説明

ポリ乳酸樹脂組成物

【課題】ポリ乳酸樹脂に十分な二次加工性を与えることができる添加剤を含有する、二次加工性、なかでも熱成形性が改善されたポリ乳酸樹脂組成物、該組成物を用いて得られるシート、該シートを二次加工して得られる成形体、該シートの二次加工方法、及び、該成形体からなる包装材を提供すること。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂、可塑剤、好ましくは式(4)及び/又は、式(5)で表される可塑剤、式(1)で表される脂肪酸ポリオキシエチレングリコールエステルやポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体などの非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2)及び/又は、式(3)で表される結晶核剤を含有してなるポリ乳酸樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物に関する。更に詳しくは、二次加工性、なかでも、熱成形性が改善されたポリ乳酸樹脂組成物、該組成物を用いて得られるシート、該シートを二次加工して得られる成形体、該シートの二次加工方法、及び、該成形体からなる包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品容器や包装容器には、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル等の各種プラスチックが使用されている。
【0003】
一方、環境意識の高まりから、このような樹脂の代替品として、良好な生分解性を有し、更には食品容器に使用しても安全な優れた環境調和型樹脂の開発が進められており、中でもポリ乳酸樹脂は、優れた生分解性を有する環境調和型の樹脂として、多くの検討が進められている。また、ポリ乳酸樹脂は透明性にも優れることから、食品容器や包装容器への適用も期待されている。
【0004】
しかし、ポリ乳酸樹脂は硬くて脆い物性を有するだけでなく、二次加工性が低く、食品容器や包装容器等に成形する場合は、柔軟性が不足したり、折り曲げたとき白化したりする等の問題があり、成形体への賦形性が悪い。
【0005】
これらのことから、ポリ乳酸樹脂の成形品は主に硬質成形品分野での使用に限られているのが現状であり、これらの欠点を補うために種々の可塑剤等を添加する方法が試みられている。
【0006】
例えば、可塑剤とポリ乳酸との親和性や可塑剤の分子量増加によるブリードアウト抑制を狙い、例えば乳酸や乳酸オリゴマー、脂肪族多価カルボン酸エステル、又はポリ乳酸とポリアルキレンエーテル等との共重合体を可塑剤として用いる試みがなされている。しかし、これら可塑剤は、成形時の熱安定性が低く、得られる成形物の強度が劣り、更には二次加工性の改善が不十分であり、またブリードアウトの問題が生じる等、様々な問題があった。
【0007】
一方、ポリ乳酸に特定の可塑剤(コハク酸エステル類)及び結晶核剤(有機系結晶核剤)を組み合わせることで、透明性を維持しながらも熱成形における結晶化を促進させ、成形体の耐熱性等を向上できることが開示されている(特許文献1参照)。また同様に、結晶核剤としてタルクを用い、これに非イオン性界面活性剤を組み合わせることで結晶化を促進させ耐熱性を向上させることが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007‐130895号公報
【特許文献2】特開2007−246624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、各種プラスチックに代替し得る樹脂として、従来のポリ乳酸樹脂ではさらなる改良が必要である。すなわち、ポリ乳酸樹脂の熱成形において、透明性を維持し、熱成形できる温度幅が広く、十分な結晶化速度を有し、すなわち十分な熱成形性(賦形性と結晶化を両立できる温度範囲が広い)を実現できるような改質剤(添加剤)の開発が望まれている。
【0010】
本発明の課題は、ポリ乳酸樹脂に十分な二次加工性を与えることができる添加剤を含有する、二次加工性、なかでも熱成形性が改善されたポリ乳酸樹脂組成物、該組成物を用いて得られるシート、該シートを二次加工して得られる成形体、該シートの二次加工方法、及び、該成形体からなる包装材を提供することにある。また、本発明の課題は、透明性、耐熱性、耐ブリード性に優れるポリ乳酸樹脂組成物、該組成物を用いて得られるシート、該シートを二次加工して得られる熱成形品等の成形体、該シートの二次加工方法、及び、該成形体からなる包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らはこのような状況に鑑みて鋭意検討した結果、ポリ乳酸樹脂、可塑剤に加えて、さらに特定の結晶核剤と特定の非イオン性界面活性剤を組み合わせることで、透明性を維持しながらも熱成形における賦形性と結晶化とを両立でき、すなわち熱成形性が著しく改善されたポリ乳酸樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、
〔1〕 ポリ乳酸樹脂、可塑剤、式(1):
−O(AO)−R (1)
〔式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、総炭素数8〜22のアシル基、又は水素原子を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は総炭素数2〜4のアシル基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0<p≦300を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い〕
で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2):
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R及びRは置換基を有していてもよい炭素数5〜21の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、同一でも異なっていても良い)
及び/又は、式(3):
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R及びRは置換基を有していてもよい炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、同一でも異なっていても良い)
で表される結晶核剤を含有してなるポリ乳酸樹脂組成物、
〔2〕 前記〔1〕記載のポリ乳酸樹脂組成物を含有してなる、相対結晶化度が80%以下であるシート、
〔3〕 前記〔2〕記載のシートを真空成形又は圧空成形してなる成形体、
〔4〕 前記〔2〕記載のシートを真空成形又は圧空成形することを特徴とする、シートの二次加工方法、ならびに
〔5〕 前記〔3〕記載の成形体からなる包装材
に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、二次加工性、なかでも熱成形性に優れることから、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて得られたシートやフィルム等を熱加工することにより、極めて容易に成形体が成形できるという効果を奏するものである。また、熱成形性に優れることから、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、透明性、耐熱性、耐ブリード性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、熱成形性評価の際に用いた金型を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂に加えて特定の添加剤、即ち、可塑剤、特定の非イオン性界面活性剤、特定の結晶核剤を含有することに1つの特徴を有する。
【0020】
(可塑剤)
本発明における可塑剤としては、特に限定はなく公知のものが挙げられ、例えば、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステルやコハク酸ジオクチル等のコハク酸エステル、ジオクチルアジペート等のアジピン酸エステルといった多価カルボン酸エステル、グリセリン等脂肪族ポリオールの脂肪酸エステル等が挙げられるが、ポリ乳酸樹脂組成物の透明性、耐熱性、耐ブリード性を向上させる観点から、式(4):
−O(AO)−CORCOO−(AO)−R10 (4)
(式中、R及びR10は炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を示し、但し、R及びR10は同一でも異なってもよく、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、但し、m又はn個のAは同一でも異なってもよく、m及びnは各々オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0≦m≦5、0≦n≦5であり、かつ1≦m+n≦8を満足する数を示す)
で表される化合物、及び/又は、式(5):
11O−CO−R12−CO−〔(OR13)O−CO−R12−CO−〕OR11 (5)
〔式中、R11は炭素数が1〜4のアルキル基、R12は炭素数が2〜4の直鎖アルキレン基、R13は炭素数が2〜6のアルキレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜6の整数であり、tは(OR13)O−CO−R12−CO−の繰り返し数を示す1〜6の数であり、但し、全てのR12は同一でも異なっていてもよく、全てのR13は同一でも異なっていてもよい〕
で表される化合物を含有していることが好ましい。
【0021】
式(4)で表されるカルボン酸エステルは、十分な分子量及び熱安定性を有し、またポリ乳酸樹脂との親和性が高いことから、耐揮発性に優れ、組成物の透明性を阻害させずに柔軟性を付与することができるという効果を奏するものである。
【0022】
式(4)におけるR及びR10は炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を示す。炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖でも分岐鎖であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。これらのなかでも、ポリ乳酸樹脂との親和性向上の観点から、炭素数1〜2のアルキル基、即ち、メチル基、エチル基が好ましい。なお、R及びR10は同一でも異なってもよい。また、耐揮発性向上の観点から、ベンジル基が好ましい。
【0023】
式(4)におけるRは炭素数1〜4のアルキレン基を示す。炭素数1〜4のアルキレン基としては、直鎖でも分岐鎖であってもよく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、テトラメチレン基などが挙げられる。これらのなかでも、ポリ乳酸樹脂との親和性や可塑化効率の向上の観点から、炭素数2〜3のアルキレン基、即ち、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基が好ましい。
【0024】
式(4)におけるAは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、AOはオキシアルキレン基を示す。炭素数2又は3のアルキレン基としては、直鎖でも分岐鎖であってもよく、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基などが挙げられる。なお、m個のA及びn個のAは同一でも異なってもよい。
【0025】
式(4)におけるm及びnは、それぞれ、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0≦m≦5、0≦n≦5であり、かつ1≦m+n≦8を満足する数である。本発明においては、ポリ乳酸樹脂との親和性や可塑化効率の向上の観点から、0≦m≦5、0≦n≦5であり、かつ、4≦m+n≦8が好ましく、0≦m≦5、0≦n≦5であり、かつ、6≦m+n≦8がより好ましく、mとnがそれぞれ3であることがさらに好ましい。
【0026】
式(4)で表される化合物の平均分子量は、耐揮発性、耐ブリード性、可塑化効率の向上の観点から、250以上が好ましく、250〜700がより好ましく、300〜600がさらに好ましく、330〜500がさらにより好ましい。なお、本明細書において、可塑剤の平均分子量は、JIS K0070に記載の方法で鹸化価を求め、次式より計算で求めることができる。
平均分子量=56108×(エステル基の数)/鹸化価
【0027】
よって、式(4)で表されるカルボン酸エステルとしては、
<1> R及びR10は炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を示し、但し、R及びR10は同一でも異なってもよく、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、但し、m又はn個のAは同一でも異なってもよく、m及びnは各々オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0≦m≦5、0≦n≦5であり、かつ1≦m+n≦8を満足する数である化合物が好ましく、
<2> R及びR10は炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を示し、但し、R及びR10は同一でも異なってもよく、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、但し、m又はn個のAは同一でも異なってもよく、m及びnは各々オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0≦m≦5、0≦n≦5であり、かつ4≦m+n≦8を満足する数である化合物がより好ましく、
<3> R及びR10は炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を示し、但し、R及びR10は同一でも異なってもよく、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、但し、m又はn個のAは同一でも異なってもよく、m及びnは各々オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0≦m≦5、0≦n≦5であり、かつ6≦m+n≦8を満足する数である化合物がさらに好ましく、
<4> R及びR10は炭素数1〜2のアルキル基又はベンジル基を示し、但し、R及びR10は同一でも異なってもよく、Rは炭素数2〜3のアルキレン基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、但し、m又はn個のAは同一でも異なってもよく、m及びnは各々オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、m=3、n=3である化合物がさらにより好ましい。
【0028】
かかる式(4)で表されるカルボン酸エステルの具体例としては、例えば、マロン酸やコハク酸、グルタル酸、2-メチルコハク酸、アジピン酸等の飽和ジカルボン酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、又はベンジルアルコールとのジエステルを挙げることができる。なかでも、耐ブリード性や可塑化効率の向上の観点から、コハク酸エステルが好ましく、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルのジエステルがより好ましい。また、耐揮発性の向上の観点からは、アジピン酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル/ベンジルアルコール混合物(重量比:1/1)とのエステル化合物が好ましい。
【0029】
式(5)で表されるカルボン酸エステルは、十分な分子量及び熱安定性を有し、またポリ乳酸樹脂との親和性が高いことから、耐揮発性に優れ、組成物の透明性を阻害させずに柔軟性を付与することができるという効果を奏するものである。
【0030】
式(5)におけるR11は、炭素数が1〜4のアルキル基を示し、1分子中に2個存在して、分子の両末端に存在する。炭素数が1〜4のアルキル基としては、直鎖でも分岐鎖であってもよく、アルキル基の炭素数としては、ポリ乳酸樹脂との相溶性と可塑化効率の向上の観点から、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、なかでも、ポリ乳酸樹脂との相溶性と可塑化効率の向上の観点から、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0031】
式(5)におけるR12は、炭素数が2〜4の直鎖アルキレン基を示す。具体的には、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基が挙げられ、なかでも、ポリ乳酸樹脂との相溶性と可塑化効率の向上の観点から、エチレン基が好ましい。但し、全てのR12は同一でも異なっていてもよい。
【0032】
式(5)におけるR13は、炭素数が2〜6のアルキレン基を示し、OR13はオキシアルキレン基として、繰り返し単位中に存在する。炭素数が2〜6のアルキレン基としては、直鎖でも分岐鎖であってもよく、アルキレン基の炭素数としては、ポリ乳酸樹脂との相溶性と可塑化効率の向上の観点から、2〜6が好ましく、2〜3がより好ましい。具体的には、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−イソプロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1,2−ペンチレン基、1,4−ペンチレン基、1,5−ペンチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,2−ヘキシレン基、1,5−ヘキシレン基、1,6−ヘキシレン基、2,5−ヘキシレン基、3−メチル−1,5−ペンチレン基が挙げられ、なかでも、ポリ乳酸樹脂との相溶性と可塑化効率の向上の観点から、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基が好ましい。但し、全てのR13は同一でも異なっていてもよい。
【0033】
sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、1〜6の整数である。ポリ乳酸樹脂との相溶性及び耐揮発性の向上の観点から、1〜3の整数が好ましい。
【0034】
tは(OR13)O−CO−R12−CO−〔式(5)における繰り返し単位ともいう〕の繰り返し数(平均重合度)を示し、1〜6の数である。ポリ乳酸樹脂との相溶性と可塑化効率の向上の観点から、1〜4の数が好ましい。
【0035】
よって、式(5)で表されるカルボン酸エステルとしては、
<1> R11は炭素数が1〜4のアルキル基、R12は炭素数が2〜4の直鎖アルキレン基、R13は炭素数が2〜6のアルキレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜6の整数であり、tは(OR13)O−CO−R12−CO−の繰り返し数を示す1〜6の数であり、但し、全てのR12は同一でも異なっていてもよく、全てのR13は同一でも異なっていてもよい化合物が好ましく、
<2> R11は炭素数が1〜2のアルキル基、R12はエチレン基、R13は炭素数が2〜3のアルキレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜3の整数であり、tは(OR13)O−CO−R12−CO−の繰り返し数を示す1〜4の数であり、但し、全てのR12は同一でも異なっていてもよく、全てのR13は同一でも異なっていてもよい化合物がより好ましい。
【0036】
かかる式(5)で表されるカルボン酸エステルの中では、耐揮発性の向上の観点から、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸から選ばれる少なくとも1つの二塩基酸と、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンンジオールから選ばれる少なくとも1つの2価アルコールとのオリゴエステル〔式(5)中、t=1.2〜3〕が好ましい。
【0037】
式(4)及び式(5)で表されるカルボン酸エステルは、市販品であっても公知の製造方法に従って合成したものを用いてもよく、例えば式(4)で表されるカルボン酸エステルは特開2006−176748号公報に開示されているような方法に従って製造することができる。
【0038】
ポリ乳酸樹脂組成物の透明性、耐熱性、耐ブリード性を向上させる観点から、本発明のポリ乳酸樹脂組成物における可塑剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、1〜30重量部がより好ましく、1〜20重量部がさらに好ましい。さらに非晶シートの耐熱性が必要な場合、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度が高い方が好ましく、本発明のポリ乳酸樹脂組成物における可塑剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、1〜10重量部が好ましく、1〜7重量部がより好ましく、1〜5重量部がさらに好ましい。また、式(4)及び/又は式(5)で表されるカルボン酸エステルの全可塑剤中の含有量としては、耐ブリード性、可塑化効率、二次加工性の向上の観点から、60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。なお、本明細書において、式(4)及び/又は式(5)で表されるカルボン酸エステルの含有量とは、組成物に含有される式(4)で表されるカルボン酸エステル、式(5)で表されるカルボン酸エステルの合計含有量であり、全可塑剤とは、組成物に含有される式(4)で表される化合物、式(5)で表される化合物と他の可塑剤を合わせたものを意味する。
【0039】
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物における式(4)及び/又は式(5)で表されるカルボン酸エステルの含有量は、耐ブリード性、2次加工性、耐熱性の向上の観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましく、1〜10重量部がさらに好ましい。1重量部以上であると2次加工性が良好となり、30重量部以下であると耐熱性、耐ブリード性を良好とすることができる。
【0040】
(非イオン性界面活性剤)
本発明における非イオン性界面活性剤としては、式(1):
−O(AO)−R (1)
〔式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、総炭素数8〜22のアシル基、又は水素原子を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は総炭素数2〜4のアシル基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0<p≦300を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い〕
で表される化合物である。
【0041】
式(1)で表される化合物は、ポリ乳酸樹脂や結晶核剤等に対する親和性及び分散性が良いことから、なかでも式(4)で表される可塑剤と組み合わせることで、熱成形における透明性や十分な熱成形性(賦形性と結晶化を両立できる温度範囲が広い)を実現できるという効果を奏するものである。
【0042】
式(1)におけるRは炭素数8〜22のアルキル基、総炭素数8〜22のアシル基、又は水素原子を示す。
【0043】
炭素数8〜22のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖であってもよく、飽和又は不飽和であってもよく、具体的には、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基等の直鎖アルキル基、2−エチルヘキシル基、1−ヘキサデシル基、イソデシル基、イソステアリル基等の分岐アルキル基の他、ウンデセニル基やオレイル基等の不飽和アルキル基などが挙げられる。総炭素数8〜22のアシル基としては、総炭素数が8〜22であれば飽和又は不飽和であってもよく、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基(ラウロイル基)、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基、ノナデカノイル基、エイコサノイル基、ベヘノイル基等の直鎖アシル基の他、2−エチルヘキサノイル基等の分岐アシル基、オレイン酸由来の不飽和アシル基などが例示される。
【0044】
これらのなかでも、式(1)におけるRとしては、総炭素数8〜22までの飽和又は不飽和アシル基が好ましく、総炭素数10〜18までの飽和又は不飽和アシル基がより好ましい。
【0045】
式(1)におけるRは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は総炭素数2〜4のアシル基を示す。
【0046】
炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0047】
総炭素数2〜4のアシル基としては、飽和又は不飽和であってもよく、具体的には、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基などが例示される。
【0048】
これらのなかでも、式(1)におけるRとしては、Rが炭素数8〜22のアルキル基又は総炭素数8〜22のアシル基の場合には、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。また式(1)におけるRが水素原子の場合には、Rも水素原子が好ましい。
【0049】
式(1)におけるAは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、AOはオキシアルキレン基を示す。炭素数2又は3のアルキレン基としては、直鎖でも分岐鎖であってもよく、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基などが挙げられるが、エチレン基又はイソプロピレン基が好ましい。なお、p個のAOは同一でも異なってもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型でも良いが、ブロック型が好ましく、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン型のブロック型が好ましく、成形温度幅と透明性の観点から、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型がより好ましい。
【0050】
式(1)におけるpは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0<p≦300であるが、Rが炭素数8〜22のアルキル基又は総炭素数8〜22のアシル基の場合には、2≦p≦50が好ましく、5≦p≦20がより好ましい。Rが水素原子の場合は10≦p≦200が好ましく、20≦p≦100がより好ましい。また、R及びRのいずれもが水素原子の場合は、10≦p≦200が好ましく、20≦p≦100がより好ましい。またさらに、Rが水素原子の場合は、(AO)は異なるAOを含有することが好ましく、なかでもポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン型のブロック型がより好ましく、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型がさらに好ましく、その場合の各ブロックユニットを構成するAOの数(p’)は、それぞれ5≦p’≦80が好ましく、5≦p’≦60がより好ましい。さらに、その場合のポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)の重量比(EO/PO)は、5/95〜70/30が好ましく、5/95〜60/40がより好ましく、10/90〜50/50がさらに好ましく、10/90〜40/60がさらに好ましく、10/90〜30/70がさらに好ましく、15/85〜25/75がさらに好ましい。
【0051】
式(1)で表される化合物の平均分子量は、ポリ乳酸樹脂組成物原料の溶融混錬時の流動性や成形時の耐ブリード性の向上の観点から、300〜100000が好ましく、500〜50000がより好ましく、500〜10000がさらに好ましく、500〜6000がさらに好ましい。さらにポリ乳酸樹脂組成物からなる非晶状態のシートの耐熱性の観点から、1000〜6000がさらに好ましく、2000〜6000がさらにより好ましい。なお、本明細書において、非イオン性界面活性剤の平均分子量は、後述の実施例に記載の方法に従って、求めることができる。
【0052】
よって、式(1)で表される化合物としては、Rが炭素数8〜22のアルキル基又は総炭素数8〜22のアシル基の場合には、
<1> Rは炭素数8〜22のアルキル基又は総炭素数8〜22のアシル基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は総炭素数2〜4のアシル基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0<p≦300を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い化合物が好ましく、
<2> Rは炭素数8〜22のアルキル基又は総炭素数8〜22のアシル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、2≦p≦50を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い化合物がより好ましく、
<3> Rは炭素数8〜22のアルキル基又は総炭素数8〜22のアシル基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、2≦p≦50を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い化合物がさらに好ましく、
<4> Rは総炭素数8〜22の飽和又は不飽和のアシル基を示し、Rは水素原子を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、2≦p≦50を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い化合物がさらに好ましく、
<5> Rは総炭素数10〜18の飽和又は不飽和のアシル基を示し、Rは水素原子を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、2≦p≦50を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い化合物がさらに好ましく、
<6> Rは総炭素数10〜18の飽和又は不飽和のアシル基を示し、Rは水素原子を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、5≦p≦20を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い化合物がさらに好ましい。
【0053】
また、式(1)で表される化合物としては、Rが水素原子の場合には、
<1> Rは水素原子を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は総炭素数2〜4のアシル基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0<p≦300を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い化合物が好ましく、
<2> Rは水素原子を示し、Rは水素原子を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10≦p≦200を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い化合物がより好ましく、
<3> Rは水素原子を示し、Rは水素原子を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10≦p≦200を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は同一ではなく、繰り返し単位はポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型、又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン型のブロック型であり、各ブロックユニットを構成するp’は5≦p’≦80を満足する数である化合物がさらに好ましく、
<4> Rは水素原子を示し、Rは水素原子を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10≦p≦200を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は同一ではなく、繰り返し単位はポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型であり、各ブロックユニットを構成するp’は5≦p’≦80を満足する数であり、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)の重量比(EO/PO)が5/95〜70/30である化合物がさらに好ましく、
<5> Rは水素原子を示し、Rは水素原子を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、20≦p≦100を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は同一ではなく、繰り返し単位はポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型であり、各ブロックユニットを構成するp’は5≦p’≦60を満足する数であり、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)の重量比(EO/PO)が5/95〜70/30である化合物がさらに好ましい。
【0054】
かかる式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、炭素数8〜22の脂肪族アルコールとポリオキシエチレングリコールやポリオキシプロピレングリコールとのモノ又はジエーテル化物、あるいは炭素数8〜22の脂肪酸とポリオキシエチレングリコールやポリオキシプロピレングリコールとのモノ又はジエステル化物の他、それらのメチルエーテル体が挙げられるが、柔軟性や前記式(4)及び/又は式(5)で表されるカルボン酸エステルとの相溶性の向上の観点から、脂肪酸ポリオキシエチレングリコールエステルや脂肪酸とメチルポリグリコールとのエステルが好ましく、オレイン酸等の長鎖脂肪酸とポリグリコールとのエステルがより好ましい。
【0055】
式(1)で表される化合物は、市販品であっても公知の製造方法に従って合成したものを用いてもよい。好適な市販品としては、例えば、脂肪酸ポリオキシエチレングリコールエステル(例えば、花王社製、「エマノーン4110」等のエマノーンシリーズ)が挙げられる。また他に好ましい例としては、高分子型ノニオンであるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(例えば、ADEKA社製、商品名:アデカプルロニックノニオンシリーズ)が挙げられるが、透明性や相溶性、流動性の観点から、ポリオキシエチレングリコール両末端に酸化プロピレンを付加重合させた、いわゆる逆ブロック型のアデカプルロニックノニオンがより好ましい。具体的には、好適な市販品として、例えばADEKA社製のアデカプルロニック25R−2、25R−1等が挙げられる。
【0056】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、式(1)で表される非イオン性界面活性剤以外の公知の他の界面活性剤を用いることができる。かかる界面活性剤の種類としては、特に限定されないが、混錬時のポリ乳酸樹脂の分解を避ける観点から、イオン性界面活性剤以外の界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0057】
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物における式(1)で表される非イオン性界面活性剤の含有量は、2次加工性、耐ブリード性の向上の観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましく、0.1〜3重量部がさらに好ましい。0.1重量部以上であると2次加工性が良好となり、10重量部以下であると耐ブリード性を良好とすることができる。
【0058】
またさらに、式(1)で表される非イオン性界面活性剤は、式(4)及び式(5)で表される可塑剤の柔軟性の効果を損なわないために、式(4)及び式(5)で表される可塑剤の総量100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、5〜50重量部がより好ましく、5〜45重量部がさらに好ましい。
【0059】
(結晶核剤)
本発明における結晶核剤としては、式(2):
【0060】
【化3】

【0061】
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R及びRは置換基を有していてもよい炭素数5〜21の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、同一でも異なっていても良い)
及び/又は、式(3):
【0062】
【化4】

【0063】
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R及びRは置換基を有していてもよい炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、同一でも異なっていても良い)
で表される化合物である。
【0064】
式(2)で表される化合物は、ポリ乳酸樹脂の結晶核を多数生成する効果があり、その結果、ポリ乳酸樹脂が微結晶を形成することから、透明性向上という効果を奏するものである。
【0065】
式(2)におけるRは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、直鎖でも分岐鎖であってもよい。具体的には、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、メタキシリレン基等が挙げられる。これらのなかでもポリ乳酸樹脂組成物の透明性向上の観点から、エチレン基、ヘキサメチレン基、メタキシリレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0066】
式(2)におけるR及びRは置換基を有していてもよい炭素数5〜21の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、飽和又は不飽和であってもよく、同一でも異なっていても良い。R及びRの置換基としては水酸基等が挙げられる。R及びRの具体例としては、ヘプチル基、ノニル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘンイコシル基、ヘプタデセル基、11−ヒドロキシペンタデシル基等が例示される。これらのなかでも、ポリ乳酸樹脂組成物の透明性向上の観点から、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘプタデセル基、11−ヒドロキシペンタデシル基が好ましく、11−ヒドロキシペンタデシル基がより好ましい。
【0067】
よって、式(2)で表される化合物としては、
<1> Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R及びRは置換基を有していてもよい炭素数5〜21の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、同一でも異なっていても良い、化合物が好ましく、
<2> Rはエチレン基、ヘキサメチレン基、又はメタキシリレン基を示し、R及びRはウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘプタデセル基、又は11−ヒドロキシペンタデシル基を示し、同一でも異なっていても良い、化合物がより好ましく、
<3> Rはエチレン基を示し、R及びRはいずれも11−ヒドロキシペンタデシル基を示す化合物がさらに好ましい。
【0068】
かかる式(2)で表される化合物の具体例としては、置換基を有していてもよい総炭素数8〜22の脂肪酸類と、エチレンジアミン又は1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、m−キシレンジアミン等のジアミン類とのジアミドが挙げられる。これらのなかでも、ポリ乳酸樹脂組成物の透明性向上の観点から、エチレンビス脂肪酸アミドやプロピレンビス脂肪酸アミド、ブチレンビス脂肪酸アミド、ヘキサメチレンビス脂肪酸アミド、メタキシレンビス脂肪酸アミドが好ましく、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、ヘキサメチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、メタキシレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミドがより好ましく、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、ヘキサメチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、メタキシレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミドがさらに好ましい。
【0069】
式(3)で表される化合物は、ポリ乳酸樹脂の結晶核を多数生成する効果があり、その結果、ポリ乳酸樹脂が微結晶を形成することから、透明性向上という効果を奏するものである。
【0070】
式(3)におけるRは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、直鎖でも分岐鎖であってもよい。具体的にはエチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が例示される。これらの中でもポリ乳酸樹脂組成物の透明性向上の観点から、エチレン基、テトラメチレン基、オクタメチレン基が好ましく、エチレン基、テトラメチレン基がより好ましい。
【0071】
式(3)におけるR及びRは置換基を有していてもよい炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、飽和又は不飽和であってもよく、同一でも異なっていても良い。またR及びRの置換基としては水酸基等が挙げられる。R及びRの具体例としては、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタデセル基、12−ヒドロキシオクタデシル基等が例示される。これらの中でもポリ乳酸樹脂組成物の透明性向上の観点から、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オクタデセル基、12−ヒドロキシオクタデシル基が好ましく、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オクタデセル基、12−ヒドロキシオクタデシル基がより好ましい。
【0072】
よって、式(3)で表される化合物としては、
<1> Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R及びRは置換基を有していてもよい炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、同一でも異なっていても良い、化合物が好ましく、
<2> Rはエチレン基、テトラメチレン基、又はオクタメチレン基を示し、R及びRはドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オクタデセル基、又は12−ヒドロキシオクタデシル基を示し、同一でも異なっていても良い、化合物がより好ましく、
<3> Rはエチレン基又はテトラメチレン基を示し、R及びRはヘキサデシル基、オクタデシル基、オクタデセル基、又は12−ヒドロキシオクタデシル基を示し、同一でも異なっていても良い、化合物がさらに好ましい。
【0073】
かかる式(3)で表される化合物の具体例としては、置換基を有していてもよい炭素数6〜22の脂肪族モノアミン類と、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸類とのジアミドが挙げられる。これらのなかでも、ポリ乳酸樹脂組成物の透明性向上の観点から、コハク酸パルミチルビスアミド、コハク酸ステアリルビスアミド、コハク酸オレイルビスアミド、コハク酸12−ヒドロキシステアリルビスアミド、アジピン酸パルミチルビスアミド、アジピン酸ステアリルビスアミド、アジピン酸オレイルビスアミド、アジピン酸12−ヒドロキシステアリルビスアミドが好ましく、コハク酸パルミチルビスアミド、コハク酸ステアリルビスアミド、コハク酸オレイルビスアミド、コハク酸12−ヒドロキシステアリルビスアミドがより好ましい。
【0074】
また、式(2)及び式(3)で表される化合物の中では、ポリ乳酸樹脂組成物の透明性向上の観点から、式(2)で表されるビスアミド類が好ましい。
【0075】
式(2)及び式(3)で表される化合物は、市販品であっても公知の製造方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0076】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤以外の公知の他の結晶核剤を用いることができる。他の結晶核剤としては、天然又は合成珪酸塩化合物、酸化チタン、硫酸バリウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸ソーダ等の金属塩やカオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト、バーミュライト、マイカ等の無機化合物の他、フェニルホスフォン酸金属塩等が例示される。これらの含有量としては、本発明の効果を阻害しない観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、1重量部以下が好ましく、0.5重量部以下がより好ましい。式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤の全結晶核剤中の含有量としては、ポリ乳酸樹脂組成物の透明性向上の観点から、60重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。なお、式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤の含有量とは、組成物に含有される式(2)で表される結晶核剤と式(3)で表される結晶核剤の合計含有量を、全結晶核剤とは、組成物に含有される式(2)で表される結晶核剤、式(3)で表される結晶核剤と他の結晶核剤を合わせたものを意味する。
【0077】
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物における式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂に対する相溶性や透明性の向上の観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.01〜2重量部がより好ましく、0.01〜1重量部がさらに好ましい。0.01重量部以上であるとポリ乳酸樹脂組成物の透明性が良好となり、3重量部以下であると、ポリ乳酸樹脂に対する相溶性を維持できることから透明性を良好にすることができる。
【0078】
またさらに、式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤は、式(4)及び式(5)で表される可塑剤の柔軟性の効果を損ねないために、式(4)及び式(5)で表される可塑剤の総量100重量部に対して、0.5〜50重量部が好ましく、0.5〜30重量部がより好ましく、1.0〜20重量部がさらに好ましく、2〜10重量部がよりさらに好ましい。
【0079】
本発明においては、式(4)で表される可塑剤及び/又は式(5)で表される可塑剤と、式(1)で表される非イオン性界面活性剤と、式(2)で表される結晶核剤及び/又は式(3)で表される結晶核剤とを組み合わせて用いることで、熱成形における透明性や十分な熱成形性(賦形性と結晶化を両立できる温度範囲が広い)を実現できるが、これは式(1)で表される非イオン性界面活性剤が、ポリ乳酸樹脂や結晶核剤に対する親和性・分散性が良いことから、それぞれの分散性が向上し、前述した効果が奏されることになると推察される。
【0080】
(ポリ乳酸樹脂)
本発明におけるポリ乳酸樹脂とは、ポリ乳酸、又は乳酸とヒドロキシカルボン酸とのコポリマーである。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。
【0081】
好ましいポリ乳酸の分子構造は、L−乳酸(L体)又はD−乳酸(D体)いずれかの単位80〜100モル%とその対掌体の乳酸単位0〜20モル%からなるものである。また、乳酸とヒドロキシカルボン酸とのコポリマーは、L−乳酸又はD−乳酸いずれかの単位85〜100モル%とヒドロキシカルボン酸単位0〜15モル%からなるものである。
【0082】
これらのポリ乳酸樹脂は、L−乳酸、D−乳酸及びヒドロキシカルボン酸の中から必要とする構造のものを選んで原料とし、脱水重縮合することにより得ることができる。好ましくは、乳酸の環状二量体であるラクチド、グリコール酸の環状二量体であるグリコリド及びカプロラクトン等から必要とする構造のものを選んで開環重合することにより得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸とが環状二量化したメソ−ラクチド及びD−ラクチドとL−ラクチドとのラセミ混合物であるDL−ラクチドがある。本発明ではいずれのラクチドも用いることができる。但し、主原料は、D−ラクチド又はL−ラクチドが好ましい。
【0083】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性の向上の観点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂の全乳酸成分の内、L体又はD体が80%以上含まれることが好ましく、L体又はD体が90%以上含まれることがより好ましく、L体又はD体が95%以上含まれることがさらに好ましく、L体又はD体が98%以上含まれることがさらに好ましく、L体又はD体が99%以上含まれることがさらに好ましい。
【0084】
また、本発明において、ポリ乳酸として、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性、透明性の向上、及びポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体の強度と耐衝撃性の両立、耐熱性の向上の観点から、異なる異性体を主成分とする乳酸成分を用いて得られた2種類のポリ乳酸からなるステレオコンプレックスポリ乳酸を用いてもよい。ステレオコンプレックスポリ乳酸を構成する一方のポリ乳酸〔以降、ポリ乳酸(A)と記載する〕は、L体90〜100モル%、D体を含むその他の成分0〜10モル%を含有する。他方のポリ乳酸〔以降、ポリ乳酸(B)と記載する〕は、D体90〜100モル%、L体を含むその他の成分0〜10モル%を含有する。なお、前記L体及びD体以外のその他の成分としては、2個以上のエステル結合を形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられ、また、未反応の前記官能基を分子内に2つ以上有するポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等であってもよい。
【0085】
ステレオコンプレックスポリ乳酸における、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸(B)の重量比〔ポリ乳酸(A)/ポリ乳酸(B)〕は、10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、40/60〜60/40がさらに好ましい
【0086】
ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、ポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体の機械物性を向上させ、押出成形時の溶融張力を低下させる観点から、100,000以上であることが好ましく、ポリ乳酸樹脂組成物の成形時の流動性の向上の観点から400,000以下であることが好ましい。尚、ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、溶媒にクロロホルム、カラムに東ソー社製、高温SECカラム(GMHHR−Hシリーズ)、流量1.0mL/min、カラム温度40℃、検出器に示差屈折率検出器(RI)、リファレンスとして既知の分子量を有するスチレンを用いて換算して求めることができる。
【0087】
ポリ乳酸樹脂としては、市販されているポリ乳酸樹脂(例えば、三井化学社製:商品名 レイシアH−100、H−280、H−400、H−440等や、Nature Works社製:商品名 Nature Works PLA/NW3001D、NW4032D等)の他、乳酸やラクチドから合成したポリ乳酸が挙げられる。強度や耐熱性の向上の観点から、光学純度90%以上のポリ乳酸が好ましく、例えば、比較的分子量が高く、また光学純度の高いNature Works社製ポリ乳酸(NW4032D等)が好ましい。
【0088】
よって、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の態様としては、以下の態様が挙げられる。
<1> ポリ乳酸樹脂、式(4)及び/又は式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤を含有する態様
<2> ポリ乳酸樹脂、式(4)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2)で表される結晶核剤を含有する態様
<3> ポリ乳酸樹脂、式(4)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(3)で表される結晶核剤を含有する態様
<4> ポリ乳酸樹脂、式(4)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2)及び式(3)で表される結晶核剤を含有する態様
<5> ポリ乳酸樹脂、式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2)で表される結晶核剤を含有する態様
<6> ポリ乳酸樹脂、式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(3)で表される結晶核剤を含有する態様
<7> ポリ乳酸樹脂、式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2)及び式(3)で表される結晶核剤を含有する態様
<8> ポリ乳酸樹脂、式(4)及び式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2)で表される結晶核剤を含有する態様
<9> ポリ乳酸樹脂、式(4)及び式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(3)で表される結晶核剤を含有する態様
<10> ポリ乳酸樹脂、式(4)及び式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2)及び式(3)で表される結晶核剤を含有する態様
【0089】
これらのなかでも、例えば、
<11> ポリ乳酸樹脂、式(4)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2)で表される結晶核剤を含有するものであって、
式(1)で表される化合物が、Rは総炭素数10〜18の飽和又は不飽和のアシル基を示し、Rは水素原子を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、5≦p≦20を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い化合物である態様、
<12> ポリ乳酸樹脂、式(4)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2)で表される結晶核剤を含有するものであって、
式(1)で表される化合物が、Rは水素原子を示し、Rは水素原子を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、20≦p≦100を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は同一ではなく、繰り返し単位はポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型であり、各ブロックユニットを構成するp’は5≦p’≦60を満足する数であり、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)の重量比(EO/PO)が5/95〜70/30である化合物である態様
が好適例として挙げられる。
【0090】
また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂、式(4)及び/又は式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤を含む以外に、さらに、加水分解抑制剤を含有することができる。即ち、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の一態様としては、ポリ乳酸樹脂、式(4)及び/又は式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤、ならびに、加水分解抑制剤を含有するものが挙げられる。より詳しくは、例えば、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の別の態様としては、以下の態様が挙げられる。
<1’> ポリ乳酸樹脂、式(4)及び/又は式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤、ならびに、加水分解抑制剤を含有する態様
<2’> ポリ乳酸樹脂、式(4)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、式(2)で表される結晶核剤、ならびに、加水分解抑制剤を含有する態様
<3’> ポリ乳酸樹脂、式(4)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、式(3)で表される結晶核剤、ならびに、加水分解抑制剤を含有する態様
<4’> ポリ乳酸樹脂、式(4)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、式(2)及び式(3)で表される結晶核剤、ならびに、加水分解抑制剤を含有する態様
<5’> ポリ乳酸樹脂、式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、式(2)で表される結晶核剤、ならびに、加水分解抑制剤を含有する態様
<6’> ポリ乳酸樹脂、式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、式(3)で表される結晶核剤、ならびに、加水分解抑制剤を含有する態様
<7’> ポリ乳酸樹脂、式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、式(2)及び式(3)で表される結晶核剤、ならびに、加水分解抑制剤を含有する態様
<8’> ポリ乳酸樹脂、式(4)及び式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、式(2)で表される結晶核剤、ならびに、加水分解抑制剤を含有する態様
<9’> ポリ乳酸樹脂、式(4)及び式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、式(3)で表される結晶核剤、ならびに、加水分解抑制剤を含有する態様
<10’> ポリ乳酸樹脂、式(4)及び式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、式(2)及び式(3)で表される結晶核剤、ならびに、加水分解抑制剤を含有する態様
【0091】
加水分解抑制剤としては、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物が挙げられ、ポリ乳酸樹脂組成物の耐久性、耐衝撃性を向上させる観点からポリカルボジイミド化合物が好ましく、ポリ乳酸樹脂組成物の耐久性、成形性(流動性)を向上させる観点から、モノカルボジイミド化合物が好ましい。また、ポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体の耐久性、耐衝撃性、成形性をより向上させる観点から、モノカルボジイミドとポリカルボジイミドを併用することも可能である。
【0092】
ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられ、モノカルボジイミド化合物としては、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。
【0093】
前記カルボジイミド化合物は、ポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体の耐久性、耐衝撃性及び成形性を満たすために、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)はカルボジライトLA−1(日清紡ケミカル社製)を、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド及びポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミドは、スタバクゾールP及びスタバクゾールP−100(Rhein Chemie社製)を、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドはスタバクゾールI(Rhein Chemie社製)をそれぞれ購入して使用することができる。
【0094】
加水分解抑制剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体の透明性、成形性を向上させる観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.05〜3重量部が好ましく、0.10〜2重量部がより好ましい。
【0095】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、耐衝撃性、靱性等の物性向上の観点から、コアシェル型ゴムを含有しても良い。具体例としては、(コア;シリコーン/アクリル重合体、シェル;メタクリル酸メチル重合体)、(コア;シリコーン/アクリル重合体、シェル;メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル重合体)、(コア;ブタンジエン/スチレン重合体、シェル;メタクリル酸メチル重合体)、(コア;アクリル重合体、シェル;メタクリル酸メチル重合体)等が挙げられる。透明性を向上させる観点から、市販品として、三菱レイヨン社製;メタブレンS−2006、S−2100、S−2200、W−600A、ローム・アンド・ハース社製;パラロイドBPM−500が好ましい。コアシェル型ゴムの含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、2〜20重量部がより好ましい。
【0096】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、前記以外の他の成分として、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤等を、本発明の目的達成を妨げない範囲、すなわち熱成形性等の二次加工性を阻害しない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を添加することも可能である。
【0097】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂、式(4)及び/又は式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤を含有するものであれば特に限定なく調製することができ、例えば、ポリ乳酸樹脂、式(4)及び/又は式(5)で表されるカルボン酸エステルを含む可塑剤、式(1)で表される非イオン性界面活性剤、ならびに式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練して調製することができる。なお、原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後に、溶融混練に供することも可能である。
【0098】
溶融混練温度は、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性及び劣化防止を向上する観点から、160〜220℃が好ましく、170〜200℃がより好ましく、180〜190℃がさらに好ましい。溶融混練時間は、溶融混練温度、混練機の種類によって一概には決定できないが、15〜900秒間が好ましい。
【0099】
得られた溶融混練物のガラス転移温度(Tg)は、式(1)〜(5)で表される化合物やその他の添加剤の含有量によって一概には決定することができないが、30〜60℃が好ましく、30〜55℃がより好ましく、35〜55℃がさらに好ましい。また、熱成形を行う前の非晶状態のシートを倉庫に保管、または輸送する場合において、非晶シートの耐熱性の観点からは40〜58℃が好ましく、45〜58℃がより好ましい。
【0100】
また、結晶化温度(Tc)は、式(1)〜(5)で表される化合物やその他の添加剤の含有量によって一概には決定することができないが、50〜110℃が好ましく、50〜100℃がより好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。なお、本明細書において、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)及び結晶化温度(Tc)は、例えば、DSC測定装置を用いて測定することができる。具体的には、JIS K 7121に従い、測定サンプル量を7.5mg、昇温条件は25℃から200℃まで毎分15℃で測定する方法が挙げられる。
【0101】
かくして得られた溶融混練物は、熱成形性等の二次加工性に優れることから、本発明はまた、耐熱性に優れる成形品等に加工され得る、非晶状態又は半結晶状態の成形体(例えば、シート状成形体)を提供する。なお、本明細書において、非晶状態とは結晶領域に対して非晶領域が十分に多い状態を表し、具体的には、後述する試験例5の方法より求めた相対結晶化度が60%未満となる状態のことを、半結晶状態とは同様の方法より求めた相対結晶化度が60〜80%となる状態のことを意味する。よって、非晶状態又は半結晶状態の成形体とは、相対結晶化度が80%以下の成形体を意味する。
【0102】
非晶状態又は半結晶状態の成形体は、例えば、本発明のポリ乳酸樹脂組成物をシート状成形体に成形する場合は押出成形やプレス成形によって調製することができる。
【0103】
押出成形は、加熱した押出機に充填された本発明のポリ乳酸樹脂組成物を溶融させた後にTダイから押出し、この押出したシート状成形物を直ぐに冷却ロールに接触させ、シートをTg以下に冷却して冷却ロールから引き離し、それらを巻き取りロールにて巻き取り、シート状成形体を得ることができる。
【0104】
押出機の温度は、ポリ乳酸樹脂組成物を均一に混合し、且つポリ乳酸樹脂の劣化を防止する観点から、170〜240℃が好ましく、175〜220℃がより好ましく、180〜210℃がさらに好ましい。また冷却ロールの温度は、非晶状態又は半結晶状態の成形体を得る観点から40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましく、10℃以下がさらに好ましい。
【0105】
また、押出速度は、非晶質領域の成形性を向上させる観点から、1〜200m/分が好ましく、5〜150m/分がより好ましく、10〜100m/分がさらに好ましい。
【0106】
プレス成形でシート状成形体を成形する場合は、シート形状を有する枠で本発明のポリ乳酸樹脂組成物を囲みプレス成形して調製することができる。
【0107】
プレス成形の温度と圧力としては、例えば、非晶状態又は半結晶状態の成形体を調製する場合、好ましくは170〜240℃の温度、5〜30MPaの圧力の条件下、より好ましくは175〜220℃の温度、10〜25MPaの圧力の条件下、さらに好ましくは180〜210℃の温度、10〜20MPaの圧力の条件下でプレスすることが好ましい。プレス時間は、プレスの温度と圧力によって一概には決定することができないが、1〜10分が好ましく、2〜8分がより好ましく、3〜6分がさらに好ましい。
【0108】
また前記条件でプレスした後直ぐに、好ましくは0〜40℃の温度、5〜30MPaの圧力の条件下、より好ましくは10〜30℃の温度、10〜25MPaの圧力の条件下、さらに好ましくは10〜20℃の温度、10〜20MPaの圧力の条件下でプレスして冷却することが好ましい。プレス時間は、プレスの温度と圧力によって一概には決定することができないが、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を十分に冷却して非晶又は半結晶状態にするため、10秒〜10分が好ましく、20秒〜10分がより好ましく、30秒〜10分がさらに好ましい。
【0109】
非晶状態又は半結晶状態のシート状成形体を調製する場合、その厚さは均一な成形体(二次加工品)を得る観点から、0.1〜1.5mmが好ましく、0.2〜1.4mmがより好ましく、0.3〜1.2mmがさらに好ましい。
【0110】
かくして得られた非晶状態又は半結晶状態のシートは、熱成形可能な温度幅が大きく熱成形性が良好であることから、二次加工が容易となる。また、式(1)であらわされる非イオン性界面活性剤が、ポリ乳酸樹脂に対する親和性が良いであることから、耐ブリード性にも優れるものである。よって、本発明の非晶状態又は半結晶状態のシートは、二次加工用途に好適に用いられる。
【0111】
また、本発明においては、本発明の非晶状態又は半結晶状態のシートを、例えば、真空圧空成形機を用いて金型内に設置して、金型内を加圧又は無加圧状態に保って成形することにより、成形体(二次加工品)としてもよい。従って、本発明はまた、本発明の非晶状態又は半結晶状態のシートを二次加工して得られる成形体(二次加工品)を提供する。即ち、本発明は、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて得られたシートを真空成形又は圧空成形してなる成形体、及び本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて得られたシートの二次加工方法を提供する。
【0112】
真空成形又は圧空成形した成形体は、特に限定なく公知の方法に従って成形することができるが、例えば、前記により調製した非晶状態又は半結晶状態のシートを真空圧空成形機等を用いて、ポリ乳酸樹脂のTg以上に加熱し、金型を用いて真空状態で所望の形状に成型することにより得られる。
【0113】
金型温度としては、ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化速度向上及び作業性向上の観点から、120℃以下が好ましく、115℃以下がより好ましく、110℃以下がさらに好ましい。また、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。かかる観点から、金型温度は70〜120℃が好ましく、75〜115℃がより好ましく、80〜110℃がさらに好ましい。
【0114】
金型内での保持時間は、ポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体の耐熱性及び生産性の向上の観点から、例えば80℃の金型において、2〜60秒が好ましく、3〜30秒がより好ましく、5〜20秒がさらに好ましい。本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、結晶化速度が速いために、前記のような短い時間の保持時間でも十分な耐熱性を有する成形体が得られる。
【0115】
かくして得られた成形体は、本発明の非晶状態又は半結晶状態のシートが熱成形性が良好であることから、嵌合性に優れるものである。また、式(4)及び/又は式(5)で表される化合物による軟質化効果に優れることから、得られたフィルムは結晶性の高いものであり、耐熱性、透明性に優れるものでもある。
【0116】
なお、本発明においては、前記で得られた非晶状態又は半結晶状態のシートを好ましくは60〜120℃、より好ましくは70〜110℃の温度下で維持することにより結晶化を行って結晶シートとしてもよい。
【0117】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いて得られたシートの二次加工方法としては、該シートを成形して前記成形体を調製する方法であれば特に限定はなく、前記の通りである。
【0118】
かくして得られた本発明の成形体は、結晶性が高く、かつ耐ブリード性や耐熱性、透明性に優れることから、日用雑貨品、家電部品、家電部品用梱包資材、自動車部品等の様々な工業用途に使用することができ、なかでも、食品包装をはじめとした各種包装材として好適に用いられる。
【実施例】
【0119】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、室温とは15〜30℃である。
【0120】
〔可塑剤、非イオン性界面活性剤の平均分子量〕
平均分子量は、JIS K0070に記載の方法で鹸化価を求め、次式より計算で求める。
平均分子量=56108×(エステル基の数)/鹸化価
【0121】
可塑剤の製造例1(コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル)
攪拌機、温度計、脱水管を備えた3Lフラスコに、無水コハク酸500g、トリエチレングリコールモノメチルエーテル2463g、パラトルエンスルホン酸一水和物9.5gを仕込み、空間部に窒素(500mL/分)を吹き込みながら、減圧下(4〜10.7kPa)、110℃で15時間反応させた。反応液の酸価は1.6(KOHmg/g)であった。反応液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学工業社製)27gを添加して80℃、2.7kPaで45分間攪拌してろ過した後、液温115〜200℃、圧力0.03kPaでトリエチレングリコールモノメチルエーテルを留去し、80℃に冷却後、残液を減圧ろ過して、ろ液として、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル〔(MeEOSA〕を得た。得られたジエステルは、重量平均分子量410、粘度(23℃)27mPa・s、酸価0.2KOHmg/g、鹸化価274KOHmg/g、水酸基価1KOHmg/g以下、色相APHA200であった。
【0122】
可塑剤の製造例2(コハク酸とジエチレングリコールのオリゴエステル)
4ツ口フラスコ(攪拌機、温度計、滴下漏斗、蒸留管、窒素吹き込み管付き)にジエチレングリコール999g(9.41モル)、及び28%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液23.6g(ナトリウムメトキシド0.122モル)を入れ、常圧(101.3kPa)、120℃で0.5時間攪拌しながらメタノールを留出させた後、コハク酸ジメチル(和光純薬工業社製)4125g(28.2モル)を3時間かけて滴下し反応させながら、同時に反応により生じるメタノールを留出させた。次に、圧力50〜760mmHg、75℃でメタノールを留出させた後、さらに、28%ナトリウムメトキシド含有メタノール溶液4.4g(ナトリウムメトキシド0.023モル)を添加し、圧力22〜760mmHg、100℃でメタノールを留出させた。キョーワード600S(協和化学工業社製)41gを添加し、圧力30mmHg、80℃で1時間攪拌した後、減圧ろ過を行った。ろ液を圧力2mmHg、70〜190℃で加熱して、未反応のコハク酸ジメチルを留去し、コハク酸とジエチレングリコールのオリゴエステル〔MeSA−DEG(t=1.5)〕を得た。
【0123】
実施例1〜18、比較例1〜8、及び参考例1
表1〜3に示す原料を表1〜3に示す量用いて、PARKER社製二軸押出し混練機(HK−25D)により、混練温度180℃、回転速度90回転/分で10分間混練を行って、ポリ乳酸樹脂組成物を調製した。
【0124】
なお、表1〜3における原料は以下の通りである。
<ポリ乳酸樹脂>
NW4032D:ポリ乳酸樹脂、ネイチャーワークスLLC社製、NatureWorks 4032D、光学純度98.5%、融点160℃、重量平均分子量180000
<可塑剤>
(MeEOSA:前記可塑剤の製造例1で製造したコハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル化合物、平均分子量410、式(4)におけるR及びR10がメチル基、Rがエチレン基、Aがエチレン基、m=3、n=3である化合物
DAIFATTY−101:アジピン酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル/ベンジルアルコール=1/1混合物とのジエステル、大八化学工業社製、平均分子量338、式(4)におけるRがメチル基、R10がベンジル基、Rがテトラメチレン基、Aがエチレン基、m=2、n=0である化合物
MeSA−DEG(t=1.5):前記可塑剤の製造例2で製造したコハク酸とジエチレングリコールのオリゴエステル、平均分子量430、式(5)におけるR11がメチル基、R12がエチレン基、R13がエチレン基、s=2、t=1.5である化合物
<非イオン性界面活性剤>
エマノーン4110:オレイン酸ポリオキシエチレングリコールモノエステル、花王社製、平均分子量680、式(1)におけるRがオレイン酸由来の不飽和アシル基、Rが水素原子、Aがエチレン基、pが9である化合物
アデカプルロニック25R−2:ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ADEKA社製、平均分子量3500、式(1)におけるR及びRが水素原子、(AO)は、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型であり、ポリオキシプロピレン基の合計p’が47、ポリオキシエチレン基の合計p’が16、式(1)における総計pが63である化合物
ポエムJ−0081HV:デカグリセリンステアレート、理研ビタミン社製
エマノーン1112:ラウリン酸ポリオキシエチレングリコールモノエステル、花王社製、平均分子量685、式(1)におけるRがラウリン酸由来のアシル基、Rが水素原子、Aがエチレン基、pが11である化合物
アデカプルロニック25R−1:ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ADEKA社製、平均分子量3050、式(1)におけるR及びRが水素原子、(AO)は、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型であり、ポリオキシプロピレン基の合計p’が47、ポリオキシエチレン基の合計p’が7、式(1)における総計pが54である化合物
EmalexGIS−120:イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO20モル)、日本エマルジョン社製
<結晶核剤>
スリパックスH:エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、日本化成社製、式(2)におけるR及びRが11−ヒドロキシペンタデシル基、Rがエチレン基である化合物
タルク:マイクロエースP−6、日本タルク社製
スリパックスZHH:ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、日本化成社製、式(2)におけるR及びRが11−ヒドロキシペンタデシル基、Rがヘキサメチレン基である化合物
スリパックス8:エチレンビスカプリル酸アミド、日本化成社製、式(2)におけるR及びRがヘプチル基、Rがエチレン基である化合物
スリパックス0:エチレンビスカプリル酸アミド、日本化成社製、式(2)におけるR及びRがヘプタデセル基、Rがエチレン基である化合物
エヌジェスター TF−1:トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、新日本理化社製
<加水分解抑制剤>
カルボジライトLA−1:ポリカルボジイミド、日清紡ケミカル社製
【0125】
非晶状態のシートの調製
得られたポリ乳酸樹脂組成物について、2枚の金属板(フェロ板)と厚さ0.4mm、20cm四方の金属製スペーサー枠(幅1cm)を使用し、枠内の中央に所定量(約22g)のポリ乳酸樹脂組成物を挟み、東洋精機社製のオートプレス成形機を用いて、まず180℃/4MPaの温度/圧力で2分間プレスした後、更に続けて180℃/20MPaの温度/圧力で2分間プレスし、その後、直ちに室温まで急冷してシートを得た。得られたシート(厚さ0.4mm)を15cm×15cmの正方形に切り出した。
【0126】
結晶状態のシートの調製
得られたポリ乳酸樹脂組成物について、2枚の金属板(フェロ板)と厚さ0.4mm、20cm四方の金属製スペーサー枠(幅1cm)を使用し、枠内の中央に所定量(約20g)のポリ乳酸樹脂組成物を挟み、東洋精機社製のオートプレス成形機を用いて、まず180℃/4MPaの温度/圧力で2分間プレスした後、更に続けて180℃/20MPaの温度/圧力で2分間プレスし、その後、直ちに室温まで急冷して非晶状態のシートを得た。得られたシートを、更に80℃/10MPaの温度/圧力で3分間プレスした後、室温まで放冷しスペーサー枠から取り出し、20cm四方のシートを得た。
【0127】
得られた組成物及びシートについて、以下の試験例1〜6に従って特性を評価した。結果を表1〜3に示す。
【0128】
試験例1<耐ブリード性の評価>
各組成物の結晶状態のシートについて、シート表面を目視により観察し、ブリードの有無を確認した。ブリードが全く確認されなかった場合を「A」、ブリードが僅かに確認された場合を「B」、ブリードが多く確認された場合を「C」とした。なお、参考例1については、ポリ乳酸樹脂以外の原料が用いられておらず、ブリードアウトしないため、評価を行わなかった。
【0129】
試験例2<嵌合性の評価>
嵌合性の評価は、単発真空圧空成形機(脇坂製作所社製、FVS−500P WAKITEC)を用いて、前記切り出した非晶状態のシートをガイドに取り付け、ヒーター温度を400℃に設定したヒーター部中での保持時間を変えることで、シート表面の温度が表2に示す温度となるまでシートを加熱した。各温度に加熱したシートを各表に記載した温度に設定した上下金型を用いて真空成形を行い、金型内で10秒間保持して真空成形体(蓋)を取り出した。得られた蓋を市販品の容器(商品名 湯呑み90 志野 シーピー化成社製)の本体部分(φ81mm 高さ51mm 材質 PP入り低発泡PS製)に嵌合させ、容易に嵌合できた場合を「A」とし、それ以外を「B」とした。シート表面の温度は、加熱後のシート表面温度を直接表面温度計にて測定した。なお、使用した金型を図1に示す。
【0130】
試験例3<耐熱性の評価1>
前記嵌合性の評価で、容易に嵌合できた成形体を80℃の熱水の中に30秒浸漬した後、嵌合性に変化が生じない場合は「A」、嵌合性が大きく変化する場合は「B」とした。
【0131】
試験例4<透明性の評価>
前記嵌合性の評価で、容易に嵌合できた成形体の一部を切り取り、ヘイズメーター(HM−150型 村上色彩技術研究所社製)を用いて、Haze値を測定し、これを透明度の指標とした。Haze値の値が小さいほど、透明性に優れることを示す。
【0132】
試験例5<結晶性の評価>
前記非晶状態のシート及び前記嵌合性の評価で容易に嵌合できた成形体の一部を切り取り、相対結晶化度を求めた。具体的には、PerkinElmer製 DSCを用いて、25℃から200℃まで15℃/minで昇温させ、観察された冷結晶化発熱ピークの絶対値ΔHcと結晶溶融ピークの絶対値ΔHmから下式より相対結晶化度を求めた。
相対結晶化度(%)=((ΔHm−ΔHc)/ΔHm)×100
【0133】
試験例6<耐熱性の評価2>
非晶状態のシートについて、12cm×12cmのサンプルを切り出し、縦横それぞれ10cm間隔の標線を入れ、JIS K 7133に記載の方法に従い、各温度一定で24時間放置し、それぞれの加熱寸法変化(熱収縮率)を測定した。温度は25℃から60℃まで1℃刻みでそれぞれの温度における熱収縮率を測定し、縦または横方向で大きい方の熱収縮率が0.3%以下となる最大の温度を非晶シートの耐熱性とした。
【0134】
【表1】

【0135】
【表2】

【0136】
【表3】

【0137】
表1〜3より、特定の可塑剤、非イオン性界面活性剤、結晶核剤の組み合わせを含有する樹脂組成物は、加熱ゾーンでの保持時間が異なってシート表面の温度が変化しても、十分な嵌合性が得られる温度領域(成形温度幅)が広く、且つその範囲で得られた成形体の耐熱性、透明性、結晶性も良好なものであった。また、表2より、特定の非イオン性界面活性剤の分子量が大きく、可塑剤の添加量がより少ない方が非晶状態のシートの耐熱性が良好なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、日用雑貨品、食品包装材、家電部品、家電部品用梱包資材、自動車部品等の様々な工業用途に好適に使用することができる。
【0139】
本発明は、下記のいずれかに関し得る;
<1>
ポリ乳酸樹脂、可塑剤、式(1):
−O(AO)−R (1)
〔式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、総炭素数8〜22のアシル基、又は水素原子を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は総炭素数2〜4のアシル基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0<p≦300を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い〕
で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2):
【0140】
【化5】

【0141】
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R及びRは置換基を有していてもよい炭素数5〜21の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、同一でも異なっていても良い)
及び/又は、式(3):
【0142】
【化6】

【0143】
(式中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R及びRは置換基を有していてもよい炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、同一でも異なっていても良い)
で表される結晶核剤を含有してなるポリ乳酸樹脂組成物。
<2>
可塑剤が、式(4):
−O(AO)−CORCOO−(AO)−R10 (4)
(式中、R及びR10は炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を示し、但し、R及びR10は同一でも異なってもよく、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、但し、m又はn個のAは同一でも異なってもよく、m及びnは各々オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0≦m≦5、0≦n≦5であり、かつ1≦m+n≦8を満足する数を示す)
で表される化合物、及び/又は、式(5):
11O−CO−R12−CO−〔(OR13)O−CO−R12−CO−〕OR11 (5)
〔式中、R11は炭素数が1〜4のアルキル基、R12は炭素数が2〜4の直鎖アルキレン基、R13は炭素数が2〜6のアルキレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜6の整数であり、tは(OR13)O−CO−R12−CO−の繰り返し数を示す1〜6の数であり、但し、全てのR12は同一でも異なっていてもよく、全てのR13は同一でも異なっていてもよい〕
で表される化合物を含有してなる、<1>記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<3>
式(4)におけるR及びR10は、それぞれ独立して、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、又はベンジル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である、<2>記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<4>
式(4)におけるRは、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、又はテトラメチレン基であり、より好ましくはエチレン基、プロピレン基、又はイソプロピレン基である、<2>又は<3>記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<5>
式(4)におけるAは、好ましくはエチレン基、プロピレン基、又はイソプロピレン基である、<2>〜<4>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<6>
式(4)におけるm及びnは、好ましくは0≦m≦5、0≦n≦5で、かつ1≦m+n≦8を満足する数であり、より好ましくは0≦m≦5、0≦n≦5で、かつ、4≦m+n≦8を満足する数であり、さらに好ましくは0≦m≦5、0≦n≦5で、かつ、6≦m+n≦8を満足する数であり、さらに好ましくはそれぞれ3である、<2>〜<5>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<7>
式(4)で表される化合物の平均分子量が、好ましくは250以上、より好ましくは250〜700、さらに好ましくは300〜600、さらにより好ましくは330〜500である、<2>〜<6>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<8>
式(4)で表される化合物は、コハク酸エステルが好ましく、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルのジエステルがより好ましい、<2>〜<7>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<9>
式(4)で表される化合物は、アジピン酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル/ベンジルアルコール混合物(重量比:1/1)とのエステル化合物が好ましい、<2>〜<7>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<10>
式(5)におけるR11は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、又はtert−ブチル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、さらに好ましくはメチル基である、<2>記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<11>
式(5)におけるR12は、好ましくはエチレン基、1,3−プロピレン基、又は1,4−ブチレン基であり、より好ましくはエチレン基である、<2>又は<10>記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<12>
式(5)におけるR13は、好ましくはエチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−イソプロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1,2−ペンチレン基、1,4−ペンチレン基、1,5−ペンチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,2−ヘキシレン基、1,5−ヘキシレン基、1,6−ヘキシレン基、2,5−ヘキシレン基、又は3−メチル−1,5−ペンチレン基であり、より好ましくはエチレン基、1,2−プロピレン基、又は1,3−プロピレン基である、<2>、<10>〜<11>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<13>
式(5)におけるsは、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数である、<2>、<10>〜<12>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<14>
式(5)におけるtは、好ましくは1〜6の数、より好ましくは1〜4の数である、<2>、<10>〜<13>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<15>
式(5)で表される化合物は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸から選ばれる少なくとも1つの二塩基酸と、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンンジオールから選ばれる少なくとも1つの2価アルコールとのオリゴエステル〔式(5)中、t=1.2〜3〕が好ましい、<2>、<10>〜<14>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<16>
式(4)及び/又は式(5)で表されるカルボン酸エステルの含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物中、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である、<2>、<10>〜<15>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<17>
式(1)におけるRは、好ましくは炭素数8〜22のアルキル基、総炭素数8〜22のアシル基、又は水素原子であり、より好ましくは炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和のアルキル基、総炭素数が8〜22の飽和又は不飽和のアシル基、又は水素原子であり、さらに好ましくは炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和のアルキル基、総炭素数が10〜18の飽和又は不飽和のアシル基、又は水素原子である、<1>〜<16>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<18>
式(1)におけるRは、好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は総炭素数2〜4のアシル基であり、より好ましくは水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基;又はアセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基である、<1>〜<17>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<19>
式(1)におけるRは、Rが炭素数8〜22のアルキル基又は総炭素数8〜22のアシル基の場合には、好ましくは水素原子又はメチル基、より好ましくは水素原子である、<1>〜<18>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<20>
式(1)におけるRは、Rが水素原子の場合には、好ましくは水素原子である、<1>〜<19>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<21>
式(1)におけるAは、好ましくはエチレン基、プロピレン基、又はイソプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基又はイソプロピレン基である、<1>〜<20>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<22>
式(1)におけるp個のAOは同一でも異なってもよく、異なる場合の繰り返し単位が好ましくはブロック型又はランダム型であり、より好ましくはブロック型であり、さらに好ましくは、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン型のブロック型であり、さらに好ましくはポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型である、<1>〜<21>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<23>
式(1)におけるpは、好ましくは0<p≦300であり、Rが炭素数8〜22のアルキル基又は総炭素数8〜22のアシル基の場合には、好ましくは2≦p≦50、より好ましくは5≦p≦20であり、Rが水素原子の場合は、好ましくは10≦p≦200、より好ましくは20≦p≦100である、<1>〜<22>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<24>
式(1)におけるRが水素原子の場合は、(AO)は異なるAOを含有することが好ましく、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型、又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン型のブロック型がより好ましく、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型がさらに好ましく、その場合の各ブロックユニットを構成するp’の数はそれぞれ5≦p’≦80が好ましく、5≦p’≦60がより好ましく、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)の重量比(EO/PO)は、5/95〜70/30が好ましく、5/95〜60/40がより好ましく、10/90〜50/50がさらに好ましく、10/90〜40/60がさらに好ましく、10/90〜30/70がさらに好ましく、15/85〜25/75がさらに好ましい、<1>〜<23>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<25>
式(1)で表される化合物の平均分子量は、300〜100000が好ましく、500〜50000がより好ましく、500〜10000がさらに好ましく、500〜6000がさらに好ましい、<1>〜<24>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<26>
式(1)で表される化合物は、炭素数8〜22の脂肪族アルコールとポリオキシエチレングリコールやポリオキシプロピレングリコールとのモノ又はジエーテル化物、あるいは炭素数8〜22の脂肪酸とポリオキシエチレングリコールやポリオキシプロピレングリコールとのモノ又はジエステル化物の他、それらのメチルエーテル体が好ましく、脂肪酸ポリオキシエチレングリコールエステルや脂肪酸とメチルポリグリコールとのエステルがより好ましく、オレイン酸等の長鎖脂肪酸とポリグリコールとのエステルがさらに好ましい、<1>〜<25>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<27>
式(1)で表される化合物の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物中、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましく、0.1〜3重量部がさらに好ましい、<1>〜<26>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<28>
式(1)で表される化合物の含有量は、式(4)及び式(5)で表される可塑剤の総量100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、5〜50重量部がより好ましく、5〜45重量部がさらに好ましい、<2>〜<27>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<29>
式(2)におけるRは、好ましくはエチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、又はメタキシリレン基であり、より好ましくはエチレン基、ヘキサメチレン基、又はメタキシリレン基であり、さらに好ましくはエチレン基である、<1>〜<28>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<30>
式(2)におけるR及びRは、それぞれ独立して、好ましくはヘプチル基、ノニル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘンイコシル基、ヘプタデセル基、又は11−ヒドロキシペンタデシル基であり、より好ましくはウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘプタデセル基、又は11−ヒドロキシペンタデシル基であり、さらに好ましくは11−ヒドロキシペンタデシル基である、<1>〜<29>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<31>
式(2)で表される化合物は、エチレンビス脂肪酸アミドやプロピレンビス脂肪酸アミド、ブチレンビス脂肪酸アミド、ヘキサメチレンビス脂肪酸アミド、メタキシレンビス脂肪酸アミドが好ましく、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、ヘキサメチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、メタキシレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミドがより好ましく、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、ヘキサメチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、メタキシレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミドがさらに好ましい、<1>〜<30>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<32>
式(3)におけるRは、好ましくはエチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、又はオクタメチレン基であり、より好ましくはエチレン基、テトラメチレン基、又はオクタメチレン基であり、さらに好ましくはエチレン基又はテトラメチレン基である、<1>〜<31>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<33>
式(3)におけるR及びRは、それぞれ独立して、好ましくは、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタデセル基、又は12−ヒドロキシオクタデシル基であり、より好ましくは、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オクタデセル基、又は12−ヒドロキシオクタデシル基であり、さらに好ましくは、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オクタデセル基、又は12−ヒドロキシオクタデシル基である、<1>〜<32>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<34>
式(3)で表される化合物は、コハク酸パルミチルビスアミド、コハク酸ステアリルビスアミド、コハク酸オレイルビスアミド、コハク酸12−ヒドロキシステアリルビスアミド、アジピン酸パルミチルビスアミド、アジピン酸ステアリルビスアミド、アジピン酸オレイルビスアミド、アジピン酸12−ヒドロキシステアリルビスアミドが好ましく、コハク酸パルミチルビスアミド、コハク酸ステアリルビスアミド、コハク酸オレイルビスアミド、コハク酸12−ヒドロキシステアリルビスアミドがより好ましい、<1>〜<33>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<35>
ポリ乳酸樹脂組成物における式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.01〜2重量部がより好ましく、0.01〜1重量部がさらに好ましい、<1>〜<34>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<36>
式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤の含有量は、式(4)及び式(5)で表される可塑剤の総量100重量部に対して、0.5〜50重量部が好ましく、0.5〜30重量部がより好ましく1.0〜20重量部がさらに好ましく、2〜10重量部がよりさらに好ましい、<1>〜<35>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<37>
さらに、加水分解抑制剤を含有する、<1>〜<36>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<38>
加水分解抑制剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.05〜3重量部が好ましく、0.10〜2重量部がより好ましい、<1>〜<37>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<39>
ポリ乳酸樹脂組成物の溶融混練物のガラス転移温度(Tg)は、30〜60℃が好ましく、30〜55℃がより好ましく、35〜55℃がさらに好ましい、<1>〜<38>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<40>
ポリ乳酸樹脂組成物の溶融混練物の結晶化温度(Tc)は、50〜110℃が好ましく、50〜100℃がより好ましく、60〜90℃がさらに好ましい、<1>〜<39>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
<41>
<1>〜<40>いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物を含有してなる、相対結晶化度が80%以下であるシート。
<42>
<41>記載のシートを真空成形又は圧空成形してなる成形体。
<43>
<41>記載のシートを真空成形又は圧空成形することを特徴とする、シートの二次加工方法。
<44>
<42>記載の成形体からなる包装材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂、可塑剤、式(1):
−O(AO)−R (1)
〔式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、総炭素数8〜22のアシル基、又は水素原子を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は総炭素数2〜4のアシル基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0<p≦300を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は、同一でも異なっていてもよく、異なる場合の繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い〕
で表される非イオン性界面活性剤、ならびに、式(2):
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R及びRは置換基を有していてもよい炭素数5〜21の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、同一でも異なっていても良い)
及び/又は、式(3):
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R及びRは置換基を有していてもよい炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、同一でも異なっていても良い)
で表される結晶核剤を含有してなるポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項2】
可塑剤が、式(4):
−O(AO)−CORCOO−(AO)−R10 (4)
(式中、R及びR10は炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を示し、但し、R及びR10は同一でも異なってもよく、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、但し、m又はn個のAは同一でも異なってもよく、m及びnは各々オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、0≦m≦5、0≦n≦5であり、かつ1≦m+n≦8を満足する数を示す)
で表される化合物、及び/又は、式(5):
11O−CO−R12−CO−〔(OR13)O−CO−R12−CO−〕OR11 (5)
〔式中、R11は炭素数が1〜4のアルキル基、R12は炭素数が2〜4の直鎖アルキレン基、R13は炭素数が2〜6のアルキレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜6の整数であり、tは(OR13)O−CO−R12−CO−の繰り返し数を示す1〜6の数であり、但し、全てのR12は同一でも異なっていてもよく、全てのR13は同一でも異なっていてもよい〕
で表される化合物を含有してなる、請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項3】
ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、式(4)で表される化合物の含有量が1〜30重量部、式(1)で表される非イオン性界面活性剤の含有量が0.1〜10重量部、かつ、式(2)及び/又は式(3)で表される結晶核剤の含有量が0.01〜3重量部である、請求項2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項4】
式(4)で表される化合物100重量部に対して、式(1)で表される非イオン性界面活性剤が1〜50重量部である、請求項2又は3記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項5】
式(1)中のRが総炭素数8〜22のアシル基、Rが水素原子、Aが炭素数2のアルキレン基を示し、pが2≦p≦50を満足する数である、請求項1〜4いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項6】
式(1)中のR及びRが水素原子を示し、pが10≦p≦200を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基が同一ではなく、繰り返し単位はブロック型、ランダム型のいずれでも良い、請求項1〜4いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項7】
式(1)中の(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基が、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型を構成し、前記ブロックの各繰り返し単位数(p’)がそれぞれ独立して5≦p’≦80である、請求項6記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項8】
式(1)中の(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基が、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型を構成し、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)の重量比(EO/PO)が5/95〜70/30である、請求項6又は7記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項9】
結晶核剤が式(2)で表される化合物を含む、請求項1〜8いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項10】
可塑剤が式(4)で表される化合物を含む、請求項2〜9いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項11】
式(1)中のRが総炭素数8〜22のアシル基、Rが水素原子、Aが炭素数2のアルキレン基を示し、pが2≦p≦50を満足する数である化合物を含み、
結晶核剤が式(2)で表される化合物を含み、
可塑剤が式(4)で表される化合物を含む、請求項2〜10いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項12】
式(1)中のRが水素原子を示し、Rは水素原子を示し、Aは炭素数2又は3のアルキレン基を示し、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10≦p≦200を満足する数であり、(A1O)で表されるp個のオキシアルキレン基は同一ではなく、繰り返し単位はポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン型のブロック型であり、各ブロックユニットを構成するp’は5≦p’≦80を満足する数であり、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)の重量比(EO/PO)が5/95〜70/30である化合物を含み、
結晶核剤が式(2)で表される化合物を含み、
可塑剤が式(4)で表される化合物を含む、請求項2〜10いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項13】
結晶化温度(Tc)が60〜90℃である、請求項1〜12いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13いずれか記載のポリ乳酸樹脂組成物を含有してなる、相対結晶化度が80%以下であるシート。
【請求項15】
請求項14記載のシートを真空成形又は圧空成形してなる成形体。
【請求項16】
請求項14記載のシートを真空成形又は圧空成形することを特徴とする、シートの二次加工方法。
【請求項17】
請求項15記載の成形体からなる包装材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−180512(P2012−180512A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−24070(P2012−24070)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】