料に添加され得る。これらの用途を以下に詳記する。
【0117】
栄養組成物
本発明は栄養組成物を包含する。本発明の目的の栄養組成物は、体内に取り入れたときに(a)組織に栄養分を与えたり組織を強化したり、またはエネルギーを供給するのに役立ち及び/または(b)十分な栄養状態または代謝機能を維持、回復またはサポートする経腸または非経口消費を含めたヒトが消費するための食物または製剤を含む。
【0118】
本発明の栄養組成物は、本明細書中に記載されているΔ9−エロンガーゼ遺伝子を使用することにより直接または間接的に産生される少なくとも1つの油または酸を含み、固体または液体形態のいずれかであり得る。加えて、組成物が具体的用途のために所望する量の食用多量栄養素、ビタミン及びミネラルを含んでいてもよい。前記成分の量は、組成物を幾つかの代謝状態(例えば、代謝障害)を伴っているような特別の要求を有している正常で健康な乳児、小児または成人で使用するために意図されているかに応じて異なる。
【0119】
組成物に添加され得る多量栄養素の例には食用脂、炭水化物及びタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。食用脂の例にはココナツ油、大豆油、及びモノ−及びジグリセリドが含まれるが、これらに限定されない。炭水化物の例にはグルコース、食用ラクトース及び加水分解澱粉が含まれるが、これらに限定されない。加えて、本発明の栄養組成物中に利用され得るタンパク質の例には大豆タンパク質、電気透析したホエー、電気透析したスキムミルク、ミルクホエーまたはこれらのタンパク質の加水分解物が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
ビタミン及びミネラルに関して、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、クロリド、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素、並びにビタミンA、E、D、C及びB複合体が本発明の栄養組成物に添加され得る。他のビタミン及びミネラルを添加してもよい。
【0121】
本発明の栄養組成物中に利用される成分は半精製または精製起源のものである。半精製または精製とは天然材料を精製することにより、または合成により製造した材料を意味する。
【0122】
本発明の栄養組成物の例には乳児用調合乳、栄養サプリメント、栄養代用品及び再水和組成物が含まれるが、これらに限定されない。特に興味深い栄養組成物には乳児用の経腸及び非経口サプリメント、特殊な乳児用調合乳、高齢者用サプリメント、並びに胃腸障害及び/または吸収不良を有する人のためのサプリメンのために利用されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
本発明の栄養組成物は、食事の補給を必要としないときでも食物に添加してもよい。例えば、組成物は任意のタイプの食物に添加され、前記食物にはマーガリン、調整バター、チーズ、牛乳、ヨーグルト、チョコレート、キャンディー、スナック、サラダ油、調理油、食用油、肉類、魚類及び飲料が含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
本発明の好ましい実施形態において、栄養組成物は経腸栄養製品、より好ましくは成人または小児用経腸栄養製品である。この組成物は、ストレスを経験したり、或いは慢性または急性の病的状態のために特別の要求を有している成人または小児に対して投与され得る。組成物は、本発明に従って産生されるポリ不飽和脂肪酸に加えて、上記した多量栄養素、ビタミン及びミネラルを含み得る。多量栄養素は母乳中に存在する量に等しい量で、またはエネルギー基準で(すなわち、カロリーベースあたりの基準で)存在させ得る。
【0125】
液体または固体の経腸及び非経口栄養剤を処方するための方法は当業界で公知である。
【0126】
経腸剤は例えば滅菌され、その後すぐに供給できる(RTF)状態で利用され得、または濃縮した液体または粉末の形態で保存され得る。粉末は上記したように調製した処方物を噴霧乾燥し、濃厚物を再水和することにより処方物を再構成することにより作成され得る。成人及び小児の栄養剤は当業界で公知であり、市販されている(例えば、オハイオ州コロンバスに所在のAbbott Laboratories,Ross Products Division製のSimilac(登録商標)、Ensure(登録商標)、Jevity(登録商標)及びAlimentum(登録商標))。本発明に従って産生される油または酸をこれらの栄養剤に添加してもよい。
【0127】
本発明の栄養組成物のエネルギー密度は、液体形態の場合約0.6〜約3Kcal/mlの範囲であり得る。固体または粉末形態の場合には、栄養サプリメントは約1.2〜9Kcal/g以上、好ましくは約3〜7Kcal/gを含有し得る。通常、液体製品のオスモル度は700mOsm未満、より好ましくは660mOsm未満でなければならない。
【0128】
栄養剤は、本発明に従って産生されるPUFAに加えて、上記した多量栄養素、ビタミン及びミネラルを含み得る。これらの追加成分を存在させると、個人が前記要素の最小1日必要量を摂取するのが助けられる。PUFAを提供することに加えて、組成物に亜鉛、銅、葉酸及び抗酸化剤を添加することが望ましいこともある。これらの物質はストレスを受けた免疫系を高め、従って組成物を服用している個人に対して更なる効果を与えると考えられる。医薬組成物にこれらの要素を補充してもよい。
【0129】
より好ましい実施形態において、栄養組成物は、抗酸化剤及び少なくとも1つのPUFAに加えて、少なくとも5重量%が非消化性オリゴ糖である炭水化物ソースを含む。より好ましい実施形態において、栄養組成物は更にタンパク質、タウリン及びカルニチンを含む。
【0130】
上述したように、本発明に従って産生されるPUFAまたはその誘導体は、経静脈栄養を受けている患者のため、或いは栄養不良、または他の状態または病的状態を予防または治療するための栄養代用品またはサプリメント、特に乳児用調合乳に添加され得る。背景として、ヒトの母乳はDHAとして約0.15%〜約0.36%、EPAとして約0.03%〜約0.13%、ARAとして約030%〜約0.88%、DGLAとして約0.22%〜約0.67%及びGLAとして約0.27%〜約1.04%を含む脂肪酸プロフィールを有していることに注目すべきである。よって、本発明に従って産生されるARA、EPA及び/またはDHAのような脂肪酸は、例えばヒト母乳のPUFA含量をよりうまく模写すべく乳児用調合乳の組成を変化させるために、または非ヒト哺乳動物の乳中に通常存在するPUFAの存在を変化させるために使用され得る。特に、医薬または食物サプリメント、特に母乳代用品またはサプリメント中に使用するための組成物が1つ以上のARA、EPA、DGLA及びDHAを含むことが好ましい。より好ましくは、油は約0.3〜30%のARA及び約0.2〜30%のDGLAを含む。
【0131】
トリグリセリドとして計算して約2〜約30重量%の脂肪酸を含む非経口栄養組成物が本発明に包含される。場合により、他のビタミン、特に脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、及びL−カルニチン)を配合することもできる。所望により、α−トコフェロールのような保存剤を約0.1重量%の量添加してもよい。
【0132】
加えて、ARA及びDGLAの比は特別の所与の最終用途のために適合され得る。母乳サプリメントまたは代用品として製剤化する場合、1つ以上のARA、DGLA及びGLAを含む組成物はそれぞれ約1:19:30〜約6:1:0.2の比で提供される。例えば、動物の母乳は1:19:30〜6:1:0.2の範囲のARA:DGLA:GLAの比で変動し得、これには好ましくは約1:1:1、1:2:1、1:1:4である中間の比が含まれる。宿主細胞において一緒に産生する場合、PUFA比を正確にコントロールためには前駆体基質(例えば、EDA及びDGLA)のARAへの変換率及びパーセントの調節が使用され得る。例えば、DGLAからARAへの5〜10%の変換率を使用すると約1:19のARA対DGLA比が生じ得、約75〜80%の変換率を使用すると約6:1のARA対DGLA比が生じ得る。従って、細胞培養系中であっても宿主動物中であっても、エロンガーゼ発現のタイミング、程度及び特異性、並びにデサチュラーゼ(例えば、非限定的にΔ8−デサチュラーゼ)及び他のエロンガーゼの発現の調節がPUFAレベル及び比を調節するために使用され得る。この場合、本発明に従って産生されるPUFA/酸(例えば、ARA及びEPA)を他のPUFA/酸(例えば、DGLA)と所望の濃度及び比で組合わされ得る。
【0133】
加えて、本発明に従って産生されるPUFAまたはPUFAを含む宿主細胞は、動物組織または乳の脂肪酸組成をヒトまたは動物消費のためにより所望される組成に変化させるための動物飼料サプリメントとしても使用され得る。
【0134】
本発明に従って産生されるポリ不飽和脂肪酸を用いる栄養サプリメント、乳児用製剤、栄養代用品及び他の栄養溶液の幾つかの例を以下に記載する。
【0135】
乳児用製剤:乳児用製剤の例には、いずれもオハイオ州コロンバスに所在のAbbott Nutritionから市販されているIsomil(登録商標)Soy Formula with Iron、Isomil(登録商標)DF Soy Formula For Diarrhea、Isomil(登録商標)Advance(登録商標)Soy Formula with Iron、Isomil(登録商標)Advance(登録商標)20 Soy Formula With Iron Ready To Feed、Similac(登録商標)Infant Formula、Similac(登録商標)Advance(登録商標)Infant Formula with Iron、Similac(登録商標)NeoSure(登録商標)Advance(登録商標)Infant Formula With Iron、Similac Natural Care Advance Low−Iron Human Milk Fortifier Ready To Useが含まれるが、これらに限定されない。本発明の各種PUFAを本明細書中に記載されている乳児用調合乳及び当業者に公知の他の乳児用調合乳に代用及び/または添加してもよい。
【0136】
栄養剤:栄養剤の例には、いずれもオハイオ州コロンバスに所在のAbbott Nutritionから市販されているENSURE(登録商標)、ENSURE(登録商標)HIGH PROTEIN、ENSURE PLUS(登録商標)、ENSURE(登録商標)POWDER、ENSURE(登録商標)PUDDING、ENSURE(登録商標)WITH FIBER、Oxepa(商標)Nutritional Productが含まれるが、これらに限定されない。上記し、当業者に公知の各種栄養サプリメントを本発明に従って産生されるPUFAで代用及び/または補充してもよい。
【0137】
医薬組成物
本発明は、本明細書中に記載されている方法に従って明細書中に記載されているΔ9−エロンガーゼ遺伝子を用いて産生される1つ以上の酸及び/または得られる油を含む医薬組成物をも包含する。より具体的には、医薬組成物は、1つ以上の酸及び/または油、並びに標準で公知の非毒性医薬的に許容され得る担体、佐剤または賦形剤、例えばリン酸緩衝食塩水、水、エタノール、ポリオール、植物油、湿潤剤またはエマルジョン(例えば、水/油エマルジョン)を含み得る。組成物は液体または固体のいずれかの形態でもよい。例えば、組成物は錠剤、カプセル剤、摂取可能な液剤または粉末剤、注射剤、或いは局所用軟膏剤またはクリーム剤の形態であり得る。適切な流動性は、例えば分散液の場合には所要の粒度を維持することにより、界面活性剤を使用することにより維持され得る。等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウム等)を配合することが望ましいことがある。組成物は、不活性希釈剤の他に佐剤、例えば湿潤剤、乳化及び懸濁剤、甘味剤、矯香剤及び芳香剤をも含み得る。
【0138】
サスペンジョン剤は、活性化合物に加えて、懸濁化剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、結晶セルロース、アルミニウムメタハイドロオキシド、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの物質の混合物)を含み得る。
【0139】
固体剤形、例えば錠剤及びカプセル剤は当業界で公知の技術を用いて製造され得る。例えば、本発明に従って産生されるPUFAは慣用の錠剤基剤(例えば、ラクトース、スクロース及びトウモロコシ澱粉)を結合剤(例えば、アカシア、トウモロコシ澱粉またはゼラチン)、崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉またはアルギン酸)及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウム)と一緒に用いて錠剤化され得る。これらの賦形剤を抗酸化剤及び当該PUFAと一緒にゼラチンカプセルに入れることによりカプセル剤が製造され得る。抗酸化剤及びPUFA成分は上に挙げたガイドラインの範囲内で適合していなければならない。
【0140】
静脈内投与の場合、本発明に従って産生されるPUFAまたはその誘導体を市販製剤、例えばIntralipids(商標)中に配合してもよい。典型的な正常な成人の血漿の脂肪酸プロフィールは6.64〜9.46%のARA、1.45〜3.11%のDGLA及び0.02〜0.08%のGLAを含む。これらのPUFAまたはその代謝前駆体は患者の脂肪酸プロフィールを正常とするために単独でまたは他のPUFAと一緒に投与され得る。所望により、製剤の個々の成分は1回または複数回使用するためにキットの形態で個別に提供され得る。特定脂肪酸の典型的な用量は1日あたり0.1mg〜20g(最高100g)であり、好ましくは1日あたり10mg〜1、2、5または10gである。
【0141】
本発明の医薬組成物の考えられる投与ルートには例えば経腸(例えば、経口及び直腸)及び非経口が含まれる。例えは、液体製剤は例えば経口または経腸的に投与され得る。加えて、スプレーまたは吸入剤を形成するために均質混合物を水中に完全に分散させ、滅菌条件下で生理学的に許容され得る希釈剤、保存剤、バッファーまたは噴射剤と混合され得る。
【0142】
投与ルートは勿論所望効果に依存する。例えば、荒れた、乾燥したまたは老化した皮膚を治療するために、傷ついたまたは火傷した皮膚を治療するために、または病気または状態により悪影響を受けている皮膚または毛髪を治療するために組成物を使用しようとするならば、組成物は多分局所的に適用され得る。
【0143】
患者に対して投与しようとする組成物の用量は当業者により決定され得、患者の体重、患者の年齢、患者の免疫状態等の各種要因に依存する。
【0144】
剤形に関して、組成物は例えば溶液、分散液、サスペンジョン、エマルジョン、またはその後再構成される滅菌粉末であり得る。
【0145】
本発明は、本明細書中に記載されている医薬及び/または栄養組成物を使用することによる各種障害の治療をも含む。特に、本発明の組成物は血管形成術後の再狭窄を治療するために使用され得る。更に、炎症、関節リウマチ、喘息及び乾せんの症状も本発明の組成物を用いて治療され得る。PUFAがカルシウム代謝に関与し得ることを示す証拠がある。よって、本発明の組成物は多分骨粗しょう症、及び腎臓または尿管結石の治療または予防において利用され得る。
【0146】
加えて、本発明の組成物は癌の治療においても使用され得る。悪性細胞が変化した脂肪酸組成を有していることが判明している。脂肪酸を添加すると、悪性細胞の増殖を遅らせ、細胞死を生起させ、その化学療法剤への感受性を高めることが判明している。更に、本発明の組成は癌に関連する悪疫質を治療するためにも有用であり得る。
【0147】
本発明の組成物は糖尿病を治療するためにも使用され得る(米国特許No.4,826,877及びHorrobinら,Am.J.Clin.Nutr.(1993),Vol.57(Suppl.)732S−737Sを参照されたい)。変化した脂肪酸代謝及び組成が糖尿病動物で立証されている。
【0148】
更に、Δ9−エロンガーゼ酵素を用いて直接または間接的に産生されるPUFAを含む本発明の組成物は湿疹の治療において、血圧の降下において、及び数学の試験の点数の向上においても使用され得る。加えて、本発明の組成物は血小板凝集の抑制、血管拡張の誘導、コレステロールレベルの低下、血管壁平滑筋及び線維組織の増殖の抑制(Brennerら,Adv.Exp.Med.Biol.(1976)Vol.83,p.85−101)、非ステロイド系抗炎症薬の胃腸出血及び他の副作用の減少または予防(米国特許No.4,666,701を参照されたい)、子宮内膜症及び月経前症候群の予防及び治療(米国特許No.4,758,592を参照されたい)、並びにウイルス感染後の筋痛性脳脊髄炎及び慢性疲労の治療(米国特許No.5,116,871を参照されたい)において使用され得る。
【0149】
本発明の組成物の更なる使用はAIDS、多発性硬化症及び炎症性皮膚障害の治療における並びに全身健康状態を維持するための使用を含む。
【0150】
加えて、本発明の組成物は化粧目的で利用され得る。この組成物は、混合物を形成したり、または単一組成物として使用し得るように既存の化粧品組成物に添加され得る。
【0151】
獣医用途
動物はヒトと同じ要求及び状態の多くを経験するので、上記した医薬及び栄養組成物は動物(すなわち、家畜または非家畜)及びヒトと関連させて利用され得ることを注目すべきである。例えば、本発明の油または酸は動物または水産養殖飼料サプリメント、動物飼料代用品、動物ビタミンまたは動物局所軟膏中に利用され得る。
【0152】
本発明は以下の非限定的実施例を用いて説明され得る。
【実施例1】
【0153】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916からのcDNAライブラリー構築及び推定上のΔ9−エロンガーゼ候補を単離するための配列分析
幾つかの海藻類の脂肪酸組成の分析は、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916中にかなりの量のドコサヘキサエン酸(DHA,22:6 n−3)(総脂質の15重量%)が存在することを明らかにした(表1を参照されたい)。加えて、この生物は交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路(図1を参照されたい)の中間体を与え、この経路がこの生物において活性であることを示している。よって、この生物がリノール酸(LA,18:2 n−6)をω6−エイコサジエン酸(ω6−EDA,20:2 n−6)に、またはα−リノレン酸(ALA,18:3 n−3)をω3−エイコサトリエン酸(ω3−ETrA,20:3 n−3)に変換させることができる活性Δ9−エロンガーゼ;及びω6−エイコサジエン酸(ω6−EDA,20:2 n−6)をジホモ−γ−リノレン酸(DGLA,20:3 n−6)に、またはω3−エイコサトリエン酸(ω3−EtrA,20:3 n−3)をω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA,20:4 n−3)に変換させる活性Δ8−デサチュラーゼを含むと予測される(図1を参照されたい)。
【0154】
【表3】
【0155】
この研究の目的は、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916から完全長Δ9−エロンガーゼ遺伝子を単離し、異種宿主サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現により酵素活性を特徴づけることであった。
【0156】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916から完全長遺伝子を単離するために、ミクロ−cDNAライブラリーを生物から単離した全RNAを用いて構築した。このために、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916の細胞ペレットをProvasoli−Guillard−National Center for Marine Phytoplankton(メーン州ウェスト・ブースベイに所在のCCMP−Bigelow Laboratories)から入手し、全RNAをQiagen RNeasy Maxiキット(カリフォルニア州バレンシアに所在のQiagen)を用いて製造業者のプロトコルに従って単離した。簡単に説明すると、凍結細胞ペレットを液体窒素中で乳鉢及び乳棒を用いて粉砕し、RLTバッファー(Qiagen RNeasy Plant Miniキット)中に懸濁し、QiaShredderに通した。RNAをRNeasyマキシカラムを用いて製造業者のプロトコルに従って精製した。
【0157】
ミクロ−cDNAライブラリーは、Agencourt Biosciences(マサチュセッツ州ウォルサムに所在)により50μgのユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来のRNAを用いて特許技術により構築した。Agencourtは、第1鎖中に幾つかの独自の特許ステップを使用して、一般的に使用されている技術に比して最終的に効率を25〜30%増加させる。特許方法中、RNAを内部プライミング事象を減少または排除するように設計した条件を用いてssDNAに逆転写する。このプログラム及び特別のサイクリングプログラムの組合せにより完全長さクローンの数が増加する。第2鎖合成後、cDNAクローンを小さい末端切断型cDNAの優先的クローニングを減らすために1.2kb以上でサイズ選択する。大きいインサートライブラリーの場合、より大きいインサートクローンに対して選択したインサートサイズは>4kbである。サイズ選択後、cDNA末端を磨き、cDNAをレアカッター酵素を用いて消化する。次いで、その部位がcDNAプライミングステップ中にクローンに導入される「レアカッター」制限酵素を使用して、pAGENベクターへの定方向クローニングのためのクローンを作成する。「レアカッター」制限酵素はおそらくcDNAクローン内で20倍切断しにくく、よってクローンに沿ってランダムな間隔で切断するより一般的な制限酵素を利用する他のcDNAライブラリー構築方法に比して多くのより完全長さのクローンが生ずる。その結果はレアカッター制限酵素から生じた5’平滑末端及び3’突出部を有するインサートである。このプロセスのために、定方向クローニングを確実とするために追加のアダプター連結反応は必要でない。このことはクローニングプロセスの全体的効率を向上させる。ベクターは5’アダプターを使用することなく定方向クローニングのために特別に工学操作されており、クローニング中のcDNAの操作の数が減るために形質転換効率が更に高められる。一次cDNAライブラリーが完成した後、独立クローンの数、組換えクローンの%及び平均インサートサイズについて調べた。
【0158】
次いで、クローンをDH10B大腸菌(T1ファージ耐性細菌細胞)に形質転換する。生じたライブラリーの力価は3.2×106cfu/mlであり、1.3kbの平均インサートサイズを有する独立コロニーの数は3.52×107であった。
【0159】
このcDNAライブラリーからの4224クローンを配列決定し、ベクターを切り取った配列をBLASTを用いて分析して、公知のΔ9−エロンガーゼ配列に対して相同性を有する配列を同定した。BLAST分析は、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916 cDNAライブラリーからパブロバ・サリナ(Pavlova salina)(受託番号AAY15135;配列番号1;図4A)、ハブト藻(Isochrysis galbana)(受託番号AF390174;配列番号2:図4B)、ユートレプティエラ属(Eutreptiella sp.)(WO 2007/061845 A2;配列番号3;図4Cを参照されたい)、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)(受託番号CAT16687;配列番号4;図4D)及びユーグレナ・アナベナ(Euglena anabena)(WO 2008/0194685 Al;配列番号5;図4Eを参照されたい)由来の公知のΔ9−エロンガーゼ配列に対して相同性を有する5つの推定上のヒットを明らかにした。
【0160】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916 cDNAライブラリーからのクローンを配列決定して得た‘プレート2_MO7’(配列番号6;図6)と命名した1つのESTクローンは、既に同定されているΔ9−エロンガーゼに対して高い配列相同性を示した。このDNA断片は744bp長であり、その推定アミノ酸配列(配列番号7:図5B)はユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)由来のΔ9−エロンガーゼ(配列番号4)と最高の配列同一性(66%のアミノ酸配列同一性)を示した。プレート2_MO7遺伝子断片は、他のΔ9−エロンガーゼとのアラインメントに基づいて遺伝子の‘ATG’開始部位を含んでいるようであるが、推定上のユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916 Δ9−エロンガーゼの遺伝子の3’末端を含んでいなかった。
【実施例2】
【0161】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来のプレート2 MO7エロンガーゼの3’末端の単離
実施例1からのプレート2 MO7クローン配列をその3’末端を単離するための鋳型として使用した。
【0162】
第1鎖cDNAをSMART(商標)RACEキット(BD Biosciences)を用いて製造業者の指示に従って合成した。3’RACEレディcDNAを合成するために、1.5μgのユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来の全RNA及び1μlの3’CDSプライマー(5’−AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTAC(T)30VN−3’(ここで、N=A、C、GまたはT;V=A、GまたはC(配列番号8))(12μM)をヌクレアーゼ非含有PCRチューブにおいて5μlの全容量で混合し、70℃で2分間インキュベートし、氷上でスナップ冷却した。短時間遠心した後、2μlの5×第1鎖バッファー[250mM トリスHCl(pH−8.3),375mM KCl及び30mm MgCl2]、1μlの0.1M DTT及び1μlの10mM dNTPミックスをチューブに添加した。42℃で2分間インキュベートした後、1μlの逆転写酵素(PowerScript(商標)RT,BD Biosciences)をチューブに添加し、42℃で90分間インキュベートした。第1鎖cDNAを100μlのトリシン−EDTAバッファー[10mM トリシン−KOH(pH8.5),1.0mM EDTA]で希釈し、酵素を72℃で7分間熱不活化した。
【0163】
ミドリムシ属(Euglenoid sp.)エロンガーゼ遺伝子断片(すなわち、プレート2 MO7クローン配列)の3’末端を単離するために、プライマーをプレート2 MO7の部分遺伝子配列からの配列情報に基づいて設計した。一次PCR増幅は鋳型として3’−RACEレディcDNA及び以下のプライマーを用いて実施した:Eug Elo MO−7 FPl(遺伝子特異的プライマー)(5’−AGG CGC TGT GGA TCT TCG TCT TCC−3’)(配列番号9)及びRACEプライマーUniveral Primer Mix A(UPM,BD Biosciences)。
【0164】
長プライマー(0.4μM):5’−CTA ATA CGA CTC ACT ATA GCA AGC AGT GGT ATC AAC GCA GAG T−3’(配列番号10);及び
短プライマー(2μM):5’−CTA ATA CGA CTC ACT ATA GGG C−3’(配列番号11)。
【0165】
増幅は、0.25μl(100mM)の遺伝子特異的プライマー、0.25μl(100mM)のUPMプライマー、2.5μlのcDNA鋳型、2.5μlの2.5mM dNTP、5μlの5×PCRバッファー(Advantage(登録商標)GC IIポリメラーゼバッファー(Clontcch),200mM トリシン−KOH(pH9.2),75mM 酢酸カリウム,17.5mM 酢酸マグネシウム,25% DMSO,18.75μg/ml BSA,0.005% Tween 20,0.005% Nonidet−P40)、2.5μlのGC Melt Reagent(Clontech)、0.5μlの5×Advantage(登録商標)GC 1 ポリマラーゼ(Clontech)及び11.5μLのMilli−Q(登録商標)水(Millipore)を用いて25μLの最終反応容量で実施した。サンプルをまず94℃で3分間、その後94℃で30秒間、64℃で30秒間及び68℃で1.3分間のサイクルを2回;94℃で30秒間、62℃で30秒間及び68℃で1.30分間のサイクルを3回;94℃で30秒間、60℃で30秒間及び68℃で1.30分間のサイクルを4回;及び94℃で30秒間、58℃で30秒間及び68℃で1.30分間のサイクルを26回実施して変性した。68℃で10分間の最終延長サイクルを実施した後、反応を4℃で停止させた。
【0166】
PCR産物の分析は、多分細胞中のエロンガーゼ遺伝子転写物のレベルが低いために非常に弱いバンドを示した。すなわち、ネストPCR反応を1μlの上記一次PCR反応由来の産物を鋳型として用いて実施した。ネストPCRのために使用したプライマーはEug Elo MO−7 FP2(遺伝子特異的プライマー):5−TCC CCG TGC CGA AGT CGT TCA TCA CC−3’(配列番号12)及びUniveral Primer Mix A(UPM)プライマー(配列番号10及び11)であった。PCR反応条件及びサイクリングパラメーターは一次PCR反応のために使用したものと同一であった。
【0167】
ネストPCRにより得た548bpアンプリコン(配列番号13;図6A)をQiagenゲル精製キット(Qiagen)を用いてゲル精製し、pTZ57R/Tベクター(T/Aクローニングベクター,MBI Fermentas)にクローン化し、配列決定した。配列決定は、この断片(配列番号13)がプレート2_MO7エロンガーゼ断片の完全3’末端を‘TAG’終止コドン及びポリA尾部を含有する下流領域と一緒に含んでいたことを明らかにした。この断片の予測アミノ酸配列(配列番号14及び30〜32)を図6Bに示す。最初の星印はプレート2 MO7コード化タンパク質の終止部位を指す。
【実施例3】
【0168】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来の完全長プレート2 MO7エロンガーゼ遺伝子の単離
プレート2 MO7エロンガーゼの完全長遺伝子配列を、鋳型としてユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.cDNAライブラリー、及び実施例1及び実施例2で得た配列情報に基づいてプレート2 MO7遺伝子の5’及び3’末端を含むように設計したプライマーを用いてPCR増幅により単離した。加えて、遺伝子の酵母発現ベクターpYX242のBamHI/HindIII部位へのクローニングを助けるためにBamHI/HindIII部位をプライマー(下線)に取込んだ。以下のプライマー配列を使用した:
MO7−Elo順方向プライマー:5’−CAC CAT GGA TCC ATG GAC GTC GCG ACT ACG CTG G−3’(配列番号15)、及び
MO7−Elo逆方向プライマー:5’−ACG CGT AAG CTT CTA GTC CAC TTT CTT CTC ATC CTT C−3’(配列番号16)。
【0169】
増幅は、0.5μl(100μM)の各プライマー、鋳型として1μl(〜110ng)のユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.cDNAライブラリープラスミドプール、5μlの2.5mM dNTP、10μlの5×Phusion GCバッファー(Finnzymes)、5μLのDMSO、0.5μL(1U)のPhusionポリメラーゼ(Finnzymes)及び27.5μLのMilli−Q(登録商標)水(Millipore)を用いて実施した。サンプルをまず94℃で3分間、その後98℃で8秒間、60℃で12秒間及び72℃で45秒間のサイクルを2回;及び98℃で8秒間、58℃で12秒間及び72℃で45秒間のサイクルを28回実施して変性した。72℃で3分間の最終延長サイクルを実施した後、反応を4℃で停止させた。
【0170】
PCRにより〜789bp産物が生じ、この産物をpYX242ベクターのBamHI/HindIII部位にクローン化し、大腸菌DH5α(Invitrogen)に形質転換した。こうして得たプラスミドDNAを配列決定して、‘Eug−MO7−ELO#10’(配列番号17:図7A)と命名した789bp遺伝子の完全長遺伝子配列を得た。配列番号17はブダペスト条約の条件下で2009年7月10日に(20110−2209)バージニア州マナッサスに所在のUniversity Boulevard,アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに寄託し、受託番号ATCC が付与された。この遺伝子は、262アミノ酸の予測長さ(配列番号18;図7B)を有するユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来の推定上のΔ9−エロンガーゼをコードすると考えられた。この遺伝子をその酵素活性を特徴づけるための発現研究のために使用した。
【0171】
配列決定中に、Eug−MO7−ELO#10クローンに加えて完全長遺伝子の特定領域に幾つかの配列変化を示した追加バリアントクローンが同定された。これらの配列変化は多分PCR増幅のプロセス中に生じた。1つの前記バリアントEug−MO7−ELO#14の配列分析は、オリジナルEug−MO7−ELO#10クローンと比較したとき多数のヌクレオチド及び対応アミノ酸変化を明らかにした(表2、並びに図2A及び2Bを参照されたい)。Eug−MO7−ELO#14のヌクレオチド(配列番号19)及び予測アミノ酸配列(配列番号20)をそれぞれ図8A及び8Bに示す。オリジナルEug−MO7−ELO#10クローン及びバリアントEug−MO7−ELO#14の両方を発現分析のために使用した。
【0172】
【表4】
【0173】
BLAST‘nr’データベース中に含まれている配列に対する類似性についてクエリーとしてEug−MO7−ELO#10を用いるBlast調査は、Eug−MO7−ELO#10によりコードされる予測アミノ酸配列(配列番号18)がハブト藻(Isochrysis galbana)Δ9−エロンガーゼ(配列番号2)と最高のアミノ酸配列同一性(36%配列同一性)を示したことを明らかにした。配列番号18とユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)由来の公知Δ9−エロンガーゼ(受託番号CAT 16687;配列番号4)のペアワイズ・アラインメントは非常により高いアミノ酸配列同一性(66%同一性)を明らかにした。ここでは、ペアワイズ・アラインメントのためにVector NTI(登録商標)AlignXプログラムのデフォルトパラメーターを使用した。パブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ9−エロンガーゼ(配列番号1)とのペアワイズ・アラインメントはたった〜15%の配列同一性を明らかにした。
【0174】
デサチュラーゼとは異なり、エロンガーゼ酵素は高度に保存されたモチーフを非常に少数しか示さない。これらの酵素は、膜貫通領域であると予測される疎水性ストレッチを4〜5個含む非常に疎水性のタンパク質である。加えて、高度に保存されたヒスチジンボックス(HXXHH)(配列番号28)が第4膜貫通領域に埋め込まれて存在し、酵素活性のために必須である(Leonardら,“Elongation of long−chain fatty acids”,Prog.Lipid Res.,(2004)Vol.43,p.36−54を参照されたい)。幾つかのエロンガーゼ中に、‘HXXHH’モチーフ(配列番号28)の第1ヒスチジン残基がグルタミン(Q)と置換されて、保存モチーフとして‘QXXHH’(配列番号29)が生じる。このQXXHH(配列番号29)モチーフはEug−MO7−ELO#10を含めたΔ9−エロンガーゼの多くに存在している。加えて、Eug−MO7−ELO#10エロンガーゼは、Leonardら,“Elongation of long−chain fatty acids”,Prog.Lipid Res.,(2004)Vol.43,p.36−54に記載されているように現在まで多くのエロンガーゼ中に存在している他のインバリアント残基を含んでいる。
【0175】
図3A及び3Bは、Eug−MO7−ELO#10エロンガーゼ由来のアミノ酸配列と異なる基質特異性を有している他の公知エロンガーゼのアラインメントを示す。これらには、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)由来のΔ9−エロンガーゼ(配列番号4)及びハブト藻(Isochrysis galbana)由来のΔ9−エロンガーゼ(配列番号2)に加えて、マウスElol4エロンガーゼ(受託番号AAG47667;配列番号21;図9A)、ヒトELOVL2エロンガーゼ(受託番号#NP 060240;配列番号22:図9B)及びシー・エレガンス(C.elegans)エロンガーゼ(受託番号AF244356;配列番号23)が含まれる。アラインメント中のインバリアントアミノ酸に陰影が付けられている。これらのインバリアント残基は種間の高度の保存のためにこれらの延長酵素の機能性に対する重要な決定要素であると推定される。アラインメントは修飾ClustalWアルゴリズムを用いるVector NTIソフトウェアを用いて実施した。
【実施例4】
【0176】
遺伝子Eug−MO7−ELO#10によりコードされる推定上のΔ9−エロンガーゼの酵素活性の特徴づけ
推定上のΔ9−エロンガーゼをコードするEug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14バリアントをそれぞれ酵母発現ベクターpYX242(Novagen)のBamHI/HindIII部位にクローン化した。これらの構築物をコンピテントなサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株SC334細胞に形質転換させた。酵母形質転換は製造業者が特定している条件に従ってアルカリ−カチオン酵母形質転換キット(QBioGene)を用いて実施した。形質転換体をロイシンを欠く培地(DOB[−Leu])に対するロイシン栄養要求性に関して選択した。
【0177】
Eug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14によりコードされる酵素のエロンガーゼ活性を特徴づけるために、形質転換体を50μMの特定脂肪酸基質(以下にリストする)の存在下で増殖させ、特定産物への変換を基質特異性を調べるために使用した。
【0178】
Δ9−エロンガーゼ活性について:
リノール酸(18:2 n−6)→エイコサジエン酸(EDA,20:2 n−6)
α−リノレン酸(18:3 n−3)→エイコサトリエン酸(ETrA,20:3 n−3)。
【0179】
C18−エロンガーゼ活性について:
γ−リノレン酸(GLA,18:3 n−6)→ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA,20:3 n−6)
ステアリドン酸(SDA,18:4 n−3)→ω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA,20:4 n−3)。
【0180】
C20−エロンガーゼ活性について:
アラキドン酸(ARA,20:4 n−6)→アドレン酸(ω6−ADA,22:4 n−6)
エイコサペンタエン酸(EPA,20:5 n−3)→ω3−ドコサペンタエン酸(ω3−DPA,22:5 n−3)。
【0181】
負の対照株はサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)334において発現させたpYX242ベクターから構成した。
【0182】
選択DOB[−Leu]培地から単離した形質転換コロニーをYPD液体ブロス(10ml)中で激しく攪拌しながら30℃で一晩増殖させた。次いで、この一晩培養物(5ml)を50μM(最終濃度)の(特定されている通りの)脂肪酸基質を含有する選択培地(DOB[−Leu])(45ml)に添加し、これらを24℃で48〜72時間(指定されている通り)激しく攪拌した(250rpm)。
【0183】
全脂質抽出のために、酵母細胞を2000rpmで15分間スピンダウンし、水(0.5ml)を添加し、サンプルをかきまぜた後、やさしく回転させながらメタノール(10ml)を添加した。次いで、クロロホルム(20ml)を添加し、サンプルを高温で1分間かきまぜた後、室温で2時間放置した。次いで、サンプルに食塩水(6ml)を添加した後、2200rpmで10分間遠心した。上のクロロホルム層を清潔な乾いている30ml容量のバイアルに移し、クロロホルムを窒素流下40℃で蒸発乾固させた。溶媒を完全に蒸発させたら、クロロホルム(2ml)を各バイアルに添加し、サンプルを誘導体化した。
【0184】
脂質の脂肪酸メチルエステル(FAME)への誘導体化のために、各チューブに内部標準(17.216μg/100μl)トリヘプタデカノイン(100μl)を加えた。クロロホルムを窒素下40℃で蒸発乾固させ、14% メタノール中の三フッ化ホウ素(2ml)を添加した後、トルエン(2滴)(〜50μl)を添加した。各バイアルに窒素をフラッシュし、95℃で15分間加熱した。バイアルを冷却した後、食塩水(2ml)を添加し、脂質を1分間激しくかきまぜることによりヘキサン(4ml)で抽出した。ヘキサン抽出物を20ml容量の清潔な乾いているスクリューキャップチューブに移し、di−H2O(5ml)を添加し、サンプルをかきまぜ、1500rpmで4分間遠心した。次いで、洗浄したヘキサンを20ml容量の試薬チューブに移した。ヘキサンを蒸発乾固させ、各サンプルを新鮮なヘキサン(0.5ml)で再構成した。再構成した最終ヘキサンをかきまぜて、脂質を分散させた。次いで、全サンプルをGCオートサンプラーバイアルに充填し、分析のために4μlを注入した。GCをNuChek Std.461で較正した。
【0185】
基質の産物への変換%を式を用いて計算した。
【0186】
【数1】
【0187】
表3は、添加した基質の変換%に基づくEug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14コード化タンパク質の酵素活性を表す。Eug−MO7−ELO#10コード化タンパク質は、LA(18:2 n−6)の10.5%をEDA(20:2 n−6)に変換し、ALA(18:3 n−3)の23.2%をETrA(20:3 n−3)に変換した。このことは、Eug−MO7−ELO#10遺伝子がn−6及びn−3脂肪酸基質の両方を認識し得るΔ9−エロンガーゼをコードすることを示した。バリアントクローンEug−MO7−ELO#14コード化タンパク質もΔ9−エロンガーゼ活性を示し、LA(18:2 n−6)の7.84%をEDA(20:2 n−6)に変換し、ALA(18:3 n−3)の11.15%をETrA(20:3 n−3)に変換した。しかしながら、この活性はオリジナルEug−MO7−ELO#10コード化タンパク質の活性よりも低かった。このことは、Eug−MO7−ELO#l4とEug−MO7−ELO#10間の異なる残基がこの酵素のΔ9−延長活性の重要な決定因子であることを示している。
【0188】
非常に低いバックグラウンド(基質の非特異的変換)活性がベクターのみの対照で検出された(表3を参照されたい)。Eug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14コード化酵素のいずれもが試験した他のPUFA基質に対して活性を持っていなかった(表4を参照されたい)。このことから、この酵素は交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路(図1を参照されたい)に関与する基質に対して特異的であることを示している。
【0189】
【表5】
【0190】
【表6】
【実施例5】
【0191】
Δ9−エロンガーゼ‘Eug−MO7−ELO#10’の植物種子における発現
Eug−MO7−ELO#10エロンガーゼのコード配列を、対応する遺伝子を含むプラスミドから以下のセンス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドプライマー(付加した制限酵素部位に下線を付した)を用いてPCRにより増幅させた:
【0192】
【化1】
【0193】
PCR反応は高忠実度Phusionポリメラーゼ(New England Biolabs)を用いて実施した。PCR増幅遺伝子を制限酵素EcoRI及びXhoIで消化し、生じた産物をその5’末端でダイズ由来の種子特異的グリシニン−1プロモーターに、その3’末端でバイナリーベクターp0308−DsRed中のグリシニン−1 3’非翻訳領域に連結して、プラスミド‘pEugELO’を作製した。グリシニン−1調節要素は既にNielsenら,“Characterisation of the glycinin gene family in soybean”,Plant Cell(1989)Vol.1,p.313−328に記載されている。このベクターは、形質転換種子の蛍光による選択のためにキャッサバモザイクウイルスプロモーターの制御下でDs−Redトランスジーン及び細菌選択のためにカナマイシン耐性マーカーをも含んでいる。これらの実験の対照として、ハブト藻(Isochrysis galbana)Δ9−エロンガーゼ遺伝子(配列番号2)をp0308−Ds−Red中にグリシニン−1プロモーターの制御下でEcoRI/XhoI断片としてクローン化して、プラスミド‘pIsoD9’を作製した。
【0194】
pEugELO及びpIsoD9をアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株C58 MP90にエレクトロポレーションにより導入した。次いで、カナマイシン耐性アグロバクテリウムをフローラル・ディップ方法(Cloughら、“Floral dip:a simplified method for Agrobacterium−mediated transformation of Arabidopsis thaliana”,Plant J.,(1998)Vol.16,p.735−743)によりシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)生態型Col−0を形質転換するために使用した。アグロバクテリウムフローラル・ディップ後、成熟及びドライダウンに達するまで植物を22℃で16時間日長で維持した。これらの実験のために、種子油中にα−リノレン酸及び非常に長鎖の脂肪酸(≧C20)を低レベルでしか含有しないがリノール酸を高レベルで含有しているシロイヌナズナのfad3/fae1変異体を使用した(Cahoonら,“Conjugated fatty acis accumulate to high levels in phospholipids of metabolically engineered soybean and Arabidopsis seeds”,Phytochemistry(2006)Vol.67,p.1166−1176)。この遺伝的背景はサフラワー及び低リノレン酸ダイズのような作物由来の種子油の脂肪酸プロフィールに近似している。アグロバクテリウムをディップしたシロイヌナズナ植物から得たトランスジェニック種子をPidkowichら,“Modulating seed beta−ketoacyl−acyl carrier proteins synthase II level converts the composition of a temperate seed oil to that of a palm−like tropical oil”,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2007)Vol.104,p.4742−4747により記載されている方法を用いてDsRedマーカータンパク質の蛍光により同定した。単トランスジェニック及び非トランスジェニック対照種子をCahoon and Shanklin,“Substrate−dependent mutant complementation to select fatty acid desaturase variants for metabolic engineering of plant seed oils”,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)Vol.97.p.12350−12355に記載されているように水酸化トリメチルスルホニウム(TMSH)試薬を用いることによりトリアシルグリセロールを含めた成分脂質の直接エステル交換反応にかけた。単種子から得た脂肪酸メチルエステルを、INNOWaxカラム(長さ30m×内径0.25mm)を取り付けたAgilent 6890ガスクロマトグラフを用いることにより、7℃/分で185℃(1分保持)から230℃(2分間保持)にプログラムするオーブン温度でフレームイオン化検出を含むガスクロマトグラフィーにより分析した。成分脂肪酸メチルエステルは、野生型シロイヌナズナ(Arabiodopsis thaliana)Col−0の種子由来の公知の身元を有する脂肪酸メチルエステルに対する保持時間に基づいて、保持時間を標準脂肪酸メチルエステルの保持時間と比較することにより同定した。
【0195】
pEugELO構築物で形質転換した植物からの6つの独立した形質転換事象由来の単Tl種子の脂肪酸組成を表5に示す。plsoD9構築物、対照Δ9−エロンガーゼで形質転換した植物由来の独立した事象に相当する単Tl種子の脂肪酸組成も示す(表6を参照されたい)。非形質転換fad3/fae1種子(表7を参照されたい)に対するpEugELO形質転換由来のトランスジェニック種子の脂肪酸組成の大きな変化は高レベルのEDA(20:2 n−6,Δ11,14)の存在であった。これらの種子中で、20:2の相対量は全脂肪酸の40%〜49%(w/w)の範囲であった。比較することにより、20:2は非トランスジェニックfad3/fae1種子の全脂肪酸の>0.5%を占めた(表7を参照されたい)。これは、LA(18:2 n−6,Δ9,12)の相対量を非トランスジェニックfad3/fae1種子中の約50%(表7を参照されたい)からpEugELO中の14%くらいまで同時に減らすことによりなされた。このことは、Eug−MO7−ELO#10エロンガーゼにより与えられる20:2合成のための主要基質として役立つ18:2と一致している。エイコサエン酸(20:1,Δ11)及びエイコサン酸(20:0)も非トランスジェニックfad3/fae1種子に比してpEugELO−形質転換種子中で高かったが、これらの脂肪酸の各々はトランスジェニック種子中の全脂肪酸の<3%を構成した。これらの所見は、Eug−MO7−ELO#10エロンガーゼがLA(18:2 n−6)のようなC18PUFAに対して植物において基質優先性を有し、LA(18:2 n−6)に富む種子中での20:2の産生のための有効な酵素であることを示している。比較のために、ハブト藻(Isochrysis galbana)Δ9−ELO(pIsoD9)を発現するように工学操作した種子は20:2を全脂肪酸の30〜40%の量まで、20:0及び20:1の各々を全脂肪酸の<3%の量まで蓄積した(表6を参照されたい)。
【0196】
【表7】
【0197】
【表8】
【0198】
【表9】
【実施例6】
【0199】
Δ9−エロンガーゼ‘Eug−MO7−ELO#10’とΔ8−デサチュラーゼの共発現
ARA産生をもたらす交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を再構築するためにEug−MO7−ELO#10をΔ8−デサチュラーゼと一緒に共発現させることが可能である。加えて、油糧種子植物や油性酵母のような異種宿主において3つの遺伝子、すなわちΔ9−エロンガーゼ‘Εug−MO7−ELO#10’、Δ8−デサチュラーゼ及びΔ5−デサチュラーゼを共発現させて、前記異種宿主におけるARA産生をもたらすARA生合成経路を再構築することが可能である。
【0200】
上記にてらして、本発明の幾つかの目的が達成され、他の有利な効果が得られることが分かるであろう。
【0201】
本発明の範囲を逸脱することなく上記事項に各種変更を加え得るので、先の記載に含まれるすべての事項は例示として、狭い意味でなく解釈されると意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、Δ9−エロンガーゼをコードする単離ポリヌクレオチド、前記単離ポリヌクレオチドによりコードされるΔ9−エロンガーゼ、前記単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記発現ベクターを含む宿主細胞、並びにΔ9−エロンガーゼ及びポリ不飽和脂肪酸の産生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)は生活形の適切な機能において多くの役割を発揮する。例えば、PUFAは細胞の血漿膜の重要な成分であり、血漿膜でPUFAはリン脂質の形態で存在している。PUFAは哺乳動物のプロスタサイクリン、エイコサノイド、ロイコトリエン及びプロスタグランジンに対する前駆体としても役立つ。更に、PUFAは発達中の乳児の脳を適切に発達させるために、及び組織の形成及び修復のために必要である。PUFAの生物学的重要性にてらして、PUFA及びPUFAの産生につながる中間体を効率的に産生するための試みがなされている。
【0003】
多数の酵素、最も注目すべきデサチュラーゼ及びエロンガーゼがPUFA生合成に関与している(図1を参照されたい)。デサチュラーゼは基質の脂肪酸アルキル鎖内の炭素原子間への不飽和(例えば、二重結合)の導入を触媒する。エロンガーゼは2−炭素単位の脂肪酸基質への付加を触媒する。例えば、リノール酸(LA,18:2 n−6)はオレイン酸(OA,18:1 n−9)からΔ12−デサチュラーゼにより産生される。エイコサジエン酸(EDA、20:2 n−6)はリノール酸(LA、18:2 n−6)からΔ9−エロンガーゼにより産生される。ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA,20:3n−6)はエイコサジエン酸(EDA,20:2 n−6)からΔ8−デサチュラーゼにより産生される。アラキドン酸(ARA,20:4 n−6)はジホモ−γ−リノレン酸(DGLA,20:3n−6)からΔ5−デサチュラーゼにより産生される(図1を参照されたい)。
【0004】
エロンガーゼはγ−リノレン酸(GLA,18:3n−6)のジホモ−γ−リノレン酸(DGLA,20:3n−6)への変換及びステアリドン酸(SDA,18:4 n−3)のエイコサテトラエン酸(ETA,20:4 n−3)への変換を触媒する。エロンガーゼをアラキドン酸(ARA,20:4 n−6)のアドレン酸(ADA,22:4 n−6)への変換及びエイコサペンタエン酸(EPA,20:5 n−3)のω3−ドコサペンタエン酸(22:5 n−3)への変換も触媒する。Δ9−エロンガーゼは炭素9位に不飽和を含むポリ不飽和脂肪酸を延長させる。例えば、Δ9−エロンガーゼはリノール酸(LA,18:2 n−6)のエイコサジエン酸(EDA,20:2 n−6)への変換及びα−リノレン酸(ALA,18:3 n−3)のエイコサトリエン酸(ETrA,20:3 n−3)への変換を触媒する。その後、ω3−ETrAはΔ8−デサチュラーゼによりω3−ETAに変換され得る。その後、ω3−ETAは、医薬組成物、栄養組成物、動物飼料、及び化粧品のような他の製品に添加され得る他のポリ不飽和脂肪酸(例えば、ω3−EPA)の製造に使用され得る。
【0005】
今までに同定されたエロンガーゼは該エロンガーゼが作用する基質の点で異なる。更に、エロンガーゼは動物及び植物の両方に存在する。哺乳動物中に存在するエロンガーゼは飽和、モノ不飽和及びポリ不飽和脂肪酸に作用する能力を有する。対照的に、植物中に存在するエロンガーゼは飽和またはモノ不飽和脂肪酸に対して特異的である。よって、植物中でポリ不飽和脂肪酸を生成するためにはPUFA特異的エロンガーゼが必要である。
【0006】
植物及び動物において、延長プロセスは4ステップメカニズムの結果であると考えられる(Lassnerら,The Plant Cell,8:281−292(1996))。CoAはアシル担体である。ステップ1は、二酸化炭素及びアシル部分が2個の炭素原子により延長されたβ−ケトアシル−CoAを得るためのマロニル−CoAと長鎖アシル−CoAの縮合を含む。後続の反応は、延長アシル−CoAを得るためのβ−ヒドロキシアシル−CoAへの還元、エノイル−CoAへの脱水及び第2還元を含む。最初の縮合反応は基質特異的ステップだけでなく、律速ステップでもある。
【0007】
動物はΔ9位を超えて脱飽和することができず、従ってオレイン酸(OA,18:1 n−9)をリノール酸(LA,18:2 n−6)に変換させることができないことに注目すべきである。同様に、哺乳動物はΔ15−デサュラーゼ活性を持っていないので、α−リノレン酸(ALA,8:3 n−3)は哺乳動物により合成され得ない。しかしながら、α−リノレン酸は哺乳動物及び藻類においてΔ6−デサチュラーゼによりステアリドン酸(SDA,18:4 n−3)に変換され(WO 96/13591及び米国特許No.5,552,306も参照されたい)、その後エイコサテトラエン酸(ETA,20:4 n−3)に延長され得る。その後、このポリ不飽和脂肪酸(すなわち、ETA,20:4 n−3)はΔ5−デサチュラーゼによりエイコサペンタエン酸(EPA,20:5 n−3)に変換され得る。真菌及び植物を含めた他の真核細胞は炭素12(WO 94/11516及び米国特許No.5,443,974を参照されたい)及び炭素15(WO 93/11245を参照されたい)で脱飽和する酵素を有している。従って、動物の主要ポリ不飽和脂肪酸は食餌に由来し及び/またはリノール酸またはα−リノレン酸の脱飽和及び延長により誘導される。哺乳動物がこれらの必須長鎖脂肪酸を産生できないことにてらして、PUFA生合成に関与する遺伝子を本来上記脂肪酸を産生する種から単離し、これらの遺伝子を大量の1つ以上のPUFAを産生するように改変され得る微生物、植物または動物系において発現させることが非常に興味深い。従って、エロンガーゼ酵素、前記酵素をコードする遺伝子及び前記酵素を産生する組換え方法に対する明確な要望がある。
【0008】
上記した検討に照らして、天然に存在するレベルを超えるレベルのPUFAを含有する油及び新規PUFAに富む油に対する明確な要望もある。前記油はエロンガーゼ遺伝子を単離し、発現させることにより作成され得る。
【0009】
最も重要な長鎖PUFAの1つはエイコサペンタエン酸(EPA)である。EPAは真菌及び魚油中に存在している。ドコサヘキサエン酸(DHA)も別の重要な長鎖PUFAである。DHAは最も多くの場合魚油中に存在し、また哺乳動物脳組織から精製され得る。アラキドン酸(ARA)は第3の重要な長鎖PUFAである。ARAは糸状菌中に存在し、また肝臓や副腎を含めた哺乳動物組織からも精製され得る。
【0010】
例えば、ARA、EPA及び/またはDHAは交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路または従来のΔ6経路を介して産生され得る(図1を参照されたい)。長鎖PUFA、特にARA、EPA及びDHAを産生するための従来のΔ6経路において基質脂肪酸に対して活性であるエロンガーゼは既に同定されている。LAをDGLAに変換するため及びALAをω3−ETAに変換するための従来のΔ6経路は、LAをGLAに、ALAをステアリドン酸(SDA)に変換するためにΔ6−デサチュラーゼ酵素、及びGLAをDGLAに、SDAをω3−ETAに変換するためにΔ6−エロンガーゼ酵素を利用している。しかしながら、ある例では、交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路が従来のΔ6経路より好ましいことがある。例えば、GLAまたはSDAのような特定の残留ω−6またはω−3脂肪酸中間体がDGLA、ω3−ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA及び/またはDHAの産生中に望ましくないならば、GLA及びSDA形成を回避するために従来のΔ6経路の代わりに交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を使用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第96/13591号
【特許文献2】米国特許第5,552,306号明細書
【特許文献3】国際公開第94/11516号
【特許文献4】米国特許第5,443,974号明細書
【特許文献5】国際公開第93/11245号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Lassnerら,The Plant Cell,8:281−292(1996)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、Δ9−エロンガーゼの新規なソースが長鎖PUFA、特にDGLA、ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA及び/またはDHAの産生のために同定された。本発明のΔ9−エロンガーゼ酵素は、例えばLAをω6−EDAに、ALAをω3−ETrAに変換する。その後のω6−EDAからのDGLAの産生及びDGLAからのARAの産生はそれぞれΔ8−デサチュラーゼ及びΔ5−デサチュラーゼにより触媒される。
【0014】
1つの態様で、本発明は、エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離ヌクレオチド配列を含むまたはそれに対して相補的な単離核酸分子またはその断片に関し、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号18及び配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも68%の配列同一性を有している。
【0015】
別の態様で、本発明は、配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的な単離ヌクレオチド配列またはその断片に関する。前記単離ヌクレオチド配列またはその断片は基質としてポリ不飽和脂肪酸を用いる機能的に活性なエロンガーゼ、特に機能的に活性なΔ9−エロンガーゼをコードする。
【0016】
ヌクレオチド配列は例えばミドリムシ属(Euglenoid sp.)由来であり得、具体的には例えばユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916から単離され得る。
【0017】
別の態様で、本発明は、上記単離ヌクレオチド配列によりコードされる精製ポリペプチド、並びに炭素9位に不飽和を含むポリ不飽和脂肪酸を延長させ且つ配列番号18及び配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも68%のアミノ酸同一性を有している精製ポリペプチドに関する。
【0018】
もっと別の態様で、本発明は発現ベクターに関する。この発現ベクターは調節配列に機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列は配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的である。本発明はこの発現ベクターを含む宿主細胞にも関する。この宿主細胞は例えば真核細胞または原核細胞であり得る。適当な真核細胞及び原核細胞は本明細書中に記載されている。本発明は発現ベクターを含むトランスジェニック種子にも関する。
【0019】
別の態様で、本発明は、上記発現ベクターを含む植物細胞、植物種子、植物または植物組織に関し、発現ベクターのヌクレオチド配列を発現させると植物細胞、植物または植物組織により少なくとも1つのポリ不飽和脂肪酸が産生される。ポリ不飽和脂肪酸は例えばω6−EDA、ω3−ETrA及びその組合せからなる群から選択され得る。本発明は上記した植物細胞、植物種子、植物または植物組織により発現させた1つ以上の植物油または脂肪酸をも包含する。
【0020】
更に、本発明はΔ9−エロンガーゼの産生方法に関する。この方法は、a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離するステップ;b)ii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;及びc)発現ベクターを宿主細胞にΔ9−エロンガーゼの発現のために適宜十分な時間及び条件下で導入するステップ;を含む。宿主細胞は例えば真核細胞または原核細胞であり得る。特に、真核細胞は例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞または真菌細胞であり得る。植物細胞はダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来であり得る。
【0021】
加えて、本発明は、a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離するステップ;b)調節配列に機能し得る形で連結された単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;c)発現ベクターを宿主細胞にΔ9−エロンガーゼの発現のために十分な時間及び条件下で導入するステップ;及びd)発現させたΔ9−エロンガーゼを基質ポリ不飽和脂肪酸に曝して、基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換するステップ;を含むポリ不飽和脂肪酸の産生方法に関する。「基質」ポリ不飽和脂肪酸は例えばLAまたはALAであり、「第1産物」ポリ不飽和脂肪酸は、例えばω6−EDAまたはω3−ETrAである。この方法は更に、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つのデサチュラーゼ、少なくとも1つの追加エロンガーゼまたはその組合せに曝して、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を第2またはその次のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップを含み得る。第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸は、例えばDGLA、またはω3−ETA、ARA、EPA、DPA、DHAまたはその組合せであり得る。
【0022】
別の態様で、本発明は、a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離するステップ;b)調節配列に機能し得る形で連結された単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;c)i)発現ベクター及びii)Δ8−デサチュラーゼをコードし且つ調節配列に機能し得る形で連結された少なくとも1つの単離ヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの追加組換えDNA構築物を宿主細胞にΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼの発現のために十分な時間及び条件下で導入するステップ;及びd)発現させたΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼをLA、ALA及びその組合せからなる群から選択される基質ポリ不飽和脂肪酸に曝して、基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換するステップ;を含む宿主細胞におけるポリ不飽和脂肪酸の産生方法に関する。第1産物ポリ不飽和脂肪酸は、例えばDGLA、ω3−ETAまたはその組合せであり得る。この方法は更に、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つのデサチュラーゼ、少なくとも1つの追加エロンガーゼまたはその組合せに曝して、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を第2またはその次のポリ不飽和脂肪酸に変換するステップを含み得る。第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸は、例えばARA、EPA、DPA、DHAまたはその組合せであり得る。1つの態様で、この方法は更に、宿主細胞にii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)Δ5−デサチュラーゼをコードする単離ヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物を導入することを含み得る。宿主細胞は上記した通りであり得る。
【0023】
別の態様で、本発明は、植物細胞を配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的な少なくとも1つの単離ヌクレオチド配列またはその断片で形質転換し、この形質転換した植物細胞からトランスジェニック植物を再生することを含むトランスジェニック植物の作成方法に関する。植物細胞はダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来であり得る。別の態様で、本発明は、本方法により作成されるトランスジェニック植物から得た種子に関する。
【0024】
本明細書中で言及されている各ヌクレオチド及びアミノ酸配列に特定の配列識別番号が割り当てられていることにも注目されるべきである。参照により本明細書に組み入れられる配列表(本明細書に添付されている)は前記した各配列及びその対応する番号をリストしている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】脂肪酸生合成経路及びこの経路におけるΔ9−エロンガーゼの役割を示す。
【図2A】実施例3で検討されているベクターpYX242のBamHI/HindIII部位にクローン化される、それぞれEug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14バリアントのヌクレオチド配列であるヌクレオチド配列配列番号26及び配列番号27のアラインメントを示す。バリアントは四角に囲まれている。
【図2B】実施例3で検討されているベクターpYX242のBamHI/HindIII部位にクローン化される、それぞれEug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14バリアントのヌクレオチド配列であるヌクレオチド配列配列番号26及び配列番号27のアラインメントを示す。バリアントは四角に囲まれている。
【図3A】ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916(Eug−MO7−ELO#10)由来のΔ9−エロンガーゼのアミノ酸配列(配列番号18)とユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)(配列番号4)、ハブト藻(Isochrysis galbana)(配列番号2)、マウスElovl4エロンガーゼ(受託番号AAG47667;配列番号21)、ヒトELOVL2エロンガーゼ(受託番号NP 060240;配列番号22)及びシー・エレガンス(C.elegans)エロンガーゼ(受託番号AF244356;配列番号23)由来の公知のΔ9−エロンガーゼのアミノ酸配列のアラインメントを示す。インバリアント残基に陰影が付けられている。
【図3B】ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916(Eug−MO7−ELO#10)由来のΔ9−エロンガーゼのアミノ酸配列(配列番号18)とユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)(配列番号4)、ハブト藻(Isochrysis galbana)(配列番号2)、マウスElovl4エロンガーゼ(受託番号AAG47667;配列番号21)、ヒトELOVL2エロンガーゼ(受託番号NP 060240;配列番号22)及びシー・エレガンス(C.elegans)エロンガーゼ(受託番号AF244356;配列番号23)由来の公知のΔ9−エロンガーゼのアミノ酸配列のアラインメントを示す。インバリアント残基に陰影が付けられている。
【図4A】パブロバ・サリナ(Pavlova salina)由来のΔ9−エロンガーゼアミノ酸配列(受託番号AAY15135;配列番号1)を示す。
【図4B】ハブト藻(Isochrysis galbana)由来のΔ9−エロンガーゼアミノ酸配列(受託番号AF390174;配列番号2)を示す。
【図4C】ユートレプティエラ属(Eutreptiella sp.)由来のΔ9−エロンガーゼアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【図4D】ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)由来のΔ9−エロンガーゼアミノ酸配列(受託番号CAT16687;配列番号4)を示す。
【図4E】ユーグレナ・アナベナ(Euglena anabena)由来のA9−エロンガーゼアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
【図5A】実施例1に記載されているように得たクローンプレート2 MO7のヌクレオチド配列(配列番号6)を示す。
【図5B】実施例1に記載されているように得たクローンプレート2 MO7の推定アミノ酸配列(配列番号7)を示す。
【図6A】実施例2に記載されているように得たプレート2 MO7遺伝子断片推定上の3’末端のヌクレオチド配列(配列番号13)を示す。
【図6B】実施例2に記載されているように得たプレート2 MO7遺伝子断片推定上の3’末端の予測アミノ酸配列(配列番号14及び30〜32)を示す。配列番号14及び30〜32は終止コドンを表す“*”で分かれている。
【図6C】配列番号14を示す。
【図6D】配列番号30を示す。
【図6E】配列番号31を示す。
【図6F】配列番号32を示す。
【図7A】実施例3に記載されているように得たユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来の推定上のΔ9−エロンガーゼ(Eug−MO7−ELO#10)のヌクレオチド配列(配列番号17)を示す。
【図7B】実施例3に記載されているように得たユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916の推定上のΔ9−エロンガーゼ(Eug−MO7−ELO#10)のヌクレオチド配列(配列番号17)によりコードされる予測アミノ酸配列(配列番号18)を示す。
【図8A】実施例3に記載されているように得たユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来のバリアントΔ9−エロンガーゼ(Eug−MO7−ELO#14)のヌクレオチド配列(配列番号19)を示す。
【図8B】実施例3に記載されているように得たユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来のバリアントΔ9−エロンガーゼ(Eug−MO7−ELO#14)のヌクレオチド配列(配列番号19)によりコードされる予測アミノ酸配列(配列番号20)を示す。
【図9A】マウスElovl4エロンガーゼ由来のアミノ酸配列(受託番号AAG47667;配列番号21)を示す。
【図9B】ヒトELOVL2エロンガーゼ由来のアミノ酸配列(受託番号NP 060240;配列番号22)を示す。
【図9C】シー・エレガンス(C.elegans)エロンガーゼ由来のアミノ酸配列(受託番号AF244356;配列番号23)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、ミドリムシ属(Euglenoid sp.)、例えばユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.、具体的にはユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来のΔ9−エロンガーゼ遺伝子のヌクレオチド(例えば、遺伝子)及び翻訳アミノ酸配列に関する。更に、本発明は、前記遺伝子及び前記遺伝子によりコードされる酵素の使用をも含む。例えば、遺伝子及び対応する酵素は、医薬組成物、栄養組成物及び他の有用な製品に添加され得るポリ不飽和脂肪酸(例えば、ω6−EDA、ω3−EtrA、DGLA、ω3−ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA、DHAまたはその組合せ)を産生する際に使用され得る。
【0027】
定義
本明細書中で使用されている単数形“a”、“an”及び“the”は、文脈上明確な断りがない限り複数を含む。本明細書中の数値範囲の記述に関して、同じ程度の精度でその間に介在する各々の数が明白に考えられる。例えば、範囲6〜9の場合6及び9に加えて数7及び8が考えられ、範囲6.0〜7.0の場合数6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0が明白に考えられる。
【0028】
キメラ構築物:本明細書中で使用されているフレーズ「キメラ構築物」は通常自然界には一緒に存在しない核酸分子の組合せを指す。従って、キメラ構築物は異なるソース由来の調節配列及びコード配列、または同一ソースに由来するが通常自然界に存在する様式とは異なる様式で配置され得る調節配列及びコード配列を含む。
【0029】
コード配列:本明細書中で使用されている用語「コード配列」は特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、その中またはその下流(3’非コード配列)に位置し、関連するコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、または翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。調節配列にはプロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン及びポリアデニル化認識配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
相補性:本明細書中で使用されている用語「相補性」は2つのDNAセグメント間の関連度を指す。相補性は、適切な条件下で1つのDNAセグメントのセンス鎖が他のDNAセグメントのアンチセンス鎖とハイブリダイズして二重らせんを形成する能力を測定することにより調べられる。二重らせん中、アデニンは1本の鎖中に存在し、チミンは他の鎖中に存在している。同様に、グアニンが1本の鎖中に存在している場合にはシトシンは他の鎖中に存在している。2つのDNAセグメントのヌクレオチド配列の関連性が大きければ、2つのDNAセグメントの鎖間でハイブリッド二本鎖を形成する能力が高くなる。
【0031】
によりコードされる、ハイブリダイゼーション、及びストリンジェントな条件:本明細書中で使用されているフレーズ「によりコードされる」はポリペプチド配列をコードする核酸配列を指し、前記ポリペプチド配列またはその一部は核酸配列によりコードされるポリペプチド由来の少なくとも3個の連続アミノ酸、より好ましくは少なくとも8個の連続アミノ酸、更により好ましくは少なくとも15個の連続アミノ酸のアミノ酸配列を含む。
【0032】
本発明は、PUFAエロンガーゼ活性を有する酵素をコードし、中程度のストリンジェントな条件下で配列番号17または配列番号19(それぞれ図7A及び8Aに示す)からなるヌクレオチド配列を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を有する核酸にハイブリダイズし得る単離ヌクレオチド配列をも包含する。核酸分子は、一本鎖形の核酸分子が適切な温度及びイオン強度条件下で他の核酸分子にアニールし得るときには別の核酸分子にハイブリダイズし得る(Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)を参照されたい)。温度及びイオン強度の条件がハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決める。「ハイブリダイゼーション」は2つの核酸が相補配列を含んでいることが必要である。しかしながら、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチが生ずる恐れがある。核酸をハイブリダイズするための適切なストリンジェンシーは核酸の長さ及び相補度に依存する。これらの変数は当業者に公知である。より具体的には、2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が高いほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのTmの値が大きくなる。長さが100を超えるヌクレオチドのハイブリッドの場合、Tmを計算するための式が誘導されている(上掲のSambrookらを参照されたい)。より短い核酸とのハイブリダイゼーションの場合、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決める(上掲のSambrookらを参照されたい)。
【0033】
典型的には、ストリンジェントな条件とは、塩濃度がpH7.0〜8.3で約1.5M Naイオン未満、典型的には約0.01〜1.0M Naイオン濃度(または他の塩)であり、温度が短プローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)の場合には少なくとも約30℃、長プローブ(例えば、50を超えるヌクレオチド)の場合には少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件は不安定化剤(例えば、ホルムアミド)を添加しても得られ得る。低ストリンジェンシー条件の例には、37℃での30〜35% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)のバッファー溶液を用いるハイブリダイゼーション及び50〜55℃での1×〜2×SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3M クエン酸トリナトリウム)中での洗浄が含まれる。中ストリンジェンシー条件の例には、37℃での40〜45% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS中でのハイブリダイゼーション及び55〜60℃での0.5×〜1×SSC中での洗浄が含まれる。高ストリンジェンシー条件の例には、37℃での50% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS中でのハイブリダイゼーション及び60〜65℃での0.1×SSCでの洗浄が含まれる。
【0034】
エキソン:本明細書中で使用されている用語「エキソン」は、転写され、遺伝子由来の成熟メッセンジャーRNA中に存在するが、必ずしも最終遺伝子産物をコードする配列の一部でない遺伝子の配列の部分を指す。
【0035】
発現、アンチセンス阻害、及びコサプレッション:本明細書中で使用されている用語「発現」は機能性最終産物の産生を指す。遺伝子の発現は遺伝子の転写及びmRNAの前駆体または成熟タンパク質への翻訳を含む。
【0036】
本明細書中で使用されているフレーズ「アンチセンス阻害」は、標的タンパク質の発現を抑えることができるアンチセンスRNA転写物の産生を指す。
【0037】
本明細書中で使用されている用語「コサプレッション」は、同一または実質的に類似の外因性または内因性遺伝子の発現を抑えることができるセンスRNA転写物の産生を指す(米国特許No.5,231,020を参照されたい)。
【0038】
機能的に均等である断片またはサブ断片:本明細書中で互換可能に使用されている用語「機能的に均等である断片またはサブ断片」及び「機能的に均等な断片またはサブ断片」は、断片またはサブ断片が活性酵素をコードしてもしなくても遺伝子発現を変化させたりある表現型を生ずる能力が保持されている単離核酸分子の部分またはサブ配列を指す。例えば、断片またはサブ断片は形質転換植物において所望の表現型を生ずるためのキメラ構築物の設計において使用され得る。キメラ構築物は、活性酵素をコードしてもしなくても核酸断片またはそのサブ断片を植物プロモーター配列に対して適切な方向に連結させることによるコサプレッションまたはアンチセンス阻害において使用するために設計され得る。
【0039】
遺伝子、天然遺伝子、外因性遺伝子及びトランスジーン:本明細書中で使用されている用語「遺伝子」は、コード配列の前の調節配列(5’非コード配列)及び後の調節配列(3’非コード配列)を含む特定タンパク質を発現させる核酸分子を指す。
【0040】
本明細書中で使用されているフレーズ「天然遺伝子」はそれ自身の調節配列を有する自然界に存在する遺伝子を指す。
【0041】
「外因性」遺伝子は、通常宿主生物中に存在しないが、遺伝子導入により宿主生物に導入される遺伝子を指す。外因性遺伝子は非天然生物中に挿入される天然遺伝子またはキメラ構築物を含み得る。
【0042】
本明細書中で使用されている用語「トランスジーン」は形質転換手順によりゲノムに導入した遺伝子を指す。
【0043】
ワタ属(Gossypium species):本明細書中で使用されているフレーズ「ワタ属(Gossypium species)」は、キダチワタ(Gossypium arboreum)、カイトウメン(Gossypium barbadense)、アジアワタ(Gossypium herbaceum)、リクチワタ(Gossypium hirsutum)、ゴシピウム・ヒルスツム(Gossypium hirsutum)var hirsutum、ゴシピウム・ヒルスツム(Gossypium hirsutum)var marie−galante、ゴシピウム・ラピデウム(Gossypium lapideum)、スタート・デザート・ローズ(Gossypium sturtianum)、Gossypium thuberi、アリゾナ・ワイルド・コットン(Gossypium thurberi)、ハワイアンコットン(Gossypium tomentosum)またはGossypium tormentosumの植物を指す。
【0044】
相同性:用語「相同性」、「相同的」、「実質的に類似」及び「実質的に対応する」は本明細書中で互換可能に使用されており、1つ以上のヌクレオチド塩基の変化が核酸分子の遺伝子発現を媒介するまたはある表現型を生ずる能力に影響を与えない核酸分子を指す。これらの用語は、生じた核酸分子の機能的特性を初期の未修飾分子に比して実質的に変化させない1つ以上のヌクレオチドの欠失または挿入のような本発明の核酸分子の修飾をも指す。従って、当業者が認識しているように、本発明は具体的に例示されている配列以上を包含すると理解される。
【0045】
宿主細胞:本明細書中で使用されているフレーズ「宿主細胞」は本発明の単離核酸配列またはその断片を含む細胞を意味する。宿主細胞は、原核細胞(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、シアノバクテリア及び枯草菌(Bacillus subtilis))または真核細胞(例えば、真菌、昆虫、植物または哺乳動物細胞)であり得る。
【0046】
使用し得る真菌細胞の例は、サッカロミセス属(Saccharomyces spp.)、カンジダ属(Candida spp.)、リポミセス属(Lipomyces spp.)、ヤロウイア属(Yarrowia spp.)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces spp.)、ハンセヌラ属(Hansenula spp.)、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ニューロスポラ属(Neurospora spp.)、トリコデルマ属(Trichoderma spp.)及びピチア属(Pichia spp.)である。特に好ましい真菌細胞はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0047】
植物細胞は単子葉または双子葉植物細胞であり得る。特に好ましい植物細胞は、ダイズ(Glycine max)(例えば、ダイズ)、アブラナ科植物、ベニバナ(Carthamus tinctorius L.)(例えば、サフラワー)、ヒマワリ(Helianthus annuus)(例えば、ヒマワリ)、トウモロコシ(Zea mays)(例えば、トウモロコシ)、ワタ属(Gossypium species)(ワタ)及びアマ(Linum usitatissimitm)(例えば、アマ)のような油糧種子植物由来である。
【0048】
同一性、配列同一性及び配列同一性のパーセンテージ(%同一性):本明細書中で互換可能に使用されている用語「同一性」または「配列同一性」は、ヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関連して使用されているときには、特定の比較ウィンドウにわたる最大対応性についてアラインしたときに同一である2つの配列中の核酸塩基またはアミノ酸残基を指す。よって、同一性は2つのDNAまたはポリペプチドセグメントの同一鎖(センスまたはアンチセンスのいずれか)間の同一性、対応性または同等性の程度として定義される。
【0049】
「配列同一性のパーセンテージ」または「%同一性」は、2つの最適にアラインさせた配列を特定領域にわたって比較し、同一塩基が両配列中に存在する位置の数を調べて一致した位置の数を求め、その位置の数を比較対象のセグメント中の位置の総数で割り、結果に100を掛けることにより計算される。配列の最適アラインメントは、Smith & Waterman,Appl.Math.,2:482(1981)のアルゴリズムにより、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.,48:443(1970)のアルゴリズムにより、Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),85:2444(1988)の方法により、及び関連アルゴニズム(例えば、Higginsら,CABIOS,5Ll51−153(1989)、FASTDB(Intelligenetics)、BLAST(National Center for Biomedical Information;Altschulら,Nucleic Acids Research,25:3389−3402(1997))、PILEUP(ウィスコンシン州マジソンに所在のGenetics Computer Group)またはGAP,BESTFIT,FASTA及びTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,ウィスコンシン州マジソンに所在のGenetics Computer Group))を実行するコンピュータープログラムにより実施され得る(米国特許No.5,912,120を参照されたい)。配列同一性の%の有用な例には68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が含まれるが、これらに限定されない。これらの同一性は本明細書中に記載されているプログラムを用いて調べることができる。
【0050】
間接的または直接:本明細書中で使用されている用語「間接的」は、ポリ不飽和脂肪酸の産生における遺伝子及びその対応する酵素の使用に関連して使用されているときには、第1の酸を第1の酵素により第2の酸(すなわち、経路中間体)に(例えば、LAを例えばΔ9−エロンガーゼによりω6−EDAに)変換し、その後第2の酸を第2の酵素を用いて第3の酸に(例えば、ω6−EDAを例えばΔ8−デサチュラーゼによりDGLAに)変換する状況を包含する。
【0051】
本明細書中で使用されている用語「直接」は、ポリ不飽和脂肪酸の産生における遺伝子及びその対応する酵素の使用に関連して使用されているときには、酵素が直接第1の酸を第2の酸に変換し、その後第2の酸を組成物中に利用する状況(例えば、LAの例えばΔ9−エロンガーゼによるω6−EDAへの変換、またはω3−ETrAの例えばΔ8−デサチュラーゼによるω3−ETAへの変換)を包含する。
【0052】
イントロン:本明細書中で使用されている用語「イントロン」は、タンパク質配列の一部をコードしない遺伝子中の介在配列を指す。よって、前記配列はRNAに転写されるが、その後切出され、翻訳されない。この用語は切出されたRNA配列に対しても使用される。
【0053】
単離(された):本明細書中で使用されている用語「単離」は、当業界で公知のルーチンの技術を用いて天然に存在する環境またはソースから(例えば、細菌、藻類、真菌、植物、脊椎動物、哺乳動物等から)除去される核酸分子(DNAまたはRNA)、或いはタンパク質またはその生物学的に活性な部分を指す。単離された核酸分子またはタンパク質は天然環境中の核酸分子またはタンパク質を通常伴うまたはそれと相互作用する成分を実質的または本質的に含んでいない。
【0054】
単離核酸断片または単離核酸配列:本明細書中で使用されているフレーズ「単離核酸断片」または「単離核酸配列」は、場合により合成、非天然または改変ヌクレオチド塩基を含有する一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーを指す。DNAのポリマーの形の単離核酸断片はcDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つ以上のセグメントから構成され得る。(特定のポリヌクレオチドの「断片」は、具体的ヌクレオチド配列の領域に対して同一またはそれに対して相補的なだいたい少なくとも約6個の連続ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約8個の連続ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10個の連続ヌクレオチド、少なくとも約15個の連続ヌクレオチド、少なくとも約20個の連続ヌクレオチド、少なくとも約25個の連続ヌクレオチドの隣接配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。)ヌクレオチド(通常その5’モノホスフェートの形で存在している)は以下のようにその一文字表記により言及される:アデニル酸またはデオキシアデニル酸(それぞれ、RNAまたはDNAに対して)に対して“A”、シチジル酸またはデオキシシチジル酸に対して“C”、グアニル酸またはデオキシグアニル酸に対して“G”、ウリジル酸に対して“U”、デオキシチミジル酸に対して“T”、プリン(AまたはG)に対して“R”、ピリミジン(CまたはT)に対して“Y”、GまたはTに対して“K”、AまたはCまたはTに対して“H”、イノシンに対して“I”、及びヌクレオチドに対して“N”。
【0055】
成熟及び前駆体:本明細書中で使用されている用語「成熟」は、用語「タンパク質」に関連して使用されているときには、翻訳後プロセシングされたポリペプチド、すなわち一次翻訳産物中に存在するプレ−またはプロペプチドが除去されているものを指す。本明細書中で使用されている用語「前駆体」は、用語「タンパク質」に関連して使用されているときには、mRNAの翻訳の一次産物、すなわちプレ−及びプロペプチドがなお存在するものを指す。プレ−及びプロペプチドは、非限定的に細胞内局在化シグナルであり得る。
【0056】
3’非コード配列:本明細書中で使用されているフレーズ「3’非コード配列」はコード配列の下流に位置するDNA配列を指し、ポリアデニル化認識配列及びmRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を与え得る調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは通常ポリアデニル酸部分のmRNA前駆体の3’末端への付加に影響を与えることにより特徴づけられる。各種3’非コード配列の使用がIngelbrechtら,(1989)Plant Cell,1:671−680に例示されている。
【0057】
非天然:本明細書中で使用されているフレーズ「非天然」は人工であり、通常天然に存在するものと一致しないものを指す。
【0058】
機能し得る形で連結された:本明細書中で使用されているフレーズ「機能し得る形で連結された」は、1つの配列の機能が他の配列により調節されるような単一の核酸分子上の核酸配列の結合を指す。例えば、コード配列の発現を調節することができる(すなわち、コード配列がプロモーターの転写コントロール下にある)ときプロモーターはコード配列に対して機能し得る形で連結されている。コード配列はセンスまたはアンチセンス方向で調節配列に機能し得る形で連結され得る。別の例では、本発明の相補的RNA領域は標的mRNAに対して5’、標的mRNAに対して3’、標的mRNA内に直接または間接的に機能し得る形で連結され得、第1相補的領域は標的mRNAに対して5’、その補体は3’である。
【0059】
植物:本明細書中で使用されている用語「植物」は全植物、植物器官、植物組織、種子、植物細胞、その種子及び子孫を指す。植物細胞には、非限定的に種子、懸濁培養物、胚、分裂組織的領域、カルス組織、葉、根、茎、配偶体、胞子体、花粉及び小胞子由来の細胞が含まれる。
【0060】
ポリメラーゼ連鎖反応またはPCR:本明細書中で使用されているフレーズ「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、一連の反復サイクルから構成される大量の特定のDNAセグメントを合成するための技術を指す(コネチカット州ノーウォークに所在のPerkin Elmer Cetus instruments)。典型的には、二本鎖DNAを熱変性し、標的セグメントの3’境界に対して相補的な2つのプライマーを低温でアニールした後、中間温度で延長させる。これら3つの連続ステップの1組をサイクルと称する。
【0061】
PCRは、鋳型を反復複製することにより短時間にDNAを数百万倍に増幅させるために使用される強力な技術である(Mullisら,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,51:263−273(1986);Erlichら,欧州特許出願50,424;欧州特許出願84,796;欧州特許出願258,017、欧州特許出願237,362、Mullisら,欧州特許出願201,184、Mullisら,米国特許No.4,683,202;Erlich,米国特許No.4,582,788;及びSaikiら,米国特許No.4,683,194)。この方法はDNA合成をプライムさせるために特定のインビトロで合成したオリゴヌクレオチドの複数の組を用いている。プライマーの設計は分析したいDNAの配列に依存する。この技術は、鋳型を高温で融解し、プライマーを鋳型内の相補的配列に対してアニーリングした後、鋳型をDNAポリメラーゼを用いて複製するサイクルを複数回(通常20〜50回)行うことにより実施される。PCR反応の産物はアガロースゲルを用いて分離した後、臭化エチジウム染色し、UV透照で可視化することにより分析される。或いは、産物中に標識を取込むために放射性dNTPをPCRに添加してもよい。この場合、PCR産物はゲルをX線フィルムに曝すことにより可視化される。放射標識PCR産物の更なる効果は個々の増幅産物のレベルを定量し得ることである。
【0062】
プロモーター及びエンハンサー:本明細書中で使用されている用語「プロモーター」は、コード配列または機能RNAの発現をコントロールすることができるDNA配列を指す。プロモーター配列は近位及びより遠位の上流要素から構成され、後者要素がしばしばエンハンサーと称されている。
【0063】
本明細書中で使用されている用語「エンハンサー」はプロモーター活性を刺激することができるDNA配列を指し、プロモーターの組織特異性のレベルを高めるために挿入されるプロモーターの生来の要素または異質要素であり得る。プロモーター配列はまた遺伝子の転写された部分内に及び/または転写された配列の下流に位置し得る。プロモーターは完全に天然遺伝子に由来し得、或いは天然に存在する各種プロモーターに由来する各種要素から構成され得、または合成DNAセグメントを含むことさえある。各種プロモーターが遺伝子の発現を各種組織または細胞型中で、または各種発生段階で、または各種環境条件に応答して指向させ得ることを当業者は理解している。遺伝子を多くの細胞型において大抵発現させるプロモーターは「構成的プロモーター」と称される。植物細胞において有用な各種タイプの新規プロモーターが絶えず発見されている。多数の例がOkamuro and Goldberg,(1989)Biochemistry of Plants,15:1−82による編集物中に見つけることができる。更に、多くの場合調節配列の正確な境界が完全に規定されていないので、幾つかの変異のDNA分子が同一のプロモーター活性を有し得ることも認識されている。
【0064】
組換え体:本明細書中で使用されている用語「組換え体」は例えば化学合成により、または核酸の単離セグメントを遺伝子工学技術により操作することにより配列の2つのそうでなければばらばらのセグメントの人工的組合せを指す。
【0065】
組換え構築物、発現構築物及び組換え発現構築物:フレーズ「組換え構築物」、「発現構築物」及び「組換え発現構築物」は本明細書中で互換可能に使用されており、当業者に公知の標準方法を用いて細胞のゲノムに挿入され得る遺伝物質の機能性単位を指す。前記構築物はそれ自体であり得、またはベクターと一緒に使用され得る。ベクターを使用する場合、ベクターの選択は当業者に公知のように宿主植物を形質転換するために使用される方法に依存する。例えば、プラスミドベクターを使用し得る。当業者は、本発明の単離核酸分子を含む宿主細胞をうまく形質転換させ、選択し、増殖させるためにベクター上に存在させなければならない遺伝要素を周知している。当業者は異なる独立形質転換事象により発現のレベル及びパターンが異なり(Jonesら,(1985)EMBO J.,4:2411−2418;DeAlmeidaら,(1989)Mol.Gen.Genetics,218:78−86)、よって所望の発現レベル及びパターンを示す株を得るためには複数の事象をスクリーニングにかけなければならないことも認識している。前記スクリニングはDNAのサザン分析、mRNA発現のノーザン分析、タンパク質発現のウェスタン分析または表現型分析によりなし得る。
【0066】
RNA転写物、メッセンジャーRNA、cDNA、機能RNA及び内因性RNA:本明細書中で使用されているフレーズ「RNA転写物」は、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写から生ずる産物を指す。RNA転写物がDNA配列の完全相補的コピーであるときには一次転写物と称され、または一次転写物の転写後プロセシング由来のRNA配列であり得、成熟RNAと称される。
【0067】
本明細書中で使用されているフレーズ「メッセンジャーRNA(mRNA)」は、イントロンを含まず、細胞によりタンパク質に翻訳され得るRNAを指す。
【0068】
本明細書中で使用されている用語「cDNA」は、mRNA鋳型に対して相補的であり、酵素逆転写酵素を用いてmRNA鋳型から合成されるDNAを指す。cDNAは一本鎖であり得、またはDNAポリメラーゼIのクレノウ分子を用いて二本鎖の形に変換され得る。「センス」RNAは、mRNAを含み、細胞内またはインビトロでタンパク質に翻訳され得るRNA転写物を指す。「アンチセンスRNA」は、標的一次転写物またはmRNAの全部または一部に対して相補的であり、標的遺伝子の発現を阻止するRNA転写物を指す(米国特許No.5,107,065)。アンチセンスRNAの相補性は特定遺伝子転写物の一部、すなわち5’非コード配列、3’非コード配列、イントロンまたはコード配列であり得る。
【0069】
本明細書中で使用されているフレーズ「機能RNA」は、アンチセンスRNA、リボザイムRNA、または翻訳され得ないが細胞プロセスに対してなお影響を有する他のRNAを指す。
【0070】
用語「補体」及び「逆補体」はmRNA転写物に関して本明細書中で互換可能に使用されており、メッセージのアンチセンスRNAを規定することを意味する。
【0071】
本明細書中で使用されているフレーズ「内因性RNA」は、本発明の組換え構築物で形質転換する前に、天然に存在するまたは存在せず、すなわち組換え手段、変異誘発等により導入される宿主のゲノム中に存在する核酸配列によりコードされるRNAを指す。
【0072】
類似性:2つのアミノ酸配列、タンパク質またはポリペプチド間の「類似性」を指すとき、用語「類似性」は両配列中の一連の同一及び保存アミノ酸残基の存在を指す。2つのアミノ酸配列間の類似度が高ければ、2つの配列の対応性、類似性または同等性が高くなる。
【0073】
安定な形質転換、一過性形質転換及び形質転換:本明細書中で使用されているフレーズ「安定な形質転換」は、遺伝的に安定な遺伝を生ずる核及び細胞小器官ゲノムを含めた宿主生物のゲノムへの核酸分子の転移を指す。
【0074】
対照的に、本明細書中で使用されているフレーズ「一過性形質転換」は、組込みまたは安定な遺伝なしに遺伝子発現を生ずる核酸分子の宿主生物の核またはDNA含有細胞小器官への転移を指す。形質転換させた核酸分子を含む宿主生物を「トランスジェニック」生物と称する。コメ、ワタ及び他の単子葉植物を細胞形質転換するための好ましい方法は粒子加速または「遺伝子銃」形質転換技術(Kleinら,(1987)Nature(London),327:70−73;米国特許No.4,945,050)、またはトランスジーンを含有する適切なTiプラスミドを用いるアグロバクテリウム媒介方法(Ishida Y.ら,(1996)Nature Biotech.,14:745−750)を使用する。
【0075】
本明細書中で使用されている用語「形質転換」は安定な形質転換及び一過性形質転換の両方を指す。
【0076】
翻訳リーダー配列:本明細書中で使用されているフレーズ「翻訳リーダー配列」は、遺伝子のプロモーター配列とコード配列の間に位置するDNA配列を指す。翻訳リーダー配列は翻訳開始配列の上流の完全にプロセシングされたmRNA中に存在する。翻訳リーダー配列は一次転写物のmRNAへのプロセシング、mRNA安定性または翻訳効率に影響を及ぼし得る。翻訳リーダー配列の例は記載されている(Turner,R.and Foster,G.D.(1995)Molecular Biotechnology,3:225)。
【0077】
本明細書中で引用されている特許、特許公開明細書及び優先権書類のすべてが参照により本明細書に組み入れられる。
【0078】
A9−エロンガーゼ遺伝子及び該遺伝子によりコードされる酵素
本発明のΔ9−エロンガーゼ遺伝子によりコードされる酵素は、交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を介する20個以上の炭素の長さを有する長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LC−PUFA)の産生において必須である。単離ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916 Δ9−エロンガーゼ遺伝子のヌクレオチドの配列を図7Aに示し、対応するタンパク質の予測アミノ酸配列を図7Bに示す。
【0079】
Δ9−エロンガーゼ酵素及びΔ8−デサチュラーゼ酵素を用いるLAのDGLAへの変換及びALAのω3−ETAへの変換を交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路と称する。LAのDGLAへの変換及びALAのω3−ETAへの変換のための従来のΔ6経路はそれぞれLAをGLAに、ALAをSDAに変換させるためにΔ6−デサチュラーゼ酵素;及びGLAをDGLAに、SDAをω3−ETAに変換させるためにΔ6−エロンガーゼを使用している。いずれの経路でも、その後ARAまたはEPAの産生は例えばΔ5−デサチュラーゼにより触媒される。例えば、DHAは例えばそれぞれΔ5−エロンガーゼ及びΔ4−デサチュラーゼを用いてEPAをω3−ドコサペンタエン酸(DPA)に、ω3−ドコサペンタエン酸をDHAに変換させる際に産生され得る。
【0080】
例えばDGLA、ω3−ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA及び/またはDHAは交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路または従来のΔ6経路を介して産生され得るが、ある例では交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路が従来のΔ6経路よりも好ましいことがある。例えば、DGLA、ω3−ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA及び/またはDHAの産生中に特定の残留ω−6またはω−3脂肪酸中間体(例えば、GLAまたはSDA)が望ましくないならば、GLA及びSDA形成を回避するために交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を従来のΔ6経路の代替として使用し得る。
【0081】
先に検討したように、Δ9−エロンガーゼは交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路における必須酵素である。例えば、EPAはΔ9−エロンガーゼ遺伝子及びΔ9−エロンガーゼによりコードされる酵素なしでは交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を介して合成され得ない。図1に示すように、本発明の単離Δ9−エロンガーゼ酵素は例えばALAをω3−ETrAに、LAをω6−EDAに変換させる。その後、ω3−ETrAからのω3−ETA及びω3−ETAからのEPAの産生はそれぞれ例えばΔ8−デサチュラーゼ及びΔ5−デサチュラーゼにより触媒される。交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を使用する結果として、中間体GLA及びSDA脂肪酸が回避される。
【0082】
本発明は、配列番号17(すなわち、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916のΔ9−エロンガーゼ遺伝子の単離ヌクレオチド配列)または配列番号19(すなわち、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916のバリアントΔ9−エロンガーゼ遺伝子)(に対して配列同一性を有する)配列中のヌクレオチドの少なくとも68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を含む、それから構成される、またはそれに対して相補的な配列を有するヌクレオチド配列(及び対応するコード化タンパク質)をも包含することに注目すべである。前記配列はヒトソース及び他の非ヒトソース(例えば、シー・エレガンス(C.elegans)またはマウス)由来であり得る。
【0083】
更に、本発明は、配列番号17(図7Aに示す)または配列番号19(図8Aに示す)のヌクレオチド配列及び他のソース由来の配列を含みまたはそれから構成され、上記相補性または対応性を有する断片及び誘導体をも包含する。上記配列(すなわち、Δ9−エロンガーゼ活性を有する配列)の機能均等物も本発明に包含される。
【0084】
配列番号17または配列番号19由来の断片は、10〜約780ヌクレオチド、10〜約700ヌクレオチド、10〜約650ヌクレオチド、10〜約500ヌクレオチド、10〜約250ヌクレオチド、10〜約100ヌクレオチド、10〜約50ヌクレオチドまたは15〜40ヌクレオチドを含むまたはそれから構成される長さを有し得る。1つの態様で、配列番号17及び配列番号19の断片はΔ9−エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。別の態様で、配列番号17及び配列番号19の断片はプライマー及びプローブとして使用され得る。プライマー及びプローブの作製方法は当業者に公知である。前記プライマー及びプローブは10〜50ヌクレオチド、好ましくは15〜40ヌクレオチドの長さを有し得る。
【0085】
配列番号17または配列番号19のヌクレオチド配列のバリアントも本発明において考えられる。前記バリアントは1つ以上の塩基対付加、置換または欠失を含み得る。本発明に包含される配列番号17のヌクレオチドバリアントの非限定例を下表Aに示す。配列番号17のバリアントの1つの具体例は配列番号19(図8Aを参照されたい)である。
【0086】
【表1】
【0087】
本発明は、他のソース由来であり且つ配列番号17または配列番号19に対して上記した相補性または対応性を有するヌクレオチド配列をも包含する。配列番号17または配列番号19の機能的均等物(すなわち、Δ9−エロンガーゼ活性を有する配列)も本発明に包含される。
【0088】
本発明は、Δ9−エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその断片をも包含し、前記ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号18または配列番号20を含むアミノ酸配列に対して少なくとも68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。前記配列はヒトソース及び他の非ヒトソース(例えば、シー・エレガンス(C.elegans)またはマウス)由来であり得る。
【0089】
本発明は、炭素9位に不飽和を含むポリ不飽和脂肪酸を延長させ(すなわち、Δ9−エロンガーゼ活性を有する)且つアミノ酸配列(すなわち、配列番号18(図7Bに示す)または配列番号20(図8Bに示す)に対して少なくとも68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の類似性または同一性を有する単離及び/または精製ポリペプチドをも包含する。具体的には、本発明は配列番号18または配列番号20のアミノ酸配列を有する精製ポリペプチドを包含する。
【0090】
配列番号18または配列番号20の配列を有するポリペプチドの断片も本発明において考えられている。前記断片は10〜約260連続アミノ酸、10〜約200連続アミノ酸、10〜約100連続アミノ酸、10〜約50連続アミノ酸、10〜約40連続アミノ酸、10〜約30連続アミノ酸または10〜約20連続アミノ酸を含むまたはそれから構成される長さを有し得る。
【0091】
配列番号18または配列番号20の配列を有するポリペプチドのバリアントも本発明において考えられている。前記バリアントは1つ以上のアミノ酸付加、置換または欠失を含み得る。本発明により包含される配列番号18のアミノ酸バリアントの非限定例を下表Bに示す。配列番号18のバリアントの1つの具体例は配列番号20(図8Bを参照されたい)である。
【0092】
【表2】
【0093】
Δ9−エロンガーゼ酵素の産生
Δ9−エロンガーゼ酵素をコードする核酸(例えば、遺伝子)を単離及び/または精製したら、その核酸をベクターまたは構築物を用いて原核または真核宿主細胞に導入し得る。ベクター、例えばバクテリオファージ、コスミドまたはプラスミドは、Δ9−エロンガーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列及び宿主細胞において機能的であり且つヌクレオチド配列によりコードされるΔ9−エロンガーゼの発現を引き出すことができる調節配列(例えば、プロモーター)を含み得る。調節配列はヌクレオチド配列と機能し得る形で関係しており、ヌクレオチド配列に対して機能し得る形で連結されている。(上述したように、調節配列がコード配列の転写または発現に影響を与えるならば、調節は「機能し得る形で連結されている」と言われる。)適当なプロモーターには例えばアルコールデヒドロゲナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホグロコイソメラーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、酸ホスファターゼ、T7、TP1、ラクターゼ、メタロチオネイン、サイトメガロウイルス前初期、ホエー酸性タンパク質、グルコアミラーゼ、及びガラクトース(例えば、GAL1及びGAL10)の存在下で活性化されるプロモーターをコードする遺伝子由来のものが含まれる。加えて、他のタンパク質、オリゴ糖、脂質等をコードするヌクレオチド配列はベクター内、及びポリアデニル化シグナル(例えば、SV−40T−抗原、オボアルブミンまたはウシ成長ホルモンのpoly−Aシグナル)のような他の調節配列内にも含まれ得る。構築物中に存在させる配列の選択は所望する発現産物及び宿主細胞の種類に依存する。
【0094】
上述したように、ベクターを構築したら、そのベクターを例えばトランスフェクション、形質転換及びエレクトロポレーションを含めた当業者に公知の方法により選択した宿主細胞に導入し得る(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Vol.1−3,Sambrookら編,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)を参照されたい)。次いで、宿主細胞を所望のPUFAの産生をもたらす遺伝子を発現させることができる適当な条件下で培養し、前記PUFAは当業界で公知のルーチンの技術を用いて回収、精製される。
【0095】
適当な原核宿主細胞の例には、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)のような細菌、及びスピルリナ属(Spirulina spp.)(すなわち、らん藻類)のようなシアノバクテリアが含まれるが、これらに限定されない。真核細胞は例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞または真菌細胞であり得る。真菌細胞は例えばサッカロミセス属(Saccharomyces spp.)、カンジダ属(Candida spp.)、リポミセス属(Lipomyces spp.)、ヤロウイア属(Yarrowia spp.)、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、ペニシリウム属(Penicillium spp.)、ニューロスポラ属(Neurospora spp.)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces spp.)、ハンセヌラ属(Hansenula spp.)、トリコデルマ属(Trichoderma spp.)及びピチア属(Pichia spp.)であり得る。特に、真菌細胞は、酵母細胞、例えばサッカロミセス属(Saccharomyces spp.)、カンジダ属(Candida spp.)、ハンセヌラ属(Hansenula spp.)及びピチア属(Pichia spp.)であり得る。酵母細胞はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)でもあり得る。植物細胞には、ダイズ(Glycine max)(例えば、ダイズ)、アブラナ科植物、ベニバナ(Carthamυs tinctorius L.)(例えば、サフラワー)、ヒマワリ(Helianthus anntius)(例えば、ヒマワリ)、トウモロコシ(Zea mays)(例えば、トウモロコシ)、ワタ属(Gossypium species)(ワタ)及びアマ(Linum usitatissimum)(例えば、アマ)のような油糧種子植物由来の植物細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
宿主細胞における発現は一過性または安定的に実施され得る。一過性発現は、宿主細胞において機能的な発現シグナルを含む導入構築物から生じ得るが、前記構築物は宿主細胞において複製せず、まれにしか組込まれず、または宿主細胞は増殖性でない。一過性発現は当該遺伝子に対して機能し得る形で連結された調節可能なプロモーターの活性を誘導することによっても実施され得るが、この誘導可能な系はしばしば発現の低い基礎レベルしか示さない。安定発現は宿主ゲノムに組込まれ得るかまたは宿主細胞において自律的に複製する構築物を導入することにより達成され得る。当該遺伝子の安定発現は、発現構築物上に位置するかまたは発現構築物をトランスフェクトした選択可能なマーカーを使用した後、前記マーカーを発現する細胞を選択することにより選択され得る。組込みから安定発現が生ずる場合には、構築物の組込みの部位は宿主ゲノム内にランダムに存在し得、または宿主遺伝子座との組換えを標的とするのに十分な宿主ゲノムとの相同性の領域を含む構築物を使用することにより標的化され得る。構築物が内因性遺伝子座に対して標的化される場合には、転写及び翻訳調節領域の全部または一部は内因性遺伝子座により与えられ得る。
【0097】
トランスジェニック哺乳動物はΔ9−エロンガーゼ酵素、最終的には当該PUFAを発現するためにも使用され得る。より具体的には、上記構築物を作成したら、その構築物を胚の前核に挿入し得る。次いで、胚をレシピエントの雌に移植し得る。或いは、核移植方法も利用し得る(Schniekeら,Science,278:2130−2133(1997))。次いで、妊娠し、出生させる(例えば、米国特許No.5,750,176及び米国特許No.5,700,671を参照されたい)。この場合、子孫からの乳、組織または他の流体サンプルは、非トランスジェニック動物中で通常見られるPUFAレベルに比較して変化したPUFAレベルを含有すべきである。後続の世代をPUFAの変化したまたは向上したレベルの生成、よって所望のデサチュラーゼ酵素をコードする遺伝子のそのゲノムへの取込みについてモニターし得る。宿主として用いられる哺乳動物は例えばマウス、ラット、家兎、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ及びウシからなる群から選択され得る。しかしながら、当該酵素をコードするDNAをそのゲノムに取込む能力を有しているならば、いずれの哺乳動物も使用し得る。
【0098】
Δ9−エロンガーゼポリペプチドの発現の場合、機能的転写及び翻訳の開始または終止領域はエロンガーゼポリペプチドをコードするDNAに対して機能し得る形で連結されている。転写及び翻訳の開始及び終止領域は、発現させようとするDNA、所望の系において発現し得ることが公知であるかまたは疑われる遺伝子、発現ベクター、化学合成を含めた各種の非排他的ソース、または宿主細胞中の内因性遺伝子座に由来する。植物組織及び/または植物部分における発現は幾つかの有効性を、特に前記組織または部分が種子、葉、果実、花、根等のような早期に収穫されるものの場合に与える。発現は、米国特許Nos.5,463,174、4,943,674、5,106,739、5,175,095、5,420,034、5,188,958及び5,589,379の調節配列のような特定の調節配列を用いて植物とその位置に標的化され得る。
【0099】
或いは、発現タンパク質は、直接または更なる修飾時に宿主植物由来の流体画分に取込まれ得る産物を産生する酵素であり得る。Δ9−エロンガーゼ遺伝子またはアンチセンスΔ9−エロンガーゼ転写物を発現させると、植物部分及び/または植物組織中に存在する特定のPUFAまたはその誘導体のレベルが変化し得る。
【0100】
Δ9−エロンガーゼポリペプチドコード領域は、所望のPUFAを高比率で含有する組織及び/または植物部分を産生するためにそれ自身、または他の遺伝子(例えば、Δ8−デサチュラーゼをコードする遺伝子、Δ5−デサチュラーゼをコードする遺伝子、Δ17−デサチュラーゼをコードする遺伝子、Δ5−エロンガーゼをコードする遺伝子及び/またはΔ4−デサチュラーゼをコードする遺伝子)と一緒に発現され得、または前記PUFA組成はヒト母乳の組成に非常に似ている(WO 95/24494を参照されたい)。終止領域は開始領域を得た遺伝子の3’領域または異なる遺伝子に由来し得る。多数の終止領域が公知であり、同一または異なる属及び種由来の各種宿主において満足であることが判明している。終止領域は通常具体的特性の理由よりはむしろ便宜的に選択される。
【0101】
上述したように、植物(例えば、ダイズ(Glycine max)(ダイズ)またはセイヨウアブラナ(Brassica napus)(カノーラ))、或いは植物組織もそれぞれΔ9−エロンガーゼ酵素の発現のための宿主または宿主細胞としても使用され得、Δ9−エロンガーゼ酵素はポリ不飽和脂肪酸の産生においても利用され得る。より具体的には、所望のPUFASを種子において発現させ得る。種子油の単離方法は当業界で公知である。よって、PUFAソースを与える以外に、種子油成分は栄養組成物、医薬組成物、動物飼料及び化粧品に添加され得る種子油を提供するためにΔ9−エロンガーゼ遺伝子、並びに多分デサチュラーゼ遺伝子(例えば、Δ8−デサチュラーゼ、Δ17−デサチュラーゼ、Δ5−デサチュラーゼ、Δ4−デサチュラーゼ等)及び他のエロンガーゼ遺伝子(例えば、Δ5−エロンガーゼ等)の発現により操作され得る。ここでも、プロモーターに対して機能し得る形で連結されたΔ9−エロンガーゼをコードするDNA配列を含むベクターを植物組織または植物にΔ9−エロンガーゼの発現のために十分な時間及び条件下で導入する。ベクターは他の酵素、例えばΔ4−デサチュラーゼ、Δ5−デサチュラーゼ、Δ6−デサチュラーゼ、Δ10−デサチュラーゼ、Δ12−デサチュラーゼ、Δ15−デサチュラーゼ、Δ17−デサチュラーゼ、Δ19−デサチュラーゼ、Δ6−エロンガーゼ及び/またはΔ5−エロンガーゼをコードする1つ以上の遺伝子をも含み得る。植物組織または植物は酵素が作用する関連基質を産生し得、または前記基質を産生する酵素をコードするベクターを植物組織、植物細胞または植物に導入し得る。加えて、基質を適切な酵素を発現する植物組織に噴霧する。これらの各種技術を用いると、植物細胞、植物組織または植物を用いることによりPUFAを産生し得る。本発明は上記ベクターを含むトランスジェニック植物をも包含し、ベクターのヌクレオチド配列を発現させると例えばトランスジェニック植物の種子中でポリ不飽和脂肪酸が産生することにも注目すべきである。
【0102】
単一植物プロトプラスト形質転換体または各種形質転換外植片からの植物の再生、発育及び栽培は当業界で公知である(Weissbach and Weissbach:Methods for Plant Molecular Biology,(Eds.),Academic Press Inc.,San Diego,CA(1988))。この再生及び成長プロセスは、典型的には形質転換細胞を選択するステップ、個々の細胞を胚性発生から根づいた小植物の段階までの通常の段階を経て培養するステップを含む。トランスジェニック胚及び種子も同様に再生される。生じたトランスジェニック根づいた苗をその後土壌のような適切な植物成長培地に植える。
【0103】
当該タンパク質をコードする外因性外来遺伝子を含む植物の発育または再生は当業界で公知である。ホモ接合性トランスジェニック植物を提供すべく再生植物が自家受粉されることが好ましい。さもなければ、再生植物から得た花粉を農業上重要な株の種子成長させた植物に交雑させる。逆に、重要な株の植物からの花粉を使用して再生植物を受粉させる。所望のポリペプチドを含む本発明のトランスジェニック植物は当業者に公知の方法を用いて栽培される。
【0104】
植物の植物組織からの再生方法は多数ある。具体的な再生方法は出発植物組織及び再生させようとする具体的植物種に依存している。
【0105】
双子葉植物を主にアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を使用することにより形質転換し、トランスジェニック植物を得る方法は、ワタ(米国特許No.5,004,863、米国特許No.5,159,135、米国特許No.5,518,908);ダイズ(米国特許No.5,569,834、米国特許No.5,416,011、McCabeら,Bio/Technology,6:923(1988)、Christouら,Plant Physiol.,87:671−674(1988));アブラナ属(米国特許No.5,463,174);落花生(Chengら,Plant Cell Rep.,15:653−657(1996)、McKentlyら,Plant Cell Rep.,14:699−703(1995)):パパヤ;及びエンドウ(Grantら,Plant Cell Rep.,15:254−258(1995))について記載されている。
【0106】
単子葉植物のエレクトロポレーション、粒子衝撃及びアグロバクテリウムを用いる形質転換も報告されている。形質転換及び植物再生は、アスパラガス(Bytebierら,Proc.Natl.Acad Sci(USA),84:5354(1987));オオムギ(Wan and Lemaux,Plant Physiol.,104:37(1994));トウモロコシ(Zea mays)(Rhodesら,Science,240:204(1988)、Gordon−Kammら,Plant Cell,2:603−618(1990)、Frommら,Bio/Technology,8:833(1990)、Kozielら,Bio/Technology,11:194(1993)、Armstrongら,Crop Science,35:550−557(1995));オートムギ(Somersら,Bio/Teclnology,10:15−89(1992));オーチャードグラス(Hornら,Plant Cell Rep.,7:469(1988));コメ(Toriyamaら,Theor.Appl.Genet.,205:34(1986)、Partら,Plant Mol.Biol.,32:1135−1148(1996)、Abediniaら,Aust.J.Plant Physiol.,24:133−141(1997)、Zhang and Wu,Theor.Appl.Genet.,76:835(1988)、Zhangら,Plant Cell Rep.,7:379(1988)、Battraw and Hall,Plant Sci.,86:191−202(1992)、Christouら,Bio/Technology,9:957(1991));ライムギ(De la Penaら,Nature,325:274(1987));サトウキビ(Bower and Birch,Plant J.,2:409(1992));ヒロハノウシノケグサ(Wangら,Bio/Technology,10:691(1992))及び小麦(Vasilら,Bio/Technology,10:667(1992);米国特許No.5,631,152)で達成されている。
【0107】
クローン化核酸構築物の一時的発現に基づく遺伝子発現のためのアッセイは、核酸分子をポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーションまたは粒子衝撃により植物細胞に導入することにより開発された(Marcotteら,Nature,335:454−457(1988);Marcotteら,Plant Cell,1:523−532(1989);McCartyら,Cell,66:895−905(1991);Hattoriら,Genes Dev.,6:609−618(1992);Goffら,EMBO J.,9:2517−2522(1990))。
【0108】
遺伝子構築物を機能的に精査するために一過性発現システムを使用し得る(概略的に、Maligaら,Methods in Plant Molecular Biology,Cold Spring Harbor Press(1995)を参照されたい)。本発明の核酸分子を他の遺伝子要素(例えば、ベクター、プロモーター、エンハンサー等)と一緒に植物細胞に恒久的または一時的に導入し得ると理解される。
【0109】
先に検討した手順に加えて、専門家は、マクロ分子(例えば、DNA分子、プラスミド等)の構築、操作及び単離、組換え生物の作成、並びにクローンのスクリーニング及び単離のための具体的条件及び手順を記載している標準リソースマテリアルを周知している(例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1989);Maligaら,Methods in Plant Molecular Biology,Cold Spring Harbor Press(1995);Birrenら,Genome Analysis:Detecting Genes,1,Cold Spring Harbor,New York(1998):Birrenら,Genome Analysis:Analyzing DNA,2,Cold Spring Harbor,New York(1998);Plant Molecular Biology:A Laboratory Manual,Clark編.Springer,New York(1997)を参照されたい)。
【0110】
宿主細胞により自然にまたはトランスジェニック的に産生され得る基質及びその後宿主細胞に導入されるベクター中に存在するDNA配列によりコードされ得る酵素を図1に示す。
【0111】
上記にてらして、本発明は、1)Δ9−エロンガーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列)の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離するステップ:2)調節配列に機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ:及び3)ベクターを宿主細胞にΔ9−エロンガーゼ酵素の産生に十分な時間及び条件下で導入するステップを含むΔ9−エロンガーゼ酵素の産生方法を包含する。
【0112】
本発明はポリ不飽和脂肪酸の産生方法をも包含する。1つの態様において、この方法は、1)Δ9−エロンガーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列)の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離すること;2)調節配列に機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築すること;3)発現ベクターを宿主細胞にΔ9−エロンガーゼ酵素の産生のために十分な時間及び条件下で導入すること;及び4)発現させたΔ9−エロンガーゼを基質ポリ不飽和脂肪酸に曝して、基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換させること;を含む。基質PUFAの例にはLA、ALA及びその組合せが含まれる。本方法により産生され得る第1産物ポリ不飽和脂肪酸の例はω6−EDA、ω3−ETrA、またはω6−EDAとω3−ETrAの両方である。例えば、LAをΔ9−エロンガーゼ酵素に曝すと、LAはω6−EDAに変換される。別の例では、ALAをΔ9−エロンガーゼ酵素に曝すと、ALAはω3−ETrAに変換される。
【0113】
方法は更に、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つのデサチュラーゼ、少なくとも1つの追加エロンガーゼまたはその組合せに曝すステップ及び場合によりこのステップを繰り返すステップ(すなわち、第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸をデサチュラーゼまたはエロンガーゼ(前に使用したデサチュラーゼまたはエロンガーゼと同一でも異なっていてもよい)に曝して、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を第2またはその次の(例えば、第3、第4、第5、第6等)産物ポリ不飽和脂肪酸に変換するステップを含み得る。このステップを所望産物ポリ不飽和脂肪酸が得られるまで必要なだけ何度繰り返してもよい。例えば、第1産物ポリ不飽和脂肪酸がω6−EDAであるならば、方法は更にω6−EDAを例えばω6−EDAをDGLA(第2産物ポリ不飽和脂肪酸)に変換させるΔ8−デサチュラーゼに曝すことを含み得る。次いで、場合によりDGLAを例えばΔ5−デサチュラーゼに曝すことによりDGLAをARA(第3産物ポリ不飽和脂肪酸)に変換し得る。次いで、ARAをΔ17−デサチュラーゼに曝すと、EPA(第4産物ポリ不飽和脂肪酸)が産生され得る。さらに、場合によりEPAをΔ5−エロンガーゼに曝すと、DPA(第5産物ポリ不飽和脂肪酸)が産生され得る。次いで、場合によりDPAをΔ4−デサチュラーゼに曝すと、DHA(第6産物ポリ不飽和脂肪酸)が産生され得る。別の例では、第1産物ポリ不飽和脂肪酸がω3−ETrAであるならば、方法は更にω3−ETrAを例えばω3−ETrAをETA(第2産物ポリ不飽和脂肪酸)に変換させるΔ8−デサチュラーゼに曝すことを含み得る。次いで、ETAを例えばΔ5−デサチュラーゼに曝すことによりETAをEPA(第3産物ポリ不飽和脂肪酸)に変換され得る。EPAは更に上記した他のポリ不飽和脂肪酸に変換され得る。
【0114】
別の態様で、方法は、1)Δ9−エロンガーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列)の少なくとも68%を含むまたはそれに対して相補的なヌクレオチド配列を単離すること;2)調節配列に機能し得る形で連結された単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築すること;3)発現ベクター及びΔ8−デサチュラーゼをコードし且つ少なくとも1つの調節配列に機能し得る形で連結された単離ヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの追加組換えDNA構築物を宿主細胞にΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼの発現のために十分な時間及び条件下で導入すること;及び4)発現させたΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼをLA、ALA及びその組合せからなる群から選択される基質ポリ不飽和脂肪酸に曝して、基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換させることを含む。第1産物ポリ不飽和脂肪酸の例にはDGLA、ω3−ETA及びその組合せが含まれる。更に、この方法は更に、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つの追加デサチュラーゼまたは少なくとも1つの追加エロンガーゼに曝すステップ及び場合によりこのステップを繰り返す(すなわち、第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸をデサチュラーゼまたはエロンガーゼ(前に使用したデサチュラーゼまたはエロンガーゼと同じでも異なっていてもよい)に曝して、第1産物ポリ不飽和脂肪酸(例えば、DGLA及び/またはω3−ETA)を第2またはその次の(例えば、第3、第4,第5、第6等)産物ポリ不飽和脂肪酸に変換するステップを含む)。このステップを所望産物ポリ不飽和脂肪酸が得られるまで必要なだけ何度繰り返してもよい。1つの態様で、方法は更に、調節配列に機能し得る形で連結されたΔ5−デサチュラーゼをコードする単離ヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物を宿主細胞に導入することを含む。
【0115】
よって、Δ9−エロンガーゼはポリ不飽和脂肪酸の産生において使用され得、ポリ不飽和脂肪酸は特定の有用な目的のために使用され得、または他のPUFAの産生において使用され得る。
【0116】
Δ9−エロンガーゼ遺伝子の使用
上述したように、Δ9−単離エロンガーゼ遺伝子及び該遺伝子によりコードされるΔ9−エロンガーゼ酵素は多くの用途を有し得る。例えば、遺伝子及び対応する酵素はポリ不飽和脂肪酸の産生において間接的にまたは直接使用され得る。例えば、Δ9−エロンガーゼはω6−EDA、ω3−ETrA、DGLA、ω3−ETA、ARA、EPA、ω3−ドコサペンタエン酸、ω6−ドコサペンタエン酸、ADA及び/またはDHAの産生において使用され得る。「直接」は、酵素が直接酸を組成物中に利用される別の酸に変換する(例えば、LAをω6−EDAに変換する)状況を包含すると意味する。「間接的に」は、酸が酵素により別の酸(すなわち、経路中間体)に変換され(例えば、LAがω6−EDAに変換される)、その後後者の酸が非エロンガーゼ酵素により別の酸に変換される(例えば、ω6−EDAが例えばΔ8−デサチュラーゼによりDGLAに変換される)状況を包含することを意味する。これらのポリ不飽和脂肪酸(すなわち、Δ9−エロンガーゼ酵素の活性により直接または間接的に産生されるもの)は、例えばいずれも本発明に包含される栄養組成物、医薬組成物、化粧品及び動物飼料に添加され得る。これらの用途を以下に詳記する。
【0117】
栄養組成物
本発明は栄養組成物を包含する。本発明の目的の栄養組成物は、体内に取り入れたときに(a)組織に栄養分を与えたり組織を強化したり、またはエネルギーを供給するのに役立ち及び/または(b)十分な栄養状態または代謝機能を維持、回復またはサポートする経腸または非経口消費を含めたヒトが消費するための食物または製剤を含む。
【0118】
本発明の栄養組成物は、本明細書中に記載されているΔ9−エロンガーゼ遺伝子を使用することにより直接または間接的に産生される少なくとも1つの油または酸を含み、固体または液体形態のいずれかであり得る。加えて、組成物が具体的用途のために所望する量の食用多量栄養素、ビタミン及びミネラルを含んでいてもよい。前記成分の量は、組成物を幾つかの代謝状態(例えば、代謝障害)を伴っているような特別の要求を有している正常で健康な乳児、小児または成人で使用するために意図されているかに応じて異なる。
【0119】
組成物に添加され得る多量栄養素の例には食用脂、炭水化物及びタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。食用脂の例にはココナツ油、大豆油、及びモノ−及びジグリセリドが含まれるが、これらに限定されない。炭水化物の例にはグルコース、食用ラクトース及び加水分解澱粉が含まれるが、これらに限定されない。加えて、本発明の栄養組成物中に利用され得るタンパク質の例には大豆タンパク質、電気透析したホエー、電気透析したスキムミルク、ミルクホエーまたはこれらのタンパク質の加水分解物が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
ビタミン及びミネラルに関して、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、クロリド、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素、並びにビタミンA、E、D、C及びB複合体が本発明の栄養組成物に添加され得る。他のビタミン及びミネラルを添加してもよい。
【0121】
本発明の栄養組成物中に利用される成分は半精製または精製起源のものである。半精製または精製とは天然材料を精製することにより、または合成により製造した材料を意味する。
【0122】
本発明の栄養組成物の例には乳児用調合乳、栄養サプリメント、栄養代用品及び再水和組成物が含まれるが、これらに限定されない。特に興味深い栄養組成物には乳児用の経腸及び非経口サプリメント、特殊な乳児用調合乳、高齢者用サプリメント、並びに胃腸障害及び/または吸収不良を有する人のためのサプリメンのために利用されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
本発明の栄養組成物は、食事の補給を必要としないときでも食物に添加してもよい。例えば、組成物は任意のタイプの食物に添加され、前記食物にはマーガリン、調整バター、チーズ、牛乳、ヨーグルト、チョコレート、キャンディー、スナック、サラダ油、調理油、食用油、肉類、魚類及び飲料が含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
本発明の好ましい実施形態において、栄養組成物は経腸栄養製品、より好ましくは成人または小児用経腸栄養製品である。この組成物は、ストレスを経験したり、或いは慢性または急性の病的状態のために特別の要求を有している成人または小児に対して投与され得る。組成物は、本発明に従って産生されるポリ不飽和脂肪酸に加えて、上記した多量栄養素、ビタミン及びミネラルを含み得る。多量栄養素は母乳中に存在する量に等しい量で、またはエネルギー基準で(すなわち、カロリーベースあたりの基準で)存在させ得る。
【0125】
液体または固体の経腸及び非経口栄養剤を処方するための方法は当業界で公知である。
【0126】
経腸剤は例えば滅菌され、その後すぐに供給できる(RTF)状態で利用され得、または濃縮した液体または粉末の形態で保存され得る。粉末は上記したように調製した処方物を噴霧乾燥し、濃厚物を再水和することにより処方物を再構成することにより作成され得る。成人及び小児の栄養剤は当業界で公知であり、市販されている(例えば、オハイオ州コロンバスに所在のAbbott Laboratories,Ross Products Division製のSimilac(登録商標)、Ensure(登録商標)、Jevity(登録商標)及びAlimentum(登録商標))。本発明に従って産生される油または酸をこれらの栄養剤に添加してもよい。
【0127】
本発明の栄養組成物のエネルギー密度は、液体形態の場合約0.6〜約3Kcal/mlの範囲であり得る。固体または粉末形態の場合には、栄養サプリメントは約1.2〜9Kcal/g以上、好ましくは約3〜7Kcal/gを含有し得る。通常、液体製品のオスモル度は700mOsm未満、より好ましくは660mOsm未満でなければならない。
【0128】
栄養剤は、本発明に従って産生されるPUFAに加えて、上記した多量栄養素、ビタミン及びミネラルを含み得る。これらの追加成分を存在させると、個人が前記要素の最小1日必要量を摂取するのが助けられる。PUFAを提供することに加えて、組成物に亜鉛、銅、葉酸及び抗酸化剤を添加することが望ましいこともある。これらの物質はストレスを受けた免疫系を高め、従って組成物を服用している個人に対して更なる効果を与えると考えられる。医薬組成物にこれらの要素を補充してもよい。
【0129】
より好ましい実施形態において、栄養組成物は、抗酸化剤及び少なくとも1つのPUFAに加えて、少なくとも5重量%が非消化性オリゴ糖である炭水化物ソースを含む。より好ましい実施形態において、栄養組成物は更にタンパク質、タウリン及びカルニチンを含む。
【0130】
上述したように、本発明に従って産生されるPUFAまたはその誘導体は、経静脈栄養を受けている患者のため、或いは栄養不良、または他の状態または病的状態を予防または治療するための栄養代用品またはサプリメント、特に乳児用調合乳に添加され得る。背景として、ヒトの母乳はDHAとして約0.15%〜約0.36%、EPAとして約0.03%〜約0.13%、ARAとして約030%〜約0.88%、DGLAとして約0.22%〜約0.67%及びGLAとして約0.27%〜約1.04%を含む脂肪酸プロフィールを有していることに注目すべきである。よって、本発明に従って産生されるARA、EPA及び/またはDHAのような脂肪酸は、例えばヒト母乳のPUFA含量をよりうまく模写すべく乳児用調合乳の組成を変化させるために、または非ヒト哺乳動物の乳中に通常存在するPUFAの存在を変化させるために使用され得る。特に、医薬または食物サプリメント、特に母乳代用品またはサプリメント中に使用するための組成物が1つ以上のARA、EPA、DGLA及びDHAを含むことが好ましい。より好ましくは、油は約0.3〜30%のARA及び約0.2〜30%のDGLAを含む。
【0131】
トリグリセリドとして計算して約2〜約30重量%の脂肪酸を含む非経口栄養組成物が本発明に包含される。場合により、他のビタミン、特に脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、及びL−カルニチン)を配合することもできる。所望により、α−トコフェロールのような保存剤を約0.1重量%の量添加してもよい。
【0132】
加えて、ARA及びDGLAの比は特別の所与の最終用途のために適合され得る。母乳サプリメントまたは代用品として製剤化する場合、1つ以上のARA、DGLA及びGLAを含む組成物はそれぞれ約1:19:30〜約6:1:0.2の比で提供される。例えば、動物の母乳は1:19:30〜6:1:0.2の範囲のARA:DGLA:GLAの比で変動し得、これには好ましくは約1:1:1、1:2:1、1:1:4である中間の比が含まれる。宿主細胞において一緒に産生する場合、PUFA比を正確にコントロールためには前駆体基質(例えば、EDA及びDGLA)のARAへの変換率及びパーセントの調節が使用され得る。例えば、DGLAからARAへの5〜10%の変換率を使用すると約1:19のARA対DGLA比が生じ得、約75〜80%の変換率を使用すると約6:1のARA対DGLA比が生じ得る。従って、細胞培養系中であっても宿主動物中であっても、エロンガーゼ発現のタイミング、程度及び特異性、並びにデサチュラーゼ(例えば、非限定的にΔ8−デサチュラーゼ)及び他のエロンガーゼの発現の調節がPUFAレベル及び比を調節するために使用され得る。この場合、本発明に従って産生されるPUFA/酸(例えば、ARA及びEPA)を他のPUFA/酸(例えば、DGLA)と所望の濃度及び比で組合わされ得る。
【0133】
加えて、本発明に従って産生されるPUFAまたはPUFAを含む宿主細胞は、動物組織または乳の脂肪酸組成をヒトまたは動物消費のためにより所望される組成に変化させるための動物飼料サプリメントとしても使用され得る。
【0134】
本発明に従って産生されるポリ不飽和脂肪酸を用いる栄養サプリメント、乳児用製剤、栄養代用品及び他の栄養溶液の幾つかの例を以下に記載する。
【0135】
乳児用製剤:乳児用製剤の例には、いずれもオハイオ州コロンバスに所在のAbbott Nutritionから市販されているIsomil(登録商標)Soy Formula with Iron、Isomil(登録商標)DF Soy Formula For Diarrhea、Isomil(登録商標)Advance(登録商標)Soy Formula with Iron、Isomil(登録商標)Advance(登録商標)20 Soy Formula With Iron Ready To Feed、Similac(登録商標)Infant Formula、Similac(登録商標)Advance(登録商標)Infant Formula with Iron、Similac(登録商標)NeoSure(登録商標)Advance(登録商標)Infant Formula With Iron、Similac Natural Care Advance Low−Iron Human Milk Fortifier Ready To Useが含まれるが、これらに限定されない。本発明の各種PUFAを本明細書中に記載されている乳児用調合乳及び当業者に公知の他の乳児用調合乳に代用及び/または添加してもよい。
【0136】
栄養剤:栄養剤の例には、いずれもオハイオ州コロンバスに所在のAbbott Nutritionから市販されているENSURE(登録商標)、ENSURE(登録商標)HIGH PROTEIN、ENSURE PLUS(登録商標)、ENSURE(登録商標)POWDER、ENSURE(登録商標)PUDDING、ENSURE(登録商標)WITH FIBER、Oxepa(商標)Nutritional Productが含まれるが、これらに限定されない。上記し、当業者に公知の各種栄養サプリメントを本発明に従って産生されるPUFAで代用及び/または補充してもよい。
【0137】
医薬組成物
本発明は、本明細書中に記載されている方法に従って明細書中に記載されているΔ9−エロンガーゼ遺伝子を用いて産生される1つ以上の酸及び/または得られる油を含む医薬組成物をも包含する。より具体的には、医薬組成物は、1つ以上の酸及び/または油、並びに標準で公知の非毒性医薬的に許容され得る担体、佐剤または賦形剤、例えばリン酸緩衝食塩水、水、エタノール、ポリオール、植物油、湿潤剤またはエマルジョン(例えば、水/油エマルジョン)を含み得る。組成物は液体または固体のいずれかの形態でもよい。例えば、組成物は錠剤、カプセル剤、摂取可能な液剤または粉末剤、注射剤、或いは局所用軟膏剤またはクリーム剤の形態であり得る。適切な流動性は、例えば分散液の場合には所要の粒度を維持することにより、界面活性剤を使用することにより維持され得る。等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウム等)を配合することが望ましいことがある。組成物は、不活性希釈剤の他に佐剤、例えば湿潤剤、乳化及び懸濁剤、甘味剤、矯香剤及び芳香剤をも含み得る。
【0138】
サスペンジョン剤は、活性化合物に加えて、懸濁化剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、結晶セルロース、アルミニウムメタハイドロオキシド、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの物質の混合物)を含み得る。
【0139】
固体剤形、例えば錠剤及びカプセル剤は当業界で公知の技術を用いて製造され得る。例えば、本発明に従って産生されるPUFAは慣用の錠剤基剤(例えば、ラクトース、スクロース及びトウモロコシ澱粉)を結合剤(例えば、アカシア、トウモロコシ澱粉またはゼラチン)、崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉またはアルギン酸)及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウム)と一緒に用いて錠剤化され得る。これらの賦形剤を抗酸化剤及び当該PUFAと一緒にゼラチンカプセルに入れることによりカプセル剤が製造され得る。抗酸化剤及びPUFA成分は上に挙げたガイドラインの範囲内で適合していなければならない。
【0140】
静脈内投与の場合、本発明に従って産生されるPUFAまたはその誘導体を市販製剤、例えばIntralipids(商標)中に配合してもよい。典型的な正常な成人の血漿の脂肪酸プロフィールは6.64〜9.46%のARA、1.45〜3.11%のDGLA及び0.02〜0.08%のGLAを含む。これらのPUFAまたはその代謝前駆体は患者の脂肪酸プロフィールを正常とするために単独でまたは他のPUFAと一緒に投与され得る。所望により、製剤の個々の成分は1回または複数回使用するためにキットの形態で個別に提供され得る。特定脂肪酸の典型的な用量は1日あたり0.1mg〜20g(最高100g)であり、好ましくは1日あたり10mg〜1、2、5または10gである。
【0141】
本発明の医薬組成物の考えられる投与ルートには例えば経腸(例えば、経口及び直腸)及び非経口が含まれる。例えは、液体製剤は例えば経口または経腸的に投与され得る。加えて、スプレーまたは吸入剤を形成するために均質混合物を水中に完全に分散させ、滅菌条件下で生理学的に許容され得る希釈剤、保存剤、バッファーまたは噴射剤と混合され得る。
【0142】
投与ルートは勿論所望効果に依存する。例えば、荒れた、乾燥したまたは老化した皮膚を治療するために、傷ついたまたは火傷した皮膚を治療するために、または病気または状態により悪影響を受けている皮膚または毛髪を治療するために組成物を使用しようとするならば、組成物は多分局所的に適用され得る。
【0143】
患者に対して投与しようとする組成物の用量は当業者により決定され得、患者の体重、患者の年齢、患者の免疫状態等の各種要因に依存する。
【0144】
剤形に関して、組成物は例えば溶液、分散液、サスペンジョン、エマルジョン、またはその後再構成される滅菌粉末であり得る。
【0145】
本発明は、本明細書中に記載されている医薬及び/または栄養組成物を使用することによる各種障害の治療をも含む。特に、本発明の組成物は血管形成術後の再狭窄を治療するために使用され得る。更に、炎症、関節リウマチ、喘息及び乾せんの症状も本発明の組成物を用いて治療され得る。PUFAがカルシウム代謝に関与し得ることを示す証拠がある。よって、本発明の組成物は多分骨粗しょう症、及び腎臓または尿管結石の治療または予防において利用され得る。
【0146】
加えて、本発明の組成物は癌の治療においても使用され得る。悪性細胞が変化した脂肪酸組成を有していることが判明している。脂肪酸を添加すると、悪性細胞の増殖を遅らせ、細胞死を生起させ、その化学療法剤への感受性を高めることが判明している。更に、本発明の組成は癌に関連する悪疫質を治療するためにも有用であり得る。
【0147】
本発明の組成物は糖尿病を治療するためにも使用され得る(米国特許No.4,826,877及びHorrobinら,Am.J.Clin.Nutr.(1993),Vol.57(Suppl.)732S−737Sを参照されたい)。変化した脂肪酸代謝及び組成が糖尿病動物で立証されている。
【0148】
更に、Δ9−エロンガーゼ酵素を用いて直接または間接的に産生されるPUFAを含む本発明の組成物は湿疹の治療において、血圧の降下において、及び数学の試験の点数の向上においても使用され得る。加えて、本発明の組成物は血小板凝集の抑制、血管拡張の誘導、コレステロールレベルの低下、血管壁平滑筋及び線維組織の増殖の抑制(Brennerら,Adv.Exp.Med.Biol.(1976)Vol.83,p.85−101)、非ステロイド系抗炎症薬の胃腸出血及び他の副作用の減少または予防(米国特許No.4,666,701を参照されたい)、子宮内膜症及び月経前症候群の予防及び治療(米国特許No.4,758,592を参照されたい)、並びにウイルス感染後の筋痛性脳脊髄炎及び慢性疲労の治療(米国特許No.5,116,871を参照されたい)において使用され得る。
【0149】
本発明の組成物の更なる使用はAIDS、多発性硬化症及び炎症性皮膚障害の治療における並びに全身健康状態を維持するための使用を含む。
【0150】
加えて、本発明の組成物は化粧目的で利用され得る。この組成物は、混合物を形成したり、または単一組成物として使用し得るように既存の化粧品組成物に添加され得る。
【0151】
獣医用途
動物はヒトと同じ要求及び状態の多くを経験するので、上記した医薬及び栄養組成物は動物(すなわち、家畜または非家畜)及びヒトと関連させて利用され得ることを注目すべきである。例えば、本発明の油または酸は動物または水産養殖飼料サプリメント、動物飼料代用品、動物ビタミンまたは動物局所軟膏中に利用され得る。
【0152】
本発明は以下の非限定的実施例を用いて説明され得る。
【実施例1】
【0153】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916からのcDNAライブラリー構築及び推定上のΔ9−エロンガーゼ候補を単離するための配列分析
幾つかの海藻類の脂肪酸組成の分析は、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916中にかなりの量のドコサヘキサエン酸(DHA,22:6 n−3)(総脂質の15重量%)が存在することを明らかにした(表1を参照されたい)。加えて、この生物は交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路(図1を参照されたい)の中間体を与え、この経路がこの生物において活性であることを示している。よって、この生物がリノール酸(LA,18:2 n−6)をω6−エイコサジエン酸(ω6−EDA,20:2 n−6)に、またはα−リノレン酸(ALA,18:3 n−3)をω3−エイコサトリエン酸(ω3−ETrA,20:3 n−3)に変換させることができる活性Δ9−エロンガーゼ;及びω6−エイコサジエン酸(ω6−EDA,20:2 n−6)をジホモ−γ−リノレン酸(DGLA,20:3 n−6)に、またはω3−エイコサトリエン酸(ω3−EtrA,20:3 n−3)をω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA,20:4 n−3)に変換させる活性Δ8−デサチュラーゼを含むと予測される(図1を参照されたい)。
【0154】
【表3】
【0155】
この研究の目的は、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916から完全長Δ9−エロンガーゼ遺伝子を単離し、異種宿主サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現により酵素活性を特徴づけることであった。
【0156】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916から完全長遺伝子を単離するために、ミクロ−cDNAライブラリーを生物から単離した全RNAを用いて構築した。このために、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916の細胞ペレットをProvasoli−Guillard−National Center for Marine Phytoplankton(メーン州ウェスト・ブースベイに所在のCCMP−Bigelow Laboratories)から入手し、全RNAをQiagen RNeasy Maxiキット(カリフォルニア州バレンシアに所在のQiagen)を用いて製造業者のプロトコルに従って単離した。簡単に説明すると、凍結細胞ペレットを液体窒素中で乳鉢及び乳棒を用いて粉砕し、RLTバッファー(Qiagen RNeasy Plant Miniキット)中に懸濁し、QiaShredderに通した。RNAをRNeasyマキシカラムを用いて製造業者のプロトコルに従って精製した。
【0157】
ミクロ−cDNAライブラリーは、Agencourt Biosciences(マサチュセッツ州ウォルサムに所在)により50μgのユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来のRNAを用いて特許技術により構築した。Agencourtは、第1鎖中に幾つかの独自の特許ステップを使用して、一般的に使用されている技術に比して最終的に効率を25〜30%増加させる。特許方法中、RNAを内部プライミング事象を減少または排除するように設計した条件を用いてssDNAに逆転写する。このプログラム及び特別のサイクリングプログラムの組合せにより完全長さクローンの数が増加する。第2鎖合成後、cDNAクローンを小さい末端切断型cDNAの優先的クローニングを減らすために1.2kb以上でサイズ選択する。大きいインサートライブラリーの場合、より大きいインサートクローンに対して選択したインサートサイズは>4kbである。サイズ選択後、cDNA末端を磨き、cDNAをレアカッター酵素を用いて消化する。次いで、その部位がcDNAプライミングステップ中にクローンに導入される「レアカッター」制限酵素を使用して、pAGENベクターへの定方向クローニングのためのクローンを作成する。「レアカッター」制限酵素はおそらくcDNAクローン内で20倍切断しにくく、よってクローンに沿ってランダムな間隔で切断するより一般的な制限酵素を利用する他のcDNAライブラリー構築方法に比して多くのより完全長さのクローンが生ずる。その結果はレアカッター制限酵素から生じた5’平滑末端及び3’突出部を有するインサートである。このプロセスのために、定方向クローニングを確実とするために追加のアダプター連結反応は必要でない。このことはクローニングプロセスの全体的効率を向上させる。ベクターは5’アダプターを使用することなく定方向クローニングのために特別に工学操作されており、クローニング中のcDNAの操作の数が減るために形質転換効率が更に高められる。一次cDNAライブラリーが完成した後、独立クローンの数、組換えクローンの%及び平均インサートサイズについて調べた。
【0158】
次いで、クローンをDH10B大腸菌(T1ファージ耐性細菌細胞)に形質転換する。生じたライブラリーの力価は3.2×106cfu/mlであり、1.3kbの平均インサートサイズを有する独立コロニーの数は3.52×107であった。
【0159】
このcDNAライブラリーからの4224クローンを配列決定し、ベクターを切り取った配列をBLASTを用いて分析して、公知のΔ9−エロンガーゼ配列に対して相同性を有する配列を同定した。BLAST分析は、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916 cDNAライブラリーからパブロバ・サリナ(Pavlova salina)(受託番号AAY15135;配列番号1;図4A)、ハブト藻(Isochrysis galbana)(受託番号AF390174;配列番号2:図4B)、ユートレプティエラ属(Eutreptiella sp.)(WO 2007/061845 A2;配列番号3;図4Cを参照されたい)、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)(受託番号CAT16687;配列番号4;図4D)及びユーグレナ・アナベナ(Euglena anabena)(WO 2008/0194685 Al;配列番号5;図4Eを参照されたい)由来の公知のΔ9−エロンガーゼ配列に対して相同性を有する5つの推定上のヒットを明らかにした。
【0160】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916 cDNAライブラリーからのクローンを配列決定して得た‘プレート2_MO7’(配列番号6;図6)と命名した1つのESTクローンは、既に同定されているΔ9−エロンガーゼに対して高い配列相同性を示した。このDNA断片は744bp長であり、その推定アミノ酸配列(配列番号7:図5B)はユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)由来のΔ9−エロンガーゼ(配列番号4)と最高の配列同一性(66%のアミノ酸配列同一性)を示した。プレート2_MO7遺伝子断片は、他のΔ9−エロンガーゼとのアラインメントに基づいて遺伝子の‘ATG’開始部位を含んでいるようであるが、推定上のユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916 Δ9−エロンガーゼの遺伝子の3’末端を含んでいなかった。
【実施例2】
【0161】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来のプレート2 MO7エロンガーゼの3’末端の単離
実施例1からのプレート2 MO7クローン配列をその3’末端を単離するための鋳型として使用した。
【0162】
第1鎖cDNAをSMART(商標)RACEキット(BD Biosciences)を用いて製造業者の指示に従って合成した。3’RACEレディcDNAを合成するために、1.5μgのユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来の全RNA及び1μlの3’CDSプライマー(5’−AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTAC(T)30VN−3’(ここで、N=A、C、GまたはT;V=A、GまたはC(配列番号8))(12μM)をヌクレアーゼ非含有PCRチューブにおいて5μlの全容量で混合し、70℃で2分間インキュベートし、氷上でスナップ冷却した。短時間遠心した後、2μlの5×第1鎖バッファー[250mM トリスHCl(pH−8.3),375mM KCl及び30mm MgCl2]、1μlの0.1M DTT及び1μlの10mM dNTPミックスをチューブに添加した。42℃で2分間インキュベートした後、1μlの逆転写酵素(PowerScript(商標)RT,BD Biosciences)をチューブに添加し、42℃で90分間インキュベートした。第1鎖cDNAを100μlのトリシン−EDTAバッファー[10mM トリシン−KOH(pH8.5),1.0mM EDTA]で希釈し、酵素を72℃で7分間熱不活化した。
【0163】
ミドリムシ属(Euglenoid sp.)エロンガーゼ遺伝子断片(すなわち、プレート2 MO7クローン配列)の3’末端を単離するために、プライマーをプレート2 MO7の部分遺伝子配列からの配列情報に基づいて設計した。一次PCR増幅は鋳型として3’−RACEレディcDNA及び以下のプライマーを用いて実施した:Eug Elo MO−7 FPl(遺伝子特異的プライマー)(5’−AGG CGC TGT GGA TCT TCG TCT TCC−3’)(配列番号9)及びRACEプライマーUniveral Primer Mix A(UPM,BD Biosciences)。
【0164】
長プライマー(0.4μM):5’−CTA ATA CGA CTC ACT ATA GCA AGC AGT GGT ATC AAC GCA GAG T−3’(配列番号10);及び
短プライマー(2μM):5’−CTA ATA CGA CTC ACT ATA GGG C−3’(配列番号11)。
【0165】
増幅は、0.25μl(100mM)の遺伝子特異的プライマー、0.25μl(100mM)のUPMプライマー、2.5μlのcDNA鋳型、2.5μlの2.5mM dNTP、5μlの5×PCRバッファー(Advantage(登録商標)GC IIポリメラーゼバッファー(Clontcch),200mM トリシン−KOH(pH9.2),75mM 酢酸カリウム,17.5mM 酢酸マグネシウム,25% DMSO,18.75μg/ml BSA,0.005% Tween 20,0.005% Nonidet−P40)、2.5μlのGC Melt Reagent(Clontech)、0.5μlの5×Advantage(登録商標)GC 1 ポリマラーゼ(Clontech)及び11.5μLのMilli−Q(登録商標)水(Millipore)を用いて25μLの最終反応容量で実施した。サンプルをまず94℃で3分間、その後94℃で30秒間、64℃で30秒間及び68℃で1.3分間のサイクルを2回;94℃で30秒間、62℃で30秒間及び68℃で1.30分間のサイクルを3回;94℃で30秒間、60℃で30秒間及び68℃で1.30分間のサイクルを4回;及び94℃で30秒間、58℃で30秒間及び68℃で1.30分間のサイクルを26回実施して変性した。68℃で10分間の最終延長サイクルを実施した後、反応を4℃で停止させた。
【0166】
PCR産物の分析は、多分細胞中のエロンガーゼ遺伝子転写物のレベルが低いために非常に弱いバンドを示した。すなわち、ネストPCR反応を1μlの上記一次PCR反応由来の産物を鋳型として用いて実施した。ネストPCRのために使用したプライマーはEug Elo MO−7 FP2(遺伝子特異的プライマー):5−TCC CCG TGC CGA AGT CGT TCA TCA CC−3’(配列番号12)及びUniveral Primer Mix A(UPM)プライマー(配列番号10及び11)であった。PCR反応条件及びサイクリングパラメーターは一次PCR反応のために使用したものと同一であった。
【0167】
ネストPCRにより得た548bpアンプリコン(配列番号13;図6A)をQiagenゲル精製キット(Qiagen)を用いてゲル精製し、pTZ57R/Tベクター(T/Aクローニングベクター,MBI Fermentas)にクローン化し、配列決定した。配列決定は、この断片(配列番号13)がプレート2_MO7エロンガーゼ断片の完全3’末端を‘TAG’終止コドン及びポリA尾部を含有する下流領域と一緒に含んでいたことを明らかにした。この断片の予測アミノ酸配列(配列番号14及び30〜32)を図6Bに示す。最初の星印はプレート2 MO7コード化タンパク質の終止部位を指す。
【実施例3】
【0168】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来の完全長プレート2 MO7エロンガーゼ遺伝子の単離
プレート2 MO7エロンガーゼの完全長遺伝子配列を、鋳型としてユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.cDNAライブラリー、及び実施例1及び実施例2で得た配列情報に基づいてプレート2 MO7遺伝子の5’及び3’末端を含むように設計したプライマーを用いてPCR増幅により単離した。加えて、遺伝子の酵母発現ベクターpYX242のBamHI/HindIII部位へのクローニングを助けるためにBamHI/HindIII部位をプライマー(下線)に取込んだ。以下のプライマー配列を使用した:
MO7−Elo順方向プライマー:5’−CAC CAT GGA TCC ATG GAC GTC GCG ACT ACG CTG G−3’(配列番号15)、及び
MO7−Elo逆方向プライマー:5’−ACG CGT AAG CTT CTA GTC CAC TTT CTT CTC ATC CTT C−3’(配列番号16)。
【0169】
増幅は、0.5μl(100μM)の各プライマー、鋳型として1μl(〜110ng)のユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.cDNAライブラリープラスミドプール、5μlの2.5mM dNTP、10μlの5×Phusion GCバッファー(Finnzymes)、5μLのDMSO、0.5μL(1U)のPhusionポリメラーゼ(Finnzymes)及び27.5μLのMilli−Q(登録商標)水(Millipore)を用いて実施した。サンプルをまず94℃で3分間、その後98℃で8秒間、60℃で12秒間及び72℃で45秒間のサイクルを2回;及び98℃で8秒間、58℃で12秒間及び72℃で45秒間のサイクルを28回実施して変性した。72℃で3分間の最終延長サイクルを実施した後、反応を4℃で停止させた。
【0170】
PCRにより〜789bp産物が生じ、この産物をpYX242ベクターのBamHI/HindIII部位にクローン化し、大腸菌DH5α(Invitrogen)に形質転換した。こうして得たプラスミドDNAを配列決定して、‘Eug−MO7−ELO#10’(配列番号17:図7A)と命名した789bp遺伝子の完全長遺伝子配列を得た。配列番号17はブダペスト条約の条件下で2009年7月10日に(20110−2209)バージニア州マナッサスに所在のUniversity Boulevard,アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに寄託し、受託番号ATCC が付与された。この遺伝子は、262アミノ酸の予測長さ(配列番号18;図7B)を有するユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来の推定上のΔ9−エロンガーゼをコードすると考えられた。この遺伝子をその酵素活性を特徴づけるための発現研究のために使用した。
【0171】
配列決定中に、Eug−MO7−ELO#10クローンに加えて完全長遺伝子の特定領域に幾つかの配列変化を示した追加バリアントクローンが同定された。これらの配列変化は多分PCR増幅のプロセス中に生じた。1つの前記バリアントEug−MO7−ELO#14の配列分析は、オリジナルEug−MO7−ELO#10クローンと比較したとき多数のヌクレオチド及び対応アミノ酸変化を明らかにした(表2、並びに図2A及び2Bを参照されたい)。Eug−MO7−ELO#14のヌクレオチド(配列番号19)及び予測アミノ酸配列(配列番号20)をそれぞれ図8A及び8Bに示す。オリジナルEug−MO7−ELO#10クローン及びバリアントEug−MO7−ELO#14の両方を発現分析のために使用した。
【0172】
【表4】
【0173】
BLAST‘nr’データベース中に含まれている配列に対する類似性についてクエリーとしてEug−MO7−ELO#10を用いるBlast調査は、Eug−MO7−ELO#10によりコードされる予測アミノ酸配列(配列番号18)がハブト藻(Isochrysis galbana)Δ9−エロンガーゼ(配列番号2)と最高のアミノ酸配列同一性(36%配列同一性)を示したことを明らかにした。配列番号18とユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)由来の公知Δ9−エロンガーゼ(受託番号CAT 16687;配列番号4)のペアワイズ・アラインメントは非常により高いアミノ酸配列同一性(66%同一性)を明らかにした。ここでは、ペアワイズ・アラインメントのためにVector NTI(登録商標)AlignXプログラムのデフォルトパラメーターを使用した。パブロバ・サリナ(Pavlova salina)Δ9−エロンガーゼ(配列番号1)とのペアワイズ・アラインメントはたった〜15%の配列同一性を明らかにした。
【0174】
デサチュラーゼとは異なり、エロンガーゼ酵素は高度に保存されたモチーフを非常に少数しか示さない。これらの酵素は、膜貫通領域であると予測される疎水性ストレッチを4〜5個含む非常に疎水性のタンパク質である。加えて、高度に保存されたヒスチジンボックス(HXXHH)(配列番号28)が第4膜貫通領域に埋め込まれて存在し、酵素活性のために必須である(Leonardら,“Elongation of long−chain fatty acids”,Prog.Lipid Res.,(2004)Vol.43,p.36−54を参照されたい)。幾つかのエロンガーゼ中に、‘HXXHH’モチーフ(配列番号28)の第1ヒスチジン残基がグルタミン(Q)と置換されて、保存モチーフとして‘QXXHH’(配列番号29)が生じる。このQXXHH(配列番号29)モチーフはEug−MO7−ELO#10を含めたΔ9−エロンガーゼの多くに存在している。加えて、Eug−MO7−ELO#10エロンガーゼは、Leonardら,“Elongation of long−chain fatty acids”,Prog.Lipid Res.,(2004)Vol.43,p.36−54に記載されているように現在まで多くのエロンガーゼ中に存在している他のインバリアント残基を含んでいる。
【0175】
図3A及び3Bは、Eug−MO7−ELO#10エロンガーゼ由来のアミノ酸配列と異なる基質特異性を有している他の公知エロンガーゼのアラインメントを示す。これらには、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracialis)由来のΔ9−エロンガーゼ(配列番号4)及びハブト藻(Isochrysis galbana)由来のΔ9−エロンガーゼ(配列番号2)に加えて、マウスElol4エロンガーゼ(受託番号AAG47667;配列番号21;図9A)、ヒトELOVL2エロンガーゼ(受託番号#NP 060240;配列番号22:図9B)及びシー・エレガンス(C.elegans)エロンガーゼ(受託番号AF244356;配列番号23)が含まれる。アラインメント中のインバリアントアミノ酸に陰影が付けられている。これらのインバリアント残基は種間の高度の保存のためにこれらの延長酵素の機能性に対する重要な決定要素であると推定される。アラインメントは修飾ClustalWアルゴリズムを用いるVector NTIソフトウェアを用いて実施した。
【実施例4】
【0176】
遺伝子Eug−MO7−ELO#10によりコードされる推定上のΔ9−エロンガーゼの酵素活性の特徴づけ
推定上のΔ9−エロンガーゼをコードするEug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14バリアントをそれぞれ酵母発現ベクターpYX242(Novagen)のBamHI/HindIII部位にクローン化した。これらの構築物をコンピテントなサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株SC334細胞に形質転換させた。酵母形質転換は製造業者が特定している条件に従ってアルカリ−カチオン酵母形質転換キット(QBioGene)を用いて実施した。形質転換体をロイシンを欠く培地(DOB[−Leu])に対するロイシン栄養要求性に関して選択した。
【0177】
Eug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14によりコードされる酵素のエロンガーゼ活性を特徴づけるために、形質転換体を50μMの特定脂肪酸基質(以下にリストする)の存在下で増殖させ、特定産物への変換を基質特異性を調べるために使用した。
【0178】
Δ9−エロンガーゼ活性について:
リノール酸(18:2 n−6)→エイコサジエン酸(EDA,20:2 n−6)
α−リノレン酸(18:3 n−3)→エイコサトリエン酸(ETrA,20:3 n−3)。
【0179】
C18−エロンガーゼ活性について:
γ−リノレン酸(GLA,18:3 n−6)→ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA,20:3 n−6)
ステアリドン酸(SDA,18:4 n−3)→ω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA,20:4 n−3)。
【0180】
C20−エロンガーゼ活性について:
アラキドン酸(ARA,20:4 n−6)→アドレン酸(ω6−ADA,22:4 n−6)
エイコサペンタエン酸(EPA,20:5 n−3)→ω3−ドコサペンタエン酸(ω3−DPA,22:5 n−3)。
【0181】
負の対照株はサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)334において発現させたpYX242ベクターから構成した。
【0182】
選択DOB[−Leu]培地から単離した形質転換コロニーをYPD液体ブロス(10ml)中で激しく攪拌しながら30℃で一晩増殖させた。次いで、この一晩培養物(5ml)を50μM(最終濃度)の(特定されている通りの)脂肪酸基質を含有する選択培地(DOB[−Leu])(45ml)に添加し、これらを24℃で48〜72時間(指定されている通り)激しく攪拌した(250rpm)。
【0183】
全脂質抽出のために、酵母細胞を2000rpmで15分間スピンダウンし、水(0.5ml)を添加し、サンプルをかきまぜた後、やさしく回転させながらメタノール(10ml)を添加した。次いで、クロロホルム(20ml)を添加し、サンプルを高温で1分間かきまぜた後、室温で2時間放置した。次いで、サンプルに食塩水(6ml)を添加した後、2200rpmで10分間遠心した。上のクロロホルム層を清潔な乾いている30ml容量のバイアルに移し、クロロホルムを窒素流下40℃で蒸発乾固させた。溶媒を完全に蒸発させたら、クロロホルム(2ml)を各バイアルに添加し、サンプルを誘導体化した。
【0184】
脂質の脂肪酸メチルエステル(FAME)への誘導体化のために、各チューブに内部標準(17.216μg/100μl)トリヘプタデカノイン(100μl)を加えた。クロロホルムを窒素下40℃で蒸発乾固させ、14% メタノール中の三フッ化ホウ素(2ml)を添加した後、トルエン(2滴)(〜50μl)を添加した。各バイアルに窒素をフラッシュし、95℃で15分間加熱した。バイアルを冷却した後、食塩水(2ml)を添加し、脂質を1分間激しくかきまぜることによりヘキサン(4ml)で抽出した。ヘキサン抽出物を20ml容量の清潔な乾いているスクリューキャップチューブに移し、di−H2O(5ml)を添加し、サンプルをかきまぜ、1500rpmで4分間遠心した。次いで、洗浄したヘキサンを20ml容量の試薬チューブに移した。ヘキサンを蒸発乾固させ、各サンプルを新鮮なヘキサン(0.5ml)で再構成した。再構成した最終ヘキサンをかきまぜて、脂質を分散させた。次いで、全サンプルをGCオートサンプラーバイアルに充填し、分析のために4μlを注入した。GCをNuChek Std.461で較正した。
【0185】
基質の産物への変換%を式を用いて計算した。
【0186】
【数1】
【0187】
表3は、添加した基質の変換%に基づくEug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14コード化タンパク質の酵素活性を表す。Eug−MO7−ELO#10コード化タンパク質は、LA(18:2 n−6)の10.5%をEDA(20:2 n−6)に変換し、ALA(18:3 n−3)の23.2%をETrA(20:3 n−3)に変換した。このことは、Eug−MO7−ELO#10遺伝子がn−6及びn−3脂肪酸基質の両方を認識し得るΔ9−エロンガーゼをコードすることを示した。バリアントクローンEug−MO7−ELO#14コード化タンパク質もΔ9−エロンガーゼ活性を示し、LA(18:2 n−6)の7.84%をEDA(20:2 n−6)に変換し、ALA(18:3 n−3)の11.15%をETrA(20:3 n−3)に変換した。しかしながら、この活性はオリジナルEug−MO7−ELO#10コード化タンパク質の活性よりも低かった。このことは、Eug−MO7−ELO#l4とEug−MO7−ELO#10間の異なる残基がこの酵素のΔ9−延長活性の重要な決定因子であることを示している。
【0188】
非常に低いバックグラウンド(基質の非特異的変換)活性がベクターのみの対照で検出された(表3を参照されたい)。Eug−MO7−ELO#10及びEug−MO7−ELO#14コード化酵素のいずれもが試験した他のPUFA基質に対して活性を持っていなかった(表4を参照されたい)。このことから、この酵素は交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路(図1を参照されたい)に関与する基質に対して特異的であることを示している。
【0189】
【表5】
【0190】
【表6】
【実施例5】
【0191】
Δ9−エロンガーゼ‘Eug−MO7−ELO#10’の植物種子における発現
Eug−MO7−ELO#10エロンガーゼのコード配列を、対応する遺伝子を含むプラスミドから以下のセンス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドプライマー(付加した制限酵素部位に下線を付した)を用いてPCRにより増幅させた:
【0192】
【化1】
【0193】
PCR反応は高忠実度Phusionポリメラーゼ(New England Biolabs)を用いて実施した。PCR増幅遺伝子を制限酵素EcoRI及びXhoIで消化し、生じた産物をその5’末端でダイズ由来の種子特異的グリシニン−1プロモーターに、その3’末端でバイナリーベクターp0308−DsRed中のグリシニン−1 3’非翻訳領域に連結して、プラスミド‘pEugELO’を作製した。グリシニン−1調節要素は既にNielsenら,“Characterisation of the glycinin gene family in soybean”,Plant Cell(1989)Vol.1,p.313−328に記載されている。このベクターは、形質転換種子の蛍光による選択のためにキャッサバモザイクウイルスプロモーターの制御下でDs−Redトランスジーン及び細菌選択のためにカナマイシン耐性マーカーをも含んでいる。これらの実験の対照として、ハブト藻(Isochrysis galbana)Δ9−エロンガーゼ遺伝子(配列番号2)をp0308−Ds−Red中にグリシニン−1プロモーターの制御下でEcoRI/XhoI断片としてクローン化して、プラスミド‘pIsoD9’を作製した。
【0194】
pEugELO及びpIsoD9をアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株C58 MP90にエレクトロポレーションにより導入した。次いで、カナマイシン耐性アグロバクテリウムをフローラル・ディップ方法(Cloughら、“Floral dip:a simplified method for Agrobacterium−mediated transformation of Arabidopsis thaliana”,Plant J.,(1998)Vol.16,p.735−743)によりシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)生態型Col−0を形質転換するために使用した。アグロバクテリウムフローラル・ディップ後、成熟及びドライダウンに達するまで植物を22℃で16時間日長で維持した。これらの実験のために、種子油中にα−リノレン酸及び非常に長鎖の脂肪酸(≧C20)を低レベルでしか含有しないがリノール酸を高レベルで含有しているシロイヌナズナのfad3/fae1変異体を使用した(Cahoonら,“Conjugated fatty acis accumulate to high levels in phospholipids of metabolically engineered soybean and Arabidopsis seeds”,Phytochemistry(2006)Vol.67,p.1166−1176)。この遺伝的背景はサフラワー及び低リノレン酸ダイズのような作物由来の種子油の脂肪酸プロフィールに近似している。アグロバクテリウムをディップしたシロイヌナズナ植物から得たトランスジェニック種子をPidkowichら,“Modulating seed beta−ketoacyl−acyl carrier proteins synthase II level converts the composition of a temperate seed oil to that of a palm−like tropical oil”,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2007)Vol.104,p.4742−4747により記載されている方法を用いてDsRedマーカータンパク質の蛍光により同定した。単トランスジェニック及び非トランスジェニック対照種子をCahoon and Shanklin,“Substrate−dependent mutant complementation to select fatty acid desaturase variants for metabolic engineering of plant seed oils”,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)Vol.97.p.12350−12355に記載されているように水酸化トリメチルスルホニウム(TMSH)試薬を用いることによりトリアシルグリセロールを含めた成分脂質の直接エステル交換反応にかけた。単種子から得た脂肪酸メチルエステルを、INNOWaxカラム(長さ30m×内径0.25mm)を取り付けたAgilent 6890ガスクロマトグラフを用いることにより、7℃/分で185℃(1分保持)から230℃(2分間保持)にプログラムするオーブン温度でフレームイオン化検出を含むガスクロマトグラフィーにより分析した。成分脂肪酸メチルエステルは、野生型シロイヌナズナ(Arabiodopsis thaliana)Col−0の種子由来の公知の身元を有する脂肪酸メチルエステルに対する保持時間に基づいて、保持時間を標準脂肪酸メチルエステルの保持時間と比較することにより同定した。
【0195】
pEugELO構築物で形質転換した植物からの6つの独立した形質転換事象由来の単Tl種子の脂肪酸組成を表5に示す。plsoD9構築物、対照Δ9−エロンガーゼで形質転換した植物由来の独立した事象に相当する単Tl種子の脂肪酸組成も示す(表6を参照されたい)。非形質転換fad3/fae1種子(表7を参照されたい)に対するpEugELO形質転換由来のトランスジェニック種子の脂肪酸組成の大きな変化は高レベルのEDA(20:2 n−6,Δ11,14)の存在であった。これらの種子中で、20:2の相対量は全脂肪酸の40%〜49%(w/w)の範囲であった。比較することにより、20:2は非トランスジェニックfad3/fae1種子の全脂肪酸の>0.5%を占めた(表7を参照されたい)。これは、LA(18:2 n−6,Δ9,12)の相対量を非トランスジェニックfad3/fae1種子中の約50%(表7を参照されたい)からpEugELO中の14%くらいまで同時に減らすことによりなされた。このことは、Eug−MO7−ELO#10エロンガーゼにより与えられる20:2合成のための主要基質として役立つ18:2と一致している。エイコサエン酸(20:1,Δ11)及びエイコサン酸(20:0)も非トランスジェニックfad3/fae1種子に比してpEugELO−形質転換種子中で高かったが、これらの脂肪酸の各々はトランスジェニック種子中の全脂肪酸の<3%を構成した。これらの所見は、Eug−MO7−ELO#10エロンガーゼがLA(18:2 n−6)のようなC18PUFAに対して植物において基質優先性を有し、LA(18:2 n−6)に富む種子中での20:2の産生のための有効な酵素であることを示している。比較のために、ハブト藻(Isochrysis galbana)Δ9−ELO(pIsoD9)を発現するように工学操作した種子は20:2を全脂肪酸の30〜40%の量まで、20:0及び20:1の各々を全脂肪酸の<3%の量まで蓄積した(表6を参照されたい)。
【0196】
【表7】
【0197】
【表8】
【0198】
【表9】
【実施例6】
【0199】
Δ9−エロンガーゼ‘Eug−MO7−ELO#10’とΔ8−デサチュラーゼの共発現
ARA産生をもたらす交互Δ8−デサチュラーゼ/Δ9−エロンガーゼ経路を再構築するためにEug−MO7−ELO#10をΔ8−デサチュラーゼと一緒に共発現させることが可能である。加えて、油糧種子植物や油性酵母のような異種宿主において3つの遺伝子、すなわちΔ9−エロンガーゼ‘Εug−MO7−ELO#10’、Δ8−デサチュラーゼ及びΔ5−デサチュラーゼを共発現させて、前記異種宿主におけるARA産生をもたらすARA生合成経路を再構築することが可能である。
【0200】
上記にてらして、本発明の幾つかの目的が達成され、他の有利な効果が得られることが分かるであろう。
【0201】
本発明の範囲を逸脱することなく上記事項に各種変更を加え得るので、先の記載に含まれるすべての事項は例示として、狭い意味でなく解釈されると意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離ヌクレオチド配列を含む、またはそれに対して相補的な単離核酸またはその断片であって、前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号18及び配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも68%の配列同一性を有する、前記単離核酸またはその断片。
【請求項2】
配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含む、またはそれに対して相補的な、単離ヌクレオチド配列またはその断片。
【請求項3】
ポリ不飽和脂肪酸を基質として利用する、機能的に活性なエロンガーゼをコードする請求項1または2に記載の単離ヌクレオチド配列。
【請求項4】
ミドリムシ属(Euglenoid sp.)由来である、請求項1または2に記載の単離ヌクレオチド配列。
【請求項5】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来である、請求項4に記載の単離ヌクレオチド配列。
【請求項6】
請求項1または2に記載の単離ヌクレオチド配列によりコードされる、精製ポリペプチド。
【請求項7】
炭素9位に不飽和を含むポリ不飽和脂肪酸を延長させ、且つ配列番号18及び配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも68%のアミノ酸同一性を有する、精製ポリペプチド。
【請求項8】
調節配列に機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターであって、前記ヌクレオチド配列が、配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含む、またはそれに対して相補的である、前記発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項10】
真核細胞及び原核細胞からなる群から選択される、請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞及び真菌細胞からなる群から選択される、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
ダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来である、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
請求項8に記載の発現ベクターを含む、植物細胞、植物種子、植物または植物組織であって、前記発現ベクターのヌクレオチド配列を発現させると、前記植物細胞、植物種子、植物または植物組織により、少なくとも1つのポリ不飽和脂肪酸が産生される、前記植物細胞、植物種子、植物または植物組織。
【請求項14】
ポリ不飽和脂肪酸が、ω6−エイコサジエン酸(ω6−EDA)、ω3−エイコサトリエン酸(ω3−ETrA)及びその組合せからなる群から選択される、請求項13に記載の植物細胞、植物種子、植物または植物組織。
【請求項15】
a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含む、またはそれに対して相補的な、ヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)ii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)単離ヌクレオチド配列を含む、発現ベクターを構築するステップ;及び
c)Δ9−エロンガーゼの産生のために十分な時間及び条件下で発現ベクターを宿主細胞に導入するステップ;
を含む、Δ9−エロンガーゼの産生方法。
【請求項16】
宿主細胞が、真核細胞及び原核細胞からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
真核細胞が、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞及び真菌細胞からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
植物細胞が、ダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含む、またはそれに対して相補的な、ヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)ii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;
c)Δ9−エロンガーゼの発現のために十分な時間及び条件下で発現ベクターを宿主細胞に導入するステップ;及び
d)基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換させるため、発現させたΔ9−エロンガーゼを基質ポリ不飽和脂肪酸に曝すステップ;
を含む、ポリ不飽和脂肪酸の産生方法。
【請求項20】
基質ポリ不飽和脂肪酸が、リノール酸(LA)であり、第1産物ポリ不飽和脂肪酸が、ω6−エイコサジエン酸(ω6−EDA)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
基質ポリ不飽和脂肪酸が、α−リノレン酸(ALA)であり、第1産物ポリ不飽和脂肪酸が、ω3−エイコサトリエン酸(ω3−ETrA)である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
第1産物ポリ不飽和脂肪酸を、第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸に変換させるために、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を、少なくとも1つのデサチュラーゼ、少なくとも1つの追加エロンガーゼまたはその組合せに曝すステップを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸が、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)、ω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA)、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びその組合せからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含む、またはそれに対して相補的な、ヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)ii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;
c)i)発現ベクター及びii)Δ8−デサチュラーゼをコードし、且つ少なくとも1つの調節配列に機能し得る形で連結された単離ヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの追加組換えDNA構築物を、宿主細胞にΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼの発現に十分な時間及び条件下で導入するステップ;及び
d)リノール酸(LA)、α−リノレン酸(ALA)及びその組合せからなる群から選択される基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換させるため、発現させたΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼを、前記基質ポリ不飽和脂肪酸に曝すステップ;
を含む、宿主細胞におけるポリ不飽和脂肪酸の産生方法。
【請求項25】
第1産物ポリ不飽和脂肪酸が、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)、ω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA)及びその組合せからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1産物ポリ不飽和脂肪酸を、第2またはその次のポリ不飽和脂肪酸に変換させるために、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つの追加デサチュラーゼまたは少なくとも1つの追加エロンガーゼに曝すステップを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
第2またはその次のポリ不飽和脂肪酸が、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びその組合せからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
宿主細胞が、原核細胞及び真核細胞からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
真核細胞が、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞及び真菌細胞からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
植物細胞が、ダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
宿主細胞にii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)Δ5−デサチュラーゼをコードする単離ヌクレオチド配列を更に含む、組換えDNA構築物を導入することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
植物細胞を、請求項2に記載の少なくとも1つの単離ヌクレオチド配列またはその断片で形質転換し、形質転換した植物細胞からトランスジェニック植物を再生させることを含む、トランスジェニック植物の作成方法。
【請求項33】
植物細胞が、ダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法により作成したトランスジェニック植物から得た、トランスジェニック種子。
【請求項35】
請求項8に記載の発現ベクターを含む、トランスジェニック種子。
【請求項1】
エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離ヌクレオチド配列を含む、またはそれに対して相補的な単離核酸またはその断片であって、前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号18及び配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも68%の配列同一性を有する、前記単離核酸またはその断片。
【請求項2】
配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含む、またはそれに対して相補的な、単離ヌクレオチド配列またはその断片。
【請求項3】
ポリ不飽和脂肪酸を基質として利用する、機能的に活性なエロンガーゼをコードする請求項1または2に記載の単離ヌクレオチド配列。
【請求項4】
ミドリムシ属(Euglenoid sp.)由来である、請求項1または2に記載の単離ヌクレオチド配列。
【請求項5】
ユーグレナ・デセス(Euglena deses)Ehr.CCMP 2916由来である、請求項4に記載の単離ヌクレオチド配列。
【請求項6】
請求項1または2に記載の単離ヌクレオチド配列によりコードされる、精製ポリペプチド。
【請求項7】
炭素9位に不飽和を含むポリ不飽和脂肪酸を延長させ、且つ配列番号18及び配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも68%のアミノ酸同一性を有する、精製ポリペプチド。
【請求項8】
調節配列に機能し得る形で連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターであって、前記ヌクレオチド配列が、配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含む、またはそれに対して相補的である、前記発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項10】
真核細胞及び原核細胞からなる群から選択される、請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞及び真菌細胞からなる群から選択される、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
ダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来である、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
請求項8に記載の発現ベクターを含む、植物細胞、植物種子、植物または植物組織であって、前記発現ベクターのヌクレオチド配列を発現させると、前記植物細胞、植物種子、植物または植物組織により、少なくとも1つのポリ不飽和脂肪酸が産生される、前記植物細胞、植物種子、植物または植物組織。
【請求項14】
ポリ不飽和脂肪酸が、ω6−エイコサジエン酸(ω6−EDA)、ω3−エイコサトリエン酸(ω3−ETrA)及びその組合せからなる群から選択される、請求項13に記載の植物細胞、植物種子、植物または植物組織。
【請求項15】
a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含む、またはそれに対して相補的な、ヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)ii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)単離ヌクレオチド配列を含む、発現ベクターを構築するステップ;及び
c)Δ9−エロンガーゼの産生のために十分な時間及び条件下で発現ベクターを宿主細胞に導入するステップ;
を含む、Δ9−エロンガーゼの産生方法。
【請求項16】
宿主細胞が、真核細胞及び原核細胞からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
真核細胞が、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞及び真菌細胞からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
植物細胞が、ダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含む、またはそれに対して相補的な、ヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)ii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;
c)Δ9−エロンガーゼの発現のために十分な時間及び条件下で発現ベクターを宿主細胞に導入するステップ;及び
d)基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換させるため、発現させたΔ9−エロンガーゼを基質ポリ不飽和脂肪酸に曝すステップ;
を含む、ポリ不飽和脂肪酸の産生方法。
【請求項20】
基質ポリ不飽和脂肪酸が、リノール酸(LA)であり、第1産物ポリ不飽和脂肪酸が、ω6−エイコサジエン酸(ω6−EDA)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
基質ポリ不飽和脂肪酸が、α−リノレン酸(ALA)であり、第1産物ポリ不飽和脂肪酸が、ω3−エイコサトリエン酸(ω3−ETrA)である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
第1産物ポリ不飽和脂肪酸を、第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸に変換させるために、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を、少なくとも1つのデサチュラーゼ、少なくとも1つの追加エロンガーゼまたはその組合せに曝すステップを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
第2またはその次の産物ポリ不飽和脂肪酸が、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)、ω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA)、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びその組合せからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
a)配列番号17及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも68%を含む、またはそれに対して相補的な、ヌクレオチド配列を単離するステップ;
b)ii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)単離ヌクレオチド配列を含む発現ベクターを構築するステップ;
c)i)発現ベクター及びii)Δ8−デサチュラーゼをコードし、且つ少なくとも1つの調節配列に機能し得る形で連結された単離ヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの追加組換えDNA構築物を、宿主細胞にΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼの発現に十分な時間及び条件下で導入するステップ;及び
d)リノール酸(LA)、α−リノレン酸(ALA)及びその組合せからなる群から選択される基質ポリ不飽和脂肪酸を第1産物ポリ不飽和脂肪酸に変換させるため、発現させたΔ9−エロンガーゼ及びΔ8−デサチュラーゼを、前記基質ポリ不飽和脂肪酸に曝すステップ;
を含む、宿主細胞におけるポリ不飽和脂肪酸の産生方法。
【請求項25】
第1産物ポリ不飽和脂肪酸が、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)、ω3−エイコサテトラエン酸(ω3−ETA)及びその組合せからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1産物ポリ不飽和脂肪酸を、第2またはその次のポリ不飽和脂肪酸に変換させるために、第1産物ポリ不飽和脂肪酸を少なくとも1つの追加デサチュラーゼまたは少なくとも1つの追加エロンガーゼに曝すステップを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
第2またはその次のポリ不飽和脂肪酸が、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びその組合せからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
宿主細胞が、原核細胞及び真核細胞からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
真核細胞が、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞及び真菌細胞からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
植物細胞が、ダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
宿主細胞にii)調節配列に機能し得る形で連結されたi)Δ5−デサチュラーゼをコードする単離ヌクレオチド配列を更に含む、組換えDNA構築物を導入することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
植物細胞を、請求項2に記載の少なくとも1つの単離ヌクレオチド配列またはその断片で形質転換し、形質転換した植物細胞からトランスジェニック植物を再生させることを含む、トランスジェニック植物の作成方法。
【請求項33】
植物細胞が、ダイズ、アブラナ科植物、サフラワー、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ及びアマからなる群から選択される油糧種子植物由来である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法により作成したトランスジェニック植物から得た、トランスジェニック種子。
【請求項35】
請求項8に記載の発現ベクターを含む、トランスジェニック種子。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【公表番号】特表2012−533303(P2012−533303A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520732(P2012−520732)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/041893
【国際公開番号】WO2011/008803
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/041893
【国際公開番号】WO2011/008803
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】
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