ポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム
【課題】
生分解性を有し、且つ耐熱性に優れるアイロンプリント用フィルムを開発することを目的とする。
【解決手段】
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であるポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に熱可塑性インキ層を設けてなることを特徴とするポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムに関する。
生分解性を有し、且つ耐熱性に優れるアイロンプリント用フィルムを開発することを目的とする。
【解決手段】
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であるポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に熱可塑性インキ層を設けてなることを特徴とするポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性を有し、且つ耐熱性に優れたアイロンプリント用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等からなる二軸延伸ポリエステルフィルムや紙は、アイロンプリントなどの材料として広く使用されている。プラスチックフィルムは紙に比べてプリント位置の確認が確実なため販売用のTシャツ等に幅広く使用されている。
ここでアイロンプリント用フィルムの製造方法としては、例えば二軸延伸ポリエステルフィルムに、熱可塑性インクなどを塗工して製造され、プリント衣服、プリントバッグ、プリントのぼり等の布への意匠性付与に幅広く使用されている。
一方、近年、アイロンプリントを使用した後の不要となったフィルムの廃棄において、環境意識の高揚や、廃棄物処理問題から焼却処分の必要のない生分解性アイロンプリント用フィルムへの要求が高まりつつある。この要求に対して、従来から離型フィルムの支持体として使用されてきた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムは生分解性が無く、焼却処分せざるを得ない状況にある。これに対し、ポリ乳酸をはじめとする脂肪族ポリエステル系フィルムは、自然環境下に棄却された場合に分解すること(例えば、ポリ乳酸フィルムは土壌中において自然に加水分解したのち微生物によって無害な分解物となること)を主眼にして開発されてきた。
かかる生分解性を有するポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルからなる二軸延伸フィルムをアイロンプリント用フィルムに用いることが種々提案されている。
【0003】
しかしながら、生分解性ポリエステル等は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに比べ、耐熱性が不足することから用途が限られ、耐熱性を有するアイロンプリント用フィルムの開発が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、生分解性を有し、且つ耐熱性に優れるアイロンプリント用フィルムを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であるポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に熱可塑性インク層を設けてなることを特徴とするポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムを有してなるアイロンプリント用フィルムは、TMA測定による0.25MPa荷重での5%収縮温度が170℃と、従来のポリ乳酸の溶融温度を越えても熱変形が小さく、しかも生分解性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<ポリ−L−乳酸>
本発明のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムを構成する成分に係わるポリ乳酸系組成物の1成分であるポリ−L−乳酸(PLLA)は、L−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。L−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、後述のポリ−D−乳酸(PDLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物からなる層あるいは当該層を延伸して得られる延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
【0008】
PLLAの分子量は後述のポリ−D−乳酸と混合したポリ乳酸系組成物がフィルムなどの層として形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜300万、好ましくは6千〜200万の範囲にあるポリ−L乳酸が好適である。重量平均分子量が6千未満のものは得られる延伸フィルムの強度が劣る虞がある。一方、300万を越えるものは溶融粘度が大きくフィルム加工性が劣る虞がある。
<ポリ−D−乳酸>
本発明のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムを構成する成分に係わるポリ乳酸系組成物の1成分であるポリ−D−乳酸(PDLA)は、D−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。D−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、前述のポリ−L−乳酸と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物からなる層あるいは当該層を延伸して得られる延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
【0009】
PDLAの分子量は前述のPLLAと混合したポリ乳酸系組成物がフィルムなどの層として形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜300万、好ましくは6千〜200万の範囲にあるポリ−D−乳酸が好適である。重量平均分子量が6千未満のものは得られる延伸フィルムの強度が劣る虞がある。一方、300万を越えるものは溶融粘度が大きくフィルム加工性が劣る虞がある。
【0010】
本発明においてPLLA及びPDLAには、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他の共重合成分、例えば、多価カルボン酸若しくはそのエステル、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類等を共重合させておいてもよい。
多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸及びメチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。
また、本発明に係わるPLLA及びPDLAには、それぞれD−乳酸若しくはL−乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
【0011】
<ポリ乳酸系延伸フィルム>
本発明のポリ乳酸系離型フィルムに係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下、好ましくは0.1以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルムである。
【0012】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、前記特性に加え、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)が40J/g以上、より好ましくは50J/g以上であり、DSC測定における吸熱ピーク測定後に、降温した際の発熱量(ΔHc)が40J/g以上、より好ましくは50J/g以上の特性を有する。
【0013】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、前記特性に加え、広角X線測定における2θが12度、21度および24度近辺のピーク面積の総和(SSC)が全体の面積に対して20%以上、好ましくは25%以上であり、かつ2θが17度および19度近辺のピーク面積の総和(SPL)が全体の面積に対して5%以下、好ましくは3%以下の特性を有する。
【0014】
かかる広角X線測定における2θが17度および19度近辺のピークはPLLA及びPDLAの結晶に基づくピーク(PPL)であり、12度、21度および24度近辺のピークはPLLAとPDLAとが共結晶した所謂ステレオコンプレックスの結晶に基づくピーク(PSC)である。
【0015】
本発明における広角X線による回折ピーク(2θ)はX線回折装置(株式会社リガク製 自動X線回折装置RINT−2200またはRINT−2500)を用いて測定して検出される回折ピークの角度(度)である。記録紙の基線(強度;0cps)とX線回折強度曲線で囲まれた回折角(2θ)が10〜30度の総面積(全体の面積)を100%とし、結晶に基づく各々の回折ピーク面積は、(SPL)については17度および19度近辺の回折ピーク(2θ)、(SSC)については12度、21度および24度近辺の回折ピーク(2θ)各々の面積を記録紙から切り出し、その重量を測定することにより算出した。また非結晶部分に起因するブロードな部分は「非晶部分」とした。尚、(SPL)、(SSC)を測定する際には非晶部分に伴う回折曲線をベースラインとしてその上の部分を測定した。
【0016】
本発明におけるポリ乳酸系延伸フィルムの熱融解特性は、DSC(示差走査熱量計)として、ティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121及びJIS K 7122に準拠し、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、0℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して昇温時のDSC曲線を得、得られたDSC曲線から、延伸フィルムの融点(Tm)、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)、150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)を求めるとともに、250℃に10分間維持した後、冷却速度:10℃/分で0℃まで降温して結晶化させて、降温時のDSC曲線を得、得られたDSC曲線から、延伸フィルムの結晶化の際の発熱量(Hc)を求めた。
【0017】
なお、ピーク高さは、65℃〜75℃付近のベースラインと240℃〜250℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求めた。
【0018】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムの厚さは、通常、5〜500μm、好ましくは10〜100μmの範囲にある。
【0019】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、必要に応じて、後述の熱可塑性インク層もしくは印刷層との密着性を向上させるために、プライマーコート、コロナ処理、プラズマ処理や火炎処理などを施しても良い。特に、離型層をコートする面にコロナ処理する場合は、38ダイン以上に濡れ調の改質を行うことが望ましく、また必要に応じて帯電防止剤を塗布し表面固有抵抗を1×1013Ω以下、中でも1×1012Ω以下にすることが望ましい。
<ポリ乳酸系組成物>
本発明に係わる上記特性を有するポリ乳酸系延伸フィルムを得るには、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物として、以下の熱融解特性を有するポリ乳酸系組成物を用意して、延伸することが好ましい。
【0020】
本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、DSC測定において、ポリ乳酸系組成物を250℃で10分融解させた後に降温した際の発熱量(ΔHc)が好ましくは20J/g以上である熱特性を有することが望ましい。
さらに、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、そのDSCの第2回昇温時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)において得られたDSC曲線の150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク20)のピーク比(ピーク10/ピーク20)が好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下であるという熱特性を有することが望ましい。これは、この組成物がステレオコンプレックス晶を選択的に形成しているためと考えられる。
ピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5より大きいと、結晶化後にPLLA、PDLA単体結晶の形成量が大きく、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とが十分に混練されていないので、結晶化後のα晶(PLLAあるいはPDLAの単独結晶)の形成量が大きいため、延伸しても耐熱性に劣る虞がある。
また、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、DSCの第2回昇温時における205〜240℃の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)が35J/g以上であることが好ましい。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物の熱融解特性は、前記ポリ乳酸系延伸フィルムの熱融解特性を求めた方法と同様な方法で、DSC(示差走査熱量計)として、ティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121及びJIS K 7122に準拠して求めた。なお、ポリ乳酸系組成物の熱融解特性は、降温時と第2回昇温時における特性を求めた。
【0021】
本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、好ましくは前記PLLAを25〜75重量部、より好ましくは35〜65重量部、特に好ましくは45〜55重量部、その中でも好ましくは47〜53重量部及びPDLAを好ましくは75〜25重量部、より好ましくは65〜35重量部、特に好ましくは55〜45重量部、その中でも好ましくは53〜47重量部(PLLA+PDLA=100重量部)から構成されている、即ち調製されている。
【0022】
本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸の重量平均分子量が、いずれも6千〜300万の範囲内であり、かつ、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のいずれか一方の重量平均分子量が3万〜200万であるポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸から混練により調製することが望ましい。
【0023】
また、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、例えば、これらPLLAとPDLAを、230〜260℃で二軸押出機、二軸混練機、バンバリーミキサー、プラストミルなどで溶融混練することにより得ることができる。
PLLAの量が上記範囲外の組成物は上述の方法で混練しても、得られる組成物を延伸してなるフィルムはα晶の結晶体を含み、耐熱性が不十分となる虞がある。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物が耐熱性に優れるのは、当該組成物がステレオコンプレックス構造を形成しており、ステレオコンプレックス構造はPLLAとPDLAの等量から構成されるためであると考えられる。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物を得るために、PLLAとPDLAを溶融混練するときの温度は、好ましくは230〜260℃であり、より好ましくは235〜255℃である。溶融混練する温度が230℃より低いとステレオコンプレックス構造物が未溶融で存在する虞があり、260℃より高いとポリ乳酸が分解する虞がある。
【0024】
また、本発明に係わるポリ乳酸系組成物を調製する際に、PLLAとPDLAを十分に溶融混練することが望ましい。
溶融混練時間は、用いる溶融混練機にもよるが、PLLAとPDLAの溶融混練時間をより長くすればするほどPLLAあるいはPDLAの単独結晶(α晶)が生成し難いポリ乳酸系組成物とすることができる。
例えば、二軸押出機(東芝機械社製 同方向回転二軸押出機 型式TEM−37BS スクリュ径:37mm、スクリュ条数:2、スクリュ長(l/d):42、スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mmからなるスクリュパターン)では温度:250℃、回転数:430rpmで、1分間以上であればよい。
例えばラボプラストミル(東洋精機社製 ラボプラストミル 型式Cモデル(二軸混練機)では温度:245℃、回転数:120rpmで、15分間以上、好ましくは20分間以上とすることにより、得られるポリ乳酸系組成物は、DSCの第2回昇温時における205〜240℃の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)が45J/g以上、好ましくは50J/g以上となり、150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量は3.5J/g以下、好ましくは0J/gとなり、よりステレオコンプレックスの結晶比率が高く、PLLAあるいはPDLAの単独結晶(α晶)が生成し難いポリ乳酸系組成物とすることができる。
【0025】
本発明に係るポリ乳酸系組成物は、ステレオコンプレックスの結晶化が早く、かつステレオコンプレックス結晶化可能領域も大きいので、PLLAあるいはPDLAの単独結晶(α晶)が生成し難いと考えられる。
【0026】
前述のように、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、DSCによる250℃で10分経過後の降温時での測定(10℃/分)において結晶化によるピーク(発熱量ΔHc)が、20J/g以上であるとポリ乳酸系組成物の結晶化が速やかに起こる。
【0027】
また結晶化による発熱量が20J/gより小さいと結晶化速度が小さく、上記混練が十分でない虞がある。
【0028】
本発明に係わるポリ乳酸系組成物の重量平均分子量は特に限定されるものではない。しかしながら、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、重量平均分子量が1万〜150万の範囲にあることが好ましく、さらには重量平均分子量が5万〜50万の範囲にあることが望ましい。重量平均分子量が、1万〜150万の範囲を高分子側に外れるとステレオコンプレックス化が十分でなく耐熱性が得られない虞があり、また低分子側に外れると得られるポリ乳酸系組成物層の強度が十分でない虞がある。
【0029】
<ポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法>
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物を用いて、押出成形して得られるフィルムあるいはシートを、好ましくは一方向に2倍以上、より好ましくは2〜12倍、さらに好ましくは3〜6倍延伸することにより、耐熱性、透明性に優れる延伸フィルムが得られる。延伸倍率の上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、12倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
【0030】
また、押出成形して得られるフィルムあるいはシートを、好ましくは縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上、より好ましくは縦方向に2〜7倍及び横方向に2〜7倍、さらに好ましくは縦方向に2.5〜5倍及び横方向に2.5〜5倍延伸することにより、耐熱性、透明性に優れる二軸延伸フィルムが得られる。延伸倍率の上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、7倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
【0031】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、延伸した後、40〜220℃、好ましくは150〜200℃で、1秒以上、好ましくは3〜60秒熱処理しておくと、更に耐熱性が改良される。
【0032】
<熱可塑性インク層>
本発明のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムに係わる熱可塑性インク層は樹脂から構成されるものであってもワックスから構成されるものであってもよい。樹脂から構成されるインク層としては、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂の中の一又は二以上の樹脂からなるインク層が挙げられる。また、ワックスから構成されるインク層としては、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エステルワックス、酸化ワックス、カスターワックス、高級脂肪酸モノグリセリド等のワックス類の中の一又は二以上からなるインク層が挙げられる。
<ポリ乳酸系フィルム>
本発明のポリ乳酸系フィルムは、前記熱的特性を有するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に、前記離型層を設けてなるフィルムである。
<ポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムの製造方法>
本発明のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムは、前記熱的特性を有するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に熱可塑性インク層を付与することによりプリント膜を形成することができる。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用でき、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、マイヤーバーなどのバーコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法等の従来から知られている種々公知の方法を使用することができる。
熱可塑性インク層の塗布量は、0.1〜200g/m2の範囲が好ましい。熱可塑性インク層の塗布量が0.1g/m2未満では、プリントした際に映えが低下し、本来のアイロンプリント用フィルム性能が出なくなる傾向がある。また、乾燥塗布量が200g/m2を超えると、アイロンプリントしたさいにプリント図柄のズレを生じる虞がある。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0034】
実施例及び比較例等で使用したポリ乳酸は次の通りである。
(イ)ポリ−L−乳酸(PLLA−1):
D体量:1.9% Mw:22万(g/モル)、Tm:163℃。
(ロ)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA−2):
D体量:100.0% Mw:135万(g/モル)、Tm:180℃。
インヘレント粘度(溶媒;クロロホルム、測定温度;25℃、濃度;0.1g/dl):7.04(dl/g)
本発明における測定方法は以下のとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw)
ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を以下の方法で測定した。
【0035】
試料20mgに、GPC溶離液10mlを加え、一晩静置後、手で緩やかに攪拌した。この溶液を、両親媒性0.45μm−PTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC−25HP045AN)でろ過し、GPC試料溶液とした。
測定装置;Shodex GPC SYSTEM−21
解析装置;データ解析プログラム:SIC480データステーションII
検出器;示差屈折検出器(RI)
カラム;Shodex GPC K−G + K−806L + K−806L
カラム温度;40℃
溶離液;クロロホルム
流速;1.0ml/分
注入量;200μL
分子量校正;単分散ポリスチレン
(2)DSC測定
前記記載の方法で測定した。
(3)透明性
日本電色工業社製 ヘイズメーター300Aを用いてフィルムのヘイズ(HZ)及び平行光光線透過率(PT)を測定した。
(4)表面粗さ
株式会社小坂研究所製三次元表面粗さ測定器SE−30Kを用いてフィルム表面の中心面平均粗さ(SRa)を測定した。
(5)引張り試験
フィルムからMD方向及びTD方向に、夫々短冊状の試験片(長さ:150mm、幅:15mm)を採取して、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を使用し、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分で測定)で、引張り試験を行い、引張強さ(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を求めた。
(6)耐熱性
熱分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製 熱・応用・歪測定装置 TMA/SS120)を用いてフィルムから幅4mmの試験片を切り出し、チャック間5mmで試験片に荷重0.25MPaを掛け、100℃(開始温度)から5℃/分で昇温し、各温度における試験片の変形(伸びまたは収縮)を測定した。
(7)広角X線測定
測定装置:X線回折装置(株式会社リガク製 自動X線回折装置RINT−2200)
反射法
X線ターゲット;Cu K−α
出力;40kV×40mA
回転角;4.0度/分
ステップ;0.02度
走査範囲;10〜30度
(8)透湿度(水蒸気透過度)
JIS Z0208 に準拠して求めた。フィルムを採取して、表面積が約100cm2の袋を作り、塩化カルシウムを適量入れた後、密封した。これを40℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気中に3日間放置し、重量増加から透湿度(水蒸気透過度)を求めた。
(9)酸素透過度
JIS K7126に基づいて20℃湿度0%RH(相対湿度)の条件で、酸素透過測定器(MOCON社製、OXTRAN2/21 ML)を使用して測定した。
(10)アイロンプリント適性
ポリ乳酸系フィルムを水平台の上にコロナ処理面を上にして載置し、簡易的にクレヨンで図柄を描いた。更に図柄面を下にして木綿布に載せて、上からアイロンをあててアイロンプリントを行った。アイロンの表面温度は150±10℃に調整した。
アイロンした際の図柄の映えと、特にフィルムが収縮することによる図柄の縮み有無を評価した。
参考例1
PLLA−1:PDLA−2を50:50(重量部)の比で計量し、二軸混練押出機を用い、溶融温度;250℃、混練時間;6分で、溶融混練してポリ乳酸系組成物を得た後、T−ダイシート成形機で、厚さ約300μmのポリ乳酸系組成物からなるシートを得た。かかるポリ乳酸系組成物の熱融解特性を前記記載の方法で測定した。
次に、当該シートをブルックナー社製二軸延伸機で、縦方向に延伸温度;65℃で3倍に、横方向に延伸温度;70℃で3倍に延伸し、テンター内で180℃で約40秒間のヒートセットを行い、ポリ乳酸系延伸フィルムを得た。得られたポリ乳酸系延伸フィルムの物性を前記記載の方法で測定した。測定結果を表1に、熱融解特性を図1及び図2に示す。
参考例2
参考例1で用いたPLLA−1及びPDLA−1に代えて、PLLA−1を単独で用い、二軸延伸フィルムのヒートセットを150℃で約40秒間行う以外は参考例1と同様に行い、PLLA−1のシート及び二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表1に、熱融解特性を図3及び図4に示す。
【0036】
【表1】
表1から明らかなように、参考例1で得られたポリ乳酸系組成物からなる二軸延伸フィルムは、熱融解特性において、150〜200℃の範囲の吸熱ピーク(吸熱量)は僅かで、205〜240℃の範囲の吸熱ピークは大きく、吸熱量(ΔHm)も66.1J/gと多く、降温した際の発熱量(ΔHc)も49.7J/gある。
また、二軸延伸フィルムの素材となるポリ乳酸系組成物(シート)の熱融解特性は、第1回降温時の発熱量(ΔHc)が20.3J/gと20J/g以上であり、第2回昇温時には、150〜200℃の範囲には吸熱ピークはみられず、205〜240℃の範囲の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)は51.0J/gと35J/g以上である。さらに、参考例1で得られたポリ乳酸系組成物からなる二軸延伸フィルムは、透明性、耐熱性に優れ、透湿度及び酸素透過度も低く、バリア性能を有し、広角X線測定における回折ピークは2θが12、21、24度近辺にのみ有し、2θが17、19度近辺には回折ピークは現れなかった。また17、19度近辺のピーク面積(SPL)が全体の面積に対して0%と5%未満であり、2θが12、21、24度近辺のピーク面積(SSC)が全体の面積に対して51%と20%以上であった。
【0037】
それに対し、参考例2で得られたPLLA−1からなる二軸延伸フィルムは、150〜200℃の範囲の吸熱ピークのみで、205〜240℃の範囲の吸熱ピークはなく、降温した際の発熱量(ΔHc)は0.4J/gと参考例1で得られたポリ乳酸系組成物からなる二軸延伸フィルムに比べ少ない。また、二軸延伸フィルムの素材となるPLLA−1(シート)の熱融解特性は、第1回降温時の発熱量(ΔHc)は0であり、第2回昇温時には、205〜240℃の範囲には吸熱ピークはみられず、150〜200℃の範囲のピークのみであり、その吸熱量(ΔHm)は32.1J/gである。さらに、参考例2で得られたPLLA−1からなる二軸延伸フィルムは、透明性は優れるものの、耐熱性、バリア性能に劣るとともに、広角X線測定における回折ピークは2θが17、19度近辺にのみ有し、2θが12、21、24度近辺には回折ピークは現れなかった。また17、19度近辺のピーク面積(SPL)が全体の面積に対して57%と5%を越えており、2θが12、21、24度近辺のピーク面積(SSC)が全体の面積に対して0%と20%未満であった。
【0038】
実施例1
参考例1のポリ乳酸系延伸フィルムの片面にコロナ処理を行った。そしてポリ乳酸系フィルムを水平台の上にコロナ処理面を上にして載置し、簡易的にクレヨンで図柄を描いた。更に図柄面を下にして木綿布に載せて、上からアイロンをあててアイロンプリントを行った。アイロンの表面温度は150±10℃に調整した。
アイロンした際の図柄の映えは美麗であり、フィルムが収縮しないので図柄のずれもなかった。
比較例1
参考例2の二軸延伸フィルムの片面にコロナ処理を行い、実施例1と同様な方法で、アイロンプリント適性を評価した。その結果、フィルムの収縮が起こり、アイロンプリントが出来ないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムは、TMA測定による0.25MPa荷重での5%収縮温度が170℃と、従来のポリ乳酸の溶融温度を越えても熱変形が小さく、しかも生分解性を有している。かかる特性を利用して、アイロンプリント用途に用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、参考例1の延伸フィルムの第1回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図2】図2は、参考例1の延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図3】図3は、参考例1の延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図4】図4は、参考例2の延伸フィルムの第1回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図5】図5は、参考例2の延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図6】図6は、参考例2の延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図7】図7は、参考例1のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図8】図8は、参考例1のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図9】図9は、参考例2のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図10】図10は、参考例2のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図11】図11は、参考例1の延伸フィルムの広角X線回折測定結果を示す図である。
【図12】図12は、参考例2の延伸フィルムの広角X線回折測定結果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性を有し、且つ耐熱性に優れたアイロンプリント用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等からなる二軸延伸ポリエステルフィルムや紙は、アイロンプリントなどの材料として広く使用されている。プラスチックフィルムは紙に比べてプリント位置の確認が確実なため販売用のTシャツ等に幅広く使用されている。
ここでアイロンプリント用フィルムの製造方法としては、例えば二軸延伸ポリエステルフィルムに、熱可塑性インクなどを塗工して製造され、プリント衣服、プリントバッグ、プリントのぼり等の布への意匠性付与に幅広く使用されている。
一方、近年、アイロンプリントを使用した後の不要となったフィルムの廃棄において、環境意識の高揚や、廃棄物処理問題から焼却処分の必要のない生分解性アイロンプリント用フィルムへの要求が高まりつつある。この要求に対して、従来から離型フィルムの支持体として使用されてきた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムは生分解性が無く、焼却処分せざるを得ない状況にある。これに対し、ポリ乳酸をはじめとする脂肪族ポリエステル系フィルムは、自然環境下に棄却された場合に分解すること(例えば、ポリ乳酸フィルムは土壌中において自然に加水分解したのち微生物によって無害な分解物となること)を主眼にして開発されてきた。
かかる生分解性を有するポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルからなる二軸延伸フィルムをアイロンプリント用フィルムに用いることが種々提案されている。
【0003】
しかしながら、生分解性ポリエステル等は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに比べ、耐熱性が不足することから用途が限られ、耐熱性を有するアイロンプリント用フィルムの開発が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、生分解性を有し、且つ耐熱性に優れるアイロンプリント用フィルムを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であるポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に熱可塑性インク層を設けてなることを特徴とするポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムを有してなるアイロンプリント用フィルムは、TMA測定による0.25MPa荷重での5%収縮温度が170℃と、従来のポリ乳酸の溶融温度を越えても熱変形が小さく、しかも生分解性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<ポリ−L−乳酸>
本発明のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムを構成する成分に係わるポリ乳酸系組成物の1成分であるポリ−L−乳酸(PLLA)は、L−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。L−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、後述のポリ−D−乳酸(PDLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物からなる層あるいは当該層を延伸して得られる延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
【0008】
PLLAの分子量は後述のポリ−D−乳酸と混合したポリ乳酸系組成物がフィルムなどの層として形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜300万、好ましくは6千〜200万の範囲にあるポリ−L乳酸が好適である。重量平均分子量が6千未満のものは得られる延伸フィルムの強度が劣る虞がある。一方、300万を越えるものは溶融粘度が大きくフィルム加工性が劣る虞がある。
<ポリ−D−乳酸>
本発明のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムを構成する成分に係わるポリ乳酸系組成物の1成分であるポリ−D−乳酸(PDLA)は、D−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。D−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、前述のポリ−L−乳酸と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物からなる層あるいは当該層を延伸して得られる延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
【0009】
PDLAの分子量は前述のPLLAと混合したポリ乳酸系組成物がフィルムなどの層として形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜300万、好ましくは6千〜200万の範囲にあるポリ−D−乳酸が好適である。重量平均分子量が6千未満のものは得られる延伸フィルムの強度が劣る虞がある。一方、300万を越えるものは溶融粘度が大きくフィルム加工性が劣る虞がある。
【0010】
本発明においてPLLA及びPDLAには、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他の共重合成分、例えば、多価カルボン酸若しくはそのエステル、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類等を共重合させておいてもよい。
多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸及びメチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。
また、本発明に係わるPLLA及びPDLAには、それぞれD−乳酸若しくはL−乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
【0011】
<ポリ乳酸系延伸フィルム>
本発明のポリ乳酸系離型フィルムに係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下、好ましくは0.1以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルムである。
【0012】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、前記特性に加え、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)が40J/g以上、より好ましくは50J/g以上であり、DSC測定における吸熱ピーク測定後に、降温した際の発熱量(ΔHc)が40J/g以上、より好ましくは50J/g以上の特性を有する。
【0013】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、前記特性に加え、広角X線測定における2θが12度、21度および24度近辺のピーク面積の総和(SSC)が全体の面積に対して20%以上、好ましくは25%以上であり、かつ2θが17度および19度近辺のピーク面積の総和(SPL)が全体の面積に対して5%以下、好ましくは3%以下の特性を有する。
【0014】
かかる広角X線測定における2θが17度および19度近辺のピークはPLLA及びPDLAの結晶に基づくピーク(PPL)であり、12度、21度および24度近辺のピークはPLLAとPDLAとが共結晶した所謂ステレオコンプレックスの結晶に基づくピーク(PSC)である。
【0015】
本発明における広角X線による回折ピーク(2θ)はX線回折装置(株式会社リガク製 自動X線回折装置RINT−2200またはRINT−2500)を用いて測定して検出される回折ピークの角度(度)である。記録紙の基線(強度;0cps)とX線回折強度曲線で囲まれた回折角(2θ)が10〜30度の総面積(全体の面積)を100%とし、結晶に基づく各々の回折ピーク面積は、(SPL)については17度および19度近辺の回折ピーク(2θ)、(SSC)については12度、21度および24度近辺の回折ピーク(2θ)各々の面積を記録紙から切り出し、その重量を測定することにより算出した。また非結晶部分に起因するブロードな部分は「非晶部分」とした。尚、(SPL)、(SSC)を測定する際には非晶部分に伴う回折曲線をベースラインとしてその上の部分を測定した。
【0016】
本発明におけるポリ乳酸系延伸フィルムの熱融解特性は、DSC(示差走査熱量計)として、ティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121及びJIS K 7122に準拠し、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、0℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して昇温時のDSC曲線を得、得られたDSC曲線から、延伸フィルムの融点(Tm)、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)、150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)を求めるとともに、250℃に10分間維持した後、冷却速度:10℃/分で0℃まで降温して結晶化させて、降温時のDSC曲線を得、得られたDSC曲線から、延伸フィルムの結晶化の際の発熱量(Hc)を求めた。
【0017】
なお、ピーク高さは、65℃〜75℃付近のベースラインと240℃〜250℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求めた。
【0018】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムの厚さは、通常、5〜500μm、好ましくは10〜100μmの範囲にある。
【0019】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、必要に応じて、後述の熱可塑性インク層もしくは印刷層との密着性を向上させるために、プライマーコート、コロナ処理、プラズマ処理や火炎処理などを施しても良い。特に、離型層をコートする面にコロナ処理する場合は、38ダイン以上に濡れ調の改質を行うことが望ましく、また必要に応じて帯電防止剤を塗布し表面固有抵抗を1×1013Ω以下、中でも1×1012Ω以下にすることが望ましい。
<ポリ乳酸系組成物>
本発明に係わる上記特性を有するポリ乳酸系延伸フィルムを得るには、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物として、以下の熱融解特性を有するポリ乳酸系組成物を用意して、延伸することが好ましい。
【0020】
本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、DSC測定において、ポリ乳酸系組成物を250℃で10分融解させた後に降温した際の発熱量(ΔHc)が好ましくは20J/g以上である熱特性を有することが望ましい。
さらに、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、そのDSCの第2回昇温時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)において得られたDSC曲線の150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク20)のピーク比(ピーク10/ピーク20)が好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下であるという熱特性を有することが望ましい。これは、この組成物がステレオコンプレックス晶を選択的に形成しているためと考えられる。
ピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5より大きいと、結晶化後にPLLA、PDLA単体結晶の形成量が大きく、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とが十分に混練されていないので、結晶化後のα晶(PLLAあるいはPDLAの単独結晶)の形成量が大きいため、延伸しても耐熱性に劣る虞がある。
また、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、DSCの第2回昇温時における205〜240℃の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)が35J/g以上であることが好ましい。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物の熱融解特性は、前記ポリ乳酸系延伸フィルムの熱融解特性を求めた方法と同様な方法で、DSC(示差走査熱量計)として、ティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121及びJIS K 7122に準拠して求めた。なお、ポリ乳酸系組成物の熱融解特性は、降温時と第2回昇温時における特性を求めた。
【0021】
本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、好ましくは前記PLLAを25〜75重量部、より好ましくは35〜65重量部、特に好ましくは45〜55重量部、その中でも好ましくは47〜53重量部及びPDLAを好ましくは75〜25重量部、より好ましくは65〜35重量部、特に好ましくは55〜45重量部、その中でも好ましくは53〜47重量部(PLLA+PDLA=100重量部)から構成されている、即ち調製されている。
【0022】
本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸の重量平均分子量が、いずれも6千〜300万の範囲内であり、かつ、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のいずれか一方の重量平均分子量が3万〜200万であるポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸から混練により調製することが望ましい。
【0023】
また、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、例えば、これらPLLAとPDLAを、230〜260℃で二軸押出機、二軸混練機、バンバリーミキサー、プラストミルなどで溶融混練することにより得ることができる。
PLLAの量が上記範囲外の組成物は上述の方法で混練しても、得られる組成物を延伸してなるフィルムはα晶の結晶体を含み、耐熱性が不十分となる虞がある。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物が耐熱性に優れるのは、当該組成物がステレオコンプレックス構造を形成しており、ステレオコンプレックス構造はPLLAとPDLAの等量から構成されるためであると考えられる。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物を得るために、PLLAとPDLAを溶融混練するときの温度は、好ましくは230〜260℃であり、より好ましくは235〜255℃である。溶融混練する温度が230℃より低いとステレオコンプレックス構造物が未溶融で存在する虞があり、260℃より高いとポリ乳酸が分解する虞がある。
【0024】
また、本発明に係わるポリ乳酸系組成物を調製する際に、PLLAとPDLAを十分に溶融混練することが望ましい。
溶融混練時間は、用いる溶融混練機にもよるが、PLLAとPDLAの溶融混練時間をより長くすればするほどPLLAあるいはPDLAの単独結晶(α晶)が生成し難いポリ乳酸系組成物とすることができる。
例えば、二軸押出機(東芝機械社製 同方向回転二軸押出機 型式TEM−37BS スクリュ径:37mm、スクリュ条数:2、スクリュ長(l/d):42、スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mmからなるスクリュパターン)では温度:250℃、回転数:430rpmで、1分間以上であればよい。
例えばラボプラストミル(東洋精機社製 ラボプラストミル 型式Cモデル(二軸混練機)では温度:245℃、回転数:120rpmで、15分間以上、好ましくは20分間以上とすることにより、得られるポリ乳酸系組成物は、DSCの第2回昇温時における205〜240℃の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)が45J/g以上、好ましくは50J/g以上となり、150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量は3.5J/g以下、好ましくは0J/gとなり、よりステレオコンプレックスの結晶比率が高く、PLLAあるいはPDLAの単独結晶(α晶)が生成し難いポリ乳酸系組成物とすることができる。
【0025】
本発明に係るポリ乳酸系組成物は、ステレオコンプレックスの結晶化が早く、かつステレオコンプレックス結晶化可能領域も大きいので、PLLAあるいはPDLAの単独結晶(α晶)が生成し難いと考えられる。
【0026】
前述のように、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、DSCによる250℃で10分経過後の降温時での測定(10℃/分)において結晶化によるピーク(発熱量ΔHc)が、20J/g以上であるとポリ乳酸系組成物の結晶化が速やかに起こる。
【0027】
また結晶化による発熱量が20J/gより小さいと結晶化速度が小さく、上記混練が十分でない虞がある。
【0028】
本発明に係わるポリ乳酸系組成物の重量平均分子量は特に限定されるものではない。しかしながら、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、重量平均分子量が1万〜150万の範囲にあることが好ましく、さらには重量平均分子量が5万〜50万の範囲にあることが望ましい。重量平均分子量が、1万〜150万の範囲を高分子側に外れるとステレオコンプレックス化が十分でなく耐熱性が得られない虞があり、また低分子側に外れると得られるポリ乳酸系組成物層の強度が十分でない虞がある。
【0029】
<ポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法>
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物を用いて、押出成形して得られるフィルムあるいはシートを、好ましくは一方向に2倍以上、より好ましくは2〜12倍、さらに好ましくは3〜6倍延伸することにより、耐熱性、透明性に優れる延伸フィルムが得られる。延伸倍率の上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、12倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
【0030】
また、押出成形して得られるフィルムあるいはシートを、好ましくは縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上、より好ましくは縦方向に2〜7倍及び横方向に2〜7倍、さらに好ましくは縦方向に2.5〜5倍及び横方向に2.5〜5倍延伸することにより、耐熱性、透明性に優れる二軸延伸フィルムが得られる。延伸倍率の上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、7倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
【0031】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、延伸した後、40〜220℃、好ましくは150〜200℃で、1秒以上、好ましくは3〜60秒熱処理しておくと、更に耐熱性が改良される。
【0032】
<熱可塑性インク層>
本発明のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムに係わる熱可塑性インク層は樹脂から構成されるものであってもワックスから構成されるものであってもよい。樹脂から構成されるインク層としては、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂の中の一又は二以上の樹脂からなるインク層が挙げられる。また、ワックスから構成されるインク層としては、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エステルワックス、酸化ワックス、カスターワックス、高級脂肪酸モノグリセリド等のワックス類の中の一又は二以上からなるインク層が挙げられる。
<ポリ乳酸系フィルム>
本発明のポリ乳酸系フィルムは、前記熱的特性を有するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に、前記離型層を設けてなるフィルムである。
<ポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムの製造方法>
本発明のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムは、前記熱的特性を有するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に熱可塑性インク層を付与することによりプリント膜を形成することができる。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用でき、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、マイヤーバーなどのバーコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法等の従来から知られている種々公知の方法を使用することができる。
熱可塑性インク層の塗布量は、0.1〜200g/m2の範囲が好ましい。熱可塑性インク層の塗布量が0.1g/m2未満では、プリントした際に映えが低下し、本来のアイロンプリント用フィルム性能が出なくなる傾向がある。また、乾燥塗布量が200g/m2を超えると、アイロンプリントしたさいにプリント図柄のズレを生じる虞がある。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0034】
実施例及び比較例等で使用したポリ乳酸は次の通りである。
(イ)ポリ−L−乳酸(PLLA−1):
D体量:1.9% Mw:22万(g/モル)、Tm:163℃。
(ロ)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA−2):
D体量:100.0% Mw:135万(g/モル)、Tm:180℃。
インヘレント粘度(溶媒;クロロホルム、測定温度;25℃、濃度;0.1g/dl):7.04(dl/g)
本発明における測定方法は以下のとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw)
ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を以下の方法で測定した。
【0035】
試料20mgに、GPC溶離液10mlを加え、一晩静置後、手で緩やかに攪拌した。この溶液を、両親媒性0.45μm−PTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC−25HP045AN)でろ過し、GPC試料溶液とした。
測定装置;Shodex GPC SYSTEM−21
解析装置;データ解析プログラム:SIC480データステーションII
検出器;示差屈折検出器(RI)
カラム;Shodex GPC K−G + K−806L + K−806L
カラム温度;40℃
溶離液;クロロホルム
流速;1.0ml/分
注入量;200μL
分子量校正;単分散ポリスチレン
(2)DSC測定
前記記載の方法で測定した。
(3)透明性
日本電色工業社製 ヘイズメーター300Aを用いてフィルムのヘイズ(HZ)及び平行光光線透過率(PT)を測定した。
(4)表面粗さ
株式会社小坂研究所製三次元表面粗さ測定器SE−30Kを用いてフィルム表面の中心面平均粗さ(SRa)を測定した。
(5)引張り試験
フィルムからMD方向及びTD方向に、夫々短冊状の試験片(長さ:150mm、幅:15mm)を採取して、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を使用し、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分で測定)で、引張り試験を行い、引張強さ(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を求めた。
(6)耐熱性
熱分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製 熱・応用・歪測定装置 TMA/SS120)を用いてフィルムから幅4mmの試験片を切り出し、チャック間5mmで試験片に荷重0.25MPaを掛け、100℃(開始温度)から5℃/分で昇温し、各温度における試験片の変形(伸びまたは収縮)を測定した。
(7)広角X線測定
測定装置:X線回折装置(株式会社リガク製 自動X線回折装置RINT−2200)
反射法
X線ターゲット;Cu K−α
出力;40kV×40mA
回転角;4.0度/分
ステップ;0.02度
走査範囲;10〜30度
(8)透湿度(水蒸気透過度)
JIS Z0208 に準拠して求めた。フィルムを採取して、表面積が約100cm2の袋を作り、塩化カルシウムを適量入れた後、密封した。これを40℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気中に3日間放置し、重量増加から透湿度(水蒸気透過度)を求めた。
(9)酸素透過度
JIS K7126に基づいて20℃湿度0%RH(相対湿度)の条件で、酸素透過測定器(MOCON社製、OXTRAN2/21 ML)を使用して測定した。
(10)アイロンプリント適性
ポリ乳酸系フィルムを水平台の上にコロナ処理面を上にして載置し、簡易的にクレヨンで図柄を描いた。更に図柄面を下にして木綿布に載せて、上からアイロンをあててアイロンプリントを行った。アイロンの表面温度は150±10℃に調整した。
アイロンした際の図柄の映えと、特にフィルムが収縮することによる図柄の縮み有無を評価した。
参考例1
PLLA−1:PDLA−2を50:50(重量部)の比で計量し、二軸混練押出機を用い、溶融温度;250℃、混練時間;6分で、溶融混練してポリ乳酸系組成物を得た後、T−ダイシート成形機で、厚さ約300μmのポリ乳酸系組成物からなるシートを得た。かかるポリ乳酸系組成物の熱融解特性を前記記載の方法で測定した。
次に、当該シートをブルックナー社製二軸延伸機で、縦方向に延伸温度;65℃で3倍に、横方向に延伸温度;70℃で3倍に延伸し、テンター内で180℃で約40秒間のヒートセットを行い、ポリ乳酸系延伸フィルムを得た。得られたポリ乳酸系延伸フィルムの物性を前記記載の方法で測定した。測定結果を表1に、熱融解特性を図1及び図2に示す。
参考例2
参考例1で用いたPLLA−1及びPDLA−1に代えて、PLLA−1を単独で用い、二軸延伸フィルムのヒートセットを150℃で約40秒間行う以外は参考例1と同様に行い、PLLA−1のシート及び二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表1に、熱融解特性を図3及び図4に示す。
【0036】
【表1】
表1から明らかなように、参考例1で得られたポリ乳酸系組成物からなる二軸延伸フィルムは、熱融解特性において、150〜200℃の範囲の吸熱ピーク(吸熱量)は僅かで、205〜240℃の範囲の吸熱ピークは大きく、吸熱量(ΔHm)も66.1J/gと多く、降温した際の発熱量(ΔHc)も49.7J/gある。
また、二軸延伸フィルムの素材となるポリ乳酸系組成物(シート)の熱融解特性は、第1回降温時の発熱量(ΔHc)が20.3J/gと20J/g以上であり、第2回昇温時には、150〜200℃の範囲には吸熱ピークはみられず、205〜240℃の範囲の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)は51.0J/gと35J/g以上である。さらに、参考例1で得られたポリ乳酸系組成物からなる二軸延伸フィルムは、透明性、耐熱性に優れ、透湿度及び酸素透過度も低く、バリア性能を有し、広角X線測定における回折ピークは2θが12、21、24度近辺にのみ有し、2θが17、19度近辺には回折ピークは現れなかった。また17、19度近辺のピーク面積(SPL)が全体の面積に対して0%と5%未満であり、2θが12、21、24度近辺のピーク面積(SSC)が全体の面積に対して51%と20%以上であった。
【0037】
それに対し、参考例2で得られたPLLA−1からなる二軸延伸フィルムは、150〜200℃の範囲の吸熱ピークのみで、205〜240℃の範囲の吸熱ピークはなく、降温した際の発熱量(ΔHc)は0.4J/gと参考例1で得られたポリ乳酸系組成物からなる二軸延伸フィルムに比べ少ない。また、二軸延伸フィルムの素材となるPLLA−1(シート)の熱融解特性は、第1回降温時の発熱量(ΔHc)は0であり、第2回昇温時には、205〜240℃の範囲には吸熱ピークはみられず、150〜200℃の範囲のピークのみであり、その吸熱量(ΔHm)は32.1J/gである。さらに、参考例2で得られたPLLA−1からなる二軸延伸フィルムは、透明性は優れるものの、耐熱性、バリア性能に劣るとともに、広角X線測定における回折ピークは2θが17、19度近辺にのみ有し、2θが12、21、24度近辺には回折ピークは現れなかった。また17、19度近辺のピーク面積(SPL)が全体の面積に対して57%と5%を越えており、2θが12、21、24度近辺のピーク面積(SSC)が全体の面積に対して0%と20%未満であった。
【0038】
実施例1
参考例1のポリ乳酸系延伸フィルムの片面にコロナ処理を行った。そしてポリ乳酸系フィルムを水平台の上にコロナ処理面を上にして載置し、簡易的にクレヨンで図柄を描いた。更に図柄面を下にして木綿布に載せて、上からアイロンをあててアイロンプリントを行った。アイロンの表面温度は150±10℃に調整した。
アイロンした際の図柄の映えは美麗であり、フィルムが収縮しないので図柄のずれもなかった。
比較例1
参考例2の二軸延伸フィルムの片面にコロナ処理を行い、実施例1と同様な方法で、アイロンプリント適性を評価した。その結果、フィルムの収縮が起こり、アイロンプリントが出来ないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルムは、TMA測定による0.25MPa荷重での5%収縮温度が170℃と、従来のポリ乳酸の溶融温度を越えても熱変形が小さく、しかも生分解性を有している。かかる特性を利用して、アイロンプリント用途に用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、参考例1の延伸フィルムの第1回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図2】図2は、参考例1の延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図3】図3は、参考例1の延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図4】図4は、参考例2の延伸フィルムの第1回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図5】図5は、参考例2の延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図6】図6は、参考例2の延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図7】図7は、参考例1のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図8】図8は、参考例1のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図9】図9は、参考例2のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図10】図10は、参考例2のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図11】図11は、参考例1の延伸フィルムの広角X線回折測定結果を示す図である。
【図12】図12は、参考例2の延伸フィルムの広角X線回折測定結果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であるポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に熱可塑性インク層を設けてなることを特徴とするポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項2】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が40J/g以上である請求項1に記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項3】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定における吸熱ピーク測定後に、降温した際の発熱量が40J/g以上である請求項1に記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項4】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、広角X線測定における2θが12度、21度および24度近辺のピーク面積の総和(SSC)が全体の面積に対して20%以上であり、かつ2θが17度および19度近辺のピーク面積の総和(SPL)が全体の面積に対して5%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項5】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定において、250℃で10分間経過後に降温した際の発熱量が20J/g以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項6】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定において、第2回昇温時における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク20)とのピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項7】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定において、第2回昇温時における205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が35J/g以上のポリ乳酸系組成物を延伸してなる請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項8】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、ポリ−L−乳酸75〜25重量部及びポリ−D−乳酸25〜75重量部(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の合計で100重量部)から調製されてなる請求項1〜7のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項9】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、少なくとも一方向に2倍以上延伸されてなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項10】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上延伸されてなる延伸フィルムである請求項1〜9のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項11】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、140〜220℃で1秒以上熱処理されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項1】
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であるポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面に熱可塑性インク層を設けてなることを特徴とするポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項2】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が40J/g以上である請求項1に記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項3】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定における吸熱ピーク測定後に、降温した際の発熱量が40J/g以上である請求項1に記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項4】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、広角X線測定における2θが12度、21度および24度近辺のピーク面積の総和(SSC)が全体の面積に対して20%以上であり、かつ2θが17度および19度近辺のピーク面積の総和(SPL)が全体の面積に対して5%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項5】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定において、250℃で10分間経過後に降温した際の発熱量が20J/g以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項6】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定において、第2回昇温時における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク20)とのピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項7】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、DSC測定において、第2回昇温時における205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が35J/g以上のポリ乳酸系組成物を延伸してなる請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項8】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、ポリ−L−乳酸75〜25重量部及びポリ−D−乳酸25〜75重量部(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の合計で100重量部)から調製されてなる請求項1〜7のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項9】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、少なくとも一方向に2倍以上延伸されてなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項10】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上延伸されてなる延伸フィルムである請求項1〜9のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【請求項11】
ポリ乳酸系延伸フィルムが、140〜220℃で1秒以上熱処理されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のポリ乳酸系アイロンプリント用フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−94949(P2010−94949A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270061(P2008−270061)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]