説明

ポリ乳酸モノフィラメントの製造方法

【課題】本発明は、従来のポリ乳酸モノフィラメント製造工程で問題となっていたフィラメントの白化問題を解決するだけでなく、産業用途に適用可能な物性と、良好な製糸性を有するポリ乳酸モノフィラメント製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】溶融押し出ししたポリ乳酸樹脂を液浴中で冷却した後に、少なくとも2段以上の延伸をするポリ乳酸モノフィラメントの製造方法において、(イ)〜(ヘ)を同時に満足することを特徴とするポリ乳酸モノフィラメントの製造方法。(イ)ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw):15万〜35万、(ロ)1段目の延伸温度:63〜98℃、(ハ)1段目の延伸倍率:2.0〜6.5倍、(二)2段目の延伸温度:78〜108℃、(ホ)総延伸倍率:5倍〜9倍、(ヘ)巻き取り速度:30〜500m/分。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ乳酸モノフィラメントの製造方法に関するものであり、詳しくは産業資材用として好適に使用できる強度を有する高品位なポリ乳酸モノフィラメントを製糸性良く生産できる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非石油系原料から得られるポリ乳酸樹脂は、燃焼や廃棄を行っても環境負荷の小さい樹脂として近年注目されている。また、このポリ乳酸樹脂を用いたポリ乳酸繊維は独特の光沢を有し、染色した時の発色性や触感が良く、独特の風合いを有することから、シャツ、ハンカチ等の衣料用や車用オプションマット、カーテン、家庭用ロールカーペットやラグ等のインテリア用途、さらには水切りゴミ袋、育苗マット、土木用織編物、植生用防草シート、安全ネット、建築用ネット等の産業用途等、各種の繊維製品として実用化に向けた検討が進められている。
【0003】
このようにポリ乳酸繊維に対する注目が高まる中、ポリ乳酸モノフィラメントに関しても、水産資材、農業資材、建築資材、林業資材、土木資材等への展開が望まれており、種々の検討が進められている。しかしながら、産業資材として好適に使用できるポリ乳酸モノフィラメントを得るために高倍率で延伸をおこなうと繊維が白化し、逆に物性が低下するという問題があった。
【0004】
従来技術の中で、ポリ乳酸モノフィラメントの失透(白化現象)を抑制しつつ、高強度なポリ乳酸モノフィラメントを得る技術が特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0005】
特許文献1には、微生物分解性モノフィラメントを製造するに際し、熱水による延伸工程を少なくとも2工程以上とするポリ乳酸モノフィラメントの製造方法が開示されている。しかしながら、該製造方法を採用した場合には糸条の予熱時間を十分に長く取る必要があるため設備が大型化する問題があるばかりか、得られた延伸モノフィラメントの予熱が不十分であるために低温のヒートセット温度しか採用することができず、得られるモノフィラメントの寸法安定性が悪化する可能性を有していた。
【0006】
特許文献2には、溶融紡糸したポリ乳酸モノフィラメント未延伸糸をポリ乳酸樹脂のガラス転移温度(以下、Tgと略す場合がある)+10℃以上の水浴中で2〜5倍に第1段延伸した後、ポリ乳酸樹脂のTg+50℃以上の温度で全延伸倍率が6倍以上となる様に第2段延伸をするポリ乳酸モノフィラメントの製造方法が開示されている。確かに該製造方法を採用すると、モノフィラメントの白化を発生させること無く高強度なポリ乳酸モノフィラメントを得ることが可能であるが、第1段目の延伸温度と比較して第2段目の延伸温度が高すぎるため、延伸ゾーンにおいて糸揺れが発生しやすく、結果として製糸性が悪化して収率が低下する懸念があった。
【特許文献1】特開平10−60733号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000−27030号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のポリ乳酸モノフィラメント製造工程で問題となっていたフィラメントの白化問題を解決するだけでなく、産業用途に適用可能な物性と、良好な製糸性を有するポリ乳酸モノフィラメント製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが前述の課題について鋭意検討した結果、溶融押し出ししたポリ乳酸樹脂を液浴中で冷却した後に、少なくとも2段以上の延伸をするポリ乳酸モノフィラメントの製造方法において、下記(イ)〜(ヘ)を同時に満足することを特徴とするポリ乳酸モノフィラメントの製造方法が前述の課題を達成することを見出した。
(イ)ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw):15万〜35万
(ロ)1段目の延伸温度:63〜98℃
(ハ)1段目の延伸倍率:2.0〜6.5倍
(二)2段目の延伸温度:78〜108℃
(ホ)総延伸倍率:5倍〜9倍
(ヘ)巻き取り速度:30〜500m/分
また、本発明のポリ乳酸モノフィラメントの製造方法では、ポリ乳酸モノフィラメントを延伸後に温度の異なる2つ以上のドライオーブンで連続して0〜10%の弛緩熱処理する際に、1つ目のドライオーブン温度が119〜144℃、2つ目以降のドライオーブン温度が直前のドライオーブン温度の+5〜+35℃であることが好ましい態様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ポリ乳酸モノフィラメントの製造において大きな問題となっていた失透問題を解消し、透明性に優れたポリ乳酸モノフィラメントを得ることができるだけでなく、産業用途に適用可能な物性を有するポリ乳酸モノフィラメントを製糸性良く得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いるポリ乳酸樹脂は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とする乳酸を重合してなるポリ乳酸樹脂である。
【0011】
ポリ乳酸樹脂は乳酸と共重合可能な成分との共重合体であってもよい。共重合物としては、例えばε―カプロラクトン等の環状ラクトン類、α―ヒドロキシイソ酪酸、α―ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジンオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類から選ばれるモノマの一種または二種以上とを共重合したもの等を例示することができる。中でもポリマの重合特性から、環状ラクトン類およびグリコール類が好ましい。共重合の割合としては特に限定されないが、乳酸100重量部に対して、共重合させるモノマは100重量部以下が好ましく、1〜50重量部がより好ましい。
【0012】
さらに本発明のポリ乳酸モノフィラメント中にはポリ乳酸樹脂とブレンド可能な物をブレンドしても良く、ブレンド可能な熱可塑性ポリマとしては、溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマを例示することができる。
【0013】
また、ポリ乳酸モノフィラメントの耐加水分解性を向上させる目的で、ポリ乳酸樹脂が水酸基を持つ化合物によってカルボキシル基末端を封鎖してなるものであっても良い。水酸基を持つ化合物としては、例えばオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数が6以上の高級アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類が挙げられる。水酸基を持つ化合物でポリ乳酸分子末端のカルボキシル基をエステル化処理することにより、溶融紡糸時の熱安定性および溶融紡糸後の繊維の経時安定性を改善することができる。中でも延伸性の観点から、炭素数6〜18の高級アルコールが好ましい。また、同様の効果を得る目的でカルボキシル基にカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物から選ばれる1種または2種以上の化合物を反応させても良い。
【0014】
十分な耐加水分解性を与えるためにはカルボキシル基末端濃度は25当量/ton以下にすることが好ましく、より好ましくは15当量/ton以下、さらに好ましくは10当量/ton以下、特に好ましくは5当量/ton以下である。前記カルボキシル末端基量は、精秤した試料(1g)をo−クレゾール(水分5%)20mlに浸漬して145℃で10分間溶解し、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより求めることができる。この時、乳酸の環状2量体であるラクチド等のオリゴマーが加水分解し、カルボキシル基末端を生じるため、ポリマのカルボキシル基末端およびモノマー由来のカルボキシル基末端、オリゴマー由来のカルボキシル基末端の全てを合計したカルボキシル基末端濃度が求まる。
【0015】
また、ポリ乳酸樹脂は本発明の効果を損なわない範囲であれば、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、クレーなどの艶消し剤、滑剤、酸化防止剤、耐熱剤、耐蒸熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤および難燃剤などを含むことができる。
【0016】
本発明の製造方法で得られるポリ乳酸モノフィラメントは、染色工程における強度低化や環境汚染を避けるために予め、少なくとも1種類以上の着色剤を含有させても良い。添加される着色剤は、酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、アンスラキノン系、ベリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系等を例示することができるが、これらに限られるものではない。着色剤の含有量としてはポリ乳酸モノフィラメントの全体量100重量%に対して0.01〜4重量%含有していることが好ましく、0.1〜0.6重量%であることがより好ましく0.3〜0.5%の範囲内であることがさらに好ましい。着色剤の添加量が0.01重量%以下の場合は色調が不足し、4重量%を超える場合は必要な強度を得ることが困難になる。添加方法に特に限定は無く、高濃度で顔料を含有するマスターチップとベースチップを紡糸前に混合する方法が例示できる。
【0017】
本発明のポリ乳酸モノフィラメントには耐磨耗性を向上させるために脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドをポリ乳酸モノフィラメントの全体量100重量%に対して0.1〜5重量%、更に好ましくは0.5〜3重量%含有させても良い。0.1重量%未満では耐磨耗性向上効果が十分に得られず、5重量%を超える場合には必要な強度を得ることが困難となる。脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドの含有量を上記範囲とすることで、モノフィラメント表面の滑り性が向上し、優れた耐摩耗性を付与することができる。脂肪酸ビスアミドとは、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系ビスアミド等の1分子中にアミド結合を2つ有する化合物を指し、例えばメチレンビスカプリル酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスイソステアリン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等であり、アルキル置換型の脂肪酸モノアミドとは、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置き換えた構造の化合物を指し、例えば、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ベヘニルベヘニン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。該アルキル基は、その構造中にヒドロキシル基等の置換基が導入されていても良く、例えば、メチローラステアリン酸アミド、メチローラベヘニン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド等も本発明のアルキル置換型の脂肪酸モノアミドに含むものとする。なかでも、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いためポリ乳酸樹脂と反応しにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く昇華しにくいことから、より好ましく用いることができる。上記脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドは単一で添加しても良いし、また複数の成分を混合して用いても良い。
【0018】
しかしながら、ポリ乳酸モノフィラメントは、生分解性および非石油系原料であるという特徴を活かし、廃棄しても環境負荷の小さい製品として用いるため、石油系ポリマのブレンド、該成分の共重合等は極力避け、また各種添加剤も、重金属化合物や環境ホルモン物質は勿論、現時点でその懸念が予想される化合物の一切を用いないものであることが好ましい。
【0019】
本発明のポリ乳酸モノフィラメントの製造方法は、溶融押し出ししたポリ乳酸樹脂を液浴中で冷却した後に、少なくとも2段以上の延伸をするポリ乳酸モノフィラメントの製造方法において、(イ)ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)が15万〜35万であること、(ロ)1段目の延伸温度が63〜98℃であること、(ハ)1段目の延伸倍率が2.0〜6.5倍であること、(二)2段目の延伸温度が78〜108℃であること、(ホ)総延伸倍率が5倍〜9倍であること、(ヘ)巻き取り速度が30〜400m/分であることが特徴である。
【0020】
前記工程において、第1段目の延伸では延伸温度が63〜98℃、延伸倍率が2.0〜6.5倍であることが必要である。延伸温度が63℃未満の場合にはポリ乳酸のTgに非常に近いため延伸に必要な分子鎖の運動性を付与することが困難となり、ポリ乳酸モノフィラメントの延伸性が低下して高倍率に延伸できなくなるばかりか、得られるモノフィラメントが白化する恐れがある。一方、延伸温度が98℃を超える場合にはモノフィラメントが軟化して延伸工程での糸揺れが大きくなるために製糸性が著しく悪化してしまう。第1段目の延伸において更に好ましい延伸温度の範囲として80〜90℃を例示することができる。延伸方法としては、ホットオーブンを用いた乾熱延伸や、水等の加熱溶媒を用いた液浴延伸等を採用することが出来るが、第1段目の延伸は繊維構造の基礎を作る工程であるため、均一加熱の容易な液浴延伸を採用することが好ましい。また、延伸倍率が2.0倍未満の場合には延伸斑が生じるため、得られるモノフィラメントの繊維径の斑が大きくなる。一方、延伸倍率が6.5倍を超える場合にはモノフィラメントの白化が発生しやすく、得られるモノフィラメントの物性が低下する可能性が高い。第1段目の延伸において更に好ましい延伸倍率の範囲として3.0〜5.0倍を例示することができる。
【0021】
前記工程において、第2段目の延伸では、延伸温度が78〜108℃、2段延伸終了段階の延伸倍率が5.0〜9.0倍であることが必要であり、該工程が本発明の重要な特徴の一つである。すなわち、特許文献等で提案されている様に、第2段目の延伸における延伸温度が78℃を下回る場合(前記特許文献1の熱水延伸に相当)には、糸条の予熱時間を十分に長く取る必要があるため設備が大型化する問題があるばかりか、延伸モノフィラメントの予熱が不十分であるために得られるモノフィラメントが白化し易く、低温のヒートセット温度しか採用することができないためにモノフィラメントの寸法安定性が悪化する可能性が大きくなる。一方、第2段目の延伸における延伸温度が108℃を超える場合(前記特許文献2記載技術に相当)には、第1段目の延伸温度と比較して第2段目の延伸温度が高すぎるため、延伸ゾーンにおいて糸揺れが発生しやすいこと、および、延伸温度が高すぎるためにモノフィラメントが結晶化してしまい延伸性が低下することから、結果として製糸性が悪化して収率が低下する可能性が高い。すなわち、第2段目の延伸温度を本発明の範囲である78〜108℃の範囲にすることで、製糸性良く、且つ、白化の発生しないポリ乳酸モノフィラメントを得ることが可能となる。さらに好ましい第2段目の延伸温度範囲として、ポリ乳酸樹脂の93〜103℃の範囲を例示することができる。また、第2段目の延伸段階での総延伸倍率は5.0〜9.0倍であることが必要であり、好ましくは5.5〜8.5倍である。総延伸倍率が5.0倍を下回る場合には産業用途に好適な物性を有するモノフィラメントを得ることが困難となり、総延伸倍率が9.0倍を超える場合には繊維にかかる負荷が大きすぎるために白化が発生したり、糸切れが発生したりする可能性が高くなる。
【0022】
本発明では、ポリ乳酸モノフィラメントの巻取り速度が30〜500m/分、好ましくは30〜250m/分であることが、もう一つの重要な特徴である。ポリ乳酸モノフィラメントの巻取り速度が500m/分を超える場合、第二段目の延伸における延伸温度、および、延伸倍率が本発明の範囲を満足する場合においても、延伸時の繊維変形速度が速過ぎること、および/または、糸速度が速いために延伸ゾーン通過時間が短くなり予熱が不足すること等に起因するモノフィラメントの白化が発生してしまう。一方、巻取り速度が30m/分を下回る場合には製糸上の問題は無いが、単位時間当たりの生産量が低下するため、ポリ乳酸モノフィラメント製造コストが高くなってしまう問題が発生する。
【0023】
本発明において、もう一つの重要な特徴はポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(以下、Mwと略すことがある)であり、ポリ乳酸樹脂のMwは15万〜35万であることが必要である。本発明者らの検討によれば、Mwが前述範囲のポリ乳酸樹脂を使用することで繊維の白化を抑制することが可能となる。すなわち、ポリ乳酸樹脂のMwが15万未満の場合には、産業用に好適に使用できる強度を有するポリ乳酸モノフィラメントを得ようと高倍率に延伸した場合に、得られるポリ乳酸モノフィラメントが白化する可能性が高い。詳細な機構は現状不明であるが、Mwが15万以上のポリマを使用することで繊維中の分子鎖が密となり、繊維構造を固定して分子鎖の引き抜き等の構造破壊が発生し難くなるために、白化の原因となるミクロボイドの生成を抑制すると考えられる。該予想機構から考えると、ポリ乳酸樹脂のMwは高いほど白化は発生し難くなると予想されるが、Mwが35万を超える場合には分子鎖の絡み合いが大きくなり過ぎて延伸性が悪化し、結果として製糸性に問題が発生する。また、好ましいMwの範囲として15万〜30万、より好ましい範囲として20万〜30万の範囲を例示することができる。
【0024】
本発明は、前述のポリ乳酸樹脂の重量平均分子量、1段目の延伸温度、1段目の延伸倍率、2段目の延伸温度、総延伸倍率、巻き取り速度の要件を同時に満足することで初めて達成されるものである。
【0025】
従来より、失透を抑制するポリ乳酸モノフィラメントの製造方法が検討されてきたが、産業用必要な強度、製糸性、および、品位を同時に満足する製造方法は見出されていなかった。本発明では、ポリ乳酸樹脂の延伸挙動が熱に対して非常に敏感であることに着目し、製糸性良く、且つ、高品位なポリ乳酸モノフィラメントを得るために必要な熱履歴を与えるための製造方法を見出し達成されたものである。
【0026】
すなわち、高強度なモノフィラメントを得るために必要な延伸段数、及び、延伸倍率で延伸をする際に、糸切れ、および、失透の少ないポリ乳酸モノフィラメントを得るためには、各延伸段数において最適な延伸温度、延伸倍率があり、且つ、該延伸温度範囲内でポリ乳酸モノフィラメントの延伸に必要な熱量を与えるためには、巻取り速度を一定範囲内に設定しなければならないことを見出したものである。本発明では全ての要件が必須であり、例えば延伸温度が本発明の範囲内にあるにもかかわらず、巻取り速度が本発明の範囲を外れる場合にはポリ乳酸モノフィラメントの延伸に必要な熱量を与えることができず、失透や糸切れが発生してしまう。
【0027】
本発明の製造方法で同時に生産するポリ乳酸モノフィラメントの本数は特に限られるものではなく、設備の大きさに合わせて適宜紡糸本数を変更すればよい。
【0028】
本発明の製造方法は、ポリ乳酸モノフィラメントの繊度によって限定されるものではなく、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸モノフィラメント繊度の例として、10〜2000dtexの範囲を例示できる。
【0029】
次に、図1に基づいて本発明のポリ乳酸モノフィラメントの製造方法の一例を説明するが、ポリ乳酸モノフィラメントの製造方法はこれに限られるものではなく、本発明の範囲を満足していれば如何なる製造方法を採用してもよい。
【0030】
紡糸ホッパー(1)に貯蔵されているポリ乳酸樹脂を、エクストルーダー(2)を用いて溶融し、ギヤポンプ(3)で計量した後、紡糸パック(4)内で金属不織布等のフィルターを通過させて紡糸口金(5)より押し出す。この時、用いるポリ乳酸樹脂を真空乾燥機等を用いて水分率0〜400ppm程度に乾燥しておくことが製糸性および品位の面から好ましい。紡糸温度については紡出性を考慮に入れて適宜設定すれば良いが、製糸性と品位の面から考えると、ポリ乳酸樹脂の融点+20℃〜+70℃の範囲であることが好ましい。また、ポリ乳酸モノフィラメントを高機能化させるために、口金孔形状を変更する等の方法を採用して、ポリ乳酸モノフィラメントの断面形状を、円形断面は勿論のこと、扁平、三角、中空、星型等の異型断面や中空部を有するものとしても、芯鞘複合や海島型等の複合繊維としてもよい。
【0031】
必要に応じて口金面下部に加熱筒および/または断熱筒を取り付けても良い。筒内雰囲気温度に特に限定は無いが、ポリ乳酸樹脂の融点以上であることが好ましい。
【0032】
吐出した糸条(6)は冷却浴(7)で冷却固化させる。冷却温度が低すぎる場合には専用の冷却装置が必要となり、温度が高すぎる場合には冷却が不十分となるため、冷却温度は20℃〜90℃が好ましい。
【0033】
得られた糸条(6)は一旦巻き取った後、又は、一旦巻き取ることなく延伸工程に供される。延伸は、産業用に使用可能なポリ乳酸モノフィラメントを得るために2段以上の多段延伸法でおこなう。延伸方法は特に限定されるものではなく、通常知られた多筒ロール等の延伸ロール(8)(10)(12)(15)を用いた延伸方法を採用すればよい。延伸条件は上述した本発明の製造方法に従い実施する。即ち、1段目の延伸を第一ローラ(8)と第2ローラ(10)の間で施し、1段目の延伸温度を63〜98℃、1段目の延伸倍率を2.0〜6.5倍に設定する。1段目の延伸において用いる熱媒に特に限定は無いが、繊維構造を形成する初期段階であるため、糸条(6)全体を均一に加熱できる延伸浴(9)であることが好ましい。1段目の延伸が完了した糸条を引き続き2段目の延伸工程に供する。2段目の延伸は第2ローラ(10)と第3ローラ(12)間で延伸を施し、2段目の延伸温度を78〜108℃、2段目までの総延伸倍率を5倍〜9倍に設定しておこなう。2段目の延伸で用いる熱媒に特に限定は無いが、ポリ乳酸が耐加水分解性に弱いことに鑑みると、乾熱のオーブンヒーター(11)を用いることが好ましい。
【0034】
延伸工程で延伸された糸条(6)は、寸法安定性を向上させる観点から弛緩熱処理をすることが好ましい。弛緩熱処理方法は通常知られた方法を採用すればよいが、製糸性、寸法安定性を同時に満足させるためには前述の本発明の弛緩熱処理方法を採用することが好ましい。即ち、ポリ乳酸モノフィラメント(6)を延伸後に、温度の異なる2つの以上のドライオーブン(13)(14)で連続して0〜10%の弛緩熱処理を施すことが好ましい。
【0035】
通常、熱セットは1つのドライオーブンで行なうが、1つのドライオーブンで優れた寸法安定性を有するポリ乳酸モノフィラメントを得ようとした場合には、ポリ乳酸の結晶化に十分な熱量を与えるためにドライオーブンの温度を高く設定する必要がある。その結果として、非晶領域の多い延伸直後のポリ乳酸モノフィラメントは弛緩熱処理工程で分子鎖の運動性が高くなるため、糸揺れが大きくなり製糸性が悪化してしまう。一方、本発明の好ましい態様である、温度の異なる2つ以上の連続するドライオーブンで弛緩熱処理を施した場合には、最初のドライオーブン(13)で予備的に結晶化を施して、ある程度構造を固定した後に十分な寸法安定性を得るのに必要な熱量を2つめのドライオーブン(14)で付与することができるため、弛緩熱処理工程での糸揺れが少なく、製糸性の良い製造方法となる。
【0036】
2つ以上のドライオーブンで連続して弛緩処理を施す方法としては、設定温度の異なるドライオーブンを2個以上設置しても良いし、段階的に温度領域を変化させたドライオーブンを用いても良い。ドライオーブンの種類は特に決まったものでは無く、通常の熱板や熱板の上部に蓋が設置してあるオーブンを使用することができる。1つ目のドライオーブン(13)、即ち、延伸後のモノフィラメントが最初に熱処理をされる領域の温度は119〜144℃であることが好ましく、125〜140℃であることがより好ましい。1つ目のドライオーブン(13)の温度が119℃未満ではポリ乳酸モノフィラメントの構造を予備的に固定できず、144℃を超える場合にはドライオーブンでの糸揺れが発生して製糸性を悪化させる可能性がある。2つ目のドライオーブン(14)、即ち、1つ目のドライオーブン(13)で一度熱セットをされたポリ乳酸モノフィラメントに再度熱を与える領域の温度は、1つ目のドライオーブンの温度+5℃〜+35℃であることが好ましく、+5〜+25℃であることがより好ましい。二つ目のドライオーブン(14)の温度が1つ目のドライオーブン(13)の温度+5℃を下回る場合には、最終的に得られるポリ乳酸モノフィラメントの寸法安定性が悪くなる可能性があり、+35℃を超える場合にはドライオーブンでの糸揺れが発生して製糸性が悪化する恐れがある。この様に、本発明はポリ乳酸モノフィラメントの熱セットを多段とすることで、寸法安定性、および、製糸性の両方を同時に満足するものである。熱セットは2段に限られるものではなく、前述の方法を基本として3段以上の熱セット方法を自由に採用することができ、3段以上の熱セットを採用する場合には、少なくとも2つのドライオーブンが本発明の範囲を満足すればよい。
【0037】
一方で、ポリ乳酸モノフィラメントを、通常のポリエステル、ナイロン、オレフィン系モノフィラメントの場合と同様に1つのドライオーブンのみで十分な寸法安定性を付与しようとした場合には、ドライオーブン入り口で分子鎖の運動性が高くなりすぎるため、糸揺れが発生し、糸切れの原因となってしまう恐れがある。
【0038】
従来のポリ乳酸モノフィラメントの製造方法では、元々ポリエステルやナイロンモノフィラメントを製造する紡糸機を用いて開発が進められていたために、弛緩熱処理工程における糸揺れ、及び、糸切れ問題が解決できなかった。それに対し、本発明ではポリ乳酸の熱的特徴に合わせた製造方法を見出したのである。
【0039】
弛緩熱処理を施されたポリ乳酸モノフィラメント(6)は、30〜500m/分の巻取り速度で巻取り機(16)で巻き取られる。
【0040】
また、本発明のポリ乳酸モノフィラメントは、高次工程通過性の向上、ポリ乳酸モノフィラメントへの機能付与等の目的で油剤を付与しても良い。油剤の付与方法に特に限定は無く、紡糸工程において油剤ローラを用いて油剤を付与する方法等を採用すればよい。
【0041】
かくして、本発明のポリ乳酸モノフィラメントを得ることができる。
【0042】
本発明のポリ乳酸モノフィラメントは、シャツ、ハンカチ等の衣料用や車用オプションマット、カーテン、家庭用ロールカーペットやラグ等のインテリア用途、さらには水切りゴミ袋、育苗マット、土木用織編物、植生用防草シート、安全ネット、建築用ネット等の産業用途等、各種の繊維製品として使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
【0044】
[ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)]:試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウォーターズ社製GPC−150C)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mn、さらに分散度Mw/Mnを求めた。なお、3回の測定の平均値を用いた。
【0045】
[ラクチド量]: 試料1gに2,6−dimethyl−gammma−pyroneを10000ppm含むジクロロメタン1ml、および、18mlのジクロロメタンを添加して攪拌・溶解した。溶解溶液を1ml計量し、3mlのアセトンと混合した後、16mlのシクロヘキサン溶液を加えた。得られた溶液を直径13mm、孔径0.45μmのシリンジフィルターで濾過した後、ヒューレットパッカード社製5890 SeriesII Plusを用いてガスクロマトグラフィー法で測定した。カラムは内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μmの島津社製BPX50を用いた。サンプル注入量は1μl、キャリアーガスとしては水素を用い、初期温度50℃から25℃/分の速度で325℃まで昇温して測定し、絶対検量線法により求めた。なお、3回の測定の平均値を用いた。
【0046】
[融点(Mp)]:パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7型を用い、試料10mgを昇温速度 5℃/分にて測定して得た融解曲線の吸熱極値を与える温度を融点(℃)とした。なお、3回の測定の平均値を用いた。
【0047】
[ガラス転移点(Tg)]:パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7型を用い、試料10mgを昇温速度20℃/分にて25℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間放置した後、直ちにサンプルを4℃の冷水に浸漬急冷し、水分を除去した後、再度5℃/分で25℃から200℃まで昇温して得られる融解曲線より求めた。なお、3回の測定の平均値を用いた。
【0048】
[水分率]:平沼産業(株)製カールフィッシャー水分計(AQ−2100)を用いた電量滴定法で測定した。試行回数3回の平均値を用いた。
【0049】
[繊度]:JIS L1013 8.3.1 B法に従って測定した。
【0050】
[繊維強度および伸度]:試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100でJIS L1013 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。この時の掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分、試験回数10回であった。なお、伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
【0051】
[沸収]:沸騰水を用い、JIS L1013 8.18.1 B法に従って測定回数5回で測定した。
【0052】
[2段目延伸領域での糸揺れ]:ポリ乳酸モノフィラメント1tの紡糸連続延伸を行った時のドライオーブン入り口の糸挙動を目視観察し、隣合うモノフィラメント同士の接触回数をカウントした。判定は下記の2段階でおこなった。
接触回数が2回/0.1t以下:製糸性良好。
接触回数が3回/0.1t以上:接触に起因する糸切れが発生しやすい。
【0053】
[弛緩領域の熱板上での糸揺れ]:ポリ乳酸モノフィラメント1tの紡糸連続延伸を行った時の弛緩領域の熱板上での糸挙動を目視観察し、隣合うモノフィラメント同士の接触回数をカウントした。
【0054】
[失透]:ポリ乳酸モノフィラメントを実体顕微鏡(ニコン実体顕微鏡HFX型)を用い、反射光により観察し、SONY製カラービデオカメラ(CCD−IRIS)で撮影してモニターで観察する。モノフィラメント1mを観察し、図2のように失透によって光が乱反射して白く見える領域が5cm以上連続して存在していればそのフィラメントは失透していると判定する。観察倍率はモニター上で観察される繊維径が2〜4mmの範囲となるように倍率を設定すれば良い
【0055】
[製糸性]:ポリ乳酸モノフィラメント10tの紡糸連続延伸を行ったときの1tあたりの断糸回数を示した。
【0056】
(実施例1〜8、比較例1〜8、比較例10、比較例11)
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)を用いて窒素雰囲気下180℃で表1記載の重量平均分子量となる様に時間を調整して重合を行い、表1に示す特性を有するポリ乳酸樹脂を得た。得られたポリ乳酸樹脂を100℃で真空乾燥して水分率80〜100ppmの範囲となる様に調整した後、φ40mm(L/D=25)の1軸エクストルダー型溶融紡糸装置に供給して、紡糸温度230℃で溶融紡糸した。溶融ポリマは、ギヤポンプにて最終繊度が500dtexとなるように計量したのち、紡糸パック中で20μmの金属不織布フィルターで濾過し、孔径1.0mmφ、孔長2.5mmで30ホールの口金から紡出した。
【0057】
紡出したポリマを60℃の温水で冷却固化した後、第一ローラにより表1記載の速度で引き取った。引き取ったポリ乳酸未延伸モノフィラメント糸条は一旦巻き取ることなく連続して第一ローラと第二ローラとの間で1段目の延伸を行い、次いで、第二ローラと第三ローラで2段目の延伸を行った。この時、第1段目の延伸には温水浴を用い、第2段目の延伸には蓋付のドライオーブンを用い、1段目の延伸倍率、2段目の延伸倍率、1段目の延伸温度、2段目の延伸温度は表1に示す値を採用した。延伸後の糸条は、第三ローラと第四ローラ間で表1記載の弛緩率となるようにリラックスをした後、表1記載の速度で巻き取った。なお、弛緩領域には温度の異なる2つの熱板を連続して配置し、それぞれ表1の温度となる様に設定した。得られたポリ乳酸モノフィラメントの物性を表1に示した。
【0058】
(比較例9)
第1段目の延伸に蓋付ドライオーブンを用いたこと以外は実施例1と同様におこなった。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表1より明らかなように、本発明の製造方法は高品位高強度のポリ乳酸モノフィラメントを透明性を保ったまま製糸性良く得ることが可能である。一方、本発明の範囲を外れる比較例1〜11の製造方法では、製糸性、ポリ乳酸モノフィラメントの透明性を同時に満足することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施態様の一例の紡糸工程フロー図である。
【図2】本発明において繊維の失透を評価した際の顕微鏡写真のサンプルである。
【符号の説明】
【0063】
1:紡糸ホッパー
2:エクストルーダー
3:ギヤポンプ
4:紡糸パック
5:紡糸口金
6:ポリ乳酸モノフィラメント
7:冷却浴
8:第一ローラ
9:延伸浴
10:第二ローラ
11:オーブンヒーター
12:第三ローラ
13:オーブンヒーター
14:オーブンヒーター
15:第四ローラ
16:巻取り機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融押し出ししたポリ乳酸樹脂を液浴中で冷却した後に、少なくとも2段以上の延伸をするポリ乳酸モノフィラメントの製造方法において、下記(イ)〜(ヘ)を同時に満足することを特徴とするポリ乳酸モノフィラメントの製造方法。
(イ)ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw):15万〜35万
(ロ)1段目の延伸温度:63〜98℃
(ハ)1段目の延伸倍率:2.0〜6.5倍
(二)2段目の延伸温度:78〜108℃
(ホ)総延伸倍率:5倍〜9倍
(ヘ)巻き取り速度:30〜500m/分
【請求項2】
ポリ乳酸モノフィラメントを延伸後に、温度の異なる2つ以上のドライオーブンで連続して0〜10%の弛緩熱処理をする際に、1つ目のドライオーブン温度が119〜144℃、2つ目のドライオーブン温度が直前のドライオーブン温度の+5〜+35℃であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸モノフィラメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−57082(P2008−57082A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236967(P2006−236967)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】