説明

ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法

【課題】ポリ乳酸樹脂組成物において、優れた可撓性及び耐熱性を得る。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法は、ポリ乳酸樹脂及び表面処理を施した無機粉体を含む混合物を同方向噛み合型二軸押出機を用い、条件1〜3を満たして混練する。条件1:バレルの原料供給口の中心位置から少なくとも6.3D〜13Dmmの範囲を含むように設けられると共に、バレルの設定温度が(Tm+50)〜(Tm+80)℃であり、且つスクリューに搬送エレメントが設けられた第1温度設定ゾーン、及び少なくとも19.3Dmm以降の範囲を含むように設けられると共に、バレルの設定温度が(Tm-20)〜(Tm+40)℃である第2温度設定ゾーンを有する。条件2:13D〜20.9Dmmの範囲内に、長さが1D〜4Dmmであり、スクリューに混練エレメントが設けられた第1混練部を有する。条件3:20.9Dmm以降の範囲内に、長さが1D〜4Dmmであり、スクリューに混練エレメントが設けられた第2混練部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ乳酸樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂から樹脂成形品を製造する場合、一般的に、成形材料として例えばペレット状の樹脂組成物が用いられる。そして、かかる樹脂組成物は、通常、押出機により製造される。
【0003】
押出機を用いた樹脂組成物の製造方法として、例えば、特許文献1には、同方向噛み合型二軸押出機を用い、シリンダにフィード開口部から所定長さだけ離れた位置にベントポートを設置し、この間のスクリューが、フィード開口部側から順に、各々、所定長さの固体輸送部分、固体圧縮部分、剪断部分、及び揮発分分離部分よりなり、この間のシリンダ温度を(熱可塑性樹脂の融点Tm−50)〜(Tm+90)℃又は(熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg)〜(Tg+120)℃に設定することによりベントポートから溶媒を分離することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、同方向噛み合型二軸押出機を用い、シリンダ内を、材料供給口から出口までの間に設置されるスクリューエレメントにより、固体輸送ゾーン、ミキシングゾーン、及び溶融ゾーンの3ゾーンに分画し、そして、各ゾーンでの混練温度を、樹脂の融点Tmより0〜50℃高い温度範囲内又はガラス転移温度Tgより80〜150℃高い温度範囲内に設定し、材料がこれらのゾーンを順次通過する間に混練を行うことが開示されている。
【0005】
また、近年の環境問題に対する関心の高まりから、生分解性樹脂材料に注目が集まっている。
【0006】
例えば、特許文献3には、生分解性樹脂材料である乳酸系樹脂100重量部に対して、エポキシシランカップリング剤で表面処理された、平均粒径が7μm以下の金属水酸化物を20〜120重量部配合してなる射出成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−047496号公報
【特許文献2】特開2008−155570号公報
【特許文献3】特開2004−263180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ポリ乳酸樹脂組成物において、優れた可撓性及び耐熱性を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリ乳酸樹脂と、前記ポリ乳酸樹脂100重量部に対する含有量が50〜200重量部である表面処理を施した無機粉体と、を含む混合物を、各々、搬送エレメント及び混練エレメントを含むスクリューエレメントが長さ方向に沿って連設された外径Dが30mm以上の一対のスクリューが、長さ方向に沿って相互に独立した温度設定が可能な複数の部分に分割されるバレルに並行に挿通され、且つ前記スクリューのスクリューエレメントが長さ方向に沿って連設されて構成されたスクリュー有効部のうち前記バレルの原料供給口の中心に対応する位置から下流側の部分の長さLの前記スクリューの外径Dに対する比(L/D)が30以上である同方向噛み合型二軸押出機を用い、下記条件1〜3を満たして混練するポリ乳酸樹脂組成物の製造方法である。
条件1:バレルの原料供給口の中心位置から少なくとも6.3D〜13Dmmの範囲を含むように設けられると共に、バレルの設定温度が、ポリ乳酸樹脂の融点をTmとして、(Tm+50)〜(Tm+80)℃であり、且つスクリューに搬送エレメントが設けられた第1温度設定ゾーン、及び前記第1温度設定ゾーンより下流側におけるバレルの原料供給口の中心位置から少なくとも19.3Dmm以降の範囲を含むように設けられると共に、バレルの設定温度が(Tm−20)〜(Tm+40)℃である第2温度設定ゾーンを有する。
条件2:バレルの原料供給口の中心位置から13D〜20.9Dmmの範囲内に始点及び終点を有するように設けられると共に、長さが1D〜4Dmmであり、且つスクリューに混練エレメントが設けられた第1混練部を有する。
条件3:バレルの原料供給口の中心位置から20.9Dmm以降の範囲内に始点を有するように設けられると共に、長さが1D〜4Dmmであり、且つスクリューに混練エレメントが設けられた第2混練部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリ乳酸樹脂と表面処理を施した無機粉体とを含む混合物を同方向噛み合型二軸押出機を用いて混練するに際し、特定の第1及び特定の第2温度設定ゾーン並びに第1及び第2混練部を設けることにより、製造されたポリ乳酸樹脂組成物において、優れた可撓性及び耐熱性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る同方向噛み合型二軸押出機を示す
【図2】バレル内部を示す平面図である。
【図3】バレル内部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0013】
(同方向噛み合型二軸押出機)
図1は本実施形態に係る同方向噛み合型二軸押出機100を示す。
【0014】
本実施形態に係る同方向噛み合型二軸押出機100は、一対のスクリュー10及びバレル20を有しており、一対のスクリュー10が横方向に並行に配置されてバレル20に挿通され且つ同方向に回転可能に設けられている。そして、一対のスクリュー10が同方向に回転して、スクリュー10とバレル20の内壁との間に形成される空隙で原料を上流側から下流側に搬送すると共に混練するように構成されている。
【0015】
バレル20の上流端部には原料供給部30が設けられている。原料供給部30は、複数のフィーダー31及びホッパー32を有しており、複数のフィーダー31のそれぞれが各原料を設定供給量でホッパー32から原料供給口20aを介してバレル20内に供給するように構成されている。
【0016】
バレル20の上流側には回転駆動部40が設けられており、その回転駆動部40に一対のスクリュー10の一端部がそれぞれ結合している。回転駆動部40は、駆動モータ及びギアボックスを有しており、それらによってスクリュー10を設定回転数で回転駆動し、ポリ乳酸樹脂と表面処理を施した無機粉体とを含む混合物(以下「樹脂混合物M’」という。)を混練するように構成されている。
【0017】
バレル20の下流端にはダイ22が設けられている。ダイ22は、ヒータを有しており、樹脂混合物M’の溶融混練物(以下「混練物M」という。)を設定温度で吐出口から紐状或いはシート状等の所定の形状に押し出すように構成されている。
【0018】
バレル20の下流側には冷却槽50及びペレタイズ部60が順に設けられている。冷却槽50には、冷却水Wが貯留されており、ダイ22から押し出された混練物Mを冷却水Wに浸漬して冷却するように構成されている。なお、混練物Mの冷却手段は、水冷に限定されるものではなく、空冷であってもよい。ペレタイズ部60は、冷却槽50で冷却された混練物Mをペレット状等にペレタイズするように構成されている。
【0019】
なお、バレル20には脱気機構やサイドフィーダーが設けられていてもよい。
【0020】
図2及び3は一対のスクリュー10が挿通されたバレル20の内部を示す。
【0021】
各スクリュー10は、複数のスクリューエレメント111,112が回転軸12の長さ方向に沿って連設されて構成されている。各スクリュー10の外径Dは30mm以上であり、35mm以上であることが好ましい。各スクリュー10は、スクリューエレメント111,112が長さ方向に沿って連設された部分がスクリュー有効部を構成し、また、その長さ、つまり、スクリューエレメント111,112の長さの和がスクリュー有効長Leとなる。スクリュー有効部のうち、スクリュー10外部にあるバレル20の原料供給口20aの中心を基準として、その中心に対応する位置から下流側の部分の長さL1のスクリュー10の外径Dに対する比(L1/D)は、樹脂混合物M’の十分な混練を行うため30以上である。また、樹脂混合物M’の発熱等による劣化を防止する観点からは、60以下であることが好ましい。スクリューエレメント111,112の長さL2のスクリュー10の外径Dに対する比(L2/D)は例えば0.1〜3.0であることが好ましく、0.5〜2.0であることがより好ましい。
【0022】
複数のスクリューエレメント111,112は搬送エレメント111及び混練エレメント112を含む。一対のスクリュー10のそれぞれは、その長さ方向に沿って、任意の位置に搬送エレメント111又は混練エレメント112を配置させることができるように構成されており、搬送エレメント111が設けられた部分に搬送部が構成され、混練エレメント112が設けられた部分に混練部が構成される。
【0023】
搬送エレメント111は、図2に示すように、帯状のスクリュー羽根が回転軸12側に結合して螺旋状に設けられた構造を有する。スクリュー羽根の螺旋のピッチPのスクリュー10の外径Dに対する比(P/D)は例えば0.1〜2.0である。各スクリュー10に設けられる複数の搬送エレメント111は、螺旋のピッチPが均一であってもよく、また、螺旋のピッチPが異なるものが混在してもよい。なお、この螺旋のピッチPの大小により樹脂混合物M’の搬送速度を制御することができる。
【0024】
混練エレメント112は、樹脂混合物M’に対して搬送エレメント111よりも高剪断を与えるように構成されている。かかる混練エレメント112としては、例えば特開平10−272624号公報に開示されているように、順ニーディングディスク、逆ニーディングディスク、順ローター、逆ローター、パイナップル、中立、ワイド等が挙げられる。
【0025】
一対のスクリュー10は、横方向に並行に配置されているが、それらが同方向に回転した際には、平面視において干渉部分を有さないものの、正面視において、一方の回転軌跡と他方の回転軌跡とが重複部分を有し、それにより噛み合い構造を形成する。なお、一対のスクリュー10は、通常は、長さ方向の同じ位置に同種のスクリューエレメント111,112が設けられるが、それらが同方向に回転した際に、平面視において干渉部分を有さなければ、長さ方向の同じ位置に異種のスクリューエレメント111,112が設けられてもよい。
【0026】
バレル20は、複数の筒状のバレルユニット21が連設されて構成されており、横断面外郭形状が、互いに交差する一対の円形で構成される輪郭形状であるスクリュー挿通孔23が長さ方向に延びるように形成されている。バレルユニット21の連設数は例えば7〜20個である。各バレルユニット21の長さL3のスクリュー10の外径Dに対する比(L3/D)は例えば3〜5である。
【0027】
各バレルユニット21にはヒータが設けられている。従って、バレル20は、バレルユニット21単位の複数の部分に分割され、その分割単位で、長さ方向に沿って相互に独立した温度設定が可能に構成されている。なお、各バレルユニット21には温度制御用の図示しない冷却手段が設けられている。
【0028】
本実施形態に係る同方向噛み合型二軸押出機100において、各部のヒータや回転駆動部40の駆動モータ等は、図示しない制御部に接続されている。
【0029】
市販の同方向噛み合型二軸押出機としては、例えば、東芝機械社製のTEMシリーズ、日本製鋼所社製のTEXシリーズ、ワーナー社製のZSK型、池貝鉄工社製のPCMシリーズ等が挙げられる。
【0030】
(ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る前記同方向噛み合型二軸押出機100を用いたポリ乳酸樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0031】
<原料>
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法において用いる原料は、ポリ乳酸樹脂及び表面処理を施した無機粉体を含む。
【0032】
−ポリ乳酸樹脂−
原料として用いるポリ乳酸樹脂としては、モノマーとして乳酸成分のみを縮重合させたポリ乳酸、モノマーとして乳酸成分と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸成分(以下「ヒドロキシカルボン酸成分」という。)とを縮重合させた共重合体のポリ乳酸が挙げられる。ポリ乳酸樹脂は、これらのいずれか一方が含まれて構成されていてもよく、また、両方が含まれて構成されていてもよい。ポリ乳酸樹脂は、自然界において微生物が関与して低分子化合物に分解される生分解性を有しているものが好ましい。なお、本明細書において「生分解性」とは、自然界において微生物によって低分子化合物に分解され得る性質のことであり、具体的には、JIS K6953(ISO14855)「制御された好気的コンポスト条件の好気的かつ究極的な生分解度及び崩壊度試験」に基づいた生分解性のことを意味する。
【0033】
乳酸成分には、L−乳酸(L体)及びD−乳酸(D体)の光学異性体が存在する。原料として用いるポリ乳酸樹脂は、乳酸成分として、いずれか一方の光学異性体のみを含むものであってもよく、また、両方を含むものであってもよい。製造するポリ乳酸樹脂組成物の、可撓性、耐熱性、及び成形性を高める観点からは、いずれかの光学異性体を主成分とする光学純度が高い乳酸成分を含むポリ乳酸樹脂が好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、乳酸成分中の含有量が50モル%以上である成分のことをいう。
【0034】
ヒドロキシカルボン酸成分としては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物が挙げられる。これらのうち製造するポリ乳酸樹脂組成物の、可撓性、耐熱性、及び透明性を高める観点からは、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。ヒドロキシカルボン酸成分は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0035】
乳酸成分及びヒドロキシカルボン酸成分には、乳酸或いはヒドロキシカルボン酸化合物の2量体が含まれていてもよい。好適例としては、製造するポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性及び透明性を高めるD−ラクチド及びL−ラクチドが挙げられる。なお、乳酸の2量体は、乳酸成分のみを縮重合させたポリ乳酸、及び乳酸成分とヒドロキシカルボン酸成分とを縮重合させたポリ乳酸のいずれの乳酸成分に含有されていてもよい。
【0036】
乳酸成分中の乳酸の2量体の含有量は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、80〜100モル%であることが好ましく、90〜100モル%であることがより好ましい。
【0037】
ヒドロキシカルボン酸成分中のヒドロキシカルボン酸化合物の2量体の含有量は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、80〜100モル%であることが好ましく、90〜100モル%であることがより好ましい。
【0038】
乳酸成分のみを縮重合させる方法、及び乳酸成分とヒドロキシカルボン酸成分とを縮重合させる方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。
【0039】
縮重合させるモノマーを選択すれば、例えば、L−乳酸成分又はD−乳酸成分が85モル%以上100モル%未満で且つヒドロキシカルボン酸成分が0モル%超15モル%以下のポリ乳酸を得ることができる。原料として用いるポリ乳酸樹脂としては、かかるポリ乳酸のうち、乳酸の環状二量体であるラクチド、グリコール酸の環状二量体であるグリコリド、及びカプロラクトンをモノマーとして用いて得られるポリ乳酸が好ましい。なお、ポリ乳酸の光学純度は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。ポリ乳酸の光学純度は、「ポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準 第3版改訂版 2004年6月追補 第3部 衛生試験法 P12-13」記載のD体含有量の測定方法に基づいて求めることができる。
【0040】
ポリ乳酸樹脂は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、異なる異性体を主成分とする乳酸成分を用いて得られた2種類のポリ乳酸からなるステレオコンプレックスポリ乳酸で構成されていてもよい。
【0041】
ステレオコンプレックスポリ乳酸に含まれる一方のポリ乳酸(以下「ポリ乳酸A」という。)は、L−乳酸成分90〜100モル%及びD−乳酸成分を含むその他の成分0〜10モル%からなる。他方のポリ乳酸(以下「ポリ乳酸B」という。)は、D−乳酸成分90〜100モル%及びL−乳酸成分を含むその他の成分0〜10モル%からなる。ステレオコンプレックスポリ乳酸は、ポリ乳酸Aとポリ乳酸Bとの重量比(ポリ乳酸A/ポリ乳酸B)が10/90〜90/10であることが好ましく、20/80/80/20であることがより好ましく、40/60〜60/40であることがさらに好ましい。なお、L−乳酸成分及びD−乳酸成分以外のその他の成分としては、例えば、エステル結合を形成可能な官能基を分子内に2個以上有するジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどの物質、未反応の前記官能基を分子内に2個以上有するポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0042】
ポリ乳酸樹脂の融点(Tm)は、可塑剤及び結晶核剤等の内添剤の分散性を高め、また、製造するポリ乳酸樹脂組成物の曲げ強度を高め、劣化を抑制し、及び生産性を高める観点から、140〜250℃であることが好ましく、150〜240℃であることがより好ましく、160〜230℃であることがさらに好ましい。なお、ポリ乳酸樹脂の融点は、JIS−K7121に基づく示差走査熱量測定(DSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より測定することができる。
【0043】
原料として用いるポリ乳酸樹脂は、モノマーを縮重合させて得ることができる一方、市販の製品として得ることもできる。かかる市販品としては、例えば、三井化学社製のレイシアH−100、H−280、H−400、H−440などの「レイシアシリーズ」;ネイチャーワークス社製の3001D、3051D、4032D、4042D、6201D、6251D、7000D、7032Dなどの「Nature Works」;トヨタ自動車社製のエコプラスチックU'z S−09、S−12、S−17などの「エコプラスチックU'zシリーズ」等が挙げられ、これらは、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から好ましいものである。
【0044】
−表面処理を施した無機粉体−
無機粉体としては、例えば、金属水酸化物、金属水和物、層状珪酸塩等が挙げられる。無機粉体は、単一種が配合されてもよく、また、複数種が配合されてもよい。
【0045】
金属水酸化物又は金属水和物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、カルシウム・アルミネート水和物、酸化スズ水和物、プロゴバイト、硝酸亜鉛六水和物、硝酸ニッケル六水和物等が挙げられる。これらのうち製造するポリ乳酸樹脂組成物のコストを低減すると共に難燃性を向上させる観点から、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムが好ましい。
【0046】
層状珪酸塩としては、例えば、タルク、スメクタイト、カオリン、マイカ、モンモリロナイト等が挙げられ、これらのうち、製造するポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性を高める観点からタルク、マイカが好ましい。
【0047】
無機粉体に施される表面処理としては、例えば、シランカップリング剤、高級脂肪酸、チタネートカップリング剤、ゾル−ゲルコーティング剤、シリコーンポリマーコーティング剤、樹脂コーティング剤、硝酸塩等を用いる表面処理が挙げられる。製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点からは、これらのうちシランカップリング剤による表面処理が好ましい。
【0048】
シランカップリング剤としては、例えば、イソシアネートシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン、エポキシシラン等のカップリング剤が挙げられる。これらのうち製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、イソシアネートシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシランのカップリング剤が好ましく、イソシアネートシランがさらに好ましい。
【0049】
イソシアネートシランとしては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0050】
アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、n−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
メルカプトシランとしては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
エポキシシランとしては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
シランカップリング剤による表面処理を施した無機粉体は、例えば、シランカップリング剤を、アセトン、酢酸エチル、トルエン等の溶媒に溶解させた溶液を、無機粉体の表面に噴霧又は塗工した後、乾燥して溶媒を除去する方法等により得ることができる。
【0054】
シランカップリング剤による表面処理を施した無機粉体は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、シランカップリング剤と無機粉体との重量比(シランカップリング剤/無機粉体)を0.1/99.9〜5/95の割合として処理したものが好ましく、0.3/99.7〜3/97の割合として処理したものがより好ましく、0.5/99.5〜2/98の割合として処理したものがさらに好ましい。
【0055】
表面処理を施した無機粉体は、平均粒径が10μm以下の粒状体であることが好ましく、平均粒径が0.1〜5μmの粒状体であることがより好ましい。この平均粒径は、回折・散乱法によって体積基準のメジアン径から求めることができる。
【0056】
表面処理を施した無機粉体のポリ乳酸樹脂100重量部に対する配合量は製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から50〜200重量部であり、60〜150重量部であることが好ましい。
【0057】
−可塑剤−
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法において用いる原料は、さらに可塑剤を含んでいてもよい。
【0058】
可塑剤としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸などの多塩基酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルなどのポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとのエステル;グリセリン、エチレングリコール、ジグリセリン、1,4−ブタンジオールなどの多価アルコールに、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを付加させた付加物のアセチル化物;ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシルなどのヒドロキシ安息香酸エステル;フタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸エステル;アジピン酸ジエステル、アジピン酸ジオクチルなどのアジピン酸エステル;マレイン酸ジ−n−ブチルなどのマレイン酸エステル;メチルトリグリコールコハク酸ジエステルなどのコハク酸エステル;アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル;リン酸トリクレジル等のアルキルリン酸エステル;トリメリット酸トリオクチルなどのトリカルボン酸エステル;アセチル化ポリオキシエチレンヘキシルエーテルなどのアセチル化ポリオキシエチレンアルキル(アルキル基の炭素数2〜15)エーテル等が挙げられる。
【0059】
可塑剤は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、アジピン酸ジエステルなどのアジピン酸エステル、メチルトリグリコールコハク酸ジエステルなどのコハク酸エステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とポリエチレングリコール(エチレンオキサイドの平均付加モル数0.5〜5)モノメチルエーテルとのエステル、酢酸とグリセリン又はエチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数3〜20)とのエステルが好ましい。
【0060】
可塑剤としては、カルボン酸エステルも好適に用いることができる。かかるカルボン酸エステルとしては、(1)炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコール、(2)炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸、及び(3)炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコールから得られ、酸価が1mgKOH/g以下であると共に水酸基価が5mgKOH/g以下であり且つ数平均分子量が300〜700であるものが好ましい。
【0061】
また、リン酸エステルも好適に用いることができる。かかるリン酸エステルとしては、ポリエーテル型リン酸トリエステルが好ましい。ポリエーテル型リン酸トリエステルは、対象構造を有していてもよく、また、非対称構造を有していてもよい。
【0062】
可塑剤は、単一種が配合されてもよく、また、複数種が配合されてもよい。可塑剤のポリ乳酸樹脂100重量部に対する配合量は、ポリ乳酸樹脂組成物の可撓性を高める観点から、3〜50重量部であることが好ましく、3〜30重量%であることがより好ましく、3〜20重量%であることがさらに好ましい。
【0063】
−結晶核剤−
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法において用いる原料は、さらに結晶核剤を含んでいてもよい。
【0064】
結晶核剤としては、例えば、脂肪酸モノアミド、脂肪酸ビスアミド、芳香族カルボン酸アミド、ロジン酸アミドなどのアミド類;ヒドロキシ脂肪酸エステル類;芳香族スルホン酸ジアルキルエステルの金属塩、フェニルホスホン酸金属塩、リン酸エステルの金属塩、ロジン酸類金属塩などの金属塩類;カルボヒドラジド類、N−置換尿素類、有機顔料類等が挙げられる。
【0065】
結晶核剤は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物の単独使用、又は分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物とフェニルホスホン酸金属塩との併用が好ましい。
【0066】
分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物としては、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミなどのヒドロキシ脂肪酸モノアミド;メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドなどのヒドロキシ脂肪酸ビスアミドが挙げられる。製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性、耐熱性、耐衝撃性、耐ブルーム性、及び成形性を高める観点からは、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のアルキレンビスヒドロキシステアリン酸アミドが好ましく、これらのうちエチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドがより好ましい。
【0067】
フェニルホスホン酸金属塩は、置換基を有してもよいフェニル基及びホスホン基(−PO(OH)2)を有するフェニルホスホン酸の金属塩であり、フェニル基の置換基として、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基の炭素数が1〜10のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0068】
フェニルホスホン酸としては、例えば、無置換のフェニルホスホン酸、メチルフェニルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸、ジエトキシカルボニルフェニルホスホン酸等が挙げられ、これらのうち無置換のフェニルホスホン酸が好ましい。
【0069】
フェニルホスホン酸金属塩を構成する金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、銅、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル等が挙げられ、これらのうち亜鉛が好ましい。
【0070】
分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物とフェニルホスホン酸金属塩とを併用する場合、それらの割合は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、分子中に水酸基及びアミド基を有する化合物とフェニルホスホン酸金属塩との重量比(分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物/フェニルホスホン酸金属塩の重量比)が20/80〜80/20であることが好ましく、30/70〜70/30であることがより好ましく、40/60〜60/40でることがさらに好ましい。
【0071】
結晶核剤は、単一種が配合されてもよく、また、複数種が配合されてもよい。結晶核剤のポリ乳酸樹脂100重量部に対する配合量は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、0.05〜10重量部であることが好ましく、0.05〜8重量部であることがより好ましく、0.05〜5重量部であることがさらに好ましい。
【0072】
−加水分解抑制剤−
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法において用いる原料は、さらに加水分解抑制剤を含んでいてもよい。
【0073】
加水分解抑制剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、特開2009−270087号公報の段落0042〜0044に記載されたものが挙げられる。加水分解抑制剤は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の成形性を高める観点から、ポリカルボジイミド化合物が好ましい。製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性、耐熱性、耐衝撃性、及び有機結晶核剤の耐ブルーム性を高める観点からは、モノカルボジイミド化合物が好ましい。製造するポリ乳酸樹脂組成物の耐久性を高める観点からは、モノカルボジイミド化合物とポリカルボジイミド化合物の併用が好ましい。
【0074】
加水分解抑制剤は、単一種が配合されてもよく、また、複数種が配合されてもよい。加水分解抑制剤のポリ乳酸樹脂100重量部に対する配合量は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性、耐熱性、及び耐久性を高める観点から、0.05〜10重量部であることが好ましい。
【0075】
−その他の原料成分−
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法において用いる原料は、その他に、ヒンダードフェノールやフォスファイト系の酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤の滑剤を含んでいてもよい。酸化防止剤のポリ乳酸樹脂100重量部に対する配合量は例えば0.05〜3重量部である。滑剤のポリ乳酸樹脂100重量部に対する配合量は例えば0.1〜2重量部である。
【0076】
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法において用いる原料は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を劣化させない範囲で、さらに難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、ドリップ防止剤等を含んでいてもよい。
【0077】
前記添加剤のうち難燃剤としては、製造するポリ乳酸樹脂組成物の難燃性、可撓性、及び耐熱性を高める観点から、リン系難燃剤が好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物の難燃性を向上させるリン系難燃剤としては、例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、リン酸塩、縮合リン酸塩等が挙げられる。リン系難燃剤は、単一種が配合されてもよく、また、複数種が配合されてもよい。
【0078】
リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスファフェナンスレン等が挙げられ、これらのうちトリフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェートが好ましい。
【0079】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル) ホスフェートならびにこれらの縮合物などの縮合リン酸エステル等が挙げられる。市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−202、CR−733S、CR−741、CR747、ADEKA社製アデカスタブPFR、FP−500、FP−600、FP−700等が挙げられ、これらのうちPX−200、PX−201、PX−202が好ましい。
【0080】
リン酸塩、縮合リン酸塩としては、例えば、リン酸、ポリリン酸と周期律表1〜14族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンとの塩からなるリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ポリリン酸塩の代表的な塩としては、例えば、金属塩であるリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、アルミニウム塩など;脂肪族アミン塩であるメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩など;芳香族アミン塩であるピリジン塩、トリアジン塩、メラミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。市販のリン酸塩、ポリリン酸塩としては、例えば、太平化学産業社製タイエンN、タイエンL、タイエンE、タイエンS、タイエンH、クラリアント社製ClariantAP475、ClariantAP475、ClariantAP750、Clariant1312、Clariant1250、ADEKA社製FP−2100、FP−2100J、FP−2200、鈴裕化学社製FC730、Budenheimu社製BUDIT3167、日本化学工業社製N−6ME、日産化学社製PHOSMEL−200等が挙げられ、これらのうちADEKA社製FP−2100、FP−2100J、FP−2200、日産化学社製PHOSMEL−200が好ましい。
【0081】
さらにドリップ防止剤としては、例えば、フッ素樹脂やフェノール系樹脂などの熱硬化性樹脂等が挙げられる。フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどのフッ素含有モノマーの単独又は共重合体;前記フッ素含有モノマーと、エチレン、プロピレン、(メタ)アクリレートなどの共重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。ドリップ防止剤は、単一種が配合されてもよく、また、複数種が配合されてもよい。
【0082】
<混練>
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法では、同方向噛み合型二軸押出機100に原料を投入して下記の条件1〜3の下で混練を行う。本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法によれば、ポリ乳酸樹脂と表面処理を施した無機粉体とを含む混合物を同方向噛み合型二軸押出機を用いて混練するに際し、以下の通り、特定の第1及び特定の第2温度設定ゾーン並びに第1及び第2混練部を設けることにより、製造されたポリ乳酸樹脂組成物において、優れた可撓性及び耐熱性を得ることができる。
【0083】
−条件1−
条件1として、バレル20内に、バレル20の原料供給口20aの中心位置から少なくとも6.3D〜13Dmmの範囲を含むように第1温度設定ゾーンを設ける。なお、以下、Dを用いたバレル20内の位置表示(D表示)は、バレル20の原料供給口20aの中心位置からの距離を意味する。
【0084】
第1温度設定ゾーンでは、バレルユニット21の設定温度を、ポリ乳酸樹脂の融点をTmとして、(Tm+50)〜(Tm+80)℃に設定する。このバレルユニット21の設定温度は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、210〜240℃とすることが好ましく、210〜230℃とすることがより好ましい。なお、この第1温度設定ゾーンでは、(Tm+50)〜(Tm+80)℃に設定されたバレル20内で、溶融状態のポリ乳酸樹脂に、表面処理を施した無機粉体を含む内添剤が混練により分散し、それによって樹脂混合物M’が形成される。
【0085】
第1温度設定ゾーンの始点は、第1温度設定ゾーンが少なくとも6.3D〜13Dmmの範囲を含めば特に限定されるものではない。
【0086】
第1温度設定ゾーンでは、スクリュー10の対応する部分にスクリューエレメント111,112のうち搬送エレメント111を設け、従って、搬送エレメント111により樹脂混合物M’の搬送及び混練を行う。
【0087】
加えて、条件1として、バレル20内に、第1温度設定ゾーンより下流側におけるバレル20の原料供給口20aの中心位置から少なくとも19.3Dmm以降の範囲を含むように第2温度設定ゾーンを設ける。
【0088】
第2温度設定ゾーンでは、バレルユニット21の設定温度を(Tm−20)〜(Tm+40)℃、好ましくは(Tm)〜(Tm+30)℃に設定する。このバレルユニット21の設定温度は、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、140〜200℃とすることが好ましく、160〜190℃とすることがより好ましい。
【0089】
第2温度設定ゾーンの始点は、第1温度設定ゾーンより下流側であり、第2温度設定ゾーンが少なくとも19.3Dmm以降の範囲を含めば特に限定されるものではない。
【0090】
第2温度設定ゾーンでは、スクリュー10の対応する部分にスクリューエレメント111,112のうち搬送エレメント111を設け、搬送エレメント111により樹脂混合物M’の搬送及び混練を行ってもよく、また、混練エレメント112を設け、混練エレメント112により樹脂混合物M’の混練を行ってもよい。なお、下記の通り、条件3の第2混練部は、この第2温度設定ゾーンに含まれる。
【0091】
−条件2−
条件2として、バレル20の原料供給口20aの中心位置から13D〜20.9Dmmの範囲内に始点及び終点を有するように、長さが1D〜4Dmmである第1混練部を設ける。
【0092】
第1混練部の始点は、第1混練部が13D〜20.9Dmmの範囲内に始点及び終点を有せば特に限定されるものではないが、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、第1温度設定ゾーンの終点から7Dmm以内に位置付けることが好ましく、第1温度設定ゾーンの終点と一致するように位置付けることがより好ましい。
【0093】
第1混練部では、スクリュー10の対応する部分にスクリューエレメント111,112のうち混練エレメント112を設け、従って、混練エレメント112により樹脂混合物M’の混練を行う。
【0094】
第1混練部におけるバレルユニット21の設定温度は、特に限定されるものではないが、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、(Tm−20)〜(Tm+80)℃とすることが好ましく、(Tm−10)〜(Tm+70)℃とすることがより好ましく、140〜240℃とすることがより好ましく、150〜230℃とすることがさらに好ましい。
【0095】
−条件3−
条件3として、バレル20の原料供給口20aの中心位置から20.9DDmm以降の範囲内に始点を有するように、長さが1D〜4Dmmである第2混練部を設ける。
【0096】
第2混練部の始点は、20.9Dmm以降の範囲内に有せば特に限定されるものではないが、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、第1温度設定ゾーンの終点から15Dmm以内に位置付けることが好ましく、10Dmm以内に位置付けることがよりより好ましく、3Dmm以内に位置付けることがさらに好ましい。また、第2混練部の始点を第1混練部の終点と一致するように位置付け、第1及び第2混練部が連続するように構成してもよい。
【0097】
第2混練部では、スクリュー10の対応する部分にスクリューエレメント111,112のうち混練エレメント112を設け、従って、混練エレメント112により樹脂混合物M’の混練を行う。
【0098】
第2混練部は、前記の通り、第2温度設定ゾーンに含まれるので、バレルユニット21の設定温度が(Tm−20)〜(Tm+40)℃であるが、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、第2混練部におけるバレルユニット21の設定温度は、(Tm)〜(Tm+0)℃とすることが好ましく、140〜200℃とすることが好ましく、160〜190℃とすることがより好ましい。
【0099】
−その他の条件−
バレル20内の第1温度設定ゾーンの上流側に、スクリュー10に搬送エレメント111を装着した搬送部を設けてもよい。かかる搬送部は、長さが例えば3.0D〜4.2Dmmであり、バレルユニット21の設定温度が例えば(Tm−150)〜(Tm+80)℃である。この搬送部は0〜5.0Dmmの範囲を含むことが好ましい。
【0100】
第1温度設定ゾーン及び第1混練部は、前記の通り、連続して設けてもよく、また、それらの間に、スクリュー10に搬送エレメント111を装着した搬送部を設けてもよい。
【0101】
また、混練条件として、時間当たりの吐出量Q(kg/時)、すなわち、原料供給量は、同方向噛み合型二軸押出機100のスケールによって適宜設定されるが、
Q=0.005D2.5〜0.03D2.5の範囲とすることが好ましい。スクリュー10の回転数Nは、同方向噛み合型二軸押出機100のスケールによって適宜設定されるが、例えば10〜1500rpmである。吐出量Q(kg/時)とスクリュー回転数N(rpm)との比Q/Nは、表面処理を施した無機粉体を含む内添剤の分散性を良好なものとし、製造するポリ乳酸樹脂組成物の可撓性及び耐熱性を高める観点から、0.2≦Q/N≦1.5の関係を有することが好ましく、0.2≦Q/N≦1.0の関係を有することがより好ましい。
【0102】
<冷却>
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法では、バレル20からダイ22を介して押し出されたポリ乳酸樹脂組成物の混練物Mを冷却槽50に貯留された冷却水Wに連続して浸漬して冷却固化させる。冷却水Wの温度は例えば10〜40℃とする。
【0103】
<ペレタイズ>
本実施形態に係るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法では、冷却槽50から引き上げられたポリ乳酸樹脂組成物の混練物Mをペレタイズ部60に投入してペレット状やチップ状にペレタイズする。ペレット状乃至チップ状のポリ乳酸樹脂組成物の粒径は例えば2〜5mmである。
【0104】
ペレタイズ部60でのペレット状等へのペレタイズ性、ペレットの乾燥、及び在庫時のペレット同士のブロッキング防止の観点から、ペレタイズ部60において混練物Mのポリ乳酸樹脂は結晶化していることが好ましく、結晶化を促進する観点から冷却槽50からペレタイズ部60に至るまでの混練物Mの表面温度を70〜120℃に保つことが好ましい。混練物Mの表面温度を前記範囲に保つ観点から、冷却槽50は少なくとも1つ、または2つ以上の槽で構成してもよく、水温は10〜90℃の範囲が好ましく、2つ以上の槽で構成する場合は異なる温度で使用してもよい。
【0105】
以上のようにして製造されたペレット状乃至チップ状のポリ乳酸樹脂組成物は、射出成形等の成形材料に供される。
【実施例】
【0106】
(ポリ乳酸樹脂組成物の製造)
以下の実施例1〜25及び比較例1〜7のポリ乳酸樹脂組成物の製造を行った。それぞれの内容については、表1〜5にも示す。
【0107】
<実施例1>
前記実施形態と同様の構成の同方向噛み合型二軸押出機(東芝機械社製 TEM−41SS)を用いてペレット状のポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例1とした。
【0108】
各スクリューは、外径Dが41mm及びスクリュー有効長Le(スクリューエレメントが設けられたスクリュー有効部の全長=バレル長)が45.65Dmmのものを用いた。各スクリューには、バレルの原料供給口の中心に対応する位置から611mmの位置(14.9Dmm)を始点とする長さが82mm(2Dmm)の部分に、上流側から混練エレメントである順ニーディング、中立、逆ニーディングを順に取り付けた(第1混練部)。また、バレルの原料供給口の中心に対応する位置から857mmの位置(20.9Dmm)を始点とする長さが82mm(2Dmm)の部分にも、上流側から混練エレメントである順ニーディング、中立を順に取り付けた(第2混練部)。なお、各スクリューのその他の部分には搬送エレメントを設けた。
【0109】
バレルは、11個のバレルユニット(L3/D=4.15)を連設して構成した。バレルは、第1ユニットに原料供給口を有し、その原料供給口の中心位置が第1ユニットの上流端から2.07Dmmの位置であった。この原料供給口の中心位置を基準とすると、バレルの長さ方向における各ユニットの位置は、第1ユニットが0〜2.08Dmm、第2ユニットが2.08D〜6.23Dmm、第3ユニットが6.23D〜10.38Dmm、第4ユニットが10.38D〜14.53Dmm、第5ユニットが14.53D〜18.68Dmm、第6ユニットが18.68D〜22.83Dmm、第7ユニットが22.83D〜26.98Dmm、第8ユニットが26.98D〜31.13Dmm、第9ユニットが31.13D〜35.28Dmm、第10ユニットが35.28D〜39.43D、及び第11ユニットが39.43D〜43.58Dmmである。また、スクリュー有効部のうちバレルの原料供給口の中心に対応する位置から下流側の部分の長さL1のスクリューの外径Dに対する比(L1/D)は43.58である。
【0110】
バレルユニットの設定温度は、上流側から順に、第1〜第2ユニット(A温度ゾーン:0〜6.23Dmm(ゾーン長さ:6.23Dmm))を50℃、第3〜第4ユニット(B温度ゾーン:6.23D〜14.53Dmm(ゾーン長さ:8.30Dmm))を220℃、並びに第5ユニット(C温度ゾーン:14.53D〜18.68Dmm(ゾーン長さ:4.15Dmm))及び第6〜第11ユニット(D温度ゾーン:18.68D〜43.58Dmm(ゾーン長さ:24.90Dmm))を180℃とした。
【0111】
原料には、ポリ乳酸樹脂(Nature Works社製 品番:4032D、融点(Tm):160℃)、及び水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、商品名:B703)99重量%に対し、イソシアネート系シランカップリング剤(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、信越化学製、商品名:KBE−9007)を1重量%表面処理を施した水酸化アルミニウム1を用いた。配合は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して水酸化アルミニウム1を100重量部とした。なお、融点(Tm)はJIS K7121に基づく示差走査熱量測定(DSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より測定した。
【0112】
混練条件は、吐出量Qを120kg/時及びスクリュー回転数Nを265rpmとした。従って、Q/Nは0.453である。
【0113】
ここで、実施例1の製造では、ポリ乳酸樹脂及び表面処理を施した水酸化アルミニウム1を、前者100重量部に対して後者100重量部の配合として原料を構成したので、本発明の原料構成条件を満たす。
【0114】
B温度ゾーンは、6.23D〜14.53Dmmが6.3D〜13Dmmの範囲を含み、また、設定温度の220℃が(Tm+50)〜(Tm+80)℃に含まれ、さらに、スクリューに搬送エレメントが設けられた。D温度ゾーンは、18.68D〜43.58Dmmが19.3Dmm以降の範囲を含み、また、設定温度の180℃が(Tm−20)〜(Tm+40)℃に含まれた。従って、B温度ゾーンが第1温度設定ゾーンに及びD温度ゾーンが第2温度設定ゾーンにそれぞれ相当し、条件1を満たす。
【0115】
第1混練部は、始点14.9Dmm及び終点16.9Dmmを13D〜20.9Dmmの範囲内に有し、また、長さ2Dmmが1D〜4Dmmであり、さらに、スクリューに混練エレメントを設けたので、条件2を満たす。
【0116】
第2混練部は、始点20.9Dmmを20.9Dmm以降の範囲内に有し、また、長さ2Dmmが1D〜4Dmmであり、さらに、スクリューに混練エレメントを設けたので、条件3を満たす。
【0117】
なお、以下の実施例2〜25についても同様に、本発明の原料構成条件及び条件1〜3を満たす。
【0118】
<実施例2>
水酸化アルミニウム1の配合量をポリ乳酸樹脂100重量部に対して50重量部としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例2とした。
【0119】
<実施例3>
水酸化アルミニウム1の配合量をポリ乳酸樹脂100重量部に対して200重量部としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例3とした。
【0120】
<実施例4>
表面処理水酸化アルミニウム1の代わりにタルク(日本タルク社製、商品名:ミクロエースP6)99重量%に対し、イソシアネート系シランカップリング剤(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、信越化学社製、商品名:KBE−9007)を1重量%表面処理を施したタルク1をポリ乳酸樹脂100重量部に対して100重量部配合したことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例4とした。
【0121】
<実施例5>
外径Dが37mm及びスクリュー有効長Leが45.65Dmm(=バレル長)のスクリューを用い、また、スクリューには、バレルの原料供給口の中心に対応する位置から551mmの位置(14.9Dmm)から74mm(2Dmm)の長さの部分(第1混練部)、及び773mmの位置(20.9Dmm)から74mm(2Dmm)の長さの部分(第2混練部)のそれぞれに混練エレメントを設け、そして、吐出量Qを95kg/時及びスクリュー回転数Nを280rpmとしたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例5とした。このとき、Q/Nは0.339である。
【0122】
<実施例6>
外径Dが58mm及びスクリュー有効長Leが45.65Dmm(=バレル長)のスクリューを用い、また、スクリューには、バレルの原料供給口の中心に対応する位置から864mmの位置(14.9Dmm)から116mm(2Dmm)の長さの部分(第1混練部)、及び1212mmの位置(20.9Dmm)から116mm(2Dmm)の長さの部分(第2混練部)のそれぞれに混練エレメントを設け、そして、吐出量Qを290kg/時及びスクリュー回転数Nを220rpmとしたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例6とした。このとき、Q/Nは1.32である。
【0123】
<実施例7>
バレルユニット数を8個とすると共にそれに対応した長さのスクリュー(スクリュー有効長Le:33.20Dmm、スクリュー有効部のうちバレルの原料供給口の中心に対応する位置から下流側の部分の長さL1のスクリューの外径Dに対する比(L1/D):31.13)を用いたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例7とした。なお、バレルの第6〜第8ユニットがD温度ゾーン(18.68D〜31.13Dmm(ゾーン長さ:12.45Dmm))に相当する。
【0124】
<実施例8>
バレルユニット数を15個とすると共にそれに対応した長さのスクリュー(スクリュー有効長Le:62.25Dmm、スクリュー有効部のうちバレルの原料供給口の中心に対応する位置から下流側の部分の長さL1のスクリューの外径Dに対する比(L1/D):60.18)を用いたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例8とした。なお、バレルの長さ方向における各ユニットの位置は、第12ユニットが43.58D〜47.73Dmm、第13ユニットが47.73D〜51.88Dmm、第14ユニットが51.88D〜56.03Dmm、及び第15ユニットが56.03D〜60.18Dmmである。また、バレルの第6〜第15ユニットがD温度ゾーン(18.68D〜60.18Dmm(ゾーン長さ:41.50Dmm))に相当する。
【0125】
【表1】

【0126】
<実施例9>
A温度ゾーンの設定温度を20℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例9とした。
【0127】
<実施例10>
A温度ゾーンの設定温度を240℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例10とした。
【0128】
<実施例11>
B温度ゾーンの設定温度を210℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例11とした。
【0129】
<実施例12>
B温度ゾーンの設定温度を240℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例12とした。
【0130】
<実施例13>
C温度ゾーンの設定温度を140℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例13とした。
【0131】
<実施例14>
C温度ゾーンの設定温度を240℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例14とした。
【0132】
<実施例15>
D温度ゾーンの設定温度を140℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例15とした。
【0133】
<実施例16>
D温度ゾーンの設定温度を200℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例16とした。
【0134】
【表2】

【0135】
<実施例17>
第1混練部を、原料供給口の中心位置から549mmの位置(13.4Dmm)から82mm(2Dmm)の長さの部分に設けたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例17とした。
【0136】
<実施例18>
第1混練部を、原料供給口の中心位置から771mmの位置(18.8Dmm)から82mm(2Dmm)の長さの部分に設けたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例18とした。この実施例18のポリ乳酸樹脂組成物の製造では、第1及び第2混練部を連続して設けた。
【0137】
<実施例19>
第1混練部を、原料供給口の中心位置から611mmの位置(14.9Dmm)から164mm(4Dmm)の長さの部分に設けたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例19とした。
【0138】
<実施例20>
第2混練部を、原料供給口の中心位置から1349mmの位置(32.9Dmm)から82mm(2Dmm)の長さの部分に設けたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例20とした。
【0139】
<実施例21>
第2混練部を、原料供給口の中心位置から857mmの位置(20.9Dmm)から164mm(4Dmm)の長さの部分に設けたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例21とした。
【0140】
【表3】

【0141】
<実施例22>
水酸化アルミニウム1の代わりに、水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、商品名:B703)99重量%に対し、アミノ系シランカップリング剤(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製、KBM−573)を1重量%表面処理を施した水酸化アルミニウム2をポリ乳酸樹脂100重量部に対して100重量部配合したことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例22とした。
【0142】
<実施例23>
水酸化アルミニウム1の代わりに、水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、商品名:B703)99重量%に対し、メルカプト系シランカップリング剤(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製、KBM−803)を1重量%表面処理を施した水酸化アルミニウム3をポリ乳酸樹脂100重量部に対して100重量部配合したことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例23とした。
【0143】
<実施例24>
ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、可塑剤1(メチルトリグリコールコハク酸ジエステル)10重量部、結晶核剤1(日本化成社製 商品名:スリパックスH、分子中に水酸基とアミド基とを有するビスアマイド)0.5重量部、結晶核剤2(日産化学社製 商品名:PPA−Zn、フェニルホスホン酸亜鉛)0.5重量部、及び加水分解抑制剤(ラインケミー社製 商品名:スタバクゾールI−LF)1重量部をさらに配合したことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例24とした。
【0144】
なお、可塑剤1は以下のようにして作製した。
【0145】
攪拌機、温度計、脱水管を備えた3Lフラスコに、無水コハク酸500g、トリエチレングリコールモノメチルエーテル2463g、パラトルエンスルホン酸−水和物9.5gを仕込み、空間部に窒素(500mL/分)を吹き込みながら、減圧下(4〜10.7kPa)、110℃で15時間反応させた。反応液の酸価は1.6(KOHmg/g)であった。
【0146】
反応液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学工業社製)27gを添加して80℃、2.7kPaで45分間攪拌してろ過した後、液温115〜200℃、圧力0.03kPaでトリエチレングリコールモノメチルエーテルを留去し、80℃に冷却後、残液を減圧ろ過して、ろ液として、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステルを得た。得られたジエステルは、酸価0.2(KOHmg/g)、鹸化価276(KOHmg/g)、水酸基価1以下(KOHmg/g)、色相APHA200であった。
【0147】
<実施例25>
ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、可塑剤2(大八化学社製 商品名:DAIFATTY−101、アジピン酸ジエステル)10重量部、結晶核剤1(日本化成社製 商品名:スリパックスH、分子中に水酸基とアミド基とを有するビスアマイド)0.5重量部、結晶核剤2(日産化学社製 商品名:PPA−Zn、フェニルホスホン酸亜鉛)0.5重量部、及び加水分解抑制剤(ラインケミー社製 商品名:スタバクゾールI−LF、カルボジイミド化合物)1重量部をさらに配合したことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを実施例25とした。
【0148】
【表4】

【0149】
<比較例1>
表面処理水酸化アルミニウム1の代わりに表面処理を施していない水酸化アルミニウム4(日本系金属社製 商品名:B703)をポリ乳酸樹脂100重量部に対して100重量部配合し、そして、B温度ゾーンの設定温度を180℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを比較例1とした。
【0150】
比較例1では、B温度ゾーンの設定温度が、ポリ乳酸樹脂の融点(Tm=160℃)より20℃高い180℃であるので、条件1を満たさず、また、表面処理を施していない水酸化アルミニウム4を用いているので、本発明の原料構成条件を満たさない。
【0151】
<比較例2>
表面処理水酸化アルミニウム1の代わりに表面処理を施していない水酸化アルミニウム4をポリ乳酸樹脂100重量部に対して100重量部配合したことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを比較例2とした。
【0152】
比較例2では、表面処理を施していない水酸化アルミニウム4を用いているので、本発明の原料構成条件を満たさない。
【0153】
<比較例3>
B温度ゾーンの設定温度を180℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを比較例3とした。
【0154】
比較例3では、B温度ゾーンの設定温度が180℃であるので、条件1を満たさない。
【0155】
<比較例4>
B温度ゾーンの設定温度を250℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを比較例4とした。
【0156】
比較例4では、B温度ゾーンの設定温度がポリ乳酸樹脂の融点(Tm=160℃)より90℃高い250℃であるので、条件1を満たさない。
【0157】
<比較例5>
D温度ゾーンの設定温度を220℃としたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを比較例5とした。
【0158】
比較例5では、D温度ゾーンの設定温度が220℃であるので、条件1を満たさない。
【0159】
<比較例6>
第1混練部を、原料供給口の中心位置から488mmの位置(11.9Dmm)から82mm(2Dmm)の長さの部分に設けたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを比較例6とした。
【0160】
比較例6では、第1混練部の始点が13Dmmよりも上流の11.9Dmm及び終点が13.9Dmmであるので、条件2を満たさない。
【0161】
<比較例7>
第1混練部を、原料供給口の中心位置から940mmの位置(22.9Dmm)から82mm(2Dmm)の長さの部分に設け、また、第2混練部を、1022mmの位置(24.9Dmm)から82mm(2Dmm)の長さの部分に設けたことを除いて実施例1と同様にポリ乳酸樹脂組成物を製造し、それを比較例7とした。
【0162】
比較例7では、第1混練部の始点が20.9Dmmよりも下流の22.9Dmm及び終点が24.9Dmmであるので、条件2を満たさない。
【0163】
【表5】

【0164】
(試験方法)
<可撓性試験;曲げ破断歪み>
実施例1〜25及び比較例1〜7のそれぞれについて、角柱状試験片(80mm×10mm×4mm)を成形して作製し、JIS K7171に基づいて曲げ試験を行い、曲げ破断歪みを測定した。曲げ試験は、テンシロン(オリエンテック社製 テンシロン万能試験機 型番:RTC−1210A)を用いて行い、クロスヘッド速度は2mm/minとした。曲げ破断歪みの値が大きいほど、可撓性に優れることを示す。結果を表1〜5に示す。
【0165】
<耐熱性試験;荷重撓み温度>
実施例1〜25及び比較例1〜7のそれぞれについて、角柱状試験片(80mm×10mm×4mm)を成形して作製し、JIS K7191に基づいて、1.81MPaの負荷がかかった状態で0.34mmの撓みが生じるときの荷重撓み温度を測定した。試験は、熱変形温度測定機(東洋精機製作所社製 型番:B−32)を用いて行った。荷重撓み温度値が大きいほど、耐熱性に優れることを示す。結果を表1〜5に示す。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明はポリ乳酸樹脂組成物の製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0167】
100 同方向噛み合型二軸押出機
10 スクリュー
111 搬送エレメント
112 混練エレメント
12 回転軸
20 バレル
20a 原料供給口
21 バレルユニット
22 ダイ
23 スクリュー挿通孔
30 原料供給部
31 フィーダー
32 ホッパー
40 回転駆動部
50 冷却槽
60 ペレタイズ部
M 混練物
M’ 樹脂混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂と、前記ポリ乳酸樹脂100重量部に対する含有量が50〜200重量部である表面処理を施した無機粉体と、を含む混合物を、
各々、搬送エレメント及び混練エレメントを含むスクリューエレメントが長さ方向に沿って連設された外径Dが30mm以上の一対のスクリューが、長さ方向に沿って相互に独立した温度設定が可能な複数の部分に分割されるバレルに並行に挿通され、且つ前記スクリューのスクリューエレメントが長さ方向に沿って連設されて構成されたスクリュー有効部のうち前記バレルの原料供給口の中心に対応する位置から下流側の部分の長さLの前記スクリューの外径Dに対する比(L/D)が30以上である同方向噛み合型二軸押出機を用い、下記条件1〜3を満たして混練するポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
条件1:バレルの原料供給口の中心位置から少なくとも6.3D〜13Dmmの範囲を含むように設けられると共に、バレルの設定温度が、ポリ乳酸樹脂の融点をTmとして、(Tm+50)〜(Tm+80)℃であり、且つスクリューに搬送エレメントが設けられた第1温度設定ゾーン、及び前記第1温度設定ゾーンより下流側におけるバレルの原料供給口の中心位置から少なくとも19.3Dmm以降の範囲を含むように設けられると共に、バレルの設定温度が(Tm−20)〜(Tm+40)℃である第2温度設定ゾーンを有する。
条件2:バレルの原料供給口の中心位置から13D〜20.9Dmmの範囲内に始点及び終点を有するように設けられると共に、長さが1D〜4Dmmであり、且つスクリューに混練エレメントが設けられた第1混練部を有する。
条件3:バレルの原料供給口の中心位置から20.9Dmm以降の範囲内に始点を有するように設けられると共に、長さが1D〜4Dmmであり、且つスクリューに混練エレメントが設けられた第2混練部を有する。
【請求項2】
前記無機粉体が、金属水酸化物及び/又は層状珪酸塩を含む請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記混合物は、可塑剤及び結晶核剤をさらに含む請求項1又は2に記載のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−131072(P2012−131072A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283537(P2010−283537)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】