説明

ポリ乳酸系スパンボンド不織布の製造方法

【課題】 ポリ乳酸系重合体からなるスパンボンド不織布において、連続工程で製造する場合に、さらなる機械的強度が向上してなるポリ乳酸系スパンボンド不織布を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸系重合体100質量部に対して、層状珪酸塩が1〜5質量部となるように、ポリ乳酸系重合体に層状珪酸塩を混合し、層状珪酸塩が混合されたポリ乳酸系重合体をスパンボンド法により溶融紡糸して得られた長繊維を集積してウェブとし、次いで得られたウェブを熱エンボス装置に通して部分的に熱圧着することを特徴とするポリ乳酸系スパンボンド不織布の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパンボンド法により得られるポリ乳酸系重合体からなる不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長繊維不織布としては、スパンボンド法にて製造され、熱圧着により不織布化したスパンボンド不織布が一般的によく知られている。すなわち、熱可塑性重合体を加熱溶融して紡糸口金から吐出させ、得られた紡出糸条を公知の横型吹付や環状吹付などの冷却装置を用いて冷却し、その後、エアーサッカー等の吸引装置を用いて所望の単糸繊度が得られるよう牽引細化して、公知の開繊器具にて開繊させながらスクリーン上にウエブを堆積させ、得られたウエブを、熱エンボス装置に通して部分的に熱圧着することで、スパンボンド不織布が得られる。
【0003】
近年、生分解性を有する長繊維不織布が開発されており、中でも、ポリ乳酸系重合体からなる長繊維不織布は、生分解性を有するだけでなく、その融点が比較的高いことから、実用性が高く、様々な用途に好適に使用できることが期待されている。
【0004】
しかし、ポリ乳酸系重合体からなるスパンボンド不織布を得るにあたって、紡糸〜開繊〜ウエブ作成のスパンボンド工程と、熱エンボス装置による熱圧着工程とが連続工程となっている本生産機に製造する場合、以下の課題がある。すなわち、スパンボンド法により製造されたウエブに部分的に熱圧着を施して得られたポリ乳酸系重合体からなる不織布は、見かけ上は熱圧着部において繊維同士が熱接着により拘束されているようであるが、使用中において物理的な力が付加されると、熱圧着部が容易に破壊されて、繊維同士が拘束状態から解かれ、不織布がその厚み方向に剥離してしまうことがある。この現象を解決する手段として、本出願人は、熱圧着部にて良好に繊維同士が接着され、厚み方向への剥離が生じにくいポリ乳酸系長繊維不織布とポリ乳酸系長繊維を提案している(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−64569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリ乳酸系重合体からなるスパンボンド不織布において、連続工程で製造する場合に、さらなる機械的強度が向上してなるポリ乳酸系スパンボンド不織布を提供することを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、ポリ乳酸系重合体に層状珪酸塩とを混合した重合体を、スパンボンド法により溶融紡糸して得られた長繊維を熱接着すると、良好な熱接着形態となることを見いだし本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリ乳酸系重合体100質量部に対して、層状珪酸塩が1〜5質量部となるように、ポリ乳酸系重合体に層状珪酸塩を混合し、層状珪酸塩が混合されたポリ乳酸系重合体をスパンボンド法により溶融紡糸して得られた長繊維を集積してウェブとし、次いで得られたウェブを熱エンボス装置に通して部分的に熱圧着することを特徴とするポリ乳酸系スパンボンド不織布の製造方法を要旨とするものである。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いるポリ乳酸系重合体としては、ポリ−D−乳酸と、ポリ−L−乳酸と、D−乳酸とL−乳酸との共重合体と、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体と、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体と、D−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体との群から選ばれる重合体、あるいはこれらのブレンド体が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸を共重合体する際のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられるが、これらの中でも特に、ヒドロキシカプロン酸やグリコール酸が分解性能や低コスト化の点から好ましい。
【0010】
本発明に用いるポリ乳酸系重合体の融点は、160℃以上であることが好ましい。ポリ乳酸系重合体の融点が160℃以上であることにより、結晶性が高く、熱エンボス装置に通した際に、溶融した重合体がロールに付着するようなトラブルが生じにくく、取り扱い性が良好となる。また、融点が高いことから耐熱性にも優れる。融点が160℃以上のポリ乳酸系重合体としては、L−乳酸とD−乳酸との共重合体であって、共重合比(D−乳酸/L−乳酸)が2/98〜0/100であるものが好ましい。
【0011】
本発明においては、ポリ乳酸系重合体100質量部に対して、1〜5質量部の層状珪酸塩を混合したポリ乳酸系重合体を用いる。層状珪酸塩の配合量をポリ乳酸系重合体100質量部に対して1〜5質量部とする理由は、1質量部未満では、層状珪酸塩を配合する効果を十分に奏することができず、一方、5質量部を超えるとポリ乳酸系重合体中への微分散が困難となり、靭性が大きく低下するので好ましくない。層状珪酸塩の好ましい混合量は、2〜4質量部である。
【0012】
層状珪酸塩としては、膨潤性層状粘土鉱物を用いることが好ましい。具体的には、スメクタイト、バーミキュライト、および膨潤性フッ素雲母等が挙げられる。スメクタイトの例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイトが挙げられる。膨潤性フッ素雲母の例としては、Na型フッ素四ケイ素雲母、Na型テニオライト、Li型テニオライト等が挙げられ、また上記の他に、カネマイト、マカタイト、マガディアイト、ケニアイト等のアルミニウムやマグネシウムを含まない層状珪酸塩を使用することもできる。天然品以外に合成品でもよく、合成方法としては、溶融法、インターカレーション法、水熱法等が挙げられるが、いずれの方法であってもよい。
【0013】
ポリ乳酸系重合体に所定量の層状珪酸塩を混合する方法としては、溶融混練によりポリ乳酸系重合体と層状珪酸塩とを混合する方法、ポリ乳酸系重合体の重合時に層状珪酸塩を添加する方法等が挙げられるが、溶融混練時に混合することが好ましい。
【0014】
層状珪酸塩の層間には、有機カチオンを有していることが好ましい。層状珪酸塩の層間に有機カチオンを有することによって、ポリ乳酸系重合体と混合したときに、層間に有機分子、有機イオンが取り込まれ、層状珪酸塩の各層が剥離しやすくなり、ポリ乳酸系重合体内に層状珪酸塩が分散しやすいためである。有機カチオンとしては、1級ないし3級アミン塩、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩である。有機カチオンを構成するアルキル基の炭素数の合計は8以上であることが好ましく、さらに少なくとも1つのアルキル基の炭素数が8以上であることが好ましい。炭素数の合計が8以上とすることにより、ポリ乳酸系重合体との相溶性・親和性を高めることができ、ポリ乳酸系重合体中に珪酸塩を良好に分散させることができる。有機カチオンの具体例としては、1級アミン塩では、オクチルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン等の塩が挙げられる。2級アミン塩としては、ジオクチルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジオクタデシルアミン等の塩が挙げられる。3級アミン塩としては、トリオクチルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジドデシルモノメチルアミン等の塩が挙げられる。4級アンモニウムイオンとしては、テトラブチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ジオクタデシルジメチルアンモニウム、ジヒドロキシエチルオクタデシルメチルアンモニウム、ビス(ポリエチレングリコール)ドデシルメチルアンモニウム、メチルジエチル(ポリプロピレングリコール)アンモニウム、ジパーム油脂肪酸アルキルジメチルアンモニウム、ジパーム油脂肪酸アルキルヒドロキシエチルメチルアンモニウム、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。さらに、ホスホニウムイオンとしては、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウム等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよいが2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお有機カチオンとしては、牛脂、豚脂等の動物性油脂、パーム油、ヤシ油等の植物性油脂等の天然油脂脂肪酸由来のアルキル基を導入した有機カチオンを好適に用いることができる。
【0015】
層状珪酸塩の層間に有機カチオンを含有させる方法としては、まず層状珪酸塩を水または極性有機溶媒中に分散させ、ここへ上記有機カチオンを塩の形で添加して撹拌混合することにより、層状珪酸塩の無機イオンを有機カチオンとイオン交換させた後、濾別洗浄乾燥する方法が挙げられる。
【0016】
本発明においては、ポリ乳酸系重合体中における層状珪酸塩の分散性を向上させるために、ポリ乳酸系重合体に相溶化剤を混合することが好ましい。相溶化剤としては、ポリ乳酸系重合体および層状珪酸塩の双方と親和性を有するものであって、沸点が250℃以上、かつ数平均分子量が200〜50,000であるポリアルキレンオキシド、脂肪族ポリエステルおよびその重合体、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステル等の化合物が挙げられる。
【0017】
相溶化剤は、ポリ乳酸系重合体100質量部に対して、0.01〜5質量部、好ましくは0.02〜2質量部混合させるとよい。相溶化剤の混合量が、0.01質量部未満では、相溶化剤を混合する効果を奏さず、一方、5質量部を超えるとポリ乳酸系重合体の耐熱性や機械的特性が損なわれる傾向となる。
【0018】
相溶化剤をポリ乳酸系重合体に含有させる方法としては、溶融混練によりポリ乳酸系重合体と層状珪酸塩と共に混合する方法、ポリ乳酸系重合体の重合時に層状珪酸塩と共に添加する方法等が挙げられるが、溶融混練時に混合する方法が好ましい。
【0019】
また、ポリ乳酸系重合体には、本発明の目的が達成される範囲において、顔料、熱安定剤、分散剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材等を添加してもよい。熱安定剤や酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、フォスファイト等のリン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物を使用することができる。可塑剤としては、ポリ乳酸を主成分とする生分解性樹脂に相溶し、不揮発性かつ無毒性のものが好ましく、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル類、ジオクチルアジペート等のアジピン酸エステル類、トリブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート等のクエン酸エステル類、トリクレジルフォスフェート等のリン酸エステル類、エポキシ化大豆油やエポキシ化アマニ油等のエポキシ類、グリセリンエステル類、脂肪族ポリエステルのオリゴマー等が挙げられる。
【0020】
ポリ乳酸系重合体に所定量の層状珪酸塩が混合されたポリ乳酸系重合体の溶融粘度(以下、MFRと略記する。)は、40〜80g/10分であることが好ましく、さらには50〜65g/10分であることが好ましい。MFRが40g/10分未満であると、粘度が高すぎて、長繊維不織布の製造工程における糸条の延伸効果が低く、配高の低い繊維しか得られず、耐熱性におとる長繊維不織布となってしまう。一方、MFRが80g/10分を超えると、粘度が低すぎて、粘度が低すぎるため紡糸工程において糸切れが多発しやすく操業性を損なう傾向となる。なお、MFRは、ATSM−D−1238(E)に記載の方法に準じて、温度210℃、荷重2160gfで測定した値である。
【0021】
次いで、上述した重合体を用いて、スパンボンド法により不織布を得る方法について説明する。まず、所定量の層状珪酸塩が混合されたポリ乳酸系重合体を溶融計量し、紡糸口金を介して、溶融紡糸し、前記紡糸口金より紡出した紡出糸条を従来公知の横吹き付けや環状吹き付け等の冷却装置を用いて冷却せしめた後、吸引装置を用いて牽引細化して引き取る。このときの牽引速度は、4000〜6000m/分と設定することが好ましく、さらには4500〜6000m/分であることが好ましい。牽引速度が4000m/分未満であると、糸条における分子配向が十分に促進されず、得られるスパンボンド不織布の寸法安定性が劣る傾向となる。一方、牽引速度が6000m/分を超えると紡糸安定性に劣る傾向となる。
【0022】
本発明においては、所定量の層状珪酸塩が混合されたポリ乳酸系重合体をスパンボンド法により溶融紡糸して長繊維を得るが、層状珪酸塩が混合したポリ乳酸系重合体のみからなる単層形態の長繊維であってもよく、また、層状珪酸塩を含まないポリ乳酸系重合体と複合した複合形態の長繊維であってもよい。複合形態の場合、層状珪酸塩が混合されたポリ乳酸系重合体を芯部に配し、層状珪酸塩を含まないポリ乳酸系重合体を鞘部に配して、芯鞘型複合紡糸口金を用いて芯鞘型複合長繊維がよい。ポリ乳酸系重合体中の層状珪酸塩の分散性を向上させるために相溶化剤を添加した場合、相溶化剤の種類によっては溶融紡糸の際に分解して発煙する場合があるが、芯鞘型複合形態とすることにより、発煙を防止することができる。複合する場合は、層状珪酸塩が混合されたポリ乳酸系重合体の比率を50質量%以上とする。
【0023】
牽引細化により得られた長繊維は公知の開繊器具にて開繊した後、スクリーンコンベアなどの移動式捕集面上に集積させてウエブを形成する。次いで、得られたウエブに熱エンボス装置に通して部分的に熱圧着する。
【0024】
熱エンボス装置におけるロールの設定温度は、ポリ乳酸系重合体が溶融する温度に設定すればよく、処理時間や線圧等に応じて適宜選択する。具体的にはロールの表面温度は、ポリ乳酸系重合体の融点よりも10〜50℃低い温度に設定することが好ましい。ポリ乳酸系重合体の融点よりも10〜50℃低い温度に設定することにより、エンボスロールの凸部に当接する部位におけるポリ乳酸系重合体が、溶融して、構成繊維同士を良好に熱接着し、溶融物がロールに付着するようなトラブルが生じることがなく、操業性も良好である。
【0025】
本発明において、熱圧着部における接着形態が良好となり、不織布の機械的強力が向上する理由について、本発明者は、以下によると推定する。すなわち、層状珪酸塩を含まないポリ乳酸系重合体は、結晶化が早くないため、熱エンボス装置に通した際、熱エンボスロールの凸部に当接する部分については、凸部で押えた際に溶融し、その後、凸部が離れると、溶融した重合体は直ぐに冷えて固まることなく未だ固化する途中段階であり、未だ固まっていない状態の重合体が、離れようとするエンボスロールの凸部にとられて、一旦凸部にて押さえた部分が、離れる際に一緒に浮き上がり、十分な圧着形態を形成することができなかった。一方、本発明においては、ポリ乳酸系重合体に混合された層状珪酸塩の一部もしくは全部において、層が単層に剥離した状態で重合体中に分散し、このように層状珪酸塩が分散したポリ乳酸系重合体は、結晶化しやすい。結晶化しやすいポリ乳酸系重合体で構成される長繊維からなるウェブを熱エンボス装置に通した際、熱エンボスロールの凸部に当接する部分については、凸部で押えた際に溶融し、その後、凸部が離れると、溶融した重合体はすばやく冷えて固まり、結晶固化してなる熱圧着部を良好に形成する。したがって、構成繊維同士を熱圧着部にて、しっかりと拘束するため、層間の剥離が生じないことは勿論のこと、不織布の機械的強力(強度・伸度)が向上する。また、熱圧着部では、十分に溶融した重合体が結晶固化しているため、フィルム化して透明感があり、視覚的にも熱圧着部と非熱圧着部との差異が明確である。これは、得られるスパンボンド不織布の目付が大きい程(目付100g/m2以上)、より顕著となり、エンボス柄が明瞭となる。
【0026】
本発明における長繊維の単糸繊度は、用途等に応じて適宜設定すればよいが、0.5〜11 デシテックス程度であることが好ましい。単糸繊度が0.5 デシテックス未満であると、紡糸延伸工程において糸切れが頻繁に発生し、操業性が悪化するとともに、得られる不織布の機械的強力が劣るため、実用的でなくなる。一方、単糸繊度が11デシテックスを超えると、紡糸糸条の冷却性に劣り、糸条同士が密着しやすくなる。
【0027】
本発明における不織布の目付もまた、用途等に応じて適宜選択すればよいが、一般的に10〜300g/m2の範囲がよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明により得られるスパンボンド不織布は、長繊維自体の強力は、従来の層状珪酸塩を混合しないポリ乳酸系重合体からなるものを同程度であるが、熱圧着部において、良好に圧着形態が形成されるため、不織布として機械的強力(強力・伸度)が向上したものとなる。スパンボンド工程と熱圧着工程が連続工程となる本生産機にて、効率よく、機械的強力の向上したポリ乳酸系スパンボンド不織布を得ることができる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各種物性値の測定は以下の方法により実施した。
【0030】
(1)融点(℃):示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製、DSC−2型)を用いて、試料重量を5mg、昇温速度を10℃/分で測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点(℃)とした。
【0031】
(2)繊度(デシテックス):ウエブより50本の繊維の繊維径を光学顕微鏡で測定し、密度補正して求めた平均値を繊度とした。
【0032】
(3)引張強力(N/5cm幅)および破断伸度(%):JIS L 1906に準じて測定した。すなわち、試料長20cm、試料幅5cmの試料片各10点を作製し、各試料について、定速伸張型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM-4-1-100)を用い、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/分で伸張し、得られた切断時破断荷重(N/5cm幅)の平均値を引張強力(N/5cm幅)とした。破断伸度は、上記条件で得られた切断時の伸度(%)の平均値を破断伸度とした。
【0033】
実施例1
融点168℃、MFR20g/分のL−乳酸/D−乳酸の共重合比がL−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4モル%であるポリ乳酸100質量部と、層間がビス(ポリエチレングリコール)ドデシルメチルアンモニウム塩で置換された合成フッ素雲母(コープケミカル製 ソマシフMEE)4質量部と、分散剤として燐酸エステル系界面活性剤(楠本化成社製 商品名「ディスパロン DA−375)3質量部、可塑剤としてトリブチルシトレート1質量部とを混合し、スクリュー径30mmφの2軸押出機を用いて200℃で溶融混練し、層状珪酸塩が混合されたポリ乳酸系重合体を得た。この層状珪酸塩が混合されたポリ乳酸系重合体のMFRは54g/分であった。この重合体に添加剤としてタルクを0.5質量%配合した。得られたポリ乳酸系重合体を円形の紡糸口金より、紡糸温度200℃、単孔吐出量1.67g/分で溶融紡糸した。ノズルより紡出した糸条に急冷を行い、その後、エアサッカーにて5000m/分で引き取り、これを開繊して移動するコンベアの捕集面上に長繊維を集積してウエブを形成した。次いでこのウエブをエンボスロール(圧着面積率14.9%、圧着点密度21.9 個/cm2)とフラットロールからなる熱エンボス装置に通し、ロール温度130℃、線圧60kg/cm の条件にて熱圧着し、単糸繊度3.3 デシテックスの長繊維からなる目付100g/m2のスパンボンド不織布を得た。
【0034】
実施例2
実施例1において、層状珪酸塩を混合したポリ乳酸系重合体(タルクを配合していないもの)を芯部に、一方、融点168℃、MFR65g/分のL−乳酸/D−乳酸の共重合比がL−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4モル%のポリ乳酸に、重合体中にタルクが0.5質量%となるように添加したものを鞘部とし、芯部と鞘部の複合比(質量比)で1/1となるように個別に計量した後、それぞれを個別のエクストルーダ型溶融押し出し機を用いて温度200℃で溶融し、単孔吐出量1.38g/分の条件下で、芯鞘型複合紡糸口金を用いて溶融紡糸した。前記以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。
【0035】
比較例1
実施例1において、融点168℃、MFR65g/分のL−乳酸/D−乳酸の共重合比がL−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4モル%のポリ乳酸に、重合体中にタルクが0.5質量%となるように添加したポリ乳酸を用いたこと、溶融紡糸時の紡糸温度210℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布を得た。
【0036】
得られた実施例1、2、比較例1のスパンボンド不織布の物性を表1に示す。
【0037】
【表1】

表1から明らかなように、実施例1、2のスパンボンド不織布は、比較例1のものと比較し、引張強力が約40%向上しており、また、伸度については、200〜300%向上した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系重合体100質量部に対して、層状珪酸塩が1〜5質量部となるように、ポリ乳酸系重合体に層状珪酸塩を混合し、層状珪酸塩が混合されたポリ乳酸系重合体をスパンボンド法により溶融紡糸して得られた長繊維を集積してウェブとし、次いで得られたウェブを熱エンボス装置に通して部分的に熱圧着することを特徴とするポリ乳酸系スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項2】
長繊維を得るに際して、層状珪酸塩が混合されたポリ乳酸系重合体が芯部に、層状珪酸塩を含まないポリ乳酸系重合体が鞘部に配して、芯鞘型複合紡糸口金を用いてスパンボンド法により溶融紡糸して芯鞘型複合長繊維としたことを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項3】
層状珪酸塩の層間には、1級ないし3級アミン塩、4級アンモニウム塩、またはホスホニウム塩を有することを特徴とする請求項1または2記載のポリ乳酸系スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項4】
ポリ乳酸系重合体の融点が、160℃以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のポリ乳酸系スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項5】
部分的に熱圧着する際、不織布に形成する熱圧着部をフィルム化させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のポリ乳酸系スパンボンド不織布の製造方法。


【公開番号】特開2008−81902(P2008−81902A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265712(P2006−265712)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】