説明

ポリ乳酸原綿、その製造方法、およびそれを用いる織編物の製造方法

【課題】 環境負荷が小さくアルカリ減量加工に適したポリ乳酸原綿、その製造方法およびそれを用いる織編物の製造法を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸短繊維からなる原綿であって、原綿全体の95%以上の短繊維が、繊維表面に畝状の凹凸が存在する短繊維(畝状の凹凸として、繊維長10μmあたりの凸部の数が5〜10個である短繊維)である。このポリ乳酸原綿とポリエチレンテレフタレート等の原綿とを混綿させ、織編物を作製し、更にアルカリ処理にてポリ乳酸原綿を除去処理して織編物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷の小さくアルカリ減量加工に適したポリ乳酸原綿およびそれを用いて得られる織編物の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、織物、編物、不織布等の繊維布帛を製造するに際し、その性状、形態等に変化を持たせ、繊維布帛の価値を高めると共に、消費者の多様な要求に応えることが行われている。例えば、嵩高軽量な織編物を得る方法としては中空繊維を用いる方法、異なる収縮率の繊維を混紡・紡績後に熱処理を行い、収縮差を利用して空隙を作製する方法がある。しかしながらこれらの方法では、織編物の構造体中に大きな空隙を作り難いと言った難点がある。
【0003】
また、その他の方法としては、溶解性の高い繊維(以後、溶解繊維という)と溶解性の低い繊維(以後、非溶解繊維という)を混紡し、溶解繊維を溶解させ除去して空隙を形成する方法があり、該方法では溶解繊維の割合を変更させることで織編物の構造体内に任意の空隙を作ることが可能である。しかしながら、この溶解繊維の溶解に関しては加工効率の観点から溶解溶液に強アルカリ溶液が用いられることが多く、強アルカリ溶液によって非溶解繊維も損傷を受けるという難点がある。また、強アルカリ処理により溶出させた低分子量ポリマーは廃液から分離した後に、埋立や焼却といった処理がされるのが一般的であり、環境負荷が大きいことも問題点として挙げられる。
【0004】
非溶解繊維の損傷の軽減の試みはいくつか検討されている。例えば特許文献1および2では、共重合により溶解性を高めたアクリル繊維やポリエステル繊維を溶解繊維に使用している。しかし、効果としては満足しうるものではなく、強アルカリによる処理が未だ必要である。また、これらの方法では従来技術同様に廃棄処理の問題は残ったままである。
【0005】
非溶解繊維の損傷と廃棄処理の2つの問題の解決策として、例えば特許文献3では溶解性成分としてポリ乳酸繊維の適用を提案している。ポリ乳酸は生分解性ならび植物由来のポリマーであり、環境への負荷が小さいものである。また、ポリ乳酸はアルカリへの耐性が低く、一般的なポリエステル繊維と比べ易溶解性の繊維と言える。しかしながら、従来のポリ乳酸繊維の溶解性は特許文献1ならび2の溶解繊維と同等レベルのものであり、溶解繊維として従来のポリ乳酸繊維を用いても、非溶解繊維の損傷に対しては十分な効果は得られていない。
【0006】
特許文献4では共重合ポリ乳酸を用いることで、ポリ乳酸の溶解性を更に向上させているが、共重合化することで、ポリ乳酸単独の場合に比べ廃棄処理の問題が大きくなる。
【0007】
以上のように、アルカリ処理による非溶解繊維の損傷と廃棄処理といった両問題を同時に解決する手法は編み出されていなかったのが現状である。
【0008】
また、溶解繊維として適した繊維を得るためには、溶解性が高いポリマー成分やモノマー成分を共重合させ、より溶解性を高める方法が主に採用されてきている。しかし、この方法では溶解繊維製造のコストアップとなるだけでなく、ポリマー組成の複雑化、石油由来原料の使用、非分解成分の使用などにより廃棄処理の問題の改善が非常に困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−9204号公報
【特許文献2】特開2007−131980号公報
【特許文献3】特開平11−302926号公報
【特許文献4】特開平09−324329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題点を克服し、環境負荷が小さく、アルカリ減量加工に適したポリ乳酸原綿ならびそれを用いて得られる織編物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明のポリ乳酸原綿は次の要件で特定される。
【0012】
ポリ乳酸短繊維からなる原綿であって、原綿全体の95%以上の短繊維が、繊維表面に畝状の凹凸が存在する短繊維であることを特徴とするポリ乳酸原綿。
【0013】
ここで、繊維表面に畝状の凹凸が存在する短繊維は、畝状の凹凸として、繊維長10μmあたりの凸部の数が5〜10個である凹凸を有することで特定することができる。
【0014】
また、上記した本発明のポリ乳酸原綿は、ポリ乳酸を溶融紡糸し集束させてトウとし、総繊度10〜100ktexのトウを65〜75℃の液浴中にて2.0倍以上に延伸し、その後、機械けん縮を付与し、所定の繊維長に切断することで製造することができる。
【0015】
また、上記した本発明のポリ乳酸原綿と、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートのうちの少なくとも1種類からなる原綿とを混合させてなる混合原綿から織編物を製造し、その後、アルカリ溶液で処理することによりポリ乳酸繊維を除去する方法により編織物を製造する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、環境負荷が小さく、アルカリ減量加工に適したポリ乳酸原綿を製造することができ、これにより優れた嵩高性・軽量感の織編物を低環境負荷にて製造することができる。
【0017】
また、本発明のポリ乳酸原綿の製造方法により、上記したようなポリ乳酸原綿を再現性良く安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】繊維表面に畝状の凹凸が存在する短繊維における繊維表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】繊維表面に畝状の凹凸が存在しない短繊維における繊維表面を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明でいうポリ乳酸とは、乳酸やラクチド等の乳酸のモノマーやオリゴマーを重合したものをいう。そのL体またはD体の光学純度が90%以上であると、ポリマー融点が高く好ましい。L体あるいはD体の光学純度はより好ましくは97%以上である。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で上記モノマーならびオリゴマーに共重合成分が加えられた共重合体でもよい。
【0020】
本発明に用いられるポリ乳酸は、種々の方法により製造することができ、特に限定されるものではない。具体的には、特開平6−65360号公報に開示されている方法、すなわち、乳酸を有機溶剤および触媒の存在下にてそのまま脱水重合する直接脱水縮合法で製造すればよい。また、特開平7−173266号公報に開示されている少なくとも2種類のホモポリマーを重合触媒存在下にて共重合ならびエステル交換反応させる方法で製造してもよい。さらには、米国特許第2,703,316号明細書に開示されている方法、すなわち、乳酸をいったん脱水し、環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法で製造してもよい。
【0021】
本発明に用いられるポリ乳酸は、融点が130℃以上であることが好ましい。融点が130℃より低い場合には、製糸時、特に紡糸時に単糸間の融着が著しく、更に延伸不良など発生するなど製品の品位が損なわれるおそれがある。融点は、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは160℃以上である。
【0022】
本発明のポリ乳酸の溶融紡糸工程については特に制限されるものではないが、例えば、あらかじめ乾燥したポリ乳酸チップをプレッシャーメルター型またはエクストルーダー型の紡糸機にて溶融紡糸する方法、未乾燥のポリ乳酸チップをベント式エクストルーダーで溶融紡糸する方法などで行えばよい。
【0023】
また、本発明のポリ乳酸原綿は、従来技術のように共重合化させる方法を採用しなくても、耐アルカリ性を低下させることができたものであり、即ち、「失透」と呼ばれる状態や構造を有するポリ乳酸短繊維が、原綿全体の95%以上占めることが重要である。この「失透」状態とは、繊維表面に畝状に凹凸化することで光の透過が妨げられ、白濁化した状態・現象である。
【0024】
一般にポリエステル繊維の延伸では、ポリマー鎖は延伸と共に引き揃えられ、配向・結晶化が進み、強固な構造が形成され、その後、更に延伸すると破断される。すなわち、延伸挙動としては、結晶の成長から破断という流れを辿る。
【0025】
一方、ポリ乳酸繊維の延伸では、初期の配向・結晶化挙動は他のポリエステルと同様の挙動を示すが、ある特定条件下においては構造を乱しながら延伸されるという挙動を示す。この乱れた構造の繊維が「失透」状態の繊維であり、構造が乱れることにより、通常のポリ乳酸繊維と比べ、耐アルカリ性、強度、伸度などの物性の低下が見られる。ポリ乳酸繊維の延伸にて、このような挙動が観察されるメカニズムの詳細は不明であるが、他のポリエステルと比べ、分子間の相互作用が弱いために、延伸時にポリマー鎖の引き抜けが起こりやすいことが原因であると考えられる。また、該ポリマー鎖の引き抜けは、主に延伸応力と熱量に支配されており、高応力、低熱量の条件にて発生しやすい。
【0026】
また、短繊維の延伸は紡糸した糸条を束ねトウにして延伸を行うことが一般的であり、上記のような高応力・低熱量のほかに、繊維同士の絡まりや接触による応力の局所化、トウ内外部の熱ムラなどの因子も加わる。したがって、短繊維では、長繊維と比べ、失透状態の制御、特に「失透」繊維の存在率を制御することは困難であると、従来は考えられていた。また、「失透」繊維は、通常のポリ乳酸繊維と比べ力学的特性が低下しているので、従来の製造技術においては、極力「失透」状態とならないようにポリ乳酸繊維を製造することが重要と考えられていた。
【0027】
本発明で言うところの原綿は、所定の繊維長に切断された短繊維の集合体を指す。本発明のポリ乳酸原綿は、原綿全体の95%以上のポリ乳酸短繊維が、繊維表面が失透(凹凸)化している「失透」繊維である。この「失透」繊維は、「繊維表面に畝状の凹凸が存在するポリ乳酸短繊維」と表すことができる。より詳しくは、繊維表面に畝状の凹凸が存在するポリ乳酸短繊維であって、畝状の凹凸として、繊維長10μmあたりの凸部の数が5〜10個であることで定義することができる。その凸部の数は、「失透」繊維の平均で6〜8個であることが好ましい。図1は、代表的な「失透」繊維における繊維表面形状の電子顕微鏡写真(1500倍)である。この写真において、繊維長手方向に対してほぼ垂直な方向に延びる線が、畝状凹凸の畝を表すものである。
【0028】
「失透」状態がないポリ乳酸短繊維、具体的には、繊維長10μmあたりの凸部の数が5個未満であるポリ乳酸短繊維は、構造の乱れによる耐アルカリ性低下の効果が十分でなく、アルカリ減量処理にてポリ乳酸短繊維を完全に溶解させるためには長時間の処理や高濃度の処理溶液が必要となり、非溶解繊維までも損傷してしまう。図2は、「失透」状態がないポリ乳酸短繊維における繊維表面形状の電子顕微鏡写真(1500倍)であり、畝状凹凸が殆ど存在せず、表面は平坦である。
【0029】
また、繊維長10μmあたりの凸部の数が10個を超えるほどに「失透」状態が進んでいる場合は、構造の乱れの進行による強度の低下が大きくなり、延伸工程や紡績工程での張力に耐えることができず、糸切れを多発させ、安定した繊維製造が困難となる。
【0030】
本発明のポリ乳酸原綿においては、上記の失透状態のポリ乳酸短繊維が原綿全体の95%以上を占める。好ましくは98%以上を占める。95%未満の場合、「失透」繊維以外のポリ乳酸短繊維が多数存在し、ポリ乳酸短繊維の殆どを完全に溶解させるために長時間の処理や高濃度の処理溶液が必要となり、非溶解繊維までも損傷してしまう。
【0031】
また、上記のような本発明のポリ乳酸原綿を得るためには、下記条件にて延伸を行うことが重要である。
【0032】
すなわち、延伸に供するトウの総繊度は10〜100ktexであり、好ましくは20〜80ktexである。10ktex未満では、繊維間の相互作用効果が十分ではなく、失透状態にできない短繊維がかなりの割合で生じる。また100ktexを超える場合は、逆に繊維間の相互作用が強くなりすぎるため、大きく強度が低下した失透糸が発生し、延伸工程や紡績工程での張力に耐えることができず、糸切れを多発させ、安定した製造が困難となる。
【0033】
また、延伸時の液浴の温度は65〜75℃とする。65℃未満では熱量不足により、糸切れが多発して安定した製造が困難となり、75℃を超えると熱量が高いために繊維が正常な延伸挙動を示し、失透状態とならない繊維がかなりの割合で生じる。延伸時の液浴としては、水もしくは通常の添加剤を含む水溶液を所定温度に加熱した温水浴を用いればよい。
【0034】
延伸後は、スタッファーボックスなどを用いて機械けん縮を付与する。例えば6〜15山/25mm程度の機械けん縮を付与すればよい。次いで、所定の繊維長(例えば10〜76mmの繊維長)になるように、ECカッターなどを用いて切断することにより、ポリ乳酸原綿を製造する。
【0035】
本発明のポリ乳酸原綿は、アルカリ減量処理用の溶解繊維として有用であるので、非溶解繊維と混紡や混編織することにより織編物とした後に、アルカリ溶液にて処理を行いポリ乳酸繊維を溶解除去することにより、空隙をもつ編織物を製造することができる。ここで、非溶解繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートのうちの少なくとも1種類からなる原綿を用いればよい。
【0036】
また、ポリ乳酸原綿と上記非溶解繊維原綿とを含む混紡糸の製法は特に制限されないが、例えば、あらかじめ混綿した後に紡績して得られる混紡糸、あらかじめ混綿した2本の繊維束として精紡交撚した混紡糸、別々の繊維束を作製し、精紡交撚して得られる精紡交撚糸などを挙げることができる。
【0037】
さらに、アルカリ減量処理において用いるアルカリ溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの苛性アルカリの水溶液であれば特に限定されないが、特に水酸化ナトリウム水溶液が好ましく、苛性アルカリ濃度については、10〜80g/Lの水溶液とすることが好ましい。その濃度が80g/Lを越えると、非溶解繊維の損傷を招くばかりか、生産作業者にとっての取り扱いに危険が伴う。10g/L未満の場合、溶出時間の延長により生産性の低下を招く。より好ましくは30〜60g/Lである。処理温度は80〜115℃であることが好ましく、より好ましくは90〜100℃である。115℃を越えると、非溶解繊維の損傷を招く。また、80℃未満の場合は、溶出時間の延長により生産性の低下を招く。
【0038】
さらに減量加工する方法としては、コールドパッチ法、吊り法による浸積状態での処理、液流染色機などを用いた撹拌状態での処理などいかなる方法でも良いが、撹拌状態での処理が好ましい。
【0039】
本発明のポリ乳酸原綿はアルカリ減量処理を要する用途に好ましく用いられる。特に、他原綿と混綿し、織編加工後にアルカリ処理をすることで嵩高性に優れた織編物を製造することができ、該嵩高性織編物は衣料、インテリア用途を始めとした分野にて好ましく用いられる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明する。本実施例で用いた特性の測定方法は以下の通りである。
【0041】
[繊度、強度、伸度]
JIS L−1015(1999年改正)に示される方法により繊度(dtex)、強度(cN/dtex)、伸度(%)を測定する。
【0042】
[原綿中の失透糸の存在率]
原綿中のポリ乳酸短繊維を同方向に重なり合わないように試料台に置く。実体顕微鏡(ニコン実体顕微鏡HFX型)を用い、1本の短繊維の表面をランダムに10点観察を行い、すべての観察点にて、繊維長10μmあたりの凸部の数が5〜10個確認できた短繊維を失透糸と判定する。ただし、比較例2においては、凸部の数がそれ以上でも失透状態にある短繊維は失透糸と判定した。
【0043】
また、サンプルに関しては、製造した原綿からランダムに10箇所から採取し、各箇所の30本の短繊維について観察する(10箇所×30本=300本の短繊維)。
【0044】
失当糸存在率は、観察サンプル300本の重量に対する失透糸の重量の割合で表す。
失透糸存在率(%)=[(失透糸重量)/(観察サンプル重量)]×100
また、失透糸における繊維長10μmあたりの凸部の数のばらつき範囲を、失透糸中の凹凸の数として表す。
【0045】
[延伸性の評価]
延伸性は、延伸時の糸切れ状態ならびにローラーへの巻き付き発生頻度から総合的に評価した。通常のポリ乳酸原綿を延伸する場合と同程度の延伸性を示す場合を「良好」とし、それよりも明らかに悪化が確認できる、または延伸が不可能な場合を「不良」とする。
【0046】
[ポリ乳酸残存の有無]
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度15℃/分の条件にて、アルカリ減量加工後の平織物の融点を測定し、ポリ乳酸に帰属されるピークの有無を確認し、ポリ乳酸残存の有無を判定する。
【0047】
(実施例1)
融点170℃であるポリ乳酸チップ[ネイチャーワークス社;6201D]を100℃に設定した熱風乾燥機で10時間乾燥した。乾燥したチップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、紡糸温度240℃にて溶融紡糸し、この紡糸糸条を冷却させ、油剤付与、集束させた後、1000m/分で引き取り、未延伸糸を製造した。得られた未延伸糸の糸条を更に集束させ80ktexのトウとして、75℃の温水浴中で3.2倍に延伸した。その後、スタッファーボックスで機械けん縮を付与し、130℃×20分で弛緩熱処理した後、アルキルエステル系成分の油剤を繊維に対して0.35wt%になるようにスプレー方式にて付与し、繊維長38mmに切断し、ポリ乳酸原綿を製造した。
【0048】
得られたポリ乳酸原綿とポリエチレンテレフタレート短繊維(原綿)とを20:80の割合で混紡して、番手をメートル番手1/48、撚り係数(インチ方式)k=3.2で2インチ紡績方式により紡績糸を製造した。この紡績糸を用いて平織物を製造し、水酸化ナトリウム50g/l、浴比1:30、90℃の条件下で30分間のアルカリ減量処理を実施した。得られた原綿ならび平織物の物性を表1に示す。
(実施例2)
実施例1で得られた未延伸糸の糸条を25ktexのトウとして、70℃の温水中で3.6倍に延伸する以外は実施例1と同様の方法でポリ乳酸原綿、紡績糸ならび平織物を製造し、アルカリ減量処理した。
(実施例3)
非溶解繊維をポリプロピレンテレフタレート短繊維(原綿)に替え、ポリ乳酸原綿とポリプロピレンテレフタレート短繊維(原綿)との混合割合を30:70にして混紡する以外は実施例1と同様の方法でポリ乳酸原綿、紡績糸ならび平織物を製造し、アルカリ減量処理した。
(比較例1)
実施例1で得られた未延伸糸の糸条を100ktexのトウとして、80℃の温水中で延伸する以外は実施例1と同様の方法でポリ乳酸原綿、紡績糸ならび平織物を製造し、アルカリ減量処理した。
(比較例2)
実施例1で得られた未延伸糸の糸条を120ktexのトウとして、65℃の温水中で延伸する以外は実施例1と同様の方法でポリ乳酸原綿を製造したところ、延伸での糸切れやローラー巻き付き、融着などが多発し、安定した製造が不可能であった。
(比較例3)
実施例1で得られた未延伸糸の糸条を5ktexのトウとして、70℃の温水中で延伸する以外は実施例1と同様の方法でポリ乳酸原綿、紡績糸ならび平織物を製造し、アルカリ減量処理した。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸短繊維からなる原綿であって、原綿全体の95%以上の短繊維が、繊維表面に畝状の凹凸が存在する短繊維であることを特徴とするポリ乳酸原綿。
【請求項2】
繊維表面に畝状の凹凸が存在する短繊維は、畝状の凹凸として、繊維長10μmあたりの凸部の数が5〜10個である凹凸を有することを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸原綿。
【請求項3】
ポリ乳酸を溶融紡糸し集束させてトウとし、総繊度10〜100ktexのトウを65〜75℃の液浴中にて2.0倍以上に延伸し、その後、機械けん縮を付与し、所定の繊維長に切断し、請求項1又は2記載の原綿を製造することを特徴とするポリ乳酸原綿の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のポリ乳酸原綿と、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートのうちの少なくとも1種類からなる原綿とを混合させてなる混合原綿から織編物を製造し、その後、アルカリ溶液で処理することによりポリ乳酸繊維を除去することを特徴とする織編物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−174384(P2010−174384A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15063(P2009−15063)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】