説明

ポリ乳酸の製造方法

【課題】本発明の目的は、高い融点を有するポリ乳酸の製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、(A)主としてL―乳酸単位からなり、重量平均分子量が5万〜50万で、融点が140〜180℃のポリマーAと、
(B)主としてD−乳酸単位からなり、重量平均分子量が5万〜50万で、融点が140〜180℃のポリマーBとを、
重量比(A/B)が10/90〜90/10の範囲で共存させ、240〜300℃で熱処理しポリ乳酸を製造する方法であって、ポリマーAおよびポリマーBが以下の条件、
Mb/Ms=1.1〜5.2
(但し、MbはポリマーAおよびポリマーBの内、重量平均分子量が大きいポリマーの重量平均分子量、MsはポリマーAおよびポリマーBの内、重量平均分子量が小さいポリマーの重量平均分子量を示す。)
を満足することを特徴とするポリ乳酸の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ乳酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油依存型社会の発展により、地球温暖化、異常気象など地球環境に対する影響が懸念されている。このような背景の下、ポリカプロラクトンやポリ乳酸のような植物由来樹脂が注目を集めている。なかでもポリ乳酸は、比較的安価であり、融点も170℃程度あり、溶融成形可能である点で注目を集めている。しかし、実用上、融点の向上が求められている。
一方で、主としてL−乳酸単位からなるポリマー(PLLA)と、主としてD−乳酸単位からなるポリマー(PDLA)を溶液あるいは溶融状態で混合することにより、ステレオコンプレックスポリ乳酸が形成されることが知られている(特許文献1および非特許文献1参照)。このステレオコンプレックスポリ乳酸はPLLAやPDLAに比べて、高融点、高結晶性を示すことが知られている。
【0003】
しかし、通常、ステレオコンプレックスポリ乳酸は溶液法で製造され、溶液状態での長時間混合、溶剤を揮発させる工程が必要となり、製造工程が煩雑になるばかりでなく、コストアップにつながるという問題があった。
【特許文献1】特開昭63−241024号公報
【非特許文献1】Macromolecules, 24, 5651 (1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高い融点を有するポリ乳酸を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ステレオコンプレックス結晶を含有し、高い融点を有するポリ乳酸の製造方法について鋭意検討した。その結果、主としてL―乳酸単位からなるポリマーと、主としてD−乳酸単位からなるポリマーとを、溶融混合しポリ乳酸を製造する際に、分子量の相違する二種のポリマーを用いると高融点のポリ乳酸が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち本発明は、(A)主としてL―乳酸単位からなり、重量平均分子量が5万〜50万で、融点が160〜180℃のポリマーAと、
(B)主としてD−乳酸単位からなり、重量平均分子量が5万〜50万で、融点が160〜180℃のポリマーBとを、
重量比(A/B)が10/90〜90/10の範囲で共存させ、240〜300℃で熱処理しポリ乳酸を製造する方法であって、ポリマーAおよびポリマーBが以下の条件、
Mb/Ms=1.1〜5.2
(但し、MbはポリマーAおよびポリマーBの内、重量平均分子量が大きいポリマーの重量平均分子量、MsはポリマーAおよびポリマーBの内、重量平均分子量が小さいポリマーの重量平均分子量を示す。)
を満足することを特徴とするポリ乳酸の製造方法である。また本発明は、該方法により得られたポリ乳酸を包含する。さらに、該ポリ乳酸からなる成形品を包含する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高融点のポリ乳酸を、溶剤を用いることなく容易に製造することができる。即ち本発明は、所定の分子量比(Mb/Ms)のポリマーを用いるので、高温での融解ピークの割合の大きい耐熱性に優れたポリ乳酸を製造することができる。分子量差を所定の範囲にすることで、ホモ結晶化(低融点側)を抑制し、ステレオコンプレックス結晶(高融点)を優先的に生成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリ乳酸の製造方法>
(ポリマーA、ポリマーB)
ポリマーAまたはポリマーBは、下記式で表されるL−乳酸単位またはD−乳酸単位から主としてなる。
【0009】
【化1】

【0010】
ポリマーAは、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上のL−乳酸単位から構成される。他の単位としては、D−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位が挙げられる。D−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位は、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは2モル%以下である。
ポリマーBは、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上のD−乳酸単位から構成される。他の単位としては、L−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位が挙げられる。L−乳酸単位、乳酸以外の共重合成分単位は、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは2モル%以下である。
ポリマーAおよびポリマーB中の共重合成分単位として、2個以上のエステル結合形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等由来の単位およびこれら種々の構成成分からなる各種ポリエステル、各種ポリエーテル、各種ポリカーボネート等由来の単位が例示される。
【0011】
ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール等あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたものなどの芳香族多価アルコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0012】
ポリマーAまたはポリマーBの重量平均分子量は、5万〜50万、好ましくは8万〜30万、より好ましくは10万〜20万である。本明細書において、重量平均分子量(Mw)は溶離液にクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量値である。
【0013】
本発明は、ポリマーAおよびポリマーBが以下の条件を満たすことを特徴とする。
Mb/Ms=1.1〜5.2
但し、MbはポリマーAおよびポリマーBの内、重量平均分子量が大きいポリマーの重量平均分子量、MsはポリマーAおよびポリマーBの内、重量平均分子量が小さいポリマーの重量平均分子量を示す。Mb/Msは好ましくは1.1〜3.5、より好ましくは1.1〜2.8である。Msは、5万〜10万であり、Mbは10万を超えることが好ましい。ポリマーAまたはポリマーBの融点は、160〜180℃、好ましくは165〜176℃のである。ポリマーAまたはポリマーBの分散度(Mw/Mn)は、1.7〜5.2、好ましくは1.7〜3.5、より好ましくは1.8〜3.0である。ポリマーA(またはポリマーB)は、Lラクチド(またはDラクチド)の含有量が少ない方が好ましい。ラクチドの含有量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.08重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。
ポリマーAおよびポリマーBの少なくとも一方は、ラクチドを金属触媒の存在下で開環重合して製造することができる。
【0014】
金属触媒として、アルカリ土類金属、希土類金属、第三周期の遷移金属、アルミニウム、ゲルマニウム、スズおよびアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素を含む化合物が挙げられる。アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどが挙げられる。希土類元素として、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウムなどが挙げられる。第三周期の遷移金属として、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、チタンが挙げられる。金属触媒が、スズ、チタンおよびアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の化合物であることが好ましい。
【0015】
金属触媒は、これらの金属のカルボン酸塩、アルコキシド、アリールオキシド、或いはβ−ジケトンのエノラート等として添加することができる。重合活性や色相を考慮した場合、オクチル酸スズ、チタンテトライソプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシドが特に好ましい。また重合開始剤としてアルコールを用いてもよい。かかるアルコールとしては、ポリ乳酸の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えばデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノールなどを好適に用いることができる。
触媒量は、ラクチド100重量部に対して、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.003〜0.01重量部である。
開環重合は、窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気下で行うことが好ましい。反応時間は、より好ましくは15分〜3時間、好ましくは30分〜2時間である。反応温度は、好ましくは150〜250℃、より好ましくは170〜210℃である。開環重合は、従来公知の製造装置、例えばヘリカルリボン翼等、高粘度用撹拌翼を備えた縦型反応容器を用いて行うことができる。
【0016】
(熱処理)
ポリマーAとポリマーBとは、重量比(A/B)=10/90〜90/10、好ましくは40/60〜60/40、より好ましくは45/55〜55/45で共存させる。
熱処理は、240〜300℃、好ましくは240〜280℃、より好ましくは240〜260℃で行う。
熱処理に際して、ポリマーAとBとを混合することが好ましい。混合は、それらが熱処理したときに均一に混合される方法であればいかなる方法をとることも出来る。即ち、ポリマーAおよびBをあらかじめ粉体化あるいはチップ化したものを所定量混合(ドライブレンド)した後に溶融する方法、ポリマーAおよびBを溶融後、混練する方法、ポリマーAあるいはBいずれか一方を溶融させた後に残る一方を加えて混練する方法を採用することができる。
【0017】
就中、ポリマーAとポリマーBとをドライブレンドした後、溶融混合することが好ましい。ここで、上記において粉体あるいはチップの大きさは、ポリマーAおよびBの粉体あるいはチップが均一に混合されれば特に限定されるものではないが、3mm以下が好ましく、さらには1から0.25mmのサイズであることが好ましい。溶融混合する場合、大きさに関係なく、ステレオコンプレックス結晶を形成するが、粉体あるいはチップを均一に混合した後に単に溶融する場合、粉体あるいはチップの直径が3mm以上の大きさになると、ホモ結晶も析出するので好ましくない。
ポリマーAおよびBを混合するために用いる混合装置としては、溶融によって混合する場合にはバッチ式の攪拌翼がついた反応器、連続式の反応器のほか、二軸あるいは一軸のエクストルーダー、粉体で混合する場合にはタンブラー式の粉体混合器、連続式の粉体混合器、各種のミリング装置などを好適に用いることができる。
【0018】
本発明の製造方法における熱処理とは、ポリマーAおよびポリマーBを上記重量比で共存させ240〜300℃の温度領域で維持することをいう。熱処理の温度は好ましくは240〜280℃、より好ましくは240〜260℃である。300℃を超えると、分解反応を抑制するのが難しくなるので好ましくない。熱処理の時間は特に限定されるものではないが、0.2〜60分、好ましくは1〜20分である。熱処理時の雰囲気は、常圧の不活性雰囲気下、または減圧のいずれも適用可能である。
熱処理に用いる装置、方法としては、雰囲気調整を行いながら加熱できる装置、方法であれば用いることができる。たとえば、バッチ式の反応器、連続式の反応器、二軸あるいは一軸のエクストルーダーなど、またはプレス機、流管式の押し出し機を用いて、成型しながら処理する方法を採用することが出来る。
【0019】
<ポリ乳酸>
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸は、ステレオコンプレックスを形成しているいわゆるステレオコンプレックスポリ乳酸である。ポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、200℃以上の融解ピークの割合が、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。またポリ乳酸の融点は、好ましくは200〜250℃、より好ましくは200〜230℃である。またポリ乳酸の融解エンタルピーは、好ましくは20J/g以上、より好ましくは30J/g以上である。ポリ乳酸の分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.7〜5.2、より好ましくは1.7〜3.5、さらに好ましくは1.8〜3.0である。
ポリ乳酸の結晶化点は、好ましくは90〜135℃、より好ましくは95〜120℃である。
よって、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、200℃以上の融解ピークの割合が90%以上であり、融点が200〜250℃の範囲にあり、融解エンタルピーが20J/g以上であることが好ましい。
ポリ乳酸のL乳酸単位とD乳酸単位の比(L/D)は、好ましくは30/70〜70/30、より好ましくは40/60〜60/40である。L/Dが上記範囲を外れるとポリ乳酸の結晶化度が低下する。
本発明により得られるポリ乳酸には、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、各種フィラー、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、染料、顔料を含む着色剤等を所望に応じて含有することができる。
【0020】
<成形品>
本発明により得られるポリ乳酸を用いて、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、フィルム、シート不織布、繊維、布、他の材料との複合体、農業用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品またはその他の成形品を得ることができ、成形は常法により行うことができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何等限定を受けるものではない。また実施例中における各値は下記の方法で求めた。
(1)重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn):
ポリマーの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分散度はGPC(カラム温度40℃、クロロホルム)により、ポリスチレン標準サンプルとの比較で求めた。
(2)結晶化点、融点、融解エンタルピーおよび200℃以上の融解ピークの割合:
DSCを用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で測定し、結晶化点(Tc)、融点(Tm)および融解エンタルピー(ΔHm)を求めた。
200℃以上の融解ピークの割合(%)は、200℃以上(高温)の融解ピーク面積と140〜180℃(低温)融解ピーク面積から以下の式により算出した。
200以上(%)=A200以上/(A200以上+A140〜180)×100
200以上:200℃以上の融解ピークの割合
200以上:200℃以上の融解ピーク面積
140〜180:140〜180℃の融解ピーク面積
【0022】
(製造例1:ポリマーA1の製造)
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)3000gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール4.1g、触媒としてオクチル酸スズ0.225gを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーA1を得た。重量平均分子量17万であった。融点(Tm)は176℃であった。結晶化点(Tc)は138℃であった。
【0023】
(製造例2:ポリマーA2の製造)
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)2925gとD−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)75gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール4.2g、触媒としてオクチル酸スズ0.225gを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーA2を得た。重量平均分子量16万であった。融点(Tm)は159℃であった。結晶化点(Tc)は132℃であった。
【0024】
(製造例3:ポリマーB1の製造)
D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)3000gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール25.0g、触媒としてオクチル酸スズ0.225gを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーB1を得た。重量平均分子量9万であった。融点(Tm)は177℃であった。結晶化点(Tc)は134℃であった。
【0025】
(製造例4:ポリマーB2の製造)
L−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)75g、D−ラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)2925gをフラスコに加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール27.0g、触媒としてオクチル酸スズ0.225gを加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーB2を得た。重量平均分子量8万であった。融点(Tm)は161℃であった。結晶化点(Tc)は132℃であった。
【0026】
<実施例1>
ポリマーA1およびポリマーB1を等量、ドライブレンドし、フラスコに加え、窒素置換後、260℃まで昇温し、260℃で3分間、溶融ブレンドを行った。得られた樹脂の重量平均分子量は13万であった。この樹脂についてDSC測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点222℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは66J/gであった。140〜180℃の融解ピークは観測されず、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は100%であった。結晶化点は96℃であった。図1にDSCチャートを示す。
【0027】
<実施例2>
溶融温度を240℃とした以外は実施例1と同様な方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は14万であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点218℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは56J/gであった。140〜180℃の融解ピークがわずかに観測され、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は95%であった。結晶化点は92℃であった。
【0028】
<実施例3>
ポリマーA2およびポリマーB2を使う以外は実施例1と同様な方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は14万であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点208℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは45J/gであった。140〜180℃の融解ピークはほとんど観測されず、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は98%であった。結晶化点は89℃であった。
【0029】
<実施例4>
ポリマーA1およびポリマーB2を使う以外は実施例1と同様な方法で行った。得られた樹脂の重量平均分子量は12万であった。この樹脂についてDSCを測定を行った。その結果、DSCチャートには、融点215℃の融解ピークが観測され、その融解エンタルピーは52J/gであった。140〜180℃の融解ピークはわずかに観測され、200℃以上の融解ピークの割合(R200以上)は99%であった。結晶化点は93℃であった。
【0030】
<比較例1>
以下に示すステアリルアルコールで重合を開始したポリ−L−乳酸(PLLA)とポリ−L−乳酸(PDLA)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行い、樹脂を得た。得られた樹脂についてDSC測定を行った。その結果、融点173℃の融解ピークおよび融点220℃の融解ピークが観測された。R200以上は、40%であった。
PLLA:重量平均分子量21万、分散度1.72、融点(Tm)172℃、結晶化点(Tc)125℃。
PDLA:重量平均分子量20万、分散度1.68、融点(Tm)171℃、結晶化点(Tc)122℃。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性に優れるので、溶融成形して、糸、フィルム、各種成形体にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1で得られたポリ乳酸のDSCチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)主としてL―乳酸単位からなり、重量平均分子量が5万〜50万で、融点が160〜180℃のポリマーAと、
(B)主としてD−乳酸単位からなり、重量平均分子量が5万〜50万で、融点が160〜180℃のポリマーBとを、
重量比(A/B)が10/90〜90/10の範囲で共存させ、240〜300℃で熱処理しポリ乳酸を製造する方法であって、ポリマーAおよびポリマーBが以下の条件、
Mb/Ms=1.1〜5.2
(但し、MbはポリマーAおよびポリマーBの内、重量平均分子量が大きいポリマーの重量平均分子量、MsはポリマーAおよびポリマーBの内、重量平均分子量が小さいポリマーの重量平均分子量を示す。)
を満足することを特徴とするポリ乳酸の製造方法。
【請求項2】
Msが5万〜10万であり、Mbが10万を超える請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
ポリ乳酸の分散度(Mw/Mn)が1.7〜5.2である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
ポリ乳酸が、示差走査熱量計(DSC)測定において、昇温過程における融解ピークのうち、200℃以上の融解ピークの割合が90%以上であり、融点が200〜250℃の範囲にあり、融解エンタルピーが20J/g以上である請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
ポリマーAとポリマーBとをドライブレンドした後、溶融混合により熱処理を行う請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法により得られたポリ乳酸。
【請求項7】
請求項6記載のポリ乳酸からなる成形品。

【図1】
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【公開番号】特開2008−63455(P2008−63455A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243271(P2006−243271)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【出願人】(390022301)株式会社武蔵野化学研究所 (63)
【出願人】(303066965)株式会社ミューチュアル (33)
【Fターム(参考)】